WO2018043576A1 - 細胞培養容器 - Google Patents

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孝之 江村
信二 森下
孝則 坂井
憲三朗 谷
洋志 小原
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株式会社アステック
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Abstract

2枚の板状の主壁部1、2を所定の間隔g1をおいて互いに対面するよう配置し、それらの間の空間S1の一部または全部の周囲を、側壁部3によって取り巻いて、内部空間S1を形成し、さらに、前記主壁部および前記側壁部から選ばれる1以上の部分に出入口4を設け、全体として剛性を持った板状の細胞培養容器とする。そして、主壁部の一部におよび/または側壁部の一部または全部にガス透過部を設けて、従来の細胞培養バッグの問題点を解消する。

Description

細胞培養容器
 本発明は、細胞培養容器に関するものであり、とりわけ、閉鎖系での接着性細胞の培養に好ましく利用可能な細胞培養容器に関するものである。
 抗体医薬品などに用いられるタンパク質の大量生産や、医薬品、化粧品、食品などの評価に用いられる細胞の大量生産などのために、ガス透過性を有する有機高分子製の柔軟なシートからなる細胞培養バッグが開発されている(例えば、特許文献1、2など)。
 前記のような細胞培養バッグは、従来、浮遊細胞の培養に用いられていたが、近年では、内面に親水処理や接着コートを施すことによって接着性細胞(足場依存性細胞とも呼ばれる)の培養にも用いられている。該細胞培養バッグを用いた接着性細胞の培養では、図14(a)、(b)に例示するように、該細胞培養バッグ100内に液状培地200が収容され、該バッグの2つの対向する主壁部である柔軟なシート110、120のそれぞれの内面111、121に接着性細胞を固定した状態で増殖させることで、細胞培養が行われる。図14(a)では、バッグの主壁部を構成するシートが透明であるため、容器内の空間の外周形状を定める線130や下部の出入口を実線で描いている。
 このような細胞培養バッグを用いれば、出入口に接続されたチューブ140、150を介して他のバッグや容器、種々の処理装置(例えば、試薬、培地、細胞などを注入するための外部装置、培養後の細胞や廃液を回収するための外部装置)などと接続して閉鎖系の細胞培養システムを構成することができる。このような細胞培養システムは、細胞の播種、継代、培地交換、細胞の回収などを、外界に露出することなしに行うことができるので、汚染の危険性がより低減された好ましいシステムである。
特開2006-262876号公報 特開2009-159890号公報
 しかしながら、本発明者らが、上記のような従来の細胞培養バッグ(以下、単にバッグともいう)を用いた細胞培養を詳細に検討したところ、次に述べる問題が含まれていることがわかった。
 該問題とは、先ず、該バッグが柔軟なシートからなるバッグであるという本来的な性質に起因して、該バッグの取扱い方(例えば、2つの主壁部を手でつかむなど)によっては、2つの主壁部のそれぞれの内面(図14(b)における111、121)同士が互いに接触し、該内面上でそれぞれに増殖していた細胞が互いに擦れ合って損傷を受け、または、該内面から剥離し、培養細胞の回収率が低下し易いという問題である。
 また、前記のような2つの主壁部の内面同士の接触が生じないように、バッグ内には液状培地を培養に本来必要な量よりも多く注入しなければならないという問題もある。これは、バッグを液状培地の注入によって比較的大きく膨らませておくことによって、2つの主壁部同士の接触を防止することを意図するものであって、液状培地の消費量が増大するので好ましくない。
 また、上記のようにバッグを膨らませるように液状培地を注入することによって、バッグ内の液状培地の圧力が高くなり、適切な培養条件から逸脱する。
 さらには、培養すべき接着性細胞を液状培地と共にバッグ内に導入(播種)した後、該接着性細胞をバッグの主壁部の内面上に好ましく定着させるためには、所定のベース板上にバッグを横たわらせる(主壁部を水平に位置させる)必要がある。これは、播種した接着性細胞を主壁部の内面上に均一に沈降させるためである。
 細胞培養バッグを横たわらせると、1つのバッグがベース板の上面において大きな面積を占有することになる。よって、限られたスペース内に、より多くのバッグを密に配置するためには、例えば、図15に示したバッグ100a、100b、100cのように、複数のバッグを該ベース板(例えば、インキュベータ内のステージ)300上にそれぞれ横たわらせかつ積み重ねることが好ましい。しかし、そのような積み重ねを行うと、下方に位置するバッグほど、上方のバッグの重さを受けて圧縮され、バッグ内の液状培地の圧力がさらに高くなる。そのため、従来のバッグを多数用いた細胞培養では、多段の棚板を持ったキャビネットなどを用いて、横たわらせたバッグ同士の間にスペースを確保する必要があり、よって、多数のバッグを上下方向に密に配置することができなかった。
 本発明の課題は、上記した従来の細胞培養バッグの問題点を解消し得る、新たな構造の細胞培養容器を提供することにある。
 上記の課題を解決し得る本発明の主たる構成は、次のとおりである。
〔1〕所定の間隔をおいて互いに対面するよう配置された2枚の板状の主壁部と、
 前記2枚の板状の主壁部同士の間に密閉空間が形成されるように、該主壁部同士の間の空間の一部または全部の周囲を取り巻いて、該主壁部同士を連結する側壁部と、
 前記主壁部および前記側壁部から選ばれる1以上の部分に設けられた出入口と
を有し、かつ、
 下記(A)の部分および下記(B)の部分のうちの一方または両方に、前記密閉空間と外界との間でのガス透過を可能にするガス透過部が設けられている、
細胞培養容器。
  (A)前記2枚の板状の主壁部のうちの、一方の主壁部の主面の一部分、または、両方の主壁部のそれぞれの主面の一部分。
  (B)側壁部の一部分または全ての部分。
〔2〕側壁部全体がガス透過性を有する材料からなり、それによって、上記(B)の部分が、側壁部の全ての部分となっている、
前記〔1〕記載の細胞培養容器。
〔3〕上記(A)の部分および上記(B)の部分のうちの両方に、上記ガス透過部が設けられており、かつ、
 上記(A)の部分が、2枚の板状の主壁部のうちの一方または両方の主壁部の主面の中央領域の部分である、
前記〔1〕または〔2〕記載の細胞培養容器。
〔4〕上記(A)の部分に設けられるガス透過部の構造が、
 2枚の板状の主壁部のうちの一方または両方の主壁部の主面の所定位置に、該主壁部を板厚方向に貫通する貫通孔が設けられ、かつ、該貫通孔がガス透過性を有する材料によって封止された構造である、
前記〔1〕~〔3〕に記載の細胞培養容器。
〔5〕上記(A)の部分に設けられるガス透過部の構造が、
 (i)2枚の板状の主壁部のうちの一方または両方の主壁部の主面の所定位置に、該主壁部を板厚方向に貫通する貫通孔が設けられ、かつ、該貫通孔が、ガス透過性を有する材料からなるガス透過部を有する容器状部材によって封止された構造であるか、または、
 (ii)2枚の板状の主壁部のうちの両方の主壁部の主面の所定位置に、それぞれの主壁部を板厚方向に貫通する貫通孔が同軸状に設けられ、かつ、それらの貫通孔が、ガス透過性を有する材料からなるガス透過部を有する管状部材によって封止された構造である、
前記〔1〕~〔3〕に記載の細胞培養容器。
〔6〕上記(B)の部分だけにガス透過部が設けられている、前記〔1〕または〔2〕記載の細胞培養容器。
〔7〕前記2枚の板状の主壁部のそれぞれの板厚が、0.5mm~10mmであり、
