WO2021005882A1

WO2021005882A1 - 密封装置および密封構造

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Publication number: WO2021005882A1
Application number: PCT/JP2020/019172
Authority: WO
Inventors: 神前　剛
Original assignee: Nok株式会社
Priority date: 2019-07-10
Filing date: 2020-05-14
Publication date: 2021-01-14
Also published as: EP3998411A1; JP7273963B2; CN114072591A; JPWO2021005882A1; CN114072591B; US20220356909A1; EP3998411A4; US11773906B2

Abstract

内側部材と外側部材との間の間隙を封止する密封装置は、外側部材の円筒状の端部に取り付けられる取付け部と、取付け部の径方向内側に配置されており、内側部材に向けて延びる少なくとも１つのリップと、外側部材の端部の端面を覆う環状部と、環状部に連結されており、外側部材の端部の径方向外側に配置される弾性材料から形成された環状のフランジを有する。内側部材は、外側部材より径方向内側に配置された内側部分と、内側部分から径方向外側に広がるフランジと、このフランジに形成され、内側部材を他の部材に固定するネジが挿入される貫通孔を有する。密封装置のフランジの外端縁が貫通孔のうち中心軸線に最も近い部分よりも径方向外側に配置される。

Description

密封装置および密封構造

　本発明は、密封装置および密封構造に関する。

　例えば玉軸受のような転がり軸受は周知であり、例えば自動車のハブに使用されている。転がり軸受の内部を密封する密封装置としては、特許文献１に記載されたものがある。この密封装置は、転がり軸受の外輪に固定される環状体と、環状体から径方向内側に延びるラジアルリップと、環状体から側方に延びる複数のサイドリップとを備える。ラジアルリップは、軸受の内輪の外周面または内輪に固定される部品の外周面に接触して、軸受内部の潤滑剤を密封する機能を有し、サイドリップは、内輪のフランジに向けて延びており、外部から水やダスト等の異物が軸受内部へ侵入しないように封止する機能を有する。

特開２００８－２８１０１３号公報

　この種の密封装置については、水（泥水または塩水を含む）の多い環境で使用される場合には、異物（水およびダスト）が密封対象（例えば軸受）の内部に侵入しないように保護する機能を高めることが要求される。異物の侵入を抑制するためには、密封装置に異物侵入抑制部分を追加することが考えられる。しかし、密封装置が取り付けられる構造物にスペースの制限がある場合がある。例えば、自動車のハブには、車輪を取り付けるめのハブボルトが設けられ、ハブボルトによって、異物侵入抑制部分の寸法および／または配置が制限されると考えられてきた。

　そこで、本発明は、密封装置が取り付けられる構造物にスペースの制限があっても、大きな異物侵入抑制部分を有する密封装置および密封構造を提供する。

　本発明のある態様に係る密封装置は、相対的に回転する内側部材と外側部材との間に配置され、前記内側部材と前記外側部材との間の間隙を封止する密封装置であって、中心軸線を有しており、前記外側部材の円筒状の端部に取り付けられる取付け部と、前記取付け部の径方向内側に配置されており、前記内側部材に向けて延びる少なくとも１つのリップと、前記外側部材の前記端部の端面を覆う環状部と、前記環状部に連結されており、前記外側部材の前記端部の径方向外側に配置される弾性材料から形成された環状のフランジを有する。前記内側部材は、前記外側部材より径方向内側に配置された内側部分と、前記内側部分から径方向外側に広がるフランジと、前記フランジに形成され、前記内側部材を他の部材に固定するネジが挿入される貫通孔を有する。前記密封装置の前記フランジの外端縁が前記貫通孔のうち前記中心軸線に最も近い部分よりも径方向外側に配置される。

