WO2024014305A1 - 化学強化ガラス - Google Patents

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Abstract

表層部に圧縮応力を有する圧縮応力層を備え、内部に引張応力を有する引張応力層を備える化学強化ガラスであって、式(1)で表される強化充填率FIOXが0.75以上1.00以下である。 UCT:化学強化ガラスの引張二乗面積[MPa2・m] UCT limit:化学強化ガラスの爆発しきい値[MPa2・m] t:化学強化ガラスの厚み[m] DOC:化学強化ガラスの圧縮応力層の深さ[m] x:化学強化ガラスの表面からの深さ[m] σ(x):化学強化ガラスの深さxにおける圧縮応力値[MPa] K1C:化学強化ガラスの厚み中心部の組成における破壊靭性値[MPa・m1/2

Description

化学強化ガラス
 本発明は、化学強化ガラスに関する。
 各種電子端末やディスプレイデバイス等のデバイスのカバーガラスとして、化学強化ガラスが広く用いられている。化学強化ガラスは、イオン交換処理によって形成された圧縮応力層を表面に有することにより、表面におけるクラックの形成及び進展を抑制し、高い強度を得られる(例えば、特許文献1)。
国際公開第2013/088856号
 化学強化ガラスは、強度を上げるに連れて、破壊時に粉々に割れるという爆発的挙動を示しやすくなる。そこで、従来では、引張応力層の引張応力値に基づいて、化学強化ガラスの破壊時の爆発的挙動の有無を事前に評価する試みがなされていた。しかしながら、引張応力値では、化学強化ガラスの破壊時の爆発的挙動の有無を事前に正確に評価するのが困難であった。その結果、従来の化学強化ガラスでは、破壊時の爆発的挙動の抑制と、強度の向上とを両立できないという問題があった。
 本発明は、破壊時の爆発的挙動を抑制しつつ、高い強度を実現し得る化学強化ガラスを提供することを課題とする。
(1) 上記の課題を解決するために創案された本発明に係る化学強化ガラスは、表層部に圧縮応力を有する圧縮応力層を備え、内部に引張応力を有する引張応力層を備える化学強化ガラスであって、式(A)で表される強化充填率FIOXが0.75以上1.00以下であることを特徴とする。
  UCT:式(B)で表される化学強化ガラスの引張二乗面積[MPa2・m]
  UCT limit:式(C)で表される化学強化ガラスの爆発しきい値[MPa2・m]
  t:化学強化ガラスの厚み[m]
  DOC:化学強化ガラスの圧縮応力層の深さ[m]
  x:化学強化ガラスの表面からの深さ[m]
  σ(x):化学強化ガラスの深さxにおける圧縮応力値[MPa]
  K1C:化学強化ガラスの厚み中心部の組成における破壊靭性値[MPa・m1/2
 本願発明者等は、鋭意研究の結果、式(A)で表される強化充填率FIOXにより、化学強化ガラスの破壊時の爆発的挙動の有無を事前に正確に評価できることを知見するに至った。詳細には、強化充填率FIOXが1超となる場合、化学強化ガラスの破損時に爆発的挙動が生じやすく、強化充填率FIOXが1以下となる場合、化学強化ガラスの破損時に爆発的挙動が生じにくいことを知見するに至った。したがって、上記の構成のように、強化充填率FIOXが1以下であれば、化学強化ガラスの破損時の爆発的挙動をほぼ確実に抑制できる。
 一方、強化充填率FIOXが0.75未満の場合も、化学強化ガラスの破損時の爆発的挙動を抑制できるものの、化学強化が不十分になって高い強度を実現しにくくなる。したがって、高い強度を実現する観点からは、上記の構成のように、強化充填率FIOXは0.75以上とする必要がある。
(2) 上記(1)の構成において、引張二乗面積UCTが0.90MPa2・m以上であることが好ましい。
(3) 上記(1)又は(2)の構成において、破壊靭性値K1Cが0.80MPa・m1/2以上であることが好ましい。
(4) 上記(1)~(3)のいずれかの構成において、圧縮応力層の深さDOCが90μm以上であり、深さt/2における引張応力値CTが80MPa以上であることが好ましい。
(5) 上記(1)~(4)のいずれかの構成において、厚みtが0.1~1.5mmであり、表面における圧縮応力値CSが700MPa以上であり、深さ30μmにおける圧縮応力値CS30が140MPa以上であり、深さ50μmにおける圧縮応力値CS50が100MPa以上であることが好ましい。
(6) 上記(1)~(5)のいずれかの構成において、カリウムイオンの拡散深さDOLKが4μm以上であることが好ましい。
(7) 上記(1)~(6)のいずれかの構成において、圧縮応力を正の数、引張応力を負の数として表面から深さ方向に応力を測定して得られる応力プロファイルが屈曲部を有していてもよい。
(8) 上記(1)~(7)のいずれかの構成において、化学強化ガラスは、ガラス組成として、モル%で、SiO2 40%~80%、Al23 10%~30%、B23 0%~10%、Na2O 0.1%~25%、K2O 0%~10%、Li2O 0.1%~20%、MgO 0%~10%、P25 0%~10%を含有していてもよい。
(9) 上記(8)の構成において、化学強化ガラスは、ガラス組成として、モル%で、SiO2 50%~70%、Al23 10%~20%、B23 0%~3%、Na2O 1%~25%、K2O 0%~10%、Li2O 3%~12%、MgO 0%~5%、P25 1%~10%を含有することが好ましい。
(10) 上記(1)~(7)のいずれかの構成において、化学強化ガラスは、ガラス組成として、モル%で、SiO2 40%~80%、Al23 10%~30%、B23 0%~3%、Na2O 5%~25%、K2O 0%~5.5%、Li2O 0%~0.09%、MgO 0%~10%を含有していてもよい。