 前記2枚の板状の主壁部の外周形状が、互いに合同な長方形または正方形であって、該長方形または該正方形の一辺の長さが、30mm~1000mmであり、
 前記2枚の板状の主壁部が、1.0mm~10mmの間隔をおいて互いに平行に対面している、
前記〔1〕~〔6〕に記載の細胞培養容器。
〔8〕前記側壁部には、前記内部空間と外界とを連絡するための出入口が設けられている、前記〔1〕~〔7〕記載の細胞培養容器。
 本発明の細胞培養容器(以下、当該容器ともいう)の第一の特徴は、従来の柔軟なフィルムからなる全体として柔軟な培養バッグとは異なり、2枚の板状の主壁部が所定の間隔をおいて互いに対面するよう配置された構造を有することによる、全体として剛性を有する容器であるという点にある。
 2枚の板状の主壁部が、柔軟なフィルムではなく、それぞれに剛性を有する板状部材であることによって(好ましくは側壁部にも適当な剛性を与えることによって)、当該容器は、図2(a)に示すように、全体として剛性を有する板状の容器となり得る(太い矢印は透過するガスを示す)。これにより、例えば、当該容器を取り扱うための外力(図1(a)に示すような、2枚の板状の主壁部を互いを近づけようとする板厚方向の圧縮力F(太い矢印))が該主壁部に与えられても、主壁部の内面同士が互いに接触することがない。よって、変形に注意することなく手やハンドリング装置によって当該容器を掴むことができ、従来の柔軟な細胞培養バッグに比べて格段に向上した取扱い性が得られる。
 尚、2枚の剛性を有する板状物同士を接触させないために、側壁部以外に、専用のスペーサーとなる支柱部を、側壁部以外の必要な位置に設けてもよい。
 また、当該容器では、上記のような外力を受けても主壁部の内面同士が構造上互いに接触しないので、従来のバッグのように接触防止のために液状培地を過剰に注入して膨らませておく必要がなく、細胞培養にとって適切な量の液状培地を容器内に注入しておくことができ(即ち、本来、細胞培養自体にとって無用であった液状培地の消費を排除でき)、経済的である。
 また、当該容器の主壁部の厚さは、従来の培養バッグにおける柔軟なシートよりも厚いが、液状培地を注入した時の当該容器全体としての厚さは、容器を膨らませる必要がないので、従来の細胞培養バッグよりも薄くすることができる。さらには、当該容器は、外力を受けても、主壁部同士の間の距離が大きく減少することがないので、従来の柔軟な細胞培養バッグほど内圧が高まることがない。よって、当該容器は、主壁部を水平に横たわらせた姿勢にて、多数積み重ねることができ、図2(b)に示すように、限られたスペース内に、多数の当該容器を上下方向に密に配置することが可能になる。このような使用方法は、従来の柔軟な培養バッグではできなかった使用方法である。
 また、当該容器の第2の特徴は、主壁部同士の間に形成される密閉空間(培養液が注入される容器内の空間)と外界との間でのガス透過を可能にするガス透過部が、局所的に設けられているという点にある。
 従来の細胞培養バッグでは、主壁部に該当する柔軟なフィルムの全面を通して外界のガスをバッグ内に供給していたが、本発明者らの研究によれば、必ずしも容器全体を通して外界の酸素を内部に供給する必要はなく、局所的なガス透過部のみを通して外界のガスを内部の液状培地に供給するだけであっても、十分に細胞培養が可能である。
 当該容器内に液状培地と培養すべき細胞を収容すると、局所的なガス透過部を通して外界のガス(とりわけ酸素)が当該容器内の液状培地に供給され、細胞培養が進行する。ガス透過部を局所的に設けたことによって、当該容器全体に剛性を与えることが可能になったと言うこともできる。
 また、主壁部の外形が大きい場合であっても、本発明では、主壁部の中央部など所定の選択位置にガス透過部が適宜設けられるので、当該容器は、全体として剛性を持った比較的大きい板状の容器であっても、当該容器内における細胞培養は、常に外界からの適切なガス供給の下で行われる。
図1は、本発明の細胞培養容器の構造の一例を概略的に示す図である。図1(a)は、当該容器の断面を示す図であり、図1(b)のX-X断面矢視図である。図1(b)は、図1(a)に示す当該容器を上方から見た図(上面図)である。図1(b)では、一方の主壁部1を部分的に切り欠いて、内部空間S1を見せており、さらに、側壁部3を部分的に切り欠いて(ハッチングを施した部分)、該側壁部を貫通する出入口4(入口4a、出口4b)の内部通路を見せている。 図2は、本発明の細胞培養容器の外観例および典型的な使用状況を概略的に示す斜視図である。同図では、分かり易く示すために側壁部にハッチングを施しており、外観を単純に描くために、主壁部の側面と側壁部の外面とが同じ平面内にある場合(単純な板状の直方体である場合)の例を示している。また、図2(b)では、積層された多数の細胞培養容器のうち、最上層と最下層の細胞培養容器だけを実線で描いており、最上層と最下層の間に位置する層は一点鎖線で描き、詳細な描写を省略している。 図3は、本発明における側壁部の構造例を概略的に示す断面図である。 図4は、本発明において主壁部の中央部に設けたガス透過部の態様例を概略的に示す斜視図である。 図5は、本発明において主壁部の中央部に設けたガス透過部の構造例を概略的に示す断面図である。 図6は、本発明において側壁部に出入口の構造例を概略的に示す断面図である。同図の例では、説明のために、チューブを差し込むための単純なストレートの管状部材が、側壁部を貫通した状態で固定されている。該管状部材は、内部の管路を見せるために部分的に断面を示している。 図7は、本発明による細胞培養容器の剛性を試験する方法を概略的に示す断面図である。 図8は、本発明において、主壁部の一方の主面(容器内側の面)に対して親水化処理を施さない場合と施した場合の違い(図8(a))、および、それらの主面上での細胞培養の様子、および、従来のポリスチレン製の培養用ディッシュ上での細胞培養の様子を示す顕微鏡写真である。 図9は、本発明による細胞培養容器の内面上での細胞培養の様子(図9(a))と、T75フラスコの内面上での細胞培養の様子(図9(b))とを示す顕微鏡写真である。 図10は、本発明による細胞培養容器の主壁部の上下のポジションを反転させる(当該容器を裏返す)タイミングを変えることによって、各内面上での細胞培養の様子がどのように変化するかを示した顕微鏡写真である。 図11は、実施例および比較例において、ヒト間葉系幹細胞が未分化維持能を持ったまま細胞増殖できているかどうかを評価するため、本発明の細胞培養容器と従来の培養用ディッシュを用いて、1継代目と2継代目の細胞を用いて骨分化を行った実験の流れを説明するフロー図である。 図12は、図11に示す実験の結果を示すグラフ図である。 図13は、図11に示す実験の結果を示す顕微鏡写真である。 図14は、従来の細胞培養バッグの構造の一例を概略的に示す図であって、図14(a)は、該バッグの主壁部を外側から見た図、図14(b)は、図14(a)に示す図のX10-X10断面矢視図である。 図15は、従来の細胞培養バッグの問題点の1つを示す図である。
 以下、本発明の細胞培養容器を詳細に説明する。
 当該細胞培養容器は、図1(a)、(b)に構造の一例を示すように、2枚の板状の主壁部1、2を有する。これら主壁部1、2は、互いの間に間隔g1をおいて、それぞれの主面1a、2a同士が互いに向かい合うように配置されている。以下、互いに向かい合った主壁部の主面を「内面」とも呼ぶ。そして、側壁部3が、前記2枚の板状の主壁部同士の間に密閉空間S1が形成されるように、該主壁部同士の間の空間の一部または全部の周囲を取り巻いて、該主壁部同士を連結している(本発明でいう密閉空間は、当該容器のための出入口が閉鎖された状態を意味する)。
