WO2024116847A1 - 非水電解質二次電池用負極活物質および非水電解質二次電池 - Google Patents

非水電解質二次電池用負極活物質および非水電解質二次電池 Download PDF

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実施形態の一例である非水電解質二次電池用負極活物質は、2種類以上のアルカリ金属元素およびAlを含むアルカリアルミネート相(31)と、アルカリアルミネート相(31)内に分散しているシリコン相(32)と、アルカリアルミネート相(31)およびシリコン相(32)からなる母粒子(33)の表面に形成された導電層(34)とを含む複合粒子(30)である。

Description

非水電解質二次電池用負極活物質および非水電解質二次電池
 本開示は、非水電解質二次電池用負極活物質および当該負極活物質を用いた非水電解質二次電池に関する。
 近年、リチウムイオン電池等の非水電解質二次電池は、車載用途、蓄電用途など、高容量を必要とする用途に広く用いられている。負極の主要構成要素である負極活物質は、電池の高容量化を図る上で重要な要素の1つであることから、負極活物質について種々の検討が行われている。その中で、理論容量密度が高い負極活物質として、シリコンを含有する材料(Si含有材料)の利用が注目されている。
 上記Si含有材料としては、SiO相中にナノシリコンが分散した材料(以下、「SiOx」とする)、Li2zSiO2+z(0<z<2)で表されるリチウムシリケート相中にナノシリコンが分散した材料(以下、「LSX」とする)などが知られている(LSXについて、例えば、特許文献1参照)。
国際公開第2016/35290号パンフレット
 LSXは、SiOxと比べて、不可逆容量が小さく、初期の充放電効率に優れる。しかし、LSX中のリチウムシリケート相は耐アルカリ性が低く、依然として初期の充電時にLiイオンと副反応を生じることがあり、さらなる初期充放電効率の改善が求められていた。
 本発明者らは、負極活物質として、耐アルカリ性の高いリチウムアルミネート相中にナノシリコンを分散させた材料を用いることで、充電初期の副反応を低減し、高い充放電効率を改善することに成功したが、一方で放電容量の低下という新たな課題が生じた。この放電容量の低下は、当該材料を用いて水を分散媒とする負極合剤スラリーを調製したときに、リチウムアルミネート相に含まれるLiが溶出してスラリーのpHを上昇させ、その結果、Siの酸化が進行したことが大きな要因であると考えられる。
 本開示に係る非水電解質二次電池用負極活物質は、2種類以上のアルカリ金属元素およびAlを含むアルカリアルミネート相と、アルカリアルミネート相内に分散しているシリコン相とを含む複合粒子であることを特徴とする。
 本開示に係る非水電解質二次電池は、正極と、負極と、非水電解質とを備え、負極は、上記負極活物質を含む。
 本開示に係る負極活物質によれば、負極合剤スラリーのpH上昇を抑制でき、高容量の非水電解質二次電池を実現できる。また、本開示に係る負極活物質を用いた非水電解質二次電池は、例えば、LSXを用いた場合と比較して初期充放電効率が高い。
実施形態の一例である非水電解質二次電池の断面図である。 実施形態の一例である負極活物質の粒子断面を示す図である。
 上記のように、リチウムアルミネート相中にナノシリコンを分散させた複合材料は、LSXと比較して耐アルカリ性が高く初期充放電効率に優れるが、水を分散媒とする負極合剤スラリーを調製したときに、スラリーのpHが上昇してSiの酸化が生じる。Siの酸化は、下記式の反応により進行し、スラリーのpHが高いほど促進される。このようにSiが充放電に寄与しないSiOに変化することで放電容量が低下する。
   Si+2OH→SiO+H+2e
   2HO+2e→2OH+H
 なお、リチウムアルミネート相中のLi量を多くすると、粒子内部の空隙率は低下するが、負極合剤スラリーのpHは大きく上昇し、放電容量の低下がより顕著になる。
 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ナノシリコンの分散相として、2種類以上のアルカリ金属元素を添加したアルカリアルミネート相を適用することにより、スラリーのpH上昇を抑制できることを見出した。スラリーのpH上昇が抑制された結果、Siの酸化が抑制されて放電容量が大きく向上する。また、アルカリ金属の添加量を多くしても、pHの上昇が効果的に抑制され、高容量を確保できる。
 以下、図面を参照しながら、本開示に係る非水電解質二次電池用負極活物質および当該負極活物質を用いた非水電解質二次電池の実施形態の一例について詳細に説明する。なお、以下で説明する複数の実施形態、変形例の各構成要素を選択的に組み合わせてなる形態は本開示の範囲に含まれている。
 以下で説明する実施形態では、巻回型の電極体14が有底円筒形状の外装缶16に収容された円筒形電池である非水電解質二次電池10を例示するが、電池の外装体は円筒形の外装缶に限定されない。本開示に係る非水電解質二次電池の他の実施形態としては、角形の外装缶を備えた角形電池、コイン形の外装缶を備えたコイン形電池、および金属層および樹脂層を含むラミネートシートで構成された外装体を備えたパウチ型電池が挙げられる。また、電極体は巻回型に限定されず、複数の正極と複数の負極がセパレータを介して交互に積層された積層型の電極体であってもよい。
 図1は、実施形態の一例である非水電解質二次電池10の軸方向断面を模式的に示す図である。図1に示すように、非水電解質二次電池10は、巻回型の電極体14と、非水電解質と、電極体14および非水電解質を収容する外装缶16とを備える。電極体14は、正極11、負極12、およびセパレータ13を有し、正極11と負極12がセパレータ13を介して渦巻き状に巻回された巻回構造を有する。外装缶16は、軸方向一端側が開口した有底円筒形状の金属製容器であって、外装缶16の開口は封口体17によって塞がれている。以下では、説明の便宜上、電池の封口体17側を上、外装缶16の底部側を下とする。
 非水電解質は、イオン伝導性(例えば、リチウムイオン伝導性)を有する。非水電解質は、液状の電解質(電解液)であってもよく、固体電解質であってもよい。
 液状の電解質(電解液)は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水溶媒には、例えば、エステル類、エーテル類、ニトリル類、アミド類、およびこれらの2種以上の混合溶媒等が用いられる。非水溶媒の一例としては、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、およびこれらの混合溶媒等が挙げられる。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体(例えば、フルオロエチレンカーボネート等)を含有していてもよい。電解質塩には、例えば、LiPF等のリチウム塩が使用される。
