WO2018128178A1 - 吸収性物品 - Google Patents

Abstract

吸収性物品の伸長応力を小さくして伸ばしやすくし、通気性をよくすると共に最大伸度を一定以上に大きくすることができるようにする。伸縮領域を備えた吸収性物品１であって、吸収性物品（１）の伸縮領域は、第１の非伸縮性シート（２１）と弾性フィルム（２３）と第２の非伸縮性シート（２２）とがこの順で積層された弾性シートで構成され、この弾性シートには、第１の非伸縮性シート（２１）と第２の非伸縮性シート（２２）を接合する接合部（５１ａ～５５ａ）と、接合部（５１ａ～５５ａ）の形成により弾性フィルム（２３）に生成された開孔部（５１ｂ～５５ｂ）とによって接合開孔部（５１～５５）が多数形成されており、接合開孔部（５２～５５）は、近接した複数の接合開孔部で構成される近接接合開孔部（５０Ａ、５０Ｂ）を形成している吸収性物品。

Description

吸収性物品

　本発明は、弾性フィルムを不織布等の非伸縮性シートで挟んで積層した積層シートを使用したパンツ型の紙おむつ等の使い捨て下着を含む吸収性物品に関するものである。

　紙おむつ等の使い捨て下着を含む吸収性物品には、パンツ型、テープ止め型、パッドタイプ等の種々の形態のものがある。このうちパンツ型吸収性物品は、腹側部と股部と背側部とから構成され、腹側部と背側部の左右方向の両端部が接合されて胴回り開口と脚回り開口が形成され、股部には体液を吸収する吸収体が取付けられている。
　そして、このパンツ型吸収性物品は、胴回り方向と脚回り方向に伸縮して使用者の肌に密着し、ずり落ちや体液の漏れ等を防止している。
　この場合、パンツ型吸収性物品において、胴回り方向の伸縮性は、腹側部と背側部に弾性糸等の弾性部材を左右方向（胴回り方向）に複数条配設することにより付与され、また、脚回り方向の伸縮性は、腹側部と股部と背側部の脚回り部に弾性部材を複数条配設することにより付与されるのが一般的である。
　一方、上記のような弾性糸等の弾性部材を使用したパンツ型吸収性物品に対して、外観や使用者の肌への密着性等を向上させるため、弾性糸等の弾性部材に代えて、弾性フィルムを使用したパンツ型吸収性物品も出現している。
　この弾性フィルムを使用したパンツ型吸収性物品においては、主に腹側部と背側部が、弾性フィルムを不織布等の非伸縮性シートで挟んで積層した積層シートで構成される。
　そして、この積層シートの形成においては、伸長した弾性フィルムが非伸縮性シートで挟み込まれ、多数の点状あるいは線状のパターンでヒートシールや超音波シールが行われ、積層シートの各層が接合される。この場合、積層シートの各層が接合される際に、弾性フィルムにおいて、接合部（シール部）の周囲が破断し、開孔部（貫通孔）が形成される。すなわち、上記積層シートにおいては、弾性フィルムに形成された開孔部内にある接合部によって、弾性フィルムを挟み込んだ非伸縮性シート同士が接合された状態となり、開孔部は、弾性フィルムを使用した吸収性物品に通気性を与える機能も果たす。
　この場合、上記積層シートの接合部の、形状、大きさ、配置パターン等は、弾性フィルムを使用した吸収性物品の伸縮性、外観、通気性等に影響することから、種々の形状、大きさ、配置パターン等の接合部をもつ吸収性物品が提案されている。

　例えば、特許文献１（特許第５９８０３５５号公報）には、伸縮領域及び非伸縮領域の境界における弾性フィルムの断裂を防止することを課題として、伸縮領域と、この伸縮領域から連続する非伸縮領域とにわたり、第１シート層と、第２シート層との間に弾性フィルムが積層されてなるとともに、弾性フィルムがそれらの表面に沿う伸縮方向に伸長された状態で、第１シート層及び第２シート層が、伸縮方向及びこれと直交する方向にそれぞれ間隔を空けて配列された多数の点状接合部で、弾性フィルムに形成された貫通孔を通じて接合されており、伸縮領域における非伸縮領域側の端部が、当該端部を除いた主伸縮部分よりも点状接合部の面積率が低い緩衝伸縮部分とされている吸収性物品の伸縮構造、及びこれを用いたパンツタイプ使い捨ておむつが開示されている。
　また、特許文献２（特許第５９６７７３６号公報）には、柔軟性の低下を抑えつつ、より布に近い外観の伸縮領域を得ることを課題として、伸縮領域が、不織布からなる第１シート層と、不織布からなる第２シート層との間に弾性フィルムが積層されてなるとともに、弾性フィルムが伸縮領域の伸縮方向に伸長された状態で、第１シート層及び第２シート層が、伸縮方向及びこれと直交する方向を基準として千鳥状に間隔を空けて配列された多数の接合部のみで、弾性フィルムに形成された貫通孔を通じて接合されており、接合部は、伸縮方向と直交する方向に細長く、かつ伸縮方向の中央を通る中央線に関して線対称の形状とされており、接合部の伸縮方向の最大幅は０．１～１．１mmであり、伸縮方向に並ぶ接合部の間隔は３～１２．９mmであり、伸縮方向と直交する方向に並ぶ接合部の間隔は２～１０．５mmである吸収性物品が開示されている。

　図２２は、特許文献１と特許文献２の吸収性物品の装着状態における外装体の伸縮領域の一部を拡大して表した正面図であり、同図（ａ）は特許文献１の吸収性物品の外装体の伸縮領域の一部を示し、同図（ｂ）は特許文献２の吸収性物品の外装体の伸縮領域の一部を示している。
　図において、１００、１１０は、不織布等の第１シート層と第２シート層との間に弾性フィルムを挟んで積層して形成された外装シート、１０１、１１１は、第１シート層と第２シート層の接合部、１０２、１１２は、弾性フィルムに形成された開孔部（特許文献１、２の貫通孔）である。
　特許文献１の吸収性物品の外装体１００の伸縮領域においては、図２２（ａ）に示すように、第１シート層と第２シート層が点状の接合部１０１で接合され、この接合部１０１により弾性フィルムに開孔部１０２が形成される。
　また、特許文献２の吸収性物品の外装体１１０の伸縮領域においては、図２２（ｂ）に示すように、第１シート層と第２シート層が縦長の線状の接合部１１１で接合され、この接合部１１１により弾性フィルムに開孔部１１２が形成される。
　そして、吸収性物品が使用者に装着された状態では、外装シート１００、１１０は左右方向（胴回り方向）に伸長され、開孔部１０２、１１２は左右方向に広げられて図２２（ａ）、（ｂ）の破線で示す楕円形となり、開孔部１０２、１１２の接合部１０１、１１１を除く部分は、通気孔として機能する。
　図２２（ａ）、（ｂ）に示すように接合部１０１、１１１は、間隔を空けて千鳥状に配置されている。
　ところで、このような弾性フィルムを使用した吸収性物品においては、伸長応力（一定の伸び率（変位）を生じさせるための引張応力）をある程度小さくして外装シート１００、１１０を小さい力でも伸ばしやすくし、かつ、外装シート１００、１１０の弾性変形する最大の伸び率（以下「最大伸度」という。）を一定以上、例えば、自然長の伸度（伸び率）を１００％として（以下同様とする）、最大伸度２００％以上に大きくすると共に通気性をよくすることが要求される。

　しかしながら、接合部１０１、１１１が間隔を空けて配置されている場合、接合部１０１、１１１の間隔を狭くしたり、接合部１０１、１１１を大きくしたりすると、外装シート１００、１１０の伸長応力は小さくなって伸ばしやすくなり、開孔部１０２、１１２の間隔も狭くなったり、開孔部１０２、１１２も大きくなったりして、通気性はよくなるが、外装シート１００、１１０の最大伸度を大きくすることに限界があり、一定以上に外装シート１００、１１０の最大伸度を大きくできないという問題がある。
　また、特許文献２のように伸縮方向及びこれと直交する方向を基準として、縦長の接合部を千鳥状に間隔を空けて配列した場合、伸縮方向と直交する方向（接合部の長手方向）に接合部１１１（開孔部１１２）がない領域が連続することからそこに連続する大きな皺が入り、この皺により伸縮方向と直交する方向に剛性が生じ、吸収性物品の柔軟性が損なわれるという問題も生ずる。

特許第５９８０３５５号公報 特許第５９６７７３６号公報

　本発明が解決しようとする課題は、非伸縮性シートと弾性フィルムを使用した吸収性物品において、吸収性物品の伸長応力を小さくして伸ばしやすくし、通気性をよくすると共に、吸収性物品の最大伸度を一定以上に大きくすることができ、また、伸縮方向と直交する方向に連続する大きな皺が入ることによって剛性が生じ、吸収性物品の柔軟性が損なわれることがないようにすることである。

　請求項１に記載の発明は、伸縮領域を備えた吸収性物品であって、前記吸収性物品の前記伸縮領域は、第１の非伸縮性シートと弾性フィルムと第２の非伸縮性シートとがこの順で積層された弾性シートで構成され、
　前記弾性シートには、前記第１の非伸縮性シートと前記第２の非伸縮性シートを接合する接合部と、該接合部の形成により前記弾性フィルムに生成された開孔部とによって接合開孔部が多数形成されており、前記接合部は、前記弾性フィルムが前記伸縮領域の伸縮方向に伸長された状態で、前記第１の非伸縮性シートと前記第２の非伸縮性シートを接合することによって形成されたものであり、前記接合開孔部の一部又は全部は、近接した複数の接合開孔部で構成される近接接合開孔部を形成している吸収性物品を提供して、上記課題を解決するものである。

　請求項２に記載の発明は、前記接合部は、前記伸縮方向に直交する方向に長い縦長の形状を備えている吸収性物品を提供して、上記課題を解決するものである。

　請求項３に記載の発明は、前記近接接合開孔部と該近接接合開孔部を形成しない単独の接合開孔部が交互に配置されている吸収性物品を提供して、上記課題を解決するものである。

　請求項４に記載の発明は、前記近接接合開孔部を構成する接合開孔部は、前記伸縮方向に対して傾斜する第１の方向に配置されている吸収性物品を提供して、上記課題を解決するものである。

