JP4565174B2 - 窪み加工銅板もしくは銅合金板、その製造方法、および順送金型 - Google Patents
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Description
放熱板としては、部品との間の接合強度を十分に確保するため、表面に凹部を形成した「窪み加工銅板または銅合金板」が採用されることがある。その窪みの形成は、通常、プレス加工によって行われる(下記特許文献1,2)。
一方、複数回のプレスで窪み形状を複雑化することも考えられるが、その場合、例えば上記の順送金型を用いた連続プレス法で窪みの位置を各ステージごとに正確に合わせることは意外と難しい。窪み加工プレスを行うと材料に伸びが生じるため、例えば帯状材料に設けたパイロット穴によって各ステージでの位置決めを自動的に行おうとすると、金型側のピンがパイロット穴を外れてしまい、プレス作業の継続が断たれてしまうトラブルが起こる。これを防ぐためにパイロット穴径を拡大し、位置決めの許容度を大きめに取ると、連続操業は確保されるものの、各ステージで位置ずれが大きくなり、所望のアンカー効果の高い窪みが形成できなくなってしまう。特に、電子部品の放熱板用途では例えば0.1〜1mm以下といった細かい窪みの形成が望まれるため、上記位置ずれの問題は深刻である。
個々の製品ごとに単発プレスを繰り返す手法で正確な位置に重ねてプレスすることも考えられるが、生産性が低くコスト増を免れない。
〔2段階窪み加工過程〕第1段階でプレスにより1次窪みを形成し、第2段階でプレスにより1次窪みより浅い深さの2次窪みを、2次窪みの領域が1次窪みの領域を部分的にまたは全体的にはみ出すように、1次窪みに重ねて形成する過程。
帯状素材中の各製品領域の間に位置する捨てしろ領域に、位置決めのためのパイロット穴形成に先立って、長さが当該パイロット穴径より長いスリットを帯状素材の進行方向において当該パイロット穴形成予定位置の前および後に設け、
次いでパイロット穴を設け、
その後、窪み形成のための加工ステージでパイロット穴により位置決めを行う、電子部品を取り付ける放熱板用の窪み加工銅板または銅合金板の製造方法が提供される。
ここで、スリットは板厚を貫通する細長い開口である。
[1] 帯状素材の各製品領域の間に位置する捨てしろ領域において、パイロット穴形成予定位置の前および後に該パイロット穴径以上の長さを有するスリットを形成する「スリット形成ステージ」、
[2] 前記捨てしろ領域のスリットの間にパイロット穴を開ける「パイロット穴形成ステージ」、
[3] パイロット穴により位置決めを行うとともにプレスにより表面に1次窪みを形成する「1次窪み加工ステージ」、
[4] パイロット穴により位置決めを行うとともにプレスにより1次窪みより浅い深さの2次窪みを、2次窪みの領域が1次窪みの領域を部分的にまたは全体的にはみ出すように、1次窪みに重ねて形成することにより、水平方向より下向きの法線をもつ壁面部分を備えた窪みを生成させる「2次窪み加工ステージ」、
[5] 帯状素材の側端部に位置する捨てしろ領域を切断除去する「サイドカットステージ」、
[6] 各製品領域の間に位置する捨てしろ領域を切断除去して板状製品を分離する「セパレートステージ」、
更に必要に応じて、
[7] 分離した板状製品に反り付けを行う「反り付けステージ」、
を帯状素材の進行方向に上記の順序で備えている、電子部品を取り付ける放熱板用の窪み加工銅板または銅合金板製造用順送金型が提供される。これら[1]〜[6]あるいは更に[7]のステージをこの順で含んでいる限り、それ以外のステージが含まれていても構わない。特に、何も加工を施さない「アイドルステージ」は適宜挿入される。
また、そのような特殊な窪み加工製品は従来、順送金型により連続自動生産することが困難であったが、本発明の順送金型を用い、本発明の方法で実施すれば連続自動生産が可能になり、且つ所望の窪み形状が高精度で得られる。
図2は、帯状素材1の表面10にプレスにより正方形の形状の1次窪み11を形成したところである。(a)は平面図、(b)はA−A'断面図である。図3は、図2の1次窪み11に重ねて2次窪み12を形成したところである。この例では、2次窪みの形状は1次窪みと同じ正方形であり、互いに45°回転した関係にある。そして2次窪み12は、2次窪みの領域14が部分的に1次窪みの領域13をはみ出すように形成されており、2次窪み12の深さは1次窪み11の深さのおおよそ0.5倍となっている。このとき、2次窪みの領域14が1次窪みの領域13をはみ出した部分に予め形成されていた1次窪みの壁面は、図3(b)に示すように法線15の方向が水平方向16よりも下(板厚中心側)を向いた壁面部分を構成するようになる。このような、真上から見えない壁面をここでは「オーバーハング面」と呼ぶ。オーバーハング面17が存在することにより、強いアンカー効果が発揮され、窪み内に入り込んだ樹脂等が強固に拘束されて、結果的に樹脂等と窪み加工板との密着強度が著しく向上するのである。図3に示した窪みは深さ方向に2つの段差を有している。すなわち、1次窪み11と2次窪み12との間で1段目の段差があり、2次窪み12と表面10との間で2段目の段差がある。
