JPH05292957A - 接着性細胞培養用被覆組成物 - Google Patents

接着性細胞培養用被覆組成物

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JPH05292957A
JPH05292957A JP4100932A JP10093292A JPH05292957A JP H05292957 A JPH05292957 A JP H05292957A JP 4100932 A JP4100932 A JP 4100932A JP 10093292 A JP10093292 A JP 10093292A JP H05292957 A JPH05292957 A JP H05292957A
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meth
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acrylate
monomer
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JP4100932A
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English (en)
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Susumu Katsumaru
進 勝圓
Kunihiro Oshima
邦裕 大島
Ryohei Yamamoto
良平 山本
Toyokazu Nishino
豊和 西野
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Kurabo Industries Ltd
Kurashiki Spinning Co Ltd
Original Assignee
Kurabo Industries Ltd
Kurashiki Spinning Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 培養用の特別な装置や付加的な殺菌処理を必
要とすることなく、接着性細胞の接着性と増殖性の簡便
かつ効果的な促進を可能にする接着性細胞培養用被覆組
成物を提供する。 【構成】 水不溶性高分子化合物を低級アルコールまた
は該アルコールと水との混合溶媒に溶解して成る接着細
胞培養用被覆組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、接着性細胞の接着性
と増殖性を効果的に促進する細胞培養用被覆組成物に関
する。
【0002】
【従来の技術】バイオテクノロジーの分野においては人
工的には合成が困難な、例えば抗体ホルモン、酵素、核
酸等の有用な生理活性物質を動物細胞を利用して生産す
る細胞培養技術の開発が各方面で行われている。このよ
うな動物細胞は、浮遊性細胞と接着性細胞に大別され、
前者は培地中に懸濁した状態で増殖するために、比較的
容易に培養を行うことが可能であるが、後者は培地中で
培養容器の器壁等に接着し、固相表面で増殖するため、
細胞が接着する器壁等の表面状態や特性が細胞の接着
性、増殖性および生産効率に著しく影響を与える。
【0003】従来より接着性細胞の接着を容易にして増
殖を効果的に行うために、ガラス製またはプラスチック
製等の細胞培養容器が用いられてきたが、そのままでは
細胞培養容器の表面が親水性に欠けるため培地との接触
性が悪く、接着性細胞の接着性や増殖性に悪影響を及ぼ
す。これを解決する方法として、細胞培養容器の表面に
特殊なプラズマ処理を施して親水化を行う方法(特開平
2−76570号公報参照)や、コラーゲン、ゼラチ
ン、ファイブロネクチン等の接着性蛋白質で被覆する方
法(特開昭58−71884号公報参照)が通常行われて
いる。
【0004】しかしながら、プラズマ処理はそのプラズ
マ発生装置が高価であり、ガス交換などに時間がかかる
ことなどから処理コストが高く、バッチごとに処理する
ため一部ロット差があり、また、オートクレーブ滅菌処
理等の加熱処理に対する耐熱性に欠け、細胞によっては
接着性や増殖性が悪くなる等の問題がある(特開昭63
−109769号公報参照)。
