JP2018143210A - 細胞培養容器 - Google Patents

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孝之 江村
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Abstract

【課題】従来の細胞培養バッグの問題点を解消し得、より高密度に細胞を培養することができる、新たな構造の細胞培養容器を提供すること。
【解決手段】間隔をおいて多層状に配置された3以上の板状部を有し、これら板状部は、最も外側に位置する2つの外側板状部11、14と、それらの間に位置する1以上の中間板状部12、13とを含んでいる。板状部同士の間の側壁部21〜23は、該板状部同士の間にそれぞれ培養室S1〜S3が形成されるように、該板状部同士の間の各空間の一部または全部の周囲を取り巻いて、該板状部同士を連結している。2つの外側板状部および各側壁部から選ばれる1以上の部分にはガス透過部が設けられる。また、2つの外側板状部および各側壁部から選ばれる1以上の部分には培養液のための出入口が設けられる。
【選択図】図1

Description

本発明は、細胞培養容器に関するものであり、とりわけ、閉鎖系での接着性細胞の培養に好ましく利用可能な細胞培養容器に関するものである。
抗体医薬品などに用いられるタンパク質の大量生産や、医薬品、化粧品、食品などの評価に用いられる細胞の大量生産などのために、ガス透過性を有する有機高分子製の柔軟なシートからなる細胞培養バッグが開発されている(例えば、特許文献1、2など)。
前記のような細胞培養バッグは、従来、浮遊細胞の培養に用いられていたが、近年では、内面に親水処理や接着コートを施すことによって接着性細胞(足場依存性細胞とも呼ばれる)の培養にも用いられている。該細胞培養バッグを用いた接着性細胞の培養では、図19(a)、(b)に例示するように、該細胞培養バッグ100内に液状培地160が収容され、該バッグの2つの対向する柔軟なシート110、120のそれぞれの内面111、121に接着性細胞を固定した状態で増殖させることで、細胞培養が行われる。図19(a)では、バッグを構成するシートが透明であるため、バッグ内の空間の外周形状を定める線130や下部の出入口を実線で描いている。
このような細胞培養バッグを用いれば、出入口に接続されたチューブ140、150を介して他のバッグや容器、種々の処理装置(例えば、試薬、培地、細胞などを注入するための外部装置、培養後の細胞や廃液を回収するための外部装置)などと接続して閉鎖系の細胞培養システムを構成することができる。このような細胞培養システムは、細胞の播種、継代、培地交換、細胞の回収などを、外界に露出することなしに行うことができるので、汚染の危険性がより低減された好ましいシステムである。
特開2006−262876号公報 特開2009−159890号公報
しかしながら、本発明者が、上記のような従来の細胞培養バッグ(以下、単にバッグともいう)を用いた細胞培養を詳細に検討したところ、次に述べる問題が含まれていることがわかった。
該問題とは、先ず、該バッグが柔軟なシートからなるという本来的な性質に起因して、該バッグの取扱い方(例えば、2つのシートを手でつかむなど)によっては、対向する2つのシートのそれぞれの内面(図19(b)における111、121)同士が互いに接触し、該内面上でそれぞれに増殖していた細胞が互いに擦れ合って損傷を受け、または、該内面から剥離し、培養細胞の回収率が低下し易いという問題である。
また、前記のような2つのシートの内面同士の接触が生じないように、バッグ内には液状培地を培養に本来必要な量よりも多く注入しなければならないという問題もある。これは、バッグを液状培地の注入によって比較的大きく膨らませておくことによって、2つのシート同士の接触を防止することを意図するものであって、液状培地の消費量が増大するので好ましくない。
また、上記のようにバッグを膨らませるように液状培地を注入することによって、バッグ内の液状培地の圧力が高くなり、適切な培養条件から逸脱する。
さらには、培養すべき接着性細胞を液状培地と共にバッグ内に導入(播種)した後、該接着性細胞を2つのシートの内面上に好ましく定着させるためには、所定のベース板上にバッグを横たわらせる(2つのシートの内面を水平に位置させる)必要がある。これは、播種した接着性細胞をシートの内面上に均一に沈降させるためである。
細胞培養バッグを横たわらせると、1つのバッグがベース板の上面において大きな面積を占有することになる。よって、限られたスペース内に、より多くのバッグを密に配置するためには、例えば、図20に示したバッグ100a、100b、100cのように、複数のバッグを該ベース面(例えば、インキュベータ内のステージ)B10上にそれぞれ横たわらせかつ積み重ねることが好ましい。しかし、そのような積み重ねを行うと、下方に位置するバッグほど、上方のバッグの重さを受けて圧縮され、バッグ内の液状培地の圧力がさらに高くなる。そのため、従来のバッグを多数用いた細胞培養では、多段の棚板を持ったキャビネットなどを用いて、横たわらせたバッグ同士の間にスペースを確保する必要があり、よって、多数のバッグを上下方向に密に配置することができなかった。
一方、図21に示すように、1つの密閉容器400内に多数のシャーレ(図では説明のために6つのシャーレ410〜460)を層状に配置した細胞培養器具が知られており、「セルファクトリー」などという名称で市販されている。該細胞培養器具の各シャーレ内には培養すべき細胞を含んだ液状培地500が入れられる。培養の間は、矢印で示すように、該器具上部の入口470から空気が供給され、内部を流れた空気は出口480から出て行く。そのような細胞培養器具は、図21に示すように、各シャーレの内面(とりわけ内部底面)が接着性細胞を増殖させるための細胞接着面として寄与する。
しかしながら、図21に示すような細胞培養器具では、各シャーレ同士の間に空気を流通させるための空間(空気層)が必要であるから、多数のシャーレを互いに接近させて高密度に配置することはできない。また、各シャーレの細胞培養面は、各シャーレの内面だけである。よって、該細胞培養器具では、該器具全体が占める体積に対する細胞接着面の面積の割合いが小さい(即ち、器具全体の体積に対して、収穫される接着性細胞の数が少なく、収穫の効率が低い)という問題がある。また、そのような細胞培養器具では、培養時にシャーレを水平に保つことが重要である。これは、通常、液状培地の液面の高さがシャーレの底面から2mm〜4mm程度であり、該シャーレが少しでも傾くとシャーレの底面(細胞接着面)が部分的に空気に露出して液状培地が枯渇し、培養中の細胞がダメージを受けるからである。よって、該細胞培養器具は、取扱いや設置に多大な注意を要し、操作性が悪い。
本発明の課題は、上記した従来の細胞培養バッグの問題点を解消し得、より高密度に細胞を培養することができる、新たな構造の細胞培養容器を提供することにある。
上記の課題を解決し得る本発明の主たる構成は、次のとおりである。
〔1〕細胞培養容器であって、当該細胞培養容器は、
間隔をおいて多層状に配置された3つ以上の板状部を有し、前記3つ以上の板状部は、多層状の配置において最も外側に位置する2つの外側板状部と、それらの間に位置する1以上の中間板状部とを含んでおり、
間隔をおいて互いに隣り合った板状部同士の間に位置する側壁部を有し、該側壁部は、前記間隔をおいて互いに隣り合った板状部同士の間にそれぞれ培養室が形成されるように、該板状部同士の間の各空間の一部または全部の周囲を取り巻いて、該板状部同士を連結しており、
2つの外側板状部および各側壁部から選ばれる1以上の部分に設けられた1以上のガス透過部を有し、全ての培養室は、所定のガスに関して、該ガス透過部を通して外界と連通しており、かつ、
2つの外側板状部および各側壁部から選ばれる1以上の部分に設けられた1以上の出入口を有し、全ての培養室は、培養液に関して、該出入口を通して外界と連通している、
前記細胞培養容器。
〔2〕各側壁部の一部または全部が、ガス透過性を有する材料からなり、それによって、各側壁部がそれぞれの培養室のためのガス透過部となっている、前記〔1〕記載の細胞培養容器。
〔3〕2つの外側板状部のうちの一方または両方には、その主面の所定位置にガス透過部が設けられており、該ガス透過部が、次の(i)〜(iv)のいずれか1つの構造を有するものである、前記〔1〕または〔2〕記載の細胞培養容器。
(i)ガス透過部が設けられる外側板状部の主面の所定位置に、該外側板状部を板厚方向に貫通する貫通孔が設けられ、該貫通孔が、ガス透過性を有する材料によって封止された構造。
(ii)ガス透過部が設けられる外側板状部の主面の所定位置に、該外側板状部を板厚方向に貫通する貫通孔が設けられ、該貫通孔には、ガス透過性を有する材料からなるガス透過部を有するカップ状部材が挿通され、該貫通孔が該カップ状部材の挿通によって封止された構造。
(iii)ガス透過部が設けられる外側板状部から所定の中間板状部までの各板状部の主面の所定位置に、各板状部をそれぞれ板厚方向に貫通する貫通孔が同軸状に設けられ、それらの貫通孔には、ガス透過性を有する材料からなるガス透過部を有するカップ状部材が挿通され、少なくとも前記外側板状部の貫通孔がカップ状部材の挿通によって封止された構造。
(iv)一方の外側板状部から他方の外側板状部までの各板状部の主面の所定位置に、各板状部をそれぞれ板厚方向に貫通する貫通孔が同軸状に設けられ、それらの貫通孔には、ガス透過性を有する材料からなるガス透過部を有するカップ状部材または管状部材が挿通され、少なくとも両方の外側板状部の貫通孔がカップ状部材または管状部材の挿通によって封止された構造。
〔4〕各中間板状部には、各中間板状部を間に介して互いに隣り合った培養室同士を連通する貫通孔が設けられている、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の細胞培養容器。
