JP2000007625A - トリス(p−N−エナミン置換−アミノフェニル)アミン化合物及び有機電界発光素子 - Google Patents

トリス(p−N−エナミン置換−アミノフェニル)アミン化合物及び有機電界発光素子

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JP2000007625A
JP2000007625A JP10171723A JP17172398A JP2000007625A JP 2000007625 A JP2000007625 A JP 2000007625A JP 10171723 A JP10171723 A JP 10171723A JP 17172398 A JP17172398 A JP 17172398A JP 2000007625 A JP2000007625 A JP 2000007625A
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Kazuhiro Enomoto
和弘 榎本
Takashi Ogura
隆 小倉
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Sharp Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 良好な発光効率、高輝度発光、低駆動電圧で
の発光、水、酸素等の化学的劣化、光、熱等の物理的劣
化の小さい有機電界発光素子を提供すること。 【解決手段】 一般式(I) 【化1】 (式中、Ar1は置換されていてもよいアリール基、R
1は、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基又は低
級アルコキシ基、R2及びR3 は、同一又は異なって、
水素原子、低級アルキル基又は置換されていてもよいア
リール基であるか、R2とR3 とが互いに連結して環を
形成してもよく、nは0又は1である)で示されるトリ
ス(p−N−エナミン置換−アミノフェニル)アミン化
合物により上記課題を解決する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、トリス(p−N−
エナミン置換−アミノフェニル)アミン化合物及び有機
電界発光素子に関し、より詳細には、新規なトリス(p
−N−エナミン置換−アミノフェニル)アミン化合物及
びこの化合物を使用した駆動電圧が小さく、優れた熱安
定性、良好な発光効率を有する有機電界発光素子に関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年、電界発光素子(以下、EL素子)
は自己発光性のための視覚認識性が高く、かつ完全固体
素子であるため、耐衝撃性に優れる等の特徴を有してい
る。そのため、各種表示、バックライト用ランプ等への
利用が注目されている。このEL素子には、発光層に無
機化合物を用いる無機EL素子と有機化合物を用いる有
機EL素子とがある。なかでも、有機EL素子は、印加
電圧を低くし、かつフルカラー表示に対応することを目
的として、その実用化の研究が積極的になされている。
【0003】有機EL素子は、陽極/発光層/陰極を基
本構成とする。この基本構成に陽極より注入された正孔
を、効率よく発光層に伝達する機能を有する正孔注入輸
送層や、陰極より注入された電子を、効率よく発光層に
伝達する機能を有する電子注入輸送層を、適宜設けたも
のがよく知られている。このような構成の有機EL素子
の中で、特に優れた性能を有しているものとして、陽極
/正孔注入輸送層/発光層/陰極の構成を有する素子が
種々提案されている(米国特許第4,539,507号明細書、
同第4,769,292号明細書、特開昭59−194393号公報、同
昭63−295695号公報等)。
【0004】例えば、上記構成の有機EL素子において
は、正孔注入輸送層に薄膜形成性に優れた材料を用いる
ことにより、正孔注入輸送層と発光層との合計膜厚を1
50nm以下にすることが可能である。その結果、20
V以下の駆動電圧で高輝度の発光を得ることに成功して
いる。また、正孔注入輸送層に、電子を輸送せず電子に
対して障壁として作用するトリフェニルアミン系の正孔
注入輸送化合物を用いて、正孔注入輸送層と発光層との
界面に存在する電子の障壁により、発光層側の界面に電
子を蓄積して発光効率を高めることができる。さらに、
発光層の材料としてアルミニウム(III)錯体を用いる
ことによって、10V以下の低い印加電圧で、1000
cd/m2 の高輝度の緑色発色を、発光効率1.5ルー
メン/Vという高い値で実現している。
【0005】ところで、上記有機EL素子は、電子と正
孔との再結合を発光機構としているため、発光ダイオー
ドなみの低電圧駆動(2〜6V)が可能なはずである。
しかし、現状では駆動電圧はここまで低くはない。これ
は陽極と正孔注入輸送層との界面に存在する正孔注入に
対するエネルギー障壁、又は発光層と陰極との界面に存
在する電子注入に対するエネルギー障壁によるものであ
る。
【0006】さらに、一般的な発光の量子効率は、40
%程度が上限であるといわれているが、有機EL素子に
おいては、まだ3%程度である。このように、陽極/正
孔注入輸送層/発光層/陰極の構成を有する有機EL素
子においては、他の構成の有機EL素子に比べて、性能
は優れているが、駆動電圧及び発光効率については必ず
しも十分に、満足しうるものではない。
【0007】さらに、有機EL素子は、無機EL素子に
比べてその構成材料の劣化特性が良くなく、このため長
時間の使用に耐えられないとの問題点が未だ解決されて
いない。本発明は、上記課題に鑑みなされたものであ
り、水又は酸素等の物質による化学的及び光、熱等の物
理的劣化の小さい新規化合物を提供することと、この新
規化合物を用いて良好な発光効率、高輝度発光、低駆動
電圧で発光する有機EL素子を提供することを目的とし
ている。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記に述