(11) 上記(1)~(7)のいずれかの構成において、化学強化ガラスは、結晶化ガラスであってもよい。
(12) 本発明に係る化学強化ガラスは、別の形態において、表層部に圧縮応力を有する圧縮応力層を備え、内部に引張応力を有する引張応力層を備える化学強化ガラスであって、式(D)で表される強化充填率FIOXが0.75以上1.00以下であることを特徴とする。
  UCT:式(E)で表される化学強化ガラスの引張二乗面積[MPa2・m]
  UCT limit:式(F)で表される化学強化ガラスの爆発しきい値[MPa2・m]
  t:化学強化ガラスの厚み[m]
  DOC:化学強化ガラスの圧縮応力層の深さ[m]
  x:化学強化ガラスの表面からの深さ[m]
  σ(x):化学強化ガラスの深さxにおける圧縮応力値[MPa]
  K1C:化学強化前の化学強化用ガラスの破壊靭性値[MPa・m1/2
 本発明によれば、破壊時の爆発的挙動を抑制しつつ、高い強度を実現し得る化学強化ガラスを提供できる。
本発明の実施形態に係る化学強化ガラスを示す概略断面図である。 本発明の実施形態に係る化学強化ガラスの応力プロファイルの一例を示す概念図である。 本発明の実施形態に係る化学強化ガラスの応力プロファイルの別の一例を示す概念図である。 本発明の実施形態に係る化学強化ガラスの製造方法を示すフロー図である。 本発明の実施形態に係る化学強化ガラスの製造方法を示すフロー図である。 化学強化ガラスの破壊時の破片数と、引張二乗面積UCTとの関係を示すグラフである。 ペンドロップ試験を説明するための図である。 化学強化ガラスの爆発しきい値UCT limitと、破壊靭性値K1Cとの関係を示すグラフである。 加傷四点曲げ強度を測定する際の加傷工程を説明するための図である。 加傷四点曲げ強度を測定する際の曲げ破壊工程を説明するための図である。
 以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
<化学強化ガラス>
 図1に示すように、本実施形態に係る化学強化ガラス1は、イオン交換処理により化学強化された板状又はシート状のガラスである。化学強化ガラス1の厚みtは、特に限定されるものでないが、例えば0.01~1.5mm(好ましくは0.1~1.0mm)である。
 化学強化ガラス1は、圧縮応力層2と、引張応力層3とを備える。圧縮応力層2は、化学強化ガラス1の主表面1a及び端面1bを含む表層部に形成されている。引張応力層3は、化学強化ガラス1の内部、すなわち、圧縮応力層2よりも深い位置に形成されている。ここで、主表面1aとは、ガラス表面全体のうち端面1bを除いた表裏の面を指す。
 式(1)で表される化学強化ガラス1の強化充填率FIOXは、0.75以上1.00以下である。強化充填率FIOXは、好ましくは、0.76以上1.00未満、0.80以上0.99以下、0.85以上0.98以下である。このようにすれば、破壊した時に粉々に割れるという爆発的挙動を抑制しつつ、高い強度を実現し得る化学強化ガラス1を得ることができる。
  UCT:化学強化ガラスの引張二乗面積[MPa2・m]
  UCT limit:化学強化ガラスの爆発しきい値[MPa2・m]
  t:化学強化ガラスの厚み[m]
  DOC:化学強化ガラスの圧縮応力層の深さ[m]
  x:化学強化ガラスの表面からの深さ[m]
  σ(x):化学強化ガラスの深さxにおける圧縮応力値[MPa]
  K1C:化学強化前の化学強化用ガラスの破壊靭性値[MPa・m1/2
 化学強化ガラス1の引張二乗面積UCTは、好ましくは、0.90MPa2・m以上、0.95MPa2・m以上、1.00MPa2・m以上、1.05MPa2・m以上である。このようにすれば、化学強化ガラス1の曲げ強度などの機械的強度が向上する。
 化学強化ガラス1の破壊靭性値K1Cは、好ましくは、0.80MPa・m1/2以上、0.81MPa・m1/2以上、0.82MPa・m1/2以上、0.83MPa・m1/2以上である。このようにすれば、化学強化ガラス1の曲げ強度などの機械的強度が向上する。
 化学強化ガラス1の圧縮応力層深さDOCは、好ましくは、90μm以上、100μm以上、105μm以上、110μm以上、115μm以上であることが好ましい。このようにすれば、化学強化ガラス1の表面に傷が生じても割れにくくなる。
 化学強化ガラス1のKイオンの拡散深さDOLKは、好ましくは、4μm以上、4.5μm以上、5μm以上、6μm以上である。このようにすれば、化学強化ガラス1の表面に傷が生じても割れにくくなる。
 化学強化ガラス1の深さt/2(板厚中心)における引張応力値CTは、好ましくは、80MPa以上、85MPa以上、90MPa以上、95MPa以上である。このようにすれば、表面圧縮応力を大きくしやすく、高い強度を得やすくなる傾向がある。一方、CTを大きくし過ぎると、化学強化ガラス1が破壊した時に爆発的挙動を示しやすくなる。そのため、CTは、好ましくは、125MPa以下、120MPa以下、115MPa以下、110MPa以下である。ただし、化学強化ガラス1の破損時の爆発的挙動の有無は、CTの値では正確に評価できないため、上述のFIOXの値を考慮する必要がある。
 化学強化ガラス1の表面における圧縮応力値CSは、好ましくは、700MPa以上、750MPa以上、800MPa以上、850MPa以上である。化学強化ガラス1の深さ30μmにおける圧縮応力値CS30は、好ましくは、140MPa以上、150MPa以上、160MPa以上、170MPa以上である。化学強化ガラス1の深さ50μmにおける圧縮応力値CS50は、好ましくは、100MPa以上、105MPa以上、110MPa以上、115MPa以上である。このようにすれば、化学強化ガラス1の曲げ強度や落下強度などの機械的強度が向上する。
