JP2000025329A - インクジェット記録用紙用填料 - Google Patents

インクジェット記録用紙用填料

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Abstract

(57)【要約】 【課題】無定形シリカよりなり、該シリカの平均粒子径
が大きい場合でも、ある特定の範囲の粒度分布を有する
ものを用いることにより、インクジェット記録方式によ
りプリントした際、形成されるドットの真円性に優れ、
しかも吸収性、塗工層の筆記性及び表面強度という従来
からの効果は保持される、インクジェット記録用紙の塗
工層形成に有用なインクジェット記録用紙用填料を提供
する。 【解決手段】コールターカウンター法で測定した平均粒
子径が3.5μmを超えて10μm以下であり、粒度分
布の微分曲線におけるピーク高さが25%以上、且つ半
値幅が3.5μm以下である無定形シリカよりなるイン
クジェット記録用紙用填料である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規なインクジェ
ット記録用紙用填料に関する。詳しくは、平均粒子径が
大きい無定形シリカよりなり、インクジェット記録方式
によりプリントした際に形成されるドットの真円性に優
れ、しかもインクの吸収性、塗工層の筆記性及び表面強
度に優れたインクジェット記録用紙を製造するための塗
工層形成に有用なインクジェット記録用紙用填料であ
る。
【0002】
【従来の技術】インクジェット記録方式は、細いノズル
からインク滴を吐出させて紙などの記録シートに付着さ
せる方式であり、カラー化が容易であること、簡便に詳
細な画像が得られることなどを理由に各種のプリンター
に採用され急速な伸びを見せている。
【0003】このインクジェット記録方式で使用される
記録用紙は、インクジェット記録装置の性能向上や用途
の拡大に伴ない、より高精細な画質を求められるように
なってきた。かかる画質を得るために、インクジェット
記録用紙に要求される特性は、印字濃度が高いこと、
鮮明性が良いこと、ドットが真円に近いこと、イ
ンクの吸収性が良いことであり、これらの特性を満足す
ることにより印字濃度の高い高精細な画像が得られるこ
とになる。また、該塗工層には筆記性、表面強度を併せ
持つことも要求される。
【0004】従来、インクジェット記録用紙にかかる特
性を付与する方法としては、吸液性を有する填料とバイ
ンダーを混合して得られる塗工液を紙表面に塗工して、
塗工層を形成させる方法が知られており、これに使用す
る填料としても種々提案されている。
【0005】例えば、特公平5−71394には平均粒
子径が2.5〜3.5μmで、窒素吸着により測定した
60〜130 の範囲内の細孔容積が全細孔の20%以
上あり、吸油量250ml/100g以上の無定形シリ
カをインクジェット記録用紙用填料に用いることが提案
されている。また、特開平9−95042にはBET比表
面積が270〜400m2/gであり、且つ水銀圧入法
で測定された細孔半径のピーク位置が37.5〜75
、平均粒子径が3.5μmを越えて10μm以下の範
囲である非晶質シリカ(無定形シリカ)をインクジェッ
ト記録用紙用填料に用いることが提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記の
特公平5−71394は、平均粒子径の小さいシリカを
用いることによりドットの真円性の向上を図るものであ
るが、粒子径が小さいため塗工液の粘度が上昇し、塗工
層を形成する場合の作業性が悪化する。また上記問題を
回避するためには、塗工液粘度を下げざるを得なくなり
塗工液中の填料濃度を十分上げることが困難となる。そ
のため、塗工液中の填料濃度を下げて塗工を行わなけれ
ばならず、乾燥のための熱エネルギーコストが増加する
等、記録用紙製造上の点で問題であった。更に、上記粒
子径を有する無定形シリカは、筆記性、表面強度におい
て改良の余地があった。
【0007】また、特開平9−95042に関しては、
平均粒子径の大きいシリカを用いることにより塗工作業
性に優れ、インクの吸収が良く且つ良好な筆記性、表面
強度を有するインクジェット記録用紙を得るものである
が、その反面ドットが横に広がり真円性が悪化するとい
う問題点がある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる課
題を改善すべく鋭意研究を重ねた結果、シリカの平均粒
子径が3.5μm以下では、シリカの粒度分布によらず
ドットは真円に近いものが得られるが、該平均粒子径が
3.5μmを越えた場合でも、特定の粒度分布に調整す