べた優れた特徴を有する有機EL素子を開発すべく鋭意
研究を重ねた結果、陽極/正孔注入輸送層/発光層/陰
極を基本構成とし、少なくとも正孔注入輸送層に、下記
一般式(I)で示される化合物を用いた場合に、各界面
に存在する電荷注入のエネルギー障壁が緩和され、より
低い電圧での発光が可能となるとともに、高い発光効率
と長時間安定な有機EL素子が得られることを見い出
し、本発明を完成するに至った。
【0009】すなわち本発明によれば、一般式(I)
【0010】
【化6】
【0011】(式中、Ar1は置換されていてもよいア
リール基、R1は、水素原子、ハロゲン原子、低級アル
キル基又は低級アルコキシ基、R2及びR3 は、同一又
は異なって、水素原子、低級アルキル基又は置換されて
いてもよいアリール基であるか、R2とR3 とが互いに
連結して環を形成してもよく、nは0又は1である)で
示されるトリス(p−N−エナミン置換−アミノフェニ
ル)アミン化合物が提供される。
【0012】また、本発明によれば、上記一般式(I)
で示される化合物を含むことを特徴とする有機電界発光
素子が提供される。
【0013】
【発明の実施の態様】本発明のトリス(p−N−エナミ
ン置換−アミノフェニル)アミン化合物(以下、単にア
ミン化合物と称する)は、CA(Chemical Abstract) 、
JOC(Journal of Organic Chemistry)等にも記載され
ていない、新規な構造を有する化合物である。このアミ
ン化合物は、有機EL発光素子や電子供与体写真感光体
等における輸送材料として好適に使用することができ
る。また、有機EL素子等の輸送材料以外にも、光導電
体材料、導波路材料等にも好適に使用することができ
る。
【0014】本発明の式(I)のアミン化合物は、以下
の構造
【0015】
【化7】
【0016】(式中、Ar1は置換されていてもよいア
リール基、R1は、水素原子、ハロゲン原子、低級アル
キル基又は低級アルコキシ基、R2及びR3 は、同一又
は異なって、水素原子、低級アルキル基又は置換されて
いてもよいアリール基であるか、R2とR3 とが互いに
連結して環を形成してもよく、nは0又は1である)を
有する。
【0017】ここで、Ar1における「置換されていて
もよいアリール基」としては、炭素数6〜14のアリー
ル基及び置換基を有した炭素数6〜14のアリール基が
挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル
基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントラニル基等が
挙げられる。なかでも、合成の容易性及び材料の入手容
易性等から、フェニル基が好ましい。また、この「アリ
ール基の置換基」としては、低級アルキル基(例えば、
メチル基、エチル基、n−プロピル基)低級アルコキシ
基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ
基)、ジエチルアミノ基、メチレンジオキシ基、エチレ
ンジオキシ基等の電子供与性の基が挙げられる。置換基
の位置は、特に限定されない。例えばフェニル基の場
合、オルソ位、パラ位、メタ位のいずれでもよい。この
内、立体障害がなく、合成が容易であるパラ位又はメタ
位であることが好ましい。更に、置換基の数は、特に限
定されることなく、本発明のアミン化合物に要求される
性質に応じて適宜決定することができる。また、置換基
が複数個存在する場合、それら置換基は同一でも、互い
に異なっていてもよい。上記置換基は、比較的炭素数が
少なく、ベンゼン環のファンデルワールス半径を大きく
超えないものが好ましい。より具体的に「置換基を有し
たアリール基」としては、例えば、p−メチルフェニル
基、4−エチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル
基、4−エトキシフェニル基、2−クロロ−4−メチル
フェニル基、3,4−メチレンジオキシフェニル基等が
挙げられる。なお、Ar1にメチル基等のアルキル基を
使用した場合、融点及びガラス転移点が下がり、それに
付随して熱安定性が低下するため、Ar1は置換基を有
さないものを使用することが好ましい。
【0018】R1 における「ハロゲン原子」としては、
フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。R1
における「低級アルキル基又は低級アルコキシ基」とし
ては、ベンゼン環のファンデルワールス半径を大きく超
えないものが好ましい。より具体的には、炭素数1又は
2の基を使用することが好ましい。具体的には、メチル
基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基が挙げられる。
【0019】R2 及びR3 における「低級アルキル基」
としては、炭素数1〜3の基を使用することが好まし
い。具体的には、メチル基、エチル基、メトキシ基、エ
トキシ基、nープロピル基、iso−プロピル基が挙げ
られる。R2 及びR3 における「置換されていてもよい
アリール基」としては、炭素数が6〜12のアリール基
及び置換基を有した炭素数6〜12のアリール基が挙げ
られる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナ
フチル基、ビフェニリル基等が挙げられる。また、この
「アリール基の置換基」としては、メチル基、エチル
基、ジメチル基等の低級アルキル基が挙げられる。な
お、低級アルキル基で置換すれば、アミン化合物の分子
がとりえるコンフォメーション数が多くなり、分子のア
モルファス性が保持しやすくなるため好ましい。
【0020】また、R2 及びR3 は、互いに連結してベ
ンゼン環、ナフタレン環等の芳香族環、シクロヘキサン
のような脂環族環を形成してもよい。上記一般式(I)
のアミン化合物の内、有機EL素子に使用する観点か
ら、下記一般式(II)