〔5〕前記出入口が、
2つの外側板状部のうちの一方の外側板状部だけに設けられているか、または、
多層状の配置において最も外側に位置する1つの培養室を取り巻く側壁部だけに設けられている、前記〔4〕に記載の細胞培養容器。
〔6〕2つの外側板状部のそれぞれの板厚が、0.5mm〜10mmであり、
中間板状部の板厚が、外側板状部の板厚と同じであるか、または、それよりも薄く、
全ての板状部の外周形状が、互いに合同な長方形または正方形であって、該長方形または該正方形の一辺の長さが、30mm〜1000mmであり、
前記各板状部同士の間隔が、1mm〜10mmである、
前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の細胞培養容器。
本発明の細胞培養容器(以下、当該容器ともいう)の重要な特徴は、従来の柔軟なシートからなる全体的に柔軟な培養バッグとは異なり、各板状部(とりわけ、多層状に配置された板状部のうちの最も外側に位置する2つの外側板状部)が支持体としての十分な剛性を有し、これによって、図2に示すように、全体として外力に対して変形し難い剛性を有する容器になっているという点にある。即ち、各層の培養室は、外側板状部が外部から力を受けても圧縮変形し難い空間となっている。例えば、当該容器を取り扱うための外力(図1(a)に示すような、2つの外側板状部同士を互いに近づけようとする板厚方向の圧縮力F(太い矢印))が加えられても、板状部の主面同士が互いに接触することが抑制され得る。また、各板状部に十分な剛性を付与することによって、上側に位置する培養室内の液状培地の重さがそれより下側に位置する中間板状部に作用しても、該中間板状部の主面がその下の板状部の主面に接触することが抑制され得る。これにより、少なくとも次に示す利点が得られる。
(1)変形に注意することなく手やハンドリング装置によって当該容器を掴むことができ、従来の柔軟な細胞培養バッグに比べて格段に向上した取扱い性が得られる。
(2)従来のバッグのように接触防止のために液状培地を過剰に注入して膨らませておく必要がなく、細胞培養にとって適切な量の液状培地を容器内に注入しておくことができ(即ち、本来、細胞培養自体にとって無用であった液状培地の消費を排除でき)、経済的である。
(3)従来の細胞培養バッグのように液状培地によって容器を余分に膨らませておく必要がないので、各培養室の厚さ(板状部同士の間隔)は、液状培地を注入した時の従来の細胞培養バッグの厚さよりも小さくすることができる。
(4)多数の培養室の積層方向が上下方向となるように当該容器を置いても、従来の柔軟な細胞培養バッグを積み重ねた場合のような各バッグの重量をも含んだ高い内圧は、下層側の培養室内には生じない。よって、多数の培養室が密に積層された状態でありながら、細胞培養バッグを積み重ねた培養に比べて、各培養室内の圧力が大きく軽減される。
上記の特徴に加えて、当該容器では、多数の培養室の層状配置を可能とする中間板状部の存在が極めて重要である。該中間板状部は、その両面が接着性細胞を接着させて増殖させるための細胞接着面として利用可能となっている。よって、当該容器は、図21に示すような従来の多層の細胞培養器具に比べて、全体として、より小さい占有空間内により大きい細胞接着面を提供している。より詳細には、当該容器では、隣り合った培養室同士の間には1枚の中間板状部が存在するだけであり、各中間板状部の両面が2つの培養室に対して細胞接着面として機能する。よって、当該容器では、多数の培養室が、互いに十分に近づいた状態で(即ち、1枚の中間板状部だけを間に介在させた状態で)層状に配置されているので、容器全体が占有する空間内に、より広い細胞接着面が存在し、よって、より高い密度で細胞培養を行うことが可能である。図2の例では、当該容器は、7つの板状部11〜17と6つの側壁部21〜26とによって構成され、6つの培養室と計12の主面(細胞接着面)がコンパクトな直方体中に密に存在している。図2では、太い矢印は側壁部21を透過するガスを示す(他の側壁部におけるガス透過は図示を省略している)。
これに対して、中間板状部を持たない容器(即ち、2つの板状部と側壁部によって取り囲まれた1つの培養室(密閉空間)だけを持った細胞培養容器)を考えた場合、そのような容器もまた、従来の細胞培養バッグに比べて高い剛性を有することによる利点を有する。しかし、そのような容器では、1つの培養室に2枚の板状部が必須に対応する。よって、そのような容器を複数積み重ねた場合、上下に互いに隣り合った2つの培養室同士の間には、必ず2枚の板状部が存在するので、本発明に比べて、培養室同士は互いに十分に接近できず、多数の培養室を本発明のように高い密度で配置することはできない。
また、本発明では、n個(nは2以上の整数)の積層された培養室を得るためには、(n+1)枚の板状部を必要とするだけである。例えば、20個の積層された培養室(=40面の細胞接着面)を得るためには、21枚の板状部を必要とするだけである。よって、容器全体の重量は十分に軽く、板状部のために要する材料費用は十分に安価である。
これに対して、上記した中間板状部を持たない2つの板状部と側壁部だけからなる容器では、1つの培養室(密閉空間)に2枚の板状部が必要であるから、n個(nは2以上の整数)の積層された培養室を得るためには、(n×2)枚の板状部が必要であり、例えば、20個の積層された培養室を得るためには、40枚の板状部が必要である。しかも、全ての板状部は、剛性を有する厚いものであるから、全ての容器の重量の合計は本発明の容器の重量よりも十分に重く、板状部のために要する材料費用も本発明よりも十分に高くなる。
また、前記のような1つの培養室(密閉空間)だけを持った容器は、各培養室毎に液状培地の入口と出口を設ける必要がある。よって、そのような容器を多数積み重ねた場合、各培養室の入口と出口にそれぞれ接続されるチューブの数が多くなり、それらのチューブが大きい空間を占有し、また、配管が複雑になる。
これに対して、本願発明では、中間板状部に貫通穴を設け、培養室同士を連通させることで、各培養室毎に液状培地の入口と出口を設ける必要が無くなり、例えば、外板状部の一面だけに入口と出口(または、1つの開口部)を設けることも可能になる。これにより、配管が大きい空間を占有することもなく、また、配管が単純になる。
当該容器の他の特徴は、各培養室と外界との間でのガス透過を可能にするガス透過部が局所的に設けられているという点にある。従来の細胞培養バッグでは、柔軟なシートの全面を通して外界のガスをバッグ内に供給していた。しかし、本願発明者らの研究によれば、必ずしも容器全体を通して外界の酸素を内部に供給する必要はなく、局所的なガス透過部のみを通して外界のガスを内部の液状培地に供給するだけであっても、十分に細胞培養が可能である。
当該容器の各培養室内に液状培地と培養すべき細胞を収容すると、局所的なガス透過部を通して外界のガス(とりわけ酸素と二酸化炭素)が当該容器内の液状培地に供給され、細胞培養が進行する。ガス透過部を局所的に設けたことによって、当該容器全体に剛性を与えることが可能になったと言うこともできる。
また、板状部の外形が大きい場合であっても、本発明では、板状部の中央部など所定の選択位置にガス透過部が適宜設けられるので、当該容器は、全体として剛性を持った比較的大きい容器であっても、当該容器内における細胞培養は、常に外界からの適切なガス供給の下で行われる。
本発明では、図1(a)に例示するように、板状部の数が4以上の場合(即ち、培養室が3以上の場合)には、2つの培養室S1、S3によって挟まれた培養室S2が内部に存在する。そのような場合、外界のガスは、外側板状部11、14に設けられるガス透過部を透過するだけでは、内部の培養室S2に到達することはできない。これに対して、本発明では、独自の構造を持ったガス透過部を提供することによって、外側板状部の主面の任意の位置から、内部の培養室S2に対するガスの供給を可能にしている。ガス透過部の種々の態様については、後述する。
図1は、本発明の細胞培養容器の構造の一例を概略的に示す図である。図1(a)は、当該容器の断面を示す図であり、図1(b)のX1−X1断面矢視図である。図1(b)は、図1(a)に示す当該容器を上方から見た図(上面図)である。図1(b)では、一方の外側板状部11を部分的に切り欠いて、直下の培養室S1を見せている。また、直下の側壁部21を部分的に切り欠いて(ハッチングを施した部分)、該側壁部21を貫通する出入口31(入口31a、出口31b)の内部通路を見せている。 図2は、本発明の細胞培養容器の外観例および典型的な使用状況を概略的に示す斜視図である。同図では、分かり易く示すために側壁部にハッチングを施しており、外観を単純に描くために、板状部の側面と側壁部の外面とが同じ平面内にある場合(単純な立方体である場合)の例を示している。 図3は、本発明の細胞培養容器の好ましい構造の一例を概略的に示す断面図である。断面にはハッチングを施している(他の図も同様である)。 図4は、本発明における側壁部の構造例を概略的に示す断面図である。同図では、説明を簡単にするために、板状部の数は3であり、培養室の数は2である。 図5は、本発明における側壁部の他の構造例を概略的に示す断面図である。 図6は、本発明において外側板状部の主面の所定位置に設けたガス透過部の態様例を概略的に示す斜視図である。同図では、分かり易く示すためにガス透過部と側壁部にハッチングを施している。 図7は、本発明において、外側板状部の主面の所定位置に設けたガス透過部の構造例を概略的に示す断面図である。 図8は、本発明において、外側板状部の主面の所定位置に設けたガス透過部の他の構造例を概略的に示す断面図である。 図9は、本発明におけるガス透過部の他の構造例を概略的に示す断面図である。 図10は、本発明におけるガス透過部の他の構造例を概略的に示す断面図である。 