 当該容器には、下記(A)の部分および下記(B)の部分のうちの一方または両方に、前記密閉空間と外界との間でのガス透過を可能にするガス透過部が設けられており、それによって、内部空間S1は、細胞培養に適したガス供給可能な閉鎖された空間となっている。
  (A)前記2枚の板状の主壁部のうちの、一方の主壁部の主面の一部分、または、両方の主壁部のそれぞれの主面の一部分。
  (B)側壁部の一部分または全ての部分。
 図1の例では、主壁部にはガス透過部は設けられておらず、側壁部だけにガス透過部が設けられている。また、側壁部の全体がガス透過性を有する材料からなり、それによって、ガス透過部が設けられる部分である上記(B)の部分は、側壁部の全ての部分となっている。
 以上の構成によって、当該容器は、従来の細胞培養バッグにおける問題点が解消されたものとなっている。
 尚、前記主壁部1、2および前記側壁部3から選ばれる1以上の部分(図1の例では、側壁部3の一辺)には、前記内部空間S1と外界とを連絡するための出入口4(図1の例では、入口4aと出口4b)が設けられることが好ましい。
 2枚の主壁部1、2は、当該容器を取り扱うための外力を受けても、そのときの主壁部間の間隔g1に対して、主壁部同士が互いに接触するような変形が生じない剛性を有する板状物であることが好ましい。2枚の主壁部1、2が前記のような剛性を有することによって、主壁部の内面同士の接触が抑制されるだけでなく、当該容器を取り扱うための外力を受けたときに、当該容器内部の圧力が過剰に高くなるような内側への変形(撓み)も抑制されるので好ましい。尚、主壁部の内面1a、2a同士が互いに接触しないためには、主壁部の剛性のみならず、主壁部の外周の大きさ、主壁部間の間隔g1、側壁部の剛性(撓み量)、主壁部のどの部分を側壁部が支持しているかなどをも考慮することが好ましい。ただし、これらの要素は、主壁部が一般的な構造用の板状の部材としての剛性を有し、かつ、主壁部間の間隔g1が十分であれば、特に考慮しなくてもよい。
 上記「当該容器を取り扱うための外力」としては、例えば、図1(a)に示すような当該容器を把持するために主壁部に対してその厚さ方向に局所的に加えられる圧縮荷重Fや、当該容器を多数積み重ねた際に、下側の容器に作用する上側の容器の重量の合計などが代表的なものとして挙げられる。通常の培養作業における取り扱いでは、当該容器を把持するために手やハンドリング装置によって局所的に加えられる圧縮荷重Fは、2~200N程度である。例えば、図2(b)に示すように、当該容器を積み重ねる場合を考える。一例として、各容器の主壁部を、それぞれ(縦25cm、横20cm、厚さ0.5cm、重さ50g)の板とし、1つの容器内における主壁部間の間隔g1を0.4cmであるとする。該容器の内部(液体培地が入る空間)の容積を25cm×20cm×0.4cm=200cm(=200mL)であるとすると、充填される液体培地の重量は約200gであるから、液体培地が充填された容器の1つ当たりの重量は300gとなる。このような液体培地を含んだ容器を50枚積み重ねる場合、最下段の容器には49枚分の重量14.7kg(約144N)が作用する。
 前記のような外力の中でも、当該容器を把持するために加えられる圧縮荷重Fは、通常局所的であるために、例えば、主壁部の中央部付近に作用すると、該主壁部の中央部を内側に最も大きく撓ませる外力となり得る。このとき、主壁部の外形がより大きくなると主壁部の中央部の撓み量もより大きくなる。また、当該容器を多数枚程度積み上げた時に、最下段の容器に作用する圧縮荷重は、局所的な脚部やスペーサーを介在させない場合には、通常、主壁部に対して全面的に作用し、主として側壁部を撓ませる外力となり得る。
 一方、2枚の主壁部同士の間隔(2面間の距離)g1の最小値は、後述のとおり、特に限定はされないが、後述のとおり1mm程度が好ましく、2mm程度がより好ましい値である。
 よって、主壁部の中央に前記圧縮荷重Fが局所的に作用する場合、主壁部同士の間隔g1と側壁部の撓み量とを考慮すると、片側の主壁部の中央部の撓み量e1は、g1の半分よりも小さいことが好ましく、例えば、2mm以下程度であることが好ましく、1mm以下程度(さらには1mm未満)であることがより好ましい。後述のとおり、主壁部同士の間隔g1が1mmである場合には、片側の主壁部の中央部の撓み量は0.5mm未満であれば、通常の取り扱い上の外力が作用しても、主壁部の内面同士の接触を回避することができる。
 また、側壁部の撓みを抑制することによって、主壁部の内面1a、2a同士が互いに接触しないだけでなく、当該容器の内圧が過剰に上昇することも抑制されるので好ましい。
 上記した主壁部の中央部の撓み量を達成するためには、主壁部の材料の縦弾性係数(ヤング率)と形状(厚さ、補強用のリブ、外周形状の大きさなど)が重要である。
 主壁部の材料の縦弾性係数(ヤング率)としては98000(N/mm)以上、とりわけ、100000~600000(N/mm)程度が好ましい。これらの縦弾性係数の値は、あくまでも好ましい一例であって、2枚の主壁部の内面同士が通常の取り扱い上の外力によって互いに接触しないように、両主壁部同士の間の距離に応じて、該縦弾性係数を適宜決定すればよい。
 前記のような縦弾性係数を有する材料としては、有機高分子材料(とりわけ合成樹脂材料)、ガラス、金属などが挙げられる。いずれの材料も、培養すべき細胞および液状培地に影響を与えることがなく、かつ、培養すべき細胞および液状培地から影響を受けて劣化しないものが好ましい。
 前記のような適度な剛性を有し有機高分子材料としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(とりわけ延伸ポリエチレンテレフタレート)などの合成樹脂材料が好ましいものとして挙げられる。
 ガラスとしては、ソーダ石灰ガラス、石英ガラス、強化ガラスなどが挙げられる。
 金属としては、ステンレスなどが挙げられる。
 主壁部は、外部から当該容器内の細胞の顕微観察や培地の観察(色の観察)を行う点から、透明であることが好ましい。
 前記の材料のなかでも、ポリスチレンなどの有機高分子材料は、ヒトを含めた哺乳動物細胞の培養容器として広く一般的に使用されている為、材料の評価試験を行う必要がなく、顕微観察にも適しており、好ましい材料である。
 また、主壁部は、上記した材料を組み合わせた積層体であってもよく、内面用、機械的強度用など、各層や骨格に適した材料を適宜選択してもよい。
 2枚の主壁部の外周形状は、特に限定はされず、円形、楕円形、四角形(正方形、長方形を含む)、異形など、種々の形状であってよく、周囲にデッドスペースを生じさせないという点からは、長方形、正方形が好ましい形状である。
 2枚の主壁部の外周形状は、互いに異なる形状や相似的な形状であってもよいが、各内面同士を向い合せたときに外周形状が一致する形状(即ち、鏡像的に合同な形状)であることが好ましい。この点からも、長方形、正方形が好ましい外周形状である。ここでいう主壁部の外周形状は、あくまでも基本形状である。例えば、長方形または正方形の角部には、面取りや丸みを適宜付与してもよく、また、必要に応じて、取っ手として利用可能なように外側に膨らんだ突出し部を主壁部の一方または両方の外周に加えてもよい。
 主壁部の外周形状が長方形または正方形である場合、図1(b)に示すように、その外周形状の一辺の長さL1は、培養の規模に応じて決定され得、限定はされないが、培養細胞数(最適な細胞密度)や、当該容器を上下反転させるために用いる反転装置の大きさの点からは、30mm~1000mm程度が好ましく、80mm~300mmがより汎用的で好ましい長さである。
 主壁部の外周形状が、円形、楕円形、異形などの場合の大きさは、例えば、上記した長方形または正方形の主面の面積と同程度の主面の面積を有するものであってよい。