【0021】
【化8】
【0022】(式中、Ar1は一般式(I)と同義であ
る)で示すアミン化合物が好ましい。一般式(II)で示
すアミン化合物は、非常に高いガラス転移温度と、基板
等に対する良好な密着性を有している。上記一般式
(I)のアミン化合物の内、有機EL素子に使用するの
に特に好ましいものを具体的に表1及び表2に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】本発明のアミン化合物は、新規化合物であ
る。また、本発明のアミン化合物は、以下の性質 1)高い融点及びガラス転移点Tg、 2)酸素、炭酸ガス、水蒸気等の作用を受けにくい、 3)10-4オーダーの非常に高い電荷輸送効率、 4)蒸着等により成膜した場合、得られた膜が透明で、
かつ平滑で密着性に優れており、高温及び高湿並びに低
温及び低湿下で安定なアモルファス状態を保持している を有している。特に、3)の性質により、従来より低い
電圧で発光を開始させることができる。また、4)の性
質により、高い安定性を有する有機EL素子を提供する
ことができる。
【0026】上記性質は、本発明のアミン化合物の分子
の以下の構造上の特徴 1)分子量が非常に大きく、組織一定の単量体構造を有
していること、 2)分子量の剛直性が大きいこと(その結果、高いガラ
ス転移点を実現できる)、 3)高い正孔輸送効率を有するエナミン結合を規則的に
3個有していること、 4)立体障害性を示すナフチル基、インデニル基、フェ
ニル基のようなバルキーな置換基が導入されていること
により、分子間の重なりが最適化されていること、 5)分子が取り得るコンフォメーション数が多く、分子
の再配列が妨げられていること、 6)分子が対称点から3方向に拡散する構造を有し、中
核の分子配列と周辺の分子配列が異なっていること に基づくものと考えられる。
【0027】なお、エナミン結合を有する化合物が高い
正孔輸送効率を有することは、シャープ技報、第23〜
26頁、No.62(1995)に記載されている。高
い正孔輸送効率を有する化合物を使用することにより、
発光が開始される電圧を低減することができる。更に、
発光体を選択することにより、4.0V程度の低い電圧
で発光させることができる。
【0028】なお、特開平8−48974号公報及び特
開平6−312981号公報にもトリスアミン化合物が
記載されている。しかし、これらトリスアミン化合物
は、本発明のアミン化合物と異なり、N−フェニル基の
ようなN−アリール基又はその置換体、N−カルバゾー
ル基を主体とし、エナミン結合を有していない。従っ
て、上記本発明のように電圧を低減することはできな
い。
【0029】本発明の一般式(I)のアミン化合物は、
例えば、テトラヒドロンレポートNo.138の第33
63頁、特開平6−1972号公報、特開平6−312
981号公報等に記載されている一般的な合成法を利用
して合成することができる。以下、本発明の一般式
(I)のアミン化合物の合成法を説明する。本発明の一
般式(I)のアミン化合物の合成法の基本は、トリフェ
ニルアミンのp位をハロゲンで置換する反応、第2級ア
ミノ置換体への変換反応、エナミン結合の生成に伴う脱
水反応及び副生成した水を反応系外に取り出す工程から
成り立っている。
【0030】まず、トリフェニルアミンのp位を置換す
るハロゲンとしては、反応性の点からヨウ素が好まし
い。次に、第2級アミノ置換体への変換反応は、以下の
ように行うことができる。即ち、上記ハロゲンで置換さ
れたトリフェニルアミンとアセトアミド誘導体とを、適
当な溶剤(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ニ
トロベンゼン、エチルアルコール、n−ブチルアルコー
ル)中で、銅とアルカリ(例えば、水酸化ナトリウム、
水酸化カリウム)を触媒として、反応させることにより
行われる。この反応は、一般にウルマン反応と称され、
N−アセチル−N−アリール置換トリフェニルアミンが
得られる。更に、得られたN−アセチル−N−アリール
置換トリフェニルアミンを酸(例えば、塩酸)を触媒と
して加水分解することにより、第2級アミノ置換体へ変
換することができる。なお、上記方法以外にも、ハロゲ
ンで置換されたトリフェニルアミンと第1級アミンとを
直接反応させて、第2級アミノ置換体を得ることも可能
である。
【0031】次いで、エナミン結合の形成は、上記第2
級アミノ置換体とアルデヒド誘導体とを、適当な溶剤
(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベン
ゼン、エチルアルコール、n−ブチルアルコール)中
で、p−トルエンスルホン酸のような触媒を用いて、反
応させることにより行うことができる。本発明の一般式
(I)のアミン化合物の合成法の一例を下記する。
【0032】まず、トリフェニルアミンと、KI、KI
3 及び氷酢酸とを下記反応式のように反応させて、ト
リフェニルアミンのパラ位をヨウ素で置換した中間体
(トリス(p−ヨードフェニル)アミン)を合成する。
【0033】
【化9】
【0034】次に、トリス(p−ヨードフェニル)アミ
ンとアセトアミド誘導体とを、適当な溶剤中、水酸化カ
リウム及び銅粉を触媒として、下記反応式のように加熱
しつつ反応させることにより、N,N′,N″−トリ−
(p−置換アミノフェニル)アミンを合成する。
【0035】
【化10】
【0036】上記反応式中、Ar1は一般式(I)と同
義である。得られたN,N′,N″−トリ−(p−置換
アミノフェニル)アミンを加水分解し、トリス(p−N
−Ar1置換アミノフェニル)アミンを得る。次に、ト
リス(p−N−Ar1置換アミノフェニル)アミンとア
ルデヒド誘導体とを下記反応式のように酸の存在下加熱
しつつ反応させ、水を除去することにより、一般式
(I)のアミン化合物を合成することができる。
【0037】
【化11】
【0038】上記反応式中、Ar1、R1 、R2 、R3
及びnは一般式(I)と同義である。なお、上記化合物
