WO2015136921A1 - ヌバック調シート状物およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

 ヌバック調シート状物(1)は、繊維質基材(2)にポリウレタン樹脂からなる表層(3)を積層してなる。ヌバック調シート状物のオモテ面(4)に、凸部(8)と凹部(9)との高低差(A)が20~150μmであり、隣り合う凸部頂点の間隔(B)が20~150μmである微細な凹凸を有する。また、オモテ面(4)の表面動摩擦係数が0.20~0.50である。

Description

ヌバック調シート状物およびその製造方法
 本発明は、ヌバック調の外観を有するシート状物、およびその製造方法に関する。
 従来、天然皮革のヌバックを模倣した外観を有するシート状物は、衣料、鞄、靴、インテリア資材、車両内装材など様々な用途に用いられている。ヌバック調シート状物としては、湿式法または乾式法と呼ばれる方法により製造されるものが主流である。
 湿式法では、繊維質基材にポリウレタン樹脂の溶剤(有機溶剤)溶液を塗布または含浸し、これをポリウレタン樹脂の非溶剤を含む液中に浸漬して、ポリウレタン樹脂溶液中の溶剤を非溶剤に移行させる。これにより、ポリウレタン樹脂を凝固させて多孔質層を形成する。その後、オモテ面を研削して立毛調の外観を持たせる。この湿式法により得られるシート状物は、繊細な立毛調の外観と、しっとりとしたヌメリ感のある感触、柔らかな風合いを有し、天然皮革のヌバックと近似したものである。しかしながら、外力に対して脆く、高度な耐久性が求められる分野、例えば、インテリア資材や車両内装材として満足し得る耐摩耗性を得ることは困難である。
 一方、乾式法では、繊維質基材にポリウレタン樹脂の溶剤溶液または水分散液を塗布または含浸し、これを乾燥させ、その後、オモテ面を研削して立毛調の外観を持たせている。この乾式法により得られるシート状物は、一見したところ立毛調の外観を有している。しかし、感触がざらついてドライであり、風合いも硬く、天然皮革のヌバックとは程遠いものである。また、湿式法で得られるシート状物よりは耐摩耗性に優れるものの、十分とはいえない。
 ヌバック調シート状物の製造は、上記2つの方法が主流であるが、乾式法の一形態として、離型紙上に作製したポリウレタン樹脂からなる表皮層を積層したものが提案されている。例えば、特許文献1には、離型紙上に作製したポリウレタン樹脂からなる表皮層上にポリウレタン樹脂からなる中皮層を作製し、これを接着剤により繊維質基材と張り合わせ、その後、離型紙を剥離することで、ヌバック調意匠を有するものが提案されている。この方法によれば、ヌバック調の意匠は得られるものの、触感(特にヌメリ感)を再現するものではない。そこで、この課題に対し、特許文献2には、離型紙上に作製したポリウレタン樹脂からなる表皮層を、接着剤により繊維質基材と貼り合わせ、その後、離型紙を剥離し、表皮層のオモテ面を研削して立毛調の外観を持たせたものが提案されている。この方法によれば、ヌバック調のヌメリ感は得られるものの、オモテ面を研削しているため、耐摩耗性を有するものではない。
 このように、ヌバック調官能特性と耐摩耗性の双方に優れたヌバック調シート状物は得られていないのが現状である。
日本国特許第3078208号公報 日本国特許第3062399号公報
 本発明はこのような現状に鑑みてなされたものであり、ヌバック調シート状物として満足し得る触感と、耐摩耗性とを兼ね備えるヌバック調シート状物、およびその製造方法を提供するものである。
 本実施形態は第1に、繊維質基材にポリウレタン樹脂からなる表層を積層してなるヌバック調シート状物であって、ヌバック調シート状物のオモテ面に、凸部と凹部との高低差が20~150μm、隣り合う凸部頂点の間隔が20~150μmである凹凸を有し、且つ、オモテ面の表面動摩擦係数が0.20~0.50であるヌバック調シート状物である。
 本実施形態は第2に、上記ヌバック調シート状物の製造方法であって、
(1)表層用樹脂液を離型性基材上に塗布して、表層を形成する工程、
(2)表層と繊維質基材とを貼り合わせる工程、及び、
(3)離型性基材を剥離する工程、
を、この順で含んでなるヌバック調シート状物の製造方法である。
 本実施形態によれば、ヌバック調シート状物として満足し得る触感と、耐摩耗性とを兼ね備えるヌバック調シート状物、およびその製造方法を提供することができる。
一実施形態に係るヌバック調シート状物の断面模式図である。 他の実施形態に係るヌバック調シート状物の断面模式図である。 更に他の実施形態に係るヌバック調シート状物の断面摸式図である。
 本実施形態に係るヌバック調シート状物は、繊維質基材に、ポリウレタン樹脂からなる表層を積層してなるヌバック調シート状物であって、ヌバック調シート状物のオモテ面に微細な凹凸を有し、且つ、オモテ面の表面動摩擦係数が0.20~0.50であることを特徴とするものである。ここで、微細な凹凸とは、凸部と凹部との高低差が20~150μmであり、且つ、隣り合う凸部頂点の間隔が20~150μmである凹凸をいう。
