WO2019092888A1

WO2019092888A1 - ファスナーエレメントの製造方法

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Publication number: WO2019092888A1
Application number: PCT/JP2017/040807
Authority: WO
Inventors: 嘉之玉手
Original assignee: Ykk株式会社
Priority date: 2017-11-13
Filing date: 2017-11-13
Publication date: 2019-05-16
Also published as: CN111278584B; EP3711876A4; EP3711876A1; CN111278584A

Abstract

長尺の金属製平板部材(5)に対して打ち抜き加工を行うことにより、細い左右のヒレ部を有するファスナーエレメント(10)を製造する製造方法において、少なくとも２回の打ち抜き加工を行うこと、及び、１回の打ち抜き加工を、形成される噛合頭部の左右の外側面とテープ挟持部の左右の外側面とに沿って行うことを含む製造方法が提供される。これにより、打ち抜き加工に用いられるエレメント打ち抜きパンチの破損を生じ難くすることができる。また、噛合頭部とテープ挟持部との境界部にバリや段差が形成されることを防止できる。更に、より細いヒレ部を有するファスナーエレメント(10)を製造することが可能となる。

Description

ファスナーエレメントの製造方法

　本発明は、長尺の金属製平板部材に対して打ち抜き加工を行うことにより、スライドファスナー用の金属製ファスナーエレメントを製造する製造方法に関する。

　スライドファスナーに用いられる金属製のファスナーエレメントの１つとして、例えば特許第４２１５６６０号公報（特許文献１）に記載されているファスナーエレメントが知られている。

　この特許文献１に記載されているファスナーエレメント７０は、図２３に示すように、噛合凸部７３を有する噛合頭部７１と、噛合頭部７１の一端（後端）から延出するテープ挟持部７２とを有する。また、このファスナーエレメント７０は、エレメント高さ方向（厚さ方向）の中心位置を基準にして上下方向に対称的な形状を有しており、噛合頭部７１の上面側と下面側とに噛合凸部７３がそれぞれ配される所謂両面エレメントとして形成されている。

　ファスナーエレメント７０の噛合頭部７１は、エレメント高さ方向の中央部に配される薄板状の平板部７４と、平板部７４の上面及び下面にそれぞれ突設される噛合凸部７３と、テープ挟持部７２から噛合頭部７１の先端に向けて突出する突出縁部７５とを有する。ファスナーエレメント７０のテープ挟持部７２は、噛合頭部７１に連結する挟持基端部７６と、挟持基端部７６から左右に分岐して延出する一対の脚部７７とを有する。

　なお、図２３に示したファスナーエレメント７０は、ファスナーテープに取り付けるために左右の脚部７７をエレメント幅方向の内側に向けて押圧して塑性変形させたときの形態で描かれている。ファスナーテープに取り付けられる前のファスナーエレメント７０（エレメント素材とも言う）は、図２３の形態よりも左右の脚部７７がエレメント幅方向の外側に少し開いた形態を有する。

　このような特許文献１のファスナーエレメント７０は、図２４に示すように、金属製の平板部材７９（平角線材とも言う）に対して打ち抜き加工を行うことにより、１つずつ連続的に製造される。この場合、平板部材７９は、図面の左側から右側に向けて一時的に停止しながら間欠的に移送される。

　この間欠的に移送される平板部材７９に対して、先ず、ファスナーエレメント７０の噛合頭部７１の形状を成形する押圧成形加工（プレス加工）が行われる。この押圧成形加工では、図２４の（Ａ）に示す領域において、停止している平板部材７９の所定の部位に対し、上方及び下方から成形パンチ（プレスパンチ）による押圧成形が行われる。これにより、平板部材７９に噛合頭部領域Ｅが成形される。この噛合頭部領域Ｅには、噛合頭部７１の平板部７４と噛合凸部７３とが形成される。

　次に、平板部材７９の噛合頭部領域Ｅが成形された部分を図２４の（Ｂ）に示す領域に移動させる。続いて、その平板部材７９に対し、ファスナーエレメント７０を形成しない不要部の一部を打ち抜く１回目の打ち抜き加工が行われる。これにより、平板部材７９の（Ｂ）の領域にハッチングで示される部分が切除される。

　その後、平板部材７９の１回目の打ち抜き加工が行われた部分を図２４の（Ｃ）に示す領域に移動させ、その平板部材７９に対し、ファスナーエレメント７０を形成しない残りの不要部を打ち抜く２回目の打ち抜き加工が行われる。これによって、図２４の（Ｄ）に示すように、ファスナーテープに取り付けられる前の特許文献１のファスナーエレメント７０（エレメント素材）が製造される。

　この特許文献１では、打ち抜き加工に用いる打ち抜きパンチとダイとの間に形成される隙間の大きさを所定の範囲内に設定することにより、ファスナーエレメント７０における噛合頭部７１の外側面の平滑度や、テープ挟持部７２の外側面の平滑度を増大させることができる。このため、ファスナーエレメント７０の品質を向上させることができる。

特許第４２１５６６０号公報

　図２４に示したような特許文献１におけるファスナーエレメント７０の製造方法の場合、ファスナーエレメント７０の噛合頭部７１とテープ挟持部７２とが、互いに別々の打ち抜き加工で形成されている。このため、ファスナーエレメント７０の噛合頭部７１とテープ挟持部７２との境界部に、突状のバリ又は段差が形成されることが考えられる。

　このようなファスナーエレメントに形成されるバリや段差などは、一般的にその後のファスナーエレメントの研磨工程等により取り除かれる。しかし、製造される大量のファスナーエレメントの中には、バリや段差などが十分に除去されずにファスナーエレメントに残ることも考えられる。その結果、製造されるスライドファスナーにおいて、ファスナーエレメントの肌触りや外観品質の低下を招く虞がある。

　ところで、近年、スライドファスナー用の金属製ファスナーエレメントとして、左右の脚部の先端部から内側に屈曲して更に後方に延出する左右のヒレ部がテープ挟持部に設けられたファスナーエレメントが用いられることがある。このようなファスナーエレメントに設けられる左右のヒレ部は、左右の脚部と同じエレメント高さ方向の寸法（以下、高さ寸法と略記する）をもって形成されるとともに、ファスナーエレメントを上方から見た平面視において、左右の脚部よりも細く形成される。

　ファスナーエレメントが上述のような左右のヒレ部を有することにより、ファスナーエレメントをファスナーテープに取り付けたときに、ファスナーエレメントの左右の脚部と左右のヒレ部とによってファスナーテープを挟持することができる。このため、ファスナーテープに対するファスナーエレメントの取付強度を高めることができる。また、スライドファスナーを形成したときに、スライダー（特にスライダーの上下フランジ部）がファスナーテープに直接摺接することをファスナーエレメントのヒレ部によって防止できる。このため、スライダーを繰り返し摺動させてもファスナーテープが傷付き難くなるため、ファスナーテープの耐久性を向上させることができる。

　一方、このようなファスナーエレメントにおける左右のヒレ部は、上述したように左右の脚部と同じ高さ寸法で形成されると同時に、平面視にて脚部よりも幅狭に形成される。このため、例えば図２４に示したような打ち抜き加工を金属製の平板部材に行って、左右のヒレ部を有するファスナーエレメントを製造する場合、打ち抜きパンチにおけるヒレ部を打ち抜く部分も、ヒレ部の平面視における形状に対応して必然的に細くなる。その結果、打ち抜きパンチの強度が局部的に低下し、打ち抜きパンチの破損が生じ易くなるため、打ち抜きパンチの交換頻度の増大を招く。

　また、打ち抜きパンチが金属製の平板部材を円滑に打ち抜くには、打ち抜きパンチのパンチ先端部に強度を持たせるために、パンチ先端部をある程度太く形成する必要がある。このため、一回の打ち抜き加工によって形成されるファスナーエレメントのヒレ部の太さを細くすることにも限界がある。

　更に、ファスナーエレメントのヒレ部を有するテープ挟持部を１回の打ち抜き加工で形成する場合、打ち抜きパンチによる押圧を平板部材が受けた際に、平板部材に生じる応力により、打ち抜かれるヒレ部に変形が生じ易くなる。このようにヒレ部が変形して所定の形状を備えないファスナーエレメントは不良品として扱われる。従って、ファスナーエレメントの歩留まりを向上させるためには、打ち抜き加工時にヒレ部に変形が生じ難いようにしてファスナーエレメントを製造することが求められている。

　本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、金属製の平板部材に打ち抜き加工が行われても、噛合頭部とテープ挟持部との境界部に突状のバリや段差が形成されることを防止し、噛合頭部からヒレ部の先端部にかけて滑らかな外側面を有するファスナーエレメントを製造可能なファスナーエレメントの製造方法を提供すること、更には、打ち抜きパンチの破損を生じさせ難くするとともに打ち抜き加工時にヒレ部の変形を生じさせ難くすることが可能なファスナーエレメントの製造方法を提供することにある。

　上記目的を達成するために、本発明により提供されるファスナーエレメントの製造方法は、長尺の金属製平板部材に対して打ち抜き加工を行うことにより、噛合頭部と、前記噛合頭部から一方向に延出するテープ挟持部とを有し、前記テープ挟持部は、前記噛合頭部に接続する挟持基端部と、前記挟持基端部から左右に分岐して延出する一対の脚部と、各脚部の先端部から延出するとともに前記脚部よりも平面視にて細く形成される左右のヒレ部とを有する金属製のファスナーエレメントを製造するファスナーエレメントの製造方法において、少なくとも２回の前記打ち抜き加工を行うこと、及び、１回の前記打ち抜き加工を、形成される前記噛合頭部の左右の外側面と前記テープ挟持部の左右の前記外側面とに沿って行うことを含んでなることを最も主要な特徴とするものである。

　このような本発明に係るファスナーエレメントの製造方法では、前記テープ挟持部の左右の外側面に沿って前記平板部材の一部を打ち抜く前記打ち抜き加工と、前記テープ挟持部の内側面に沿って前記平板部材の一部を打ち抜く前記打ち抜き加工とを別々に行うことが好ましい。

　また、本発明の製造方法は、前記打ち抜き加工として、前記平板部材の前記ファスナーエレメントを形成しない不要部の一部を打ち抜く一次打ち抜き加工を行うことにより、前記平板部材から前記不要部の一部を切除すること、及び、前記一次打ち抜き加工が行われた前記平板部材に対し、前記打ち抜き加工としてエレメント打ち抜き加工を行うことにより、前記平板部材から前記ファスナーエレメントを打ち抜くことを含むことが好ましい。

　この場合、前記一次打ち抜き加工を行うことにより、前記平板部材の前記不要部のうちの前記テープ挟持部の内側に配される内切除部分を切除すること、又は、前記一次打ち抜き加工を行うことにより、前記平板部材の前記不要部のうちの前記ファスナーエレメントの幅方向外側に配される外切除部分を切除することが好ましい。

　更に、本発明の製造方法では、前記エレメント打ち抜き加工において、前記平板部材を支持するダイと、前記ダイに対して昇降可能に配され、前記平板部材を押さえて前記ダイとの間で固定する押さえ部材と、前記ダイに対して昇降可能に配され、前記ダイ及び前記押さえ部材間に固定された前記平板部材から前記ファスナーエレメントを打ち抜くエレメント打ち抜きパンチとを用いることが好ましい。

　この場合、前記エレメント打ち抜きパンチは、前記平板部材に接触して前記ファスナーエレメントを打ち抜くパンチ先端部と、前記パンチ先端部の先端面よりも突出して配され、且つ、前記平板部材の前記一次打ち抜き加工で前記不要部として打ち抜かれた切除部分に挿入されて、前記ファスナーエレメントの変形を防止する変形防止突部とを有し、前記押さえ部材は、前記平板部材の上面に接触して前記平板部材を押さえる押さえ面を有することが好ましい。

