WO2024116288A1 - リチウムイオン二次電池用樹脂膜及びその製造方法並びにリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用樹脂膜及びその製造方法並びにリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

リチウムイオン二次電池用樹脂膜は、平均細孔径が0.35μm~30μmであり、細孔径の標準偏差が0.1μm~20μmであり、炭素材料の含有率が5質量%以下であるものである。リチウムイオン二次電池用樹脂膜の製造方法は、耐熱性樹脂又はその前駆体と加熱消失性樹脂粒子と溶剤とを少なくとも含有するスラリーを塗布して塗膜を形成することと、前記塗膜を加熱して樹脂膜を形成することと、前記加熱消失性樹脂粒子を加熱により前記樹脂膜から除去することと、を含む。

Description

リチウムイオン二次電池用樹脂膜及びその製造方法並びにリチウムイオン二次電池
 本開示は、リチウムイオン二次電池用樹脂膜及びその製造方法並びにリチウムイオン二次電池に関する。
 リチウムイオン二次電池は高エネルギー密度の二次電池であり、その特性を活かして、ノートパソコン、携帯電話等のポータブル機器の電源に使用されている。リチウムイオン二次電池は、近年、小型化が進む電子機器用電源、電力貯蔵用電源、電気自動車用電源等としても注目されており、さらなる高エネルギー密度のリチウムイオン二次電池が要求されている。
 特に、負極材料にリチウム金属を用いたリチウムイオン二次電池は、グラファイト等の既存の負極材料に比較して高いエネルギー密度を有する。そのため、二次電池の負極材料として、盛んに研究されている(例えば、特許文献1又は特許文献2参照)。
特開2007-157496号公報 特開2019-175568号公報
 負極材料にリチウム金属を用いた場合、充放電に伴い、その表面にリチウムデンドライトが生じ、負極と正極との短絡が発生することがある。特許文献1に記載の発明では、ポリラジカル化合物を含有するポリラジカル化合物層を用いることで、デンドライトの発生による短絡の抑制を試みている。また、特許文献2に記載の発明では、負極にリチウムイオンが通過可能な金属からなる被覆層を設けることで、デンドライトの発生による短絡の抑制を試みている。
 しかしながら、特許文献1又は2に記載の方法では、デンドライトの発生による短絡を抑制するためにポリラジカル化合物層又はリチウムイオンが通過可能な金属からなる被覆層を設ける必要があり、煩雑である。そのため、より簡便なデンドライトの抑制手段が望まれていた。
 本開示は上記従来の事情に鑑みてなされたものであり、金属リチウムのデンドライトの発生を抑制可能なリチウムイオン二次電池用樹脂膜及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本開示は、このリチウムイオン二次電池用樹脂膜を用いたリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
 前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
  <1> 平均細孔径が0.35μm~30μmであり、細孔径の標準偏差が0.1μm~20μmであり、炭素材料の含有率が5質量%以下であるリチウムイオン二次電池用樹脂膜。
  <2> 細孔の最大径が0.5μm~70μmである<1>に記載のリチウムイオン二次電池用樹脂膜。
  <3> 細孔の最小径が0.2μm~10μmである<1>又は<2>に記載のリチウムイオン二次電池用樹脂膜。
  <4> ポリイミド、ポリアミドイミド及びポリベンゾオキサゾールからなる群より選択される少なくとも1種を含む<1>~<3>のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用樹脂膜。
  <5> <1>~<4>のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用樹脂膜を備えるリチウムイオン二次電池。
  <6> リチウム金属を含有する負極を備える<5>に記載のリチウムイオン二次電池。
  <7> 耐熱性樹脂又はその前駆体と加熱消失性樹脂粒子と溶剤とを少なくとも含有するスラリーを塗布して塗膜を形成することと、前記塗膜を加熱して樹脂膜を形成することと、前記加熱消失性樹脂粒子を加熱により前記樹脂膜から除去することと、を含むリチウムイオン二次電池用樹脂膜の製造方法。
  <8> 前記耐熱性樹脂又はその前駆体が、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリアミドイミド、ポリアミドイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール及びポリベンゾオキサゾール前駆体からなる群より選択される少なくとも1種を含む<7>に記載のリチウムイオン二次電池用樹脂膜の製造方法。
  <9> 前記加熱消失性樹脂粒子が、ポリメチルメタクリレート粒子、ポリエチレン粒子及びポリプロピレン粒子からなる群より選択される少なくとも1種を含む<7>又は<8>に記載のリチウムイオン二次電池用樹脂膜の製造方法。
  <10> 前記加熱消失性樹脂粒子の除去が、前記塗膜を加熱して樹脂膜を形成する際に一括して行われる<7>~<9>のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用樹脂膜の製造方法。
 本開示によれば、金属リチウムのデンドライトの発生を抑制可能なリチウムイオン二次電池用樹脂膜及びその製造方法を提供することができる。また、本開示によれば、このリチウムイオン二次電池用樹脂膜を用いたリチウムイオン二次電池を提供することができる。
実施例の方法により製造された樹脂膜1の平面写真を示す。 一実施形態に係るリチウムイオン二次電池を示す斜視図である。 リチウムイオン二次電池11における電極群12の一実施形態を示す分解斜視図である。 実施例の方法により製造された樹脂膜2の平面写真を示す。 充電後のリチウムイオン二次電池についての樹脂膜1を用いた電極表面の平面写真を示す。 充電後のリチウムイオン二次電池についての樹脂膜2を用いた電極表面の平面写真を示す。