 主壁部の厚さは、上記の圧縮荷重Fを中央部に受けても、上記した撓み量を超えないように、それぞれの材料の縦弾性係数や外周形状の大きさに応じて、適宜決定すればよい。
 例えば、上記したポリスチレンなどの有機高分子材料では、2枚の板状の主壁部の厚さは、0.5mm~5mm程度が好ましく、1mm~3mm程度がより好ましい。前記した厚さの上限を上回ると、主壁部の剛性はより高くなるが、全体が過剰に厚く、重くなる点では好ましくない。主壁部の厚さが0.5mm程度まで薄くなると、主壁部はより撓みやすくなるが、その場合には、図1(b)に示す内部空間S1の一辺の長さL2をより小さくし、かつ、2枚の主壁部の内面主壁部同士の間隔g1をより大きく取ることによって、主壁部の内面1a、2a同士の接触を回避してもよい。
 2枚の主壁部の厚さは、互いに異なっていてもよいが、どちらの主壁部の外側からも同じ様に内部の顕微観察が可能である点からは、互いに等しい厚さであることが好ましい。
 また、片側の主壁部の中央部の撓み量が、上記した片側の主壁部の中央部の撓み量e1を超える場合であっても、主壁部同士の間隔g1をより大きく取ることによって、主壁部の内面1a、2a同士の接触を回避してもよい。
 また、主壁部を厚くするかわりに、該主壁部の撓みを抑制するためのリブを主壁部に適宜付与してもよい。該リブは、主壁部を局所的に厚くしたものでもよく、別の補強用の梁部材を接着や溶着などによって主壁部の主面に取り付けたものであってもよい。リブは、主壁部の外側の主面(外面)に付与することが好ましいが、内側の主面に付与し、内側の主面の増大を期待してもよい。
 また、前記リブの代わりに、主壁部の撓みを抑制するための補強筋を主壁部内に埋め込んでもよい。補強筋の材料や断面形状、パターン、主壁部内に埋め込むための成形技術それ自体は、従来公知の補強技術を参照することができる。
 また、主壁部の撓みを抑制するための構造として、ダンボール等にみられる構造のように、波状に成形した板状物の片面または両面に平坦なシート状物を貼り合せた複合構造を採用してもよい。
 2枚の主壁部同士は、互いに平行に対面していることが好ましい。2枚の主壁部同士の間隔g1は、適宜決定してよく、培養に適切な量の液状培地を収容する点や、主壁部同士を接触させない点からは、1mm~10mm程度が好ましく、1mm~5mm程度がより好ましく、2mm~4mmが特に好ましい。
 上記した主壁部の外周形状の大きさ、主壁部の厚さ、前記の間隔g1とによって、当該容器は、全体として剛性を有する1枚の板状物となり、従来にはなかった良好な取扱い性と、密に積み上げ可能な、剛性を有する板状の細胞培養容器となる。
 主壁部の内面には、接着性細胞を該内面に接着した状態で培養するのに適した面となるような処理を施してもよい。例えば、コラーゲンIコート(1型コラーゲンのコーティング)、ポリ-D-リジンコート、CC2(Cell Culture 2nd Generation)コートなどの表面処理が挙げられる。該表面処理は主壁部1、2のいずれか一方の内面のみについて施されていてもよいし、両方の内面について施されていてもよい。主壁部1、2の両方の内面について前記処理を施すことにより、主壁部1、2の両方の内面に接着性細胞を接着した状態で安定して培養することが可能となる。
 図1(a)に示すように、側壁部3は、2枚の板状の主壁部1、2の間の空間の一部または全部の周囲を取り巻いて、該主壁部1、2の間を封止し、後述の出入口を除いて、容器内の閉鎖された内部空間S1を形成する。該側壁部は、2枚の主壁部同士の間隔を維持するスペーサーでもあり得、容器内の内部空間S1を液密的に閉鎖するシール部材でもあり得る。
 図3(a)に示す態様例では、側壁部3の外側面3bは、主壁部1、2の外周の端面1b、2bよりも内側に引っ込んだ位置にある。図3(b)に示す態様例では、側壁部3の外側面3bは、主壁部1、2の外周の端面1b、2bと同じ面にある。図3(c)に示す態様例では、側壁部3の内側面3aは、主壁部1、2の間に入り込んでいるが、側壁部3の外側面3bは、主壁部1、2の外周の端面1b、2bよりも外側に張り出している。これら図3(a)~(c)に示す態様では、側壁部3は、主壁部1、2の間に入り込んでいるから、主壁部1、2の間の空間の一部の周囲を取り巻いていることになる。
 また、図示しないが、側壁部の内側面が2枚の主壁部の間に全く入り込まず、2枚の主壁部の外周の端面とだけ結合した態様であってもよく、その場合、側壁部3は、主壁部1、2の間の空間の全部の周囲を取り巻いていることになる。
 側壁部の一部または全部には、ガス透過部を設けることができる。側壁部全体をガス透過部とする態様は、製造が単純でありかつ当該容器内への十分なガス供給量が得られるので好ましい。ガス透過部は、当該容器内の液状培地を外部に透過させず、外部のガスを当該容器内の液状培地中へと透過させ得るガス透過性を有する材料からなる。ガス透過部を通じて、内部で発生したガスを外部に透過させてもよい。
 細胞培養のために側壁部が透過すべきガスとしては、酸素、酸素を含んだ空気、二酸化炭素(培地のpHを維持するため)が重要な気体として挙げられる。
 側壁部に用いられる材料のガス透過性は、例えば、酸素については、JIS K7126-1に準拠して測定した酸素透過度が、30(cc/m・24h・atm)以上であることが好ましく、40(cc/m・24h・atm)以上であることが、より好ましい。該酸素透過度の上限は、より高い方が好ましく、特に限定はされないが、例えば、45(cc/m・24h・atm)程度が例示される。
 側壁部をガス透過性材料によって形成しガス透過部とする場合、該ガス透過部の種々のガスに関するガス透過性は、前記の材料に関する酸素透過度に比例し、図1(a)に示す主壁部同士の間隔g1に比例し、図1(a)に示す側壁部の横方向厚さ(主壁部の主面方向に沿った厚さ)t1に反比例する。当該容器を製造するに際しては、実際に細胞培養を行い、側壁部や主壁部に設けられるガス透過部からのガス(とりわけ酸素)の供給の状態を確認して、主壁部同士の間隔g1や側壁部の横方向厚さt1を適宜増減させて調節することができる。
 側壁部全体をガス透過性材料によって形成しガス透過部とする場合、側壁部の横方向厚さt1は、特に限定はされず、材料によっても異なるが、ガス(とりわけ酸素)の適度な透過性と、2枚の主壁部の間隔を過度に減少させないように支持する剛性の点からは、1mm~10mm程度が好ましく、2mm~5mm程度がより好ましい。
 図1(b)に示すように、主壁部1、2の外周形状が長方形または正方形である場合、側壁部3によって囲まれた内部空間S1の外周形状もまた長方形または正方形となることが好ましく、該内部空間S1の一辺の長さL2は、30mm~1000mm程度が好ましく、80mm~300mmがより汎用的で好ましい長さである。
 側壁部のガス透過部に好ましく用いられるガス透過性材料としては、例えば、シリコーンゴム、天然ゴム、スチレンゴムなどが挙げられる。
 側壁部または側壁部のガス透過部は、単一材料からなるものであってもよいし、複数の材料からなる多層構造、複合構造であってもよい。
 2枚の主壁部の間には、両者の間隔g1や結合を維持するための支柱(スペーサー)を、ガス透過の妨げにならないように、主壁部の外周の四隅(側壁部の外側や内側)、中央部、中央部の周囲など、局所的な位置に適宜設けてもよい。該支柱の材料は、目的に合致した剛性や機械的強度を有するものであればよく、例えば、上記した主壁部の材料であってもよい。
 2枚の主壁部の間隔g1が支柱によって確保されたならば、側壁部のみによって2枚の主壁部の間隔を維持する必要はなくなるので、該側壁部の横方向厚さt1をより薄くして撓み易くしてもよい。
