JP2012082912A - 車輪用転がり軸受装置 - Google Patents

Abstract

【課題】車輪用転がり軸受装置が有する複列の転動体について軸方向の球心間距離を広く確保して、車輪用転がり軸受装置のモーメント剛性を向上させる。
【解決手段】車輪用転がり軸受装置１０は、転がり軸受の内輪部材を構成するハブ軸１２および内輪２０と、図示しない懸架装置に固定される外輪２２と、複列の転動体２４とを有する。そして、ハブ軸１２の一側の外周には図示しない車輪が取付けられるフランジ部１４が形成され、ハブ軸１２のフランジ部１４側にはハブ軸１２を内輪軌道面とする第１列の転動体２４が配置され、ハブ軸１２のフランジ部１４側に対して軸方向の逆側にはハブ軸１２に外嵌めされた内輪２０を内輪軌道面とする第２列の転動体２４が配置されている。そして、第１列の転動体２４のフランジ部１４側の一部が、外輪２２のフランジ部１４側の端面部２２ａよりもフランジ部１４側にはみ出した構成とされている。
【選択図】図１

Description

この発明は車輪用転がり軸受装置に関する。具体的には、複列の転動体を有する車輪用転がり軸受装置の構造に関する。

自動車の車輪を懸架装置に支持するために車輪用転がり軸受装置が用いられている。そして、車輪用転がり軸受装置には、転がり軸受の内輪部材を構成するハブ軸の一側の外周に車輪を取付けるフランジ部が形成され、外輪が懸架装置に固定されて、ハブ軸のフランジ部分に取付けられる車輪が懸架装置に支持される構造とされているものがある。
図３に、従来技術による車輪用転がり軸受装置１１０の軸方向断面図を示す。車輪用転がり軸受装置１１０は、内輪部材を構成するハブ軸１１２及び内輪１２０と、図示しない懸架装置に固定される外輪１２２と、複列の転動体１２４とを有している。
そして、ハブ軸１１２の一側の外周には車輪が取付けられるフランジ部１１４が形成されており、ハブ軸１１２のフランジ部１１４側にはハブ軸１１２を内輪軌道面とする転動体１２４が配置されている。そして、ハブ軸１１２のフランジ部１１４側に対して軸方向で逆側にはハブ軸１１２に外嵌めされた内輪１２０を内輪軌道面とする転動体１２４が配置されている。そして、ハブ軸１１２のフランジ部１１４側における外輪１２２の端部の内周面と、ハブ軸１１２の外周面との間には、密封装置１３０が配設されており、密封装置１３０のシールリップがハブ軸１１２に摺接する構造とされている。

そして、特許文献１には、図３に記載の車輪用転がり軸受装置と基本的な構造が類似した車輪用転がり軸受装置が記載されている。特許文献１に記載の車輪用転がり軸受装置の特徴は、フランジの基端部の外輪側を肉厚の構造としている点である。そのため、外輪のフランジ側端部の内周面とハブ軸のフランジ基端部の外周面との隙間が狭くなるので、ハブ軸と外輪の隙間を塞ぐ密封装置が、外輪のフランジ側端部の外周側に配設されている（特許文献１の図１参照）。

特開２００５−２３３２８７号公報

ところで、車輪用転がり軸受装置はモーメント剛性が高いことが望ましい。そして、モーメント剛性を向上させる為の手段として、転動体の軸方向での球心間距離を広げることが考えられる。しかし、自動車の寸法制約により、車輪用転がり軸受装置は、軸方向の長さの制約がある。この制約の中で、車輪用転がり軸受装置は設計されており、転動体の球心間距離を広げるには限界がある。そして、図３に従来技術として紹介した車輪用転がり軸受装置１１０では、密封装置１３０が転動体１２４の軸方向の球心間距離を広げる際の妨げとなっている。また、特許文献１に記載の車輪用転がり軸受装置では、フランジ基端部の外輪側の肉厚部が転動体の軸方向の球心間距離を広げる際の妨げとなっている。

そこで、本発明が解決しようとする課題は、車輪用転がり軸受装置が有する複列の転動体について軸方向の球心間距離を広く確保して、車輪用転がり軸受装置のモーメント剛性を向上させることである。

上記課題を解決するため、本発明にかかる車輪用転がり軸受装置は次の手段をとる。
まず、本発明の第１の発明は、転がり軸受の内輪部材を構成するハブ軸および内輪と、外輪と、複列の転動体とを有し、
前記ハブ軸の一側の外周には車輪が取付けられるフランジ部が形成され、該ハブ軸のフランジ部側には該ハブ軸を内輪軌道面とする第１列の転動体が配置され、該ハブ軸のフランジ部側に対して軸方向の逆側には該ハブ軸に外嵌めされた前記内輪を内輪軌道面とする第２列の転動体が配置され、
前記第１列の転動体のフランジ部側の一部が、前記外輪のフランジ部側の端面部よりもフランジ部側にはみ出している、ことを特徴とする車輪用転がり軸受装置である。