 以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
 本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
 本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
 本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
 本開示において、各成分には、該当する物質が複数種含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
 本開示において、各成分に該当する粒子には、複数種の粒子が含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
 本開示において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
 本開示において「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されていてもよく、二以上の層が着脱可能であってもよい。
 本開示において「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリロニトリル」はアクリロニトリル及びメタクリロニトリルの少なくとも一方を意味する。
 本開示において、層又は膜の平均厚みは、対象となる層又は膜の5点の厚みを測定し、その算術平均値として与えられる値とする。
 層又は膜の厚みは、マイクロメーター等を用いて測定することができる。本開示において、層又は膜の厚みを直接測定可能な場合には、マイクロメーターを用いて測定する。一方、1つの層の厚み又は複数の層の総厚みを測定する場合には、電子顕微鏡を用いて、測定対象の断面を観察することで測定してもよい。
<リチウムイオン二次電池用樹脂膜>
 本開示のリチウムイオン二次電池用樹脂膜(以下、本開示の樹脂膜と称することがある。)は、平均細孔径が0.35μm~30μmであり、細孔径の標準偏差が0.1μm~20μmであり、炭素材料の含有率が5質量%以下であるものである。
 本発明者等は、樹脂膜の平均細孔径及び細孔径の標準偏差並びに炭素材料の含有率を上記範囲内とすることで、当該樹脂膜をリチウムイオン二次電池に適用した場合にリチウム金属のデンドライトの発生を抑制可能になることを見出し、本発明を完成させた。本開示の樹脂膜は、リチウム金属を含有する負極を備えるリチウムイオン二次電池に特に好適に使用される。
 図1は、後述の実施例の方法により製造された樹脂膜1の平面写真を示す。図1の平面写真は、株式会社キーエンスのVHX-950Fを用い、倍率50倍の条件で撮影されたものである。
 図1から明らかなように、本開示の樹脂膜には、径の異なる細孔が複数存在することがわかる。
 ここで、本開示において「平均細孔径」とは、下記方法により算出された値をいう。
 樹脂膜の平面写真を倍率50倍~20000倍の条件で撮影し、視野中の任意の10個の細孔の長手方向の長さを求める。ここで、細孔の長手方向の長さとは、細孔の長さが最大となる方向における細孔の長さをいう。
 樹脂膜の平面写真を倍率50倍の条件で撮影するための装置としては、上述のキーエンス社のVHX-950Fが挙げられる。樹脂膜の平面写真を倍率20000倍の条件で撮影するための装置としては、例えば、株式会社日立ハイテク製のSU-8220が挙げられる。
 得られた10個の細孔の径の長手方向の長さの算術平均を、平均細孔径とする。径の長手方向の長さを求めるための細孔を選択する基準は特に限定されず、視野内で観察される細孔のうち、最も大きな細孔又はそれと略同等の大きさの細孔、及び、最も小さな細孔又はそれと略同等の大きさの細孔を含むように選択すればよい。
 また、本開示において「細孔径の標準偏差」は、上述のようにして求められた10個の細孔の径の長手方向の長さから下記式に基づいて求められた値をいう。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000001
 上記式中、sは細孔径の標準偏差を示し、xはn番目の細孔の細孔径を示し、xaveは10個の細孔の細孔径の平均値を示す。
 なお、「平均細孔径」及び「細孔径の標準偏差」を算出する際に、倍率50倍の視野内においては、視野内で観察される細孔のうち、長手方向の長さが1μm未満の細孔は考慮しないものとする。また、倍率20000倍の視野内においては、視野内で観察される細孔のうち、長手方向の長さが30nm未満の細孔は考慮しないものとする。
 本開示の樹脂膜の平均細孔径は0.35μm~30μmであり、1μm~29μmであってもよく、5μm~27μmであってもよく、10μm~25μmであってもよい。
 本開示の樹脂膜の細孔径の標準偏差は0.1μm~20μmであり、1μm~20μmであってもよく、5μm~19μmであってもよく、10μm~19μmであってもよい。
 本開示の樹脂膜の細孔の最大径は、0.5μm~70μmであってもよく、10μm~60μmであってもよく、20μm~55μmであってもよい。
 本開示の樹脂膜の細孔の最小径は、0.2μm~10μmであってもよく、2μm~8μmであってもよく、3μm~6μmであってもよい。
 本開示の樹脂膜の平均厚みは、その用途によって適宜選択でき、例えば、1μm~30μmであってもよく、3μm~25μmであってもよく、5μm~20μmであってもよい。
 本開示の樹脂膜を構成する樹脂のガラス転移温度は、耐熱性の観点から、250℃~450℃であってもよい。
 本開示において、樹脂のガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置(例えば、PerkinElmer社製、DMA8000)を用いて測定された値をいう。幅5mm×厚み2mm×長さ50mmの板状の試験片に対して、試験モード:3点曲げモード、測定温度:25℃~330℃、昇温速度:10℃/min、試験周波数:1Hzの条件で動的粘弾性測定を実施し、得られたチャートからガラス転移温度を求める。