を有機EL素子に使用する場合、その純度が発光特性に
影響を与えるため、合成後、再結晶、昇華等の精製を繰
り返すことが好ましい。次に、本発明によれば、上記ア
ミン化合物を含む有機EL素子が提供される。
【0039】本発明の有機EL素子は、 (1)陽極/正孔注入輸送層/発光層/陰極又は (2)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子注入輸送層
/陰極 を基本構成とする。本発明の有機EL素子は、所望に応
じて電荷障壁層を設けてもよい。電荷障壁層には、正孔
障壁層及び電子障壁層の2つのタイプがある。この内、
材料及び効率的に電子障壁層の方が好ましい場合が多
い。
【0040】電荷障壁層を設ける位置については、電子
障壁層の場合には、発光層と正孔注入輸送層との間、特
に発光層の陽極側の表面に接するように設けることが好
ましい。一方、正孔障壁層の場合には、発光層と電子注
入輸送層との間、特に発光層の陰極側の表面に接するよ
うに設けることが好ましい。電荷障壁層を設けた具体例
としては、 (3)陽極/正孔注入輸送層/電子障壁層/発光層/陰
極 (4)陽極/正孔注入輸送層/電子障壁層/発光層/電
子注入輸送層/陰極 (5)陽極/正孔注入輸送層/電子障壁層/発光層/正
孔障壁層/電子注入輸送層/陰極 等が挙げられる。
【0041】本発明の有機EL素子は一般に基板上に支
持されていることが好ましい。基板としては、通常有機
EL素子に用いられているものであれば特に限定される
ものではなく、例えば、ガラス基板、透明プラスチック
基板、石英基板等が挙げられる。また、これらの基板上
に所望の絶縁層や、素子、回路等及び所望の絶縁層等が
形成されていてもよい。ただし、層構成が多層になる
と、有機EL素子の作製の制御が困難となるなどの問題
も増大するため、できるだけ簡単な素子構造となるよう
にすることが好ましい。
【0042】本発明における陽極としては、仕事関数の
大きい(4eV以上)金属、合金、導電性化合物、透明
導電性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするもの
等が挙げられる。このような物質の具体例としては、A
u等の金属、CuI、SnO、ZnO、ITO等の透明
導電性化合物が挙げられる。なかでも、陽極側から発光
を取り出すことが一般的であるため、透明導電性化合物
(特にITO)が好ましい。陽極は、上記金属等を蒸着
やスパッタリングなどの方法により薄膜状に形成するこ
とができる。陽極の膜厚は、使用する電極物質によって
異なるが、例えば500nm以下、10〜300nm程
度が好ましい。また、陽極のシート抵抗は数十Ω/□以
下が好ましい。
【0043】本発明における正孔注入輸送層は、陽極か
ら注入された正孔を、後述する発光層まで伝達する機能
を有している。この正孔注入輸送層には、上記の一般式
(I)で示される化合物を含有することができる。これ
ら化合物は、正孔の移動度が10-5(cm2 -1-1
以上のの電荷輸送効率を有しており、優れた熱安定性、
低い駆動電圧、非晶性の保持等からも、正孔注入輸送層
の主要材料として最適である。
【0044】なお、上記一般式(I)で示される化合物
は、任意に他の輸送材料と併用させることによって、さ
らに低い駆動電圧及び高い発光効率で高輝度の発光を有
する有機EL素子を得ることができる場合がある。この
ような輸送材料としては、従来から有機光半導体の正孔
注入輸送化合物として知られているもの、従来から有機
EL素子の正孔注入輸送化合物として知られているもの
等の中から選択して使用することができる。
【0045】例えば、トリアゾール誘導体(米国特許
3,112,197号明細書)、ピラゾリン誘導体(米
国特許第3,180,729号明細書)、アリールアミ
ン誘導体(米国特許第3,567,450号明細書、米
国特許第3,180,703号明細書)、ポリフィリン
化合物(特開昭63−295695号公報)、スチリル
アミン化合物(米国特許第4,127,412号明細
書、特開昭54−58445号公報、特開昭54−14
9634号公報)等が挙げられる。これら以外にも、ア
ミン置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリ
ルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾ
ン誘導体、スチルベン誘導体、オキサジアゾール誘導
体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導
体、ピラゾリン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、芳
香族第三級アミン化合物等が挙げられる。
【0046】なお、これら輸送材料を併用する場合に
は、本発明の一般式(I)の化合物に対して、数%以下
が好ましい。これ以上の量を加えると融点が降下するこ
とにより、熱的安定性の低下する恐れがあるからであ
る。また、正孔注入輸送層を2層として、一方の材料と
して上記輸送材料を用いてもよい。本発明における発光
層は、固体状態で発光性を有する有機化合物からなり、
少なくとも(a)電界印加時に、陽極又は正孔注入輸送
層より正孔を注入することができ、かつ陰極又は電子注
入輸送層より電子を注入することができる注入性能、
(b)注入した電荷(電子又は正孔、通常は正孔)を電
界の力で移動させる輸送機能又は(c)電子と正孔との
再結合の場を提供し、再結合により発光させる発光機能
を少なくとも有する必要がある。
【0047】発光層の膜厚は、10〜2000nm程度
の薄膜状のものが好ましい。なお、発光層は、正孔の注
入されやすさと、電子の注入されやすさとに違いあって
も良いし、電子と正孔の移動度で表される輸送機能に大
小があってもよいが、少なくともどちらか一方の電荷を
移動させることができることが好ましい。上記の注入機
能において、発光層のイオン化エネルギーは、適当な陽
極材料を選べば比較的正孔を注入しやすい点から、6.
