WO2023085134A1 - 光ファイバ - Google Patents
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Abstract
本発明の一態様である光ファイバ(1)は、コア部(1a)と、前記コア部の最大屈折率よりも屈折率が低く、前記コア部の外周を取り囲むクラッド部(1b)と、を備え、前記コア部は、ゲルマニウムが添加されたセンタコアと、前記センタコアの外周を取り囲み、前記クラッド部の平均屈折率に対する比屈折率差の最小値である-Δmaxが負である低屈折率層と、を含み、前記センタコアにおける残留圧縮応力が40MPa以上150MPa以下であり、前記クラッド部の平均屈折率に対する前記センタコアの平均の最大比屈折率差であるΔ1は0.8%以下である。
Description
本発明は、光ファイバに関する。
次世代通信インフラの実現に向けて、様々な環境で安定した通信を可能とする低曲げ損失光ファイバの注目が高まっている。低曲げ損失を実現する取組として、主に屈折率プロファイルの制御が挙げられる。例えばトレンチ型プロファイルの場合、クラッド領域にトレンチ層を設けることで容易に曲げ損失を低減することが可能であり、かつMFD(モードフィールド径)などの他の特性についても良好な特性を実現する事が可能である。
一方、光ファイバにおける破断特性などの特性改善のために、残留応力を有する光ファイバが開示されている(特許文献1~5)。
屈折率プロファイル制御技術は、ドーパントによる制御が主な手段であった。たとえば、曲げ損失低減のためにコア部の屈折率を大きくする場合、クラッド部の屈折率を下げる、あるいはコア部のドーパント量を増やすことにより、コア部のクラッド部に対する比屈折率差を大きくする手段が採用されていた。そのためドーパント添加に伴うレイリー散乱の増加による伝送損失の悪化や、ドーパント添加技術の確立などの懸念点があった。
一方、光ファイバにおける残留応力と光ファイバ特性、特に耐曲げ特性との関係については、十分な検討がされていなかった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、伝送損失の増加が抑制されながら低曲げ損失である光ファイバを提供することにある。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様は、コア部と、前記コア部の最大屈折率よりも屈折率が低く、前記コア部の外周を取り囲むクラッド部と、を備え、前記コア部は、ゲルマニウムが添加されたセンタコアと、前記センタコアの外周を取り囲み、前記クラッド部の平均屈折率に対する比屈折率差の最小値である-Δmaxが負である低屈折率層と、を含み、前記センタコアにおける残留圧縮応力が40MPa以上150MPa以下であり、前記クラッド部の平均屈折率に対する前記センタコアの平均の最大比屈折率差であるΔ1は0.8%以下である、光ファイバである。
前記-Δmaxが-0.5%以上-0.1%以下であるものでもよい。
前記低屈折率層は、前記センタコアと離隔したトレンチ層であるものでもよい。
前記センタコアの直径が3μm以上8μm以下であり、前記トレンチ層の外径が9μm以上20μm以下であるものでもよい。
前記センタコアの直径が3.5μm以上7.5μm以下であり、前記トレンチ層の外径が9.5μm以上19μm以下であるものでもよい。
前記センタコアの直径が3.5μm以上5μm以下であり、前記トレンチ層の外径が12μm以上16μm以下であるものでもよい。
前記低屈折率層は、前記センタコアと隣接したディプレスト層であるものでもよい。
前記センタコアの直径が3μm以上8μm以下であり、前記ディプレスト層の外径が9μm以上20μm以下であるものでもよい。
前記センタコアの直径が3.5μm以上7.5μm以下であり、前記ディプレスト層の外径が9.5μm以上19μm以下であるものでもよい。
前記センタコアの直径が3.5μm以上5μm以下であり、前記ディプレスト層の外径が12μm以上16μm以下であるものでもよい。
