WO2023027079A1 - 細胞構造体製造装置 - Google Patents

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Abstract

細胞構造体の製造の際に、細胞構造体の寸法を適切に制御することのできる細胞構造体製造装置を提供する。 細胞構造体を製造するための細胞構造体製造装置であって、基板を供給する基板供給部であって、前記基板の少なくとも1つの表面が、細胞の付着抑制能を有する、基板供給部と、前記基板の上に、下地膜を形成する下地膜形成部であって、前記下地膜形成部が、前記基板の上に下地膜形成用組成物を塗布する下地膜形成用塗布機構を含み、前記下地膜が細胞接着性を有する、下地膜形成部と、前記下地膜を含む前記基板の上に細胞を播種する播種部とを含む、細胞構造体製造装置である。

Description

細胞構造体製造装置
 本発明は、スフェロイドのような細胞構造体を製造するための細胞構造体製造装置に関する。
 細胞凝集塊、細胞塊又はスフェロイドのような細胞構造体は、創薬研究、又は細胞治療及び再生治療に利用できると考えられている。
 細胞構造体のような細胞の立体構造の製造方法として、例えば、特許文献1には、1つの細胞塊を収容する収容凹部が多数形成された収容プレートと、上記細胞塊を突き刺して貫通する針状体を複数本備えた支持体と、負圧発生手段に接続されて上記細胞塊を吸着保持する吸引ノズルと、該吸引ノズルを上記収容プレートと支持体との間で移動かつ昇降させる移動手段と、上記吸引ノズルの吸引動作及び上記移動手段の動作を制御する制御手段とを備える立体構造体製造装置が記載されている。
 また、特許文献2には、細長く先端が尖った複数のニードルと、ニードルの先端で細胞塊を穿刺して貫通して穿刺後にニードルを上昇させる穿刺部と、ベース部と、制御部と、を備える細胞構造体製造装置が記載されている。
 また、特許文献3及び4には、細胞塊を収容する収容容器と、上記細胞塊を突き刺して貫通する針状体を複数本配置した支持体と、上記細胞塊を吸着保持する吸引ノズルと、上記吸引ノズルを移動させるノズル移動手段と、上記吸引ノズルの吸引動作及び上記ノズル移動手段の作動を制御する制御手段とを備える細胞立体構造物製造装置が記載されている。
 また、特許文献5には、複数の細胞塊を培養容器内の載置面に平面的に配置し、上記細胞塊が培養されて相互に融合した細胞塊シートを作製するための細胞塊シート製造装置が記載されている。
 また、細胞培養を効率的に行うための下地膜形成剤として、様々な材料が提案されている。例えば、特許文献6には、細胞培養の下地膜として使用するポリマーの製造方法及び細胞培養容器が開示されている。
 特許文献7には、生体物質の付着抑制能を有するイオンコンプレックス材料のコーティング膜が記載されている。
特許第5896104号公報 特許第6334837号公報 特許第6663555号公報 特許第6663556号公報 特許第6880384号公報 国際公開第2020/040247号 国際公開第2014/196650号
 本明細書において、細胞構造体とは、細胞同士が自己集合・凝集化した細胞の集合体である。なお、細胞構造体は、一般的には、細胞凝集塊、細胞塊、スフェロイド、スフェア、又はオルガノイドといわれる場合がある。細胞構造体には、生体様構造が構築されることから、細胞構造体の細胞の機能を長期間維持でき、生理的機能が向上することが報告されている。そのため、細胞構造体の、創薬研究における、又は細胞治療や再生治療における利用についての期待が高まっている。
 また、細胞構造体を簡便かつ迅速に、均一かつ大量に製造するための技術は、再生医療の実用化、及び創薬試験の効率化のために重要である。しかしながら、従来の細胞低接着性培養皿(例えば、マルチウェルプレート)を用いた浮遊細胞のランダムな凝集化現象を利用する製造方法では、1ウェルに1個のスフェロイドしか形成しない。そのため、操作性及び量産性に優れないという問題があった。
 また、細胞構造体が、球状スフェロイドの場合、スフェロイドの直径が大きすぎると、球状スフェロイド中の細胞の一部が死ぬ恐れがある。また、スフェロイドの直径が小さすぎると、スフェロイドによる治療効果などの効果が低くなる。したがって、スフェロイドなどの細胞構造体の寸法を適切に制御することは、細胞構造体の製造の歩留まりを向上させるために、重要な技術である。従来の製造方法では、スフェロイドの直径の誤差は、40%程度になる場合がある。細胞構造体の製造の歩留まりを向上させるために、スフェロイドの直径の誤差は、好ましくは20%以内であることが求められている。
 また、細胞構造体の製造の際に、細胞培養のために用いる下地膜は、細胞の下地膜への均一な接着のために、一般的に、生体由来の血清を用いる必要がある。生体由来の血清を用いる場合、個体差による増殖能力をはじめとする品質のばらつきの問題、及び人以外の動物由来血清を用いる場合のアレルギー発生やウイルス混入など安全性のリスクが発生するなどの問題がある。
 そこで本発明は、細胞構造体の製造の際に、細胞構造体の寸法を適切に制御することのできる細胞構造体製造装置を提供することを目的とする。
 また、本発明は、生体由来の血清を用いなくても均質で高品質な細胞構造体を製造することができ、操作性及び量産性に優れ、細胞構造体の寸法を適切に制御することのできる細胞構造体製造装置を提供することを目的とする。
 上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
 本発明の構成1は、細胞構造体を製造するための細胞構造体製造装置であって、
 基板を供給する基板供給部であって、前記基板の少なくとも1つの表面が、細胞の付着抑制能を有する、基板供給部と、
 前記基板の上に、下地膜を形成する下地膜形成部であって、前記下地膜形成部が、前記基板の上に下地膜形成用組成物を塗布する下地膜形成用塗布機構を含み、前記下地膜が細胞接着性を有する、下地膜形成部と、
 前記下地膜を含む前記基板の上に細胞を播種する播種部と
を含む、細胞構造体製造装置である。
(構成2)
 本発明の構成2は、前記基板供給部が、原料基板の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に、細胞の付着抑制能を有するコーティング膜を形成するコーティング膜形成部を更に含み、
 前記コーティング膜形成部が、コーティング膜形成用組成物を前記基板の表面に塗布するコーティング膜形成用塗布機構を含み、
 前記下地膜形成用塗布機構が、前記基板の前記コーティング膜の少なくとも一部の表面に、前記下地膜形成用組成物を塗布することを含む、構成1の細胞構造体製造装置である。
(構成3)
 本発明の構成3は、前記コーティング膜形成用組成物が、下記式(A)で表される繰り返し単位(A)、及び下記式(B)で表される繰り返し単位(B)を有する共重合体を含む、構成2の細胞構造体製造装置である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000004

(式中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基を表し、X及びXは、それぞれ独立して、単結合、エステル結合、エーテル結合、アミド結合又は酸素原子で中断されてもよい炭素原子数1~5のアルキレン基を表す。)
(構成4)
 本発明の構成4は、前記下地膜形成用塗布機構及び前記コーティング膜形成用塗布機構から選択される少なくとも1つが、点描式の塗布機構である、構成1~3の何れかの細胞構造体製造装置である。
(構成5)
 本発明の構成5は、前記基板が、略平滑な表面を有する、構成1~4の何れかの細胞構造体製造装置である。
(構成6)
 本発明の構成6は、前記基板の表面が、凹凸を有する、構成1~4の何れかの細胞構造体製造装置である。
(構成7)
 本発明の構成7は、前記基板又は前記原料基板が可撓性を有し、前記基板供給部が巻取式の基板カセット又は原料基板カセットを含み、前記基板が前記基板カセットから供給され、又は前記原料基板が前記原料基板カセットから供給される、構成1~6の何れかの細胞構造体製造装置である。
(構成8)
 本発明の構成8は、前記細胞構造体製造装置が、前記下地膜を含む前記基板の上に付着した細胞を培養する凝集培養部を更に含む、構成1~7の何れかの細胞構造体製造装置である。
(構成9)
 本発明の構成9は、前記細胞構造体のサイズ誤差が20%以内である、構成1~8の何れかの細胞構造体製造装置である。
(構成10)
 本発明の構成10は、前記細胞構造体製造装置が、前記細胞構造体製造装置の内部を気密な閉鎖空間にすることが可能な気密機構を有し、前記気密機構が、前記閉鎖空間の内部を無菌環境に維持することが可能である、構成1~9の何れかの細胞構造体製造装置である。
(構成11)
 本発明の構成11は、前記下地膜形成用組成物が、下記式(I):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000005

[式中、
Ua1及びUa2は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1乃至5の直鎖若しくは分岐アルキル基を表し、Ra1は、水素原子又は炭素原子数1乃至5の直鎖若しくは分岐アルキル基を表し、Ra2は、炭素原子数1乃至5の直鎖若しくは分岐アルキレン基を表す]で表されるモノマーから誘導される繰り返し単位、及び、下記式(II):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000006

