以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件および物理的特性並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度並びに物理的特性の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。さらに、図面においては、明瞭にするために、同様の機能を期待し得る複数の部分の形状を、規則的に記載しているが、厳密な意味に縛られることなく、当該機能を期待することができる範囲内で、当該部分の形状は互いに異なっていてもよい。また、図面においては、部材同士の接合面などを示す境界線を、便宜上、単なる直線で示しているが、厳密な直線であることに縛られることはなく、所望の接合性能を期待することができる範囲内で、当該境界線の形状は任意である。
(第1の実施の形態)
図1乃至図18を用いて、本発明の第1の実施の形態におけるベーパーチャンバ、電子機器およびベーパーチャンバ用金属シートについて説明する。本実施の形態におけるベーパーチャンバ1は、電子機器Eに収容された発熱体としてのデバイスDを冷却するために、電子機器Eに搭載される装置である。デバイスDの例としては、携帯端末やタブレット端末といったモバイル端末等で使用される中央演算処理装置(CPU)、発光ダイオード(LED)、パワー半導体等の発熱を伴う電子デバイス(被冷却装置)が挙げられる。
ここではまず、本実施の形態によるベーパーチャンバ1が搭載される電子機器Eについて、タブレット端末を例にとって説明する。図1に示すように、電子機器E(タブレット端末)は、ハウジングHと、ハウジングH内に収容されたデバイスDと、ベーパーチャンバ1と、を備えている。図1に示す電子機器Eでは、ハウジングHの前面にタッチパネルディスプレイTDが設けられている。ベーパーチャンバ1は、ハウジングH内に収容されて、デバイスDに熱的に接触するように配置される。このことにより、電子機器Eの使用時にデバイスDで発生する熱をベーパーチャンバ1が受けることができる。ベーパーチャンバ1が受けた熱は、後述する作動液2を介してベーパーチャンバ1の外部に放出される。このようにして、デバイスDは効果的に冷却される。電子機器Eがタブレット端末である場合には、デバイスDは、中央演算処理装置等に相当する。
次に、本実施の形態におけるベーパーチャンバ1について説明する。ベーパーチャンバ1は、作動液2が封入された密封空間3を有しており、密封空間3内の作動液2が相変化を繰り返すことにより、上述した電子機器EのデバイスDを効果的に冷却するようになっている。
ベーパーチャンバ1は、概略的に薄い平板状に形成されている。ベーパーチャンバ1の平面形状は任意であるが、図2に示すような矩形状であってもよい。この場合、ベーパーチャンバ1は、平面外輪郭をなす4つの直線状の外縁1a、1bを有する。このうち2つの外縁1aが、後述する第1方向Xに沿うように形成され、残りの2つの外縁1bが、後述する第2方向Yに沿うように形成される。ベーパーチャンバ1の平面形状は、例えば、1辺が1cmで他の辺が3cmの長方形であってもよく、1辺が15cmの正方形であってもよく、ベーパーチャンバ1の平面寸法は任意である。また、ベーパーチャンバ1の平面形状は、矩形状に限られることはなく、円形状、楕円形状、L字形状、T字形状など、任意の形状とすることができる。
図2および図3に示すように、ベーパーチャンバ1は、下側金属シート10(第1金属シートまたは第2金属シート、ベーパーチャンバ用金属シート)と、下側金属シート10に積層された上側金属シート(第2金属シートまたは第1金属シート、ベーパーチャンバ用金属シート)と、を備えている。本実施の形態では、上側金属シート20は、下側金属シート10上に設けられている。下側金属シート10は、上面10a(第1面)と、上面10aとは反対側に設けられた下面10b(第2面)とを有している。上側金属シート20は、下側金属シート10の上面10a(上側金属シート20の側の面)に重ね合わされた下面20a(下側金属シート10の側の面)と、下面20aとは反対側に設けられた上面20bと、を有している。下側金属シート10の下面10b(とりわけ、後述する蒸発部11の下面)に、冷却対象物であるデバイスDが取り付けられる。
下側金属シート10と上側金属シート20との間には、作動液2が封入された密封空間3が形成されている。本実施の形態では、密封空間3は、主として作動液2の蒸気が通る蒸気流路部80(後述する下側蒸気流路凹部12および上側蒸気流路凹部21)と、主として液状の作動液2が通る液流路部30および周縁液流路部18、27と、を有している。作動液2の例としては、純水、エタノール、メタノール、アセトン等が挙げられる。
下側金属シート10と上側金属シート20とは、後述する拡散接合によって接合されている。図2および図3に示す形態では、下側金属シート10および上側金属シート20は、平面視でいずれも矩形状に形成されている例が示されているが、これに限られることはない。ここで平面視とは、ベーパーチャンバ1がデバイスDから熱を受ける面(下側金属シート10の下面10b)、および受けた熱を放出する面(上側金属シート20の上面20b)に直交する方向から見た状態であって、例えば、ベーパーチャンバ1を上方から見た状態(図2参照)、または下方から見た状態に相当している。
なお、ベーパーチャンバ1がモバイル端末内に設置される場合、モバイル端末の姿勢によっては、下側金属シート10と上側金属シート20との上下関係が崩れる場合もある。
しかしながら、本実施の形態では、便宜上、デバイスDから熱を受ける金属シートを下側金属シート10と称し、受けた熱を放出する金属シートを上側金属シート20と称して、下側金属シート10が下側に配置され、上側金属シート20が上側に配置された状態で説明する。
図2に示すように、ベーパーチャンバ1は、第1方向Xにおける一対の端部のうちの一方に、密封空間3に作動液2を注入する注入部4を更に備えている。この注入部4は、下側金属シート10の端面(図2において外縁1bに相当する面)から突出する下側注入突出部16と、上側金属シート20の端面(図2において外縁1bに相当する面)から突出する上側注入突出部25と、を有している。このうち下側注入突出部16の上面(下側金属シート10の上面10aに相当する面)に下側注入流路凹部17が形成され、上側注入突出部25の下面(上側金属シート20の下面20aに相当する面)に上側注入流路凹部26が形成されている。下側注入流路凹部17は、下側蒸気流路凹部12に連通しており、上側注入流路凹部26は、上側蒸気流路凹部21に連通している。下側注入流路凹部17および上側注入流路凹部26は、下側金属シート10と上側金属シート20とが接合された際、一体となって作動液2の注入流路を形成する。作動液2は、当該注入流路を通過して密封空間3に注入される。なお、本実施の形態では、注入部4は、ベーパーチャンバ1の第1方向Xにおける一対の端部のうちの一方の端部に設けられている例が示されているが、これに限られることはなく、任意の位置に設けることができる。また、2つ以上の注入部4が設けられるようにしてもよい。
図4に示すように、下側金属シート10は、作動液2が蒸発して蒸気を生成する蒸発部11と、上面10aに設けられ、平面視で矩形状に形成された下側蒸気流路凹部12(第1蒸気流路部)と、を有している。このうち下側蒸気流路凹部12は、上述した密封空間3の一部を構成しており、主として、蒸発部11で生成された蒸気が通るように構成されている。
蒸発部11は、この下側蒸気流路凹部12内に配置されており、下側蒸気流路凹部12内の蒸気は、蒸発部11から離れる方向に拡散して、蒸気の多くは、比較的温度の低い周縁部に向かって輸送される。なお、蒸発部11は、下側金属シート10の下面10bに取り付けられるデバイスDから熱を受けて、密封空間3内の作動液2が蒸発する部分である。このため、蒸発部11という用語は、デバイスDに重なっている部分に限られる概念ではなく、デバイスDに重なっていなくても作動液2が蒸発可能な部分をも含む概念として用いている。ここで蒸発部11は、下側金属シート10の任意の場所に設けることができるが、図2および図4においては、下側金属シート10の中央部に設けられている例が示されている。この場合、ベーパーチャンバ1が設置されたモバイル端末の姿勢によらずに、ベーパーチャンバ1の動作の安定化を図ることができる。
本実施の形態では、図3および図4に示すように、下側金属シート10の下側蒸気流路凹部12内に、下側蒸気流路凹部12の底面12a(後述)から上方(底面12aに垂直な方向)に突出する複数の下側流路壁部13(第1流路突出部)が設けられている。本実施の形態では、下側流路壁部13が、ベーパーチャンバ1の第1方向X(長手方向、図4における左右方向)に沿って細長状に延びている例が示されている。この下側流路壁部13は、後述する上側流路壁部22の下面22aに当接する上面13a(当接面、突出端面)を含んでいる。この上面13aは、後述するエッチング工程によってエッチングされない面であり、下側金属シート10の上面10aと同一平面上に形成されている。また、各下側流路壁部13は等間隔に離間して、互いに平行に配置されている。
図3および図4に示すように、下側蒸気流路凹部12は、下側流路壁部13によって区画された複数の下側蒸気通路81(第1蒸気通路)を含んでいる。下側蒸気通路81は、第1方向Xに沿って細長状に延びており、互いに平行に配置されている。各下側蒸気通路81の両端部は、第2方向Yに沿って細長状に延びる下側連絡蒸気通路82に連通しており、各下側蒸気通路81が、下側連絡蒸気通路82を介して連通している。このようにして、各下側流路壁部13の周囲(下側蒸気通路81および下側連絡蒸気通路82)を作動液2の蒸気が流れて、下側蒸気流路凹部12の周縁部に蒸気が輸送されるように構成されており、蒸気の流れが妨げられることを抑制している。なお、図3においては、下側蒸気流路凹部12の下側蒸気通路81の横断面(第2方向Yにおける断面)形状が、矩形状になっている。しかしながら、このことに限られることはなく、下側蒸気通路81の横断面形状は、例えば、湾曲状、半円状、V字状であってもよく、作動液2の蒸気を拡散することができれば任意である。下側連絡蒸気通路82も同様である。下側蒸気通路81の幅(第2方向Yの寸法)w7は、後述する下側流路壁部13同士の間隔に相当する。下側連絡蒸気通路82の幅(第1方向Xの寸法)も同様である。