 本開示の樹脂膜におけるカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、炭素繊維(カーボンファイバー)等の炭素材料の含有率は、5質量%以下であり、3質量%以下であってもよく、1質量%以下であってもよく、0.1質量%以下であってもよく、0質量%であってもよい。
 カーボンブラックの具体例としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等が挙げられる。黒鉛の具体例としては、天然黒鉛、人造黒鉛等が挙げられる。
 カーボンナノチューブの具体例としては、単層のカーボンナノチューブ、2層のカーボンナノチューブ、多層のカーボンナノチューブ等が挙げられる。
 炭素繊維の具体例としては、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、気相法炭素繊維(VGCF(登録商標))等が挙げられる。
 本開示の樹脂膜を構成する樹脂は特に限定されるものではない。
 樹脂膜を構成する樹脂としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン等が挙げられる。
 これら樹脂は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
 これらの中でも、後述の製造方法により所定の平均細孔径及び細孔径の標準偏差を容易に実現可能であることから、熱硬化性樹脂の硬化物が好ましく、ポリイミド、ポリアミドイミド及びポリベンゾオキサゾールからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
<リチウムイオン二次電池用樹脂膜の製造方法>
 本開示の樹脂膜は、上記所定の平均細孔径及び細孔径の標準偏差を有するものであればいかなる方法により製造されたものであってもよい。
 所定の平均細孔径及び細孔径の標準偏差を有する樹脂膜を簡便に得るため、本開示の樹脂膜は、耐熱性樹脂又はその前駆体と加熱消失性樹脂粒子と溶剤とを少なくとも含有するスラリーを塗布して塗膜を形成することと、前記塗膜を加熱して樹脂膜を形成することと、前記加熱消失性樹脂粒子を加熱により前記樹脂膜から除去することを含む、本開示のリチウムイオン二次電池用樹脂膜の製造方法(以下、本開示の製法と称することがある。)により製造されたものであってもよい。
 以下、本開示の製法について詳述する。
 本開示の製法で用いられる耐熱性樹脂又はその前駆体は、耐熱性を有する樹脂であるか又は加熱により耐熱性樹脂を形成可能な樹脂前駆体であれば特に限定されるものではない。なお、本開示において「耐熱性樹脂」とは、塗膜を加熱して樹脂膜を形成する際の加熱温度において消失しない樹脂をいう。
 耐熱性樹脂としては、ガラス転移温度が250℃以上の樹脂が挙げられる。また、耐熱性樹脂の前駆体としては、加熱によりガラス転移温度が250℃以上の樹脂を形成可能な樹脂前駆体が挙げられる。
 耐熱性樹脂又はその前駆体は、取り扱いの容易性の観点から、後述する溶剤に分散又は溶解した状態で用いてもよい。この場合における耐熱性樹脂又はその前駆体の濃度は耐熱性樹脂又はその前駆体の溶剤への溶解性又は分散性を加味して適宜設定することができ、例えば、10質量%~50質量%であってもよい。
 本開示の製法で用いられる耐熱性樹脂としては、上述の本開示の樹脂膜を構成する樹脂成分として挙げられた樹脂を用いることができる。
 また、本開示の製法で用いられる耐熱性樹脂の前駆体としては、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)、ポリアミドイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体等が挙げられる。これら前駆体を加熱することにより、ポリイミド前駆体からポリイミドが、ポリアミドイミド前駆体からポリアミドイミドが、ポリベンゾオキサゾール前駆体からポリベンゾオキサゾールが生ずる。
 本開示の製法では、耐熱性樹脂又はその前駆体が、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリアミドイミド、ポリアミドイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール及びポリベンゾオキサゾール前駆体からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
 熱硬化性樹脂としては、硬化性の観点から、ポリアミドイミドが好ましい。
 本開示の製法で用いられる加熱消失性樹脂粒子は、加熱により消失するものであれば特に限定されるものではない。加熱消失性樹脂粒子を構成する樹脂としては、ポリスチレン樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリオキシアルキレン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂等が挙げられる。
 加熱消失性樹脂粒子としては、消失性の観点から、ポリメチルメタクリレート粒子、ポリエチレン粒子及びポリプロピレン粒子からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、これらの中でもポリメチルメタクリレート粒子がより好ましい。
 加熱消失性樹脂粒子の平均粒子径は、2μm~30μmであってもよく、3μm~25μmであってもよく、4μm~20μmであってもよい。
 また、加熱消失性樹脂粒子の粒子径の標準偏差は、1μm~20μmであってもよく、1.5μm~15μmであってもよく、2μm~12μmであってもよい。
 本開示において、粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により求められる体積累積の粒度分布曲線において、小粒子径側からの累積が50%となる粒子径(50%D)として求められる。例えば、レーザー光散乱法を利用した粒子径分布測定装置(例えば、株式会社島津製作所、「SALD-3000」)を用いて測定することができる。