この第１の発明によれば、第１列の転動体のフランジ部側の一部が、外輪のフランジ部側の端面部よりもフランジ部側にはみ出した構成とされている。よって、外輪のフランジ部側の内周面に密封装置が配置された構成やフランジの基端部の外輪側を肉厚にした構成に比べて、転動体の軸方向の球心間距離を広くとることができ、車輪用転がり軸受装置のモーメント剛性を向上させることができる。

次に、本発明の第２の発明は、上記第１の発明に係る車輪用転がり軸受装置であって、
前記外輪のフランジ部側の端面部とフランジ部との間を密封する密封手段を該外輪の外径部に設けた、ことを特徴とする。
この第２の発明によれば、外輪のフランジ部側の端面部とフランジ部との間を密封する密封手段を外輪の外径部に設けているので、外輪の外径側から径方向内方への泥水等の異物の侵入が抑制される。

次に、本発明の第３の発明は、上記第２の発明に係る車輪用転がり軸受装置であって、
前記密封手段を構成するスリンガが、車輪取付け用に前記ハブ軸のフランジ部に圧入されるボルトによって、フランジ部に固定されている、ことを特徴とする。
この第３の発明によれば、密封手段を構成するスリンガを、別途固定手段を用いることなく、簡便に車輪用転がり軸受装置へ固定することができる。

上述の本発明の各発明によれば、次の効果が得られる。
まず、上述の第１の発明によれば、外輪のフランジ部側の内周面に密封装置が配置された構成やフランジの基端部の外輪側を肉厚にした構成に比べて、転動体の軸方向の球心間距離を広くとることができ、車輪用転がり軸受装置のモーメント剛性を向上させることができる。
次に上述の第２の発明によれば、外輪の外径側から径方向内方への泥水等の異物の侵入を抑制することができる。
次に上述の第３の発明によれば、密封手段を構成するスリンガを簡便に車輪用転がり軸受装置へ固定することができる。

本発明の実施例１における車輪用転がり軸受装置の軸方向断面図である。 本発明の実施例２における車輪用転がり軸受装置の軸方向断面図である。 従来技術による車輪用転がり軸受装置の軸方向断面図である。

以下、本発明を実施するための形態について実施例にしたがって説明する。

［実施例１の構成］
図１に本発明の実施例１における車輪用転がり軸受装置１０の軸方向断面図を示す。車輪用転がり軸受装置１０は、転がり軸受の内輪部材を構成するハブ軸１２および内輪２０と、図示しない懸架装置に固定される外輪２２と、複列の転動体２４と、転動体２４を保持する保持器２６とを有している。そして、ハブ軸１２の一側の外周には図示しない車輪が取付けられるフランジ部１４が形成され、ハブ軸１２のフランジ部１４側にはハブ軸１２を内輪軌道面とする第１列の転動体２４が配置され、ハブ軸１２のフランジ部１４側に対して軸方向の逆側にはハブ軸１２に外嵌めされた内輪２０を内輪軌道面とする第２列の転動体２４が配置されている。
そして、第１列の転動体２４のフランジ部１４側の一部が、外輪２２のフランジ部１４側の端面部２２ａよりもフランジ部１４側にはみ出した構成とされている。

そして、外輪２２のフランジ部１４側の端部２２ｂの外径部２２ｃには、芯金３２と芯金３２を被覆するゴム製のシール部材３６と金属製のスリンガ３４を備えた密封装置３０が配置されている。この密封装置３０が本発明の密封手段に相当するものであり、密封装置３０の芯金３２は、外輪２２のフランジ部１４側の端部２２ｂの外径部２２ｃに圧入されて外輪２２に取付けられている。そして、密封装置３０のスリンガ３４には取付孔３５が形成されており、スリンガ３４は、図示しない車輪の取付け用にハブ軸１２のフランジ部１４に圧入されるボルト１６が取付孔３５に挿通されて、ハブ軸１２のフランジ部１４に固定されている。そして、シール部材３６から延設されスリンガ３４の内周面に摺接するシールリップ３８と、シール部材３６から延設されフランジ部１４の側面に摺接するアキシアルリップ４０により、外輪２２のフランジ部１４側の端面部２２ａとフランジ部１４との間の隙間が密封されている。
なお、フランジ部１４の基端部の強度を高める必要があるときは、フランジ部１４の基端部の車輪を取付ける側を肉厚にすればよい。