 図1は、一実施形態に係るヌバック調シート状物1の断面構造を模式的に示したものである。このシート状物1では、繊維質基材2の一方の面に表層3が積層されており、表層3の表面がオモテ面4であり、該オモテ面4に凸部8と凹部9からなる微細な凹凸が設けられている。また、この例では、表層3は接着層5を介して繊維質基材2に積層されており、従って、繊維質基材2の一方の面に、接着層5及び表層3がこの順に積層されている。
  図2は、他の実施形態に係るヌバック調シート状物10の断面構造を模式的に示したものである。このシート状物10では、表層3の下にアンカーコート層6が設けられるとともに、表層3の上に保護層7が設けられている。従って、図2の例では、繊維質基材2の一方の面に、接着層5、アンカーコート層6、表層3及び保護層7がこの順に積層されており、保護層7の表面が微細な凹凸を持つオモテ面4となっている。
 上記オモテ面における凸部と凹部との高低差は、任意の凸部と該凸部に最も近い凹部との高低差であり、以下のように垂直断面における観察から求められる。すなわち、ヌバック調シート状物の垂直断面をマイクロスコープ(キーエンス株式会社製、デジタルHFマイクロスコープVH-8000)で観察し、任意の10箇所における隣り合う凸部と凹部について、凸部の頂点と凹部の底との高低差(図1中のAを参照)を測定し、その平均値を凸部と凹部との高低差とする。
 また、上記オモテ面における隣り合う凸部頂点の間隔は、任意の凸部と該凸部に最も近い凸部との頂点間距離であり、以下のように垂直断面における観察から求められる。すなわち、ヌバック調シート状物の垂直断面をマイクロスコープ(キーエンス株式会社製、デジタルHFマイクロスコープVH-8000)で観察し、任意の10箇所における凸部と該凸部に最も近い凸部について頂点間の水平距離(シート状物の厚み方向に垂直な方向での頂点間の距離、図1中のBを参照)を測定し、その平均値を隣り合う凸部頂点の間隔とする。
 本実施形態によれば、オモテ面における凸部と凹部との高低差が20~150μmであり、且つ、隣り合う凸部頂点の間隔が20~150μmである。これにより、本革ヌバック同様の外観と、触感、具体的にはヌメリ感と毛羽感を得ることができる。詳細には、凸部と凹部との高低差が20μm以上であれば、高低差を毛羽として認識でき、さらに程よい摩擦抵抗値が得られる。そのため、本革ヌバック同様の触感、ヌメリ感や毛羽感が得られる。凸部と凹部との高低差が150μm以下であれば、摩擦抵抗値が高くなりすぎることがなく、耐摩耗性が損なわれることを防ぐことができる。また、隣り合う凸部頂点の間隔が20μm以上であれば、摩擦抵抗値が高くなりすぎることがなく、耐摩耗性が損なわれることを防ぐことができる。隣り合う凸部頂点の間隔が150μm以下であれば、程よい摩擦抵抗値が得られるため、本革ヌバック同様の触感、ヌメリ感や毛羽感が得られる。凸部の凹部との高低差は、より好ましくは50~100μmである。隣り合う凸部頂点の間隔は、より好ましくは80~120μmである。
 本実施形態によれば、また、上記オモテ面の表面動摩擦係数が0.20~0.50であることにより、本革ヌバックと同様の表面動摩擦係数となる。そのため、表面に触った際に程よい表面抵抗を感じ、本革ヌバック同様の触感、特にはヌメリ感を得ることができる。詳細には、表面動摩擦係数が0.20以上であれば、表面がツルツルと滑るような触感になることはなく、本革ヌバック同様のヌメリ感が得られる。表面動摩擦係数が0.50以下であれば、表面がタック感の強い触感もしくは抵抗が強くガサガサした触感になることはなく、本革ヌバック同様のヌメリ感が得られる。オモテ面の表面動摩擦係数は、より好ましくは0.20~0.40である。
  オモテ面の表面動摩擦係数は、以下の方法により測定することができる。すなわち、ヌバック調シート状物を20cm四方に裁断したものを試験片とし、表面動摩擦係数測定器:KES-SE(カトーテック株式会社製)を用いて、温度22±2℃、湿度65±5%RH環境下で、オモテ面の平均表面動摩擦係数(MIU)を測定する。測定条件は、摩擦子としてピアノワイヤーセンサー10mm角、試料移動速度1mm/secとし、測定方向はWARP(経方向)として、任意の3箇所を測定し、その平均値を表面動摩擦係数とする。
