図1は、ベーパーチャンバを備える電子機器を模式的に示した斜視図である。
図2は、本開示の形態によるベーパーチャンバを示す上面図である。
図3は、図2のベーパーチャンバを示すA−A線断面図である。
図4は、図2の下側シートの平面図である。
図5は、図2の上側シートの底面図である。
図6は、図3に示す蒸気流路凹部を示す拡大断面図である。
図7は、図4の液流路部を示すB部の拡大上面図である。
図8は、図6の液流路部を示す拡大断面図である。
図9は、上側シートにも主流溝が備えられた例を示す断面図である。
図10は、図2のベーパーチャンバの製造方法において、下側材料シートの第1準備工程を説明するための図である。
図11は、図2のベーパーチャンバの製造方法において、下側材料シートの下側流路溝形成工程を説明するための図である。
図12は、図2のベーパーチャンバの製造方法において、上側材料シートの第2準備工程を説明するための図である。
図13は、図2のベーパーチャンバの製造方法において、上側材料シートの上側流路溝形成工程を説明するための図である。
図14は、図2のベーパーチャンバの製造方法において、仮止め工程を説明するための図である。
図15は、図2のベーパーチャンバの製造方法において、接合工程を説明するための図である。
図16は、図14の接合工程において、接合後の蒸気流路凹部を示す図である。
図17は、図2のベーパーチャンバの製造方法において、作動液の注入工程を説明するための図である。
図18は、変形例におけるベーパーチャンバにおいて、下側シートをプレス加工する状態を示す部分拡大断面図である。
図19は、変形例におけるベーパーチャンバにおいて、上側シートをプレス加工する状態を示す部分拡大断面図である。
図20は、変形例におけるベーパーチャンバを示す拡大断面図である。
図21は、図20に示すベーパーチャンバの変形例を示す拡大断面図である。
図22は、図20に示すベーパーチャンバの変形例を示す拡大断面図である。
図23は、3つのシートからなるベーパーチャンバを示す拡大断面図である。
図24は、他の例にかかる3つのシートからなるベーパーチャンバを示す拡大断面図である。
図25は、4つのシートからなるベーパーチャンバを示す拡大断面図である。
図26は凸部を有するベーパーチャンバの例を示す拡大断面図である。
以下、図面を参照して本開示の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺及び縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張して表すことがある。
また、ベーパーチャンバでは、密封空間内を作動流体が相変化を伴いつつ移動するため、本明細書では気化して気体である作動流体を「蒸気」、液化して液体である作動流体を「作動液」と記載することがある。
始めに、本形態によるベーパーチャンバ1が搭載される電子機器Eについて、タブレット端末を例にとって説明する。図1に示すように、電子機器E(タブレット端末)は、ハウジングHと、ハウジングH内に収容されたデバイスDと、ベーパーチャンバ1と、を備えている。図1に示す電子機器Eでは、ハウジングHの前面にタッチパネルディスプレイTDが設けられている。ベーパーチャンバ1は、ハウジングH内に収容されて、デバイスDに熱的に接触するように配置される。このことにより、電子機器Eの使用時にデバイスDで発生する熱をベーパーチャンバ1が受けることができる。ベーパーチャンバ1が受けた熱は、後述する作動流体を介してベーパーチャンバ1の外部に放出される。このようにして、デバイスDは冷却される。電子機器Eがタブレット端末である場合には、デバイスDは、中央演算処理装置等に相当する。
図2〜図21を用いて、本開示の形態にかかるベーパーチャンバ、ベーパーチャンバ用シートおよびベーパーチャンバの製造方法について説明する。本形態におけるベーパーチャンバ1は、作動液2(図6参照)が封入された密封空間3を有しており、密封空間3内の作動流体が相変化を繰り返すことにより、携帯端末やタブレット端末といったモバイル端末等で使用される中央演算処理装置(CPU)や発光ダイオード(LED)、パワー半導体等の発熱を伴うデバイスD(被冷却装置)を冷却するための装置である。ベーパーチャンバ1は、概略的に薄い平板状に形成されている。
図2および図3に示すように、本形態のベーパーチャンバ1は、下側シート10(第1シート、ベーパーチャンバ用シート)と、下側シート10上に設けられた上側シート20(第2シート、ベーパーチャンバ用シート)と、を備えている。下側シート10は、上面10a(第1シート面)と、上面10aの反対側の下面10b(第1反対面)と、を有している。下面10b(とりわけ、後述する蒸発部11の下面)に、冷却対象物であるデバイスDが取り付けられる。上側シート20は、下面20a(第2シート面)と、下面20aの反対側に設けられた上面20b(第2反対面)と、を有している。下面20aは、下側シート10の上面10aに重ね合わされており、下側シート10と上側シート20とは、後述する拡散接合によって接合されている。
下側シート10と上側シート20との間には、作動流体が封入された密封空間3が形成されている。作動流体の例としては、純水、エタノール、メタノール、アセトン、及びそれらの混合物等が挙げられる。
図2および図3に示す形態では、下側シート10および上側シート20は、平面視でいずれも矩形状に形成されている例が示されているが、これに限られることはない。本形態のように矩形である他、平面視で円形、楕円形、三角形、その他の多角形、屈曲部を有する形、例えばL字型、T字型、クランク型等、および、これらを組み合わせた形状とすることができる。
ここで平面視とは、ベーパーチャンバ1がデバイスDから熱を受ける面(下側シート10の下面10b)、および受けた熱を放出する面(上側シート20の上面20b)の法線方向から見た状態であって、例えば、ベーパーチャンバ1を上方から見た状態(図2参照)、または下方から見た状態に相当している。
なお、ここでは第1シートを下側シート、および、第2シートを上側シートと記載するが、これは必ずしも上下関係を限定するものではなく、便宜上の記載である。ここではデバイスDから熱を受けるシートを第1シート、その反対側に配置されるシートを第2シートとしている。その他の部位に付された「上側」および「下側」の記載は単にこの記載に合わせたものである。
図3および図4に示すように、下側シート10は、作動液2が蒸発して蒸気を生成する蒸発部11と、上面10aに設けられ、平面視で矩形状に形成された下側蒸気流路凹部12(第1蒸気流路凹部)と、を有している。このうち下側蒸気流路凹部12は、上述した密封空間3の一部を構成しており、主として、蒸発部11で生成された蒸気が通るように構成されている。
本形態では、下側蒸気流路凹部12は、複数の下側流路溝(すなわち、複数の第1下側流路溝12G1と、複数の第2下側流路溝12G2と、複数の第3下側流路溝12G3と)を有している。各第1下側流路溝12G1および第2下側流路溝12G2は、それぞれ、第1方向Xに延びて蒸気を多く含んだ作動流体が通るようになっており、第1方向Xに直交する第2方向Yにおいて互いに異なる位置に間隔を有して配列されている。
一方、第3下側流路溝12G3は、第2方向Yに延びており、第1下側流路溝12G1および第2下側流路溝12G2の両端部に連通している。本形態では、各下側流路溝12G1、12G2、12G3は、横断面において、湾曲する部位を有している。後述する底面12aは、下側蒸気流路凹部12の壁面のうち、下側シート10の下面10bの側の部分に相当する。
蒸発部11は、この下側蒸気流路凹部12内に配置されており、蒸発部11には、第1下側流路溝12G1が平面視で重なっている。下側蒸気流路凹部12内の蒸気は、蒸発部11から離れる方向に拡散して、蒸気の多くは、比較的温度の低い周縁部に向かって輸送される。
なお、蒸発部11は、下側シート10の下面10bに取り付けられるデバイスDから熱を受けて、密封空間3内の作動液2が蒸発する部分である。このため、蒸発部11という用語は、ベーパーチャンバの平面視でデバイスDに重なっている部分に限られる概念ではなく、デバイスDに重なっていなくても作動液2が蒸発可能な部分をも含む概念として用いている。ここで蒸発部11は、下側シート10の任意の場所に設けることができるが、図2および図4においては、下側シート10の中央部に設けられている例が示されている。この場合、ベーパーチャンバ1が設置されたモバイル端末の姿勢が、ベーパーチャンバ1の動作の安定化に影響を及ぼすことを抑制できる。
本形態では、図3、図4および図6に示すように、下側蒸気流路凹部12内に、下側蒸気流路凹部12の底面12aよりも上方(上面10aに垂直な方向)に突出する複数の下側流路壁部13(第1流路壁部)が設けられている。この下側流路壁部13は、後述する上側流路壁部22の下面22aに接触する上面13a(突出端面)を含んでいる。
本形態では、下側流路壁部13は、ベーパーチャンバ1の第1下側流路溝12G1、および、第2下側流路溝12G2が延びる方向(X方向)に沿って細長く延びている例が示されている。そして、各下側流路壁部13は等間隔に離間して、互いに平行に配置されている。この下側流路壁部13によって、下側蒸気流路凹部12は、上述した第1下側流路溝12G1および第2下側流路溝12G2に区画されている。すなわち、互いに隣り合う下側流路壁部13の間に第1下側流路溝12G1が形成されている。同様に、後述する下側周縁壁14と、第2方向Yにおいてこれに隣り合う下側流路壁部13との間に第2下側流路溝12G2が形成されている。
