JP2011069031A - 合成皮革の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】
透湿性および通気性を有することにより、人体と接触する状況で用いても蒸れ難く、快適性に優れた合成皮革を、堅牢度や強度、外観を損なうことなく、簡便な工程で製造する方法を提供する。
【解決手段】
(1)加熱溶融状態にあるホットメルトポリウレタン樹脂を、(a)離型性基材に塗布し、該塗布面に、少なくとも一方の面にパイル繊維を有する繊維質基材の該パイル繊維を有する側の面を貼り合わせるか、または、(b)少なくとも一方の面にパイル繊維を有する繊維質基材の該パイル繊維を有する側の面に塗布し、該塗布面に、離型性基材を貼り合わせる工程、ここでパイル繊維の少なくとも一部は先端が離型性基材に達している;(2)ホットメルトポリウレタン樹脂を固化させて多孔質層を形成する工程、ここで多孔質層は内部に連通孔を有し、離型性基材と接する側の面に開孔を有し、かつ、該開孔の少なくとも一部はパイル繊維の根元まで連通している;(3)離型性基材を剥離する工程;(4)露出する多孔質層の表面に、開孔を閉塞することなくポリウレタン樹脂を塗布する工程;(5)ポリウレタン樹脂を固化させて保護層を形成する工程をこの順で含んでなる合成皮革の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、合成皮革の製造方法に関する。詳しくは、人体と接触する状況で用いても蒸れ難く、快適性に優れた合成皮革の製造方法に関する。
繊維質基材に樹脂層を積層した構造の合成皮革は、天然皮革の代替品として、衣料、鞄、靴、インテリア資材、車両内装材など様々な分野で用いられている。しかしながら、合成皮革は透湿性や通気性がほとんどないため、例えば、椅子張り地(事務用椅子、家具用椅子、ソファ、車両座席などの表皮材をいう)などとして用いられる場合、人体との接触面が蒸れ易く、不快に感じるという問題があった。
これに対し、合成皮革に透湿性を付与して蒸れ難くしようとする試みが多数提案されている。例えば、特許文献1には、それ自体が透湿性を有するポリウレタン樹脂、具体的には、ソフトセグメントを構成するポリマーグリコールの一成分としてポリエチレングリコールを好ましくは30〜70重量%有するポリウレタン樹脂を用いて樹脂層を形成することにより、透湿性を付与した合成皮革が記載されている。また、特許文献2には、樹脂層に吸湿性物質である膠またはゼラチンのパウダーを分散させることにより透湿性を付与した合成皮革が記載されている。同じく、合成皮革に透湿性を付与するための吸湿性物質として、特許文献3には天然コラーゲン粒子が、特許文献4には合成ポリアミノ酸粒子が記載されている。しかしながら、これらの方法では、合成皮革にいくらかの透湿性を付与するにとどまり、蒸れ感を解消するにはいたっていない。また、樹脂層に吸湿性物質を分散させる方法では、堅牢度(耐光性、耐熱性など)や強度(耐摩耗性、引裂強度など)が悪くなるという問題もあった。
一方、合成皮革に通気性を付与して蒸れ難くしようとする試みも多数提案されている。具体的には、繊維質基材と樹脂層のうち少なくとも樹脂層に、その一面から他方の面まで通ずる孔を形成することにより通気性を付与するもので、古くは、ニードルパンチングや放電処理、レーザー照射などの手段が用いられていた。しかしながら、このように形成した孔は、目立って外観が悪くなるという問題や、強度、特には引裂強度が悪くなるという問題があった。
これに対し、特許文献5や特許文献6には、樹脂層を形成する樹脂液に水溶性物質を配合しておき、膜化した後、水中に浸漬して水溶性物質を溶出させることにより、樹脂層に微細な連通孔を形成する方法が記載されている。また、前記特許文献2にも、合成皮革をさらに熱水処理することにより、樹脂層に分散させた膠またはゼラチンのパウダーの一部が除去され、毛孔様細孔が形成されて、透湿度が飛躍的に向上する旨説明されている。しかしながら、これらの方法は、水溶性物質を溶出させる工程の負荷が大きく、製造コストが上昇するという問題があった。
また、特許文献7には、樹脂層の表面に、該樹脂を溶解し得る溶剤を、グラビアメッシュロールを用いて点状に塗布し、露出面から基材側の面にかけて連通孔を形成する方法が記載されている。しかしながら、均一な孔を安定的に形成することは、極めて困難であった。特許文献8では、さらに、樹脂層に熱膨張性マイクロカプセルを含有させることにより、溶剤による溶解性の向上を図っているが、今一つ良好な結果は得られていない。
