本開示の第1の態様は、ベーパーチャンバ用のウィックシートであって、第1本体面と、前記第1本体面とは反対側に位置する第2本体面と、枠体部と、前記枠体部内に、互いに離間して設けられた複数のランド部と、を備え、前記枠体部と前記ランド部との間、又は前記複数のランド部同士の間に、前記第1本体面と前記第2本体面とを貫通し、作動流体の蒸気が通る蒸気通路が形成され、少なくとも1つの前記ランド部の前記第2本体面側に、前記蒸気通路と連通して液状の前記作動流体が通る液流路部が形成され、前記複数のランド部のうち少なくとも1つのランド部に、前記蒸気通路の延伸方向端部が接しており、当該ランド部の前記第1本体面側であって、前記蒸気通路の延伸方向端部が接する接続領域に、当該蒸気通路と連通する第1本体面側流路が形成されている、ウィックシートである。
本開示の第2の態様は、上述した第1の態様のウィックシートにおいて、前記接続領域の、前記蒸気通路の延伸方向端部が接する側とは反対側に、別の蒸気通路が存在しても良い。
本開示の第3の態様は、上述した第1の態様又は第2の態様のウィックシートにおいて、前記ウィックシート上には、熱源が配置される蒸発領域が存在し、前記第1本体面側流路は、前記ランド部に沿って前記蒸発領域まで連続的に形成されていても良い。
本開示の第4の態様は、上述した第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つのウィックシートにおいて、前記第1本体面側流路は、前記蒸気通路に沿って延びる他のランド部にも形成されていても良い。
本開示の第5の態様は、上述した第1の態様乃至第4の態様のいずれか1つのウィックシートにおいて、前記蒸気通路の延伸方向端部が接する接続領域において、前記ランド部と前記蒸気通路とが平面視で非直角に交差しても良い。
本開示の第6の態様は、上述した第1の態様乃至第5の態様のいずれか1つのウィックシートにおいて、前記接続領域は、前記ランド部が湾曲する部分に位置しても良い。
本開示の第7の態様は、上述した第1の態様乃至第6の態様のいずれか1つのウィックシートにおいて、前記蒸気通路は、延伸方向端部に向けて徐々に幅が狭くなる形状を有しても良い。
本開示の第8の態様は、上述した第1の態様乃至第7の態様のいずれか1つのウィックシートにおいて、前記複数のランド部のうち少なくとも2つのランド部が合流し、この合流した部分で前記蒸気通路の延伸方向端部が前記ランド部に接していても良い。
本開示の第9の態様は、上述した第1の態様乃至第4の態様のいずれか1つのウィックシートにおいて、前記蒸気通路の延伸方向端部が前記ランド部に接する位置において、当該蒸気通路と前記ランド部とが平面視で直交しても良い。
本開示の第10の態様は、作動流体が封入されたベーパーチャンバであって、第1シートと、第2シートと、前記第1シートと前記第2シートとの間に介在された、上述した第1の態様乃至第9の態様のいずれか1つのウィックシートと、を備えた、ベーパーチャンバである。
本開示の第11の態様は、ハウジングと、前記ハウジング内に収容されたデバイスと、前記デバイスに熱的に接触した、上述した第10の態様のベーパーチャンバと、を備えた、電子機器である。
本開示の第1の態様乃至第11の態様によれば、ベーパーチャンバ内の広い領域に作動蒸気を行き渡らせることができる。
本開示の第12の態様は、ベーパーチャンバ用のウィックシートであって、作動流体の蒸気が通る蒸気通路と、前記蒸気通路と連通して液状の前記作動流体が通る液流路部と、を備え、前記ウィックシート上には、第1の熱源が配置される第1熱源領域と、第2の熱源が配置される第2熱源領域とが配置され、前記第1熱源領域と前記第2熱源領域とは、前記第1熱源領域と前記第2熱源領域との中心間距離の2倍以下の長さの、少なくとも1本の連結蒸気通路によって互いに接続されているか、又は、前記第1熱源領域と前記第2熱源領域との中心間距離の2倍以下の長さの、少なくとも1本の連結液流路によって互いに接続されている、ウィックシートである。
本開示の第13の態様は、上述した第12の態様のウィックシートにおいて、ベーパーチャンバ用のウィックシートであって、作動流体の蒸気が通る蒸気通路と、前記蒸気通路と連通して液状の前記作動流体が通る液流路部と、を備え、前記ウィックシート上には、第1の熱源が配置される第1熱源領域と、第2の熱源が配置される第2熱源領域とが配置され、前記第1熱源領域と前記第2熱源領域とは、少なくとも1本の連結蒸気通路と、少なくとも1本の連結液流路とによって互いに接続されている。
本開示の第14の態様は、上述した第12の態様又は第13の態様のウィックシートにおいて、前記蒸気通路は、前記第1熱源領域及び前記第2熱源領域のうちいずれか一方に接続され、他方に接続されていない単独蒸気通路を含んでも良い。
本開示の第15の態様は、上述した第12の態様乃至第14の態様のいずれか1つのウィックシートにおいて、前記第1熱源領域と前記第2熱源領域とは、少なくとも1本の連結蒸気通路によって互いに接続され、前記蒸気通路は、前記連結蒸気通路の途中に接続された分岐蒸気通路を含んでも良い。
本開示の第16の態様は、上述した第12の態様乃至第15の態様のいずれか1つのウィックシートにおいて、前記液流路部は、前記第1熱源領域及び前記第2熱源領域のうちいずれか一方に接続され、他方に接続されていない単独液流路を含んでも良い。
本開示の第17の態様は、上述した第12の態様乃至第16の態様のいずれか1つのウィックシートにおいて、前記第1熱源領域と前記第2熱源領域とは、少なくとも1本の連結液流路によって互いに接続され、前記液流路部は、前記連結液流路の途中に接続された分岐液流路を含んでも良い。
本開示の第18の態様は、上述した第17の態様のウィックシートにおいて、前記分岐液流路が前記連結液流路との接続部において湾曲しており、前記分岐液流路と前記連結液流路との前記接続部には、液流路が存在しない接続凹部が存在しても良い。
本開示の第19の態様は、上述した第17の態様のウィックシートにおいて、前記分岐液流路が前記連結液流路との接続部において湾曲しており、前記分岐液流路と前記連結液流路との前記接続部には、接続液流路が存在しても良い。
本開示の第20の態様は、上述した第12の態様乃至第19の態様のいずれか1つのウィックシートにおいて、前記ウィックシート上には、第3の熱源が配置される第3熱源領域が配置され、前記第3熱源領域と、前記第1熱源領域又は前記第2熱源領域とは、少なくとも1本の前記連結蒸気通路、又は、少なくとも1本の前記連結液流路とによって互いに接続されていても良い。
本開示の第21の態様は、上述した第12の態様乃至第20の態様のいずれか1つのウィックシートにおいて、前記ウィックシート上には、第3の熱源が配置される第3熱源領域が配置され、前記第2熱源領域と前記第3熱源領域とは、少なくとも1本の前記連結蒸気通路、又は、少なくとも1本の前記連結液流路によって互いに接続され、前記第3熱源領域と前記第1熱源領域とは、少なくとも1本の前記連結蒸気通路、又は、少なくとも1本の前記連結液流路によって互いに接続されていても良い。
本開示の第22の態様は、上述した第12の態様乃至第21の態様のいずれか1つのウィックシートにおいて、前記蒸気通路は、前記連結蒸気通路の途中に接続された少なくとも2本の分岐蒸気通路を含み、前記少なくとも2本の分岐蒸気通路のうち、一方の分岐蒸気通路は、前記ウィックシートの面方向外側に向けて延びており、他方の分岐蒸気通路は、前記ウィックシートの面方向内側に向けて延びていても良い。
本開示の第23の態様は、作動流体が封入されたベーパーチャンバであって、少なくとも1つのシートと、前記シートに積層された、上述した第12の態様乃至第22の態様のいずれか1つのウィックシートと、を備えた、ベーパーチャンバである。
本開示の第24の態様は、作動流体が封入されたベーパーチャンバであって、作動流体の蒸気が通る蒸気通路と、前記蒸気通路と連通して液状の前記作動流体が通る液流路部と、を備え、第1の熱源が配置される第1熱源領域と、第2の熱源が配置される第2熱源領域とが配置され、前記第1熱源領域と前記第2熱源領域とは、前記第1熱源領域と前記第2熱源領域との中心間距離の2倍以下の長さの、少なくとも1本の連結蒸気通路によって互いに接続されているか、又は、前記第1熱源領域と前記第2熱源領域との中心間距離の2倍以下の長さの、少なくとも1本の連結液流路によって互いに接続されている、ベーパーチャンバである。
本開示の第25の態様は、作動流体が封入されたベーパーチャンバであって、作動流体の蒸気が通る蒸気通路と、前記蒸気通路と連通して液状の前記作動流体が通る液流路部と、を備え、第1の熱源が配置される第1熱源領域と、第2の熱源が配置される第2熱源領域とが配置され、前記第1熱源領域と前記第2熱源領域とは、少なくとも1本の連結蒸気通路と、少なくとも1本の連結液流路とによって互いに接続されている、ベーパーチャンバである。
本開示の第26の態様は、ハウジングと、前記ハウジング内に収容された前記第1の熱源及び前記第2の熱源と、前記第1の熱源及び前記第2の熱源に熱的に接触した、上述した第23の態様乃至第25の態様のいずれか1つのベーパーチャンバと、を備えている。
本開示の第12の態様乃至第26の態様によれば、熱源からの熱をベーパーチャンバの面内で均一に行き渡らせることができる。
(第1の実施の形態)
以下、図面を参照して第1の実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺及び縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件及び物理的特性並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度並びに物理的特性の値等については、厳密な意味に縛られない。これらの用語又は数値は、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。さらに、図面においては、明瞭にするために、同様の機能を期待し得る複数の部分の形状を、規則的に記載しているが、厳密な意味に縛られることなく、当該機能を期待できる範囲内で、当該部分の形状は互いに異なっていてもよい。また、図面においては、部材同士の接合面などを示す境界線を、便宜上、単なる直線で示している。境界線は、厳密な直線であることに縛られることはない。所望の接合性能を期待できる範囲内で、当該境界線の形状は任意である。
図1乃至図9を用いて、本実施の形態におけるベーパーチャンバ、ベーパーチャンバ用のウィックシート及び電子機器について説明する。本実施の形態におけるベーパーチャンバ1は、電子機器Eに収容された熱源(発熱体)としてのデバイスDを冷却するために、電子機器Eに搭載される装置である。デバイスDの例としては、携帯端末やタブレット端末といったモバイル端末等で使用される、発熱を伴う電子デバイス(被冷却装置)が挙げられる。発熱を伴う電子デバイスとしては、中央演算処理装置(CPU)、発光ダイオード(LED)、パワー半導体等が挙げられる。
ここではまず、本実施の形態によるベーパーチャンバ1が搭載される電子機器Eについて、タブレット端末を例にとって説明する。図1に示すように、電子機器E(例えばタブレット端末)は、ハウジングHと、ハウジングH内に収容されたデバイスDと、ベーパーチャンバ1と、を備えている。図1に示す電子機器Eでは、ハウジングHの前面にタッチパネルディスプレイTDが設けられている。ベーパーチャンバ1は、ハウジングH内に収容されて、デバイスDに熱的に接触するように配置される。これにより、電子機器Eの使用時にデバイスDで発生する熱をベーパーチャンバ1が受けることができる。ベーパーチャンバ1が受けた熱は、後述する作動流体2a、2bを介してベーパーチャンバ1の外部に放出される。このようにして、デバイスDは効果的に冷却される。電子機器Eがタブレット端末である場合には、デバイスDは、中央演算処理装置等に相当する。
次に、本実施の形態によるベーパーチャンバ1について説明する。図2及び図3に示すように、ベーパーチャンバ1は、作動流体2a、2bが封入された密封空間3を有している。ベーパーチャンバ1は、密封空間3内の作動流体2a、2bが相変化を繰り返すことにより、上述した電子機器EのデバイスDを効果的に冷却するように構成されている。作動流体2a、2bの例としては、純水、エタノール、メタノール、アセトン等、及びそれらの混合液が挙げられる。なお、作動流体2a、2bは、凍結膨張性を有していてもよい。すなわち、作動流体2a、2bは、凍結時に膨張する流体であってもよい。凍結膨張性を有する作動流体2a、2bの例としては、純水、又は純水にアルコールなどの添加物を加えた水溶液等が挙げられる。
図2及び図3に示すように、ベーパーチャンバ1は、下側シート10(第1シート)と、上側シート20(第2シート)と、ベーパーチャンバ用のウィックシート(以下、単にウィックシート30と記す)と、を備えている。ウィックシート30は、下側シート10と上側シート20との間に介在されている。本実施の形態によるベーパーチャンバ1は、下側シート10、ウィックシート30及び上側シート20が、この順番で積層されている。
ベーパーチャンバ1は、概略的に薄い平板状に形成されている。ベーパーチャンバ1の平面形状は任意であるが、図2に示すような矩形状であってもよい。ベーパーチャンバ1の平面形状は、例えば、1辺が50mm以上200mm以下で他の辺が150mm以上600mm以下の長方形であってもよく、1辺が70mm以上300mm以下の正方形であってもよく、ベーパーチャンバ1の平面寸法は任意である。本実施の形態では、一例として、ベーパーチャンバ1の平面形状が、後述するX方向を長手方向とする矩形状である例について説明する。この場合、図2に示すように、下側シート10、上側シート20及びウィックシート30は、ベーパーチャンバ1と同様の平面形状を有していてもよい。なお、ベーパーチャンバ1の平面形状は、矩形状に限られることはなく、円形状、楕円形状、L字形状、T字形状、U字形状など、任意の形状とすることができる。
図2に示すように、ベーパーチャンバ1は、作動流体2a、2bが蒸発する蒸発領域SRと、作動流体2a、2bが凝縮する凝縮領域CRと、を有している。
蒸発領域SRは、平面視で熱源であるデバイスDと重なる領域であり、デバイスDが取り付けられる領域である。蒸発領域SRは、ベーパーチャンバ1の任意の場所に配置できる。本実施の形態においては、ベーパーチャンバ1のX方向における一側(図2における左側)に、蒸発領域SRが形成されている。蒸発領域SRにデバイスDからの熱が伝わり、この熱によって液状の作動流体(適宜、作動液2bと記す)が蒸発領域SRにおいて蒸発する。デバイスDからの熱は、平面視でデバイスDに重なる領域だけではなく、当該領域の周辺にも伝わり得る。このため、蒸発領域SRは、平面視で、デバイスDに重なっている領域とその周辺の領域とを含む。ここで平面視とは、ベーパーチャンバ1がデバイスDから熱を受ける面(上側シート20の後述する第2上側シート面20b)及び受けた熱を放出する面(下側シート10の後述する第1下側シート面10a)に直交する方向から見た状態である。すなわち平面視とは、例えば、図2に示すように、ベーパーチャンバ1を上方から見た状態、又は下方から見た状態に相当している。
凝縮領域CRは、平面視で熱源であるデバイスDと重ならない領域であって、主として作動蒸気2aが熱を放出して凝縮する領域である。凝縮領域CRは、蒸発領域SRの周囲の領域ということもできる。凝縮領域CRにおいて作動蒸気2aからの熱が下側シート10に放出され、作動蒸気2aが凝縮領域CRにおいて冷却されて凝縮する。
なお、ベーパーチャンバ1がモバイル端末内に設置される場合、モバイル端末の姿勢によっては、上下関係が崩れる場合もある。しかしながら、本実施の形態では、便宜上、デバイスDから熱を受けるシートを上述の上側シート20と称し、受けた熱を放出するシートを上述の下側シート10と称する。このため、下側シート10が下側に配置され、上側シート20が上側に配置された状態で、以下説明する。
図3に示すように、下側シート10は、ウィックシート30とは反対側に位置する第1下側シート面10aと、第1下側シート面10aとは反対側(すなわちウィックシート30の側)に位置する第2下側シート面10bと、を有している。下側シート10は、全体的に平坦状に形成されていてもよく、下側シート10は全体的に一定の厚さを有していてもよい。この第1下側シート面10aに、モバイル端末等のハウジングの一部を構成するハウジング部材Haが取り付けられる。第1下側シート面10aの全体が、ハウジング部材Haで覆われてもよい。