 固体電解質としては、例えば、固体状又はゲル状のポリマー電解質、無機固体電解質等が使用される。ポリマー電解質は、例えば、リチウム塩とマトリックスポリマー、あるいは非水溶媒とリチウム塩とマトリックスポリマーとを含む。マトリックスポリマーとしては、例えば、非水溶媒を吸収してゲル化するポリマー材料が使用される。ポリマー材料としては、例えば、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂等が使用される。無機固体電解質としては、例えば、全固体リチウムイオン二次電池等で公知の材料(例えば、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質、ハロゲン化物系固体電解質等)が使用される。
 電極体14を構成する正極11、負極12、およびセパレータ13は、いずれも帯状の長尺体であって、渦巻状に巻回されることで電極体14の径方向に交互に積層される。負極12は、リチウムの析出を防止するために、正極11よりも一回り大きな寸法で形成される。即ち、負極12は、正極11よりも長手方向および幅方向(短手方向)に長く形成される。セパレータ13は、少なくとも正極11よりも一回り大きな寸法で形成され、例えば、正極11を挟むように2枚配置される。電極体14は、溶接等により正極11に接続された正極リード20と、溶接等により負極12に接続された負極リード21とを有する。
 正極11は、正極芯体と、正極芯体上に配置された正極合剤層とを有する。正極芯体には、アルミニウム、アルミニウム合金などの正極11の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。正極合剤層は、正極活物質、導電剤、および結着剤を含み、正極リード20が溶接される露出部を除く正極芯体の両面に形成されることが好ましい。正極11は、例えば、正極芯体上に正極活物質、導電剤、および結着剤等を含む正極合剤スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧縮して正極合剤層を正極芯体の両面に形成することにより作製できる。
 正極合剤層は、正極活物質として、粒子状のリチウム金属複合酸化物を含む。リチウム金属複合酸化物は、Liの他に、Co、Mn、Ni、Al等の金属元素を含有する複合酸化物である。リチウム金属複合酸化物を構成する金属元素は、例えばMg、Al、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、Sb、W、Pb、およびBiから選択される少なくとも1種である。中でも、Co、Ni、およびMnから選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
 正極合剤層に含まれる導電剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー、グラフェン等の炭素材料が例示できる。正極合剤層に含まれる結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の含フッ素樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリオレフィン等が例示できる。また、これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩、ポリエチレンオキシド(PEO)等が併用されてもよい。
 負極12は、負極芯体と、負極芯体上に配置された負極合剤層とを有する。負極芯体には、銅、銅合金などの負極12の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極合剤層は、負極活物質、結着剤、および必要により導電剤を含み、負極リード21が溶接される露出部を除く負極芯体の両面に形成されることが好ましい。負極12は、負極芯体の表面に負極活物質、および結着剤等を含む負極合剤スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧縮して負極合剤層を負極芯体の両面に形成することにより作製できる。
 負極合剤層に含まれる結着剤には、正極11の場合と同様に、フッ素樹脂、PAN、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリオレフィン等を用いることもできるが、好ましくはスチレン-ブタジエンゴム(SBR)を用いる。また、負極合剤層は、CMC又はその塩、ポリアクリル酸(PAA)又はその塩、ポリビニルアルコール(PVA)などを含むことが好ましい。中でも、SBRと、CMC又はその塩、PAA又はその塩を併用することが好適である。負極合剤層には、CNT等の導電剤が含まれていてもよい。
 セパレータ13には、イオン透過性および絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布等が挙げられる。セパレータ13の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、セルロースなどが好適である。セパレータ13は、単層構造であってもよく、複層構造を有していてもよい。また、セパレータ13の表面には、アラミド樹脂等の耐熱性の高い樹脂層が形成されていてもよい。
 セパレータ13と正極11および負極12の少なくとも一方との界面には、無機物のフィラーを含むフィラー層が形成されていてもよい。無機物のフィラーとしては、例えば、Ti、Al、Si、Mg等の金属元素を含有する酸化物、リン酸化合物などが挙げられる。フィラー層は、当該フィラーを含有するスラリーを正極11、負極12、又はセパレータ13の表面に塗布して形成することができる。
 電極体14の上下には、絶縁板18,19がそれぞれ配置される。図1に示す例では、正極リード20が絶縁板18の貫通孔を通って封口体17側に延び、負極リード21が絶縁板19の外側を通って外装缶16の底部側に延びている。正極リード20は封口体17の内部端子板23の下面に溶接等で接続され、内部端子板23と電気的に接続された封口体17の天板であるキャップ27が正極端子となる。負極リード21は外装缶16の底部内面に溶接等で接続され、外装缶16が負極端子となる。
 外装缶16と封口体17の間にはガスケット28が設けられ、電池内部の密閉性が確保される。外装缶16には、側面部の一部が内側に張り出した、封口体17を支持する溝入部22が形成されている。溝入部22は、外装缶16の周方向に沿って環状に形成されることが好ましく、その上面で封口体17を支持する。封口体17は、溝入部22と、封口体17に対して加締められた外装缶16の開口端部とにより、外装缶16の上部に固定される。