【0005】また、従来から使用されているコラーゲン
やゼラチン等の接着性蛋白質を細胞培養用にまで精製す
るには、一般に、精製分離に複雑な操作や特殊な装置お
よび高価な試薬等を必要とするため、最終製品をコスト
高にするだけでなく、オートクレーブ滅菌処理等の加熱
処理に対する耐熱性に欠け、また、γ線滅菌を行うと低
分子化して細胞接着性を損なう等の難点がある(特開平
2−234670号公報参照)。
【0006】例えば、コラーゲンを細胞培養用にまで精
製するには、かなりの段階を必要とするばかりでなく、
精製度も十分であるとは言えず、コラーゲン中の不純物
が細胞の生産する生理活性物質に対する汚染原因となっ
ている。また細胞が生産する酵素はコラーゲンを分解す
るものが数多くあり、酵素自身が汚染の一因となってい
るばかりでなく、長期培養ではコラーゲンを分解する酵
素によりコラーゲンが徐々に分解し、接着した細胞が剥
離する等の問題がある。さらに、品質面でもロットによ
り不純物の差が大きいなどの問題点があり、また、耐熱
性も悪いためオートクレーブ滅菌処理等を行うことがで
きない(特開平2−291260号公報参照)。
【0007】一方、細胞培養容器の内部壁面に合成高分
子を被覆する方法、例えば、合成高分子をフィルム状に
成型し、得られたフィルムをそのまま細胞培養に用いる
方法、および合成高分子を水またはベンゼン、ジオキサ
ンまたはN,N'−ジメチルホルムアミド等の有機溶媒に
懸濁または溶解した懸濁液または溶液を細胞培養容器等
に塗布し、溶媒を乾燥後、オートクレーブ滅菌あるいは
γ線滅菌を行う方法等が挙げられる(特開昭58−89
179号公報参照)。しかしながら、前者の場合には、
新たな装置を必要とする上に手間もかかり、後者の場合
には、合成高分子溶液等を塗布後、一定時間静置して細
胞培養容器等に合成高分子を付着させ、その後溶媒を吸
引あるいは加熱乾燥して除去し、次いで、オートクレー
ブ滅菌あるいはγ線滅菌を行う必要がある。また、水溶
性高分子を付着させる方法の場合、該高分子が培養時に
剥離したり、培地中に溶けだしたりするなどの問題点が
ある。さらにベンゼン、ジオキサンまたはN,N'−ジメ
チルホルムアミド等の有機溶媒に溶解した合成高分子を
培養容器等に付着させる方法の場合、市販のポリスチレ
ン等のプラスチック製培養容器自体が有機溶媒に溶けて
しまうため、培養容器が耐有機溶媒性のプラスチック製
またはガラス製の培養容器に限定されるという難点があ
る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、接着性細
胞の接着増殖性に係わる従来の上記の諸問題を解決し、
特別な装置や付加的な殺菌処理を必要とすることなく、
接着性細胞の接着性と増殖性の簡便かつ効果的な促進を
可能にする接着性細胞培養用被覆組成物を提供するため
になされたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】即ちこの発明は、水不溶
性高分子化合物を低級アルコールまたは該アルコールと
水との混合溶媒に溶解して成る接着性細胞培養用被覆組
成物に関する。
【0010】本発明による接着性細胞培養用被覆組成物
は、低級アルコール、例えば、メタノール、エタノー
ル、プロパノールもしくはブタノールまたは低級アルコ
ールと水との混合溶媒、例えば、50〜90%含水メタ
ノール、エタノールまたはプロパノール等に水不溶性高
分子化合物を適当な濃度に溶解することによって調製さ
れる。該濃度は特に限定的ではないが、通常は0.00
01%(1μg/ml)〜0.1%(1mg/ml)、好ましくは
0.0001〜0.01%で十分である。
【0011】従って、本発明においては、低級アルコー
ルまたは低級アルコールと水との混合溶媒に上記濃度範
囲で溶解する多種多様の水不溶性高分子化合物を使用す
ることが可能であり、被培養細胞の種類等に応じて適宜
選定すればよいが、本発明において一般的に使用できる
好適な高分子化合物は、疎水性モノマー、正電荷を有す
るモノマー、負電荷を有するリン酸エステル系モノマー
およびタンパク質もしくはペプチドで化学修飾したモノ
マーから成る群から選択されるモノマーと親水性モノマ
ーとの共重合によって得られる、低級アルコールまたは