図3に示すように、上側シート20は、ウィックシート30の側に設けられた第1上側シート面20aと、第1上側シート面20aとは反対側に位置する第2上側シート面20bと、を有している。上側シート20は、全体的に平坦状に形成されていてもよく、上側シート20は全体的に一定の厚さを有していてもよい。この第2上側シート面20bに、上述のデバイスDが取り付けられる。
図3に示すように、ウィックシート30は、蒸気流路部50と、蒸気流路部50に隣接して配置された液流路部60と、ウィックシート30の厚み方向において液流路部60の反対側に配置された第1本体面側流路70と、を備えている。またウィックシート30は、第1本体面31aと、第1本体面31aとは反対側に位置する第2本体面31bと、を有している。第1本体面31aは、下側シート10の側に配置されており、第2本体面31bは、上側シート20の側に配置されている。
下側シート10の第2下側シート面10bとウィックシート30の第1本体面31aとは、拡散接合で、互いに恒久的に接合されていてもよい。同様に、上側シート20の第1上側シート面20aとウィックシート30の第2本体面31bとは、拡散接合で、互いに恒久的に接合されていてもよい。なお、下側シート10、上側シート20及びウィックシート30は、拡散接合ではなく、恒久的に接合できれば、ろう付け等の他の方式で接合されていてもよい。なお、「恒久的に接合」という用語は、厳密な意味に縛られることはない。「恒久的に接合」とは、ベーパーチャンバ1の動作時に、密封空間3の密封性を維持可能な程度に、下側シート10とウィックシート30との接合を維持できるとともに、上側シート20とウィックシート30との接合を維持できる程度に接合されていることを意味する。
本実施の形態によるウィックシート30は、図3乃至図5に示すように、平面視で矩形枠状に形成された枠体部32と、枠体部32内に設けられたランド部33と、を有している。枠体部32及びランド部33は、後述するエッチング工程においてエッチングで除去されることなく、ウィックシート30の材料が残る部分である。本実施の形態では、枠体部32は、平面視で、矩形枠状に形成されているが、これに限らず、円形枠状、楕円形枠状、L字形枠状、T字形枠状、U字形枠状など、任意の枠形状とすることができる。枠体部32の内側に、蒸気流路部50が画定されている。すなわち、枠体部32の内側であって、ランド部33の周囲を作動蒸気2aが流れるようになっている。
本実施の形態では、ランド部33は、平面視で細長状に延びていてもよい。ランド部33の平面形状は、細長の矩形形状、円弧、U字又はS字等の曲線状、V字形又はL字形等の屈曲した線状等、任意の形状とすることができる。図4及び図5においては、複数のランド部33は、平面視でX方向(第1方向)に一直線状に延びるもの(第2ランド部33B、第3ランド部33C)と、直線状の部分と略S字状に湾曲した部分とから構成されるもの(第1ランド部33A)と、を含む。また、各ランド部33は、ランド部33の幅方向において他のランド部33から離間して配置されていてもよい。各ランド部33の周囲を作動蒸気2aが流れて、凝縮領域CRに向かって輸送されるように構成されている。これにより、作動蒸気2aの流れが妨げられることを抑制している。ランド部33の幅w1(図3参照)は、例えば、30μm以上3000μm以下であってもよい。ここで、ランド部33の幅w1は、ランド部33の延伸方向に直交する方向(幅方向)におけるランド部33の寸法であって、ランド部33の最も太い位置(例えば、後述する突起部55が存在する位置)における寸法を意味している。
枠体部32及び各ランド部33は、下側シート10に拡散接合されるとともに、上側シート20に拡散接合される。これにより、ベーパーチャンバ1の機械的強度を向上させている。後述する蒸気通路51の第1壁面53a及び第2壁面54aは、ランド部33の側壁を構成している。ウィックシート30の第1本体面31a及び第2本体面31bは、枠体部32及び各ランド部33にわたって、平坦状に形成されていてもよい。
図4及び図5に示すように、複数のランド部33は、第1ランド部33Aと、第2ランド部33Bと、第3ランド部33Cとを含む。第1ランド部33A、第2ランド部33B及び第3ランド部33Cは、いずれも作動液2bが通る液流路部60を有するが、第1ランド部33A、第2ランド部33B及び第3ランド部33Cのいずれかが液流路部60を有さなくても良い。第1ランド部33A、第2ランド部33B及び第3ランド部33Cは、それぞれ一直線状に延びていても良く、あるいは、円弧、S字等の曲線状、V字形、L字形等の屈曲した線状等、任意の形状を有していても良い。なお、本明細書において、第1ランド部33Aと、第2ランド部33Bと、第3ランド部33Cとをまとめて、単にランド部33ともいう。
第1ランド部33Aは、蒸発領域SR側から延びるとともに、その延伸方向の途中に第2ランド部33B又は第3ランド部33Cが接続されている。第1ランド部33Aは、その延伸方向の一端側(X方向マイナス側)が蒸発領域SRと重なる。第1ランド部33Aの延伸方向の他端側(X方向プラス側)は、蒸発領域SRから面方向外側へ離れた位置にある凝縮領域CRに存在することが好ましく、例えば後述する支持部39で終端していても良い。この場合、第1ランド部33Aには1つ又は複数の第2ランド部33B、及び/又は、1つ又は複数の第3ランド部33Cが接続されている。本実施の形態において、第1ランド部33Aは、略S字状に湾曲する部分を途中に有しつつ、全体として平面視でX方向に延びている。また本実施の形態において、第1ランド部33Aは複数(2本)設けられており、これら複数の第1ランド部33Aが互いに略平行に配置されている。なお、第1ランド部33Aの延伸方向の他端が、さらに他の第1ランド部33Aに接続されていても良い。
第2ランド部33Bは、蒸発領域SR側から延びるとともに、第1ランド部33Aに接続されている。すなわち第2ランド部33Bは、その延伸方向の一端側(X方向マイナス側)が蒸発領域SRと重なり、延伸方向の他端側(X方向プラス側)が第1ランド部33Aに接続されている。本実施の形態において、第2ランド部33Bは、平面視でX方向に沿って一直線状に延びているが、円弧、S字等の曲線状、V字形、L字形等の屈曲した線状等、任意の形状を有していても良い。また本実施の形態において、第2ランド部33Bは複数(3本)設けられ、これら複数の第2ランド部33Bが互いに平行に配置されている。
第3ランド部33Cは、蒸発領域SR以外に位置するとともに、第1ランド部33Aに接続されている。すなわち第3ランド部33Cは、その延伸方向の一端側(X方向マイナス側)が第1ランド部33Aに接続されている。第3ランド部33Cの延伸方向の他端側(X方向プラス側)は、蒸発領域SRから面方向外側へ離れた位置にある凝縮領域CRに存在することが好ましく、例えば後述する支持部39で終端していても良い。本実施の形態において、第3ランド部33Cは、平面視でX方向に沿って一直線状に延びているが、円弧、S字等の曲線状、V字形、L字形等の屈曲した線状等、任意の形状を有していても良い。また本実施の形態において、第3ランド部33Cは複数(3本)設けられ、これら複数の第3ランド部33Cが互いに平行に配置されている。
蒸気流路部50は、主として、作動流体の蒸気(適宜、作動蒸気2aと記す)が通る流路である。蒸気流路部50は、第1本体面31aから第2本体面31bに延びており、ウィックシート30を貫通している。
図4及び図5に示すように、本実施の形態における蒸気流路部50は、複数の蒸気通路51を有している。蒸気通路51は、枠体部32の内側であってランド部33の外側、すなわち枠体部32とランド部33との間、及び、互いに隣り合うランド部33同士の間に形成されている。各蒸気通路51の平面形状は、細長の矩形形状のほか、円弧、S字等の曲線状、V字形、L字形等の屈曲した線状等、任意の形状とすることができる。複数のランド部33によって、蒸気流路部50は、複数の蒸気通路51に区画されている。
図3に示すように、蒸気通路51は、ウィックシート30の第1本体面31aから第2本体面31bにわたって延びるように形成されている。また蒸気通路51は、ウィックシート30の第1本体面31aから第2本体面31bへ、ウィックシート30を貫通して形成されている。蒸気通路51は、貫通空間と称してもよい。
蒸気通路51は、後述するエッチング工程において、ウィックシート30の第1本体面31a及び第2本体面31bからそれぞれエッチングされることによって形成されても良い。この場合、蒸気通路51は、図3に示すように、湾曲状に形成された第1壁面53aと湾曲状に形成された第2壁面54aとを有している。第1壁面53aは、第1本体面31a側に位置しており、ランド部33の幅方向(Y方向)内側に向かって凹むような形状で湾曲している。第2壁面54aは、第2本体面31b側に位置しており、ランド部33の幅方向(Y方向)内側に向かって凹むような形状で湾曲している。第1壁面53a及び第2壁面54aは、蒸気通路51の内側に張り出すように形成された突起部55において合流している。突起部55は、断面視で鋭角的に形成されていても良い。突起部55が存在する位置において、蒸気通路51の平面面積が最小になっている。蒸気通路51の幅w2(図3参照)は、例えば、100μm以上5000μm以下であってもよい。ここで、蒸気通路51の幅w2とは、蒸気通路51の最も狭い部分における幅であり、この場合は、突起部55が存在する位置において蒸気通路51の延伸方向に直交する方向(幅方向)に測定した距離をいう。また蒸気通路51の幅w2は、幅方向(Y方向)において互いに隣り合うランド部33の間のギャップに相当する。
ウィックシート30の厚み方向(Z方向)における突起部55の位置は、第1本体面31aと第2本体面31bとの中央位置よりも第2本体面31bにずれている。突起部55と第2本体面31bとの距離をt5(図3参照)としたとき、距離t5は、後述するウィックシート30の厚さt4(図3参照)の5%以上、10%以上、又は20%以上であっても良い。距離t5は、ウィックシート30の厚さt4の50%以下、40%以下、又は30%以下であっても良い。なお、これに限らず、ウィックシート30の厚み方向(Z方向)における突起部55の位置は、第1本体面31aと第2本体面31bとの中央位置であってもよく、中央位置よりも第1本体面31a側にずれた位置でもよい。蒸気通路51がウィックシート30の厚み方向(Z方向)に貫通していれば、突起部55の位置は任意である。
また、本実施の形態では、蒸気通路51の断面形状が、蒸気通路51の内側に張り出すように形成された突起部55によって画定されているが、これに限られることはない。例えば、蒸気通路51の断面形状は、台形形状や矩形形状であってもよく、あるいは樽形の形状になっていてもよい。
このように構成された蒸気通路51を含む蒸気流路部50は、上述した密封空間3の一部を構成している。図3に示すように、本実施の形態による蒸気流路部50は、主として、下側シート10と、上側シート20と、上述したウィックシート30の枠体部32及びランド部33によって画定されている。各蒸気通路51は、作動蒸気2aが通るように比較的大きな流路断面積を有している。
図4及び図5に示すように、複数の蒸気通路51は、第1蒸気通路51Aと、第2蒸気通路51Bと、第3蒸気通路51Cとを含む。第1蒸気通路51A、第2蒸気通路51B及び第3蒸気通路51Cは、いずれも作動蒸気2aが通る流路であり、複数のランド部33同士の間、又は枠体部32とランド部33との間に形成されている。第1蒸気通路51A、第2蒸気通路51B及び第3蒸気通路51Cは、それぞれ一直線状に延びていても良く、あるいは、円弧、S字等の曲線状、V字形、L字形等の屈曲した線状等、任意の形状を有していても良い。なお、第1蒸気通路51A、第2蒸気通路51B及び第3蒸気通路51Cの断面形状等の基本的な構成は、それぞれ上述した蒸気通路51の構成と同一である。なお、本明細書において、第1蒸気通路51Aと、第2蒸気通路51Bと、第3蒸気通路51Cとをまとめて、単に蒸気通路51ともいう。
第1蒸気通路51Aは、蒸発領域SR側から延びるとともに、その延伸方向端部がランド部33に接していない。第1蒸気通路51Aは、その延伸方向の一端側(X方向マイナス側)が蒸発領域SRと重なる。第1蒸気通路51Aの延伸方向の他端側(X方向プラス側)は、蒸発領域SRから面方向外側へ離れた位置にある凝縮領域CRに存在することが好ましく、例えば後述する支持部39で終端していても良い。この場合、第1蒸気通路51Aは複数(3本)設けられており、第1ランド部33Aに沿って配置されているものと、枠体部32に沿って配置されているものとを含む。このうち第1ランド部33Aに沿って配置されている第1蒸気通路51Aは、2本の第1ランド部33A同士の間に位置している。この第1蒸気通路51Aは、略S字状に湾曲する部分を途中に有しつつ、全体として平面視でX方向に延びている。また、枠体部32に沿って配置されている2本の第1蒸気通路51Aは、それぞれ平面視でX方向に沿って一直線状に延びている。
第2蒸気通路51Bは、蒸発領域SRから延びるとともに、その延伸方向端部が第1ランド部33Aに接している。すなわち第2蒸気通路51Bは、その延伸方向の一端側(X方向マイナス側)が蒸発領域SRと重なり、延伸方向の他端(X方向プラス側)が第1ランド部33Aに接することにより終端する。第2蒸気通路51Bの幅方向(Y方向)両側には、それぞれ第1ランド部33A又は第2ランド部33Bが配置される。本実施の形態において、第2蒸気通路51Bは、平面視でX方向に沿って一直線状に延びている。また本実施の形態において、第2蒸気通路51Bは複数(3本)設けられ、これら複数の第2蒸気通路51Bが互いに平行に配置されている。
第3蒸気通路51Cは、蒸発領域SR以外に位置するとともに、その延伸方向端部が第1ランド部33Aに接している。すなわち第3蒸気通路51Cは、その延伸方向の一端側(X方向マイナス側)が第1ランド部33Aに接続されている。第3蒸気通路51Cの延伸方向の他端側(X方向プラス側)は、蒸発領域SRから面方向外側へ離れた位置にある凝縮領域CRに存在することが好ましく、例えば後述する支持部39で終端していても良い。第3蒸気通路51Cの幅方向(Y方向)両側には、それぞれ第1ランド部33A又は第3ランド部33Cが配置される。本実施の形態において、第3蒸気通路51Cは、平面視でX方向に沿って一直線状に延びている。また本実施の形態において、第3蒸気通路51Cは複数(3本)設けられ、これら複数の第3蒸気通路51Cが互いに平行に配置されている。
図4及び図5に示すように、蒸気流路部50内に、ランド部33の長手方向(X方向)端部を枠体部32に支持する支持部39が設けられている。支持部39は、互いに隣り合うランド部33同士を支持する。支持部39は、長手方向(X方向)においてランド部33の一側(X方向プラス側)に設けられている。なお、支持部39は、長手方向(X方向)においてランド部33の両側に設けられていても良い。支持部39は、蒸気流路部50を拡散する作動蒸気2aの流れを妨げないように形成されていることが好ましい。この場合、支持部39は、ウィックシート30の第1本体面31a側に配置され、第2本体面31b側には、蒸気流路部50に連通する空間が形成されている。なお、図4及び図5において、支持部39が灰色で示されている。支持部39は、第2本体面31b側からハーフエッチングにより薄肉化されている。支持部39はウィックシート30を厚み方向に貫通しない領域であり、枠体部32より厚みが薄い。これにより、支持部39の厚さをウィックシート30の厚さよりも薄くでき、蒸気通路51が、X方向及びY方向において分断されることを防止できる。しかしながら、これに限らず、支持部39は、第2本体面31b側に配置されていても良い。また、支持部39の第1本体面31a側の面及び第2本体面31b側の面の両方に、蒸気流路部50に連通する空間が形成されるようにしてもよい。
また、図2に示すように、ベーパーチャンバ1は、X方向における一側(X方向マイナス側)の端縁に、密封空間3に作動液2bを注入する注入部4を更に備えていてもよい。図2に示す形態では、注入部4は、蒸発領域SRの側に配置されている。注入部4は、ウィックシート30に形成された注入流路37を有する。この注入流路37は、ウィックシート30の第2本体面31b側に形成されており、第2本体面31b側から凹状に形成されている。ベーパーチャンバ1の完成後、注入流路37は封止された状態となっている。また、注入流路37は、蒸気流路部50に連通しており、作動液2bは、注入流路37を通過して密封空間3に注入される。なお、液流路部60の配置によっては、注入流路37は液流路部60に連通させるようにしてもよい。