径方向において、前記センタコアから前記低屈折率層へ比屈折率差が連続的に変化しているものでもよい。
前記比屈折率差が連続的に変化するとは、前記比屈折率差を表す屈折率プロファイルが急激に屈曲せずに滑らかに変化し、その変化量が径方向において1μm当たり0.1%以下であることを意味するものでもよい。
前記低屈折率層における残留圧縮応力が20MPa以上200MPa以下であるものでもよい。
前記低屈折率層は、フッ素を含むものでもよい。
波長1550nmにおいて伝送損失が0.190dB/km以下であり、波長1310nmにおいてモードフィールド径が8.6μm以上であり、ケーブルカットオフ波長が1260nm以下であり、零分散波長が1300nm以上であるものでもよい。
波長1550nmにおいて、直径20mmで巻いたときのマクロベンド損失が0.1dB/turn以下であるものでもよい。
クラッド径が125μm±10μmの範囲内であるものでもよい。
クラッド径が115μm±10μmの範囲内であるものでもよい。
クラッド径が105μm±10μmの範囲内であるものでもよい。
クラッド径が95μm±10μmの範囲内であるものでもよい。
クラッド径が85μm±10μmの範囲内であるものでもよい。
前記クラッド部の外周を取り囲むプライマリ層と、前記プライマリ層の外周を取り囲むセカンダリ層とを含むコーティング部をさらに備え、前記セカンダリ層の外径は260μm以下であり、前記プライマリ層はヤング率が0.2MPa以上3MPa以下の樹脂からなり、前記セカンダリ層はヤング率が5MPa以上2000MPa以下の樹脂からなるものでもよい。
前記コア部と前記クラッド部とで、残留応力の差の最大値が40MPa以上220MPa以下であるものでもよい。
前記コア部と前記クラッド部とで、残留応力の差の最大値が70MPa以上220MPa以下であるものでもよい。
本発明によれは、伝送損失の増加が抑制されながら低曲げ損失である光ファイバを実現できるという効果を奏する。
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する構成要素には適宜同一の符号を付している。また、本明細書においては、カットオフ波長または実効カットオフ波長とは、国際通信連合(ITU)のITU-T G.650.1で定義するケーブルカットオフ波長(λcc)をいう。また、その他、本明細書で特に定義しない用語についてはG.650.1およびG.650.2における定義、測定方法に従うものとする。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る光ファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。光ファイバ1は、石英系ガラスからなり、コア部1aと、コア部1aの外周を取り囲み、コア部1aの最大屈折率よりも屈折率が低いクラッド部1bとを備える。なお、光ファイバ1におけるコア部1aとクラッド部1bとを備える部分は、光ファイバにおいてガラスからなる部分であり、ガラス光ファイバと記載する場合がある。また、光ファイバ1は、クラッド部1bの外周を取り囲むコーティング部1cを備える。コーティング部1cは、クラッド部1bの外周を取り囲むプライマリ層1caと、プライマリ層1caの外周を取り囲むセカンダリ層1cbとを有する。コーティング部1cを備える光ファイバは、光ファイバ心線と記載する場合がある。
図1は、実施形態1に係る光ファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。光ファイバ1は、石英系ガラスからなり、コア部1aと、コア部1aの外周を取り囲み、コア部1aの最大屈折率よりも屈折率が低いクラッド部1bとを備える。なお、光ファイバ1におけるコア部1aとクラッド部1bとを備える部分は、光ファイバにおいてガラスからなる部分であり、ガラス光ファイバと記載する場合がある。また、光ファイバ1は、クラッド部1bの外周を取り囲むコーティング部1cを備える。コーティング部1cは、クラッド部1bの外周を取り囲むプライマリ層1caと、プライマリ層1caの外周を取り囲むセカンダリ層1cbとを有する。コーティング部1cを備える光ファイバは、光ファイバ心線と記載する場合がある。