 ここで、CS、DOC、DOLK、CT、UCTは、例えば、表面応力計(例えば折原製作所製のFSM-6000LE)を用いて測定された値、又は、表面応力計及び散乱光光弾性応力計(例えば折原製作所製のSLP-1000)を用いて測定された値を合成したものに基づいて導出できる。K1Cは、JIS R1607に準拠したIndentation Fracture法(IF法)によって測定した値であり、測定10回の平均値である。
 破壊靭性値K1Cは、例えば、JIS R1607に準拠したIndentation Fracture法(IF法)によって測定することができる。なお、破壊靭性値K1Cは、他の公知の手法を用いて測定することも可能である。例えば、破壊靭性値K1Cは、SEPB法を用いて測定することも可能である。
 また、破壊靭性値K1Cは、ミラー定数に基づき計算により求めることも可能である。中心部組成における破壊靭性値K1Cを測定するためには、当該組成のガラス試料を所定寸法に加工して上述手法の測定試験を行うことになるが、強度の高い強化後のガラスを所定寸法に加工することが困難である場合には、当該ミラー定数に基づく計算を代替手法として用いても良い。ガラスやガラスセラミクスの破壊靭性と、それらのミラー定数には一定の相関関係があることが知られている(Mecholsky et al., J. Mater. Sci., 11, 1310-1319 (1976))。本発明においては、破壊靭性値K1Cは、ミラー定数Amに基づき下式(4)の関係式から求めることができる。なお、ミラー定数Amは、任意寸法のガラス試料を所定曲げ応力で破断した断面のミラー半径を観察して求めることができる。
  Am=3.4141K1C+1.228・・・(4)
  K1C:破壊靭性値 (MPa/m1/2
  Am:ミラー定数 (MPa・m1/2
 化学強化ガラス1の加傷四点曲げ強度は、好ましくは、190MPa以上、200MPa以上、210MPa以上、220MPa以上である。このようにすれば、化学強化ガラス1を折り曲げて利用するフォルダブルタイプのデバイスに好適に用いることができる。
 圧縮応力を正の数、引張応力を負の数とした場合に、表面から深さ方向に応力を測定して得られる化学強化ガラス1の応力プロファイルの一例を図2に示す。なお、本明細書においては特に断りがない限り、各応力の大きさは絶対値で示される。
 図2に示すように、大きいCSと深いDOCを達成するために、化学強化ガラス1の応力プロファイルは、大きく屈曲する屈曲部Xを有する。つまり、化学強化ガラス1の応力プロファイルは、直線近似した場合に傾きの異なる複数の部位に区分される。このようにすれば、化学強化ガラス1の落下強度が大幅に向上する。そのため、化学強化ガラスをスマートフォンのカバーガラスなどに用いて際に、落下時の破損確率を大幅に低下させることができる。
 化学強化ガラス1の応力プロファイルでは、表面において圧縮応力が最大(CS)となり、表面からの深さが深くなるほど応力が漸減し、DOCに対応する深さにおいて応力がゼロとなる。すなわち、DOCは圧縮応力層2の深さと同義である。DOCより深い領域には引張応力を有する引張応力層3が延在する。
 化学強化ガラス1の応力プロファイルは、図2に示す態様に限定されない。例えば、図3に示すように、第一ピークP1、第一ボトムB1、第二ピークP2、第二ボトムB2を表面側から順に有する応力プロファイルであってもよい。第一ピークP1は、化学強化ガラス1の表面に形成される。第二ボトムB2は、化学強化ガラス1の板厚中心(t/2)に形成される。第一ボトムB1及び第二ピークP2は、表面からDOCまでの範囲に形成される。このような応力プロファイルの場合、複数の屈曲部Xが形成される。
 化学強化ガラス1は、例えば、アルミノシリケートガラスであることが好ましい。
 アルミノシリケートガラスの一例として、化学強化ガラス1は、ガラスの中心部組成として、モル%で、SiO2 40%~80%、Al23 10%~30%、B23 0%~10%、Na2O 0.1%~25%、K2O 0%~10%、Li2O 0.1%~20%、MgO 0%~10%、P25 0%~10%を含有していてもよい。
 なお、本発明において化学強化ガラス1の中心部組成とは、化学強化ガラス1の厚みの中心部におけるガラス組成を指す。化学強化ガラス1の中心部組成は、化学強化前の化学強化用ガラスのガラス組成と同様である。また、本発明における化学強化ガラスの中心部組成における破壊靭性値は、中心部組成を有する未強化状態のガラス試料の破壊靭性値を指し、化学強化前の化学強化用ガラスの破壊靭性値と同様である。
 化学強化ガラス1は、より特定的には、中心部組成として、モル%で、SiO2 50%~70%、Al23 10%~20%、B23 0%~3%、Na2O 1%~25%、K2O 0%~10%、Li2O 3%~12%、MgO 0%~5%、P25 1%~10%を含有していてもよい。
 SiO2は、ガラスのネットワークを形成する成分である。SiO2の含有量が少な過ぎると、ガラス化し難くなり、また熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下し易くなる。よって、SiO2の好適な下限範囲は、モル%で、40%以上、50%以上、55%以上、57%以上、59%以上、特に61%以上である。一方、SiO2の含有量が多過ぎると、溶融性や成形性が低下し易くなり、また熱膨張係数が低くなり過ぎて、周辺材料の熱膨張係数に整合させ難くなる。よって、SiO2の好適な上限範囲は、モル%で、80%以下、70%以下、68%以下、66%以下、65%以下、64.5%以下である。