図11は、本発明におけるガス透過部の他の構造例を概略的に示す断面図である。 図12は、本発明における出入口の構造例を概略的に示す断面図である。図12(a)の例では、説明のために、チューブを差し込むための単純なストレートの管状部材が、側壁部を貫通した状態で固定されている。該管状部材は、内部の管路を見せるために部分的に断面を示している。図12(b)の例では、一方の外側板状部に出入口として設けられた貫通孔が、栓体によって封止された状態を示している。 図13は、本発明における出入口の他の構造例を概略的に示す断面図である。 図14は、本発明において、中間板状部に設けられる貫通孔の一例と、2つの外側板状部のうちの一方に設けられる出入口の一例を、概略的に示す図である。図14(a)は、図14(b)のX2−X2断面矢視図である。図14(b)は、図14(a)に示す容器の上面図である。図14(b)では、左側部分の図示を省略している。図14(c)は、図14(a)に示す容器を、培養室S2を横切るように水平に切断し、上方から見た図である。図14(c)では、左側部分の図示を省略している。 図15は、本発明による細胞培養容器の各板状部の剛性を試験する方法を概略的に示す断面図である。 図16は、本発明の実施例1における実験結果を示す写真図である。 図17は、本発明の実施例1における実験結果を示す写真図である。 図18は、本発明の実施例1における実験結果を示す写真図である。図18(b)は、実施例1において、金属製の補強部材が固定された外側板状部を示す写真図である。 図19は、従来の細胞培養バッグの構造の一例を概略的に示す図であって、図19(a)は、該バッグの板状部を外側から見た図、図19(b)は、図19(a)に示す図のX10−X10断面矢視図である。 図20は、従来の細胞培養バッグの問題点の1つを示す図である。 図21は、積層構造を持った従来の細胞培養器具の内部の構造を例示する図である。
以下、本発明の細胞培養容器を詳細に説明する。
当該容器は、図1に構造の一例を示すように、間隔をおいて多層状に配置された3つ以上の板状部を有する。図の例では、説明のために板状部の数は4であり、よって、板状部の間の空間の数は3である。各板状部11、12、13、14は、間隔をおいて多層状に配置されており、即ち、互いの間に所定の間隔g1、g2、g3をおいて、それぞれの主面(11bと12a、12bと13a、13bと14a)が互いに向かい合うように積層されている。本発明では、前記多層状に配置された板状部11〜14のうち、積層の最も外側(図1(a)では、最も上と最も下)に位置する2つの板状部11と14を「外側板状部」と呼び、それら以外の板状部(2つの板状部11と14との間に位置する板状部)12、13を「中間板状部」と呼んでいる。
当該容器では、側壁部21、22、23が、積層方向に互いに隣り合った板状部(11と12、12と13、13と14)の間の各空間の一部または全部の周囲を取り巻いて、該積層方向に互いに隣り合った板状部同士を連結している。これら側壁部によって、該積層方向に互いに隣り合った板状部の間には、それぞれ培養室S1、S2、S3が形成されている。図1の例では、培養室S1〜S3は、互いに連通していない。よって、各出入口が閉鎖された状態では、各培養室は、それぞれ密閉空間となっている。
当該容器はガス透過部を有する。図1の例では、側壁部21、22、23がガス透過部として機能している。該ガス透過部は、2つの外側板状部11、14、および各側壁部21〜23から選ばれる1以上の部分に設けられる。全ての培養室は、所定のガスに関して、該ガス透過部を通して外界と連通している。ガス透過部の詳細については後述する。
また、当該容器は出入口31を有する。該出入口31は、2つの外側板状部11、14、および、各側壁部21〜23から選ばれる1以上の部分に設けられる。図1の例では、該出入口は各側壁部に設けられているが、各培養室が互いに連通している態様では、該出入口は1か所であってもよい。即ち、全ての培養室は、培養液に関して、いずれかの出入口を通して外界と連通している。出入口の詳細については後述する。
板状部は、外側板状部11、14の外面11a、14bに当該容器を取り扱うための外力を受けても、また、上側にある培養室内の液状培地による荷重を受けても、隣の板状部と接触するような変形が生じない程度の剛性を有することが好ましい。板状部が前記のような剛性を有することによって、板状部の主面同士の接触が抑制されるだけでなく、当該容器を取り扱うための外力Fを受けたときに、当該容器内部の圧力が過剰に高くなるような内側への変形(撓み)も抑制されるので好ましい。とりわけ外側板状部11、14の剛性は、外力に抗するためには重要である。図3に示すように、少なくとも外側板状部11、14が十分な剛性を有することによって、たとえ中間板状部12、13の板厚が外側板状部11、14の板厚よりも薄く、柔軟であっても、外力Fに対する板状部12、13の主面同士の接触や培養室S2の圧力の過剰な上昇は抑制され得る。
尚、各板状部の主面(11bと12a、12bと13a、13bと14a)が互いに接触しないためには、板状部の剛性のみならず、各板状部の外周の大きさ、板状部間の各間隔、各側壁部の剛性(撓み量)、板状部のどの部分を側壁部が支持しているか、後述の支柱部の有無などをも考慮することが好ましい。ただし、これらの要素は、少なくとも外側板状部が十分な剛性を有し、かつ、各板状部間に十分に大きい間隔があれば、特に考慮しなくてもよい。
上記「当該容器を取り扱うための外力」としては、例えば、図1(a)に示すような、当該容器を把持するために外側板状部11、14に対してその厚さ方向に局所的に加えられる圧縮荷重Fが代表的なものとして挙げられる。また、各板状部の主面が水平であるように当該容器を所定のベース板上に配置し、かつ、各培養室内に液状培地を充填した時に、下側の培養室に作用する上側の培養室の重量の合計も重要である。
通常の培養作業における取り扱いでは、当該容器を把持するために手やハンドリング装置によって外側から局所的に加えられる圧縮荷重Fは、2〜200N程度である。
また、図1(a)に示す姿勢で置かれた当該容器の最下層の培養室に作用する上層の液状培地の重量を考える。この例では、各培養室の容積を25cm×20cm×0.4cm=200cm(=200mL)とし、1つ当たりの培養室に充填される液状培地の重量を約200gとし、培養室の層数を50とし、各培養室は、それぞれ密閉空間となっており、互いに連通していないものとする。各中間板状部の中央部が液状培地の重量によって撓むならば、最下層の培養室の天井に位置する中間板状部(最も下の中間板状部)には、49層の培養室内の液状培地の重量9800g(約96.1N)が作用する場合もある。
各板状部同士の間隔(2面間の距離)g1〜g3の最小値は、後述のとおり、特に限定はされないが、後述のとおり2mm程度が好ましく、4mm程度がより好ましい値である。よって、外側板状部の中央に圧縮荷重Fが局所的に作用する場合、板状部同士の間隔と側壁部の撓み量とを考慮すると、片側板状部の中央部の撓み量は、各板状部同士の間隔の半分よりも小さいことが好ましく、例えば、2mm以下(さらには1mm未満)程度であることが好ましく、1mm以下(さらには1mm未満)程度であることがより好ましい。後述のとおり、板状部同士の間隔が1mmである場合には、片側の板状部の中央部の撓み量は0.5mm未満であれば、通常の取り扱い上の外力が作用しても、板状部の内面同士の接触を回避することができる。
尚、各板状部の主面が傾斜面や鉛直面となるように、図1(a)の容器を傾いた姿勢で置いてもよい。
また、側壁部の撓みを抑制することによって、各板状部の主面同士が互いに接触しないだけでなく、当該容器の内圧が過剰に上昇することも抑制されるので好ましい。
全ての中間板状部に貫通孔が設けられ、それにより、全ての培養室同士が連通する態様では、外側板状部11、14が外力によって内側に撓んでも、各中間板状部が撓むとは限らない。その様な態様では、最下層の培養室に作用する液状培地の重量(圧力)が過剰に大きくならないように注意することが好ましい。
板状部の中央部の撓みを抑制するためには、板状部の材料の縦弾性係数(ヤング率)と形状(厚さ、補強用のリブ、外周形状の大きさなど)が重要である。
板状部(外力に抗する点では外側板状部)の材料の縦弾性係数(ヤング率)としては98000(N/mm)以上、とりわけ、100000〜600000(N/mm)程度が好ましい。これらの縦弾性係数の値は、あくまでも好ましい一例であって、通常の取り扱い上の外力によって、また、液状培地の重さによって、各板状部の主面同士が互いに接触しないように、板状部同士の間の距離に応じて、該縦弾性係数を適宜決定すればよい。
前記のような縦弾性係数を有する材料としては、有機高分子材料(とりわけ合成樹脂材料)、ガラス、金属などが挙げられる。いずれの材料も、培養すべき細胞および液状培地に影響を与えることがなく、かつ、培養すべき細胞および液状培地から影響を受けて劣化しないものが好ましい。
前記のような適度な剛性を有する有機高分子材料としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(とりわけ延伸ポリエチレンテレフタレート)などの合成樹脂材料が好ましいものとして挙げられる。
ガラスとしては、ソーダ石灰ガラス、石英ガラス、強化ガラスなどが挙げられる。
金属としては、ステンレスなどが挙げられる。
板状部は、外部から当該容器内の細胞の顕微観察や培地の観察(色の観察)を行う点から、透明であることが好ましい。
前記の材料のなかでも、ポリスチレンなどの有機高分子材料は、ヒトを含めた哺乳動物細胞の培養容器として広く一般的に使用されており、好ましい細胞接着面を提供し得、材料の評価試験を行う必要がなく、顕微観察にも適しており、好ましい材料である。