　この態様においては、密封装置の環状のフランジが、外側部材の端部の端面を覆う環状部に連結されており、外側部材の端部を包囲する。このようなフランジは、広い面積にわたって異物の侵入を抑制する異物侵入抑制部分として機能する。内側部材には内側部材を他の部材に固定するネジが挿入される貫通孔が形成されている。密封装置のフランジの外端縁は、貫通孔のうち中心軸線に最も近い部分よりも径方向外側に配置されており、フランジは大きい寸法を有する。したがって、ネジを貫通孔に挿入する際、ネジが密封装置のフランジの範囲を通過させられる。密封装置のフランジは弾性材料から形成されているので、ネジを貫通孔に挿入する際、フランジを弾性変形させて、ネジがフランジを通過することを容易にすることができる。ネジを定位置に配置した後は、フランジは初期の形状に戻され、広い面積にわたって異物の侵入を抑制する。このように構造物にスペースの制限があっても、広い面積を有する異物侵入抑制部分としてのフランジを有する密封装置を利用することができる。

　好ましくは、前記密封装置の前記フランジの前記外端縁と前記内端縁との間の距離は、前記内端縁と前記貫通孔のうち前記中心軸線に最も近い部分との間の距離より小さい。

　この場合、ネジを貫通孔に挿入する際、ネジの頭部と内側部材のフランジとの間に、密封装置のフランジが挟まれることが防止され、ネジがフランジを通過することを円滑にすることができる。

　本発明のある態様に係る密封構造は、内側部材と、内側部材に対して相対的に回転する外側部材と、内側部材と外側部材との間に配置され、前記内側部材と前記外側部材との間の間隙を封止する密封装置を有する。前記密封装置は、中心軸線を有しており、前記外側部材の円筒状の端部に取り付けられる取付け部と、前記取付け部の径方向内側に配置されており、前記内側部材に向けて延びる少なくとも１つのリップと、前記外側部材の前記端部の端面を覆う環状部と、前記環状部に連結されており、前記外側部材の前記端部の径方向外側に配置される弾性材料から形成された環状のフランジを有する。前記内側部材は、前記外側部材より径方向内側に配置された内側部分と、前記内側部分から径方向外側に広がるフランジと、前記フランジに形成され、前記内側部材を他の部材に固定するネジが挿入される貫通孔を有する。前記密封装置の前記フランジの外端縁が前記貫通孔のうち前記中心軸線に最も近い部分よりも径方向外側に配置されている。

本発明の実施形態に係る密封装置が使用される転がり軸受の一例の部分断面図である本発明の実施形態に係る密封装置の部分断面図である。実施形態に係る密封装置の一部を破断した斜視図である。実施形態に係る密封装置が使用されているハブのフランジの貫通孔にハブボルトを挿入する場面を示す密封装置の部分断面図である。比較例の密封装置が使用されているハブのフランジの貫通孔にハブボルトを挿入する場面を示す密封装置の部分断面図である。実施形態の変形例に係る密封装置の部分断面図である。実施形態の他の変形例に係る密封装置の部分断面図である。実施形態の他の変形例に係る密封装置の部分断面図である。実施形態の他の変形例に係る密封装置の部分断面図である。

　以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施の形態を説明する。図面の縮尺は必ずしも正確ではなく、一部の特徴は誇張または省略されることもある。

　図１は、本発明の実施形態に係る密封装置が使用される転がり軸受の一例である自動車用のハブ軸受を示す。但し、本発明の用途はハブ軸受には限定されず、他の転がり軸受にも本発明は適用可能である。また、以下の説明では、ハブ軸受は、玉軸受であるが、本発明の用途は玉軸受には限定されず、他の種類の転動体を有する、ころ軸受、針軸受などの他の転がり軸受にも本発明は適用可能である。また、自動車以外の機械に使用される転がり軸受にも本発明は適用可能である。

　このハブ軸受１は、スピンドル（図示せず）が内部に挿入される孔２を有するハブ（内側部材）４と、ハブ４に取り付けられた内輪（内側部材）６と、これらの外側に配置された外輪（外側部材）８と、ハブ４と外輪８の間に１列に配置された複数の玉１０と、内輪６と外輪８の間に１列に配置された複数の玉１２と、これらの玉を定位置に保持する複数の保持器１４，１５とを有する。

