WO2024009730A1 - 天然ゴムを含む水性懸濁状農薬組成物 - Google Patents

Abstract

本発明は、耐雨性が改善され、優れた農薬活性効果を有する、天然ゴムを含有する水性懸濁状農薬組成物を提供することを課題とする。本発明は、農薬活性成分、天然ゴム、界面活性剤及び水を含有し、前記農薬活性成分と前記天然ゴムとの重量比が１００：３～１：３であることを特徴とする、水性懸濁状農薬組成物（但し種子処理用組成物を除く）に関する。

Description

天然ゴムを含む水性懸濁状農薬組成物

　本発明は、農薬組成物に関する。より詳しくは、本発明は、天然ゴムを含む水性懸濁状農薬組成物に関する。

　近年、マイクロプラスチックに起因する環境問題が起こっており、持続可能な開発目標（ＳＤＧｓ）（通称、グローバル・ゴールズ）に対する取り組みが求められている。その中で、天然資材を使用した環境配慮型の農薬製剤（農薬組成物）の開発が求められている。

　農薬製剤は、資材として固着剤（Binder）を含有してもよく、これまでに、様々な固着剤（Binder）が報告されている（例えば特許文献１を参照）。

　その中で、使用する固着剤（Binder）によっては、例えば、水性懸濁状農薬組成物を植物に散布した際に、降雨にさらされることにより、農薬活性成分が水に溶解して流亡し、所望の効果を十分に発揮できないという問題がある。この問題は、特に、水溶解度が高い農薬活性成分を含有する水性懸濁状農薬組成物の場合に顕著である。

特開２０１２－１８４２０９号公報

　本発明は、耐雨性が改善され、優れた農薬活性効果を有する、社会課題に適合した環境配慮型の水性懸濁状農薬組成物を提供することを課題とする。

　本発明者は、鋭意検討の結果、固着剤（Binder）として一定量の天然ゴムを含有させることによって、降雨による植物体（例えば、葉、茎）からの流亡が抑制され、優れた農薬活性効果を発揮することができる水性懸濁状農薬組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
　すなわち、本発明とは、次の通りである。
［１］　農薬活性成分、天然ゴム、界面活性剤及び水を含有し、
　前記農薬活性成分と前記天然ゴムとの重量比が１００：３～１：３であることを特徴とする、水性懸濁状農薬組成物（以下、「本発明の水性懸濁状農薬組成物」または「本発明（の）組成物」と称する）。
［２］　前記農薬活性成分が、融点が８０℃以上の農薬活性成分である、［１］に記載の水性懸濁状農薬組成物。
［３］　前記農薬活性成分の２０℃における水溶解度が、０．１～１００ｐｐｍである、［１］または［２］のいずれかに記載の水性懸濁状農薬組成物。
［４］　前記農薬活性成分の２０℃における水溶解度が、０．５～２０ｐｐｍである、［１］～［３］のいずれか１つに記載の水性懸濁状農薬組成物。
［５］　前記農薬活性成分が、インピルフルキサム、ピリダクロメチル、マンデストロビン及びオキサゾスルフィルからなる群より選ばれる少なくとも１種である、［１］～［４］のいずれか１つに記載の水性懸濁状農薬組成物。
［６］　前記界面活性剤が、リグニンスルホン酸塩及びポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルリン酸エステル塩からなる群より選ばれる少なくとも１種である、［１］～［５］のいずれか１つに記載の水性懸濁状農薬組成物。
［７］　前記農薬活性成分と前記天然ゴムとの重量比が、２０：１～１：２である、［１］～［６］のいずれか１つに記載の水性懸濁状農薬組成物。
［８］　前記水性懸濁状農薬組成物の重量当たり、前記農薬活性成分を１～５０重量％、前記天然ゴムを０．０３～４０重量％、前記界面活性剤を０．１～１０重量％、前記水を２０～９０重量％含有する、［１］～［７］のいずれか１つに記載の水性懸濁状農薬組成物。
［９］　前記水性懸濁状農薬組成物が、茎葉散布用である、［１］～［８］のいずれか１つに記載の水性懸濁状農薬組成物。
［１０］　［１］～［９］のいずれか１つに記載の水性懸濁状農薬組成物を水で希釈した水希釈液を植物に茎葉散布することを特徴とする、有害生物防除方法。
［１１］　農薬活性成分、界面活性剤及び水を含有する懸濁液に天然ゴムを添加する工程を有する、［１］～［９］のいずれか１つに記載の水性懸濁状農薬組成物の製造方法。
［１２］　有害生物防除のための、［１］～［９］のいずれか１つに記載の水性懸濁状農薬組成物の製造のための、天然ゴムの使用。
［１３］　有害生物防除のための、［１］～［９］のいずれか１つに記載の水性懸濁状農薬組成物の使用。

　本発明の水性懸濁状農薬組成物（但し種子処理用組成物を除く）は、天然資材である天然ゴムを含有することから、環境配慮型の組成物として、社会課題の解決に寄与することが期待できる。また、本発明の水性懸濁状農薬組成物は、水溶解度が高い農薬活性成分を含有する場合であっても、植物体（例えば、葉または茎）に散布後、栽培の間に、降雨や散水により、農薬活性成分が植物体から流出しにくく、耐雨性を有するため、降雨や散水による影響を大きく受けることなく、その農薬活性効果を十分に発揮することができる。

　本発明で使用される「農薬活性成分」とは、例えば、農作物の栽培等における、有害生物の防除、具体的には、害虫等の防除、および植物病害の防除、雑草等の除草、および植物の成長のための調節等において使用される活性成分が挙げられる。本発明の組成物は１種以上の農薬活性成分を含有する。
　かかる農薬活性成分としては、例えば、殺虫活性成分、殺ダニ活性成分、殺線虫活性成分、殺菌活性成分、除草活性成分、及び植物成長調節活性成分が挙げられる。特に、殺虫活性成分、殺ダニ活性成分、殺線虫活性成分及び殺菌活性成分が好ましい。