また、各板状部は、自体が上記した材料を組み合わせた積層板であってもよく、細胞接着面用の層、機械的強度用の層など、各層に適した材料を適宜選択してもよい。
各板状部の外周形状は、特に限定はされず、円形、楕円形、四角形(正方形、長方形を含む)、異形など、種々の形状であってよく、周囲にデッドスペースを生じさせないという点からは、長方形、正方形が好ましい形状である。
各板状部の外周形状は、互いに異なる形状や相似的な形状であってもよいが、各主面同士を向い合せたときに外周形状が一致する形状(即ち、鏡像的に合同な形状)であることが好ましい。この点からも、長方形、正方形が好ましい外周形状である。ここでいう板状部の外周形状は、あくまでも基本形状である。例えば、長方形または正方形の角部には、面取りや丸みを適宜付与してもよく、また、必要に応じて、取っ手として利用可能なように外側に膨らんだ突出し部を外側板状部や所定の中間板状部の外周に加えてもよい。
板状部の外周形状が長方形または正方形である場合、図1(b)に示すように、その外周形状の一辺の長さL1は、培養の規模に応じて決定され得、限定はされないが、培養細胞数(最適な細胞密度)や、当該容器を上下反転させるために用いる反転装置の大きさの点からは、30mm〜1000mm程度が好ましく、80mm〜300mmがより汎用的で好ましい長さである。
板状部の外周形状が、円形、楕円形、異形などの場合の大きさは、例えば、上記した長方形または正方形の主面の面積と同程度の主面の面積を有するものであってよい。
板状部の厚さは、上記の圧縮荷重Fを中央部に受けても、上記した撓み量を超えないように、それぞれの材料の縦弾性係数や外周形状の大きさに応じて、適宜決定すればよい。
例えば、上記したポリスチレンなどの有機高分子材料では、各板状部の厚さは、0.5mm〜5mm程度が好ましく、1mm〜3mm程度がより好ましい。前記した厚さの上限を上回ると、板状部の剛性はより高くなるが、全体が過剰に厚く、重くなる点では好ましくない。板状部の厚さが0.5mm程度まで薄くなると、板状部はより撓みやすくなるが、その場合には、培養室S1の一辺の長さ(図1(b)に示す寸法L2)をより小さくし、かつ、板状部同士の間隔をより大きく取ることによって、板状部の主面同士の接触を回避してもよい。
各板状部の厚さは、互いに等しい厚さであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
上記したように、外側板状部の厚さを取扱い上の外力Fに抗する程度の厚さとし、中間板状部の厚さを液状培地の自重に耐える程度に、外側板状部よりも薄くしてもよい。また、支柱部を適宜設けることによって、板状部の主面同士の接触を回避してもよい。
板状部(とりわけ外側板状部)の剛性を高くするために該板状部を厚くするかわりに、該板状部の剛性を高くするための凹凸やリブを板状部に適宜付与してもよい。該リブは、板状部を局所的に厚くしたものでもよく、別の補強用の梁部材を、接着、溶着、ねじ止めなどによって板状部の主面に取り付けたものであってもよい。図18(b)は、下記実施例1において外側板状部の外面に金属製の補強用部材をネジにて固定した例を示している。また、前記リブの代わりに、板状部の撓みを抑制するための補強筋を板状部内に埋め込んでもよい。補強筋の材料や断面形状、パターン、板状部内に埋め込むための成形技術それ自体は、従来公知の補強技術を参照することができる。
また、板状部の撓みを抑制するための構造として、ダンボール等にみられる構造のように、波状に成形した板状物の片面または両面に平坦なシート状物を貼り合せた複合構造を採用してもよい。
各板状部は、互いに平行に対面していることが好ましい。各板状部同士の間隔g1〜g3は、適宜決定してよく、互いに同じ寸法であってよい。培養に適切な量の液状培地を収容する点や、板状部同士を接触させない点からは、各板状部同士の間隔は、2mm〜20mm程度が好ましく、2mm〜10mm程度がより好ましく、4mm〜8mmが特に好ましい。
上記した板状部の外周形状の大きさ、板状部の厚さ、各間隔によって、当該容器は、全体として剛性を有する1つの容器となり、従来にはなかった良好な取扱い性を有し、かつ、容器全体が占める体積に対してより広い細胞接着面を持った細胞培養容器となる。
板状部の主面(2枚の外側板状部では培養室側の主面、中間板状部では両側の主面)には、接着性細胞を該主面に接着した状態で培養するのにより適した面となるような処理を施してもよい。例えば、コラーゲンIコート(1型コラーゲンのコーティング)、ポリ−D−リジンコート、CC2(Cell Culture 2nd Generation)コートなどの表面処理が挙げられる。該表面処理は板状部の任意の細胞接着面のみに施されていてもよいし、全ての細胞接着面について施されていてもよい。
図1(a)に示すように、各側壁部21〜23は、各板状部の間の空間の一部または全部の周囲を取り巻いて、該空間の一部または全部を密封し(後述の出入口を除く)、培養室S1〜S3を形成する。側壁部は、板状部同士の間隔を維持するスペーサーでもあり得、後述の出入口を除いて、各培養室S1〜S3を液密的に外界から遮断するシール部材でもあり得る。
図1(a)に示す態様例では、各側壁部の外側面は、各板状部の外周の端面から板状部の間へと引っ込んだ位置にある。
図4(a)に示す態様例では、側壁部21、22の外側面21b、22bは、板状部11〜13の外周の端面と同じ面にある。
図4(b)に示す態様例では、側壁部21、22の内側面21a、22aは、板状部11〜13の間に入り込んでおり、該側壁部の外側面21b、22bは、板状部11〜13の外周の端面よりも外側に張り出している。
図4(c)に示す態様例では、1つの側壁部21cが全ての板状部の外周の端面を取り囲んで、各板状部同士の間の空間をそれぞれ培養室にしている。該側壁部21cの内側面21a、22aは、各板状部の間に入り込んでおり、かつ、該側壁部の外側面21bは、板状部の外周の端面よりも外側において、1つの平坦な面となっている。
図4(d)に示す態様例では、両面が平坦なシート状の側壁部21cが全ての板状部の外周の端面を取り囲んで、各板状部同士の間の空間をそれぞれ培養室にしており、該側壁部の内側面21aは、各板状部の間には入り込んでいない。尚、図4(d)に示す態様例では、板状部11、12の各下面に支柱部11c、12cが設けられ、それぞれ板状部を支え、主面同士の接触を抑制している。
図1(a)、図4(a)〜(c)に示す態様例では、側壁部の内側面が板状部同士の間に入り込んでいるから、該側壁部は、板状部同士の間の空間の一部の周囲を取り巻いていると言える。また、図4(d)に示す態様例では、側壁部の内側面が板状部同士の間に入り込んでいないから、該側壁部は、板状部同士の間の空間の全部の周囲を取り巻いていると言える。
図5(a)に示す態様例では、外側板状部11、13の培養室側の主面の外周縁部に稜線状突起11d2、13d1が設けられ、かつ、内側板状部12の両主面の外周縁部にそれぞれ稜線状突起12d1、12d2が設けられている。図において、互いに上下で対向する稜線状突起のペア(11d2と12d1)、(12d2と13d1)は、それぞれ側壁部21、22と協働して、より高いシール構造を提供している。また、上下の稜線状突起のペアは、側壁部21、22に対する横方向の支持体としても機能している。
図5(b)に示す態様例では、外側板状部11の培養室側の主面の外周縁部に互いに間隔を置いて平行に延びる稜線状突起(11d2、11e2)が設けられ、かつ、外側板状部13の培養室側の主面の外周縁部に互いに間隔を置いて平行に延びる稜線状突起(13d1、13e1)が設けられている。また、内側板状部12の両主面の外周縁部には、それぞれ、互いに間隔を置いて平行に延びる稜線状突起(12d1、12e1)、(12d2、12e2)が設けられている。これら平行に延びる2つの稜線状突起の間には、側壁部を嵌め込むための溝が形成されている。また、稜線状突起(11d2、11e2)と(12d1、12e1)、および、稜線状突起(12d2、12e2)と(13d1、13e1)は、それぞれ、図において互いに上下で対向し、側壁部21、22を上下で挟んでいる。これらの稜線状突起は、図5(a)に示す態様例と同様に、それぞれ側壁部と協働して、より高いシール構造を提供し、側壁部に対する横方向の支持体としても機能している。
図5(a)、(b)に示す態様例における各稜線状突起の高さ(各板状部の主面からの突起量)は、特に限定はされないが、側壁部をガス透過部とする場合には、ガスの透過性を大きく妨げない寸法とすることが好ましい。
側壁部の一部または全部には、ガス透過部を設けることができる。側壁部全体をガス透過性材料で形成する態様(即ち、側壁部全体をガス透過部とする態様)は、製造が単純でありかつ当該容器内への十分なガス供給量が得られるので好ましい。ガス透過部は、培養室内の液状培地を外部に透過させず、外部のガスを培養室内の液状培地中へと透過させ得るガス透過性を有する材料からなる部分を有する。ガス透過部を通じて、内部で発生したガスを外部に透過させてもよい。
細胞培養のためにガス透過部が透過すべきガスとしては、酸素、酸素を含んだ空気、二酸化炭素(培地のpHを維持するため)が重要な気体として挙げられる。
ガス透過部に用いられる材料のガス透過性は、例えば、酸素については、JIS K7126−1に準拠して測定した酸素透過度が、30(cc/m・24h・atm)以上であることが好ましく、40(cc/m・24h・atm)以上であることが、より好ましい。該酸素透過度の上限は、より高い方が好ましく、特に限定はされないが、例えば、45(cc/m・24h・atm)程度が例示される。