 Al23は、イオン交換性能を高める成分であり、また歪点、ヤング率、破壊靱性、ビッカース硬度を高める成分である。よって、Al23の好適な下限範囲は、モル%で、10%以上、12%以上、13%以上、14%以上、14.4%以上、15%以上、15.3%以上、15.6%以上、16%以上、16.5%以上、17%以上、17.2%以上、17.5%以上、17.8%以上、18%以上、18%超、18.3%以上、18.5%以上、18.6%以上、18.7%以上、18.8%以上である。一方、Al23の含有量が多過ぎると、高温粘度が上昇して、溶融性や成形性が低下し易くなる。またガラスに失透結晶が析出し易くなって、オーバーフローダウンドロー法等で板状に成形し難くなる。特に、成形体耐火物としてアルミナ系耐火物を用いて、オーバーフローダウンドロー法で板状に成形する場合、アルミナ系耐火物との界面にスピネルの失透結晶が析出し易くなる。更に耐酸性も低下し、酸処理工程に適用し難くなる。よって、Al23の好適な上限範囲は、モル%で、30%以下、25%以下、21%以下、20.5%以下、20%以下、19.9%以下、19.5%以下、19.0%以下、18.9%以下である。
 B23は、高温粘度や密度を低下させると共に、ガラスを安定化させて、結晶を析出させ難くし、液相温度を低下させる成分である。B23の含有量が少な過ぎると、ガラス中に含まれるLiイオンと溶融塩中のNaイオンのイオン交換における応力深さが深くなり過ぎて、結果として圧縮応力層の圧縮応力値が小さくなり易い。また、ガラスが不安定になり、耐失透性が低下するおそれもある。よって、B23の好適な下限範囲は、モル%で、0%以上、0.1%以上、0.2%以上、0.5%以上、0.6%以上、0.7%以上、0.8%以上、0.9%以上、1%以上である。一方、B23の含有量が多過ぎると、応力深さが浅くなるおそれがある。特にガラス中に含まれるNaイオンと溶融塩中のKイオンのイオン交換の効率が低下し易くなり、圧縮応力層の深さが小さくなり易い。よって、B23の好適な上限範囲は、モル%で、10%以下、5%以下、4%以下、3.8%以下、3.5%以下、3.3%以下、3.2%以下、3.1%以下、3%以下、2.9%以下である。
 Na2Oは、イオン交換成分であり、また高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分である。またNa2Oは、耐失透性を高める成分であり、特にアルミナ系耐火物との反応で生じる失透を抑制する成分である。よって、Na2Oの好適な下限範囲は、モル%で0.1%以上、1%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、7.5%以上、8%以上、8.5%以上、8.8%以上、9%以上である。一方、Na2Oの含有量が多過ぎると、熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下し易くなる。またガラス組成の成分バランスが崩れて、かえって耐失透性が低下する場合がある。よって、Na2Oの好適な上限範囲は、モル%で、25%以下、21%以下、20%以下、19%以下、18%以下、15%以下、13%以下、11%以下、10%以下である。
 K2Oは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分である。しかし、K2Oの含有量が多過ぎると、熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下し易くなる。また最表面の圧縮応力値が低下し易くなる。よって、K2Oの好適な上限範囲は、モル%で、10%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1.5%以下、1%以下、1%未満、0.5%以下、0.1%未満である。なお、応力深さを深くする観点を重視すると、K2Oの好適な下限範囲は、モル%で、0%以上、0.1%以上、0.3%以上、0.5%以上である。
 Li2Oは、イオン交換成分であり、特にガラス中に含まれるLiイオンと溶融塩中のNaイオンをイオン交換して、深い応力深さを得るための成分である。また、Li2Oは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分であると共に、ヤング率を高める成分である。よって、Li2Oの好適な下限範囲は、モル%で、0.1%以上、3%以上、4%以上、5%以上、5.5%以上、6.5%以上、7%以上、7.3%以上、7.5%以上、7.8%以上、8%以上である。Li2Oの好適な上限範囲は、モル%で、20%以下、15%以下、13%以下、12%以下、11.5%以下、11%以下、10.5%以下、10%未満、9.9%以下、9%以下、8.9%以下である。
 MgOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高めたり、歪点やビッカース硬度を高める成分であり、アルカリ土類金属酸化物の中では、イオン交換性能を高める効果が大きい成分である。しかし、MgOの含有量が多過ぎると、耐失透性が低下し易くなり、特にアルミナ系耐火物との反応で生じる失透を抑制し難くなる。よって、MgOの好適な含有量は、モル%で、0~10%、0~5%、0.1~4%、0.2~3.5%、0.5~3%未満である。