なお、本実施の形態では、注入部4は、ベーパーチャンバ1のX方向における一対の端縁のうちの一側の端縁に設けられている例が示されているが、これに限られることはなく、任意の位置に設けることができる。
図3、図4及び図6に示すように、液流路部60は、ウィックシート30の第2本体面31bに設けられている。液流路部60は、主として作動液2bが通るものである。この液流路部60は、上述した密封空間3の一部を構成しており、蒸気流路部50に連通している。液流路部60は、作動液2bを蒸発領域SRに輸送するための毛細管構造(ウィック)として構成されている。本実施の形態においては、液流路部60は、ウィックシート30の各ランド部33の第2本体面31bに設けられている。液流路部60は、各ランド部33の第2本体面31bの全体にわたって形成されていてもよい。また、複数のランド部33のうち、一部のランド部33には液流路部60が形成されていなくても良い。液流路部60は、第2本体面側溝と称してもよい。
図7に示すように、液流路部60は、作動液2bが通るとともに互いに並走して配置された複数の液流路主流溝61と、液流路主流溝61に連通する複数の液流路連絡溝65と、を有している。なお、図7に示す例では、各ランド部33に6本の液流路主流溝61が含まれているが、これに限られるものではない。各ランド部33に含まれる液流路主流溝61の本数は任意であり、例えば、3本以上20本以下としても良い。
各液流路主流溝61は、図7に示すように、それぞれランド部33の延伸方向(長手方向、X方向)に沿って延びるように形成されている。複数の液流路主流溝61は、互いに平行に配置されている。なお、ランド部33が平面視で湾曲している場合、各液流路主流溝61は、ランド部33の湾曲方向に沿って曲線状に延びていても良い。すなわち、各液流路主流溝61は、必ずしも直線状に形成されていなくても良く、また、X方向に平行に延びていなくても良い。
液流路主流溝61は、主として、作動液2bが毛細管作用によって流れるように、蒸気流路部50の蒸気通路51よりも小さな流路断面積を有している。液流路主流溝61は、作動蒸気2aが凝縮して生成した作動液2bを蒸発領域SRに輸送するように構成されている。各液流路主流溝61は、幅方向(ランド部33の延伸方向に直交する方向、Y方向)に、互いに間隔を空けて配置されている。
液流路主流溝61は、後述するエッチング工程において、ウィックシート30の第2本体面31bからエッチングされることによって形成されている。液流路主流溝61は、図3及び図6に示すように、湾曲状に形成された壁面62を有している。この壁面62は、液流路主流溝61を画定し、第2本体面31b側から第1本体面31a側に向かって凹むように湾曲している。なお、図3及び図6に示す断面において、各壁面62の曲率半径は、蒸気通路51の第2壁面54aの曲率半径よりも小さいことが好ましい。
図7において、液流路主流溝61の幅w3は、例えば、2μm以上500μm以下であってもよい。液流路主流溝61の幅w3とは、ランド部33の延伸方向に直交する方向(長手方向に対して垂直な方向)の長さであり、この場合はY方向における寸法である。また液流路主流溝61の幅w3は、第2本体面31bにおける寸法を意味している。また、図3に示すように、液流路主流溝61の深さh1は、例えば、3μm以上300μm以下としてもよい。なお、液流路主流溝61の深さh1は、第2本体面31bから、第2本体面31bに対して垂直な方向に測定した距離であり、この場合はZ方向における寸法である。また、深さh1は、液流路主流溝61の最も深いところにおける深さをいう。
図7に示すように、各液流路連絡溝65は、ランド部33の延伸方向(X方向)とは異なる方向に延びている。本実施の形態においては、各液流路連絡溝65は、ランド部33の幅方向(Y方向)に延びるように形成されており、液流路主流溝61に対して垂直に形成されている。いくつかの液流路連絡溝65は、互いに隣り合う液流路主流溝61同士を連通するように配置されている。他の液流路連絡溝65は、蒸気流路部50(蒸気通路51)と、蒸気流路部50に最も近い液流路主流溝61とを連通するように配置されている。すなわち、当該液流路連絡溝65は、ランド部33の幅方向端部側から当該端部に隣接する液流路主流溝61に延びている。このようにして、蒸気流路部50の蒸気通路51と液流路主流溝61とが連通される。
液流路連絡溝65は、主として、作動液2bが毛細管作用によって流れるように、蒸気流路部50の蒸気通路51よりも小さな流路断面積を有している。各液流路連絡溝65は、ランド部33の延伸方向(長手方向、X方向)に、等間隔に離間して配置されていてもよい。
液流路連絡溝65も、液流路主流溝61と同様に、エッチングによって形成され、液流路主流溝61と同様の湾曲状に形成された壁面(図示せず)を有している。図7に示すように、液流路連絡溝65の幅w4(ランド部33の延伸方向における寸法)は、5μm以上300μm以下としても良い。液流路連絡溝65の深さは、3μm以上300μm以下としてもよい。
図7に示すように、液流路部60の互いに隣り合う液流路主流溝61同士の間に、凸部列63が設けられている。なお、図7に示す例では、各ランド部33に7列の凸部列63が含まれている場合を例に挙げているが、これに限られるものではない。各ランド部33に含まれる凸部列63の数は任意であり、例えば、3列以上20列以下としても良い。
各凸部列63は、図7に示すように、それぞれランド部33の延伸方向(X方向)に沿って延びるように形成されている。複数の凸部列63は、互いに平行に配置されている。なお、ランド部33が平面視で湾曲している場合、各凸部列63は、ランド部33の湾曲方向に沿って曲線状に延びていても良い。すなわち、各凸部列63は、必ずしも直線状に形成されていなくても良く、また、ランド部33の延伸方向に平行に延びていなくても良い。各凸部列63は、ランド部33の幅方向(Y方向)に、互いに間隔を空けて配置されている。
各凸部列63は、それぞれランド部33の延伸方向に配列された複数の凸部64(液流路突出部)を含む。凸部64は、液流路部60内に設けられ、液流路主流溝61及び液流路連絡溝65から突出して上側シート20に当接している。各凸部64は、平面視で、ランド部33の延伸方向が長手方向となるように矩形状に形成されている。ランド部33の幅方向において互いに隣り合う凸部64同士の間には、それぞれ液流路主流溝61が配置されている。ランド部33の延伸方向において互いに隣り合う凸部64の間には、それぞれ液流路連絡溝65が配置されている。液流路連絡溝65は、ランド部33の幅方向に延びるように形成され、ランド部33の幅方向において互いに隣り合う液流路主流溝61同士を連通している。これにより、これらの液流路主流溝61の間で作動液2bが往来可能になっている。
凸部64は、後述するエッチング工程においてエッチングで除去されることなく、ウィックシート30の材料が残る部分である。本実施の形態では、図7に示すように、凸部64の平面形状(ウィックシート30の第2本体面31bの位置における形状)が、矩形状になっている。凸部64の幅w5は、例えば、5μm以上500μm以下であってもよい。
本実施の形態においては、凸部64は、千鳥状(互い違い)に配置されている。より具体的には、ランド部33の幅方向において互いに隣り合う凸部列63の凸部64が、ランド部33の延伸方向において互いにずれて配置されている。このずれ量は、ランド部33の延伸方向における凸部64の配列ピッチの半分であってもよい。なお、凸部64の配置は、千鳥状に限られることはなく、並列に配列されていてもよい。この場合、ランド部33の幅方向において互いに隣り合う凸部列63の凸部64が、ランド部33の延伸方向においても整列される。
凸部64の長さL1(ランド部33の延伸方向における寸法)は、各凸部64同士の間で均一であっても良い。また凸部64の長さL1は、液流路連絡溝65の幅w4よりも長い(L1>w4)。なお、凸部64の長さL1とは、第2本体面31bにおいてランド部33の延伸方向に沿って測定した最大寸法を意味している。
図3、図5及び図6に示すように、第1本体面側流路70は、ウィックシート30の第1本体面31aに設けられている。第1本体面側流路70は、主として作動液2bを貯蔵する液貯蔵部としての役割、あるいは蒸気通路51と連通することにより作動蒸気2aを通過させる役割を果たす。この第1本体面側流路70は、上述した密封空間3の一部を構成している。第1本体面側流路70は、蒸気通路51に連通しているとともに、蒸気通路51を介して液流路部60に連通している。本実施の形態においては、第1本体面側流路70は、第1ランド部33A及び第2ランド部33Bの第1本体面31a側にそれぞれ設けられている。第1本体面側流路70は、複数のランド部33のうち、一部のランド部33には形成されていなくても良い。第1本体面側流路70は、第1本体面側溝と称してもよい。
図5に示すように、第1本体面側流路70は、蒸発領域SR側に配置されていても良い。第1本体面側流路70は、ランド部33の蒸発領域SR側の延伸方向端部から他方の延伸方向端部に向かって所定の位置まで、連続的又は非連続的に形成されていても良い。第1本体面側流路70は、蒸発領域SRに配置されていても良く、第1本体面側流路70の一部が、蒸発領域SRの外側にはみ出していても良い。第1本体面側流路70の少なくとも一部が蒸発領域SRに配置されている場合、デバイスDの熱を受けて、第1本体面側流路70に貯蔵されている作動液2bが蒸発しやすくなる。
本実施の形態において、第1本体面側流路70は、第1ランド部33Aのうち、第2蒸気通路51B又は第3蒸気通路51Cの延伸方向端部が接する領域である接続領域MRにも形成されている。例えば図5において、接続領域MRは、丸で囲まれており、それぞれ第2蒸気通路51B又は第3蒸気通路51Cの延伸方向端部が第1ランド部33Aに接する位置に存在する。少なくともこの接続領域MRにおいて、第1ランド部33Aの第1本体面31a側には第1本体面側流路70が形成されている。第1本体面側流路70は、当該第1ランド部33Aに接する第2蒸気通路51B又は第3蒸気通路51Cと連通している。これにより、第2蒸気通路51B又は第3蒸気通路51Cからの作動蒸気2aは、第1本体面側流路70を介して、第1ランド部33Aを横切って第1蒸気通路51Aに流される。なお、接続領域MRは、第1ランド部33Aが平面視で湾曲する部分に位置していても良い。この場合、接続領域MRにおいて、第1本体面側流路70を流れる作動蒸気2aの蒸気抵抗を小さくし、ベーパーチャンバ1の面内で熱が伝わりやすくすることができる。
図5に示すように、Y方向プラス側に位置する第1ランド部33Aにおいて、第1本体面側流路70は、第1ランド部33Aに沿って接続領域MRから蒸発領域SRまで連続的に形成されている。また、Y方向マイナス側に位置する第1ランド部33Aにおいて、第1本体面側流路70は、接続領域MRと蒸発領域SRとにそれぞれ形成されているが、接続領域MRから蒸発領域SRまで連続的に形成されていない。また、各第2ランド部33Bにおいて、第1本体面側流路70は、第2ランド部33Bに沿って接続領域MRから蒸発領域SRまで連続的に形成されている。なお、第3ランド部33Cには、第1本体面側流路70が形成されていない。しかしながらこれに限らず、第3ランド部33Cに第1本体面側流路70が形成されていても良い。
図8に示すように、第1本体面側流路70は、互いに並走して配置された複数の第1本体面側主流溝71と、第1本体面側主流溝71に連通する複数の第1本体面側連絡溝75と、を有している。第1本体面側主流溝71及び第1本体面側連絡溝75は、作動液2b又は作動蒸気2aが通る溝である。なお、図8に示す例では、各ランド部33に5本の第1本体面側主流溝71が含まれているが、これに限られるものではない。各ランド部33に含まれる第1本体面側主流溝71の本数は任意であり、例えば、2本以上20本以下としても良い。
各第1本体面側主流溝71は、図8に示すように、それぞれランド部33の長手方向(X方向)に沿って延びるように形成されている。複数の第1本体面側主流溝71は、互いに平行に配置されている。なお、ランド部33が平面視で湾曲している場合、各第1本体面側主流溝71は、ランド部33の湾曲方向に沿って曲線状に延びていても良い。すなわち、各第1本体面側主流溝71は、必ずしも直線状に形成されていなくても良く、また、X方向に平行に延びていなくても良い。
各第1本体面側主流溝71は、ランド部33の延伸方向に沿って所定の範囲に形成されている。第1本体面側主流溝71は、作動液2bが毛細管作用によって流れるような流路断面積を有していても良い。第1本体面側主流溝71の流路断面積は、蒸気通路51の流路断面積よりも小さい。第1本体面側主流溝71の流路断面積は、上述した液流路主流溝61の流路断面積よりも大きくても良い。第1本体面側主流溝71内の作動液2bに作用する毛細管力は、液流路主流溝61内の作動液2bに作用する毛細管力よりも小さくても良い。このようにして、第1本体面側主流溝71は、作動液2bを第1本体面側流路70内に引き込むことができるとともに、作動液2bの貯蔵量を確保できる。各第1本体面側主流溝71は、幅方向(Y方向)に等間隔に離間して配置されていても良い。
第1本体面側主流溝71は、後述するエッチング工程において、ウィックシート30の第1本体面31aからエッチングされることによって形成されている。これにより、第1本体面側主流溝71は、図3及び図6に示すように、湾曲状に形成された壁面72を有している。この壁面72は、第1本体面側主流溝71を画定し、第2本体面31bに向かって膨らむような形状で湾曲している。
図8に示すように、第1本体面側主流溝71の幅w6は、上述した液流路主流溝61の幅w3よりも大きくても良い。幅w6は、例えば、10μm以上750μm以下であっても良い。なお、第1本体面側主流溝71の幅w6は、第1本体面31aにおける寸法を意味している。幅w6は、ランド部33の長手方向に対して垂直な方向の長さであり、この場合はY方向における寸法である。また、図6に示すように、第1本体面側主流溝71の深さh2は、上述した液流路主流溝61の深さh1よりも大きくても良い。深さh2は、例えば、5μm以上500μm以下であっても良い。深さh2は、Z方向における寸法に相当している。
図8に示すように、各第1本体面側連絡溝75は、X方向とは異なる方向に延びている。本実施の形態においては、各第1本体面側連絡溝75は、Y方向に延びるように形成されており、第1本体面側主流溝71に対して垂直に形成されている。いくつかの第1本体面側連絡溝75は、互いに隣り合う第1本体面側主流溝71同士を連通している。他の第1本体面側連絡溝75は、蒸気流路部50(蒸気通路51)と第1本体面側主流溝71とを連通している。すなわち、当該第1本体面側連絡溝75は、Y方向におけるランド部33の端部側から当該端部に隣接する第1本体面側主流溝71に延びている。このようにして、蒸気流路部50の蒸気通路51と第1本体面側主流溝71とが互いに連通される。
第1本体面側連絡溝75は、作動液2bが毛細管作用によって流れるような流路断面積を有していても良い。第1本体面側連絡溝75の流路断面積は、蒸気通路51の流路断面積よりも小さい。第1本体面側連絡溝75の流路断面積は、上述した液流路連絡溝65の流路断面積よりも大きくても良い。第1本体面側連絡溝75内の作動液2bに作用する毛細管力は、液流路連絡溝65内の作動液2bに作用する毛細管力よりも小さくても良い。このようにして、第1本体面側連絡溝75は、作動液2bを第1本体面側流路70内に引き込むことができるとともに、作動液2bの貯蔵量を確保できる。各第1本体面側連絡溝75は、ランド部33の長手方向(X方向)に等間隔に離間して配置されていても良い。
第1本体面側連絡溝75は、第1本体面側主流溝71と同様に、エッチングによって形成され、第1本体面側主流溝71と同様の湾曲状に形成された壁面(図示せず)を有している。第1本体面側連絡溝75の幅w7は、第1本体面側主流溝71の幅w6と等しくても良く、異なっていても良い。幅w7は、X方向における寸法に相当している。第1本体面側連絡溝75の深さは、第1本体面側主流溝71の深さh2と等しくても良く、異なっていても良い。
図8に示すように、互いに隣り合う第1本体面側主流溝71の間に、凸部列73が設けられている。各凸部列73は、ランド部33の長手方向(X方向)に沿って配列された複数の凸部74を含んでいる。凸部74は、第1本体面側流路70内に設けられている。凸部74は、第1本体面側主流溝71及び第1本体面側連絡溝75から突出して下側シート10に当接している。各凸部74は、平面視で、X方向が長手方向となるように矩形状に形成されている。Y方向において互いに隣り合う凸部74の間に、第1本体面側主流溝71が介在されている。X方向において互いに隣り合う凸部74の間に、第1本体面側連絡溝75が介在されている。第1本体面側連絡溝75は、ランド部33の幅方向に延びており、幅方向において互いに隣り合う第1本体面側主流溝71同士を連通している。これにより、これらの第1本体面側主流溝71の間で作動液2b又は作動蒸気2aが往来可能になっている。