 上記繊維質基材としては、編物、織物、不織布などの布帛や、天然皮革(革床)を挙げることができる。そして、布帛には、従来公知の溶剤系、無溶剤系(水系を含む)の高分子化合物(好ましくは、ポリウレタン樹脂やその共重合体、あるいはポリウレタン樹脂を主成分とする混合物)を塗布または含浸し、乾式凝固または湿式凝固させたものを用いることもできる。また、繊維質基材を構成する繊維の素材も特に限定されるものでなく、天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維など、従来公知の繊維を挙げることができ、これらが2種以上組み合わされていてもよい。なかでも、耐熱性や耐光性などの点から、合成繊維が好ましく、ポリエステル繊維がより好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。繊維質基材の厚さは、耐摩耗性と風合いの観点から、0.3~1.5mmであることが好ましく、より好ましくは0.5~1.0mmである。なお、繊維質基材は、染料または顔料により着色されたものであってもよい。
 本実施形態に係るヌバック調シート状物は、上述の繊維質基材に、樹脂層として、ポリウレタン樹脂からなる表層が積層されたものである。
 表層の形成に用いられるポリウレタン樹脂は、従来公知のポリウレタン樹脂を用いることができるが、耐摩耗性と触感(特にヌメリ感)の観点から、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂とポリエーテル系ポリウレタン樹脂を配合することが好ましい。ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を用いることにより、耐摩耗性が良好となる。ポリエーテル系ポリウレタン樹脂を用いることにより、触感、特にはヌメリ感が良好となる。
 ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂とポリエーテル系ポリウレタン樹脂の配合比(質量比)は、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂:ポリエーテル系ポリウレタン樹脂=80:20~20:80であることが好ましく、耐摩耗性と触感とを両立するため、より好ましくは50:50~30:70である。ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂の比率が20質量%以上であることにより、耐熱性や耐湿熱性や耐光性が低下することを防ぐことができる。また、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂の比率が20質量%以上であることにより、触感や風合いの改良効果を高めることができる。なお、表層全体に占めるポリウレタン樹脂の含有量(固形分換算)は、特に限定されず、55~93質量%でもよく、70~85質量%でもよい。
 表層には、耐摩耗性を向上させるという観点から、平滑剤を添加してもよい。平滑剤の含有量(固形分換算)は、表層全体に対して1~15質量%であることが好ましく、より好ましくは3~10質量%である。含有量が1質量%以上であることにより、耐摩耗性の改良効果を高めることができる。また、15質量%以下であることにより、ブリードしたり、擦り傷が目立つことによって表面品位を損なったりすることを防ぐことができる。
 平滑剤としては、シリコーン系化合物などが挙げられ、例えば、ジメチルシリコーンや、アクリル変性シリコーンなどが挙げられ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、汎用性の点から、ジメチルシリコーンが好ましい。
 表層には、ヌメリ感を付与させるという観点から、触感向上剤を添加してもよい。触感向上剤の含有量(固形分換算)は、表層全体に対して1~6質量%であることが好ましく、より好ましくは2~5質量%である。含有量が1質量%以上であれば、所望のヌメリ感が得られる。また、6質量%以下であれば、摩耗による白化現象を生じることを防ぐことができる。
 触感向上剤としては、ワックスなどが挙げられる。例えば、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルバナワックス、ラノリンワックスなどが挙げられ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、ヌメリ感を付与する効果が高いという点から、パラフィンワックスが好ましい。
 表層には、着色のために顔料を添加することが好ましい。顔料の含有量(固形分換算)は、表層全体に対して、5~20質量%であることが好ましく、より好ましくは10~15質量%である。含有量が5質量%以上であると、所望の色に着色できるだけでなく、樹脂の黄変を隠蔽できるため、耐光性、耐熱性、耐湿熱性を向上することができる。含有量が20質量%以下であれば、表層の皮膜強度を損なわないため、耐摩耗性に優れる。
 表層の100%モジュラスは、微細な凹凸が手になじみやすくなることで、毛羽のように感じられ、本革ヌバック同様の触感(特に、毛羽感)を得られるという点から、1~5MPaであることが好ましく、より好ましくは2~3MPaである。100%モジュラスが1MPa以上であると、得られるヌバック調シート状物の強度は損なわれない。また、5MPa以下であれば、微細な凹凸が粗硬になるのを防いで、触感を向上することができる。