　請求項５に記載の発明は、前記近接接合開孔部を前記第１の方向と直交する方向に２分割する分割線が一直線上に並ばないように前記近接接合開孔部が配置されている吸収性物品を提供して、上記課題を解決するものである。

　請求項６に記載の発明は、前記近接接合開孔部を構成する接合開孔部は、前記伸縮方向に対して傾斜する第２の方向にも配置されており、該第２の方向は前記第１の方向と異なる吸収性物品を提供して、上記課題を解決するものである。

　請求項７に記載の発明は、前記第２方向は前記伸縮方向と直交する方向を軸として前記第１の方向を反転した方向である吸収性物品を提供して、上記課題を解決するものである。

　請求項８に記載の発明は、前記近接接合開孔部を前記第２の方向と直交する方向に２分割する分割線が一直線上に並ばないように前記近接接合開孔部が配置されている吸収性物品を提供して、上記課題を解決するものである。

　請求項９に記載の発明は、前記第１の方向に配置された接合開孔部より構成される前記近接接合開孔部と前記第２の方向に配置された接合開孔部より構成される前記近接接合開孔部は、均等に配置されている吸収性物品を提供して、上記課題を解決するものである。

　請求項１０に記載の発明は、前記近接接合開孔部は、２個乃至３個の接合開孔部で構成される吸収性物品を提供して、上記課題を解決するものである。

　請求項１１に記載の発明は、前記接合開孔部の全部が前記近接接合開孔部を形成し、２個の接合開孔部で構成される前記近接接合開孔部と３個の接合開孔部で構成される前記近接接合開孔部が、一定の割合で配置されている吸収性物品を提供して、上記課題を解決するものである。

　請求項１２に記載の発明は、前記近接接合開孔部は、前記伸縮方向と直交する方向に前記接合開孔部が存在しない領域が連続しないように配置されている吸収性物品を提供して、上記課題を解決するものである。

　請求項１３に記載の発明は、前記吸収性物品は、腹側部と股部と背側部とから構成されるパンツ型吸収性物品であり、該腹側部及び／又は該背側部は、前記伸縮領域を備えている吸収性物品を提供して、上記課題を解決するものである。

　請求項１４に記載の発明は、前記吸収性物品は、該吸収性物品の前記伸縮方向の中央部に吸収体が配置され、該吸収体の前記伸縮方向の外側の領域に前記伸縮領域を有している吸収性物品を提供して、上記課題を解決するものである。

　請求項１に記載の発明の吸収性物品においては、吸収性物品の弾性シ－トの伸長応力を小さくして伸ばしやすくし、通気性をよくすると共に、吸収性物品の最大伸度を一定以上に大きくすることができるという効果を奏する。

　請求項２に記載の発明の吸収性物品においては、請求項１に記載の発明の吸収性物品と同様の効果を奏する。

　請求項３に記載の発明の吸収性物品においては、さらに、弾性シートの最大伸度を高めると共に弾性フィルムの引張強度を強くするか、少なくとも弾性フィルムの引張強度が低下することを防止できるという効果を奏する。

　請求項４に記載の発明の吸収性物品においては、さらに、弾性シートの最大伸度を高めると共に弾性フィルムの伸縮方向と直交する方向の引張強度を強くすることができるという効果を奏する。

　請求項５に記載の発明の吸収性物品においては、さらに、第１の方向と直交する方向に弾性フィルムの引張強度が低下することを防止できるという効果を奏する。

　請求項６に記載の発明の吸収性物品においては、さらに、弾性フィルムの引張強度を均一にすることができるという効果を奏する。

　請求項７に記載の発明の吸収性物品においては、さらに、弾性フィルムの引張強度をより均一にすることができるという効果を奏する。

　請求項８に記載の発明の吸収性物品においては、さらに、第２の方向と直交する方向に弾性フィルムの引張強度が低下することを防止できるという効果を奏する。

　請求項９に記載の発明の吸収性物品においては、さらに、弾性フィルムの引張強度をより均一にすることができるという効果を奏する。

　請求項１０に記載の発明の吸収性物品においては、請求項１乃至請求項９のいずれかに記載した発明の吸収性物品と同様の効果を奏する。

　請求項１１に記載の発明の吸収性物品においては、さらに、弾性フィルムの引張強度を損なうことなく弾性シートの最大伸度を高めることができるという効果を奏する。

　請求項１２に記載の発明の吸収性物品においては、伸縮方向と直交する方向に連続する大きな皺が入ることによって剛性が生じ、吸収性物品の柔軟性が損なわれることがないという効果を奏する。

　請求項１３に記載の発明の吸収性物品においては、パンツ型吸収性物品の伸縮領域の伸長応力や最大伸度を損なうことなく通気性をよくすることができるという効果を奏する。

　請求項１４に記載の発明の吸収性物品においては、該吸収性物品の前記伸縮方向の中央部に吸収体が配置された吸収性物品の伸縮領域の伸長応力や最大伸度を損なうことなく通気性をよくすることができるという効果を奏する。

本発明が適用されるパンツ型吸収性物品を着用した状態の斜視図である。 図１のパンツ型吸収性物品の腹側部と背側部を重ねて腹側部を正面にして弾性シートを伸長した状態の正面図である。 図１のパンツ型吸収性物品において腹側部を正面にして腹側部と背側部を結合するサイドシール部を剥がして展開した状態の正面図である。 図３のＹ－Ｙ拡大断面図である。 図３のＸ１－Ｘ１拡大断面図である。 図３のＸ２－Ｘ２拡大断面図である。 腹側パネル２０（弾性シート）の非伸長時の一部拡大正面図である。 図７に示す接合開孔部の拡大図である。 図７のＸ３－Ｘ３拡大断面図である。 図８のＡ１－Ａ１断面図、Ａ２－Ａ２断面図及びＡ３－Ａ３断面図である。 図７に示す接合開孔部と近接接合開孔部のパターンとは異なるパターンの接合開孔部と近接接合開孔部が設けられた腹側パネル２０（弾性シート）の非伸長時の一部拡大正面図である。 図１１に示す接合開孔部の拡大図である。 図１２のＡ４－Ａ４断面図である。 サンプルＡの非伸長時の一部拡大正面図である。 サンプルＢの非伸長時の一部拡大正面図である。 サンプルＣの非伸長時の一部拡大正面図である。 サンプルＤの非伸長時の一部拡大正面図である。 サンプルＡの試験片とサンプルＣの試験片について、伸長時の変位と試験力（引張力）を連続的に測定してその関係を示したグラフである。 サンプルＡの試験片とサンプルＣの試験片について、復元（収縮）時の変位と試験力（引張力）を連続的に測定してその関係を示したグラフである。 サンプルＢの試験片とサンプルＤの試験片について、試験片を弾性限界近くまで変位させ、変位と試験力（引張力）を連続的に測定してその関係を示したグラフである。 サンプルＢの試験片とサンプルＤの試験片について、試験片を弾性限界近くまで変位させた状態から復元（収縮）させ、変位と試験力（引張力）を連続的に測定してその関係を示したグラフである。 特許文献１と特許文献２の吸収性物品の装着状態における外装体の伸縮領域の一部を拡大して表した正面図である。

［パンツ型吸収性物品の基本構成］
　本発明をパンツ型吸収性物品に適用した実施形態について説明するが、まず、パンツ型吸収性物品の基本構成について説明する。
　図１は、本発明が適用されるパンツ型吸収性物品を着用した状態の斜視図、図２は、図１のパンツ型吸収性物品の腹側部と背側部を重ねて腹側部を正面にして弾性シートを伸長した状態の正面図、図３は、図１のパンツ型吸収性物品において腹側部を正面にして腹側部と背側部を結合するサイドシール部を剥がして展開した状態の正面図である。
　図中、１はパンツ型吸収性物品、２は腹側部、３は背側部、４は股部、５は胴回り開口部、６、７は脚回り開口部、８、９はサイドシール部、２０は腹側パネル、２０ａは上縁、２０ｂ、２０ｃは下縁、２０ｄは左側端部、２０ｅは右側端部、３０は背側パネル、３０ａは上縁、３０ｂ、３０ｃは下縁、３０ｄは左側端部、３０ｅは右側端部、４０はパッド、４０ｂ、４０ｃは側縁である。
　図１～図３に示すようにパンツ型吸収性物品１は、腹側部２と背側部３と股部４とから構成され、腹側部２を形成する腹側パネル２０の左側端部２０ｄ、右側端部２０ｅと、背側部３を形成する背側パネル３０の左側端部３０ｄ、右側端部３０ｅとがヒートシールや超音波シール等の熱溶着手段により部分的に接合されてサイドシール部８、９が形成される。
　また、パッド４０の上部と下部が、それぞれ腹側パネル２０と背側パネル３０の左右方向中央部に接着剤等で接着されて取り付けられ、股部４が形成される。
　そして、腹側パネル２０の上縁２０ａと背側パネル３０の上縁３０ａで胴回り開口部５が形成され、腹側パネル２０の下縁２０ｂと背側パネル３０の下縁３０ｂとパッド４０の側縁４０ｂで脚回り開口部６が形成され、腹側パネル２０の下縁２０ｃと背側パネル３０の下縁３０ｃとパッド４０の側縁４０ｃで脚回り開口部７が形成される。
　なお、腹側パネル２０は、下縁２０ｂと下縁２０ｃが上に凹んだ形状で中央部分が下に凸の形状であり、背側パネル３０は、下縁３０ｂと下縁３０ｃが下に凸で中央部分が上に凹んだ形状であるが、腹側パネル２０と背側パネル３０の形状はこれに限定されるものではなく、共に矩形状や略円弧状である等種々の形状をとることができる。