　一方、前記エレメント打ち抜きパンチは、前記平板部材に接触して前記ファスナーエレメントを打ち抜くパンチ先端部を有し、前記押さえ部材は、前記平板部材の上面に接触して前記平板部材を押さえる押さえ面と、前記押さえ面よりも突出して配され、且つ、前記平板部材の前記一次打ち抜き加工で前記不要部として打ち抜かれた切除部分に挿入されて、前記ファスナーエレメントの変形を防止する変形防止突部とを有していても良い。

　また、本発明の製造方法では、前記打ち抜き加工として、前記平板部材の前記ファスナーエレメントを形成しない不要部の一部を打ち抜く複数回の打ち抜き加工を行うことにより、前記ファスナーエレメントを形成しても良い。
　更に、本発明の製造方法では、前記打ち抜き加工を行う前に、前記平板部材に前記ファスナーエレメントの前記噛合頭部の形状を成形する押圧成形加工を行うことが好ましい。

　本発明に係るファスナーエレメントの製造方法では、テープ挟持部に脚部よりも幅細の左右のヒレ部が設けられた金属製ファスナーエレメントを、平板部材に対して２回以上の打ち抜き加工を行うことにより製造する。これにより、ファスナーエレメントの左右のヒレ部を、少なくとも２回の打ち抜き加工に分けて形成することが可能となる。

　このように少なくとも２回の打ち抜き加工でヒレ部を形成することにより、ヒレ部の形成に用いる打ち抜きパンチを、ヒレ部の平面視における形状にそのまま対応させなくても良くなる。その結果、打ち抜きパンチの形状として、強度が局部的に低下するような形状を選択する必要がなくなり、各打ち抜き加工において用いられる打ち抜きパンチを、強度を安定して確保可能な形状で形成することができる。それにより、打ち抜きパンチの破損を生じ難くできるため、打ち抜きパンチの寿命を延ばすことができ、打ち抜きパンチの交換頻度が増大することも防止できる。

　また本発明では、少なくとも２回の打ち抜き加工でヒレ部を形成することが可能であるため、１回の打ち抜き加工でヒレ部を形成する場合に比べて、１回の打ち抜き加工でヒレ部が受ける応力の大きさを低減させ、１回の打ち抜き加工で平板部材に生じる金属材料の流動を小さく抑えることが可能となる。また、それぞれの打ち抜き加工で生じる金属材料の流れを異ならせることが可能となる。その結果、本発明では、１回の打ち抜き加工のみでヒレ部を形成する場合に比べて、打ち抜き加工時にヒレ部の変形が生じ難くなり、所定の形状を有する複数のファスナーエレメントを安定して製造できる。これにより、ファスナーエレメントの歩留まりの向上を図ることができる。

　更に本発明の製造方法では、少なくとも２回の打ち抜き加工を行ってファスナーエレメントを製造するものの、何れか１回の打ち抜き加工を、形成されるファスナーエレメントにおける噛合頭部の左右の外側面とテープ挟持部の左右の外側面とに沿って行うことにより、噛合頭部の左右の外側面とテープ挟持部の左右の外側面とを同時に形成する。特にこの場合、噛合頭部の先端部に配される外側面からヒレ部の外側面までのファスナーエレメントの左右の外側面の全体を１回の打ち抜き加工によって形成する。これにより、特許文献１におけるファスナーエレメントの製造方法のようにファスナーエレメントの噛合頭部とテープ挟持部との境界部に突状のバリや段差が形成されることを防止できる。その結果、噛合頭部の先端部（前端部）からヒレ部の先端部（後端部）にかけて滑らかな外側面を有し、良好な肌触りや外観品質を備えることが可能なファスナーエレメントを製造することができる。

　このような本発明の製造方法では、テープ挟持部の左右の外側面に沿って平板部材の一部を打ち抜く打ち抜き加工と、テープ挟持部の内側面に沿って平板部材の一部を打ち抜く打ち抜き加工とを別々に行うことにより、ファスナーエレメントにおけるテープ挟持部の左右の外側面とテープ挟持部の内側面とを別々の打ち抜き工程で形成する。これにより、それぞれの打ち抜き加工で用いる打ち抜きパンチを適切な強度を有するように形成できる。また、ヒレ部の平面視における太さをより細くしてファスナーエレメントを形成することも可能となる。

　また、本発明の製造方法において、平板部材に対する打ち抜き加工は、平板部材のファスナーエレメントを形成しない不要部の一部を平板部材から打ち抜いて切除する一次打ち抜き加工と、その一次打ち抜き加工が行われた平板部材からファスナーエレメントを打ち抜くエレメント打ち抜き加工とを有する。このような一次打ち抜き加工とエレメント打ち抜き加工の２回の打ち抜き加工を行うことにより、ファスナーエレメントを、平板部材から効率的に製造できるとともに、打ち抜きパンチの破損を生じ難くすることができる。

　この場合、上述の一次打ち抜き加工において、平板部材の不要部のうちのテープ挟持部の内側に配される内切除部分を切除する。これにより、打ち抜きパンチの破損を生じ難くして、細いヒレ部を有するファスナーエレメントを円滑に製造できる。また、ファスナーエレメントが打ち抜かれた後の平板部材の残存部分を簡単に回収することができる。

　一方本発明では、上述の一次打ち抜き加工において、平板部材の不要部のうちのファスナーエレメントの幅方向外側に配される外切除部分を切除しても良い。これによっても、打ち抜きパンチの破損を生じ難くして、細いヒレ部を有するファスナーエレメントを円滑に製造できる。

　本発明の製造方法では、一次打ち抜き加工後に行うエレメント打ち抜き加工において、平板部材を下面側から支持するダイと、そのダイに対して昇降可能に配される押さえ部材及びエレメント打ち抜きパンチとを用いる。この場合、押さえ部材を、ダイに近付くように下降させて平板部材に当接させることにより、平板部材を上面側から押さえて（押圧して）当該平板部材をダイとの間で一時的に固定する。続いて、エレメント打ち抜きパンチを、平板部材がダイと押さえ部材との間で固定されている状態でダイに近付くように下降させて、平板部材に強く接触（衝突）させる。これにより、その平板部材からファスナーエレメントを打ち抜くことができる。これらのダイ、押さえ部材、及びエレメント打ち抜きパンチを用いてエレメント打ち抜き加工を行うことにより、ヒレ部を備えた所定の形状を有するファスナーエレメントを、平板部材から安定して打ち抜いて形成することができる。

　この場合、エレメント打ち抜き加工に用いられるエレメント打ち抜きパンチが、平板部材に接触してファスナーエレメントを打ち抜くパンチ先端部と、パンチ先端部の先端面（下端面）よりも突出して配され、且つ、一次打ち抜き加工にて平板部材に形成される切除部分に挿入される変形防止突部とを有する。また、エレメント打ち抜き加工に用いられる押さえ部材は、平板部材の上面に接触して平板部材を押さえる押さえ面を有する。

　このような変形防止突部を備えたエレメント打ち抜きパンチと、平板部材で押さえ面で押さえて固定する押さえ部材とを用いて平板部材にエレメント打ち抜き加工を行うことにより、エレメント打ち抜き加工で打ち抜かれるファスナーエレメントの側面（内側面又は外側面）を、エレメント打ち抜きパンチの変形防止突部で安定して押さえることができる。このため、エレメント打ち抜き加工で打ち抜かれるファスナーエレメントの変形（特に、左右のヒレ部の変形）をより効果的に小さく抑えることができる。

　一方、本発明の製造方法では、エレメント打ち抜き加工に用いられるエレメント打ち抜きパンチが、平板部材に接触してファスナーエレメントを打ち抜くパンチ先端部を有する。また、エレメント打ち抜き加工に用いられる押さえ部材は、平板部材の上面に接触して平板部材を押さえる押さえ面と、押さえ面よりも突出して配され、且つ、一次打ち抜き加工にて平板部材に形成される切除部分に挿入される変形防止突部とを有する。

　このようなエレメント打ち抜きパンチと、変形防止突部を備えた押さえ部材とを用いて平板部材にエレメント打ち抜き加工を行うことによっても、エレメント打ち抜き加工で打ち抜かれるファスナーエレメントの側面（内側面又は外側面）を、押さえ部材の変形防止突部で安定して押さえることができる。このため、エレメント打ち抜き加工で打ち抜かれるファスナーエレメントの変形（特に、左右のヒレ部の変形）をより効果的に小さく抑えることができる。

　また、本発明の製造方法では、打ち抜き加工として、平板部材のファスナーエレメントを形成しない不要部の一部を打ち抜く複数回の打ち抜き加工を行って、ファスナーエレメントを形成しても良い。これによって、平板部材からファスナーエレメントを打ち抜くエレメント打ち抜き加工を行わなくても、細いヒレ部を有するファスナーエレメントを円滑に製造できる。また、打ち抜きパンチの破損も生じ難くすることができる。

　更に、本発明の製造方法では、打ち抜き加工を行う前に、平板部材にファスナーエレメントの噛合頭部の形状を成形する押圧成形加工を行う。これにより、噛合頭部が所定の形状を有するファスナーエレメントを１つずつ連続的に安定して製造することができる。

本発明の実施例１において平板部材からファスナーエレメントを製造する方法を模式的に説明する説明図である。実施例１の成形パンチの一部を模式的に示す斜視図である。実施例１のエレメント打ち抜きパンチの一部を模式的に示す斜視図である。エレメント打ち抜きパンチの側面図である。エレメント打ち抜きパンチの要部を拡大して模式的に示す要部拡大図である。実施例１の押さえ部材を模式的に示す側面図である。エレメント打ち抜き加工を模式的に説明する断面図である。平板部材から打ち抜かれるファスナーエレメントとエレメント打ち抜きパンチとの関係を模式的に示す斜視図である。実施例１で製造されるファスナーエレメントを示す斜視図である。ファスナーエレメントをエレメント上方側から見た平面図である。ファスナーエレメントをエレメント側方側から見た側面図である。図１０に示したＸＩＩ－ＸＩＩ線における断面図である。ファスナーエレメントがファスナーテープに取り付けられた状態を示す部分断面図である。実施例１の変形例に係るエレメント打ち抜きパンチの一部を模式的に示す斜視図である。実施例１の変形例に係る押さえ部材を模式的に示す側面図である。実施例１の変形例においてエレメント打ち抜き加工を模式的に説明する断面図である。実施例１の変形例において平板部材から打ち抜かれるファスナーエレメント、エレメント打ち抜きパンチ、及び押さえ部材の関係を模式的に示す斜視図である。本発明の実施例２において平板部材からファスナーエレメントを製造する方法を模式的に説明する説明図である。実施例２のエレメント打ち抜きパンチを模式的に示す底面図である。実施例２で製造されるファスナーエレメントのヒレ部における断面図である。本発明の実施例３において平板部材からファスナーエレメントを製造する方法を模式的に説明する説明図である。実施例３で製造されるファスナーエレメントのヒレ部における断面図である。従来の金属製ファスナーエレメントを示す斜視図である。従来のファスナーエレメントの製造方法を模式的に説明する説明図である。

　以下、本発明の好適な実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。

　例えば、以下の実施例１～実施例３において製造されるファスナーエレメントは、後述するような所定の形状を備えた噛合頭部を有する。しかし、本発明において製造されるファスナーエレメントの噛合頭部の形状は限定されず、任意に変更することが可能である。また、以下の実施例１～実施例３において、平板部材からファスナーエレメントを製造するときに、ファスナーエレメントが平板部材の搬送方向に沿った向きで形成されるように押圧成形加工と各打ち抜き加工とを行うが、本発明において、平板部材に対して押圧成形加工及び打ち抜き加工を行うファスナーエレメントの向きは特に限定されない。