このようにして、各下側流路壁部13の周囲を蒸気が流れて、蒸発部11から離れるように蒸気が輸送されるように構成されており、蒸気の流れが妨げられることを抑制している。例えば、第1下側流路溝12G1においては、蒸気は第3下側流路溝12G3に向かって輸送される。
また、下側流路壁部13は、上側シート20の対応する後述の上側流路壁部22に平面視で重なるように配置されており、ベーパーチャンバ1の機械的強度の向上を図っている。
図6および図7に示す下側流路壁部13の幅w0は、上面10aにおいて、3000μm以下であることが好ましく、1500μm以下であってもよく、1000μm以下であってもよい。一方、幅w0は上面10aにおいて100μm以上であることが好ましく、200μm以上であってもよく、400μm以上であってもよい。また、幅w0の範囲は、この複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、幅w0の範囲は、この複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。ここで、幅w0は、下側流路壁部13の長手方向(X方向)に直交する方向(Y方向)における下側流路壁部13の寸法を意味しており、例えば、図4および図7における上下方向の寸法、または図6における左右方向の寸法に相当する。
第1下側流路溝12G1の幅w1(互いに隣り合う下側流路壁部13同士の間隔)は、上面10aにおいて、2000μm以下であることが好ましく、1500μm以下であってもよく、1000μm以下であってもよい。一方、幅w1は上面10aにおいて100μm以上であることが好ましく、200μm以上であってもよく、400μm以上であってもよい。また、幅w1の範囲は、この複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、幅w1の範囲は、この複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
第2下側流路溝12G2の幅および第3下側流路溝12G3の幅は、第1下側流路溝12G1の幅と等しくてもよい。
また、図6に示す下側流路壁部13の高さ(言い換えると、下側蒸気流路凹部12の深さ)h0は、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。一方、高さh0は、10μm以上であることが好ましく、25μm以上であってもよく、50μm以上であってもよい。また、高さh0の範囲は、この複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、高さh0の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
図3および図4に示すように、下側シート10の周縁部には、下側周縁壁14が設けられている。下側周縁壁14は、密封空間3、とりわけ下側蒸気流路凹部12を囲むように形成されており、密封空間3を画定している。また、平面視で下側周縁壁14の四隅に、下側シート10と上側シート20との位置決めをするための下側アライメント孔15がそれぞれ設けられている。
図6に示すように、下側シート10の下面10bに、下側蒸気流路凹部12に向かって凹む下側シート凹部50(第1シート凹部)が設けられている。この下側シート凹部50は、下面10bのうち平面視で下側蒸気流路凹部12に重なる位置に配置されている。図6においては、下側シート凹部50の横断面形状が湾曲部を有する例が示されているが、これに限られることはなく、矩形、V字形状、およびこれらの組み合わせの形状であってもよい。
本形態では、上述したように、下側蒸気流路凹部12内に、複数の下側流路壁部13が設けられており、下側流路壁部13によって画定された第1下側流路溝12G1、第2下側流路溝12G2および第3下側流路溝12G3が形成されている。このことにより、下側シート凹部50は、互いに隣り合う一対の下側流路壁部13の間(第1下側流路溝12G1に重なる位置)に配置されている。この第1下側流路溝12G1に重なる下側シート凹部50は、平面視で、第1下側流路溝12G1に沿うように、第1方向Xに沿って細長く連続して延びている。また、下側シート凹部50は、下側周縁壁14と、これに隣り合う下側流路壁部13との間(第2下側流路溝12G2に重なる位置)にも形成されていてもよい。この第2下側流路溝12G2に重なる下側シート凹部50は、第2下側流路溝12G2に沿うように、第1方向Xに沿って細長く連続して延びている。さらに、第3下側流路溝12G3に平面視で重なる位置にも下側シート凹部50が形成されていてもよく、当該下側シート凹部50は、第3下側流路溝12G3に沿うように、第2方向Yに沿って細長状に連続状に延びている。
また、図6に示すように、下側蒸気流路凹部12を画定する底面12aのうち、平面視で下側シート凹部50に重なる位置に、下側蒸気流路凹部12の内側に突出する下側底面凸部51(第1底面凸部)が設けられている。図6においては、下側底面凸部51の横断面形状が、下側シート凹部50と同様の形状に湾曲した例が示されているが、これに限られることはなく、矩形、V字形、および、これらが組み合わされた形状であってもよい。
この下側底面凸部51は、平面視で、下側シート凹部50と同様に、互いに隣り合う一対の下側流路壁部13の間(第1下側流路溝12G1に重なる位置)に配置されている。この第1下側流路溝12G1に重なる下側底面凸部51は、第1下側流路溝12G1に沿うように、第1方向Xに沿って細長く連続して延びている。また、下側底面凸部51は、下側周縁壁14と、これに隣り合う下側流路壁部13との間(第2下側流路溝12G2に重なる位置)にも形成されていてもよい。この第2下側流路溝12G2に重なる下側底面凸部51は、第2下側流路溝12G2に沿うように、第1方向Xに沿って細長く連続して延びている。さらに、第3下側流路溝12G3に平面視で重なる位置にも下側底面凸部51が形成されていてもよく、当該下側底面凸部51は、第3下側流路溝12G3に沿うように、第2方向Yに沿って細長くに連続して延びている。すなわち、本形態では、下側底面凸部51は、後述するように下側シート凹部50の形成に伴って形成されるため、下側シート凹部50の平面視位置と同じ位置に、同様の横断面形状で形成されている。なお、各下側底面凸部51が、上述したように細長く連続して延びていることにより、各下側流路溝12G1〜12G3内における蒸気の流れが妨げられることを防止されている。
図6に示すように、下側凹部50が形成された下側シート10の下面10bと第一下側流路溝12G1との間の部分の厚さt3は、下面10bと後述する主流溝31との間の部分の厚さt4よりも小さくなっている。すなわち、t3はt4よりも薄くなっている。
本形態では、上側シート20は、後述する液流路部30が設けられていない点を除けば、下側シート10と略同一の構造を有している。以下に、上側シート20の構成についてより詳細に説明する。
図3および図5に示すように、上側シート20は、下面20aに設けられた上側蒸気流路凹部21(第2蒸気流路凹部)を有している。この上側蒸気流路凹部21は、密封空間3の一部を構成しており、主として、蒸発部11で生成された蒸気が通り、当該蒸気を冷却するように構成されている。上側蒸気流路凹部21は、平面視で下側蒸気流路凹部12と重なるように形成されている。上側蒸気流路凹部21の深さは、下側蒸気流路凹部12の深さh0と同一であってもよい。
本形態では、上側蒸気流路凹部21は、複数の上側流路溝(すなわち、複数の第1上側流路溝21G1と、複数の第2上側流路溝21G2と、複数の第3上側流路溝21G3と)を有している。各第1上側流路溝21G1および第2上側流路溝21G2は、それぞれ、第1方向Xに延びて蒸気が通るようになっており、第1方向Xに直交する第2方向Yにおいて互いに異なる位置に間隔を有して配列されている。第3上側流路溝21G3は、第2方向Yに延びており、第1上側流路溝21G1および第2上側流路溝21G2の両端部に連通している。本形態では、各上側流路溝21G1、21G2、21G3は、横断面において、湾曲部を有して形成されている。後述する底面21aは、上側蒸気流路凹部21の壁面のうち、上側シート20の上面20bの側の部分に相当する。
上側蒸気流路凹部21内の蒸気は、蒸発部11から離れる方向に拡散して、その多くは、比較的温度の低い周縁部に向かって輸送される。
また、図3に示すように、上側シート20の上面20bには、モバイル端末等のハウジングの一部を構成するハウジング部材Hが配置される。このことにより、上側蒸気流路凹部21内の蒸気は、上側シート20およびハウジング部材Hを介して外部によって冷却される。
本形態では、図2、図5および図6に示すように、上側シート20の上側蒸気流路凹部21内に、上側蒸気流路凹部21の底面21aから下方(下面20aに垂直な方向)に突出する複数の上側流路壁部22(第2流路壁部)が設けられている。この上側流路壁部22は、上述した下側流路壁部13の上面13aに接触する下面22a(突出端面)を含んでいる。ここで、上側蒸気流路凹部21の底面21aは、図3等に示すような下側シート10と上側シート20との上下配置関係では、天井面と言うこともできるが、上側蒸気流路凹部21の奥側の面に相当するため、本明細書では底面21aと記す。