　図４は、図３のＹ－Ｙ拡大断面図、図５は、図３のＸ１－Ｘ１拡大断面図、図６は、図３のＸ２－Ｘ２拡大断面図である。
　図中、２１、３１は第１の非伸縮性シート、２２、３２は第２の非伸縮性シート、２３、３３は弾性フィルム、４１は吸収体、４２は外面シート、４２ａはポリエチレンフィルム、４２ｂは不織布、４３は内面シート、４４、４５はギャザーシート、４４ａ、４５ａは端部、４４ｂ、４５ｂは起立部、Ｅ１、Ｅ２、Ｅ３、Ｅ４は弾性部材である。
　図４に示すように腹側パネル２０は、第１の非伸縮性シート２１と弾性フィルム２３と第２の非伸縮性シート２２がこの順で積層された弾性シートで構成され、背側パネル３０も同様に、第１の非伸縮性シート３１と弾性フィルム３３と第２の非伸縮性シート３２がこの順で積層された弾性シートで構成される。
　また、図４～図６に示すように、パッド４０は、吸収体４１と、吸収体４１を外側（非肌対向面）から覆う外面シート４２と、吸収体４１を内側（肌対向面）から覆う内面シート４３と、外面シート４２の左側部、右側部に取り付けられたギャザーシート４４、４５から構成される。
　吸収体４１は、高吸収性ポリマー粒子を主体とし、あるいは、高吸収性ポリマー粒子を含む綿状パルプを主体として、これに吸収紙等（図示せず）を組み合わせたもの等からなり、使用者が排出した体液等を吸収して保持する。この吸収体４１は、図１～図３の破線で示すように上部と下部が左右方向に膨らんだ形状であるが、長方形状等の種々の形状をとることができる。
　外面シート４２は、不透液性のポリエチレンフィルム４２ａと不織布４２ｂを積層したものであるが、不織布４２ｂは外観や肌ざわりを良くするために積層しているもので、ポリエチレンフィルム４２ａだけで外面シート４２が構成されていてもよい。また、内面シート４３は、不織布からなる。
　外面シート４２と内面シート４３は、吸収体４１の周縁より外側で重なり合い、この重なり合う部分で互いに接着剤（図示せず）や熱融着により接着され、これにより、吸収体４１が封入される。

　パッド４０においては、図５、図６に示すように、ギャザーシート４４、４５のギャザーシート４４、４５の左右方向の端部４４ａ、４５ａは、内側に折り込まれてギャザーシート４４、４５の重なり合う面に接着され、ギャザーシート４４、４５の左右方向内側部分（端部４４ａ、４５ａが折り込まれた部分より内側部分）は、外面シート４２の内面シート４３と反対側の面の左側部と右側部に接着剤（図示せず）や熱融着により接着され、外面シート４２（ポリエチレンフィルム４２ａ）と内面シート４３の左側部と右側部は、ギャザーシート４４、４５の左右方向外側部分と共に内側に折り込まれる。
　そして、図５に示すように、ギャザーシート４４、４５の端部４４ａ、４５ａの外側面（ギャザーシート４４、４５に接着されていない面）の上部と下部は、内面シート４３に接着され、図６（ａ）に示すように、ギャザーシート４４、４５の端部４４ａ、４５ａの内側に折り込まれて内面シート４３に接着されていない部分には、弾性糸等の弾性部材Ｅ１、Ｅ２、Ｅ３、Ｅ４が取り付けられ、起立部４４ｂ、４５ｂが形成される。
　弾性部材Ｅ１～Ｅ４は、上下方向（長手方向）に伸長した状態で接着固定されるため、弾性部材Ｅ１～Ｅ４が縮むことにより、図６（ｂ）に示すようにギャザーシート４４、４５の起立部４４ｂ、４５ｂがハの字状に起立して立体ギャザーを形成する。このようにして立体ギャザーを形成することにより、体液等の横漏れが防止される。
　なお、外面シート４２、内面シート４３、ギャザーシート４４、４５の構成は、上記に限定されず、他の構成をとることもできる。

［弾性シート］
　弾性シートは、腹側パネル２０と背側パネル３０を構成する部材であり、第１の非伸縮性シート２１、３１と弾性フィルム２３、３３と第２の非伸縮性シート２２、３２がこの順で積層されたものである（図４参照）。
　第１の非伸縮性シート２１、３１と第２の非伸縮性シート２２、３２は、通気性や柔軟性のある非伸縮性のシート、例えば、不織布を使用することができる。
　この不織布の原料繊維としては、例えば、ポリエチレン繊維やポリプロピレン繊維等のポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、レーヨン繊維、綿等の天然繊維等、あるいは、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを使用することができる。また、不織布の製造方法としては、公知の方法、例えば、スパンボンド法、メルトブロー法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法等を使用することができ、さらに、これらの製造方法を組み合わせた方法を使用してもよい。
　この場合、第１の非伸縮性シート２１、３１と第２の非伸縮性シート２２、３２は、同一の不織布を使用してもよく、異なる不織布を使用してもよく、２種類以上の不織布の積層物を使用してもよい。
　また、第１の非伸縮性シート２１、３１と第２の非伸縮性シート２２、３２は、多少の伸縮性、例えば、伸度（伸び率）が１５０％（１５０％伸長しても破断しない）以下の伸縮性があってもよい。
　特に、綿やレーヨンなどの吸汗性繊維と、ポリプロピレンなどの熱可塑性繊維を混合したスパンレース不織布や、ポリエチレンなど柔軟な素材を用いたスパンボンド不織布などは、一般的なポリプロピレンなどを主材とした不織布に比べて引張強度が弱く伸びやすいため、１０３～１５０％伸長するものがあるが、このような素材を従来のような弾性糸等の弾性部材を左右方向（胴回り方向）に複数条配設する製法で製造した場合、製品の強度が不足するため使用できない。上記のような素材を伸縮フィルムと積層することで一定の強度となり、弾性シートに吸汗性や、柔軟性を付加する素材として好適に使用することが可能となる。
　弾性フィルム２３、３３は、弾性を有する樹脂フィルム、例えば、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、シリコーン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー及びポリウレタン系エラストマー等の熱可塑性組成物の１種又は２種以上のブレンド物をフィルム状に加工したものまたはその積層物を使用することができる。
　また、弾性フィルム２３、３３は、２００％以上の最大伸度を有するものが好ましい。

［弾性シートにおける接合部、開孔部］
　腹側パネル２０と背側パネル３０を構成する弾性シートにおいては、第１の非伸縮性シート２１、３１と第２の非伸縮性シート２２、３２が、多数の接合部によって接合されている。
　この多数の接合部は、左右方向に伸長した弾性フィルム２３、３３を、第１の非伸縮性シート２１、３１と第２の非伸縮性シート２２、３２の間に挟んで、所定のパターンでヒートシールや超音波シールを施すことにより形成される。すなわち、第１の非伸縮性シート２１、３１と第２の非伸縮性シート２２、３２のシール面が熱溶着して多数の接合部が形成される。
　この接合部は、上下方向（伸縮方向に直交する方向）に長い縦長の形状、例えば、長方形状、長円形状、太鼓形状等を備えていることが好ましく、左右方向の長さ（幅）は０．１～１．０mm、特に０．１～０．５mmが好ましく、上下方向の長さは０．３～３．０mm、特に０．５～１．５mmが好ましい。左右方向の長さが０．１mm未満であったり、上下方向の長さが０．３mm未満であると、第１の非伸縮性シートと第２の非伸縮性シートの接合強度が極端に低くなり、左右方向の長さが１．０mmより大きく、上下方向の長さが３．０mmより大きいと弾性シートの引張強度が極端に低下するからである。
　この場合、上下方向（伸縮方向に直交する方向）に長い縦長の形状は、厳密に上下方向に縦長の形状に限定されるものではなく、上下方向から少し傾いていても（例えば、上下方向に対して２０度ほど傾いていても）、おおよそ縦長の形状であればよく、また、縦長の形状も直線的なものだけでなく、縦に長い波形のような曲線状の形状であってもよい。
　そして、弾性フィルム２３、３３の材質や厚み等によってその伸長応力や最大伸度、引張強度が異なることから、弾性フィルム２３、３３の材質や厚み等に対応して、所望の伸長応力、最大伸度、引張強度や風合いを持った弾性シートが得られるように、接合部の形状や寸法を設定する。
　この接合部が形成されるとき、弾性フィルム２３、３３は、ヒートシールや超音波シールが施された部分で溶融してその周囲が破断し、開孔部が形成される。
　これにより、弾性シート（腹側パネル２０、背側パネル３０）には、接合部と開孔部からなる接合開孔部が多数形成される。
　そして、弾性シート（腹側パネル２０、背側パネル３０）において、第１の非伸縮性シート２１、３１と第２の非伸縮性シート２２、３２の接合部を形成した後、弾性フィルム２３、３３の伸長を解くことにより、弾性フィルム２３、３３の収縮力によって弾性シートが収縮し、弾性シートに伸縮性が付与される。
　この場合、腹側パネル２０と背側パネル３０において、パッド４０には伸縮性がほとんどないため、パッド４０が取り付けられた部分は、伸縮性が減殺されて最大伸度が小さくなり、サイドシール部８、９もシール面積が大きく伸縮性が減殺されて最大伸度が小さくなっている。
　よって、腹側パネル２０と背側パネル３０のパッド４０が取り付けられた部分とサイドシール部８、９となる左側端部２０ｄ、３０ｄ、右側端部２０ｅ、３０ｅを除く部分が弾性シートとして機能する伸縮領域となる。