 封口体17は、電極体14側から順に、内部端子板23、下弁体24、絶縁部材25、上弁体26、およびキャップ27が積層された構造を有する。封口体17を構成する各部材は、例えば円板形状又はリング形状を有し、絶縁部材25を除く各部材は互いに電気的に接続されている。下弁体24と上弁体26は各々の中央部で接続され、各々の周縁部の間には絶縁部材25が介在している。異常発熱で電池の内圧が上昇すると、下弁体24が上弁体26をキャップ27側に押し上げるように変形して破断することにより、下弁体24と上弁体26の間の電流経路が遮断される。さらに内圧が上昇すると、上弁体26が破断し、キャップ27の開口部からガスが排出される。
 以下、図2を参照しながら、負極活物質について詳説する。
 図2は、実施形態の一例である複合粒子30の断面を示す模式図である。負極12は、負極活物質として、少なくとも複合粒子30を含む。負極活物質は、実質的に複合粒子30のみで構成されていてもよいが、好ましくは複合粒子30および炭素材料を含む。負極活物質として、複合粒子30と炭素材料を併用すると、高容量と優れたサイクル特性を両立しやすくなる。複合粒子30と炭素材料を併用する場合、複合粒子30の含有率は、負極活物質の総質量に対して、1質量%以上50質量%以下が好ましく、2質量%以上30質量%以下がより好ましく、3質量%以上20質量%以下が特に好ましい。
 炭素材料としては、黒鉛、易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)等が例示できる。中でも、充放電の安定性に優れ、不可逆容量も少ない黒鉛が好ましい。黒鉛は、塊状人造黒鉛(MAG)、黒鉛化メソフェーズカーボンマイクロビーズ(MCMB)等の人造黒鉛、および鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛等の天然黒鉛のいずれであってもよい。
 図2に示すように、複合粒子30は、アルカリアルミネート相31と、アルカリアルミネート相31内に分散しているシリコン相32とを含む。また、複合粒子30は、アルカリアルミネート相31およびシリコン相32からなる母粒子33の表面に形成された導電層34を含むことが好ましい。母粒子33は、アルカリアルミネート相31のマトリックス中に微細なシリコン相32が分散した海島構造を有する。詳しくは後述するが、アルカリアルミネート相31は、2種類以上のアルカリ金属元素とAlを含む。ナノシリコンの分散相として、2種類以上のアルカリ金属元素が含有されたアルカリアルミネート相31を適用することにより、負極合剤スラリーのpH上昇が抑制され、電池の放電容量が大きく向上する。
 アルカリアルミネート相31は、LSX粒子中のリチウムシリケート相よりも耐アルカリ性に優れている。このため、負極活物質として複合粒子30を用いた場合、LSXを用いた場合と比較して初期充電時におけるLiイオンとの副反応が抑制され、副反応に伴う負極活物質の劣化および劣化に伴う初期容量の低下が抑制される。即ち、初期の充放電効率の低下が効果的に抑制される。
 複合粒子30は、実質的に、リチウムシリケートおよびSiOを含まなくてもよい。複合粒子30は、リチウムシリケートおよびSiOを含んでもよいが、少量であることが望ましい。複合粒子30中のリチウムシリケートおよびSiOを合計した含有率は、例えば、10質量%以下である。
 アルカリアルミネート相31およびシリコン相32(母粒子33)を構成する酸素以外の元素の総質量に対するAlの含有率(MAl)は、4.0質量%以上20.0質量%以下が好ましく、8.0質量%以上15.0質量%以下がより好ましい。また、母粒子33を構成する酸素以外の元素の総質量に対するアルカリ金属元素の含有率は、0.5質量%以上10.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以上7.0質量%以下がより好ましい。Alの含有率(MAl)およびアルカリ金属元素の含有率が上記範囲内である場合、安定性とイオン伝導性に優れるアルカリアルミネート相が得られやすい。なお、上記の安定性は、化学的安定性(耐アルカリ性)および熱的安定性の両方を含む。
 Alの含有率(MAl)に対するアルカリ金属元素の含有率の比率は、アルカリアルミネート相31の安定性、イオン導電性、および空隙率の低減等の観点から、0.1以上2.0以下が好ましく、0.15以上1.0以下がより好ましく、0.2以上0.5以下が特に好ましい。また、Alの含有率(MAl)に対するOの含有率(MO)の比率(MO/MAl)は、例えば、0.5以上4.0以下である。
 母粒子33を構成する酸素以外の元素の総質量に対するSiの含有率(MSi)は、50質量%以上95質量%以下が好ましく、70質量%以上90質量%以下がより好ましい。この場合、高容量と高耐久の両立を実現しやすい。Siの含有率(MSi)は、主にシリコン相32を構成するSiの量である。
 複合粒子30(母粒子33)のX線回折(XRD)測定により得られるXRDパターンにおいて、2θ=x°付近に、アルカリアルミネート相に由来するピークが観測される。x°は、例えば、含有されるアルカリ金属元素がLi、Na、およびKから選択される2種類である場合、19.4°、22.3°、31.9°、34.3°、および37.5°からなる群より選択される少なくとも1つである。XRD測定のX線には、CuのKα線が用いられる。なお、本明細書中、x°付近であるとは、例えば、x±1°の範囲内であることを意味する。
 アルカリアルミネート相31内には、結晶性の高い微細なAl相が分散していてもよい。Al相は、例えば、アルカリアルミネート相31のマトリクス中に島状に分布している。この場合、シリコン相32の膨張収縮に伴うアルカリアルミネート相31の膨張や割れが抑制されやすく、サイクル特性の改善効果が高まる。Al相が存在する場合、X線回折測定により得られる複合粒子のX線回折パターンにおいて、2θ=25.4°付近に、Al相に由来するピークが観測され得る。複合粒子30中のAl相の含有率は、例えば、10質量%以下である。
 複合粒子30の母粒子33は、海部であるアルカリアルミネート相31内に、島部である微細なシリコン相32が分散した海島構造を有する。アルカリアルミネート相31は良好なイオン伝導性を有し、アルカリアルミネート相31を介してシリコン相32によるLiイオンの吸蔵および放出がスムーズに行われる。また、アルカリアルミネート相31によりシリコン相32の膨張収縮の影響が緩和される。アルカリアルミネート相31は、非晶質であってもよく、この場合、シリコン相32の膨張収縮の影響をより効果的に緩和できる。