本形態では、上側流路壁部22は、第1上側流路溝21G1および第2上側流路溝21G2に沿って(図5における左右方向)細長く延びている例が示されている。そして、各上側流路壁部22は、等間隔に離間して、互いに平行に配置されている。この上側流路壁部22によって、上側蒸気流路凹部21は、上述した第1上側流路溝21G1および第2上側流路溝21G2に区画されている。すなわち、互いに隣り合う一対の上側流路壁部22の間に第1上側流路溝21G1が形成されている。同様に、後述する上側周縁壁23と、これに隣り合う上側流路壁部22との間に第2上側流路溝21G2が形成されている。このようにして、各上側流路壁部22の周囲を蒸気が流れて、上側蒸気流路凹部21の周縁部に向かってこれが輸送されるように構成されており、蒸気の流れが妨げられることを抑制している。例えば、第1上側流路溝21G1においては、蒸気は第3上側流路溝21G3に向かって輸送される。
また、上側流路壁部22は、下側シート10の対応する下側流路壁部13に平面視で重なるように配置されており、ベーパーチャンバ1の機械的強度の向上を図っている。なお、図2、図3、図6では、上側流路壁部22の幅、高さは、上述した下側流路壁部13の幅w0、高さh0と同一である例が示されているが、同一でなくてもよい。また、第1上側流路溝21G1の幅は、第1下側流路溝12G1の幅と等しくてもよく、大きくても小さくてもよく、第2上側流路溝21G2の幅は、第2下側流路溝12G2の幅と等しくても大きくても小さくてもよく、第3上側流路溝21G3の幅は、第3下側流路溝12G3の幅と等しくても大きくても小さくてもよい。
図3および図5に示すように、上側シート20の周縁部には、上側周縁壁23が設けられている。上側周縁壁23は、密封空間3、とりわけ上側蒸気流路凹部21を囲むように形成されており、密封空間3を画定している。また、平面視で上側周縁壁23の四隅に、下側シート10と上側シート20との位置決めをするための上側アライメント孔24がそれぞれ設けられている。すなわち、各上側アライメント孔24は、後述する仮止め時に、上述した各下側アライメント孔15に重なるように配置され、下側シート10と上側シート20との位置決めが可能に構成されている。
図6に示すように、上側シート20の上面20bに、上側蒸気流路凹部21に向かって凹む上側シート凹部60(第2シート凹部)が設けられている。この上側シート凹部60は、上面20bのうち平面視で上側蒸気流路凹部21に重なる位置に配置されている。図6においては、上側シート凹部60の横断面形状が湾曲部を有している例が示されているが、これに限られることはなく、矩形、V字形およびこれらが組み合わされた形状であってもよい。
本形態では、上述したように、上側蒸気流路凹部21内に、複数の上側流路壁部22が設けられており、上側流路壁部22によって画定された第1上側流路溝21G1、第2上側流路溝21G2および第3上側流路溝21G3が形成されている。このことにより、上側シート凹部60は、互いに隣り合う一対の上側流路壁部22の間(第1上側流路溝21G1に重なる位置)に配置されている。この第1上側流路溝21G1に重なる上側シート凹部60は、平面視で、第1上側流路溝21G1に沿うように、第1方向Xに沿って細長く連続して延びている。また、上側シート凹部60は、上側周縁壁23と、これに隣り合う上側流路壁部22との間(第2上側流路溝21G2に重なる位置)にも形成されていてもよい。この第2上側流路溝21G2に重なる上側シート凹部60は、第2上側流路溝21G2に沿うように、第1方向Xに沿って細長く連続して延びている。さらに、第3上側流路溝21G3に平面視で重なる位置にも上側シート凹部60が形成されていてもよく、当該上側シート凹部60は、第3上側流路溝21G3に沿うように、第2方向Yに沿って細長くに連続して延びている。
また、図6に示すように、上側蒸気流路凹部21を画定する底面21aのうち、平面視で上側シート凹部60に重なる位置に、上側蒸気流路凹部21の内側に突出する上側底面凸部61(第2底面凸部)が設けられている。図6においては、上側底面凸部61の横断面形状が、上側シート凹部60と同様の形状で湾曲部を有している例が示されているが、これに限られることはなく、矩形、V字形およびこれらを組み合わせた形状であってもよい。
この上側底面凸部61は、平面視で、上側シート凹部60と同様に、互いに隣り合う一対の上側流路壁部22の間(第1上側流路溝21G1に重なる位置)に配置されている。この第1上側流路溝21G1に重なる上側底面凸部61は、第1上側流路溝21G1に沿うように、第1方向Xに沿って細長く連続して延びている。また、上側底面凸部61は、上側周縁壁23と、これに隣り合う上側流路壁部22との間(第2上側流路溝21G2に重なる位置)にも形成されていてもよい。この第2上側流路溝21G2に重なる上側底面凸部61は、第2上側流路溝21G2に沿うように、第1方向Xに沿って細長く連続して延びている。さらに、第3上側流路溝21G3に平面視で重なる位置にも上側底面凸部61が形成されていてもよく、当該上側底面凸部61は、第3上側流路溝21G3に沿うように、第2方向Yに沿って細長く連続して延びている。すなわち、本形態では、上側底面凸部61は、後述するように上側シート凹部60の形成に伴って形成されるため、上側シート凹部60の平面位置と同じ位置に、同様の横断面形状で形成されている。なお、各上側底面凸部61が、上述したように細長く連続して延びていることにより、各上側流路溝21G1〜21G3内における蒸気の流れが妨げられることを防止されている。
図6においては、上側シート20の上面20bと上側蒸気流路凹部21との間の部分の厚さt5は、下側シート10の上述した厚さt3と等しくなっている。しかしながら、この厚さt5は、厚さt3とは異なっていてもよい。
このような下側シート10と上側シート20とは、好適には拡散接合で、互いに恒久的に接合されている。より具体的には、図3に示すように、下側シート10の下側周縁壁14の上面14aと、上側シート20の上側周縁壁23の下面23aとが接触し、下側周縁壁14と上側周縁壁23とが互いに接合されている。このことにより、下側シート10と上側シート20との間に、作動流体を密封した密封空間3が形成されている。また、下側シート10の下側流路壁部13の上面13aと、上側シート20の上側流路壁部22の下面22aとが接触し、各下側流路壁部13と対応する上側流路壁部22とが互いに接合されている。このことにより、ベーパーチャンバ1の機械的強度を向上させている。本形態による下側流路壁部13および上側流路壁部22は等間隔に配置されている場合には、ベーパーチャンバ1の各位置における機械的強度を均等に近づけることができる。なお、下側シート10と上側シート20とは、拡散接合ではなく、恒久的に接合できれば、ろう付け等の他の方式で接合されていてもよい。ここで、「恒久的に接合」とは、厳密な意味に縛られることはなく、ベーパーチャンバ1の動作時に、密封空間3の密封性を維持可能な程度に、下側シート10の上面10aと上側シート20の下面20aとの接合を維持できる程度に接合されていることを意味する。
また、図2に示すように、ベーパーチャンバ1は、長手方向における一対の端部のうちの一方の端部に、密封空間3に作動液を注入する注入部4を更に備えている。この注入部4は、図4および図5に示すように、下側シート10の端面から突出する下側注入突出部16と、上側シート20の端面から突出する上側注入突出部25と、を有している。このうち下側注入突出部16の上面に下側注入流路凹部17が形成され、上側注入突出部25の下面に上側注入流路凹部26が形成されている。下側注入流路凹部17は、下側蒸気流路凹部12(より詳細には、一方の第3下側流路溝12G3)に連通しており、上側注入流路凹部26は、上側蒸気流路凹部21(より詳細には、一方の第3上側流路溝21G3)に連通している。下側注入流路凹部17および上側注入流路凹部26は、下側シート10と上側シート20とが接合された際、作動液の注入流路を形成する。当該注入流路を通過して作動液は密封空間3に注入される。なお、本形態では、注入部4は、ベーパーチャンバ1の長手方向における一対の端部のうちの一方の端部に設けられている例が示されているが、これに限られることはなく、他のいずれかの端部に配置されていてもよく、複数配置されてもよい。複数配置される場合には例えばベーパーチャンバ1の長手方向における一対の端部のそれぞれに配置されてもよいし、他の一対の端部のうちの一方の端部に配置されもよい。
また、図4、図7および図8に示すように、各下側流路壁部13の上面13aに、作動液2が通る下側液流路部30が設けられている。下側液流路部30は、上述した密封空間3の一部を構成しており、上述した下側蒸気流路凹部12および上側蒸気流路凹部21に連通している。
下側液流路部30は、複数の主流溝31を有している。各主流溝31は、それぞれ、下側流路壁部13が延びる方向に沿って第1方向Xに延びて作動液2が通るようになっており、第1方向Xに直交する第2方向Yにおいて互いに異なる位置に間隔を有して配列されている。主流溝31は、主として、蒸発部11で生成された蒸気から凝縮した作動液2を蒸発部11に向けて輸送するように構成されている。