［接合開孔部、近接接合開孔部の例］
　次に、接合開孔部、近接接合開孔部の例について説明する。
　図７は、腹側パネル２０（弾性シート）の一部拡大正面図、図８は、図７に示す接合開孔部の拡大図、図９は、図７のＸ３－Ｘ３拡大断面図、図１０は、図８のＡ１－Ａ１断面図、Ａ２－Ａ２断面図及びＡ３－Ａ３断面図である。
　図中、５１～５５は接合開孔部、５１ａ～５５ａは接合部、５１ｂ～５５ｂは開孔部、５０Ａ、５０Ｂは近接接合開孔部、Ｇ１、Ｇ２は分割線、Ｈ１は第１の方向、Ｈ２は第２の方向である。
　図７、図８、図１０に示すように、腹側パネル２０（弾性シート）には、縦長形状の接合部５１ａと楕円形の開孔部５１ｂからなる接合開孔部５１（図８（ａ）、図１０（ａ））、縦長形状の接合部５２ａと開孔部５２ｂからなる接合開孔部５２、縦長形状の接合部５３ａと開孔部５３ｂからなる接合開孔部５３（図８（ｂ）、図１０（ｂ））、縦長形状の接合部５４ａと開孔部５４ｂからなる接合開孔部５４、縦長形状の接合部５５ａと開孔部５５ｂからなる接合開孔部５５（図８（ｃ）、図１０（ｂ））の５種類の接合開孔部が形成されている。
　このうち接合開孔部５２と接合開孔部５３は近接して近接接合開孔部５０Ａを構成し、接合開孔部５４と接合開孔部５５は近接して近接接合開孔部５０Ｂを構成している。
　近接接合開孔部５０Ａにおける接合部５２ａと５３ａの左右方向の間隔ｄ１は、０．２～２．５mm、特に０．３～１．５mmが好ましく、近接接合開孔部５０Ｂにおける接合部５４ａと５５ａの左右方向の間隔ｄ２も同様である。間隔ｄ１、ｄ２が０．２mm未満であると開孔部５２ｂ（５４ｂ）と５３ｂ（５５ｂ）とが合体し、近接接合開孔部５０Ａ（５０Ｂ）が形成されず、間隔ｄ１、ｄ２が２．５mmより大きいと後述する近接接合開孔部の作用効果を奏さなくなるからである。
　近接接合開孔部５０Ａにおいて、接合開孔部５２と接合開孔部５３は、弾性シートの伸縮方向（左右方向）に対して右上がりに傾斜する第１の方向Ｈ１に配置され、その開孔部５２ｂ、５３ｂは、縦軸が第１の方向Ｈ１に傾斜した楕円を２分割したような形状となっている。この場合、第１の方向Ｈ１の傾斜角度θ１は、１５～７５度、特に２０～６０度が好ましい。
　近接接合開孔部５０Ｂにおいて、接合開孔部５４と接合開孔部５５は、弾性シートの伸縮方向（左右方向）に対して左上がりに傾斜する第２の方向Ｈ２に配置され、その開孔部５４ｂ、５４ｂは、縦軸が第２の方向Ｈ２に傾斜した楕円を２分割したような形状となっている。この第２の方向Ｈ２は、弾性シートの伸縮方向（左右方向）と直交する方向を軸として第１の方向Ｈ１を反転した方向であり、第２の方向Ｈ２の傾斜角度θ２は、１０５～１６５度、特に１２０～１６０度が好ましい。
　そして、図７に示すように、腹側パネル２０（弾性シート）においては、近接接合開孔部５０Ａと接合開孔部５１が交互に配置された左右方向の列と、近接接合開孔部５０Ｂと接合開孔部５１が交互に配置された左右方向の列が、左右方向と直交する方向に交互に配置されている。
　この場合、近接接合開孔部５０Ａを第１の方向Ｈ１と直交する方向に２分割する分割線Ｇ１が一直線上に並ばないように近接接合開孔部５０Ａが配置され、近接接合開孔部５０Ｂを第２の方向Ｈ２と直交する方向に２分割する分割線Ｇ２が一直線上に並ばないように近接接合開孔部５０Ｂが配置されている。
　また、背側パネル３０においても、腹側パネル２０と同様に、接合部５１ａ～５５ａと開孔部５１ｂ～５５ｂとからなる接合開孔部５１～５５が形成され、接合開孔部５２と５３から近接接合開孔部５０Ａが構成され、接合開孔部５４と５５から近接接合開孔部５０Ｂが構成されている。

　図１０（ａ）～（ｃ）に示すように接合部５１ａ～５５ａにおいては、第１の非伸縮性シート２１、第２の非伸縮性シート２２及び弾性フィルム２３が溶融固化して、第１の非伸縮性シート２１と第２の非伸縮性シート２２が溶着されている。
　ここで、接合部５１ａの左側に位置する第１の非伸縮性シート２１、第２の非伸縮性シート２２、弾性フィルム２３をそれぞれ第１の非伸縮性シート２１ａ、第２の非伸縮性シート２２ａ、弾性フィルム２３ａとし、接合部５１ａの右側に位置する第１の非伸縮性シート２１、第２の非伸縮性シート２２、弾性フィルム２３をそれぞれ第１の非伸縮性シート２１ｂ、第２の非伸縮性シート２２ｂ、弾性フィルム２３ｂとし（図１０（ａ）参照）、接合部５２ａと５３ａの間に位置する第１の非伸縮性シート２１、第２の非伸縮性シート２２、弾性フィルム２３をそれぞれ第１の非伸縮性シート２１ｃ、第２の非伸縮性シート２２ｃ、弾性フィルム２３ｃとし（図１０（ｂ）参照）、接合部５４ａと５５ａの間に位置する第１の非伸縮性シート２１、第２の非伸縮性シート２２、弾性フィルム２３をそれぞれ第１の非伸縮性シート２１ｄ、第２の非伸縮性シート２２ｄ、弾性フィルム２３ｄとする（図１０（ｃ）参照）。
　近接接合開孔部５０Ａと接合開孔部５１が交互に配置された左右方向の列にあっては、図９に示すように、近接接合開孔部５０Ａと接合開孔部５１とに挟まれた部分において、接合部５１ａ～５３ａを形成した後の弾性フィルム２３ａ、２３ｂの左右方向の収縮によって、第１の非伸縮性シート２１ａ、２１ｂと第２の非伸縮性シート２２ａ、２２ｂが、互い離れる方向に突出して上下方向に延びる皺が形成され、近接接合開孔部５０Ｂと接合開孔部５１が交互に配置された左右方向の列にあっても、近接接合開孔部５０Ｂと接合開孔部５１とに挟まれた部分に同様の皺が形成される。
　この場合、図７に示すように、腹側パネル２０（弾性シート）において、近接接合開孔部５０Ａと接合開孔部５１に挟まれた部分と近接接合開孔部５０Ｂと接合開孔部５１とに挟まれた部分は、上下方向に連続しないため、この部分に形成される皺も上下方向に連続せず、上下方向に連続した大きな皺が入ることによって剛性が生じ、腹側パネル２０（弾性シート）の柔軟性が損なわれることが防止される。
　一方、近接接合開孔部５０Ａにおいては、接合開孔部５２と接合開孔部５３が近接しているため、接合部５２ａと５３ａに挟まれた第１の非伸縮性シート２１ｃと第２の非伸縮性シート２２ｃは、開孔部５２ｂと５３ｂに挟まれた弾性フィルム２３ｃに重なっている。同様に近接接合開孔部５０Ｂにおいても、接合部５４ａと５５ａに挟まれた第１の非伸縮性シート２１ｄと第２の非伸縮性シート２２ｄは、開孔部５４ｂと５５ｂに挟まれた弾性フィルム２３ｄに重なっている。
　このため、腹側パネル２０（弾性シート）を左右方向に引っ張ると、近接接合開孔部５０Ａ、５０Ｂと接合開孔部５１とに挟まれた部分の弾性フィルム２３（２３ａ、２３ｂ）が伸長し、第１の非伸縮性シート２１（２１ａ、２１ｂ）と第２の非伸縮性シート２２（２２ａ、２２ｂ）によって形成されている皺が伸びて、腹側パネル２０が伸長することとなる。
　また、背側パネル３０においても、腹側パネル２０と同様にして、左右方向に伸長することとなる。

　近接開孔接合部５０Ａ、５０Ｂがなく単独の接合開孔部５１のみが設けられた弾性シートにおいては、接合部開孔部５１（接合部５１ａと開孔部５１ｂ）の間隔を狭くしたり、接合部開孔部５１（接合部５１ａと開孔部５１ｂ）を大きくしたりして、弾性シートの伸長応力を小さくして伸ばしやすくし、通気性をよくすると、弾性シートの最大伸度を一定以上に大きくすることができず、吸収性物品としての機能が不十分となる。
　これに対して、近接接合開孔部５０Ａ、５０Ｂを形成した弾性シートにおいては、接合部開孔部５１と近接接合開孔部５０Ａ（５０Ｂ）の間隔や近接接合開孔部５０Ａ、５０Ｂ同士の間隔を狭くしたり、近接接合開孔部５０Ａ、５０Ｂ（接合開孔部５２～５５）を大きくした場合、近接接合開孔部５０Ａ（５０Ｂ）が接合開孔部５２、５３（５４、５５）を合体したような一つの大きな接合開孔部と同様に大きく広がるため、弾性シートの伸長応力を小さくして伸ばしやすくし、通気性をよくすることができる。その一方、近接接合開孔部５０Ａ（５０Ｂ）の接合開孔部５２、５３（５４、５５）の大きさは、接合開孔部５２、５３（５４、５５）を合体したような一つの大きな接合開孔部の約半分であることから、大きな接合開孔部を形成した弾性シートに比べて、弾性フィルムを大きく伸ばしても塑性変形がしにくくなり、弾性シートの最大伸度を一定以上に大きくできるという効果がある。
　そして、図７に示すように左右方向において近接接合開孔部５０Ａ又は５０Ｂと単独の接合開孔部５１を交互に配置することにより、弾性シートの最大伸度をより大きくできる共に、弾性フィルムの引張強度が低下することを防止できるという効果がある。
　また、近接接合開孔部５０Ａ、５０Ｂのように、接合開孔部５２と５３、接合開孔部５４と５５を伸縮方向に対して傾斜して配置した場合、傾斜しないで配置した場合に比べて、吸収性物品の着用時に引っ張られやすい伸縮方向と直角方向の弾性フィルムの引張強度（引き裂き強度）が強くなるという効果がある。
　さらに、近接接合開孔部の接合開孔部を一方向に傾斜して配置した場合、傾斜方向と直交する方向の弾性フィルムの引張強度（引き裂き強度）が低下するが、接合開孔部５４と５５の傾斜する第２の方向Ｈ２を接合開孔部５２と５３の傾斜する第１の方向Ｈ１に反転させ、近接接合開孔部５０Ａと５０Ｂを均等に配置することにより、傾斜方向と（第１の方向Ｈ１、第２の方向Ｈ２）と直交する方向の弾性フィルムの引張強度（引き裂き強度）が低下すること防止し、弾性フィルム全体の引張強度を一定に保つことができるという効果がある。
　その上、近接接合開孔部５０Ａの分割線Ｇ１を一直線上に並ばないようにすることにより、第１の方向Ｈ１と直交する方向弾性フィルムの引張強度（引き裂き強度）が低下することが防止でき、近接接合開孔部５０Ｂの分割線Ｇ２を一直線上に並ばないようにすることにより、第２の方向Ｈ２と直交する方向の弾性フィルムの引張強度（引き裂き強度）が低下することを防止できるという効果がある。