　図１は、本実施例１において平板部材からファスナーエレメントを製造する方法を模式的に説明する説明図である。図２は、本実施例１の成形パンチの一部を模式的に示す斜視図である。図３、図４及び図５は、本実施例１で用いられるエレメント打ち抜きパンチを模式的に示す斜視図、側面図及び要部拡大図である。また、図９は、本実施例１で製造されるファスナーエレメントを示す斜視図である。

　なお、以下の説明において、製造工程における前後方向とは、ファスナーエレメントの製造工程で搬送される金属製平板部材の長さ方向を言い、特に平板部材の搬送における下流側の方向を後方とし、上流側の方向を前方とする。製造工程における左右方向及び上下方向とは、金属製平板部材の幅方向及び高さ方向（厚さ方向）をそれぞれ言う。

　また、ファスナーエレメント自体に関し、前後方向とは、エレメント長さ方向を言い、ファスナーエレメントをファスナーテープに取着したときのテープ幅方向となる向きを言う。特に本実施例１の場合、製造工程の前後方向とファスナーエレメントの前後方向とは、互いに同じ方向となる。ファスナーエレメントの左右方向及び上下方向とは、それぞれエレメント幅方向及びエレメント高さ方向を言い、ファスナーエレメントをファスナーテープに取着したときのテープ表裏方向及びテープ長さ方向となる向きを言う。

　本実施例１の製造方法では、金属製の平板部材５を一方の方向に間欠的に搬送しながら、その平板部材５に対して、後述する押圧成形加工と２回の打ち抜き加工を所定の位置（領域）でそれぞれ行うことにより、図９～図１２に示すファスナーエレメント１０が１つずつ連続的に製造される。

　ここで、本実施例１の製造方法により製造されるファスナーエレメント１０は、噛合頭部１１と、噛合頭部１１の一端部（後端部）から段差部２０を介して延出するテープ挟持部２１とを有する。このファスナーエレメント１０は、噛合頭部１１の上面側と下面側とにそれぞれ後述する左右一対の噛合凸部１４が設けられる所謂両面エレメントとして形成されており、エレメント高さ方向の中心位置を基準にして上下方向に対称的な形状を有する。

　噛合頭部１１は、上下方向の中央部に配される薄板状の平板部１２と、平板部１２の上面及び下面にそれぞれ突設される中央突起部１３及び左右一対の噛合凸部１４と、左右一対の噛合凸部１４間に配されるとともに平板部１２の上面及び下面から上下方向に盛り上がって形成される隆起部１５とを有する。

　また、この噛合頭部１１には、左右の噛合凸部１４間に配される挿入溝部１６と、中央突起部１３の左右両側に配される左右の挿入凹部１７とが形成される。この場合、左右の挿入凹部１７は、噛合凸部１４と、中央突起部１３と、テープ挟持部２１とに囲まれて形成される。各ファスナーエレメント１０の噛合頭部１１に設けられる上述のような挿入溝部１６と左右の挿入凹部１７とには、スライドファスナーにおいて左右のエレメント列を噛み合わせたときに、噛合相手側のファスナーエレメント１０の中央突起部１３と左右の噛合凸部１４とがそれぞれ挿入される。

　ファスナーエレメント１０のテープ挟持部２１は、噛合頭部１１に接続する挟持基端部２２と、挟持基端部２２から左右に分岐して後方に延出する左右一対の脚部２３と、各脚部２３の後端部（先端部）から内側に屈曲して更に後方に延出する左右のヒレ部２４とを有する。

　この場合、テープ挟持部２１の上面及び下面は、噛合頭部１１における中央突起部１３の上面及び下面と連続する単一の平端面に形成される。また、テープ挟持部２１のエレメント高さ方向の寸法（高さ寸法）は、噛合頭部１１の平板部１２の高さ寸法よりも大きく設定されている。更に、このテープ挟持部２１における挟持基端部２２、脚部２３、及びヒレ部２４は、高さ寸法を一定の大きさにして形成される。

　左右の脚部２３は、エレメント幅方向における中心位置を基準にして、互いに左右対称的に形成される。左右の脚部２３は、ファスナーエレメント１０が後述するようにファスナーテープ２９に取り付けられる前の状態において、左右の脚部２３間のエレメント幅方向における間隔が後方に向けて漸増するように、挟持基端部２２からエレメント長さ方向に対して外側に傾斜する方向に延びている。この場合、噛合頭部１１の平板部１２における左右の外側面と、挟持基端部２２における左右の外側面と、左右の脚部２３の外側面とは、突状のバリや段差がない滑らかな一面を形成するように連続して配されている。

　左右のヒレ部２４は、左右の脚部２３の先端部における内側面から内側に向けて延出し、更に、脚部２３の延出方向と略同じ方向に屈曲して延出している。また、左右のヒレ部２４は、互いに対向するように配される内側面と、内側面の反対側に配される外側面とをそれぞれ有する。本実施例１において、ヒレ部２４の外側面は、脚部２３の外側面と平行に配される。ヒレ部２４の内側面は、ヒレ部２４の外側面に対して、内側面と外側面間の寸法がヒレ部２４の先端に向けて漸減するように傾斜して配される。

　本実施例１のファスナーエレメント１０において、ヒレ部２４のエレメント幅方向における寸法（以下、幅寸法と略記する）Ｗ１は、脚部２３の幅寸法Ｗ２よりも小さく設定される。なお、ここで言うヒレ部２４の幅寸法Ｗ１及び脚部２３の幅寸法Ｗ２は、図１３に示したようにファスナーエレメント１０がファスナーテープ２９に取り付けられた状態におけるエレメント幅方向の寸法（テープ表裏方向の寸法）を言うこととする。また、ファスナーエレメント１０をファスナーテープ２９に取り付けた状態とは、ファスナーエレメント１０の左右の脚部２３を内側に向けて押圧して、左右の脚部２３の外側面が互いに平行となるようにファスナーエレメント１０を塑性変形させた後の状態と言い換えることができる。

　この場合、ヒレ部２４の幅寸法Ｗ１の最大値は、脚部２３の幅寸法Ｗ２の最小値よりも小さく設定され、好ましくは脚部２３の幅寸法Ｗ２の最小値の８０％以下に設定される。また具体的には、ヒレ部２４の幅寸法Ｗ１の最大値は、０．８ｍｍ以下に、好ましくは０．５ｍｍ以下に設定される。

　このような小さな幅寸法Ｗ１を有する左右のヒレ部２４が配されるファスナーエレメント１０を、例えば金属製の平板部材５から１回の打ち抜き加工で打ち抜いて製造する場合、その打ち抜き加工に用いられる打ち抜きパンチのヒレ部２４を打ち抜く部分も局部的に細くなる。このため、打ち抜きパンチの当該部分の強度も局部的に低下し、打ち抜きパンチの破損が生じ易くなることが考えられる。

　これに対して、本実施例１では、ファスナーエレメント１０のヒレ部２４の内側面に沿って打ち抜き加工を行ってヒレ部２４の内側面を形成する打ち抜き工程（一次打ち抜き工程）と、ヒレ部２４の外側面に沿って打ち抜き加工を行ってヒレ部２４の外側面を形成する打ち抜き工程（エレメント打ち抜き工程）とを、後述するように順番に別々に行う。このため、それぞれの打ち抜き加工で用いられる打ち抜きパンチ（ブランキングパンチとも言う）の破損を生じ難くすることができる。

　以下に、本実施例１の上述したファスナーエレメント１０を製造する製造方法について具体的に説明する。

　予め、複数のファスナーエレメント１０が打ち抜かれる金属製の平板部材５（平角線材とも言う）を準備する。この平板部材５は、ファスナーエレメント１０を形成する銅合金、ニッケル合金、アルミニウム合金等の金属により形成される。また、平板部材５は、長さ方向に直交する横断面が矩形を呈するとともに、長さ方向に長尺に形成されている。

　本実施例１において、平板部材５の横断面は、一方の方向（幅方向）に長い長方形を呈し、且つ、平板部材５の長さ方向の全体に亘って一定の大きさ及び形状を有する。更に、平板部材５は、ファスナーエレメント１０のテープ挟持部２１における高さ寸法に等しい大きさの高さ寸法（厚さ寸法）を有する。なお、本発明において、平板部材５の形状及び寸法は特に限定されないが、ファスナーエレメント１０の製造に用いられる平板部材５は、部材の上面（表面）と下面（裏面）が互いに平行な平面に形成され、且つ、一つの方向に長尺な金属製の部材であることが好ましい。

　本実施例１で準備した平板部材５は、図示しない搬送装置を用いて、移動と停止とを繰り返しながら搬送方向の下流側（後方）に向けて（図１の左から右に向けて）、間欠的に搬送される。この場合、平板部材５の搬送速度、一回の移動の移動距離、停止時間などの搬送条件については、任意に設定することができる。

　また、平板部材５におけるファスナーエレメント１０が打ち抜かれた後の部分（残部）は、更に後方に搬送され、図示しない回収装置により回収される。なお本実施例１において、平板部材５の搬送方法や搬送手段（搬送装置）、また、エレメント打ち抜き後の平板部材５の回収方法や回収手段は特に限定されるものではなく、従来の一般的な方法及び手段を利用することが可能である。

　この場合、平板部材５は、図示しない搬送装置によって、その平板部材５の上面（表面）及び下面（裏面）が、押圧成形加工に用いられる成形パンチ３０の昇降方向、及び各打ち抜き加工に用いられるエレメント打ち抜きパンチ４０の昇降方向に直交するようにして、直線状にまっすぐに搬送される。

　本実施例１の製造方法では、先ず、搬送装置により間欠的に搬送される平板部材５に対し、ファスナーエレメント１０の噛合頭部１１の形状を成形する押圧成形工程（頭出し成形工程とも言う）を行う。この押圧成形工程では、平板部材５の被加工部分となるエレメント部位を、押圧成形加工が行われる図１の加工領域１Ａに移送し、平板部材５の当該エレメント部位に対して、上下一対の成形パンチ３０を用いて押圧成形加工を行う。

　ここで、平板部材５の上方に配される上側の成形パンチ３０の一部を図２に示す。なお、平板部材５の下方に配される下側の成形パンチは、上側の成形パンチ３０と上下方向に対称的な形状を有する。このため、下側の成形パンチについての詳細な説明は省略することとする。

　この押圧成形加工に用いる上側成形パンチ３０には、平板部材５を局部的に押圧して塑性変形させる押圧部３１が、その成形パンチ３０の先端部（下端部）に設けられている。この上側成形パンチ３０の押圧部３１は、ファスナーエレメント１０の上述した噛合頭部１１の形状を平板部材５の上面部に成形可能なように、噛合頭部１１の凹凸形状に対応する形状を有する。

　具体的に説明すると、上側成形パンチ３０の押圧部３１は、平板部材５に衝突させる押圧先端面３２を有する。この押圧先端面３２は、ファスナーエレメント１０の平面視における噛合頭部１１の平板部１２よりも一回り大きくして形成される。

　上側成形パンチ３０の押圧部３１には、ファスナーエレメント１０の左右の噛合凸部１４の形状を成形するための左右一対の第１凹部３３と、ファスナーエレメント１０の中央突起部１３の形状を成形する第２凹部３４と、ファスナーエレメント１０の隆起部１５の形状を成形する第３凹部３５とが、ファスナーエレメント１０の各部分の位置及び形状に対応する所定の位置及び形状で、押圧先端面３２から凹設されている。

