WO2022230785A1 - 樹脂組成物、発泡性組成物、及び架橋発泡体 - Google Patents

樹脂組成物、発泡性組成物、及び架橋発泡体 Download PDF

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Abstract

成分(x)として、芳香族ビニル化合物に由来する重合体ブロック(A-1)と共役ジエン化合物に由来する重合体ブロック(B-1)とを有するブロック共重合体の水素添加物(X)と、成分(y)として、芳香族ビニル化合物に由来する重合体ブロック(A-2)と共役ジエン化合物に由来する重合体ブロック(B-2)とを有するブロック共重合体(Y0)又はその水素添加物(Y)と、を含み、下記の条件[1]~[4]を満たす樹脂組成物。 [1]成分(x)のガラス転移温度が-40℃以上である。 [2]成分(y)のガラス転移温度が-50℃以下である。 [3]前記樹脂組成物中の、成分(y)の質量Myに対する成分(x)の質量Mxの比Mx/Myが、1/99~99/1である。 [4]重合体ブロック(B-2)がβ-ファルネセンに由来する構造単位を含む。

Description

樹脂組成物、発泡性組成物、及び架橋発泡体
 本発明は樹脂組成物、発泡性組成物、及び架橋発泡体に関する。
 水添スチレン系エラストマー等の、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位からなる重合体ブロック(A)と、共役ジエン化合物に由来する構造単位からなる重合体ブロック(B)とを含むブロック共重合体の水素添加物(以下、「水添ブロック共重合体」又は「水添体」ということがある)が知られている。
 水添ブロック共重合体は制振性を有しており、制振材料として様々な分野で広く用いられている。
 例えば、制振性や柔軟性、耐熱性、引張強さ及び耐衝撃性等の機械的特性に優れさせるために、損失正接(tanδ)のピーク温度やビニル結合量を特定した、スチレン系化合物とイソプレンやブタジエン等の共役ジエン化合物との水添ブロック共重合体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
 また、水添ブロック共重合体として、ファルネセン由来の単量体単位を含有する水添ブロック共重合体が知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2においては、上記水添ブロック共重合体によって、成形加工性や柔軟性が改善するとされている。
特開2002-284830号公報 国際公開公報第2016/125899号
 しかしながら、様々な用途において水添ブロック共重合体の特性改善が求められており、制振性能を維持しつつ、成形性を更に高めたり低温での柔軟性を発現させたりすることについての要請がある。このため、特許文献1~2に記載されるような水添ブロック共重合体においても改善の余地がある。
 そこで、本発明の課題は、室温付近における制振性を維持しつつ、良好な成形性及び低温での柔軟性の少なくとも一方を発現し得る樹脂組成物、発泡性組成物、及び架橋発泡体を提供することにある。
 本発明者らは、樹脂組成物を、成分(x)として、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック(A-1)と共役ジエン化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック(B-1)とを有するブロック共重合体の水素添加物(X)と、成分(y)として、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック(A-2)と共役ジエン化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック(B-2)とを有するブロック共重合体(Y0)又はその水素添加物(Y)とを含むものとし、上記成分(x)及び成分(y)のガラス転移温度を特定のものとし、重合体ブロック(B-2)を特定の成分とすることで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
 本発明は、下記<1>~<20>に関する。
<1>成分(x)として、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック(A-1)と共役ジエン化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック(B-1)とを有するブロック共重合体の水素添加物(X)と、
 成分(y)として、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック(A-2)と共役ジエン化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック(B-2)とを有するブロック共重合体(Y0)又はその水素添加物(Y)と、を含み、下記の条件[1]~[4]を満たす樹脂組成物。
[1]成分(x)のガラス転移温度が-40℃以上である。
[2]成分(y)のガラス転移温度が-50℃以下である。
[3]前記樹脂組成物中の、成分(y)の質量Myに対する成分(x)の質量Mxの比Mx/Myが、1/99~99/1である。
[4]重合体ブロック(B-2)が、β-ファルネセンに由来する構造単位を含む。
<2>成分(x)における重合体ブロック(A-1)の含有量が23質量%以下である、上記<1>に記載の樹脂組成物。
<3>成分(x)の水素添加率が85モル%以上である、上記<1>又は<2>に記載の樹脂組成物。
<4>成分(x)の重量平均分子量が100,000~250,000である、上記<1>~<3>のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
<5>成分(x)の、JIS K 7210:2014に準拠して測定した230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが20g/10min以下である、上記<1>~<4>のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
<6>重合体ブロック(B-1)がイソプレンに由来する構造単位を含む、上記<1>~<5>のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
<7>重合体ブロック(B-1)のビニル結合量が50モル%以上である、上記<1>~<6>のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
<8>成分(y)中の重合体ブロック(A-2)の含有量が35質量%以下である、上記<1>~<7>のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
<9>成分(y)がブロック共重合体の水素添加物(Y)であり、該ブロック共重合体の水素添加物(Y)の水素添加率が85モル%以上である、上記<1>~<8>のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
<10>成分(y)の重量平均分子量が40,000~400,000である、上記<1>~<9>のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
<11>成分(y)の、JIS K 7210:2014に準拠して測定した230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが10g/10min以上である、上記<1>~<10>のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
<12>前記Mx/Myが、45/55~80/20である、上記<1>~<11>のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
<13>前記Mx/Myが、20/80~37/63である、上記<1>~<11>のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
<14>前記樹脂組成物の、ASTM D6866-20に準拠して測定したバイオベース度が1~80質量%である、上記<1>~<13>のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
<15>前記樹脂組成物の、JIS K 7210:2014に準拠して測定した230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが100g/10min以下である、上記<1>~<14>のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
<16>前記樹脂組成物の、JIS K7244-10:2005に準拠して、歪み量0.1%、周波数1Hz、測定温度-30~+50℃、昇温速度3℃/分、せん断モード、の条件で測定したtanδのピークトップ強度が0.4以上である、上記<1>~<15>のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
<17>成分(x)中のβ-ファルネセンに由来する構造単位の含有量が、成分(y)中のβ-ファルネセンに由来する構造単位の含有量より小さい、上記<1>~<16>のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
<18>前記樹脂組成物において、成分(x)及び成分(y)のうち一方をマトリクスとし、成分(x)及び成分(y)のうち他方が前記マトリクス中に分散するドメインが形成されており、前記ドメインの平均アスペクト比が1.0~3.0である、上記<1>~<17>のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
<19>上記<1>~<18>のいずれか一つに記載の樹脂組成物(i)と、
 エチレン-プロピレン-ジエン共重合体ゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びポリエチレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種のオレフィン系重合体(ii)と、
 架橋剤(iii)と、
 発泡剤(iv)と、を含む発泡性組成物。
<20>
 上記<19>に記載の発泡性組成物の架橋発泡体。
 本発明により、室温付近における制振性を維持しつつ、良好な成形性及び低温での柔軟性の少なくとも一方を発現し得る樹脂組成物、発泡性組成物、及び架橋発泡体を提供することができる。
図1は、実施例2で得られた樹脂組成物の原子間力顕微鏡(AFM)画像の一例である。 図2は、比較例1で得られた樹脂組成物のAFM画像の一例である。
 以下、本発明の実施形態について説明する。
 本明細書における記載事項を任意に選択した態様又は任意に組み合わせた態様も本発明に含まれる。
 本明細書において、好ましいとする規定は任意に選択でき、好ましいとする規定同士の組み合わせはより好ましいといえる。
 本明細書において、「XX~YY」との記載は、「XX以上YY以下」を意味する。
 本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは30~60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10~60」とすることもできる。
[樹脂組成物]
 本発明の実施形態に係る樹脂組成物は、成分(x)として、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック(A-1)と共役ジエン化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック(B-1)とを有するブロック共重合体の水素添加物(X)と、成分(y)として、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック(A-2)と共役ジエン化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック(B-2)とを有するブロック共重合体(Y0)又はその水素添加物(Y)と、を含み、下記の条件[1]~[4]を満たす。
[1]成分(x)のガラス転移温度が-40℃以上である。
[2]成分(y)のガラス転移温度が-50℃以下である。
[3]前記樹脂組成物中の、成分(y)の質量Myに対する成分(x)の質量Mxの比Mx/Myが、1/99~99/1である。
[4]ブロック共重合体(Y0)又はその水素添加物(Y)が、重合体ブロック(B-2)として、β-ファルネセンに由来する構造単位を少なくとも1つ含む。
 樹脂組成物が条件[1]~[4]を満たすことによって、室温付近における制振性を維持しつつ、良好な成形性及び低温での柔軟性のうち少なくとも一方を発現することができる。より詳しくは、樹脂組成物が、室温付近において高い損失正接(tanδ)を有するとともに、良好な成形性及び低温での柔軟性のうち少なくとも一方を有する。
 本発明者の検討によれば、ガラス転移温度(Tg)が高い水添ブロック共重合体である成分(x)に、Tgが低いブロック共重合体又は水添ブロック共重合体であってβ-ファルネセンに由来する構造単位を含む成分(y)を添加することにより、樹脂組成物中の、成分(y)の質量Myに対する成分(x)の質量Mxの比Mx/Myが、45/55~99/1の範囲では、制振性を維持しつつ良好な成形性を発現する。また、前記Mx/Myが、1/99~44/56の範囲では、制振性を大きく落とさずに低温で柔軟性を示すことが判明した。
 この理由は、これに限るものではないが、一つには、低Tgの成分である成分(y)がβ-ファルネセンに由来する構造単位を含むことにより、成分(x)との相容性が高くなり、樹脂成分中で成分(x)又は成分(y)が構造上の異方性を生じにくくなる結果、樹脂組成物全体のtanδのピークトップ強度の低下が抑制されるものと考えられる。これに加えて成分(y)の成形性や低温柔軟性が寄与することで、制振性を維持しつつ、成形性や低温での柔軟性を発現できるものと考えられる。
<成分(x)及び成分(y)のガラス転移温度(Tg)>
 上記成分(x)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック(A-1)と、共役ジエン化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック(B-1)とを有するブロック共重合体の水素添加物(X)であり、上記の条件[1]を満たす。
 上記成分(y)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック(A-2)と共役ジエン化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック(B-2)とを有するブロック共重合体(Y0)又はその水素添加物(Y)であり、上記の条件[2]を満たす。
 成分(x)が条件[1]を満たすことにより、樹脂組成物の、室温付近におけるtanδを高めることができる。また、成分(y)が条件[2]を満たすことにより、樹脂組成物の成形性や低温での柔軟性を確保することができる。
 なお、本明細書において、成分(x)のTg及び成分(y)のTgは、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される。具体的には、DSCを用いて作成されるDSC曲線において、ベースラインのシフトが生じた温度をTgとしている。成分(x)のTg及び成分(y)のTgは、より詳細には実施例に記載の方法に従って測定される。
 成分(x)のTgは、室温付近におけるtanδを高くする観点から、好ましくは-30℃以上、より好ましくは-20℃以上、更に好ましくは-10℃以上、特に好ましくは0℃以上である。上限に特に制限はないが、製造容易性の観点の観点から、好ましくは+40℃以下、より好ましくは+35℃以下、更に好ましくは+30℃以下である。換言すれば、成分(x)のTgは、好ましくは-40~+40℃である。
 成分(y)のTgは、低温での柔軟性の観点から、好ましくは-51℃以下、より好ましくは-52℃以下である。また、下限に特に制限はないが、製造容易性の観点から、好ましくは-65℃以上、より好ましくは-60℃以上、更に好ましくは-55℃である。換言すれば、成分(y)のTgは、好ましくは-65~-50℃である。
 成分(x)のTgと成分(y)のTgとの差は、成形性を確保しやすくする観点から、少なくとも10℃以上であり、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上、更に好ましくは40℃以上である。また、室温付近におけるtanδを高くしやすくする観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは80℃以下である。換言すれば、成分(x)のTgと成分(y)のTgとの差は、好ましくは10~100℃である。
<成分(x)と成分(y)の含有比率>
 上記の条件[3]に規定するように、上記樹脂組成物中の、成分(y)の質量Myに対する成分(x)の質量Mxの比Mx/Myは、1/99~99/1である。
 質量比Mx/Myが上記範囲にあることで、主として成分(x)の存在により、室温付近において高いtanδが得られ、また、主として(y)の存在により、優れた成形性が得られる。
