実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る空気調和機用室内機20の分解斜視図である。以下の説明においては、空気調和機用室内機を室内機20と称して説明する。本実施の形態における室内機20は、冷媒配管により室外機と接続され、室外機とともに冷媒回路に冷媒を循環させて冷凍、空気調和等を行う空気調和機を構成する。なお、本実施の形態の室内機20は、天井埋め込み型の室内機であり、以下では、その一例として四方向カセット形の室内機について説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る室内機20は室内空間1の天井内部に埋め込まれて設置されるものである。以下の説明においては、天井を上とし、天井から室内空間1を見た方向を下として説明する。室内機20は、室内送風機、室内熱交換器等を収容する筐体2と、化粧パネル3と、吸込グリル4とにより構成されている。筐体2は、室内送風機が駆動したときに空気を整流するためのベルマウス5を有し、ベルマウス5は筐体2に形成された開口に配置されている。筐体2のベルマウス5よりも外側の部分には、化粧パネル3を仮掛けする一対の仮掛けフック9が設けられている。
化粧パネル3は、室内側となる筐体2の下面に筐体2を覆い隠すように取り付けられる。化粧パネル3の中央部分には、筐体2の開口に対応する位置に矩形状の開口が設けられ、室内送風機の駆動により室内空気が吸い込まれる吸込口空間6を形成している。吸込口空間6は、吸込グリル4により覆われている。吸込口空間6を仕切る四辺の縁は、吸込口縁部7を構成している。各吸込口縁部7の外側には、室内熱交換器を通過した空気を室内に吹き出す吹出口11が設けられている。
四辺の吸込口縁部7の内、2組の対向する辺のいずれか1対の辺のそれぞれには、化粧パネル3を貫通し上面から突出する仮掛けレバー8が取り付けられている。各仮掛けレバー8は、対向する二辺に平行で吸込口空間6の中心を通る線について線対称な、相対する位置に配置され、仮掛けレバー8に対向した位置に配置された筐体2の仮掛けフック9に仮掛けされる。仮掛けレバー8及び仮掛けフック9は、本発明のレバー及びフックに相当するものである。
図2は、図1の仮掛けレバー8の仮掛け前の状態を示す拡大図である。図2に示すように、化粧パネル3の吸込口縁部7に取り付けられた仮掛けレバー8は、仮掛け前の状態において吸込口空間6側に迫り出すように傾斜している。具体的には、仮掛けレバー8は、上端部が化粧パネル3の平面に垂直な方向に対し吸込口空間6側に傾斜している。
吸込口縁部7には、仮掛けレバー8が挿通する落込み穴部7cと、落込み穴部7cから連続する軸受溝部7a及び7bとが形成される。落込み穴部7cは、化粧パネル3の平面に対して垂直方向に形成された矩形状の穴であり、仮掛けレバー8が落込み穴部7c内部を上下に移動することができる。軸受溝部7a及び7bは、落込み穴部7cを中心に、化粧パネル3の平面に対して水平に、吸込口縁部7に沿う方向に延びる溝であり、化粧パネル3の下面に開口している。
仮掛けレバー8は、仮掛けフック9に引掛けられる引掛け部8aと、仮掛けレバー8の両端部の軸部8b及び8cと、それらをつなぐ操作部8dとから構成され、例えば鉄線などを加工して形成される。仮掛けレバー8は、弾性変形させた部材を化粧パネル3の落込み穴部7cに挿通し、軸部8b及び8cを軸受溝部7a及び7bに差し込んで化粧パネル3の吸込口縁部7に取り付けられている。仮掛けレバー8は、例えば、一本の鉄線を折り曲げて構成される。一本の鉄線は、中央部が引掛け部8a、両端部が軸部8b及び8c、そして、それらをつなぐ部分が操作部8dとしてそれぞれ機能する。
引掛け部8aは、U字状であり筐体2の仮掛けフック9に引掛かるための空間8eを有する。軸部8b及び8cは、仮掛けレバー8の両端部に位置する。軸部8b及び8cは、軸受溝部7a及び7bに回動可能に収容され、仮掛けレバー8が回動する際の回転軸となる。操作部8dは、引掛け部8aと軸部8b及び8cとをつなぐ2本の鉄線で構成され、落込み穴部7cに対応する位置に幅方向のくびれを有する。操作部8dは、作業者が化粧パネル3を手で支えながら落込み穴部7cを介して下面から操作部8dに指を添え、仮掛けレバー8を回動させる操作、またはスライド操作などを行うことを可能にするために設けられる。