 複合粒子30では、例えば、アルカリアルミネート相31とシリコン相32とを含む複数の一次粒子が凝集して二次粒子を構成している。複合粒子30(二次粒子)の体積基準のメジアン径(D50)は、例えば、1μm以上25μm以下であり、4μm以上15μm以下であってもよい。この場合、充放電に伴う複合粒子30の体積変化による応力を緩和しやすく、良好なサイクル特性を得やすくなる。複合粒子30の表面積も適度な大きさになり、非水電解質との副反応による容量低下も抑制される。
 複合粒子30の体積基準のメジアン径(D50)とは、体積基準の粒度分布において頻度の累積が粒径の小さい方から50%となる粒径を意味する。複合粒子30の粒度分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、マイクロトラック・ベル株式会社製、MT3000II)を用い、水を分散媒として測定できる。母粒子33の表面が導電層34で覆われている場合、導電層34の厚みは、実質上、複合粒子30の粒径に影響しない程度に薄いため、導電層34を含む複合粒子30の粒径を複合粒子30のD50とみなしてよい。
 複合粒子30は、以下の手法により、電池から取り出すことができる。まず、完全放電状態の電池を解体して負極を取り出し、負極を無水エチルメチルカーボネート又はジメチルカーボネートで洗浄し、非水電解質成分を除去する。負極芯体である銅箔から負極合剤層を剥がし取り、合剤層を乳鉢で粉砕して試料粉を得る。次に、試料粉を乾燥雰囲気中で1時間乾燥し、弱く煮立てた6M塩酸に10分間浸漬して、複合粒子以外に由来する元素を取り除く。次に、イオン交換水で試料粉を洗浄し、濾別して200℃で1時間乾燥する。その後、酸素雰囲気中、900℃に加熱して導電層34を除去することで、母粒子33だけを単離することができる。なお、完全放電状態とは、放電深度(DOD)が90%以上(充電状態(SOC)が10%以下)の状態である。
 [アルカリアルミネート相]
 アルカリアルミネート相31は、2種類以上のアルカリ金属元素およびAlを含む複合酸化物の相である。アルカリ金属元素は周期表において第1族に属する元素であって、アルカリアルミネート相31には、Li、Na、K、Rb、Cs、およびFrからなる群より選択される少なくとも2種の元素が含有されている。中でも、Li、Na、Kが好ましい。即ち、アルカリアルミネート相31に含まれるアルカリ金属元素は、Li、Na、およびKからなる群より選択される少なくとも2種であることが好ましい。この場合、負極合剤スラリー中に溶出する金属元素量がより効果的に低減され、放電容量の改善効果が高まる。
 アルカリアルミネート相31は、アルカリ金属元素として、LiおよびNaの少なくとも一方を含むことが好ましい。即ち、アルカリアルミネート相31は、LiおよびNaの一方を含み、LiおよびNaの他方およびKから選択される1種以上を含むことが好ましい。アルカリアルミネート相31には、3種類以上のアルカリ金属元素が含まれていてもよいが、2種類のアルカリ金属元素が含まれていれば、上記効果が得られる。アルカリアルミネート相31が2種類のアルカリ金属元素を含む場合、アルカリ金属元素は、LiおよびNaであることが好ましい。
 アルカリアルミネート相31がアルカリ金属元素としてLiおよびNaを含む場合、母粒子33を構成する酸素以外の元素の総質量に対する、Naの含有率(MNa)とLiの含有率(MLi)の比(MNa/MLi)は、0.2以上100以下であることが好ましい。MNa/MLiは、0.4以上60以下がより好ましく、0.85以上55.5以下がより好ましく、0.9以上40以下、又は0.95以上30以下、又は1.0以上15.0以下であってもよい。MNa/MLiが当該範囲内であれば、負極合剤スラリーのpHの上昇がより効果的に抑制され、放電容量が大きく向上する。
 アルカリアルミネート相31には、アルカリ金属元素、Al、Oに加えて、さらに他の元素Mが含有されていてもよい。元素Mの一例としては、Ca、Mg、Zr、Fe、Si、B、P、およびLaからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。中でも、SiおよびBの少なくとも一方が好ましく、Bがより好ましい。アルカリアルミネート相31は、アルカリ金属元素、Al、Oの他に、SiおよびBの少なくとも一方を含んでいてもよく、実質的にBのみを含んでいてもよい。元素Mの添加により、例えば、アルカリアルミネート相31の安定性とイオン伝導性が向上し、また複合粒子30の空隙率を低減できる。
 元素Mは、化合物を形成していてもよい。当該化合物としては、元素Mの種類に応じて、例えば、元素Mの酸化物でもよく、元素Mのアルミネートでもよい。母粒子33を構成する酸素以外の元素の総量に対する元素Mの含有率は、例えば、1.0質量%10.0質量%以下である。アルカリアルミネート相31は、さらに、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)等の元素を微量含んでもよい。
 アルカリアルミネート相31がBを含む場合、母粒子33を構成する酸素以外の元素の総質量に対する、Alの含有率(MAl)とBの含有率(MB)の比(MAl/MB)は、1.0以上30以下であることが好ましく、1.0以上20以下がより好ましく、1.0以上10.0以下が特に好ましい。Al/MBが当該範囲内であれば、空隙率の低減効果がより顕著になる。
 複合粒子30は、初回充放電前において粒子内部の空隙率が25%以下であることが好ましく、20%以下がより好ましい。空隙率は、複合粒子30の粒子断面に占める空隙35の割合を意味し、粒子断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像から求められる。空隙率の下限値は特に限定されないが、一例としては1%である。空隙35は、例えば、母粒子33の全体に略均一に存在している。1つ1つの空隙35は小さく、シリコン相32と同様に、多数の空隙35がアルカリアルミネート相31の全体に分散するように存在していてもよい。
 複合粒子30の空隙率は、画像解析ソフト(例えば、imageJ)を用いて、粒子断面のSEM画像を2値化処理して空隙35の領域を抽出し、空隙35の総面積を粒子断面の総面積で除することにより算出される。詳しくは後述するが、複合粒子30の空隙率は、複合粒子30の焼成温度、焼成時に粒子に加える圧縮力、元素M(特にB)の添加などにより制御できる。
 複合粒子30は、例えば、300HV以上のビッカース硬度を有する。導電層34はビッカース硬度に略影響しないため、複合粒子30のビッカース硬度と母粒子33のビッカース硬度は実質的に同じである。複合粒子30が高いビッカース硬度を有する場合、充放電時のシリコン相32の体積変化を抑制しやすく、粒子構造の劣化を低減できる。その結果、サイクル特性の改善効果がより顕著になる。複合粒子30のビッカース硬度は、350HV以上、400HV以上、又は500HV以上であってもよい。