[式中、
Rbは、水素原子又は炭素原子数1乃至5の直鎖若しくは分岐アルキル基を表す]で表されるモノマーから誘導される繰り返し単位を含む共重合体を含む、構成1~10の何れかの細胞構造体製造装置である。
(構成12)
 本発明の構成12は、前記下地膜形成用組成物が、細胞接着性物質を更に含む、構成11の細胞構造体製造装置である。
 本発明によれば、細胞構造体の製造の際に、細胞構造体の寸法を適切に制御することのできる細胞構造体製造装置を提供することができる。
 また、本発明によれば、生体由来の血清を用いなくても均質で高品質な細胞構造体を製造することができ、操作性及び量産性に優れ、細胞構造体の寸法を適切に制御することのできる細胞構造体製造装置を提供することができる。
本実施形態の細胞構造体製造装置の一例を示す模式図である。 基板の表面に下地膜パターンを形成した一例を示す断面模式図である。 本実施形態の細胞構造体製造装置の別の態様の一例を示す平面模式図である。 実験例A1の細胞付着試験の顕微鏡観察結果の写真である。 比較実験例A3の細胞付着試験の顕微鏡観察結果の写真である。 試験例B1の細胞接着確認試験に付された、実験例B1~3、比較実験例B1及び2で作製した細胞凝集塊製造用基板の様子を撮影した実体顕微鏡写真である。 試験例B2の細胞接着・細胞凝集塊形成確認試験に付された、実験例B4及び6で作製した細胞凝集塊製造用基板の様子を、それぞれ、2時間後及び2日後に撮影した実体顕微鏡写真である。 試験例B3の細胞接着確認試験に付された、実験例B5及び比較実験例B3で作製した細胞凝集塊製造用基板の様子を撮影した実体顕微鏡写真である。 試験例B4の細胞接着確認試験に付された、実験例B7で作製した細胞凝集塊製造用基板の様子を撮影した実体顕微鏡写真である。 実験例B8~B12の細胞凝集塊製造用基板を用いて、細胞凝集塊(スフェロイド)を形成したときの様子を、それぞれ、2時間後及び3日後に撮影した実態顕微鏡写真である。 実験例B8~B10の細胞凝集塊製造用基板を用いて形成したスフェロイドのサイズ評価結果を示す図である。 実験例B8~B12の細胞凝集塊製造用基板を用いて形成したスフェロイドの、塗布直径と、平均スフェロイド直径及びスフェロイド誤差との関係を表として示す図である。 実験例B8~B12の細胞凝集塊製造用基板を用いてスフェロイドを形成したときの、塗布面積とスフェロイド直径の関係を示す図である。 実験例B8~B12の細胞凝集塊製造用基板を用いてスフェロイドを形成したときの、塗布面積とスフェロイド体積の関係を示す図である。 試験例B6の細胞接着・細胞凝集塊形成確認試験に付された、比較実験例B4で作製した細胞凝集塊製造用基板の様子を、2時間後及び2日後に撮影した実体顕微鏡写真である。 試験例B7の細胞接着・細胞凝集塊形成確認試験に付された、比較実験例B5で作製した細胞凝集塊製造用基板の様子を、2時間後及び2日後に撮影した実体顕微鏡写真である。
 以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
 本明細書において、基板又は膜の「上に」とは、その基板又は膜の上面に直接接触する場合だけでなく、その基板や膜の上面に直接接触しない場合も含む。例えば、「基板の上に膜Aを形成する」とは、基板の表面に直接膜Aを形成することを意味する他に、基板の表面に形成された他の膜の表面に膜Aを形成することを含む。すなわち、基板又は膜の「上に」とは、基板又は膜と、対象物(膜)との間に他の膜が存在している場合を含む。また、「上に」とは、必ずしも鉛直方向における上側を意味するだけではない。「上に」とは、基板及び膜などの相対的な位置関係を示しているに過ぎない。
 本実施形態の細胞構造体製造装置10について、図1を参照して説明する。
 本実施形態は、細胞構造体1を製造するための細胞構造体製造装置10である。本実施形態の細胞構造体製造装置10は、基板供給部20と、下地膜形成部40と、播種部50とを含む。本実施形態の細胞構造体製造装置10の基板供給部20は、コーティング膜形成部30を更に含むことができる。
<基板供給部20>
 基板供給部20は、基板80を供給する。本明細書において、基板80とは、その表面が細胞56の付着抑制能を有する平面状(板状又はフィルム状)の構造体である。なお、本明細書では、表面が細胞56の付着抑制能を有しない平面状(板状又はフィルム状)の構造体のことを、原料基板82という。原料基板82の表面に、細胞56の付着抑制能を有するコーティング膜84を形成することにより、基板80を得ることができる。
 本明細書において、細胞56の付着抑制能を有する表面とは、その表面において顕微鏡観察により細胞56の付着及び伸展が見られず、その表面以外の部分でスフェロイドなどの細胞構造体1が形成されることを意味する。
 又は、細胞56の付着抑制能を有するとは、ATPassayによるコーティング無しと比較した場合の発光強度(%)(コーティング膜84上の付着細胞の発光強度)/(コーティング無のウェル上の付着細胞の発光強度)が50%以下、好ましくは30%以下、更に好ましくは10%以下であることを意味する。
 本実施形態では、基板80の少なくとも1つの表面が、細胞56の付着抑制能を有する。この結果、基板80(又は基板80のコーティング膜84)が露出している部分に、細胞56が付着することを抑制することができる。
 本実施形態の細胞構造体製造装置10に用いる基板80又は原料基板82は、可撓性を有することが好ましい。また、本実施形態の細胞構造体製造装置10は、基板供給部20が巻取式の基板カセット又は原料基板カセット22を含むことが好ましい。
 図1に示す細胞構造体製造装置10の基板供給部20の例では、原料基板82が可撓性を有し、原料基板82が巻取式の原料基板82カセット22から供給される。同様に、細胞56の付着抑制能を有する基板80を用いる場合には、基板供給部20が巻取式の基板カセットを含むことができる。巻取式の基板カセット又は原料基板カセット22を用いることにより、細胞構造体1の製造を連続的に行うことができる。
 本実施形態の細胞構造体製造装置10では、図3に示すようなバッチ式の製造方法を採用することができる。この場合には、原料基板82(又は基板80)の形状は、所定の寸法の矩形であることができる。この場合、所定の形状の原料基板82を、バッチ式のコーティング膜形成部30に入れて、原料基板82の表面にコーティング膜84を形成し、コーティング膜形成部30から取り出される。このようにして、細胞56の付着抑制能を有するコーティング膜84を形成した矩形の基板80を得ることができる。その後、所定の寸法の基板80に対して、下地膜形成部40及び播種部50における所定の処理をすることができる。また、図3に示す製造方法を採用する場合、原料基板82又は基板80の搬送を容易にする点から、原料基板82又は基板80は、可撓性を有しないことが好ましい。
 本実施形態の細胞構造体製造装置10に用いる基板80(又は原料基板82)は、略平滑な表面を有することが好ましい。略平滑な表面の基板80(又は原料基板82)を用いることにより、後述する下地膜90を、任意の場所に任意の寸法で形成することができる。下地膜90の寸法を制御することにより、得られる細胞構造体1の寸法を制御することができる。
 本実施形態の細胞構造体製造装置10に用いる基板80(又は原料基板82)の表面は、凹凸を有することができる。基板80(又は原料基板82)の表面が適切な凹凸を有することにより、後述する下地膜90を形成する場所を特定することができる。下地膜90を形成する場所の場所決めを容易にすることができる。下地膜90は、基板80(又は原料基板82)の表面の凹凸のうち、凹部に形成することができる。下地膜90が形成される凹部の寸法を制御することにより、得られる細胞構造体1の寸法を適切な寸法とすることができる。したがって、基板80(又は原料基板82)の表面が適切な凹凸を、適切な寸法として、下地膜90を凹部に形成することにより、得られる細胞構造体1の寸法を適切な寸法とすることができる。基板80(又は原料基板82)の表面が適切な凹凸を有する場合、原料基板82又は基板80は、可撓性を有しないことができる。
 原料基板82の材質としては、例えば、ガラス、金属、金属含有化合物若しくは半金属含有化合物、活性炭又は樹脂を挙げることができる。金属としては、典型金属:(アルカリ金属:Li、Na、K、Rb、Cs;アルカリ土類金属:Ca、Sr、Ba、Ra)、マグネシウム族元素:Be、Mg、Zn、Cd、Hg;アルミニウム族元素:Al、Ga、In;希土類元素:Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu;スズ族元素:Ti、Zr、Sn、Hf、Pb、Th;鉄族元素:Fe、Co、Ni;土酸元素:V、Nb、Ta、クロム族元素:Cr、Mo、W、U;マンガン族元素:Mn、Re;貴金属:Cu、Ag、Au;白金族元素:Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt等が挙げられる。金属含有化合物若しくは半金属含有化合物としては、例えば基本成分が金属酸化物で、高温での熱処理によって焼き固めた焼結体であるセラミックス、シリコンのような半導体、金属酸化物若しくは半金属酸化物(シリコン酸化物、アルミナ等)、金属炭化物若しくは半金属炭化物、金属窒化物若しくは半金属窒化物(シリコン窒化物等)、金属ホウ化物若しくは半金属ホウ化物等の無機化合物の成形体等の無機固体材料、アルミニウム、ニッケルチタン、ステンレス(SUS304、SUS316、SUS316L等)が挙げられる。
 原料基板82の材料として用いることのできる樹脂としては、天然樹脂若しくはその誘導体、又は合成樹脂いずれでもよく、天然樹脂若しくはその誘導体としては、セルロース、三酢酸セルロース(CTA)、ニトロセルロース(NC)、デキストラン硫酸を固定化したセルロース等、合成樹脂としてはポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリエステル系ポリマーアロイ(PEPA)、ポリスチレン(PS)、ポリスルホン(PSF)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン(PU)、エチレンビニルアルコール(EVAL)、ポリエチレン(PE)、ポリエステル、ポリプロピレン(PP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、超高分子量ポリエチレン(UHPE)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)又はテフロン(登録商標)が好ましく用いられる。
 本実施形態の細胞構造体製造装置10による細胞構造体1の製造では、下地膜90を形成する際に、高温での処理を要しない。そのため、原料基板82として、耐熱性が低い樹脂等も適用可能である。
 原料基板82の材質は1種類であっても2種類以上の組み合わせであってもよい。本実施形態では、例えば、細胞構造体1を大量製造するために、原料基板82の材料として、ベルトコンベアーのように巻き取り(ロール方式)できるような柔軟性(可撓性)を有する材料を用いることができる。上記ロール方式に用いられる基板80の材質としては、合成樹脂、及び天然高分子が挙げられる。
 また、原料基板82は、いわゆる細胞培養器で使用される基板80であってもよい。細胞56の培養に一般的に用いられるペトリデッシュ、組織培養用ディッシュ、マルチディッシュなどのシャーレ又はディッシュ、細胞培養フラスコ、スピナーフラスコ、多段フラスコなどのフラスコ、プラスチックバッグ、テフロン(登録商標)バッグ、培養バッグなどのバッグ、マイクロプレート、マイクロウェルプレート、マルチプレート、マルチウェルプレートなどのプレート、チャンバースライド、チューブ、トレイ、及びローラーボトルなどのボトル等が挙げられる。
<コーティング膜形成部30>
 図1に示すように、基板供給部20は、コーティング膜形成部30を有することができる。コーティング膜形成部30は、原料基板82の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に、細胞56の付着抑制能を有するコーティング膜84を形成するように構成される。
 原料基板82は、一般的に細胞56の付着抑制能を有しない。そのため、コーティング膜形成部30において、原料基板82の少なくとも1つの表面に、細胞56の付着抑制能を有するコーティング膜84を形成することにより、付着抑制能を有する基板80を得ることができる。
 コーティング膜形成部30は、コーティング膜形成用塗布機構32を含む。コーティング膜形成用塗布機構32による塗布方法は、例えば、スピンコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷、グラビア印刷法、オフセット印刷法、バーコート法、スリットコート法、ロール・トゥー・ロール法、ディップコート法、溶媒キャスト法、パッド印刷法、及びスプレー法等から選択することができる。コーティング膜形成用塗布機構32により、コーティング膜形成用組成物38を、所定のパターンになるように、基板80の表面の少なくとも一部に塗布することができる。なお、コーティング膜形成用塗布機構32により、コーティング膜形成用組成物38を、原料基板82の全面に塗布することができる。また、後述する下地膜90の塗布及び所定の寸法の細胞構造体1の形成が適切に行われるように、コーティング膜形成用組成物38を、所定のパターンになるように塗布することができる。なお、所定の寸法の細胞構造体1の形成を行うためには、下地膜90の寸法が重要である。下地膜90の寸法の自由度を得るために、コーティング膜形成用塗布機構32は、コーティング膜形成用組成物38を、原料基板82の全面に塗布することが好ましい。ただし、コーティング膜84の形成が不要である部分があらかじめ決まっている場合には、不要である部分にコーティング膜84を形成しないように、所定のパターンになるように塗布することができる。これにより、コーティング膜形成用組成物38の使用量を削減することができる。
 本実施形態の細胞構造体製造装置10において、コーティング膜形成用塗布機構32は、点描式の塗布機構、例えばインクジェットプリンターによるインクジェット法であることが好ましい。コーティング膜形成用組成物38の塗布のために点描式の塗布機構を用いることにより、所定のパターン形状となるように、コーティング膜形成用組成物38を塗布することができる。また、点描式の塗布機構のノズルの走査速度及び/又は繰り返し点描回数を制御することにより、コーティング膜84の膜厚を、所望の膜厚にすることができる。
 図1に示す例では、コーティング膜形成部30において、コーティング膜形成用組成物タンク34からコーティング膜形成用組成物38がコーティング膜形成用塗布機構32(例えば、インクジェットプリンター)に供給される。コーティング膜形成用組成物38は、基板80の全面に(又は所定のパターン形状となるように)、コーティング膜形成用塗布機構32から射出される。なお、コーティング膜形成用塗布機構32のノズルが所定の動きをすることが可能なように、コーティング膜形成用塗布機構32はノズルの駆動機能を有することができる。
 コーティング膜形成用組成物38の具体例については、後述する。
<コーティング膜乾燥機構36>
 本実施形態の細胞構造体製造装置10は、必要に応じて、コーティング膜乾燥機構36を含むことができる。コーティング膜形成用組成物38が溶媒を含む場合には、コーティング膜形成用組成物38の塗布後、コーティング膜乾燥機構36により、溶媒を気化させて、コーティング膜形成用組成物38のコーティング膜84を形成することができる。コーティング膜乾燥機構36は、例えば、ヒーター及び/又は送風機であることができる。
 乾燥は、例えば、大気下又は真空下にて、-200℃~200℃の範囲内の温度で行うことができる。コーティング膜84は、例えば室温(10℃~35℃、例えば25℃)での乾燥でも形成することができる。より迅速にコーティング膜84を形成させるために、例えば40℃~100℃にて乾燥させてもよい。乾燥温度としては、特に制限されない。乾燥温度は、原料基板82のガラス転移点より低温が好ましく、例えば10℃~180℃であり、より好ましい乾燥温度は20℃~100℃である。乾燥時間としては、特に制限されないが、例えば、1分間~24時間である。
<下地膜形成部40>
 図1に示すように、本実施形態の細胞構造体製造装置10は、下地膜90を形成するための下地膜形成部40を有する。下地膜形成部40は、基板80の上に下地膜形成用組成物48を塗布する下地膜形成用塗布機構42を含む。下地膜90は、細胞接着性を有するので、下地膜90の表面に細胞56を付着させることができる。
 基板80の表面の少なくとも一部は、細胞56の付着抑制能を有する。細胞56の付着抑制能を有する表面の上に、細胞56の付着抑制能を有する表面の一部が露出するように下地膜90を形成することができる。これにより、細胞56の付着抑制能を有する基板80の表面から細胞56を退け、下地膜90を形成した部分に細胞56が集まるようにすることができる。この結果、細胞構造体1を製造することができる。
 下地膜形成部40は、下地膜形成用塗布機構42を含む。下地膜形成用塗布機構42による塗布方法は、例えば、スピンコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、スリットコート法、ロール・トゥー・ロール法、ディップコート法、溶媒キャスト法、パッド印刷法、及びスプレー法等から選択することができる。下地膜形成用塗布機構42により、下地膜形成用組成物48を、所定のパターンになるように、基板80(又はコーティング膜84)の表面の少なくとも一部に塗布することができる。なお、本明細書では、下地膜形成用組成物48を、塗布することにより形成した所定の形状のパターンのことを、「下地膜パターン90a」という。
 本実施形態の細胞構造体製造装置10において、地膜形成用塗布機構は、点描式の塗布機構、例えばインクジェットプリンターによるインクジェット法であることが好ましい。下地膜形成用組成物48の塗布のために点描式、若しくは、点描式の連続による線描、若しくは面描の塗布機構を用いることにより、所定の下地膜パターン90aの形状となるように、下地膜形成用組成物48を塗布することができる。また、点描式の塗布機構のノズルの走査速度及び/又は繰り返し点描回数を制御することにより、下地膜パターン90aの膜厚を、所望の膜厚にすることができる。
 図1に示す例では、下地膜形成用塗布機構42において、下地膜形成用組成物タンク44から下地膜形成用組成物48が下地膜形成用塗布機構42(例えば、インクジェットプリンター)に供給される。下地膜形成用組成物48は、所定の形状の下地膜パターン90aとなるように、下地膜形成用塗布機構42から射出される。なお、下地膜形成用塗布機構42のノズルが所定の動きをすることが可能なように、下地膜形成用塗布機構42はノズルの駆動機能を有することができる。
 別の塗布方法としては、例えば場合により下地膜パターン90aの非形成箇所を保護した基板80を下地膜形成用組成物48に浸漬することができる。また、下地膜形成用組成物48を、場合により下地膜パターン90aの非形成箇所を保護した基板80(容器)に添加し、所定の時間静置するという方法を用いることができる。なお、基板80が細胞培養容器の場合には、下地膜形成用組成物48を、場合により下地膜パターン90aの非形成箇所を保護した容器に添加し、所定の時間静置する方法によって行うことができる。添加は、例えば、容器の全容積の0.5~1倍量の下地膜形成用組成物48を、シリンジ等を用いて添加することによって行うことができる。静置は、容器又は基板80の材質や細胞培養の下地膜形成剤の種類に応じて、時間や温度を適宜選択して実施される。例えば、静置時間は、1分から24時間、好ましくは5分から3時間であり、静置温度は、10~80℃であることができる。これにより、基板80に下地膜パターン90aを適切に形成することができる。
 所定の寸法の細胞構造体1の形成を行うためには、下地膜形成用組成物48を塗布した面積が重要である。本発明者らは、細胞構造体1がスフェロイドの場合、下地膜パターン90aの面積と、スフェロイドの直径との間に強い直線的な相関関係があることを見出した。
 下地膜形成用組成物48のパターン(下地膜パターン90a)の形状は、任意である。下地膜パターン90aの形状は、円形、三角形及び四角形などの多角形、星形、又は十字形などであることができる。細胞56が細胞構造体1になるように集合することの容易性から、下地膜パターン90aは、円形(ドットパターン又はスポット)であることが好ましい。
 下地膜形成用組成物48の下地膜パターン90aが円形のドットパターン(スポット)の場合、下地膜90のドットパターンの総面積の割合、各ドットパターンの直径やドットパターン間の間隔は、用いる細胞56や基板80の種類、細胞凝集塊の所望のサイズ等に応じて、所定の範囲から適宜選択することができる。基板80の表面積に対する下地膜90のドットパターンの総面積の割合は、30%以上、40%以上、50%以上であることが好ましく、かつ99%以下であることが好ましい。下地膜90の各ドットパターンの直径は、例えば、50~5000μmであってもよく、場合によっては300~3000μmであってもよい。下地膜90の各ドットパターンの中心間の間隔は、例えば、100~6000μmであってもよく、必要に応じて150~4000μm又は150~300μmであってもよい。
 本実施形態では、細胞56の付着抑制能を有する基板80の上に、細胞56が接着し得る独立したマイクロサイズの領域(ドットパターン)を、高密度で、好ましくは規則的に配することにより、均一なサイズのスフェロイドを一つの基板80(容器)で一度に複数形成できる。
 下地膜90の膜厚としては、例えば、1~1000nmであり、好ましくは5~500nm、好ましくは5~300nm、好ましくは5~200nm、好ましくは5~150nm、好ましくは10~150nmである。
 また、上述の方法により得られる基板80の表面の下地膜パターン90aは、乾燥工程を経ずにそのまま、あるいは水又は細胞培養に付される試料の媒質(例えば、水、緩衝液、培地等)を用いての洗浄後に、細胞構造体1の製造用の下地膜90付きの基板80として使用することができる。
 すなわち、上記基板80の表面の下地膜パターン90aの形成後、48時間以内、好ましくは24時間以内、更に好ましくは12時間以内、更に好ましくは6時間以内、更に好ましくは3時間以内、更に好ましくは1時間以内に乾燥工程を経ずにそのまま、あるいは水又は細胞培養に付される試料の媒質(例えば、水、緩衝液、培地等、特に好ましくは培地(例えば、DMEM培地(ダルベッコ改変イーグル培地))を用いての洗浄後に、細胞構造体1の製造用の下地膜90付きの基板80として使用することができる。
 下地膜形成用組成物48の具体例については、後述する。
<下地膜乾燥機構46>
 本実施形態の細胞構造体製造装置10は、必要に応じて、下地膜乾燥機構46を含むことができる。下地膜形成用組成物48が溶媒を含む場合には、下地膜パターン90aの形成後、下地膜乾燥機構46により、溶媒を気化させることができる。下地膜乾燥機構46は、例えば、ヒーター及び/又は送風機であることができる。
 下地膜90の乾燥は、上述のコーティング膜84の乾燥と同様の条件で行うことができる。
 具体的には、下地膜90を有する基板80の乾燥工程は、大気下又は真空下にて、好ましくは、-200℃~200℃の温度範囲内で行うことができる。乾燥工程により、上記の下地膜形成用組成物48中の溶媒を取り除くことで、基板80又はコーティング膜84の表面へ、完全に固着することができる。
 下地膜パターン90aは、例えば室温(10℃~35℃、好ましくは20℃~30℃、例えば25℃)での乾燥でも形成することができる。より迅速にスポットを形成させるために、例えば40℃~80℃にて乾燥させてもよい。乾燥温度が-200℃未満であると、一般的ではない冷媒を使用しなければならず汎用性に欠けることと、溶媒昇華のために乾燥に長時間を要し効率が悪い。乾燥温度が200℃超であると、ポリマーの熱分解が生じる。また、原料基板82のガラス転移点より低温が好ましく、より好ましい乾燥温度は10℃~180℃、より好ましい乾燥温度は20℃~100℃である。本実施形態の細胞構造体製造用の下地膜パターン90aを付した基板80は、以上の簡便な工程を経て製造される。
 また、下地膜パターン90aに残存する不純物、未固着のポリマー等を無くすために、水及び電解質を含む水溶液から選ばれる少なくとも1種の溶媒で洗浄する工程(洗浄工程)を実施してもよい。洗浄は、流水洗浄又は超音波洗浄等が望ましい。上記水及び電解質を含む水溶液は例えば40℃~95℃の範囲で加温されたものでもよい。電解質を含む水溶液は、PBS、生理食塩水(塩化ナトリウムのみを含むもの)、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水、トリス緩衝生理食塩水、HEPES緩衝生理食塩水及びベロナール緩衝生理食塩水が好ましく、PBSが特に好ましい。固着後は水、PBS及びアルコール等で洗浄してもコーティング膜84は溶出せずに基体に強固に固着したままである。
 本実施形態の下地膜90(又は下地膜パターン90a)の膜厚は、最大膜厚と最小膜厚が1~1000nmの範囲であり、好ましくは5~500nmの範囲である。
<播種部50>
 図1に示すように、本実施形態の細胞構造体製造装置10は、下地膜90を含む基板80の上に細胞56を播種するための播種部50を有する。播種部50は、下地膜90の上に細胞56を播種するための細胞播種機構52を含む。
 図2に示すように、基板80の表面のうち、下地膜パターン90aが形成されていない部分には、細胞56の付着抑制能を有するコーティング膜84が形成されているか、又は細胞56の付着抑制能を有する基板80の表面が露出している。細胞接着性を有する下地膜パターン90aの上に、細胞56を播種することにより、細胞56が下地膜パターン90aの上に集まり、細胞構造体1を得ることができる。なお、細胞56は、下地膜パターン90aに隣接するコーティング膜84(又は基板80)の部分にも播種することができる。コーティング膜84(又は基板80)の表面は、細胞56の付着抑制能を有するので、コーティング膜84(又は基板80)の部分に播種した細胞56は、隣接する下地膜パターン90aに集まり、細胞構造体1の一部となることができる。
 播種部50は、細胞播種機構52を含む。細胞播種機構52は、例えば、滴下式のノズルを含む装置、インクジェットプリンターによる印刷のような点描式の塗布機構、スクリーン印刷装置、パッド印刷装置、スプレー装置などの装置から選択することができる。細胞56に傷が生じることを防止するために、細胞播種機構52は、滴下式のノズルを含む装置であることが好ましい。細胞播種機構52により、下地膜パターン90a(及び下地膜パターン90aに隣接するコーティング膜84又は基板80の部分)に、細胞56を播種することができる。
 図1に示す例では、播種部50において、細胞タンク54から細胞56が細胞播種機構52(例えば滴下式のノズルを含む装置)に供給される。細胞56は、下地膜パターン90a(及び下地膜パターン90aするコーティング膜84又は基板80の部分)に、細胞播種機構52から滴下される。なお、細胞播種機構52のノズルが所定の動きをすることが可能なように、細胞播種機構52はノズルの駆動機能を有することができる。
 播種された細胞56は、所定時間をかけて集まり、下地膜パターン90aの上で所定の形状の細胞構造体1、例えばスフェロイドになることができる。
 本実施形態における細胞56とは、動物又は植物を構成する最も基本的な単位であり、その要素として細胞膜の内部に細胞質と各種の細胞小器官を持つものである。この際、DNAを内包する核は、細胞56内部に含まれても含まれなくてもよい。例えば、本実施形態における動物由来の細胞56には、精子や卵子などの生殖細胞、生体を構成する体細胞、幹細胞(多能性幹細胞等)、前駆細胞、生体から分離された癌細胞、生体から分離され不死化能を獲得して体外で安定して維持される細胞(細胞株)、生体から分離され人為的に遺伝子改変が成された細胞、生体から分離され人為的に核が交換された細胞等が含まれる。生体を構成する体細胞の例としては、以下に限定されるものではないが、線維芽細胞、骨髄細胞、Bリンパ球、Tリンパ球、好中球、赤血球、血小板、マクロファージ、単球、骨細胞、骨髄細胞、周皮細胞、樹状細胞、ケラチノサイト、脂肪細胞、間葉細胞、上皮細胞、表皮細胞、内皮細胞、血管内皮細胞、肝実質細胞、軟骨細胞、卵丘細胞、神経系細胞、グリア細胞、ニューロン、オリゴデンドロサイト、マイクログリア、星状膠細胞、心臓細胞、食道細胞、筋肉細胞(たとえば、平滑筋細胞又は骨格筋細胞)、膵臓ベータ細胞、メラニン細胞、造血前駆細胞(例えば、臍帯血由来のCD34陽性細胞)、及び単核細胞等が含まれる。当該体細胞は、例えば皮膚、腎臓、脾臓、副腎、肝臓、肺、卵巣、膵臓、子宮、胃、結腸、小腸、大腸、膀胱、前立腺、精巣、胸腺、筋肉、結合組織、骨、軟骨、血管組織、血液(臍帯血を含む)、骨髄、心臓、心筋、眼、脳又は神経組織などの任意の組織から採取される細胞が含まれる。更に当該体細胞は、幹細胞又は前駆細胞から分化誘導された細胞が含まれる。
 幹細胞とは、自分自身を複製する能力と他の複数系統の細胞に分化する能力を兼ね備えた細胞であり、その例としては、以下に限定されるものではないが、胚性幹細胞(ES細胞)、胚性腫瘍細胞、胚性生殖幹細胞、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、神経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、肝幹細胞、膵幹細胞、筋幹細胞、生殖幹細胞、腸幹細胞、癌幹細胞、及び毛包幹細胞などが含まれる。多能性幹細胞としては、前記幹細胞のうち、ES細胞、胚性生殖幹細胞、及びiPS細胞が挙げられる。前駆細胞とは、前記幹細胞から特定の体細胞や生殖細胞に分化する途中の段階にある細胞である。癌細胞とは、体細胞から派生して無限の増殖能を獲得した細胞である。細胞株とは、生体外での人為的な操作により無限の増殖能を獲得した細胞である。これらの中でも、本実施形態における細胞56として、線維芽細胞、及び幹細胞がより好ましい。また、幹細胞の中でも多能性幹細胞がより好ましい。
<凝集培養部60>
 図1に示すように、本実施形態の細胞構造体製造装置10は、必要に応じて、下地膜90を含む基板80の上に付着した細胞56を凝集及び/又は培養するための凝集培養部60を更に含むことができる。細胞56が凝集することにより、所望の細胞構造体1を形成することができる。
 図1では図示していないが、凝集培養部60は所定の培養液を含むことが好ましい。凝集培養部60が所定の培養液を含むことにより、培養液中で細胞56を培養することができる。細胞56の培養液としては、公知のものを用いることができる。本実施形態の細胞構造体製造装置10が凝集培養部60を含むことにより、播種した細胞56が細胞に安定な環境下で細胞構造体1を形成することができる。なお、凝集培養部60は、培養液を含む培養液槽であることができる。本実施形態の細胞構造体製造装置10において、細胞56を播種した可撓性の基板80の進行方法を下方又は斜め下方に変更し、培養液を含む培養液槽に基板80を浸漬するように構成することができる。
<細胞構造体採集部70>
 図1に示すように、本実施形態の細胞構造体製造装置10は、必要に応じて、得られた細胞構造体1を採取するための細胞構造体採集部70を更に含むことができる。細胞構造体1は、細胞構造体採集部70の細胞構造体採集機構72により、下地膜90を含む基板80から剥離され、採集される。なお、細胞構造体1の基板80からの剥離は、培養液などの細胞構造体1に対して無害な溶液中で行うことが好ましい。
 細胞構造体1の用途によっては、細胞構造体製造装置10が細胞構造体採集部70を有さずに、下地膜90を含む基板80の上に細胞構造体1が載置された状態で、細胞構造体1としての製品とすること可能である。
<気密機構>
 本実施形態の細胞構造体製造装置10では、細胞構造体製造装置10の内部を気密な閉鎖空間にすることが可能な気密機構を有することが好ましい。この場合、細胞構造体製造装置10の気密機構は、閉鎖空間の内部を無菌環境に維持することが可能である。
 本実施形態の細胞構造体製造装置10において、外気に解放された状態でコーティング膜84の形成及び/又は下地膜90の形成を行う場合には、外気から予期せぬ雑菌が混入する可能性がある。雑菌の繁殖を避けるため、外気に解放された細胞構造体製造装置10の場合には、細胞構造体1の製造工程に、殺菌工程及び/又は洗浄工程を適宜、追加する必要が生じる。一方、細胞構造体製造装置10の所定の気密機構により、閉鎖空間の内部を無菌環境に維持することが可能な構成であることにより、洗浄工程及び滅菌工程を不要にすることができる。
<洗浄工程及び滅菌工程>
 細胞構造体製造装置10が気密機構を有しない場合には、各工程において、雑菌などによる汚染が生じる可能性がある。その場合には、各工程の終了後、例えば、原料基板カセット22からの原料基板82の取り出し後、コーティング膜84の形成後、及び/又は下地膜90の形成後に、洗浄装置による洗浄工程及び/又は滅菌工程を行うことが好ましい。コーティング膜84及び/又は下地膜90の形成後に洗浄工程を行うことにより、形成したコーティング膜84及び/又は下地膜90のうち、過剰な膜を除去することができる。また、滅菌工程を行うことにより、付着した雑菌を除去することができる。
 洗浄工程としては、コーティング膜84及び/又は下地膜90が洗浄される工程であれば、特に制限されない。洗浄工程は、例えば、コーティング膜84及び/又は下地膜90に残存する不純物、未反応モノマー等をコーティング膜84から除去するために行われる。
 洗浄は、公知の方法で行うことができる。洗浄に用いる溶媒としては、水、電解質を含む水溶液などが挙げられる。溶媒は通常室温(例えば10~35℃)で用いられる。溶媒は、例えば40℃~95℃の範囲に加温されたものでもよい。電解質を含む水溶液は、PBS、生理食塩水(塩化ナトリウムのみを含むもの)、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水、トリス緩衝生理食塩水、HEPES緩衝生理食塩水及びベロナール緩衝生理食塩水が好ましく、PBSが特に好ましい。本実施形態のコーティング膜84は、水、PBS及びアルコール等で洗浄しても溶出せずに基材に強固に固着したままである。
 また、コーティング膜84及び/又は下地膜90に対して、細胞培養に用いられる試料の媒質(例えば、水、緩衝液、培地等)を用いて洗浄を行ってもよい。好ましい媒質は、培地であり、より好ましい媒質は、BME培地(イーグル基礎培地)、DMEM培地(ダルベッコ改変イーグル培地)である。
 コーティング膜84及び/又は下地膜90は、放射線照射による滅菌工程を経ることが好ましい。滅菌工程は、通常、周囲温度(例えば、約0℃~約40℃、好ましくは約10℃~約30℃、より好ましくは約25℃)で実施される。照射される放射線としては、滅菌を行うことができれば限定されないが、γ線、X線又は電子線照射が好ましい。より好ましくはγ線又は電子線、更に好ましくはγ線である。γ線の照射線量は、例えば、通常の滅菌工程で採用されている線量でよく、例えば、5~40kGy程度の照射で十分であり、好ましくは、10~25kGyがよい。
<細胞構造体1の寸法制御>
 本実施形態の細胞構造体製造装置10は、細胞構造体1のサイズ誤差(寸法誤差)が20%以内であることが好ましく、15%以内であることがより好ましく、10%以内であることが更に好ましい。
 細胞構造体1のサイズ誤差とは、細胞構造体1を100個以上製造したときの寸法の標準偏差を、平均寸法で除した値を意味する。本実施形態の細胞構造体製造装置10を用いるならば、下地膜パターン90aを所定の寸法で形成することができるので、細胞構造体1の寸法を容易に制御することができる。そのため、本実施形態の細胞構造体製造装置10を用いて細胞構造体1を製造した場合、従来と比べて、細胞構造体1のサイズ誤差を小さくすることができる。
 細胞構造体1が、球状スフェロイドの場合、スフェロイドの直径が大きすぎると、球状スフェロイド中の細胞56の一部が死ぬ恐れがある。また、スフェロイドの直径が小さすぎると、スフェロイドによる治療効果などの効果が低くなる。したがって、スフェロイドなどの細胞構造体1の寸法を適切に制御することにより、細胞構造体1の製造の歩留まりを向上させることができる。そのため、細胞構造体1の量産性を向上することができる。
<バッチ式の細胞構造体製造装置10>
 図3に、本実施形態の細胞構造体製造装置10の別な態様の平面模式図を示す。図3に示す細胞構造体製造装置10は、バッチ式の製造方法を採用する場合の、各部の配置図を平面模式図として示す。
 図3に示す細胞構造体製造装置10では、原料基板82(又は基板80)の形状は、所定の寸法の矩形である。原料基板82(又は基板80)は、基板供給部20に載置される。原料基板82は、例えばロボットのような移動機構12により、基板供給部20から取り出される。原料基板82(又は基板80)の方向の変更が必要な場合には、回転機構14により回転される。原料基板82(又は基板80)は、上述の図1に示す実施形態での説明と同様に、コーティング膜形成部30、及び下地膜形成部40において、所定の処理を行い、播種部50にて播種される。必要に応じて凝集培養部60で培養された後、細胞構造体採集部70にて、細胞構造体1は採取される。なお、このとき、細胞構造体1は、基板80に載置された状態で、採取されることができる。
<細胞構造体1の製造方法>
 本実施形態の細胞構造体製造装置10による細胞構造体1の製造方法では、少なくとも、播種部50において、下地膜90(下地膜パターン90a)が配置された基板80の上に細胞56が播種される工程を含む。細胞構造体1の製造方法は、更に必要に応じてその他の工程を含む。
 例えば、所定の寸法及び形状の下地膜90が配置されたコーティング膜84の上に細胞56が播種されることで、コーティング膜84の細胞付着抑制機能により、細胞56の接着、伸展増殖が抑制される。この結果、良好な細胞構造体1(例えば、三次元細胞凝集塊のようなスフェロイド)を得ることができる。
 例えば、基板80は、細胞付着抑制が可能なコーティング膜84と、コーティング膜84上に配置された細胞接着性を有するドットパターンの下地膜90(下地膜パターン90a)とを有する細胞播種面を有することができる。そのような細胞播種面に細胞56が播種されることで、ドットパターンの下地膜パターン90a上で選択的に細胞56が培養される。その結果、所定の寸法の細胞構造体1(例えば、三次元細胞凝集塊のようなスフェロイド)を得ることができる。
<コーティング膜形成用組成物38>
 次に、本実施形態の細胞構造体製造装置10に用いることのできるコーティング膜形成用組成物38について説明する。本実施形態では、下記のコーティング膜形成用組成物38(「本実施形態のコーティング膜形成用組成物」という場合がある。)を用いることが好ましい。本実施形態のコーティング膜形成用組成物を用いることにより、生体物質の付着抑制が可能でありかつリン酸緩衝生理食塩水に溶解しにくいコーティング膜84、及び生体物質の付着抑制が可能でありかつリン酸緩衝生理食塩水に溶解しにくいコーティング膜84を形成することが可能である。
 本実施形態のコーティング膜形成用組成物は、下記式(A)で表される繰り返し単位(A)、及び下記式(B)で表される繰り返し単位(B)を有する共重合体を含むことが好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000007