［接合開孔部、近接接合開孔部の他の例］
　図１１は、図７に示す接合開孔部と近接接合開孔部のパターンとは異なるパターンの接合開孔部と近接接合開孔部が設けられた腹側パネル２０（弾性シート）の一部拡大正面図、図１２は、図１１に示す接合開孔部の拡大図、図１３は、図１２のＡ４－Ａ４断面図である。
　図中、６２～６８は接合開孔部、６２ａ～６８ａは接合部、６２ｂ～６８ｂは開孔部、６０Ａ、６０Ｂ、６０Ｃは近接接合開孔部、Ｇ３～Ｇ５は分割線、Ｈ３は第３の方向である。
　図１１、図１２に示すように、腹側パネル２０（弾性シート）には、縦長形状の接合部６２ａと開孔部６２ｂからなる接合開孔部６２、縦長形状の接合部６３ａと開孔部６３ｂからなる接合開孔部６３（図１２（ａ））、縦長形状の接合部６４ａと開孔部６４ｂからなる接合開孔部６４、縦長形状の接合部６５ａと開孔部６５ｂからなる接合開孔部６５（同図（ｂ））、縦長形状の接合部６６ａと開孔部６６ｂからなる接合開孔部６６、縦長形状の接合部６７ａと開孔部６７ｂからなる接合開孔部６７、縦長形状の接合部６８ａと開孔部６８ｂからなる接合開孔部６８（同図（ｃ））の７種類の接合開孔部が形成されている。
　このうち接合開孔部６２～６５は、図７、図８（ｂ）、（ｃ）に示す接合開孔部５２～５５と同じものであり、接合部６２ａ～６８ａの大きさ・形状は、図８に示す接合部５１ａ～５５ａの大きさ・形状と同じである。
　そして、接合開孔部６２と接合開孔部６３は近接して近接接合開孔部６０Ａを構成し、接合開孔部６４と接合開孔部６５は近接して近接接合開孔部６０Ｂを構成し、接合開孔部６６と接合開孔部６７と接合開孔部６８は近接して近接接合開孔部６０Ｃを構成しているが、近接接合開孔部６０Ａ、６０Ｂは、近接接合開孔部５０Ａ、５０Ｂと同じものである。
　すなわち、近接接合開孔部６０Ａにおける接合開孔部６２、６３は、弾性シートの伸縮方向（左右方向）に対して角度θ１で傾斜する第１の方向Ｈ１に配置され、その左右方向の間隔はｄ１であり、開孔部６２ｂ、６３ｂは、縦軸が第１の方向Ｈ１に傾斜した楕円を２分割したような形状となっている。また、近接接合開孔部６０Ｂにおける接合開孔部６４、６５は、弾性シートの伸縮方向（左右方向）に対して角度θ２で傾斜する第２の方向Ｈ２に配置され、その左右方向の間隔はｄ２であり、開孔部６４ｂ、６５ｂは、縦軸が第１の方向Ｈ２に傾斜した楕円を２分割したような形状となっている。
　近接接合開孔部６０Ｃにおいて、接合部６６ａと６７ａの左右方向の間隔ｄ３、接合部６７ａと６８ａの左右方向の間隔ｄ４は、同じであって、０．２～２．５mm、特に０．３～１．５mmであるのが好ましい。間隔ｄ３、ｄ４が０．２mm未満であると開孔部６６ｂと６７ｂと６８ｂが合体し、近接接合開孔部６０Ｃが形成されず、間隔ｄ３、ｄ４が２．５mmより大きいと後述する近接接合開孔部の作用効果を奏さなくなるからである。
　また、近接接合開孔部６０Ｃにおいて、接合開孔部６６、６７、６８は、弾性シートの伸縮方向（左右方向）に対して右上がりに傾斜する第３の方向Ｈ３に配置され、その開孔部６６ｂ、６７ｂ、６８ｂは、縦軸が第３の方向Ｈ３に傾斜した楕円を３分割したような形状となっている。この場合、第３の方向Ｈ３の傾斜角度θ３は、１５～７５度、特に２０～６０度が好ましく、第１の方向Ｈ１の傾斜角度θ１と同じであっても異なっていてもよい。
　この場合、近接接合開孔部６０Ａを第１の方向Ｈ１と直交する方向に２分割する分割線Ｇ３が一直線上に並ばないように近接接合開孔部６０Ａが配置され、近接接合開孔部６０Ｂを第２の方向Ｈ２と直交する方向に２分割する分割線Ｇ４が一直線上に並ばないように近接接合開孔部６０Ｂが配置され、近接接合開孔部６０Ｃを第３の方向Ｈ３と直交する方向に２分割する分割線Ｇ５と分割線Ｇ３が一直線上に並ばないように近接接合開孔部６０Ｃが配置されている。
　なお、背側パネル３０においても、腹側パネル２０と同様に、接合部６２ａ～６８ａと開孔部６２ｂ～６８ｂとからなる接合開孔部６２～６８が形成され、接合開孔部６２と６３から近接接合開孔部６０Ａが構成され、接合開孔部６４と６５から近接接合開孔部６０Ｂが構成され、接合開孔部６６と６７と６８から近接接合開孔部６０Ｃが構成されている。

　接合部６２ａ～６８ａにおいては、図１０に示す接合部５１ａ～５５ａと同様に、第１の非伸縮性シート２１、第２の非伸縮性シート２２及び弾性フィルム２３が溶融固化して、第１の非伸縮性シート２１と第２の非伸縮性シート２２が溶着されている。
　そして、腹側パネル２０においては、図１１に示すように、３種類の近接接合開孔部６０Ａ、６０Ｂ、６０Ｃが左右方向に交互に配置され、各近接接合開孔部６０Ａ、６０Ｂ、６０Ｃに挟まれた部分では、近接接合開孔部５０Ａと接合開孔部５１とに挟まれた部分に皺が形成されるのと同様に、接合部６２ａ～６８ａを形成した後の弾性フィルム２３の左右方向の収縮によって、第１の非伸縮性シート２１と第２の非伸縮性シート２２が、互いに離れる方向に突出して上下方向に延びる皺が形成される（図９参照）。
　この場合、図１１に示すように、腹側パネル２０（弾性シート）において、各近接接合開孔部６０Ａ、６０Ｂ、６０Ｃに挟まれた部分は上下方向に連続しないため、この部分に形成される皺も上下方向に連続せず、きめ細かい柔軟な風合いにすることができる。
　したがって、上下方向に連続した大きな皺が入ることにより剛性が生じ、腹側パネル２０（弾性シート）の柔軟性が損なわれることが防止される。
　一方、近接接合開孔部６０Ａにおいては、接合開孔部６２と接合開孔部６３が近接しているため、近接接合開孔部５０Ａと同様に、接合部６２ａと６３ａに挟まれた第１の非伸縮性シート２１と第２の非伸縮性シート２２は、開孔部６２ｂと６３ｂに挟まれた弾性フィルム２３に重なっており（図１０（ｂ）参照）、近接接合開孔部６０Ｂにおいても、近接接合開孔部５０Ｂと同様に、接合部６４ａと６５ａに挟まれた第１の非伸縮性シート２１と第２の非伸縮性シート２２は、開孔部６４ｂと６５ｂに挟まれた弾性フィルム２３に重なっている（図１０（ｃ）参照）。
　ここで、接合部６６ａの右側に位置する第１の非伸縮性シート２１、第２の非伸縮性シート２２、弾性フィルム２３をそれぞれ第１の非伸縮性シート２１ｅ、第２の非伸縮性シート２２ｅ、弾性フィルム２３ｅとし、接合部６８ａの左側に位置する第１の非伸縮性シート２１、第２の非伸縮性シート２２、弾性フィルム２３をそれぞれ第１の非伸縮性シート２１ｆ、第２の非伸縮性シート２２ｆ、弾性フィルム２３ｆとし、接合部６６ａと６７ａの間に位置する第１の非伸縮性シート２１、第２の非伸縮性シート２２、弾性フィルム２３をそれぞれ第１の非伸縮性シート２１ｇ、第２の非伸縮性シート２２ｇ、弾性フィルム２３ｇとし、接合部６７ａと６８ａの間に位置する第１の非伸縮性シート２１、第２の非伸縮性シート２２、弾性フィルム２３をそれぞれ第１の非伸縮性シート２１ｈ、第２の非伸縮性シート２２ｈ、弾性フィルム２３ｈとする。
　図１３に示すように、近接接合開孔部６０Ｃにおいては、接合開孔部６６の右側においては、第１の非伸縮性シート２１ｅと第２の非伸縮性シート２２ｅが、弾性フィルム２３ｅから離間し、接合開孔部６８の左側においては、第１の非伸縮性シート２１ｆと第２の非伸縮性シート２２ｆが、弾性フィルム２３ｆから離間している。その一方、接合部６６ａと６７ａに挟まれた第１の非伸縮性シート２１ｇと第２の非伸縮性シート２２ｇは、開孔部６６ｂと６７ｂに挟まれた弾性フィルム２３ｇに重なり、接合部６７ａと６８ａに挟まれた第１の非伸縮性シート２１ｈと第２の非伸縮性シート２２ｈは、開孔部６７ｂと６８ｂに挟まれた弾性フィルム２３ｈに重なっている。
　このため、腹側パネル２０（弾性シート）を左右方向に引っ張ると、各近接接合開孔部６０Ａ、６０Ｂ、６０Ｃに挟まれた部分の弾性フィルム２３が伸長し、第１の非伸縮性シート２１と第２の非伸縮性シート２２によって形成されている皺が伸びて、腹側パネル２０が伸長することとなる。
　なお、背側パネル３０においても、腹側パネル２０と同様にして、左右方向に伸長することとなる。
　このように２個の接合開孔部からなる近接接合開孔部６０Ａ、６０Ｂと、３個の接合開孔部６からなる近接接合開孔部６０Ｃを一定の割合で配置することにより、弾性フィルムの引張強度を損なうことなく、弾性シート（腹側パネル２０、背側パネル３０）の最大伸度を大きくすることができるという効果がある。
　また、近接接合開孔部６０Ａの分割線Ｇ３や近接接合開孔部６０Ｃの分割線Ｇ５が一直線上に並ばないようにすることにより、第１の方向Ｈ１と直交する方向の弾性フィルムの引張強度（引き裂き強度）が低下することを防止でき、近接接合開孔部６０Ｂの分割線Ｇ４が一直線上に並ばないようにすることにより、第２の方向Ｈ２と直交する方向の弾性フィルムの引張強度（引き裂き強度）が低下することを防止できるという効果がある。