　本発明の農薬活性成分は、製造時の取扱い性の向上の観点から、融点が８０℃以上の農薬活性成分が好適に使用される。かかる融点が８０℃以上の農薬活性成分としては、例えば以下のものが挙げられる。

　融点が８０℃以上の殺虫活性成分、殺ダニ活性成分または殺線虫活性成分として、例えば、以下の成分が適宜選択される。デルタメトリン、トラロメトリン、アクリナトリン、プロポキスル、イソプロカルブ、チオジカルブ、ＸＭＣ、カルバリル、ピリミカーブ、カルボフラン、アセフェート、トリクロルホン、テトラクロルビンホス、ジフルベンズロン、クロルフルアズロン、ルフェヌロン、ヘキサフルムロン、フルフェノクスロン、フルシクロクスロン、シロマジン、ジアフェンチウロン、ヘキシチアゾクス、ノバルロン、テフルベンズロン、トリフルムロン、イミダクロプリド、アセタミプリド、クロチアニジン、ニテンピラム、チアメトキサム、ジノテフラン、チアクロプリド、スピノサド、フルベンジアミド、クロラントラニリプロール、シアントラニリプロール、テトラニリプロール、シクラニリプロール、フィプロニル、エチプロール、スピロテトラマト、スピロメシフェン、スピロジクロフェン、スピロピジオン、トリフルメゾピリム、スルホキサフロル、アバメクチン、エマメクチン安息香酸塩、レピメクチン、ミルベメクチン、ピメトロジン、ピリフルキナゾン、クロフェンテジン、ヘキシチアゾクス、エトキサゾール、クロルフェナピル、カルタップ、チオシクラム、ベンスルタップ、ブプロフェジン、クロマフェノジド、メトキシフェノジド、テブフェノジド、アミトラズ、フルアクリピリム、ビフェナゼート、フェンピロキシメート、ピリダベン、トルフェンピラド、インドキサカルブ、オキサゾスルフィル、メタフルミゾン、シエノピラフェン、ピフルブミド、フロニカミド、ブロフラニリド、フルキサメタミド、フルピリミン、フロメトキン、ベンズピリモキサン、ヒドラメチルノン、スルフルラミド、ホウ酸、ベータシフルトリン、チオキサザフェン、アフィドピロペン、フルアザインドリジン、フルオピラム、イソシクロセラム、ジンプロピリダズ、及びシクロブトリフルラム。

　融点が８０℃以上の殺菌活性成分として、例えば、以下の成分が適宜選択される。インピルフルキサム、フェンピラザミン、マンデストロビン、ベノミル、カルベンダジム、チアベンダゾール、チオファネートメチル、ジエトフェンカルブ、プロシミドン、イプロジオン、ビンクロゾリン、ジニコナゾール、エポキシコナゾール、テブコナゾール、ジフェノコナゾール、シプロコナゾール、トリアジメホン、フラメトピル、メプロニル、フルトラニル、チフルザミド、ホセチル アルミニウム、ピリメタニル、メパニピリム、フルジオキソニル、フェンピクロニル、ブラストサイジンＳ、カスガマイシン、ポリオキシン、バリダマイシン、アゾキシストロビン、クレソキシムメチル、メトミノストロビン、クロロタロニル、マンコゼブ、キャプタン、ホルペット、トリシクラゾール、ピロキロン、プロベナゾール、フサライド、シモキサニル、ジメトモルフ、ファモキサドン、オキソリニック酸、フルアジナム、フェリムゾン、ジクロシメット、オリサストロビン、イソチアニル、チアジニル、チウラム、フルオキサストロビン、フェンアミドン、ピリベンカルブ、フェンブコナゾール、ヘキサコナゾール、イミベンコナゾール、イプコナゾール、メトコナゾール、シメコナゾール、ヒドロキシイソキサゾール、ペンシクロン、フルオピコリド、ピリオフェノン、イソフェタミド、フルオピラム、チフルザミド、フルキサピロキサド、イソピラザム、ペンフルフェン、ペンチオピラド、ボスカリド、ピラジフルミド、シアゾファミド、アミスルブロム、アメトクトラジン、メパニピリム、オキサチアピプロリン、トリホリン、フェナリモル、オキスポコナゾールフマル酸塩、フェンヘキサミド、ピリブチカルブ、ベンチアバリカルブイソプロピル、マンジプロパミド、トルプロカルブ、アシベンゾラルSメチル、ホセチル アルミニウム、フルスルファミド、フルチアニル、ジクロベンチアゾクス、テブフロキン、ピカルブトラゾクス、ジラム、イミノクタジンアルベシル酸塩、イミノクタジン酢酸塩、ジチアノン、フルオルイミド、ベンゾビンジフルピル、プロチオコナゾール、カルボキシン、ピジフルメトフェン、フルトリアホール、トリチコナゾール、フルキンコナゾール、メチルテトラプロール、フェンピコキサミド、セダキサン、イソフルシプラム、シルチオファム、ビキサフェン、ジモキシストロビン、ピリダクロメチル、イプフルフェノキン、ブロムコナゾール、トリアジメノール、フロリルピコキサミド、フルオキサピプロリン、エタボキサム、キノフメリン、アミノピリフェン、メフェントリフルコナゾール、フルフェノキサジアザム、及びフルオキシチオコナゾール。