0eV以下であることが好ましい。一方、電子親和力
は、適当な陰極材料を選べば比較的電子を注入しやすい
点から、2.5eV以下であることが好ましい。また、
上記発光機能については、固体状態での蛍光性が強いこ
とが望ましい。これは、このような発光層はそれを形成
する化合物自体、化合物の会合体又は結晶などの励起状
態を光に変換する能力が大きいからである。
【0048】上記発光層を構成する有機化合物は、特に
限定されるものではなく、公知の化合物の中から、任意
のものを選択して用いることができる。例えば、多環縮
合芳香族化合物;ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾー
ル、ベンゾオキサゾール等の蛍光増白剤;金属キレート
化オキシノイド化合物;スチリル化合物等が挙げられ
る。
【0049】多環縮合化合物としては、例えば、アント
ラセン、ナフタレン、フェナスレン、ピレン、ペリレン
骨格を含む縮合環発光化合物、8個の縮合環を含む他の
縮合環発光材料等を挙げることができる。蛍光増白剤と
しては、例えば、特開昭59−194393号公報に記
載のものを挙げることができる。
【0050】金属キレート化オキノイド化合物として
は、例えば、特開昭63−295695号に記載のもの
を挙げることができる。スチリル化合物としては、例え
ば、特開昭62−312356号又は特開昭63−80
257号等に記載されているものを挙げることができ
る。また、上記発光層は、任意に2層以上の積層構造を
とってもよい。例えば、米国特許4,769,292号
明細書に記載されているように、ホスト物質と蛍光物質
との積層構造でもよい。この場合のホスト物質は薄膜状
の層であって、発光層の機能のうち、注入輸送機能及び
発光機能の一部を受け持ち、蛍光物質は、ホスト物質の
層中に微量(数%)存在させ、電子と正孔の結合に応じ
て発光するという発光機能の一部のみを担う。また、発
光層に用いる蛍光物質は、薄膜形成性を有していない化
合物であってもよい。そのような化合物としては、例え
ば1,1,4,4−テトラフェニル−1,3−ブタジエ
ンが挙げられる。
【0051】これらの正孔輸送材料及び有機発光材料の
薄膜化の方法は、例えば、スピンコート法、キャスト
法、LB法、蒸着法等が挙げられる。なかでも、均質な
膜が得られやすく、かつピンホールが生成しにくいなど
の観点から、蒸着法が好ましい。蒸着法を用いる場合、
その蒸着条件は、発光層に用いる有機材料の昇華温度、
目的とする薄膜の状態、結晶性、結晶の配向などにより
異なるが、一般にボード加熱温度50〜500℃、真空
度10-5〜10-3Pa、蒸着速度0.01〜50nm/
秒、基板温度−50〜+300℃、膜厚5〜500nm
の範囲で適宜選択することが好ましい。
【0052】本発明における陰極としては、仕事関数の
小さい(4eV程度以下)金属、合金、導電性化合物、
透明導電性化合物及びこれらの混合物を電極物質とする
もの等が挙げられる。なお、一般的には、陽極、陰極の
いずれかが透明又は半透明であることが発光を取り出す
効率が良いため好ましい。このような物質の具体例とし
ては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネ
シウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、At/A
tO2、イツテルビウム、インジウム、ITOなどが挙
げられる。また、電極としてのシート抵抗は数十Ω/□
以下が好ましく、膜厚は500nm以下、更に10〜3
00nmの範囲で選択することが好ましい。上記物質
は、蒸着やスパッタリングなどの方法により薄膜状に形
成することができる。
【0053】本発明において、任意に設けることができ
る電子注入輸送層は、電子伝達化合物からなるものであ
って、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能
を有している。上記電子伝達化合物は、特に限定される
ものではなく、公知の化合物の中から適宜選択して用い
ることができる。このような化合物としては、ニトロ置
換フルオレノン化合物、チオピランジオキシド化合物、
ジフェニルキノン化合物、アントラキノジメタン誘導体
(特開昭57−149259号公報、特開昭58−55
450号公報)、フレオレニリデンメタン誘導体、アン
トラン誘導体(特開昭61−225151号公報、特開
昭61−233750号公報)等が挙げられる。
【0054】上記電子注入輸送層は、一般に、蒸着法に
より形成することができる。本発明において、任意に設
けることができる電荷障壁層のうち、電子障壁層は、発
光層より陽極側に出ていこうとする電子を発光層内に留
める役割を有しており、発光層の電子移動度より低い電
子移動度をもつ層であるか又は発光層の電子親和力より
小さい電子親和力をもつ層であることが好ましい。
【0055】電子障壁層には、下記一般式(III)及び
(IV)で表されるN,N’型芳香族エナミン化合物、一
般式(V)で表されるN,N’型芳香族アミン化合物、
トリフェニルジアミン系化合物(特開昭59−1943
93号公報、特開昭63−295695号公報)、無機
アモルファス化合物(特開平3−77299号公報)等
を含ませることができる。
【0056】
【化12】
【0057】(式中、R1 、R2 、R3 及びnは一般式
(I)の定義と同じ、Ar2は置換されていてもよいア
リール基又は置換されていてよいアラルキル基、R4
低級アルキル基又は置換されていてもよいアリール基、
5 は水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基又は低
級アルコキシ基、pは1〜3までの整数である) この内、一般式(III)〜(V)の化合物が、好ましい。
その理由は、本発明のアミン化合物の移動度と良好な相
関関係があること、イオン化エネルギー値が発光材料と
本発明のアミン化合物のエネルギー値の間にあるものが