本形態では、主流溝31は、下側流路壁部13の長手方向(第1方向X)に沿って、細長く延びている例が示されており、下側流路壁部13の長手方向における一端から他端まで延びている。そして、各主流溝31は下側蒸気流路凹部12の第3下側流路溝12G3に連通している。このようにして、下側蒸気流路凹部12の周縁部および上側蒸気流路凹部21の周縁部において凝縮した作動液2を、毛細管作用によって蒸発部11に向けて輸送するようになっている。1つの下側流路壁部13の上面13aには、複数の主流溝31が形成されており、各主流溝31は、等間隔に離間して、互いに平行に配置されている。本形態においては、主流溝31の横断面が、全体的に湾曲した形状である例が示されているが、主流溝31の横断面形状は、毛細管作用を奏することができれば任意である。従って、溝の横断面形状が入隅部、出隅を有する形状およびこれらが組み合わされた形状であってもよい。
本形態では各主流溝31は等間隔に離間して互いに平行に配置されているが、これに限られることは無く、毛細管作用を奏することができれば間隔がばらついても良く、また平行でなくても良い。さらに、各下側流路壁部13において主流溝31の数はばらついていても良く、下側流路壁部13に主流溝31が無い部分があっても良い。
なお、図示しないが、主流溝31を横切る方向(例えば第2方向Y)に延びる複数の連絡溝(図示せず)が設けられて、これらの連絡溝が、主流溝31同士を連通するとともに、主流溝31と下側蒸気流路凹部12とを連通するようにしてもよい。
または、蒸発部11において、上側流路壁部22の下面22aを下側流路壁部13の上面13aから離して隙間があるようにしてもよい。この場合、当該上面13aと当該下面22aとの間の空間が下側蒸気流路凹部12および上側蒸気流路凹部21に連通するため、各主流溝31を、各蒸気流路凹部12、21に連通させることができる。
下側シート10の上面10aにおいて、図8に示す主流溝31の幅w2は、図7に示す下側流路壁部13の幅w0よりも小さくなっている。このことにより、主流溝31は、蒸気から凝縮した作動液2で充填されて、充填された液状の作動液2が、毛細管作用によって蒸発部11に向かって輸送される。一方、各下側流路溝12G1、12G2、12G3および各上側流路溝21G1、21G2、21G3は、主流溝31の流路断面積よりも大きい流路断面積を有し、主として、蒸発部11で生成された蒸気が通過するようになる。
より具体的には、各下側流路溝12G1、12G2、12G3および各上側流路溝21G1、21G2、21G3により形成され主として蒸気が通過する流路を第1流路とし、主流溝31により形成され主として作動液が通過する流路を第2流路としたとき、第2流路の流路断面積は、第1流路の流路断面積より小さくされている。より具体的には、隣り合う2つの第1流路の平均の流路断面積をAgとし、当該隣り合う2つの第1流路の間に配置される複数の第2流路の平均の流路断面積をAlとしたとき、第2流路と第1流路とは、AlがAgの0.5倍以下の関係にあるものとし、好ましくは0.25倍以下である。この関係はベーパーチャンバ全体のうち少なくとも一部において満たせばよく、ベーパーチャンバの全部でこれを満たせばさらに好ましい。
主流溝31の幅w2は、主流溝31の長手方向に直交する方向における主流溝31の寸法を意味しており、例えば、図7における上下方向の寸法、または図8における左右方向の寸法に相当する。
幅w2は、1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であってもよく、200μm以下であってもよい。一方、幅w2は、30μm以上であることが好ましく、45μm以上であってもよく、60μm以上であってもよい。また、幅w2の範囲は、この複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、幅w2の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
また、主流溝31の深さh1は、幅w2の大きさにもよるが、下側蒸気流路凹部12の深さh0よりも小さいことが好ましい。深さh1は、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。一方、深さh1は、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であってもよく、20μm以上であってもよい。また、深さh1の範囲は、この複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、深さh1の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。上述した連絡溝の深さも同様である。
このような主流溝31は、下側シート10の下側流路壁部13の上面13aに形成されている。一方、本形態では、上側シート20の上側流路壁部22の下面22aには、主流溝は形成されていない。すなわち、当該下面22aは、平坦状に形成されており、主流溝31に露出されている。このようにして、主流溝31の横断面において、主流溝31の全体が、上側流路壁部22の平坦状の下面22aで覆われている。
ただしこれに限定されることはなく、図9に示したように上側シート20にも主流溝32が設けられてもよい。そのときには上記した下側シート10の主流溝31と同様に考えることができる。従って図9示した例では主流溝31および主流溝32が重なることにより第2流路とされている。
このほか、上側シート20の主流溝32と下側シート10の主流溝31とが重ならずに別々の第2流路となるようにしてもよい。
下側シート10および上側シート20に用いる材料は、熱伝導率が良好な材料であれば特に限られることはないが、例えば、下側シート10および上側シート20は、銅または銅合金により形成されていることが好適である。このことにより、下側シート10および上側シート20の熱伝導率を高めることができる。このため、ベーパーチャンバ1の熱輸送効率を高めることができる。あるいは、所望の放熱効率を得ることができれば、これらの下側シート10および上側シート20には、アルミニウム等の他の金属材料や、ステンレスなどの他の金属合金材料を用いることもできる。
ただし、必ずしも金属材料、金属合金材料である必要はなく、例えばAlN、Si3N4、又はAl2O3などセラミックスや、ポリイミドやエポキシなど樹脂も可能である。
また、下側シート10および上側シート20の一方と他方で材料が異なってもよく、1つシート内で2種類以上の材料を積層したものを用いてもよいし、部位によって材料が異なってもよい。
また、図6に示すように、ベーパーチャンバ1の厚さT0は、1.0mm以下であることが好ましく、0.75mm以下であってもよく、0.5mm以下であってもよい。一方、厚さT0は、0.1mm以上であることが好ましく、0.15mm以上であってもよく、0.2mm以上であってもよい。また、厚さT0の範囲は、この複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、厚さT0の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
本形態では下側シート10の厚さT1および上側シート20の厚さT2が等しい場合を示しているが、これに限られることはなく、下側シート10の厚さT1と上側シート20の厚さT2は、等しくなくてもよい。
次に、このような構成からなるベーパーチャンバ1の形態の作用について説明する。ここでは、まず、ベーパーチャンバ1の製造方法について、図10〜図17を用いて説明するが、上側シート20のハーフエッチング工程の説明は簡略化する。なお、図10〜図17では、図6の断面図と同様の断面を示している。
まず、図10に示すように、第1準備工程として、上面M1a(第1シート側面)と、上面M1aの反対側に設けられた下面M1b(第1反対側面)と、を有する平板状の下側材料シートM1を準備する。
第1準備工程の後、下側流路溝形成工程として、図11に示すように、下側材料シートM1がハーフエッチングされて、密封空間3の一部を構成する下側蒸気流路凹部12および下側液流路部30が形成される。
この場合、まず、下側材料シートM1の上面M1aに、図示しないレジスト膜が形成される。レジスト膜には、電界によって付着可能な電着レジスト材料を好適に使用することができるが、下側材料シートM1にレジスト膜を形成することができれば、液状のレジスト材料など他の材料を用いてもよい。
続いて、レジスト膜が、フォトリソグラフィー技術を用いてパターン化され、レジスト開口(図示せず)が形成される。