上述したように、各下側蒸気通路81は、下側連絡蒸気通路82を介して互いに連通している。このことにより、作動液2の蒸気は、下側蒸気通路81同士の間で往来可能になっている。このため、作動液2の蒸気をより一層拡散させることができる。
下側流路壁部13は、上側金属シート20の対応する上側流路壁部22(後述)に平面視で重なるように配置されており、ベーパーチャンバ1の機械的強度の向上を図っている。下側蒸気通路81は、対応する上側蒸気通路83(後述)に平面視で重なるように形成されている。同様に、下側連絡蒸気通路82は、対応する上側連絡蒸気通路84(後述)に平面視で重なるように形成されている。
下側流路壁部13の幅w0は、例えば、0.05mm~30mm、好ましくは0.05mm~2.0mmであり、互いに隣り合う下側流路壁部13同士の間隔dは、0.05mm~30mm、好ましくは0.05mm~2.0mmである。ここで、幅w0は、下側流路壁部13の第1方向Xに直交する第2方向Yにおける下側流路壁部13の寸法であって、下側金属シート10の上面10aにおける寸法を意味しており、例えば、図4における上下方向の寸法に相当する。また、下側流路壁部13の高さ(言い換えると、下側蒸気流路凹部12の最大深さ)h0(図3参照)は、下側金属シート10の厚さT1より少なくとも10μm以上小さいことが好ましい。T1からh0を引いた残りを10μm以上にすると、下側蒸気流路凹部12が強度不足により破損することを防止できる。ベーパーチャンバ1の厚さは、0.1mm~2.0mmとしてもよく、下側金属シート10の厚さT1および上側金属シート20の厚さT2は等しくてもよい。例えば、ベーパーチャンバ1の厚さが0.5mmでT1とT2が同じ場合、h0は200μmが好適である。
図3および図4に示すように、下側金属シート10の周縁部には、下側周縁壁14が設けられている。下側周縁壁14は、密封空間3、とりわけ下側蒸気流路凹部12を囲むように形成されており、密封空間3を画定している。また、平面視で下側周縁壁14の四隅に、下側金属シート10と上側金属シート20との位置決めをするための下側アライメント孔15がそれぞれ設けられている。
また、下側周縁壁14のうち、下側蒸気流路凹部12側の領域に、液状の作動液2が通る環形状の下側周縁液流路部18(第1周縁液流路部又は第2周縁液流路部)が形成されている。この下側周縁液流路部18は、平面視で、下側周縁壁14の内側部分において、下側金属シート10の周縁に沿って形成されている。下側周縁液流路部18は、密封空間3、とりわけ下側蒸気流路凹部12を囲むように形成されている。すなわち、平面視で、液流路部30と下側周縁液流路部18との間に、下側蒸気流路凹部12の下側蒸気通路81または下側連絡蒸気通路82が介在されており、液流路部30と下側周縁液流路部18とは分断されている。また、下側周縁液流路部18は、平面視で矩形の環形状を有しており、その各辺は第1方向X又は第2方向Yに対して平行となっている。
図4に示すように、下側周縁液流路部18は、下側金属シート10の全周にわたって形成されている。すなわち、下側周縁液流路部18は、矩形状の下側金属シート10を構成する4つの辺の全てに途切れることなく形成されている。また下側周縁液流路部18は、下側注入流路凹部17で形成される作動液2の注入流路を横切るように形成されており、この下側注入流路凹部17の近傍においても作動液2を環流することが可能となっている。なお、図4において、下側注入流路凹部17は、下側周縁液流路部18の幅方向(第1方向X)途中まで進入しているが、これに限らず、下側注入流路凹部17が下側周縁液流路部18に進入していなくてもよい。
この下側周縁液流路部18は、下側蒸気流路凹部12の底面12aから上方(底面12aに垂直な方向)に突出する環状の下側周縁壁14の一部(内側部分)に形成されている。下側周縁壁14は、後述する上側周縁壁23の下面23aに当接する上面14aを有している。この上面14aは、後述するエッチング工程によってエッチングされない面であり、下側金属シート10の上面10aと同一平面上に形成されている。
なお、下側周縁液流路部18の幅w7は、例えば、0.03mm~30mm、好ましくは0.03mm~2.0mmである。ここで、幅w7は、平面視で下側周縁液流路部18の長手方向に垂直な方向の寸法を意味する。下側周縁液流路部18の第1方向Xに平行な部分では、幅w7は第2方向Yの寸法を意味し、第2方向Yに平行な部分では、幅w7は第1方向Xの寸法を意味する。また、下側周縁壁14の高さは、下側流路壁部13の高さと同一であり、10μm~200μmであることが好適である。
本実施の形態では、上側金属シート20は、後述する液流路部30が設けられておらず、上側周縁液流路部27の構成が異なる点で、下側金属シート10と相違している。以下に、上側金属シート20の構成についてより詳細に説明する。
図3および図5に示すように、上側金属シート20は、下面20aに設けられた上側蒸気流路凹部21(第2蒸気流路部)を有している。この上側蒸気流路凹部21は、密封空間3の一部を構成しており、主として、蒸発部11で生成された蒸気を拡散して冷却するように構成されている。より具体的には、上側蒸気流路凹部21内の蒸気は、蒸発部11から離れる方向に拡散して、蒸気の多くは、比較的温度の低い周縁部に向かって輸送される。また、図3に示すように、上側金属シート20の上面20bには、モバイル端末等のハウジングの一部を構成するハウジング部材Haが配置される。これにより、上側蒸気流路凹部21内の蒸気は、上側金属シート20およびハウジング部材Haを介して外気によって冷却される。
本実施の形態では、図2、図3および図5に示すように、上側金属シート20の上側蒸気流路凹部21内に、上側蒸気流路凹部21の底面21aから下方(底面21aに垂直な方向)に突出する複数の上側流路壁部22(第2流路壁部、第2流路突出部)が設けられている。本実施の形態では、上側流路壁部22がベーパーチャンバ1の第1方向X(図5における左右方向)に沿って細長状に延びている例が示されている。この上側流路壁部22は、下側金属シート10の上面10a(より具体的には、上述した下側流路壁部13の上面13a)に当接する平坦状の下面22a(当接面、突出端面)を含んでいる。また、各上側流路壁部22は、等間隔に離間して、互いに平行に配置されている。
図3および図5に示すように、上側蒸気流路凹部21は、上側流路壁部22によって区画された複数の上側蒸気通路83(第2蒸気通路)を含んでいる。上側蒸気通路83は、第1方向Xに沿って細長状に延びており、互いに平行に配置されている。各上側蒸気通路83の両端部は、第2方向Yに沿って細長状に延びる上側連絡蒸気通路84に連通しており、各上側蒸気通路83が、上側連絡蒸気通路84を介して連通している。このようにして、各上側流路壁部22の周囲(上側蒸気通路83および上側連絡蒸気通路84)を作動液2の蒸気が流れて、上側蒸気流路凹部21の周縁部に向かって蒸気が輸送されるように構成されており、蒸気の流れが妨げられることを抑制している。なお、図3においては、上側蒸気流路凹部21の上側蒸気通路83の横断面(第2方向Yにおける断面)形状が、矩形状になっている。しかしながら、このことに限られることはなく、上側蒸気通路83の横断面形状は、例えば、湾曲状、半円状、V字状であってもよく、作動液2の蒸気を拡散することができれば任意である。上側連絡蒸気通路84の横断面形状も同様である。上側蒸気通路83の幅(第2方向Yの寸法)および上側連絡蒸気通路84の幅は、図3等に示すように、下側蒸気通路81の幅および下側連絡蒸気通路82の幅と同様であってもよいが、異なっていてもよい。
上述したように、各上側蒸気通路83は、上側連絡蒸気通路84を介して互いに連通している。このことにより、作動液2の蒸気は、上側蒸気通路83同士の間で往来可能になっている。このため、作動液2の蒸気をより一層拡散させることができる。
上側流路壁部22は、下側金属シート10の対応する下側流路壁部13に平面視で重なるように配置されており、ベーパーチャンバ1の機械的強度の向上を図っている。また、上側蒸気通路83は、対応する下側蒸気通路81に平面視で重なるように形成されている。同様に、上側連絡蒸気通路84は、対応する下側連絡蒸気通路82に平面視で重なるように形成されている。
なお、上側流路壁部22の幅、高さは、それぞれ上述した下側流路壁部13の幅w0、高さh0と同一であることが好適である。ここで、上側蒸気流路凹部21の底面21aは、図3に示すような下側金属シート10と上側金属シート20との上下配置関係では、天井面と言うこともできるが、上側蒸気流路凹部21の奥側の面に相当するため、本明細書では、底面21aと記す。
図3および図5に示すように、上側金属シート20の周縁部には、上側周縁壁23が設けられている。上側周縁壁23は、密封空間3、とりわけ上側蒸気流路凹部21を囲むように形成されており、密封空間3を画定している。また、平面視で上側周縁壁23の四隅に、下側金属シート10と上側金属シート20との位置決めをするための上側アライメント孔24がそれぞれ設けられている。すなわち、各上側アライメント孔24は、後述する仮止め時に、上述した各下側アライメント孔15に重なるように配置され、下側金属シート10と上側金属シート20との位置決めが可能に構成されている。
また、図3および図5に示すように、上側周縁壁23のうち、上側蒸気流路凹部21側の領域に、液状の作動液2が通る環形状の上側周縁液流路部27(第2周縁液流路部又は第1周縁液流路部)が形成されている。この上側周縁液流路部27は、平面視で、上側周縁壁23の内側部分において、上側金属シート20の周縁に沿って形成されている。上側周縁液流路部27は、密封空間3、とりわけ上側蒸気流路凹部21を囲むように形成されている。すなわち、平面視で、液流路部30と上側周縁液流路部27との間に、上側蒸気流路凹部21の上側蒸気通路83または上側連絡蒸気通路84が介在されており、液流路部30と上側周縁液流路部27とは分断されている。また、上側周縁液流路部27は、平面視で矩形の環形状を有しており、その各辺は第1方向X又は第2方向Yに対して平行となっている。