側壁部をガス透過性材料によって形成しガス透過部とする場合、該ガス透過部の種々のガスに関するガス透過性は、前記の材料に関する酸素透過度に比例する。側壁部は、同じガス透過性材料からなり、かつ、該側壁部の横方向厚さ(図1(a)に示す、板状部の主面方向に沿った厚さt1)が同じであれば、板状部同士の間隔(g1〜g3)に対応する寸法が大きくなると、ガス透過面積が増大し、よって、単位時間当たりのガス透過量も増大する。一方、同じガス透過性材料からなり、かつ、板状部同士の間隔(g1〜g3)に対応する寸法が同じであれば、前記の側壁部の横方向厚さが大きくなると、ガス透過性が低くなり、よって、単位時間当たりのガス透過量も減少する。当該容器を製造するに際しては、実際に細胞培養を行い、側壁部や板状部に設けられるガス透過部からのガス(とりわけ酸素)の供給の状態を確認して、板状部同士の間隔g1〜g3や側壁部の横方向厚さt1を適宜増減させて、ガス透過量を調節することができる。
側壁部全体をガス透過性材料によって形成しガス透過部とする場合、側壁部の横方向厚さt1は、特に限定はされず、材料によっても異なるが、ガス(とりわけ酸素)の適度な透過性と、板状部の間隔を過度に減少させないように支持する剛性の点からは、1mm〜20mm程度が好ましく、5mm〜10mm程度がより好ましい。
図1(b)に示すように、板状部の外周形状が長方形または正方形である場合、側壁部によって囲まれた培養室(内部空間)の外周形状もまた長方形または正方形となることが好ましく、該培養室の一辺の長さL2は、30mm〜1000mm程度が好ましく、80mm〜300mmがより汎用的で好ましい長さである。
側壁部の一部または全部をガス透過部とする場合に好ましく用いられるガス透過性材料としては、例えば、シリコーンゴム、天然ゴム、スチレンゴムなどが挙げられる。
側壁部およびガス透過部は、単一材料からなるものであってもよいし、複数の材料からなる多層構造、複合構造であってもよい。
互いに間隔をおいて隣り合う板状部の間には、両者の間隔や結合を維持するための支柱部(スペーサー)を、ガス透過の妨げにならないように、板状部の外周の四隅(側壁部の外側や内側)、中央部、中央部の周囲など、局所的な位置に適宜設けてもよい。該支柱部の材料は、目的に合致した剛性や機械的強度を有するものであればよく、例えば、上記した板状部の材料であってもよい。図4(d)の例では、半球状の支柱部11c、12cが板状部11、12のそれぞれの片側(図では下側)の主面に形成されている。
隣り合う板状部の間隔が支柱部によって確保されたならば、側壁部によって板状部の間隔を維持する必要はなくなるので、該側壁部の横方向厚さt1をより薄くしてもよい。
板状部の数は、用途に応じて決定すればよく、特に限定はされないが、例えば、3〜100程度が挙げられ、3〜40程度が大量の細胞培養を行うためには好ましい。
本発明では、板状部(とりわけ外側板状部)は剛性を有する板状である。よって、側壁部の弾性/剛性の程度にもよるが、板状部の数が少ない場合には、当該容器もまた全体として剛性を有する板状となり得、板状部の数が多い場合には、当該容器は全体として剛性を有する立体的な容器となり得る。
ガス透過部は、板状部および側壁部のいずれに設けられてもよい。しかし、板状部の内面は、培養すべき細胞が接着するための主要面であり、また、ガス透過部を構成するガス透過性材料は一般に疎水性であり、培養すべき細胞の接着には適さない場合がある。細胞接着面をより多く確保する点からは、板状部にはガス透過部を設けず、側壁部全体をガス透過部とする態様(側壁部全体をガス透過性材料で形成する態様例)が好ましい。
しかしながら、側壁部のみにガス透過部を設ける態様では、板状部の外周形状が大きくなった場合に、側壁部から当該容器内の中央部までの距離が長くなり、該中央部の液状培地へのガス供給量が必要量を下回る可能性がある。そのような場合、図6(a)、(b)に例示するように、外側板状部のうちの一方または両方の主面の所定位置、好ましくは中央部に、1以上のガス透過部41を設けることが好ましい。
図6(a)に示す態様例では、外側板状部11の主面の中央部に1つの大きいガス透過部41が設けられ、図6(b)に示す態様例では、外側板状部11の主面の中央部の中心の周囲に小さい複数(図では、41a、41b、41c、41dの4つ)のガス透過部41が設けられている。外側板状部の主面の中央部とは、該外側板状部の主面の外形線に隣接する縁部を除いた領域である。板状部の主面を見たときのガス透過部の位置、形状、数、配置パターンなどは、板状部の外周形状に応じて適宜決定してよい。
図7〜図11は、板状部に設けられるガス透過部の好ましい構造を例示している。
図7(a)、(b)の例では、一方または両方の外側板状部の主面中の所定位置に、該板状部を板厚方向に貫通する貫通孔が設けられ、該貫通孔がガス透過性を有する材料によって封止されている。即ち、板状部が局所的にガス透過性となっている。図7(c)〜図11の例では、1以上の板状部を板厚方向に貫通する貫通孔が設けられ、該貫通孔が、ガス透過性を有する材料からなるガス透過部を有するカップ状部材または管状部材によって封止されている。図7(c)〜図11に示した例では、カップ状部材全体または管状部材全体がガス透過性を有する材料からなるガス透過部となっている。図7〜図11に示した構造例は、多数の好ましい構造例の中の数例であって、培養室内の液状培地を漏洩させないように構成された、あらゆる封止構造を採用することができる。
図7(a)に示す態様例では、外側板状部11に貫通孔11dが設けられ、該貫通孔内にガス透過性を有する材料410が充填され、該孔内が封止されてガス透過部41となっている。ガス透過性を有する材料410からなる部分を通して、ガスが透過し得、例えば、外界の酸素が培養室内の液状培地に供給されるようになっている。
図7(b)に示す態様例では、外側板状部11に貫通孔11dが設けられ、該貫通孔が、外側板状部の内面に貼り付けられたガス透過性のフィルム411によって塞がれて、ガス透過部41となっている。該フィルム411は、外界側に設けられてもよい。
図7(c)に示す態様例では、外側板状部11に貫通孔11dが設けられ、該貫通孔は、ガス透過性を有する材料からなるガス透過部を有するカップ状部材412によって封止されて、ガス透過部41となっている。該カップ状部材は、管状の胴体部と、閉鎖端部(底部)とを有する。該閉鎖端部は、管状の胴体部の内部管路412aを一方の端部において塞いでおり、それにより、全体の形状がカップ状(容器状)となっている。該カップ状部材では、培養室内の液状培地に直接的に接触する部分がガス透過性を有する材料からなるガス透過部であってもよいが、該カップ状部材全体がガス透過性を有する材料からなる態様が安価で好ましい。図7(c)に示す態様例では、カップ状部材412の閉鎖端部を通して、ガスが透過し得、例えば、外界の酸素が培養室内の液状培地に供給されるようになっている。
図8(a)に示す態様例では、図7(c)に示す態様にさらに加えて、カップ状部材412の開口側にフランジ412bが設けられている。該フランジは、貫通孔への挿入時のストッパーとして機能し、組み立てを容易にしている。
図8(b)に示す態様例では、図8(a)に示す態様にさらに加えて、カップ状部材412の底部が培養室内に突き出しており、ガスが透過し得る領域が図8(a)の態様よりも大きくなっている。該カップ状部材412の底部は、さらに延びて、図の下方の板状部(図示せず)に達していてもよい。加えて、図8(b)に示す態様例では、貫通孔11dの入口には座ぐり穴が設けられ、カップ状部材412の開口側のフランジ412bが、該座ぐり穴内に収容され、その結果、外側板状部11の外面が平坦になっている。
カップ状部材の胴体部の外部形状は、板状部の貫通孔の内部形状に応じた形状であってよく、例えば、ストレートな円柱状、テーパー状、段階的に径が変化する形状などが例示される。
図6〜図8に示す態様は、外部板状部に隣接する培養室に対してより効果的にガスを供給し得るので、板状部の数が3である場合により有用な態様である。これに対して、図9〜図11に示す態様例は、外部板状部に隣接する培養室のみならず、その下に位置する培養室に対しても一方の外部板状部の側からガスを供給し得る態様である。よって、図9〜図11に示す態様例は、板状部の数が3以上の全ての態様に対して有用な態様である。
図9(a)に示す態様例では、当該容器は4つの板状部11〜14を有する。ガス透過部が設けられる一方の外側板状部11から所定の中間板状部13までの各板状部11、12、13の主面の所定位置には、各板状部をそれぞれ板厚方向に貫通する同じ開口形状の貫通孔11d、12d、13dが同軸状に設けられている。そして、これらの貫通孔に、ガス透過性を有する材料からなるカップ状部材413が挿通されている。ここでいう、管状部材が挿通されるとは、組み立てのステップを限定するものではなく、結果として管状部材が挿通されたような構造であることをも意味する。図では、全ての貫通孔11d〜13dが、カップ状部材413の管状の胴体部の外周面によって封止されている。カップ状部材413の内部管路は、外側板状部11の外界側に開口しており、外気がカップ状部材413の内側まで入りこみ、各培養室に外界の酸素等のガスが透過することが可能になっている。カップ状部材413が、一方の外側板状部からどの培養室まで到達するかは、適宜決定してよい。
図9(b)に示す態様例では、当該容器は4つの板状部11〜14を有する。一方の外側板状部11から他方の外側板状部14までの全ての板状部の主面の所定位置には、各板状部をそれぞれ板厚方向に貫通する同じ開口形状の貫通孔11d、12d、13d、14dが同軸状に設けられている。それらの貫通孔には、ガス透過性を有する材料からなるガス透過部を有する管状部材(カップ状部材であってもよい)414が挿通され、少なくとも両方の外側板状部11、14の貫通孔が、管状部材の挿通によって封止されている。図9(b)に示す態様例では、管状部材414全体が、ガス透過性を有する材料によって形成されている。図9(b)に示す態様例では、全ての貫通孔が、管状部材414の挿通によって封止されている。図9(b)に示す態様例では、カップ状部材が用いられてもよいが、外気が内部管路に入り易い点から、両端が開口した管状部材がより好ましい。