 上記質量比Mx/Myは、樹脂組成物の成形性及び室温付近における制振性を高めやすくする観点から、好ましくは45/55~95/5、より好ましくは45/55~90/10、更に好ましくは45/55~85/15、より更に好ましくは45/55~80/20、より更に好ましくは50/50~80/20、より更に好ましくは55/45~80/20、より更に好ましくは60/40~80/20、より更に好ましくは65/35~80/20、特に好ましくは65/35~75/25である。また、低温での柔軟性を高めやすくする観点から、好ましくは5/95~44/56、より好ましくは10/90~43/57、更に好ましくは15/85~40/60、より更に好ましくは20/80~37/63、より更に好ましくは21/79~37/63、特に好ましくは25/75~35/65である。
<成分(x)>
 上記成分(x)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック(A-1)と、共役ジエン化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック(B-1)とを有するブロック共重合体の水素添加物(X)であり、上記の条件[1]及び[3]を満たす。
 成分(x)が条件[1]を満たすようにするためには、例えば、ブロック共重合体の水素添加物(X)を構成する重合体ブロック(B-1)の共役ジエン化合物のビニル結合量を適切な値に制御することにより、成分(x)のTgを上記範囲とすることができる。
 成分(x)はブロック共重合体の水素添加物(X)を1種単独で含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。成分(x)がブロック共重合体の水素添加物(X)を1種単独で含む場合は製造が容易であり、2種類以上含む場合は、樹脂組成物が高いtanδを示す温度範囲を広げやすくなる。
 成分(x)中の重合体ブロック(A-1)の含有量(複数の重合体ブロック(A-1)を有する場合はそれらの合計含有量)は、制振性の観点から、好ましくは23質量%以下、より好ましくは21質量%以下、更に好ましくは18質量%以下、より更に好ましくは15質量%以下であり、また、力学物性の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上である。換言すれば、成分(x)であるブロック共重合体の水素添加物(X)における重合体ブロック(A-1)の含有量は、好ましくは5~23質量%である。
 なお、上記成分(x)における重合体ブロック(A-1)の含有量は、H-NMR測定により求めた値であり、より詳細には実施例に記載の方法に従って測定した値である。後述する成分(y)における重合体ブロック(A-2)の含有量についても同様である。
 成分(x)の重量平均分子量は、耐熱性及び成形性の観点から、好ましくは60,000~400,000、より好ましくは80,000~300,000、更に好ましくは100,000~250,000、より更に好ましくは130,000~200,000である。
 本明細書及び特許請求の範囲に記載の「重量平均分子量」は全て、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定によって求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量であり、詳細な測定方法は実施例に記載の方法に従うことができる。
 成分(x)としてのブロック共重合体の水素添加物(X)の重量平均分子量は、例えば、重合開始剤に対するモノマー量を調整することにより、上記範囲とすることができる。
 成分(x)中のβ-ファルネセンに由来する構造単位の含有量は、室温付近における制振性の観点から、成分(y)中のβ-ファルネセンに由来する構造単位の含有量より小さいことが好ましく、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下、特に好ましくは0質量%(つまり、β-ファルネセンに由来する構造単位を含まない)である。
<成分(y)>
 上記成分(y)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック(A-2)と共役ジエン化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック(B-2)とを有するブロック共重合体(Y0)又はその水素添加物(Y)であり、上記の条件[2]~[4]を満たす。
 成分(y)が条件[2]を満たすようにするためには、例えば、ブロック共重合体(Y0)又はその水素添加物(Y)を構成する重合体ブロック(B-2)の共役ジエン化合物のビニル結合量を適切な値に制御することにより、成分(y)のTgを上記範囲とすることができる。
 また、成分(y)が条件[4]を満たすようにするためには、重合体ブロック(B-2)の合成に用いる共役ジエン化合物としてβ-ファルネセンを用いる。成分(y)が条件[4]を満たすことにより、樹脂組成物の、室温付近におけるtanδの温度特性を成分(y)添加前の特性に近いものとすることができる。
 成分(y)中の重合体ブロック(A-2)の含有量は、樹脂組成物の室温付近における制振性の観点から、好ましくは35質量%以下、より好ましくは28質量%以下、更に好ましくは23質量%以下であり、また、力学物性の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは14質量%以上、更に好ましくは17質量%以上である。換言すれば、成分(y)であるブロック共重合体(Y0)又はその水素添加物(Y)における重合体ブロック(A-2)の含有量は、好ましくは10~35質量%である。
 成分(y)の重量平均分子量は、耐熱性及び成形性の観点から、好ましくは40,000~400,000、より好ましくは40,000~300,000、更に好ましくは40,000~250,000、より更に好ましくは60,000~250,000、特に好ましくは80,000~250,000、最も好ましくは90,000~200,000である。
 成分(y)としてのブロック共重合体(Y0)及びブロック共重合体の水素添加物(Y)の重量平均分子量は、例えば、重合開始剤に対するモノマー量を調整することにより、上記範囲とすることができる。
 成分(y)はブロック共重合体の水素添加物(Y)及びブロック共重合体(Y0)のうちいずれか一方のみを含んでいてもよいし、両方を含んでいてもよい。成分(y)に含まれるブロック共重合体の水素添加物(Y)は1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。成分(y)に含まれるブロック共重合体(Y0)は1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
 成分(y)がブロック共重合体(Y0)又はその水素添加物(Y)を2種類以上含むことにより、樹脂組成物の室温付近におけるtanδを大きくしやすくなる。
 以下、成分(x)及び成分(y)に共通の構成や物性、樹脂組成物を構成する他の成分、及び、樹脂組成物の物性等について説明する。まず、成分(x)及び成分(y)を得るために用いられるブロック共重合体(X0)、(Y0)について説明する。
<ブロック共重合体(X0)、(Y0)>
 本発明の実施形態に係る樹脂組成物に含まれる、成分(x)としてのブロック共重合体の水素添加物(X)を得るための、水素添加前のブロック共重合体(以下、ブロック共重合体(X0)という)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック(A-1)と、共役ジエン化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック(B-1)とを含む。また、本発明の実施形態に係る樹脂組成物に含まれる、成分(y)としての水素添加前のブロック共重合体(ブロック共重合体(Y0))は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック(A-2)と、共役ジエン化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック(B-2)とを含む。本発明の実施形態に係る樹脂組成物に含まれる、成分(y)としてのブロック共重合体の水素添加物(Y)を得るためのブロック共重合体(Y0)も同様に、上記重合体ブロック(A-2)と重合体ブロック(B-2)とを含む。
なお、ブロック共重合体(X0)及びブロック共重合体(Y0)を総称して、単にブロック共重合体ということがある。また、ブロック共重合体の水素添加物(X)及びブロック共重合体の水素添加物(Y)を総称して、単にブロック共重合体の水素添加物ということがある。
 重合体ブロック(A-1)、重合体ブロック(A-2)、重合体ブロック(B-1)、及び重合体ブロック(B-2)は、それぞれ独立して、上記樹脂組成物中に1つだけ含まれていてもよいし、2つ以上含まれていてもよい。重合体ブロック(A-1)、重合体ブロック(A-2)、重合体ブロック(B-1)、及び重合体ブロック(B-2)のうちいずれかが2つ以上含まれる場合、その2つ以上の重合体ブロックは互いに同じであってよいし、異なっていてもよい。
 ブロック共重合体(X0)中の、重合体ブロック(A-1)及び重合体ブロック(B-1)の合計含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。すなわち、ブロック共重合体(X0)中の、重合体ブロック(A-1)及び重合体ブロック(B-1)の合計含有量は、例えば、80~100質量%である。
 また、ブロック共重合体(Y0)中の、重合体ブロック(A-2)及び重合体ブロック(B-2)の合計含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。すなわち、ブロック共重合体(Y0)中の、重合体ブロック(A-2)及び重合体ブロック(B-2)の合計含有量は、例えば、80~100質量%である。
 以下、重合体ブロック(A-1)と重合体ブロック(A-2)を、まとめて重合体ブロック(A)と称する。また、重合体ブロック(B-1)と重合体ブロック(B-2)を、まとめて重合体ブロック(B)と称する。そして、成分(x)に係るブロック共重合体(ブロック共重合体(X0))と成分(y)に係るブロック共重合体(ブロック共重合体(Y0))について、共通する部分はまとめて説明し、ブロック共重合体(X0)及び(Y0)を、単に「ブロック共重合体」と称する場合がある。
(重合体ブロック(A))
 重合体ブロック(A)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位(以下、「芳香族ビニル化合物単位」と略称することがある)を含有し、機械物性の観点から、好ましくは70モル%超、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは85モル%以上、より更に好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上であり、実質的に100モル%であってもよい。重合体ブロック(A)中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量の上限は、100モル%であってもよいし、99モル%であってもよいし、98モル%であってもよい。
 上記芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、2,6-ジメチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、α-メチル-o-メチルスチレン、α-メチル-m-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン、β-メチル-o-メチルスチレン、β-メチル-m-メチルスチレン、β-メチル-p-メチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、α-メチル-2,6-ジメチルスチレン、α-メチル-2,4-ジメチルスチレン、β-メチル-2,6-ジメチルスチレン、β-メチル-2,4-ジメチルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、2,6-ジクロロスチレン、2,4-ジクロロスチレン、α-クロロ-o-クロロスチレン、α-クロロ-m-クロロスチレン、α-クロロ-p-クロロスチレン、β-クロロ-o-クロロスチレン、β-クロロ-m-クロロスチレン、β-クロロ-p-クロロスチレン、2,4,6-トリクロロスチレン、α-クロロ-2,6-ジクロロスチレン、α-クロロ-2,4-ジクロロスチレン、β-クロロ-2,6-ジクロロスチレン、β-クロロ-2,4-ジクロロスチレン、o-t-ブチルスチレン、m-t-ブチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、o-メトキシスチレン、m-メトキシスチレン、p-メトキシスチレン、o-クロロメチルスチレン、m-クロロメチルスチレン、p-クロロメチルスチレン、o-ブロモメチルスチレン、m-ブロモメチルスチレン、p-ブロモメチルスチレン、シリル基で置換されたスチレン誘導体、インデン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。これらの芳香族ビニル化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。中でも、製造コストと物性バランスの観点から、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、及びこれらの混合物が好ましく、スチレンがより好ましい。
 但し、本発明の目的及び効果の妨げにならない限り、重合体ブロック(A)は芳香族ビニル化合物以外の他の不飽和単量体に由来する構造単位(以下、「他の不飽和単量体単位」と略称することがある)を30モル%未満の割合で含有していてもよい。該他の不飽和単量体としては、例えばブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、イソブチレン、メタクリル酸メチル、メチルビニルエーテル、N-ビニルカルバゾール、β-ピネン、8,9-p-メンテン、ジペンテン、メチレンノルボルネン、2-メチレンテトラヒドロフランなどからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。重合体ブロック(A)が該他の不飽和単量体単位を含有する場合の結合形態は特に制限はなく、ランダム、テーパー状のいずれでもよい。
 重合体ブロック(A)における前記他の不飽和単量体に由来する構造単位の含有量は、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、さらに好ましくは0モル%である。
 上記ブロック共重合体は、上記重合体ブロック(A)を少なくとも1つ有していればよい。上記ブロック共重合体が重合体ブロック(A)を2つ以上有する場合には、それら重合体ブロック(A)は、同一であっても異なっていてもよい。なお、本明細書において「重合体ブロックが異なる」とは、重合体ブロックを構成するモノマー単位、重量平均分子量、立体規則性、及び複数のモノマー単位を有する場合には各モノマー単位の比率及び共重合の形態(ランダム、グラジェント、ブロック)のうち少なくとも1つが異なることを意味する。
 上記ブロック共重合体は、重合体ブロック(A)を2つ有していることが好ましい。
 重合体ブロック(A)の重量平均分子量(Mw)は、特に制限はないが、ブロック共重合体が有する前記重合体ブロック(A)のうち、少なくとも1つの重合体ブロック(A)の重量平均分子量が、好ましくは3,000~60,000、より好ましくは4,000~50,000である。ブロック共重合体が、上記範囲内の重量平均分子量である重合体ブロック(A)を少なくとも1つ有することにより、機械強度がより向上し、流動性やフィルム成形性にも優れる。
 なお、ブロック共重合体が有する各重合体ブロックの重量平均分子量は、製造工程において各重合体ブロックの重合が終了する都度、サンプリングした液を測定することで求めることができる。また、例えば、2種類の重合体ブロック(A)を「A1」「A2」、1種類の重合体ブロック(B)を「B」で表したときに、A1-B-A2の構造を有するトリブロック共重合体の場合は、重合体ブロック「A1」及び重合体ブロック「B」の重量平均分子量を上記方法により求め、ブロック共重合体の重量平均分子量からそれらを引き算することにより、重合体ブロック「A2」の重量平均分子量を求めることができる。また、他の方法として、上記A1-B-A2構造を有するトリブロック共重合体の場合は、重合体ブロック「A1」及び「A2」の合計の重量平均分子量は、ブロック共重合体の重量平均分子量とH-NMR測定で確認する重合体ブロック「A1」及び「A2」の合計含有量から算出し、GPC測定によって、失活した最初の重合体ブロック「A1」の重量平均分子量を算出し、これを引き算することによって重合体ブロック「A2」の重量平均分子量を求めることもできる。
(重合体ブロック(B))
 重合体ブロック(B)は、共役ジエン化合物に由来する構造単位(以下、「共役ジエン化合物単位」と略称することがある)を含有する。共役ジエン化合物は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
 重合体ブロック(B-1)に含まれる共役ジエン化合物単位を構成する共役ジエンとしては、イソプレンやブタジエン等が挙げられる。
 重合体ブロック(B-1)は、イソプレンに由来する構造単位を含むことが好ましく、重合体ブロック(B-1)を作製する際に、例えば、共役ジエン化合物として、イソプレンを単独で用いたり、イソプレンとブタジエンを用いたりすることができる。