クラッド部1bの外径(クラッド径)は、特に限定されないが、125μm±10μmの範囲内であることが好ましい。また、クラッド径は、光ファイバ1の細径化の観点から、115μm±10μmの範囲内であってもよく、105μm±10μmの範囲内であってもよく、95μm±10μmの範囲内であってもよく、85μm±10μmの範囲内であってもよい。
セカンダリ層1cbの外径は、たとえば260μm以下であるが、クラッド径の細径化に応じて細径にしてもよい。また、プライマリ層1caは、たとえばヤング率が0.2MPa以上3MPa以下の樹脂からなる。また、セカンダリ層1cbは、たとえばヤング率が5MPa以上2000MPa以下の樹脂からなる。
プライマリ層1caを構成する樹脂、およびセカンダリ層1cbを構成する樹脂は、たとえば、紫外線硬化樹脂である。紫外線硬化樹脂は、たとえば、オリゴマー、希釈モノマー、光重合開始剤、シランカップリング剤、増感剤、滑剤等、各種の樹脂材料と添加剤とを配合したものである。オリゴマーとしては、ポリエーテル系ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、シリコーンアクリレート等、従来公知の材料を用いることができる。希釈モノマーとしては、単官能モノマー、多官能モノマー等、従来公知の材料を用いることができる。また、添加剤は、上記したものに限定されず、紫外線硬化樹脂等に対して使用される従来公知の添加剤等を広く用いることができる。
図2は、実施形態1に係る光ファイバの屈折率プロファイルおよび対応する残留応力の模式図である。図2に示す屈折率プロファイルは、いわゆるトレンチ型の屈折率プロファイルであり、比屈折率差を表している。図2において、プロファイルP11がコア部1aの屈折率プロファイルを示し、プロファイルP12がクラッド部1bの屈折率プロファイルを示す。トレンチ型の屈折率プロファイルでは、コア部1aは、直径が2aのセンタコアと、センタコアの外周を取り囲むように形成されており、屈折率がセンタコアの最大屈折率よりも小さく内径が2aで外径が2bの中間層と、中間層の外周を取り囲むように形成されており、屈折率がクラッド部の屈折率よりも小さく内径が2bで外径が2cのトレンチ層とで構成されている。プロファイルP11aはセンタコアの屈折率プロファイルであり、プロファイルP11bは中間層の屈折率プロファイルであり、プロファイルP11cはトレンチ層の屈折率プロファイルである。
センタコアは、コア部1aのなかで平均の屈折率が最大である部分である。クラッド部1bの平均屈折率に対するセンタコアの平均の最大比屈折率差はΔ1である。トレンチ層は、センタコアの外周を取り囲み、クラッド部1bの平均屈折率に対する比屈折率差の最小値である-Δmaxが負であり、低屈折率層の一例である。なお、図2において、-ΔmaxはΔ2と記載している。トレンチ層は、中間層が介在することによってセンタコアと離隔している。
中間層では、径方向において、内側から外側へ比屈折率差が連続的に変化している。その結果、光ファイバ1では、径方向において、センタコアからトレンチ層へ比屈折率差が連続的に変化している。ここで、比屈折率差が連続的に変化するとは、当該比屈折率差を表す屈折率プロファイルが急激に屈曲せずに滑らかに変化し、その変化量が径方向において1μm当たり0.1%以下であることを意味する。これに対して、中間層とトレンチ層との境界は、比屈折率差の変化量で定義できる。たとえば、比屈折率差の変化量を中心側から見ていった場合、径方向において1μm当たり0.1%以下であればそこは中間層であり、0.1%を超えたら境界を越えてトレンチ層に移ったと言える。