特開昭59−173381号公報 特開平1−168978号公報 特開平4−82974号公報 特開平4−82975号公報 特開昭57−66186号公報 特開昭59−137578号公報 特許第3117996号公報 特開平11−107174号公報
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたもので、透湿性および通気性を有することにより、人体と接触する状況で用いても蒸れ難く、快適性に優れた合成皮革を、堅牢度や強度、外観を損なうことなく、簡便な工程で製造する方法を提供することを目的とする。
本発明は第1に、
(1)加熱溶融状態にあるホットメルトポリウレタン樹脂を、(a)離型性基材に塗布し、該塗布面に、少なくとも一方の面にパイル繊維を有する繊維質基材の該パイル繊維を有する側の面を貼り合わせるか、または、(b)少なくとも一方の面にパイル繊維を有する繊維質基材の該パイル繊維を有する側の面に塗布し、該塗布面に、離型性基材を貼り合わせる工程、ここでパイル繊維の少なくとも一部は先端が離型性基材に達している、
(2)ホットメルトポリウレタン樹脂を固化させて多孔質層を形成する工程、ここで多孔質層は内部に連通孔を有し、離型性基材と接する側の面に開孔を有し、かつ、該開孔の少なくとも一部はパイル繊維の根元まで連通している、
(3)離型性基材を剥離する工程、
(4)露出する多孔質層の表面に、開孔を閉塞することなくポリウレタン樹脂を塗布する工程、
(5)ポリウレタン樹脂を固化させて保護層を形成する工程、
をこの順で含んでなる合成皮革の製造方法である。
本発明は第2に、
少なくとも一方の面にパイル繊維を有する繊維質基材の該パイル繊維を有する側の面に、ホットメルトポリウレタン樹脂からなる多孔質層であって、内部に連通孔を有し、表面に開孔を有し、かつ、該開孔の少なくとも一部はパイル繊維の根元まで連通している多孔質層が、パイル繊維と混在し、かつ、パイル繊維の少なくとも一部は先端が多孔質層の表面に達する状態で積層され、さらに、多孔質層の表面には、ポリウレタン樹脂からなる保護層が、開孔を閉塞することなく積層されてなることを特徴とする合成皮革である。
本発明によれば、堅牢度や強度、外観を損なうことなく、合成皮革に透湿性および通気性を付与することができ、もって、快適性に優れた合成皮革を製造することができる。また、工程が簡便であるため、工業的にも低コストに、しかも、安定して生産可能である。
本発明は、
(1)加熱溶融状態にあるホットメルトポリウレタン樹脂を、(a)離型性基材に塗布し、該塗布面に、少なくとも一方の面にパイル繊維を有する繊維質基材の該パイル繊維を有する側の面を貼り合わせるか、または、(b)少なくとも一方の面にパイル繊維を有する繊維質基材の該パイル繊維を有する側の面に塗布し、該塗布面に、離型性基材を貼り合わせる工程、ここでパイル繊維の少なくとも一部は先端が離型性基材に達している、
(2)ホットメルトポリウレタン樹脂を固化させて多孔質層を形成する工程、ここで多孔質層は内部に連通孔を有し、離型性基材と接する側の面に開孔を有し、かつ、該開孔の少なくとも一部はパイル繊維の根元まで連通している、
(3)離型性基材を剥離する工程、
(4)露出する多孔質層の表面に、開孔を閉塞することなくポリウレタン樹脂を塗布する工程、
(5)ポリウレタン樹脂を固化させて保護層を形成する工程、
をこの順で含んでなる合成皮革の製造方法を提供するものである。
本発明において、多孔質層を形成するポリウレタン樹脂は、ホットメルト性を有するものである。ここで、ホットメルト性とは、常温では固体ないしは基材に塗布困難な程度に粘稠な状態であるが、熱を加えると溶融して液体状になり、冷却により再度凝集力を発現する性質をいい、分子構造に起因する性質である。
ホットメルト樹脂は、比較的高い粘度に調整することができるため、溶剤系または水系の樹脂を用いた場合に起こり得る、繊維質基材への過度の浸透や、マイグレーションによる樹脂の移動を抑制することができる。このような性質を有するポリウレタン樹脂を、加熱溶融して液体状とし、少なくとも一方の面にパイル繊維を有する繊維質基材のパイル繊維を有する側の面に配し、次いで固化させることにより、パイル繊維と、固化したポリウレタン樹脂との間には、互いに連なり合う物理的空隙、いわゆる連通孔が形成される。また、ポリウレタン樹脂を挟み込むように、繊維質基材と反対の面に離型性基材を配するに際し、パイル繊維の少なくとも一部は先端が離型性基材に達するように、すなわち、樹脂層の表面(離型性基材と接する側の面で、離型性基材を剥離した際に、露出する表面をいう。以下同様とする)にパイル繊維の先端が達するように、適度に圧締することにより、その近傍には開孔が形成される。その原理は定かでないが、本発明者は次のように推測している。