　融点が８０℃以上の除草活性成分として、例えば、以下の成分が適宜選択される。アトラジン、メトリブジン、フルオメツロン、イソプロツロン、ブロモキシニル、アイオキシニル、２,４－Ｄとその塩又はエステル、ジカンバとその塩、メコプロップ、ベンスルフロンメチル、メトスルフロンメチル、ニコスルフロン、プリミスルフロンメチル、シクロスルファムロン、イマゾスルフロン、プロピリスルフロン、スルホスルフロン、イマザピル、イマザキン、イマゼタピル、ビスピリバックナトリウム塩、アシフルオルフェン、アシフルオルフェンナトリウム塩、パラコート、パラコートジクロリド、フルメツラム、トリフルスルフロンメチル、フェノキサプロップＰエチル、ジフルフェニカン、ノルフルラゾン、イソキサフルトール、グルホシネートとその塩、グリホサートとその塩、ベンタゾン、メフェナセット、プロパニル、フルチアセットメチル、フルミクロラックペンチル、フルミオキサジン、ブロモブチド、ペントキサゾン、フェンキノトリオン、ピラクロニル、メタゾスルフロン、ピリミスルファン、トリアファモン、テフリルトリオン、トルピラレート、ピロキサスルホン、フェノキサスルホン、イプフェンカルバゾン、シクロピリモレート、フロルピラウキシフェンベンジル、クロランスラム、ジクロスラム、イマザモックス、及びクロリムロンエチル。

　融点が８０℃以上の植物成長調節活性成分として、例えば、以下の成分が適宜選択される。マレイン酸ヒドラジド、クロルメコートクロリド、ジベレリン酸、メピコートクロリド、チジアズロン、イナベンフィド、パクロブトラゾール、ＡＶＧ、ウニコナゾールＰ、及びプロヘキサジオンカルシウム。

　本発明の農薬活性成分は、耐雨性、すなわち降雨や散水による流されにくさの観点から、２０℃における水溶解度が０．１～１００ｐｐｍであることが好ましく、２０℃における水溶解度が０．１～５０ｐｐｍであることがより好ましく、２０℃における水溶解度が０．５～２０ｐｐｍであることが更に好ましい。

　本発明の農薬活性成分は、インピルフルキサム、ピリダクロメチル、マンデストロビン及びオキサゾスルフィルからなる群より選ばれる少なくとも１種の化合物であることが好ましい。

　本発明組成物は、当該本発明組成物の重量当たり、農薬活性成分を合計量で、１～５０重量％含有することが好ましく、１０～４０重量％含有することがより好ましい。
　ここで、特に断らない限り、重量％の数値は、本発明組成物の重量当たりで算出する。

　本発明組成物は、固着剤（Binder）として作用するアジュバントとして、１種以上の天然ゴムを有する。天然ゴムを使用することで、環境配慮型の製剤とすることができる。
　天然ゴムとは、ゴムノキの樹液を原料とする、ｃｉｓ－１,４－ポリイソプレンを含有する物質を意味する。ここで、一般的な天然ゴムの定義として、広義には、天然物由来の未変性品に加えて、アクリルモノマーなどでグラフト変性して得られる、化学的な構造を修飾した変性品を含むことがある。しかしながら、本発明においては、環境配慮型の農薬組成物を提供するという観点から、本明細書中に定義する天然ゴムとは、これら化学的に構造上修飾された変性品を含まない。

　一方で、ゴムノキの樹液に、凝固防止剤などの安定化剤（例えば、アンモニア）を単に加えただけの物質は、本願発明の天然ゴムに含み得る。天然ゴムラテックス由来のもの（天然ゴムラテックス中のゴム分）であってもよい。天然ゴムラテックスとしては、特に限定されず、例えば、フィールドラテックス（ゴムノキをタッピングして採取した生ラテックス）、ハイアンモニアラテックス（ハイアンモニア天然ゴムラテックス）、ロウアンモニアラテックス（ロウアンモニア天然ゴムラテックス）、遠心分離濃縮ラテックス、天然ゴムラテックスを界面活性剤や酵素等で処理した脱蛋白質ラテックス等が挙げられる。なお、このような天然ゴムラテックスは、これらのものから選ばれる１種または２種以上の組み合わせが挙げられる。このような天然ゴムラテックスとしては市販品として入手することができ、具体例としては、ＳｅＬａｔｅｘ（登録商標）６１１１（住友ゴム工業社製）、ＳｅＬａｔｅｘ（登録商標）１１０１（住友ゴム工業社製）、ＵＬＡＣＯＬ（登録商標）（レヂテックス社製）、ＬＡ－ＬＡＴＥＸ（レヂテックス社製）、ＨＡ－ＬＡＴＥＸ（レヂテックス社製）、ＵＮＩＭＡＣ　ＬＡＴＥＸ（ユニマック・ラバー社製）等が挙げられるが、これらに限定されない。

　本発明組成物は、固体の農薬活性成分の粒子が水に懸濁している水性懸濁状組成物（aqueous suspension concentrate、SCとも呼ばれる）であり、天然ゴムは、本発明組成物中に、水に懸濁（分散）している状態で存在する。
　本発明組成物は、天然ゴムを固着剤（Binder）として使用することで、合成品や他の天然資材を使用する場合と比較して、耐雨性を改善することができる。

　農薬活性成分と天然ゴムとの重量比は、１００：３～１：３であり、２０：１～１：２であることが好ましい。
　また、本発明組成物は、当該本発明組成物の重量当たり、天然ゴムを０．０３～４０重量％含有することが好ましく、０．１～４０重量％含有することがより好ましく、１～４０重量％含有することが更に好ましく、１．５～４０重量％含有することが最も好ましい。

　本発明組成物は、１種以上の界面活性剤を含有する。本発明で用いられる界面活性剤の例としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。本発明組成物においては、特に、アニオン性界面活性剤が好ましい。

　かかるアニオン性界面活性剤としては、例えば、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩、カルボン酸塩及びこれらの混合物である。
　スルホン酸塩としては、例えば、ナフタレンスルホン酸塩及びそのホルムアルデヒド縮合物、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、α－オレフィンスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸塩並びにジアルキルスルホコハク酸塩が挙げられる。
　硫酸エステル塩としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩が挙げられる。
　リン酸エステル塩としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル塩及びポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルリン酸エステル塩が挙げられる。
　カルボン酸塩としては、例えば、脂肪酸塩及びポリカルボン酸塩が挙げられる。

　かかるノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、アルキルポリグコシド及びアクリル共重合体が挙げられる。

　かかるカチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩及び第四級アンモニウム塩が挙げられる。

　かかる両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタインが挙げられる。

　かかる界面活性剤としては、製剤の保存安定性の観点から、リグニンスルホン酸塩及びポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルリン酸エステル塩からなる群より選ばれる少なくとも１種であることが好ましい。

　本発明において用いられるリグニンスルホン酸塩としては、例えば、リグニンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸カリウム、リグニンスルホン酸カルシウム、およびリグニンスルホン酸アンモニウムが挙げられるが、リグニンスルホン酸ナトリウムが好ましい。本発明において用いられるリグニンスルホン酸塩の重量平均分子量は、通常、２，０００～１５，０００の範囲である。本発明に用いられるリグニンスルホン酸塩の重量平均分子量は、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムを標準物質とした相対分子量を意味し、ゲル浸透クロマトグラフィー（ＧＰＣ）により測定することができる。リグニンスルホン酸塩は市販されているものを用いることができる。市販されているリグニンスルホン酸塩としては、例えば、ＲＥＡＸ　８５Ａ（リグニンスルホン酸ナトリウム、Ｉｎｇｅｖｉｔｙ社製）、ＲＥＡＸ　９０７（リグニンスルホン酸ナトリウム、Ｉｎｇｅｖｉｔｙ社製）、ＲＥＡＸ　９１０（リグニンスルホン酸ナトリウム、Ｉｎｇｅｖｉｔｙ社製）、Ｐｏｌｙｆｏｎ　Ｆ（リグニンスルホン酸ナトリウム、Ｉｎｇｅｖｉｔｙ社製）、ニューカルゲンＲＸ－Ｂ（リグニンスルホン酸ナトリウム、竹本油脂株式会社製）及びＰｏｌｙｆｏｎ　Ｈ（リグニンスルホン酸ナトリウム、Ｉｎｇｅｖｉｔｙ社製）が挙げられる。

　本発明に用いられるポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルリン酸エステル塩は市販されているものを用いることができる。市販されているポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルリン酸エステル塩としては、例えば、ソプロフォールＦＬ（ソルベイ日華社製）、ソプロフォールＦＬＫ（ソルベイ日華社製）、ＳＴＥＰＦＡＣ　ＴＳＰ　ＰＥ－Ｋ（ＳＴＥＰＡＮ社製）及びニューカルゲンＦＳ－３ＰＧ（竹本油脂株式会社製）が挙げられる。

　本発明組成物は、当該本発明組成物の重量当たり、界面活性剤を合計量で、０．１～１０重量％含有することが好ましく、２～１０重量％含有することがより好ましい。

　本発明組成物は、水を含有する。
　本発明組成物に用いられる水は特に制限されることがなく、例えば水道水、井水及びイオン交換水などの通常の水性懸濁状農薬組成物に用いられる水が挙げられる。

　本発明組成物は、当該本発明組成物の重量当たり、水を２０～９０重量％含有することが好ましく、２５～８０重量％含有することがより好ましい。

　本発明組成物は、さらに、通常の水性農薬組成物に用いられる製剤補助剤を１種以上含有していてもよい。かかる製剤補助剤としては、例えば、増粘剤、消泡剤、防腐剤、凍結防止剤及びｐＨ調整剤が挙げられる。

　かかる増粘剤としては、例えばキサンタンガム、ラムザンガム、ローカストビーンガム、グァーガム、カラギーナン、ウェランガム、アルギン酸、アルギン酸塩、トラガントガム等の天然多糖類；アルミニウムシリケート、マグネシウムアルミニウムシリケート、スメクタイト、ベントナイト、ヘクライト、合成含水珪酸、乾式シリカ等の鉱物質粉末；およびアルミナゾルが挙げられる。これらの増粘剤として、市販品をそのまま使用することができる。かかる市販品としては、例えば、キサンタンガムであるケルザン（ＣＰ　Ｋｅｌｃｏ社商品名）やケルザン　Ｓ　ＰＬＵＳ（ＣＰ　Ｋｅｌｃｏ社商品名）、マグネシウムアルミニウムシリケートであるビーガム　Ｒ（バンダービルト社商品名）、及び乾式シリカであるアエロジル２００（日本アエロジル社商品名）が挙げられる。これらの増粘剤は単独で、または２種以上を混合して用いることができる。
　本発明組成物が増粘剤を含有する場合、その合計含有量は、当該本発明組成物の重量当たり、０．０１～５重量％であることが好ましく、０．１～１重量％であることがより好ましい。

　かかる消泡剤としては、例えば、シリコーン系消泡剤が挙げられる。消泡剤は単独で、または２種以上を混合して用いてもよい。
　本発明組成物が消泡剤を含有する場合、その合計含有量は、当該本発明組成物の重量当たり、０．０１～３重量％であることが好ましい。

　かかる防腐剤としては、例えば、ｐ－ヒドロキシ安息香酸エステル、サリチル酸誘導体、イソチアゾリノン系防腐剤が挙げられる。これらの防腐剤は単独で、または２種以上を混合して用いることができる。
　本発明組成物が防腐剤を含有する場合、その合計含有量は、当該本発明組成物の重量当たり、０．００５～１重量％であることが好ましい。

　かかる凍結防止剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、尿素及びグリセリンが挙げられる。これらの凍結防止剤は単独で、または２種以上を混合して用いることができる。
　本発明組成物が凍結防止剤を含有する場合、その合計含有量は、当該本発明組成物の重量当たり、１～２０重量％であることが好ましい。

　かかるｐＨ調整剤としては、例えば、クエン酸一水和物、酢酸及びソルビン酸等のカルボン酸及びその塩、リン酸及びその塩、硫酸及びその塩、並びにホウ酸及びその塩等が挙げられる。
　本発明組成物がｐＨ調整剤を含有する場合、その合計含有量は、当該本発明組成物の重量当たり、０．０１～１０重量％であることが好ましい。

　本発明組成物は、農薬活性成分、天然ゴム、界面活性剤、水、さらに、必要に応じて増粘剤、消泡剤、防腐剤、凍結防止剤、ｐＨ調整剤等の製剤補助剤を用いて製造することができ、その製造方法は特に限定されない。