仮掛けレバー8の具体的な形状の一例を説明する。仮掛けレバー8を形成する一本の鉄線は、引掛け部8aとなる中央部が空間8eを形成しながらU字状に折り曲げられる。鉄線は、引掛け部8aの両端の位置で中心に向かい近接するように折り曲げられてくびれを有する操作部8dとなる。操作部8dは、引掛け部8aに連続している。更に、鉄線は、操作部8dのくびれが終わるそれぞれの端部から直角に、それぞれ反対方向に延びるように折り曲げられて軸部8b及び8cとなる。引掛け部8aと、操作部8dとは落込み穴部7cに挿入され、軸部8b及び8cは軸受溝部7a及び7bに収容されて、仮掛けレバー8が吸込口縁部7に取り付けられる。
続いて、仮掛けレバー8を仮掛けフック9に仮掛し、化粧パネル3を筐体2に据え付ける工程について説明する。図3は、図1の筐体2に化粧パネル3を仮掛けした状態を示す図である。図3に示すように、化粧パネル3の四隅には、化粧パネル3をねじで固定するための据付ねじ部10が設けられている。筐体2に化粧パネル3を固定して据え付ける際には、まず、化粧パネル3を筐体2の下方に位置させ、化粧パネル3を上昇させて筐体2に近づける。
図4は、図3の仮掛けレバー8が仮掛けされる直前の拡大図である。また、図5は、図4のA―A断面図である。図4及び図5に示すように、上昇させた化粧パネル3は、操作部8dが操作され、吸込口空間6側に迫り出すように傾斜していた引掛け部8aが吸込口縁部7側に回動する。操作部8dの操作は、作業者が化粧パネル3の吸込口縁部7を持ちながら落込み穴部7cを介して行う。仮掛けレバー8は、操作部8dに指を添えるなどの操作により回動し、化粧パネル3に対して垂直な仮掛けされる直前の状態となる。
図6は、仮掛けレバー8が仮掛けされた状態の拡大図である。また、図7は、図6のB―B断面図である。図6及び図7に示すように、化粧パネル3に垂直な仮掛けレバー8は、重力により仮掛けされる直前の状態から吸込口縁部7に形成された落込み穴部7c内を下方に移動し、落込み穴部7cに落ち込む。仮掛けレバー8が下方に移動すると、仮掛けレバー8の引掛け部8aは仮掛けフック9に引掛かり、仮掛けレバー8が仮掛けフック9に仮掛けされる。仮掛けフック9の先端は鉤状になっており、仮掛けレバー8が誤って吸込口空間6側に回動し、仮掛けレバー8が外れることが防止される。
仮掛けされた状態の化粧パネル3は、下方に移動し、仮掛けレバー8の軸部8b及び8cと軸部8b及び8cを収容する化粧パネル3の軸受溝部7a及び7bとが係合する。この状態では、化粧パネル3は、軸受溝部7a及び7bに軸部8b及び8cが係合した位置より下方への移動が制限され、操作者は化粧パネル3を支えなくてもよくなる。化粧パネル3が係合した位置から上方に移動すると、仮掛けレバー8が落込み穴部7c内を移動し、軸受溝部7a及び7bと軸部8b及び8cとの係合が解除されて軸部8b及び8cが軸受溝部7a及び7b内を下方に移動する。これにより、軸受溝部7a及び7bが上方に移動しても、軸部8b及び8cは化粧パネル3の移動に連動して移動しないこととなり、仮掛けレバー8と仮掛けフック9との位置関係が維持される。例えば、化粧パネル3の高さや配置位置を調整する際に化粧パネル3を上下に移動させても、仮掛けされた状態が維持され、仮掛けレバー8を仮掛けフック9から外れることがない。
化粧パネル3を仮掛けし、調整を行った後は、化粧パネル3の据付ねじ部10を介して筐体2と化粧パネル3とをねじで締結し、化粧パネル3を筐体2に固定する。据付ねじ部10を締結すると、化粧パネル3が筐体2に近接し、化粧パネル3の位置が上方に移動する。このときも、仮掛けされた状態の仮掛けレバー8は、化粧パネル3の落込み穴部7cを移動し、化粧パネル3に連動しないため、仮掛けレバー8が仮掛けフック9に掛かった状態が維持される。
化粧パネル3を筐体2から取り外す際には、据付ねじ部10の締結が解除され、化粧パネル3が筐体2に仮掛けされた状態にする。この状態で化粧パネル3を持ち上げ、操作部8dを操作して仮掛けレバー8を回動させ、引掛け部8aが吸込口空間6側に迫り出すように傾斜した図2の状態にする。そして、化粧パネル3を降下させれば、化粧パネル3を筐体2から取り外すことができる。このように、化粧パネル3は、据付ねじ部10の締結が解除されても仮掛けされた状態であり、引掛け部8aを吸込口空間6側に傾斜させることで仮掛けが解除されるため、化粧パネル3を落下させることなく筐体2から取り外すことができる。