少なくとも一方の面にパイル繊維を有する繊維質基材のパイル繊維を有する側の面の最表面は、パイル繊維の先端からなる凸部と、パイル繊維とパイル繊維との隙間からなる凹部を有する、不連続面と捉えることができる。一般に、平滑な連続面を有する基材には、樹脂が均一に付着し、連続した樹脂層が形成されるが、凸凹した不連続面を有する基材には、樹脂の付着が不均一となって、不連続な樹脂層が形成される。すなわち、凸部には樹脂がパイル繊維の先端付近に均一に付着する一方、凹部には樹脂が落ち込むように付着するため、凹凸の高低差によって、不連続な樹脂層が形成される。そして、凹部に落ち込んだ樹脂の一部が、開孔を形成するのである。開孔は極めて小さく密に形成されているため、遠目には銀面調でありながら、実際には微細な開孔を有する樹脂層とすることができる。
なお、ホットメルトポリウレタン樹脂は、繊維質基材に直接塗布してもよいし、離型性基材に一旦塗布してから、繊維質基材に貼り合わせてもよい。こうして、ホットメルトポリウレタン樹脂からなる樹脂層は、内部に連通孔を有し、表面に開孔を有する、多孔質層となる。そして、表面に存在する開孔の少なくとも一部がパイル繊維の根元(立ち上がり部)まで連通していることにより、透湿性および通気性を具備することができる。さらに、多孔質層の表面に保護層を形成することにより、実用的強度に優れた合成皮革を得ることができるのである。
以下、本発明を構成する個々の要件について詳細に説明する。
繊維質基材
本発明に用いられる繊維質基材は、少なくとも一方の面にパイル繊維を有することが求められる。ここでパイル繊維とは、繊維質基材の表面に立毛を形成する、非輪奈状の単繊維1本1本を指し、パイル糸、例えば繊維束からなるマルチフィラメント糸やスパン糸とは区別されるものである。以上の要件を満足する限り、繊維質基材の形態は、編物、織物、不織布など特に限定されない。さらには、従来公知の溶剤系、無溶剤系(水系を含む)の高分子化合物、好ましくは、ポリウレタン樹脂やその共重合体、あるいはポリウレタン樹脂を主成分とする混合物を塗布または含浸し、乾式凝固または湿式凝固させたものを用いることもできる。また、繊維質基材を構成する繊維の素材も特に限定されるものでなく、天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維など、従来公知の繊維を挙げることができ、これらが2種以上組み合わされていてもよい。なかでも、耐熱性や耐光性などの点から、合成繊維が好ましく、ポリエステル繊維がより好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
繊維質基材の少なくとも一方の面が有するパイル繊維は、編成や織成によって形成されたものであっても、起毛処理によって形成されたものであっても構わない。編成や織成によって形成されたものとしては、ダブルラッセル編物やモケット織物のパイル糸をセンターカットしたものなどを挙げることができ、起毛処理によって形成されたものとしては、浮きの長い編組織または織組織にて編成または織成した織編物の浮きの長い組織部の糸条を起毛したものや、不織布を起毛したものなどを挙げることができる。なかでも、外観や風合いに優れた合成皮革が得られるという理由により、起毛処理によって形成されたパイル繊維であることが好ましい。
繊維質基材を起毛する方法としては、高速で回転するエンドレスの針布やサンドペーパーなど(起毛手段として針布を備える起毛機を針布起毛機、サンドペーパーを備える起毛機をエメリー起毛機(別名、バフィング機、バフ機、エメリーバフ機)という)に対し、繊維質基材を長手方向に移動させながら接触させる方法が一般的である。針布起毛処理の場合は、針布の密度、長さ、角度、尖端形状や、起毛時の針布の回転数、繊維質基材との接圧、接触回数などの諸条件を選択することにより、表面状態を適宜設定できる。また、エメリー起毛処理においても、サンドペーパーの粒度、起毛時のサンドペーパーと繊維質基材の接触回数などの諸条件を選択することにより、表面状態を適宜設定できる。さらに、必要に応じて、起毛後に毛足を整えるためのシャーリング処理を施してもよい。
パイル繊維の長さは、0.1〜2mmであることが好ましく、0.5〜1.5mmであることがより好ましい。長さが0.1mm未満であると、パイル繊維の先端が離型性基材に達せず樹脂層の表面に開孔が形成されない結果、合成皮革の透湿性や通気性が不十分になる虞がある。長さが2mmを超えると、パイル繊維と多孔質層の密着性が悪くなり、多孔質層に割れが生じて、合成皮革の外観や感触が損なわれる虞がある。