　本発明組成物の製造方法として、農薬活性成分、界面活性剤及び水を含有する懸濁液に天然ゴムを添加する工程を有する製造方法が挙げられる。
　より具体的には、例えば、
　農薬活性成分、界面活性剤および水を含有する懸濁液を製造する工程（第一工程）、
　該懸濁液に天然ゴムを添加し、均一に混合する工程（第二工程）、を有する製造方法が挙げられる。
　第一工程としては例えば、農薬活性成分、界面活性剤、さらに必要に応じて消泡剤、凍結防止剤等の製剤補助剤を水と混合し、得られた混合物をビーズミル等の湿式粉砕機で農薬活性成分の平均粒径が１０μｍ以下、好ましくは５μｍ以下となるように微粉砕し、懸濁液を得る工程が挙げられる。第一工程において、得られた混合物をディスパーミル等により更に懸濁（分散）させてもよい。本発明において粒径とは、体積中位径を意味する。体積中位径は、体積基準の頻度分布において累積頻度で５０％となる粒径を指し、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて湿式測定により求めることができる。より具体的には、被測定物を水中に分散させて該装置を用いて測定する。かかるレーザー回折式粒度分布測定装置としては、マルバーン社製のマスターサイザー３０００が用いられる。
　第二工程としては、第一工程で得られた懸濁液に、天然ゴム、必要に応じて増粘剤、防腐剤、ｐＨ調整剤等の製剤補助剤を加えて均一に混合する工程が挙げられる。尚、第二工程において、天然ゴムそのものではなく、天然ゴム含有のラテックスを使用することもできる。

　本発明組成物は、通常の水性懸濁状農薬組成物と同様の方法で、水田、畑地、果樹園、芝地、非農耕地等の場所に施用することができる。本発明組成物を水で希釈し、得られた水希釈液を上記場所に生育する植物に散布する等の方法により施用することができる。該水希釈液の散布方法としては公知の散布機等を用いた該水希釈液の茎葉散布が好ましい。また、本発明組成物の好ましい施用形態として、種子処理には用いない。

　本発明組成物を植物体に施用することにより、有害生物を防除することができる。

　かかる有害生物としては、農薬活性成分として殺虫活性成分、殺ダニ活性成分又は殺線虫活性成分が含まれる場合には、有害昆虫類や有害ダニ類等の有害節足動物、および線虫類等の線形動物、有害軟体動物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。

　かかる有害生物としては、農薬活性成分として、殺菌活性成分が含まれる場合には、真菌（fungi）、卵菌(Oomycete)、ネコブカビ(Phytomyxea) 、細菌(bacteria)等の植物病原性微生物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。真菌（fungi）としては、例えば、子嚢菌門（Ascomycota）、担子菌門（Basidiomycota）、Blasocladiomycota、Chytridiomycota、Mucoromycota、およびOlpidiomycotaが挙げられる。

　かかる有害生物としては、農薬活性成分として、除草活性成分が含まれる場合には、雑草が挙げられる。本発明における雑草とは、その場所においてその生育が望ましくない植物を意味する。

　次に本発明を製造例及び比較例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。

　まず、水性懸濁状農薬組成物の製造例及び比較製造例を示す。

　製造例及び比較製造例に記載された製品の詳細を以下に示す。
　インピルフルキサム：２０℃における水溶解度　１６．４ｐｐｍ、融点　１０４℃
　ピリダクロメチル：２０℃における水溶解度　０．８ｐｐｍ、融点　１７４℃
　ニューカルゲンＲＸ－Ｂ：リグニンスルホン酸ナトリウム、竹本油脂株式会社製
　プロピレングリコール：ＡＤＥＫＡ社製
　ＸＩＡＭＥＴＥＲ ＡＣＰ－１５００ Ｓｉｌｌｉｃｏｎｅ ｃｏｍｐｏｕｎｄ：シリコーン系消泡剤、東レ・ダウコーニング社製
　Ｐｒｏｘｅｌ　ＧＸＬ（Ｓ）：有効成分として１，２－ベンズイソチアゾリン－３－オンを含む防腐剤、Ｌｏｎｚａ社製
　ケルザン　Ｓ　Ｐｌｕｓ：キサンタンガム、ＣＰ　Ｋｅｌｃｏ社製
　ビーガム　Ｒ：マグネシウムアルミニウムシリケート、バンダービルト社製
　３５％硫酸：要薬品株式会社製
　ＵＬＡＣＯＬ（登録商標）：未変性の天然ゴム６０重量％を含有する水分散体、レヂテックス社製
　ナルスターＭＲ－１７４：合成ゴム（カルボキシ変性メタクリル酸メチル－ブタジエン共重合体）５０重量％を含有する水分散体、日本エイアンドエル社製

製造例１
　インピルフルキサム　１７．７重量部、ピリダクロメチル　１７．７重量部、ニューカルゲンＲＸ－Ｂ（竹本油脂株式会社製）　４重量部、プロピレングリコール（ＡＤＥＫＡ社製）　５重量部、ＸＩＡＭＥＴＥＲ ＡＣＰ－１５００ Ｓｉｌｌｉｃｏｎｅ ｃｏｍｐｏｕｎｄ（東レ・ダウコーニング社製）　０．１重量部及びイオン交換水　４１．７重量部を混合し、混合物（ｉ）を得た。得られた混合物（ｉ）を、横型ビーズミル（ＤＹＮＯ－ＭＩＬＬ ＫＤＬ、ＷＩＬＬＹ　Ａ．ＢＡＣＨＯＦＥＮ　ＡＧ　Ｍａｓｃｈｉｎｅｎｆａｂｒｉｋ社製）を用いて湿式粉砕し、懸濁液（ｉ）を得た。
　別途、Ｐｒｏｘｅｌ　ＧＸＬ（Ｓ）（Ｌｏｎｚａ社製）　０．２重量部、ケルザン　Ｓ　Ｐｌｕｓ（ＣＰ　Ｋｅｌｃｏ社製）　０．１重量部及びビーガム　Ｒ（バンダービルト社製）　０．２重量部をイオン交換水　９．５重量部に加え、得られた混合物を２時間撹拌して均一な混合物（ｉｉ）を得た。
　該混合物（ｉｉ）と先に得られた懸濁液（ｉ）、ＸＩＡＭＥＴＥＲ ＡＣＰ－１５００ Ｓｉｌｌｉｃｏｎｅ ｃｏｍｐｏｕｎｄ（東レ・ダウコーニング社製）　０．１重量部、３５％硫酸（要薬品株式会社製）　０．４重量部及びＵＬＡＣＯＬ（登録商標）（レヂテックス社製）　３．３重量部を混合させて表１に示す成分からなる本発明組成物（１）を得た。
　なお、表１に示す各成分の数値の単位は、水性懸濁状農薬組成物の全体量を１００重量％としたときの重量％である。