なお、コア部1aのセンタコアの屈折率プロファイルは、幾何学的に理想的な形状のステップ型である場合だけでなく、頂部の形状が平坦ではなく製造特性により凹凸が形成されたり、頂部から裾を引くような形状となっていたりする場合がある。この場合、製造設計上のコア部1aのコア直径2a(センタコアの直径)の範囲内における、屈折率プロファイルの頂部で略平坦である領域の屈折率が、Δ1を決定する指標となる。なお、略平坦である領域が複数個所に分かれていると思われる場合や、あるいは連続的な変化が起こっていて略平坦である領域の定義が難しい場合も、隣の層に向かって急激に屈折率が変化する部分以外のコア部の少なくともいずれかの部分が下記のΔ1の範囲に入っていて、最大値と最小値とのΔの差が、或る値±30%以内であれば、所望に近い特性を出すことが可能であることを確認しており、特に問題はない。
つぎに、光ファイバ1のコア部1aおよびクラッド部1bの構成材料について説明する。コア部1aのセンタコアは、ゲルマニウム(Ge)が添加された石英ガラスからなる。Geは、石英ガラスの屈折率を上昇させるドーパントである。また、トレンチ層は、その少なくとも一部が、屈折率を低下させるドーパントであるたとえばフッ素(F)またはホウ素(B)を含む石英ガラスからなる。中間層は、クラッド部1bと同じ成分またはそれに近い成分の石英ガラスからなる。
クラッド部1bは、たとえば、純石英ガラスからなる。純石英ガラスとは、屈折率を変化させるドーパントを実質的に含まず、波長1550nmにおける屈折率が約1.444である、きわめて高純度の石英ガラスである。ただし、クラッド部1bにドーパントが添加されていてもよい。
ここで、図2にも示すように、光ファイバ1では、コア部1aが残留圧縮応力を有しており、特にセンタコアにおける残留圧縮応力は40MPa以上150MPa以下である。このようにセンタコアに大きな残留圧縮応力がある結果、センタコアには光弾性効果が働き、Geなどの屈折率を上昇させるドーパントによる屈折率上昇効果に加えて、光弾性効果により屈折率が上昇する。したがって、同じΔ1を実現するためのドーパントの添加量を少なくできる。これにより、ドーパントによるレイリー散乱の発生を比較的少なくできるので、伝送損失を低減できる。また、Δ1を光弾性効果によって上昇させて低曲げ損失特性を実現できる。
センタコアにおける残留圧縮応力が40MPa以上であれば、光弾性効果による屈折率上昇の効果が十分であり、実用上は150MPa以下が好ましい。150MPaより大きい残留圧縮応力が有るような場合は、後述する線引きの際の温度が低温であり、ガラス構造欠陥の生成により伝送損失が悪化してしまう可能性がある。
さらに、光ファイバ1では、クラッド部1bが残留引張応力を有している。その結果、コア部1aとクラッド部1bとで、残留応力の差が大きくなるので、比屈折率差も大きくなり、伝送損失の増加が抑制されながら低曲げ損失を実現する上で好ましい。
したがって、実施形態1に係る光ファイバ1は、伝送損失の増加が抑制されながら低曲げ損失であるという特性を有する。
なお、センタコアのΔ1は、0.8%以下であれば、Geなどのドーパントを少なくでき、伝送損失の増加を抑制する点で好ましい。また、センタコアのΔ1は、0.8%以下であれば、製造時に発泡が発生することを抑制する点でも好ましい。
また、センタコアのΔ1は、0.25%よりも大きいことが好ましい。何故ならば、センタコアのΔ1が0.25%以下であると、光の閉じ込め効果が弱くなり、曲げ損失の劣化や零分散波長が短波長に遷移するなどの恐れが発生するからである。
また、トレンチ層の-Δmax(Δ2)が-0.5%以上-0.1%以下であれば、低曲げ損失を実現する点で好ましい。
また、光ファイバ1のコア部1aでは、センタコアの直径であるコア直径2a(図2参照)が3μm以上8μm以下であり、トレンチ層の外径2c(図2参照)が9μm以上20μm以下であることが好ましい。さらには、コア直径2aが3.5μm以上7.5μm以上であり、トレンチ層の外径2cが9.5μm以上19μm以下であることがより好ましい。特に、コア直径2aが3.5μm以上5μm以下であり、トレンチ層の外径2cが12μm以上16μm以下であることがより一層好ましい。