　外輪８が固定されている一方で、ハブ４および内輪６は、スピンドルの回転に伴って回転する。

　スピンドルおよびハブ軸受１の共通の中心軸線Ａｘは、図１の上下方向に延びている。図１においては、中心軸線Ａｘに対する左側部分のみが示されている。詳細には図示しないが、図１の上側は自動車の車輪が配置される外側（アウトボード側）であり、下側は差動歯車などが配置される内側（インボード側）である。図１に示した外側、内側は、それぞれ径方向の外側、内側を意味する。

　ハブ軸受１の外輪８は、ハブナックル１６に固定される。ハブ４は、外輪８より径方向内側に配置された内側部分と、内側部分から径方向外側に広がって外輪８よりも径方向外側に広がったアウトボード側フランジ１８を有する。

　アウトボード側フランジ１８には、複数のハブボルト（ネジ）によって、車輪（図示せず）を取り付けることができる。アウトボード側フランジ１８には、ハブボルト１９が挿入される複数の貫通孔１８Ａが形成されている。複数の貫通孔１８Ａは周方向に互いに間隔をおいて配置されている。

　外輪８のアウトボード側の端部の付近には、外輪８とハブ４との間の間隙を封止する密封装置２０が配置されており、外輪８のインボード側の端部の内側には、外輪８と内輪６との間の間隙を封止する密封装置２１が配置されている。これらの密封装置２０，２１の作用により、ハブ軸受１の内部からのグリース、すなわち潤滑剤の流出が防止されるとともに、外部からハブ軸受１の内部への異物（水（泥水または塩水を含む）およびダストを含む）の流入が防止される。図１において、矢印Ｆは、外部からの異物の流れの方向の例を示す。

　密封装置２０は、ハブ軸受１の回転するハブ４と固定された外輪８との間に配置され、ハブ４と外輪８との間の間隙を封止する。

　図２に示すように、密封装置２０の一部は、ハブ軸受１の外輪８のアウトボード側の円筒状の端部８Ａと、ハブ軸受１のハブ４の玉１０の近傍の外周面４Ａと、ハブ４の外周面４Ａよりも外側に広がるフランジ面４Ｂと、外周面４Ａとフランジ面４Ｂとを連結する円弧面４Ｃとで囲まれた空間内に配置される。フランジ面４Ｂはアウトボード側フランジ１８のインボード側の表面である。密封装置２０は環状であるが、図２においては、その左側部分のみが示されている。

　ハブ４のアウトボード側フランジ１８は、フランジ面４Ｂよりも凹んだフランジ面４Ｄと、フランジ面４Ｂ，４Ｄを接続する傾斜面４Ｅをさらに有する。

　図２では、ハブ４と外輪８を仮想線で示す。密封装置２０のハブ４に接触する部分および外輪８に接触する部分は、接触に伴って変形するが、図２では、密封装置２０の非使用時の輪郭を示す。

　図２および図３に示すように、密封装置２０は、弾性材料、例えばエラストマーで形成された弾性環２２と、弾性環２２を補強する剛性材料、例えば金属製の補強環２４とを有する。補強環２４は、その一部が弾性環２２に埋設されており、弾性環２２に密着している。

　密封装置２０は、内側筒状部２６、内側環状部２７、外側環状部２８、ラジアルリップ３２、２つのサイドリップ３４，３６、補助リップ３８、外側筒状部４０、およびフランジ４２を有する。

　内側筒状部（取付け部）２６は、中心軸線Ａｘ（図１および図２参照）を中心とする円筒状の部分であり、外輪８の円筒状の端部８Ａに取り付けられる。内側筒状部２６は端部８Ａに固定される。固定の方式は、限定されないが、例えば締まり嵌め（圧入）であってよい。内側筒状部２６は、補強環２４の折り重なった筒状の部分と、これらの筒状の部分に充填された弾性環２２の部分から構成されている。補強環２４の折り重なった筒状の部分のうち外側の筒状の部分が内側筒状部２６の外周面を有しており、端部８Ａの内周面に締まり嵌め状態で接触する。