　本実施例１では、上述のような形状を有する上下一対の成形パンチ３０を用いて平板部材５に押圧成形加工を行う。すなわち、上下の成形パンチ３０を平板部材５に向けて上下方向に沿って移動させ、成形パンチ３０の押圧部３１で平板部材５を高さ方向の内側に向けて押圧することにより、平板部材５の一部を塑性変形させる。このとき、例えば図示しない支持部材と押さえ部材を用いて、平板部材５を上下方向から挟持して一時的に固定した状態で上述の押圧成形加工を行うことが好ましい。これにより、図１に示すように、平板部材５の上面と下面とに、噛合頭部１１の形状を備える頭部成形部６が形成される。

　上述のように噛合頭部１１の押圧成形加工を平板部材５の一部に行った後、平板部材５を所定の距離で搬送し停止させる。更に、平板部材５の停止後、加工領域１Ａにおいて上述の押圧成形加工を再度行うことにより、先に成形した頭部成形部６の上流側（前方）に、噛合頭部１１の形状を有する頭部成形部６が、所定の距離で離れた位置に形成される。以下、平板部材５の間欠的な搬送と、上述の押圧成形加工とを繰り返して行うことにより、平板部材５に複数の頭部成形部６が平板部材５の長さ方向に沿って所定のピッチで形成される。

　続いて、平板部材５の頭部成形部６が形成されたエレメント部位（被加工部分）を、平板部材５の間欠的な搬送によって下流側に移動させることにより、一次打ち抜き加工を行う図１の加工領域１Ｂに搬送する。この加工領域１Ｂでは、平板部材５のファスナーエレメント１０を形成しない不要部の一部を打ち抜く一次打ち抜き加工を行う。

　なお、本実施例１では、押圧成形工程において加工領域１Ａで平板部材５に頭部成形部６を形成したエレメント部位を、上述の間欠的な搬送によって下流側に１回移動させて加工領域１Ｂに送った後に、当該エレメント部位に対して一次打ち抜き加工が行われる。しかし本発明では、押圧成形工程で頭部成形部６を形成したエレメント部位を、上述の間欠的な搬送によって下流側に複数回移動させてから、一次打ち抜き加工を行うことも可能である。言い換えると、押圧成形工程と一次打ち抜き工程と間に、何の加工も行わない非加工領域を設けることも可能である。

　本実施例１の一次打ち抜き工程では、図示しない一次打ち抜きパンチと、その一次打ち抜きパンチに対応する空間部を備えた図示しない一次打ち抜きダイとを用いて、平板部材５の所定部分（後述する内切除部分７）を打ち抜いて切除する一次打ち抜き加工を行う。一次打ち抜き加工では、一次打ち抜きダイに載置された平板部材５のエレメント部位に対し、図示しない一次打ち抜きパンチを上方から下降させて平板部材５に衝突させることにより、平板部材５の内切除部分７が切り抜かれる。

　一次打ち抜き工程で用いる図示しない一次打ち抜きパンチは、平板部材５の所定部位に上面側から強く接触させて剪断加工を行うパンチ先端部を有する。一次打ち抜きパンチのパンチ先端部は、上下方向に直交する断面が平板部材５を打ち抜く部分と同じ形状を有するように形成される。

　本実施例１の場合、一次打ち抜き加工によって、平板部材５におけるファスナーエレメント１０のテープ挟持部２１よりも内側の内切除部分７を切除するため、一次打ち抜きパンチのパンチ先端部は、上下方向に直交する断面が平板部材５の内切除部分７に対応する形状を有するように形成される。一次打ち抜きパンチのパンチ先端部が上述のような形状に形成されることにより、そのパンチ先端部の強度が適切に確保され、平板部材５に一次打ち抜き加工が繰り返し行われても、一次打ち抜きパンチのパンチ先端部に破損を生じ難くすることができる。

　本実施例１の一次打ち抜き工程では、上述のような図示しない一次打ち抜きパンチを下降させて、そのパンチ先端部を、形成されるテープ挟持部２１の内側面（内周面）に沿うようにして平板部材５に上面側から衝突させる。これにより、平板部材５における不要部（ファスナーエレメント１０を形成する部分以外の部分）の一部として、上述した内切除部分７が打ち抜かれて切除される。

　このような一次打ち抜き加工を行うことにより、エレメント部位のテープ挟持部２１となる部分の内側面（すなわち、形成されるファスナーエレメント１０の挟持基端部２２、左右の脚部２３、及び左右のヒレ部２４の各内側面）が形成される。また、一次打ち抜き加工によって平板部材５から打ち抜かれた内切除部分７は、平板部材５の搬送路の下方に設置された回収ボックスに落下して回収される。なお、この一次打ち抜き加工を行う際には、例えば図示しない支持部材と押さえ部材を用いて、平板部材５を上下方向から挟持して一時的に固定することが好ましい。

　次に、上述の一次打ち抜き工程において内切除部分７が切除されたエレメント部位を、平板部材５の間欠的な搬送によって下流側に移動させることにより、エレメント打ち抜き加工を行う加工領域１Ｃに移送する。この加工領域１Ｃでは、平板部材５からファスナーエレメント１０を１つずつ打ち抜くエレメント打ち抜き加工を行う。本実施例１では、一次打ち抜き工程によって内切除部分７が切除されたエレメント部位が、図示しない搬送装置による間欠的な搬送によって移動と停止が３回繰り返し行われた後に、その停止した位置（加工領域１Ｃ）でエレメント打ち抜き工程が行われる。

　すなわち、本実施例１の一次打ち抜き加工とエレメント打ち抜き加工との間には、移動と停止の間欠的な搬送のみが行われ、何の加工も行わない２つの非加工領域が設けられる。例えば、一次打ち抜き加工やエレメント打ち抜き加工を平板部材５に行うときに、その平板部材５には強い衝撃が生じたり、金属材料の流動が生じたりする。従って、一次打ち抜き加工とエレメント打ち抜き加工との間に上述のような１つ又は複数の非加工領域を設けることにより、一次打ち抜き加工とエレメント打ち抜き加工とが平板部材５の異なる部位に対して同時に行われても、打ち抜き加工時に生じる強い衝撃や材料の流動に起因して、それぞれの打ち抜き加工が、他方の打ち抜き加工に与える影響を小さく抑えることが可能となる。

　なお本発明において、一次打ち抜き加工とエレメント打ち抜き加工との間に上述のような非加工領域を設けるか否かは任意に選択できる。すなわち、本発明では、一次打ち抜き加工とエレメント打ち抜き加工との間に非加工領域を設けずに、一次打ち抜き加工が行われたエレメント部位を、間欠的な搬送によって下流側に１回移動させた後に、エレメント打ち抜き加工を行うことが可能である。また、一次打ち抜き加工が行われたエレメント部位を、間欠的な搬送によって下流側に２回又は４回以上の任意の回数で移動させた後にエレメント打ち抜き加工を行うことも可能である。

　本実施例１のエレメント打ち抜き工程では、平板部材５を支持するエレメント打ち抜きダイ８０（単に「ダイ」と略記することもある）と、エレメント打ち抜きダイ８０に対して上下方向に移動可能（昇降可能）な図３～図５に示したエレメント打ち抜きパンチ４０と、エレメント打ち抜きダイ８０に対して上下方向に移動可能な図６に示した押さえ部材６０とを用いて、図９～図１２に示したファスナーエレメント１０を平板部材５から打ち抜くエレメント打ち抜き加工を行う。

　エレメント打ち抜きダイ８０は、例えば図７に示すように、平板部材５の下に配されており、エレメント打ち抜き加工を行う際に平板部材５の少なくともエレメント部位又はその近傍を載置し、当該エレメント部位をその下面（裏面）側から支持する。このエレメント打ち抜きダイ８０には、上下方向に沿って貫通する貫通孔部が設けられている。

　エレメント打ち抜きダイ８０の貫通孔部は、当該貫通孔部の上下方向に直交する断面が、エレメント打ち抜きパンチ４０（パンチ先端部４１及び変形防止突部４２）の上下方向に直交する断面に対応して形成されている。これにより、エレメント打ち抜き加工を行う際に、エレメント打ち抜きダイ８０の貫通孔部の内部に、エレメント打ち抜きパンチ４０の後述するパンチ先端部４１及び変形防止突部４２を進入させることが可能であり、且つ、平板部材５から打ち抜かれたファスナーエレメント１０を、当該貫通孔部を介してそのまま落下させることが可能となる。

　図３～図５に示したエレメント打ち抜きパンチ４０は、平板部材５の所定の部位に強く接触させて剪断加工を行うパンチ先端部４１と、パンチ先端部４１の先端面よりも突出して配される変形防止突部４２とを有する。エレメント打ち抜きパンチ４０のパンチ先端部４１は、下方からみたときのパンチ先端面の外形が、ファスナーエレメント１０の平面視におけるファスナーエレメント１０の外形と同じ形状となるように形成されている。

　また、エレメント打ち抜きパンチ４０のパンチ先端部４１は、平板部材５の噛合頭部１１となる部分に接触する前側打ち抜き部（頭部側打ち抜き部）４３と、平板部材５のテープ挟持部２１となる部分に接触する後側打ち抜き部（挟持部側打ち抜き部）４４とを有する。前側打ち抜き部４３と後側打ち抜き部４４との間には、ファスナーエレメント１０の段差部２０に対応する段差部４５が設けられている。

　この場合、パンチ先端部４１の前側打ち抜き部４３には、ファスナーエレメント１０の左右の噛合凸部１４となる部分が収容される左右一対の第１凹部４６と、ファスナーエレメント１０の中央突起部１３となる部分が収容される第２凹部４７と、ファスナーエレメント１０の隆起部１５となる部分が収容される第３凹部４８とが、ファスナーエレメント１０の各部位の位置及び形状に対応して所定の位置及び形状で設けられている。パンチ先端部４１の後側打ち抜き部４４は、エレメント打ち抜きパンチ４０を下方からみたときに、ファスナーエレメント１０の平面視におけるテープ挟持部２１の形状と同じ形状を有する。

　エレメント打ち抜きパンチ４０の変形防止突部４２は、パンチ先端部４１の先端面よりも下方に突出して配されている。この場合、変形防止突部４２におけるパンチ先端部４１の先端面から突出する突出長さは、平板部材５の上下方向における寸法（以下、厚さ寸法と略記する）よりも大きく、すなわち、ファスナーエレメント１０のテープ挟持部２１の厚さ寸法よりも大きく設定される。この変形防止突部４２は、エレメント打ち抜きパンチ４０を下方からみたときの形状が一次打ち抜き加工で切除された内切除部分７に挿入可能な形状（好ましくは内切除部分７と同じ又は略同じ形状）を有するとともに、内切除部分７と同じ大きさ又は内切除部分７よりも僅かに小さい大きさで形成される。

　上述のようなエレメント打ち抜きパンチ４０の変形防止突部４２は、エレメント打ち抜きパンチ４０が平板部材５の上方から下降するときに、エレメント打ち抜きパンチ４０のパンチ先端部４１が平板部材５に衝突するよりも前に、平板部材５の上述した内切除部分７が打ち抜かれた部分に挿入される。更に、その挿入された変形防止突部４２は、平板部材５におけるファスナーエレメント１０のテープ挟持部２１となる部分の内側面に接する。これにより、エレメント打ち抜きパンチ４０で平板部材５からファスナーエレメント１０を打ち抜くときに、ファスナーエレメント１０のテープ挟持部２１を内側面側から支えて、エレメント打ち抜き時にテープ挟持部２１に変形が生じること、特にテープ挟持部２１のヒレ部２４に変形が生じることを効果的に防止できる。