 重合体ブロック(B-1)においては、β-ファルネセンに由来する構造単位の含有量が少ないことが好ましく、具体的には、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0質量%(つまり、非含有)である。
 重合体ブロック(B-2)はβ-ファルネセンに由来する構造単位(以下、「β-ファルネセン単位」ということがある)を含む。重合体ブロック(B-2)は、β-ファルネセン単位を単独で含んでいてもよいし、β-ファルネセン及び他の共役ジエン化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。
 β-ファルネセンは、嵩高い側鎖を有しているため、重合体ブロック(B-2)を結晶化させづらくする効果が高い。また、β-ファルネセンが水素添加されている場合、そのTgは-60℃程度と低いため、樹脂組成物の低温での柔軟性を高めやすくなる。
 重合体ブロック(B-2)を得る際に、β-ファルネセンとともに用いられ得る共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、ミルセン、イソプレン等が挙げられる。このような共役ジエン化合物は、1種単独をβ-ファルネセンとともに用いてもよく、2種以上をβ-ファルネセンとともに用いてもよい。
 重合体ブロック(B-2)がβ-ファルネセン及び他の共役ジエン化合物に由来する構造単位を含むことにより、樹脂組成物の成形性及び低温での柔軟性を高められる。
 重合体ブロック(B-2)の総量におけるβ-ファルネセン単位の含有量は、良好な成形性を確保する観点から、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。上限に特に制限はなく、100質量%とすることができ、99質量%であってもよいし、98質量%であってもよい。換言すれば、重合体ブロック(B-2)の総量におけるβ-ファルネセン単位の含有量は、好ましくは55~100質量%である。
 なお、重合体ブロック(B-2)の総量におけるβ-ファルネセン単位の含有量は、モル量では、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは65モル%以上、より更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上、最も好ましくは実質的に100モル%である。上限は、99モル%であってもよいし、98モル%であってもよい。換言すれば、重合体ブロック(B-2)の総量におけるβ-ファルネセン単位の含有量は、好ましくは30~100モル%である。
 重合体ブロック(B)の総量における共役ジエン化合物単位の合計含有量は、柔軟性及びゴム弾性の観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。上限に特に制限はなく、100質量%とすることができ、99質量%であってもよいし、98質量%であってもよい。換言すれば、重合体ブロック(B)の総量における共役ジエン化合物に由来する構造単位の合計含有量は、好ましくは60~100質量%である。
 なお、重合体ブロック(B)の総量における上記共役ジエン化合物単位の合計含有量は、モル量では、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは65モル%以上、より更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上、最も好ましくは実質的に100モル%である。上限は、99モル%であってもよいし、98モル%であってもよい。換言すれば、重合体ブロック(B)の総量における共役ジエン化合物に由来する構造単位の合計含有量は、好ましくは30~100モル%である。
 重合体ブロック(B-1)において、イソプレンと他の共役ジエン化合物とを用いる場合、両者の含有比率[他の共役ジエン化合物/イソプレン](質量比)は、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に制限はないが、好ましくは5/95~95/5、より好ましくは10/90~90/10、更に好ましくは15/85~50/50、特に好ましくは18/82~48/52である。
 なお、重合体ブロック(B-1)において、上記他の共役ジエン化合物としてブタジエンを用いる場合、両者の含有比率[ブタジエン/イソプレン]をモル比で示すと、好ましくは6/94~96/4、より好ましくは12/88~92/8、更に好ましくは18/82~55/45、特に好ましくは22/78~54/46である。
 重合体ブロック(B-2)において、β-ファルネセンと他の共役ジエン化合物とを用いる場合、両者の含有比率[他の共役ジエン化合物/β-ファルネセン](質量比)は、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に制限はないが、好ましくは5/95~95/5、より好ましくは10/90~90/10、更に好ましくは15/85~50/50、特に好ましくは18/82~45/55である。
 なお、重合体ブロック(B-2)において、上記他の共役ジエン化合物としてブタジエンを用いる場合、両者の含有比率[ブタジエン/β-ファルネセン]をモル比で示すと、好ましくは16/84~99/1、より好ましくは30/70~97/3、更に好ましくは40/60~80/20、特に好ましくは45/55~78/22である。
 また、本発明の目的及び効果の妨げにならない限り、重合体ブロック(B)は共役ジエン化合物以外の他の重合性の単量体に由来する構造単位を含有してもよい。この場合、重合体ブロック(B)において、共役ジエン化合物以外の他の重合性の単量体に由来する構造単位の含有量は、好ましくは70モル%以下、より好ましくは50モル%以下、更に好ましくは35モル%以下、特に好ましくは20モル%以下である。共役ジエン化合物以外の他の重合性の単量体に由来する構造単位の含有量の下限値に特に制限はないが、0モル%であってもよいし、5モル%であってもよいし、10モル%であってもよい。換言すれば、重合体ブロック(B)における、共役ジエン化合物以外の他の重合性の単量体に由来する構造単位の含有量は、好ましくは0~70モル%である。
 該他の重合性の単量体としては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、ビニルナフタレン及びビニルアントラセン等の芳香族ビニル化合物、並びにメタクリル酸メチル、メチルビニルエーテル、N-ビニルカルバゾール、β-ピネン、8,9-p-メンテン、ジペンテン、メチレンノルボルネン、2-メチレンテトラヒドロフラン、1,3-シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、1,3-シクロヘプタジエン、1,3-シクロオクタジエン等からなる群から選択される少なくとも1種の化合物が好ましく挙げられる。なかでも、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレンがより好ましく、スチレンが更に好ましい。
 重合体ブロック(B)が、共役ジエン化合物以外の他の重合性の単量体に由来する構造単位を含有する場合、その結合形態は特に制限はなく、ランダム、テーパー状のいずれでもよいが、ランダムが好ましい。
 またブロック共重合体(X0)は、重合体ブロック(B-1)を少なくとも1つ有していればよく、ブロック共重合体(Y0)は、重合体ブロック(B-2)を少なくとも1つ有していればよい。ブロック共重合体(X0)、(Y0)が重合体ブロック(B)を2つ以上有する場合には、それら重合体ブロック(B)は、同一であっても異なっていてもよい。重合体ブロック(B)が、2種以上の構造単位を有している場合は、それらの結合形態はランダム、テーパー、完全交互、一部ブロック状、ブロック、又はそれらの2種以上の組み合わせからなっていてもよい。
 本発明の目的及び効果を損なわない限りにおいて、共役ジエン化合物の結合形態に特に制限はない。例えば、重合体ブロック(B-1)を構成する構造単位が、ブタジエンとイソプレンの混合物単位である場合、ブタジエン及びイソプレンのそれぞれの結合形態としては、ブタジエンの場合には1,2-結合、1,4-結合、イソプレンの場合には1,2-結合、3,4-結合、1,4-結合をとることができる。また、重合体ブロック(B-2)を構成する構造単位が、ブタジエンとβ-ファルネセンの混合物単位である場合、ブタジエン及びβ-ファルネセンのそれぞれの結合形態としては、ブタジエンの場合には1,2-結合、1,4-結合、β-ファルネセンの場合には1,2-結合、1,13-結合、3,13-結合をとることができる。これらの結合形態の1種のみが存在していても、2種以上が存在していてもよい。
 なお、β-ファルネセンの炭素位置番号は以下の順序で付与される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
(重合体ブロック(B)のビニル結合量)
 重合体ブロック(B-1)を構成する構造単位が、ブタジエン単位、又は、ブタジエン及びイソプレンの混合物単位である場合、ブタジエンの1,2-結合、イソプレンの1,2-結合及び3,4-結合をビニル結合とし、ビニル結合単位の含有量をビニル結合量とする。
 また、重合体ブロック(B-2)を構成する構造単位が、β-ファルネセン単位、又は、ブタジエン及びβ-ファルネセンの混合物単位である場合、ブタジエンの1,2-結合、β-ファルネセンの1,2-結合及び3,13-結合をビニル結合とし、ビニル結合単位の含有量をビニル結合量とする。
 上記成分(x)において、重合体ブロック(B-1)中のビニル結合量は、Tgを高くする観点から、好ましくは50モル%以上、より好ましくは57モル%以上、さらに好ましくは65モル%以上、よりさらに好ましくは70モル%以上、特に好ましくは75モル%以上である。また、特に制限されるものではないが、重合体ブロック(B-1)中のビニル結合量の上限値は、製造容易性の観点から、95モル%以下であってもよいし、90モル%以下であってもよい。換言すれば、重合体ブロック(B-1)中のビニル結合量は、好ましくは50~95モル%である。
 上記成分(y)において、重合体ブロック(B-2)中のビニル結合量は、低温での柔軟性の観点から、好ましくは1~50モル%であり、より好ましくは3~30モル%であり、更に好ましくは5~20モル%である。
 なお、ビニル結合量は、実施例に記載の方法に従って、H-NMR測定によって算出した値である。
 重合体ブロック(B)の重量平均分子量は、制振性などの観点から、水素添加前の状態で、好ましくは15,000~800,000であり、より好ましくは20,000~600,000であり、さらに好ましくは30,000~400,000、特に好ましくは50,000~250,000、最も好ましくは70,000~200,000である。ブロック共重合体(X0)、(Y0)が、それぞれ複数の重合体ブロック(B)を含む場合、上記重合体ブロック(B)の重量平均分子量(Mw)は、複数の重合体ブロック(B)の合計の重量平均分子量(Mw)とする。
 ブロック共重合体(X0)、(Y0)は、上記重合体ブロック(B)を少なくとも1つ有していればよい。ブロック共重合体(X0)、(Y0)が重合体ブロック(B)を2つ以上有する場合には、それら重合体ブロック(B)は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
 なお、上記成分(x)及び成分(y)においては、重合体ブロック(B)における芳香族ビニル化合物に由来する構造単位の含有量が少ないことが好ましく、当該構造単位を含まないことが望ましい。重合体ブロック(B)に芳香族ビニル化合物に由来する構造単位が含まれていると、制振性が低下する場合がある。
 上記観点から、重合体ブロック(B)における芳香族ビニル化合物に由来する構造単位の含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0質量%である。
(重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の結合様式)
 上記ブロック共重合体は、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とが結合している限りは、その結合形式は限定されず、直鎖状、分岐状、放射状、又はこれらの2つ以上が組合わさった結合様式のいずれでもよい。中でも、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の結合形式は直鎖状であることが好ましく、その例としては重合体ブロック(A)を「A」で、また重合体ブロック(B)を「B」で表したときに、A-Bで示されるジブロック共重合体、A-B-A又はB-A-Bで示されるトリブロック共重合体、A-B-A-Bで示されるテトラブロック共重合体、A-B-A-B-A又はB-A-B-A-Bで示されるペンタブロック共重合体、(A-B)nX型共重合体(Xはカップリング剤残基を表し、nは3以上の整数を表す)などを挙げることができる。中でも、直鎖状のトリブロック共重合体、又はジブロック共重合体が好ましく、A-B-A型のトリブロック共重合体が、柔軟性、製造の容易性などの観点から好ましく用いられる。
 ここで、本明細書においては、同種の重合体ブロックが二官能のカップリング剤などを介して直線状に結合している場合、結合している重合体ブロック全体は一つの重合体ブロックとして取り扱われる。これに従い、上記例示も含め、本来、厳密にはY-X-Y(Xはカップリング残基を表す)と表記されるべき重合体ブロックは、特に単独の重合体ブロックYと区別する必要がある場合を除き、全体としてYと表示される。本明細書においては、カップリング剤残基を含むこの種の重合体ブロックを上記のように取り扱うので、例えば、カップリング剤残基を含み、厳密にはA-B-X-B-A(Xはカップリング剤残基を表す)と表記されるべきブロック共重合体はA-B-Aと表記され、トリブロック共重合体の一例として取り扱われる。
 上記ブロック共重合体は、本発明の目的及び効果を損なわない限り、分子鎖中及び/又は分子末端に、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基などの官能基を、1種又は2種以上を有していてもよく、また官能基を有さないものであってもよい。
(他の単量体で構成される重合体ブロック)
 ブロック共重合体(X0)、(Y0)は、重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)のほか、本発明の効果を阻害しない限り、他の単量体で構成される重合体ブロックを含有していてもよい。
 かかる他の単量体としては、例えばプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン等の不飽和炭化水素化合物;アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタクリロイルエタンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、酢酸ビニル、メチルビニルエーテル等の官能基含有不飽和化合物;等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
 ブロック共重合体(X0)、(Y0)が他の重合体ブロックを有する場合、その含有量は10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
<ブロック共重合体の水素添加物>
 ブロック共重合体の水素添加物は、ブロック共重合体を水素添加したものである。本明細書において、ブロック共重合体の水素添加物を「水添ブロック共重合体」とも称することがある。
 ブロック共重合体の水素添加物(X)を得るためのブロック共重合体(X0)、及び、ブロック共重合体の水素添加物(Y)を得るためのブロック共重合体(Y0)は、いずれも重合体ブロック(A)に由来する構造単位と重合体ブロック(B)に由来する構造単位を有しており、水素添加を行ってもそれらの主骨格に変化はない。そのため、上述したブロック共重合体(X0)及びブロック共重合体(Y0)の構成成分とその使用割合、及び、特性等についての説明は、特に断らない限り、ブロック共重合体の水素添加物(X)及びブロック共重合体の水素添加物(Y)にも共通する。
 重合体ブロック(B)の水素添加率は、好ましくは85モル%以上である。つまり、重合体ブロック(B)が有する炭素-炭素二重結合の85モル%以上が水素添加されていることが好ましい。
 重合体ブロック(B)の水素添加率が高いと、幅広い温度における制振性、耐熱性及び耐候性に優れる。同様の観点から、重合体ブロック(B)の水素添加率は、より好ましくは86モル%以上、更に好ましくは87モル%以上、より更に好ましくは88モル%以上である。水素添加率の上限値に特に制限はないが、上限値は99モル%であってもよく、98モル%であってもよい。換言すれば、重合体ブロック(B)の水素添加率は、好ましくは85~99モル%である。
 同様の観点から、成分(x)の水素添加率は、好ましくは85モル%以上、より好ましくは86モル%以上、更に好ましくは87モル%以上、より更に好ましくは88モル%以上であり、また、上限値は例えば99モル%以下であり、98モル%以下であってもよい。換言すれば、成分(x)の水素添加率は、好ましくは85~99モル%である。
 また、同様の観点から、成分(y)がブロック共重合体の水素添加物(Y)である場合、当該水素添加物である成分(y)の水素添加率は、好ましくは85モル%以上、より好ましくは87モル%以上、更に好ましくは88モル%以上、より更に好ましく89モル%以上であり、上限値は例えば99モル%以下であり、98モル%以下であってもよい。換言すれば、成分(y)がブロック共重合体の水素添加物(Y)である場合の水素添加率は、好ましくは85~99モル%である。