なお、本発明において規定する数値範囲について、前記のパイル繊維の長さなどのように分布が存在するものは、特に断りのない限り、平均値がその範囲内にあればよい。
パイル繊維の繊度(パイル繊維を形成する糸条の単繊維繊度)は、0.01〜3dtex(デシテックス)であることが好ましく、0.05〜2dtexであることがより好ましい。繊度が0.01dtex未満であると、パイル繊維が倒伏し易くなり、パイル繊維の先端が離型性基材に達せず樹脂層の表面に開孔が形成されない結果、合成皮革の透湿性や通気性が不十分になる虞がある。繊度が3dtexを超えると、合成皮革の外観が損なわれたり、風合いが硬くなったりする虞がある。
パイル繊維の密度は、5万〜350万本/(25.4mm)であることが好ましく、10万〜270万本/(25.4mm)であることがより好ましい。密度が5万本/(25.4mm)未満であると、パイル繊維と多孔質層の密着性が悪くなり、多孔質層に割れが生じて、合成皮革の外観や感触が損なわれる虞がある。密度が350万本/(25.4mm)を超えると、多孔質層を形成するホットメルトポリウレタン樹脂がパイル繊維に浸透し難くなり、パイル繊維の先端が離型性基材に達せず樹脂層の表面に開孔が形成されない結果、合成皮革の透湿性や通気性が不十分になったり、風合いが硬くなったりする虞がある。
パイル繊維を形成する糸条の総繊度は、10〜200dtexであることが好ましく、20〜150dtexであることがより好ましい。総繊度が10dtex未満であると、パイル繊維の先端が離型性基材に達せず樹脂層の表面に開孔が形成されない結果、合成皮革の透湿性や通気性が不十分になる虞がある。総繊度が200dtexを超えると、合成皮革の風合いが硬くなる虞がある。
パイル繊維を含む繊維質基材の厚さは、0.5〜2.5mmであることが好ましく、0.8〜2mmであることがより好ましい。厚さが0.5mm未満であると、合成皮革の風合いがペーパーライクになったり、十分なボリューム感が得られなかったりする虞がある。厚さが2.5mmを超えると、合成皮革の風合いが硬くなる虞がある。
離型性基材
本発明に用いられる離型性基材は特に限定されるものでなく、ポリウレタン樹脂に対して離型性を有する基材、あるいは離型処理を施した基材であればよく、例えば、離型紙、離型処理布、撥水処理布、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂などからなるオレフィンシートまたはフィルム、フッ素樹脂シートまたはフィルム、離型紙付きプラスチックフィルムなどを挙げることができる。離型性基材は凹凸模様を有していてもよく、このような離型性基材を用いることにより、表面に凹凸模様を有する多孔質層を形成することができ、意匠性を向上させることができる。
凹凸模様として、典型的にはシボ模様を挙げることができ、このような離型性基材を用いることにより、銀面調のシボ模様を有する天然皮革調外観を再現することができる。また、凹凸模様はシボ模様に限定されるものでもなく、例えば、織物調、デニム調などの布帛模様や、ランダムな点、線、丸形、三角形、四角形、点線などを単独または組み合わせた幾何学模様のような模様であることができる。
凹凸模様を有する離型紙を用いることにより多孔質層表面に形成される凹凸模様は、多孔質層の形成と同時に形成されるため、エンボス処理を別途設ける必要がなく、製造工程が簡便で低コストである。
多孔質層を形成するホットメルトポリウレタン樹脂
ポリウレタン樹脂は、周知の通り、ウレタン結合(−NHCOO−)を有する高分子化合物の総称であり、一般にポリオールとポリイソシアネートとを反応(架橋・硬化反応)させることによって製造される。ポリオールとポリイソシアネートとの反応をほぼ完結させ、ポリマー化した状態で(すなわち、ポリウレタン樹脂として)提供される一液型に対し、二液硬化型は、使用時にポリオールとポリイソシアネートとを反応させるもので、通常、ポリオールとポリイソシアネートとの反応を適当なところで止めたウレタンプレポリマー(主剤)と、ウレタン硬化剤との二液からなる。本発明において、多孔質層を形成するポリウレタン樹脂としては、一液型、二液硬化型のいずれも使用可能である。本発明においては、さらに、反応型のポリウレタン樹脂を使用することもできる。反応型として代表的には湿気硬化型があり、このものは、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーからなり、使用時に大気中の水分(湿気)と反応させる。なかでも、強度や風合いの点から二液硬化型または反応型のポリウレタン樹脂が好ましく、作業性の点から二液硬化型ポリウレタン樹脂が特に好ましい。