 ここで、表層の100%モジュラス値は、以下のように算出される。すなわち、表層を形成する組成物をフラットな離型紙(EU130TPD、リンテック株式会社製)上に、バーコーターを用いて、硬化膜の厚さが100μmとなるように塗布し、乾燥機にて80℃で5分間熱処理後、室温20±2℃、湿度65±5%RHの状況下で1日間エージング処理して硬化膜を作成する。該硬化膜から幅30mm、長さ100mmの大きさの試験片を3枚採取し、室温20±2℃、湿度65±5%RHの状況下で、引張試験機(オートグラフAG-X、株式会社島津製作所製)のつかみ具に、つかみ幅30mm、つかみ間隔50mmで取り付け、引張速度100m/分で引っ張り、ストローク距離が50mmになったときの荷重を測定する。下記式にて100%モジュラス値を算出し、3点の平均値を表層の100%モジュラス値とする。
 100%モジュラス値(MPa)=ストローク距離が50mmになったときの荷重(N)/試験片断面積(mm
 表層の厚さは、20~200μmであることが好ましく、より好ましくは50~150μmである。厚さが20μm以上であることにより、得られるヌバック調シート状物の耐摩耗性を向上することができる。厚さが200μm以下であると、得られるヌバック調シート状物の風合いが粗硬になるおそれがない。
 ここで、表層の厚さは、以下のように算出される。すなわち、ヌバック調シート状物の垂直断面をマイクロスコープ(キーエンス株式会社製、デジタルHFマイクロスコープVH-8000)で観察し、任意の10箇所について凸部頂点と表層最下部の高低差を測定した値と、任意の10箇所について凹部の底と表層最下部の高低差を測定した値の平均値を表層の厚さとする。
 本実施形態に係るヌバック調シート状物においては、耐摩耗性を向上させるために、保護層および/またはアンカーコート層を設けてもよい。上記のように、保護層は表層の上層に積層されるものであり、アンカーコート層は表層の下層に積層されるものである。なお、保護層および/またはアンカーコート層は、接着性の向上という観点から、表層と同様にポリウレタン樹脂から形成されることが好ましい。
 保護層やアンカーコート層を形成するポリウレタン樹脂としては、表層と同様のポリウレタン樹脂を用いることができる。保護層は、ヌバック調シート状物のオモテ面を形成する最外層に位置し、人が直接触れることになる。そのため、保護層については、耐摩耗性の点から、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を用いることが好ましく、さらには、ヌメリ感の観点から触感向上剤を、耐摩耗性の観点から平滑剤を添加することが好ましい。
 保護層の厚さは、耐摩耗性と触感の観点から、2~10μmであることが好ましく、より好ましくは2~5μmである。また、アンカーコート層の厚さは、風合いの観点から、10~30μmであることが好ましく、より好ましくは15~20μmである。保護層、表層、アンカーコート層の総厚さは、耐摩耗性と風合いの観点から、32~240μmであることが好ましく、より好ましくは60~120μmである。
 本実施形態に係るヌバック調シート状物においては、表層と繊維質基材との間に接着層を設けてもよい。表層を繊維質基材に直接積層してもよいが、接着層を介することにより、直接積層した場合に起こり得る、表層を構成するポリウレタン樹脂の繊維質基材への過度の浸み込みが抑制されて、本革ヌバックと同様の触感や風合いが得られやすくなる。接着層として用いられる接着剤としては、特に限定されないが、ポリウレタン樹脂が好ましく用いられ、表層に用いられる樹脂と同様の樹脂を用いることができる。
 ヌバック調シート状物のオモテ面における微細な凹凸の単位面積(1cm)あたりの凸部の個数は、4,000~80,000個であることが好ましく、より好ましくは20,000~50,000個であり、更に好ましくは20,000~30,000である。単位面積あたりの凸部の個数が4,000~80,000個であれば、本革ヌバック同様の触感、すなわちヌメリ感や毛羽感が得られやすくなる。
 ここで、オモテ面における微細な凹凸の単位面積(1cm)あたりの凸部の個数は、以下のように算出される。すなわち、ヌバック調シート状物のオモテ面をマイクロスコープ(キーエンス株式会社製、デジタルHFマイクロスコープVH-8000)を用いて倍率500倍にて観察し、タテ500μm、ヨコ250μmにおける凸部の数(X)を目視によって数える。数えた凸部の数(X)を下記の式を用いて、単位面積(1cm)あたりの凸部の個数を算出する。
  換算式:単位面積あたりの凸部の個数=数えた凸部の数(X)×10/0.125