以上のように、化粧パネル3の吸込口縁部7の対向する二辺に仮掛けレバー8が取り付けられているため、作業者などが仮掛けレバー8を操作しながら吸込口の縁部分を持つことができる。そして、吸込口縁部7の落込み穴部7cを介して軸部8b及び8cが回動され、傾斜した仮掛けレバー8を垂直になると、仮掛けレバー8全体が下方に移動して吸込口縁部7の落込み穴部7cに落ち込み、仮掛けフック9に引掛かる。これにより、化粧パネルを手で支えながら落込み穴部7cから仮掛けレバー8を操作し、重力により仮掛けレバー8を仮掛けフック9に引掛けることができる。
軸受溝部7a及び7bに軸部8b及び8cが係合した状態では、化粧パネル3の下方への移動が制限される。そして、そこから化粧パネル3を上方に移動させると、仮掛けレバー8は、落込み穴部7c内をスライドするように下方に移動するため、軸部8b及び8cが軸受溝部7a及び7b内を下方に移動する。これにより、仮掛けレバー8が化粧パネル3に連動して仮掛けフック9から外れてしまうことを回避できる。仮掛けした状態のままで化粧パネル3の位置の微調整を行うことも容易になり、化粧パネル3と筐体2とをねじにより締結し、固定する作業を簡単に行うことができる。
化粧パネル3と筐体2とを固定することで化粧パネル3が上方に移動した場合にも、仮掛けレバー8は、落込み穴部7c内を下方に移動するため、軸部8b及び8cが軸受溝部7a及び7b内を下方に移動する。このため、仮掛けレバー8が化粧パネル3に連動せず、仮掛けレバー8と仮掛けフック9との位置関係が維持され、化粧パネル3と筐体2とを締結する際も仮掛けレバー8が仮掛けフック9に掛かった状態を維持することができる。また、化粧パネル3と筐体2とを締結するねじを取り外したときに化粧パネル3が下方に移動しても、仮掛けレバー8と仮掛けフック9との位置関係が変わることが無く、仮掛けレバー8が仮掛けされた状態が維持される。このため、化粧パネル3を取り外す際に仮掛けフック9が誤って外れてしまい、化粧パネル3が落下することを防止できる。
なお、上記の説明において、引掛け部8aがU字状にすることで仮掛け状態を安定して維持させているが、引掛け部8aの形状は、U字状に限定されず、仮掛けレバー8を仮掛けフック9に引掛けるための空間8eが形成されていればよい。また、操作部8dの形状も限定されず、指触により認識し易く、引掛け部8aを回動させる、仮掛けレバー8をスライド操作するなどが容易に行える形状であるとよい。
以上説明した、本実施の形態に係る空気調和機用室内機20によれば、化粧パネル3の仮掛けレバー8を落込み穴部7cの下面から回動させ、重力により仮掛けレバー8を移動させて仮掛けレバー8を仮掛けフック9に引掛ける。そのため、化粧パネルを手で支えながら容易に仮掛けすることができる。化粧パネル3が仮掛された状態の化粧パネル3は、上方に移動させると、仮掛けレバー8が落込み穴部7c内を下方に移動して軸部8b及び8cが軸受溝部7a及び7b内を下方に移動することになる。これにより、仮掛けレバー8と仮掛けフック9との位置関係が変化せず維持されるため、化粧パネル3の取付位置の微調整や取り外しなどの際にも仮掛け状態を維持することができる上に、意図せず仮掛けレバー8が仮掛けフック9から外れることを防止できる。
回動可能に収容された仮掛けレバー8の軸部8b及び8cは、仮掛けレバー8を回動させて化粧パネル3に対して垂直にすることで仮掛けレバー8を落込み穴部7cに落ち込ませることができるため、仮掛けレバー8を仮掛けすることが容易である。
仮掛けレバー8の引掛け部8aと軸部8b及び8cとの間に設けられた操作部8dは、作業者などが指を添えることで仮掛けレバー8を回動またはスライド操作することができるため、作業を容易に行うことができる。
化粧パネル3は、仮掛けレバー8を仮掛けフック9に掛けた状態で、筐体2の四隅の据付ねじ部10を締結し、筐体2に固定されるため、据え付け作業の際に化粧パネル3が落下することを回避し、化粧パネル3が安定した状態で作業を行うことができる。
実施の形態2.