 本発明では、2枚の主壁部は剛性を有する板状である。よって、側壁部の弾性/剛性の程度にもよるが、当該容器もまた全体として剛性を有する板状となり得る。
 上記したように、ガス透過部は、主壁部および側壁部のいずれに設けられてもよい。しかし、主壁部の内面は、培養すべき細胞が接着するための主要面であり、また、ガス透過部を構成するガス透過性材料は一般に疎水性であり、培養すべき細胞の接着には適さない場合がある。また、図2(b)に示すように、多数の当該容器を積み重ねた状態で使用される場合には、外界に露出するのは側壁部の外面となる。このような使用状態に対応する点では、主壁部にはガス透過部を設けず、側壁部のみにガス透過部を設ける態様が好ましく、さらに、ガスをできるだけ多く供給する点からは、図1の例のように、側壁部全体をガス透過部とする態様(側壁部全体をガス透過性材料で形成する態様例)が好ましい。
 しかしながら、側壁部のみにガス透過部を設ける態様では、主壁部の外周形状が大きくなった場合に、側壁部から当該容器内の中央部までの距離が長くなり、該中央部の液状培地へのガス供給量が必要量を下回る可能性がある。そのような場合、図4または図5に示すように、2枚の主壁部1、2のうちのいずれか一方または両方の主壁部の主面の所定位置、好ましくは中央部に、1以上のガス透過部5を設けることが好ましい。
 図4(a)に示す配置態様では、主壁部の主面の中央部に1つの大きいガス透過部5が設けられ、図4(b)に示す配置態様では、中央部の中心の周囲に複数(図では、5a~5dの4つ)の小さいガス透過部5が設けられている。主壁部の主面の中央部とは、主壁部の主面の外形線に隣接する縁部を除いた領域である。主壁部の外面を見たときのガス透過部の位置、形状、数、配置パターンなどは、主壁部の外周形状に応じて適宜決定してよい。
 図5は、主壁部に設けられるガス透過部の好ましい構造を例示している。図5(a)~(c)の例では、一方または両方の主壁部の主面中の所定位置に、該主壁部を板厚方向に貫通する貫通孔が設けられ、該貫通孔がガス透過性を有する材料によって封止されている。即ち、主壁部が局所的にガス透過性となっている。図5(d)~(f)の例では、2枚の主壁部を板厚方向に貫通する貫通孔が設けられ、該貫通孔が、ガス透過性を有する材料からなるガス透過部を有する管状部材によって封止されている。図5(d)~(f)に示した例では、管状部材全体がガス透過性を有する材料からなるガス透過部となっている。図5に示した構造例は、多数の好ましい構造例の中の数例であって、ガスが透過し得るあらゆる封止構造を採用することができる。
 より詳細には、図5(a)に示す態様では、主壁部1に貫通孔1cが設けられ、該貫通孔1c内にガス透過性を有する材料5が充填され、該孔内が封止されている。ガス透過性を有する材料5の部分を通して、ガスが透過し得るようになっており、例えば、外界の酸素が容器の内部空間に充填された培養液に供給されるようになっている。
 図5(b)に示す態様では、主壁部1に貫通孔1cが設けられ、該貫通孔1c内にガス透過性を有する材料5が充填されて該孔内が封止され、さらに、該材料5の中央部分に凹部5aが設けられ、ガス透過性を有する材料部分がより薄くなっており、ガス透過性がより高められている。図5(b)に示す態様では、凹部5aの存在によって、ガス透過性を有する材料部分5は、全体として容器状部材であるということができる。図5(b)の例では、該容器状部材5の総厚は、主壁部1の厚さと同じになっているが、当該容器内に突き出して、ガスが透過し得る領域がより大きくなっていてもよい。該容器状部材5の底部は、反対側の主壁部の内面に達していてもよい。また、図5(b)に示す態様では、図における主壁部1の下側が当該容器の内部となっており、主壁部1の内面が平坦になっているが、図における主壁部1の上側が当該容器の内部であってもよい。尚、図5(b)に示す態様では、主壁部1とガス透過性を有する材料部分5との結合性をより高めるために、貫通孔1dはストレートではなく、直径が2段階に変化した孔となっている。
 図5(c)に示す態様では、主壁部1に貫通孔1cが設けられ、該貫通孔1cが、主壁部1の内面に貼り合わされたガス透過性のフィルム5bによって塞がれている。図5(c)に示す態様では、図5(b)に示す態様と同様に、図における主壁部1の下側が当該容器の内部であるが、図における主壁部1の上側が当該容器の内部であってもよい。
 図5(d)に示す態様では、主壁部1と主壁部2にそれぞれ貫通孔1c、2cが設けられ、これら貫通孔1c、2cは、一線上に位置合わせされている。そして、これら貫通孔1c、2cに、ガス透過性を有する材料からなる管状部材5cがはめ込まれて、該貫通孔1c、2cが閉鎖されている。ここでいう、管状部材がはめ込まれるとは、組み立てのステップを限定するものではなく、結果として管状部材がはめ込まれたような構造となるように成形されることをも意味する。図5(d)に示す態様では、該管状部材5c内の管路5dが当該容器を貫通しており、外気が該管路5dの内部に入り込み、管状部材5cの壁部を通過して、当該容器の内部空間S1に充填された培養液に供給されるようになっている。尚、図5(d)に示す態様では、管状部材5cの両端にそれぞれフランジ部5eが設けられており、該管状部材5cが独立した部品であっても抜け難いようになっているが、該フランジ部5eの無いストレートな管状部材であってもよく、主壁部1、2から外部に突き出ていなくてもよい。
 図5(e)に示す態様では、図5(d)に示す態様に加えて、管状部材5cの胴体中央部分(当該容器の内部空間S1に対応する部分)5fの外径が大きくなっている。この態様では、胴体中央部分5fは、ガスが出入りする壁部でありながらも、主壁部1、2の互いの間の間隔を一定に保つスペーサーとしても機能している。
 図5(f)に示す態様では、主壁部1と主壁部2にそれぞれ貫通孔1c、2cが設けられ、これら貫通孔1c、2cは、一線上に位置合わせされている。そして、ガス透過性を有する材料からなる管状部材5gが、主壁部1、2の間にはめ込まれて、該貫通孔1c、2cが閉鎖されている。管状部材5gの内部管路5hと、貫通孔1c、2cとは、一線上に位置合わせされている。外気は、該管状部材5g内の管路5hに入り込み、該部材5gの壁部を通過して、当該容器の内部空間S1に充填された培養液に供給されるようになっている。
 図5(b)、図5(d)、図5(e)に示す態様では、ガスの透過経路となる部分だけをガス透過性としてもよい。
 図5に示した構成では、ガス透過部を有する部材(全体がガス透過性を有する材料からなる部材も含む)は、成形型内で主壁部と一体的に成形されてもよいし、ガス透過部を有する部材を別途形成し、主壁部の貫通孔に組み込んでもよい。例えば、図5(d)~(f)に示す例では、ガス透過部を有する部材の外径が貫通孔の内径よりも大きくなっているが、弾性や柔軟性を利用して、該部材が独立した部品であっても、変形させながら貫通孔に挿入し、該貫通孔を封止することができる。
 ガス透過部を有する部材が独立した部品である場合、主壁部とガス透過性を有する材料からなる部材との接続は、熱による溶着や接着剤による接続であってもよいし、材料の弾性を利用した単なるはめ込みによる接続であってもよい。
 当該容器は、剛性を有する板状の容器であるから、図2(b)に示すように、例えば20枚に達するような多数の当該容器を積み重ねた状態で、細胞培養を行うことができる。
 このとき主壁部の外面同士が互いにぴったりと接触すると、主壁部に設けたガス透過部が塞がれる場合がある。そのような主壁部に設けたガス透過部の閉塞を抑制し、ガス透過部を外気に露出するために、隣り合った当該容器同士の間に適当な隙間が生じるような突起部やスペーサを設けてもよい。
 一方、図5(d)~(f)に示した態様では、多数の当該容器を積み重ねても、各容器の貫通孔が一線上に並ぶので、主壁部に設けたガス透過部が塞がれないという利点がある。