 なお、上記の水素添加率は、重合体ブロック(B)中の共役ジエン化合物由来の構造単位中の炭素-炭素二重結合の含有量を、水素添加後のH-NMR測定によって求めた値であり、より詳細には実施例に記載の方法に従って測定した値である。
 上記水添ブロック共重合体は、本発明の目的及び効果を損なわない限り、分子鎖中及び/又は分子末端に、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基などの官能基を、1種又は2種以上を有していてもよく、また官能基を有さないものであってもよい。
(ブロック共重合体及び水添ブロック共重合体の物性)
 JIS K7244-10:2005に準拠して、歪み量0.1%、周波数1Hz、測定温度-30~+50℃、昇温速度3℃/分、せん断モード、の条件で測定される、ブロック共重合体(X0)又はブロック共重合体の水素添加物(X)の損失正接tanδのピークトップ強度は、数値が大きいほど、その温度における制振性等の物性に優れることを示し、1.0以上であれば、実使用環境下において十分な制振性を得ることができる。
 上記tanδのピークトップ強度は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.3以上、更に好ましくは1.5以上、より更に好ましくは1.9以上である。なお、成分(x)と成分(y)とを混合して得られる樹脂組成物が所期の物性を発揮する場合、少なくともブロック共重合体(X0)又はその水素添加物(X)のtanδのピークトップ強度は上記範囲を外れていても構わない。
 上記手順で測定される、ブロック共重合体(Y0)又はブロック共重合体の水素添加物(Y)の損失正接tanδのピークトップ強度は、数値が大きいほど、その温度における制振性等の物性に優れることを示し、0.5以上であれば、実使用環境下において十分な制振性を得ることができる。上記tanδのピークトップ強度は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは1.2以上、より更に好ましくは1.5以上、特に好ましくは1.9以上である。なお、成分(x)と成分(y)とを混合して得られる樹脂組成物が所期の物性を発揮する場合、少なくともブロック共重合体(Y0)又はその水素添加物(Y)のtanδのピークトップ強度は上記範囲を外れていても構わない。
 また、JIS K7244-10:2005に準拠して、歪み量0.1%、周波数1Hz、測定温度-30~+50℃、昇温速度3℃/分、せん断モード、の条件で測定される、ブロック共重合体の水素添加物(X)の、損失正接tanδのピークトップ温度は、製造容易性の観点から、好ましくは+45℃以下、より好ましくは+40℃以下、更に好ましくは+35℃以下である。また、室温付近における制振性の観点から、好ましくは-30℃以上、より好ましくは-20℃以上、更に好ましくは-10℃以上、特に好ましくは0℃以上である。換言すれば、ブロック共重合体の水素添加物(X)の、tanδのピークトップ温度は、好ましくは-30~+45℃である。
 上記手順で測定されるブロック共重合体(Y0)又はその水素添加物(Y)の、損失正接tanδのピークトップ温度は、低温での柔軟性の観点から、好ましくは-30℃以下、より好ましくは-40℃以下、更に好ましくは-45℃以下である。ブロック共重合体(Y0)又はその水素添加物(Y)のtanδのピークトップ温度の下限に特に制限はないが、製造容易性の観点から、例えば-70℃以上である。換言すれば、ブロック共重合体(Y0)又はその水素添加物(Y)の、tanδのピークトップ温度は、好ましくは-70~-30℃である。
 なお、tanδのピークトップ強度とは、tanδのピークが最大となるときのtanδの値のことである。また、tanδのピークトップ温度とは、tanδのピークが最大となるときの温度のことである。水添ブロック共重合体の上記tanδのピークトップ温度及びtanδのピークトップ強度は、具体的には実施例に記載された方法で測定される。
 これらの値を上記範囲とするためには、例えば、重合体ブロック(B)を構成するためのモノマーである共役ジエン化合物の種類や比率を調整したり、重合体ブロック(B)のビニル結合量を調整したりすることが挙げられる。
 成分(x)であるブロック共重合体の水素添加物(X)の、JIS K 7210:2014に準拠して測定した230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートは、製造容易性の観点から、好ましくは25g/10min以下、より好ましくは20g/10min以下、更に好ましくは15g/10min以下、より更に好ましくは10g/10min以下、より更に好ましくは7g/10min以下、特に好ましくは5g/10min以下であり、また、樹脂組成物の成形性の観点から、好ましくは0.5g/10min以上、より好ましくは0.7g/10min以上、更に好ましくは0.9g/10min以上である。換言すれば、ブロック共重合体の水素添加物(X)の上記メルトフローレートは、好ましくは0.5~25g/10minである。
 成分(y)であるブロック共重合体(Y0)又はその水素添加物(Y)の、JIS K 7210:2014に準拠して測定した230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートは、樹脂組成物の成形性の観点から、好ましくは0g/10min以上より好ましくは3g/10min以上、更に好ましくは5g/10min以上、より更に好ましくは10g/10min以上、特に好ましくは30g/10min以上、最も好ましくは40g/10min以上であり、また、製造容易性の観点から、好ましくは300g/10min以下、より好ましくは90g/10min以下、更に好ましくは80g/10min以下、より更に好ましくは70g/10min以下である。換言すれば、ブロック共重合体(Y0)又はその水素添加物(Y)の上記メルトフローレートは、好ましくは0~300g/10minである。
(他の樹脂成分)
 本発明の実施形態に係る樹脂組成物は、他の樹脂成分(z1)として、スチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアリーレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、及び、液晶ポリエステルからなる群から選択される一種以上を含んでいてもよい。
 上記樹脂組成物には、上記成分(x)、成分(y)及び成分(z1)以外の樹脂成分として、本発明の効果が損なわれない範囲において、水添クマロン・インデン樹脂、水添ロジン系樹脂、水添テルペン樹脂、脂環族系水添石油樹脂などの水添系樹脂;オレフィン及びジオレフィン重合体からなる脂肪族系樹脂などの粘着付与樹脂;水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、ブチルゴム、ポリイソブチレン、ポリブテンなどの他の重合体が含まれていてもよい。
 上記樹脂組成物が、成分(x)、成分(y)及び成分(z1)以外の樹脂成分を含有する場合、特に制限されるわけではないが、該組成物における成分(x)、成分(y)及び成分(z1)以外の成分の含有量は50質量%以下とすることが好ましい。そして、この場合、該組成物における成分(x)及び成分(y)の合計含有量は、制振性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上、最も好ましくは95質量%以上である。
(添加剤)
 上記樹脂組成物に含まれ得る上記各樹脂成分以外の成分(成分(z2))としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、遮熱材料、アンチブロッキング剤、顔料、染料、軟化剤、架橋剤、架橋助剤、架橋促進剤、充填剤、補強材、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤、撥水剤、防水剤、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、電磁波シールド性付与剤、蛍光剤、防菌剤等の添加剤が挙げられるが、特にこれらに制限されるものではない。これらは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
 酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などが挙げられる。
 紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤などの他、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、マロン酸エステル化合物、シュウ酸アニリド化合物なども使用できる。
 光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系光安定剤などが挙げられる。
 遮熱材料としては、例えば、樹脂又はガラスに熱線遮蔽機能を有する熱線遮蔽粒子、熱線遮蔽機能を有する有機色素化合物を含有させた材料などが挙げられる。熱線遮蔽機能を有する粒子としては、例えば、錫ドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化錫、アルミニウムドープ酸化亜鉛、錫ドープ酸化亜鉛、珪素ドープ酸化亜鉛などの酸化物の粒子、LaB(六ホウ化ランタン)粒子などの熱線遮蔽機能を有する無機材料の粒子などが挙げられる。また、熱線遮蔽機能を有する有機色素化合物としては、例えば、ジイモニウム系色素、アミニウム系色素、フタロシアニン系色素、アントラキノン系色素、ポリメチン系色素、ベンゼンジチオール型アンモニウム系化合物、チオ尿素誘導体、チオール金属錯体などが挙げられる。
 アンチブロッキング剤としては、無機粒子、有機粒子が挙げられる。無機粒子としては、IA族、IIA族、IVA族、VIA族、VIIA族、VIIIA族、IB族、IIB族、IIIB族、IVB族元素の酸化物、水酸化物、硫化物、窒素化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、燐酸塩、亜燐酸塩、有機カルボン酸塩、珪酸塩、チタン酸塩、硼酸塩及びそれらの含水化合物、並びにそれらを中心とする複合化合物及び天然鉱物粒子が挙げられる。有機粒子としては、フッ素樹脂、メラミン系樹脂、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、アクリル系レジンシリコーン及びそれらの架橋体が挙げられる。
 顔料としては、有機系顔料、無機系顔料が挙げられる。有機系顔料としては、例えば、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、フタロシアニン系顔料などが挙げられる。無機系顔料としては、例えば、酸化チタン、硫化亜鉛、カーボンブラック、鉛系顔料、カドミウム系顔料、コバルト系顔料、鉄系顔料、クロム系顔料、群青、紺青などが挙げられる。
 染料としては、例えば、アゾ系、アントラキノン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ペリレン系、ジオキサジン系、インドリノン系、イソインドリノン系、キノンイミン系、トリフェニルメタン系、チアゾール系、ニトロ系、ニトロソ系などの染料が挙げられる。
 軟化剤としては、例えばパラフィンオイル等のパラフィン系炭化水素油、ナフテン系炭化水素油、芳香族系炭化水素油などの炭化水素系油;落花生油、ロジンなどの植物油;リン酸エステル;低分子量ポリエチレングリコール;流動パラフィン;低分子量ポリエチレン、エチレン-α-オレフィン共重合オリゴマー、液状ポリブテン、液状ポリイソプレン又はその水素添加物、液状ポリブタジエン又はその水素添加物、などの炭化水素系合成油などの公知の軟化剤を用いることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
 架橋剤としては、例えばラジカル発生剤、硫黄及び硫黄化合物などが挙げられる。
 ラジカル発生剤としては、例えば、ジクミルペルオキシド、ジt-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシドなどのジアルキルモノペルオキシド;2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、ビス(t-ブチルジオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレートなどのジペルオキシド;ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシドなどのベンゾイル基含有ペルオキシド;t-ブチルペルオキシベンゾエートなどのモノアシルアルキルペルオキシド;t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネートなどの過炭酸;ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシドなどの有機過酸化物が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジクミルペルオキシドが反応性の観点から好ましい。
 硫黄化合物としては、例えば、一塩化硫黄、二塩化硫黄などが挙げられる。
 架橋剤としては、その他に、アルキルフェノール樹脂、臭素化アルキルフェノール樹脂などのフェノール系樹脂;p-キノンジオキシムと二酸化鉛、p,p’-ジベンゾイルキノンジオキシムと四酸化三鉛の組み合わせなども使用することができる。
 架橋助剤としては、公知の架橋助剤を使用することができ、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメリット酸トリアリルエステル、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、グリセロールジメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイルオキシプロピルメタクリレートなどの多官能性単量体;塩化第一錫、塩化第二鉄、有機スルホン酸、ポリクロロプレン、クロロスルホン化ポリエチレンなどが挙げられる。架橋助剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
 架橋促進剤としては、例えば、N,N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(4-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなどのチアゾール類;ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジンなどのグアニジン類;ブチルアルデヒド-アニリン反応物、ヘキサメチレンテトラミン-アセトアルデヒド反応物などのアルデヒド-アミン系反応物又はアルデヒド-アンモニア系反応物;2-メルカプトイミダゾリンなどのイミダゾリン類;チオカルバニリド、ジエチルウレア、ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア、ジオルソトリルチオウレアなどのチオウレア類;ジベンゾチアジルジスルフィド;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどのチウラムモノスルフィド類又はチウラムポリスルフィド類;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸テルルなどのチオカルバミン酸塩類;ジブチルキサントゲン酸亜鉛などのキサントゲン酸塩類;亜鉛華などが挙げられる。架橋促進剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
 充填剤及び/又は補強材としては、例えば、タルク、クレー、マイカ、ケイ酸カルシウム、ガラス、ガラス中空球、ガラス繊維、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、ホウ酸亜鉛、ドーソナイト、ポリリン酸アンモニウム、カルシウムアルミネート、ハイドロタルサイト、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化アンチモン、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、炭素繊維、活性炭、炭素中空球、チタン酸カルシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、炭化ケイ素等の無機フィラー、木粉、でんぷん等の有機フィラー、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ等の導電性フィラー、銀粉末、銅粉末、ニッケル粉末、錫粉末、銅繊維、ステンレス鋼繊維、アルミニウム繊維、鉄繊維等の金属フィラー等が挙げられる。
 上記樹脂組成物に含まれる上記添加剤の含有量には特に制限はなく、当該添加剤の種類等に応じて適宜調整することができる。上記樹脂組成物が上記添加剤を含有する場合、上記添加剤の含有量は樹脂組成物の全質量に対して、例えば50質量%以下、45質量%以下、30質量%以下であってもよく、また、0.01質量%以上、0.1質量%以上、1質量%以上であってもよい。換言すれば、上記添加剤の含有量は樹脂組成物の全質量に対して、例えば0.01~50質量%である。