　更に、本実施例１におけるエレメント打ち抜きパンチ４０のパンチ先端部４１は、内側に配される変形防止突部４２に連結されて一体的に形成されている。このため、エレメント打ち抜きパンチ４０のパンチ先端部４１の強度が適切に確保され、平板部材５にエレメント打ち抜き加工が繰り返し行われても、エレメント打ち抜きパンチ４０のパンチ先端部４１に破損を生じ難くすることができる。

　図６に示した押さえ部材６０は、平板部材５の上面（表面）に当接して平板部材５を上から押さえる押さえ面６１と、押さえ面６１から下方に突出する押さえ突起部６２とを有する。また、押さえ部材６０には、上下方向に沿って移動するエレメント打ち抜きパンチ４０が挿通可能な挿通孔部６３が、上下方向に沿って形成されている。このような押さえ部材６０が平板部材５を上側から所定の力で押圧して押さえることにより、押さえ部材６０とエレメント打ち抜きダイ８０とが協働して、平板部材５を一時的に動かないように固定することができる。

　この場合、押さえ部材６０の押さえ面６１は、上下方向に対して直交する平坦面に形成されている。押さえ部材６０の押さえ突起部６２は、平板部材５に形成された頭部成形部６内に進入し、当該頭部成形部６のうちのファスナーエレメント１０として打ち抜かれない残りの部分に当接して、その残りの部分を上から押さえることが可能に形成されている。このような押さえ突起部６２を押さえ部材６０が有することにより、押さえ部材６０で平板部材５を所定の位置でより適切に上面側から押さえて固定することができる。その結果、エレメント打ち抜きパンチ４０によってファスナーエレメント１０の所定の部位を安定して打ち抜くことができる。また、押さえ部材６０に形成される挿通孔部６３の上下方向に直交する断面は、エレメント打ち抜きパンチ４０の上下方向に直交する断面に対応する形状を有する。

　本実施例１のエレメント打ち抜き加工では、先ず、加工領域１Ｃに移動した平板部材５のエレメント部位及びその近傍を押さえ部材６０で上から押さえ付けることにより、平板部材５を押さえ部材６０とエレメント打ち抜きダイ８０とで上下方向から所定の力で挟持して一時的に固定する。

　次に、エレメント打ち抜きパンチ４０を押さえ部材６０の挿通孔部６３を介して下降させて、エレメント打ち抜きパンチ４０の変形防止突部４２を平板部材５の内切除部分７内に挿入し、変形防止突部４２の外周面を、平板部材５における内切除部分７の上下方向に平行な内壁面（切断面）に接触又は近接させる。ここで、近接させるとは、変形防止突部４２の外周面が、平板部材５の上記内壁面に接触しないものの、変形防止突部４２の外周面と平板部材５の上記内壁面との間に形成される隙間が極めて小さくなる（例えば０．５ｍｍ以下となる）ように配されることを言う。

　更に、変形防止突部４２を平板部材５の内切除部分７内に挿入した後、エレメント打ち抜きパンチ４０を続けて下降させ、そのパンチ先端部４１を平板部材５の上面に強く衝突させる。このとき、エレメント打ち抜きパンチ４０のパンチ先端部４１を、平板部材５に対して、噛合頭部１１の先端面および左右の外側面の位置と、テープ挟持部２１の左右の外側面の位置とに沿うようにして衝突させる。これにより、図７及び図８に示すように、平板部材５から図９～図１２に示したファスナーエレメント１０が打ち抜かれて形成される。なお、図８では、エレメント打ち抜きパンチ４０、平板部材５、及びファスナーエレメント１０の関係を判り易く図示するために、エレメント打ち抜きダイ８０及び押さえ部材６０の図示が省略されている。

　特に本実施例１では、このエレメント打ち抜き加工によって、１つのファスナーエレメント１０における噛合頭部１１の左右の外側面とテープ挟持部２１の左右の外側面とが同時に形成される。すなわち、本実施例１では、１回のエレメント打ち抜き加工によって噛合頭部１１の先端部（前端部）からヒレ部２４の先端部（後端部）まで配されるファスナーエレメント１０の左右の連続する外側面が同時に形成される。

　その結果、ファスナーエレメント１０の噛合頭部１１とテープ挟持部２１との境界部に突状のバリや段差が形成されることを防止できる。このため、ファスナーエレメント１０の左右の外側面を、噛合頭部１１の先端部（前端部）からヒレ部２４の先端部（後端部）まで、滑らかで綺麗な連続面に仕上げることができる。

　上述のエレメント打ち抜き加工によって平板部材５から打ち抜かれたファスナーエレメント１０は、エレメント打ち抜きダイ８０の下方に設置された回収ボックスに落下して回収される。このようなエレメント打ち抜き加工を、平板部材５の上述した間欠的な搬送における停止のタイミングに合わせて行うことにより、同じ形状を有する複数のファスナーエレメント１０を１つずつ連続的に製造することができる。

　ファスナーエレメント１０を打ち抜いたエレメント打ち抜きパンチ４０を上昇させた後、平板部材５のファスナーエレメント１０が打ち抜かれた後の残部は、押さえ部材６０を上昇させることにより押さえ部材６０とエレメント打ち抜きダイ８０とによる平板部材５の一時的な固定を解除する。その後、平板部材５の間欠的な搬送によって下流側に送られることにより、上述したように図示しない回収装置によって回収される。これにより、平板部材５の残部を容易に回収して再利用することが可能となる。

　なお、上述のようにして平板部材５から打ち抜かれて製造された複数のファスナーエレメント１０は、その後、例えば処理容器（バレル）内に投入されて研磨処理が施されることによって、ファスナーエレメント１０に光沢を付与することができる。また本実施例１では、形成された複数のファスナーエレメント１０に塗装処理やメッキ処理なども行うことができる。それによって、ファスナーエレメント１０に所望の色彩を付与してファスナーエレメント１０の外観品質を更に高めることや、ファスナーエレメント１０の耐食性を向上させることが可能である。

　上述した本実施例１の製造方法によれば、図示しない一次打ち抜きパンチ及びエレメント打ち抜きパンチ４０の破損を生じ難くして、ヒレ部２４が所定の形状を有するファスナーエレメント１０を安定して製造することができる。また、本実施例１の製造方法では、１回の押圧成形加工と２回の打ち抜き加工を平板部材５に行うことによってファスナーエレメント１０を製造できるため、例えば後述する実施例３のように１回の押圧成形加工と３回の打ち抜き加工を平板部材５に行う製造方法に比べて、ファスナーエレメント１０を効率的に製造することができる。

　また、本実施例１の製造方法によって製造された複数のファスナーエレメント１０では、ファスナーエレメント１０の左右の外側面が、１回のエレメント打ち抜き加工で形成されており、滑らかで綺麗な連続面に仕上げられる。このため、ファスナーエレメント１０を後述するようにファスナーテープ２９に取り付けてファスナーストリンガー２８を形成したときに、ファスナーエレメント１０が良好な肌触りや優れた外観品質を備えることができる。

　更に、本実施例１のファスナーエレメント１０では、ファスナーエレメント１０の後端部に細く設けられるヒレ部２４の内側面と外側面とが、上述したように、一次打ち抜き加工とエレメント打ち抜き加工の別々の打ち抜き加工を行って形成される。これによって、本実施例１で製造されるファスナーエレメント１０の左右のヒレ部２４は、例えば１回の打ち抜き加工のみでヒレ部の内側面と外側面とを形成する場合に比べて、平面視における太さをより細くして形成することが可能である。

　その上、本実施例１のエレメント打ち抜き加工に用いられるエレメント打ち抜きパンチ４０は、上述した変形防止突部４２を有する。このため、エレメント打ち抜きパンチ４０でエレメント打ち抜き加工を行う際に、エレメント打ち抜きパンチ４０の変形防止突部４２が、打ち抜かれる予定のファスナーエレメント１０のテープ挟持部２１の内側面に接触（又は近接）する。それによって、エレメント打ち抜き時にファスナーエレメント１０のテープ挟持部２１に変形が生じることを、特にファスナーエレメント１０の左右のヒレ部２４に変形が生じることを、より効果的に防止できる。従って、本実施例１で製造される複数のファスナーエレメント１０では、何れのファスナーエレメント１０もヒレ部２４が同じような形状を安定して有することができ、複数のファスナーエレメント１０間においてヒレ部２４の形状にバラつきが生じることを効果的に防止できる。

　特に本実施例１のファスナーエレメント１０では、左右の脚部２３及びヒレ部２４の内側面と外側面とが、一次打ち抜き加工とエレメント打ち抜き加工の別々の打ち抜き加工で形成される。このため、本実施例１の左右の脚部２３及びヒレ部２４は、従来の一般的な金属製ファスナーエレメントと異なる特徴的な断面形状をそれぞれ有する。

　ここで、本実施例１の左右のヒレ部２４の断面形状について、図１２を参照しながらより詳しく説明すると、本実施例１のヒレ部２４では、ヒレ部２４の内側面が、上方から一次打ち抜きパンチを下降させて平板部材５の内切除部分７を打ち抜くことにより形成される。このため、左右のヒレ部２４の上端部における内周側の稜線部２４ａは、一次打ち抜き加工時に生じる金属材料の流動（ダレ）の影響によって、面取りされたような湾曲した断面形状を有するように形成される。また、左右のヒレ部２４の下端部における内周側の稜線部２４ｂは、ヒレ部２４の下端面が図示しない一次打ち抜きダイに接触した状態で一次打ち抜き加工が行われるため、上端部における内周側の稜線部２４ａよりも外側に角張った断面形状を有するように形成される。

　一方、本実施例１のヒレ部２４の外側面は、上方からエレメント打ち抜きパンチ４０を下降させて、ファスナーエレメント１０自体を打ち抜くことにより形成される。このエレメント打ち抜き加工において、ヒレ部２４の上端面はエレメント打ち抜きパンチ４０の先端面（下端面）に接触した状態でエレメント打ち抜き加工が行われる。このため、左右のヒレ部２４の上端部における外周側の稜線部２４ｃは、上端部における内周側の稜線部２４ａよりも外側に角張った断面形状を有するように形成される。また、左右のヒレ部２４の下端部における外周側の稜線部２４ｄは、エレメント打ち抜き加工時に生じる金属材料の流動（ダレ）の影響によって、面取りされたような湾曲した断面形状を有するように形成される。

　また、本実施例１のファスナーエレメント１０では、左右の脚部２３も、左右のヒレ部２４と同じように、上端部における内周側と外周側の稜線部２４ａ，２４ｃの断面形状が互いに異なるとともに、下端部における内周側と外周側の稜線部２４ｂ，２４ｄの断面形状が互いに異なるように形成される。

　例えば、従来の方法で金属製平板部材５から１回の打ち抜き加工を行ってファスナーエレメントを製造する場合、打ち抜かれて得られるファスナーエレメントのテープ挟持部の上面は平坦に形成される。また、テープ挟持部の上端部における内周側の稜線部も外周側の稜線部も、外側に角張った断面形状を有するように形成される。この場合、製造された複数のファスナーエレメントを、例えば上述したように処理容器内に投入し、処理容器を回転させながら研磨処理や塗装処理などを行うときに、各ファスナーエレメントに付着する研磨材や塗料などの液体の表面張力と大気圧との関係により、ファスナーエレメントの平坦な上面と、他のファスナーエレメントの平坦な上面とが毛細管現象によりくっついてファスナーエレメント同士が張り付いて容易に離れなくなるという不具合が生じることがある。

　これに対して、本実施例１のファスナーエレメント１０における左右の脚部２３及びヒレ部２４が、上述のように上端部の一方の稜線部２４ａと下端部の一方の稜線部２４ｄが湾曲したような特徴的な断面形状を有することによって、例えば製造された複数のファスナーエレメント１０に研磨処理や塗装処理などを行う場合でも、毛細管現象に起因するファスナーエレメント１０同士の張り付きを生じ難くすることができる。それにより、本実施例１の複数のファスナーエレメント１０に対して、研磨処理や塗装処理などを安定して施すことができる。