 当該容器には、内部空間と外界とを連絡するための出入口が必要な数だけ設けられる。通常の細胞培養では、細胞や培地、試薬等の注入と取り出しを行うために、入口4aと、出口4bをそれぞれ1つ以上設ける態様が好ましい。出入口の位置は、特に限定はされないが、図1(a)に示すように、入口4aと出口4bを側壁部に設ければ、当該容器の積み重ねの障害にならないという利点がある。
 前記の出入口には、図6に簡単な構成例を示すように、他のバッグや種々の外部機器などとの接続に用いるカップリングや、チューブを差し込むための継手など、必要に応じた接続用器具が設けられることが好ましい。図6の例では、チューブを差し込むための単純なストレートの管状部材4cが、側壁部を貫通した状態で固定されている。
 当該容器の製造方法は、特に限定はされず、接着剤、ボルト、リベット、種々の連結機構を適宜利用して、2枚の主壁部の間に側壁部を挟んだ構造となるように組立てを行えばよい。次に好ましい製造方法の一例を示す。
(A)主壁部となる2枚の適度な剛性を有する板状部材を準備する。
 該板状部材は、透明であることが好ましく、シリコーンゴムを成形するための120℃以上の温度に耐え、かつ、接合可能な材料が好ましい。
 主壁部の材料は、後述の実施例ではポリスチレンを用いたが、PC(ポリカーボネート)樹脂や、延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂なども好ましく使用可能である。
 主壁部の製造方法は限定されない。市販の標準板からの削り出しによって該主壁部を製作してもよいし、射出成形によって該主壁部を成形してもよい。主壁部の製造後は、組み立てまで表面の清浄度を維持することが望ましい。
 主壁部には、射出成形の為のゲートのニゲと、2つの主壁部を組み合わせる際の位置決めのための凹凸に用いる凹部と、出入口のためのポート部材が挿入された際に側壁部の厚さを確保する為の逃がしとを兼ねた、凹部を設けることが好ましい。
 主壁部には、必要に応じて、図5に示した構造を有するガス透過部のための貫通孔を設ける。
(B)主壁部の内面の表面処理
 主壁部の内面には、細胞培養に必要な親水性を付与し、かつ、シリコーンゴム等の側壁部を接合する為の表面処理を施すことが好ましい。該表面処理としては、火炎処理(フレーム処理)、コロナ処理、プラズマ処理、VUV(真空紫外光)の照射などが挙げられる。後述の実施例では、火炎処理(フレーム処理)を用いた。
(C)金型に主壁部をセットする。
 金型にセットする主壁部は、2枚のうちの片方のみである。
(D)側壁部を形成するための液状シリコーンゴムを金型に注入する。
 主壁部の内面上に射出成形によってシリコーンゴム製の側壁部を形成する。このとき、出入口のためのポート部材を差し込むための貫通孔を、金型によって作り込んでおくことが好ましい。
 該シリコーンゴムは、主壁部の材料(PC樹脂など)との選択接着性能を持つもの(信越化学KE-2090)が好ましい材料として挙げられる。
(E)型開きと成形品の取り出し
 金型を加熱し、シリコーンゴムを半硬化させ、一方の主壁部の内面に側壁部が固着した中間部材を得、これを取り出す。シリコーンゴムは、金型から離形可能な程度に硬化しているが、完全には硬化していない状態で取り出すことが好ましい。
(F)他方の主壁部となる板状部材を、前記の中間部材に位置決めして(2枚の主壁部の間に側壁部が挟まるように位置決めして)、これらを貼り合わせる。
 貼り合わせでは、クリップなどの把持具を用い、板厚方向に適度な圧縮力を作用させながら、オーブンで120℃以上30分間加熱する。これにより、側壁部であるシリコーンゴムが完全に硬化すると同時に、他方の主壁部に固着し、貼り合わせが完了する。
 上記(E)において、シリコーンゴムを完全に硬化させた場合には、貼り合わせには、液状シリコーンゴムを接着剤として塗布し、硬化させてもよい。
(G)当該容器の仕上げ(ポートの付与)
 ポート部材を貫通孔に圧入するだけで、ポート部材と貫通孔との接触面がシールされることが好ましい。
 上記(C)の工程(金型に主壁部をセットする工程)で、ポート部材を金型にセットし、主壁部と一体化しても良いし、上記(F)の工程(他方の主壁部を貼り合わせる工程)で、貼り合わせと同時にポート部材を接着しても良い。
 ポート部材の接着には、液状シリコーンゴムを接着剤として塗布しても良い。
 図7は、当該容器の剛性、とりわけ、片側の主壁部の剛性を試験する方法の一例を概略的に示す断面図である。同図に示すように、十分な剛性を有する検査用のベース板Bの平坦な上面B1上に、当該容器の一方の主壁部2の外面を密着させて配置し、上面側となっている他方の主壁部1の外面の中央の領域(例えば、直径10mm~20mm程度の円形領域)に対して、予め定められた圧縮荷重F1(例えば、実使用時において取扱いで作用する200Nなど)を作用させる。その時の中央の領域の降下量が、2枚の主壁部の間隔g1の半分未満であれば、当該容器は、通常の取り扱いでは、主壁部の内面同士が互いに接触することがないと見なすことができる。
 前記の中央の領域の面積や圧縮荷重F1の値は、あくまでも使用上許容される剛性を判定するための一例であって、製品の要求やサイズの大小などに応じて最適な試験となるように適宜変更してよい。
 本発明の細胞培養容器は、2枚の主壁部のそれぞれの内面が互いに接触しないので、多重に密に積み重ねた状態で細胞培養を行うことが可能である。よって、従来の細胞培養バッグに比べてより多くの細胞を培養することが可能である。
 例えば、当該容器の主壁部の内面には、1cm当たり、5×10個の細胞(例えば、間葉系幹細胞など)を培養することができる。この単位面積当たりの数自体は、従来の細胞培養バッグでも達成可能であるが、従来の細胞培養バッグは積み重ねることができず、かつ、液状培地の過剰な注入によって、大きく膨らんでいる。
 これに対して、本発明の細胞培養容器(例えば、片側の主壁部の内面の有効面積(側壁部に囲まれた面積)が100cm、総厚8mmのもの)であれば、向かい合った主壁部の内面の有効面積の合計が200cmとなり、1つの当該容器内には、5×10個×200=1×10個の細胞を培養することができる。このような当該容器(1つ当たりの総厚8mm)を、20段重ねるとすると、合計厚さ160mmのコンパクトな占有空間において、1×10個×20=2×10個という、従来の細胞培養バッグでは得ることのできない数の細胞を回収することが可能になる。
 当該容器によって培養可能な細胞は、特に限定はされないが、接着性細胞であれば、本発明の有用性が特に顕著となる。そのような細胞としては、例えば、ES細胞(胚性幹細胞)、iPS細胞、幹細胞などが挙げられる。
 当該容器を用いて細胞培養を行なう場合に、当該容器内に収容される液状培地は、従来公知のものであってよい。
 本発明の細胞培養容器を用いて接着性細胞を培養する場合、接着性細胞の懸濁液を、本発明の細胞培養容器に収容し、細胞を接着させるべき一方の主壁部の内面を底面として当該容器を横たわらせて、一定期間培養する。前記接着性細胞の懸濁液は、別途培養した接着性細胞を、トリプシン・EDTA処理等により剥離し、適切な液体培地中に分散することにより得ることができる。
 懸濁液中の細胞は、重力により沈降し、底面(主壁部の内面)に接着するので、これを引き続き培養することにより、主壁部の内面に細胞を接着させた状態で、接着性細胞を培養することができる。