図9(b)に示す態様例では、管状部材414の両端にフランジが設けられている。該管状部材が弾性を有しかつ柔軟であれば両端にフランジを有していても、同図のように、全ての貫通孔に挿通することは可能である。また、ストレート状の管状部材を挿通した後で、該管状部材の突出し部分を加熱によって変形させて、該フランジを形成してもよい。該管状部材は、フランジ部の無いストレートな管状部材であってもよく、外側板状部から外部に突き出ていなくてもよい。また、図8(b)の態様例のように、外側板状部の貫通孔の開口部に座ぐり穴が設けられてもよい。
図10(a)に示す態様例では、複数のカップ状部材が、互いに反対側から挿入され、互いに補完し合って、全ての培養室にガスを供給している。この態様では、一方の外側板状部11とその下の中間板状部12には、同じ開口形状の貫通孔11d、12dが同軸状に設けられ、これらの貫通孔がカップ状部材415によって封止されている。一方、他方の外側板状部14とその上の中間板状部13には、同じ開口形状の貫通孔14d、13dが同軸状に設けられ、これらの貫通孔がカップ状部材416によって封止されている。このように、互いに反対側から複数のカップ状部材が挿通された態様であれば、各カップ状部材の長さが容器の全厚さの半分であっても、中間に位置する各培養室に外部のガスを供給することができる。
図10(b)に示す態様は、図9(b)に示す態様の変形態様である。図10(b)に示す態様例では、ガス透過性を有する管状部材(または、カップ状部材)417の胴体外周と、各中間板状部の貫通孔12d、13dとの間に隙間があり、該隙間を通して、各培養室S1〜S3は互いに液体連通している。
図11に示す態様例は、図9(b)に示す態様の変形態様である。図11に示す態様例では、管状部材(または、カップ状部材)418の管状の胴体部の外側のうち各培養室S1〜S3に対応する部分の外径が各貫通孔の内径よりも大きくなっているか、または、全周のうちの一部だけが突起している。この態様例では、各培養室S1〜S3に対応する部分は、ガスが透過する壁部でありながらも、板状部11〜14の間の間隔を一定に保つスペーサーとしても機能している。
図9〜図11に示した管状部材またはカップ状部材では、培養室内の液状培地に直接的に接触する部分だけがガス透過性を有する材料からなるガス透過部であってもよいが、該カップ状部材全体がガス透過性を有する材料からなる態様が安価で好ましい。
図6〜図11に示す態様例では、ガス透過部を有する部材(全体がガス透過性を有する材料からなる部材も含む)は、成形型内で板状部と一体的に成形されてもよいし、ガス透過部を有する部材を別途形成し、板状部の貫通孔に組み込んでもよい。
ガス透過部を有する部材が独立した部品である場合、板状部とガス透過性を有する材料からなる部材との接続は、熱による溶着や接着剤による接続であってもよいし、材料の弾性を利用した単なるはめ込みによる接続であってもよい。液体の漏えいを防止するためのシール構造やシール材は、適宜加えてよい。
外側板状部の外側の主面に突起部や脚部を適宜設け、それにより、該主面のガス透過部が外部の平面などによって塞がれないようにしてもよい。
当該容器には、各培養室と外界とを連絡するための出入口が必要な数だけ設けられる。
各培養室に1つの開口を設け、該開口を出口および入口として利用してもよく、また、細胞や液状培地、試薬等の注入と取り出しを好ましく行うために、各培養室に入口と出口をそれぞれ1つ以上設けてもよい。また、中間板状部に貫通孔を設け、互いに隣り合った培養室同士が連通した態様では、必ずしも各培養室毎に出入口を設ける必要はない。また、全ての中間板状部に貫通孔を設けて、全ての培養室同士が連通した態様では、1つの培養室に設けた出入口を通じて、全培養室と外界とを液体連通させることも可能である。本発明において、「全ての培養室は、培養液に関して、該出入口を通して外界と連通している」とは、各培養室ごとに付与された出入口によって、または、中間板状部の貫通孔と出入口の種々の組み合わせによって、各培養室と外界との間で培養液が移動可能であること意味する。
出入口の位置は、特に限定はされないが、図1(b)に示すように、入口31aと出口31bを側壁部21に設ければ、外側板状部の外面が平坦になり、全ての培養室への配管を1つの側面に集中させることができるという利点がある。一方、全ての中間板状部に貫通孔を設け、外側板状部の外面に出入口を設ければ、配管が側方に広がることが抑制されるという利点がある。
側壁部に出入口を設ける場合、図12(a)に簡単な構成例を示すように、他のバッグや種々の外部機器などとの接続に用いるカップリングや、チューブを差し込むための継手など、必要に応じた接続用器具が設けられることが好ましい。図12(a)の例では、チューブを差し込むための単純なストレートの管状部材31cが、側壁部21を貫通した状態で固定されている。
上記したように、各培養室は、互いに隔離されて独立していてもよいし、中間板状部に貫通孔が設けられて、全ての培養室が互いに連通していてもよい。図12(b)に示す態様例では、全ての培養室(図にはS1とS2だけが示されている)が中間板状部(図では12)の貫通孔12dによって互いに連通しており、一方の外側板状部11に比較的大口径の出入口32が1つ設けられており、当該容器は、内部に多層の細胞接着面を持ちかつ良好なガス透過性を持った単一の培養室を有する好ましい細胞培養容器となる。
図12(b)における板状部12の貫通孔12dのように、各中間板状部の貫通孔が、出入口32の直下に同軸状に設けられていれば、各培養室への培養液の供給、各培養室からの培養液の取り出しがスムーズになり好ましい。容器内の液状培地を排出し易いように、出入口と貫通孔とを隅に設ける態様や、各培養室内に液状培地が残留しないように出入口や貫通孔と側壁部との段差を無くす態様(図13(a))など、好ましい構造は、適宜加えてよい。
一方、各培養室が互いに隔離され、各培養室ごとに側壁部に出入口が設けられる態様では、条件が異なる多種類の培養を、コンパクトなスペースで実施可能となる。
図12(b)に示す態様例では、出入口32は栓体42によって塞がれている。該栓体42は、図8(a)に示すようなガス透過部として機能するカップ状部材を兼用していてもよい。
図13(a)に示す態様例では、出入口32には、外側板状部11の外面に筒状部材32c1が付与されている。筒状部材32c1の内部管路32cは、出入口32に位置合わせされている。フランジ32c2は、筒状部材32c1と外側板状部11の外面との接着面積をより大きくしている。
図13(b)に示す態様例では、図13(a)に示す態様例に加えて、フランジ32c2の下方に、筒状部32c3が延びている。該筒状部32c3は、貫通孔32にはめ込まれている。
これらの筒状部材は、スクリューキャップやシールキャップなどによって封止される態様であってもよいし、該筒状部材にチューブが接続されてもよい。
また、各培養室の側壁部に設けられた開口部に集合用部材が接続され、多数の開口部が1つの開口部に集合した態様であってもよい。
図14は、中間板状部に設けられる貫通孔と、外側板状部に設けられる出入口の好ましい態様例を示す図である。この態様例では、各中間板状部12、13に設けられる貫通孔12d、13dの開口形状は、図14(c)に示すように、培養室の一辺にわたって延びる長円形またはスリット形状である。また、図14(b)に示すように、外側板状部11には、中間板状部の長円形の貫通孔の両端部に対応する位置に、それぞれ円形の貫通孔が設けられ、それら貫通孔に筒状部材33c1、34c1がはめ込まれ、液状培地のための入口、出口となっている。筒状部材33c1、34c1にはチューブが接続可能であり、外部機器との間で、液状培地の移動が可能である。
図14(c)に示すように、各中間板状部に設けられる貫通孔の開口形状を、円形、長円形またはスリット形状とすることにより、細胞懸濁液、液状培地、試薬等の、各培養室への注入や各培養室からの回収をスムーズに行うことができるという利点が得られる。前記円形の直径は、特に限定はされないが、2mm〜30mm程度が好ましい値として例示される。貫通孔の開口形状を円形とし、該貫通孔を複数設ける態様は、強度の点でも、液体のスムーズな出入りの点でも好ましい態様である。とりわけ、該貫通孔を出入口の直下の位置に設ける態様は、液体のスムーズな出入りの点で好ましい態様である。図14(b)に示すように、外側板状部に設けられる出入口が2つの貫通孔(出口と入口)であれば、該出口と入口のそれぞれの直下の位置に中間板状部の貫通孔を設ける態様は、液体のスムーズな出入りの点でより好ましい態様である。中間板状部に設けられる貫通孔の開口形状が、長円形またはスリット形状である場合、これら長円形またはスリット形状の幅(長手方向に直交する開口寸法)は、特に限定はされないが、2mm〜15mm程度が好ましい値として例示される。長円形やスリット形状を設けると、中間板状部の強度が低下する可能性があるので、長手方向の寸法が過大にならないようにすることが好ましい。
当該容器の製造方法は、特に限定はされず、樹脂成型法、接着剤、ボルト、リベット、種々の連結機構を適宜利用して、3以上の板状部とそれらの間の空間を側壁部が封止した構造(出入口は封止されない)となるように組立てを行えばよい。次に、当該容器の好ましい製造方法の一例を示す。
(A)板状部となる3枚以上の適度な剛性を有する板状部材を準備する。各板状部材は、細胞培養の状態を観察する点から、透明であることが好ましく、側壁部の材料と接合可能な材料が好ましい。板状部の材料は、ポリスチレン、ポリカーボネート樹脂、延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂などが好ましく使用可能である。