製造例２
　インピルフルキサム　１７．７重量部、ピリダクロメチル　１７．７重量部、ニューカルゲンＲＸ－Ｂ（竹本油脂株式会社製）　４重量部、プロピレングリコール（ＡＤＥＫＡ社製）　５重量部、ＸＩＡＭＥＴＥＲ ＡＣＰ－１５００ Ｓｉｌｌｉｃｏｎｅ ｃｏｍｐｏｕｎｄ（東レ・ダウコーニング社製）　０．１重量部及びイオン交換水　３６．７重量部を混合し、混合物（ｉｉｉ）を得た。得られた混合物（ｉｉｉ）を、横型ビーズミル（ＤＹＮＯ－ＭＩＬＬ ＫＤＬ、ＷＩＬＬＹ　Ａ．ＢＡＣＨＯＦＥＮ　ＡＧ　Ｍａｓｃｈｉｎｅｎｆａｂｒｉｋ社製）を用いて湿式粉砕し、懸濁液（ｉｉ）を得た。
　別途、Ｐｒｏｘｅｌ　ＧＸＬ（Ｓ）（Ｌｏｎｚａ社製）　０．２重量部、ケルザン　Ｓ　Ｐｌｕｓ（ＣＰ　Ｋｅｌｃｏ社製）　０．１重量部及びビーガム　Ｒ（バンダービルト社製）　０．２重量部をイオン交換水　９．５重量部に加え、得られた混合物を２時間撹拌して、均一な混合物（ｉｖ）を得た。
　該混合物（ｉｖ）と先に得られた懸濁液（ｉｉ）、ＸＩＡＭＥＴＥＲ ＡＣＰ－１５００ Ｓｉｌｌｉｃｏｎｅ ｃｏｍｐｏｕｎｄ（東レ・ダウコーニング社製）　０．１重量部、３５％硫酸（要薬品株式会社製）　０．４重量部及びＵＬＡＣＯＬ（登録商標）（レヂテックス社製）　８．３重量部を混合させて表１に示す成分からなる本発明組成物（２）を得た。

製造例３
　インピルフルキサム　１７．７重量部、ピリダクロメチル　１７．７重量部、ニューカルゲンＲＸ－Ｂ（竹本油脂株式会社製）　４重量部、プロピレングリコール（ＡＤＥＫＡ社製）　５重量部、ＸＩＡＭＥＴＥＲ ＡＣＰ－１５００ Ｓｉｌｌｉｃｏｎｅ ｃｏｍｐｏｕｎｄ（東レ・ダウコーニング社製）　０．１重量部及びイオン交換水　２８．３重量部を混合し、混合物（ｖ）を得た。得られた混合物（ｖ）を、横型ビーズミル（ＤＹＮＯ－ＭＩＬＬ ＫＤＬ、ＷＩＬＬＹ　Ａ．ＢＡＣＨＯＦＥＮ　ＡＧ　Ｍａｓｃｈｉｎｅｎｆａｂｒｉｋ社製）を用いて湿式粉砕し、懸濁液（ｉｉｉ）を得た。
　別途、Ｐｒｏｘｅｌ　ＧＸＬ（Ｓ）（Ｌｏｎｚａ社製）　０．２重量部、ケルザン　Ｓ　Ｐｌｕｓ（ＣＰ　Ｋｅｌｃｏ社製）　０．１重量部及びビーガム　Ｒ（バンダービルト社製）　０．２重量部をイオン交換水　９．５重量部に加え、得られた混合物を２時間撹拌して均一な混合物（ｖｉ）を得た。
　該混合物（ｖｉ）と先に得られた懸濁液（ｉｉｉ）、ＸＩＡＭＥＴＥＲ ＡＣＰ－１５００ Ｓｉｌｌｉｃｏｎｅ ｃｏｍｐｏｕｎｄ（東レ・ダウコーニング社製）　０．１重量部、３５％硫酸（要薬品株式会社製）　０．４重量部及びＵＬＡＣＯＬ（登録商標）（レヂテックス社製）　１６．７重量部を混合させて表１に示す成分からなる本発明組成物（３）を得た。