図5に示すように、上側周縁液流路部27は、上側金属シート20のうち、上側注入流路凹部26と上側蒸気流路凹部21とを接続する導通部28を除く周縁全域にわたって形成されている。すなわち、上側周縁液流路部27は、上側注入流路凹部26から作動液2を注入する導通部28で部分的に途切れている。このため、後述する封入工程において、上側注入流路凹部26から、導通部28を介して上側蒸気流路凹部21に作動液2を注入可能となっている。一方、上側周縁液流路部27は、導通部28を除いて上側金属シート20の周縁全域にわたって形成されているため、上側金属シート20の周縁の略全域で作動液2を蒸発部11側に還流することが可能となっている。
この上側周縁液流路部27は、上側蒸気流路凹部21の底面21aから下方(底面21aに垂直な方向)に突出する環状の上側周縁壁23の一部(内側部分)に形成されている。上側周縁壁23は、下側周縁壁14の上面14aに当接する下面23aを有している。
この下面23aは、後述するエッチング工程によってエッチングされない面であり、上側金属シート20の下面20aと同一平面上に形成されている。
なお、上側周縁液流路部27の幅w8は、例えば、0.02mm~20mm、好ましくは0.02mm~1.5mmである。ここで、幅w8は、平面視で上側周縁液流路部27の長手方向に垂直な方向の寸法を意味する。上側周縁液流路部27の第1方向Xに平行な部分では、幅w8は第2方向Yの寸法を意味し、第2方向Yに平行な部分では、幅w8は第1方向Xの寸法を意味する。また、上側周縁壁23の高さは、上側流路壁部22の高さと同一であり、10μm~200μmであることが好適である。
また、図3乃至図5に示すように、下側金属シート10の下側周縁液流路部18の幅w7は、上側金属シート20の上側周縁液流路部27の幅w8よりも広くなっている(w7>w8)。具体的には、導通部28を除く周縁全域にわたって、下側周縁液流路部18の幅w7は、上側周縁液流路部27の幅w8よりも広くなっている。下側周縁液流路部18の幅w7と上側周縁液流路部27の幅w8との差(w7-w8)は、0.01mm~1mmとしてもよい。下側周縁液流路部18は、平面視で、上側周縁液流路部27よりも内側に向けてはみ出しており、このはみ出した下側周縁液流路部18の内側部分18aは、上側周縁液流路部27に接触することなく、上側蒸気流路凹部21に対向している。一方、下側周縁液流路部18の外周縁は、上側周縁液流路部27の外周縁と平面視で同一の位置に配置される。このように、上側蒸気流路凹部21側にはみ出した下側周縁液流路部18の内側部分18aに上側蒸気流路凹部21内の作動液2の蒸気が直接的に凝縮することができ、作動液2の凝縮および環流を安定的に行うことができる。なお、これに限らず、上側周縁液流路部27の幅w8が下側周縁液流路部18の幅w7と同一であってもよく、上側周縁液流路部27の幅w8が下側周縁液流路部18の幅w7より広くてもよい。
また、本実施の形態において、下側金属シート10の下側周縁液流路部18の一部と、上側金属シート20の上側周縁液流路部27の一部とは、平面視で互いに重なっている。
具体的には、下側周縁液流路部18の内側部分18aおよび導通部28を除き、下側周縁液流路部18と上側周縁液流路部27とが互いに重なっている。これにより、下側周縁液流路部18と上側周縁液流路部27とによって作動液2の還流を効率的に行うことができる。
このような下側金属シート10と上側金属シート20とは、好適には拡散接合で、互いに恒久的に接合されている。より具体的には、図3に示すように、下側金属シート10の下側周縁壁14の上面14aと、上側金属シート20の上側周縁壁23の下面23aとが当接し、下側周縁壁14と上側周縁壁23とが互いに接合されている。これにより、下側金属シート10と上側金属シート20との間に、作動液2を密封した密封空間3が形成されている。また、金属シート10、20の周縁において、下側周縁液流路部18と上側周縁液流路部27との間で作動液2の凝縮および環流を効果的に行うことができる。さらに、下側金属シート10の下側流路壁部13の上面13aと、上側金属シート20の上側流路壁部22の下面22aとが当接し、各下側流路壁部13と対応する上側流路壁部22とが互いに接合されている。これにより、ベーパーチャンバ1の機械的強度を向上させている。とりわけ、本実施の形態による下側流路壁部13および上側流路壁部22は等間隔に配置されているため、ベーパーチャンバ1の各位置における機械的強度を均等化させることができる。なお、下側金属シート10と上側金属シート20とは、拡散接合ではなく、恒久的に接合できれば、ろう付け等の他の方式で接合されていてもよい。なお、「恒久的に接合」という用語は、厳密な意味に縛られることはなく、ベーパーチャンバ1の動作時に、密封空間3の密封性を維持可能な程度に、下側金属シート10の上面10aと上側金属シート20の下面20aとの接合を維持できる程度に接合されていることを意味する用語として用いている。
次に、液流路部30および周縁液流路部18、27の構成について、図6および図7を用いてより詳細に説明する。
図6は、液流路部30および周縁液流路部18、27の拡大平面図であり、図7は、液流路部30および周縁液流路部18、27の断面図である。本実施の形態において、液流路部30、下側周縁液流路部18および上側周縁液流路部27の形状が互いに同一である場合を例にとって説明するが、液流路部30、下側周縁液流路部18および上側周縁液流路部27の形状が互いに異なっていてもよい。
上述したように、下側金属シート10の上面10a(より具体的には、各下側流路壁部13の上面13a)に、液状の作動液2が通る液流路部30が設けられている。また、金属シート10、20の周縁に沿って、それぞれ液状の作動液2が通る周縁液流路部18、27が設けられている。液流路部30および周縁液流路部18、27は、上述した密封空間3の一部を構成しており、下側蒸気流路凹部12および上側蒸気流路凹部21に連通している。なお、液流路部30は、全ての下側流路壁部13に設けられていることには限られない。例えば、液流路部30が設けられていない下側流路壁部13が存在してもよい。
図6に示すように、液流路部30および周縁液流路部18、27はそれぞれ、互いに平行に延びる複数の主流溝31と、互いに隣接する主流溝31同士を連絡する連絡溝32とを有している。液流路部30および周縁液流路部18、27のうち第1方向Xに平行な部分では、主流溝31は、作動液2の主流方向(この場合は第1方向X)に沿って延びている。また、連絡溝32は、作動液2の主流方向に直交する方向(この場合は第2方向Y)に沿って延びており、互いに隣接する主流溝31同士の間で作動液2が往来可能となっている。主流溝31および連絡溝32にはそれぞれ、液状の作動液2が通る。主流溝31および連絡溝32は、主として、蒸発部11で生成された蒸気から凝縮した作動液2を蒸発部11に向けて輸送する役割を果たす。なお、図6において、便宜上、下側周縁液流路部18と上側周縁液流路部27との両方を示しているが、実際には、下側周縁液流路部18と上側周縁液流路部27とは上下方向に互いに重なっている。周縁液流路部18、27のうち第2方向Yに平行な部分では、作動液2の主流方向(この場合は第2方向Y)に沿って延びている。連絡溝32は、第1方向Xに沿って延びている。
また、液流路部30および周縁液流路部18、27には、複数の凸部33が平面視で千鳥状に配置されている。各凸部33は、それぞれ主流溝31および連絡溝32に取り囲まれるように形成されている。図6においては、複数の凸部33は互いに同一形状を有し、各凸部33は、平面視で第1方向Xが長手方向となるように矩形状に形成されている。本実施の形態において、作動液2の主流方向(この場合は第1方向X)に沿う凸部33の配列ピッチは一定となっている。すなわち複数の凸部33は、第1方向Xに互いに一定間隔で配置され、第2方向Yに隣接する凸部33に対しては、凸部33の略半分の長さだけ第1方向Xにずらして配置されている。
主流溝31の幅(第2方向Yの寸法)w1は、凸部33の幅(第2方向Yの寸法)w2よりも大きいことが好適である。この場合、下側流路壁部13の上面13a、下側周縁壁14の上面14aおよび上側周縁壁23の下面23aに占める主流溝31の割合を大きくすることができる。このため、下側流路壁部13、下側周縁壁14および上側周縁壁23における主流溝31の流路密度を増大させて、液状の作動液2の輸送機能を向上させることができる。例えば、主流溝31の幅w1を20μm~200μm、凸部33の幅w2を20μm~180μmとしてもよい。
主流溝31の深さh1は、上述した下側流路壁部13の高さh0(図3参照)よりも小さいことが好適である。この場合、主流溝31の毛細管作用を高めることができる。例えば、主流溝31の深さh1は、下側流路壁部13の高さh0の半分程度が好ましく、5μm~200μmとしてもよい。
また、連絡溝32の幅(第1方向Xの寸法)w3は、主流溝31の幅w1よりも小さいことが好適である。これにより、各主流溝31において蒸発部11に向かって液状の作動液2が輸送されている間、作動液2が連絡溝32に流れることを抑制でき、作動液2の輸送機能を向上させることができる。一方、主流溝31のいずれかにドライアウトが発生した場合には、隣の主流溝31から対応する連絡溝32を介して作動液2を移動させることができ、ドライアウトを迅速に解消して、作動液2の輸送機能を確保することができる。
すなわち、連絡溝32は、隣り合う主流溝31同士を連通することができれば、主流溝31の幅w1よりも小さくても、その機能を発揮することができる。このような連絡溝32の幅w3は、例えば50μmとしてもよい。
連絡溝32の深さ(図示せず)は、その幅w3に応じて、主流溝31の深さよりも浅くしてもよい。例えば、連絡溝32の深さは、10μm~200μmとしてもよい。また、主流溝31の横断面形状は、特に限られることはなく、例えば矩形状、C字状、半円状、半楕円状、湾曲状、V字状にすることができる。連絡溝32の横断面形状も同様である。
図7に示すように、液流路部30は、下側金属シート10の下側流路壁部13の上面13aに形成されている。一方、本実施の形態では、上側金属シート20の上側流路壁部22の下面22aは、平坦状に形成されている。これにより、液流路部30の各主流溝31は、平坦状の下面22aによって覆われている。この場合、図7に示すように、第1方向Xに延びる主流溝31の一対の側壁35、36と上側流路壁部22の下面22aとにより、直角状あるいは鋭角状の一対の角部37を形成することができ、この角部37における毛細管作用を高めることができる。