1次窪みと2次窪みが同じ大きさ・形状の多角形である場合、互いに5〜85°回転した関係にすることでアンカー効果の高いオーバーハング面を形成することができる。この場合、1次窪みと2次窪みのセンターの位置ずれが0.05mm以下の高精度の窪み形状とすると、樹脂等との密着性向上に特に効果的である。なお、1次窪みと2次窪みは互いに30〜60°回転した関係にすることが一層好ましい。この角度の回転効果は窪みの形状が四角形の場合、さらに大きい。
半導体部品の放熱板用途の場合、銅または銅合金板の板厚は1mm以上とすることが望ましい。
図6には、2次窪みの深さが1次窪みの深さの0.9倍を超えて深い場合の窪み形状を模式的に示してある。ここでは1次窪みの形状が正方形で、2次窪みの形状が1次窪みよりも大きい正方形である。この場合、オーバーハング面は潰れて下向き角度が大きくなりすぎ、樹脂等が入り込み難くなる。したがってアンカー効果は小さくなる。
図7には、2次窪みの深さが1次窪みの深さの0.1倍未満と浅い場合の窪み形状を模式的に示してある。この場合はオーバーハング面17の下向き角度が小さすぎ、十分なアンカー効果が発揮できない。
なお、2次窪みの深さは1次窪みの深さの0.3〜0.7倍とすることが一層好ましい。
図8には、例として、12のステージ(st.1〜st.12)を備えた順送金型内で加工中の帯状素材(各ステージでの加工を終えたところ)を模式的に示す。
st.1は「スリット形成ステージ」である。加工の初期段階で予め板厚を貫通するスリット20を2本形成する。スリットを形成する場所は各製品領域の間を占める捨てしろ領域であり、2本のスリットの間には後のステージでパイロット穴を形成するための場所を確保しておく。スリットの幅は0.5mm以上とすることが好ましい。それより細いと後工程の窪み加工で伸びを十分に吸収しきれないことがある。スリットの長さはパイロット径以上、好ましくはパイロット径の2倍以上を確保することが望ましい。それより短いと窪み加工時の伸び変形がスリットの両端の外側からパイロット穴の位置に伝わり、帯状素材中におけるパイロット穴の相対位置(ピッチ)を不変に保つことが難しくなる。スリット20の終端と帯状素材1の側端との間には、帯状素材1の板厚以上の間隔を確保することが望ましい。
st.4は「1次窪み加工ステージ」である。このステージでは、パイロット穴21に金型側のパイロットピンを挿入することで位置決めを行い、製品領域22に1次窪みを形成する。このとき伸び変形が生じるが、スリットによって長手方向(進行方向)の伸びが吸収され、パイロット穴の位置にはほとんど平面方向の応力がかからない。つまり、帯状素材中におけるパイロット穴の相対位置(ピッチ)は変化しない。このため、パイロットピンを抜く際に支障が生じない。
st.8は「サイドカットステージ」である。ここでは帯状素材側端部に位置する捨てしろを切断除去する。ここでも、パイロット穴21によって位置決めを行うことが望ましい。なお、サイドカットは窪み加工の後に行う必要がある。この順序を逆にすると、製品領域22に帯状素材幅方向の伸び変形が大きくなり、好ましくない。サイドカットステージにおける捨てしろ量(帯状素材1の側端部から製品領域22までの距離)は帯状素材1の板厚以上を確保することが望ましい。
st.10は「セパレートステージ」である。ここでは、スリット20およびパイロット穴21を有する製品領域間の捨てしろを切断除去する。
st.12は「反り付けステージ」である。ここでは、切り離された製品板に反り付けを行う。放熱板にはチップ等の部品をはんだ等で接合するが、これらの部品と銅または銅合金との熱膨張係数は異なっている。このため、部品をフラットな銅または銅合金板に接合すると、その銅または銅合金板は接合面が凸になる方向に反る。この反りを打ち消すためには、銅または銅合金板の製品には予め逆方向の反りを付けておくことが有効である。この反り付けは必要に応じて順送金型内で行うことができる。