 ヌバック調シート状物のオモテ面には、本実施形態の効果を損なわない範囲で別の凹凸模様を重ねてもよい。別の凹凸模様とは、上記の微細な凹凸の凸部と凹部に比べて、高さ(高低差)と幅(間隔)が大きな凹部と凸部からなる凹凸模様をいい、例えば、天然皮革のシボ模様や、幾何学模様等が挙げられる。従って、ある実施形態において、ヌバック調シート状物のオモテ面には、上記微細な凹凸よりも大きな凹凸模様が設けられ、この大きな凹凸模様を基準輪郭として、該大きな凹凸模様上に上記微細な凹凸が形成されてもよい。このような大きな凹凸模様を重ねることにより、本革ヌバックと他の模様を備えた複雑な意匠を提供することができる。また、触感、ヌメリ感や毛羽感をより本革ヌバックに近づけることができる。なお、このことからも理解できるように、上記の微細な凹凸は、一般的な天然皮革のシボ模様よりも緻密であり、比較的均一な凹凸であるといえる。
 図3は、上記の別の凹凸模様を設けたヌバック調シート状物11の断面構造を模式的に示したものである。このシート状物11のオモテ面4には、基準輪郭となる大きな凹部12と凸部13からなる大きな凹凸模様が形成されている。この大きな凹凸模様を持つオモテ面4に、上記の凹部9と凸部8からなる微細な凹凸が設けられている。
 上記の大きな凹凸模様の隣り合う凹部の間隔は、任意の大きな凹部の最も低い場所と該凹部に最も近い大きな凹部(上記微細な凹凸の凹部よりも高低差の大きいものを指す)の最も低い場所との距離である。大きな凹凸模様の凹部と凸部の高低差は、任意の大きな凹部と該凹部に最も近い大きな凸部との高低差である。これらは、以下のように垂直断面における観察から求められる。すなわち、ヌバック調シート状物の垂直断面をマイクロスコープ(キーエンス株式会社製、デジタルHFマイクロスコープVH-8000)で観察し、任意の10箇所における大きな凹部と該凹部に最も近い大きな凹部について底同士の間の水平距離(シート状物の厚み方向に垂直な方向での最も低い場所間の距離、図3中のCを参照)を測定し、その範囲(最小値と最大値)を隣り合う大きな凹部の間隔とする。また、任意の10箇所における隣り合う大きな凹部と凸部について、凹部の底と凸部の頂点との高低差(図3中のDを参照)を測定し、その平均値を凹部と凸部の高低差とする。ここで、大きな凹凸模様について観察する際のマイクロスコープによる倍率は、より広い範囲を観察するために、微細な凹凸について観察する際の倍率よりも小さく設定することができる。例えば、微細な凹凸を観察する際の倍率が500倍であるのに対し、大きな凹凸模様を観察する際の倍率は50倍とすることができる。
 次に、上記ヌバック調シート状物の製造方法について説明する。該製造方法は、
(1)表層用樹脂液を離型性基材上に塗布して、表層を形成する工程と、
(2)表層と繊維質基材とを貼り合わせる工程と、
(3)離型性基材を剥離する工程と、
を含むものである。
 表層用樹脂液を離型性基材上に塗布する方法としては、従来公知の種々の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。例えば、リバースロールコーター、スプレーコーター、ロールコーター、ナイフコーター、コンマコーターなどの装置を用いた方法を挙げることができる。なかでも均一な薄膜層の形成が可能であるという点で、リバースロールコーター、ナイフコーター、又は、コンマコーターによる塗布が好ましい。
 離型性基材は特に限定されるものでなく、ポリウレタン樹脂に対して離型性を有する基材、あるいは離型処理を施した基材であればよい。例えば、離型紙、離型処理布、撥水処理布、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂などからなるオレフィンシートまたはフィルム、フッ素樹脂シートまたはフィルム、離型紙付きプラスチックフィルムなどを挙げることができる。
 離型性基材は凹凸模様を有していることが肝要である。凸部と凹部との高低差が20~170μmで、かつ隣り合う凹部の間隔が20~170μmである凹凸模様を有する離型性基材を用いることにより、所望の微細な凹凸模様をヌバック調シート状物のオモテ面に付与することができる。すなわち、ヌバック調シート状物のオモテ面の微細な凹凸は、離型性基材の凹凸模様により付与される。離型性基材は、微細な凹凸模様を損なわない範囲で、上記の大きな凹凸模様に相当する大きな凹凸模様を有していてもよい。
 表層用樹脂液の塗布厚は、前記表層の厚さに応じて適宜設定すればよく、40~400μmであることが好ましく、より好ましくは100~300μmである。塗布厚をこの範囲に設定することにより、好ましくは20~200μm、より好ましくは50~150μmの厚さを有する表層となる。