多いためである。特に、一般式(III)の化合物が好まし
い。その理由は、一般式(III)の化合物は、ビス型エナ
ミン構造を有しており、(IV)と(V)の化合物より移
動度が少し高いからである。
【0058】上記一般式(III)〜(V)の定義中、Ar
2及びR4 のアリール基としては、フェニル、ナフチ
ル、アントラセニル等が挙げられる。Ar2のアラルキ
ル基としては、ベンジル等が挙げられる。アリール基又
はアラルキル基の置換基としては、ハロゲン原子、低級
アルキル基、低級アルコキシ基等が挙げられる。R4
びR5 の低級アルキル基としては、メチル基、エチル基
等が挙げられる。
【0059】R5 の低級アルコキシ基としては、メトキ
シ基、エトキシ基、メチレンジオキシ基、エチレンジオ
キシ基等が挙げられる。R5 のハロゲン原子としては、
フッ素、塩素、臭素等が挙げられる。一般式(III)の化
合物の具体例を表3に示す。
【0060】
【表3】
【0061】一般式(IV)の化合物の具体例を表4及び
5に示す。
【0062】
【表4】
【0063】
【表5】
【0064】一般式(V)の化合物の具体例を表6に示
す。
【0065】
【表6】
【0066】一方、正孔障壁層は発光層より陰極側に出
ていこうとする正孔を発光層中に留める役割を有してい
る。正孔障壁層の位置は、発光層と電子輸送層の間、特
に発光層の陰極側表面に接するように設けることによっ
て、発光効率が向上する。この正孔障壁層は、その正孔
移動度が発光層のそれより低い層か又は発光層のイオン
化エネルギーがより小さい層であることが好ましい。正
孔障壁層には、無機アモルファス化合物(特開平3−7
7299号公報)等が挙げられる。なお、この公報中で
は、N型のα−SiCが好ましいと記載されている。
【0067】本発明においては、さらに任意にバッファ
層を設けてもよい。バッファ層は、剥離現象の防止、さ
らには正孔又は電子の注入効率の向上を目的とする層で
ある。これらバッファ層は、各種フタロシアニン顔料、
各種有機金属化合物(例えばトリアルコキシアルミニウ
ム、ステアリン酸亜鉛、トリアセチルアセトンアルミニ
ウム、ジアセチルアセトンマグネシウム等)、カーボン
ブラック等が挙げられる。バッファ層の設ける位置は、
特に限定されるものではないが、例えば、特に剥離が起
こりやすい位置、上記(1)の構成の場合には、陽極−
正孔注入輸送層の間、発光層−陰極の間、上記(2)〜
(5)の構成の場合には、陽極−発光層の間、電子供与
体注入層−陰極の間に設けることが効果的である。バッ
ファ層の膜厚は、どの位置に設けるかにより異なるが、
例えば、10〜500nm程度が好ましい。次に、本発
明の有機EL素子を作成する好適な方法について説明す
る。
【0068】(1)の構成の場合 適当な基板上に所望の陽極材料からなる薄膜を500n
m以下、好ましくは10〜200nmの範囲になるよう
に、蒸着やスパッタリング等の方法により、陽極を作成
する。この後、正孔注入輸送層としての本発明のアミン
化合物を蒸着やスピンコート等の方法により陽極上に形
成する。この膜厚は、発光を基板側より取り出す場合に
は、透明率を高めるために、5〜200nm程度が好ま
しい。なお、成膜条件は、薄膜化する材料や不純物のド
ープ量等を考慮して、適宜決定される。
【0069】次いで、正孔注入輸送層の上に、有機発光
材料を、厚さ5〜1500nmの範囲で蒸着法等で積層
することにより発光層を形成する。次に、発光層上に、
陰極形成用材料を、蒸着やスパッタリング等の方法によ
り、厚さ500nm以下、好ましくは10〜300nm
の厚さで積層することにより陰極を形成する。上記方法
により有機EL素子を形成することができる。なお、各
層の形成順序を逆にしてもよい。
【0070】(2)の構成の場合 基本的には(1)の構成と同様である。但し、発光層上
に電子注入輸送層を形成する必要がある。電子注入輸送
層の形成方法は、有機系材料の場合は蒸着やスパッタリ
ング等の方法により、無機系材料(例えば、N型のα−
SiC)の場合は、プラズマCVDのような方法で形成
することができる。電子注入輸送層の厚さは、100n
m以下であれば、良好な発光機能を実現することができ
るため好ましい。
【0071】(3)の構成の場合 基本的には(1)の構成と同様である。但し、正孔注入
輸送層上に電子障壁層を形成する必要がある。電子障壁
層の形成方法は、有機系材料の場合は蒸着やスパッタリ
ング等の方法により、無機系材料の場合は、プラズマC
VDのような方法で形成することができる。電子障壁層
の厚さは、透過率を損なわないようにするために、5〜
200nmが好ましく、特に50nm以下が好ましい。
【0072】(4)及び(5)の構成の場合 (1)〜(3)の構成に準じて形成することができる。
このようにして得られた本発明の有機EL素子に、直流
電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性と
して駆動電圧1〜30V程度の電圧を印可すると、発光
が透明又は半透明の電極側より観察できる。なお、逆の
極性で電圧を印加しても発光は生じない。また、交流電
圧を印加する場合には、陽極が+、陰極が−の状態にな
ったときに発光する。なお、印加する交流電圧の波形は
任意でよい。
【0073】
【実施例】以下の本発明のアミン化合物の合成及び有機
電界発光素子の実施例を説明する。
【0074】合成例1(例示化合物I−2の合成) トリス(p−ヨードフェニル)アミンとアセトアニリド
とを、キシレン及びジメチルスルホキサイドの混合溶剤
中、水酸化カリウム粉末、少量の銅粉及び少量のクラウ
ンエーテル化合物の存在下で加熱攪拌した。反応終了
後、反応液をアルコール中に加えることにより灰緑色固
体を得た。この固体を塩化メチレンとn−ヘキサン(体
積比2:1)の混合溶剤を用いて、カラム分離を行い、
緑白色粉末を得た。この粉末をジオキサン中に溶かし、
少量の塩酸を加えて、加熱還流した。次いで、tert