コア直径2aを上記の範囲内にすることは、低曲げ損失、モードフィールド径、カットオフ波長および零分散波長といった光ファイバ1の特性をバランスよく得られる点で好ましい。たとえば、波長1550nmにおいて伝送損失が0.190dB/km以下であり、波長1310nmにおいてモードフィールド径が8.6μm以上であり、ケーブルカットオフ波長が1260nm以下であり、零分散波長が1300nm以上である、という光ファイバ1の良好な特性をバランスよく得られる。特に、トレンチ層の外径2cの制御は、曲げ損失の低減を図るうえで有効である。
また、コア部1aとクラッド部1bとで、残留応力の差の最大値が40MPa以上220MPa以下であれば、伝送損失の増加が抑制されながら低曲げ損失を実現する上で好ましく、当該差の最大値が70MPa以上であればさらに好ましい。
また、トレンチ層における残留圧縮応力が20MPa以上200MPa以下であれば、トレンチ層が柔らかいことによって、コア部1aの構造緩和による低伝送損失化の効果が得られる。さらには、コア部1a全体を圧縮雰囲気にすることができるので、結果として光弾性効果による屈折率上昇が起こりやすい効果が得られる。
図2に示すような残留応力を有する光ファイバ1は、たとえばVAD(Vapor-phase Axial Deposition)法など、各種の母材作製方法を用いて作製した光ファイバ母材から光ファイバ1を線引きする際の線速や張力や温度を適切に調整することによって実現することができる。
(実施形態2)
つぎに、実施形態2に係る光ファイバについて説明する。実施形態2に係る光ファイバは、屈折率プロファイルがいわゆるW型である点が実施形態1とは異なる。そこで以下では実施形態2に係る光ファイバの屈折率プロファイルを説明し、他の説明は適宜省略する。
つぎに、実施形態2に係る光ファイバについて説明する。実施形態2に係る光ファイバは、屈折率プロファイルがいわゆるW型である点が実施形態1とは異なる。そこで以下では実施形態2に係る光ファイバの屈折率プロファイルを説明し、他の説明は適宜省略する。
図3は、実施形態2に係る光ファイバの屈折率プロファイルの模式図である。図3に示す屈折率プロファイルは、W型の屈折率プロファイルであり、比屈折率差を表している。図3において、プロファイルP21がコア部の屈折率プロファイルを示し、プロファイルP22がクラッド部の屈折率プロファイルを示す。W型の屈折率プロファイルでは、コア部は、直径が2aのセンタコアと、センタコアの外周を取り囲むように形成されており、屈折率がクラッド部の屈折率よりも小さく内径が2aで外径が2bのディプレスト層とで構成されている。プロファイルP21aはセンタコアの屈折率プロファイルであり、プロファイルP21bはディプレスト層の屈折率プロファイルである。
センタコアは、コア部のなかで平均の屈折率が最大である部分である。クラッド部の平均屈折率に対するセンタコアの平均の最大比屈折率差はΔ1である。ディプレスト層は、センタコアの外周を取り囲み、クラッド部の平均屈折率に対する比屈折率差での最小値である-Δmaxが負であり、低屈折率層の一例である。なお、図3において、-ΔmaxはΔ2と記載している。ディプレスト層は、センタコアと隣接している。
ディプレスト層は、径方向において、内側から外側へ比屈折率差が連続的に変化している。その結果、実施形態2に係る光ファイバでは、径方向において、センタコアからディプレスト層へ比屈折率差が連続的に変化している。ここで、比屈折率差が連続的に変化するとは、当該比屈折率差を表す屈折率プロファイルが急激に屈曲せずに滑らかに変化し、その変化量が径方向において1μm当たり0.1%以下であることを意味する。