凸部74は、後述するエッチング工程においてエッチングされることなく、ウィックシート30の材料が残る部分である。本実施の形態では、図8に示すように、凸部74の平面形状が、矩形状になっている。凸部74の平面形状とは、第1本体面31aの位置における平面形状に相当している。
本実施の形態においては、凸部74は、千鳥状に配置されている。より具体的には、互いに隣り合う凸部列73の凸部74が、X方向において互いにずれて配置されている。このずれ量は、X方向における凸部74の配列ピッチの半分であっても良い。凸部74の幅w8は、例えば、10μm以上100μm以下であっても良い。凸部74の幅w8は、第1本体面31aにおける寸法を意味している。幅w8は、ランド部33の幅方向における寸法に相当している。なお、凸部74は、千鳥状に限らず、並列に配置されていても良い。この場合、ランド部33の幅方向において互いに隣り合う凸部列73の凸部74が、X方向においても整列される。なお、第1本体面側主流溝71の幅w6は、液流路主流溝61のw3よりも大きくても良い。また、第1本体面側主流溝71の幅w6は、蒸気通路51の幅w2よりも小さくても良い。
凸部74の長さL2(X方向における寸法)は、各凸部74同士の間で均一であっても良い。また凸部74の長さL2は、第1本体面側連絡溝75の幅w7よりも長い(L2>w7)。なお、凸部74の長さL2とは、第1本体面31aにおけるX方向の最大寸法を意味している。
なお、ランド部33に設けられた第1本体面側主流溝71の本数は、当該ランド部33に設けられた液流路主流溝61の本数よりも少なくても良い。
図9は、ウィックシート30の接続領域MRの周辺を示す拡大下面図(図5のVIII部拡大図)である。図9に示すように、第1ランド部33Aに第2蒸気通路51Bの延伸方向端部(X方向プラス側端部)が接しており、この領域に接続領域MRが形成されている。第2蒸気通路51Bの幅方向(Y方向)両側には、それぞれ第2ランド部33Bが配置されている。第2蒸気通路51Bと各第2ランド部33Bとは互いに平行に位置している。また、接続領域MRの、第2蒸気通路51Bの延伸方向端部(X方向プラス側端部)が接する側とは反対側に、第2蒸気通路51Bとは別の蒸気通路である第1蒸気通路51Aが存在している。すなわち、第1ランド部33Aに対して第2蒸気通路51Bの反対側には、第1蒸気通路51Aが位置している。第1蒸気通路51Aと第1ランド部33Aとは、互いに平行に位置している。
少なくとも第1ランド部33Aの各接続領域MRには、第2蒸気通路51Bと連通する第1本体面側流路70が形成されている。この場合、第1本体面側流路70は、接続領域MRだけでなく、第1ランド部33Aの、接続領域MR周辺の領域にも形成されている。また第1本体面側流路70は、接続領域MR周辺において第1ランド部33Aに接続される第2ランド部33Bにも連続的に形成されている。さらに接続領域MRにおいて、第1ランド部33Aと第2蒸気通路51Bとは、平面視で非直角に交差する。すなわち図9に示す角度θが鋭角又は鈍角となる。これにより、第2蒸気通路51Bからの作動蒸気2aを第1ランド部33Aの延伸方向に沿って流しやすくし、ベーパーチャンバ1の広い領域に作動蒸気2aを行き渡らせることができる。
図9に示すように、第1ランド部33Aの第1本体面側流路70は、千鳥状に配置された複数の凸部74を有する。各凸部74間には、第1本体面側主流溝71と第1本体面側連絡溝75とが形成されている。これにより、第2蒸気通路51Bと第1蒸気通路51Aとは、第1ランド部33Aの第1本体面側流路70を介して互いに連通する。このため、第2蒸気通路51Bからの作動蒸気2aは、第1ランド部33Aの第1本体面側流路70を介して、第1蒸気通路51A側に流すことができる。
また、接続領域MR周辺において、第2ランド部33Bに第1本体面側流路70が形成されている。これにより、第2蒸気通路51Bからの作動蒸気2aは、第2ランド部33Bの第1本体面側流路70から、第1ランド部33Aの第1本体面側流路70を介して、第1蒸気通路51A側に流される。このため、第2蒸気通路51Bからの作動蒸気2aを第1ランド部33Aに隣接する第1蒸気通路51Aに流しやすくすることができる。なお、第1ランド部33Aの凸部74と第2ランド部33Bの凸部74とは、互いに離間していても良く、あるいは、第1ランド部33Aの凸部74と第2ランド部33Bの凸部74とが互いに一体化されていても良い。
ところで、下側シート10、上側シート20及びウィックシート30を構成する材料は、熱伝導率が良好な材料であれば特に限られることはないが、下側シート10、上側シート20及びウィックシート30は、例えば、銅又は銅合金を含んでいてもよい。この場合、各シート10、20、30の熱伝導率を高めることができ、ベーパーチャンバ1の放熱効率を高めることができる。また、作動流体2a、2bとして純水を使用する場合には、腐食することを防止できる。なお、所望の放熱効率を得るとともに腐食を防止できれば、これらのシート10、20、30には、アルミニウムやチタン等の他の金属材料や、ステンレスなどの他の金属合金材料を用いることもできる。
また、図3に示すベーパーチャンバ1の厚さt1は、例えば、100μm以上2000μm以下であってもよい。厚さt1を100μm以上にすることにより、蒸気流路部50を適切に確保することで、ベーパーチャンバ1として適切に機能させることができる。一方、厚さt1を2000μm以下にすることにより、ベーパーチャンバ1の厚さt1が厚くなることを抑制できる。
下側シート10の厚さt2は、例えば、5μm以上500μm以下であってもよい。厚さt2を5μm以上にすることにより、下側シート10の機械的強度を確保できる。一方、厚さt2を500μm以下にすることにより、ベーパーチャンバ1の厚さt1が厚くなることを抑制できる。同様に、上側シート20の厚さt3は、下側シート10の厚さt2と同様に設定されていてもよい。上側シート20の厚さt3と、下側シート10の厚さt2は、異なっていてもよい。
ウィックシート30の厚さt4は、例えば、50μm以上1000μm以下であってもよい。厚さt4を50μm以上にすることにより、蒸気流路部50を適切に確保することで、ベーパーチャンバ1として適切に動作できる。一方、厚さt4を1000μm以下にすることにより、ベーパーチャンバ1の厚さt1が厚くなることを抑制できる。
次に、このような構成からなる本実施の形態によるベーパーチャンバ1の製造方法について、図10(a)-(c)を用いて説明する。なお、図10(a)-(c)では、図3の断面図と略同様の断面を示している。
ここでは、初めに、ウィックシート30の作製工程について説明する。
まず、図10(a)に示すように、準備工程として、第1材料面Maと第2材料面Mbとを含む、平板状の金属材料シートMを準備する。
準備工程の後、エッチング工程として、図10(b)に示すように、金属材料シートMを、第1材料面Ma及び第2材料面Mbからエッチングして、蒸気流路部50、液流路部60及び第1本体面側流路70を形成する。
より具体的には、金属材料シートMの第1材料面Ma及び第2材料面Mbに、フォトリソグラフィー技術によって、パターン状のレジスト膜(図示せず)が形成される。続いて、パターン状のレジスト膜の開口を介して、金属材料シートMの第1材料面Ma及び第2材料面Mbがエッチングされる。これにより、金属材料シートMの第1材料面Ma及び第2材料面Mbがパターン状にエッチングされて、図10(b)に示すような蒸気流路部50、液流路部60及び第1本体面側流路70が形成される。なお、エッチング液には、例えば、塩化第二鉄水溶液等の塩化鉄系エッチング液、又は塩化銅水溶液等の塩化銅系エッチング液を用いることができる。
金属材料シートMの第1材料面Ma及び第2材料面Mbを同時にエッチングしてもよい。しかしながら、これに限られることはなく、第1材料面Maと第2材料面Mbのエッチングは別々の工程として行われてもよい。また、蒸気流路部50、液流路部60及び第1本体面側流路70が同時にエッチングで形成されてもよく、別々の工程で形成されてもよい。また、エッチング工程においては、金属材料シートMの第1材料面Ma及び第2材料面Mbをエッチングすることにより、図4及び図5に示すような所定の外形輪郭形状が得られる。すなわち、ウィックシート30の端縁が形成される。
このようにして、本実施の形態によるウィックシート30が得られる。
ウィックシート30の作製工程の後、接合工程として、図10(c)に示すように、下側シート10、上側シート20及びウィックシート30が接合される。なお、下側シート10及び上側シート20は、所望の厚さを有する圧延材で形成されていてもよい。
より具体的には、まず、下側シート10、ウィックシート30及び上側シート20をこの順番で積層する。この場合、下側シート10の第2下側シート面10bにウィックシート30の第1本体面31aが重ね合わされ、ウィックシート30の第2本体面31bに、上側シート20の第1上側シート面20aが重ね合わされる。
続いて、下側シート10、ウィックシート30及び上側シート20が仮止めされる。例えば、スポット的に抵抗溶接を行って、これらのシート10、20、30が仮止めされてもよく、レーザ溶接でこれらのシート10、20、30が仮止めされてもよい。
次に、下側シート10と、ウィックシート30と、上側シート20とが、拡散接合によって恒久的に接合される。拡散接合とは、以下のような接合方法である。すなわち、まず接合する下側シート10とウィックシート30を密着させるとともにウィックシート30と上側シート20を密着させる。次いで、下側シート10、ウィックシート30及び上側シート20を真空や不活性ガス中などの制御された雰囲気中で、積層方向に加圧するとともに加熱して、接合面に生じる原子の拡散を利用して接合する。拡散接合は、各シート10、20、30の材料を融点に近い温度まで加熱するが、融点よりは低いため、各シート10、20、30が溶融して変形することを回避できる。より具体的には、ウィックシート30の枠体部32及び各ランド部33における第1本体面31aが、下側シート10の第2下側シート面10bに拡散接合される。また、ウィックシート30の枠体部32及び各ランド部33における第2本体面31bが、上側シート20面の第1上側シート面20aに拡散接合される。このようにして、各シート10、20、30が拡散接合されて、下側シート10と上側シート20との間に、蒸気流路部50と液流路部60と第1本体面側流路70とを有する密封空間3が形成される。
接合工程の後、注入部4から密封空間3に作動液2bが注入される。
その後、上述した注入流路37が封止される。例えば、注入部4を部分的に溶融させて注入流路37を封止するようにしてもよい。これにより、密封空間3と外部との連通が遮断されて、作動液2bが密封空間3に封入され、密封空間3内の作動液2bが外部に漏洩することが防止される。
以上のようにして、本実施の形態によるベーパーチャンバ1が得られる。
次に、ベーパーチャンバ1の作動方法、すなわち、デバイスDの冷却方法について説明する。
上述のようにして得られたベーパーチャンバ1は、モバイル端末等の電子機器EのハウジングH内に設置される。また、上側シート20の第2上側シート面20bに、被冷却装置であるCPU等のデバイスDが取り付けられる(あるいは、デバイスDにベーパーチャンバ1が取り付けられる)。密封空間3内の作動液2bは、その表面張力によって、密封空間3の壁面、すなわち、蒸気通路51の第1壁面53a及び第2壁面54a、液流路部60の液流路主流溝61の壁面62、及び液流路連絡溝65の壁面に付着する。また、作動液2bは、下側シート10の第2下側シート面10bのうち蒸気通路51に露出した部分にも付着し得る。さらに、作動液2bは、上側シート20の第1上側シート面20aのうち蒸気通路51、液流路主流溝61及び液流路連絡溝65に露出した部分にも付着し得る。
この状態でデバイスDが発熱すると、蒸発領域SR(図4及び図5参照)に存在する作動液2bが、デバイスDから熱を受ける。受けた熱は潜熱として吸収されて作動液2bが蒸発(気化)し、作動蒸気2aが生成される。生成された作動蒸気2aの多くは、密封空間3を構成する蒸気通路51内で拡散する(図4の実線矢印参照)。各蒸気通路51内の作動蒸気2aは、蒸発領域SRから離れ、作動蒸気2aの多くは、比較的温度の低い凝縮領域CR(図4及び図5における右側の部分)に輸送される。凝縮領域CRにおいて、作動蒸気2aは、主として下側シート10に放熱して冷却される。下側シート10が作動蒸気2aから受けた熱は、ハウジング部材Ha(図3参照)を介して外気に伝達される。
本実施の形態において、複数の蒸気通路51のうち第1蒸気通路51Aは、蒸発領域SRから直接凝縮領域CRまで延びている。したがって、第1蒸気通路51Aを通過する作動蒸気2aは、直接凝縮領域CRまで到達する。一方、第2蒸気通路51Bは、蒸発領域SRから延び、その延伸方向端部が第1ランド部33Aに接している。このため、第2蒸気通路51Bを通過する作動蒸気2aは、第1ランド部33Aによって遮られ、直接凝縮領域CRまで輸送されない。本実施の形態においては、第1ランド部33Aの第1本体面31a側であって、第2蒸気通路51Bの延伸方向端部が接する接続領域MRに、第2蒸気通路51Bと連通する第1本体面側流路70が形成されている。これにより、第2蒸気通路51Bからの作動蒸気2aは、第1本体面側流路70を介して第1ランド部33Aを横断し、第2蒸気通路51Bの反対側に位置する第1蒸気通路51Aに流される。その後、作動蒸気2aは、第1蒸気通路51Aを通過して凝縮領域CRに到達する。あるいは、一部の作動蒸気2aは、他の第1ランド部33Aに形成された第1本体面側流路70を横断し、第3蒸気通路51Cに流される。その後、作動蒸気2aは、第3蒸気通路51Cを通過して凝縮領域CRに到達する。
作動蒸気2aは、凝縮領域CRにおいて下側シート10に放熱することにより、蒸発領域SRにおいて吸収した潜熱を失って凝縮し、作動液2bが生成される。生成された作動液2bは、各蒸気通路51の第1壁面53a及び第2壁面54a、下側シート10の第2下側シート面10b、及び上側シート20の第1上側シート面20aに付着する。ここで、蒸発領域SRでは作動液2bが蒸発し続けている。このため、液流路部60のうち蒸発領域SR以外の領域(すなわち、凝縮領域CR)における作動液2bは、各液流路主流溝61の毛細管作用により、蒸発領域SRに向かって輸送される(図4の破線矢印参照)。これにより、各蒸気通路51、第2下側シート面10b及び第1上側シート面20aに付着した作動液2bは、液流路部60に移動し、液流路連絡溝65を通過して液流路主流溝61に入り込む。このようにして、各液流路主流溝61及び各液流路連絡溝65に、作動液2bが充填される。このため、充填された作動液2bは、各液流路主流溝61の毛細管作用により、蒸発領域SRに向かう推進力を得て、蒸発領域SRに向かってスムースに輸送される。
液流路部60においては、各液流路主流溝61が、対応する液流路連絡溝65を介して、隣り合う他の液流路主流溝61と連通している。これにより、互いに隣り合う液流路主流溝61同士で、作動液2bが往来し、液流路主流溝61でドライアウトが発生することが抑制されている。このため、各液流路主流溝61内の作動液2bに毛細管作用が付与されて、作動液2bは、蒸発領域SRに向かってスムースに輸送される。
蒸発領域SRに達した作動液2bは、デバイスDから再び熱を受けて蒸発する。作動液2bから蒸発した作動蒸気2aは、蒸発領域SR内の液流路連絡溝65を通って、流路断面積が大きい蒸気通路51に移動し、各蒸気通路51内で拡散する。このようにして、作動流体2a、2bが、相変化、すなわち蒸発と凝縮とを繰り返しながら密封空間3内を還流してデバイスDの熱を輸送して放出する。この結果、デバイスDが冷却される。
なお、凝縮領域CRにおいて凝縮した作動液2bの一部は、液流路部60だけではなく、第1本体面側流路70に輸送され、第1本体面側流路70に充填される。上述したように、第1本体面側流路70の一部は蒸発領域SRに配置されている。このため、第1本体面側流路70に充填された作動液2bは、第1本体面側流路70の毛細管作用により推進力を得て、蒸発領域SRに向かって移動する。第1本体面側流路70によって蒸発領域SRに達した作動液2bは、デバイスDから再び熱を受けて蒸発し、再度各蒸気通路51内で拡散する。