−ブトキサイドを加えた後、活性炭処理を行うことによ
り不溶物等を吸着除去した。このようにしてトリス(p
−N−フェニルアミノフェニル)アミンを得た。
【0075】上記アミンは酸化されやすいので、直ちに
1−カルボアルデヒド−1,2,3,4−テトラヒドロ
ナフタレンと少量のp−トルエンスルホン酸を加え、ト
ルエンを滴下しつつディーンスターク管を用いて、生成
する水分を共沸により除去した。次いで、活性炭を加
え、熱時不溶物を除いた。トルエン等を留去した後、残
渣をアルコール中で加熱還流することにより黄褐色粉末
を得た。酢酸エチルにより再結晶し、黄色粉末である例
示化合物I−2を得た。例示化合物I−2の融点は19
8〜201℃、ガラス転移点は86.8℃であった。
【0076】上記黄色粉末を更に昇華精製した。得られ
た例示化合物I−2の融点は、208〜209.5℃と
10℃近く上昇した。一方、ガラス転移点は88.1℃
であり、殆ど変化しなかった。例示化合物I−2のIR
スペクトル図(KBrディスク使用)を図1に示した。
【0077】この図から分かるように、696cm-1、7
54cm-1、1500cm-1及び1591cm-1付近にモノ置
換体フェニルに基づく吸収が認められる。また、340
0cm -1の第2級アミンに基づく吸収、1703cm-1のア
ルデヒドに基づく吸収は消滅していた。
【0078】合成例2(例示化合物I−3) アセトアニリドの代わりにN−α−アセチルナフチルア
ミンを用いること以外は、合成例1と同様にして、蛍光
性の強い黄緑色の例示化合物I−3を得た。融点は22
4.5〜227℃、ガラス転移点は132.8℃であっ
た。
【0079】合成例3(例示化合物I−18) 合成例1で得られたトリス(p−N−フェニルアミノフ
ェニル)アミンと9−カルボアルデヒドフロレンとを反
応させること以外は、合成例1と同様にして、蛍光性の
強い黄緑色の例示化合物I−18を得た。なお、再結晶
はアセトリトリルを用いた。融点は237.5〜242
℃、ガラス転移点は147.3℃であった。
【0080】合成例4 上記合成例1〜3の方法に準じて上記表1及び2に示す
例示化合物を合成した。表1及び2に示す例示化合物
は、青色〜黄緑色の強い蛍光を有しており、ガラス転移
点が70℃以上であった。
【0081】実施例1〜5 陽極として、膜厚40nmの蒸着したITOからなる透
明電極が設けられているガラス基板(25mm×75m
m×1.1mm:HOYA社製)を透明支持基板とし、
これをエチルアルコール、次いでアセトンで超音波洗浄
した。この透明支持基板を乾燥窒素ガスで乾燥した。
【0082】支持基板を市販の真空蒸着装置の基板ホル
ダーに固定した。モリブデン製抵抗加熱ボートに、昇華
精製後の本発明のアミン化合物(例示化合物I−2、I
−3、I−8、I−18及びI−19)を200mg入
れた。別のモリブデン製抵抗加熱ボートに、昇華精製後
のトリス(8−キノリノール)アルミニウムを、さらに
別のモリブデン製抵抗加熱ボートに200mg入れた。
加熱ボートを真空蒸着装置に取りつけ、真空チャンバー
を1×10-4Paまで減圧した。
【0083】次に、本発明のアミノ化合物の入った加熱
ボートを230〜240℃まで加熱して、アミノ化合物
を蒸着速度0.1〜0.3nm/秒で透明支持基板に蒸
着し、膜厚50〜75nmの正孔注入輸送層を設けた。
この時の基板は室温とした。次いで、上記基板を真空チ
ャンバーから取り出すことなく、モリブデン製抵抗加熱
ボートに載せたAlq3 を250℃まで加熱して、蒸着
速度0.1〜0.25nm/秒で上記正孔注入輸送層上
に蒸着し、膜厚50nmの発光層を設けた。
【0084】この後、支持基板を真空チャンバーから取
り出し、発光層側にステンレススチール製のマスクを設
置し、再び基板ホルダーに固定した。次いで、タングス
テンバスケット銀(Ag)ワイヤー0.5g、モリブデ
ン製抵抗加熱ボートにマグネシウム(Mg)1gを入れ
た。真空チャンバー内を1×10-4Paまで減圧し、M
gとAgを同時蒸着することにより陰極を形成し、目的
とする有機EL素子を作成した。
【0085】得られた有機EL素子を、大気中で12V
の直流電圧を印加した時の電流、輝度及び発光開始電圧
について測定した。その結果を表7に示した。
【0086】
【表7】
【0087】なお、実施例1〜5の発光の色調は青緑で
あった。表7から明らかなように、本発明のアミン化合
物を正孔輸送材料として用いた有機EL素子は、非常に
低い電圧で発光が開始し、かつ輝度も高く、優れた有機
EL特性を有していることが分かった。
【0088】実施例6〜12 以下のように、電子障壁層を形成すること以外は、実施
例4と同様にして、有機EL素子を作成した。
【0089】正孔注入輸送層と発光層の間に、例示化合
物III −5及びIII −6(表3参照)、IV−10、15
及びIV−19(表4及び5参照)、V−3(表6参照)
からなる厚さ約20nmの電子障壁層を形成した。形成
条件は、真空チャンバー内を1×10-4Paまで減圧
し、基板温度を50℃とした。得られた有機EL素子
を、大気中で12Vの直流電圧を印加した時の電流、輝
度及び発光開始電圧について測定した。その結果を表8
に示した。
【0090】
【表8】
【0091】なお、実施例6〜12の発光の色調は青緑
であった。表8から明らかなように、電子障壁層を新た
に設けることにより、より高輝度、低発光開始電圧の有
機EL素子を得ることができた。
【0092】実施例12 実施例1及び4で作成した有機EL素子を温度20℃、
湿度50%の環境下で1ケ月保存した後、実施例1〜4
と同様の方法で、電流、輝度及び発光開始電圧を測定し
た。その結果、各測定値がほとんど変化しないことが確
認できた。
【0093】また、500cd/m2 で、24時間発光
させた。その結果、本発明のアミン化合物の結晶化によ
るボイド及び各層の剥離は発生せず、更に、ボイド及び
剥離に起因する発光の劣化も観察されなかった。この理