製造例４
　インピルフルキサム　１７．７重量部、ピリダクロメチル　１７．７重量部、ニューカルゲンＲＸ－Ｂ（竹本油脂株式会社製）　４重量部、プロピレングリコール（ＡＤＥＫＡ社製）　５重量部、ＸＩＡＭＥＴＥＲ ＡＣＰ－１５００ Ｓｉｌｌｉｃｏｎｅ ｃｏｍｐｏｕｎｄ（東レ・ダウコーニング社製）　０．１重量部及びイオン交換水　２３. ３重量部を混合し、混合物（ｖｉｉ）を得た。得られた混合物（ｖｉｉ）を、横型ビーズミル（ＤＹＮＯ－ＭＩＬＬ ＫＤＬ、ＷＩＬＬＹ　Ａ．ＢＡＣＨＯＦＥＮ　ＡＧ　Ｍａｓｃｈｉｎｅｎｆａｂｒｉｋ社製）を用いて湿式粉砕し、懸濁液（ｉｖ）を得た。
　別途、Ｐｒｏｘｅｌ　ＧＸＬ（Ｓ）（Ｌｏｎｚａ社製）　０．２重量部、ケルザン　Ｓ　Ｐｌｕｓ（ＣＰ　Ｋｅｌｃｏ社製）　０．１重量部及びビーガム　Ｒ（バンダービルト社製）　０．２重量部をイオン交換水　６．２重量部に加え、得られた混合物を２時間撹拌して均一な混合物（ｖｉｉｉ）を得た。
　該混合物（ｖｉｉｉ）と先に得られた懸濁液（ｉｖ）、ＸＩＡＭＥＴＥＲ ＡＣＰ－１５００ Ｓｉｌｌｉｃｏｎｅ ｃｏｍｐｏｕｎｄ（東レ・ダウコーニング社製）　０．１重量部、３５％硫酸（要薬品株式会社製）　０．４重量部及びＵＬＡＣＯＬ（登録商標）（レヂテックス社製）　２５重量部を混合させて表１に示す成分からなる本発明組成物（４）を得た。

比較製造例１
　インピルフルキサム　１７．７重量部、ピリダクロメチル　１７．７重量部、ニューカルゲンＲＸ－Ｂ（竹本油脂株式会社製）　４重量部、プロピレングリコール（ＡＤＥＫＡ社製）　５重量部、ＸＩＡＭＥＴＥＲ ＡＣＰ－１５００ Ｓｉｌｌｉｃｏｎｅ ｃｏｍｐｏｕｎｄ（東レ・ダウコーニング社製）　０．１重量部及びイオン交換水　４５重量部を混合し、混合物（ｉｘ）を得た。得られた混合物（ｉｘ）を、横型ビーズミル（ＤＹＮＯ－ＭＩＬＬ ＫＤＬ、ＷＩＬＬＹ　Ａ．ＢＡＣＨＯＦＥＮ　ＡＧ　Ｍａｓｃｈｉｎｅｎｆａｂｒｉｋ社製）を用いて湿式粉砕し、懸濁液（ｖ）を得た。
　別途、Ｐｒｏｘｅｌ　ＧＸＬ（Ｓ）（Ｌｏｎｚａ社製）　０．２重量部、ケルザン　Ｓ　Ｐｌｕｓ（ＣＰ　Ｋｅｌｃｏ社製）　０．１重量部及びビーガム　Ｒ（バンダービルト社製）　０．２重量部をイオン交換水　９．５重量部に加え、得られた混合物を２時間撹拌して均一な混合物（ｘ）を得た。
　該混合物（ｘ）と先に得られた懸濁液（ｖ）、ＸＩＡＭＥＴＥＲ ＡＣＰ－１５００ Ｓｉｌｌｉｃｏｎｅ ｃｏｍｐｏｕｎｄ（東レ・ダウコーニング社製）　０．１重量部及び３５％硫酸（要薬品株式会社製）　０．４重量部を混合させて表１に示す成分からなる比較組成物（１）を得た。

比較製造例２
　インピルフルキサム　１７．７重量部、ピリダクロメチル　１７．７重量部、ニューカルゲンＲＸ－Ｂ（竹本油脂株式会社製）　４重量部、プロピレングリコール（ＡＤＥＫＡ社製）　５重量部、ＸＩＡＭＥＴＥＲ ＡＣＰ－１５００ Ｓｉｌｌｉｃｏｎｅ ｃｏｍｐｏｕｎｄ（東レ・ダウコーニング社製）　０．１重量部及びイオン交換水　４３．３重量部を混合し、混合物（ｘｉ）を得た。得られた混合物（ｘｉ）を、横型ビーズミル（ＤＹＮＯ－ＭＩＬＬ ＫＤＬ、ＷＩＬＬＹ　Ａ．ＢＡＣＨＯＦＥＮ　ＡＧ　Ｍａｓｃｈｉｎｅｎｆａｂｒｉｋ社製）を用いて湿式粉砕し、懸濁液（ｖｉ）を得た。
　別途、Ｐｒｏｘｅｌ　ＧＸＬ（Ｓ）（Ｌｏｎｚａ社製）　０．２重量部、ケルザン　Ｓ　Ｐｌｕｓ（ＣＰ　Ｋｅｌｃｏ社製）　０．１重量部及びビーガム　Ｒ（バンダービルト社製）　０．２重量部をイオン交換水　９．５重量部に加え、得られた混合物を２時間撹拌して均一な混合物（ｘｉｉ）を得た。
　該混合物（ｘｉｉ）と先に得られた懸濁液（ｖｉ）、ＸＩＡＭＥＴＥＲ ＡＣＰ－１５００ Ｓｉｌｌｉｃｏｎｅ ｃｏｍｐｏｕｎｄ（東レ・ダウコーニング社製）　０．１重量部、３５％硫酸（要薬品株式会社製）　０．４重量部及びＵＬＡＣＯＬ（登録商標）（レヂテックス社製）　１．７重量部を混合させて表１に示す成分からなる比較組成物（２）を得た。