次に、下側材料シートM1の上面M1aがハーフエッチングされる。このことにより、当該上面M1aのうちレジスト膜のレジスト開口に対応する部分がハーフエッチングされて、第1下側流路溝12G1、第2下側流路溝12G2および第3下側流路溝12G3を有する下側蒸気流路凹部12と、下側流路壁部13と、下側周縁壁14(図3参照)とが形成される。この際、下側流路壁部13の上面13aに、主流溝31を有する下側液流路部30が形成される。また、図4に示すような外形輪郭形状を有するように、下側材料シートM1が上面M1aおよび下面M1bからエッチングされて、所定の外形輪郭形状が得られる。なお、ハーフエッチングとは、材料を貫通しないような凹部を形成するためのエッチングを意味している。このため、ハーフエッチングにより形成される凹部の深さは、下側シート10の厚さの半分であることには限られない。エッチング液には、例えば、塩化第二鉄水溶液等の塩化鉄系エッチング液、または塩化銅水溶液等の塩化銅系エッチング液を用いることができる。
その後、レジスト膜が除去される。このように、一度のハーフエッチング工程によって、下側蒸気流路凹部12および下側液流路部30などを形成することにより、ハーフエッチング工程の回数を削減することができ、ベーパーチャンバ1の製造コストの低減を図ることができる。しかしながら、このことに限られることはなく、第1のハーフエッチング工程として、下側蒸気流路凹部12を形成し、その後の第2のハーフエッチング工程として、下側液流路部30を形成するようにしてもよい。この場合には、下側蒸気流路凹部12の深さh0と、下側液流路部30(すなわち、主流溝31および連絡溝)の深さh1とを容易に異ならせることができる。
このようにして、本形態の下側シート10が作製される。
一方、下側シート10と同様にして、上側シート20が作製される。
まず、図12に示すように、第2準備工程として、下面M2a(第2シート側面)と、下面M2aの反対側に設けられた上面M2b(第2反対側面)と、を有する平板状の上側材料シートM2を準備する。
第2準備工程の後、上側流路溝形成工程として、図13に示すように、上側材料シートM2がハーフエッチングされて、密封空間3の一部を構成する上側蒸気流路凹部21が形成される。この場合、下側流路溝形成工程と同様にして、上側材料シートM2の下面M2aがハーフエッチングされることにより、下面M2aに、第1上側流路溝21G1、第2上側流路溝21G2および第3上側流路溝21G3を有する上側蒸気流路凹部21と、上側流路壁部22と、上側周縁壁23(図3参照)とが形成される。また、図5に示すような外形輪郭形状を有するように、上側材料シートM2が下面M2aおよび上面M2bからエッチングされて、所定の外形輪郭形状が得られる。
このようにして、本形態の上側シート20が作製される。
下側流路溝形成工程および上側流路溝形成工程の後、仮止め工程として、図14に示すように、下側蒸気流路凹部12を有する下側シート10と、上側蒸気流路凹部21を有する上側シート20とが仮止めされる。この場合、まず、下側シート10の下側アライメント孔15(図2および図4参照)と上側シート20の上側アライメント孔24(図2および図5参照)とを利用して、下側シート10と上側シート20とが位置決めされる。続いて、下側シート10と上側シート20とが固定される。固定の方法としては、特に限られることはないが、例えば、下側シート10と上側シート20とに対して抵抗溶接を行うことによって下側シート10と上側シート20とを固定してもよい。この場合、図14に示すように、電極棒40を用いて、下側周縁壁14および上側周縁壁23を、スポット的に抵抗溶接を行うことが好適である。抵抗溶接の代わりにレーザ溶接を行ってもよい。あるいは、超音波を照射して下側シート10と上側シート20とを超音波接合して固定してもよい。さらには、接着剤を用いてもよいが、有機成分を有しないか、若しくは有機成分が少ない接着剤を用いることが好適である。このようにして、下側シート10と上側シート20とが、位置決めされた状態で固定される。
仮止め工程の後、接合工程として、図15に示すように、下側シート10と上側シート20とが、拡散接合によって恒久的に接合される。拡散接合とは、接合する下側シート10と上側シート20とを密着させ、真空や不活性ガス中などの制御された雰囲気中で、各シート10、20を密着させる方向に加圧するとともに加熱して、接合面に生じる原子の拡散を利用して接合する方法である。拡散接合は、下側シート10および上側シート20の材料を融点に近い温度まで加熱するが、融点よりは低いため、各シート10、20が溶融することを回避できる。より具体的には、下側シート10の下側周縁壁14の上面14aと上側シート20の上側周縁壁23の下面23aとが、接合面となって拡散接合される。このことにより、下側周縁壁14と上側周縁壁23とによって、下側シート10と上側シート20との間に密封空間3が形成される。また、下側シート10の下側流路壁部13の上面13aと、上側シート20の上側流路壁部22の下面22aとが、接合面となって拡散接合され、ベーパーチャンバ1の機械的強度が向上する。下側流路壁部13の上面13aに形成された下側液流路部30は、作動液2の流路である第2流路として残存する。
接合工程では、下側シート10および上側シート20には、所定の温度になるまで熱が加えられるとともに、所定の圧力が加えられる。例えば、下側シート10および上側シート20を銅で形成し、下側シート10の厚さT1を0.2mm、上側シート20の厚さT2を0.2mmとし、各下側流路溝12G1、12G2、12G3および各上側流路溝21G1、21G2、21G3の幅w1を1000μm、深さh0を150μmとした場合、下側シート10および上側シート20は、810℃まで加熱されるとともに、2MPaの圧力が加えられるようにしてもよい。
このことにより、図16に示すように、下側蒸気流路底部10cが熱膨張する。下側シート10の下面10bには、下側シート10を均等に加圧するために図示しない平坦状のスペーサを当接させているため、下側蒸気流路底部10cは、上面10aの側に撓む。このため、下側シート10の下面10bに、下側シート凹部50が形成されるとともに、下側蒸気流路凹部12の底面12aに、下側底面凸部51が形成される。また、熱膨張した部分が撓むことにより、熱膨張前の下側蒸気流路底部10cの厚さt3’(図15参照)よりも、熱膨張後の下側蒸気流路底部10cの厚さt3(図16参照)が小さくなる。下側シート凹部50および下側底面凸部51は、平面視で、第1下側流路溝12G1、第2下側流路溝12G2および第3下側流路溝12G3に重なる位置に形成される。
同様に、上側蒸気流路底部20cが熱膨張する。上側シート20の上面20bには、上側シート20を均等に加圧するために図示しない平坦状のスペーサを当接させているため、上側蒸気流路底部20cは、下面20aの側に撓む。このため、上側シート20の上面20bに、上側シート凹部60が形成されるとともに、上側蒸気流路凹部21の底面21aに、上側底面凸部61が形成される。また、熱膨張した部分が撓むことにより、熱膨張前の上側蒸気流路底部20cの厚さt5’(図15参照)よりも、熱膨張後の上側蒸気流路底部20cの厚さt5(図16参照)が小さくなる。上側シート凹部60および上側底面凸部61は、平面視で、第1上側流路溝21G1、第2上側流路溝21G2および第3上側流路溝21G3に重なる位置に形成される。
接合工程の後、注入工程として、図17に示すように、注入部4(図2参照)から密封空間3に作動液2が注入される。この際、まず、密封空間3が真空引きされて減圧され、その後に、作動液2が密封空間3に注入される。注入時、作動液2は、下側注入流路凹部17と上側注入流路凹部26とにより形成された注入流路を通過する。
作動液2の注入の後、上述した注入流路が封止される。例えば、注入部4にレーザを照射し、注入部4を部分的に溶融させて注入流路を封止するようにしてもよい。このことにより、密封空間3と外部との連通が遮断され、作動液2が密封空間3に封入される。このようにして、密封空間3内の作動液2が外部に漏洩することが防止される。なお、封止のためには、注入部4をかしめてもよく、またはろう付けしてもよい。
以上のようにして、本形態のベーパーチャンバ1が得られる。
次に、ベーパーチャンバ1の作動方法、すなわち、デバイスDの冷却方法について説明する。
上述のようにして得られたベーパーチャンバ1は、モバイル端末等のハウジング内に設置されるとともに、下側シート10の下面10bに、被冷却対象物であるCPU等のデバイスDが取り付けられる。このとき、ベーパーチャンバ1の下面10bに配置されたグリスや熱伝導フィラー入りのテープなどのサーマルインターフェースマテリアル、又は、粘着シートを介してデバイスDにベーパーチャンバが取り付けられても良い。
密封空間3内に注入された作動流体の量は少ないため、密封空間3内の作動液2は、その表面張力によって、密封空間3の壁面、すなわち、下側蒸気流路凹部12の(底面12aを含む)壁面、上側蒸気流路凹部21の(底面21aを含む)壁面に付着する。
この状態でデバイスDが発熱すると、下側蒸気流路凹部12のうち蒸発部11に存在する作動液2が、デバイスDから熱を受ける。この際、デバイスDからの熱の一部は、下側シート10の下側シート凹部50および下側蒸気流路凹部12の下側底面凸部51を介して、作動液2に移動する。受けた熱は潜熱として吸収されて作動液2が蒸発(気化)し、蒸気が生成される。生成された蒸気の多くは、密封空間3を構成する第1流路(第1下側流路溝12G1と第1上側流路溝21G1とによる流路、第2下側流路溝12G2と第2上側流路溝21G2とによる流路)を通りデバイスDから離隔するように拡散する(図4の実線矢印および図5の実線矢印参照)。これにより蒸気は、蒸発部11から離れ、蒸気の多くは、比較的温度の低い周縁部に向かって輸送される。周縁部に拡散した蒸気は、周縁部において放熱して冷却される。周縁部において下側シート10および上側シート20が蒸気から受けた熱は、ハウジング部材H(図3参照)を介して外部に伝達される。この際、蒸気からの熱の一部は、上側蒸気流路凹部21の上側底面凸部61および上側シート20の上側シート凹部60を介して、外部に伝達されるとともに、下側シート10の下側シート凹部50および下側蒸気流路凹部12の下側底面凸部51を介しても、外部に伝達される。