また、下側周縁壁14の上面14aと上側周縁壁23の下面23aとは、互いに接触しており、これにより、下側周縁液流路部18の少なくとも一部と、上側周縁液流路部27の少なくとも一部とが互いに重なっている。この場合、周縁液流路部18、27が重なっている領域において、下側周縁液流路部18の主流溝31、連絡溝32および凸部33は、それぞれ上側周縁液流路部27の主流溝31、連絡溝32および凸部33と重なっている。すなわち、下側周縁液流路部18の主流溝31、連絡溝32および凸部33は、それぞれ上側周縁液流路部27の主流溝31、連絡溝32および凸部33と鏡面対称に配置されている。下側周縁液流路部18の主流溝31と上側周縁液流路部27の主流溝31とが互いに対向して配置されていることにより、下側周縁壁14および上側周縁壁23における主流溝31の断面積が増大し、液状の作動液2の輸送機能を向上させることができる。
しかしながら、これに限らず、下側周縁液流路部18の主流溝31、連絡溝32および凸部33の少なくとも一部が、上側周縁液流路部27の主流溝31、連絡溝32および凸部33の少なくとも一部とずれて配置されていてもよい。
本実施の形態において、液流路部30は、下側金属シート10のみに形成されている。
また、蒸気流路凹部12、21および周縁液流路部18、27は、下側金属シート10および上側金属シート20の両方にそれぞれ形成されている。しかしながら、これに限られるものではなく、液流路部30、蒸気流路凹部12、21および周縁液流路部18、27は、それぞれ下側金属シート10および上側金属シート20のうち少なくとも一方に形成されていればよい。
なお、下側金属シート10の液流路部30および周縁液流路部18、27の形状は上記に限られるものではない。
例えば、図8に示すように、液流路部30および周縁液流路部18、27は、互いに平行に延びる複数の主流溝31と、互いに隣接する主流溝31の間に構成された細長状の凸部33Aとを有していてもよい。この場合、各凸部33Aは、作動液2の主流方向(この場合は第1方向X)に沿って、液流路部30および周縁液流路部18、27の長手方向の略全域にわたって延びている。これにより、各主流溝31において蒸発部11に向かって液状の作動液2を効率良く輸送することができる。なお、図示していないが、凸部33Aの一部に連絡溝を設け、この連絡溝によって、各主流溝31を下側蒸気流路凹部12又は上側蒸気流路凹部21に対して連通させるようにしてもよい。
あるいは、図9に示すように、液流路部30および周縁液流路部18、27は、それぞれ金属シート10、20に形成された凹部38内に充填された毛細管構造部材39を有していてもよい。この毛細管構造部材39は、毛細管現象によって液状の作動液2を蒸発部11に向けて流すための部材であり、金属シート10、20とは別体に構成されている。
このような毛細管構造部材39としては、例えば金属メッシュ、金属粉、金属不織布等が挙げられる。
下側金属シート10および上側金属シート20に用いる材料としては、熱伝導率が良好な材料であれば特に限られることはないが、例えば、銅(無酸素銅)または銅合金を用いることが好適である。この場合、下側金属シート10および上側金属シート20の熱伝導率を高め、ベーパーチャンバ1の放熱効率を高めることができる。また、ベーパーチャンバ1の厚さは、0.1mm~2.0mmとしてもよい。図3では、下側金属シート10の厚さT1および上側金属シート20の厚さT2が等しい場合を示しているが、これに限られることはなく、下側金属シート10の厚さT1と上側金属シート20の厚さT2は、等しくなくてもよい。ベーパーチャンバ1の全体の大きさ(金属シート10、20の全体の大きさ)は、1cm×3cm程度~15cm角程度である。
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、まず、ベーパーチャンバ1の製造方法について、図10(a)~(c)および図11(a)~(c)を用いて説明するが、上側金属シート20のハーフエッチング工程の説明は簡略化する。なお、図10(a)~(c)および図11(a)~(c)では、図3の断面図と同様の断面を示している。
まず、図10(a)に示すように、準備工程として、平板状の金属材料シートMを準備する。
続いて、図11(b)に示すように、金属材料シートMの上面Maおよび下面Mbに、それぞれフォトリソグラフィー法によりレジスト膜41を形成する。金属材料シートMの上面Maに形成されたレジスト膜41は、下側流路壁部13および下側周縁壁14に対応するパターン形状を有している。
次に、図11(c)に示すように、金属材料シートMがハーフエッチングされて、密封空間3の一部を構成する下側蒸気流路凹部12が形成される。これにより、金属材料シートMの上面Maのうち、レジスト膜41のレジスト開口41aに対応する部分がハーフエッチングされる。その後、金属材料シートMからレジスト膜41が除去される。この結果、図11(c)に示すように、下側蒸気流路凹部12、下側流路壁部13および下側周縁壁14が形成される。同時に、ハーフエッチングにより、下側流路壁部13に液流路部30が形成され、下側周縁壁14に下側周縁液流路部18が形成される。なお、レジスト開口41aのうち、液流路部30および下側周縁液流路部18の主流溝31および連絡溝32に対応する部分の幅は狭いため、エッチング液の回り込みが少ない。このため、主流溝31および連絡溝32の深さは、下側蒸気流路凹部12の深さよりも浅く形成される。また、この際、図2および図4に示す下側注入流路凹部17も同時に形成され、図4に示すような所定の外形輪郭形状をもつ下側金属シート10が得られる。
なお、ハーフエッチングとは、被エッチング材料をその厚み方向に途中までエッチングし、被エッチング材料を貫通しない凹部を形成するためのエッチングを意味している。このため、ハーフエッチングにより形成される凹部の深さは、被エッチング材料の厚さの半分に限られない。ハーフエッチング後の被エッチング材料の厚みは、ハーフエッチング前の被エッチング材料の厚みの例えば30%~70%、好ましくは40%~60%となる。
エッチング液には、例えば、塩化第二鉄水溶液等の塩化鉄系エッチング液、または塩化銅水溶液等の塩化銅系エッチング液を用いることができる。
なお、はじめに金属材料シートMにハーフエッチングにより下側蒸気流路凹部12を形成し(第1ハーフエッチング工程)、その後、別のエッチング工程(第2ハーフエッチング工程)で、金属材料シートMに液流路部30および周縁液流路部18、27を形成してもよい。
一方、図示しないが、下側金属シート10と同様にして、上側金属シート20が下面20aからハーフエッチングされて、上側蒸気流路凹部21、上側流路壁部22および上側周縁壁23が形成される。同時に、ハーフエッチングにより、上側周縁壁23に上側周縁液流路部27が形成される。このようにして、上述した上側金属シート20が得られる。
次に、図11(a)に示すように、仮止め工程として、下側蒸気流路凹部12を有する下側金属シート10と、上側蒸気流路凹部21を有する上側金属シート20とを対向させて仮止めする。
この場合、まず、下側金属シート10の下側アライメント孔15(図2および図4参照)と上側金属シート20の上側アライメント孔24(図2および図5参照)とを利用して、下側金属シート10と上側金属シート20とが位置決めされる。続いて、下側金属シート10と上側金属シート20とが固定される。固定の方法としては、特に限られることはないが、例えば、下側金属シート10と上側金属シート20とに対して抵抗溶接を行うことによって下側金属シート10と上側金属シート20とを固定してもよい。この場合、図11(a)に示すように、電極棒40を用いてスポット的に抵抗溶接を行うことが好適である。抵抗溶接の代わりにレーザ溶接を行ってもよい。あるいは、超音波を照射して下側金属シート10と上側金属シート20とを超音波接合して固定してもよい。さらには、接着剤を用いてもよいが、有機成分を有しないか、若しくは有機成分が少ない接着剤を用いることが好適である。このようにして、下側金属シート10と上側金属シート20とが、位置決めされた状態で固定される。
仮止めの後、図11(b)に示すように、恒久接合工程として、下側金属シート10と上側金属シート20とが、拡散接合によって恒久的に接合される。拡散接合とは、接合する下側金属シート10と上側金属シート20とを密着させ、真空や不活性ガス中などの制御された雰囲気中で、各金属シート10、20を密着させる方向に加圧するとともに加熱して、接合面に生じる原子の拡散を利用して接合する方法である。拡散接合は、下側金属シート10および上側金属シート20の材料を融点に近い温度まで加熱するが、融点よりは低いため、各金属シート10、20が溶融して変形することを回避できる。より具体的には、下側金属シート10の下側周縁壁14の上面14aと上側金属シート20の上側周縁壁23の下面23aとが、接合面となって拡散接合される。これにより、下側周縁壁14と上側周縁壁23とによって、下側金属シート10と上側金属シート20との間に密封空間3が形成される。また、下側注入流路凹部17(図2および図4参照)と上側注入流路凹部26(図2および図5参照)とによって、密封空間3に連通する作動液2の注入流路が形成される。さらに、下側金属シート10の下側流路壁部13の上面13aと、上側金属シート20の上側流路壁部22の下面22aとが、接合面となって拡散接合され、ベーパーチャンバ1の機械的強度が向上する。下側流路壁部13の上面13aに形成された液流路部30は、液状の作動液2の流路として残存する。
恒久的な接合の後、図11(c)に示すように、封入工程として、注入部4(図2参照)から密封空間3に作動液2が注入される。この際、まず、密封空間3が真空引きされて減圧され(例えば、5Pa以下、好ましくは1Pa以下)、その後、密封空間3に作動液2が注入される。注入時、作動液2は、下側注入流路凹部17と上側注入流路凹部26とにより形成された注入流路および導通部28を通過する。例えば、作動液2の封入量は、ベーパーチャンバ1内部の液流路部30の構成にもよるが、密封空間3の全体積に対して10%~40%としてもよい。