低級アルコールと水との混合溶媒に可溶性の水不溶性高
分子化合物である。
【0012】親水性モノマーとしては、ヒドロキシエチ
ル(メタ)アクリレート、[この明細書において、「(メタ)
アクリレート」という表記は、アクリレートおよびメタ
アクリレートを意味する]、ヒドロキシプロピル(メタ)
アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレート、ペンタ
エリスリトール(メタ)アクリレート、オリゴエチレング
リコール(メタ)アクリレートおよびオリゴプロピレング
リコール(メタ)アクリレート等が例示される。
【0013】疎水性モノマーとしては、メチル(メタ)ア
クリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル
(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレー
ト、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)
アクリレートおよびt−ブチル(メタ)アクリレート等が
例示される。
【0014】正電荷を有するモノマーとしては、ジメチ
ルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエ
チル(メタ)アクリレートおよびジメチルアミノエチル
(メタ)アクリレート等が例示される。
【0015】負電荷を有するリン酸エステル系モノマー
としては次の一般式(I):
【化2】 (式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、kは1また
は2の数を示し、nは0〜30の数を示し、mは0〜8の
数を示す)で表わされる化合物が例示される。
【0016】タンパク質もしくはペプチドで化学修飾し
たモノマーとしては、タンパク質もしくはペプチドで化
学修飾した(メタ)アクリル酸誘導体が例示される。こ
の場合、タンパク質としてはゼラチン(例えば、プロテ
アーゼ処理したゼラチン等)およびケラチン(例えば、獣
毛の酸化分解によって得られるケラチン等)等が挙げら
れ、また、ペプチドとしては細胞接着活性ペプチド等が
挙げられる。
【0017】上記の共重合体を調製する場合の反応成分
の反応比(重量比)は特に限定的ではないが、親水性モノ
マーと他の全使用モノマーの反応比は90:10〜10:
90、好ましくは80:20〜40:60であり、疎水性
モノマーと他の全使用モノマーとの反応比は50:50
〜0:100、好ましくは40:60〜20:80であ
り、正電荷を有するモノマーと他の全使用モノマーとの
反応比は50:50〜0:100、好ましくは40:60
〜20:80であり、負電荷を有するリン酸エステル系
モノマーと他の全使用モノマーとの反応比は90:10
〜0:100、好ましくは40:60〜20:80であ
り、また、タンパク質もしくはペプチドで化学修飾した
モノマーと他の全使用モノマーとの反応比は90:10
〜10:90、好ましくは50:50〜20:80であ
る。
【0018】上記のようにして調製される接着性細胞培
養用被覆組成物を用いてガラス製またはポリスチレン等
のプラスチック製の培養容器の内部壁表面を被覆し、溶
媒を常温常圧下または加温減圧下において蒸発させるこ
とによって該壁面上に高分子化合物の均一薄層を形成さ
せた培養容器は、溶媒として用いた低級アルコールが殺
菌作用を発揮するので、従来の高分子被覆法におけるオ
ートクレーブ滅菌処理やγ線滅菌処理に付すことなく、
そのまま接着性細胞の培養に使用することができる。培
養条件は、被培養細胞の種類等に応じて、従来から常用
されている培養条件を適宜選定すればよい。被培養細胞
としては、一般的な接着性細胞が対象となり、特に限定
的ではないが、例えば表皮角化細胞、血管内皮細胞、乳
腺上皮細胞、線維芽細胞および角膜上皮細胞などの各種
正常細胞あるいは繊維肉腫細胞、神経膠腫および腫瘍芽
細胞腫などの各種癌細胞および株化細胞等が例示され
る。
【0019】
【実施例】以下、本発明を実施例によって説明する。実施例1〜6 (1).還流冷却器、撹拌器、サーモスタットを取り付け
た100mlの四ツ口反応器内に、2−ヒドロキシエチル
メタクリレート10.0g、n−ブチルメタクリレート5.