図8は、本発明の実施の形態2に係る空気調和機の構成例を表す図である。図8の空気調和機は、室外機30と、実施の形態1において説明した室内機20とをガス冷媒配管40、液冷媒配管50により配管接続し、冷凍サイクルを構成する。室外機30は、圧縮機31、四方弁32、室外熱交換器33及び膨張弁34を有している。なお、室外機30及び室内機20は、室外ユニットまたは室内ユニットと呼ばれるものでもよい。
圧縮機31は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する。ここで、特に限定するものではないが、圧縮機31はたとえばインバータ回路等により、運転周波数を任意に変化させ、圧縮機31の容量を変化させるものなどでよい。ここで、圧縮機31の容量とは、単位時間あたりの冷媒を送り出す量を示す。四方弁32は、たとえば冷房運転時と暖房運転時とによって冷媒の流れを切り換えるための弁である。
室外熱交換器33は、冷媒と室外の空気との熱交換を行う。たとえば、暖房運転時においては蒸発器として機能し、冷媒を蒸発させ、気化させる。また、冷房運転時においては凝縮器として機能し、冷媒を凝縮して液化させる。
膨張弁34は冷媒を減圧して膨張させるものであり、絞り装置、流量制御手段等から構成される。たとえば電子式膨張弁等で構成した場合には、図示しない制御手段等の指示に基づいて開度調整を行う。
室内機20は、筐体2の内部に室内熱交換器21を収容し、化粧パネル3により覆われている。化粧パネル3は、筐体2の仮掛けフック9に化粧パネル3の仮掛けレバー8を仮掛けした状態で固定される。室内熱交換器21は、例えば室内空間1の空気と冷媒との熱交換を行う。暖房運転時においては凝縮器として機能し、冷媒を凝縮して液化させる。また、冷房運転時においては蒸発器として機能し、冷媒を蒸発させ、気化させる。
最初に、空気調和機における冷房運転について冷媒の流れに基づいて説明する。冷房運転においては、実線で示す接続関係となるように四方弁32を切り替える。圧縮機31により圧縮されて吐出した高温、高圧のガス冷媒は、四方弁32を通過し、室外熱交換器33に流入する。そして、室外熱交換器33内を通過して、室外の空気と熱交換することで凝縮、液化した冷媒である液冷媒は、膨張弁34へ流入する。膨張弁34で減圧されて気液二相状態となった冷媒は室外機30から流出する。
室外機30を流出した気液二相冷媒は、液冷媒配管50を通過して室内機20に流入し、室内熱交換器21を通過する。そして、例えば室内空間1の空気と熱交換することで蒸発、ガス化した冷媒であるガス冷媒は、室内機20から流出する。
室内機20から流出したガス冷媒はガス冷媒配管40を通過して室外機30に流入する。そして、四方弁32を通過して再度圧縮機31に吸入される。以上のようにして空気調和機の冷媒が循環し、空気調和による冷房を行う。
次に、暖房運転について冷媒の流れに基づいて説明する。暖房運転においては、点線で示す接続関係となるように四方弁32を切り替える。圧縮機31により圧縮されて吐出した高温、高圧のガス冷媒は、四方弁32を通過して室外機30から流出する。室外機30を流出したガス冷媒は、ガス冷媒配管40を通過して室内機20に流入する。そして、室内熱交換器21を通過中に、例えば室内空間1の空気と熱交換することで凝縮、液化した冷媒は室内機20から流出する。
室内機20から流出した冷媒は液冷媒配管50を通過して室外機30に流入する。そして、膨張弁34で減圧されて気液二相状態となった冷媒は室外熱交換器33に流入する。そして、室外熱交換器33内を通過して、室外の空気と熱交換することで蒸発、ガス化した冷媒である液冷媒は、四方弁32を通過して再度圧縮機31に吸入される。以上のようにして空気調和機の冷媒が循環し、空気調和による暖房を行う。
上述した実施の形態では、四方向に空気を吹き出す四方向カセット形となる天井埋め込み式の室内機20について説明したが、例えば、二方向、三方向等に空気を吹き出す室内機20についても適用することができる。
以上説明した本実施の形態に係る空気調和機は、室内機20の筐体2と化粧パネル3とを仮掛けフック9と仮掛けレバー8とにより仮掛けした状態で固定する。仮掛けレバー8は、回動させると重力により下方に移動して仮掛けフック9に引掛かるため、仮掛けレバー8が仮掛けフック9から外れにくい。そのため、安定した状態で化粧パネル3が仮掛けされ、化粧パネル3を室内機に設置することが容易である空気調和機を得られる。