ることによって真円なドットが得られ、しかも、インク
の吸収性、塗工層の筆記性及び表面強度という従来から
の効果が保持されたインクジェット記録用紙を得ること
ができることを見い出し本発明を完成するに至った。
【0009】即ち、本発明は、コールターカウンター法
で測定した平均粒子径が3.5μmを超えて10μm以
下であり、粒度分布の微分曲線におけるピーク高さが2
5%以上、且つ半値幅が3.5μm以下である無定形シ
リカよりなるインクジェット記録用紙用填料である。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明において、無定形シリカは
特に制限されるものではなく、四塩化珪素の熱分解によ
る乾式シリカ、珪酸ナトリウムを酸で中和することで得
られる含水珪酸(いわゆるホワイトカーボン)、珪酸ナ
トリウムの酸による中和やイオン交換樹脂層を通して得
られるシリカゾルまたはこのシリカゾルを加熱熟成して
得られるコロイダルシリカ、シリカゾルをゲル化させて
得られるシリカゲル等が全て含まれる。
【0011】本発明の無定形シリカの製造方法も特に制
限されるものではなく、公知の方法で得ることができ
る。
【0012】例えば、上記含水珪酸は、一般的には珪酸
ナトリウムを出発原料として製造する方法が推奨され
る。代表的な方法を例示すれば下記の方法が挙げられ
る。
【0013】即ち、Na2SO4を含有する珪酸ソーダ溶
液(モル比:2.9から3.5、SiO2濃度:3.5
〜6.0%)に、20〜40℃の液温を保ちながら硫酸
を中和率40〜55%になるように添加する。その後、
該溶液を80〜95℃まで昇温し5〜60分熟成を行
い、該溶液中に攪拌を行いながら硫酸を同一の速度でp
Hが3〜4になるまで添加し反応を終了させる。得られ
た無定形シリカの反応液をろ過し、水洗、乾燥を行う方
法である。
【0014】本発明において、上記特定の粒度分布を有
する無定形シリカを製造する方法は、特に制限されるも
のではない。例えば、反応条件を調整する方法や粉砕・
分級による方法が挙げられるが、特に、粉砕・分級によ
る方法が好適である。
【0015】粉砕・分級は、所期の粒径及び粒度分布に
なるまで適宜実施すればよい。具体的には、粉砕方法と
しては気流粉砕機やボールミル、サンドミル等を用いる
方法が好適である。
【0016】また、分級については、サイクロン、遠心
分級器、慣性分級器やふるい等の分級器を1つ以上用い
る方法が挙げられる。
【0017】本発明において、平均粒子径はコールター
カウンター(COULTER ELECTRONICS
INS製TA−II型)により測定したデータを基に、そ
れぞれの粒子径の存在割合を積算した積算曲線から求め
た50wt%径をいう。
【0018】また、ピーク高さ及び半値幅は、それぞれ
の粒径の存在割合を示す微分曲線から求める。なお、半
値幅とはピークの半分の高さにおける平均粒子径の幅を
示すものであり、該半値幅が狭く、ピークが高いという
ことは粒度分布が狭い(シャープである)ことを意味す
る。
【0019】本発明において、無定形シリカの平均粒子
径は3.5μmを越えて10μm以下、好ましくは5〜
7μmを有することが必要である。該平均粒子径が3.
5μm以下の場合には、塗工液粘度が上昇し、塗工層を
形成する場合の作業性が悪化するか、若しくは塗工液粘
度を下げざるを得なくなり塗工液中の填料濃度を十分に
上げることが困難となる傾向がある。逆に平均粒子径が
10μmよりも大きい場合には、塗工層の平滑性が低下
しドットの真円性が悪化する。
【0020】本発明において、無定形シリカの粒度分布
としては、微分曲線におけるピーク高さが25%以上好
ましくは30%以上、半値幅は3.5μm以下であるこ
とが必要である。かかる微分曲線におけるピーク高さが
25%以上且つ半値幅が3.5μm以下であることは、
粒度分布が狭い(シャープである)ことを意味する。粒
度分布の狭い無定形シリカほど、ドットが真円且つ均一
となり、高精細な画像を得るのに好適である。逆に、ピ
ーク高さ及び半値幅が上記範囲から外れる(粒度分布が
ブロードである)場合、真円なドットが得られず画像が
不鮮明になる。
【0021】また、かかる微分曲線において、ピークは
1つ存在するのが最も好ましいが、他に5%以下のピー
クであれば1つ以上存在しても良い。しかし、ピークが
2つ以上存在する場合、大きさの異なるドットが混在す
ることとなり、ピークが1つの場合と比べると画像は不
鮮明となる。
【0022】また、本発明において無定形シリカはBE
T比表面積が250〜400m2/g、好ましくは27
0〜350m2/gを有することが、インクの吸収性及
びドットの真円性を更に向上させるために好ましい。該