各板状部の製造方法は限定されない。市販の標準板からの削り出しによって該板状部を製作してもよいし、射出成形によって該板状部を成形してもよい。板状部の製造後は、組み立てまで表面の清浄度を維持することが望ましい。
板状部には、必要に応じて、図6〜図11に示した構造を有するガス透過部のための貫通孔を設けてよい。
(B)板状部の主面の表面処理
板状部の主面には、細胞培養に必要な親水性を付与し、かつ、シリコーンゴム等の側壁部を接合する為の表面処理を施すことが好ましい。該表面処理としては、火炎処理(フレーム処理)、コロナ処理、プラズマ処理、VUV(真空紫外光)の照射などが挙げられる。
(C)側壁部を形成するための1つの金型に1つの板状部をセットする。
(D)側壁部を形成するための液状シリコーンゴムを金型に注入する。各板状部の一方の主面上に射出成形によってシリコーンゴム製の側壁部を形成する。このとき、必要に応じて、出入口のためのポート部材を差し込むための貫通孔を、金型によって作り込んでおいてもよい。該シリコーンゴムは、板状部の材料(PC樹脂など)との選択接着性能を持つもの(信越化学KE−2090)が好ましい材料として挙げられる。
(E)型開きと成形品の取り出し
金型を加熱し、シリコーンゴムを半硬化させ、板状部の一方の面に側壁部が固着した中間部材を得、これを取り出す。シリコーンゴムは、金型から離形可能な程度に硬化しているが、完全には硬化していない状態で取り出すことが好ましい。該中間部材を必要な数だけ製造する。
(F)1つの中間部材(一方の外側板状部と側壁部)を、側壁部を上側にして、組み立て用のベース基板上に配置する。その上に、他の中間部材を、側壁部を上側にして、必要数だけ積み重ね、互いに位置決めする。最も上に、側壁部を持たない他方の外側板状部を配置し、それらを貼り合わせる。貼り合わせでは、クリップなどの把持具を用い、板厚方向に適度な圧縮力を作用させながら、オーブンで120℃以上30分間加熱する。これにより、側壁部であるシリコーンゴムが完全に硬化すると同時に、相手の板状部に固着し、貼り合わせが完了する。
上記(E)において、シリコーンゴムを完全に硬化させた場合には、貼り合わせには、液状シリコーンゴムを接着剤として塗布し、硬化させてもよい。
(G)当該容器の仕上げ(ポートの付与)
最上層の外側板状部に設けられた貫通孔に、図13(a)に示すような筒状部材(ポート用部材)を圧入し出入口とする。図12aに示すように、側壁部に筒状部材を付与してもよい。筒状部材の装着には、接着剤を用いてもよい。
図15は、各板状部の剛性を試験する方法の一例を概略的に示す断面図である。図の例では、図1(a)における上側の外側板状部11の剛性を試験している。同図に示すように、十分な剛性を有する検査用のベース板Bの平坦な上面B1上に、1つの板状部11とそれに隣接する側壁部21とを配置する。このとき、側壁部21が下側となるように配置し、それにより、板状部11をベース板Bの上面B1から培養室の間隔g1だけ離す。
板状部11の上面の中央の領域(例えば、直径10mm〜20mm程度の円形領域)に対して、予め定められた圧縮荷重F1(例えば、実使用時において取扱いで作用する200Nなど)を作用させる。その時の中央の領域の降下量が、板状部の間隔g1の半分未満であれば、当該容器は、通常の取り扱いでは、各板状部の内面同士が互いに接触することがないと見なすことができる。
前記の中央の領域の面積や圧縮荷重F1の値は、あくまでも使用上許容される剛性を判定するための一例であって、製品の要求やサイズの大小などに応じて最適な試験となるように適宜変更してよい。
本発明の細胞培養容器は、例えば、1つの外側板状部の内面の有効面積(側壁部に囲まれた面積)が100cmであれば、向かい合った板状部の内面の有効面積の合計が200cmとなり、1つの培養室内には、5×10個×200=1×10個の細胞を培養することができる。このような培養室(板状部同士の間隔4mm)を20段重ねるとし(板状部の総数は21)、外側板状部の厚さを5mm、中間板状部の厚さを2mmとすると、合計厚さ128mmのコンパクトな占有空間において、1×10個×20=2×10個という、従来の細胞培養バッグや多層型の細胞培養器具では得ることのできない多数の細胞を回収することが可能になる。
当該容器によって培養可能な細胞は、特に限定はされないが、接着性細胞であれば、本発明の有用性が特に顕著となる。そのような細胞としては、例えば、ES細胞(胚性幹細胞)、iPS細胞、幹細胞や、ワクチン生産のためのウィルス増殖用として、MDCK細胞、MRC5細胞などが挙げられる。
当該容器を用いて細胞培養を行なう場合に、当該容器内に収容される液状培地は、従来公知のものであってよい。
本発明の細胞培養容器を用いて接着性細胞を培養する場合、接着性細胞を含んだ液状培地(懸濁液)を、各培養室内に収容し、細胞を接着させるべき一方の板状部の主面を下側にして、各板状部を水平に維持し、一定期間培養する。前記懸濁液は、別途培養した接着性細胞を、トリプシン・EDTA処理等により剥離し、適切な液状培地中に分散することにより得ることができる。
懸濁液中の細胞は、重力により沈降し、下側の板状部の主面に接着するので、これを引き続き培養することにより、板状部のの主面に細胞を接着させた状態で、接着性細胞を培養することができる。
各培養室を構成する2つの板状部の両方の主面に細胞を接着させて培養する場合、接着性細胞の懸濁液を本発明の細胞培養容器に収容し、一方の板状部の主面を下側にして、各板状部を水平に維持し、一定期間培養する。懸濁液中の細胞の一部が下側の板状部の主面に接着し、残る細胞が液状培地中に依然として懸濁しているタイミングで、当該容器をひっくり返して(即ち、各板状部を表裏の主面の位置関係を逆転させて)、更に一定期間培養する。その結果、依然として懸濁している細胞が新たな下側の主面に沈降し接着するので、各培養室を構成する2つの板状部の両方の主面に細胞を接着させて培養することが可能となる。当該容器の上下反転のタイミングは、当業者であれば適宜調整することが可能であるが、細胞懸濁液を本発明の細胞培養容器に収容して培養を開始してから、例えば、ヒトiPs細胞では5分〜10分後が好適であり、ヒト間葉系幹細胞などでは60〜80分後が好適である。
実施例1
本実施例では、図14に例示する細胞培養容器を実際に製作し、該容器によって多数の細胞を培養し得ることを確認した。板状部の数は4、培養室の数は3である。各中間板状部には、図14(c)に示す長円状の貫通孔が設けられており、一方の外側板状部には、入口用のポートとしての筒状部材33c1と、出口用のポートとしての筒状部材34c1が設けられており、それぞれに外部機器と接続するためのチューブが接続可能となっている。
製作した容器の仕様は次のとおりである。
板状部の材料:ポリスチレン、外側板状部の厚さ:1mm、中間板状部の厚さ:1mm、板状部の外形寸法:長辺308mm×短辺218mmの長方形、側壁部に囲まれた板状部の主面の領域:長辺290mm×短辺200mmの長方形(1つの主面の有効な培養面積は、580cmである)。
尚、本実施例では、図18(b)に示すように、厚さ3mmのステンレス製の補強部材を2枚用意し、2つの外側板状部のそれぞれの外側の主面に配置し、当該容器を積層方向に挟み込んだ。該補強部材の外形は、外側板状部の外形よりも大きく、外側板状部の外周縁全周にわたって外側板状部から外側に張り出している。補強部材の張り出した部分同士の間に複数の筒状ナットを挿入し(該筒状ナットの全長は、当該容器の積層方向の全寸法よりも微量だけ短く設定した)、2つの補強部材を各筒状ナットの両端部にそれぞれにボルトで締め付け、それにより、2つの補強部材によって当該容器全体を積層方向に挟み込んで補強した。この補強態様は、あくまでも補強の一例である。
板状部同士の間の間隔:8mm(=側壁部の縦方向の寸法)
側壁部:(材料)シリコーンゴム、(横方向厚さ)8mm。シリコーンゴムのガス透過性は、cc・cm/cm・sec・atmである。
当該容器の総厚さ:28mm(出入口の筒状部材を含まない)
(予備実験:容器の上下反転のタイミングの検討)
各板状部の全ての主面において均等に細胞を培養するためには、各板状部のそれぞれの主面に均一に細胞を接着させる必要がある。そこで、本実施例では、1つの培養室だけを有する検討用の培養容器(外形:一辺62mmの正方形、側壁部に囲まれた内面の領域:一辺48mmの正方形、2枚の板状部同士の間の間隔:8mm縦方向の寸法)を作製し、2つの板状部の上下を反転させて、細胞の接着の様子を確認する試験を行った。以下、各培養室を構成する2つの板状部の主面の両方で細胞培養を行うことを、両面培養と呼ぶ。
前記検討用の培養容器内に、1.2×10個の細胞を播種し、速やかに、板状部を水平に横たわらせた姿勢にてインキュベーター内に配置した後、該配置から30分後、40分後、50分後、60分後、70分後、80分後、90分後にそれぞれ容器の上下を反転し、その後24時間培養を継続し、それぞれの板状部の主面(内面)の細胞の様子をギムザ染色して観察した。
図16は、該観察の結果を示す写真図である。同図の上側の試料は、1つの培養室を構成する2つの板状部のうち、最初に下側に位置した(即ち、最初に上側を向いて、細胞が沈降した)板状部の主面をギムザ染色した状態を示している。また、同図の下側は、上下を反転させた後で下側に位置した板状部の主面をギムザ染色した状態を示している。また、図の左から順に、配置から30分後、40分後、50分後、60分後、70分後、80分後、90分後に上下を反転させた試料の結果を示している。ギムザ染色の色は、細胞の数に比例して濃くなる。
図16から明らかなとおり、容器を最初に上下反転するまでの時間が長くなると、細胞がより多く沈降し、結果、反転前に上側に位置していた板状部の主面の細胞の数が少なくなることが確認できた。そして、培養開始から30分程度で上下を反転させることで、1つの培養室を構成する2つの板状部の主面において、均等に細胞が培養できることが確認できた。