(式中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基を表し、X及びXは、それぞれ独立して、単結合、エステル結合、エーテル結合、アミド結合又は酸素原子で中断されてもよい炭素原子数1~5のアルキレン基を表す。)
 更に具体的には、本実施形態のコーティング膜形成用組成物は以下の通りである。
 [1] 共重合体を含有し、生体物質の付着抑制に用いられるコーティング膜形成用組成物であって、
 前記共重合体が、非水溶性であり、
 前記共重合体が、上記式(A)で表される繰り返し単位(A)、及び上記式(B)で表される繰り返し単位(B)を有し、
 前記共重合体における前記繰り返し単位(A)と前記繰り返し単位(B)とのモル比率(A:B)が、89:11~50:50である、
コーティング膜形成用組成物。
 [2] R及びRが水素原子であり、Rがメチル基であり、X及びXが単結合である、[1]のコーティング膜形成用組成物。
 [3] 前記共重合体の粘度平均重合度が、200~3,000である、[1]又は[2]のコーティング膜形成用組成物。
 [4] 前記共重合体における全繰り返し単位中の前記繰り返し単位(A)と前記繰り返し単位(B)の合計のモル%が、99.5モル%以上である、[1]~[3]の何れかのコーティング膜形成用組成物。
 [5] 前記共重合体が、アジド基を有さない、[1]~[4]の何れかのコーティング膜形成用組成物。
 [6] 溶媒を含有する、[1]~[5]の何れかのコーティング膜形成用組成物。
 [7] 前記溶媒が、アルコールを含有する、[6]のコーティング膜形成用組成物。
 本実施形態によれば、生体物質の付着抑制が可能でありかつリン酸緩衝生理食塩水に溶解しにくいコーティング膜、及び生体物質の付着抑制が可能でありかつリン酸緩衝生理食塩水に溶解しにくいコーティング膜を形成可能なコーティング膜形成用組成物を提供することができる。
 本実施形態のコーティング膜形成用組成物は、生体物質の付着抑制に用いられる。コーティング膜形成用組成物は、共重合体を少なくとも含有し、更に必要に応じて、溶媒などのその他の成分を含有する。なお、本実施形態のコーティング膜形成用組成物は、リン酸緩衝生理食塩水に溶解しにくいコーティング膜を形成可能である。本実施形態のコーティング膜形成用組成物の用途は、生体物質の付着抑制に用いられる限り、特に制限されず、リン酸緩衝生理食塩水に接触するコーティング膜の形成に制限されるものではない。
<<共重合体>>
 共重合体は、非水溶性である。ここで、「水溶性」とは、25℃の水100gに対して1.0g以上溶解可能であることをいう。「非水溶性」とは、「水溶性」に該当しないこと、即ち、25℃の水100gに対する溶解性が1.0g未満であることをいう。
 共重合体は、下記式(A)で表される繰り返し単位(A)、及び下記式(B)で表される繰り返し単位(B)を有する。共重合体における繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)とのモル比率(A:B)は、89:11~50:50である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000008