BET比表面積が上記範囲よりも小さい場合、得られる
塗工層においてインクの吸収性が低下し、ドットの真円
性が保てなくなる場合がある。また、インクジェット記
録用紙の表面強度が低下する場合もある。これは、基紙
と塗工層、塗工層中の無定形シリカ同士の結合は塗工層
中に添加されるバインダーを介して行われるが、そのバ
インダーは主に無定形シリカ表面のシラノール基と結合
するため比表面積が大きいほど表面強度は向上するもの
と推定される。一方、BET比表面積が上記より大きい
場合には、インクの吸収性が低下しドットの真円性が悪
化する。なお、BET比表面積は前記製造方法におい
て、主に反応温度、SiO2濃度、中和率、硫酸添加時
間によって調整することができる。
【0023】更に、本発明において無定形シリカの吸油
量は、250ml/100g以上であることが好まし
い。吸油量がこの値よりも低い場合、インクの吸収性が
劣ることになり、ドットの真円性が悪くなる原因となる
ことがある。
【0024】本発明の無定形シリカよりなるインクジェ
ット記録用紙用填料は、公知の方法によって基材上に塗
工することができる。その際使用されるバインダーとし
ては、ポリビニルアルコール、デンプン類、水溶性セル
ロース誘導体、水溶性蛋白質等の水溶性高分子バインダ
ーが挙げられる。また、分散液中の填料の濃度は何ら制
限されることはないが、例えば10〜30%により選択
される。
【0025】更に、填料/水溶性高分子バインダーの重
量比は一般に0.5〜10程度が好ましい。かかる分散
液によって基紙上に形成される塗工層は、填料としての
無定形シリカが2〜15g/m2の割合で含有するよう
に塗工することが好ましい。これにより、本発明の填料
による効果を十分に発揮することができる。
【0026】
【発明の効果】以上の説明より理解されるように、本発
明によればインクジェット記録方式によりプリントした
際、形成されるドットの真円性、インクの吸収性、筆記
性及び表面強度に優れる塗工層を有するインクジェット
記録用紙を得ることができる。
【0027】
【実施例】以下、本発明を更に具体的に説明するために
実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定される
ものではない。なお、実施例及び比較例における各種試
験は下記の方法によって行った。
【0028】(1)平均粒子径、粒度分布測定 サンプル10mgをメタノール溶液8mlに添加し、超
音波分散機(出力80ワット)で3分間分散させた。こ
の溶液をコールターカウンター粒度分布測定装置(CO
ULTER ELECTRONICS 社製TA−II型)
にて、50μmのアパチャーを用いて測定を行った。但
し、50μmのアパチャーで測定不可能なものについて
は200μmのアパチャーを使用し測定した。また、電
解液はISOTON II(商品名;COULTER E
LECTRONICS 社製、0.7%の高純度NaCl水
溶液)を用いた。
【0029】(2)比表面積測定 N2吸着による簡易型BET式比表面積計にて測定し
た。
【0030】(3)吸油量測定 JIS−K5101に準じて測定を行った。
【0031】(4)記録紙の作成 純水200gに無定形シリカを50g添加し、ホモディ
スパーSL(商品名:特殊機化工業(株)社製)を用い
て充分分散した後、ポリビニルアルコール(PVA ク
ラレR−1130)の10%水溶液200gを加え混合
した。この塗工液を坪量80g/m2の上質紙にバーコ
ーター(No.60)を用いて塗工し記録紙を得た。
【0032】(5)記録画像評価 上記(4)で得られた記録紙にエプソン社製のPM−7
00Cプリンターを用いて印字し、次の項目の評価を行
った。
【0033】a.印字濃度 印字画像の濃度をマクベスRD918にて測定した。
【0034】b.ドットの真円性 印字画像についてドットをルーペで拡大観察し、真円に
近い形状の割合が95%以上をA、70%以上90%未
満をB、70%未満をCとして評価した。
【0035】c.インクの吸収性 エプソン社製PM−700Cプリンターのインクカート
リッジから抜き取ったマゼンダインク0.5μリットル
を用いて、マイクロシリンジにより1cmの高さから紙
面に滴下し、完全に吸収されるまでの時間を測定した。
【0036】d.筆記性 HBの鉛筆による筆記で、コピー用紙と比較して同程度
の筆記性のものを○、やや劣るが問題なく書けるものも
のを△、ほとんど書けないものを×として評価した。
【0037】e.表面強度 セロハンテープによる塗工層の剥がれ具合で評価した。
【0038】○:ほとんど剥がれない(表面強度強い) △:剥がれる ×:かなり剥がれる(表面強度弱い) 実施例1 市販の珪酸ソーダ(SiO2/Na2Oモル比3.04、