 本開示において、粒子の粒子径の標準偏差は、任意に選択された10個の加熱消失性樹脂粒子の粒子径を光学顕微鏡で測定し、10個の加熱消失性樹脂粒子の粒子径に基づいて算出された値とする。
 本開示の製法で用いられる溶剤としては、耐熱性樹脂又はその前駆体を溶解又は分散し、加熱消失性樹脂粒子を分散し得るものであれば特に限定されない。
 溶剤の具体例としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、γ-ブチロラクトン、ジメトキシイミダゾリジノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等が挙げられ、これらの中でも耐熱性樹脂又はその前駆体の溶解性の観点からN-メチル-2-ピロリドンが好ましい。
 スラリー中に含有される耐熱性樹脂又はその前駆体の合計量に対する加熱消失性樹脂粒子の質量基準の比率(加熱消失性樹脂粒子/耐熱性樹脂又はその前駆体の合計量)は、デンドライト抑制の観点から、1.0~5.0であってもよく、2.0~4.0であってもよく、2.5~3.5であってもよい。
 スラリー中に含有される耐熱性樹脂又はその前駆体の合計量は、5質量%~30質量%であってもよく、7質量%~20質量%であってもよく、10質量%~15質量%であってもよい。
 スラリー中に含有される加熱消失性樹脂粒子は、20質量%~50質量%であってもよく、25質量%~45質量%であってもよく、30質量%~40質量%であってもよい。
 スラリー中には、加熱消失性樹脂粒子又は耐熱性樹脂若しくはその前駆体の分散性を調整するための界面活性剤、塗布時の気泡の発生を抑制したり発生した気泡を破泡したりするための消泡剤等の各種添加剤を含有してもよい。さらに、スラリー中には、黒鉛粒子、カーボンブラック等の炭素材料を含有してもよい。
 スラリーは支持体上に塗布される。支持体としては、金属箔、金属板、金属薄膜等の金属製支持体が挙げられる。
 また、支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルムなどが挙げられる。これらのフィルムに対して、必要に応じてプライマー処理、紫外線処理、コロナ放電処理、研磨処理、エッチング処理、離型処理等の表面処理を行ってもよい。
 支持体として金属製支持体を用いる場合、塗布膜を加熱して樹脂膜を形成する際に、塗布膜を金属製支持体上に配置したままで塗布膜を加熱処理することができる。一方、支持体としてプラスチックフィルムが用いられる場合、乾燥した塗布膜をプラスチックフィルムから剥離して塗布膜のみを加熱処理すればよい。
 支持体としては、金属薄膜が好ましく、銅箔がより好ましい。銅箔としては、圧延法により形成された圧延銅箔、電解法により形成された電解銅箔等が挙げられる。
 スラリーを支持体上に塗布して塗膜を形成する方法としては、コンマコート法、ダイコート法、ディップ法等の塗工法、スクリーン印刷法等の印刷法が挙げられる。
 塗膜の平均厚みは、本開示の樹脂膜の平均厚みが望ましい厚みとなるように適宜設定することができ、例えば、10μm~150μmであってもよい。
 形成された塗膜に対しては、必要に応じて乾燥処理を行ってもよい。塗膜を乾燥処理することで、塗膜に含まれる溶剤の少なくとも一部が除去される。塗膜の乾燥処理は、塗膜中に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去することができればよく、常圧下又は減圧下での加熱乾燥、自然乾燥、凍結乾燥等が挙げられる。
 塗膜を加熱して樹脂膜を形成する際に、塗膜に含まれる溶剤の急激な揮発に伴う樹脂膜中の気泡の発生を抑制するため、塗膜を加熱して樹脂膜を形成する前に、塗膜に対して乾燥処理を行うことが好ましい。
 次いで、塗膜を加熱することで樹脂膜が形成される。樹脂膜を形成する際の加熱温度は、特に限定されるものではない。
 本開示の製法において耐熱性樹脂の前駆体を用いる場合、樹脂膜を形成する際の加熱温度は、耐熱性樹脂の前駆体が加熱により耐熱性樹脂になる温度に設定することが好ましい。この場合の加熱温度及び加熱時間は、前駆体の種類により適宜設定される。
 本開示の製法では、加熱消失性樹脂粒子が、加熱により樹脂膜から除去される。樹脂膜から加熱消失性樹脂粒子が除去されることで、樹脂膜に細孔が形成される。
 加熱消失性樹脂粒子の除去は、塗膜を加熱して樹脂膜を形成する際に一括して行われてもよいし、加熱により樹脂膜を形成した後に、改めて樹脂膜中に存在する加熱消失性樹脂粒子を加熱により除去してもよい。加熱消失性樹脂粒子の除去を簡便に行うため、塗膜を加熱して樹脂膜を形成する際に一括して加熱消失性樹脂粒子の除去が行われることが好ましい。
 加熱消失性樹脂粒子の除去が塗膜を加熱して樹脂膜を形成する際に一括して行われる場合の加熱温度としては、340℃~430℃であってもよく、350℃~420℃であってもよく、360℃~400℃であってもよい。
 加熱消失性樹脂粒子の除去が塗膜を加熱して樹脂膜を形成する際に一括して行われる場合の加熱時間としては、1時間~3時間であってもよく、1時間~2.5時間であってもよく、1時間~1.5時間であってもよい。
 加熱消失性樹脂粒子を加熱により樹脂膜から除去する場合、加熱処理は不活性ガス雰囲気下で実施することが金属製支持体の劣化抑制の観点から好ましい。用いられる不活性ガスとしては、アルゴン、窒素等が挙げられ、これらの中でもアルゴンが好ましい。
<リチウムイオン二次電池>
 本開示のリチウムイオン二次電池は、本開示の樹脂膜を備える。本開示の樹脂膜は、リチウムイオン二次電池のセパレータとして用いることが可能である。また、リチウムイオン二次電池の負極がリチウム金属を含有する場合、本開示の樹脂膜は、金属リチウムが析出するための核として作用し、充放電時に負極から生ずる金属リチウムのデンドライトの発生を抑制する足場材として好適に用いることができる。
 以下、リチウム金属を含有する負極を備えるリチウムイオン二次電池の一実施形態を、図面を参照して説明する。なお、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。また、実質的に同一の機能を有する部材には全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