(式中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基を表し、X及びXは、それぞれ独立して、単結合、エステル結合、エーテル結合、アミド結合又は酸素原子で中断されてもよい炭素原子数1~5のアルキレン基を表す。)
 共重合体は、2種以上の繰り返し単位(A)を有していてもよい。共重合体は、2種以上の繰り返し単位(B)を有していてもよい。共重合体は、1種類の繰り返し単位(A)及び1種類の繰り返し単位(B)を有することが好ましい。
 炭素原子数1~5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、及び1-エチルプロピル基などが挙げられる。R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、又はエチル基が好ましい。
 上記「エステル結合」は、-C(=O)-O-又は-O-C(=O)-を意味し、「エーテル結合」は、-O-を意味し、「アミド結合」は、-NHC(=O)-又は-C(=O)NH-を意味する。
 炭素原子数1~5のアルキレン基は、酸素原子で中断されてもよい。炭素原子数1~5のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、1-メチルプロピレン基、2-メチルプロピレン基、ジメチルエチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、1-メチル-テトラメチレン基、2-メチル-テトラメチレン基、1,1-ジメチル-トリメチレン基、1,2-ジメチル-トリメチレン基、2,2-ジメチル-トリメチレン基、及び1-エチル-トリメチレン基が挙げられる。上記X及びXは、メチレン基、エチレン基、又はプロピレン基が好ましい。「酸素原子で中断されていてもよい」とは、炭素原子数1~5のアルキレン基の1つ又は2以上の炭素-炭素結合間がエーテル結合を介して結合していることをいう。
 共重合体は、例えば、R及びRが水素原子であり、Rがメチル基であり、X及びXが単結合である共重合体が好ましい。
 繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)とのモル比率(A:B)は、89:11~50:50である。共重合体における、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)との合計のモル数を100とした場合、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)とのモル比率(A:B)は、(100-m):mで表すことができる。その場合、mの範囲は、11~50である。そして、mの下限は、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30であってよい。mの上限は、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、38、37、36、又は35であってよい。mの範囲としては、例えば、12~49、12~48、15~48、20~49、20~45、22~49、又は22~45である。
 共重合体における全繰り返し単位中の繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)の合計のモル%としては、特に制限されないが、90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、99.5モル%以上がより一層好ましく、100%が特に好ましい。
 本実施形態においては、リン酸緩衝生理食塩水に溶解しにくいコーティング膜を得るために、共重合体における繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)とのモル比率を特定の範囲にしている。そのため、本実施形態においては共重合体を架橋させることなく、リン酸緩衝生理食塩水に溶解しにくいコーティング膜が得られる。よって、共重合体は、共重合体を架橋させるための感光基を有する必要がない。即ち、共重合体は感光基を有さないことが好ましい。感光基としては、例えば、アジド基が挙げられる。
 本実施形態においては、共重合体は、共重合体を架橋させるための感光基を有する必要がない。そのため、コーティング膜を形成する際に、共重合体を架橋させるための光照射を行う必要がない。よって、コーティング膜を形成する際の工程を簡素にすることができる。
 共重合体の粘度平均重合度(以下、「重合度」ということがある)は、特に制限されないが、本実施形態の効果を好適に得る観点から、200~3,000が好ましく、200~2,500がより好ましく、200~2,000が特に好ましい。
 粘度平均重合度は、共重合体を完全けん化した状態で測定される。完全けん化して得られるポリビニルアルコールの「粘度平均重合度」は、イオン交換水を溶媒としたオストワルド粘度計により30℃で測定した際の極限粘度[η](g/dL)から、下記式により算出される値である。
 log(P)=1.613×log([η]×10/8.29)
 上記式で、Pは粘度平均重合度を示す。粘度平均重合度は、JIS K 6726にしたがって求めることができる。
 共重合体を製造する方法としては、特に制限されないが、例えば、下記式(C)で表される化合物を重合してホモポリマーを製造し、得られたホモポリマーを公知のけん化反応により部分加水分解して、共重合体を得る方法が挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000009

(式中、R、R、及びXは上記と同義である。)
 また、共重合体を製造する方法としては、例えば、下記式(C)で表される化合物と下記式(D)で表される化合物とを共重合して、共重合体を得る方法が挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000010

(式中、R~R、X、及びXは上記と同義である。)
 共重合体は、ランダムコポリマーであってもよいし、ブロックコポリマーであってもよい。共重合体としては、市販品を使用してもよい。共重合体の市販品としては、具体的にはポリ酢酸ビニル(日本酢ビ・ポバール製、商品名JMR-10L(登録商標))が挙げられる。
 コーティング膜形成用組成物中の膜形成成分における共重合体の含有量としては、特に制限されないが、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が特に好ましい。なお膜形成成分とは、組成物の全成分から溶媒成分を除いた成分を指す。
 コーティング膜形成用組成物における共重合体の含有量としては、特に制限されないが、所望の膜厚のコーティング膜を形成しやすい観点から、0.1~10質量%が好ましく、0.1~8質量%がより好ましく、0.1~5質量%が特に好ましい。
<<溶媒>>
 溶媒としては、例えば、水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、アルコール、及び水溶性有機溶媒(ただしアルコールを除く。)などが挙げられる。
 アルコールとしては、炭素原子数2~6のアルコールが挙げられる。アルコールとしては、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、2,2-ジメチル-1-プロパノール(ネオペンチルアルコール)、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-1-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール(t-アミルアルコール)、3-メチル-1-ブタノール、3-メチル-3-ペンタノール、シクロペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、2,3-ジメチル-2-ブタノール、3,3-ジメチル-1-ブタノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、2-エチル-1-ブタノール、2-メチル-1-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-メチル-3-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-3-ペンタノール、4-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、4-メチル-3-ペンタノール及びシクロヘキサノールが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
 水溶性有機溶媒とは、水及びアルコールと任意の割合で混ぜることが可能であり、混ぜた後に分離が起こらない有機溶媒を指す。水溶性有機溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びプロピレングリコールプロピルエーテルアセテートが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
 コーティング膜形成用組成物には、溶媒として、水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、アルコール又は水溶性有機溶媒を単独で用いてもよい。コーティング膜形成用組成物には、溶媒として、水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、アルコール及び水溶性有機溶媒の2種以上を組み合わせて用いてもよい。共重合体の溶解性の観点から、溶媒は、水、アルコール、水溶性有機溶媒及びそれらの2種以上の組み合わせから選ばれるのが好ましく、水、エタノール、水溶性有機溶媒及びそれらの2種以上の組み合わせから選ばれるのがより好ましい。
 溶媒の組み合わせとしては、以下の組み合わせが好ましい。
 ・水及びアルコール
 ・水、アルコール及び水溶性有機溶媒
 ・アルコール及び水溶性有機溶媒
 溶媒の組み合わせとしては、以下の組み合わせがより好ましい。
 ・水及びエタノール
 ・水、エタノール及びプロピレングリコールモノメチルエーテル
 ・エタノール及びプロピレングリコールモノメチルエーテル
 コーティング膜形成用組成物における、水:アルコールの混合比(質量比)は、例えば、1:99~70:30であり、1:99~50:50である。
 コーティング膜形成用組成物における、水:アルコール:水溶性有機溶媒の混合比(質量比(A:B:C))は、例えば、5~30:65~92:1~30(ただし、A+B+Cは100)である。
 コーティング膜形成用組成物における、アルコール:水溶性有機溶媒の混合比(質量比)は、例えば、1:99~97:3である。
 コーティング膜形成用組成物における溶媒の含有量としては、特に制限されないが、所望の膜厚のコーティング膜を形成しやすい観点から、90質量%以上が好ましく、92質量%以上がより好ましく、95質量%以上が特に好ましい。
<<その他の成分>>
 コーティング膜形成用組成物は、必要に応じて、その他の成分を含有することもできる。その他の成分としては、例えば、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、防カビ剤、糖類等が挙げられる。
 細胞56の付着抑制能を有するとは、顕微鏡観察により細胞56の付着及び伸展が見られず、細胞凝集塊(スフェロイド)が形成することを意味する。
 又は、細胞56の付着抑制能を有するとは、ATPassayによるコーティング無しと比較した場合の発光強度(%)(コーティング膜上の付着細胞の発光強度)/(コーティング無のウェル上の付着細胞の発光強度)が50%以下、好ましくは30%以下、更に好ましくは10%以下であることを意味する。
<<コーティング膜84>>
 本実施形態のコーティング膜形成用組成物のコーティング膜84(「本実施形態のコーティング膜」という場合がある。)は、上述の本実施形態のコーティング膜形成用組成物を塗布して得られる。言い換えれば、本実施形態のコーティング膜は、本実施形態のコーティング膜形成用組成物の塗布膜である。本実施形態のコーティング膜は、生体物質の付着抑制に用いられる。
 なお、本実施形態のコーティング膜は、リン酸緩衝生理食塩水に溶解しにくいことを特徴とする。本実施形態のコーティング膜形成用組成物の用途は、生体物質の付着抑制に用いられる限り、特に制限されず、リン酸緩衝生理食塩水に接触する用途に制限されるものではない。
 本実施形態のコーティング膜においては、リン酸緩衝生理食塩水に溶解しにくいコーティング膜を得るために、共重合体における繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)とのモル比率を特定の範囲にしている。そのため、本実施形態のコーティング膜においては共重合体を架橋させることなく、リン酸緩衝生理食塩水に溶解しにくいコーティング膜が得られる。よって、本実施形態のコーティング膜において、共重合体は架橋されていなくてもよい。そして、本実施形態のコーティング膜を形成する際の工程を簡素にすることができる。
 本実施形態のコーティング膜における共重合体の含有量としては、特に制限されないが、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が特に好ましい。
<<コーティング膜の膜厚>>
 本実施形態のコーティング膜の膜厚としては、特に制限されないが、例えば、1~10000nmであり、5~1000nmが好ましく、10~500nmがより好ましく、20~300nmがより一層好ましく、50~250nmが更により一層好ましく、100~250nmが特に好ましい。なお、この膜厚は、他の種類のコーティング膜においても適用することができる。
<<コーティング膜形成用組成物38の別の実施形態>>
 本実施形態のコーティング膜84の別の実施形態として、下記のものを用いることができる。
 本実施形態のコーティング膜84の別の実施形態として、例えば、国際公開第2014/196650号に記載されているコーティング膜形成用組成物を使用することができる。上記コーティング膜形成組成物としては、下記式(a)で表される有機基を含む繰り返し単位と、下記式(b)で表される有機基を含む繰り返し単位とを含む共重合体(P):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000011