実施形態2に係る光ファイバでも、コア部が残留圧縮応力を有しており、特にセンタコアにおける残留圧縮応力は40MPa以上150MPa以下である。このようにセンタコアに大きな残留圧縮応力がある結果、実施形態1の場合と同様に、同じΔ1を実現するためのドーパントの添加量を少なくできるので、伝送損失が低減できる。また、Δ1を光弾性効果によって上昇させて低曲げ損失特性を実現できる。
さらに、実施形態2に係る光ファイバでも、クラッド部が残留引張応力を有している。その結果、実施形態1の場合と同様に、伝送損失の増加が抑制されながら低曲げ損失を実現する上で好ましい。
したがって、実施形態2に係る光ファイバは、伝送損失の増加が抑制されながら低曲げ損失であるという特性を有する。
なお、センタコアのΔ1は、0.8%以下であれば、伝送損失の増加を抑制する点や、製造時に発泡が発生することを抑制する点で好ましい。また、センタコアのΔ1は、0.25%よりも大きいことが好ましい。何故ならば、センタコアのΔ1が0.25%以下であると、光の閉じ込め効果が弱くなり、曲げ損失の劣化や零分散波長が短波長に遷移するなどの恐れが発生するからである。
また、ディプレスト層の-Δmax(Δ2)が-0.5%以上-0.1%以下であれば、低曲げ損失を実現する点で好ましい。
また、実施形態2に係る光ファイバのコア部では、センタコアの直径であるコア直径2a(図3参照)が3μm以上8μm以下であり、ディプレスト層の外径2b(図3参照)が9μm以上20μm以下であることが好ましい。さらには、コア直径2aが3.5μm以上7.5μm以上であり、ディプレスト層の外径2bが9.5μm以上19μm以下であることがより好ましい。特に、コア直径2aが3.5μm以上5μm以下であり、ディプレスト層の外径2bが12μm以上16μm以下であることがより一層好ましい。
コア直径2aを上記の範囲内にすることは、低曲げ損失、モードフィールド径、カットオフ波長および零分散波長といった実施形態2に係る光ファイバの特性をバランスよく得られる点で好ましい。たとえば、波長1550nmにおいて伝送損失が0.190dB/km以下であり、波長1310nmにおいてモードフィールド径が8.6μm以上であり、ケーブルカットオフ波長が1260nm以下であり、零分散波長が1300nm以上である、という実施形態2に係る光ファイバの良好な特性をバランスよく得られる。特に、ディプレスト層の外径2bの制御は、曲げ損失の低減を図るうえで有効である。
また、コア部とクラッド部とで、残留応力の差の最大値が40MPa以上220MPa以下であれば、伝送損失の増加が抑制されながら低曲げ損失を実現する上で好ましく、当該差の最大値が70MPa以上であればさらに好ましい。
また、ディプレスト層における残留圧縮応力が20MPa以上200MPa以下であれば、低曲げ損失を実現する点で好ましい。
また、実施形態1、2に係る光ファイバは、波長1550nmにおいて伝送損失が0.190dB/km以下であれば、低伝送損失であり好ましい。
また、波長1310nmにおいてモードフィールド径が8.6μm以上であり、ケーブルカットオフ波長が1260nm以下であり、零分散波長が1300nm以上であれば、ITU-T G652.Dの規格の少なくとも一部を満たす光ファイバであるので好ましい。
また、波長1550nmにおいて、直径20mmで巻いたときのマクロベンド損失が0.1dB/turn以下であれば、低曲げ損失であり、ITU-T G657.A2の規格の少なくとも一部を満たす光ファイバであるので好ましい。
(実施例)
本発明の実施例として、図2に示す屈折率プロファイルを有する実施例1~6の光ファイバを製造した。実施例1~6の光ファイバを製造する際は、線引き時の線速や張力や温度を適切に調整することによって残留応力を調整した。
本発明の実施例として、図2に示す屈折率プロファイルを有する実施例1~6の光ファイバを製造した。実施例1~6の光ファイバを製造する際は、線引き時の線速や張力や温度を適切に調整することによって残留応力を調整した。