0g、ジエチルアミノエチルメタクリレート5.0g、イ
ソプロパノール(溶媒)25ml、α,α'−アゾビスイソブ
チロニトリル(開始剤)20mgを仕込み、窒素気流下、7
0℃で15時間加熱した。反応混合物を激しく撹拌した
5リットルの蒸留水に滴下し、白色の粘稠な高分子化合
物を得た。この高分子化合物を取り出してメタノールに
溶解し、再度激しく撹拌した5リットルの蒸留水に滴下
した。この操作を3回繰り返し、吸引濾過後、40℃で
真空乾燥を行い、粉末状の高分子化合物1を得た。
【0020】(2).モノマーとして、2−ヒドロキシエ
チルメタクリレート10.0gおよびn−ブチルメタクリ
レート10.0gを用いる以外は上記(1)の場合と同様に
して粉末状の高分子化合物2を得た。
【0021】(3).モノマーとして、2−ヒドロキシエ
チルメタクリレート10.0g、2−メタクリロイルオキ
シエチルジブチルリン酸5.0gおよびジエチルアミノエ
チルメタクリレート5.0gを用いる以外は前記(1)の場
合と同様にして粉末状の高分子化合物3を得た。
【0022】(4).i)10%ゼラチン(DIFCO製)水
溶液100mlにプロテアーゼA(天野製薬製)を200mg
加え、37℃で15分インキュベートした後、120℃
で20分オートクレーブを行い、プロテアーゼAを失活
させた。続いてエバポレーターで水を除去し、減圧乾燥
した。この操作により約10gの低分子化されたゼラチ
ンを得た。 ii)上記i)で得た低分子化ゼラチン1.0gをpH11.2
に調製した0.1M炭酸水素ナトリウムバッファー25m
lに溶解し、N,N'−ジメチルホルムアミド25ml、グ
リシジルメタクリレート10.0gを加え、30℃で15
時間振盪した。反応終了後、ロータリーエバポレーター
で水を除去した。 iii)モノマーとして2−ヒドロキシエチルメタクリレー
ト10.0g、n−ブチルメタクリレート5.0gおよび前
記ii)で得た低分子化ゼラチンを導入したメタクリレー
ト5.0gを用い、また溶媒としてN,N'−ジメチルホル
ムアミドを用いる以外は前記(1)の場合と同様にして粉
末状の高分子化合物4を得た。この高分子化合物4の一
部を166℃で30分間6N塩酸で酸加水分解した後、
アミノ酸分析を行い、ゼラチンが導入されていることを
確認した。
【0023】(5).i)羊毛100gに35%過酸化水素
水500mlを加え、アンモニア水を用いてpHを8.3に
調整した。これを室温で1時間放置し、羊毛が可溶化さ
れたのを確認後、酢酸でpHを下げた。この溶液にアル
コールを加え、一晩放置した。次いで、上清を捨て、沈
澱として回収された羊毛タンパク質をアルコールでさら
に洗浄した。最後にアセトンで洗浄し風乾した。この操
作により約70gの極淡黄色、無味無臭の粉末(羊毛の可
溶化因子)を得た。 ii)上記i)で調製した羊毛の可溶化因子(ケラチン)1.0
gをpH11.2に調製した0.1M炭酸水素ナトリウムバ
ッファー25mlに溶解し、N,N'−ジメチルホルムアミ
ド25mlおよびグリシジルメタクリレート10.0gを加
え、30℃で15時間振盪した。反応終了後、ロータリ
ーエバポレーターで水を除去した。 iii)モノマーとして、2−ヒドロキシエチルメタクリレ
ート10.0g、n−ブチルメタクリレート5.0gおよび
上記ii)で得たケラチンを導入したメタクリレート5.0
gを用い、また、溶媒としてN,N'−ジメチルホルムア
ミドを用いる以外は前記(1)の場合と同様にして粉末状
の高分子化合物5を得た。この高分子化合物5の一部を
166℃で30分間6N塩酸で酸加水分解した後、アミ
ノ酸分析を行い、ケラチンが導入されていることを確認
した。
【0024】(6).i)液相法によるRGDV(Arg−Gl
y−Asp−Val)ペプチドの合成スキームを以下の表1に
示す。Boc−Asp(OcHex)とVal−OBzlをWSCI
−HOBt法により縮合し、トリフルオロ酢酸(TFA)