　内側環状部２７は、内側筒状部２６から径方向内側に延びており、外輪８の端部８Ａよりも径方向内側に配置される。この実施形態では、内側環状部２７は、内側筒状部２６から径方向内側かつインボード側に向けて斜めに延びている。内側環状部２７も、弾性環２２と補強環２４から構成されている。

　ラジアルリップ３２およびサイドリップ３４，３６は、弾性材料のみから形成されており、内側環状部２７の弾性環２２に相当する部分から延びる薄板状の円環であって、リップ３２，３４，３６の先端はハブ４に接触する。密封装置２０が固定された外輪８に取り付けられている一方、ハブ４は回転するので、リップ３２，３４，３６はハブ４に対して摺動する。

　ラジアルリップ３２は、内側環状部２７の最も内側の縁部から径方向内側かつインボード側に斜めに延び、ラジアルリップ３２の先端は、ハブ４の玉１０の近傍の外周面４Ａに接触する。ラジアルリップ３２は、径方向内側かつインボード側に向けて延び、主にハブ軸受１の内部からの潤滑剤の流出を阻止する役割を担う。

　サイドリップ３４，３６は、内側環状部２７から側方（アウトボード側）、かつ径方向外側に向けて斜めに延びる。サイドリップ３４の先端は、ハブ４のフランジ面４Ｂに接触し、サイドリップ３６の先端は円弧面４Ｃに接触する。サイドリップ３４，３６は、主に外部からハブ軸受１の内部への異物の流入を阻止する役割を担う。サイドリップ３６は、サイドリップ３４をすり抜けて流入した異物を阻止するバックアップ機能を有する。サイドリップ３６は、ラジアルリップ３２とサイドリップ３４との間に存在するので、中間リップと呼ぶこともできる。

　図２においては、密封装置２０をハブ軸受１に配置していない時のラジアルリップ３２およびサイドリップ３４，３６が示されている。この時、ラジアルリップ３２およびサイドリップ３４，３６は、外力を受けていない状態である。しかし、密封装置２０をハブ軸受１に配置すると、これらのリップはハブ４に接触し反力を受けて変形する。

　外側環状部２８は、筒状部２６から径方向外側に向けて延びており、ハブ軸受１の中心軸線Ａｘに対してほぼ直交する。外側環状部２８も弾性環２２と補強環２４から構成されており、外側環状部２８においては補強環２４は弾性環２２内に埋設されている。外側環状部２８において、弾性環２２は、外輪８の円筒状の端部８Ａの端面に対向させられ、その端面に接触する。

　補助リップ３８は、弾性材料のみから形成されており、外側環状部２８から延びる薄板状の円環である。補助リップ３８は、内側筒状部２６よりも半径方向外側に配置され、ハブ４のアウトボード側フランジ１８のフランジ面４Ｄに向けて、径方向外側かつアウトボード側に延びる。補助リップ３８は、外部から到来する異物を跳ね返し、サイドリップ３４に到達する異物を最小限にすることができる。

　この実施形態では、補助リップ３８はアウトボード側フランジ１８には接触せず、補助リップ３８の先端縁とフランジ面４Ｄとの間に環状かつラビリンス状の間隙３９が設けられている。但し、補助リップ３８はアウトボード側フランジ１８に接触し、アウトボード側フランジ１８に対して摺動してもよい。また補助リップ３８は必ずしも不可欠ではない。

　外側筒状部４０は、外側環状部２８の外端からインボード側に向けて延び、中心軸線Ａｘを中心とする円筒状の部分である。外側筒状部４０は、外輪８の円筒状の端部８Ａを包囲する。外側筒状部４０と端部８Ａの間には、環状の間隙が設けられている。