 P25は、イオン交換性能を高める成分であり、特に応力深さを深くする成分である。更に耐酸性も向上させる成分である。P25の含有量が少な過ぎると、イオン交換性能を十分に発揮できないおそれが生じる。特にガラス中に含まれるNaイオンと溶融塩中のKイオンのイオン交換の効率が低下し易くなり、圧縮応力層の深さが小さくなり易い。また、ガラスが不安定になり、耐失透性が低下するおそれもある。よって、P25の好適な下限範囲は、モル%で、0%以上、0.1%以上、0.4%以上、0.7%以上、1%以上、1.2%以上、1.4%以上、1.6%以上、2%以上、2.3%以上、2.5%以上、3%以上である。一方、P25の含有量が多過ぎると、ガラスが分相したり、耐水性が低下し易くなる。また、ガラス中に含まれるLiイオンと溶融塩中のNaイオンのイオン交換における応力深さが深くなり過ぎて、結果として圧縮応力層の圧縮応力値が小さくなり易い。よって、P25の好適な上限範囲は、モル%で、10%以下、5%以下、4.5%以下、4%以下である。
 別のアルミノシリケートガラスの一例として、化学強化ガラス1は、中心部組成として、モル%で、SiO2 40%~80%、Al23 10%~30%、B23 0%~3%、Na2O 5%~25%、K2O 0%~5.5%、Li2O 0%~0.09%、MgO 0%~10%を含有していてもよい。つまり、化学強化ガラス1は、Li2Oを実質的に含有しないものであってもよい。ただし、化学強化ガラス1において、大きいCSと深いDOCを達成するためには、化学強化ガラス1は、Li2Oを含有していることが好ましい。
 化学強化ガラス1は、結晶化ガラスであってもよい。結晶化ガラスは、非晶質ガラスを加熱処理(結晶化処理)して、無機結晶を析出させたものであり、ガラス中に無機結晶を含有する。ここで、非晶質ガラスとは、粉末X線回折法によって、結晶を示す回折ピークが認められないガラスをいう。
 アルミノシリケートガラスからなる結晶化ガラスの一例として、化学強化ガラス1は、中心部組成として、質量%で、SiO2 58%~70%、Al23 15%~30%、Li2O 2%~10%、Na2O 0%~10%、K2O 0%~10%、Na2O+K2O 0%~15%、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO 0%~15%、SnO2 0.1%~6%、ZrO2 0.5%~6%、TiO2 0%~4%、P25 0%~6%を含有し、結晶化度が1~95%であってもよい。結晶化度は、X線回折装置(リガク製 全自動多目的水平型X線回折装置 Smart Lab)を用いて評価できる。
 化学強化ガラス1が上記中心部組成を有するものとするため、化学強化前の化学強化用ガラスは、上記化学強化ガラス1の中心部組成として例示されたガラス組成を有することが好ましい。
<化学強化ガラスの製造方法>
 図4に示すように、本実施形態に係る化学強化ガラスの製造方法は、準備工程S1と、化学強化工程S2とを含む。
 準備工程S1では、化学強化用ガラスを準備する。化学強化用ガラスは、上述の化学強化ガラス1と実質的に同じ形状寸法及びガラス組成により構成されたガラスである。化学強化用ガラスは、イオン交換処理を施す前のガラスを指し、化学強化ガラスは、イオン交換処理を施した後のガラスを指す。
 化学強化用ガラスは、例えば、オーバーフローダウンドロー法、スロットダウンドロー法、フロート法、リドロー法等の成形方法により得られた板状又はシート状のマザーガラスを小片ガラスに切断、加工して得られる。平滑な表面を得るためには成形方法としてオーバーフローダウンドロー法を用いることが好ましい。なお、オーバーフローダウンドロー法で成形された場合、化学強化用ガラスは、内部に成形合流面を有する。
 化学強化工程S2では、イオン交換処理により化学強化用ガラスを化学強化し、圧縮応力層2と引張応力層3とを有する化学強化ガラス1を得る。イオン交換処理の回数は、特に限定されず、1回のみであってもよいし、複数回であってもよい。イオン交換処理を複数回行う場合、イオン交換処理の回数は2回であることが好ましい。
 化学強化用ガラスがガラス中にNaイオン及びLiイオンを含み、かつ、複数回のイオン交換処理を行う場合、NaNO3溶融塩を含む溶融塩に化学強化用ガラスを浸漬させる第一イオン交換処理を行った後に、KNO3溶融塩を含む溶融塩に化学強化用ガラスを浸漬させる第二イオン交換処理を行うことが好ましい。このようにすれば、大きいCSと深いDOCを達成しやすくなる。
 特に、第一イオン交換処理では、NaNO3溶融塩、又は、NaNO3及びKNO3の混合溶融塩に化学強化用ガラスを浸漬させ、第二イオン交換処理では、KNO3及びLiNO3の混合溶融塩に化学強化用ガラスを浸漬させることが好ましい。このようにすれば、図2に示すような屈曲部Xを有する応力プロファイルを示す化学強化ガラス1を得ることができる。
 第一イオン交換工程では、ガラス中に含まれるLiイオンと溶融塩中のNaイオンがイオン交換し、NaNO3及びKNO3の混合溶融塩を用いる場合、更にガラス中に含まれるNaイオンと溶融塩中のKイオンがイオン交換する。ここで、ガラス中に含まれるLiイオンと溶融塩中のNaイオンのイオン交換は、ガラス中に含まれるNaイオンと溶融塩中のKイオンのイオン交換よりもスピードが速く、イオン交換の効率が高い。第二イオン交換工程では、ガラス表面近傍(表面から厚さtの20%までの浅い領域)におけるNaイオンと溶融塩中のLiイオンがイオン交換し、加えてガラス表面近傍(最表面から板厚の20%までの浅い領域)におけるNaイオンと溶融塩中のKイオンがイオン交換する。すなわち、第二イオン交換工程では、ガラス表面近傍におけるNaイオンを離脱させつつ、イオン半径の大きいKイオンを導入することができる。結果として、深い応力深さを維持しながら、最表面の圧縮応力値を高めることができる。