を用いてBoc基を脱保護する。続いてBoc−GlyとAsp
(OcHex)−Val−OBzlを同様の方法で縮合し、脱保
護し、最後にBoc−Arg(Tos)とGly−Asp(OcHex)
−Val−OBzlを縮合した後、フッ酸(HF)処理を行
い、目的のRGDV(Arg−Gly−Asp−Val)ペプチド
を得た。 ii)上記i)で得たRGDV(Arg−Gly−Asp−Val)ペ
プチド450mg、メタクリル酸90mg、1−エチル−3
−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩
190mg、N−ヒドロキシスクシンイミド120mgおよ
びN,N'−ジメチルホルムアミド(溶媒)5mlから成る混
合物を0℃で2時間撹拌した後、一晩室温で撹拌した。
この反応混合物に、2−ヒドロキシエチルメタクリレー
ト3.6g、n−ブチルメタクリレート1.0g、N,N'−
ジメチルホルムアミド10mlおよびα,α'−アゾビスイ
ソブチロニトリル(開始剤)20mgを加え、窒素気流下、
65℃で15時間加熱した。続いて反応混合物を激しく
撹拌した5リットルの蒸留水に滴下し、白色の粘稠な高
分子化合物を得た。この高分子化合物を取り出してメタ
ノールに溶解し、再度激しく撹拌した5リットルの蒸留
水に滴下した。この操作を3回繰り返し、最後に吸引濾
過後、40℃で真空乾燥を行い、粉末状の高分子化合物
6を得た。この高分子化合物6の一部を166℃で30
分間6N塩酸で酸加水分解した後、アミノ酸分析を行
い、RGDV(Arg−Gly−Asp−Val)ペプチドが導入
されていることを確認した。
【0025】
【表1】
【0026】(7).上述のようにして得られた高分子化
合物1〜6を70%エタノールに0.001%(10μg
/ml)の濃度で溶解することによって、本発明による接
着性細胞培養用被覆組成物1〜6を調製した。該被覆組
成物1〜6を、市販のポリスチレン製浮遊培養用ディッ
シュ(表面無処理;直径35mm)に1mlずつ加え、クリー
ンベンチ内で一夜放置乾燥したディッシュを用いて以下
の細胞培養をおこなった。
【0027】(8). (a)ヒトグリオブラストーマ細胞株U251−MGの培
ヒトグリオブラストーマ細胞株U251−MGをそれぞ
れのディッシュに1×104個ずつ播種し、7%牛胎児
血清を含むダルベッコ変性イーグル培地DMEMを2ml
加え、37℃に設定した炭酸ガスインキュベーター内で
細胞培養を行い、7日後にトリプシンで細胞を剥離し、
セルカウントを行った。結果を表2に示す。
【0028】(b)正常ヒト表皮角化細胞NHEKの培養 上記(a)と同様の方法で正常ヒト表皮角化細胞NHEK
の培養を行った。培地は無血清表皮角化細胞増殖培地
(K−GM、倉敷紡績(株)製)を用いた。結果を表2に示
す。
【0029】(c)正常ヒト乳腺上皮細胞HMECの培養 上記(a)と同様の方法で正常ヒト乳腺上皮細胞HMEC
の培養を行った。培地は無血清乳腺上皮細胞増殖培地
(MEGM、倉敷紡績(株)製)を用いた。結果を表2に示
す。
【0030】(d)正常ヒト大動脈血管内皮細胞HAEC
の培養 上記(a)と同様の方法で正常ヒト大動脈血管内皮細胞H
AECの培養を行った。培地は低血清血管内皮細胞増殖
培地(E−GM、倉敷紡績(株)製)を用いた。結果を表2
に示す。
【0031】(e)正常ヒトさい帯血管内皮細胞HUVE
Cの培養 上記(a)と同様の方法で正常ヒト臍帯血管内皮細胞HU
VECの培養を行った。培地は低血清血管内皮細胞増殖
培地(E−GM、倉敷紡績(株)製)を用いた。結果を表2
に示す。
【0032】(f)正常ウサギ角膜上皮細胞NRCEの培
上記(a)と同様の方法で正常ウサギ角膜上皮細胞NRC
Eの培養を行った。培地は無血清ウサギ角膜上皮細胞増
殖培地(RCGM、倉敷紡績(株)製)を用いた。結果を表
2に示す。
【0033】比較例1 コラーゲンタイプIを70%エタノールに溶解して0.