　そして、上述のような本実施例１の製造方法によって製造された複数のファスナーエレメント１０は、図示しないパーツフィーダーに投入されてファスナーエレメント１０の姿勢が整えられる。続いて、図示しないシューターを介して、ファスナーテープ２９のテープ側縁部に、ファスナーエレメント１０の左右脚部２３間にテープ端縁部が挟まれるようにしてファスナーエレメント１０が１つずつ供給される。

　その後、ファスナーテープ２９のテープ側縁部に供給されたファスナーエレメント１０は、図示しない押圧手段を用いてファスナーエレメント１０の左右脚部２３をファスナーテープ２９に向けて押圧して塑性変形させる。これによって、図１３に示すように、ファスナーテープ２９のテープ側縁部に１つずつ順番に取り付けられて、複数のファスナーエレメント１０からなるエレメント列がファスナーテープ２９のテープ側縁部にテープ長さ方向に沿って形成されたファスナーストリンガー２８が製造される。

　このとき、ファスナーエレメント１０の左右脚部２３が塑性変形することにより、テープ挟持部２１における挟持基端部２２の左右外側面、左右の脚部２３の外側面、及び左右のヒレ部２４の外側面が、エレメント長さ方向と平行に配される。また、ファスナーエレメント１０の噛合頭部１１とテープ挟持部２１との間に形成される段差部２０が、エレメント幅方向に対して、段差部２０における左右の外側端部が、段差部２０の中央突起部１３に連結する内側端部よりも後方に配されるように斜めに傾斜して配される。

　更に、上述のように製造された２つのファスナーストリンガー２８を左右一組で組み合わせるとともに、両ファスナーストリンガー２８のエレメント列にスライダーを組み付けること等により、図示しないスライドファスナーが製造される。このようにして製造されるスライドファスナーでは、各ファスナーエレメント１０の外側面が滑らかに形成されているため、ファスナーエレメント１０の肌触り及び外観品質が優れているスライドファスナーとなる。

　なお、上述した実施例１におけるファスナーエレメントの製造方法では、加工領域１Ｃに移動した平板部材５のエレメント部位に対して、変形防止突部４２を有する図３～図５に示したエレメント打ち抜きパンチ４０と、図６に示した押さえ部材６０とを用いて、エレメント打ち抜きダイ８０で支持する平板部材５に対してエレメント打ち抜き加工を行うことにより、平板部材５からファスナーエレメント１０を打ち抜いている。

　しかし本発明では、実施例１の変形例として、図３～図５に示したエレメント打ち抜きパンチ４０と、図６に示した押さえ部材６０の代わりに、図１４に示したエレメント打ち抜きパンチ４０ａと、図１５に示した押さえ部材６０ａを用いて、平板部材５に対してエレメント打ち抜き加工を行うことも可能である。

　図１４に示した変形例に係るエレメント打ち抜きパンチ４０ａは、平板部材５の所定の部位に強く接触させて剪断加工を行うパンチ先端部４１ａを有しており、このパンチ先端部４１ａ自体は、図３～図５に示した実施例１のエレメント打ち抜きパンチ４０のパンチ先端部４１と同様の形状に形成されている。従って、図１４のパンチ先端部４１ａにおいて、実施例１のパンチ先端部４１と同じ構成を有する部分については同じ符号を用いて表すことによって、その説明を省略することとする。

　一方、このエレメント打ち抜きパンチ４０ａには、実施例１のエレメント打ち抜きパンチ４０に配されている変形防止突部４２が設けられていない。その代わりに、エレメント打ち抜きパンチ４０ａには、押さえ部材６０ａの後述する変形防止突部６４が進入可能な進入許容孔部４９が上下方向に沿って設けられている。

　図１５に示した変形例に係る押さえ部材６０ａは、平板部材５の上面（表面）に当接して平板部材５を上から押さえる押さえ面６１ａと、押さえ面６１ａから下方に突出する押さえ突起部６２ａ及び変形防止突部６４とを有する。この変形例に係る押さえ部材６０ａの押さえ面６１ａ及び押さえ突起部６２ａは、図６に示した実施例１の押さえ部材６０の押さえ面６１及び押さえ突起部６２と実質的に同様に形成されている。また、押さえ部材６０ａには、上下方向に沿って移動するエレメント打ち抜きパンチ４０ａを挿通可能な挿通孔部６３ａが、上下方向に沿って形成されている。

　変形例に係る押さえ部材６０ａの変形防止突部６４は、押さえ面６１ａから下方に突出する突出長さを、平板部材５の厚さ寸法よりも大きくして形成されている。この場合、変形防止突部６４の上下方向に直交する断面は、図３～図５に示した実施例１のエレメント打ち抜きパンチ４０における変形防止突部４２の上下方向に直交する断面と同様の形状を有する。

　このような押さえ部材６０ａの変形防止突部６４は、押さえ部材６０ａの押さえ面６１ａを平板部材５の上面に接触させたときに、平板部材５の内切除部分７が打ち抜かれた空間部分に挿入されて、その変形防止突部６４の外周面を、平板部材５におけるファスナーエレメント１０のテープ挟持部２１となる部分の内側面に接触（又は近接）させることができる。

　上述のような変形例に係るエレメント打ち抜きパンチ４０ａ及び押さえ部材６０ａを用いてエレメント打ち抜き加工を行うことにより、押さえ部材６０ａとエレメント打ち抜きダイ８０との間で平板部材５を固定したときに、押さえ部材６０ａの変形防止突部６４が平板部材５の上記空間部分に挿入される。これにより、押さえ部材６０ａの変形防止突部６４によってファスナーエレメント１０のテープ挟持部２１となる部分を内側面側から支えることができる。

　続いて、押さえ部材６０ａの変形防止突部６４が平板部材５の上記空間部分に挿入されている状態で、エレメント打ち抜きパンチ４０ａを下降させて平板部材５の上面に強く衝突させる。これにより、図１６及び図１７に示すように、平板部材５からファスナーエレメント１０を打ち抜くことができる。なお、図１７では、エレメント打ち抜きパンチ４０ａ、押さえ部材６０ａの変形防止突部６４、平板部材５、及びファスナーエレメント１０の関係を判り易く図示するために、エレメント打ち抜きダイ８０の図示が省略されている。

　このとき、打ち抜かれるファスナーエレメント１０のテープ挟持部２１は、上述のように押さえ部材６０ａの変形防止突部６４で内側面側から支えられている。このため、この変形例に係るエレメント打ち抜き加工を行うことによっても、上述した実施例１のエレメント打ち抜き加工の場合と同様に、エレメント打ち抜き時にテープ挟持部２１に変形が生じること、特にテープ挟持部２１のヒレ部２４に変形が生じることを効果的に防止できる。

　図１８は、本実施例２において平板部材からファスナーエレメントを製造する方法を模式的に説明する説明図である。図１９は、実施例２のエレメント打ち抜きパンチを模式的に示す底面図である。図２０は、本実施例２で製造されるファスナーエレメントのヒレ部における断面図である。

　本実施例２の製造方法では、金属製の平板部材５を一方の方向に間欠的に搬送しながら、その金属製の平板部材５に対して、噛合頭部１１の押圧成形加工と２回の打ち抜き加工を所定の位置でそれぞれ行うことにより、図９～図１１に示すファスナーエレメント１０を１つずつ連続的に製造することができる。

　本実施例２で製造されるファスナーエレメント１０は、脚部２３及びヒレ部２４の断面形状が一部異なることを除いて、前述の実施例１で製造されるファスナーエレメント１０と同じ形状を有する。従って、本実施例２や後述する実施例３において、上述の実施例１と同じ構成を有するファスナーエレメント１０の部分については同じ符号を用いて表すことによって、その説明を省略することとする。

　本実施例２のファスナーエレメント１０の製造方法では、前述の実施例１の場合と同様の金属製の平板部材５を準備し、その平板部材５を、図示しない搬送装置を用いて、移動と停止とを繰り返しながら、搬送方向の下流側（後方）に向けて搬送する。

　また、搬送装置により間欠的に搬送される平板部材５に対して、前述の実施例１の場合と同様に、加工領域２Ａにおいて、ファスナーエレメント１０の噛合頭部１１の形状を押圧成形する押圧成形加工を行う（押圧成形工程）。これにより、図１８に示すように、平板部材５の上面と下面とに、噛合頭部１１の形状が成形された頭部成形部６が、平板部材５の長さ方向に所定のピッチで順番に形成される。

　平板部材５の頭部成形部６が形成されたエレメント部位は、平板部材５の間欠的な搬送によって一次打ち抜き加工を行う加工領域２Ｂに搬送され、この加工領域２Ｂで平板部材５の不要部の一部を打ち抜く一次打ち抜き工程を行う。

　本実施例２の一次打ち抜き工程では、図示しない一次打ち抜きパンチと、その一次打ち抜きパンチに対応する空間部を備えた図示しない一次打ち抜きダイとを用いて、平板部材５の後述する左右の外切除部分８が切り抜かれる。なお、本実施例２では、押圧成形工程で平板部材５に頭部成形部６を形成したエレメント部位を、上述の間欠的な搬送によって移動と停止が２回繰り返し行われた後に、一次打ち抜き加工が行われる。

　本実施例２の図示しない一次打ち抜きパンチは、平板部材５に剪断加工を行うパンチ先端部を有する。本実施例２のパンチ先端部は、平板部材５の左右の外切除部分８に対応する断面形状を有して形成されており、パンチ先端部の強度が適切に確保されている。この場合、平板部材５の左右の外切除部分８は、平板部材５におけるファスナーエレメント１０の噛合頭部１１及びテープ挟持部２１となる部分の左右外側に配される部分であり、一次打ち抜き加工によって打ち抜かれる部分である。

　本実施例２の一次打ち抜き工程では、上述のような一次打ち抜きパンチを下降させて、そのパンチ先端部を、形成される噛合頭部１１及びテープ挟持部２１の外側面に沿うようにして、平板部材５に上面側から衝突させる。これにより、平板部材５におけるファスナーエレメント１０を形成しない不要部（エレメント部位以外の部分）のうちの上述した左右の外切除部分８が打ち抜かれて切除される。

　またこのとき、一次打ち抜き加工によって、エレメント部位における噛合頭部１１となる部分の左右の外側面と、テープ挟持部２１となる部分の左右の外側面とが同時に形成される。すなわち、本実施例２では、１回の一次打ち抜き加工によって噛合頭部１１の先端部（前端部）からヒレ部２４の先端部（後端部）まで配されるファスナーエレメント１０の左右の外側面が形成される。更に、平板部材５から打ち抜かれた左右の外切除部分８は、平板部材５の搬送路の下方に設置された回収ボックスに落下して回収される。なお本実施例２においても、上述の一次打ち抜き加工を行う際には、例えば図示しない支持部材と押さえ部材を用いて、平板部材５を上下方向から挟持して一時的に固定することが好ましい。

　次に、一次打ち抜き工程で平板部材５の左右の外切除部分８が切除されたエレメント部位は、平板部材５の間欠的な搬送によってエレメント打ち抜き加工を行う加工領域２Ｃに搬送される。この加工領域２Ｃでは、平板部材５からファスナーエレメント１０を打ち抜くエレメント打ち抜き工程を行う。本実施例２では、前述の実施例１の場合と同様に、一次打ち抜き加工が行われたエレメント部位が、図示しない搬送装置による間欠的な搬送によって移動と停止が３回繰り返し行われた後に、エレメント打ち抜き加工が行われる。