多孔質層の形成に用いられるポリウレタン樹脂が、ホットメルト性を有することは前記の通りである。ホットメルト樹脂は、比較的高い粘度に調整することができるため、繊維質基材への過度の浸透や、マイグレーションによる樹脂の移動が抑制され、繊維質基材のパイル繊維と、固化したポリウレタン樹脂との間は、連通孔が形成される。また、加熱溶融状態で基材に塗布することができるため、人体や地球環境に悪影響を及ぼす有機溶剤を使用する必要がない。したがって、製造工程で有機溶剤を除去する工程が不要で、製造コストを軽減することができる。
ホットメルトポリウレタン樹脂の軟化温度は、130〜240℃であることが好ましく、140〜200℃であることがより好ましい。軟化温度が130℃未満であると、十分な耐熱性が得られない虞がある。軟化温度が240℃を超えると、風合いが硬くなる虞がある。なお、本発明において、軟化温度は、DSC熱分析機を用いて示差走査熱分析法により測定した値である。
ホットメルトポリウレタン樹脂には、必要に応じて、樹脂の物性を損なわない範囲内で、ウレタン化触媒、シランカップリング剤、充填剤、チキソ付与剤、粘着付与剤、ワックス、熱安定剤、耐光安定剤、蛍光増白剤、発泡剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、染料、顔料、導電性付与剤、帯電防止剤、透湿性向上剤、撥水剤、撥油剤、中空発泡体、結晶水含有化合物、難燃剤、吸水剤、吸湿剤、消臭剤、整泡剤、消泡剤、防黴剤、防腐剤、防藻剤、顔料分散剤、不活性気体、ブロッキング防止剤、加水分解防止剤などの任意成分を、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
以下、本発明において好ましく用いられる二液硬化型ホットメルトポリウレタン樹脂についてより詳細に説明するが、これらの特性が、得られる合成皮革の特性に反映されるのは言うまでもない。
二液硬化型ホットメルトポリウレタン樹脂は、ホットメルトウレタンプレポリマーとウレタン硬化剤とからなる。
ホットメルトウレタンプレポリマーは、ポリオールとポリイソシアネートとの反応によって得られるものであり、製造時のポリオールとポリイソシアネートとの比率によって、分子末端に水酸基を有するホットメルトウレタンポリオールプレポリマーと、分子末端にイソシアネート基を有するホットメルトウレタンポリイソシアネートプレポリマーの2つがある。各々に対応するウレタン硬化剤は、ポリイソシアネートとポリオールである。
ホットメルトウレタンプレポリマーとウレタン硬化剤との硬化反応を以下の式(I)に示す。結局のところ、この反応はポリオールの水酸基とポリイソシアネートのイソシアネート基の反応として示される。また、イソシアネート基は水酸基との反応以外に、大気中の水分と反応し、アミン化合物と炭酸ガスを生成(以下の式(II))、さらに、反応生成物と連鎖的に反応していく(以下の式(III)および(IV))。
式(II)で発生する炭酸ガスにより、樹脂層には多数の気泡が形成される。これにより、樹脂特有のゴム弾性が緩和されて、柔らかな風合いを具備することができる。
Figure 2011069031
ホットメルトウレタンプレポリマーを製造する際に使用可能なポリオールは特に限定されるものでなく、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ひまし油ポリオール、シリコーン変性ポリオールなどを挙げることができ、これらを1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、耐加水分解性の点からポリエーテルポリオールまたはポリカーボネートポリオールが好ましい。また、耐光性および耐熱性の点からはポリカーボネートポリオールがより好ましく、風合いの点からはポリエーテルポリオールがより好ましい。
一方、ホットメルトウレタンプレポリマーを製造する際に使用可能なポリイソシアネートも特に限定されるものでなく、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートあるいは脂環族ジイソシアネート、および4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の2量体および3量体を含むポリメリックMDIなどを挙げることができる。なかでも、硬化反応のコントロールが容易であるという点で、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が好ましい。