 第一イオン交換工程では、処理温度(溶融塩の温度)は360~400℃が好ましく、処理時間(イオン交換時間)は30分~6時間が好ましい。第二イオン交換工程では、処理温度は370~400℃が好ましく、処理時間は15分~3時間が好ましい。
 屈曲部Xを有する応力プロファイルを形成する上で、第一イオン交換工程で用いるNaNO3及びKNO3の混合溶融塩では、NaNO3の濃度がKNO3の濃度よりも高いことが好ましく、第二イオン交換工程で用いるKNO3及びLiNO3の混合溶融塩では、KNO3の濃度がLiNO3の濃度よりも高いことが好ましい。
 第一イオン交換工程で用いるNaNO3及びKNO3の混合溶融塩において、KNO3の濃度は、好ましくは0質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20~90質量%である。KNO3の濃度が高過ぎると、ガラス中に含まれるLiイオンと溶融塩中のNaイオンがイオン交換する際に形成される圧縮応力値が低下し過ぎるおそれがある。また、KNO3の濃度が低過ぎると、表面応力計による応力測定が困難になるおそれがある。
 第二イオン交換工程で用いるKNO3及びLiNO3の混合溶融塩において、LiNO3の濃度は、好ましくは0超~5質量%、0超~3質量%、0超~2質量%、0.1~1質量%である。LiNO3の濃度が低過ぎると、ガラス表面近傍におけるNaイオンが離脱し難くなる。一方、LiNO3の濃度が高過ぎると、ガラス表面近傍におけるNaイオンと溶融塩中のKイオンのイオン交換によって形成される圧縮応力値が低下し過ぎるおそれがある。
 化学強化用ガラスがガラス中にNaイオンを含み、1回のみのイオン交換処理を行う場合、KNO3溶融塩を含む溶融塩に化学強化用ガラスを浸漬させるイオン交換処理を行うことが好ましい。この場合、ガラス中に含まれるNaイオンと溶融塩中のKイオンがイオン交換する。
 化学強化用ガラスがガラス中にLiイオンを含み、1回のみのイオン交換処理を行う場合、NaNO3溶融塩を含む溶融塩に化学強化用ガラスを浸漬させるイオン交換処理を行うことが好ましい。この場合、ガラス中に含まれるLiイオンと溶融塩中のNaイオンがイオン交換する。
 化学強化工程S2の条件は、化学強化ガラス1の強化充填率FIOXが0.75以上1.00以下になるように適宜調整されることが好ましい。例えば、イオン交換処理における溶融塩の種類や濃度、処理温度、処理時間などを調整する。
 化学強化ガラス1が結晶化ガラスである場合には、図5に示すように、化学強化ガラスの製造方法は、上述のような準備工程S1の後、化学強化工程S2の前に、さらに加熱処理(結晶化)工程S3をさらに含む。加熱処理工程S3では、例えば、非晶質ガラスの化学強化用ガラスを700~840℃で0.1~15時間熱処理する。これにより、析出結晶としてβ-ユークリプタイト固溶体、β-スポジュメン固溶体及びジルコニアから選択される少なくとも一種をガラス中に析出させる。
 以下、本発明に係るガラス物品について実施例に基づいて説明する。なお、以下の実施例は単なる例示であって、本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
<化学強化用ガラスの作製>
 表1に記載のガラス組成を有する化学強化用ガラスを準備した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000013
 具体的には、表1に記載のガラス原料を調合し、試験溶融炉で溶融した。その後、得られた溶融ガラスを板状又はシート状に成形し、所定サイズに切断して化学強化用ガラスを得た。組成Dの化学強化用ガラスは、さらに、780℃で3時間の加熱処理を行った後に、830℃で1時間の加熱処理を行うことにより、結晶化ガラスとした。なお、組成A~Cの化学強化用ガラスの厚みは0.7mmとし、組成Dの化学強化用ガラスの厚みは0.6mmとした。また、このようにして得られた化学強化用ガラス試料について、破壊靭性値K1Cを測定した。得られた破壊靭性値K1Cは、後述の化学強化後の化学強化ガラスの厚み中心部の組成における破壊靭性値を指す。
<式(1)の導出>
 上述の化学強化用ガラスを、溶融塩の種類・処理時間(浸漬時間)・処理温度を変化させてイオン交換処理を行って化学強化ガラス(測定試料)を作製した。
 詳細には、すべての化学強化用ガラスに対して、イオン交換処理を1回のみ行った。組成A~Bの化学強化用ガラスについては、KNO3溶融塩に浸漬してイオン交換を行った。組成Cの化学強化用ガラスについては、NaNO3溶融塩に浸漬してイオン交換を行った。組成Dの化学強化用ガラス(結晶化ガラス)については、KNO3及びLiNO3の混合溶融塩に浸漬してイオン交換を行った。
 組成Aの化学強化用ガラスの処理時間(溶融塩への浸漬時間)は4~96時間の間で調整した。組成Bの化学強化用ガラスの処理時間は2~64時間の間で調整した。組成Cの化学強化用ガラスの処理時間は6~10時間の間で調整した。組成Dの化学強化用ガラスの処理時間は90時間又は120時間とした。
 組成A及びBの化学強化用ガラスの処理温度(溶融塩の温度)は450℃とした。組成Cの化学強化用ガラスの処理温度は380℃とした。組成Dの化学強化用ガラスの処理温度は430℃とした。
 そして、以上のように作製された各化学強化ガラスのペンドロップ試験による破壊時の破片数と、引張二乗面積UCTとの関係を調べた。その結果を図6に示す。図6では、横軸はUCT、縦軸は破壊時の破片数をそれぞれ示す。