上記の実験結果に従い、かつ、図14に示す本発明の細胞培養容器を用いて、細胞培養を次のとおり行った。
先ず、当該容器を、各板状部が水平になるように配置し(出入口は上側)、入口用のポートから、培地漏斗を用いて、当該容器内に液状培地(MEM10%FBS)とMRC−5細胞とを混合してなる細胞懸濁液1400mLを充填し、各ポートに栓をした。
当該容器内をインキュベーター内に配置し、37℃、30分間、細胞培養を継続した。
培養開始から30分後に当該容器の上下を反転し、その時点からインキュベーター内で37℃、60分間、細胞培養を継続した。
前記の60分が経過した時点で、当該容器の上下を反転し(2回目の反転)、その後、60分が経過する毎に当該容器の上下を反転し、3回目および4回目の上下反転を行って、細胞が6枚の板状部の各主面に均一に接着できるようにした。4回目の上下反転の後は、その姿勢のまま、細胞培養を継続した。
図17(a)は、培養開始から72時間経過後の、最初に下側に位置した板状部(下側の外側板状部)の主面をギムザ染色した状態を示す顕微鏡写真図である。また、図17(b)は、最初に上側に位置した板状部(上側の外側板状部)の主面をギムザ染色した状態を示す顕微鏡写真図である。図17(a)、(b)に示すように、板状部の主面には細胞が均一に付着しており、両者の細胞培養の状態には大きな差異がなかったことが観察できた。さらに培養後の容器を分解し、各板状部の主面をギムザ染色したところ、図18(a)、(b)に下側の外側板状部の内面の様子を示すように、各板状部の主面(外側板状部の内面、中間板状部の両面)には、いずれにも細胞が同様に付着して増殖していることがわかった。
実施例2
本実施例では、実施例1と同様の細胞培養容器を用い、iPS細胞の両面培養を次のとおり行った。
(板状部の主面に対するコーティング)
先ず、当該容器を、各板状部が水平になるように配置し(出入口は上側)、入口用のポートから、培地漏斗を用いてPBSで希釈したiマトリックスを1400mL充填し、培養容器に溶液が満たされるようにして30分間放置し、さらに反転して30分間放置し合計1時間コーティングした後に溶液をすべて抜き取った。
(iPS細胞の播種)
次に、当該容器の入口用のポートから、培地漏斗を用いて当該容器内に液状培地(mTeSR1)とiPS細胞とを混合してなる細胞懸濁液1400mLを充填し、各ポートに栓をした。
当該容器をインキュベーター内に配置し、37℃にて、iPS細胞にとって好ましい時間として5分間の細胞培養を行った。
その後、上下を反転(2回目の反転)をして10分間培養し、さらに上下を反転(3回目の反転)をして15分間培養した。
前記15分間の培養の後、4回目の反転を行い、60分経過後、5回目の反転を行い、培養を継続した。4回目の上下反転の後は、その姿勢のまま、細胞培養を継続した。
24時間経過後から、毎日、培地を半量の700mL交換し、5日間培養した。
培養5日目の培養容器をギムザ染色して細胞の分布の様子を確認した。
その結果、細胞はコンフルエントの状態ではなかったが、板状部の内面それぞれが染色されており細胞がどの面でも付着して増殖していることがわかった。
実施例3
本実施例では、実施例1と同様の細胞培養容器を用い、ヒトMSC細胞の培養を次のとおり行った。
先ず、当該容器を、各板状部が水平になるように配置し(出入口は上側)、入口用のポートから、培地漏斗を用いて、当該容器内に液状培地(Poweredby10)とヒトMSC細胞とを混合してなる細胞懸濁液を1400mLを充填し、各ポートに栓をした。
当該容器内をインキュベーター内に配置し、37℃に維持し、7日間培養した。本実施例では、当該容器の上下を反転させず、各板状部の一方の主面上だけに細胞を沈降させて培養を行った。
当該容器内に播種した細胞数は、1.7×10個であり、当該容器の板状部の片側の主面の有効な培養面積の総和は、580cm×3=1740cmである。培養7日目の細胞数を測定すると、8.84×10個となっており、元の細胞数の約5.2倍となっていた。
比較例1
実施例3との比較のために、T75フラスコ(コーニング社製、(材料)ポリスチレン)を従来の培養容器として用い、液状培地(Poweredby10)を30mL収容し、ヒトMSC細胞を播種し、該T75フラスコの口を栓で密封した。該T75フラスコ内には、細胞培養に必要な空気を十分に残留させた。
該T75フラスコを、実施例3と同じ条件にてインキュベーターで7日間培養した。
T75フラスコに播種した細胞数は、7.5×10(個)であり、該T75フラスコ内の培養面積は75cmである。
上記の培養後に細胞数を測定したところ、T75フラスコで培養された細胞数は4.1×10個となっており、もとの細胞数の5.4倍に増殖していた。
実施例3と比較例1の結果から、本発明による細胞培養容器は、側壁部から酸素を供給する構造でありながら、空気を十分に残留させたT75フラスコと同等の細胞増殖性を示すことがわかった。
本発明の細胞培養容器は、全体として剛性を有する多層の容器であるから、外力が作用しても内面の細胞が保護され、よって、取扱い性が極めて良好である。また、本発明の細胞培養容器は、その剛性に起因して、液状培地を過剰に注入して膨らませておく必要がないので、従来の細胞培養バッグに比べて、培地の消費量が少ない。また、板状部は厚いが培養時には全体として細胞培養バッグよりも薄く、かつ、多数の培養室が密に積み重ねられ、それらを隔離する各中間板状部の両面が細胞接着面となっている。よって、同じ占有空間内でも、従来の細胞培養バッグや多層型の細胞培養器具に比べて、極めて大量の細胞を簡単な操作で培養することが可能である。
11、12、13、14 板状部
11、14 外側板状部
12、13 中間板状部
21、22、23 側壁部
31 出入口
g1、g2、g3 板状部同士の間隔
t1 側壁部の横方向厚さ
S1、S2、S3 容器の培養室
F 外力

Claims (6)

  1. 細胞培養容器であって、当該細胞培養容器は、
    間隔をおいて多層状に配置された3つ以上の板状部を有し、前記3つ以上の板状部は、多層状の配置において最も外側に位置する2つの外側板状部と、それらの間に位置する1以上の中間板状部とを含んでおり、
    間隔をおいて互いに隣り合った板状部同士の間に位置する側壁部を有し、該側壁部は、前記間隔をおいて互いに隣り合った板状部同士の間にそれぞれ培養室が形成されるように、該板状部同士の間の各空間の一部または全部の周囲を取り巻いて、該板状部同士を連結しており、
    2つの外側板状部および各側壁部から選ばれる1以上の部分に設けられた1以上のガス透過部を有し、全ての培養室は、所定のガスに関して、該ガス透過部を通して外界と連通しており、かつ、
    2つの外側板状部および各側壁部から選ばれる1以上の部分に設けられた1以上の出入口を有し、全ての培養室は、培養液に関して、該出入口を通して外界と連通している、
    前記細胞培養容器。
  2. 各側壁部の一部または全部が、ガス透過性を有する材料からなり、それによって、各側壁部がそれぞれの培養室のためのガス透過部となっている、請求項1記載の細胞培養容器。
  3. 2つの外側板状部のうちの一方または両方には、その主面の所定位置にガス透過部が設けられており、該ガス透過部が、次の(i)〜(iv)のいずれか1つの構造を有するものである、請求項1または2に記載の細胞培養容器。
    (i)ガス透過部が設けられる外側板状部の主面の所定位置に、該外側板状部を板厚方向に貫通する貫通孔が設けられ、該貫通孔が、ガス透過性を有する材料によって封止された構造。
    (ii)ガス透過部が設けられる外側板状部の主面の所定位置に、該外側板状部を板厚方向に貫通する貫通孔が設けられ、該貫通孔には、ガス透過性を有する材料からなるガス透過部を有するカップ状部材が挿通され、該貫通孔が該カップ状部材の挿通によって封止された構造。
    (iii)ガス透過部が設けられる外側板状部から所定の中間板状部までの各板状部の主面の所定位置に、各板状部をそれぞれ板厚方向に貫通する貫通孔が同軸状に設けられ、それらの貫通孔には、ガス透過性を有する材料からなるガス透過部を有するカップ状部材が挿通され、少なくとも前記外側板状部の貫通孔がカップ状部材の挿通によって封止された構造。
    (iv)一方の外側板状部から他方の外側板状部までの各板状部の主面の所定位置に、各板状部をそれぞれ板厚方向に貫通する貫通孔が同軸状に設けられ、それらの貫通孔には、ガス透過性を有する材料からなるガス透過部を有するカップ状部材または管状部材が挿通され、少なくとも両方の外側板状部の貫通孔がカップ状部材または管状部材の挿通によって封止された構造。
  4. 各中間板状部には、各中間板状部を間に介して互いに隣り合った培養室同士を連通する貫通孔が設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の細胞培養容器。
  5. 前記出入口が、
    2つの外側板状部のうちの一方の外側板状部だけに設けられているか、または、
    多層状の配置において最も外側に位置する1つの培養室を取り巻く側壁部だけに設けられている、請求項4に記載の細胞培養容器。
  6. 2つの外側板状部のそれぞれの板厚が、0.5mm〜10mmであり、
    中間板状部の板厚が、外側板状部の板厚と同じであるか、または、それよりも薄く、
    全ての板状部の外周形状が、互いに合同な長方形または正方形であって、該長方形または該正方形の一辺の長さが、30mm〜1000mmであり、
    前記各板状部同士の間隔が、1mm〜10mmである、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載の細胞培養容器。
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