［弾性シートの引張試験］
　サンプルＡ～Ｄの４種類の弾性シートを製造し、各サンプルについて引張試験（伸長と復元のサイクル試験）を行った。
　各サンプルの弾性シートは、第１の非伸縮性シート２１と第２の非伸縮性シート２２の間に伸長した弾性フィルム２３を挟んで、所定のパターンで超音波シールを行い、多数の接合部を形成することにより製造した。
　第１の非伸縮性シート２１と第２の非伸縮性シート２２は、共に原料繊維をポリプロピレンとしてスパンボンド法で製造した目付け１８ｇ／ｍ^２の不織布を使用し、弾性フィルム２３は、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーを主材としたものをフィルム状に加工したものであって最大伸度が３００％（自然長を伸度１００％とする）以上のものを使用した。
　引張試験においては、試験片の幅を５０mm、長さ（試験機に取り付けたときのチャック間距離）を１００mm、引張速度を３００mm／minとし、試験片の所定の長さまで伸長した後復元（収縮）し、伸長時と復元（収縮）時での試験片の変位と引張力との関係を連続的に測定した。
　引張試験機は、島津製作所製「オートグラフ　ＡＧＳ－Ｘ」を使用した。

［サンプルＡ］
　図１４は、サンプルＡの非伸長時の一部拡大正面図であり、図において、Ｗは、Ｌ（＝１０mm）×Ｌ（＝１０mm）の正方形の枠である。
　図１４に示すようにサンプルＡにおいては、図７に示す腹側パネル２０（弾性シート）と同様の接合部と開孔部が形成されている。
　すなわち、サンプルＡには、接合部５１ａと開孔部５１ｂからなる接合開孔部５１、接合部５２ａと開孔部５２ｂからなる接合開孔部５２、接合部５３ａと開孔部５３ｂからなる接合開孔部５３、接合部５４ａと開孔部５４ｂからなる接合開孔部５４、接合部５５ａと開孔部５５ｂからなる接合開孔部５５が形成され、接合開孔部５２と接合開孔部５３により近接接合開孔部５０Ａ、接合開孔部５４と接合開孔部５５により近接接合開孔部５０Ｂが構成されている。
　接合部５１ａ～５５ａは、左右方向の幅が約０．３mm、上下方向の長さが約１．０mmの長円形状であり、近接接合開孔部５０Ａにおける接合部５２ａと接合部５３ａの間隔ｄ１、近接接合開孔部５０Ｂにおける接合部５４ａと接合部５５ａの間隔ｄ２は、共に約０．５mmである。
　また、近接接合開孔部５０Ａにおいて、接合開孔部５２と接合開孔部５３が配置される第１の方向Ｈ１の傾斜角度θ１は約５０度であり、近接接合開孔部５０Ｂにおいて、接合開孔部５４と接合開孔部５５が配置される第２の方向Ｈ２の傾斜角度θ２は約１３０度である。
　サンプルＡにおいては、単位長さＬ＝１０mm当たり５個の接合開孔部５１と近接接合開孔部５０Ａ、５０Ｂが交互に配置された左右方向の列が形成され、この左右方向の列は上下方向の単位長さＬ＝１０mm当たり７列形成され、図１４の枠Ｗ内には、１６個の接合開孔部５１と９個の近接接合開孔部５０Ａと、７個の近接接合開孔部５０Ｂが配置されている。
　なお、サンプルＡにおいては、上下方向に細かい皺が入っていた。

［サンプルＢ］
　図１５は、サンプルＢの非伸長時の一部拡大正面図である。
　図１５に示すようにサンプルＢにおいては、図１１に示す腹側パネル２０（弾性シート）と同様の接合部と開孔部が形成されている。
　すなわち、サンプルＢには、接合部６２ａと開孔部６２ｂからなる接合開孔部６２、接合部６３ａと開孔部６３ｂからなる接合開孔部６３、接合部６４ａと開孔部６４ｂからなる接合開孔部６４、接合部６５ａと開孔部６５ｂからなる接合開孔部６５、接合部６６ａと開孔部６６ｂからなる接合開孔部６６、接合部６７ａと開孔部６７ｂからなる接合開孔部６７、接合部６８ａと開孔部６８ｂからなる接合開孔部６８が形成され、接合開孔部６２と接合開孔部６３により近接接合開孔部６０Ａ、接合開孔部６４と接合開孔部６５により近接接合開孔部６０Ｂ、接合開孔部６６と接合開孔部６７と接合開孔部６８により近接接合開孔部６０Ｃが構成されている。
　接合部６２ａ～６８ａは、サンプルＡの接合部５１ａ～５５ａと同じで、左右方向の幅が約０．３mm、上下方向の長さが約１．０mmの長円形状であり、近接接合開孔部６０Ａにおける接合部６２ａと接合部６３ａの間隔ｄ１、近接接合開孔部６０Ｂにおける接合部６４ａと接合部６５ａの間隔ｄ２、近接接合開孔部６０Ｃにおける接合部６６ａと接合部６７ａの間隔ｄ３、接合部６７ａと接合部６８ａの間隔ｄ４は、すべて約０．５mmである。
　また、近接接合開孔部６０Ａにおいて、接合開孔部６２と接合開孔部６３が配置される第１の方向Ｈ１の傾斜角度θ１は約５０度であり、近接接合開孔部６０Ｂにおいて、接合開孔部６４と接合開孔部６５が配置される第２の方向の傾斜Ｈ２の傾斜角度θ２は約１３０度であり、近接接合開孔部６０Ｃにおいて、接合開孔部６６と接合開孔部６７と接合開孔部６８が配置される第３の方向Ｈ３の傾斜角度θ３は約５０度である。
　サンプルＢにおいては、図１５の枠Ｗ内には、１２個の近接接合開孔部６０Ａと１１．５個の近接接合開孔部６０Ｂと６個の近接接合開孔部６０Ｃが配置されている。
　なお、サンプルＢにおいては、サンプルＡと同様に、上下方向に細かい皺が入っていた。

［サンプルＣ］
　図１６は、サンプルＣの非伸長時の一部拡大正面図である。
　図１６に示すようにサンプルＣにおいては、近接接合開孔部は形成されず、接合部５１ａと開孔部５１ｂからなる接合開孔部５１のみが形成され、接合部５１ａは、左右方向の幅が約０．３mm、上下方向の長さが約１．０mmの長円形状である。
　そして、サンプルＣにおいては、接合開孔部５１が千鳥状に配置され、単位長さＬ＝１０mm当たり５個の接合開孔部５１が配置された左右方向の列が形成され、この左右方向の列は上下方向の単位長さＬ＝１０mm当たり７列形成され、図１６の枠Ｗ内には、３５個の接合開孔部５１が配置されている。
　なお、サンプルＣにおいては、上下方向に連続する大きな皺が入っていた。

［サンプルＤ］
　図１７は、サンプルＤの非伸長時の一部拡大正面図であり、図において、７１は接合開孔部、７１ａは接合部、７１ｂは開孔部である。
　図１７に示すようにサンプルＤにおいては、サンプルＣと同様に近接接合開孔部は形成されず、接合部７１ａと開孔部７１ｂからなる接合開孔部７１のみが形成され、接合部７１ａは、接合部５１ａより大きく、左右方向の幅が約０．２mm、上下方向の長さが約１．５mmの長円形状である。
　そして、サンプルＤにおいては、サンプルＣと同様に、接合開孔部７１が千鳥状に配置され、単位長さＬ＝１０mm当たり５個の接合開孔部７１が配置された左右方向の列が形成され、この左右方向の列は上下方向の単位長さＬ＝１０mm当たり７列形成され、図１７の枠Ｗ内には、３２個の接合開孔部７１が配置されている。
　なお、サンプルＤにおいては、サンプルＣと同様に、上下方向に連続する大きな皺が入っていた。

［試験結果］
　サンプルＡ～Ｄについての引張試験の結果を図１８～図２１に示すが、各図に示すグラフの横軸は変位（mm）を表し、縦軸は試験力（引張力）（Ｎ）を表している。
　図１８は、サンプルＡの試験片とサンプルＣの試験片について、予備負荷後（予備サイクルとして試験片の伸長・復元のサイクルを行った後）、試験力が０（Ｎ）の状態から一定の速度（３００mm／min）で試験片を伸長して弾性限界近くまで変位させ、変位と試験力（引張力）を連続的に測定してその関係を示したグラフであり、実線で示す曲線ＡはサンプルＡの試験片の変位と試験力の関係、２点鎖線で示す曲線ＣはサンプルＣの試験片の変位と試験力の関係を表している。
　サンプルＡでは、変位約１７０ｍｍで弾性限界となり、サンプルＣも同様に変位約１７０ｍｍで弾性限界となったことから、復元の試験力０（Ｎ）のときの試験片の変位を１５ｍｍとして、サンプルＡの最大伸度は、約２３５％（２７０÷１１５×１００％）であり、サンプルＣの最大伸度も同じである。
　また、図１８のグラフにおける主な変位と試験力との関係を表１に示す。

　なお、図１８において、試験力０（Ｎ）のときの試験片の変位が０mmでないのは、本引張試験前に行った予備サイクルとしての試験片の伸長・復元（収縮）において、試験片に歪が残り、変位が０mmに戻らなかったためである。

　図１９は、サンプルＡの試験片とサンプルＣの試験片について、予備負荷後、試験片を弾性限界近くまで変位させた状態から一定の速度（３００mm／min）で試験力が０（Ｎ）になるまで復元（収縮）させ、変位と試験力（引張力）を連続的に測定してその関係を示したグラフであり、実線で示す曲線ＡはサンプルＡの試験片の変位と試験力の関係、２点鎖線で示す曲線ＣはサンプルＣの試験片の変位と試験力の関係を表している。
　また、図１９のグラフにおける主な変位と試験力との関係を表２に示す。