蒸気は、周縁部に放熱することにより、蒸発部11において吸収した潜熱を失って凝縮して作動液2となる。作動液2の多くは、下側蒸気流路凹部12の壁面または上側蒸気流路凹部21の壁面に付着して、下側液流路部30に達する。ここで、蒸発部11では作動液2が蒸発し続けているため、下側液流路部30のうち蒸発部11以外の部分における作動液2は、蒸発部11に向かって毛細管作用により輸送される(図4の破線矢印参照)。このことにより、下側蒸気流路凹部12の壁面および上側蒸気流路凹部21の壁面に付着した作動液2は、下側液流路部30に向かって移動し、下側液流路部30内に入り込む。すなわち、図示しない連絡溝を通過して主流溝31からなる第2流路に入り込み、各主流溝31および各連絡溝に、作動液2が充填される。このため、充填された作動液2は、各主流溝31の毛細管作用により、蒸発部11に向かう推進力を得て、第2流路を通って蒸発部11に向かって円滑に輸送される。
蒸発部11に達した作動液2は、デバイスDから再び熱を受けて蒸発する。このようにして、作動液2が、相変化、すなわち蒸発と凝縮とを繰り返しながらベーパーチャンバ1内を還流してデバイスDの熱を移動させて放出する。この結果、デバイスDが冷却される。
本形態のベーパーチャンバ1によれば、下側シート10の下面10bのうち平面視で下側蒸気流路凹部12に重なる位置に、下側蒸気流路凹部12に向かって凹む下側シート凹部50が設けられている。このことにより、デバイスDから熱を受ける受熱面として作用する下面10bの表面積を増大させることができる。このため、デバイスDと下面10bとの間の熱抵抗を低減することができ、デバイスDから作動液2に効率良く熱が移動することができる。この結果、熱輸送効率を向上させることができる。さらに下側シート凹部50によりサーマルインターフェースマテリアルや粘着シートの接着面積を増やすことができるので、デバイスDとの密着性の向上も図ることができる。
なお、ベーパーチャンバ1に対するデバイスDとハウジングHの位置は本形態に限られず、デバイスDとハウジングHの位置を入れ替えたり、デバイスDとベーパーチャンバ1の間にハウジングHを設けたりしても良い。
また、本形態のベーパーチャンバ1によれば、下側蒸気流路凹部12の底面12aのうち平面視で下側シート凹部50に重なる位置に、下側蒸気流路凹部12の内側に突出する下側底面凸部51が設けられている。このことにより、下側蒸気流路凹部12の底面12aの表面積を増大させることができる。このため、下側シート10と作動液2との間の熱抵抗を低減することができ、デバイスDから作動液2により一層効率良く熱が移動することができる。すなわち、デバイスDの起動時に、下側蒸気流路凹部12の壁面に付着していた作動液2を迅速に蒸発させることができる。このため、下側液流路部30において発生した蒸気の拡散が、下側蒸気流路凹部12の壁面に付着していた作動液2によって阻害されることを防止でき、蒸気を円滑に拡散させることができる。この結果、熱輸送効率をより一層向上させることができる。更に言えば、拡散接合時の熱膨張によって、下側シート凹部50および下側底面凸部51が形成されているため、下側蒸気流路底部10cの厚さt3(図16参照)を小さくすることができる。この点においても、デバイスDと作動液2との間の熱抵抗を低減することができる。
また、本形態によれば、上側シート20の上面20bのうち平面視で上側蒸気流路凹部21に重なる位置に、上側蒸気流路凹部21に向かって凹む上側シート凹部60が設けられている。このことにより、外部に熱を放出する放熱面として作用する上面20bの表面積を増大させることができる。このため、上面20bと外部との間の熱抵抗を低減することができ、作動液2の蒸気から外部に効率良く熱が移動することができる。この結果、熱輸送効率を向上させることができる。
また、本形態によれば、上側蒸気流路凹部21の底面21aのうち平面視で上側シート凹部60に重なる位置に、上側蒸気流路凹部21の内側に突出する上側底面凸部61が設けられている。このことにより、上側蒸気流路凹部21の底面21aの表面積を増大させることができる。このため、上側シート20と作動液2との間の熱抵抗を低減することができ、デバイスDから作動液2により一層効率良く熱が移動することができる。すなわち、デバイスDの起動時に、上側蒸気流路凹部21の壁面に付着していた液状の作動液2を迅速に蒸発させることができる。このため、下側液流路部30において蒸発した作動液2の蒸気の拡散が、上側蒸気流路凹部21の壁面に付着していた作動液2によって阻害されることを防止でき、蒸気を円滑に拡散させることができる。この結果、熱輸送効率をより一層向上させることができる。更に言えば、拡散接合時の熱膨張によって、上側シート凹部60および上側底面凸部61が形成されているため、厚さt5(図16参照)を小さくすることができる。この点においても、作動液2と外部との間の熱抵抗を低減することができる。
また、本形態によれば、上述したように、下側シート10の下面10bに下側シート凹部50が設けられている。このことにより、外部に熱を放出する下側蒸気流路凹部12の周縁部(デバイスDから離れた部分)においても、下面10bの表面積が増大しているため、下面10bと外部との間の熱抵抗を低減することができる。このため、蒸気から外部に効率良く熱が移動することができ、熱輸送効率を向上させることができる。
また、本形態によれば、上述したように、下側蒸気流路凹部12の底面12aに、下側底面凸部51が設けられている。このことにより、外部に熱を放出する下側蒸気流路凹部12の周縁部においても、下側蒸気流路凹部12の底面12aの表面積が増大しているため、下側シート10と作動液2との間の熱抵抗を低減することができる。このため、蒸気から外部により一層効率良く熱が移動することができ、熱輸送効率をより一層向上させることができる。
また、本形態によれば、下側シート凹部50は、互いに隣り合う一対の下側流路壁部13の間に配置されている。このことにより、下側シート凹部50を、拡散接合時に加熱される下側シート10および上側シート20の温度、および/または各シート10、20に加えられる圧力を調整することで、容易に形成することができる。ベーパーチャンバ1の製造工程が煩雑になることを抑え、製造コストの増大を抑制できる。
また、本形態によれば、上側シート凹部60は、互いに隣り合う一対の上側流路壁部22の間に配置されている。このことにより、上側シート凹部60を、拡散接合時に加熱される下側シート10および上側シート20の温度、および/または各シート10、20に加えられる圧力を調整することで、容易に形成することができる。ベーパーチャンバ1の製造工程が煩雑になることを抑え、製造コストの増大を抑制できる。
また、本形態によれば、下側シート凹部50および上側シート凹部60を、接合工程時に形成することができる。このため、ベーパーチャンバ1の製造工程が煩雑になることを抑え、製造コストの増大を抑制できる。
また、本形態では、下側シート10の下面10bの下側シート凹部50、および、上側シート20の上面20bの上側シート凹部60により、この部位においてベーパーチャンバ1が薄くなっている。従って、ベーパーチャンバ1の作動により内圧が上昇して膨れが生じるような場面、および、ベーパーチャンバ1の非作動時における作動流体の凍結によって作動流体が膨張して膨れが生じるような場面であっても、下側シート凹部50および上側シート凹部60が、下面10b、および、上面20bの他の部位と面一になってさらに膨れるに至るまではベーパーチャンバ1の膨れとはならない。従って、ベーパーチャンバ1の膨れによる問題の発生を緩和することができる。そして、本形態のように、下側シート凹部50と下側底面凸部51とが平面視で重なり合う位置に設けられている場合において、下側シート凹部50が湾曲形状であることで、より高い効果を得ることができる。
また、下側シート10の下面10bと下側蒸気流路凹部12との間に設けられた下側蒸気流路底部10cの厚さt3を、下面10bと下側液流路部30との間に設けられた下側液流路底部10dの厚さt4よりも小さくしたとき(図6参照)、下側液流路部30よりも下側蒸気流路凹部12をデバイスDの熱を受ける下面10bに近づけることができる。これによれば、デバイスDからの熱は、下側液流路部30よりも下側蒸気流路凹部12に早く到達することができ、下側蒸気流路凹部12において作動液2の蒸発を促進させることが可能となる。すなわち、デバイスDの起動時に、蒸気流路凹部12の壁面に付着していた作動液2を迅速に蒸発させることができる。このため、下側液流路部30において生じた蒸気の拡散が、下側蒸気流路凹部12の壁面に付着していた作動液2によって阻害されることを抑制でき、蒸気を円滑に拡散させることができる。一方、下側液流路部30では、下側蒸気流路凹部12よりも下面10bから遠ざけることができ、作動液が蒸発することを抑制できる。このため、下側液流路部30内に作動液2の蒸気による気泡が発生して、作動液2の流れが妨げられるような流路閉塞が発生することを抑えることができる。