 図2は、一実施形態に係るリチウムイオン二次電池を示す斜視図である。図2に示すように、リチウムイオン二次電池11は、正極、負極、足場材及びセパレータから構成される電極群12と、電極群12を収容する袋状の電池外装体13とを備えている。正極及び負極には、それぞれ正極集電タブ14及び負極集電タブ15が設けられている。正極集電タブ14及び負極集電タブ15は、それぞれ正極及び負極がリチウムイオン二次電池11の外部と電気的に接続可能なように、電池外装体13の内部から外部へ突き出している。電池外装体13内には、電解液(図示せず)が充填されている。リチウムイオン二次電池11は、上述したようないわゆる「ラミネート型」以外の形状の電池(コイン型、円筒型、積層型等)であってもよい。
 電池外装体13は、例えばラミネートフィルムで形成された容器であってよい。ラミネートフィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の樹脂フィルムと、アルミニウム、銅、ステンレス鋼等の金属箔と、ポリプロピレン等のシーラント層とがこの順で積層された積層フィルムであってよい。
 図3は、図2に示したリチウムイオン二次電池11における電極群12の一実施形態を示す分解斜視図である。図3に示すように、電極群12は、正極16と、セパレータ18と、足場材20と、負極22とをこの順に備えている。正極16は、正極材層24側がセパレータ18と対向するように配置されている。負極22は、負極材層26側が足場材20と対向するように配置されている。
 正極16は、正極集電体28と、正極集電体28上に設けられた正極材層24とを備えている。正極集電体28には、正極集電タブ14が設けられている。
 正極集電体28は、例えば、アルミニウム、チタン、ステンレス、ニッケル、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス等で形成されている。正極集電体28は、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、アルミニウム、銅等の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀等で処理が施されたものであってもよい。正極集電体28の厚みは、電極強度及びエネルギー密度の点から、例えば1μm~50μmである。
 正極材層24は、一実施形態において、正極活物質と、導電剤と、結着剤とを含有する。正極材層24の厚みは、例えば20μm~200μmである。
 正極活物質は、例えばリチウム酸化物であってよい。リチウム酸化物としては、例えば、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiCoNi1-y、LiCo1-y、LiNi1-y、LiMn及びLiMn2-y(各式中、Mは、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、V及びBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示す(ただし、Mは、各式中の他の元素と異なる元素である)。x=0~1.2、y=0~0.9、z=2.0~2.3である。)が挙げられる。LiNi1-yで表されるリチウム酸化物は、LiNi1-(y1+y2)Coy1Mny2(ただし、x及びzは上述したものと同様であり、y1=0~0.9、y2=0~0.9であり、かつ、y1+y2=0~0.9である。)であってよく、例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNi0.5Co0.2Mn0.3、LiNi0.6Co0.2Mn0.2又はLiNi0.8Co0.1Mn0.1であってよい。LiNi1-yで表されるリチウム酸化物は、LiNi1-(y3+y4)Coy3Aly4(ただし、x及びzは上述したものと同様であり、y3=0~0.9、y4=0~0.9であり、かつ、y3+y4=0~0.9である。)であってよく、例えばLiNi0.8Co0.15Al0.05であってもよい。
 正極活物質は、例えばリチウムのリン酸塩であってもよい。リチウムのリン酸塩としては、例えば、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO)、リン酸鉄リチウム(LiFePO)、リン酸コバルトリチウム(LiCoPO)及びリン酸バナジウムリチウム(Li(PO)が挙げられる。
 正極活物質の含有量は、正極材層全量を基準として、80質量%以上、又は85質量%以上であってよく、99質量%以下であってよい。
 導電剤は、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブなどの炭素材料であってよい。導電剤の含有量は、正極材層全量を基準として、例えば、0.01質量%以上、0.1質量%以上、又は1質量%以上であってよく、50質量%以下、30質量%以下、又は15質量%以下であってよい。
 結着剤は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂;SBR(スチレン-ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム等のゴム;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー;シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体等の軟質樹脂;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、フッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン共重合体等のフッ素含有樹脂;ニトリル基含有モノマをモノマ単位として有する樹脂;アルカリ金属イオン(例えばリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物などが挙げられる。