デバイスDが発熱を停止している間、蒸発領域SR内の作動液2bは蒸発することなく、液流路部60に充填されて留まる。このため、凝縮領域CR内の作動液2bは、蒸発領域SRに向けて輸送されずに留まる。液流路部60内の作動液2bの一部は、蒸気通路51を流れて、第1本体面側流路70内に移動する。これにより、第1本体面側流路70に作動液2bが充填されて留まる。密封空間3に封入される作動液2bの量が、液流路部60内の空間の合計体積よりも多い場合には、作動液2bの一部は、第1本体面側流路70内に充填されやすい。このため、作動液2bは、液流路部60だけでなく、第1本体面側流路70にも分散されて留まることができる。
この状態で、ベーパーチャンバ1を搭載した電子機器Eが、作動流体2a、2bの凝固点より低い温度環境下に置かれて、液流路部60内の作動液2bが凍結して膨張した場合であっても、作動流体2a、2bの膨張力が弱められる。これにより、膨張による力を受けて上側シート20が変形することが抑制される。このため、デバイスDが取り付けられる上側シート20の第2上側シート面20bの平坦度が低下することを抑制でき、第2上側シート面20bとデバイスDとの間に隙間が形成されることを抑制できる。この場合、デバイスDからの熱伝導が阻害されることを抑制でき、ベーパーチャンバ1の性能低下を抑制できる。同様に、第1本体面側流路70内の作動液2bが凍結して膨張した場合であっても、膨張力が弱められる。これにより、膨張による力を受けて下側シート10が変形することが抑制される。このため、下側シート10の第1下側シート面10aの平坦度が低下することを抑制できる。
このように本実施の形態によれば、複数のランド部33のうち少なくとも第1ランド部33Aに、第2蒸気通路51Bの延伸方向端部が接している。また第1ランド部33Aの第1本体面31a側であって、第2蒸気通路51Bの延伸方向端部が接する接続領域MRに、第2蒸気通路51Bと連通する第1本体面側流路70が形成されている。これにより、蒸発領域SR側から第2蒸気通路51Bを介して輸送されてきた作動蒸気2aを、第1本体面側流路70を介して他の第1蒸気通路51Aに送り込むことができる。このため、蒸発領域SRから遠い方向に作動蒸気2aを輸送でき、ベーパーチャンバ1の面内で熱の伝わりにくい領域を減らすことができる。また、ベーパーチャンバ1の広い範囲を熱の輸送に用いることができるので、熱源からの熱をベーパーチャンバ1の面内で均一に行き渡らせることができる。この結果、作動流体2a、2bが密封空間3内を還流する作用が促進され、ベーパーチャンバ1の均熱性を向上できる。
また本実施の形態によれば、第1本体面側流路70は、第1ランド部33Aに沿って蒸発領域SRまで連続的に形成されている。これにより、第1本体面側流路70を、作動液2bを蒸発領域SRに輸送する液流路として用いることができる。この結果、作動流体2a、2bが密封空間3内を還流する作用を促進できる。
また本実施の形態によれば、第1本体面側流路70は、第2蒸気通路51Bに沿って延びる第2ランド部33Bにも形成されている。この場合、蒸発領域SR側から第2蒸気通路51Bを介して輸送されてきた作動蒸気2aを、第2ランド部33Bの第1本体面側流路70を介して、第1ランド部33Aの第1本体面側流路70に送り込むことができる。これにより、ベーパーチャンバ1の広い範囲を熱の輸送に用いることができるので、熱源からの熱をベーパーチャンバ1の面内で均一に行き渡らせることができる。
(変形例)
次に、図11乃至図18を参照して、第1の実施の形態の各種変形例について説明する。図11乃至図18は、それぞれ変形例によるウィックシート30の一部を示す拡大下面図である。図11乃至図18において、図1乃至図10に示す形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
(第1変形例)
図11に示すように、第1本体面側流路70は、第2蒸気通路51Bの幅方向両側に位置する各第2ランド部33Bには形成されていなくても良い。第1本体面側流路70は、第2ランド部33Bの全域にわたって形成されていなくても良い。あるいは、第1本体面側流路70は、第2ランド部33Bの蒸発領域SR側に形成され、第2ランド部33Bの接続領域MR側に形成されていなくても良い。この場合、第2蒸気通路51Bからの作動蒸気2aを、第2蒸気通路51Bの延伸方向(X方向プラス側)に沿って集中的に流し、第2蒸気通路51Bの延伸方向側(X方向プラス側)により多くの作動蒸気2aを輸送できる。
(第2変形例)
図12に示すように、第1ランド部33Aの接続領域MRにおいて、第1ランド部33Aと第2蒸気通路51Bとが平面視で直交していても良い。すなわち図12の角度θが90°となっても良い。この場合、第2蒸気通路51Bからの作動蒸気2aが、第1ランド部33Aの延伸方向に対して垂直に横断するので、作動蒸気2aが第1ランド部33Aを通過する距離が最小となる。これにより、第1ランド部33Aを横断する作動蒸気2aの蒸気抵抗を最小限に抑えることができる。
(第3変形例)
図13に示すように、2本の第2ランド部33Bが合流し、第4ランド部33Dに接続されていても良い。この合流した部分で、第2蒸気通路51Bの延伸方向端部が第4ランド部33Dに接している。また第4ランド部33Dの第1本体面31a側であって、第2蒸気通路51Bの延伸方向端部が接する接続領域MRに、第2蒸気通路51Bと連通する第1本体面側流路70が形成されている。第4ランド部33Dは、その延伸方向の一端(X方向マイナス側端部)が2本の第2ランド部33Bに接続され、延伸方向の他端(X方向プラス側端部)は、蒸発領域SRから面方向外側へ離れた凝縮領域CRに存在していても良い。この場合、第2蒸気通路51Bは、第2蒸気通路51Bの延伸方向端部に位置する接続領域MR側に向けて徐々に幅(Y方向距離)が狭くなる形状を有する。
本変形例によれば、第2蒸気通路51Bからの作動蒸気2aを、接続領域MR近傍で分岐させ、第4ランド部33Dの幅方向(Y方向)両側に位置する蒸気通路51に向けて流すことができる。これにより、作動蒸気2aをベーパーチャンバ1の広い領域に行き渡らせることができる。なお、3本以上の第2ランド部33Bが合流して第4ランド部33Dに接続されていても良い。
(第4変形例)
図14に示すように、第2ランド部33Bのうち、接続領域MR側に位置する部分が湾曲又は屈曲し、第1ランド部33Aに接続されていても良い。この場合、第1ランド部33Aに、第2蒸気通路51Bの延伸方向端部が接している。第1ランド部33Aの第1本体面31a側であって、第2蒸気通路51Bの延伸方向端部が接する接続領域MRに、第2蒸気通路51Bと連通する第1本体面側流路70が形成されている。第2蒸気通路51Bは、第2蒸気通路51Bの延伸方向端部に位置する接続領域MRに向けて徐々に幅(Y方向距離)が狭くなる形状を有する。
本変形例によれば、第2蒸気通路51Bからの作動蒸気2aを、接続領域MR近傍で分岐し、第1ランド部33Aの幅方向(Y方向)両側に位置する蒸気通路51に向けて流すことができる。これにより、作動蒸気2aをベーパーチャンバ1の広い領域に行き渡らせることができる。
(第5変形例)
図15乃至図18は、第5変形例を示す図である。このうち図15乃至図17は、それぞれ本変形例によるウィックシート30の接続領域MR周辺を示す拡大下面図である。
図15乃至図17に示すように、第1ランド部33Aの第1本体面31a側であって、第3蒸気通路51Cの延伸方向端部が接する接続領域MRに、第1本体面側流路70Aが形成されている。第1本体面側流路70Aは、第1蒸気通路51A及び第3蒸気通路51Cと連通する。接続領域MRは、第1本体面31a側から薄肉化されている。この場合、第1ランド部33Aのうち、少なくとも第1本体面側流路70Aが形成されている部分の厚みは、ウィックシート30の全体の厚みよりも薄い。
なお、図15乃至図17において、ランド部33A、33Cのうち、第1本体面31a側から薄肉化され、かつ第1本体面側流路70Aが形成される部分を灰色で示す。また図15乃至図17において、ランド部33A、33Cのうち、第1本体面31a側から薄肉化されることなく、かつ第1本体面側流路70、70Aがいずれも形成されていない部分を白色で示す。
図15に示すように、第3蒸気通路51Cの延伸方向端部が接する接続領域MRに、第1蒸気通路51A及び第3蒸気通路51Cと連通する第1本体面側流路70Aが形成されている。第1ランド部33Aのうち接続領域MRに隣接する部分は、第1本体面31a側から薄肉化されることなく、かつ第1本体面側流路70、70Aがいずれも形成されていない。
この場合、ベーパーチャンバ1の停止時には、第1本体面側流路70Aに作動液2bを蓄えることができる。またベーパーチャンバ1の動作時には、作動蒸気2aが第1本体面側流路70Aを通過し、第3蒸気通路51Cに流し込みやすくすることができる。
図16(a)に示すように、第3蒸気通路51Cの延伸方向端部が接する接続領域MRに、第1蒸気通路51A及び第3蒸気通路51Cと連通する第1本体面側流路70Aが形成されている。また、第1本体面側流路70Aは、第1ランド部33Aのうち第3ランド部33Cとの接続部分と、第3ランド部33Cのうち第1ランド部33Aとの接続部分とにも形成されている。
この場合、ベーパーチャンバ1の停止時には、第1本体面側流路70Aに作動液2bをより多く蓄えることができる。またベーパーチャンバ1の動作時には、作動蒸気2aが通過可能な領域を広くできる。さらに作動蒸気2aの流れる方向をコントロールできる。
図16(b)に示すように、第3蒸気通路51Cの延伸方向端部が接する接続領域MRに、第1蒸気通路51A及び第3蒸気通路51Cと連通する第1本体面側流路70Aが形成されている。第1本体面側流路70Aは、第1ランド部33Aのうち第3ランド部33Cとの接続部分と、第3ランド部33Cのうち第1ランド部33Aとの接続部分とにも形成されている。さらに、第3ランド部33Cのうち第1本体面側流路70Aに隣接する位置に、第1本体面31a側から薄肉化されない第1本体面側流路70が形成されている。
この場合、とりわけ第3ランド部33Cの第1本体面側流路70を凝縮領域CRに近い位置に配置することが好ましい。これにより、第1本体面側流路70が第3蒸気通路51Cに存在する作動液2bを吸い上げ、隣接する第1本体面側流路70Aに作動液2bを流し込みやすくすることができる。
図17(a)に示すように、第3蒸気通路51Cの延伸方向端部が接する接続領域MRに、第1蒸気通路51A及び第3蒸気通路51Cと連通する第1本体面側流路70Aが形成されている。また、第1本体面側流路70Aは、第1ランド部33Aのうち接続領域MRよりも蒸発領域SRから遠い部分にも形成されている。さらに、第1ランド部33Aのうち接続領域MRよりも蒸発領域SRに近い部分に、第1本体面31a側から薄肉化されない第1本体面側流路70が形成されている。なお第1ランド部33Aの第1本体面側流路70は、蒸発領域SRまで連続的に延びている。さらに、第1本体面側流路70は、第3ランド部33Cにも形成されている。
この場合、第1ランド部33Aの第1本体面側流路70を、作動液2bを蒸発領域SRに輸送する液流路として用いることができる。また、第1本体面側流路70Aに貯蔵されている作動液2bを、第1本体面側流路70を用いて蒸発領域SRに輸送しやすい。
図17(b)に示すように、第3蒸気通路51Cの延伸方向端部が接する接続領域MRに、第1蒸気通路51A及び第3蒸気通路51Cと連通する第1本体面側流路70Aが形成されている。第1ランド部33Aのうち接続領域MRよりも蒸発領域SRから遠い部分は、第1本体面31a側から薄肉化されることなく、かつ第1本体面側流路70、70Aがいずれも形成されていない。また、第1ランド部33Aのうち接続領域MRよりも蒸発領域SRに近い部分に、第1本体面31a側から薄肉化されない第1本体面側流路70が形成されている。なお第1ランド部33Aの第1本体面側流路70は、蒸発領域SRまで連続的に延びている。さらに、第1本体面側流路70は、第3ランド部33Cにも形成されている。
この場合、第1ランド部33Aのうち接続領域MRに隣接する部分が第1本体面31a側から薄肉化されないので、接続領域MRが厚み方向に変形することを抑制できる。
なお図15乃至図17には示していないが、第1本体面側流路70Aは、第2蒸気通路51Bの延伸方向端部が接する接続領域MRに形成されていても良い。
図18(a)-(c)は、それぞれ第1ランド部33Aの接続領域MRにおける断面(図15乃至図17のXVIII-XVIII線断面)を示している。図15乃至図17に示す第1ランド部33Aの接続領域MRは、図18(a)-(c)のいずれの断面形状を有していても良い。
図18(a)に示すように、第1本体面側流路70Aは、複数の第1本体面側主流溝71Aと、複数の凸部列73Aとを有しても良い。複数の第1本体面側主流溝71Aは、互いに並走して配置されている。各凸部列73Aは、互いに隣り合う第1本体面側主流溝71Aの間に設けられている。各凸部列73Aは、第1ランド部33Aの長手方向に沿って配列された複数の凸部74Aを含む。凸部74Aは、第1本体面31aよりも第2本体面31b側に位置しており、下側シート10から離間している。なお、凸部74Aは、平面視で千鳥状に配置されても良い。あるいは、各凸部列73Aは、それぞれ1つの凸部74Aを含み、この凸部74Aが第1ランド部33Aの長手方向に沿って線状に延びていても良い。
この場合、第1本体面側流路70Aの凸部74Aが第1本体面31aから離れているため、第1ランド部33Aと下側シート10との間の空間が広くなる。これにより、第1本体面側流路70Aに作動液2bをより多く蓄えることができる。さらに、ベーパーチャンバ1の動作時には、ベーパーチャンバ1の広い領域に作動蒸気2aを行き渡らせることができる。
図18(a)において、第1本体面側主流溝71Aと凸部列73Aとは、それぞれ作動蒸気2aの流れ方向(図18(a)の矢印方向)に延びていてもよい。この場合、第1蒸気通路51Aから輸送されてきた作動蒸気2aの流れが乱れにくいため、作動蒸気2aをより効率良く第3蒸気通路51Cに送り込むことができる。これにより蒸発領域SRからの熱をベーパーチャンバ1の面内で均一に行き渡らせることができる。
図18(b)に示すように、第1本体面側流路70Aは、第1本体面側主流溝71Aと、第1本体面側主流溝71Aの幅方向両端に位置する一対の凸部74Aとを有しても良い。各凸部74Aは、第1本体面31aよりも第2本体面31b側に位置する。すなわち、凸部74Aは下側シート10から離間している。この場合、第1本体面側流路70Aに作動液2bをより多く蓄えることができる。
図18(c)に示すように、第1本体面側流路70Aは、平坦面70sを有しても良い。平坦面70sは、第1本体面31aよりも第2本体面31b側に位置する。すなわち、平坦面70sは下側シート10から離間している。この場合、作動蒸気2aをより効率良く第3蒸気通路51Cに送り込むことができる。
(第2の実施の形態)
次に、図19乃至図36を参照して、第2の実施の形態について説明する。図19乃至図36は、第2の実施の形態を示す図である。図19乃至図36において、図1乃至図18に示す第1の実施の形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
図19乃至図26を用いて、本実施の形態におけるベーパーチャンバ、ベーパーチャンバ用のウィックシート及び電子機器について説明する。本実施の形態におけるベーパーチャンバ1は、電子機器Eに収容された熱源(発熱体)としてのデバイスD1、D2を冷却するために、電子機器Eに搭載される装置である。デバイスD1、D2としては、上述したデバイスDと同様のものを用いても良い。
図19に示すように、電子機器E(例えばタブレット端末)は、ハウジングHと、ハウジングH内に収容された複数(この場合は2つ)のデバイスD1、D2と、ベーパーチャンバ1と、を備えている。ベーパーチャンバ1は、ハウジングH内に収容されて、デバイスD1、D2に熱的に接触するように配置される。これにより、電子機器Eの使用時にデバイスD1、D2で発生する熱をベーパーチャンバ1が受けることができる。ベーパーチャンバ1が受けた熱は、後述する作動流体2a、2bを介してベーパーチャンバ1の外部に放出される。このようにして、デバイスD1、D2は効果的に冷却される。電子機器Eがタブレット端末である場合には、デバイスD1、D2は、中央演算処理装置等に相当する。本実施の形態において、デバイスD1が第1の熱源に対応し、デバイスD2が第2の熱源に対応する。