［実施例１の効果］
実施例１によれば、第１列の転動体２４のフランジ部１４側の一部が、外輪２２のフランジ部１４側の端面部２２ａよりもフランジ部１４側にはみ出した構成とされている。よって、外輪２２のフランジ部１４側の内周面に密封装置が配置された構成やフランジの基端部の外輪側を肉厚にした構成に比べて、転動体２４の軸方向の球心間距離を広くとることができ、車輪用転がり軸受装置のモーメント剛性を向上させることができ、軸受装置の寿命も向上する。
また、外輪２２のフランジ部１４側の端面部２２ａとフランジ部１４との間を密封する密封装置３０を外輪２２の外径部２２ｃに設けているので、外輪２２の外径部２２ｃ側から径方向内方への泥水等の異物の侵入を抑止することができる。
そして、密封装置３０を構成するスリンガ３４は、図示しない車輪の取付け用にハブ軸１２のフランジ部１４に挿通されるボルト１６によって、ハブ軸１２のフランジ部１４に固定されて構成とされている。よって、密封装置３０を構成するスリンガ３４を、簡便に車輪用転がり軸受装置１０へ固定することができる。

図２に本発明の実施例２における車輪用転がり軸受装置１０ａの軸方向断面図を示す。実施例２の密封装置３０ａは実施例１の密封装置３０と比べて、その構造及び車輪用転がり軸受装置への取付け方法に差異がある。
車輪用転がり軸受装置１０ａの外輪２２の端部２２ｂの外径部２２ｃに配置される密封装置３０ａは、芯金３２ａと芯金３２ａを被覆するゴム製のシール部材３６ａと金属製のスリンガ３４ａを備えている。そして、芯金３２ａは、外輪２２の端部２２ｂの外径部２２ｃに圧入されて外輪２２に取付けられており、スリンガ３４ａは、ハブ軸１２ａのフランジ部１４ａに設けられた環状凹部１５に圧入されて、ハブ軸１２ａのフランジ部１４ａに固定されている。そして、シール部材３６ａから延設されスリンガ３４ａの内周面に摺接するシールリップ３８ａと、シール部材３６ａから延設されフランジ部１４ａの側面に摺接するアキシアルリップ４０ａにより、外輪２２のフランジ部１４ａ側の端面部２２ａとフランジ部１４ａとの間の隙間が密封されている。
なお、実施例２ではフランジ部１４ａに環状凹部１５を設けているが、フランジ部１４ａに段差部を設けてスリンガ３４ａを圧入する構成としても良い。
車輪用転がり軸受装置１０ａの他の構成は車輪用転がり軸受装置１０と同様であるので、同一符号を付して説明は省略する。
実施例２によれば、実施例１と同様に、車輪用転がり軸受装置のモーメント剛性を向上させることができ、外輪２２の外径部２２ｃ側から径方向内方への泥水等の異物の侵入を抑止することができる。

本発明に係る車輪用転がり軸受装置は、上記の実施例に限定されない。例えば、密封装置から芯金とシール部材を省略し、実施例１あるいは実施例２と同様の方法でハブ軸のフランジ部にスリンガを固定し、スリンガの内径面と外輪のフランジ側端部の外径面とでラビリンスを形成する構成としても良い。あるいは、ハブ軸のフランジ部にゴム製でリング状のシール部材を加硫接着し、このシール部材を外輪のフランジ側端部の端面に摺接させる構成としても良い。また、ゴム製でリング状のシール部材を外輪のフランジ側端部の端面に加硫接着して、ハブ軸のフランジ部の側面に摺接させる構成としても良い。
その他、本発明に係る車輪用転がり軸受装置はその発明の思想の範囲で、各種の形態で実施できるものである。

１０、１０ａ 車輪用転がり軸受装置
１２、１２ａ ハブ軸
１４、１４ａ フランジ部
１５ 環状凹部
１６ ボルト
２０ 内輪
２２ 外輪
２２ａ 外輪の端面部
２２ｂ 外輪の端部
２２ｃ 外輪の外径部
２４ 転動体
２６ 保持器
３０、３０ａ 密封装置（密封手段）
３２、３２ａ 芯金
３４、３４ａ スリンガ
３５ 取付孔
３６、３６ａ シール部材
３８、３８ａ シールリップ
４０、４０ａ アキシアルリップ

Claims (3)

1. 転がり軸受の内輪部材を構成するハブ軸および内輪と、外輪と、複列の転動体とを有し、
   前記ハブ軸の一側の外周には車輪が取付けられるフランジ部が形成され、該ハブ軸のフランジ部側には該ハブ軸を内輪軌道面とする第１列の転動体が配置され、該ハブ軸のフランジ部側に対して軸方向の逆側には該ハブ軸に外嵌めされた前記内輪を内輪軌道面とする第２列の転動体が配置され、
   前記第１列の転動体のフランジ部側の一部が、前記外輪のフランジ部側の端面部よりもフランジ部側にはみ出している、ことを特徴とする車輪用転がり軸受装置。
2. 請求項１に記載の車輪用転がり軸受装置であって、
   前記外輪のフランジ部側の端面部とフランジ部との間を密封する密封手段を該外輪の外径部に設けた、ことを特徴とする車輪用転がり軸受装置。
3. 請求項２に記載の車輪用転がり軸受装置であって、
   前記密封手段を構成するスリンガが、車輪取付け用に前記ハブ軸のフランジ部に圧入されるボルトによって、フランジ部に固定されている、ことを特徴とする車輪用転がり軸受装置。
   

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