 [式中、
 Ua11、Ua12、Ub11、Ub12及びUb13は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~5の直鎖若しくは分岐アルキル基を表し、Anは、ハロゲン化物イオン、無機酸イオン、水酸化物イオン及びイソチオシアネートイオンからなる群から選ばれる陰イオンを表す]
と、溶媒とを含むコーティング膜形成用組成物を容器又は基板の表面に塗布し乾燥する工程を含むことが好ましい。上記コーティング膜は、基板表面の少なくとも一部に含めばよいが、細胞凝集塊を製造する表面(すなわち本実施形態のスポットが存在する表面)全体に渡って、あるいは基板表面全体に渡って塗布されていることが好ましい。
 国際公開第2014/196650号及び国際公開第2016/093293号の全開示は、参照として本願に援用される。
 細胞56の付着抑制能を有するとは、顕微鏡観察により細胞56の付着及び伸展が見られず、細胞凝集塊(スフェロイド)が形成することを意味する。又は、ATPassayによるコーティング無しと比較した場合の発光強度(%)(コーティング膜上の付着細胞の発光強度)/(コーティング無のウェル上の付着細胞の発光強度)が50%以下、好ましくは30%以下、更に好ましくは10%以下であることを意味する。
 本実施形態の別のコーティング膜として、エチレン性不飽和モノマー、又は多糖類若しくはその誘導体が共重合したものを用いてもよい。エチレン性不飽和モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸及びそのエステル;酢酸ビニル;ビニルピロリドン;エチレン;ビニルアルコール;並びにそれらの親水性の官能性誘導体からなる群より選択される1種又は2種以上のエチレン性不飽和モノマーを挙げることができる。多糖類又はその誘導体の例としては、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルセルロース又はヒドロキシプロピルセルロース)等のセルロース系高分子、デンプン、デキストラン、カードランを挙げることができる。
 親水性の官能性誘導体とは、親水性の官能基又は構造を有するエチレン性不飽和モノマーを指す。親水性の官能性基又は構造の例としては、ベタイン構造;アミド構造;アルキレングリコール残基;アミノ基;並びにスルフィニル基等が挙げられる。
 ベタイン構造は、第4級アンモニウム型の陽イオン構造と、酸性の陰イオン構造との両性中心を持つ化合物の一価又は二価の基を意味し、例えば、ホスホリルコリン基:
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000012

を挙げることができる。そのような構造を有するエチレン性不飽和モノマーの例としては、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)等を挙げることができる。
 アミド構造は、下記式:
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000013

[ここで、R16、R17及びR18は、互いに独立して、水素原子又は有機基(例えば、メチル基、ヒドロキシメチル基又はヒドロキシエチル基等)である]
で表される基を意味する。そのような構造を有するエチレン性不飽和モノマーの例としては、(メタ)アクリルアミド、N-(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。更に、そのような構造を有するモノマー又はポリマーは、例えば、特開2010-169604号公報等に開示されている。
 アルキレングリコール残基は、アルキレングリコール(HO-Alk-OH;ここでAlkは、炭素原子数1~10のアルキレン基である)の片側端末又は両端末の水酸基が他の化合物と縮合反応した後に残るアルキレンオキシ基(-Alk-O-)を意味し、アルキレンオキシ単位が繰り返されるポリ(アルキレンオキシ)基も包含する。そのような構造を有するエチレン性不飽和モノマーの例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等を挙げることができる。更に、そのような構造を有するモノマー又はポリマーは、例えば、特開2008-533489号公報等に開示されている。
 アミノ基は、式:-NH、-NHR19又は-NR2021[ここで、R19、R20及びR21は、互いに独立して、有機基(例えば、炭素原子数1~5の直鎖若しくは分岐アルキル基等)である]で表される基を意味する。本発明におけるアミノ基には、4級化又は塩化されたアミノ基を包含する。そのような構造を有するエチレン性不飽和モノマーの例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(t-ブチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、メタクリロイルコリンクロリド等を挙げることができる。
 スルフィニル基は、下記式:
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000014

[ここで、R22は、有機基(例えば、炭素原子数1~10の有機基、好ましくは、1個以上のヒドロキシ基を有する炭素原子数1~10のアルキル基等)である]
で表される基を意味する。そのような構造を有するポリマーとして、特開2014-48278号公報等に開示された共重合体を挙げることができる。
 本実施形態のコーティング膜によれば、生体物質の付着抑制が可能でありかつリン酸緩衝生理食塩水に溶解しにくいコーティング膜、及び生体物質の付着抑制が可能でありかつリン酸緩衝生理食塩水に溶解しにくいコーティング膜を形成することができる。実施形態のコーティング膜は、本実施形態の細胞構造体製造装置10に用いるコーティング膜84として、好ましく用いることができる。
<下地膜形成用組成物48>
 次に、本実施形態の細胞構造体製造装置10に用いることのできる下地膜形成用組成物48について説明する。本実施形態では、下記の下地膜形成用組成物48(「本実施形態の下地膜形成用組成物」という場合がある。)を用いることが好ましい。本実施形態の下地膜形成用組成物を用いることにより、動物由来の血清不含培養条件において、前記下地膜90に対する細胞56の均一な接着を実現できるため、良質な細胞構造体1を製造することができる。これより本実施形態の下地膜形成用組成物を用いることで、再生医療分野で用いられる均質で高品質な細胞構造体1の量産化を達成することができる。
 本実施形態の下地膜形成用組成物は、下記式(I):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000015

[式中、
Ua1及びUa2は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1乃至5の直鎖若しくは分岐アルキル基を表し、Ra1は、水素原子又は炭素原子数1乃至5の直鎖若しくは分岐アルキル基を表し、Ra2は、炭素原子数1乃至5の直鎖若しくは分岐アルキレン基を表す]で表されるモノマーから誘導される繰り返し単位、及び、下記式(II):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000016

[式中、
Rbは、水素原子又は炭素原子数1乃至5の直鎖若しくは分岐アルキル基を表す]で表されるモノマーから誘導される繰り返し単位を含む共重合体を含むことが好ましい。
 更に具体的には、本実施形態の下地膜形成用組成物は以下の通りである。
[1] 上記式(I)[式中、Ua1及びUa2は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~5の直鎖若しくは分岐アルキル基を表し、Ra1は、水素原子又は炭素原子数1~5の直鎖若しくは分岐アルキル基を表し、Ra2は、炭素原子数1~5の直鎖若しくは分岐アルキレン基を表す]で表されるモノマーから誘導される繰り返し単位を含むポリマー、細胞接着性物質、及び溶媒を含む、下地膜形成用組成物。
[2] 上記ポリマーが、更に上記式(II)[式中、Rは、水素原子又は炭素原子数1~5の直鎖若しくは分岐アルキル基を表す]で表されるモノマーから誘導される繰り返し単位を含む、[1]の下地膜形成用組成物。
[3] 前記ポリマーと、細胞接着性物質の重量比が、100:0.1~100:100である、[1]又は[2]の下地膜形成用組成物。
[4] 前記細胞接着性物質が、糖タンパク質を含む、[1]~[3]何れかの下地膜形成用組成物。
<<下地膜形成用組成物48>>
 本実施形態の下地膜形成用組成物は、下記式(I):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000017

[式中、
 Ua1及びUa2は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~5の直鎖若しくは分岐アルキル基を表し、Ra1は、水素原子又は炭素原子数1~5の直鎖若しくは分岐アルキル基を表し、Ra2は、炭素原子数1~5の直鎖若しくは分岐アルキレン基を表す]で表されるモノマーから誘導される繰り返し単位を含むポリマー、細胞接着性物質及び溶媒を含む。
(ポリマー)
 本実施形態の下地膜形成用組成物が含むポリマーは、上記式(I)表されるモノマーから誘導される繰り返し単位を含むポリマーである。
 上記ポリマーは、上記式(I)で表されるカチオン性モノマーと共に、下記式(II):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000018

[式中、
 Rは、水素原子又は炭素原子数1~5の直鎖若しくは分岐アルキル基を表す]で表されるアニオン性モノマーを重合することで得られるポリマーであることが好ましい。
 本明細書において、他に定義のない限り、「炭素原子数1~5の直鎖若しくは分岐アルキル基」としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基又は1-エチルプロピル基が挙げられる。
 Ra1及びRは、それぞれ独立して、水素原子及びメチル基から選ばれることが好ましい。Ua1及びUa2は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基及びn-ブチル基から選ばれることが好ましいが、メチル基又はエチル基であることが好ましく、メチル基が最も好ましい。
 本明細書において、他に定義のない限り、「炭素原子数1~5の直鎖若しくは分岐アルキレン基」としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、1-メチルプロピレン基、2-メチルプロピレン基、ジメチルエチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、1-メチル-テトラメチレン基、2-メチル-テトラメチレン基、1,1-ジメチル-トリメチレン基、1,2-ジメチル-トリメチレン基、2,2-ジメチル-トリメチレン基、及び1-エチル-トリメチレン基等が挙げられる。これらの中で、Ra2としてはエチレン基及びプロピレン基から選ばれることが好ましい。
 したがって、上記式(I)で表されるカチオン性モノマーとしては、2-N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、及びN,N-ジメチルアミノメチルメタクリレートなどが挙げられ、2-N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートが好ましい。上記式(II)で表されるアニオン性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられ、メタクリル酸が好ましい。
 前記ポリマー中の式(I)で表されるモノマー由来の単位/式(II)で表されるモノマー由来の単位のモル比が、100/0~50/50である。好ましくは98/2~50/50である。より好ましくは98/2~60/40であり、特に好ましくは98/2~70/30である。式(II)のモル比が50以下であると、ポリマーのアニオン性による細胞56の接着力低下を抑制できる。
(2つ以上の炭素―炭素不飽和結合を有するモノマー)
 上記ポリマーは、式(I)/式(II)で表されるモノマーと共に、更に2つ以上の炭素-炭素不飽和結合を有するモノマーとを重合することで得られるポリマーであってもよい。2つ以上の炭素-炭素不飽和結合を有するモノマーとは、具体的には、2つ以上の炭素-炭素二重結合を有するモノマーであり、例えば多官能アクリレート化合物、多官能アクリルアミド化合物、多官能ポリエステル、又はイソプレン化合物などが挙げられる。
 好ましい具体例としては下記式(III)~(V)で表されるモノマーが挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000019