一方、比較例として、図4に示す屈折率プロファイルを有する光ファイバを製造した。比較例の光ファイバを製造する際は、線引き時の線速や張力や温度を適切に調整することによってセンタコアの残留圧縮応力がゼロになるように調整した。
図4は、比較例に係る光ファイバの屈折率プロファイルの模式図である。図4において、プロファイルP31がコア部の屈折率プロファイルを示し、プロファイルP32がクラッド部1bの屈折率プロファイルを示す。プロファイルP31aはセンタコアの屈折率プロファイルであり、プロファイルP31bは中間層の屈折率プロファイルであり、プロファイルP31cはトレンチ層の屈折率プロファイルである。
図4の屈折率プロファイルでは、図2の屈折率プロファイルとは異なり、径方向において、センタコアからトレンチ層へ比屈折率差が非連続的に変化している。すなわち、屈折率プロファイルが中間層とトレンチ層との境界付近で急激に屈曲し、その変化量は径方向において1μm当たり0.1%よりも大きい。
比較例と実施例1~6の光ファイバの特性とを表1に示す。「コア圧縮応力」は、センタコアの残留圧縮応力の最大値である。「クラッド引張応力」は、クラッド部の残留引張応力の最大値である。「圧縮応力付与前Δ1」は、Geによる屈折率の上昇に起因するΔ1の量である。「圧縮応力付与後Δ1」は、線引きにより圧縮応力を付与した後のΔ1の量である。「圧縮応力によるΔ1上昇」は、圧縮応力による光弾性効果に起因するΔ1の上昇量である。「MFD」は、波長1310nmでの値である。「マクロベンド損失」は、波長1550nmにおける値であり、「φ30」、「φ20」は、光ファイバを巻くときの直径である。
表1に示すように、実施例1~6のいずれも、伝送損失の増加が抑制されながら低曲げ損失であった。特に、「φ20」の特性については、実施例1~6のいずれも、ITU-T G657.A2の規格を満たしていた。具体的には、実施例1では、コア圧縮応力が80MPaであり、クラッド引張応力が30MPaであり、圧縮応力によりΔ1は0.33%から0.42%と0.09%だけ上昇した。この場合、波長1550nmにおいて伝送損失が0.176dB/kmであり、波長1310nmにおいてMFDが9.02μmであり、ケーブルカットオフ波長が1236nmであり、零分散波長が1311nmであった。また、波長1550nmにおけるマクロベンド損失は、直径20mmで巻いたときに0.048dB/turnであり、直径30mmで巻いたときに0.014dB/turnであった。
なお、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
以上のように、本発明に係る光ファイバは、伝送損失の増加が抑制されながら低曲げ損失である光ファイバの実現に適している。
1 :光ファイバ
1a :コア部
1b :クラッド部
1c :コーティング部
1ca :プライマリ層
1cb :セカンダリ層
P11、P11a、P11b、P11c、P12、P21、P21a、P21b、P22、P31、P31a、P31b、P31c、P32 :プロファイル
1a :コア部
1b :クラッド部
1c :コーティング部
1ca :プライマリ層
1cb :セカンダリ層
P11、P11a、P11b、P11c、P12、P21、P21a、P21b、P22、P31、P31a、P31b、P31c、P32 :プロファイル
Claims (24)
- コア部と、
前記コア部の最大屈折率よりも屈折率が低く、前記コア部の外周を取り囲むクラッド部と、
を備え、
前記コア部は、ゲルマニウムが添加されたセンタコアと、前記センタコアの外周を取り囲み、前記クラッド部の平均屈折率に対する比屈折率差の最小値である-Δmaxが負である低屈折率層と、を含み、
前記センタコアにおける残留圧縮応力が40MPa以上150MPa以下であり、
前記クラッド部の平均屈折率に対する前記センタコアの平均の最大比屈折率差であるΔ1は0.8%以下である
光ファイバ。 - 前記-Δmaxが-0.5%以上-0.1%以下である
請求項1に記載の光ファイバ。 - 前記低屈折率層は、前記センタコアと離隔したトレンチ層である