　この実施形態では、外側筒状部４０は、弾性材料のみから形成されている。但し、外側筒状部４０は弾性環２２と補強環２４から形成してもよい。

　この実施形態では、外側筒状部４０は円筒形であるが、円錐台形であってもよい。

　フランジ４２は、外側筒状部４０のインボード側の端部から径方向外側に広がる。フランジ４２は中心軸線Ａｘを中心とする円環状の部分である。フランジ４２は、外側筒状部４０によって外側環状部２８に連結されており、外輪８の端部８Ａの径方向外側に配置される。フランジ４２の外端縁は、貫通孔１８Ａのうち中心軸線Ａｘに最も近い部分１８Ｂよりも径方向外側に配置される。フランジ４２は、弾性材料のみから形成されている。

　この実施形態においては、密封装置２０の環状のフランジ４２が、外輪８の端部８Ａの端面を覆う外側環状部２８に連結されており、外輪８の端部８Ａを包囲する。このようなフランジ４２は、広い面積にわたって異物の侵入を抑制する異物侵入抑制部分として機能する。図２において、矢印Ｆは、外部からの異物の流れの方向の例を示す。フランジ４２は、外部から到来する異物を跳ね返し、補助リップ３８に到達する異物を減少させる。また、補助リップ３８は、外部からフランジ４２をすり抜けて到来する異物を跳ね返し、サイドリップ３４に到達する異物を減少させる。

　上記の通り、ハブ４にはハブ４を車輪に固定するハブボルト１９が挿入される貫通孔１８Ａが形成されている。図４は、ハブ４のアウトボード側フランジ１８の貫通孔１８Ａにハブボルト１９を挿入する場面を示す。密封装置２０のフランジ４２の外端縁は、貫通孔１８Ａのうち中心軸線Ａｘに最も近い部分１８Ｂよりも径方向外側に配置されており、フランジ４２は大きい寸法を有する。したがって、ハブボルト１９を貫通孔１８Ａに挿入する際、ハブボルト１９が密封装置２０のフランジ４２の範囲を通過させられる。密封装置２０のフランジ４２は弾性材料から形成されているので、ハブボルト１９を貫通孔１８Ａに挿入する際、図４に示すように、フランジ４２を弾性変形させて（すなわち折り曲げて）、ハブボルト１９がフランジ４２を通過することを容易にすることができる。

　ハブボルト１９を定位置に配置した後は、図２に示すように、フランジ４２は初期の形状に戻され、広い面積にわたって異物の侵入を抑制する。このように構造物にスペースの制限があっても、広い面積を有する異物侵入抑制部分としてのフランジ４２を有する密封装置２０を利用することができる。

　好ましくは、フランジ４２の外端縁と内端縁との間の距離Ａは、フランジ４２の内端縁と貫通孔１８Ａのうち中心軸線Ａｘに最も近い部分１８Ｂとの間の距離Ｂより小さい（図４参照）。この特徴によれば、ハブボルト１９を貫通孔１８Ａに挿入する際、ハブボルト１９の頭部１９Ａとアウトボード側フランジ１８との間に、フランジ４２が挟まれることが防止され、ハブボルト１９がフランジ４２を通過することを円滑にすることができる。ハブボルト１９はフランジ４２を弾性変形させながら、フランジ４２を通過し、その後は、フランジ４２は自身の弾性復元力で初期の形状に復元する。距離Ａが距離Ｂより小さいことにより、ハブボルト１９の装着作業を円滑化することができる。

　図５は、ハブ４のアウトボード側フランジ１８の貫通孔１８Ａにハブボルト１９を挿入する場面を示す比較例の密封装置５０の断面図である。比較例の密封装置５０では、フランジ４２の外端縁と内端縁との間の距離Ａは、フランジ４２の内端縁と貫通孔１８Ａのうち中心軸線Ａｘに最も近い部分１８Ｂとの間の距離Ｂより大きい。このため、ハブボルト１９を貫通孔１８Ａに挿入する際、ハブボルト１９の頭部１９Ａとアウトボード側フランジ１８との間に、フランジ４２が挟まれるおそれがあり、これを回避するには、作業者がフランジ４２を変形させて、フランジ４２の外端縁をハブボルト１９の頭部１９Ａよりもインボード側に位置させなければならない。したがって、ハブボルト１９の装着作業は円滑には進まない。