Figure JPOXMLDOC01-appb-C000020

Figure JPOXMLDOC01-appb-C000021
 式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~5の直鎖若しくは分岐アルキル基を表し、Reは、炭素原子数1~5の直鎖若しくは分岐アルキレン基を表し、nは1~50の数を表す。これらの中で、式(III)で表されるモノマーであることが好ましい。
 前記ポリマー全体に対する式(III)~(V)で表されるモノマーのモル比は、好ましくは0~50%であり、更に好ましくは2~25%である。
 式(III)~(V)のモル比が50%以下であると、過度な架橋による高分子量化による製造中の固形分のゲル化を抑制でき、製造を容易にできる。
 R及びRは、それぞれ独立して、水素原子及びメチル基から選ばれることが好ましい。
 Rはメチレン基、エチレン基及びプロピレン基から選ばれることが好ましく、エチレン基が最も好ましい。
 nは1~50の数である。nは1~30の数であることが好ましく、nは1~10の数であることが好ましい。
 前記ポリマー全体に対する式(II)で表されるモノマーの占めるモル%の値と、前記調製工程時のモノマー仕込み量全体に対する式(II)で表される単量体の占めるモル%の値の差は、0~10モル%である。本実施形態のポリマーは後述する製造方法により、モノマー仕込み比と、製造されたポリマーの実測値との差が少なく、0~10モル%であり、更に好ましくは0~8モル%である。
 前記ポリマーの数平均分子量(Mn)は、20,000~1,000,000であり、50,000~800,000であることが更に好ましい。前記ポリマーの重量平均分子量(Mw)と前記数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、1.01~10.00であり、1.2~8.0であることが好ましく、1.4~6.0であることが好ましく、1.5~5.0であることが好ましく、1.6~4.5であることが好ましい。前記数平均分子量(Mn)と数平均分子量(Mn)は、例えば実施例に記載のGel Filtration Chromatographyにより求めることができる。
 本実施形態のポリマーを細胞培養の下地膜90として利用することで、細胞56を接着させた後に剥離させて細胞構造体1(細胞凝集塊のようなスフェロイド)を形成させることが可能である。なお細胞構造体1とは、細胞56が凝集した結果形成する構造体を示し、球状やリング状などのように形状が限定されない。従来の細胞低接着プレート上での非接着培養により作製される細胞凝集塊と比較し、接着面積の規定による細胞構造体1のサイズ調整(任意の大きさの細胞凝集塊が製造できる)などの点でメリットがある。
 国際公開第2020/040247号、特願2020-028120号明細書に記載の全開示は、参照として本願に援用される。
(細胞接着性物質)
 本実施形態の下地膜形成用組成物は、細胞接着性物質を更に含むことが好ましい。下地膜形成用組成物48が細胞接着性物質を含むことにより、細胞56の接着、伸展、増殖及び分化を促進することができる。その結果、所望の細胞構造体1の形成を容易にできる。
 細胞接着性物質としては、細胞外基質(ECM)タンパク質、糖タンパク質、ペプチドなどの生物由来物質や、合成化合物(低分子、高分子)等の公知の物質を使用することができる。細胞接着性物質は、生物由来物質でない化合物、例えば合成化合物(低分子、高分子)であることが好ましい。低分子とは、例えば重量平均分子量が2,000以下の化合物であり、高分子とは、例えば重量平均分子量が2,000以上であり、上限は例えば1,000,000である。
 細胞外基質(ECM)タンパク質の例としては、コラーゲン(例えばメルク社のI型コラーゲン(品番C9791、C7661、C1809、C2249、C2124)、II型コラーゲン(品番C9301)、IV型コラーゲン(品番C0543、C5533)、エラスチン(例えばメルク社品番:E1625、E6527)、フィブロネクチン(例えばメルク社品番F1141、F0635、F2518、F0895、F4759、F2006)、ラミニン(例えばメルク社品番:L6724、L2020、L4544)、ラミニン断片(例えばマトリクソーム社製:892011)、及びビトロネクチン(例えばVTN-N(ギブコ社)、Vitronectin, Human, Recombinant, Animal Free(PeproTech社)、メルク社品番:V0132、V9881、V8379、08-126、SRP3186)が挙げられる。
 細胞接着性物質が、糖タンパク質であることが好ましい。具体的にはビトロネクチン、インテグリン、カドヘリン、フィブロネクチン、ラミニン、テネイシン、オスチオポンチン及び骨シアロタンパク質から選ばれることが好ましい。また、アミノ酸配列としてRGD配列を持つタンパク質であることが好ましい。
 ペプチドの例としては、ECMペプチド(Kollodis Bio Sciences社のMAPTrix(登録商標)、RGDペプチド(富士フイルム和光純薬社製:180-01531)が挙げられる。
 合成化合物(高分子)の例としては、ポリリジン(例えばメルク社製品:P4707、P4832、P7280、P9155,P6407,P6282,P7405,P5899)、及びポリオルニチン(例えばメルク社品番P4975)が挙げられる。合成化合物(低分子)の例としてはアドヘサミン(例えば長瀬産業社製:AD-00000-0201)、合成環状RGDペプチド(例えばIRIS BIOTECH社製:LS-3920.0010)が挙げられる。
 本実施形態の下地膜形成用組成物中の、前記ポリマーと、細胞接着性物質の比(質量基準)は、細胞培養が可能な下地膜形成用組成物48が形成できれば制限はない。ただし、前記ポリマーと、細胞接着性物質の比(質量基準)は、100:0.1~100:100であることが好ましい。細胞接着性物質が0.1以上であると、細胞接着性が十分に発揮され、細胞接着性物質が100以下であると、細胞接着後の細胞56の凝集(細胞構造体1の形成)を容易にできる。
 本実施形態の下地膜形成用組成物は、溶媒を含む。前記溶媒としては、前記ポリマーを溶解できるものであれば限定されないが、水を含む含水溶液であることが好ましい。
 含水溶液とは、水、生理食塩水又はリン酸緩衝溶液などの塩含有水溶液、あるいは水又は塩含有水溶液とアルコールとを組み合わせた混合溶媒が挙げられる。アルコールとしては、炭素原子数2~6のアルコール、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、2,2-ジメチル-1-プロパノール(=ネオペンチルアルコール)、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-1-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール(=t-アミルアルコール)、3-メチル-1-ブタノール、3-メチル-3-ペンタノール、シクロペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、2,3-ジメチル-2-ブタノール、3,3-ジメチル-1-ブタノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、2-エチル-1-ブタノール、2-メチル-1-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-メチル-3-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-3-ペンタノール、4-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、4-メチル-3-ペンタノール及びシクロヘキサノールが挙げられ、単独で又はそれらの組み合わせの混合溶媒を用いてもよい。
 含水溶液中の水の含有量は、例えば50質量%~100質量%、80質量%~100質量%、90質量%~100質量%である。
 更に下地膜形成用組成物48は、上記ポリマー、細胞接着性物質及び溶媒の他に、必要に応じて得られる下地膜90の性能を損ねない範囲で他の物質を添加することもできる。他の物質としては、pH調整剤、架橋剤、防腐剤、界面活性剤、容器又は基板80との密着性を高めるプライマー、防カビ剤及び糖類等が挙げられる。
 以下、実施例として、本実施形態の細胞構造体製造装置10に用いることのできるコーティング膜形成用組成物38及び下地膜形成用組成物48について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<コーティング膜形成用組成物38>
 まず、コーティング膜形成用組成物38の実験例A1について説明する。
<実験例A1>
(コーティング膜形成用組成物38の調製)
 ポリ酢酸ビニル(日本酢ビ・ポバール製 JMR-10L(登録商標)(重合度250,けん化度35.8%))を水/エタノール(3/7質量比)で10mg/gの濃度となるように溶解させ、コーティング膜形成用組成物38を調製した。得られたコーティング膜形成用組成物38は透明かつ均一であった。
(HMDS処理済みシリコンウェハ上のコーティング膜84の形成)
 上記で得られたコーティング膜形成用組成物38を1500rpm/60秒でHMDS(1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン)処理済みシリコンウェハにスピンコートし、乾燥工程として70℃のオーブンで24時間乾燥し、HMDS処理済みシリコンウェハ上にコーティング膜84を得た。分光エリプソメーターを用いてHMDS処理済みシリコンウェハ上のコーティング膜84の膜厚を測定した。その後、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で充分に洗浄を行った後50℃のオーブンで1時間乾燥し、分光エリプソメーターを用いてHMDS処理済みシリコンウェハ上のコーティング膜84の膜厚を測定した。塗布後膜厚に対するPBS洗浄後の膜厚から残膜率を算出した。
(細胞培養用コーティングプレートの作製)
 上記で得られたコーティング膜形成用組成物38を用いて、以下の(i)又は(ii)の方法で、細胞培養用コーティングプレートを作製した。
(i)(実験例A1、2、比較実験例A1、2、5、6)
 上記で得られたコーティング膜形成用組成物38を、96穴細胞培養プレート(Corning社製、#351172、容積0.37mL、ポリスチレン製)の別々のウェルに200μL/ウェルとなるよう添加し、室温にて1時間静置後、過剰の組成物を除去した。
 その後、オーブンを用いて70℃で24時間乾燥した。
 その後、コーティングした各ウェルを250μLの純水で3回洗浄し、50℃のオーブンを用いて1時間乾燥後、試験に用いた。
(ii)(実験例A3~20、比較実験例A3、4)
 上記で得られたコーティング膜形成用組成物38を、24穴細胞培養プレート(Corning社製、#351147、容積1mL、ポリスチレン製)の別々のウェルに800μL/ウェルとなるよう添加し、室温にて1時間静置後、過剰の組成物を除去した。
 その後、オーブンを用いて70℃で24時間乾燥した。
 その後、コーティングした各ウェルを1.5mLの純水で3回洗浄し、50℃のオーブンを用いて1時間乾燥後、試験に用いた。
(細胞の調製)
 細胞は、マウス胚線維芽細胞(DSファーマバイオメディカル社製)を用いた。細胞の培養に用いた培地は、10%FBS(Sigma-Aldrich社製)とL-グルタミン-ペニシリン-ストレプトマイシン安定化溶液(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を含むBME培地(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いた。細胞は、37℃/COインキュベーター内にて5%二酸化炭素濃度を保った状態で、直径10cmのシャーレ(培地10mL)を用いて2日間以上静置培養した。引き続き、本細胞をPBS5mLで洗浄した後、0.25w/v%トリプシン-1mmol/L EDTA溶液(富士フイルム和光純薬(株)製)1mLを添加して細胞を剥がし、上記の培地10mLにてそれぞれ懸濁した。本懸濁液を遠心分離(株式会社トミー精工製、型番LC-200、1000rpm/3min、室温)後、上清を除き、上記の培地を添加して細胞懸濁液を調製した。
(細胞付着実験)
 上記にて調製したプレートの各ウェルに対して、それぞれの細胞懸濁液を96穴細胞培養プレートでは1×10cells/ウェルになるように各150μL、24穴細胞培養プレートでは5×10cells/ウェルになるように各0.5mL加えた。その後、5%二酸化炭素濃度を保った状態で、37℃で3日間COインキュベーター内にて静置した。培養3日間後、上記にて調製したプレートの各ウェルに対する細胞の付着を倒立型顕微鏡(オリンパス社製、CKX31)による観察(倍率:4倍)に基づき比較した。
 観察結果を以下の評価基準で評価し、細胞接着抑制効果を確認した。
〔評価基準〕
 〇:基材底面への細胞の付着及び伸展が見られず、ウェル内で細胞凝集塊(スフェロイド)が形成した状態を示す。
 ×:基材底面に細胞が付着し伸展している状態を示す。
 図4に実験例A1の細胞付着試験の顕微鏡観察結果の写真を示した。
 実験例A1のコーティング膜形成用組成物38から得られたコーティング膜84は、基材表面を親水化することによっていずれも細胞56の付着及び伸展が見られず、ウェル内で細胞凝集塊(スフェロイド)の形成が観察された。
(タンパク質付着抑制試験用コーティングプレートの作製)
 上記で得られたコーティング膜形成用組成物38を、96穴細胞培養プレート(Corning社製、#9017、容積0.36mL、ポリスチレン製)の別々のウェルに5wellずつ150μL/wellとなるよう添加し、室温にて1時間浸漬後排液し、オーブンを用いて50℃で24時間乾燥した。その後、コーティングした各ウェルを200μLの純水で3回ずつ洗浄し、70℃のオーブンを用いて1時間乾燥後、試験に用いた。
 陰性対照として、コーティングを施していない96穴細胞培養プレート(Corning社製、#9017、容積0.36mL、ポリスチレン製)のウェルを用いた。
(IgG-HRP希釈溶液の調製)
 ヤギ抗マウスIgG抗体HRPコンジュゲート(Southern Biotechnology Associates社製)をPBSで1mg/gの濃度になるように希釈し、IgG-HRP希釈液を調製した。
(タンパク質付着実験)
 上記にて調製したプレートの各ウェル、陰性対照に対して、それぞれにIgG-HRP希釈液を100μL/wellずつ加え、30分間室温にて静置した。30分後IgG-HRP希釈液を排液し、各ウェルを200μLのPBSで3回ずつ洗浄した。TMB溶液(sera care社製、SureBlue)を100μL/wellずつ加え、1分後にTMB STOP solution(sera care社製)を100μL/wellずつ加えた。マイクロプレートリーダー(TECAN社製、infinite M200PRO)を用い、450nm及び650nmにおける吸光度を測定した。450nmにおける吸光度から650nmにおける吸光度を引いた値を算出し、5ウェルの平均吸光度を得た。陰性対照のウェルにおける平均吸光度をタンパク質吸着率100%とし、上記で得られたコーティング膜形成用組成物38をコーティングしたウェルのタンパク質吸着率を算出した。
<実験例A2、比較実験例A1~2>
 ポリ酢酸ビニルの重合度及びけん化度、並びに各溶媒組成を表1の記載に変更した以外は実験例A1と同様に操作し、コーティング膜形成用組成物38を調製した。得られたコーティング膜形成用組成物38は透明かつ均一であった。
 得られたコーティング膜形成用組成物38について、実験例A1と同様に操作し、HMDS処理済みシリコンウェハ上にコーティング膜84を形成し、かつ細胞培養用コーティングプレート、及びタンパク質付着抑制試験用コーティングプレートを作製した。
 実験例A1と同様にして、残膜率を求めた。
 実験例A1と同様にして、細胞付着実験を行った。
 実験例A1と同様にして、タンパク質付着実験を行った。
<実験例A3~11、比較実験例A3~4>
 ポリ酢酸ビニルの重合度及びけん化度、並びに各溶媒組成を表1の記載に変更した以外は実験例A1と同様に操作し、コーティング膜形成用組成物38を調製した。得られたコーティング膜形成用組成物38は透明かつ均一であった。
 得られたコーティング膜形成用組成物38について、実験例A1と同様に操作し、HMDS処理済みシリコンウェハ上にコーティング膜84を形成した。
 また、上記(ii)の方法で、細胞培養用コーティングプレートを作製した。
 また、実験例A1と同様に操作しタンパク質付着抑制試験用コーティングプレートを作製した。
 実験例A1と同様にして、残膜率を求めた。
 実験例A1と同様にして、細胞付着実験を行った。
 実験例A1と同様にして、タンパク質付着実験を行った。
 図5に比較実験例A3の細胞付着試験の顕微鏡観察結果の写真を示した。
 比較実験例A3のコーティング膜形成用組成物38から得られたコーティング膜84では、基材表面が十分に親水化されず、細胞はプレート底面に付着し伸展していた。
<実験例A12~20>
 ポリ酢酸ビニルの重合度及びけん化度、並びに各溶媒組成を表1の記載に変更した以外は実験例A3と同様にして、HMDS処理済みシリコンウェハ上、細胞培養用プレート上、及びタンパク質付着抑制試験用コーティングプレート上にコーティング膜84を形成した。その後、γ線(25kGy)を照射した。
 実験例A1と同様にして、残膜率を求めた。
 実験例A1と同様にして、細胞付着実験を行った。
 実験例A1と同様にして、タンパク質付着実験を行った。
<実験例A21>
(コーティング膜形成用組成物の調製)
 濃度を3mg/gとなるように溶解した以外は実験例A20と上記と同様に操作し、コーティング膜形成用組成物を調製した。得られたコーティング膜形成用組成物は透明かつ均一であった。
(インクジェットによる細胞培養用コーティングプレートの作製)
 インクジェット装置(セイコーエプソン(株)製、R&D用インクジェット装置)、及びインクジェットヘッド(セイコーエプソン(株)製、Precision Core ヘッド S800-A1)を用いて、79mm×121mmのサイズを有するポリスチレン基板に、上記にて調製したコーティング膜形成用組成物を直径18mmの真円状に適量塗布した。70℃のオーブンで24時間乾燥した。底なし24ウェルプレート(シーエステック社製)へ貼り付け、細胞培養用コーティングプレートを作製した。
(細胞の調製)
 細胞は、ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞ADSC(セルソース(株)製)を用いた。細胞の培養に用いた培地は、L-グルタミン-ペニシリン-ストレプトマイシン安定化溶液(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を含む低血清培地Mesenchymal Stem Cell Growth Medium 2培地(PromoCell社製)を用いた。細胞は、37℃/CO2インキュベーター内にて5%二酸化炭素濃度を保った状態で、直径10cmのシャーレ(培地10mL)を用いて2日間以上静置培養した。引き続き、本細胞をPBS5mLで洗浄した後、TrypLE Select Enzyme(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)1mLを添加して細胞を剥がし、上記の培地10mLにてそれぞれ懸濁した。本懸濁液を遠心分離((株)トミー精工製、型番LC-200、1000rpm/3分、室温)後、上清を除き、上記の培地を添加して細胞懸濁液を調製した。
(細胞付着実験)
 上記の方法で調製した細胞懸濁液を使用する以外は実験例1と同様にして、細胞付着実験を行った。
 実験例A21のコーティング膜形成用組成物38から得られたコーティング膜84は、基材表面を親水化することによっていずれも細胞56の付着及び伸展が見られず、ウェル内で細胞凝集塊(スフェロイド)の形成が観察された。
<比較実験例A5>
 特開2003-292477号公報の合成例5及び実験例A3にしたがって、感光性ポリビニルアルコールを得た。得られた感光性ポリビニルアルコールをエタノールで5mg/gの濃度となるように溶解させ、コーティング膜形成用組成物38を調製した。
 なお、ポリビニルアルコールとしては、ゴーセノールEG-30P(三菱ケミカル社製、けん化度は86.3-69.0)を用いた。
 得られたコーティング膜形成用組成物38について、実験例A1と同様に操作し、HMDS処理済みシリコンウェハ上にコーティング膜84を形成し、かつ細胞培養用コーティングプレートを作製した。
 実験例A1と同様にして、残膜率を求めた。
 実験例A1と同様にして、細胞付着実験を行った。
<比較実験例A6>
 比較実験例A5において、HMDS処理済みシリコンウェハ上にコーティング膜84を形成し、かつ細胞培養用コーティングプレートを作製する際に、乾燥工程の後に、超高圧水銀灯(紫外線照度20mW/cm:UT-150(USHIO製照度計))にて、5秒露光した以外は、比較実験例A5と同様にして、HMDS処理済みシリコンウェハ上にコーティング膜84を形成し、かつ細胞培養用コーティングプレートを作製した。
 実験例A1と同様にして、残膜率を求めた。
 実験例A1と同様にして、細胞付着実験を行った。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000022
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000023
 表1中、EtOHはエタノールを表し、PGMEはプロピレングリコールモノメチルエーテルを表す。
 実験例A1~20及び比較実験例A1~4におけるポリ酢酸ビニルのけん化度は、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)とのモル比率(A:B)に相当する。
 例えば、けん化度35.8モル%のポリ酢酸ビニルのモル比率(A:B)は、64.2:35.8である。
 また、例えば、けん化度65.4モル%のポリ酢酸ビニルのモル比率(A:B)は、34.6:65.4である。
 実験例A1~20、及び比較実験例A3~4で用いたポリ酢酸ビニルは、いずれも非水溶性であった。
 比較実験例A1~2で用いたポリ酢酸ビニルは、いずれも水溶性であった。
 比較実験例A5で用いた感光性ポリビニルアルコールは、水溶性であった。
 実験例A1~20のコーティング膜形成用組成物38から得られたコーティング膜84は、比較実験例A1、2、及び5のコーティング膜形成用組成物38から得られたコーティング膜84に比べ、PBSによる洗浄後も残膜率が高かった。
 実験例A1~20のコーティング膜形成用組成物38から得られたコーティング膜84は、いずれも細胞の付着及び伸展が見られず、ウェル内で細胞凝集塊(スフェロイド)の形成が観察された。一方、比較実験例A3、4、及び5のコーティング膜形成用組成物38から得られたコーティング膜84では、細胞はプレート底面に付着し伸展していた。また、比較実験例A5のコーティング膜形成用組成物38から得られたコーティング膜84が実験例Aと同程度の残膜率、及び細胞接着抑制効果を得るには、紫外線照射が必要であった。