 複合粒子30のビッカース硬度は、ビッカース硬度計を用いて測定できる。具体的には、複合粒子30を熱硬化性樹脂に埋め込み、400番の研磨紙で研磨して複合粒子30の断面を表出させる。さらに2000番の研磨紙、バフ研磨で断面を鏡面仕上げする。荷重1kg、保持時間15秒の条件でビッカース硬度を測定する。複合粒子30のビッカース硬度の上限値は特に限定されないが、一例としては1500HVである。
 アルカリアルミネート相31中のアルカリ金属元素、Al、および元素Mの含有率は、例えば、負極合剤層の断面を分析することにより測定することができる。まず、完全放電状態の電池を分解し、負極を取り出し、負極を無水エチルメチルカーボネート又はジメチルカーボネートで洗浄し、非水電解質成分を除去し、乾燥させた後、クロスセクションポリッシャ(CP)を用いて負極合剤層の断面を得る。次に、SEMを用いて負極合剤層の断面を観察する。
 アルカリアルミネート相31における各元素の含有量は、以下のいずれかの手法により測定される。また、各元素の含有量からアルカリアルミネート相31の組成が分かる。
 [エネルギー分散型X線(EDX)]
 負極合剤層の反射電子像の断面画像から、粒子の最大径が5μm以上の複合粒子30を無作為に10個選び出し、それぞれについてEDXによる元素のマッピング分析を行う。画像解析ソフトを用いて対象となる元素の含有面積を算出する。観察倍率は2000~20000倍が望ましい。粒子10個に含まれる所定の元素の含有面積の測定値を平均する。得られた平均値から対象となる元素の含有量が算出される。
 以下に、望ましい断面SEM-EDX分析の測定条件を示す。
  加工装置:JEOL製、SM-09010(Cross Section Polisher)
  加工条件:加速電圧6kV
  電流値:140μA
  真空度:1×10-3~2×10-3Pa
  測定装置:HITACHI製、電子顕微鏡SU-70
  分析時加速電圧:10kV
  フィールド:フリーモード
  プローブ電流モード:Medium
  プローブ電流範囲:High
  アノード Ap.:3
  OBJ Ap.:2
  分析エリア:1μm四方
  分析ソフト:EDAX Genesis
  CPS:20500
  Lsec:50
  時定数:3.2
 [オージェ電子分光(AES)]
 負極合剤層の反射電子像の断面画像から、粒子の最大径が5μm以上の複合粒子30を無作為に10個選び出し、それぞれについてAES分析装置(例えば、日本電子社製、JAMP-9510F)を用いて元素の定性定量分析を行う。測定条件は、例えば、加速電圧10kV、ビーム電流10nA、分析領域20μmφとすればよい。粒子10個に含まれる所定の元素の含有量を平均して含有量が算出される。
 なお、EDX分析やAES分析は、複合粒子30の断面の周端縁から1μm以上内側の範囲に対して行われる。
 [誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP)]
 複合粒子30の試料を、加熱した酸溶液(フッ化水素酸、硝酸、および硫酸の混酸)中で全溶解し、溶液残渣の炭素を濾過して除去する。その後、得られた濾液をICPで分析して、各元素のスペクトル強度を測定する。続いて、市販されている元素の標準溶液を用いて検量線を作成し、複合粒子30に含まれる各元素の含有量を算出する。
 各元素の定量は、電子マイクロアナライザー(EPMA)、レーザアブレーションICP質量分析(LA-ICP-MS)、X線光電子分光分析(XPS)等を用いて行うこともできる。また、複合粒子30に含まれるアルカリ金属元素、Al、およびBの含有量は、JIS R3105(1995)(ほうけい酸ガラスの分析方法)に準拠して定量分析してもよい。Caの含有量は、JIS R3101(1995)(ソーダ石灰ガラスの分析方法)に準拠して定量分析してもよい。
 複合粒子30に含まれる炭素含有量は、炭素・硫黄分析装置(例えば、株式会社堀場製作所製のEMIA-520型)を用いて測定できる。磁性ボードに試料を測り取り、助燃剤を加え、1350℃に加熱された燃焼炉(キャリアガス:酸素)に挿入し、燃焼時に発生した二酸化炭素ガス量を赤外線吸収により検出する。検量線は、例えば、Bureauof Analysed Samples.Ltd製の炭素鋼(炭素含有量0.49%)を用いて作成し、試料の炭素含有量を算出する(高周波誘導加熱炉燃焼-赤外線吸収法)。
 複合粒子30に含まれる酸素含有量は、酸素・窒素・水素分析装置(例えば、株式会社堀場製作所製のEGMA-830型)を用いて測定できる。Niカプセルに試料を入れ、フラックスとなるSnペレットおよびNiペレットとともに、電力5.75kWで加熱された炭素坩堝に投入し、放出される一酸化炭素ガスを検出する。検量線は、標準試料Yを用いて作成し、試料の酸素含有量を算出する(不活性ガス融解-非分散型赤外線吸収法)。
 複合粒子30中のシリコン相32を構成するSi量は、Si-NMRを用いて定量することができる。以下に、望ましいSi-NMRの測定条件を示す。
  測定装置:バリアン社製、固体核磁気共鳴スペクトル測定装置(INOVA‐400)
  プローブ:Varian 7mm CPMAS-2
  MAS:4.2kHz
  MAS速度:4kHz
  パルス:DD(45°パルス+シグナル取込時間1Hデカップル)
  繰り返し時間:1200sec~3000sec
  観測幅:100kHz
  観測中心:-100ppm付近
  シグナル取込時間:0.05sec
  積算回数:560
  試料量:207.6mg
 [シリコン相]
 シリコン相32は、Si単体の相であり、電池の充放電に伴ってLiイオンの吸蔵と放出を繰り返す。シリコン相32が関与するファラデー反応によって容量が発現する。シリコン相32は、容量が大きいため、充放電に伴う膨張と収縮の程度も大きいが、シリコン相32はアルカリアルミネート相31内に分散している。このため、シリコン相32の膨張と収縮による応力はアルカリアルミネート相31によって緩和される。
 シリコン相32は、例えば、複数の結晶子で構成されている。複合粒子30(母粒子33)のXRD測定により得られるSi(111)面の回折ピークの半値幅からシェラーの式により算出されるシリコン相32の結晶子サイズは、30nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましく、15nm以下が特に好ましい。この場合、充放電に伴うシリコン相32の膨張収縮による複合粒子30の体積変化を小さくでき、サイクル特性の改善効果がより顕著になる。