材料送りが良好であった場合については、1次窪みと2次窪みの位置ずれの調査を行った。各12個の製品をサンプルとして選び、図10に示すような3箇所の測定箇所についてレーザー顕微鏡を用いて1次窪みと2次窪みのセンター位置のずれ量を測定し、すべての測定値のうちの最大値を「位置ずれ量」とした。
これらの結果を表1に示す。
2 帯状素材コイル
3 レベラー
4 順送金型
5 板状製品
10 表面
11 1次窪み
12 2次窪み
13 1次窪み領域
14 2次窪み領域
15 法線方向
16 水平方向
17 オーバーハング面
20 スリット
21 パイロット穴
22 製品領域
Claims (7)
- 水平方向より下向きの法線をもつ壁面部分を備えた窪みを表面に有し、その窪みが下記(A)の2段階窪み加工過程を経て生成されるものであり、前記窪みにおいて下記(A)に記載の1次窪みおよび2次窪みは、同じ形状の多角形を5〜85°回転した関係にあり、且つ1次窪みと2次窪みのセンター位置のずれが0.05mm以内である電子部品を取り付ける放熱板用の窪み加工銅板または銅合金板。
(A)2段階窪み加工過程; 第1段階でプレスにより1次窪みを形成し、第2段階でプレスにより1次窪みより浅い深さの2次窪みを、2次窪みの領域が1次窪みの領域を部分的にまたは全体的にはみ出すように、1次窪みに重ねて形成する過程。 - 1次窪み,2次窪みとも径が0.1〜5mm、1次窪みの深さが0.005〜0.2mm、2次窪みの深さが1次窪み深さの0.1〜0.9倍、窪み同士の最近接距離が0.1〜5mmである、請求項1に記載の電子部品を取り付ける放熱板用の窪み加工銅板または銅合金板。
- 銅または銅合金の帯状素材を複数の加工ステージを備えた順送金型内で順次移送しながらプレスして窪みを表面をもつ板状製品を製造するに際し、
帯状素材中の各製品領域の間に位置する捨てしろ領域に、位置決めのためのパイロット穴形成に先立って、長さが当該パイロット穴径より長いスリットを当該パイロット穴形成予定位置の前および後に設け、
次いでパイロット穴を設け、
その後、窪み形成のための第1段窪み加工ステージでパイロット穴により位置決めを行うとともにプレスにより1次窪みを形成し、同第2段窪み加工ステージでパイロット穴により位置決めを行うとともにプレスにより1次窪みより浅い深さの2次窪みを、2次窪みの領域が1次窪みの領域を部分的にまたは全体的にはみ出すように、1次窪みに重ねて形成することにより、水平方向より下向きの法線をもつ壁面部分を備えた窪みを生成させる、電子部品を取り付ける放熱板用の窪み加工銅板または銅合金板の製造方法。 - 窪みを形成した後のステージで帯状素材側端部に位置する捨てしろ領域を切断除去し、その後、各製品領域の間に位置する捨てしろ領域を切断除去して板状製品を分離する請求項3に記載の電子部品を取り付ける放熱板用の窪み加工銅板または銅合金板の製造方法。
- 更に、分離した板状製品に順送金型内で反り付けを行う請求項4に記載の電子部品を取り付ける放熱板用の窪み加工銅板または銅合金板の製造方法。
- 複数の加工ステージを備えた順送金型であって、
[1] 帯状素材の各製品領域の間に位置する捨てしろ領域において、パイロット穴形成予定位置の前および後に該パイロット穴径以上の長さを有するスリットを形成する「スリット形成ステージ」、
[2] 前記捨てしろ領域のスリットの間にパイロット穴を開ける「パイロット穴形成ステージ」、
[3] パイロット穴により位置決めを行うとともにプレスにより表面に1次窪みを形成する「1次窪み加工ステージ」、
[4] パイロット穴により位置決めを行うとともにプレスにより1次窪みより浅い深さの2次窪みを、2次窪みの領域が1次窪みの領域を部分的にまたは全体的にはみ出すように、1次窪みに重ねて形成することにより、水平方向より下向きの法線をもつ壁面部分を備えた窪みを生成させる「2次窪み加工ステージ」、
[5] 帯状素材の側端部に位置する捨てしろ領域を切断除去する「サイドカットステージ」、
[6] 各製品領域の間に位置する捨てしろ領域を切断除去して板状製品を分離する「セパレートステージ」、
を帯状素材の進行方向に上記の順序で備えている、電子部品を取り付ける放熱板用の窪み加工銅板または銅合金板製造用順送金型。 - 更に、前記[6]の「セパレートステージ」の後に、
[7] 分離した板状製品に反り付けを行う「反り付けステージ」、
を備えている請求項6に記載の電子部品を取り付ける放熱板用の窪み加工銅板または銅合金板製造用順送金型。
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