次に、本実施の形態によるベーパーチャンバ1について説明する。図20及び図21に示すように、ベーパーチャンバ1は、下側シート10(第1シート)と、上側シート20(第2シート)と、ベーパーチャンバ用のウィックシート(以下、単にウィックシート30と記す)と、を備えている。ウィックシート30は、下側シート10と上側シート20との間に介在されている。
図20に示すように、ウィックシート30上には、作動流体2a、2bが蒸発する領域である第1熱源領域SR1及び第2熱源領域SR2(以下、熱源領域SR1、SR2ともいう)と、作動流体2a、2bが凝縮する領域である凝縮領域CRと、が配置されている。
第1熱源領域SR1は、平面視で第1の熱源であるデバイスD1と重なる領域であり、デバイスD1が取り付けられる領域である。第2熱源領域SR2は、平面視で第2の熱源であるデバイスD2と重なる領域であり、デバイスD2が取り付けられる領域である。熱源領域SR1、SR2は、ベーパーチャンバ1の任意の場所に配置できる。本実施の形態においては、熱源領域SR1、SR2は、X方向に互いに間隔を空けて形成されている。熱源領域SR1、SR2にデバイスD1、D2からの熱がそれぞれ伝わり、この熱によって液状の作動流体(適宜、作動液2bと記す)が熱源領域SR1、SR2において蒸発する。このため、熱源領域SR1、SR2は、作動流体2a、2bが蒸発する蒸発領域を構成する。デバイスD1、D2からの熱は、平面視でデバイスD1、D2に重なる領域だけではなく、当該領域の周辺にも伝わり得る。ここで平面視とは、ベーパーチャンバ1がデバイスD1、D2から熱を受ける面(上側シート20の第2上側シート面20b)及び受けた熱を放出する面(下側シート10の第1下側シート面10a)に直交する方向から見た状態である。すなわち平面視とは、例えば、図20に示すように、ベーパーチャンバ1を上方から見た状態、又は下方から見た状態に相当している。
凝縮領域CRは、平面視でデバイスD1、D2と重ならない領域であって、主として作動蒸気2aが熱を放出して凝縮する領域である。凝縮領域CRは、ベーパーチャンバ1の面内で、熱源領域SR1、SR2から離れた場所に存在する領域ということもできる。凝縮領域CRにおいて作動蒸気2aからの熱が下側シート10に放出され、作動蒸気2aが凝縮領域CRにおいて冷却されて凝縮する。
図21に示すように、ウィックシート30は、蒸気流路部50と、蒸気流路部50に隣接して配置された液流路部60とを備えている。またウィックシート30は、第1本体面31aと、第1本体面31aとは反対側に位置する第2本体面31bと、を有している。第1本体面31aは、下側シート10の側に配置されており、第2本体面31bは、上側シート20の側に配置されている。
本実施の形態では、ランド部33は、平面視で細長状に延びている。ランド部33の平面形状は、細長の矩形形状、円弧、U字又はS字等の曲線状、V字形又はL字形等の屈曲した線状等、任意の形状とすることができる。図22及び図23においては、複数のランド部33は、平面視で一直線状に延びるものと、L字状のものと、コ字状(U字状)のものとを含む。また、各ランド部33は、ランド部33の幅方向において他のランド部33から離間して配置されている。各ランド部33の周囲を作動蒸気2aが流れて、凝縮領域CRに向かって輸送されるように構成されている。これにより、作動蒸気2aの流れが妨げられることを抑制している。ランド部33の幅w1(図21参照)は、例えば、30μm以上3000μm以下であってもよい。ここで、ランド部33の幅w1は、ランド部33の延伸方向に直交する方向(幅方向)におけるランド部33の寸法であって、ランド部33の最も太い位置(例えば、突起部55が存在する位置)における寸法を意味している。
図22及び図23に示すように、本実施の形態において、複数の蒸気通路51は、連結蒸気通路51Fと、単独蒸気通路51Gと、分岐蒸気通路51Hとを含む。連結蒸気通路51F、単独蒸気通路51G及び分岐蒸気通路51Hは、いずれも作動蒸気2aが通る流路であり、複数のランド部33同士の間、又は枠体部32とランド部33との間に形成されている。連結蒸気通路51F、単独蒸気通路51G及び分岐蒸気通路51Hの断面形状等の基本的な構成は、それぞれ上述した蒸気通路51の構成と同一である。連結蒸気通路51F、単独蒸気通路51G及び分岐蒸気通路51Hは、それぞれ一直線状に延びていても良く、あるいは、円弧、S字等の曲線状、V字形、L字形等の屈曲した線状等、任意の形状を有していても良い。なお、本明細書において、連結蒸気通路51Fと、単独蒸気通路51Gと、分岐蒸気通路51Hとをまとめて、単に蒸気通路51ともいう。
連結蒸気通路51Fは、第1熱源領域SR1と第2熱源領域SR2とを互いに接続する蒸気流路である。すなわち連結蒸気通路51Fは、その延伸方向の一端が第1熱源領域SR1と重なり、延伸方向の他端が第2熱源領域SR2と重なる。連結蒸気通路51Fにおいては、第1熱源領域SR1側と第2熱源領域SR2側との間で作動蒸気2aが流される。とりわけ、デバイスD1が駆動し、デバイスD2が停止している場合には、連結蒸気通路51Fにより第1熱源領域SR1側から第2熱源領域SR2側に向けて作動蒸気2aが流れる。一方、デバイスD1が停止し、デバイスD2が駆動している場合には、連結蒸気通路51Fにより第2熱源領域SR2側から第1熱源領域SR1側に向けて作動蒸気2aが流れる。
単独蒸気通路51Gは、第1熱源領域SR1と第2熱源領域SR2とのうちいずれか一方に接続され、他方に接続されていない蒸気流路である。すなわち単独蒸気通路51Gは、その延伸方向の一端が第1熱源領域SR1又は第2熱源領域SR2と重なり、延伸方向の他端が第1熱源領域SR1及び第2熱源領域SR2と重ならない。単独蒸気通路51Gの延伸方向の他端は、熱源領域SR1、SR2から面方向外側へ離れた位置にある凝縮領域CRに存在することが好ましく、例えば後述する支持部39で終端していても良い。単独蒸気通路51Gにおいては、第1熱源領域SR1又は第2熱源領域SR2から面方向外側に向けて作動蒸気2aが流される。とりわけ、駆動しているデバイスD1、D2に対応する熱源領域SR1、SR2側から面方向外側に向けて、作動蒸気2aが流れる。なお、ウィックシート30内には、熱源領域SR1、SR2のいずれか一方に接続される単独蒸気通路51Gが設けられ、他方に接続される単独蒸気通路51Gは設けられなくても良い。
分岐蒸気通路51Hは、連結蒸気通路51Fの延伸方向の途中に接続された蒸気流路であり、熱源領域SR1、SR2のいずれにも重ならない蒸気流路である。すなわち分岐蒸気通路51Hは、その延伸方向の一端が連結蒸気通路51Fに接続され、延伸方向の他端が熱源領域SR1、SR2以外の位置に存在する。分岐蒸気通路51Hの延伸方向の他端は、熱源領域SR1、SR2から面方向外側へ離れた位置にある凝縮領域CRに存在することが好ましく、例えば後述する支持部39で終端していても良い。あるいは、分岐蒸気通路51Hの延伸方向の他端は、他の蒸気通路51に接続されていても良い。分岐蒸気通路51Hにおいては、連結蒸気通路51F側から面方向外側に向けて作動蒸気2aが流される。とりわけ、デバイスD1が駆動し、デバイスD2が停止している場合には、連結蒸気通路51F及び分岐蒸気通路51Hにより第1熱源領域SR1側から面方向外側に向けて作動蒸気2aが流れる。一方、デバイスD1が停止し、デバイスD2が駆動している場合には、連結蒸気通路51F及び分岐蒸気通路51Hにより第2熱源領域SR2側から面方向外側に向けて作動蒸気2aが流れる。また、デバイスD1、D2が両方とも駆動している場合には、連結蒸気通路51F及び分岐蒸気通路51Hにより熱源領域SR1、SR2側から面方向外側に向けて作動蒸気2aが流れる。なお、ウィックシート30内には、分岐蒸気通路51Hが設けられていなくても良い。また、他の熱源領域(例えば後述する第3熱源領域SR3)が設けられている場合、分岐蒸気通路51Hは、他の熱源領域と重なっても良い。
図22及び図23に示すように、蒸気流路部50内に、ランド部33の延伸方向端部を枠体部32に支持する支持部39が設けられている。支持部39は、互いに隣り合うランド部33同士を支持しても良く、1本のランド部33を支持しても良い。支持部39は、枠体部32の一辺(この場合は、Y方向マイナス側に位置する一辺)に沿って設けられている。なお、支持部39は、枠体部32を構成する辺の一部又は全部に設けられていても良い。支持部39は、蒸気流路部50を拡散する作動蒸気2aの流れを妨げないように形成されていることが好ましい。この場合、支持部39は、ウィックシート30の第1本体面31a側に配置され、第2本体面31b側には、蒸気流路部50に連通する空間が形成されている。なお、図22及び図23において、支持部39が灰色で示されている。支持部39は、第2本体面31b側からハーフエッチングにより薄肉化されている。支持部39はウィックシート30を厚み方向に貫通しない領域であり、枠体部32より厚みが薄い。これにより、支持部39の厚さをウィックシート30の厚さよりも薄くでき、蒸気流路部50が支持部39によって分断されることを防止できる。しかしながら、これに限らず、支持部39は、第2本体面31b側に配置されていても良い。また、支持部39の第1本体面31a側の面及び第2本体面31b側の面の両方に、蒸気流路部50に連通する空間が形成されるようにしてもよい。
図22に示すように、本実施の形態において、複数の液流路部60は、連結液流路60Aと、単独液流路60Bと、独立液流路60Dとを含む。連結液流路60A、単独液流路60B及び独立液流路60Dは、いずれも作動液2bが通る流路であり、各ランド部33上に形成されている。連結液流路60A、単独液流路60B及び独立液流路60Dの形状等の基本的な構成は、それぞれ第1の実施の形態の液流路部60の構成と同一であっても良い。連結液流路60A、単独液流路60B及び独立液流路60Dは、それぞれ各ランド部33の形状に沿って線状に延びている。なお、本明細書において、連結液流路60Aと、単独液流路60Bと、独立液流路60Dとをまとめて、単に液流路部60ともいう。
連結液流路60Aは、第1熱源領域SR1と第2熱源領域SR2とを互いに接続する液流路である。すなわち連結液流路60Aは、その延伸方向の一端が第1熱源領域SR1と重なり、延伸方向の他端が第2熱源領域SR2と重なる。連結液流路60Aにおいては、第1熱源領域SR1側と第2熱源領域SR2側との間で作動液2bが流される。とりわけ、デバイスD1が駆動し、デバイスD2が停止している場合には、連結液流路60Aにより第2熱源領域SR2側から第1熱源領域SR1側に向けて作動液2bが流される。一方、デバイスD1が停止し、デバイスD2が駆動している場合には、連結液流路60Aにより第1熱源領域SR1側から第2熱源領域SR2側に向けて作動液2bが流される。
単独液流路60Bは、第1熱源領域SR1と第2熱源領域SR2とのうちいずれか一方に接続され、他方に接続されていない液流路である。すなわち単独液流路60Bは、その延伸方向の一端が第1熱源領域SR1又は第2熱源領域SR2と重なり、延伸方向の他端は第1熱源領域SR1及び第2熱源領域SR2と重ならない。単独液流路60Bの延伸方向の他端は、熱源領域SR1、SR2から面方向外側へ離れた位置にある凝縮領域CRに存在することが好ましく、例えば支持部39で終端していても良い。単独液流路60Bにおいては、面方向外側にある凝縮領域CRから第1熱源領域SR1又は第2熱源領域SR2に向けて作動液2bが流される。とりわけ、作動液2bは、凝縮領域CRから駆動しているデバイスD1、D2に対応する熱源領域SR1、SR2側に向けて流れる。なお、ウィックシート30内には、熱源領域SR1、SR2のいずれか一方に接続される単独液流路60Bが設けられ、他方に接続される単独液流路60Bは設けられなくても良い。
独立液流路60Dは、他の液流路部60(連結液流路60A、単独液流路60B等)に接続されることなく、かつ熱源領域SR1、SR2のいずれにも重ならない液流路である。すなわち独立液流路60Dは、その延伸方向の両端が他の液流路部60以外かつ熱源領域SR1、SR2以外の位置に存在する。独立液流路60Dの延伸方向の一端は、熱源領域SR1、SR2から面方向外側へ離れた位置にある凝縮領域CRに存在することが好ましく、例えば上述した支持部39で終端していても良い。独立液流路60Dにおいては、面方向外側から熱源領域SR1、SR2側に向けて作動液2bが流される。なお、ウィックシート30内には、独立液流路60Dが設けられていなくても良い。
図24は、各液流路部60(連結液流路60A、単独液流路60B又は独立液流路60D)の上面を示す拡大図である。図24に示すように、液流路部60は、作動液2bが通るとともに互いに並走して配置された複数の液流路主流溝61と、液流路主流溝61に連通する複数の液流路連絡溝65と、を有している。なお、図24に示す例では、各ランド部33に6本の液流路主流溝61が含まれているが、これに限られるものではない。各ランド部33に含まれる液流路主流溝61の本数は任意であり、例えば、3本以上20本以下としても良い。
次に、図25(a)(b)を参照して、第1熱源領域SR1及び第2熱源領域SR2と、連結蒸気通路51F及び連結液流路60Aとの配置関係について説明する。図25(a)(b)は、ウィックシート30を示す概略上面図である。図25(a)(b)において、便宜上、第1熱源領域SR1、第2熱源領域SR2、連結蒸気通路51F及び連結液流路60A以外の要素の図示を省略している。
図25(a)に示すように、ウィックシート30上に、第1熱源領域SR1と第2熱源領域SR2とが互いに離間して配置されている。この場合、第1熱源領域SR1と第2熱源領域SR2との中心間距離をLaで示している。中心間距離Laは、第1熱源領域SR1の中心C1と第2熱源領域SR2の中心C2との、ウィックシート30上での最短距離である。図25(a)において、中心間距離Laは、中心C1と中心C2とを結んだ線分の長さに等しい。第1熱源領域SR1の中心C1と第2熱源領域SR2の中心C2とは、それぞれ第1熱源領域SR1及び第2熱源領域SR2の重心としても良い。
図25(b)に示すように、第1熱源領域SR1の中心C1と第2熱源領域SR2の中心C2とを結んだ線分が、ウィックシート30の面内から外れることも考えられる。この場合、中心間距離Laは、中心C1と中心C2とを結ぶ線のうち、ウィックシート30の面内を通過する最短距離の線の長さをいう。
図25(a)において、第1熱源領域SR1と第2熱源領域SR2とは、連結蒸気通路51F及び連結液流路60Aによって互いに接続されている。この場合、連結蒸気通路51F及び連結液流路60Aの長さを、それぞれLb、Lcで示している。連結蒸気通路51Fの長さLbは、連結蒸気通路51Fの幅方向中心を結んだ長さであり、熱源領域SR1、SR2に重ならない領域の長さをいう。また連結液流路60Aの長さLcは、連結液流路60Aの幅方向中心を結んだ長さであり、熱源領域SR1、SR2に重ならない領域の長さをいう。
このとき、連結蒸気通路51Fの長さLbは、上記中心間距離Laの2倍以下とすることが好ましい(Lb<2La)。連結蒸気通路51Fの長さLbを中心間距離Laの2倍以下とすることにより、連結蒸気通路51Fの途中の部分が熱源領域SR1、SR2から過度に離れることがない。これにより、連結蒸気通路51Fの途中で作動蒸気2aが凝縮して作動液2bに変化することを抑えることができる。
同様に、連結液流路60Aの長さLcは、上記中心間距離Laの2倍以下とすることが好ましい(Lc<2La)。連結液流路60Aの長さLcを中心間距離Laの2倍以下とすることにより、連結液流路60Aの途中の部分が熱源領域SR1、SR2から過度に離れることがない。これにより、熱源領域SR1、SR2から離れた位置にある連結液流路60Aに隣接する連結蒸気通路51Fで、作動蒸気2aが凝縮して作動液2bに変化することを抑えることができる。
なお、図22に示すように、連結蒸気通路51F及び連結液流路60Aの長さLb、Lcが、それぞれ第1熱源領域SR1と第2熱源領域SR2との中心間距離Laの1倍以下となっても良い。
本実施の形態において、第1熱源領域SR1と第2熱源領域SR2とは、少なくとも1本の連結蒸気通路51F及び少なくとも1本の連結液流路60Aによって互いに接続されている。しかしながら、これに限られるものではない。例えば、第1熱源領域SR1と第2熱源領域SR2とは、少なくとも1本の連結蒸気通路51Fによって互いに接続され、連結液流路60Aによって互いに接続されていなくても良い。あるいは、第1熱源領域SR1と第2熱源領域SR2とは、少なくとも1本の連結液流路60Aによって互いに接続され、連結蒸気通路51Fによって互いに接続されていなくても良い。