 表層用樹脂液を離型性基材に塗布した後、必要に応じて熱処理を行う。熱処理は、表層用樹脂液中の溶媒を蒸発させ、樹脂を乾燥させるために行われる。また、熱処理によって架橋反応を起こす架橋剤を用いる場合や、二液硬化型の樹脂を用いる場合にあっては、反応を促進し、十分な強度を有する皮膜を形成するために行われる。
 熱処理温度は50~150℃でもよく、60~130℃でもよい。熱処理温度が50℃以上であると、熱処理に時間がかかりすぎることがないため、工程負荷が大きくなりすぎることがない。また樹脂の架橋が不十分になることを防ぐことができるため、耐摩耗性が不良となることを防ぐことができる。熱処理温度が150℃以下であると、合成皮革の風合いが粗硬になることを防ぐことができる。また、熱処理時間は2~20分間でもよく、2~10分間でもよい。熱処理時間が2分間以上であると、樹脂の架橋が不十分になることを防ぐことができるため、耐摩耗性が不良となることを防ぐことができる。熱処理時間が20分間以内であると、工程負荷が大きくなりすぎることもない。
 次いで、表層と繊維質基材とを貼り合わせる。貼り合わせに際しては、上記のように、接着層を介してもよいし、直接積層してもよい。好ましくは接着層を介して貼り合わせることである。接着層を設ける場合、表層上に接着剤を塗布してから繊維質基材に貼り合わせればよい。
 接着剤を塗布する方法は、公知の種々の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。例えば、リバースロールコーター、スプレーコーター、ロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ナイフコーター、コンマコーターなどの装置を用いた方法を挙げることができる。
 次いで、表層から離型性基材を剥離する。かくして、本実施形態に係るヌバック調シート状物が得られる。ただし、本実施形態に係るヌバック調シート状物を製造するための方法は、上記方法に限定されるものではない。
 なお、アンカーコート層を形成する場合は、離型性基材上に表層を形成した後、接着剤を塗布する前に、表層上にアンカーコート層用樹脂液を塗布して形成する。一方、保護層を形成する場合は、表層から離形成基材を剥離した後、該表層のオモテ面に、保護層用樹脂液を塗布して形成する。塗布する方法、および、塗布後の熱処理については、表層の形成と同様の方法を用いることができる。
 保護層用樹脂液の塗布厚は、前記保護層の厚さに応じて適宜設定すればよく、5~25μmでもよく、5~13μmでもよい。塗布厚をこの範囲に設定することにより、好ましくは2~10μm、より好ましくは2~5μmの厚さを有する保護層となる。
 アンカーコート層用樹脂液の塗布厚は、前記アンカーコート層の厚さに応じて適宜設定すればよく、50~150μmでもよく、75~100μmでもよい。塗布厚をこの範囲に設定することにより、好ましくは10~30μm、より好ましくは15~20μmの厚さを有するアンカーコート層となる。
 本実施形態に係るヌバック調シート状物であると、オモテ面が上記特有の凹凸を有しかつ所定の表面動摩擦係数を有するので、表層表面を研削しなくても、ヌバック調の触感を得ることができる。すなわち、本実施形態に係るヌバック調シート状物では、オモテ面は研削されておらず、にもかかわらずヌバック調の触感が付与されている。そのため、ヌバック調シート状物として満足し得る触感を持つものでありながら、高度な耐久性が求められる分野においても満足し得る耐摩耗性を付与することができる。
 以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。実施例中の「部」は質量基準であるものとする。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
[実施例1]
 上記の処方1に従い調製した表層用樹脂液を、離型紙にコンマコーターにて塗布厚さが200μmになるようにシート状に塗布し、乾燥機にて100℃で3分間熱処理して、厚さ100μmの表層を形成した。離型紙としては、凸部と凹部との高低差115μm、隣り合う凹部の間隔94μm、凹部の個数28,000個/cmの微凹凸模様を有するものを用いた。表層を形成するポリウレタン樹脂のポリカーボネート系ポリウレタン樹脂とポリエーテル系ポリウレタン樹脂の質量比は32:68、顔料の含有率(固形分換算)は11質量%、100%モジュラス値は2.5MPaであった。
 次いで、前記表層上に、接着剤としてウレタンポリイソシアネートプレポリマー(NH230、固形分100質量%、DIC株式会社製)を、コンマコーターにて塗布厚さが170μmになるようにシート状に塗布した。該ウレタンポリイソシアネートプレポリマーが粘稠性を有する状態のうちに丸編布(150dtex/48fポリエステルマルチフィラメント糸を用いモックロディ組織にて編成、厚み0.7cm、目付け260g/m、70コース/24.5mm、33ウェル/25.4mm)を貼り合わせ、マングルにて5kg/mの荷重で圧締した。温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下で3日間エージング処理し、その後、離型紙を剥離して、ヌバック調シート状物を得た。