作動液2の注入の後、上述した注入流路が封止される。この場合、例えば、注入部4にレーザを照射し、注入部4を部分的に溶融させて注入流路を封止してもよい。あるいは、注入部4をカシメにより閉塞して密封空間3を密閉してもよい。これにより、密封空間3と外気との連通が遮断され、作動液2が密封空間3に封入される。このようにして、密封空間3内の作動液2が外部に漏洩することが防止される。
以上のようにして、本実施の形態によるベーパーチャンバ1が得られる。
なお、本実施の形態においては、ベーパーチャンバ1を、主としてエッチングによって製造する例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、3Dプリンタで製造してもよい。例えば、ベーパーチャンバ1をまとめて一度に3Dプリンタで製造してもよく、あるいは、各金属シート10、20を別々に3Dプリンタで製造して、その後に接合してもよい。
次に、ベーパーチャンバ1の作動方法、すなわち、デバイスDの冷却方法について説明する。
上述のようにして得られたベーパーチャンバ1は、モバイル端末等のハウジング内に設置されるとともに、下側金属シート10の下面10bに、被冷却対象物であるCPU等のデバイスDが取り付けられる。密封空間3内に注入された作動液2の量は少ないため、密封空間3内の液状の作動液2は、その表面張力によって、密封空間3の壁面、すなわち、下側蒸気流路凹部12の壁面、上側蒸気流路凹部21の壁面、液流路部30および周縁液流路部18、27の壁面に付着する。
この状態でデバイスDが発熱すると、下側蒸気流路凹部12のうち蒸発部11に存在する作動液2が、デバイスDから熱を受ける。受けた熱は潜熱として吸収されて作動液2が蒸発(気化)し、作動液2の蒸気が生成される。生成された蒸気の多くは、密封空間3を構成する下側蒸気流路凹部12内および上側蒸気流路凹部21内で拡散する(図4の実線矢印参照)。上側蒸気流路凹部21内および下側蒸気流路凹部12内の蒸気は、蒸発部11から離れ、蒸気の多くは、比較的温度の低いベーパーチャンバ1の周縁部に輸送される。拡散した蒸気は、下側金属シート10および上側金属シート20に放熱して冷却される。下側金属シート10および上側金属シート20が蒸気から受けた熱は、ハウジング部材Ha(図3参照)を介して外気に伝達される。
蒸気は、下側金属シート10および上側金属シート20に放熱することにより、蒸発部11において吸収した潜熱を失って凝縮する。凝縮して液状になった作動液2は、下側蒸気流路凹部12の壁面または上側蒸気流路凹部21の壁面に付着する。ここで、蒸発部11では作動液2が蒸発し続けているため、液流路部30および周縁液流路部18、27のうち、蒸発部11以外の部分における作動液2は、蒸発部11に向かって輸送される(図4の破線矢印参照)。これにより、下側蒸気流路凹部12の壁面および上側蒸気流路凹部21の壁面に付着した液状の作動液2は、液流路部30および周縁液流路部18、27に向かって移動し、液流路部30および周縁液流路部18、27内に入り込む。このため、液流路部30および周縁液流路部18、27に充填された作動液2は、各主流溝31の毛細管作用により、蒸発部11に向かう推進力を得て、蒸発部11に向かってスムースに輸送される。
ところで本実施の形態においては、金属シート10、20の周縁に沿ってそれぞれ周縁液流路部18、27が形成されている。このため、金属シート10、20の周縁で凝縮して液状となった作動液2は、毛細管現象により周縁液流路部18、27を還流し、蒸発部11に向かって輸送される。とりわけ、下側周縁液流路部18は、下側金属シート10の全周にわたって途切れることなく形成されている。したがって、液状となった作動液2は、下側注入流路凹部17の近傍で遮られることなく、下側金属シート10の周縁全域に沿って下側周縁液流路部18を円滑に流れ、蒸発部11に向かって輸送される。上側周縁液流路部27は、導通部28によって途切れているが、下側周縁液流路部18が、導通部28に対向する部分にも形成されていることにより、上側周縁液流路部27の周方向の流れを助長している。
蒸発部11に達した作動液2は、デバイスDから再び熱を受けて蒸発する。このようにして、作動液2が、相変化、すなわち蒸発と凝縮とを繰り返しながらベーパーチャンバ1内を還流してデバイスDの熱を移動させて放出する。この結果、デバイスDが冷却される。
このように本実施の形態によれば、下側周縁液流路部18が下側金属シート10の周縁全域にわたって形成されているため、例えば下側注入流路凹部17の付近で下側周縁液流路部18が不連続になることを防止できる。このため、毛細管力が途切れることを防止できる。これにより、ベーパーチャンバ1の外周部で作動液2の還流が阻害されることを防止でき、ベーパーチャンバ1の外周部の全域にわたって、作動液2をスムースに還流させることができる。この結果、ベーパーチャンバ1の外周部における作動液2の凝縮および環流が安定化し、ベーパーチャンバ1の熱輸送能力を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、下側周縁液流路部18が下側金属シート10の周縁全域にわたって形成されているため、下側注入流路凹部17と下側蒸気流路凹部12との間に、下側周縁液流路部18を介在させることができる。このため、導通部28に水が溜まることを防止できる。すなわち、下側注入流路凹部17が下側蒸気流路凹部12に直接的に接続されている場合には、下側注入流路凹部17(とりわけ、下側注入流路凹部17のうち下側蒸気流路凹部12の側の部分)および導通部28に水が溜まり、凍結するおそれがある。この場合、下側金属シート10または上側金属シート20が膨張して変形したり、破れたりする可能性がある。しかしながら、本実施の形態では、導通部28に水が溜まることを防止できるため、このような金属シート10の変形や破れを防止することができる。このため、品質を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、上側金属シート20の周縁に沿って上側周縁液流路部27が形成され、下側周縁液流路部18の少なくとも一部と上側周縁液流路部27の少なくとも一部とが互いに重なっている。このため、上側周縁液流路部27と下側周縁液流路部18とが重なった部分において、作動液2を還流するための広い液流路が形成され、ベーパーチャンバ1の外周部における作動液2の環流を効率良く行うことができる。
また、本実施の形態によれば、下側周縁液流路部18の幅w7は、上側周縁液流路部27の幅w8よりも広くなっている。これにより、下側周縁液流路部18のうち上側周縁液流路部27からはみ出した内側部分18aが上側蒸気流路凹部21に対向し、このはみ出した下側周縁液流路部18の内側部分18aによって、作動液2の凝縮および環流が安定的に行われる。
さらに、本実施の形態によれば、周縁液流路部18、27は、互いに平行に延びる複数の主流溝31と、互いに隣接する主流溝31同士を連絡する連絡溝32とを有している。
これにより、互いに隣り合う主流溝31同士で液状の作動液2が往来し、主流溝31でドライアウトが発生することが抑制される。このため、各主流溝31内の作動液2に毛細管作用が付与されて、作動液2は、蒸発部11に向かってスムースに輸送される。
さらに、本実施の形態によれば、周縁液流路部18、27には、複数の凸部33が平面視で千鳥状に配置されている。これにより、主流溝31内の作動液2に作用する毛細管作用を、主流溝31の幅方向に均等化させることができる。すなわち、複数の凸部33が平面視で千鳥状に配置されているため、連絡溝32は、主流溝31の両側に互い違いに接続される。このため、連絡溝32が各主流溝31の両側の同一位置に接続される場合と異なり、連絡溝32によって蒸発部11に向かう方向の毛細管作用が喪失されることを抑制することができる。このため主流溝31と連絡溝32との交点において、毛細管作用が低減することを抑制することができ、蒸発部11に向かう作動液2に対して連続的に毛細管作用を付与させることができる。
また密封空間3内は、上述したように減圧されているため、下側金属シート10および上側金属シート20は、外気から厚み方向内側に凹む方向への圧力を受けている。ここで、仮に連絡溝32が各主流溝31の長手方向両側の同一位置に接続されている場合には、連絡溝32に平行な方向に沿って、下側金属シート10および上側金属シート20が厚み方向内側に凹むことが考えられる。この場合、各主流溝31の流路断面積が小さくなり、作動液2の流路抵抗が増大し得る。これに対して本実施の形態では、液流路部30および周縁液流路部18、27には、複数の凸部33が平面視で千鳥状に配置されている。これにより、下側金属シート10および上側金属シート20が連絡溝32に沿って厚み方向内側に凹んだ場合であっても、その凹みが主流溝31を横断することを防止し、主流溝31の流路断面積を確保することができ、作動液2の流れが妨げられることを抑制している。
次に、図12乃至図15により、ベーパーチャンバの各変形例について説明する。図12乃至図15において、図1乃至図11と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
(変形例1)
図12は、一変形例(変形例1)によるベーパーチャンバ1Aを示している。図12に示すベーパーチャンバ1Aにおいて、図1乃至図11に示す本実施の形態とは異なり、下側金属シート10の下側注入突出部16には下側注入流路凹部17が形成されていない。
この場合、封入工程(図11(c)参照)で注入部4から密封空間3に作動液2を注入する際、下側周縁液流路部18によって作動液2の注入が妨げられることを防止でき、作動液2をスムースに注入することができる。
(変形例2)
図13は、他の変形例(変形例2)によるベーパーチャンバ1Bを示している。図13に示すベーパーチャンバ1Bにおいて、図1乃至図11に示す本実施の形態とは異なり、下側金属シート10の下側注入突出部16には下側注入流路凹部17が形成されていない。また、上側金属シート20には上側周縁液流路部27が形成されていない。なお、下側金属シート10の下側周縁液流路部18の幅を図4に示す形態の場合よりも狭くしてもよい。この場合、微細な形状の周縁液流路部18、27同士を向かい合わせに積層することを不要にできるため、金属シート10、20の位置合わせ精度を高くすることを不要にできる。
(変形例3)