 実験例A1~20のコーティング膜形成用組成物38から得られたコーティング膜84は、比較実験例A3及びコーティング膜84なしの基板80に比べ、タンパク質付着率が低かった。
 以上の結果から、実験例A1~20のコーティング膜形成用組成物38から得られたコーティング膜84は、細胞56の付着抑制能を有することは明らかである。したがって、このコーティング膜形成用組成物38は、本実施形態の細胞構造体製造装置10のコーティング膜形成部30において、コーティング膜84を形成するためのコーティング膜形成用組成物38として好ましく用いることができる。
<下地膜形成用組成物48>
 以下、実験例B及び比較実験例Bをにより、下地膜形成用組成物をより具体的に説明するが、下地膜形成用組成物は下記の実験例Bに限定されるものではない。以下の実験例B及び比較実験例Bでは、基板80の上に、下地膜形成用組成物48を用いて下地膜90を形成したものを、細胞凝集塊製造用基板という。また、実験例B及び比較実験例Bで用いた下地膜形成用組成物48のことを、下地膜形成剤という。
<重量平均分子量の測定方法>
下記合成例に示す重量平均分子量はGel Filtration Chromatography(以下、GFCと略称する)による結果である。
(測定条件)
・装置:HLC-8320GPC(東ソー(株)製)
・GFCカラム:TSKgel G 6000 + 3000 PWXL-CP
・流速:1.0mL/min
・溶離液:塩含有の水/有機混合溶媒
・カラム温度:40℃
・検出器:RI
・注入濃度:ポリマー固形分0.05質量%
・注入量:100μL
・検量線:三次近似曲線
・標準試料:ポリエチレンオキサイド(Agilent社製)×10種
<合成例1>
 メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル(東京化成工業(株)製)24.00g、メタクリル酸(東京化成工業(株)製)1.46g、エチレングリコールジメタクリレート(東京化成工業(株)製)5.09g、ジメチル 1,1′-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボキシレート)(VE-073、富士フイルム和光純薬(株)製)0.31g、2-プロパノール111.09gを混合し、リフラックス温度とした2-プロパノール166.62gに対して滴下重合することでポリマーを合成した。反応生成物を貧溶媒であるヘキサンで再沈殿させ、析出物を濾過により回収し減圧乾燥させた。
 GFCによるこのポリマーの重量平均分子量は228,000であった(以下、「合成例ポリマー1」と称す)。
<合成例2>
 メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル(東京化成工業(株)製)8.00g、メタクリル酸(東京化成工業(株)製)1.88g、エチレングリコールジメタクリレート(東京化成工業(株)製)1.98g、ジメチル 1,1′-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボキシレート)(VE-073、富士フイルム和光純薬(株)製)0.12g、2-プロパノール43.10gを混合し、リフラックス温度とした2-プロパノール64.65gに対して滴下重合することでポリマーを合成した。反応生成物を貧溶媒であるヘキサンで再沈殿させ、析出物を濾過により回収し減圧乾燥させた。
 GFCによるこのポリマーの重量平均分子量は438,000であった(以下、「合成例ポリマー2」と称す)。
<実験例B1>
 上記合成例1で得られたポリマー0.0025gに、純水99.5g、0.5mg/mLビトロネクチンVTN-N(ギブコ社)0.5mLを加えて十分に攪拌し、下地膜形成剤を調製した。インクジェット装置((株)マイクロジェット製、型番:LaboJet-600)、及びインクジェットヘッド(型番:500-S-C)を用いて、細胞56の付着抑制能を有する培養ディッシュ(直径:35mm)(住友ベークライト株式会社、MS9035X)の培養表面に、下地膜形成剤を適量塗布した。70℃の恒温乾燥機で1日間乾燥させて細胞凝集塊製造用基板を調製した。
<実験例B2>
 上記合成例1で得られたポリマー0.0025gに、純水99g、0.5mg/mLビトロネクチンVTN-N(ギブコ社)1mLを加えて十分に攪拌し、下地膜形成剤を調製した。実験例B1と同様にインクジェット装置を用いて下地膜形成剤を塗布して乾燥させ、細胞凝集塊製造用基板を調製した。
<実験例B3>
 上記合成例2で得られたポリマー0.005gに、純水99g、0.5mg/mLビトロネクチンVTN-N(ギブコ社)1.0mLを加えて十分に攪拌し、下地膜形成剤を調製した。実験例B1と同様にインクジェット装置を用いて下地膜形成剤を塗布して乾燥させ、細胞凝集塊製造用基板を調製した。
<実験例B4>
 上記合成例1で得られたポリマー0.005gに、純水99g、0.5mg/mLビトロネクチンVTN-N(ギブコ社)1.0mLを加えて十分に攪拌し、下地膜形成剤を調製した。実験例B1と同様にインクジェット装置を用いて下地膜形成剤を塗布して乾燥させ、細胞凝集塊製造用基板を調製した。
<実験例B5>
 上記合成例1で得られたポリマー0.015gに、純水94g、0.5mg/mLビトロネクチンVTN-N(ギブコ社)6.0mLを加えて十分に攪拌し、下地膜形成剤を調製した。インクジェット装置((株)マイクロジェット製、型番:LaboJet-600)、及びインクジェットヘッド(型番:IJHBS-1000)を用いて、細胞56の付着抑制能を有する培養プレート(住友ベークライト株式会社、PrimeSurface(登録商標)プレート24F、型番: MS-90240)の培養表面に、下地膜形成剤を適量塗布した。70℃の恒温乾燥機で1日間乾燥させて細胞凝集塊製造用基板を調製した。ガンマ線を25kGy照射することで滅菌を行った。
<実験例B6>
 上記合成例1で得られたポリマー0.005gに、純水98g、0.5mg/mLビトロネクチンVTN-N(ギブコ社)2.0mLを加えて十分に攪拌し、下地膜形成剤を調製した。インクジェット装置((株)マイクロジェット製、型番:LaboJet-600)、及びインクジェットヘッド(型番:IJHBS-1000)を用いて、細胞56の付着抑制能を有する培養プレート(住友ベークライト株式会社、PrimeSurface(登録商標)プレート24F、型番: MS-90240)の培養表面に、下地膜形成剤を適量塗布した。70℃の恒温乾燥機で1日間乾燥させて細胞凝集塊製造用基板を調製した。ガンマ線を25kGy照射することで滅菌を行った。
<実験例B7>
 上記合成例1で得られたポリマー0.005gに、純水31.3g、0.5mg/mLビトロネクチンVTN-N(ギブコ社)2.0mLを加えて十分に攪拌し、下地膜形成剤を調製した。インクジェット装置((株)マイクロジェット製、型番:LaboJet-600)、及びインクジェットヘッド(型番:200-S-C)を用いて、細胞56の付着抑制能を有する培養プレート(住友ベークライト株式会社、PrimeSurface(登録商標)プレート24F、型番: MS-90240)の培養表面に、下地膜形成剤を適量塗布した。70℃の恒温乾燥機で1日間乾燥させて細胞凝集塊製造用基板を調製した。ガンマ線を25kGy照射することで滅菌を行った。
<実験例B8>
上記合成例1で得られたポリマー0.005gに、滅菌水62.7g、滅菌水で0.5mg/mLに希釈したRecombinant Human Vitronectin(Peprotech社製)4.00gを加えて十分に攪拌し、下地膜形成剤を調製した。細胞56の付着抑制能を有するシート(実験例A21で作製した細胞の付着抑制能を有するシート)の培養表面に、インクジェット装置(セイコーエプソン(株)製、R&D用インクジェット装置)、及びインクジェットヘッド(セイコーエプソン(株)製、Precision Core ヘッド S800-A1)を用いて、実験例B8で調製した下地膜形成剤をスポット直径170μm、スポット中心間間隔250μmとなるように適量塗布した。70℃の恒温乾燥機で1日間乾燥させた。底なし24ウェルプレート(シーエステック社製)へ貼り付け、細胞凝集塊製造用基板を調製した。ガンマ線を25kGy照射することで滅菌を行った。
<実験例B9>
上記実験例B8で下地膜形成剤のスポット直径を250μm、スポット中心間間隔を350μmとした以外は実験例B8と同様の操作を行い、細胞凝集塊形成用基板を作製した。
<実験例B10>
上記実験例B8で下地膜形成剤のスポット直径を400μm、スポット中心間間隔を500μmとした以外は実験例B8と同様の操作を行い、細胞凝集塊形成用基板を作製した。
<実験例B11>
上記実験例B8で下地膜形成剤のスポット直径を700μm、スポット中心間間隔を800μmとした以外は実験例B8と同様の操作を行い、細胞凝集塊形成用基板を作製した。
<実験例B12>
上記実験例B8で下地膜形成剤のスポット直径を900μm、スポット中心間間隔を1000μmとした以外は実験例B8と同様の操作を行い、細胞凝集塊形成用基板を作製した。
<比較実験例B1>
 上記合成例1で得られたポリマー0.0025gに、純水100.0gを加えて十分に攪拌し、下地膜形成剤を調製した。実験例B1と同様にインクジェット装置を用いて下地膜形成剤を塗布して乾燥させ、細胞凝集塊製造用基板を調製した。
<比較実験例B2>
 上記合成例2で得られたポリマー0.005gに、純水100.0gを加えて十分に攪拌し、下地膜形成剤を調製した。実験例B1と同様にインクジェット装置を用いて下地膜形成剤を塗布して乾燥させ、細胞凝集塊製造用基板を調製した。
<比較実験例B3>
 上記合成例1で得られたポリマー0.005gに、純水33.3gを加えて十分に攪拌し、下地膜形成剤10を調製した。インクジェット装置((株)マイクロジェット製、型番:LaboJet-600)、及びインクジェットヘッド(型番:200-S-C)を用いて、細胞56の付着抑制能を有する培養ディッシュ(直径:35mm)(住友ベークライト株式会社、MS9035X)の培養表面に、下地膜形成剤を適量塗布した。70℃の恒温乾燥機で1日間乾燥させて細胞凝集塊製造用基板を調製した。ガンマ線を25kGy照射することで滅菌を行った。
<比較実験例B4>
 純水4.8g、0.5mg/mLビトロネクチンVTN-N(ギブコ社)0.2mLを加えて十分に攪拌し、下地膜形成剤11を調製した。実験例B1と同様にインクジェット装置を用いて下地膜形成剤を塗布して乾燥させ、細胞凝集塊製造用基板を調製した。
<比較実験例B5>
 純水2.1g、0.5mg/mLビトロネクチンVTN-N(ギブコ社)1.2mLを加えて十分に攪拌し、下地膜形成剤12を調製した。実験例B1と同様にインクジェット装置を用いて下地膜形成剤12を塗布して乾燥させ、細胞凝集塊製造用基板を調製した。
<試験例B1:実験例B1~3、比較実験例B1~2のFBS不含培地でのマウス線維芽細胞での細胞接着確認試験>
(細胞56の調製)
 細胞56は、マウス胎児線維芽細胞(C3H10T1/T2細胞:DSファーマバイオメディカル(株)製)を用いた。細胞の培養には、基礎培地となるBME培地(Gibco社製)に対しFBS(Sigma-Aldrich社製)を10%、Glutamine/Penicillin/Streptmycin(Gibco社製)を1%となるように添加した培地を用いた。細胞は、37℃/COインキュベーター内にて5%二酸化炭素濃度を保った状態で、直径10cmのシャーレ(培地10mL)を用いて2日間以上静置培養した。引き続き、本細胞をPBS溶液(富士フイルム和光純薬(株)製)3mLで洗浄した後、トリプシン-EDTA溶液(PromoCell社製)3mLを添加して室温で3分間静置し細胞を剥離した。FBS(ウシ血清)及びGlutamine/Penicillin/Streptmycin不含のBME培地を7mL添加して細胞56を回収した。本懸濁液を遠心分離((株)トミー精工製、型番LC-230、200×g/3分、室温)後、上清を除き、上記の培地を添加して細胞懸濁液を調製した。
(細胞接着確認試験)
 実験例B1~3、比較実験例B1、2で作製した細胞凝集塊製造用基板に対して、細胞懸濁液を2.0mL加えた。細胞密度は実験例B1、実験例B2、比較実験例B1については1.5×10cells/cm2、実験例B3、比較実験例B2については3.0×10cells/cm2となるように播種した。その後、5%二酸化炭素濃度を保った状態で、37℃/COインキュベーター内にて2時間静置した。静置後、非接着細胞と培地を除去し、PBSで洗浄することで接着細胞のみをウェル上へ残した。洗浄後、新しい培地を2.0mL添加し、実体顕微鏡SZX16(オリンパス(株)製)を用いて接着細胞の様子を観察、撮影した。その結果、図6に示すように、実験例B1~3及び比較実験例B1、2で作製した基板80上の下地膜90部分への選択的な細胞の接着が確認された。実験例B1~3については細胞接着に間隙はなく均一な接着が起きていた。一方で比較実験例B1~2については細胞接着に間隙があり、不均一に細胞接着していることがわかった。
 上記より下地膜形成剤中に細胞56の接着や伸展を促進する添加物を含有することで、血清(FBS)不含の培地中において下地膜90の上に均一な細胞接着を達成できることがわかった。
<試験例B2:実験例B4、6のFBS不含培地でのマウス線維芽細胞での細胞接着、細胞凝集塊形成確認試験>
(細胞56の調製)
 試験例B1と同様の方法で細胞56の調製を実施した。
(細胞接着確認試験)
 実験例B4、6で作製した細胞凝集塊製造用基板に対して、細胞懸濁液を3.0×10cells/cm2となるように2.0mL加えた。その後、5%二酸化炭素濃度を保った状態で、37℃/COインキュベーター内にて2時間静置した。静置後、非接着細胞と培地を除去し、PBSで洗浄することで接着細胞のみをウェル上へ残した。洗浄後、新しい培地を2.0mL添加し、実体顕微鏡SZX16(オリンパス(株)製)を用いて接着細胞の様子を観察、撮影した。更に翌日細胞凝集塊形成の有無を観察、撮影した。その結果、図7に示すように、作製した基板80上の下地膜90部分への選択的な細胞56の接着が確認された。また細胞接着に間隙はなく均一な接着が起きていた。更に2日後の時点では接着した細胞56がシャーレから剥がれて凝集し、細胞凝集塊(スフェロイド)を形成していることが確認された。上記より細胞56の接着や伸展を促進する添加物を含有した下地膜90において均一な細胞接着後に細胞56が剥離し細胞凝集塊を形成可能であることがわかった。
<試験例B3:実験例B5、比較実験例B3のヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞を用いた無血清培地での細胞接着確認試験>
(細胞56の調製)
 細胞56は、ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞(ADSC:セルソース(株)製)を用いた。細胞の培養には、低血清培地Mesenchymal Stem Cell Growth Medium 2(タカラバイオ(株)製:血清濃度2%)を用いた。細胞は、37℃/COインキュベーター内にて5%二酸化炭素濃度を保った状態で、直径10cmのシャーレ(培地10mL)を用いて2日間以上静置培養した。引き続き、本細胞をPBS溶液(富士フイルム和光純薬(株)製)3mLで洗浄した後、トリプシン-EDTA溶液(PromoCell社製)3mLを添加して室温で3分間静置し細胞を剥離した。無血清培地のMesenchymal Stem Cell Growth Medium DXF培地を7mL添加して細胞56を回収した。本懸濁液を遠心分離((株)トミー精工製、型番LC-230、200×g/3分、室温)後、上清を除き、上記の培地を添加して細胞懸濁液を調製した。
(細胞接着確認試験)
 実験例B5、比較実験例B3で作製した細胞凝集塊製造用基板に対して、細胞懸濁液を3.0×10cells/cm2となるように2.0mL加えた。その後、5%二酸化炭素濃度を保った状態で、37℃/COインキュベーター内にて2時間静置した。静置後、非接着細胞と培地を除去し、PBSで洗浄することで接着細胞のみをウェル上へ残した。洗浄後、新しい培地を2.0mL添加し、実体顕微鏡SZX16(オリンパス(株)製)を用いて接着細胞56の様子を観察、撮影した。その結果、図8に示すように、実験例B5の場合には作製した基板80上の下地膜90部分への選択的な細胞56の接着が確認された。また細胞接着に間隙はなく均一な接着が起きていた。一方で比較実験例B3については細胞接着に間隙があり、不均一に細胞接着していることがわかった。
 上記より下地膜形成剤中に細胞56の接着や伸展を促進する添加物を含有することで、ADSCを用いた場合でも、無血清培地中において下地膜90上に均一な細胞接着を達成できることがわかった。
<試験例B4:実験例B7のヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞を用いた低血清培地での細胞接着確認試験>
(細胞56の調製)
 試験例B3において細胞剥離後の培養液を低血清培地のMesenchymal Stem Cell Growth Medium 2培地に変えた以外は同様の方法で細胞56の調製を実施した。
(細胞接着確認試験)
 実験例B7で作製した細胞凝集塊製造用基板に対して、試験例B3と同様の方法で細胞接着確認試験を実施した。その結果、図9に示すように、作製した基板80上の下地膜90部分への選択的な細胞56の接着が確認された。また細胞接着に間隙はなく均一な接着が起きていた。
 上記より下地膜形成剤中に細胞56の接着や伸展を促進する添加物を含有することで、ADSCを用いた場合で、低血清培地中においても下地膜90上に均一な細胞接着を達成できることがわかった。
<試験例B5:実験例B8~B12のヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞を用いた無血清培地でのスフェロイド直径確認試験>
(細胞56の調製)
 試験例B3に記載の方法で細胞懸濁液を調製した。
(細胞接着、スフェロイド形成確認試験)
 実験例B8~B12で作製した細胞凝集塊製造用基板に対して、細胞懸濁液を2.9×10~6.0×10cells/wellとなるように1.0mL加えた。その後、5%二酸化炭素濃度を保った状態で、37℃/COインキュベーター内にて2時間静置した。静置後、実体顕微鏡SZX16(オリンパス(株)製)を用いて接着細胞の様子を観察、撮影した。更に3日後にCell3imager duos((株)スクリーンホールディングス)を用いて細胞凝集塊形成の有無を観察、撮影した。その結果、図10に示すように、作製した基板上の下地膜部分への選択的な細胞の接着が確認された。また細胞接着に間隙はなく均一な接着が起きていた。また細胞接着直径は、塗布直径と同等の大きさであった。更に3日後の時点では接着した細胞がシャーレから剥がれて凝集し、細胞凝集塊(スフェロイド)を形成していることが確認された。
(スフェロイドのサイズ分布の評価)
 上記試験で実験例B8~B10の細胞凝集塊製造用基板にてスフェロイドを形成したウェルをCell3imager duosで撮影し、サイズ評価を行った。その結果図11に示すようにそれぞれスフェロイド直径100μm、120μm、150μmにピークトップを持っていた。またスフェロイド直径の分布が小さいことから、均一なスフェロイドが形成していることが分かった。
(スフェロイドのサイズ誤差、塗布直径とスフェロイド直径、体積の確認)
 上記試験で実験例B8~B12の細胞凝集塊製造用基板にてスフェロイドを形成したウェルをCell3imager duosで撮影した。画像処理ソフトImageJを用いてランダムに選択した50個以上のスフェロイドの直径を測定し、平均スフェロイド直径、サイズ誤差を算出した。その結果を図12に示す。図12に示すように、下地膜の塗布直径の増加に伴い平均スフェロイド直径が増加した。またサイズ誤差は3~13%と小さく均一なスフェロイドが形成したことが分かった。
 実験例B8~B12の細胞凝集塊形成用の下地膜の塗布面積とスフェロイド直径の関係をグラフ化した。その結果を図13に示す。図13に示すように、累乗近似の関係式に分布することが示された。これは理論式から考えても矛盾のない結果である。更に下地膜の塗布面積とスフェロイドの体積の関係を算出しグラフ化した結果を図14に示す。その結果、下地膜の塗布面積とスフェロイド体積は直線関係にあることが示された。相関係数R2=0.9989であることから強い相関があることが示された。以上より下地膜の塗布面積を制御することでスフェロイド直径やスフェロイド体積を制御可能であることが示された。
<試験例B6:比較実験例B4(ポリマー不含で添加物のみ)のFBS不含培地でのマウス線維芽細胞での細胞接着、細胞凝集塊形成確認試験>
(細胞56の調製)
 試験例B1と同様の方法で細胞56の調製を実施した。
(細胞接着確認試験)
 比較実験例B4で作製した細胞凝集塊製造用基板に対して、試験例B2と同様の方法で細胞接着、細胞凝集塊形成確認試験を実施した。その結果、図15に示すように、作製した基板80上の下地膜90部分への細胞接着は確認されなかった。上記よりポリマー不含で細胞56の接着や伸展を促進する添加物のみを含有する下地膜90において、細胞接着が達成できないことがわかった。これよりポリマーと添加物を組み合わせることで初めて細胞接着効果が表れることがわかった。
<試験例B7:比較実験例B5(ポリマー不含で添加物のみ)のFBS含有培地でのマウス線維芽細胞での細胞接着、細胞凝集塊形成確認試験>
(細胞56の調製)
 細胞剥離後の培養液をFBS(ウシ血清)10%及びGlutamine/Penicillin/Streptmycin1%含有したBME培地に変えた以外は、試験例B1と同様の方法で細胞56の調製を実施した。
(細胞接着確認試験)
 比較実験例B5で作製した細胞凝集塊製造用基板に対して、試験例B2と同様の方法で細胞接着、細胞凝集塊形成確認試験を実施した。その結果、図16に示すように、作製した基板80上の下地膜90部分への選択的な細胞56の接着が確認された。また細胞接着に間隙はなく均一な接着が起きていた。更に2日後の時点では接着した細胞56がシャーレ上に接着したままであることが確認された。上記よりポリマー不含で細胞56の接着や伸展を促進する添加物のみを含有する下地膜90において、血清培地中では均一な細胞接着は達成されるものの、その後剥離しないため細胞凝集塊の形成ができないことがわかった。
 以上の結果から、実験例B1~12により得られた下地膜形成用組成物48から得られた下地膜90を有する細胞凝集塊製造用基板を用いるならば、下地膜90部分への選択的な細胞56の接着を行うことができることが明らかである。したがって、この下地膜形成用組成物48は、本実施形態の細胞構造体製造装置10の下地膜形成部40において、下地膜90を形成するための下地膜形成用組成物48として好ましく用いることができる。
 1 細胞構造体
 10 細胞構造体製造装置
 12 移動機構
 14 回転機構
 20 基板供給部
 22 原料基板カセット
 30 コーティング膜形成部
 32 コーティング膜形成用塗布機構
 34 コーティング膜形成用組成物タンク
 36 コーティング膜乾燥機構
 38 コーティング膜形成用組成物
 40 下地膜形成部
 42 下地膜形成用塗布機構
 44 下地膜形成用組成物タンク
 46 下地膜乾燥機構
 48 下地膜形成用組成物
 50 播種部
 52 細胞播種機構
 54 細胞タンク
 56 細胞
 60 凝集培養部
 70 細胞構造体採集部
 72 細胞構造体採集機構
 80 基板
 82 原料基板
 84 コーティング膜
 90 下地膜
 90a 下地膜パターン