本実施の形態によるベーパーチャンバ1及びウィックシート30は、第1の実施の形態の場合と略同様にして作製できる(図10参照)。
また本実施の形態によるベーパーチャンバ1の作動方法は、デバイスD1、D2が複数設けられていることのほか、第1の実施の形態の場合と略同様である。
本実施の形態において、ベーパーチャンバ1には、複数(2つ)のデバイスD1、D2が取り付けられている。この場合、デバイスD1、D2は、同時に2つとも駆動する場合のほか、デバイスD1、D2のいずれか一方のみが駆動する場合もある。
図26(a)-(c)は、それぞれ図22に示すウィックシート30において、デバイスD1、D2の両方が駆動している場合(図26(a))、デバイスD1のみが駆動している場合(図26(b))、デバイスD2のみが駆動している場合(図26a(c))を示す。図26(a)-(c)において、駆動しているデバイスD1、D2に対応する熱源領域SR1、SR2を太線で示し、駆動していないデバイスD1、D2に対応する熱源領域SR1、SR2を二点鎖線で示す。
図26(a)に示すように、デバイスD1、D2の両方が駆動している場合、熱源領域SR1、SR2から生じた作動蒸気2aは、熱源領域SR1、SR2側から、連結蒸気通路51F及び分岐蒸気通路51Hを順次介して、凝縮領域CR側に輸送される。その後、作動蒸気2aは、凝縮領域CRで作動液2bに変化し、この作動液2bは、単独液流路60Bを介して熱源領域SR1、SR2側に戻される。
あるいは、熱源領域SR1、SR2から生じた作動蒸気2aの一部は、熱源領域SR1、SR2から延びる単独蒸気通路51Gを介して、凝縮領域CR側に輸送される。その後、作動蒸気2aは、凝縮領域CRで作動液2bに変化し、この作動液2bは、単独液流路60Bを介して熱源領域SR1、SR2側に戻される。
図26(b)に示すように、デバイスD1のみが駆動している場合、第1熱源領域SR1から生じた作動蒸気2aは、連結蒸気通路51Fから第2熱源領域SR2を通過し、第2熱源領域SR2から延びる単独蒸気通路51Gを介して、凝縮領域CR側に輸送される。その後、作動蒸気2aは、凝縮領域CRで作動液2bに変化し、この作動液2bは、第2熱源領域SR2から延びる単独液流路60Bから第2熱源領域SR2を通過し、連結液流路60Aを介して第1熱源領域SR1側に戻される。
あるいは、第1熱源領域SR1から生じた作動蒸気2aの一部は、第1熱源領域SR1から延びる単独蒸気通路51Gを介して、凝縮領域CR側に輸送される。その後、作動蒸気2aは、凝縮領域CRで作動液2bに変化し、この作動液2bは、第1熱源領域SR1から延びる単独液流路60Bを介して第1熱源領域SR1側に戻される。
図26(c)に示すように、デバイスD2のみが駆動している場合、第2熱源領域SR2から生じた作動蒸気2aは、連結蒸気通路51Fから第1熱源領域SR1を通過し、第1熱源領域SR1から延びる単独蒸気通路51Gを介して、凝縮領域CR側に輸送される。その後、作動蒸気2aは、凝縮領域CRで作動液2bに変化し、この作動液2bは、第1熱源領域SR1から延びる単独液流路60Bから第1熱源領域SR1を通過し、連結液流路60Aを介して第2熱源領域SR2側に戻される。
あるいは、第2熱源領域SR2から生じた作動蒸気2aの一部は、第2熱源領域SR2から延びる単独蒸気通路51Gを介して、凝縮領域CR側に輸送される。その後、作動蒸気2aは、凝縮領域CRで作動液2bに変化し、この作動液2bは、第2熱源領域SR2から延びる単独液流路60Bを介して第2熱源領域SR2側に戻される。
このように本実施の形態によれば、第1熱源領域SR1と第2熱源領域SR2とは、少なくとも1本の連結蒸気通路51Fによって互いに接続されている。これにより、一方のデバイスD1(D2)のみが駆動している場合に、駆動しているデバイスD1(D2)に対応する熱源領域SR1(SR2)から生じた作動蒸気2aを、連結蒸気通路51Fを介して凝縮領域CR側に輸送できる。また、第1熱源領域SR1と第2熱源領域SR2とは、少なくとも1本の連結液流路60Aによって互いに接続されている。このため、一方のデバイスD1(D2)のみが駆動している場合に、凝縮領域CRで生じた作動液2bを、連結液流路60Aを介して、第1熱源領域SR1(第2熱源領域SR2)側に戻すことができる。これにより、デバイスD1、D2の両方が駆動している場合だけでなく、一方のデバイスD1(D2)のみが駆動している場合にも、熱源から遠い方向に作動蒸気2aを輸送するとともに、凝縮した作動液2bを熱源側に戻すことができる。この結果、ベーパーチャンバ1の面内で熱の伝わりにくい領域を減らし、ベーパーチャンバ1の広い範囲を熱の輸送に用いることができ、熱源からの熱をベーパーチャンバ1の面内で均一に行き渡らせることができる。
また本実施の形態によれば、蒸気通路51は、第1熱源領域SR1及び第2熱源領域SR2のうちいずれか一方に接続され、他方に接続されていない単独蒸気通路51Gを含む。これにより、駆動しているデバイスD1(D2)に対応する熱源領域SR1(SR2)から生じた作動蒸気2aを、単独蒸気通路51Gを介して凝縮領域CR側に輸送できる。
また本実施の形態によれば、蒸気通路51は、連結蒸気通路51Fの途中に接続された分岐蒸気通路51Hを含む。これにより、デバイスD1、D2の両方が駆動している場合に、熱源領域SR1、SR2から生じた作動蒸気2aを、連結蒸気通路51F及び分岐蒸気通路51Hを順次介して、凝縮領域CR側に輸送できる。
また本実施の形態によれば、液流路部60は、第1熱源領域SR1及び第2熱源領域SR2のうちいずれか一方に接続され、他方に接続されていない単独液流路60Bを含む。これにより、凝縮領域CRで凝縮した作動液2bを、単独液流路60Bを介して、第1熱源領域SR1又は第2熱源領域SR2側に戻すことができる。
(ウィックシートの変形例)
次に、図27乃至図35を参照して、第2の実施の形態によるウィックシートの各種変形例について説明する。図27乃至図35は、それぞれ変形例によるウィックシート30を示す拡大上面図である。図27乃至図35において、図19乃至図26に示す形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
(ウィックシートの第1変形例)
図27に示すように、第1熱源領域SR1と第2熱源領域SR2とは、連結液流路60Aによって互いに接続されている。一方、図27において、第1熱源領域SR1と第2熱源領域SR2とは、連結蒸気通路51Fによって互いに接続されていない。
また連結液流路60Aの延伸方向の途中には、分岐液流路60Cが接続されている。分岐液流路60Cは、連結液流路60Aに接続される液流路であり、熱源領域SR1、SR2のいずれにも重ならない液流路である。このように分岐液流路60Cを設けたことにより、凝縮領域CRで凝縮した作動液2bを、分岐液流路60C及び連結液流路60Aを順次介して、熱源領域SR1、SR2側に戻すことができる。
さらに、連結液流路60Aの延伸方向の途中に、ブリッジ41が形成されている。ブリッジ41は、裏面(第1本体面31a)側から薄肉化されている。ブリッジ41の薄肉化された部分は、連結液流路60Aに交差する蒸気通路51Eと連通している。ブリッジ41を設けたことにより、表面(第2本体面31b)側に位置する連結液流路60Aによる作動液2bの流れを確保しつつ、裏面側に位置する蒸気通路51Eにおいて作動蒸気2aの流れを阻害しないようにすることができる。
(ウィックシートの第2変形例)
図28(a)(b)において、第1熱源領域SR1と第2熱源領域SR2とは、複数の連結蒸気通路51F及び複数の連結液流路60Aによって互いに接続され、一部の連結蒸気通路51Fには、分岐蒸気通路51Hが接続されている。また分岐蒸気通路51Hに隣接して独立液流路60Dが配置されている。独立液流路60Dは、熱源領域SR1、SR2からそれぞれ延びる複数の単独液流路60Bに対して平行に延びている。独立液流路60Dが配置されていることにより、ウィックシート30の面内での作動液2bの回収が容易となる。
図28(a)に示すように、一部の連結蒸気通路51Fには、複数の分岐蒸気通路51Hが接続されていても良い。これにより、とりわけデバイスD1、D2が両方とも駆動している場合に、複数の分岐蒸気通路51Hにより熱源領域SR1、SR2側から凝縮領域CR側に向けて効率良く作動蒸気2aを流すことができる。
図28(b)に示すように、第2熱源領域SR2から延びる一部の単独蒸気通路51Gは、平面視で曲線状に湾曲する湾曲部Rを有していても良い。また、この単独蒸気通路51Gに隣接する単独液流路60Bも、単独蒸気通路51Gと同様に平面視で曲線状に湾曲する。単独蒸気通路51Gが湾曲部Rを有することにより、単独蒸気通路51Gを流れる作動蒸気2aの蒸気抵抗を小さくし、ベーパーチャンバ1の面内で熱を伝わりやすくすることができる。なお、単独蒸気通路51Gに限らず、連結蒸気通路51F又は分岐蒸気通路51Hが平面視で曲線状に湾曲していても良い。
(ウィックシートの第3変形例)
図29(a)、(b)に示すように、ウィックシート30は平面視でT字状であっても良い。この場合、ウィックシート30は、第1端部30aと、第1端部30aの反対側に位置する第2端部30bと、第1端部30a及び第2端部30bに対して横方向に位置する第3端部30cとを有する。
図29(a)において、第1熱源領域SR1は第1端部30a側に位置し、第2熱源領域SR2は第3端部30c側に位置する。凝縮領域CRは第2端部30b側に位置する。第1熱源領域SR1と第2熱源領域SR2とは、平面視L字状の連結蒸気通路51Fと平面視L字状の連結液流路60Aによって互いに接続されている。一部の連結液流路60Aの途中には、分岐液流路60Cが接続されている。また第1熱源領域SR1には、平面視一直線状の単独蒸気通路51Gと平面視一直線状の単独液流路60Bがそれぞれ接続されている。さらに第2熱源領域SR2には、平面視L字状の単独蒸気通路51Gと平面視L字状の単独液流路60Bがそれぞれ接続されている。
図29(b)において、第1熱源領域SR1は第1端部30a側に位置し、第2熱源領域SR2は第2端部30b側に位置する。凝縮領域CRは第3端部30c側に位置する。第1熱源領域SR1と第2熱源領域SR2とは、平面視一直線状の連結蒸気通路51Fと平面視一直線状の連結液流路60Aによって互いに接続されている。一部の連結液流路60Aの途中には、分岐液流路60Cが接続されている。また第1熱源領域SR1には、平面視L字状の単独蒸気通路51Gと平面視L字状の単独液流路60Bがそれぞれ接続されている。さらに第2熱源領域SR2には、平面視L字状の単独蒸気通路51Gと平面視L字状の単独液流路60Bと平面視一直線状の単独蒸気通路51Gと平面視一直線状の単独液流路60Bとがそれぞれ接続されている。
本変形例によれば、一方のデバイスD1(D2)のみが駆動している場合に、駆動していないデバイスD2(D1)側に作動蒸気2aを輸送できる。すなわち、駆動していないデバイスD2(D1)側の領域を凝縮領域CRとして用いることができる。これにより、ベーパーチャンバ1の面内の広い範囲を熱の輸送に用いることができ、熱源からの熱をベーパーチャンバ1の面内で均一に行き渡らせることができる。
(ウィックシートの第4変形例)
図30(a)-(c)に示すように、ウィックシート30は平面視で略h字状であっても良い。この場合、ウィックシート30は、第1端部30aと、第1端部30aの反対側に位置する第2端部30bと、第1端部30a及び第2端部30bに対して横方向に位置する第3端部30cとを有する。図30(a)-(c)において、第1熱源領域SR1は第1端部30a側に位置し、第2熱源領域SR2は第2端部30b側に位置する。凝縮領域CRは第3端部30c側に位置する。
図30(a)-(c)において、第1熱源領域SR1と第2熱源領域SR2とは、平面視一直線状の連結蒸気通路51Fと平面視一直線状の連結液流路60Aによって互いに接続されている。一部の連結液流路60Aの途中には、分岐液流路60Cが接続されている。また第1熱源領域SR1には、単独蒸気通路51Gと単独液流路60Bがそれぞれ接続されている。さらに第2熱源領域SR2には、単独蒸気通路51Gと単独液流路60Bとがそれぞれ接続されている。
図30(a)において、熱源領域SR1、SR2から第3端部30c側に延びる単独蒸気通路51G、単独液流路60B及び分岐液流路60Cは、それぞれ平面視で直角に折れ曲がる屈曲部を有している。
図30(b)において、熱源領域SR1、SR2から第3端部30c側に延びる単独蒸気通路51G、単独液流路60B及び分岐液流路60Cは、それぞれ平面視で曲線状に湾曲する湾曲部Rを有している。これにより、単独蒸気通路51Gを流れる作動蒸気2aの蒸気抵抗を小さくし、ベーパーチャンバ1の面内で熱を伝わりやすくすることができる。また、分岐液流路60Cと連結液流路60Aとの接続部において湾曲しており、この接続部には、液流路が存在しない接続凹部68が存在している。接続凹部68は、平面視略三角形状であるが、これに限らず、周囲に位置する分岐液流路60Cと連結液流路60Aの形状に応じた平面形状としても良い。これにより、分岐液流路60Cと連結液流路60Aとの接続部に作動液2bが溜まることを抑え、ベーパーチャンバ1が作動液2bの凝固点よりも低い環境に置かれたとき、接続部上に残存する作動液2bが凍結し、ベーパーチャンバ1が破損することを回避できる。
図30(c)において、分岐液流路60Cと連結液流路60Aとの接続部において湾曲しており、この接続部には、液流路を有する接続液流路69が存在している。接続液流路69は、平面視略三角形状であるが、これに限らず、周囲に位置する分岐液流路60Cと連結液流路60Aの形状に応じた平面形状としても良い。これにより、分岐液流路60Cからの作動液2bを、接続液流路69を介して連結液流路60A側に流しやすくすることができる。このほかの構成は、図30(b)に示す構成と同様である。
(ウィックシートの第5変形例)
図31(a)、(b)に示すように、ウィックシート30上には、第1熱源領域SR1及び第2熱源領域SR2に加え、さらに第3熱源領域SR3が配置されている。第3熱源領域SR3には、第3の熱源であるデバイスD3が配置される。なお、図31(a)、(b)において、X方向マイナス側から順に、第1熱源領域SR1、第2熱源領域SR2及び第3熱源領域SR3が配置されているが、熱源領域SR1、SR2、SR3の位置関係はこれに限られるものではない。
図31(a)(b)において、第1熱源領域SR1と第2熱源領域SR2とは、連結蒸気通路51Fと連結液流路60Aによって互いに接続されている。一部の連結蒸気通路51Fの途中には、分岐蒸気通路51Hが接続されている。また第1熱源領域SR1及び第2熱源領域SR2には、それぞれ単独蒸気通路51Gと単独液流路60Bが接続されている。なお、第1熱源領域SR1と第2熱源領域SR2とは、連結蒸気通路51F及び連結液流路60Aのうちの一方によって接続されていても良い。
また第2熱源領域SR2と第3熱源領域SR3とは、連結蒸気通路51Fと連結液流路60Aとによって互いに接続されている。一部の連結蒸気通路51Fの途中には、分岐蒸気通路51Hが接続されている。また第3熱源領域SR3には、単独蒸気通路51Gと単独液流路60Bとがそれぞれ接続されている。なお、第2熱源領域SR2と第3熱源領域SR3とは、連結蒸気通路51F及び連結液流路60Aのうちの一方によって接続されていても良い。
また分岐蒸気通路51Hに隣接して独立液流路60Dが配置されている。独立液流路60Dは、熱源領域SR1、SR2、SR3からそれぞれ延びる単独液流路60Bに対して平行に延びている。独立液流路60Dが配置されていることにより、ウィックシート30の面内での作動液2bの回収が容易となる。
図31(a)において、第3熱源領域SR3から延びる一部の単独蒸気通路51Gは、平面視で曲線状に湾曲する湾曲部Rを有している。この単独蒸気通路51Gに隣接する単独液流路60Bも、単独蒸気通路51Gと同様に平面視で曲線状に湾曲する。単独蒸気通路51Gが湾曲部Rを有することにより、単独蒸気通路51Gを流れる作動蒸気2aの蒸気抵抗を小さくし、ベーパーチャンバ1の面内で熱を伝わりやすくすることができる。
図31(b)において、第2熱源領域SR2と第3熱源領域SR3とを接続する連結蒸気通路51Fは、平面視で曲線状に湾曲する湾曲部Rを有している。この連結蒸気通路51Fに隣接する連結液流路60Aも、連結蒸気通路51Fと同様に平面視で曲線状に湾曲する。連結蒸気通路51Fが湾曲部Rを有することにより、連結蒸気通路51Fを流れる作動蒸気2aの蒸気抵抗を小さくし、ベーパーチャンバ1の面内で熱を伝わりやすくすることができる。