図14は、他の変形例(変形例3)によるベーパーチャンバ1Cを示している。図14に示すベーパーチャンバ1Cにおいて、図1乃至図11に示す本実施の形態とは異なり、下側金属シート10は下側蒸気流路凹部12を有することなく、液流路部30が下側金属シート10の上面10aに設けられている。また、上面10aのうち液流路部30が形成される領域は、上側流路壁部22に対向する領域だけでなく、上側蒸気流路凹部21に対向する領域にも形成されている。この場合、液流路部30を構成する主流溝31の個数を増やすことができ、液状の作動液2の輸送機能を向上させることができる。しかしながら、液流路部30を形成する領域は、図14に示す領域に限られることはなく、液状の作動液2の輸送機能を確保することができれば任意である。
(変形例4)
図15は、一変形例(変形例4)によるベーパーチャンバ1Dを示している。図15に示すベーパーチャンバ1Dにおいて、図1乃至図11に示す本実施の形態とは異なり、下側金属シート10は下側蒸気流路凹部12を有していない。また、下側金属シート10の上面10aに液流路部30が設けられている。さらに、上側金属シート20には上側流路壁部22が形成されておらず、液流路部30の略全域に対向するように1つの上側蒸気流路凹部21が形成されている。この場合、上側蒸気流路凹部21の断面積が広くすることができ、作動液2の蒸気を効率良く輸送することができる。
(変形例5)
図16は、一変形例(変形例5)によるベーパーチャンバ1Eを示している。図16に示すベーパーチャンバ1Eにおいて、図1乃至図11に示す本実施の形態とは異なり、下側金属シート10の下側流路壁部13と、上側金属シート20の上側流路壁部22とが、それぞれ平面視で放射状に形成されている。すなわち、下側流路壁部13は、平面視略円形の中心部13bと、中心部13bから放射状に延びる複数の放射状部13cとを有している。同様に、上側流路壁部22は、平面視略円形の中心部22bと、中心部22bから放射状に延びる複数の放射状部22cとを有している。なお、液流路部30は、下側流路壁部13に形成され、上側流路壁部22には形成されていない。この場合、下側流路壁部13が放射状に形成されているため、液状の作動液2を効率良く蒸発部11側に輸送することができる。なお、図16において、液流路部(液流路部30および周縁液流路部18、27)を斜線で示している(後述する図17及び図18においても同様)。
(変形例6)
図17は、一変形例(変形例6)によるベーパーチャンバ1Fを示している。図17に示すベーパーチャンバ1Fにおいて、図1乃至図11に示す本実施の形態とは異なり、下側金属シート10の下側注入突出部16には下側注入流路凹部17が形成されていない。
また、上側金属シート20には上側周縁液流路部27が形成されていない。さらに、下側金属シート10の下側流路壁部13は、平面視略三角形状又は略台形状の複数のブロック部13dから構成されている。同様に、上側金属シート20の上側流路壁部22は、平面視略三角形状又は略台形状の複数のブロック部22dから構成されている。また、下側流路壁部13のブロック部13d、13dの間に下側蒸気流路凹部12の蒸気通路が形成され、上側流路壁部22のブロック部22d、22dの間に上側蒸気流路凹部21の蒸気通路が形成されている。なお、液流路部30は、下側流路壁部13に形成され、上側流路壁部22には形成されていない。この場合、下側流路壁部13の液流路部30の面積が広く確保されるため、液状の作動液2を効率良く蒸発部11側に輸送することができる。
(変形例7)
図18は、一変形例(変形例7)によるベーパーチャンバ1Gを示している。図18に示すベーパーチャンバ1Gにおいて、図1乃至図11に示す本実施の形態とは異なり、下側金属シート10の下側流路壁部13は、平面視略櫛歯状である複数(この場合は4つ)の櫛歯状部13eから構成されている。下側流路壁部13の各櫛歯状部13eは、第1方向Xに延びる基部13fと、基部13fに接続されるとともに第2方向Yに延びる複数の櫛部13gとを有している。同様に、上側金属シート20の上側流路壁部22は、平面視略櫛歯状である複数(この場合は4つ)の櫛歯状部22eから構成されている。上側流路壁部22の各櫛歯状部22eは、第1方向Xに延びる基部22fと、基部22fに接続されるとともに第2方向Yに延びる複数の櫛部22gとを有している。なお、液流路部30は、下側流路壁部13及び上側流路壁部22の両方に形成されている。この場合、液状の作動液2が各櫛部13g、22gから基部13f、22fに向けて集まり、その後、基部13f、22fを介して蒸発部11側に向かって流される。このため、液状の作動液2を効率良く蒸発部11側に輸送することができる。
(第2の実施の形態)
次に、図19乃至図22を用いて、本発明の第2実施の形態におけるベーパーチャンバ、電子機器およびベーパーチャンバ用金属シートについて説明する。
図19乃至図22に示す第2の実施の形態においては、下側金属シートと上側金属シートとの間に中間金属シートが介在され、上側金属シートに蒸気流路部が形成され、下側金属シートに液流路部が形成され、中間金属シートに、蒸気流路部と液流路部とを連通する連通部が設けられている点が主に異なり、他の構成は、図1乃至図18に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図19乃至図22において、図1乃至図18に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図19に示すように、本実施の形態においては、下側金属シート10(第1金属シート)と上側金属シート20(第2金属シート)との間に、中間金属シート70(第3金属シート)が介在されている。すなわち、本実施の形態によるベーパーチャンバ1は、下側金属シート10、中間金属シート70および上側金属シート20がこの順番で積層されている。中間金属シート70は、下側金属シート10上に設けられており、上側金属シート20は、中間金属シート70上に設けられている。なお、図19においては、図面を明瞭にするために、作動液2の図示を省略している。後述する図23および図27においても同様である。
中間金属シート70は、下側金属シート10の側に設けられた下面70a(第1面)と、下面70aとは反対側に設けられ、上側金属シート20の側に設けられた上面70b(第2面)と、を含んでいる。このうち下面70aが、下側金属シート10の上面10aに重ね合わされ、上面70bが、上側金属シート20の下面20aに重ね合わされている。
下側金属シート10と中間金属シート70とは、拡散接合によって接合されており、中間金属シート70と上側金属シート20とは、拡散接合によって接合されている。中間金属シート70は、下側金属シート10および上側金属シート20と同様な材料で形成することができる。中間金属シート70の厚さは、例えば、10μm~300μmである。
密封空間3は、下側金属シート10と上側金属シート20との間に形成されており、中間金属シート70にも密封空間3の一部が形成されている。本実施の形態では、密封空間3は、主として作動液2の蒸気が通る蒸気流路部80と、主として液状の作動液2が通る液流路部30と、を有している。蒸気流路部80と液流路部30は、作動液2が還流できるように連通している。蒸気流路部80は、下側蒸気流路凹部12(第1蒸気流路部)および上側蒸気流路凹部21(第2蒸気流路部)を有している。
下側蒸気流路凹部12および液流路部30を含む下側金属シート10は、図1乃至図18に示す第1の実施の形態における下側金属シート10と同様の構成とすることができる。このため、ここでは詳細な説明は省略する。
図19および図20に示すように、本実施の形態では、上側金属シート20には、液流路部30は設けられていない。また、上側金属シート20は、第1の実施の形態と同様の上側蒸気流路凹部21(第2蒸気流路部)を有している。上側蒸気流路凹部21内に、第1の実施の形態と同様の上側流路壁部22(第2流路突出部)が設けられている。
図19、図21および図22に示すように、中間金属シート70に、液流路部30と上側蒸気流路凹部21を連通する連通部71が設けられている。より詳細には、連通部71は、液流路部30と上側蒸気流路凹部21とを下側蒸気流路凹部12を介して連通する。
連通部71は、中間金属シート70の上面70bから下面70aに延びるように形成されており、中間金属シート70を貫通している。連通部71は、上述した密封空間3の一部を構成している。このことにより、上側蒸気流路凹部21において作動液2の蒸気から凝縮して生成された液状の作動液2は、連通部71を通って、液流路部30および下側周縁液流路部18の主流溝31に入り込むように構成されている。一方、蒸発部11において蒸発した作動液2の蒸気は、下側蒸気流路凹部12で拡散されるだけでなく、連通部71を通って上側蒸気流路凹部21にも拡散できるようになっている。
図21および図22に示すように、中間金属シート70は、平面視で矩形枠状に形成された枠体部73と、枠体部73内に設けられた複数のランド部74と、を有している。枠体部73およびランド部74は、中間金属シート70をエッチングする際にエッチングされることなく中間金属シート70の材料が残る部分である。ランド部74は、第1方向Xに沿って細長状に延びており、連通部71内に複数配置されている。ランド部74は、図示しない支持部を介して、互いに支持されているとともに、枠体部73に支持されている。支持部は、後述する中間連通路77内を流れる作動液2の蒸気の流れが妨げられることを抑制するように形成されている。例えば、支持部は、平面視で、中間連通路77内および中間連絡連通路78内に部分的に形成されるようにしてもよい。
連通部71は、ランド部74によって区画された複数の中間連通路77を含んでいる。
中間連通路77は、第1方向Xに沿って細長状に延びており、互いに平行に配置されている。各中間連通路77の両端部は、第2方向Yに沿って細長状に延びる中間連絡連通路78に連通しており、各中間連通路77が、中間連絡連通路78を介して連通している。なお、図19においては、中間連通路77の横断面(第2方向Yにおける断面)形状が、矩形状になっている。しかしながら、このことに限られることはなく、中間連通路77の横断面形状は、例えば、湾曲状、半円状、V字状であってもよく、作動液2の蒸気を拡散することができれば任意である。中間連絡連通路78も同様である。