　本実施例２のエレメント打ち抜き工程では、平板部材５を支持する図示しないエレメント打ち抜きダイと、エレメント打ち抜きダイに対して昇降可能な図１９に示したエレメント打ち抜きパンチ５０と、エレメント打ち抜きダイに対して昇降可能な図示しない押さえ部材とを用いて、平板部材５からファスナーエレメント１０を打ち抜くエレメント打ち抜き加工を行う。

　本実施例２のエレメント打ち抜きダイは、平板部材５における一次打ち抜き加工が行われたエレメント部位をその下面側から支持する。このエレメント打ち抜きダイには、エレメント打ち抜きパンチ５０のパンチ先端部５１及び変形防止突部５２に対応する断面形状を備えた貫通孔部が、上下方向に沿って設けられている。

　本実施例２で用いるエレメント打ち抜きパンチ５０は、平板部材５の所定の部位に強く接触させて剪断加工を行うパンチ先端部５１と、パンチ先端部５１の先端面よりも突出して配される変形防止突部５２とを有する。本実施例２におけるエレメント打ち抜きパンチ５０のパンチ先端部５１は、前述の実施例１におけるエレメント打ち抜きパンチ４０のパンチ先端部４１と実質的に同様に形成される。更に、このエレメント打ち抜きパンチ５０のパンチ先端部５１は、外側に配される変形防止突部５２に連結されて一体的に形成されている。このため、本実施例２のパンチ先端部５１も、強度が適切に確保されている。

　本実施例２の変形防止突部５２は、パンチ先端部５１の先端面よりも下方に突出して配されている。この場合、変形防止突部５２におけるパンチ先端部５１の先端面から突出する突出長さは、平板部材５の厚さ寸法よりも大きく設定される。この変形防止突部５２は、エレメント打ち抜きパンチ５０を下方から見たときに、パンチ先端部５１の左右外側に、パンチ先端部５１の外周縁部に沿って連続的に形成されている。

　このような本実施例２の変形防止突部５２は、エレメント打ち抜きパンチ５０が平板部材５の上方から下降するときに、エレメント打ち抜きパンチ５０のパンチ先端部５１が平板部材５に衝突するよりも前に、平板部材５の上述した左右の外切除部分８が打ち抜かれた部分に挿入され、ファスナーエレメント１０の左右の外側面（すなわち、噛合頭部１１の左右の外側面及びテープ挟持部２１の左右の外側面）に接する又は近接する。これにより、エレメント打ち抜きパンチ５０で平板部材５からファスナーエレメント１０を打ち抜くときに、ファスナーエレメント１０を左右の外側面側から支えて、エレメント打ち抜き時にファスナーエレメント１０に変形が生じること、特にファスナーエレメント１０のヒレ部２４に変形が生じることを効果的に防止できる。

　本実施例２の図示しない押さえ部材は、平板部材５の上面（表面）に当接して平板部材５を上から押さえる押さえ面と、押さえ面から下方に突出する押さえ突起部とを有する。また、押さえ部材には、上下方向に移動するエレメント打ち抜きパンチ５０を挿通可能な挿通孔部が、上下方向に沿って形成されている。押さえ部材の押さえ面は、上下方向に対して直交する平坦面に形成されている。押さえ部材の押さえ突起部は、前述の実施例１における押さえ部材６０の押さえ突起部６２と実質的に同様に形成されている。このような押さえ部材が平板部材５を上側から所定の力で押圧して押さえることにより、押さえ部材とエレメント打ち抜きダイとが協働して、平板部材５を一時的に動かないように固定できる。

　本実施例２のエレメント打ち抜き加工では、加工領域２Ｃに移動した平板部材５のエレメント部位を、押さえ部材で上から押さえ付けることにより、当該エレメント部位を押さえ部材とエレメント打ち抜きダイとで上下方向から所定の力で挟持して一時的に固定する。続いて、エレメント打ち抜きパンチ５０を、押さえ部材の挿通孔部を介して下降させて、エレメント打ち抜きパンチ５０の変形防止突部５２を平板部材５における左右の外切除部分８内に挿入する。その後、更にエレメント打ち抜きパンチ５０を下降させて、そのパンチ先端部５１をテープ挟持部２１の内側面（内周面）に沿うようにして、平板部材５の上面に強く衝突させる。これにより、ファスナーエレメント１０が平板部材５から打ち抜かれて形成される。このとき、エレメント打ち抜き加工によって、ファスナーエレメント１０のテープ挟持部２１の内側面が形成される。

　上述のようなエレメント打ち抜き加工によって平板部材５から打ち抜かれたファスナーエレメント１０は、平板部材５の搬送路の下方に設置された回収ボックスに落下して回収される。このようなエレメント打ち抜き加工を、平板部材５の上述した間欠的な搬送における停止のタイミングに合わせて行うことにより、同じ形状を有する複数のファスナーエレメント１０を１つずつ連続的に製造することができる。一方、平板部材５のファスナーエレメント１０が打ち抜かれた後の残部は、押さえ部材の上昇により押さえ部材とエレメント打ち抜きダイとによる平板部材５の一時的な固定を解除し、その後、例えば高圧の空気等を吹き付けて回収装置に吹き飛ばすこと等によって回収される。

　なお、上述のようにして平板部材５から打ち抜かれて製造された本実施例２の複数のファスナーエレメント１０に対しては、その後、前述の実施例１の場合と同様に、研磨処理、塗装処理やメッキ処理などを行うことが可能である。
　このように本実施例２の製造方法を用いてファスナーエレメント１０を製造することにより、前述の実施例１の製造方法と同様の効果が得られる。

　また、本実施例２で製造されるファスナーエレメント１０でも、前述の実施例１で製造されるファスナーエレメント１０と同様の効果が得られる。
　特に、本実施例２のファスナーエレメント１０では、左右の脚部２３及びヒレ部２４の外側面と内側面とが、一次打ち抜き加工とエレメント打ち抜き加工の別々の打ち抜き加工で形成される。このため、左右の脚部２３及びヒレ部２４が、例えば図２０に示したように、前述の実施例１のファスナーエレメント１０と異なる特徴的な断面形状をそれぞれ有する。

　すなわち、本実施例１のヒレ部２４では、ヒレ部２４の外側面が、上方から一次打ち抜きパンチを下降させて平板部材５の左右の外切除部分８を打ち抜くことにより形成される。このため、左右のヒレ部２４の上端部における外周側の稜線部２４ｃは、一次打ち抜き加工時に生じる金属材料の流動（ダレ）の影響によって、面取りされたような湾曲した断面形状を有するように形成される。また、左右のヒレ部２４の下端部における外周側の稜線部２４ｄは、ヒレ部２４の下端面が図示しない一次打ち抜きダイに接触した状態で一次打ち抜き加工が行われるため、上端部における外周側の稜線部２４ｃよりも外側に角張った断面形状を有するように形成される。

　一方、本実施例２のヒレ部２４の内側面は、上方からエレメント打ち抜きパンチ５０を下降させて、ファスナーエレメント１０自体を打ち抜くことにより形成される。このエレメント打ち抜き加工において、ヒレ部２４の上端面はエレメント打ち抜きパンチ５０の先端面（下端面）に接触した状態でエレメント打ち抜き加工が行われる。このため、左右のヒレ部２４の上端部における内周側の稜線部２４ａは、上端部における外周側の稜線部２４ｃよりも外側に角張った断面形状を有するように形成される。また、左右のヒレ部２４の下端部における内周側の稜線部２４ｂは、エレメント打ち抜き加工時に生じる金属材料の流動（ダレ）の影響によって、面取りされたような湾曲した断面形状を有するように形成される。

　左右の脚部２３及びヒレ部２４が上述のような断面形状を有することによって、例えば製造された本実施例２の複数のファスナーエレメント１０に研磨処理や塗装処理などを行う場合でも、前述の実施例１の場合と同様に、毛細管現象に起因するファスナーエレメント１０同士の張り付きを生じ難くすることができる。

　なお、上述した実施例２におけるファスナーエレメントの製造方法では、加工領域２Ｃに移動した平板部材５のエレメント部位に対して、変形防止突部５２を有する図１９に示したエレメント打ち抜きパンチ５０と、図示しない押さえ部材とを用いてエレメント打ち抜き加工を行うことにより、平板部材５からファスナーエレメント１０を打ち抜いている。

　しかし本発明では、実施例２の変形例として、前述の実施例１の場合と同じように、変形防止突部をエレメント打ち抜きパンチではなく、押さえ部材に設けることも可能である。すなわち、図示を省略するが、図１９に示した変形防止突部５２を設けない形態を備えるエレメント打ち抜きパンチと、平板部材５の内切除部分７に挿入可能な変形防止突部を有する押さえ部材とを用いることによって、エレメント打ち抜き加工を平板部材５に行うことも可能である。それによって、上述した実施例２の製造方法の場合と同様のファスナーエレメント１０を製造することができる。

　図２１は、本実施例３において平板部材からファスナーエレメントを製造する方法を模式的に説明する説明図である。図２２は、本実施例３で製造されるファスナーエレメントのヒレ部における断面図である。

　本実施例３の製造方法では、金属製の平板部材５を一方の方向に間欠的に搬送しながら、その金属製の平板部材５に対して、３回の打ち抜き加工を所定の位置で順番に行うことにより、図９～図１１に示すファスナーエレメント１０を平板部材５の搬送路上に残すようにして、１つずつ連続的に製造することができる。本実施例３で製造されるファスナーエレメント１０も、左右の脚部２３及びヒレ部２４の断面形状が異なることを除いて、前述の実施例１で製造されるファスナーエレメント１０と同じ形状を有する。

　本実施例３のファスナーエレメント１０の製造方法では、前述の実施例１の場合と同様の金属製の平板部材５を準備し、その平板部材５を、図示しない搬送装置を用いて、移動と停止とを繰り返しながら、搬送方向の下流側（後方）に向けて搬送する。また、搬送装置により間欠的に搬送される平板部材５に対して、前述の実施例１の場合と同様に、押圧成形加工を行う加工領域３Ａにおいて、ファスナーエレメント１０の噛合頭部１１の形状を成形する押圧成形工程を行う。これにより、図２１に示すように、平板部材５の上面と下面とに、噛合頭部１１の形状が成形された頭部成形部６が、平板部材５の長さ方向に所定のピッチで順番に形成される。

　平板部材５の頭部成形部６が形成されたエレメント部位は、平板部材５の間欠的な搬送によって１回目の第１打ち抜き加工を行う加工領域３Ｂに搬送される。この加工領域３Ｂでは、平板部材５の不要部の一部を打ち抜く１回目の第１打ち抜き工程を行う。

　本実施例３の第１打ち抜き工程では、前述の実施例１における一次打ち抜き工程の打ち抜き加工と同じ打ち抜き加工が行われる。従って、本実施例３の第１打ち抜き工程では、打ち抜きパンチによって、平板部材５におけるファスナーエレメント１０のテープ挟持部２１により挟まれる内側の内切除部分７が打ち抜かれて切除される。このとき、エレメント部位のテープ挟持部２１となる部分の内側面（すなわち、形成されるファスナーエレメント１０の挟持基端部２２、左右の脚部２３、及び左右のヒレ部２４の各内側面）が形成される。

　上述の第１打ち抜き加工が行われた平板部材５のエレメント部位は、平板部材５の間欠的な搬送によって２回目の第２打ち抜き加工を行う加工領域３Ｃに搬送される。この加工領域３Ｃでは、平板部材５の不要部の一部を打ち抜く２回目の第２打ち抜き工程を行う。なお、本実施例３では、１回目の第１打ち抜き加工が行われたエレメント部位が、図示しない搬送装置による間欠的な搬送によって移動と停止が３回繰り返し行われた後に、２回目の第２打ち抜き工程が行われる。