001%(10μg/ml)溶液を調製し、該溶液を市販の
ポリスチレン製浮遊培養用35φ表面無処理ディッシュ
に1ml加え、クリーンベンチ内で一晩放置して乾燥させ
たものを培養に用いて、上記の細胞培養(a)〜(f)をおこ
なった。結果を表2に示す。
【0034】比較例2 市販のポリスチレン製浮遊培養用35φ表面無処理ディ
ッシュをそのまま用いて、上記の細胞培養(a)〜(f)をお
こなった。結果を表2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】表2から明らかなように、コラーゲンより
も取り扱いや精製の容易なゼラチンやヒドロネクチンの
細胞接着活性部位の合成ペプチドRGDVを合成ポリマ
ーに導入することにより、細胞の接着増殖性が他のポリ
マーを用いた場合に比べて向上した(実施例4および6
参照;この接着増殖性はコラーゲンの場合よりも高い)。
また、NHEKおよびHMECの増殖の場合には、ポリ
マー表面に正電荷基や疎水基を導入することによって、
細胞の接着増殖性はプラズマ処理の場合よりも高くな
り、ゼラチンやRGDVを導入するとさらに向上する
(実施例1〜3,4および6参照;この接着増殖性はコラ
ーゲンの場合と同等である)。さらにまた、U251−
MGやNRCEの増殖の場合には、ケラチンの導入によ
って接着増殖性は向上する(実施例5参照;この接着増殖
性はコラーゲンの場合よりも高い)。
【0037】実施例7 実施例1で得た高分子化合物1を70%エタノールに溶
解して0.001%(10μg/ml)溶液を調製し、該溶液
を市販のポリスチレン製96ウエルマルチプレート(プ
ラズマ処理済み)に100μlずつ加え、クリーンベンチ
内で一晩放置して乾燥させたものを用いて以下の細胞毒
性試験をおこなった。
【0038】細胞毒性試験 i)96ウエルプレートの準備 2次培養の正常ヒト表皮角化細胞(NHEK)をトリプシ
ンで剥離した後、トリプシン中和液で活性を止め、細胞
を集める。細胞を遠心分離し、K−GMに再分散し、セ
ルカウントする。ウエル当り2.5×103個の細胞を播
種し、37℃に設定した炭酸ガスインキュベーターでプ
レートを3日間インキュベートする。
【0039】ii)テスト試薬の投入 コントロールウエルには新鮮なK−GMを加え、他のウ
エルにはK−GMで希釈したテスト試薬(ドデシル硫酸
ナトリウム、SDS)を加える。プレートをさらに2日
間インキュベートする。
【0040】iii)ニュートラルレッド(3−アミノ−7
−ジメチルアミノ−2−メチルフェナジンハイドロクロ
ライド、分子量288.8)の摂取 ニュートラルレッドのK−GM溶液を各ウエルに加え
る。プレートを3時間インキュベートする。この時に生
きた表皮角化細胞のリソソームにニュートラルレッドが
蓄積される。テスト試薬SDSによりリソソーム膜や原
形質膜の損傷した細胞は、ニュートラルレッドを取り込
めない。
【0041】iv)洗浄・固定、染料抽出、エンドポイン
ト法による測定 染料液を捨て、ホルマリン・塩化カルシウム水溶液で短
時間固定し、取り込まれなかった染色液を除くと同時
に、プレートへの細胞の吸着を高める。次にウエルを酢
酸・エタノール混合液で処理し、取り込まれたニュート
ラルレッドを抽出する。次に各ウエルについて生細胞の
数に比例した吸光度を540nmの波長でマイクロプレー
トリーダーにて測定する。コントロールでのニュートラ
ルレッドの取り込み量に対するテスト試薬SDSでの取
り込み量の百分率(NR)を計算する。得られた吸光度お
よびNRの値を、SD(標準偏差)およびCV(分散係
数)と共に表3に示す。
【0042】比較例3 コラーゲンタイプIVを70%エタノールに溶解して
0.001%(10μg/ml)溶液を調製し、該溶液を市販
のポリスチレン製96ウエルマルチプレート(プラズマ
処理済み)に100μlずつ加え、クリーンベンチ内で一
晩放置して乾燥させたものを用いて、上記の細胞毒性試
験をおこなった。結果を表3に示す。
【0043】比較例4 市販のポリスチレン製96ウエルマルチプレート(プラ
ズマ処理済み)をそのまま用いて、上記の細胞毒性試験
をおこなった。結果を表3に示す。
【0044】
【表3】
【0045】
【発明の効果】本発明による接着性細胞培養用被覆組成
物を使用することによって、培養用の特別な装置や付加
的な殺菌処理を必要とすることなく、接着性細胞の接着
性と増殖性を簡便かつ効果的に促進させることができ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 西野 豊和 大阪府寝屋川市下木田町14番5号 倉敷紡 績株式会社技術研究所内