 得られたヌバック調シート状物において、オモテ面の凸部と凹部との高低差は86μm、隣り合う凸部頂点の間隔は102μm、凸部の個数は24,000個/cm、表面動摩擦係数は0.38であった。また、ヌバック調シート状物の最表面である表層における平滑剤の含有率(固形分換算)は8質量%、触感向上剤の含有率(固形分換算)は3質量%であった。
[実施例2]
 表層用樹脂液から平滑剤と触感向上剤を抜いた以外は、実施例1と同様にして、シート状物を得た。得られたシート状物の表層上に、処方2に従い調製した保護層用樹脂液を、ロールコーターにて塗布厚さが10μmになるようにシート状に塗布し、乾燥機にて100℃で3分間熱処理して、厚さ4μmの保護層を形成し、ヌバック調シート状物を得た。得られたヌバック調シート状物において、オモテ面の凸部と凹部との高低差は54μm、隣り合う凸部頂点の間隔は98μm、凸部の個数は21,600個/cm、表面動摩擦係数は0.26であった。また、ヌバック調シート状物の最表面である保護層における平滑剤の含有率は7質量%、触感向上剤の含有率は3質量%であった。
[実施例3]
 実施例1において、離型紙上に表層を形成した後、接着剤を塗布する前に、該表層上に処方3に従い調製したアンカーコート層用樹脂液をコンマコーターにて塗布厚さが150μmになるようにシート状に塗布し、乾燥機にて100℃で3分間熱処理して、厚さ30μmのアンカーコート層を形成した。それ以外は、全て、実施例1と同様にして、ヌバック調シート状物を得た。得られたヌバック調シート状物において、オモテ面の凸部と凹部との高低差は84μm、隣り合う凸部頂点の間隔は110μm、凸部の個数は24,000個/cm、表面動摩擦係数は0.34であった。また、ヌバック調シート状物の最表面である表層における平滑剤の含有率(固形分換算)は8質量%、触感向上剤(固形分換算)の含有率は3質量%であった。
[実施例4]
 実施例2において、離型紙上に表層を形成した後、接着剤を塗布する前に、実施例3と同様にして厚さ30μmのアンカーコート層を形成した。それ以外は、全て、実施例2と同様にして、ヌバック調シート状物を得た。得られたヌバック調シート状物において、オモテ面の凸部と凹部との高低差は55μm、隣り合う凸部頂点の間隔は93μm、凸部の個数は21,600個/cm、表面動摩擦係数は0.25であった。また、ヌバック調シート状物の最表面である保護層における平滑剤の含有率(固形分換算)は7質量%、触感向上剤の含有率(固形分換算)は3質量%であった。
[実施例5~11および比較例1~4]
 ヌバック調シート状物を表4に従って作製した以外は、全て実施例1と同様にしてヌバック調シート状物を作製した。なお、実施例11で用いた離型紙は、革シボ状の大きな凹凸模様を基準輪郭として、該凹凸模様上に表4に記載の微細な凹凸を持つものである。大きな凹凸模様の構成は、凹部と凸部の高低差が235μmであり、隣り合う凸部の間隔が0.2~2mmであり、凹部の個数が63個/cmであった。
 各ヌバック調シート状物について、触感、風合い、耐摩耗性、耐湿熱性、耐熱性、及び耐光性の評価を次の方法によって行い、結果を表4に記載した。
[触感]
 試験片のオモテ面の触感について、官能評価を行い、下記の基準に従って判定した。
 A:ヌバック調のしっとりとしたヌメリ感および毛羽感のある感触である
 B:ヌバック調のしっとりとしたヌメリ感または毛羽感のどちらか一方の感触をやや欠く
 C:ヌバック調の感触をやや欠く
 D:ヌバック調の感触が全くなく、ざらついてドライな触感である
[風合い]
 試験片の手持ち感について、官能評価を行い、下記基準に従って判定した。
 A:本革ヌバックと同様の柔らかでしなやかな風合いを有する
 B:本革ヌバックに近い柔らかでしなやかな風合いを有するが、わずかに樹脂感や芯を感じる
 C:本革ヌバックに比べると柔らかでしなやかな風合いに劣り、樹脂感や芯を感じる
 D:明らかに本革ヌバックとは異なる風合いであり、樹脂感や芯を強く感じる
[耐摩耗性]
 幅70mm、長さ300mmの大きさの試験片をタテ、ヨコ各方向からそれぞれ1枚採取し、裏面に幅70mm、長さ300mm、厚み10mmの大きさのウレタンフォームを添えた。ウレタンフォームの下面中央に直径4.5mmのワイヤーを設置した状態で、平面摩耗試験機T-TYPE(株式会社大栄科学精器製作所製)に固定し、綿布をかぶせた摩耗子がワイヤー上をワイヤーと平行に往復動するように、該摩擦子に荷重9.8Nを掛けて摩耗試験を行った。摩擦子は試験片の表面上140mmの間を60往復/分の速さで3000回往復させた。摩耗試験後の試験片の表面状態を観察し、下記の基準に従って判定した。