ランド部74は、対応する上側流路壁部22および下側流路壁部13に平面視で重なるように配置されており、ベーパーチャンバ1の機械的強度の向上を図っている。また、中間連通路77は、対応する下側蒸気通路81および上側蒸気通路83に平面視で重なるように形成されている。同様に、中間連絡連通路78は、対応する下側連絡蒸気通路82および上側連絡蒸気通路84に平面視で重なるように形成されている。
図21および図22に示すように、中間金属シート70のランド部74の幅w5(第2方向Yの寸法)は、上面70bから下面70aにわたる範囲における最大寸法とした場合、例えば、50μm~2000μmとしてもよい。中間連通路77の幅w6(第2方向Yの寸法)は、上面70bから下面70aにわたる範囲における最小寸法とした場合、例えば、50μm~2000μmとしてもよい。中間連絡連通路78の幅(第1方向Xの寸法)も同様である。
連通部71は、中間金属シート70の上面70bからエッチングされることによって形成されてもよい。この場合、連通部71の中間連通路77は、下面70aに向かって膨らむような形状で湾曲していてもよい。あるいは、連通部71は、中間金属シート70の下面70aからエッチングされてもよく、この場合には、中間連通路77は、上面70bに向かって膨らむような形状で湾曲していてもよい。さらには、連通部71は、下面70aからのハーフエッチングと上面70bからのハーフエッチングとで形成されていてもよい。この場合には、連通部71のうち上面70bの側の部分と下面70aの側の部分とで、形状または大きさを異ならせてもよい。
また、図21および図22に示すように、中間金属シート70には、各金属シート10、20、70を位置決めするための中間アライメント孔72が設けられている。すなわち、各中間アライメント孔72は、仮止め時に、上述した各下側アライメント孔15および上側アライメント孔24にそれぞれ重なるように配置され、各金属シート10、20、70の位置決めが可能になっている。
図22に示すように、中間金属シート70の下面70aに、液状の作動液2が通る環形状の中間周縁液流路部79(第3周縁液流路部)が形成されている。この中間周縁液流路部79は、平面視で、枠体部73の内側部分において、中間金属シート70の周縁に沿って形成されている。中間周縁液流路部79は、密封空間3、とりわけ連通部71を囲むように形成されている。すなわち、平面視で、ランド部74と中間周縁液流路部79との間に、連通部71の中間連通路77または中間連絡連通路78が介在されている。また、中間周縁液流路部79は、平面視で矩形の環形状を有しており、その各辺は第1方向X又は第2方向Yに対して平行となっている。
図22に示すように、中間周縁液流路部79は、中間金属シート70のうち、後述する中間注入流路部76と連通部71とを接続する導通部90を除く周縁全域にわたって形成されている。すなわち、中間周縁液流路部79は、中間注入流路部76から作動液2を注入する(第1の実施の形態の導通部28と同様の)導通部90で部分的に途切れている。
このため、封入工程において、中間注入流路部76から、導通部90を介して連通部71に作動液2を注入可能となっている。一方、中間周縁液流路部79は、導通部90を除いて中間金属シート70の周縁全域にわたって形成されているため、中間金属シート70の周縁の略全域で作動液2を蒸発部11側に還流することが可能となっている。
中間周縁液流路部79の幅w9は、第1の実施の形態の上側周縁液流路部27の幅w8と同様になっていてもよい。そして、図4および図22に示すように、第1の実施の形態と同様に、下側金属シート10の下側周縁液流路部18の幅w7は、中間金属シート70の中間周縁液流路部79の幅w9よりも広くなっていてもよい(w7>w9)。
また、本実施の形態において、下側金属シート10の下側周縁液流路部18の一部と、中間金属シート70の中間周縁液流路部79の一部とは、平面視で互いに重なっている。
具体的には、下側周縁液流路部18の内側部分18aおよび導通部90を除き、下側周縁液流路部18と中間周縁液流路部79とが互いに重なっている。これにより、下側周縁液流路部18と中間周縁液流路部79とによって作動液2の還流を効率的に行うことができる。
図21に示すように、中間金属シート70の上面70bには、周縁液流路部は形成されておらず、図20に示すように、上側金属シート20の下面20aには、周縁液流路部は形成されていない。しかしながら、このことに限られることはなく、本実施の形態における下側周縁液流路部18および中間周縁液流路部79に加えて若しくはその代わりに、中間金属シート70の上面70bに、中間周縁液流路部79と同様にして周縁液流路部を形成するとともに、上側金属シート20の下面20aに、下側周縁液流路部18と同様にして周縁液流路部を形成してもよい。この場合、上側金属シート20の下面20aに、液流路部30が設けられてもよい。
なお、本実施の形態においては、注入部4は、図1乃至図18に示す第1の実施の形態の注入部4と同様に形成してもよい。すなわち、図3に示すように、下側金属シート10が下側注入突出部16を有し、下側注入突出部16の上面に下側注入流路凹部(注入流路凹部)17が形成されている。しかしながら、図20に示すように、上側金属シート20は、上側注入突出部25を有しているが、上側注入突出部25の下面には凹部が形成されることなく、平坦な形状で形成されている。
図21および図22に示すように、中間金属シート70は、端面から側方に突出する中間注入突出部75を有している。図22に示すように、この中間注入突出部75の下面に、中間注入流路部76が凹状に形成されている。図21に示すように、中間注入突出部75の上面には、凹部が形成されておらず、平坦な形状で形成されている。下側注入流路凹部17および中間注入流路部76は、下側金属シート10と中間金属シート70とが接合された際、一体となって作動液2の注入流路を形成する。下側金属シート10、上側金属シート20および中間金属シート70が接合されると、各注入突出部16、25、75は、互いに重なり合うようになっている。中間注入突出部75は、第1の実施の形態の上側注入突出部25と同様に形成することができる。
中間注入流路部76は、凹状に形成されることに限られることはない。例えば、中間注入流路部76は、中間金属シート70の下面70aから上面70bにわたって延びて、中間金属シート70を貫通するように形成されていてもよい。
しかしながら、このことに限られることはない。例えば、下側注入流路凹部17に加えて若しくは下側注入流路凹部17の代わりに、上側注入突出部25の下面に、注入流路凹部(注入流路凹部)を形成してもよい。この場合、中間注入突出部75の上面にも注入流路凹部を形成してもよい。あるいは、このような注入部4の代わりに、下側金属シート10または上側金属シート20に注入孔を設けて、この注入孔から作動液2を注入するようにしてもよい。
また、本実施の形態によるベーパーチャンバ1は、下側金属シート10の下側蒸気流路凹部12および液流路部30と、上側金属シート20の上側蒸気流路凹部21は、図1乃至図18に示す第1の実施の形態と同様にして形成することができる。また、中間金属シート70の連通部71も、エッチングによって形成することができる。その後、下側金属シート10と上側金属シート20とを、中間金属シート70を介して接合する。すなわち、下側金属シート10と中間金属シート70とを拡散接合するとともに、上側金属シート20と中間金属シート70とを拡散接合する。このことにより、密封空間3が形成される。なお、下側金属シート10と中間金属シート70と上側金属シート20とを一度に拡散接合するようにしてもよい。
このように本実施の形態によれば、下側金属シート10と上側金属シート20との間に中間金属シート70が介在され、上側金属シート20の下面20aに上側蒸気流路凹部21が設けられ、下側金属シート10の上面10aに液流路部30が設けられている。そして、中間金属シート70に、上側蒸気流路凹部21と液流路部30とを連通する連通部71が設けられている。このことにより、3つの金属シート10、20、70でベーパーチャンバ1を構成する場合であっても、密封空間3内で、作動液2を、相変化を繰り返しながらベーパーチャンバ1内を還流させて、デバイスDの熱を移動させて放出することができる。また、上側金属シート20の上側蒸気流路凹部21が広く連通しているため、作動液2の蒸気の拡散をスムースに行うことができ、熱輸送効率を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、図1乃至図18に示す第1の実施の形態と同様に、下側周縁液流路部18が下側金属シート10の周縁全域にわたって形成されているため、例えば下側注入流路凹部17の付近で下側周縁液流路部18が不連続になることを防止できる。このため、毛細管力が途切れることを防止できる。これにより、ベーパーチャンバ1の外周部で作動液2の還流が阻害されることを防止でき、ベーパーチャンバ1の外周部の全域にわたって、作動液2をスムースに還流させることができる。この結果、ベーパーチャンバ1の外周部における作動液2の凝縮および環流が安定化し、ベーパーチャンバ1の熱輸送能力を向上させることができる。
なお、図19に示す例では、下側蒸気流路凹部12の横断面形状および上側蒸気流路凹部21の横断面形状が、矩形状に形成されている例を示している。しかしながら、このことに限られることはなく、蒸気流路凹部12、21の横断面形状は、湾曲状に形成されていてもよい。また、液流路部30の主流溝31および連絡溝32についても同様である。
また、上述した本実施の形態においては、下側金属シート10と上側金属シート20との間に、1つの中間金属シート70が介在されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、下側金属シート10と上側金属シート20との間には、2つ以上の中間金属シート70が介在されていてもよい。
(第3の実施の形態)
次に、図23乃至図27を用いて、本発明の第3実施の形態におけるベーパーチャンバ、電子機器およびベーパーチャンバ用金属シートについて説明する。