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水不溶性高分子化合物を低級アルコール
    または該アルコールと水との混合溶媒に溶解して成る接
    着性細胞培養用被覆組成物。
  2. 【請求項2】 水不溶性高分子化合物が、疎水性モノマ
    ー、正電荷を有するモノマー、負電荷を有するリン酸エ
    ステル系モノマーおよびタンパク質もしくはペプチドで
    化学修飾したモノマーから成る群より選ばれるモノマー
    と親水性モノマーとの共重合によって得られる、低級ア
    ルコールまたは該アルコールと水との混合溶媒に可溶性
    の水不溶性高分子化合物である請求項1記載の被覆組成
    物。
  3. 【請求項3】 親水性モノマーが、ヒドロキシエチル
    (メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリ
    レート、グリセリン(メタ)アクリレート、ペンタエリス
    リトール(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコー
    ル(メタ)アクリレートおよびオリゴプロピレングリコー
    ル(メタ)アクリレートから成る群から選ばれる化合物で
    ある請求項2記載の被覆組成物。
  4. 【請求項4】 疎水性モノマーが、メチル(メタ)アクリ
    レート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メ
    タ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n
    −ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリ
    レートおよびt−ブチル(メタ)アクリレートから成る群
    から選ばれる化合物である請求項2記載の被覆組成物。
  5. 【請求項5】 正電荷を有するモノマーが、ジメチルア
    ミノメチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル
    (メタ)アクリレートおよびジメチルアミノエチル(メタ)
    アクリレートから成る群から選ばれる化合物である請求
    項2記載の被覆組成物。
  6. 【請求項6】 負電荷を有するリン酸エステル系モノマ
    ーが一般式(I): 【化1】 (式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、kは1また
    は2の数を示し、nは0〜30の数を示し、mは0〜8の
    数を示す。)で表わされる化合物である請求項2記載被
    覆組成物。
  7. 【請求項7】 タンパク質もしくはペプチドで化学修飾
    したモノマーが、タンパク質もしくはペプチドで化学修
    飾した(メタ)アクリル酸誘導体である請求項2記載の被
    覆組成物。
  8. 【請求項8】 タンパク質がゼラチンまたはケラチンで
    ある請求項7記載の被覆組成物。
  9. 【請求項9】 ゼラチンがプロテアーゼ処理したゼラチ
    ンである請求項8記載の被覆組成物。
  10. 【請求項10】 ケラチンが獣毛の酸化分解によって得
    られるケラチンである請求項8記載の被覆組成物。
  11. 【請求項11】 ペプチドが細胞接着活性ペプチドであ
    る請求項7記載の被覆組成物。
  12. 【請求項12】 親水性モノマーと他の全使用モノマー
    との反応重量比が90:10〜10:90である請求項2
    記載の被覆組成物。
  13. 【請求項13】 疎水性モノマーと他の全使用モノマー
    との反応重量比が50:50〜0:100である請求項2
    記載の被覆組成物。
  14. 【請求項14】 正電荷を有するモノマーと他の全使用
    モノマーとの反応重量比が50:50〜0:100である
    請求項2記載の被覆組成物。
  15. 【請求項15】 負電荷を有するリン酸エステル系モノ
    マーと他の全使用モノマーとの反応重量比が90:10
    〜0:100である請求項2記載の被覆組成物。
  16. 【請求項16】 タンパク質もしくはペプチドで化学修
    飾したモノマーと他の全使用モノマーとの反応重量比が
    90:10〜10:90である請求項2記載の被覆組成
    物。
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