　図２０は、サンプルＢの試験片とサンプルＤの試験片について、予備負荷後、試験力が０（Ｎ）の状態から一定の速度（３００mm／min）で試験片を弾性限界近くまで変位させ、変位と試験力（引張力）を連続的に測定してその関係を示したグラフであり、実線で示す曲線ＢはサンプルＢの試験片の変位と試験力の関係、２点鎖線で示す曲線ＤはサンプルＤの試験片の変位と試験力の関係を表している。
　サンプルＢでは、変位約１４０ｍｍで弾性限界となり、サンプルＤでは変位約８０ｍｍで弾性限界となったことから、復元の試験力０（Ｎ）のときの試験片の変位を１５ｍｍとして、サンプルＢの最大伸度は、約２０９％（２４０÷１１５×１００％）であり、サンプルＤの最大伸度は、約１５７％（１８０÷１１５×１００％）である。
　また、図２０のグラフにおける主な変位と試験力との関係を表３に示す。

　図２１は、サンプルＢの試験片とサンプルＤの試験片について、予備負荷後、試験片を弾性限界近くまで変位させた状態から一定の速度（３００mm／min）で試験力が０（Ｎ）になるまで復元（収縮）させ、変位と試験力（引張力）を連続的に測定してその関係を示したグラフであり、実線で示す曲線ＢはサンプルＢの試験片の変位と試験力の関係、２点鎖線で示す曲線ＤはサンプルＤの試験片の変位と試験力の関係を表している。
　また、図２１のグラフにおける主な変位と試験力との関係を表４に示す。

［サンプルＡとサンプルＣの比較］
　サンプルＡにおいては、図１４に示すように接合開孔部５１と近接接合開孔部５０Ａ（又は５０Ｂ）が左右方向と上下方向に交互に配置されているのに対して、サンプルＣおいては、図１６に示すように接合開孔部５１のみが千鳥状に配置されている。すなわち、サンプルＡは、サンプルＣの接合開孔部５１を１個置きに近接接合開孔部５０Ａ（又は５０Ｂ）に置き換えたものとなっている。
　そして、枠Ｗ内に配置された接合開孔部５１と近接接合開孔部５０Ａ、５０Ｂの個数は、サンプルＡにおいて合計３２個、サンプルＣにおいて合計３５個であり、サンプルＡの接合開孔部５１と近接接合開孔部５０Ａ、５０Ｂの密度と、サンプルＣの接合開孔部５１の密度は、ほぼ同じである。
　ここで、サンプルＡの近接接合開孔部５０Ａ、５０Ｂは、それぞれ２個の接合開孔部（接合開孔部５２と５３、接合開孔部５４と５５）から構成され、サンプルＡの接合開孔部（接合開孔部５１～５５の個数は、合計４８個（接合開孔部５１が１６個、接合開孔部５２と５３が１８個、接合開孔部５４と５５が１４個）であり、サンプルＣの接合開孔部５１の個数の約１．４倍であり、サンプルＡの開孔部（開孔部５１ｂ～５５ｂ）の個数も、サンプルＣの開孔部５１ｂの個数の約１．４倍となる。
　そして、接合部５１ａ～５５ａの大きさが同じであることから、各開孔部５１ｂ～５５ｂの面積も同じとなり、サンプルＡの単位面積当たりの開孔部の面積は、サンプルＣの単位面積当たりの開孔部の面積の約１．４倍となり、サンプルＡはサンプルＣに比べて通気性がよいこととなる。
　次に、表１、２（図１８、１９）に示すように、変位２５mm～１５０mmにおけるサンプルＡの試験力（引張力）は、伸長時が０．５～３．６７Ｎ、復元（収縮）時が０．１～３．６６Ｎであり、同変位におけるサンプルＣの試験力（引張力）は、伸長時が０．６～３．７１Ｎ、復元（収縮）時が０．１６～３．６９Ｎであって、サンプルＡの方がサンプルＣより１～１７％小さくなっており、特に吸収性物品着用時の変位となる復元時の変位５０ｍｍ～１００ｍｍにおける試験力（引張力）（表２）は、サンプルＡが０．４８～１．１４Ｎ、サンプルＣが０．５８～１．２８Ｎであり、サンプルＡの方がサンプルＣより８～１７％小さくなっており、サンプルＡの伸長応力（一定の変位を生じさせる引張応力）はサンプルＣの伸長応力より小さくなっている。
　また、サンプルＡの最大伸度とサンプルＣのは最大伸度は、共に約２３５％である。
　したがって、近接接合開孔部５０Ａ、５０Ｂを設けたサンプルＡは、近接接合開孔部がなく接合開孔部５１のみからなるサンプルＣに比べて、伸長応力が小さくて伸ばしやすく、通気性も優れており、サンプルＡの最大伸度は、サンプルＣの最大伸度と同じであり、一定（例えば２００％）以上となっている。
　また、サンプルＡにおいては、上下方向（伸縮方向と直交する方向）に細かい皺が入っていることから、剛性がほとんどなくて肌ざわりも柔らかくなっているが、サンプルＣにおいては、上下方向に大きな皺が入っていることから、剛性が生じて肌ざわりも硬くなっている。

［サンプルＢとサンプルＤの比較］
　サンプルＢにおいては、図１５に示すように近接接合開孔部６０Ａと６０Ｂと６０Ｃが左右方向と上下方向に交互に配置されているのに対して、サンプルＤにおいては、図１７に示すように接合開孔部７１のみが千鳥状に配置されている。
　そして、サンプルＢの枠Ｗ内に配置された近接接合開孔部６０Ａ、６０Ｂ、６０Ｃの個数は、合計２９．５個であり、サンプルＤの枠Ｗ内に配置された接合開孔部７１の個数は、合計３２個であり、サンプルＢの近接接合開孔部６０Ａ、６０Ｂ、６０Ｃの密度と、サンプルＤの接合開孔部７１の密度は、ほぼ同じである。
　この場合、サンプルＢの近接接合開孔部６０Ａ（６０Ｂ）は、傾斜した楕円を２分割した接合開孔部６２（６４）と６３（６５）から構成されるが、この傾斜した楕円の長径と、サンプルＤの接合開孔部７１の長さはほぼ同じであることから、近接接合開孔部６０Ａ（６０Ｂ）の開孔部６２ｂ（６４ｂ）と６３ｂ（６５ｂ）の面積と接合開孔部７１の開孔部７１ｂの面積はほぼ同じである。
　また、近接接合開孔部６０Ｃは、傾斜した楕円を３分割した接合開孔部６６と６７と６８から構成されるが、この傾斜した楕円の長径は、接合開孔部７１の長さのほぼ１．５倍であることから、近接接合開孔部６０Ｃの開孔部６６ｂ、６７ｂ、６８ｂの面積は接合開孔部７１の開孔部７１ｂの面積のほぼ１．５倍である。
　これより、サンプルＢにおいては、近接接合開孔部６０Ａと６０Ｂが合計２３．５個、近接接合開孔部６０Ｃが６個配置されているが、これによる開孔部６２ｂ～６８ｂの面積は、開孔部７１ｂが３２．５個（２３．５個＋６×１．５個）分の面積に相当し、サンプルＢの単位面積当たり開孔部の面積は、サンプルＤの単位面積当たり開孔部の面積とほぼ同じとなり、サンプルＢの通気性はサンプルＤの通気性と変わらないこととなる。
　次に、表３、４（図２０、２１）に示すように、変位５０mm～７５mmにおけるサンプルＢの試験力（引張力）は、伸長時が０．８７～１．３２Ｎ、復元（収縮）時が０．３８～０．７２Ｎであり、同変位におけるサンプルＤの試験力（引張力）は、伸長時が１．１～３．４８Ｎ、復元（収縮）時が０．４４～３．４５Ｎであって、サンプルＢの方がサンプルＤより小さくなっており、サンプルＢの伸長応力はサンプルＤの伸長応力より小さくなっている。
　また、サンプルＢの最大伸度は約２０９％であるのに対して、サンプルＤの最大伸度は約１５７％となり、サンプルＢの最大伸度は、サンプルＤの最大伸度より大きくなっている。
　したがって、近接接合開孔部６０Ａ、６０Ｂ、６０Ｃを設けたサンプルＢは、近接接合開孔部がなく接合開孔部７１のみからなるサンプルＤに比べて、通気性は同じで、伸長応力が小さく、小さい力で伸ばしやすく、最大伸度が大きくて一定（例えば２００％）以上となっている。