なお、上述した本形態のベーパーチャンバ1においては、下側シート10の下面10bに下側シート凹部50が設けられるとともに、上側シート20の上面20bに上側シート凹部60が設けられている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、下側シート凹部50および上側シート凹部60のうちの一方は、設けられていなくてもよい。この場合においても、熱輸送効率を向上させることができる。下側シート凹部50が設けられない場合には、上側シート20が第1シートとなり、上側シート凹部60が第1シート凹部となる。
また、上述した本形態のベーパーチャンバ1においては、下側蒸気流路凹部12の底面12aに設けられた下側底面凸部51が、細長く連続して延びている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない。例えば、下側底面凸部51は、第1方向Xおよび第2方向Yのうち対応する方向に断続的に形成されていてもよい。この場合、下側蒸気流路凹部12の底面12aの表面積を増大させることができ、下側シート10と作動液2との間の熱抵抗をより一層低減することができる。すなわち、デバイスDの起動時に、下側蒸気流路凹部12の壁面に付着していた作動液2を迅速に蒸発させることができる。
また、上述した本形態のベーパーチャンバ1においては、上側蒸気流路凹部21の底面21aに設けられた上側底面凸部61が、細長く連続して延びている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、上側底面凸部61は、第1方向Xおよび第2方向Yのうち対応する方向に断続的に形成されていてもよい。この場合、上側蒸気流路凹部21の底面21aの表面積を増大させることができ、上側シート20と作動液2との間の熱抵抗をより一層低減することができる。すなわち、デバイスDの起動時に、上側蒸気流路凹部21の壁面に付着していた作動液2を迅速に蒸発させることができる。
また、上述した本形態のベーパーチャンバ1においては、上側シート20の上側流路壁部22が、ベーパーチャンバ1の長手方向に沿って細長く延びている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、上側流路壁部22の形状は任意である。例えば、上側流路壁部22は、円柱状のボスとして形成されていてもよい。この場合においても、上側シート凹部60を、互いに隣り合う一対の上側流路壁部22の間に形成することができる。また、この場合には、上側流路壁部22は、下側流路壁部13に平面視で重なるように配置して、上側流路壁部22の下面22aを、下側流路壁部13の上面13aに接触させることが好適である。
また、上述した本形態のベーパーチャンバ1においては、下側シート凹部50、下側底面凸部51、上側シート凹部60および上側底面凸部61が、接合工程時に形成される例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない。例えば、下側シート凹部50および下側底面凸部51は、図11に示す下側流路溝形成工程時に形成されてもよい。この場合、図18に示すように、下側シート凹部50および下側底面凸部51は、下側蒸気流路凹部12および下側液流路部30とともに、プレス加工によって形成されてもよい。
より具体的には、図10に示す第1準備工程において下側材料シートM1を準備した後、下側流路溝形成工程において、下側材料シートM1がプレス加工される。この場合、下側シート10の上面10aは第1下側金型70を介して押圧され、下面10bは第2下側金型71を介して押圧される。
第1下側金型70は、下側蒸気流路凹部12の各下側流路溝12G1、12G2、12G3に対応する形状を有する金型凸部70aと、下側液流路部30に対応する形状を有する金型凸部70bと、を含んでいる。平板状の下側材料シートM1を、第1下側金型70を用いてプレス加工することにより、図18に示すように、下側底面凸部51を含む下側蒸気流路凹部12と、下側液流路部30と、を形成することができる。また、第2下側金型71は、下側シート凹部50に対応する形状を有する金型凸部71aを含んでいる。このことにより、下側材料シートM1の下面M1bに、下側シート凹部50を形成することができる。
同様にして、上側シート凹部60および上側底面凸部61も、上側蒸気流路凹部21を形成する上側流路溝形成工程時に形成されてもよい。この場合、図19に示すように、上側シート凹部60および上側底面凸部61は、上側蒸気流路凹部21ととともに、プレス加工によって形成されてもよい。
より具体的には、図12に示す第2準備工程において上側材料シートM2を準備した後、上側流路溝形成工程において、上側材料シートM2がプレス加工される。この場合、上側シート20の下面20aは、第1上側金型80を介して押圧され、上面20bは第2上側金型81を介して押圧される。
第1上側金型80は、上側蒸気流路凹部21の各上側流路溝21G1、21G2、21G3に対応する形状を有する金型凸部80aを含んでいる。平板状の上側材料シートM2を、第1上側金型80を用いてプレス加工することにより、図19に示すように、上側底面凸部61を含む上側蒸気流路凹部21を形成することができる。また、第2上側金型81は、上側シート凹部60に対応する形状を有する金型凸部81aを含んでいる。このことにより、上側材料シートM2の上面M2bに、上側シート凹部60を形成することができる。
下側シート凹部50を下側流路溝形成工程としてプレス加工によって形成するとともに、上側シート凹部60を上側流路溝形成工程としてプレス加工によって形成する場合、下側シート10および上側シート20の温度および各シート10、20に加えられる圧力は、各シート10、20を恒久的に接合できれば任意とすることができ、拡散接合を容易化させることができる。
また、プレス加工によって下側シート凹部50および下側底面凸部51が形成されるため、プレス加工前の厚さt3’(図15参照)よりも、プレス加工後の厚さt3(図16参照)を小さくすることができる。このため、デバイスDと作動液2との間の熱抵抗を低減することができる。同様に、上側シート凹部60および上側底面凸部61が形成されるため、プレス加工前の厚さt5’(図15参照)よりも、プレス加工後の厚さt5(図16参照)を小さくすることができる。このため、デバイスDと作動液2との間の熱抵抗を低減することができる。
以上では、エッチングによるベーパーチャンバの製造、およびプレス加工によるベーパーチャンバの製造について説明したが、製造方法はこれに限らず、切削加工、レーザ加工、および3Dプリンタによる加工によりベーパーチャンバを製造することもできる。
例えば3Dプリンタによりベーパーチャンバを製造する場合にはベーパーチャンバを複数のシートを接合して作製する必要がなく、接合部のないベーパーチャンバとすることが可能となる。
上述した本形態のベーパーチャンバ1においては、上側シート20の下面20aに、上側蒸気流路凹部21が設けられている例について説明した。しかしながら、上側蒸気流路凹部21は、設けられていなくてもよい。この場合、上側シート20の下面20aは、全体的に平坦状に形成され、下側蒸気流路凹部12の各第1下側流路溝12G1、第2下側流路溝12G2および第3下側流路溝12G3を覆うとともに露出されるようになる。このことにより、ベーパーチャンバ1の機械的強度を向上させることができる。
さらに、上述した本形態のベーパーチャンバ1においては、下側シート10の上面10aに、下側蒸気流路凹部12が設けられている例について説明した。これに限らず、図20〜図22に示すように、下側蒸気流路凹部12は、設けられていなくてもよい。
図20に示す変形例においては、下側シート10の上面10aのうち、下側液流路部30の主流溝31および連絡溝が形成されている領域以外の領域は、平坦状に形成されており、上側蒸気流路凹部21の各第1上側流路溝21G1、第2上側流路溝21G2および第3上側流路溝21G3を覆うとともに露出されている。このことにより、ベーパーチャンバ1の機械的強度を向上させることができる。
また、図20に示す変形例では、下側シート10の上面10aおよび下面10bのうち平面視で上側蒸気流路凹部21に重なる部分が、平坦状に形成されている例が示されている。
図21に示す変形例では、下側シート10の下面10bのうち上側蒸気流路凹部21に重なる部分に、下側シート凹部50が形成されている。また、下側シート10の上面10aのうち、平面視で下側シート凹部50に重なる位置に、上側蒸気流路凹部21に突出する上面凸部90が設けられている。この上面凸部90は、図6等に示す下側底面凸部51と同様の形状を有することができるとともに同様にして形成することができる。これらの変形例では、上側シート20の厚さT2が、下側シート10の厚さT1よりも大きくなっている例が示されている。しかしながら、このことに限られることはなく、上側底面凸部61と上面10aとの間に、蒸気が流れることができる隙間が形成されれば、上側シート20の厚さT2は下側シート10の厚さT1よりも大きくなくてもよい。