 上記他の樹脂成分である成分(z1)と、上記成分(z2)とを併用してもよい。例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィンと、パラフィンオイルとを併用することができる。この場合、所定の強度を示すtanδの温度範囲を広げやすくなるため、より広い用途に適する樹脂組成物となる。
<樹脂組成物の物性>
 本発明の実施形態に係る樹脂組成物が有する各種物性について説明する。
(tanδのピークトップ強度及び温度)
 上記樹脂組成物の、JIS K7244-10:2005に準拠して、歪み量0.1%、周波数1Hz、測定温度-30~+50℃、昇温速度3℃/分、せん断モード、の条件で測定したtanδのピークトップ強度は、室温付近における制振性を確保しやすくする観点から、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.8以上、より更に好ましくは1.0以上、特に好ましくは1.3以上である。上限に特に制限はないが、製造容易性の観点から、例えば3.0以下である。換言すれば、上記樹脂組成物の、上記手順で測定したtanδのピークトップ強度は、好ましくは0.4~3.0である。
 また、上記樹脂組成物の、tanδのピークトップ温度は、製造容易性の観点から、好ましくは+45℃以下、より好ましくは+40℃以下、更に好ましくは+35℃以下である。また、室温付近における制振性の観点から、好ましくは-30℃以上、より好ましくは-20℃以上、更に好ましくは-10℃以上、より更に好ましくは0℃以上、特に好ましくは10℃以上である。換言すれば、ブロック共重合体の水素添加物(X)の、tanδのピークトップ温度は、好ましくは-30~+45℃である。
 樹脂組成物のtanδのピークトップ強度及び温度は、具体的には実施例に記載の手順で測定される。
(メルトフローレート(MFR))
 上記樹脂組成物は、JIS K 7210:2014に準拠して測定した230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが、製造容易性の観点から、好ましくは100g/10min以下、より好ましくは70g/10min以下、更に好ましくは50g/10min以下である。また、成形性の観点から、好ましくは1g/10min以上、より好ましくは3g/10min以上、更に好ましくは5g/10min以上である。換言すれば、上記樹脂組成物の上記メルトフローレートは、好ましくは1~100g/10minである。
 樹脂組成物のメルトフローレートは、具体的には実施例に記載の手順で測定される。
(バイオベース度)
 上記樹脂組成物の、ASTM D6866-20に準拠して測定したバイオベース度は、枯渇性資源の有効利用及びCO削減、及び、制振性と成形性の確保の観点から、好ましくは1~80質量%、より好ましくは5~70質量%、更に好ましくは10~65質量%、より更に好ましくは20~60質量%、特に好ましくは30~55質量%である。後述する架橋発泡体の場合、上記バイオベース度は、好ましくは1~80質量%、より好ましくは5~70質量%、更に好ましくは10~65質量%、より更に好ましくは20~60質量%、特に好ましくは30~55質量%である。
 バイオベース度は、具体的には実施例に記載の手順で測定される。
(-20℃におけるせん断貯蔵弾性率G’)
 樹脂組成物の、JIS K7244-10:2005に準じて周波数1Hzの条件で複素せん断粘度試験を行うことで測定される-20℃におけるせん断貯蔵弾性率G’は、低温での柔軟性の観点から、好ましくは300MPa以下、より好ましくは200MPa以下、更に好ましくは100MPa以下、より更に好ましくは50MPa以下、特に好ましくは30MPa以下、最も好ましくは20MPa以下である。上記せん断貯蔵弾性率G’の下限に特に制限はないが、力学強度の観点から、例えば0.1MPaである。換言すれば、樹脂組成物の、-20℃におけるせん断貯蔵弾性率G’は、好ましくは0.1~300MPaである。
 なお、上記せん断貯蔵弾性率G’は、より詳細には実施例に記載の方法に従って測定される。
(樹脂組成物のモルフォロジー)
 上記樹脂組成物の一態様においては、成分(x)及び成分(y)のうち一方をマトリクスとし、成分(x)及び成分(y)のうち他方が前記マトリクス中に分散するドメインが形成されている分散構造(モルフォロジー)を有する。
 図1は、樹脂組成物のモルフォロジーの一例であって、樹脂組成物の断面の原子間力顕微鏡(AFM)画像の一例である。図1に示すAFM画像においては、暗部が成分(x)を示し、明部が成分(y)を示しており、成分(x)のマトリクス中に成分(y)がドメインとなって分散している。
 上記ドメインの形状が球形に近づくほど、マトリクス成分が樹脂組成物の粘弾性に与える寄与が大きくなる。このため、成分(y)を添加することによるtanδのピークトップ強度の低下が発生しづらくなる。
 上記ドメインの平均アスペクト比は、分散性の観点から、好ましくは1.0~3.0、より好ましくは1.1~2.5、更に好ましくは1.2~2.0である。
 本願明細書において、上記平均アスペクト比は、AFM観察によってドメイン100個についてアスペクト比(長軸の長さ/短軸の長さ)を調べ、その平均値を算出することによって求めた値であり、詳しくは、実施例に記載の方法で測定される。
<ブロック共重合体の製造方法>
 本発明の実施形態に係る樹脂組成物を得るのに用いられるブロック共重合体(ブロック共重合体(X0)、(Y0))の製造方法は、モノマーとして少なくとも芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を用い、重合反応を行うことで、該芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック(A)と、共役ジエン化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック(B)とを含むブロック共重合体を得る第1の工程を有する。
 上記第1の工程において、ブロック共重合体は、例えば、溶液重合法、乳化重合法又は固相重合法などにより製造することができる。中でも溶液重合法が好ましく、例えば、アニオン重合、カチオン重合などのイオン重合法、ラジカル重合法などの公知の方法を適用できる。中でも、アニオン重合法が好ましい。アニオン重合法では、溶媒、アニオン重合開始剤、及び必要に応じてルイス塩基の存在下、芳香族ビニル化合物と、共役ジエン化合物とを逐次添加して、ブロック共重合体を得、必要に応じてカップリング剤を添加して反応させる。ここで、ブロック共重合体(Y0)を作製する場合は、共役ジエン化合物として、少なくともβ-ファルネセンを用いる。
 アニオン重合の重合開始剤として使用し得る有機リチウム化合物としては、例えばメチルリチウム、エチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、ペンチルリチウムなどが挙げられる。また、重合開始剤として使用し得るジリチウム化合物としては、例えばナフタレンジリチウム、ジリチオヘキシルベンゼンなどが挙げられる。
 上記カップリング剤としては、例えばジクロロメタン、ジブロモメタン、ジクロロエタン、ジブロモエタン、ジブロモベンゼン、安息香酸フェニル、メチルジメトキシシラン、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
 これらの重合開始剤及びカップリング剤の使用量は、目的とするブロック共重合体の所望とする重量平均分子量により適宜決定される。通常は、アルキルリチウム化合物、ジリチウム化合物などの開始剤は、重合に用いる芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物などの単量体の合計100質量部あたり0.01~0.2質量部の割合で用いられるのが好ましく、カップリング剤を使用する場合は、上記単量体の合計100質量部あたり0.001~0.8質量部の割合で用いられるのが好ましい。
 溶媒としては、アニオン重合反応に悪影響を及ぼさなければ特に制限はなく、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n-ヘキサン、n-ペンタンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などが挙げられる。また、重合反応は、通常0~100℃、好ましくは10~70℃の温度で、0.5~50時間、好ましくは1~30時間行う。
 また、重合の際に共触媒(ビニル化剤)としてルイス塩基を添加することにより、重合体ブロック(B)の3,4-結合、1,2-結合、及び3,13-結合の含有量(ビニル結合量)を高めることができる。
 当該ルイス塩基としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン(DTHFP)等のエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;トリエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N-メチルモルホリン等のアミン類;ナトリウムt-ブチレート、ナトリムt-アミレート又はナトリウムイソペンチレート等の脂肪族アルコールのナトリウム又はカリウム塩、あるいは、ジアルキルナトリウムシクロヘキサノレート、例えば、ナトリウムメントレートのような脂環式アルコールのナトリウム又はカリウム塩等の金属塩;等が挙げられる。
 上記ルイス塩基のなかでも、制振性と熱安定性の観点から、テトラヒドロフラン及びDTHFPを用いることが好ましい。また、高いビニル結合量とすることができ、過剰量の水添触媒を用いずとも高い水素添加率を達成しやすく、より優れた制振性と熱安定性の両立を実現し得ることからDTHFPを用いることがより好ましい。
 これらのルイス塩基は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
 ルイス塩基の添加量は、重合体ブロック(B)を構成する共役ジエン化合物単位のビニル結合量をどの程度に制御するかにより決定される。そのため、ルイス塩基の添加量に厳密な意味での制限はないが、重合開始剤として用いられるアルキルリチウム化合物又はジリチウム化合物に含有されるリチウム1グラム原子当たり、通常0.1~1,000モル、好ましくは1~100モルの範囲内で用いるのが好ましい。
 ルイス塩基を添加せずに上記の重合反応を行うことももちろん可能である。特に、ブロック共重合体の水素添加物のガラス転移温度を低くしやすくする観点からは、上記第1の工程において、ルイス塩基を添加しないことが好ましい。
 上記第1の工程においては、重合を行った後、アルコール類、カルボン酸類、水などの活性水素化合物を添加して重合反応を停止させる。
<水添ブロック共重合体の製造方法>
 本発明の実施形態に係る水添ブロック共重合体(X)、(Y)の製造方法は、上記第1の工程、及び、前記ブロック共重合体(X0)又は(Y0)を水素添加する第2の工程、を有する。
 上記第2の工程においては、例えば、不活性有機溶媒中で水添触媒の存在下に水素添加反応(水添反応)を行うことで、水素添加された共重合体を得る。
 水素添加反応は、水素圧力を0.1~20MPa、好ましくは0.5~15MPa、より好ましくは0.5~5MPa、反応温度を20~250℃、好ましくは50~180℃、より好ましくは70~180℃、反応時間を通常0.1~100時間、好ましくは1~50時間として実施することができる。
 水添触媒としては、上記芳香族ビニル化合物の核水添を抑制しながら重合体ブロック(B)の水素添加反応を行うという観点から、例えば、ラネーニッケル;遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物、アルキルリチウム化合物などとの組み合わせからなるチーグラー系触媒;メタロセン系触媒などが挙げられる。前記同様の観点から、中でも、チーグラー系触媒が好ましく、遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物との組み合わせからなるチーグラー系触媒がより好ましく、ニッケル化合物とアルキルアルミニウム化合物との組み合わせからなるチーグラー系触媒(Al/Ni系チーグラー触媒)がさらに好ましい。
 特に、上述したように、第1の工程においてDTHFPをルイス塩基として用いている場合、第2の工程を経て得られる水添ブロック共重合体として、高いTgを有するものを得やすい。このため、成分(x)に適した、高いTgを有する水添ブロック共重合体(X)を得ることができる。
 このようにして得られた水添ブロック共重合体は、重合反応液をメタノールなどに注ぎ、撹拌後にろ過し、加熱又は減圧乾燥させるか、重合反応液をスチームとともに熱水中に注ぎ、溶媒を共沸させて除去するいわゆるスチームストリッピングを施した後、加熱又は減圧乾燥することにより取得することができる。
[樹脂組成物の製造方法]
 上記樹脂組成物の製造方法に特に制限はなく、公知の方法を採用することができる。例えば、成分(x)である上記ブロック共重合体の水素添加物(X)と、成分(y)である上記ブロック共重合体のブロック共重合体(Y0)又はその水素添加物(Y)とを、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー、コニカルブレンダーなどの混合機を用いて混合することによって製造するか、又はその混合後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダーなどにより溶融混練することによって製造することができる。
 上記樹脂組成物が、成分(x)及び成分(y)以外に上述したような添加剤等を含む場合も、成分(x)及び成分(y)に加えて上記添加剤等を上述した混合機で混合したり、混合後に上述した装置で溶融混練したりすることで上記樹脂組成物を製造することができる。
[発泡性組成物及び架橋発泡体]
 本発明の実施形態に係る発泡性組成物は、上記成分(x)と成分(y)とを含み、上記条件[1]~[4]を満たす樹脂組成物(i)と、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体ゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びポリエチレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種のオレフィン系重合体(ii)と、架橋剤(iii)と、発泡剤(iv)とを含む。また、本発明の実施形態に係る架橋発泡体は、上記発泡性組成物の架橋発泡体である。
 上記オレフィン系重合体(ii)としては、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(以下、「EPDM」と略称することがある。)ゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体(以下、「EVA」と略称することがある。)およびポリエチレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種のオレフィン系重合体である。
 エチレン-プロピレン-ジエン共重合体ゴムとして、使用可能なジエンは、1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,6-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエンなどの鎖状非共役ジエン;シクロヘキサジエン、ジクロロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネンなどの環状非共役ジエン;2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエン、1,3,7-オクタトリエン、1,4,9-デカトリエンなどのトリエンなどが挙げられる。
 エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)は、特に制限はないが、酢酸ビニルの含有量が、EVAの全質量に対して、好ましくは5~45質量%、より好ましくは10~40質量%であり、さらに好ましくは15~35質量%である。EVAの酢酸ビニルの含有量が低いと生成物が硬くなる傾向があり、EVAの酢酸ビニルの含有量が高いと十分に架橋されず、架橋発泡体の力学強度が不十分となる傾向がある。EVAの酢酸ビニルの含有量が5~45質量%であれば、上記樹脂組成物(i)及びオレフィン系重合体を含む発泡性組成物から得られる架橋発泡体は、適度な柔軟性を有し、制振性、遮音性、ガス抜け性、パネルなどの他部材との接着性が良好であり、軽量化を実現できるとともに、破断強さなどの力学物性を保持できる。
 また、EVAのJIS K7210:2014に準拠して測定したメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.3g/10min以上、より好ましくは0.5~80.0g/10min、さらに好ましくは1.0~50.0g/10minであり、特に好ましくは1.2~30.0g/10minである。なお、MFRは、190℃、荷重21.18Nの条件で測定されたものである。EVAのメルトフローレートが上記範囲であると、成形性が良好となる。
 ポリエチレン系樹脂は、本明細書において、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含有するものを除くポリエチレン系樹脂を意味する。