　図６は、実施形態の変形例に係る密封装置６０を示す。図６以降の図面において、実施形態と共通する構成要素を示すため、同一の符号が使用され、それらの構成要素については詳細には説明しない。

　密封装置６０においては、内側筒状部２６がほぼ補強環２４のみから構成されており、外輪８の円筒状の端部８Ａに締まり嵌めされている。内側筒状部２６と端部８Ａの内周面の間には、弾性環２２の一部分が嵌まり込む。

　密封装置６０の外側環状部２８は、弾性環２２のみから構成されている。

　密封装置６０は、補助リップ３８を有していない。しかし、フランジ４２は、広い面積にわたって異物の侵入を抑制する異物侵入抑制部分として機能し、外部から到来する異物を跳ね返し、サイドリップ３４に到達する異物を減少させる。

　図７は、実施形態の他の変形例に係る密封装置７０を示す。

　密封装置７０は内側筒状部２６を有していない。ここでは、外側筒状部４０が取付け部として使用される。外側筒状部４０は、中心軸線Ａｘを中心とする円筒状の部分であり、外輪８の円筒状の端部８Ａに取り付けられる。外側筒状部４０は端部８Ａに固定される。固定の方式は、限定されないが、例えば締まり嵌めであってよい。外側筒状部４０は、補強環２４の折り重なった筒状の部分と、これらの筒状の部分に充填された弾性環２２の部分および筒状の部分の周囲に配置された弾性環２２の部分から構成されている。補強環２４の折り重なった筒状の部分のうち内側の筒状の部分が外側筒状部４０の内周面を有しており、端部８Ａの外周面が外側筒状部４０の内周面に締まり嵌め状態で接触する。

　密封装置７０の外側環状部２８においては、補強環２４の部分が外輪８の端部８Ａの端面に接触する。

　図８は、実施形態の他の変形例に係る密封装置８０を示す。

　密封装置８０は内側筒状部２６を有していない。ここでは、外側筒状部４０が取付け部として使用される。外側筒状部４０は、中心軸線Ａｘを中心とする円筒状の部分であり、外輪８の円筒状の端部８Ａに取り付けられる。外側筒状部４０は端部８Ａに固定される。固定の方式は、限定されないが、例えば締まり嵌めであってよい。外側筒状部４０は、補強環２４の筒状の部分と、この筒状の部分の周囲に配置された弾性環２２の部分から構成されている。補強環２４の筒状の部分が外側筒状部４０の内周面を有しており、端部８Ａの外周面が外側筒状部４０の内周面に締まり嵌め状態で接触する。

　密封装置８０の外側環状部２８においては、補強環２４の部分が外輪８の端部８Ａの端面に接触する。

　密封装置８０は、補助リップ３８を有していない。しかし、フランジ４２は、広い面積にわたって異物の侵入を抑制する異物侵入抑制部分として機能し、外部から到来する異物を跳ね返し、サイドリップ３４に到達する異物を減少させる。

　上記の実施形態および変形例では、リップ３２，３４，３６がハブ４に直接接触する。しかし、図９に示す変形例のように、ハブ４の周囲に、ハブ４とともに回転する回転シール部材９０を固定して、リップ３２，３４，３６が回転シール部材９０に摺動可能に接触するようにしてもよい。回転シール部材９０は、剛性材料、例えば金属から形成された、中心軸線Ａｘを中心とする円環である。

　以上、本発明の好ましい実施形態を参照しながら本発明を図示して説明したが、当業者にとって特許請求の範囲に記載された発明の範囲から逸脱することなく、形式および詳細の変更が可能であることが理解されるであろう。このような変更、改変および修正は本発明の範囲に包含されるはずである。

　例えば、上記の実施形態および変形例では、内側部材であるハブ４および内輪６が回転部材であり、外側部材である外輪８が静止部材である。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、互いに相対回転する複数の部材の密封に適用されうる。例えば、内側部材が静止し、外側部材が回転してもよいし、これらの部材のすべてが回転してもよい。