 シリコン相32の結晶子サイズの下限値は、特に限定されないが、一例としては1nmである。シリコン相32の好適な結晶子サイズの一例は、1nm以上15nm以下であり、5nm以上11nm以下であってもよい。シリコン相32の結晶子サイズが1nm以上である場合、例えば、シリコン相32の表面積を小さく抑えることができるため、不可逆容量の生成を伴うシリコン相32の劣化が生じ難くなる。結晶子サイズが15nm以下である場合は、シリコン相32の膨張収縮を均一化しやすく、複合粒子30に生じる応力が効果的に緩和される。
 シリコン相32は、例えば、少なくとも初回充電前において粒子状である。粒子状のシリコン相32の平均粒径は、500nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、50nm以下が特に好ましい。シリコン相32の平均粒径は、初回充電後において、400nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましい。シリコン相32を微細化して分散させることにより、充放電時の複合粒子30の体積変化が小さくなり、複合粒子30の構造安定性がさらに向上する。シリコン相32の平均粒径は、SEMにより得られる複合粒子30の断面画像を用いて測定される。具体的には、シリコン相32の平均粒径は、任意の100個のシリコン相32の最大径を平均して求められる。
 複合粒子30におけるシリコン相32の含有率は、高容量化の観点から、30質量%以上が好ましく、35質量%以上がより好ましく、55質量%以上が特に好ましい。シリコン相32の含有率の上限は、良好なサイクル特性確保の観点から、95質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下が特に好ましい。この場合、アルカリアルミネート相31に覆われずに複合粒子30の表面に露出するシリコン相32が減少して、非水電解質とシリコン相32の副反応も抑制される。
 [導電層]
 複合粒子30は、上記の通り、アルカリアルミネート相31とシリコン相32からなる母粒子33の表面に形成された導電層34を有することが好ましい。導電層34は、母粒子33の表面の少なくとも一部を覆い、好ましくは実質的に母粒子33の表面全体を覆っている。導電層34は、導電性材料を含む薄膜層であって、複合粒子30の導電性を向上させる。導電層34の厚みは、複合粒子30の粒径に影響しない程度に薄いことが好ましい。導電層34の厚みは、導電性の確保とLiイオンの拡散性を考慮すると、1nm以上200nm以下が好ましく、5nm以上100nm以下がより好ましい。導電層34の厚みは、SEM又は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた複合粒子の断面観察により計測できる。
 導電層34を構成する導電性材料は、導電性の炭素材料が好ましい。炭素材料としては、非晶質カーボン、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化メソフェーズカーボン等)、ソフトカーボン、ハードカーボンなどを用いることができる。中でも、母粒子33の表面を覆う薄い導電層34を形成しやすい点で、非晶質カーボンが好ましい。非晶質としては、カーボンブラック、ピッチの焼成物、コークス、活性炭等が挙げられる。
 [複合粒子の製造方法]
 複合粒子30は、例えば、下記第1から第5工程を含む製造方法により製造される。
 第1工程:原料であるアルカリアルミネート(以下、「原料アルミネート」する)を得る工程。
 第2工程:原料アルミネートと原料シリコンとを複合化してアルカリアルミネート相31内にシリコン相32を分散させて複合中間体を得る工程。
 第3工程:複合中間体を熱処理して、アルカリアルミネート相31とアルカリアルミネート相31内に分散しているシリコン相32とを含む焼結体を得る工程。
 第4工程:焼結体を粉砕して複合粒子30を得る工程。
 第5工程:アルカリアルミネート相31とシリコン相32からなる母粒子33の表面に導電層34を形成する工程。
 [第1工程]
 第1工程は、例えば、アルミニウム化合物と、アルカリ金属元素を含有する化合物と、必要により、元素Mを含有する化合物とを混合して混合物を得る工程と、混合物を焼成して原料アルミネートを得る工程とを含む。焼成は、例えば、酸化雰囲気中で行われる。焼成温度は、好ましくは400℃以上、1200℃以下であり、より好ましくは700℃以上、1100℃以下である。
 アルミニウム化合物の例としては、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸アルミニウム等が挙げられる。アルミニウム化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。アルカリ金属元素を含有する化合物の例としては、炭酸リチウム、酸化リチウム、水酸化リチウム、水素化リチウム、炭酸ナトリウム、酸化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム、炭酸カリウム、酸化カリウム、水酸化カリウム、水素化カリウム等が挙げられる。
 元素Mを含有する化合物としては、例えば、ホウ素化合物を用いることが好ましい。ホウ素化合物の例としては、酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ砂、四ホウ酸ナトリウム等が挙げられる。ホウ素化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
 第1工程では、原料アルミネートの作製過程でアルカリ金属元素を含有する化合物と反応しなかったアルミニウム化合物が原料アルミネート中に残存し得る。アルカリ金属元素を含有する化合物に対してアルミニウム化合物の使用量が多い場合、アルミニウム化合物が残存する場合がある。原料アルミネート中に残存するアルミニウム化合物がAlである場合、最終的に得られる複合粒子30において、アルカリアルミネート相31内に分散するAl相が形成され得る。
 [第2工程]
 第2工程では、例えば、原料アルミネートと原料シリコンとの混合物にせん断力を付与しながら混合物を粉砕して微粒子化された複合中間体を得る。一例としては、原料アルミネートと原料シリコンとを所定の質量比で混合し、ボールミル等の粉砕装置を用いて混合物を微粒子化する方法が挙げられる。
 原料シリコンには、平均粒径が数μmから数十μm程度のシリコンの粗粒子を用いればよいシリコン粒子は、XRDパターンのSi(111)面に帰属される回析ピークの半値幅からシェラーの式により算出されるシリコン相32の結晶子サイズが15nm以下になるように準備されることが好ましい。なお、粉砕装置を使用せずに、シリコンナノ粒子と、原料アルミネートのナノ粒子とを合成し、これらを混合してもよい。
 [第3工程]