　本実施例３の第２打ち抜き工程では、前述の実施例２における一次打ち抜き工程の打ち抜き加工と同じ打ち抜き加工が行われる。従って、本実施例３の第２打ち抜き工程では、打ち抜きパンチによって、平板部材５における左右の外切除部分８が打ち抜かれて切除される。このとき、エレメント部位における噛合頭部１１となる部分の左右の外側面と、テープ挟持部２１となる部分の左右の外側面とが同時に形成される。

　また本実施例３の製造方法では、２回目の第２打ち抜き加工によって左右の外切除部分８が打ち抜かれるものの、図２１に示すように、エレメント部位におけるヒレ部２４の先端部（後端部）が平板部材５の不要部に連結された状態で保持される。このため、平板部材５に対して、ヒレ部２４の内側面を形成する第１打ち抜き加工や、ヒレ部２４の外側面を形成する第２打ち抜き加工が行われて、エレメント部位が強い応力を受けても、平板部材５の不要部に接続されているヒレ部２４に変形が生じることを効果的に防止できる。

　第２打ち抜き加工が行われた平板部材５のエレメント部位は、平板部材５の間欠的な搬送によって３回目の第３打ち抜き加工を行う加工領域３Ｄに搬送される。この加工領域３Ｄで平板部材５の不要部の一部を打ち抜く３回目の第３打ち抜き工程を行う。なお、本実施例３では、２回目の第２打ち抜き加工が行われたエレメント部位が、図示しない搬送装置による間欠的な搬送によって移動と停止が３回繰り返し行われた後に、３回目の第３打ち抜き工程が行われる。

　本実施例３の第３打ち抜き工程では、平板部材５の長さ方向に互いに隣接するエレメント部位間に残存する不要部９を、打ち抜きパンチによって打ち抜いて切除する第３打ち抜き加工が行われる。この第３打ち抜き加工によって、製造されるファスナーエレメント１０の噛合頭部１１の先端面（前端面）と、当該ファスナーエレメント１０の上流側に隣接する次のファスナーエレメント１０のヒレ部２４の先端面（後端面）とが同時に形成される。この第３打ち抜き加工を行う際には、例えば図示しない支持部材と押さえ部材を用いて、平板部材５を上下方向から挟持して一時的に固定することが好ましい。

　そして、上述のような第３打ち抜き加工によって平板部材５から形成されるファスナーエレメント１０は、例えば高圧の空気等を吹き付けて回収装置に吹き飛ばすこと等によって回収される。更に、製造された本実施例３の複数のファスナーエレメント１０に対しては、その後、前述の実施例１の場合と同様に、研磨処理、塗装処理やメッキ処理などを行うことが可能である。

　このように本実施例３の製造方法を用いてファスナーエレメント１０を製造することにより、前述の実施例１及び実施例２の製造方法と略同様の効果が得られる。

　また、本実施例３で製造されるファスナーエレメント１０でも、前述の実施例１及び実施例２で製造されるファスナーエレメント１０と同様の効果が得られる。
　また、本実施例３のファスナーエレメント１０では、左右のヒレ部２４の外側面と内側面とが、１回目の第１打ち抜き加工と２回目の第２打ち抜き加工の別々の打ち抜き加工で形成されるものの、第１打ち抜き加工及び第２打ち抜き加工は、両方とも平板部材５の不要部を切除するための打ち抜き加工である。

　このため、本実施例３のヒレ部２４では、図２２に示したように、左右のヒレ部２４の上端部における内周側の稜線部２４ａと外周側の稜線部２４ｃとは、打ち抜き加工時に生じる金属材料の流動（ダレ）の影響によって、面取りされたような湾曲した断面形状を有するように形成される。また、左右のヒレ部２４の下端部における内周側の稜線部２４ｂと外周側の稜線部２４ｄとは、ヒレ部２４の下端面が図示しない打ち抜きダイに接触した状態で各打ち抜き加工が行われるため、外側に角張った断面形状を有するように形成される。

　　１Ａ，１Ｂ，１Ｃ　加工領域
　　２Ａ，２Ｂ，２Ｃ　加工領域
　　３Ａ，３Ｂ　　　　加工領域
　　３Ｃ，３Ｄ　　　　加工領域
　　５　　　　　　　　平板部材
　　６　　　　　　　　頭部成形部
　　７　　　　　　　　内切除部分
　　８　　　　　　　　外切除部分
　　９　　　　　　　　残存する不要部
　１０　　　　　　　　ファスナーエレメント
　１１　　　　　　　　噛合頭部
　１２　　　　　　　　平板部
　１３　　　　　　　　中央突起部
　１４　　　　　　　　噛合凸部
　１５　　　　　　　　隆起部
　１６　　　　　　　　挿入溝部
　１７　　　　　　　　挿入凹部
　２０　　　　　　　　段差部
　２１　　　　　　　　テープ挟持部
　２２　　　　　　　　挟持基端部
　２３　　　　　　　　脚部
　２４　　　　　　　　ヒレ部
　２４ａ　　　　　　　上端部における内周側の稜線部
　２４ｂ　　　　　　　下端部における内周側の稜線部
　２４ｃ　　　　　　　上端部における外周側の稜線部
　２４ｄ　　　　　　　下端部における外周側の稜線部
　２８　　　　　　　　ファスナーストリンガー
　２９　　　　　　　　ファスナーテープ
　３０　　　　　　　　成形パンチ
　３１　　　　　　　　押圧部
　３２　　　　　　　　押圧先端面
　３３　　　　　　　　第１凹部
　３４　　　　　　　　第２凹部
　３５　　　　　　　　第３凹部
　４０，４０ａ　　　　エレメント打ち抜きパンチ
　４１，４１ａ　　　　パンチ先端部
　４２　　　　　　　　変形防止突部
　４３　　　　　　　　前側打ち抜き部（頭部側打ち抜き部）
　４４　　　　　　　　後側打ち抜き部（挟持部側打ち抜き部）
　４５　　　　　　　　段差部
　４６　　　　　　　　第１凹部
　４７　　　　　　　　第２凹部
　４８　　　　　　　　第３凹部
　４９　　　　　　　　進入許容孔部
　５０　　　　　　　　エレメント打ち抜きパンチ
　５１　　　　　　　　パンチ先端部
　５２　　　　　　　　変形防止突部
　６０，６０ａ　　　　押さえ部材
　６１，６１ａ　　　　押さえ面
　６２，６２ａ　　　　押さえ突起部
　６３，６３ａ　　　　挿通孔部
　６４　　　　　　　　変形防止突部
　８０　　　　　　　　エレメント打ち抜きダイ
　Ｗ１　　　　　　　　ヒレ部のエレメント幅方向における寸法
　Ｗ２　　　　　　　　脚部のエレメント幅方向における寸法

Claims

　長尺の金属製平板部材(5) に対して打ち抜き加工を行うことにより、噛合頭部(11)と、前記噛合頭部(11)から一方向に延出するテープ挟持部(21)とを有し、前記テープ挟持部(21)は、前記噛合頭部(11)に接続する挟持基端部(22)と、前記挟持基端部(22)から左右に分岐して延出する一対の脚部(23)と、各脚部(23)の先端部から延出するとともに前記脚部(23)よりも平面視にて細く形成される左右のヒレ部(24)とを有する金属製のファスナーエレメント(10)を製造するファスナーエレメントの製造方法において、
　少なくとも２回の前記打ち抜き加工を行うこと、及び、
　１回の前記打ち抜き加工を、形成される前記噛合頭部(11)の左右の外側面と前記テープ挟持部(21)の左右の前記外側面とに沿って行うこと、
を含んでなることを特徴とするファスナーエレメントの製造方法。
　前記テープ挟持部(21)の左右の外側面に沿って前記平板部材(5) の一部を打ち抜く前記打ち抜き加工と、前記テープ挟持部(21)の内側面に沿って前記平板部材(5) の一部を打ち抜く前記打ち抜き加工とを別々に行うことを含んでなる請求項１記載のファスナーエレメントの製造方法。
　前記打ち抜き加工として、前記平板部材(5) の前記ファスナーエレメント(10)を形成しない不要部の一部(7,8) を打ち抜く一次打ち抜き加工を行うことにより、前記平板部材(5) から前記不要部の一部(7,8) を切除すること、及び、
　前記一次打ち抜き加工が行われた前記平板部材(5) に対し、前記打ち抜き加工としてエレメント打ち抜き加工を行うことにより、前記平板部材(5) から前記ファスナーエレメント(10)を打ち抜くこと、
を含んでなる請求項１又は２記載のファスナーエレメントの製造方法。
　前記一次打ち抜き加工を行うことにより、前記平板部材(5) の前記不要部のうちの前記テープ挟持部(21)の内側に配される内切除部分(7) を切除することを含んでなる請求項３記載のファスナーエレメントの製造方法。
　前記一次打ち抜き加工を行うことにより、前記平板部材(5) の前記不要部のうちの前記ファスナーエレメントの幅方向外側に配される外切除部分(8) を切除することを含んでなる請求項３記載のファスナーエレメントの製造方法。
　前記エレメント打ち抜き加工において、前記平板部材(5) を支持するダイ(80)と、前記ダイ(80)に対して昇降可能に配され、前記平板部材(5) を押さえて前記ダイ(80)との間で固定する押さえ部材(60,60a)と、前記ダイ(80)に対して昇降可能に配され、前記ダイ(80)及び前記押さえ部材(60,60a)間に固定された前記平板部材(5) から前記ファスナーエレメント(10)を打ち抜くエレメント打ち抜きパンチ(40,40a,50) とを用いることを含んでなる請求項３～５のいずれかに記載のファスナーエレメントの製造方法。
　前記エレメント打ち抜きパンチ(40,50) は、前記平板部材(5) に接触して前記ファスナーエレメント(10)を打ち抜くパンチ先端部(41,51) と、前記パンチ先端部(41,51) の先端面よりも突出して配され、且つ、前記平板部材(5) の前記一次打ち抜き加工で前記不要部として打ち抜かれた切除部分に挿入されて、前記ファスナーエレメントの変形を防止する変形防止突部(42,52) とを有し、
　前記押さえ部材(60)は、前記平板部材(5) の上面に接触して前記平板部材(5) を押さえる押さえ面(61)を有してなる、
請求項６記載のファスナーエレメントの製造方法。
　前記エレメント打ち抜きパンチ(40a) は、前記平板部材(5) に接触して前記ファスナーエレメント(10)を打ち抜くパンチ先端部(41a) を有し、
　前記押さえ部材(60a) は、前記平板部材(5) の上面に接触して前記平板部材(5) を押さえる押さえ面(61a) と、前記押さえ面(61a) よりも突出して配され、且つ、前記平板部材(5) の前記一次打ち抜き加工で前記不要部として打ち抜かれた切除部分に挿入されて、前記ファスナーエレメントの変形を防止する変形防止突部(64)とを有してなる、
請求項６記載のファスナーエレメントの製造方法。
　前記打ち抜き加工として、前記平板部材(5) の前記ファスナーエレメント(10)を形成しない不要部の一部(7,8,9) を打ち抜く複数回の打ち抜き加工を行うことにより、前記ファスナーエレメント(10)を形成することを含んでなる請求項１又は２記載のファスナーエレメントの製造方法。
　前記打ち抜き加工を行う前に、前記平板部材(5) に前記ファスナーエレメント(10)の前記噛合頭部(11)の形状を成形する押圧成形加工を行うことを含んでなる請求項１～９のいずれかに記載のファスナーエレメントの製造方法。