請求項1または2に記載の光ファイバ。 - 前記センタコアの直径が3μm以上8μm以下であり、前記トレンチ層の外径が9μm以上20μm以下である
請求項3に記載の光ファイバ。 - 前記センタコアの直径が3.5μm以上7.5μm以下であり、前記トレンチ層の外径が9.5μm以上19μm以下である
請求項4に記載の光ファイバ。 - 前記センタコアの直径が3.5μm以上5μm以下であり、前記トレンチ層の外径が12μm以上16μm以下である
請求項5に記載の光ファイバ。 - 前記低屈折率層は、前記センタコアと隣接したディプレスト層である
請求項1または2に記載の光ファイバ。 - 前記センタコアの直径が3μm以上8μm以下であり、前記ディプレスト層の外径が9μm以上20μm以下である
請求項7に記載の光ファイバ。 - 前記センタコアの直径が3.5μm以上7.5μm以下であり、前記ディプレスト層の外径が9.5μm以上19μm以下である
請求項8に記載の光ファイバ。 - 前記センタコアの直径が3.5μm以上5μm以下であり、前記ディプレスト層の外径が12μm以上16μm以下である
請求項9に記載の光ファイバ。 - 径方向において、前記センタコアから前記低屈折率層へ比屈折率差が連続的に変化している
請求項1または2に記載の光ファイバ。 - 前記比屈折率差が連続的に変化するとは、前記比屈折率差を表す屈折率プロファイルが急激に屈曲せずに滑らかに変化し、その変化量が径方向において1μm当たり0.1%以下であることを意味する
請求項11に記載の光ファイバ。 - 前記低屈折率層における残留圧縮応力が20MPa以上200MPa以下である
請求項1または2に記載の光ファイバ。 - 前記低屈折率層は、フッ素を含む
請求項1または2に記載の光ファイバ。 - 波長1550nmにおいて伝送損失が0.190dB/km以下であり、波長1310nmにおいてモードフィールド径が8.6μm以上であり、ケーブルカットオフ波長が1260nm以下であり、零分散波長が1300nm以上である
請求項1または2に記載の光ファイバ。 - 波長1550nmにおいて、直径20mmで巻いたときのマクロベンド損失が0.1dB/turn以下である
請求項1または2に記載の光ファイバ。 - クラッド径が125μm±10μmの範囲内である
請求項1または2に記載の光ファイバ。 - クラッド径が115μm±10μmの範囲内である
請求項1または2に記載の光ファイバ。 - クラッド径が105μm±10μmの範囲内である
請求項1または2に記載の光ファイバ。 - クラッド径が95μm±10μmの範囲内である
請求項1または2に記載の光ファイバ。 - クラッド径が85μm±10μmの範囲内である
請求項1または2に記載の光ファイバ。 - 前記クラッド部の外周を取り囲むプライマリ層と、前記プライマリ層の外周を取り囲むセカンダリ層とを含むコーティング部をさらに備え、
前記セカンダリ層の外径は260μm以下であり、
前記プライマリ層はヤング率が0.2MPa以上3MPa以下の樹脂からなり、
前記セカンダリ層はヤング率が5MPa以上2000MPa以下の樹脂からなる
請求項1または2に記載の光ファイバ。 - 前記コア部と前記クラッド部とで、残留応力の差の最大値が40MPa以上220MPa以下である
請求項1または2に記載の光ファイバ。 - 前記コア部と前記クラッド部とで、残留応力の差の最大値が70MPa以上220MPa以下である
請求項1または2に記載の光ファイバ。
Applications Claiming Priority (2)
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-
2022
- 2022-10-28 WO PCT/JP2022/040547 patent/WO2023085134A1/ja active Application Filing
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