 主壁部1、2の両方の内面に細胞を接着させて培養する場合、接着性細胞の懸濁液を本発明の細胞培養容器に収容し、いずれか一方の主壁部の内面を底面として当該容器を横たわらせて、一定期間培養する。懸濁液中の細胞の一部が、底面(一方の主壁部の内面)に接着し、残る一部が培地中に依然として懸濁しているタイミングで、当該容器をひっくり返して(即ち、2枚の主壁部の上下の位置関係を反転させて)、更に一定期間培養する。その結果、依然として懸濁している細胞が新たな底面(他方の主壁部の内面)に沈降し接着するので、主壁部1、2の両方の内面に細胞を接着させて培養することが可能となる。当該容器の上下反転のタイミングは、当業者であれば適宜調整することが可能であるが、細胞懸濁液を本発明の細胞培養容器に収容して培養を開始してから、例えば、ヒトiPs細胞では5分~10分後が好適であり、ヒト間葉系幹細胞などでは60~80分後が好適である。
 図1に示す本発明の細胞培養容器を実際に製作し、側壁部だけからのガス供給であっても、従来と同様の細胞培養が可能であるかどうかを調べた。
 尚、以下の実施例では、各容器内の培養に有効な内面の単位面積における細胞の数を一定にするために、各容器内の培養に有効な内面の面積(培養面積)に応じた数の細胞を播種した。より具体的には、培養面積1cmにつき1×10個の細胞を播種することとした。よって、当該容器の片側の主壁部の培養面積が100cmである場合には、1×10個(=1×10個×100cm)の細胞を播種し、培養面積が75cmであるTフラスコに対しては、7.5×10個(=1×10個×75cm)の細胞を播種した。
実施例1
 製作した当該容器の仕様は次のとおりである。
 主壁部:(材料)ポリスチレン、(厚さ)2mm、(外形寸法)長辺130mm×短辺90mmの長方形、(側壁部に囲まれた内面の領域)長辺124mm×短辺84mmの長方形(片側の有効な培養面積は、100cmである)
 2枚の主壁部の間隔g1:4mm(=側壁部の縦方向の寸法)
 側壁部:(材料)シリコーンゴム、(横方向厚さt1)2mm。シリコーンゴムのガス透過性は、389.4cc・cm/cm・sec・atmである。
 当該容器の総厚さ:8mm
 図7に示した試験による中央の撓み量:圧縮荷重F1=200Nに対して、主壁部の中央部は、微量だけ降下したが、対向する主壁部に接触することはなく、通常の取り扱いに対して十分な剛性を有するものであった。
〔主壁部の内面(培養面)の親水化処理の効果〕
 本実施例では、主壁部の内面に対する火炎処理の有効性を確認した。
 組み立て前の主壁部の内面に対し、バーナーによる火炎処理を施し、主壁部の内面に酸化膜を形成し、該酸化膜上に酸化ケイ素膜を形成することで、図8(a)の写真図中の右側の図のように、水をはじかない親水化処理をすることができることを確認した。未処理のままでは、図8(a)の写真図中の左側の図のように、水ははじかれて分散する。
 図8(b)は、主壁部の内面(親水化処理をしていない面)上で増殖した細胞の様子を示す顕微鏡写真であり、図8(c)は、主壁部の内面(上記の親水化処理をした面)上で増殖した細胞の様子を示す顕微鏡写真であり、図8(d)は、通常のポリスチレン製の培養ディッシュ面上で増殖した細胞の様子を示す顕微鏡写真である。
 これらの顕微鏡写真から、親水化処理によって、細胞の接着性が通常のポリスチレン製の培養ディッシュと同様のレベルに向上することがわかった。
実施例2
〔ヒト間葉系幹細胞の細胞増殖性の検討:片方の主壁部の内面上での培養〕
 本実施例では、実施例1と同様の容器を用い、側壁部だけからのガス供給であっても、片方の主壁部の内面上において、従来と同様の細胞培養が可能であるかどうかを調べた。
(i)培養プロトコル
 本発明の細胞培養容器の2つのポートの一方から、シリンジを用いて当該容器内に液状培地(Poweredby10)を30mL充填し、容器内からできるだけ気泡を取り除き、ヒトMSC細胞を播種し、該ポートに栓をし、インキュベータ内で37℃に維持し、7日間培養した(培養4日目に、培地交換を行った)。培養では、当該容器を裏返さず、主壁部の一方の内面上だけに細胞を沈降させて培養を行った。
 当該容器内に播種した細胞数は、10×10(個)であり、当該容器の片側の主壁部の内面の面積は、上記のとおり100cmである。
 一方、比較のために、T75フラスコ(コーニング社製、(材料)ポリスチレン)を従来の培養容器として用い、本発明と同様に、液状培地(Poweredby10)を30mL収容し、ヒトMSC細胞を播種し、本発明の場合と同じ条件にてインキュベーターで7日間培養した。尚、該フラスコのキャップは、該フラスコ内が密封されないように、ゆるく締めておき、通気性を持たせるようにした。
 T75フラスコに播種した細胞数は、7.5×10(個)であり、該T75フラスコの培養面積は75cmである。
(ii)培養された細胞数の測定結果
 上記の培養後に細胞数の測定を行った。その結果、本発明の細胞培養容器の片側の主壁部の内面(100cm)上で増殖した細胞数は5.64×10個となっており、もとの細胞数の5.6倍となっていた。
 これに対して、T75フラスコで培養された細胞数は4.4×10個となっており、もとの細胞数の5.8倍に増殖していた。
 この結果から、本発明による細胞培養容器内は、側壁部から酸素を供給する構造でありながら、T75フラスコと同等の細胞増殖性を示すことがわかった。
 また、図9(a)、(b)に示すとおり、それぞれの培養後の細胞を顕微鏡観察すると、本発明による細胞培養容器での細胞培養の様子(図9(a))は、T75フラスコでの細胞培養の様子(図9(b)と同様に、高密度に培養できていることがわかった。
実施例3
〔2枚の主壁部の内面での培養〕
 本発明による細胞培養容器の2枚の主壁部のそれぞれの内面に細胞を接着して高密度に培養するためには、各主壁部のそれぞれの内面に均一に細胞を接着させる必要がある。そこで、本実施例では、容器内に1.5×10個の細胞を播種し、主壁部を水平に横たわらせた姿勢にてインキュベータ内に置いた後、10分後、20分後、30分後、40分後、50分後、60分後、70分後、80分後に、それぞれ反転し、その後24時間培養を継続し、それぞれの内面の様子を顕微鏡で観察した。
 図10(a)~(c)は、両内面上で増殖した細胞の様子を示した顕微鏡写真であって、各顕微鏡写真の左側は、最初に下側に位置した(先に細胞を沈降させた)内面の状態を示しており、右側は、上下を反転させた後で下側に位置した内面の状態を示している。また、代表的に、図10(a)は10分後での反転結果を示しており、図10(b)は30分後での反転結果を示しており、図10(c)は60分後での反転結果を示している。
 実験の結果、培養開始から60~80分程度で上下を反転させることで、両内面に均一に細胞を培養できることが確認できた。
 さらに、培養を6日間継続し、培養後の当該容器の内面に増殖した細胞をギムザ染色し、内面上の細胞の分布を確認した。その結果、両内面に均一に細胞が接着し、増殖している様子が確認できた(図示せず)。
実施例4
〔A4サイズ容器(片側の主壁部の内面の有効面積500cm)の検討〕
 主壁部の外周形状と、側壁部が取り囲む領域を拡大したこと、および、主壁部の中央部に1個のガス透過部を設けたこと以外は、上記実施例1で製作した容器と同様の仕様にて、本発明の細胞培養容器を作製した。
 製作した容器の仕様は、次のとおりである。
 主壁部:(材料)ポリカーボネート、(厚さ)2mm、(外形寸法)長辺260mm×短辺210mmの長方形、(側壁部に囲まれた内面の領域)長辺250mm×短辺200mmの長方形(面積500cm)。
 主壁部の中央のガス透過部の配置は、図4(a)に示したように、中央の1か所である。また、ガス透過部の構造は、図5(e)に示したように、主壁部1、2に設けた貫通孔1c、2cに、ガス透過性を有するシリコーンゴムからなる管状部材5cをはめ込んだ構造である。管状部材5cの断面形状は、外径14mm、内径10mmの円形である。
 2枚の主壁部の間隔g1:4mm(=側壁部の縦方向の寸法)。