 ポリエチレン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンなどのエチレンの単独重合体;エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン-1共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、エチレン/ヘプテン共重合体、エチレン/オクテン共重合体、エチレン/4-メチルペンテン-1共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/アクリル酸エステル共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸エステル共重合体などのエチレン系共重合体が挙げられる。
 ポリエチレン系樹脂のエチレンに由来する構造単位の含有量は、上記樹脂組成物(i)及びオレフィン系重合体を含む発泡性組成物から得られる架橋発泡体の適度な柔軟性の観点から、ポリエチレン系樹脂の全構造単位の基準に対して、好ましくは30~100モル%、より好ましくは40~95モル%、さらに好ましくは50~90モル%である。
 上記発泡性組成物中のオレフィン系重合体(ii)と上記樹脂組成物(i)との含有割合[オレフィン系重合体(ii)/樹脂組成物(i)]は、質量比で、好ましくは1/99~99/1である。当該質量比[オレフィン系樹脂(ii)/樹脂組成物(i)]は、より好ましくは5/95~95/5、さらに好ましくは10/90~80/20、よりさらに好ましくは10/90~60/40、特に好ましくは10/90~45/55である。この範囲であれば、樹脂組成物(i)及びオレフィン系重合体(ii)を含む発泡性組成物から得られる架橋発泡体は、制振性、遮音性、ガス抜け性、パネルなどの他部材との接着性が良好であり、軽量化を実現できるとともに、破断強さなどの力学物性を保持できる。
 上記発泡性組成物(100質量%)中における、樹脂組成物(i)及びオレフィン系重合体(ii)の合計含有量は、好ましくは50質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上がより好ましく、さらに好ましくは90質量%以上、よりさらに好ましくは95質量%以上である。
(架橋剤)
 架橋発泡体を得るための架橋剤(iii)としては、例えばラジカル発生剤、硫黄および硫黄化合物などが挙げられる。
 ラジカル発生剤としては、例えば、ジクミルペルオキシド、ジt-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシドなどのジアルキルモノペルオキシド;2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、ビス(t-ブチルジオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレートなどのジペルオキシド;ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド;t-ブチルペルオキシベンゾエートなどのモノアシルアルキルペルオキシド;t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネートなどの過炭酸;ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシドなどの有機過酸化物が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジクミルペルオキシドが反応性の観点から好ましい。
 ラジカル発生剤を用いる場合、その含有量は、上記樹脂組成物(i)とオレフィン系重合体(ii)の合計100質量部に対して、好ましくは0.01~15質量部、より好ましくは0.05~10質量部、さらに好ましくは0.1~5質量部、特に好ましくは0.1~3質量部である。
 硫黄化合物としては、例えば、一塩化硫黄、二塩化硫黄などが挙げられる。
 硫黄又は硫黄化合物を含有する場合、その含有量は、上記樹脂組成物(i)とオレフィン系重合体(ii)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは0.5~10質量部、さらに好ましくは1~10質量部である。
 架橋発泡体を得るための架橋剤(iii)としては、その他に、アルキルフェノール樹脂、臭素化アルキルフェノール樹脂などのフェノール系樹脂;p-キノンジオキシムと二酸化鉛、p,p’-ジベンゾイルキノンジオキシムと四酸化三鉛の組み合わせなども使用することができる。
 上記発泡性組成物は、架橋剤(iii)のほかに、架橋助剤、架橋促進剤を含んでいてもよい。
 架橋助剤としては、公知の架橋助剤を使用することができ、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメリット酸トリアリルエステル、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、グリセロールジメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイルオキシプロピルメタクリレートなどの多官能性単量体;塩化第一錫、塩化第二鉄、有機スルホン酸、ポリクロロプレン、クロロスルホン化ポリエチレンなどが挙げられる。中でも、トリアリルイソシアヌレートが好ましい。
 架橋助剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
 架橋助剤を含有する場合、その含有量は、上記樹脂組成物(i)とオレフィン系重合体(ii)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1~40質量部、より好ましくは0.5~20質量部、さらに好ましくは2~20質量部である。
 架橋促進剤としては、例えば、N,N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(4-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなどのチアゾール類;ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジンなどのグアニジン類;ブチルアルデヒド-アニリン反応物、ヘキサメチレンテトラミン-アセトアルデヒド反応物などのアルデヒド-アミン系反応物またはアルデヒド-アンモニア系反応物;2-メルカプトイミダゾリンなどのイミダゾリン類;チオカルバニリド、ジエチルウレア、ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア、ジオルソトリルチオウレアなどのチオウレア類;ジベンゾチアジルジスルフィド;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどのチウラムモノスルフィド類またはチウラムポリスルフィド類;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸テルルなどのチオカルバミン酸塩類;ジブチルキサントゲン酸亜鉛などのキサントゲン酸塩類;亜鉛華などが挙げられる。架橋促進剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(発泡剤)
 発泡剤(iv)としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、アジド類などの無機系発泡剤;N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’-ジメチル-N,N’-ジニトロソテレフタルアミドなどのN-ニトロソ系化合物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレートなどのアゾ系化合物;トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタンなどのフッ化アルカン;パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホニルヒドラジド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)などのスルホニルヒドラジン系化合物;p-トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)などのスルホニルセミカルバジド系化合物;5-モルホリル-1,2,3,4-チアトリアゾールなどのトリアゾール系化合物などの有機系発泡剤;イソブタン、ペンタンなどの加熱膨張性化合物が、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどの熱可塑性樹脂からなるマイクロカプセルに封入された熱膨張性微粒子などを挙げることができる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
 発泡剤(iv)の含有量は、上記樹脂組成物(i)とオレフィン系重合体(ii)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは0.2~25質量部、さらに好ましくは0.5~20質量部、特に好ましくは0.5~10質量部である。
 発泡助剤としては、例えば、ステアリン酸及びその塩;酸化亜鉛、酢酸亜鉛等の亜鉛化合物;尿素化合物などが挙げられる。
 発泡助剤を含有する場合、その含有量は、発泡剤(iv)に対する質量比で好ましくは0.01~10当量、より好ましくは0.05~5当量、さらに好ましくは0.1~2当量、特に好ましくは0.3~1.8当量である。
(その他の成分)
 上記発泡性組成物は、更に他の熱可塑性重合体を含有していてもよい。他の熱可塑性重合体としては、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミド6・10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6・12、ポリヘキサメチレンジアミンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンジアミンイソフタルアミド、キシレン基含有ポリアミドなどのポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂;ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマーなどのポリオキシメチレン系樹脂;スチレン単独重合体、アクリロニトリル-スチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂などのスチレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;スチレン/ブタジエン共重合体ゴム、スチレン/イソプレン共重合体ゴムなどのスチレン系エラストマーおよびその水素添加物またはその変性物;天然ゴム;クロロプレンゴム;アクリルゴム;アクリロニトリル・ブタジエンゴム;エピクロロヒドリンゴム;シリコーンゴム;クロロスルホン化ポリエチレン;ウレタンゴム;ポリウレタン系エラストマー;ポリアミド系エラストマー;ポリエステル系エラストマー;軟質塩化ビニル樹脂などが挙げられる。
 上記発泡性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、さらに各種添加剤を含有するものであってもよい。かかる添加剤としては、例えば加工助剤、補強材、充填剤、可塑剤、連通気泡剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、防菌剤、防かび剤、分散剤、着色剤などが挙げられる。
 上記発泡性組成物は、必要に応じて加工助剤を含有してもよい。加工助剤は、加工性の改良、充填剤の分散の促進などの作用を示す。加工助剤としては、例えば、脂肪酸アミドなどが挙げられる。
 加工助剤を含有する場合、上記発泡性組成物中の加工助剤の含有量は、上記樹脂組成物(i)とオレフィン系重合体(ii)の合計100質量部に対して、通常0.1~5質量部、好ましくは0.5~4質量部である。
 補強材および/または充填剤としては、上述の樹脂組成物(i)に添加し得る添加剤として例示したものなどが挙げられる。
 補強材および/または充填剤を含有する場合、上記発泡性組成物中の補強材および/または充填剤の含有量は、上記樹脂組成物(i)とオレフィン系重合体(ii)の合計100質量部に対して、通常10~200質量部、好ましくは20~180質量部、より好ましくは30~160質量部である。補強材および/または充填剤の含有量が上記範囲内であると、成形加工性が良好となり、上記発泡性組成物から得られた架橋発泡体の破断強さなどの力学物性を保持できる。
 可塑剤としては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどの石油系プロセスオイル;芳香族系プロセスオイル;ジオクチルフタレート、ジブチルフタレートなどのフタル酸誘導体;フタル酸ジ2-エチルヘキシル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジノニル、アジピン酸ジ2-エチルヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジノニル等のエステル系の可塑剤;ホワイトオイル;ミネラルオイル;落花生油、ロジンなどの植物油系可塑剤;流動パラフィン;エチレンとα-オレフィンとの液状コオリゴマーなどの合成可塑剤などが挙げられる。
 可塑剤を含有する場合、その含有量は、上記発泡性組成物の総量100質量部に対して好ましくは0.5~200質量部、より好ましくは0.5~100質量部、さらに好ましくは1~50質量部、特に好ましくは1.5~25質量部、最も好ましくは1.5~10質量部である。
 光安定剤、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤としては、例えば上述の樹脂組成物(i)に添加し得る添加剤として例示したものが挙げられる。
 光安定剤、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤のいずれか1つ、又は2つ以上を含有する場合、その含有量は、上記樹脂組成物(i)とオレフィン系重合体(ii)の合計100質量部に対して、通常0.01~10.0質量部、好ましくは0.3~7.0質量部、より好ましくは0.5~5.0量部である。光安定剤、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤の合計含有量が上記範囲内であると、得られる架橋発泡体の表面に析出物(ブルーム)が発生せず、加硫阻害を生じないため好ましい。
[架橋方法]
 上記発泡性組成物中、上記樹脂組成物(i)同士、上記樹脂組成物(i)とオレフィン系重合体(ii)、またはオレフィン系重合体(ii)同士は架橋されていることが好ましい。架橋方法としては、上記樹脂組成物(i)およびオレフィン系重合体(ii)に、架橋剤、架橋助剤および架橋促進剤を適宜添加して混練する方法(架橋方法1)、樹脂架橋法(架橋方法2)、キノイド架橋法(架橋方法3)、活性エネルギー線を用いる方法(架橋方法4)などが挙げられる。
<架橋方法1について>
 本発明の架橋発泡体を得るための上記発泡性組成物では、上記樹脂組成物(i)およびオレフィン系重合体(ii)に、架橋剤、架橋助剤および架橋促進剤を適宜添加して混練することで、上記樹脂組成物(i)の重合体ブロック(B)とオレフィン系重合体(ii)を架橋できる。
 例えば、前記ラジカル発生剤などの架橋剤と共に、必要に応じて、前記多官能性単量体などの架橋助剤と、ジベンゾチアジルジスルフィドおよびテトラメチルチウラムジスルフィド(いわゆるジスルフィド系化合物)などの架橋促進剤を用いてもよい。
 かかる方法で架橋を行う場合、例えば、ラジカル発生剤および必要に応じて他の熱可塑性重合体を含有する上記発泡性組成物を、加熱下で溶融混練する方法などが挙げられる。加熱温度は、好ましくは100~230℃である。溶融混練は、押出機、ニーダー、ロール、プラストグラフなどの装置でバッチ式または連続式で行うことができる。かかる溶融混練工程により架橋反応が進行してもよい。また、架橋発泡体とする場合は、例えば、発泡反応と架橋反応を同時に進行させてもよい。その場合には、上記溶融混練時の加熱温度は、発泡剤の分解温度よりも低い温度で行うことができる。
 また、架橋剤として硫黄または硫黄化合物を用いる場合は、チアゾール類、グアニジン類、ブチルアルデヒド-アニリン反応物、ヘキサメチレンテトラミン-アセトアルデヒド反応物、アルデヒド-アミン系反応物、チウラム系、ジチオカルバミン酸塩系などの架橋促進剤を併用するのが極めて好ましい。
 かかる方法で架橋を行う場合、架橋剤、架橋促進剤などをロール、バンバリーミキサーなどのミキサー類を用いて、好ましくは50~250℃(より好ましくは80~200℃)で混練後、好ましくは60℃以上(より好ましくは90~250℃)で通常1分~2時間(より好ましくは5分~1時間)維持することによって架橋を形成することができる。
<架橋方法2について>
 樹脂架橋法による架橋方法では、架橋剤としてアルキルフェノール樹脂、臭素化アルキルフェノール樹脂などのフェノール系樹脂を用い、架橋助剤として塩化第一錫、塩化第二鉄、有機スルホン酸、ポリクロロプレンまたはクロロスルホン化ポリエチレンなどを用いる。
 かかる方法で架橋を行なう場合、架橋温度については、100~250℃であるのが好ましく、より好ましくは130~220℃である。樹脂架橋を行なう場合は、架橋促進剤を併用するのが極めて好ましい。
<架橋方法3について>
 キノイド架橋法による架橋方法では、架橋剤としてp-キノンジオキシムと二酸化鉛、p,p’-ジベンゾイルキノンジオキシムと四酸化三鉛の組み合わせなどを用いる。
 かかる方法で架橋を行なう場合、架橋温度については、90~250℃であるのが好ましく、より好ましくは110~220℃である。キノイド架橋を行なう場合は、架橋促進剤を併用するのが好ましい。