 第3工程では、例えば、微粒子化された複合中間体にホットプレス等で圧力を印加しながら複合中間体を焼成して焼結体を得る。複合中間体に加える圧力は、例えば、100MPa以上であり、100MPa以上、300MPa以下であってもよい。第3工程の圧力が高いほど、複合粒子30の空隙率は小さくなる傾向にある。複合中間体の焼成は、不活性雰囲気(例えば、アルゴン、窒素等の雰囲気)中で行われることが好ましい。第3工程の焼成条件は、シリコン相32の結晶子にも影響し、一般的に焼成温度が高くなるほど、結晶子サイズは大きくなる。
 焼成温度の一例は、450℃以上1000℃以下である。焼成温度が当該範囲内であれば、結晶性の低いアルカリアルミネート相31内に微小なシリコン相32が分散した構造を形成しやすい。原料アルミネートは、当該温度では安定であり、シリコンとほとんど反応しない。焼成温度は、好ましくは550℃以上950℃以下であり、より好ましくは650℃以上900℃以下である。焼成時間は、例えば、1時間以上10時間以下である。空隙率を25%以下に低減するためには、650℃以上の温度で焼成することが好ましい。
 [第4工程]
 第4工程は、母粒子33が所望の粒度分布を有するように粉砕する工程である。母粒子33は、例えば、D50が1μm以上25μm以下となるように粉砕される。
 [第5工程]
 本実施形態の複合粒子30の製造工程には、母粒子33の表面に導電層34を形成する第5工程が含まれる。導電層34を構成する導電性材料は、上記のように、導電性の炭素材料が好ましい。炭素材料で母粒子33の表面を被覆する方法としては、アセチレン、メタン等の炭化水素ガスを原料に用いるCVD法、石炭ピッチ、石油ピッチ、フェノール樹脂等を母粒子33と混合し、加熱して炭化させる方法等が例示できる。また、カーボンブラックを母粒子33の表面に付着させてもよい。
 第5工程では、例えば、母粒子33と炭素材料の混合物を不活性雰囲気(例えば、アルゴン、窒素等の雰囲気)中で、700℃以上950℃以下で加熱することにより、母粒子33の表面に導電層34が形成された複合粒子30を得る。
 以下、実施例により本開示をさらに説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
 <実施例1>
 [複合粒子の調製]
 (第1工程)
 Alと、NaCOと、LiCOと、Bとを混合し、当該混合物を、空気中、800℃で10時間焼成して、原料アルミネートを得た。第1工程では、アルカリアルミネート相の各構成元素が表1に示す元素比となるように、Al、NaCO、LiCO、およびB混合比を調整した。また、原料アルミネートはD50が10μmになるように粉砕した。
 (第2工程)
 原料シリコン(3N、D50:10μm)と、第1工程で得た原料アルミネートとを混合した。第2工程では、複合粒子を構成する各元素が表1に示す元素比となるように、原料シリコンと原料アルミネートの混合比を調整した。混合物を遊星ボールミル(フリッチュ社製、P-5)のポット(SUS製、容積:500mL)に充填し、ポットにSUS製ボール(直径20mm)を24個入れて蓋を閉め、不活性雰囲気中で、200rpmで混合物を50時間粉砕処理した。
 (第3工程)
 第2工程で得た粉末状の混合物を不活性雰囲気中で取り出し、不活性雰囲気中において、ホットプレス機を用いて200MPaの圧力を印加しながら700℃で4時間焼成することにより、混合物の焼結体を得た。
 (第4工程)
 第3工程で得られた焼結体を粉砕し、40μmのメッシュに通して、アルカリアルミネート相にシリコン相が分散した母粒子を得た。
 (第5工程)
 石炭ピッチ(JFEケミカル社製、MCP250)と、第4工程で得られた母粒子とを混合した。当該混合物を、不活性雰囲気中、800℃で5時間焼成し、母粒子の表面に導電性炭素材料を含む導電層を形成した。導電層の被覆量は、母粒子と導電層との総質量に対して5質量%とした。その後、篩を用いて、導電層を有するD50が5μmの複合粒子を得た。
 XRD測定により得られた上記複合粒子のXRDパターンにおいて、アルカリアルミネート相およびシリコン相に由来するピークを確認した。上記方法により求めた複合粒子中のシリコン相の結晶子サイズは、10nmであった。また、上記方法により、アルカリアルミネート相およびシリコン相を構成する酸素以外の元素の総質量に対する、Na、Li、Al、B、Siの含有率を求め、測定結果を表1に示した。
 [負極の作製]
 上記複合粒子と黒鉛とを、5:95の質量比で混合したものを負極活物質として用いた。負極活物質と、CMCのNa塩と、SBRとを、97.5:1:1.5の質量比で含む負極合剤に水を添加して攪拌し、負極合剤スラリーを調製した。次に、銅箔からなる負極芯体の表面に負極合剤スラリーを塗布し、塗膜を乾燥後、圧延して、銅箔の両面に密度1.5g/cmの負極合剤層が形成された負極を作製した。なお、負極合剤スラリーのpHを測定し、測定結果を表1に示した。
 [正極の作製]
 コバルト酸リチウムと、アセチレンブラックと、PVDFとを、95:2.5:2.5の質量比で含む正極合剤にN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加して攪拌し、正極合剤スラリーを調製した。次に、アルミニウム箔からなる正極芯体の表面に正極合剤スラリーを塗布し、塗膜を乾燥後、圧延して、アルミニウム箔の両面に密度3.6g/cmの正極合剤層が形成された正極を作製した。
 [非水電解質の調製]
 エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを、3:7の体積比(25℃)で混合した溶媒に、LiPFを1.0mol/L濃度で溶解して、非水電解質を調製した。
 [非水電解質二次電池の作製]
 セパレータを介して、リードを取り付けた正極と負極を巻回し、巻回型の電極体を作製した。電極体をアルミニウムラミネートフィルム製の外装体内に挿入し、105℃で2時間真空乾燥後、非水電解質を注入し、外装体の開口部を封止して、非水電解質二次電池を得た。
 <実施例2~4>
 上記第1工程において、複合材料を構成する各元素の含有率が表1に示す値となるように、NaCOとLiCOの混合比をそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を合成し、非水電解質二次電池を作製した。
 <比較例1>
 上記第1工程において、NaCOを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を合成し、非水電解質二次電池を作製した。
 <比較例2>
 上記第1工程において、LiCOを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を合成し、非水電解質二次電池を作製した。
 [放電容量の測定]