 側壁部:(材料)シリコーンゴム、(横方向厚さt1)2mm。
 当該容器の総厚さ:8mm。
 図7に示した試験による中央の撓み量:圧縮荷重F1=200Nに対して、主壁部の中央部は、微量だけ降下したが、対向する主壁部に接触することはなく、通常の取り扱いに対して十分な剛性を有するものであった。
 実施例1と同様の温度、培地交換の条件にて、インキュベータ内で細胞培養を行った。
 播種した細胞はヒトMSC細胞であり、播種した細胞数は、5×10(個)であり、注入した液状培地はPoweredby10(250ml)である。
 培養後の当該容器の内面に増殖した細胞をギムザ染色し、内面上の細胞の分布を確認したところ、片側の内面に均一に細胞が接着し、増殖している様子が確認できた(図示せず)。
実施例5
〔培養後の細胞の評価〕
 iPS細胞などの場合、未分化マーカーなどを用いて、細胞増殖後に未分化能を維持できているかどうかの確認は簡単である。一方、ヒト間葉系幹細胞の場合は、未分化マーカーが存在しない。そこで、本実施例では、本発明の細胞培養容器によってヒト間葉系幹細胞を培養した後に、目的の細胞に分化できるかどうかを確認し、未分化能を維持し培養が可能かどうかを証明した。
 本実施例では、図11にフローチャートを示すように、実施例1で用いたものと同様の本発明の細胞培養容器を用い、また、比較例として従来の材料であるポリスチレン製の培養用ディッシュ400(100mm)を用い、ヒト間葉系幹細胞の培養を行い、それぞれの1継代目と2継代目の細胞を用いて骨分化を試みた。骨分化すると、細胞内のカルシウム量が高くなる。よって、分化後の細胞を破砕し、カルシウム量を測定し、骨分化の有無を評価した。
 ヒト間葉系幹細胞を、当該容器には1×10(個)、100mmディッシュには6×10(個)を、それぞれに播種して、培養4日目に1回目の継代培養、培養8日目に2回目の継代培養を行い、それぞれ継代培養した細胞を用いて、骨形成の試験を行った。骨形成試験は、ゼラチンコート6穴ディッシュを用いて1回目、2回目継代細胞をそれぞれ播種して、次の日に骨形成用分化培地に交換し、その後、4日ごとに培地を交換し、16日間培養した。その後培養中の細胞を破砕して、培養上清中のカルシウム量をカルシウムE-テストワコー(和光純薬工業)を用いて測定した。
 実験結果
 図12(a)、(b)のグラフに示すように、本発明の細胞培養容器によって継代培養されたヒト間葉系幹細胞は、1継代目、2継代目ともに、従来の培養用ディッシュと同等以上のカルシウム沈着量であることがわかった。
 尚、図12(b)においては、本実験における骨形成誘導条件が適切であることを明らかにするため、通常の培養条件(骨形成(-))ではカルシウム沈着がほとんど認められないことも併せて示した。通常の培養条件とは、ヒト間葉系幹細胞を骨形成(+)群と同様に継代し、骨形成誘導培地に替えて通常のヒト間葉系幹細胞培養液による培養を平行して続けたものであり、培養期間は骨形成(+)群と同様である。
 また、図13に示す顕微鏡画像のとおり、培養16日目では、骨分化している様子が確認できた。本実験における骨形成誘導条件が適切であり、通常の培養条件(骨形成(-))ではカルシウム沈着が認められないことも併せて示した。
 以上のように、本発明の細胞培養容器によれば、ヒト間葉系幹細胞の培養においても、未分化維持能を維持したままの細胞培養が可能であることがわかった。
 本発明の細胞培養容器は、全体として剛性を有する板状の容器であるから、直接的に強い力で主壁部を掴んでも、その剛性によって内面の細胞が保護され、よって、取扱い性が極めて良好である。また、本発明の細胞培養容器は、その剛性に起因して、液状培地を過剰に注入して膨らませておく必要がないので、従来の細胞培養バッグに比べて、培地の消費量が少ない。また、主壁部は厚いが培養時には全体として細胞培養バッグよりも薄く、かつ、多数の当該容器を密に積み重ねることが可能である。よって、同じ占有空間内でも、従来の細胞培養バッグに比べて、極めて大量の細胞を簡単な操作で培養することが可能になった。
 本出願は、日本で出願された特願2016-170348(出願日:2016年8月31日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含される。
  1  主壁部
  1a 主壁部の内面
  2  主壁部
  2a 主壁部の内面
  3  側壁部
  4  出入口
  g1 主壁部同士の間隔
  t1 側壁部の横方向厚さ
  S1 容器の内部空間
  F  外力

Claims (8)

  1.  所定の間隔をおいて互いに対面するよう配置された2枚の板状の主壁部と、
     前記2枚の板状の主壁部同士の間に密閉空間が形成されるように、該主壁部同士の間の空間の一部または全部の周囲を取り巻いて、該主壁部同士を連結する側壁部と、
     前記主壁部および前記側壁部から選ばれる1以上の部分に設けられた出入口と
    を有し、かつ、
     下記(A)の部分および下記(B)の部分のうちの一方または両方に、前記密閉空間と外界との間でのガス透過を可能にするガス透過部が設けられている、
    細胞培養容器。
      (A)前記2枚の板状の主壁部のうちの、一方の主壁部の主面の一部分、または、両方の主壁部のそれぞれの主面の一部分。
      (B)側壁部の一部分または全ての部分。
  2.  側壁部全体がガス透過性を有する材料からなり、それによって、上記(B)の部分が、側壁部の全ての部分となっている、
    請求項1記載の細胞培養容器。
  3.  上記(A)の部分および上記(B)の部分のうちの両方に、上記ガス透過部が設けられており、かつ、
     上記(A)の部分が、2枚の板状の主壁部のうちの一方または両方の主壁部の主面の中央領域の部分である、
    請求項1または2記載の細胞培養容器。
  4.  上記(A)の部分に設けられるガス透過部の構造が、
     2枚の板状の主壁部のうちの一方または両方の主壁部の主面の所定位置に、該主壁部を板厚方向に貫通する貫通孔が設けられ、かつ、該貫通孔がガス透過性を有する材料によって封止された構造である、
    請求項1~3のいずれか1項に記載の細胞培養容器。
  5.  上記(A)の部分に設けられるガス透過部の構造が、
     (i)2枚の板状の主壁部のうちの一方または両方の主壁部の主面の所定位置に、該主壁部を板厚方向に貫通する貫通孔が設けられ、かつ、該貫通孔が、ガス透過性を有する材料からなるガス透過部を有する容器状部材によって封止された構造であるか、または、
     (ii)2枚の板状の主壁部のうちの両方の主壁部の主面の所定位置に、それぞれの主壁部を板厚方向に貫通する貫通孔が同軸状に設けられ、かつ、それらの貫通孔が、ガス透過性を有する材料からなるガス透過部を有する管状部材によって封止された構造である、請求項1~3のいずれか1項に記載の細胞培養容器。
  6.  上記(B)の部分だけにガス透過部が設けられている、請求項1または2記載の細胞培養容器。
  7.  前記2枚の板状の主壁部のそれぞれの板厚が、0.5mm~10mmであり、
     前記2枚の板状の主壁部の外周形状が、互いに合同な長方形または正方形であって、該長方形または該正方形の一辺の長さが、30mm~1000mmであり、
     前記2枚の板状の主壁部が、1.0mm~10mmの間隔をおいて互いに平行に対面している、請求項1~6のいずれか1項に記載の細胞培養容器。
  8.  前記側壁部には、前記内部空間と外界とを連絡するための出入口が設けられている、請求項1~7のいずれか1項に記載の細胞培養容器。
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