<架橋方法4について>
 活性エネルギー線による架橋方法で使用し得る活性エネルギー線としては、例えば、粒子線、電磁波、およびこれらの組み合わせが挙げられる。粒子線としては、電子線(EB)、α線などが挙げられ、電磁波としては、紫外線(UV)、可視光線、赤外線、γ線、X線などが挙げられる。これらの中でも、電子線(EB)または紫外線(UV)が好ましい。
 照射時間および照射量に特に制限はなく、架橋の程度に合わせて任意に選択できる。
<発泡性組成物及び架橋発泡体の製造方法>
 上記発泡性組成物の製造方法に特に制限はなく、上記樹脂組成物(i)、オレフィン系重合体(ii)、架橋剤(iii)、発泡剤(iv)、および必要に応じて配合されるその他の成分をヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー、コニカルブレンダーなどの混合機を用いて混合することによって、またはその混合後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、ロール混練機などにより溶融混練することによって製造することができる。溶融混練時の温度は、適宜設定することができるが、通常、好ましくは80~300℃であり、より好ましくは100~250℃である。
 本実施形態に係る架橋発泡体は、上記発泡性組成物を発泡成形して得られる。本発明において、発泡方法としては、発泡剤の分解または反応により発泡させる化学的方法、超臨界発泡、水発泡などの物理的方法などが採用でき、それらの方法を併用してもよい。また、架橋発泡体を製造する方法について特に制限はなく、射出発泡成形、押出発泡成形、プレス発泡成形など、発泡成形に通常用いられる方法が採用できる。
 上記架橋発泡体は、例えば、上記樹脂組成物(i)、オレフィン系重合体(ii)、及び架橋剤(iii)に発泡剤(iv)をドライブレンドしたものを、所望の形状をしたキャビティを備えた金型内に射出発泡成形することにより得られる。あるいは、該混合物を円柱状などの任意の形状に押出発泡成形し、成形物を所定の寸法に切断することにより所望の形状の架橋発泡体を得ることができる。また、上記発泡性組成物を製造する際に各成分および発泡剤を溶融混練したものを用いて発泡成形することもできる。この場合、混練温度は発泡剤の分解温度以下であることが好ましい。
 架橋発泡体の製造方法については、特に制限されない。架橋発泡体の製造方法としては、例えば、溶融発泡成形法、固相発泡成形法などが挙げられる。
 溶融発泡成形法は、加熱溶融させた上記発泡性組成物に気泡を生成させる方法であり、上記発泡性組成物を混練後、上記発泡性組成物中の発泡剤を発泡させながら成形する方法(二段法)、ガスを押出機に吹き込みながら連続成形する方法(一段法)などがあり、具体的には、射出発泡法、押出発泡法などが挙げられる。
 固相発泡法は、上記発泡性組成物を溶融した後、固形化し、その後固形化した発泡性組成物に気泡を生成させる方法であり、具体的には、ビーズ発泡、プレス発泡などが挙げられる。
 上記発泡性組成物を架橋した後に発泡させてもよく、発泡した後に電子線などを照射して架橋させてもよく、発泡させつつ架橋させてもよい。
 架橋発泡体の気泡構造としては、気泡同士が接触していない独立気泡型でもよく、気泡同士が一部接触している連続気泡型でもよい。本明細書においては、連続気泡とは、気泡同士または外部とつながって相互に連続している気泡を連続気泡と称する。
 独立気泡型の架橋発泡体は、水分が浸入しにくく、防水性、防塵性、破断強度などの力学物性に優れる点で好ましい。
 連続気泡型の架橋発泡体は、架橋発泡体を、接着剤などを用いて他部材と接着する際に、接着剤の浸透性が良好であり、特に接着剤が湿気硬化型の接着剤である場合には、連続気泡を通じて湿気を吸収して強固に接着することができるため好ましい。また、連続気泡型の架橋発泡体は、接着剤を接着領域以外の部位に広がるのを防止するダムラバーなどに使用する場合に、架橋発泡体の連続気泡に吸収して接着剤の無用な広がりを確実に防止することができ、湿気硬化型の接着剤などを用いる場合には、連続気泡を通じて空気中の湿気を供給することができるとともに、連続気泡を通じて二酸化炭素などのガスを外部に放出することができるため好ましい。
<架橋発泡体の物性>
 架橋発泡体の見掛け密度(比重)は、好ましくは20~500kg/mである。架橋発泡体の見掛け密度がこの範囲であると、軽量でありながら、優れた制振性、遮音性を発現でき、破断強さなどの力学物性も維持できる。成形性、施工性も維持できる。
 架橋発泡体の見掛け密度は、より好ましくは30~400kg/m、さらに好ましくは70~300kg/m、よりさらに好ましくは110~280kg/m、特に好ましくは120~270kg/mであり、目的の周波数域などに応じて、見掛け密度を適宜設定することも可能である。
 架橋発泡体の発泡倍率は、特に制限はなく、架橋発泡体の発泡倍率は、1.3~30倍であることが好ましい。架橋発泡体の発泡倍率が1.3~3.0倍であるときは、自動車用、船舶用、鉄道車両用、航空機用などの輸送機器のモール、ウェザーストリップスポンジ、グラスランチャンネルのような外装部材として好適に用いることができ、架橋体の発泡倍率が3.0倍を超えて30倍以下である場合には、輸送機器用のダムラバー、建築物用のダムラバー、断熱スポンジとして好適に用いることができる。
 上記架橋発泡体の、-30~+50℃の測定温度におけるtanδのピークトップ強度は、室温付近における制振性を確保しやすくする観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.3以上、より更に好ましくは0.4以上、特に好ましくは0.5以上である。上限に特に制限はないが、製造容易性の観点から、例えば3.0以下である。なお、上述の架橋発泡体のtanδのピークトップ強度は、JIS K6394:2007に準拠して、歪み量1%で、10Hzの周波数で振動を与え、-30℃から+50℃まで2℃/分の定速で昇温することで測定した値である。
 上記架橋発泡体の、JIS K6394:2007に準じて、周波数10Hz、歪み量1%で測定される-20℃における圧縮貯蔵弾性率E’は、低温での柔軟性の観点から、好ましくは100MPa以下、より好ましくは70MPa以下、更に好ましくは50MPa以下、特に好ましくは40MPa以下である。上記圧縮貯蔵弾性率E’の下限に特に制限はないが、力学強度の観点から、例えば0.1MPaである。換言すれば、架橋発泡体の、-20℃における圧縮貯蔵弾性率E’は、好ましくは0.1~100MPaである。
 なお、上記圧縮貯蔵弾性率E’は、より詳細には実施例に記載の方法に従って測定される。
 JIS K6400:2011に従って測定される、上記架橋発泡体の反発弾性率は、衝撃吸収性の観点から、0℃において、好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは20%以下、よりさらに好ましくは15%以下であり、20℃において、好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは20%以下、よりさらに好ましくは16%以下である。
 JIS K7312:1996に従って測定される、上記架橋発泡体の硬度(タイプC)は、柔軟性と力学強度の観点から、0℃において、好ましくは1~80、より好ましくは3~70、更に好ましくは5~60であり、20℃において、好ましくは1~80、より好ましくは3~70、更に好ましくは5~60である。
 以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
<水添ブロック共重合体及び樹脂組成物の物性の測定及び評価>
 下記の製造例で得られた水添ブロック共重合体TPE-1~TPE-7の各種物性の測定と、下記の実施例及び比較例で得られた樹脂組成物の各種物性の測定及び評価は以下の手順で行った。
(重合体ブロック(A)の含有量) 水添ブロック共重合体をCDClに溶解してH-NMR測定[装置:「ADVANCE 400 Nano bay」(Bruker社製)、測定温度:30℃]を行い、スチレンに由来するピーク面積と共役ジエンに由来するピーク面積との比率から、重合体ブロック(A)の含有量を算出した。また、水添ブロック共重合体製造時の各ブロックの重合後のサンプルについても同様の測定を行うことで、重合体ブロック(A)における芳香族ビニル化合物単位含有量を測定した。
(重合体ブロック(B)のビニル結合量)
 水添前のブロック共重合体をCDClに溶解してH-NMR測定[装置:「ADVANCE 400 Nano bay」(Bruker社製)、測定温度:30℃]を行った。イソプレン及びブタジエン由来の構造単位(TPE-1)、イソプレン由来の構造単位(TPE-2、TPE-3、TPE-6、TPE-7)、β-ファルネセン由来の構造単位(TPE-4)、又は、ブタジエン及びβ-ファルネセン由来の構造単位(TPE-5)の全ピーク面積に対する、イソプレン構造単位における3,4-結合単位及び1,2-結合単位、β-ファルネセンにおける3,13-結合単位及び1,2-結合単位並びにブタジエン構造単位における1,2-結合単位に対応するピーク面積の比から、ビニル結合量を算出した。
(重合体ブロック(B)の水素添加率)
 水添ブロック共重合体をCDClに溶解してH-NMR測定[装置:「ADVANCE 400 Nano bay」(Bruker社製)、測定温度:30℃]を行い、β-ファルネセン、イソプレン又はブタジエンの残存オレフィン由来のピーク面積と、水素添加されたβ-ファルネセン、水素添加されたイソプレン、又は水素添加されたブタジエン由来のピーク面積との比から水素添加率を算出した。
(重量平均分子量(Mw))
 下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により、水添ブロック共重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を求めた。また、共役ジエン化合物を添加する前の重合体ブロック(A)のみについても同様の手順でMwを測定した。
<<GPC測定装置及び測定条件>>
・装置    :GPC装置「HLC-8020」(東ソー株式会社製)
・分離カラム :東ソー株式会社製の「TSKgel G4000HX」2本を直列に連結した。
・溶離液   :テトラヒドロフラン
・溶離液流量 :0.7mL/min
・サンプル濃度:5mg/10mL
・カラム温度 :40℃
・検出器:示差屈折率(RI)検出器
・検量線:標準ポリスチレンを用いて作成
(水添ブロック共重合体及び樹脂組成物のtanδ及びせん断貯蔵弾性率G’)
 以下の測定のため、製造例で得られた水添ブロック共重合体、及び、実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を、温度230℃、圧力10MPaで3分間加圧することで、厚み1.0mmの単層シートを作製した。該単層シートを円板形状に切り出し、これを試験シートとした。
 測定には、JIS K7244-10:2005に基づいて、平行平板振動レオメータとして、円板の直径が8mmのゆがみ制御型動的粘弾性装置「ARES-G2」(ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いた。
 上記試験シートによって2枚の平板間の隙間を完全に充填し、歪み量0.1%で、せん断モードで、上記サンプルに1Hzの周波数で振動を与え、-80℃から+100℃まで3℃/分の定速で昇温することで、-30~+50℃の測定温度における、水添ブロック共重合体又は樹脂組成物のtanδのピーク強度の最大値(ピークトップ強度)及び該最大値が得られた温度(ピークトップ温度)を求めた。また同様の手順で、樹脂組成物の0℃、20℃、及び40℃のtanδ、-20℃のせん断貯蔵弾性率(G’)を求めた。
(ガラス転移温度(Tg))
 水添ブロック共重合体のTgは、ティー・エイ・インスツルメント社製DSC250を用いて、-100℃から+80℃まで10℃/minで昇温することにより測定し、DSC曲線のベースラインのシフト位置(具体的には、比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線とDSC曲線との交点)をTgとした。
(メルトフローレート(MFR))
 製造例で得られたブロック共重合体の水素添加物と、実施例及び比較例で得られた樹脂組成物について、JIS K 7210:2014に準じて、メルトインデクサを用い、温度230℃荷重2160gの条件下で、試料の流出速度(g/10min)を測定した。
(バイオベース度)
 実施例及び比較例の樹脂組成物、及び、実施例及び比較例で得られた架橋発泡体について、ASTM D6866-20に準拠してバイオベース度を測定した。具体的には、樹脂組成物又は架橋発泡体を燃焼し、樹脂組成物の燃焼により発生したCOを定量した。定量したCOについて、加速器質量分析計(AMS)を用いて14Cの濃度を測定した。そして、大気中のCOにおける14Cの濃度と、測定した14Cの濃度とを比較してバイオベース度を算出した。
(樹脂組成物におけるドメインの平均アスペクト比)
 実施例2及び比較例1で得られた樹脂組成物から、クライオウルトラミクロトーム(Leica Microsystems GmbH社製EM UC7、EM FC7)を用いて断面出しを行い、その断面の表面を原子間力顕微鏡(AFM)のタッピングモードで観察して位相差画像を得た。
 上記位相差画像から、ドメイン100個についてアスペクト比(長軸の長さ/短軸の長さ)を調べ、その平均値を算出することによって、ドメインの平均アスペクト比を求めた。
(架橋発泡体の発泡倍率)
 実施例と比較例の発泡前後の組成物から、長さ25mm×幅25mm×厚さ2mmの成形表皮が存在しない試験片を切り出し、発泡前後の単位体積あたりの重量から架橋発泡体の発泡倍率を計算した。
(架橋発泡体の比重)
 実施例及び比較例で得られた架橋発泡体の比重を、JIS K7222:2005に準拠して測定した。
(架橋発泡体のtanδ及び圧縮貯蔵弾性率E’)
 以下の測定のため、実施例と比較例で得られた発泡体から直径8mmの厚さ5mmの成形表皮が存在しない試験片を切り出した。
 測定には、JIS K6394:2007に基づいて、動的粘弾性装置「EPLEXOR 500N」(NETZSCH社製)を用いた。
 上記試験片に、歪み量1%で、圧縮モードで10Hzの周波数で振動を与え、-30℃から+50℃まで2℃/分の定速で昇温することで、実施例及び比較例で得られた架橋発泡体の0℃、20℃及び40℃におけるtanδを測定した。また同様の手順で、-20℃における圧縮貯蔵弾性率E’を測定した。
(架橋発泡体の反発弾性率)
 実施例及び比較例で得られた架橋発泡体から、長さ50mm×幅50mm×厚さ20mmの成形表皮が存在しないシートを3枚切り出し、それらを積層した長さ50mm×幅50mm×厚さ60mmの積層体を試験片とした。この試験片をJIS K6400-3:2011に準拠した方法で0℃および20℃で反発弾性試験を行い、反発弾性率を測定した。
(架橋発泡体の硬度)
 JIS K7312:1996に準じて、タイプCデュロメーター(高分子計器株式会社製)を用いて、0℃及び20℃における、実施例及び比較例で得られた架橋発泡体の硬度(タイプC)を測定した。
[製造例1]
<ブロック共重合体の水素添加物TPE-1の製造>
 窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン50kg、アニオン重合開始剤として濃度10.5質量%のsec-ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液57g(sec-ブチルリチウムの実質的な添加量:6.0g)を仕込んだ。
 耐圧容器内を50℃に昇温した後、スチレン(1)0.8kgを加えて1時間重合させ、容器内温度50℃で、ルイス塩基として2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン(DTHFP)42gを加え、イソプレン6.1kg及びブタジエン4.9kgの混合液を加えて2時間重合させ、さらにスチレン(2)0.8kgを加えて1時間重合させることにより、ポリスチレン-ポリ(イソプレン/ブタジエン)-ポリスチレントリブロック共重合体を含む反応液を得た。
 該反応液に、オクチル酸ニッケル及びトリメチルアルミニウムから形成されるチーグラー系水素添加触媒を水素雰囲気下で添加し、水素圧力1MPa、80℃の条件で5時間反応させた。該反応液を放冷及び放圧させた後、水洗により上記触媒を除去し、真空乾燥させることにより、ポリスチレン-ポリ(イソプレン/ブタジエン)-ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物TPE-1を得た。
[製造例2~5]
<ブロック共重合体の水素添加物TPE-2~TPE-5の製造>
 原料及びその使用量を表1に示すものとしたこと以外は製造例1と同様の手順で、水添ブロック共重合体TPE-2~TPE-5を製造した。
[製造例6]
<ブロック共重合体の水素添加物TPE-6の製造>
 窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン50kg、アニオン重合開始剤として濃度10.5質量%のsec-ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液227g(sec-ブチルリチウムの実質的な添加量:23.9g)、ルイス塩基としてテトラヒドロフラン100gを仕込んだ。