図23乃至図27に示す第3の実施の形態においては、下側金属シートと上側金属シートとの間に中間金属シートが介在され、蒸気流路部が、中間金属シートの上面に設けられ、液流路部および中間周縁液流路部が、中間金属シートの下面に設けられて、中間周縁液流路部が、中間金属シートの全周にわたって形成されている点が主に異なり、他の構成は、図19乃至図22に示す第2の実施の形態と略同一である。なお、図23乃至図27において、図19乃至図22に示す第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図2に示すように、本実施の形態においては、蒸気流路部80は、中間金属シート70の上面70bに設けられている。すなわち、本実施の形態による蒸気流路部80は、中間金属シート70の上面70bから下面70aに延びるように形成されており、中間金属シート70を貫通している。液流路部30は、中間金属シート70の下面70aに設けられている。このため、本実施の形態による中間金属シート70は、ウィックシートと称する場合もある。蒸気流路部80と液流路部30は、作動液2が還流できるように連通している。
図24および図25に示すように、中間金属シート70は、第2の実施の形態と同様に、平面視で矩形枠状に形成された枠体部73と、枠体部73内に設けられた複数のランド部74と、を有している。ランド部74を支持する図示しない支持部は、後述する中間蒸気通路85内を流れる作動液2の蒸気の流れが妨げられることを抑制するように形成されている。例えば、支持部は、図23の上下方向において中間金属シート70の上面70bから下面70aにわたる範囲の一部に形成されるようにしてもよい。
蒸気流路部80は、ランド部74によって区画された複数の中間蒸気通路85(第3蒸気通路、蒸気通路)を含んでいる。中間蒸気通路85は、第1方向Xに沿って細長状に延びており、互いに平行に配置されている。各中間蒸気通路85の両端部は、第2方向Yに沿って細長状に延びる中間連絡蒸気通路86に連通しており、各中間蒸気通路85が、中間連絡蒸気通路86を介して連通している。このようにして、各ランド部74の周囲(中間蒸気通路85および中間連絡蒸気通路86)を作動液2の蒸気が流れて、蒸気流路部80の周縁部に向かって蒸気が輸送されるように構成されており、蒸気の流れが妨げられることを抑制している。なお、図23においては、中間蒸気通路85の横断面(第2方向Yにおける断面)形状が、矩形状になっている。しかしながら、このことに限られることはなく、中間蒸気通路85の横断面形状は、例えば、湾曲状、半円状、V字状であってもよく、作動液2の蒸気を拡散することができれば任意である。中間連絡蒸気通路86も同様である。中間蒸気通路85および中間連絡蒸気通路86は、図19乃至図22に示す第2の実施の形態における中間連通路77および中間連絡連通路78と同様にエッチングで形成することができ、中間連通路77および中間連絡連通路78と同様な横断面形状を有することができる。中間蒸気通路85の幅および中間連絡蒸気通路86の幅は、中間連通路77の幅w6と同様にすることができる。
図25に示すように、液流路部30は、中間金属シート70の下面70aにおいて、ランド部74に設けられている。すなわち、ランド部74の下面に液流路部30が設けられている。また、枠体部73の下面に、中間周縁液流路部79(第3周縁液流路部)が設けられている。中間周縁液流路部79は、第1の実施の形態の下側周縁液流路部18と同様に形成することができる。すなわち、中間周縁液流路部79は、中間金属シート70の全周にわたって形成されており、中間周縁液流路部79は、矩形状の中間金属シート70を構成する4つの辺の全てに途切れることなく形成されている。また中間周縁液流路部79は、中間注入流路部76で形成される作動液2の注入流路を横切るように形成されており、この中間注入流路部76の近傍においても作動液2を環流することが可能となっている。なお、図25において、中間注入流路部76は、中間周縁液流路部79の幅方向(第1方向X)途中まで進入しているが、これに限らず、中間注入流路部76が中間周縁液流路部79に進入していなくてもよい。
図23および図26に示すように、本実施の形態における下側金属シート10の上面10aには、第1の実施の形態と同様な下側蒸気流路凹部12は設けられているが、液流路部30は設けられていない。しかしながら、上面10aには、下側周縁液流路部18が設けられている。図26に示す下側周縁液流路部18は、第1の実施の形態の上側周縁液流路部27と同様に形成することができる。本実施の形態による下側金属シート10の厚さは、第1の実施の形態の下側金属シート10の厚さと同様にすることができる。
図23に示すように、上側金属シート20の下面20aには、上側蒸気流路凹部21は設けられておらず、液流路部30も設けられていない。当該下面20aは、平坦状に形成されている。本実施の形態による上側金属シート20の厚さは、例えば、8μm~100μmである。
また、本実施の形態によるベーパーチャンバ1は、中間金属シート70の蒸気流路部80と液流路部30とを、エッチングによって形成することができる。その後、下側金属シート10と上側金属シート20とを、中間金属シート70を介して接合する。すなわち、下側金属シート10と中間金属シート70とを拡散接合するとともに、上側金属シート20と中間金属シート70とを拡散接合する。このことにより、密封空間3が形成される。
なお、下側金属シート10と中間金属シート70と上側金属シート20とを一度に拡散接合するようにしてもよい。
なお、本実施の形態においては、注入部4を構成する中間注入突出部75の下面に、中間注入流路部76(注入流路部)が凹状に形成されている。なお、図26において、中間注入流路部76は、中間周縁液流路部79の幅方向(第1方向X)途中まで進入しているが、これに限らず、中間注入流路部76が中間周縁液流路部79に進入していなくてもよい。下側注入突出部16の上面には、下側注入流路凹部17が形成されている。しかしながら、本実施の形態では、下側注入流路凹部17は、下側蒸気流路凹部12に連通している。下側注入流路凹部17および中間注入流路部76は、下側金属シート10と中間金属シート70とが接合された際、一体となって作動液2の注入流路を形成する。
このように本実施の形態によれば、下側金属シート10と上側金属シート20との間に中間金属シート70が介在され、中間金属シート70の上面70bに蒸気流路部80が設けられ、中間金属シート70の下面70aに液流路部30が設けられている。このことにより、3つの金属シート10、20、70でベーパーチャンバ1を構成する場合であっても、密封空間3内で、作動液2を、相変化を繰り返しながらベーパーチャンバ1内を還流させて、デバイスDの熱を移動させて放出することができる。
また、本実施の形態によれば、図1乃至図18に示す第1の実施の形態と同様に、中間周縁液流路部79が中間金属シート70の周縁全域にわたって形成されているため、例えば下側注入流路凹部17の付近で中間周縁液流路部79が不連続になることを防止できる。このため、毛細管力が途切れることを防止できる。これにより、ベーパーチャンバ1の外周部で作動液2の還流が阻害されることを防止でき、ベーパーチャンバ1の外周部の全域にわたって、作動液2をスムースに還流させることができる。この結果、ベーパーチャンバ1の外周部における作動液2の凝縮および環流が安定化し、ベーパーチャンバ1の熱輸送能力を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、蒸気流路部80は、中間金属シート70の上面70bから下面70aに延びている。このことにより、蒸気流路部80の流路抵抗を低減することができる。このため、蒸気流路部80において作動液2の蒸気から凝縮して生成された液状の作動液2を、スムースに液流路部30の主流溝31に入り込ませることができる。一方、蒸発部11において蒸発した作動液2の蒸気を、蒸気流路部80にスムースに拡散することができる。
なお、上述した本実施の形態においては、液流路部30が、中間金属シート70の下面70aに設けられている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、図27に示すように、液流路部30は、下面70aだけでなく、上面70bにも設けられていてもよい。この場合、液状の作動液2を蒸発部11または中間金属シート70のうち蒸発部11に近い部分に輸送する流路を増やすことができ、液状の作動液2の輸送効率を向上させることができる。このため、ベーパーチャンバ1の熱輸送効率を向上させることができる。この場合、上側金属シート20の下面20aに上側周縁液流路部27が設けられ、上側注入突出部25の下面に、上側注入流路凹部が26形成されてもよい。また、中間金属シート70の上面70bに、中間周縁液流路部79が設けられ、中間注入突出部75の上面に、中間注入流路部76が形成されてもよい。
また、上述した本実施の形態においては、蒸気流路部80が、中間金属シート70の上面70bから下面70aに延びるように形成されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、蒸気流路部80が、図1乃至図18に示す下側蒸気流路凹部12のように、あるいは、図19および図20に示す上側蒸気流路凹部21のように、中間金属シート70の上面70bに凹状に形成されていてもよい。この場合、中間金属シート70に、蒸気流路部80を液流路部30に連通する連通孔(図示せず)が設けられていてもよい。
また、上述した本実施の形態においては、下側金属シート10と上側金属シート20との間に、1つの中間金属シート70が介在されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、下側金属シート10と中間金属シート70との間に、図示しない他の金属シートが介在されていてもよく、上側金属シート20と中間金属シート70との間に、図示しない他の金属シートが介在されていてもよい。
本発明は上記各実施の形態および各変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施の形態および各変形例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。各実施の形態および各変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。また、上記各実施の形態および各変形例では、下側金属シート10の構成と、上側金属シート20の構成とを入れ替えてもよい。