［サンプルＡとサンプルＢの比較］
　サンプルＡにおいては、接合開孔部５１と２個の接合開孔部からなる近接接合開孔部５０Ａ、５０Ｂが混在し、枠Ｗ内の接合開孔部、近接接合開孔部の個数は合計３２個であるのに対して、サンプルＢは２個の接合開孔部からなる近接接合開孔部６０Ａ、６０Ｂと３個の接合開孔部からなる近接接合開孔部６０Ｃからなり、枠Ｗ内の近接接合開孔部の個数は合計２９．５個であり、両サンプルの接合開孔部、近接接合開孔部の個数は、ほぼ同じである。
　すなわち、サンプルＢは、サンプルＡの接合開孔部、近接接合開孔部の密度を変えずに、接合開孔部を近接接合開孔部で置き換え、一部の近接接合開孔部を構成する接合開孔部の個数を増やしたものとなっている。
　そして、サンプルＡにおいて、枠Ｗ内に配置された接合開孔部５１～５５の個数は、合計４８個（接合開孔部５１が１６個、接合開孔部５２～５５が３２個）であり、開孔部５１ｂ～５５ｂの個数も合計４８個となる。
　これに対して、サンプルＢにおいて枠Ｗ内に配置された接合開孔部６２～６８の個数は、合計６５個（接合開孔部６２～６５が４７個、接合開孔部６６～６８が１８個）であり、開孔部６２ｂ～６８ｂの個数も合計６５個となる。
　これより、サンプルＢの枠Ｗ内に配置された開孔部６２ｂ～６８ｂの個数は、サンプルＡの同枠内に配置された開孔部５１ｂ～５５ｂの個数の約１．３５倍である。
　サンプルＡの各接合部５１ａ～５５ａの大きさとサンプルＢの各接合部６２ａ～６８ａの大きさは同じであることから、サンプルＡの各開孔部５１ｂ～５５ｂの面積とサンプルＢの各開孔部６２ｂ～６８ｂの各面積もほぼ同じである。
　よって、サンプルＢの単位面積当たりの開孔部の面積は、サンプルＡの単位面積当たりの開孔部の面積の約１．３５倍となり、サンプルＢはサンプルＡに比べて通気性がよいこととなる。
　すなわち、サンプルＢは、サンプルＡの接合開孔部、近接接合開孔部の密度を変えずに、近接接合開孔部の個数と近接接合開孔部を構成する接合開孔部の個数とを増やすことにより、サンプルＡより非伸縮性シートの通気性を高くしている。
　また、サンプルＡとサンプルＢの引張試験結果を比較すると、吸収性物品着用時の変位となる変位５０ｍｍ～７５ｍｍにおける試験力（引張力）は、サンプルＡの伸長時が０．９８～１．３７Ｎ、復元（収縮）時が０．４８～０．８１Ｎであるのに対して、サンプルＢの伸長時が０．８７～１．３２Ｎ、復元（収縮）時が０．３８～０．７２Ｎで、サンプルＢの方がサンプルＡより４～２１％小さくなっており、サンプルＢの伸長応力はサンプルＡの伸長応力より小さくなっている。
　したがって、近接接合開孔部が形成された弾性シートにおいては、サンプルＢのように接合開孔部、近接接合開孔部の密度を変えずに、近接接合開孔部の個数と近接接合開孔部を構成する接合開孔部の個数とを増やすことにより、吸収性物品着用時の伸長応力を小さくして、小さい力で伸ばしやすくし、通気性をよくすることができる。

［サンプルＣとサンプルＤの比較］
　サンプルＣとサンプルＤは、共に近接接合開孔部は形成されず、接合開孔部５１、７１が千鳥状に配置されたもので、サンプルＣでは枠Ｗ内に３５個の接合開孔部５１が配置され、サンプルＤでは枠Ｗ内に３２個の接合開孔部７１が配置され、両サンプルの接合開孔部の密度はほぼ同じである。
　この場合、サンプルＤの接合部７１ａは、サンプルＣの接合部５１ａより上下方向に長く、サンプルＤの開孔部７１ｂはサンプルＣの開孔部５１ｂより上下方向と左右方向に大きい（接合部７１ａの上下方向の長さは接合部５１ａの上下方向の長さの１．５倍であることから、開孔部７１ｂの面積は開孔部５１ｂの面積の約２倍であると推測される。）。
　これより、開孔部７１ｂの面積が開孔部５１ｂの面積の約２倍であるとした場合、サンプルＤの単位面積当たりの開孔部の面積は、サンプルＣの単位面積当たりの開孔部の面積の約１．８倍となり、サンプルＤはサンプルＣに比べて非伸縮性シートの通気性がよいこととなる。
　一方、サンプルＣとサンプルＤの引張試験結果を比較すると、サンプルＣの最大伸度は約２３５％であるのに対して、サンプルＤの最大伸度は約１５７％となり、サンプルＤの最大伸度は、サンプルＣの最大伸度より極端に低くなっている。
　したがって、接合開孔部のみが形成された弾性シートにおいては、サンプルＤのように接合部の上下方向の長さを長くして開孔部の面積を大きくすると、通気性はよくなるが、最大伸度が極端に低下することとなる。

　以上のように弾性シートに近接接合開孔部を形成することにより、伸長応力を小さくして弾性シートを小さい力で伸ばしやすくし、最大伸度を一定以上に大きくすると共に通気性をよくすることができ、また、通気性を損なうことなく伸長応力を小さくして弾性シートを小さい力で伸ばしやすくし、最大伸度を一定以上に大きくすることができ、また、きめ細かい皺を形成することで、シートの剛性を低減し、良好な風合いの吸収性物品をつくることができる。

　本発明の吸収性物品は、弾性フィルムを使用した吸収性物品において、吸収性物品の伸長応力を小さくして吸収性物品を小さい力で伸ばしやすくし、通気性をよくすると共に、吸収性物品の最大伸度を一定以上に大きくすることができるようにし、また、伸縮方向と直交する方向に連続する大きな皺が入ることによって剛性が生じ、吸収性物品の柔軟性が損なわれることがないようにするものであり、パンツ型、テープ止め型、パッドタイプ等の種々の形態の紙おむつ等の使い捨て下着を含む吸収性物品に利用できる。

１　パンツ型吸収性物品
２　腹側部
３　背側部
４　股部
５　胴回り開口部
６、７　脚回り開口部
８、９　サイドシール部
２０　腹側パネル
２０ａ　上縁
２０ｂ、２０ｃ　下縁
２０ｄ　左側部
２０ｅ　右側部
２１　第１の非伸縮性シート
２１ａ～２１ｈ　第１の非伸縮性シート
２２　第２の非伸縮性シート
２２ａ～２２ｈ　第２の非伸縮性シート
２３　弾性フィルム
２３ａ～２３ｈ　弾性フィルム
３０　背側パネル
３０ａ　上縁
３０ｂ、３０ｃ　下縁
３０ｄ　左側部
３０ｅ　右側部
３１　第１の非伸縮性シート
３２　第２の非伸縮性シート
３３　弾性フィルム
４０　パッド
４０ｂ、４０ｃ　側縁
４１　吸収体
４２　外面シート
４２ａ　ポリエチレンフィルム
４２ｂ　不織布
４３　内面シート
４４、４５　ギャザーシート
４４ａ、４５ａ　端部
４４ｂ、４５ｂ　起立部
５１～５５　接合開孔部
５１ａ～５５ａ　接合部
５１ｂ～５５ｂ　開孔部
５０Ａ、５０Ｂ　近接接合開孔部
６２～６８　接合開孔部
６２ａ～６８ａ　接合部
６２ｂ～６８ｂ　開孔部
６０Ａ、６０Ｂ、６０Ｃ　近接接合開孔部
７１　接合開孔部
７１ａ　接合部
７１ｂ　開孔部
Ａ～Ｄ　曲線
ｄ１、ｄ２、ｄ３　間隔
Ｅ１、Ｅ２、Ｅ３、Ｅ４　弾性部材
Ｇ１～Ｇ５　分割線
Ｈ１　第１の方向
Ｈ２　第２の方向
Ｈ３　第３の方向
Ｗ　枠

 

Claims (14)

1. 　伸縮領域を備えた吸収性物品であって、
   　前記吸収性物品の前記伸縮領域は、第１の非伸縮性シートと弾性フィルムと第２の非伸縮性シートとがこの順で積層された弾性シートで構成され、
   　前記弾性シートには、前記第１の非伸縮性シートと前記第２の非伸縮性シートを接合する接合部と、該接合部の形成により前記弾性フィルムに生成された開孔部とによって接合開孔部が多数形成されており、
   　前記接合部は、前記弾性フィルムが前記伸縮領域の伸縮方向に伸長された状態で、前記第１の非伸縮性シートと前記第２の非伸縮性シートを接合することによって形成されたものであり、
   　前記接合開孔部の一部又は全部は、近接した複数の接合開孔部で構成される近接接合開孔部を形成していること
   を特徴とする吸収性物品。
2. 　前記接合部は、前記伸縮方向に直交する方向に長い縦長の形状を備えていることを特徴とする請求項１記載の吸収性物品。
3. 　前記近接接合開孔部と該近接接合開孔部を形成しない単独の接合開孔部が交互に配置されていることを特徴とする請求項１又は請求項２記載の吸収性物品。
4. 　前記近接接合開孔部を構成する接合開孔部は、前記伸縮方向に対して傾斜する第１の方向に配置されていることを特徴とする請求項１乃至請求項３のいずれかに記載した吸収性物品。
5. 　前記近接接合開孔部を前記第１の方向と直交する方向に２分割する分割線が一直線上に並ばないように前記近接接合開孔部が配置されていることを特徴とする請求項４記の吸収性物品。
6. 　前記近接接合開孔部を構成する接合開孔部は、前記伸縮方向に対して傾斜する第２の方向にも配置されており、該第２の方向は前記第１の方向と異なることを特徴とする請求項4又は請求項５記載の吸収性物品。
7. 　前記第２方向は前記伸縮方向と直交する方向を軸として前記第１の方向を反転した方向であることを特徴とする請求項６記載の吸収性物品。
8. 　前記近接接合開孔部を前記第２の方向と直交する方向に２分割する分割線が一直線上に並ばないように前記近接接合開孔部が配置されていることを特徴とする請求項６又は請求項７記載の吸収性物品。
9. 　前記第１の方向に配置された接合開孔部より構成される前記近接接合開孔部と前記第２の方向に配置された接合開孔部より構成される前記近接接合開孔部は、均等に配置されていることを特徴とする請求項６乃至請求項８のいずれかに記載した吸収性物品。
10. 　前記近接接合開孔部は、２個乃至３個の接合開孔部で構成されることを特徴とする請求項１乃至請求項９のいずれかに記載した吸収性物品。
11. 　前記接合開孔部の全部が前記近接接合開孔部を形成し、２個の接合開孔部で構成される前記近接接合開孔部と３個の接合開孔部で構成される前記近接接合開孔部が、一定の割合で配置されていることを特徴とする請求項１０記載の吸収性物品。
12. 　前記近接接合開孔部は、前記伸縮方向と直交する方向に前記接合開孔部が存在しない領域が連続しないように配置されていることを特徴とする請求項１乃至請求項１１のいずれかに記載した吸収性物品。
13. 　前記吸収性物品は、腹側部と股部と背側部とから構成されるパンツ型吸収性物品であり、該腹側部及び／又は該背側部は、前記伸縮領域を備えていることを特徴とする請求項１乃至請求項１２のいずれかに記載した吸収性物品。
14. 　前記吸収性物品は、該吸収性物品の前記伸縮方向の中央部に吸収体が配置され、該吸収体の前記伸縮方向の外側の領域に前記伸縮領域を有していることを特徴とする請求項１乃至請求項１３のいずれかに記載した吸収性物品。
    
     

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