本変形例によれば、3つのデバイスD1-D3のうちのいずれか1つ又は2つが駆動しているときに、駆動していないデバイス側に作動蒸気2aを輸送できる。これにより、ベーパーチャンバ1の面内の広い範囲を熱の輸送に用いることができ、熱源からの熱をベーパーチャンバ1の面内で均一に行き渡らせることができる。なお、ウィックシート30上には、4つ以上の熱源領域が配置されていても良い。
(ウィックシートの第6変形例)
図32に示すように、ウィックシート30上には、第1熱源領域SR1、第2熱源領域SR2及び第3熱源領域SR3が配置されている。この場合、第1熱源領域SR1に接続された一部の単独蒸気通路51Gは、平面視でU字状に湾曲する湾曲部Raを有している。この湾曲部Raにおいて、単独蒸気通路51Gの流れの方向が180°転換している。この単独蒸気通路51Gに隣接する単独液流路60Bも、単独蒸気通路51Gと同様に、平面視でU字状に湾曲する。単独蒸気通路51GがU字状に湾曲する湾曲部Raを有することにより、熱源領域SR1、SR2、SR3から離れた位置に作動蒸気2aを輸送できる。
一部の連結蒸気通路51Fの途中には、分岐蒸気通路51Hが接続されている。また分岐蒸気通路51Hに隣接して独立液流路60Dが配置されている。独立液流路60Dは、熱源領域SR1、SR2、SR3からそれぞれ延びる複数の単独液流路60Bに対して平行に延びている。独立液流路60Dが配置されていることにより、ウィックシート30の面内での作動液2bの回収が容易となる。
(ウィックシートの第7変形例)
図33に示すように、ウィックシート30上には、第1熱源領域SR1、第2熱源領域SR2及び第3熱源領域SR3が配置されている。この場合、第1熱源領域SR1、第2熱源領域SR2及び第3熱源領域SR3のうちのいずれの2つの熱源領域も、それぞれ連結蒸気通路51Fと連結液流路60Aによって互いに接続されている。
すなわち、第1熱源領域SR1と第2熱源領域SR2とは、連結蒸気通路51Fと連結液流路60Aによって互いに接続されている。このうち一部の連結蒸気通路51Fの途中には、分岐蒸気通路51Hが接続されている。第1熱源領域SR1と第2熱源領域SR2とを接続する連結蒸気通路51F及び連結液流路60Aは、それぞれ平面視で曲線状に湾曲する湾曲部Rを有している。
また第2熱源領域SR2と第3熱源領域SR3とは、連結蒸気通路51Fと連結液流路60Aによって互いに接続されている。このうち一部の連結蒸気通路51Fの途中には、分岐蒸気通路51Hが接続されている。また第2熱源領域SR2と第3熱源領域SR3とを接続する連結蒸気通路51F及び連結液流路60Aは、それぞれ平面視で曲線状に湾曲する湾曲部Rを有している。
また第3熱源領域SR3と第1熱源領域SR1とは、連結蒸気通路51Fと連結液流路60Aによって互いに接続されている。このうち一部の連結蒸気通路51Fの途中には、分岐蒸気通路51Hが接続されている。また第3熱源領域SR3と第1熱源領域SR1とを接続する連結液流路60Aは、接続点67において、第1熱源領域SR1と第2熱源領域SR2とを接続する他の連結液流路60Aに接続されている。この場合、接続点67は、第1熱源領域SR1内に位置しているが、これに限らず第1熱源領域SR1の外側に位置していても良い。また、第1熱源領域SR1と第2熱源領域SR2とを接続する連結液流路60Aは、第3熱源領域SR3と第1熱源領域SR1とを接続する連結液流路60Aにも接続されている。なお、第2熱源領域SR2と第3熱源領域SR3とを接続する連結液流路60Aが、第3熱源領域SR3と第1熱源領域SR1とを接続する連結液流路60Aに接続されていても良い。
熱源領域SR2、SR3には、それぞれ単独蒸気通路51Gが接続されている。熱源領域SR2、SR3には、それぞれ単独液流路60Bが接続されている。また分岐蒸気通路51Hに隣接して独立液流路60Dが配置されている。独立液流路60Dは、熱源領域SR2、SR3からそれぞれ延びる単独液流路60Bに対して平行に延びている。独立液流路60Dが配置されていることにより、ウィックシート30の面内での作動液2bの回収が容易となる。
本変形例によれば、第1熱源領域SR1、第2熱源領域SR2及び第3熱源領域SR3のうちいずれの2つの熱源領域も、それぞれ連結蒸気通路51Fと連結液流路60Aによって互いに接続されている。これにより、3つのデバイスD1-D3のうちのいずれのデバイスが駆動しているときであっても、駆動していないデバイス側に作動蒸気2aを輸送できる。これにより、ベーパーチャンバ1の面内の広い範囲を熱の輸送に用いることができ、熱源からの熱をベーパーチャンバ1の面内で均一に行き渡らせることができる。なお、第1熱源領域SR1、第2熱源領域SR2及び第3熱源領域SR3のうちのいずれの2つの熱源領域も、少なくとも1本の連結蒸気通路51Fによって互いに接続され、かつ連結液流路60Aによって互いに接続されていなくても良い。また、第1熱源領域SR1、第2熱源領域SR2及び第3熱源領域SR3のうちのいずれの2つの熱源領域も、少なくとも1本の連結液流路60Aによって互いに接続され、かつ連結蒸気通路51Fによって互いに接続されていなくても良い。
(ウィックシートの第8変形例)
図34に示すように、ウィックシート30上には、第1熱源領域SR1、第2熱源領域SR2及び第3熱源領域SR3が配置されている。この場合、第1熱源領域SR1、第2熱源領域SR2及び第3熱源領域SR3のうちのいずれの2つの熱源領域も、それぞれ連結蒸気通路51Fと連結液流路60Aによって互いに接続されている。
すなわち、第1熱源領域SR1と第2熱源領域SR2とは、連結蒸気通路51Fと連結液流路60Aによって互いに接続されている。このうち1つの連結蒸気通路51Fの途中には、分岐蒸気通路51H1が接続され、他の1つの連結蒸気通路51Fの途中には、分岐蒸気通路51H2が接続されている。また第2熱源領域SR2と第3熱源領域SR3とは、連結蒸気通路51Fと連結液流路60Aによって互いに接続されている。このうち1つの連結蒸気通路51Fの途中には、分岐蒸気通路51H1が接続され、他の1つの連結蒸気通路51Fの途中には、分岐蒸気通路51H2が接続されている。また第3熱源領域SR3と第1熱源領域SR1とは、連結蒸気通路51Fと連結液流路60Aによって互いに接続されている。このうち1つの連結蒸気通路51Fの途中には、分岐蒸気通路51H1が接続され、他の1つの連結蒸気通路51Fの途中には、分岐蒸気通路51H2が接続されている。
図34において、分岐蒸気通路51H1、51H2のうち、一方の分岐蒸気通路51H1は、ウィックシート30の面方向外側に向けて延びており、他方の分岐蒸気通路51H2は、ウィックシート30の面方向内側に向けて延びている。これにより、第1熱源領域SR1、第2熱源領域SR2及び第3熱源領域SR3からの作動蒸気2aを、ベーパーチャンバ1の面内の広い範囲に輸送でき、熱源からの熱をベーパーチャンバ1の面内で均一に行き渡らせることができる。なお、1つの連結蒸気通路51Fに分岐蒸気通路51H1、51H2が両方とも接続されていても良い。
また、第1熱源領域SR1内において、第3熱源領域SR3と第1熱源領域SR1とを接続する連結蒸気通路51F及び連結液流路60Aは、それぞれ第1熱源領域SR1と第2熱源領域SR2とを接続する連結蒸気通路51F及び連結液流路60Aに接続される。また、第2熱源領域SR2内において、第1熱源領域SR1と第2熱源領域SR2とを接続する連結蒸気通路51F及び連結液流路60Aは、それぞれ第2熱源領域SR2と第3熱源領域SR3とを接続する連結蒸気通路51F及び連結液流路60Aに接続される。さらに、第3熱源領域SR3内において、第2熱源領域SR2と第3熱源領域SR3とを接続する連結蒸気通路51F及び連結液流路60Aは、それぞれ第3熱源領域SR3と第1熱源領域SR1とを接続する連結蒸気通路51F及び連結液流路60Aに接続される。
熱源領域SR1、SR2、SR3には、それぞれ単独蒸気通路51Gが接続されている。熱源領域SR1、SR2、SR3には、それぞれ単独液流路60Bが接続されている。またウィックシート30の面方向内側に位置する単独液流路60Bに沿って、独立液流路60Dが配置されている。独立液流路60Dが配置されていることにより、ウィックシート30の面内での作動液2bの回収が容易となる。
ウィックシート30は、各熱源領域SR1、SR2、SR3の形状に応じた平面形状としても良く、例えば平面視で略三角形形状(図34では角が丸みを帯びた正三角形形状)であっても良い。第1熱源領域SR1の中心、第2熱源領域SR2の中心及び第3熱源領域SR3の中心は、それぞれ三角形の頂点に対応する位置に配置されていても良い。なお、ウィックシート30は、三角形状に限られることはなく、矩形状、円形状、楕円形状、L字形状、T字形状、U字形状など、任意の形状とすることができる。任意の形状のウィックシート30に、図34に示す構成の連結蒸気通路51F、単独蒸気通路51G、分岐蒸気通路51H1、51H2、連結液流路60A、単独液流路60B、及び/又は、独立液流路60Dを配置してもよい。
本変形例によれば、第1熱源領域SR1、第2熱源領域SR2及び第3熱源領域SR3のうちいずれの2つの熱源領域も、それぞれ連結蒸気通路51Fと連結液流路60Aによって互いに接続されている。これにより、3つのデバイスD1-D3のうちのいずれのデバイスが駆動しているときであっても、駆動していないデバイス側に作動蒸気2aを輸送できる。これにより、ベーパーチャンバ1の面内の広い範囲を熱の輸送に用いることができ、熱源からの熱をベーパーチャンバ1の面内で均一に行き渡らせることができる。
(ウィックシートの第9変形例)
図35に示すように、ウィックシート30上には、第1熱源領域SR1、第2熱源領域SR2及び第3熱源領域SR3が配置されている。この場合、第1熱源領域SR1、第2熱源領域SR2及び第3熱源領域SR3のうちのいずれの2つの熱源領域も、それぞれ連結蒸気通路51Fと連結液流路60Aによって互いに接続されている。
すなわち、第1熱源領域SR1と第2熱源領域SR2とは、連結蒸気通路51Fと連結液流路60Aによって互いに接続されている。このうち1つの連結蒸気通路51Fの途中には、複数の分岐蒸気通路51H1が接続され、他の1つの連結蒸気通路51Fの途中には、複数の分岐蒸気通路51H2が接続されている。また第2熱源領域SR2と第3熱源領域SR3とは、連結蒸気通路51Fと連結液流路60Aによって互いに接続されている。このうち1つの連結蒸気通路51Fの途中には、複数の分岐蒸気通路51H1が接続され、他の1つの連結蒸気通路51Fの途中には、複数の分岐蒸気通路51H2が接続されている。また第3熱源領域SR3と第1熱源領域SR1とは、連結蒸気通路51Fと連結液流路60Aによって互いに接続されている。このうち1つの連結蒸気通路51Fの途中には、複数の分岐蒸気通路51H1が接続され、他の1つの連結蒸気通路51Fの途中には、複数の分岐蒸気通路51H2が接続されている。
図35において、分岐蒸気通路51H1、51H2のうち、一方の分岐蒸気通路51H1は、ウィックシート30の面方向外側に向けて延びており、他方の分岐蒸気通路51H2は、ウィックシート30の面方向内側に向けて延びている。これにより、第1熱源領域SR1、第2熱源領域SR2及び第3熱源領域SR3からの作動蒸気2aを、ベーパーチャンバ1の面内の広い範囲に輸送でき、熱源からの熱をベーパーチャンバ1の面内で均一に行き渡らせることができる。なお、1つの連結蒸気通路51Fに分岐蒸気通路51H1、51H2が両方とも接続されていても良い。
熱源領域SR1、SR2、SR3には、それぞれ単独蒸気通路51Gが接続されている。熱源領域SR1、SR2、SR3には、それぞれ単独液流路60Bが接続されている。また分岐蒸気通路51H1、51H2に隣接して独立液流路60Dが配置されている。独立液流路60Dは、熱源領域SR1、SR2、SR3からそれぞれ延びる単独液流路60Bに対して平行に延びている。独立液流路60Dが配置されていることにより、ウィックシート30の面内での作動液2bの回収が容易となる。
ウィックシート30は、各熱源領域SR1、SR2、SR3の形状に応じた平面形状としても良く、例えば平面視で略三角形形状(図35では角が丸みを帯びた正三角形形状)であっても良い。第1熱源領域SR1の中心、第2熱源領域SR2の中心及び第3熱源領域SR3の中心は、それぞれ三角形の頂点に対応する位置に配置されていても良い。なお、ウィックシート30は、三角形状に限られることはなく、矩形状、円形状、楕円形状、L字形状、T字形状、U字形状など、任意の形状とすることができる。任意の形状のウィックシート30に、図35に示す構成の連結蒸気通路51F、単独蒸気通路51G、分岐蒸気通路51H1、51H2、連結液流路60A、単独液流路60B、及び/又は、独立液流路60Dを配置してもよい。
本変形例によれば、第1熱源領域SR1、第2熱源領域SR2及び第3熱源領域SR3のうちいずれの2つの熱源領域も、それぞれ連結蒸気通路51Fと連結液流路60Aによって互いに接続されている。これにより、3つのデバイスD1-D3のうちのいずれのデバイスが駆動しているときであっても、駆動していないデバイス側に作動蒸気2aを輸送できる。これにより、ベーパーチャンバ1の面内の広い範囲を熱の輸送に用いることができ、熱源からの熱をベーパーチャンバ1の面内で均一に行き渡らせることができる。
(ベーパーチャンバの変形例)
次に、図36(a)-(c)を参照して、ベーパーチャンバの各種変形例について説明する。図36(a)-(c)は、それぞれ変形例によるベーパーチャンバ1を示す断面図である。図36(a)-(c)において、図19乃至図35に示す形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
図36(a)に示すように、ウィックシート30の第1本体面31aに、主として作動液2bを貯蔵する液貯蔵部70Bが設けられていても良い。この液貯蔵部70Bは、蒸気流路部50に連通しているとともに、蒸気流路部50を介して液流路部60に連通している。液貯蔵部70Bは、平面視で熱源領域SR1、SR2に配置されていても良い。これにより、デバイスD1、D2が発熱を停止している間、作動液2bを、液流路部60だけでなく、液貯蔵部70Bに分散させて貯蔵させることができる。このため、作動液2bの凝固点より低い温度環境下において、液流路部60内の作動液2bが凍結して膨張した場合であっても、上側シート20及び下側シート10に作用する膨張力を低減でき、上側シート20及び下側シート10が変形することを抑制できる。この結果、ベーパーチャンバ1の変形を抑制でき、ベーパーチャンバ1の性能低下を抑制できる。
図36(b)(c)に示すように、ベーパーチャンバ1は、2層のシートから構成されていても良い。すなわちベーパーチャンバ1は、ウィックシート30と、ウィックシート30上に積層された上側シート(シート)20とを備えている。ウィックシート30の蒸気通路51は、ウィックシート30の第1本体面31a側に凹状に形成され、ウィックシート30を貫通することなく溝状に形成されている。
また図36(b)(c)において、上側シート20は、第1上側シート面20aに設けられた上側蒸気流路凹部25を有している。上側蒸気流路凹部25は、上側シート20の第1上側シート面20a側に凹状に形成され、上側シート20を貫通することなく溝状に形成されている。上側蒸気流路凹部25は、ウィックシート30の蒸気通路51と一体となって蒸気流路部50を構成する。
図36(c)において、上側シート20は、第1上側シート面20aに設けられた上側液流路凹部26を有している。上側液流路凹部26は、上側シート20の第1上側シート面20a側に凹状に形成され、上側シート20を貫通することなく溝状に形成されている。上側液流路凹部26は、ウィックシート30の液流路主流溝61及び液流路連絡溝65と一体となって液流路部60を構成する。なお、図36(b)においては、上側液流路凹部26は設けられておらず、液流路部60はウィックシート30のみに存在する。
あるいは、図示しないが、ベーパーチャンバ1は、蒸気通路と液流路部とを有するものであれば良く、4層以上のシート状の部材から構成されていても良く、複数のシート状の部材を積層して構成したものでなくても良い。
本開示は上記各実施の形態及び各変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施の形態及び各変形例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。各実施の形態及び各変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。