　上記の実施形態および変形例では、各密封装置に単一の補強環２４が設けられている。しかし、密封装置が、半径方向において互いに分離した外側剛性環と内側剛性環とを有していてもよい。

　本発明の用途は、ハブ軸受１の密封に限定されない。例えば、自動車の差動歯車機構またはその他の動力伝達機構、自動車の駆動シャフトの軸受またはその他の支持機構、ポンプの回転軸の軸受またはその他の支持機構などにも本発明に係る密封装置または密封構造を使用することができる。

　図２の実施形態においては、補強環２４は外側環状部２８で終端し、外側筒状部４０には設けられていない。しかし、補強環２４は外側筒状部４０に設けてもよい。

　密封装置に設けられるリップの数は、上記の実施形態および変形例に限定されない。

１　ハブ軸受
Ａｘ　中心軸線
４　ハブ（内側部材）
６　内輪（内側部材）
８　外輪（外側部材）
８Ａ　端部
１８　アウトボード側フランジ
１８Ａ　貫通孔
１８Ｂ　貫通孔の中心軸線に最も近い部分
１９　ハブボルト（ネジ）
２０，６０，７０，８０　密封装置
２２　弾性環
２４　補強環
２６　内側筒状部（取付け部）
２７　内側環状部
２８　外側環状部
３２　ラジアルリップ
３４，３６　サイドリップ
４０　外側筒状部（取付け部）
４２　フランジ

Claims

　相対的に回転する内側部材と外側部材との間に配置され、前記内側部材と前記外側部材との間の間隙を封止する密封装置であって、
　中心軸線を有しており、前記外側部材の円筒状の端部に取り付けられる取付け部と、
　前記取付け部の径方向内側に配置されており、前記内側部材に向けて延びる少なくとも１つのリップと、
　前記外側部材の前記端部の端面を覆う環状部と、
　前記環状部に連結されており、前記外側部材の前記端部の径方向外側に配置される弾性材料から形成された環状のフランジを有し、
　前記内側部材は、
　　前記外側部材より径方向内側に配置された内側部分と、
　　前記内側部分から径方向外側に広がるフランジと、
　　前記フランジに形成され、前記内側部材を他の部材に固定するネジが挿入される貫通孔を有し、
　前記密封装置の前記フランジの外端縁が前記貫通孔のうち前記中心軸線に最も近い部分よりも径方向外側に配置される
ことを特徴とする密封装置。
　前記密封装置の前記フランジの前記外端縁と前記内端縁との間の距離は、前記内端縁と前記貫通孔のうち前記中心軸線に最も近い部分との間の距離より小さい
ことを特徴とする請求項１に記載の密封装置。
　内側部材と、
　内側部材に対して相対的に回転する外側部材と、
　内側部材と外側部材との間に配置され、前記内側部材と前記外側部材との間の間隙を封止する密封装置を有し、
　前記密封装置は、
　　中心軸線を有しており、前記外側部材の円筒状の端部に取り付けられる取付け部と、
　　前記取付け部の径方向内側に配置されており、前記内側部材に向けて延びる少なくとも１つのリップと、
　　前記外側部材の前記端部の端面を覆う環状部と、
　　前記環状部に連結されており、前記外側部材の前記端部の径方向外側に配置される弾性材料から形成された環状のフランジを有し、
　前記内側部材は、
　　前記外側部材より径方向内側に配置された内側部分と、
　　前記内側部分から径方向外側に広がるフランジと、
　　前記フランジに形成され、前記内側部材を他の部材に固定するネジが挿入される貫通孔を有し、
　　前記密封装置の前記フランジの外端縁が前記貫通孔のうち前記中心軸線に最も近い部分よりも径方向外側に配置されている
ことを特徴とする密封構造。
　前記密封装置の前記フランジの前記外端縁と前記内端縁との間の距離は、前記内端縁と前記貫通孔のうち前記中心軸線に最も近い部分との間の距離より小さい
ことを特徴とする請求項３に記載の密封構造。