 結着剤の含有量は、正極材層全量を基準として、例えば、0.1質量%以上、1質量%以上、又は1.5質量%以上であってよく、30質量%以下、20質量%以下、又は10質量%以下であってよい。
 セパレータ18は、正極及び負極間を電子的には絶縁しつつもイオン透過性を有し、かつ、正極側における酸化性及び負極側における還元性に対する耐性を備えるものであれば特に制限はない。このような特性を満たすセパレータの材料(材質)としては、樹脂、無機物等が用いられる。
 上記樹脂としては、オレフィン系ポリマー、フッ素系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリイミド、ナイロン等が用いられる。具体的には、電解液に対して安定で、保液性の優れた材料の中から選ぶのが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シート、不織布などを用いることが好ましい。
 無機物としては、アルミナ、二酸化珪素等の酸化物類、窒化アルミニウム、窒化珪素等の窒化物類、硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩類、ガラスなどが用いられる。例えば、繊維形状又は粒子形状の上記無機物を、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状の基材に付着させたものをセパレータとして用いることができる。
 薄膜形状の基材としては、孔径が0.01μm~1μmであり、平均厚みが5μm~50μmのものが好適に用いられる。また、例えば、繊維形状又は粒子形状の上記無機物を、樹脂等の結着剤を用いて複合多孔層としたものをセパレータとして用いることができる。さらに、この複合多孔層を、正極の表面に形成し、セパレータとしてもよい。或いは、この複合多孔層を他のセパレータの表面に形成し、多層セパレータとしてもよい。例えば、90%粒径(D90)が1μm未満のアルミナ粒子を、フッ素樹脂を結着剤として結着させた複合多孔層を、正極の表面又はセパレータの正極と対向する面に形成してもよい。
 足場材20には、上述した本開示の樹脂膜が適用される。足場材20の一方の面はセパレータ18と接触し、足場材20の他方の面は、負極22の負極材層26と接触するように配置される。
 足場材20が負極材層26と接触して配置されることで、足場材20の細孔内で金属リチウムが析出するようになるため、金属リチウムのデンドライトの成長を抑制することができ、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を向上させることができる。
 負極22は、負極集電体30と、負極集電体30上に設けられた負極材層26とを備えている。負極集電体30には、負極集電タブ15が設けられている。
 負極集電体30は、銅、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、チタン、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、アルミニウム-カドミウム合金等で形成されている。負極集電体30は、接着性、導電性、耐還元性等の向上の目的で、銅、アルミニウム等の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀等で処理が施されたものであってもよい。負極集電体30の平均厚みは、電極強度及びエネルギー密度の点から、例えば1μm~50μmである。
 負極材層26は、負極活物質としてリチウム金属を含有する。
 リチウム金属は、金属リチウム単体又はリチウム合金であってよい。リチウム合金は、例えば、リチウムとアルミニウムとの合金であってよい。負極活物質がリチウム金属を含有する場合、リチウムデンドライトの成長が特に深刻な問題となるが、足場材20を用いることによるリチウムイオン二次電池のサイクル特性向上の効果が顕著となる。負極活物質の形状は、例えば、粒子状、膜状等であってよい。
 電解液は、例えば、電解質塩と、非水溶媒とを含有する。電解質塩は、例えばリチウム塩であってよい。リチウム塩は、例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiB(C、LiCHSO、CFSOOLi、LiN(SOF)(Li[FSI]、リチウムビスフルオロスルホニルイミド)、LiN(SOCF(Li[TFSI]、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド)、及びLiN(SOCFCFからなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。
 電解質塩の濃度は、充放電特性に優れる観点から、非水溶媒全量を基準として、0.5mol/L以上であってもよく、0.7mol/L以上であってもよく、0.8mol/L以上であってもよい。また、4.5mol/L以下であってもよく、4.3mol/L以下であってもよく、4.2mol/L以下であってもよい。
 非水溶媒は、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、1,2-ジメトキシエタン、ジメトキシメタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、塩化メチレン、酢酸メチル、イオン液体等であってよい。非水溶媒は、これらの1種単独又は2種以上の混合物であってよい。
 電解液は、電解質塩及び非水溶媒以外のその他の材料をさらに含有してもよい。その他の材料は、例えば、窒素、硫黄、又は窒素及び硫黄を含有する複素環化合物、環状カルボン酸エステル、フッ素含有環状カーボネート、その他の分子内に不飽和結合を有する化合物等であってよい。
 リチウムイオン二次電池11は、正極16と負極22との間にセパレータ18及び足場材20を配置する配置工程を備える、リチウムイオン二次電池の製造方法により製造することができる。配置工程により、電極群12が形成される。