 5:外観に変化なし(亀裂、破れがない)
 4:わずかに摩耗が認められるが、目立たないもの
 3:摩耗が明らかに認められ、繊維質基材の露出があるもの(亀裂が認められる)
 2:繊維質基材の露出がやや著しいもの
 1:繊維質基材の露出が著しいもの(破れが認められる)
[耐湿熱性]
 長さ50mm×幅250mmに裁断した試験片を、70℃、95%RHに調整された恒温恒湿機:PR-2KTH(ESPEC.CORP製)内に5週間静置して湿熱処理した。湿熱処理前後の試験片を目視にて観察し、湿熱処理後の試験片について、JIS L-0804規格のグレイスケール(gray scale)を用いて判定した。変退色4級以上を合格とした。
[耐熱性]
 10cm四方の大きさに裁断した試験片を広口試薬瓶(共栓付250mL瓶、硬質ガラス製)の中に試験片を広口試薬瓶の側面に沿わせて入れ、110℃に調整された乾燥機内に400時間静置して熱処理した。熱処理後、広口試薬瓶を乾燥機から取り出し室温まで冷却した後、試薬片を広口試薬瓶から取り出した。熱処理前後の試験片を目視にて観察し、熱処理後の試験片について、JIS L-0804規格のグレイスケール(gray scale)を用いて判定した。変退色4級以上を合格とした。
[耐光性]
 長さ65mm×幅150mmに裁断した試験片を、同じサイズで厚み1mmのアルミ板に貼り合わせた。それを、キセノンアークランプ(空冷式8kw)を備えた促進キセノン耐光試験機:WT-341(ワコム社製)を用いて、下記条件にて試験を行った。
 ・照射サイクル:連続照射
 ・照射時間:144時間
 ・照射強度:162W/m
 ・ブラックパネル温度:89±3℃
 ・相対湿度:50±5%
 ・照射波長:300~400nm
 照射前後の試験片を目視にて観察し、照射後の試験片について、JIS L0804規格のグレイスケール(gray scale)を用いて耐光堅牢度を判定した。変退色4級以上を合格とした。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
 本実施形態に係るヌバック調シート状物は、衣料、鞄、靴、インテリア資材、車両内装材など様々な用途に用いられ、特に、その優れた耐摩耗性に基づき、例えば、インテリア資材や車両内装材として好適に用いることができる。
 1…ヌバック調シート状物   2…繊維質基材   3…表層
 4…オモテ面         5…接着層     6…アンカーコート層
 7…保護層          8…凸部      9…凹部
 10,11…ヌバック調シート状物

Claims (9)

  1.  繊維質基材にポリウレタン樹脂からなる表層を積層してなるヌバック調シート状物であって、ヌバック調シート状物のオモテ面に、凸部と凹部との高低差が20~150μm、隣り合う凸部頂点の間隔が20~150μmである凹凸を有し、且つ、オモテ面の表面動摩擦係数が0.20~0.50である、ヌバック調シート状物。
  2.  前記ポリウレタン樹脂が、ポリカーボネート系ウレタン樹脂およびポリエーテル系ウレタン樹脂からなり、前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂と前記ポリエーテル系ウレタン樹脂の質量比が、80:20~20:80である、請求項1に記載のヌバック調シート状物。
  3.  オモテ面が研削されていない、請求項1又は2に記載のヌバック調シート状物。
  4.  前記表層がシリコーン系化合物からなる平滑剤を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のヌバック調シート状物。
  5.  前記表層がワックスからなる触感向上剤を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のヌバック調シート状物。
  6.  前記表層の100%モジュラスが1~5MPaである、請求項1~5のいずれか1項に記載のヌバック調シート状物。
  7.  前記表層の上に、ヌバック調シート状物のオモテ面を形成する最外層としてポリウレタン樹脂からなる保護層が設けられた、請求項1~6のいずれか1項に記載のヌバック調シート状物。
  8.  前記表層の下に、ポリウレタン樹脂からなるアンカーコート層が設けられた、請求項1~7のいずれか1項に記載のヌバック調シート状物。
  9.  請求項1~8のいずれか1項に記載のヌバック調シート状物の製造方法であって、
      表層用樹脂液を離型性基材上に塗布して、表層を形成する工程、
     表層と繊維質基材とを貼り合わせる工程、及び、
     離型性基材を剥離する工程、
    を、この順で含んでなるヌバック調シート状物の製造方法。
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