 評価対象の電池を、25℃の温度環境下、1It(800mA)の電流で電圧が4.2Vになるまで定電流充電を行った後、4.2Vの電圧で電流が1/20It(40mA)になるまで定電圧充電を行った。10分間の休止後、1It(800mA)の電流で電圧が2.75Vになるまで定電流放電を行った。このときの放電容量を求めて、測定結果を表1に示した。表1に示す結果は、比較例1の電池の放電容量を100としたときの相対値である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 表1に示すように、実施例の電池はいずれも、比較例の電池と比べて高容量であった。即ち、ナノシリコンの分散相としてNaとLiを含むアルカリアルミネート相を有する複合材料は、アルカリ金属としてLiのみを含むリチウムアルミネート相(比較例1)や、Naのみを含むナトリウムアルミネート相(比較例2)を分散相とする複合材料を用いる場合よりも、電池の高容量化に寄与する。特に、Liの含有率に対するNaの含有率の比率(Na/Li)が1.0以上10.0以下である場合、pHの上昇がより効果的に抑制され、放電容量が大きく向上する。
 なお、実施例の複合材料において、Na、Liの一方に代えて他のアルカリ金属(例えば、K)を添加した場合も、上記実施例と同様の結果が得られると想定される。
 本開示は、以下の実施形態によりさらに説明される。
 構成1:2種類以上のアルカリ金属元素およびAlを含むアルカリアルミネート相と、前記アルカリアルミネート相内に分散しているシリコン相とを含む複合粒子である、非水電解質二次電池用負極活物質。
 構成2:前記アルカリ金属元素は、Li、Na、およびKからなる群より選択される少なくとも2種である、構成1に記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
 構成3:前記アルカリ金属元素は、LiおよびNaである、構成2に記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
 構成4:前記アルカリアルミネート相および前記シリコン相を構成する酸素以外の元素の総質量に対する、Naの含有率(MNa)とLiの含有率(MLi)の比(MNa/MLi)が、0.2以上100以下である、構成3に記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
 構成5:前記アルカリアルミネート相は、さらに、SiおよびBの少なくとも一方を含む、構成1~4のいずれか1つに記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
 構成6:前記アルカリアルミネート相は、少なくともBを含み、前記アルカリアルミネート相および前記シリコン相を構成する酸素以外の元素の総質量に対する、Alの含有率(MAl)とBの含有率(MB)の比(MAl/MB)が、1.0以上30以下である、構成5に記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
 構成7:前記複合粒子は、初回充放電前において粒子内部の空隙率が25%以下である、構成1~6のいずれか1つに記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
 構成8:前記複合粒子は、前記アルカリアルミネート相および前記シリコン相からなる母粒子の表面に形成された導電層を含む、構成1~7のいずれか1つに記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
 構成9:正極と、負極と、非水電解質とを備え、前記負極は、構成1~8のいずれか1つに記載の負極活物質を含む、非水電解質二次電池。
 10 非水電解質二次電池、11 正極、12 負極、13 セパレータ、14 電極体、16 外装缶、17 封口体、18,19 絶縁板、20 正極リード、21 負極リード、22 溝入部、23 内部端子板、24 下弁体、25 絶縁部材、26 上弁体、27 キャップ、28 ガスケット、30 複合粒子、31 アルカリアルミネート相、32 シリコン相、33 母粒子、34 導電層
 

Claims (9)

  1.  2種類以上のアルカリ金属元素およびAlを含むアルカリアルミネート相と、
     前記アルカリアルミネート相内に分散しているシリコン相と、
     を含む複合粒子である、非水電解質二次電池用負極活物質。
  2.  前記アルカリ金属元素は、Li、Na、およびKからなる群より選択される少なくとも2種である、請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
  3.  前記アルカリ金属元素は、LiおよびNaである、請求項2に記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
  4.  前記アルカリアルミネート相および前記シリコン相を構成する酸素以外の元素の総質量に対する、Naの含有率(MNa)とLiの含有率(MLi)の比(MNa/MLi)が、0.2以上100以下である、請求項3に記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
  5.  前記アルカリアルミネート相は、さらに、SiおよびBの少なくとも一方を含む、請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
  6.  前記アルカリアルミネート相は、少なくともBを含み、
     前記アルカリアルミネート相および前記シリコン相を構成する酸素以外の元素の総質量に対する、Alの含有率(MAl)とBの含有率(MB)の比(MAl/MB)が、1.0以上30以下である、請求項5に記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
  7.  前記複合粒子は、初回充放電前において粒子内部の空隙率が25%以下である、請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
  8.  前記複合粒子は、前記アルカリアルミネート相および前記シリコン相からなる母粒子の表面に形成された導電層を含む、請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
  9.  正極と、負極と、非水電解質とを備え、
     前記負極は、請求項1~8のいずれか一項に記載の非水電解質二次電池用負極活物質を含む、非水電解質二次電池。
     
PCT/JP2023/041049 2022-11-30 2023-11-15 非水電解質二次電池用負極活物質および非水電解質二次電池 WO2024116847A1 (ja)

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