 図7に示すように、ペンドロップ試験では、組成A~Dに対応する化学強化ガラス4を石定盤5の上に載置した状態で、ダイヤモンドペン6のペン先を化学強化ガラス4の主表面に落下衝突させ、化学強化ガラス4を破壊した。そして、このときの化学強化ガラス4の破片の数を測定した。化学強化ガラス4は、26mm×76mmの矩形状とした。化学強化ガラス4の厚みは、0.7mm(組成A~Cに対応する測定試料)又は0.6mm(組成Dに対応する測定試料)とした。ダイヤモンドペン6は、東京硝子機械(TGK)の品番579-50-62-1(重さ10g)を用いた。ダイヤモンドペン6の落下高さH1は、20mmとした。なお、破片数の測定方法としては、目視で化学強化ガラス4の破片数を計測する方法の他に、割れた破片の面積をランダムに測定して破片数を推定する方法などを用いることができる。
 化学強化ガラス4の引張二乗面積UCTは、式(2)より求めた。この際、化学強化ガラス4の応力プロファイルは、FSM-6000LE(折原製作所製)で得られる値、又は、FSM-6000LEとSLP-2000(折原製作所製)とで得られる値を合成した値に基づいて導出した。
 図6の結果から、組成A~Dの化学強化ガラス4のそれぞれにつき、破片数が必ず50個未満となる最大の引張二乗面積UCTの値(爆発しきい値UCT limit)を読み取り、破壊靭性値K1Cとの関係を調べた。その結果を、横軸に破壊靭性値K1C、縦軸に爆発しきい値UCT limitをとってグラフ化したものを図8に示す。なお、破片が破壊直後の10秒以内に50個以上測定された場合に、破壊時に粉々に割れる爆発的挙動を示す傾向があることが経験的に分かっている。
 図8の結果からも、破壊靭性値K1Cと爆発しきい値UCT limitとの間に相関があることが分かる。そして、同図の各プロットを直線近似すると、y=1.618x-0.121[MPa2・m]という関係式が得られる。つまり、式(3)に示すように、UCT limit=1.618K1C-0.121[MPa2・m]という関係式が得られる。したがって、化学強化ガラスの引張二乗面積UCTが、1.618K1C-0.121で表されるUCT limit以下となれば、化学強化ガラスの破損時に爆発的挙動を示しにくくなる。つまり、式(1)に示すように、UCT/UCT limitで定義される強化充填率FIOXが1以下となることが、化学強化ガラスの破損時に爆発的挙動の有無を正確に評価するための指標となり得る。
 ここで、各化学強化ガラスの破壊靭性値K1Cと、式(3)から算出される爆発しきい値UCT limitとの関係を表2に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000014
<式(1)を用いた化学強化ガラスの特性評価>
 上述の化学強化用ガラス(組成B、C、D)に対して表3に示す条件で化学強化を行って化学強化ガラスを作製し、各種特性を評価した。試料No.1~2、4~8は本発明の実施例であり、試料No.3は比較例である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000015
 試料No.1~4では第一イオン交換工程のみの計1回のイオン交換処理を行い、試料No.5~8では第一イオン交換工程及び第二イオン交換工程の計2回のイオン交換処理を行った。なお、表中の「Na100」は、NaNO3の濃度が100質量%の溶融塩に浸漬してイオン交換処理を行うことを意味し、「Na95/Li5」は、NaNO3の濃度が95質量%、KNO3の濃度が5質量%の溶融塩に浸漬してイオン交換処理を行うことを意味し、「K100」は、KNO3の濃度が100質量%の溶融塩に浸漬してイオン交換処理を行うことを意味する。
 K1Cは、JIS R1607に準拠したIndentation Fracture法(IF法)によって測定した値であり、測定10回の平均値である。なお、K1Cは、各ガラス試料をイオン交換する前に測定した値である。
 CS、DOLK、DOC、CT、CS30、CS50は、FSM-6000LEで測定される値から得られる応力プロファイル、又は、FSM-6000LEとSLP-2000で測定される値を合成して得られる応力プロファイルに基づいて算出した。
 UCT limitは、上述のように測定されたK1C及び式(3)を用いて測定した。
 UCTは、上述のように測定された応力プロファイル及び式(2)を用いて測定した。
 FIOXは、上述のように測定されたUCT limit、UCT及び式(1)を用いて測定した。
 加傷四点曲げ強度は、化学強化ガラスの表面に浅い傷を形成する加傷工程を行った後に、化学強化ガラスに曲げ応力を付与して破壊する曲げ破壊工程を行うことにより測定した。詳細には、加傷工程は、図9に示す試験装置(加傷装置)7によって行った。試験装置7は、重さ550gのスチール製のハンマ8を備える。ハンマ8は、棒状のアーム部9と、ヘッド部10とを備える。アーム部9の一端部(上端部)は支持軸11によって支持され、アーム部9は支持軸11まわりに回動可能とされている。ヘッド部10は、アーム部9の他端部(下端部)における側面部に設けられている。ヘッド部10は、サンドペーパ12を介して化学強化ガラス13の主表面13aと衝突する衝突面10aを有する。化学強化ガラス13は、主表面が鉛直方向に沿うように、SUS製の定盤14に支持されている。化学強化ガラス13の一方の主表面13aには、サンドペーパ(180番)12が固定されている。
 加傷工程では、アーム部9のヘッド部10を所定の落下高さH2(100mm)に配置した後、重力の作用により、アーム部9を化学強化ガラス13に向かって回動させることで、ヘッド部10の衝突面10aをサンドペーパ12及び化学強化ガラス13に衝突させた。これにより、化学強化ガラス13の主表面13aに、圧縮応力層の深さよりも浅い傷を形成した。
 図10に示すように、曲げ破壊工程では、四点曲げ試験機15を使用した。四点曲げ試験機15は、化学強化ガラス13を押圧する圧治具16と、化学強化ガラス13を支持する支持治具17とを備える。