由は、本発明のアミン化合物が、融点が低いわりに高い
ガラス転移温度を有していること、構造的に結晶化しに
くい非対称構造を有すること、高い正孔輸送性を有して
いることが大きく関係していると考えられる。
【0094】なお、表1及び2に記載した本発明のアミ
ン化合物は、いずれも10-5(cm 2 -1-1)以上の
正孔輸送度(293K時)の高い正孔輸送効率を有して
いた。特に、例示化合物I−2、I−3、I−5、I−
7、I−18及びI−19は2.0×10-4以上の正孔
輸送度(293K時)の非常に高い正孔輸送効率を有し
ていた。
【0095】なお、中心部が本発明のアミン化合物に類
似する特開平6−312981号公報に記載された化合
物は、4.8×10-6(cm2 -1-1)程度の正孔輸
送度であり、本発明のアミノ化合物より1桁以上劣って
いた。
【0096】実施例13及び14 実施例1及び4で作成した有機EL素子を真空中で加熱
しながら10Vの電圧を印加し、EL発光が保持される
最大温度を測定した。更に、真空中、50℃での発光輝
度も測定した。その結果を、最大保持温度及び発光輝度
として表9に示した。
【0097】比較例1及び2 J. Appl. Phys. 65.3610頁(1989)等に記載されている代
表的な正孔輸送材料である、4,4’−ビス(N−(3
−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル
(TPDと称する)、4,4’−ビス(N−α−ナフチ
ル−N−フェニルアミノ)ビフェニル(NPDと称す
る)を昇華精製したものをそれぞれ比較例1及び比較例
2として使用した。この正孔輸送材料を真空チャンバー
内で支持基板上に蒸着させ、厚さ60nmの正孔注入輸
送層を形成すること以外は、実施例1〜5と同様にして
有機EL素子を作成した。得られた有機EL素子の最大
保持温度及び発光輝度を測定し、その結果を表9に示し
た。
【0098】
【表9】
【0099】表9から明らかなように、本発明の有機E
L素子は、高い熱安定性、高温時の高い発光特性を有し
ていることが分かった。
【0100】
【発明の効果】本発明のアミン化合物によれば、すぐれ
た正孔輸送性と電子輸送性両方の特性を有するため、電
極との密接性にすぐれ、かつ高輝度、高発光効率、長寿
命の特性を有する有機EL素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の例示化合物2のIRスペクトルであ
る。
フロントページの続き Fターム(参考) 3K007 AB00 AB02 AB03 AB06 AB12 AB13 AB15 CA01 CB01 DA00 DB03 EB00 FA01 4H006 AA01 AA03 AB92

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(I) 【化1】 (式中、Ar1は置換されていてもよいアリール基、R
    1は、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基又は低
    級アルコキシ基、R2及びR3 は、同一又は異なって、
    水素原子、低級アルキル基又は置換されていてもよいア
    リール基であるか、R2とR3 とが互いに連結して環を
    形成してもよく、nは0又は1である)で示されるトリ
    ス(p−N−エナミン置換−アミノフェニル)アミン化
    合物。
  2. 【請求項2】 Ar1のアリール基の置換基が、メチル
    基、エチル基、n−プロピル基、メトキシ基、エトキシ
    基、n−プロポキシ基、ジエチルアミノ基、メチレンジ
    オキシ基又はエチレンジオキシ基であり、R2及びR3
    のアリール基の置換基が、メチル基、エチル基又はジメ
    チル基である請求項1記載の化合物。
  3. 【請求項3】 一般式(II) 【化2】 (式中、Ar1は一般式(I)と同義である)で示され
    る請求項1記載の化合物。
  4. 【請求項4】 Ar1が、非置換のフェニル基又はナフ
    チル基である請求項1〜3いずれか1つに記載の化合
    物。
  5. 【請求項5】 請求項1記載の一般式(I)で示される
    化合物を含むことを特徴とする有機電界発光素子。
  6. 【請求項6】 有機電界発光素子が、基板上に、陽極、
    正孔注入輸送層、発光層及び陰極がこの順で積層されて
    なり、正孔注入輸送層が、一般式(I)で示される化合
    物を含有する請求項5記載の発光素子。
  7. 【請求項7】 有機電界発光素子が、基板上に、陽極、
    正孔注入輸送層、発光層、電子注入輸送層及び陰極がこ
    の順で積層されてなり、正孔注入輸送層が、一般式
    (I)で示される化合物を含有する請求項5の発光素
    子。
  8. 【請求項8】 電子障壁層が、発光層と面するように更
    に設けられてなる請求項6又は7に記載の発光素子。
  9. 【請求項9】 電子障壁層が、一般式(III) 【化3】 (式中、Ar2は置換されていてもよいアリール基又は
    置換されていてよいアラルキル基、R1は一般式(I)
    の定義と同じ、R4 は低級アルキル基又は置換されてい
    てもよいアリール基、R5 は水素原子、ハロゲン原子、
    低級アルキル基又は低級アルコキシ基、pは1〜3まで
    の整数である)、一般式(IV) 【化4】 (式中、R1 、R2 、R3 及びnは一般式(I)の定義
    と同じ、R5 、Ar2及びpは一般式(III)の定義と同
    じである)又は一般式(V) 【化5】 (式中、Ar1は一般式(I)の定義と同じ、R5 、A
    r2及びpは一般式(III)の定義と同じである)で示さ
    れる化合物を含有する請求項8の発光素子。
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