SiO2 28.44%)6.40m3にNa2SO4(N
2O 2.1%)9.20m3、水26.20m3を、5
5m3の攪拌翼付き蒸気加熱方式の反応槽に入れて、液
温35℃で22%硫酸を2.1m3添加し第一段目の中
和を行った。次いで、液中に蒸気を吹き込みながら液温
を95℃まで昇温した。ここで液温を95℃に保ちなが
ら攪拌のみを継続して10分間熟成を行った。その後、
該液中に22%硫酸2.3m3を90分間で添加し反応
を終了した。
【0039】次いで、この溶液をろ過、水洗しミクロン
ドライヤーで乾燥した。その後、この乾燥品を気流粉砕
機及び遠心分級器で粉砕・分級を行い、表1に示す粒度
分布を持つ無定形シリカを得た。また、この粒度分布の
データを基に図1に示すように、微分曲線、積算曲線を
作成した。
【0040】また、表2には、本無定形シリカの粉体物
性及び記録紙の画像特性を示した。
【0041】
【表1】
【0042】実施例2 実施例1で得られた乾燥品を、粉砕・分級条件だけを変
えて無定形シリカを得た。得られた無定形シリカの粉体
物性及び記録紙の画像特性を表2に示した。
【0043】実施例3 実施例1において第1段目に添加する硫酸の量を2.3
3とし、その後添加する硫酸の量を2.1m3として、
80分かけて添加することにした。また反応温度は92℃
にした以外は同様の条件で乾燥品を得た。粉砕・分級
は、実施例1同様気流粉砕機及び遠心分級器を用いて行
った。
【0044】得られた無定形シリカの粉体物性及び記録
紙の画像特性を表2に示した。
【0045】実施例4 実施例1において第1段目に添加する硫酸の量を2.0
3、その後添加する硫酸の量を2.4m3として、10
0分かけて添加する以外は同様の条件で乾燥品を得た。
粉砕・分級は、実施例1同様気流粉砕機及び遠心分級器
を用いて行った。
【0046】得られた無定形シリカの粉体物性及び記録
紙の画像特性を表2に示した。
【0047】比較例1 実施例1で得られた乾燥品を、粉砕・分級条件だけを変
えて無定形シリカを得た。得られた無定形シリカの粉体
物性及び記録紙の画像特性を表2に示した。
【0048】比較例2 実施例4で得られた乾燥品を、粉砕・分級条件だけを変
えて無定形シリカを得た。得られた無定形シリカの粉体
物性及び記録紙の画像特性を表2に示した。
【0049】比較例3 実施例3で得られた乾燥品を、粉砕・分級条件だけを変
えて無定形シリカを得た。この結果を表2に示した。
【0050】比較例4 実施例4で行った反応条件の中で第1段目に添加する硫
酸の量を1.8m3、その後添加する硫酸の量を2.6
3とした以外は同様の条件で乾燥品を得た。粉砕・分
級は、実施例1同様気流粉砕機及び遠心分級器を用いて
行った。
【0051】得られた無定形シリカの粉体物性及び記録
紙の画像特性を表2に示した。
【0052】比較例5 無定形シリカとしてトクシールU(商品名:株式会社ト
クヤマ製)を気流粉砕機及び遠心分級器を用いて粉砕・
分級を行った。
【0053】得られた無定形シリカの粉体物性及び記録
紙の画像特性を表2に示した。
【0054】比較例6 無定形シリカとしてトクシールGu−N(株式会社トク
ヤマ製)を気流粉砕機及び遠心分級器を用いて粉砕・分
級を行った。
【0055】得られた無定形シリカの粉体物性及び記録
紙の画像特性を表2に示した。
【0056】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1で得られた無定形シリカの粒
度分布の微分曲線、積算曲線を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 建部 和男 山口県徳山市御影町1番1号 株式会社ト クヤマ内 Fターム(参考) 2C056 FC06 2H086 BA32 BA33 BA60 4G072 AA25 BB13 GG01 HH21 JJ15 LL06 LL07 MM01 MM22 MM23 MM28 RR06 TT01 TT02 TT06 TT11 UU25 4L055 AG18 AG94 AH01 EA16 FA11 FA13 FA15 GA09

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】コールターカウンター法で測定した平均粒
    子径が3.5μmを超えて10μm以下であり、粒度分
    布の微分曲線におけるピーク高さが25%以上、且つ半
    値幅が3.5μm以下である無定形シリカよりなるイン
    クジェット記録用紙用填料。
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