 耐圧容器内を50℃に昇温した後、β-ファルネセン7.4kgを加えて2時間重合を行い、引き続いてスチレン(1)3.0kgを加えて1時間重合させ、更にブタジエン4.6kgを加えて1時間重合を行った。続いてこの重合反応液にカップリング剤として安息香酸フェニル100gを加え1時間反応させることで、ポリ(β-ファルネセン)-ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレン-ポリ(β-ファルネセン)ペンタブロック共重合体を含む反応液を得た。
 該反応液に、オクチル酸ニッケル及びトリメチルアルミニウムから形成されるチーグラー系水素添加触媒を水素雰囲気下で添加し、水素圧力1MPa、80℃の条件で5時間反応させた。該反応液を放冷及び放圧させた後、水洗により上記触媒を除去し、真空乾燥させることにより、ポリ(β-ファルネセン)-ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレン-ポリ(β-ファルネセン)ペンタブロック共重合体の水素添加物TPE-6を得た。
[比較製造例1~2]
<ブロック共重合体の水素添加物TPE-7~TPE-8の製造>
 原料及びその使用量を表1に示すものとしたこと以外は製造例1と同様の手順で、水添ブロック共重合体TPE-7~TPE-8を製造した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
 各ブロック共重合体の水素添加物について、上述した測定手順に従って各種物性の測定を行った。測定結果をその組成とともに表2に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
 なお、表2において、「Ip」はイソプレンを、「Bd」はブタンジエンを、「Far」はβ-ファルネセンを、それぞれ表す。
 また、表2において、「No flow」は、流動性が乏しくメルトフローレートが測定できなかったことを意味する。
 表2に示されるように、水添ブロック共重合体TPE-1~TPE-4が上述した条件[1]を満たし、水添ブロック共重合体TPE-5及びTPE-6が上述した条件[2]及び[4]を満たす。
 そして、水添ブロック共重合体TPE-1~TPE-4のtanδのピークトップ強度は1.0以上の値を示す。
 水添ブロック共重合体TPE-1~TPE-4のtanδのピークトップ温度は、-20~+45℃の範囲にあり、水添ブロック共重合体TPE-5~TPE-6のtanδのピークトップ温度は、-70~-30℃の範囲にある。
 一方、比較製造例のTPE-7とTPE-8は、上述した条件[2]を満たしているが、β-ファルネセンを含んでおらず、上述した条件[4]を満たさない。
[実施例1]
 水添ブロック共重合体TPE-1を90質量部、及び、水添ブロック共重合体TPE-6を10質量部使用し、二軸押出機(Coperion社製「ZSK26Mc」)を用いて、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数300rpmの条件下で溶融混練することにより、樹脂組成物を製造した。
[実施例2~4、比較例1~2]
 樹脂組成を表3に示すものとした以外は実施例1と同様の手順で、樹脂組成物を製造した。
 各樹脂組成物について、上述した測定手順に従って各種物性の測定を行った。測定結果をその組成とともに表3に示す。また、実施例2の樹脂組成物のAFM画像を図1に、比較例1の樹脂組成物のAFM画像を図2に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
 表3に示されるように、実施例1の樹脂組成物は成分(x)と成分(y)を質量比90/10の割合で含み、実施例2の樹脂組成物は成分(x)と成分(y)を質量比70/30の割合で含み、実施例3の樹脂組成物は成分(x)と成分(y)を質量比50/50の割合で含む。そして、いずれも10℃付近にtanδのピークを有し、そのピークトップ強度が高く、また、室温付近でtanδの値が大きい。実施例4の樹脂組成物は、成分(x)と成分(y)を質量比70/30の割合で含み、30℃付近にtanδのピークを有し、そのピークトップ強度が高い。また、いずれの樹脂組成物もメルトフローレートが3g/10min以上の値を示し、特に実施例3及び実施例4の樹脂組成物はメルトフローレートの値が著しく大きい。
 また、実施例2の樹脂組成物は、図1に示すように比較的アスペクト比が小さい状態でマトリクス中にドメインが分散しており、その平均アスペクト比は1.3であった。
 つまり、実施例1~4の樹脂組成物は、上述した条件[1]~[4]を満たしており、室温付近で高い制振性を発現し得るとともに、良好な成形性を有していることが判る。
 一方、成分(y)を含まない比較例1の樹脂組成物は、成分(x)を同じ割合で含む実施例2の樹脂組成物に比べて、tanδのピークトップ強度が低く、20℃におけるtanδの値も小さく、室温付近での制振性が実施例2よりも劣ることが判る。また、実施例2の樹脂組成物に比べてメルトフローレートの値が小さく、成形性が実施例2の樹脂組成物よりも劣ることが判る。
 また、比較例2の樹脂組成物は、成分(x)を同じ割合で含む実施例3の樹脂組成物に比べて、メルトフローレートの値が非常に小さく、成形性が実施例3の樹脂組成物よりも劣ることが判る。また、実施例3の樹脂組成物に比べて、20℃におけるtanδの値が小さく、室温付近での制振性が実施例3よりも劣ることが判る。
 また、比較例1の樹脂組成物は、図2に示すように、ドメインのサイズが実施例2の樹脂組成物に比べて大きく、ドメインの平均アスペクト比は5であった。また、図2から、成分(x)のマトリクス中に他の樹脂成分が筋状に存在しており、構造上の異方性が存在していることが判る。
[実施例5]
 水添ブロック共重合体TPE-1を30質量部、及び、水添ブロック共重合体TPE-6を70質量部使用し、二軸押出機(Coperion社製「ZSK26Mc」)を用いて、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数300rpmの条件下で溶融混練することにより、樹脂組成物を製造した。
[実施例6~8、比較例3~4]
 樹脂組成を表4に示すものとした以外は実施例5と同様の手順で、樹脂組成物を製造した。
 各樹脂組成物について、上述した測定手順に従って各種物性の測定を行った。測定結果をその組成とともに表4に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
 表4に示されるように、実施例5~7の樹脂組成物は成分(x)と成分(y)を質量比30/70の割合で含み、実施例8の樹脂組成物は成分(x)と成分(y)を質量比20/80の割合で含む。そして、いずれも高いtanδのピークトップ強度を示すとともに、-20℃のG’の値が低く、低温での柔軟性に優れる。つまり、実施例5~8の樹脂組成物は、上述した条件[1]~[4]を満たしており、室温付近で高い制振性を発現し得るとともに、低温での柔軟性に優れていることが判る。また、実施例5、6の樹脂組成物はメルトフローレートの値が非常に大きく、成分(y)の種類を選択することによって、室温付近の制振性及び低温での柔軟性に加えて、成形性をも高められることが判る。
 一方、成分(y)を含まない比較例3の樹脂組成物は、tanδのピークトップ温度が実施例の樹脂組成物より高い温度域にシフトし、tanδのピークトップ強度が実施例の樹脂組成物より低くなっている。そして、成分(x)としてTPE-1を同じ割合で含む実施例5、7に比べて、20℃におけるtanδの値が小さく、室温付近での制振性が実施例5、7の樹脂組成物よりも劣ることが判る。更に、成分(x)を同じ割合で含む実施例5の樹脂組成物に比べてメルトフローレートの値が小さく、実施例5に比べて成形性に劣ることが判る。
 成分(y)を含まず成分(x)のみからなる比較例4の樹脂組成物は、-20℃のG’の値が非常に大きく、低温での柔軟性が乏しいことが判る。
[実施例9、比較例5~6]
 下記の表5に示す配合組成の割合で、成分(x)、成分(y)、エチレン-酢酸ビニル樹脂、発泡助剤、充填剤、架橋助剤を用いて、ニーダーにより、温度120℃で溶融混合してマスターバッチを得た。
 次いで、得られたマスターバッチに、表5に示す配合組成の割合で、架橋剤、及び発泡剤を加え、ロール温度110℃でロール混練して発泡性組成物を得た。得られた発泡性組成物を、厚さ10mmの金型を用いて165℃、10MPaで20分間プレス処理して架橋発泡体を得た。
 こうして得られた架橋発泡体の物性の測定と評価を上述した手順に従って行った。
 各架橋発泡体の作製に用いた成分は以下のとおりである。
(成分(x))
・TPE-1
(成分(y))
・TPE-5
・TPE-6
(エチレン-酢酸ビニル樹脂)
・EVA-1:三井・ダウポリケミカル株式会社製「EVAFLEX EV40LX」
・EVA-2:三井・ダウポリケミカル株式会社製「EVAFLEX EV460」
(充填剤)
・炭酸カルシウム
(架橋剤)
・DCP-40:日油株式会社製「パークミルD-40」
(架橋助剤)
・TAIC-60:三菱ケミカル株式会社製「タイクM-60」
(発泡剤)
・ADCA:三協化成株式会社製アゾ化合物発泡剤「セルマイクCE」
(発泡助剤)
・ステアリン酸
・酸化亜鉛
 各架橋発泡体について、上述した測定手順に従って各種物性の測定を行った。測定結果をその組成とともに表5に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006
 表5に示されるように、実施例9の架橋発泡体は、成分(x)と成分(y)を質量比30/40の割合で含む。そして、高いtanδのピークトップ強度を示すとともに、-20℃のE’の値が低く、0℃及び20℃の反発弾性率が小さく、0℃における硬度が小さい。つまり、実施例9の架橋発泡体は、上述した条件[1]~[4]を満たしており、室温付近で高い制振性を発現し得るとともに、低温での柔軟性に優れていることが判る。
 一方、成分(y)を含んでおらず、成分(x)を実施例9の成分(x)及び成分(y)の合計と同量含む比較例5の架橋発泡体は、0℃におけるtanδの値が実施例9の架橋発泡体よりも小さく、低温での制振性が劣っていることが判る。また、-20℃のE’の値が非常に大きく、かつ、0℃における硬度が非常に高く、実施例9の架橋発泡体にくらべて低温での柔軟性が劣っていることが判る。
 また、成分(x)を含んでいない比較例6及び7の架橋発泡体は、0~40℃におけるtanδの値が実施例9の架橋発泡体よりも小さく、低温~室温付近での制振性が劣っていることが判る。また、0℃及び20℃における反発弾性率の値が大きく、実施例9の架橋発泡体にくらべて低温での柔軟性が劣っていることが判る。
 本発明の樹脂組成物は、インナーソール、ソックライナー、ミッドソール、アウターソール等の靴底用部材や、自動車用筐体、自動車に搭載される各種部品やそのハウジング等に用いることができる。また、家電分野におけるテレビ、ブルーレイレコーダーやHDDレコーダーなどの各種レコーダー類、プロジェクター、ゲーム機、デジタルカメラ、ホームビデオ、アンテナ、スピーカー、電子辞書、ICレコーダー、FAX、コピー機、電話機、ドアホン、炊飯器、電子レンジ、オーブンレンジ、冷蔵庫、食器洗い機、食器乾燥機、IHクッキングヒーター、ホットプレート、掃除機、洗濯機、充電器、ミシン、アイロン、乾燥機、電動自転車、空気清浄機、浄水器、電動歯ブラシ、照明器具、エアコン、エアコンの室外機、除湿機、加湿機などの各種電気製品等に用いることができる。
 

Claims (20)

  1.  成分(x)として、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック(A-1)と共役ジエン化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック(B-1)とを有するブロック共重合体の水素添加物(X)と、
     成分(y)として、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック(A-2)と共役ジエン化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロック(B-2)とを有するブロック共重合体(Y0)又はその水素添加物(Y)と、を含み、下記の条件[1]~[4]を満たす樹脂組成物。
    [1]成分(x)のガラス転移温度が-40℃以上である。
    [2]成分(y)のガラス転移温度が-50℃以下である。
    [3]前記樹脂組成物中の、成分(y)の質量Myに対する成分(x)の質量Mxの比Mx/Myが、1/99~99/1である。
    [4]重合体ブロック(B-2)がβ-ファルネセンに由来する構造単位を含む。
  2.  成分(x)における重合体ブロック(A-1)の含有量が23質量%以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3.  成分(x)の水素添加率が85モル%以上である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4.  成分(x)の重量平均分子量が100,000~250,000である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  5.  成分(x)の、JIS K 7210:2014に準拠して測定した230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが20g/10min以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  6.  重合体ブロック(B-1)がイソプレンに由来する構造単位を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  7.  重合体ブロック(B-1)のビニル結合量が50モル%以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  8.  成分(y)中の重合体ブロック(A-2)の含有量が35質量%以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  9.  成分(y)がブロック共重合体の水素添加物(Y)であり、該ブロック共重合体の水素添加物(Y)の水素添加率が85モル%以上である、請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  10.  成分(y)の重量平均分子量が40,000~400,000である、請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  11.  成分(y)の、JIS K 7210:2014に準拠して測定した230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが10g/10min以上である、請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  12.  前記Mx/Myが、45/55~80/20である、請求項1~11のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  13.  前記Mx/Myが、20/80~37/63である、請求項1~11のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  14.  前記樹脂組成物の、ASTM D6866-20に準拠して測定したバイオベース度が1~80質量%である、請求項1~13のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  15.  前記樹脂組成物の、JIS K 7210:2014に準拠して測定した230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが100g/10min以下である、請求項1~14のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  16.  前記樹脂組成物の、JIS K7244-10:2005に準拠して、歪み量0.1%、周波数1Hz、測定温度-30~+50℃、昇温速度3℃/分、せん断モード、の条件で測定したtanδのピークトップ強度が0.4以上である、請求項1~15のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  17.  成分(x)中のβ-ファルネセンに由来する構造単位の含有量が、成分(y)中のβ-ファルネセンに由来する構造単位の含有量より小さい、請求項1~16のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  18.  前記樹脂組成物において、成分(x)及び成分(y)のうち一方をマトリクスとし、成分(x)及び成分(y)のうち他方が前記マトリクス中に分散するドメインが形成されており、前記ドメインの平均アスペクト比が1.0~3.0である、請求項1~17のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  19.  請求項1~18のいずれか1項に記載の樹脂組成物(i)と、
     エチレン-プロピレン-ジエン共重合体ゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びポリエチレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種のオレフィン系重合体(ii)と、
     架橋剤(iii)と、
     発泡剤(iv)と、を含む発泡性組成物。
  20.  請求項19に記載の発泡性組成物の架橋発泡体。
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