Claims (12)

  1.  細胞構造体を製造するための細胞構造体製造装置であって、
     基板を供給する基板供給部であって、前記基板の少なくとも1つの表面が、細胞の付着抑制能を有する、基板供給部と、
     前記基板の上に、下地膜を形成する下地膜形成部であって、前記下地膜形成部が、前記基板の上に下地膜形成用組成物を塗布する下地膜形成用塗布機構を含み、前記下地膜が細胞接着性を有する、下地膜形成部と、
     前記下地膜を含む前記基板の上に細胞を播種する播種部と
    を含む、細胞構造体製造装置。
  2.  前記基板供給部が、原料基板の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に、細胞の付着抑制能を有するコーティング膜を形成するコーティング膜形成部を更に含み、
     前記コーティング膜形成部が、コーティング膜形成用組成物を前記基板の表面に塗布するコーティング膜形成用塗布機構を含み、
     前記下地膜形成用塗布機構が、前記基板の前記コーティング膜の少なくとも一部の表面に、前記下地膜形成用組成物を塗布することを含む、請求項1に記載の細胞構造体製造装置。
  3.  前記コーティング膜形成用組成物が、下記式(A)で表される繰り返し単位(A)、及び下記式(B)で表される繰り返し単位(B)を有する共重合体を含む、請求項2に記載の細胞構造体製造装置。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001

    (式中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基を表し、X及びXは、それぞれ独立して、単結合、エステル結合、エーテル結合、アミド結合又は酸素原子で中断されてもよい炭素原子数1~5のアルキレン基を表す。)
  4.  前記下地膜形成用塗布機構及び前記コーティング膜形成用塗布機構から選択される少なくとも1つが、点描式の塗布機構である、請求項1~3の何れか1項に記載の細胞構造体製造装置。
  5.  前記基板が、略平滑な表面を有する、請求項1~4の何れか1項に記載の細胞構造体製造装置。
  6.  前記基板の表面が、凹凸を有する、請求項1~4の何れか1項に記載の細胞構造体製造装置。
  7.  前記基板又は前記原料基板が可撓性を有し、前記基板供給部が巻取式の基板カセット又は原料基板カセットを含み、前記基板が前記基板カセットから供給され、又は前記原料基板が前記原料基板カセットから供給される、請求項1~6の何れか1項に記載の細胞構造体製造装置。
  8.  前記細胞構造体製造装置が、前記下地膜を含む前記基板の上に付着した細胞を凝集又は培養させる凝集培養部を更に含む、請求項1~7の何れか1項に記載の細胞構造体製造装置。
  9.  前記細胞構造体のサイズ誤差が20%以内である、請求項1~8の何れか1項に記載の細胞構造体製造装置。
  10.  前記細胞構造体製造装置が、前記細胞構造体製造装置の内部を気密な閉鎖空間にすることが可能な気密機構を有し、前記気密機構が、前記閉鎖空間の内部を無菌環境に維持することが可能である、請求項1~9の何れか1項に記載の細胞構造体製造装置。
  11.  前記下地膜形成用組成物が、下記式(I):
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000002

    [式中、
     Ua1及びUa2は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1乃至5の直鎖若しくは分岐アルキル基を表し、Ra1は、水素原子又は炭素原子数1乃至5の直鎖若しくは分岐アルキル基を表し、Ra2は、炭素原子数1乃至5の直鎖若しくは分岐アルキレン基を表す]で表されるモノマーから誘導される繰り返し単位、及び、下記式(II):
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000003

    [式中、
     Rは、水素原子又は炭素原子数1乃至5の直鎖若しくは分岐アルキル基を表す]で表されるモノマーから誘導される繰り返し単位を含む共重合体を含む、請求項1~10の何れか1項に記載の細胞構造体製造装置。
  12.  前記下地膜形成用組成物が、細胞接着性物質を更に含む、請求項11に記載の細胞構造体製造装置。
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