 曲げ破壊工程では、四点曲げ試験機15によって化学強化ガラス13を破壊するために付与される曲げ応力を測定した。四点曲げ試験は、JIS-R1601に準じた方法を用いた。四点曲げ試験の具体的条件は、圧冶具16の幅W1を20mm、支持冶具17の幅W2を40mm、圧治具16の下降速度を3mm/minとした。なお、化学強化ガラス13は、加傷工程で傷を形成した主表面13aが支持治具17と接触するように配置した。
 爆発的挙動は、上述のペンドロップ試験(図7を参照)により、化学強化ガラスを破壊した際に、破壊直後の10秒以内に50個以上の破片が測定された場合に「有」、破壊直後の10秒以内に50個未満の破片が測定された場合に「無」とした。
 表3の結果からも、FIOXが1以下の試料No.1~2、4~8において、化学強化ガラスが破壊時に爆発的挙動を示さず、FIOXが1超の試料No.3において、化学強化ガラスが破壊時に爆発的挙動を示すことが確認できる。また、試料No.5~8は、イオン交換処理を複数回行っているが、このような化学強化ガラスの破壊時の爆発的挙動を評価する上でも、FIOXが有効であることが分かる。
 FIOXが同程度の値を示す試料No.7と試料No.8とを比較すると、K1Cが0.8MPa・m1/2以上となる試料No.7が、K1Cが0.8MPa・m1/2未満となる試料No.8よりも加傷四点曲げ強度が強くなることが確認できる。
 イオン交換処理を2回行った試料No.5~7では、CSが700MPa以上、CS30が140MPa以上、CS50が100MPa以上となる結果を得た。さらに、試料No.6~7では、DOLKが4.0μm以上となる結果を得た。なお、試料No.5~8の応力プロファイルは、図2に示したような屈曲部Xを有する。
 本発明の化学強化ガラスは、例えば、スマートフォン、携帯電話、タブレットコンピュータ、パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、タッチパネルディスプレイ、その他ディスプレイデバイスのカバーガラス、車載用表示デバイス、車載用パネル等に利用可能である。
1   化学強化ガラス
1a  主表面
1b  端面
2   圧縮応力層
3   引張応力層
4   化学強化ガラス(測定試料)
5   石定盤
6   ダイヤモンドペン
7   試験装置
8   ハンマ
9   アーム部
10  ヘッド部
11  支持軸
12  サンドペーパ
13  化学強化ガラス(測定試料)
14  定盤
15  試験機
16  圧冶具
17  支持冶具

Claims (11)

  1.  表層部に圧縮応力を有する圧縮応力層を備え、内部に引張応力を有する引張応力層を備える化学強化ガラスであって、
     式(A)で表される強化充填率FIOXが0.75以上1.00以下であることを特徴とする化学強化ガラス。
      UCT:式(B)で表される化学強化ガラスの引張二乗面積[MPa2・m]
      UCT limit:式(C)で表される化学強化ガラスの爆発しきい値[MPa2・m]
      t:化学強化ガラスの厚み[m]
      DOC:化学強化ガラスの圧縮応力層の深さ[m]
      x:化学強化ガラスの表面からの深さ[m]
      σ(x):化学強化ガラスの深さxにおける圧縮応力値[MPa]
      K1C:化学強化ガラスの厚み中心部の組成における破壊靭性値[MPa・m1/2
  2.  引張二乗面積UCTが0.90MPa2・m以上である請求項1に記載の化学強化ガラス。
  3.  破壊靭性値K1Cが0.80MPa・m1/2以上である請求項1又は2に記載の化学強化ガラス。
  4.  圧縮応力層の深さDOCが90μm以上であり、
     深さt/2における引張応力値CTが80MPa以上である請求項1又は2に記載の化学強化ガラス。
  5.  厚みtが0.1~1.5mmであり、
     表面における圧縮応力値CSが700MPa以上であり、
     深さ30μmにおける圧縮応力値CS30が140MPa以上であり、
     深さ50μmにおける圧縮応力値CS50が100MPa以上である請求項1又は2に記載の化学強化ガラス。
  6.  カリウムイオンの拡散深さDOLKが4μm以上である請求項1又は2に記載の化学強化ガラス。
  7.  圧縮応力を正の数、引張応力を負の数として表面から深さ方向に応力を測定して得られる応力プロファイルが屈曲部を有する請求項1又は2に記載の化学強化ガラス。
  8.  前記厚み中心部のガラス組成として、モル%で、SiO2 40%~80%、Al23 10%~30%、B23 0%~10%、Na2O 0.1%~25%、K2O 0%~10%、Li2O 0.1%~20%、MgO 0%~10%、P25 0%~10%を含有する請求項1又は2に記載の化学強化ガラス。
  9.  前記厚み中心部のガラス組成として、モル%で、SiO2 50%~70%、Al23 10%~20%、B23 0%~3%、Na2O 1%~25%、K2O 0%~10%、Li2O 3%~12%、MgO 0%~5%、P25 1%~10%を含有する請求項8に記載の化学強化ガラス。
  10.  前記厚み中心部のガラス組成として、モル%で、SiO2 40%~80%、Al23 10%~30%、B23 0%~3%、Na2O 5%~25%、K2O 0%~5.5%、Li2O 0%~0.09%、MgO 0%~10%を含有する請求項1又は2に記載の化学強化ガラス。
  11.  結晶化ガラスである請求項1又は2に記載の化学強化ガラス。
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