 リチウムイオン二次電池の製造方法は、上述した工程に加えて、例えば、正極16を得る工程、負極22を得る工程、電極群12を電池外装体13に収容する工程、及び電解液を電池外装体13に注液する工程を備えていてよい。
 正極16を得る工程では、正極材層24に用いる材料を混練機、分散機等を用いて分散媒に分散させてスラリー状の正極材を得た後、この正極材をドクターブレード法、ディッピング法、スプレー法等により正極集電体28上に塗布し、その後分散媒を揮発させることにより正極16を得る。分散媒を揮発させた後、必要に応じて、ロールプレスによる圧縮成型工程が設けられてもよい。正極材層24は、上述した正極材の塗布から分散媒の揮発までの工程を複数回行うことにより、多層構造の正極材層として形成されてもよい。分散媒は、水、NMP等であってよい。
 負極22を得る工程では、リチウム金属箔を負極集電体30に押し付けて一体化させることにより、負極22を得ることができる。
 また、後述するように、負極材層26が負極活物質と結着剤とを含有する場合、上述した正極16を得る工程と同様の方法で、負極集電体30上に負極材層26を形成して負極22を得ることができる。
 電極群12を電池外装体13に収容する工程では、上述した工程により形成した電極群12を、電池外装体13に収容する。
 電解液を電池外装体13に注液する工程では、電解液を電池外装体13に注入する。電解液は、例えば、電解質塩をはじめに非水溶媒に溶解させてから、その他の材料を溶解させることにより調製することができる。
 以上、リチウム金属を含有する負極を備えるリチウムイオン二次電池の一実施形態について説明したが、負極材層26は、負極活物質と結着剤とを含有するものであってもよい。この場合の負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な物質であれば特に制限されず、炭素材料、金属複合酸化物、錫、ゲルマニウム、ケイ素等の第四族元素の酸化物又は窒化物などが挙げられる。負極活物質は、これらの1種単独又は2種以上の混合物であってよい。
 負極材層26が負極活物質と結着剤とを含有するものである場合、負極活物質の含有量は、負極材層全量を基準として、80質量%以上、又は85質量%以上であってよく、99質量%以下であってよい。
 負極材層26が負極活物質と結着剤とを含有するものである場合、結着剤及びその含有量は、上述した正極材層における結着剤及びその含有量と同様であってよい。
 負極材層26が負極活物質と結着剤とを含有するものである場合、負極材層26は、粘度を調節するために増粘剤をさらに含有してもよい。増粘剤は、特に制限されないが、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン、これらの塩等であってよい。増粘剤は、これらの1種単独又は2種以上の混合物であってよい。
 負極材層26が増粘剤を含む場合、その含有量は特に制限されない。増粘剤の含有量は、負極材層の塗布性の観点からは、負極材層全量を基準として、0.1質量%以上であってよく、0.2質量%以上であってもよく、0.5質量%以上であってもよい。増粘剤の含有量は、電池容量の低下又は負極活物質間の抵抗の上昇を抑制する観点からは、負極材層全量を基準として、5質量%以下であってよく、3質量%以下であってもよく、2質量%以下であってもよい。
 リチウム金属を含有する負極を備えるリチウムイオン二次電池の他の実施形態としては、リチウム金属を含む負極と、本開示の樹脂膜で構成される足場材と、正極と、をこの順に備えるものが挙げられる。本構成では、足場材がセパレータの機能を兼ねる。
 さらに、リチウム金属を含有する負極を備えるリチウムイオン二次電池の他の実施形態としては、細孔内に金属リチウムが充填され負極として機能する本開示の樹脂膜と、セパレータと、正極と、をこの順に備えるものが挙げられる。本構成では、アノードフリーのリチウムイオン二次電池として作動する。
 以下、実施例に基づき、本開示についてさらに具体的に説明する。尚、本開示は下記実施例に限定されるものではない。
(樹脂膜1の作製)
 平均粒子径が5μmで粒子径の標準偏差が2μmのポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子36質量部と、NMPを溶剤に用いた固形分濃度21質量%のポリアミドイミド樹脂溶液58質量部とを混合した。得られた混合物に対し、NMPを6質量部さらに添加し、混練することによりスラリーを調製した。このスラリーを集電体として平均厚み20μmの銅箔に均等かつ均質に所定量塗布した。その後、100℃で分散媒を揮発させてから、アルゴン雰囲気下で400℃/1時間加熱することにより、樹脂膜1を得た。樹脂膜1の平均厚みは、10μmであった。また、樹脂膜1中の炭素材料の含有率は、0質量%であった。
 得られた樹脂膜1について、株式会社キーエンスのVHX-950Fを用い、倍率50倍の条件で表面を撮影した。得られた結果を図1に示す。
 図1において、1番~10番の合計10個の細孔の長手方向の長さを求めた。各細孔の長手方向の長さは、以下の通りである。
 得られた結果から平均細孔径及び細孔径の標準偏差を求めたところ、各々24.26μm及び18.11μmであった。また、細孔の最大径は50.38μmであり、細孔の最小径は3.14μmであった。
1番: 37.96μm
2番: 3.14μm
3番: 36.39μm
4番: 25.72μm
5番: 4.11μm
6番: 45.86μm
7番: 25.41μm
8番: 50.38μm
9番: 8.36μm
10番: 5.23μm
(樹脂膜2の作製)
 カーボンブラック9質量部と、平均粒子径が5μmで粒子径の標準偏差が2μmのポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子28質量部と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)2質量部と、NMPを溶剤に用いた固形分濃度21質量%のポリアミドイミド樹脂溶液33質量部とを混合した。得られた混合物に対し、NMPを28質量部さらに添加し、混練することによりスラリーを調製した。このスラリーを集電体として平均厚み20μmの銅箔に均等かつ均質に所定量塗布した。その後、100℃で分散媒を揮発させてから、アルゴン雰囲気下で400℃/1時間加熱することにより、樹脂膜2を得た。樹脂膜2の平均厚みは、59μmであった。また、樹脂膜2中の炭素材料(カーボンブラック)の含有率は、50質量%であった。