図20および図21に示す変形例においては、作動液2が通る第2流路として、下側シート10に下側液流路部30が設けられ、蒸気が通る第1流路として、上側シート20に第1上側流路溝21G1が設けられている。このことにより、液流路部である第2流路と蒸気流路部である第1流路を、互いに異なるシートに形成することができる。このため、液流路部の深さと、蒸気流路部の深さを、容易に異ならせることができる。
図22に示す変形例においては、下側シート10の上面10a及び下面10bのいずれも平坦とされている。一方、上側シート20の下面20a側の上側流路壁部22に第2流路となる主流溝32および連絡溝が配置されている。
下側シート10の上面10aの一部が、第1流路となる第1上側流路溝21G1、第2上側流路溝21G2および第3上側流路溝21G3を覆うとともに露出されている。このことにより、ベーパーチャンバ1の機械的強度を向上させることができる。
また、図20〜図22に示す変形例においては、下側シート10と上側シート20との位置決めの精度を緩和することができる。すなわち、下側シート10に下側蒸気流路凹部12が設けられている場合には、下側蒸気流路凹部12の壁面と上側蒸気流路凹部21の壁面とが位置合わせされるように、下側シート10と上側シート20とを精度良く位置決めすることが好ましい。これに対して、図20〜図22に示す変形例では、下側シート10に下側蒸気流路凹部12が設けられないことにより、下側シート10と上側シート20との位置決めの精度を緩和することができる。
ここまでのベーパーチャンバ1は、下側シート10である第1シートおよび上側シート20である第2シートの2つのシートからなる例を説明した。ただし、これに限られることはなく、図23〜図25に示したように3つ以上のシートによるベーパーチャンバであってもよい。図23、図24は3つのシートからなるベーパーチャンバの例、図25は4つのシートからなるベーパーチャンバの例である。
図23に示したベーパーチャンバは、下側シート10(第1シート)、上側シート20(第2シート)、および、中間シート100(第3シート)の積層体からなる。
下側シート10と上側シート20との間に挟まれるように中間シート100が配置され、下側シート10の上面10aが中間シート100の下面100bに接触し、上側シート20の下面20aが中間シート100の上面100aに接触し、それぞれ接合されている。接合の態様は上記した通りである。
ここでは下側シート10は、下側シート凹部50および下側底面凸部51を備えており、他の部位は上面10aおよび下面10bのいずれも平坦である。
同様に、上側シート20は、上側シート凹部60および上側底面凸部61を備えており、他の部位は上面20aおよび下面10bのいずれも平坦である。
中間シート100には、流路溝101、流路壁102、および主流溝32が備えられている。
流路溝101は、中間シート100を厚さ方向に貫通した溝であり、上述した第1下側流路溝12G1と第1上側流路溝21G1とを重ねて第1流路を構成する溝であり、これに相当する形態および位置に配置される。中間シート100には、上述した第2下側流路溝12G2と第2上側流路溝21G2と重ねて第1流路を構成する溝、および、第3下側流路溝12G3と第3上側流路溝21G3とを重ねた流路に相当する溝を備えている。
流路壁102は、下側流路壁部13と下側流路壁部22とを重ねた壁部に相当する形態および位置に配置される壁部である。
主流溝32は、上述の主流溝32と同様に第2流路を構成する形態および配置を有する溝であり、中間シート100の下面100bに備えられている。
そして、下側シート凹部50、下側底面凸部51、上側シート凹部60、および上側底面凸部61は、ベーパーチャンバの平面視で流路溝101に重なる位置に配置されている。
図24に示したベーパーチャンバも、下側シート10(第1シート)、上側シート20(第2シート)、および、中間シート100(第3シート)の積層体である。
図24に示したベーパーチャンバでは、図23に示したベーパーチャンバに対して主流溝32の断面積が広くされているとともに、ここにウィック材103が配置されている。ウィック材103は、毛細管力を生じさせるような微細な構造を有する材料であり、例えば、焼結粒子、より線、不織布、メッシュ材等を挙げることができる。なお本形態の主流溝32は上記した形態の主流溝32よりも大きく形成されているが、第1流路と第2流路との関係は上記と同様に考えることができる。
これによればウィック材103により毛細管力を生じさせることができるため主流溝32を微細に作製する必要がないため形状精度の管理を緩和することができる。
図25に示したベーパーチャンバは、下側シート10(第1シート)、上側シート20(第2シート)、および、2つの中間シート100(第3シート)、110(第4シート)の積層体からなる。
下側シート10と上側シート20との間に挟まれるように中間シート100、110が配置され、下側シート10の上面10aが中間シート100の下面100bに接触し、中間シート100の上面100aが中間シート110の下面110bに接触し、上側シート20の下面20aが中間シート110の上面110aに接触し、それぞれ接合されている。接合の態様は上記した通りである。
ここでは下側シート10は、下側シート凹部50および下側底面凸部51を備えており、他の部位は上面10aおよび下面10bのいずれも平坦である。
同様に、上側シート20は、上側シート凹部60および上側底面凸部61を備えており、他の部位は上面20aおよび下面10bのいずれも平坦である。
中間シート100には、第1下側流路溝12G1、下側流路壁部13、および主流溝31が備えられている。
本形態における第1下側流路溝12G1は、中間シート100を厚さ方向に貫通した溝であるが、それ以外においては上述した第1下側流路溝12G1と同様の形態および位置に配置することができる。同様にして、中間シート100には、上述した第2下側流路溝12G2に相当する流路溝、および、第3下側流路溝12G3に相当する流路溝も備えている。
下側流路壁部13は、上述した下側流路壁部13と同様の形態及び位置に配置することができる。
本形態における主流溝31は、中間シート100を厚さ方向に貫通した溝であるが、上述の主流溝32と同様の形態および配置であり、中間シート100の下側流路壁部13に備えられている。
中間シート110には、第1上側流路溝21G1および上側流路壁部22が備えられている。
本形態における第2上側流路溝21G1は、中間シート110を厚さ方向に貫通した溝であるが、それ以外においては上述した第2上側流路溝21G1と同様の形態および位置に配置することができる。同様にして、中間シート110には、上述した第2上側流路溝21G2に相当する流路溝、および、第3上側流路溝21G3に相当する流路溝も備えている。
上側流路壁部22は、上述した上側流路壁部22と同様の形態及び位置に配置することができる。
そして、第1下側流路溝12G1と第1上側流路溝21G1とがベーパーチャンバの平面視で重なるように配置されて第1流路とされる。一方、下側流路壁部13と上側流路壁部22とがベーパーチャンバの平面視で重なるように配置されて主流溝31により第2流路とされる。
さらに、下側シート凹部50、下側底面凸部51、上側シート凹部60、および上側底面凸部61は、ベーパーチャンバの平面視で第1下側流路溝12G1および第1上側流路溝21G1に重なる位置に配置されている。
図26には、ここまで説明したベーパーチャンバに具備されていた下側シート凹部50、下側底面凸部51、上側シート凹部60、および上側底面凸部61の代わりに、その凹凸関係が反対となった、下側シート凸部50’、下側底面凹部51’、上側シート凸部60’、および上側底面凹部61’が具備されたベーパーチャンバを説明する断面図を表した。
このベーパーチャンバでは、ベーパーチャンバの平面視で第1下側流路溝12G1および第1上側流路溝21G1に重なる位置に、下側シート10の下面10bに下側シート凸部50’、上側シート20の上面20bに上側シート凸部60’がそれぞれ配置されている。一方、下側シート10の上面10a側には下側底面凹部51’、上側シート20の下面20aに上側底面凹部61’がそれぞれ配置されている。
これら、下側シート凸部50’、下側底面凹部51’、上側シート凸部60’、および上側底面凹部61’は、上記した形態に具備された下側シート凹部50、下側底面凸部51、上側シート凹部60、および上側底面凸部61に対してその凹凸関係が反対になったこと以外は、同様に考えることができる。
このような形態のベーパーチャンバによれば、上記した効果の他、第1流路(蒸気流路)の流動抵抗を下げることができるとともに、蒸気流路が凝縮液で閉塞してしまう可能性を低減することができる。
本開示の上記形態および変形例はそのままに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記形態および変形例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の形態とすることができる。各形態および変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。