比較製造例３
　インピルフルキサム　１７．７重量部、ピリダクロメチル　１７．７重量部、ニューカルゲンＲＸ－Ｂ（竹本油脂株式会社製）　４重量部、プロピレングリコール（ＡＤＥＫＡ社製）　５重量部、ＸＩＡＭＥＴＥＲ ＡＣＰ－１５００ Ｓｉｌｌｉｃｏｎｅ ｃｏｍｐｏｕｎｄ（東レ・ダウコーニング社製）　０．１重量部及びイオン交換水　３５重量部を混合し、混合物（ｘｉｉｉ）を得た。得られた混合物（ｘｉｉｉ）を、横型ビーズミル（ＤＹＮＯ－ＭＩＬＬ ＫＤＬ、ＷＩＬＬＹ　Ａ．ＢＡＣＨＯＦＥＮ　ＡＧ　Ｍａｓｃｈｉｎｅｎｆａｂｒｉｋ社製）を用いて湿式粉砕し、懸濁液（ｖｉｉ）を得た。
　別途、Ｐｒｏｘｅｌ　ＧＸＬ（Ｓ）（Ｌｏｎｚａ社製）　０．２重量部、ケルザン　Ｓ　Ｐｌｕｓ（ＣＰ　Ｋｅｌｃｏ社製）　０．１重量部及びビーガム　Ｒ（バンダービルト社製）　０．２重量部をイオン交換水　９．５重量部に加え、得られた混合物を２時間撹拌して均一な混合物（ｘｉｖ）を得た。
　該混合物（ｘｉｖ）と先に得られた懸濁液（ｖｉｉ）、ＸＩＡＭＥＴＥＲ ＡＣＰ－１５００ Ｓｉｌｌｉｃｏｎｅ ｃｏｍｐｏｕｎｄ（東レ・ダウコーニング社製）　０．１重量部、３５％硫酸（要薬品株式会社製）　０．４重量部及びナルスターＭＲ－１７４（日本エイアンドエル社製）　１０重量部を混合させて表１に示す成分からなる比較組成物（３）を得た。

　次に、本発明組成物の耐水性（耐雨性）について、試験例を示す。

試験例１
　プラスチックポットに土壌を詰め、そこにコムギを播種し、温室内で生育させた。その後、コムギの葉を先端から４ｃｍの長さになるように裁断した。
　次に、前記製造例１～４及び比較製造例１～３で得た水性懸濁状農薬組成物をそれぞれ水で２０００倍に希釈した。マイクロピペッター（エッペンドルフ製）を用いて得られた水希釈液４μLを上記の裁断後のコムギ葉面の中心部に滴下し、風乾させた。
　次に、電動ピペッター（エッペンドルフ製）を用いて水５０ｍLをコムギ葉面上の水希釈液の処理部分の真上から流すことでコムギ葉面をリンスし、リンスに用いた水はすべてポリカップへ回収した。回収した水中に存在する有効成分量をLC/MSにて定量し、数１の式から有効成分の残存率を算出した。なお、数１の式中のコムギ葉面に処理した有効成分量は、裁断後のコムギ葉面の中心部に水希釈液４μLを処理した直後に電動ピペッター（エッペンドルフ製）を用いてアセトニトリル５０ｍLをコムギ葉面上の水希釈液の処理部分の真上から流すことでコムギ葉面をリンスし、リンスに用いたアセトニトリルをすべてポリカップへ回収し、回収したアセトニトリル中に存在する有効成分量をLC/MSにて定量することで算出した。残存率が高いほど、水に流されにくく、耐雨性が高いと評価できる。結果を表１に示す。

　「固着剤成分／農薬活性成分」とは、農薬活性成分に対する天然ゴム又は合成ゴムの重量％を示す。

　表１に示す通り、本発明組成物は、農薬活性成分の残存率が高く、耐雨性が改善される。特に、水溶解度が高い農薬活性成分を含有する場合に、耐雨性の改善の程度が大きくなる。

　本発明によれば、天然資材である天然ゴムを含む、環境配慮型の水性懸濁状農薬組成物を提供することができる。また、処理した植物体（例えば、葉または茎）から、降雨や散水などの水によって流出するのを有意に抑制することができ、優れた農薬活性効果を有する水性懸濁状農薬組成物を提供することができる。

Claims (13)

1. 　農薬活性成分、天然ゴム、界面活性剤及び水を含有し、
   　前記農薬活性成分と前記天然ゴムとの重量比が１００：３～１：３であることを特徴とする、水性懸濁状農薬組成物。
2. 　前記農薬活性成分が、融点が８０℃以上の農薬活性成分である、請求項１に記載の水性懸濁状農薬組成物。
3. 　前記農薬活性成分の２０℃における水溶解度が、０．１～１００ｐｐｍである、請求項１または２のいずれかに記載の水性懸濁状農薬組成物。
4. 　前記農薬活性成分の２０℃における水溶解度が、０．５～２０ｐｐｍである、請求項１～３のいずれか１項に記載の水性懸濁状農薬組成物。
5. 　前記農薬活性成分が、インピルフルキサム、ピリダクロメチル、マンデストロビン及びオキサゾスルフィルからなる群より選ばれる少なくとも１種である、請求項１～４のいずれか１項に記載の水性懸濁状農薬組成物。
6. 　前記界面活性剤が、リグニンスルホン酸塩及びポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルリン酸エステル塩からなる群より選ばれる少なくとも１種である、請求項１～５のいずれか１項に記載の水性懸濁状農薬組成物。
7. 　前記農薬活性成分と前記天然ゴムとの重量比が、２０：１～１：２である、請求項１～６のいずれか１項に記載の水性懸濁状農薬組成物。
8. 　前記水性懸濁状農薬組成物の重量当たり、前記農薬活性成分を１～５０重量％、前記天然ゴムを０．０３～４０重量％、前記界面活性剤を０．１～１０重量％、前記水を２０～９０重量％含有する、請求項１～７のいずれか１項に記載の水性懸濁状農薬組成物。
9. 　前記水性懸濁状農薬組成物が、茎葉散布用である、請求項１～８のいずれか１項に記載の水性懸濁状農薬組成物。
10. 　請求項１～９のいずれか１項に記載の水性懸濁状農薬組成物を水で希釈した水希釈液を植物に茎葉散布することを特徴とする、有害生物防除方法。
11. 　農薬活性成分、界面活性剤及び水を含有する懸濁液に天然ゴムを添加する工程を有する、請求項１～９のいずれか１項に記載の水性懸濁状農薬組成物の製造方法。
12. 　有害生物防除のための、請求項１～９のいずれか１項に記載の水性懸濁状農薬組成物の製造のための、天然ゴムの使用。
13. 　有害生物防除のための、請求項１～９のいずれか１項に記載の水性懸濁状農薬組成物の使用。