 得られた樹脂膜2について、株式会社キーエンスのVHX-950Fを用い、倍率50倍の条件で表面を撮影した。得られた結果を図4に示す。
 図4において、1番~10番の合計10個の細孔の長手方向の長さを求めた。各細孔の長手方向の長さは、以下の通りである。
 得られた結果から平均細孔径及び細孔径の標準偏差を求めたところ、各々11.38μm及び5.53μmであった。また、細孔の最大径は23.39μmであり、細孔の最小径は5.89μmであった。
1番: 6.08μm
2番: 13.45μm
3番: 17.22μm
4番: 13.13μm
5番: 9.60μm
6番: 9.05μm
7番: 23.39μm
8番: 7.08μm
9番: 8.90μm
10番: 5.89μm
(電極及び電池の作製方法)
 得られた樹脂膜を用いて、以下のようにしてコイン型のリチウムイオン二次電池を作成した。
 コイン治具については宝泉社製のものを用いた。
 上蓋、ガスケット、Li箔、セパレータ、樹脂膜及び下蓋の順にこれらを積層し、電解液を150μL注液した後、上蓋と下蓋をかしめて試験用セルを作製した。電解液については1mol/LのLiPFを含むエチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート及びジエチルカーボネートの混合溶液(30:50:20(質量比))を使用した。
(電池の充電方法)
 作製した各リチウムイオン二次電池について、初回充放電後に、充電状態で電池を解体し、電極(樹脂膜)表面の外観を観察することにより耐デンドライト性を評価した。
 初回充放電時のパターンとしては、まずは25℃の環境下で、リチウムイオン二次電池を電圧0.0V、電流値0.1mAで定電流定電圧充電を行った。充電終止条件は、電流値0.05mA又は充電時間20時間とした。放電については電圧1.5V、電流値0.1mAで定電流放電を行い、この一連の充放電を3サイクル繰返した。次に充電時の電圧を-0.1Vに変えて、再度一連の充放電を3サイクル繰返した。さらに初回充放電後のリチウムイオン二次電池を電圧-0.1V、電流値0.1mAで樹脂膜の細孔容積に対してリチウム金属が50%析出するよう充電時間を調整し、定電流充電を行った。
(電極表面の評価)
 充電後のリチウムイオン二次電池を解体した後、電極表面を目視にて観察することで金属光沢の有無などを確認した。
 電極表面の状態を、図5(樹脂膜1)及び図6(樹脂膜2)に示す。
 図5及び図6の対比から明らかなように、樹脂膜1を用いることで、リチウムデンドライトの発生が抑制されることがわかる。
 本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に援用されて取り込まれる。
11 リチウムイオン二次電池
12 電極群
13 電池外装体
14 正極集電タブ
15 負極集電タブ
16 正極
18 セパレータ
20 足場材
22 負極
24 正極材層
26 負極材層
28 正極集電体
30 負極集電体

Claims (10)

  1.  平均細孔径が0.35μm~30μmであり、細孔径の標準偏差が0.1μm~20μmであり、炭素材料の含有率が5質量%以下であるリチウムイオン二次電池用樹脂膜。
  2.  細孔の最大径が0.5μm~70μmである請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用樹脂膜。
  3.  細孔の最小径が0.2μm~10μmである請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用樹脂膜。
  4.  ポリイミド、ポリアミドイミド及びポリベンゾオキサゾールからなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用樹脂膜。
  5.  請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用樹脂膜を備えるリチウムイオン二次電池。
  6.  リチウム金属を含有する負極を備える請求項5に記載のリチウムイオン二次電池。
  7.  耐熱性樹脂又はその前駆体と加熱消失性樹脂粒子と溶剤とを少なくとも含有するスラリーを塗布して塗膜を形成することと、前記塗膜を加熱して樹脂膜を形成することと、前記加熱消失性樹脂粒子を加熱により前記樹脂膜から除去することと、を含むリチウムイオン二次電池用樹脂膜の製造方法。
  8.  前記耐熱性樹脂又はその前駆体が、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリアミドイミド、ポリアミドイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール及びポリベンゾオキサゾール前駆体からなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項7に記載のリチウムイオン二次電池用樹脂膜の製造方法。
  9.  前記加熱消失性樹脂粒子が、ポリメチルメタクリレート粒子、ポリエチレン粒子及びポリプロピレン粒子からなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項7に記載のリチウムイオン二次電池用樹脂膜の製造方法。
  10.  前記加熱消失性樹脂粒子の除去が、前記塗膜を加熱して樹脂膜を形成する際に一括して行われる請求項7に記載のリチウムイオン二次電池用樹脂膜の製造方法。
PCT/JP2022/044022 2022-11-29 リチウムイオン二次電池用樹脂膜及びその製造方法並びにリチウムイオン二次電池 WO2024116288A1 (ja)

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