本発明に用いられるホットメルトウレタンポリオールプレポリマーは、前記ポリオールとポリイソシアネートとを、ポリオールが有する水酸基が、ポリイソシアネートが有するイソシアネート基に対して過剰となる条件で反応させることにより得ることができる。この際、水酸基/イソシアネート基の当量比は1.1〜2.5であることが好ましく、1.2〜2であることがより好ましい。当量比が1.1未満であると、プレポリマーの両末端を水酸基とすることが難しく、プレポリマーに残存するイソシアネート基が周囲の湿気と反応することにより分子量が増加し、粘度が増加する結果、作業性が悪くなる虞がある。当量比が2.5を超えると、プレポリマーとウレタン硬化剤とを反応させる際、未反応の水酸基が残り、硬化して得られるポリウレタン樹脂において加水分解が起こり易く、強度全般が悪くなる虞がある。
一方、本発明に用いられるホットメルトウレタンポリイソシアネートプレポリマーは、前記ポリオールとポリイソシアネートとを、ポリイソシアネートが有するイソシアネート基が、ポリオールが有する水酸基に対して過剰となる条件で反応させることにより得ることができる。この際、イソシアネート基/水酸基の当量比は1.1〜5であることが好ましく、1.5〜3であることがより好ましい。当量比が1.1未満であると、プレポリマーに未反応の水酸基が残り、硬化して得られるポリウレタン樹脂において加水分解が起こり易く、強度全般が悪くなる虞がある。当量比が5を超えると、安定性が悪く、硬化反応のコントロールが不可能となる虞がある。
本発明に用いられるホットメルトウレタンプレポリマーを製造するには、従来公知の種々の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。例えば、ポリイソシアネートに水分を除去したポリオールを所定の比率で滴下、または水分を除去したポリオールにポリイソシアネートを所定の比率で混合後、加熱してバッチ方式で反応させる方法、あるいは水分を除去したポリオールとポリイソシアネートをそれぞれ加熱して、所定の比率で押出機に投入して連続押出反応方式で反応させる方法などを採用することができる。
かくして得られるホットメルトウレタンプレポリマーの軟化温度は、20〜100℃であることが好ましく、40〜70℃であることがより好ましい。軟化温度が20℃未満であると、硬化して得られるポリウレタン樹脂の軟化温度が低く、耐熱性や強度全般が悪くなる虞がある。軟化温度が100℃を超えると、加工に適した粘度を得るのに高温を要し、作業性が悪くなる虞がある。
次に、本発明に用いられるウレタン硬化剤について説明する。
ホットメルトウレタンプレポリマーとしてホットメルトウレタンポリオールプレポリマーを用いる場合には、ウレタン硬化剤としてポリイソシアネートを用い、ホットメルトウレタンプレポリマーとしてホットメルトウレタンポリイソシアネートプレポリマーを用いる場合には、ウレタン硬化剤としてポリオールを用いる。
ホットメルトウレタンポリオールプレポリマーに対して使用可能なウレタン硬化剤、すなわちポリイソシアネートは特に限定されるものではなく、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート(IPDI)、キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート、カルボジイミド基を含むポリイソシアネート、アルファネート基を含むポリイソシアネート、イソシアヌレート基を含むポリイソシアネートなどを挙げることができ、これらを1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、硬化反応のコントロールが容易であるという点では4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が好ましく、硬化して得られるポリウレタン樹脂の黄変が少ないという点では脂肪族系のポリイソシアネートが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートがより好ましい。
さらに、ウレタン硬化剤として、前記のポリイソシアネート以外に、ポリオールとポリイソシアネートを、ポリイソシアネートが有するイソシアネート基が、ポリオールが有する水酸基に対して過剰となる条件で反応させることにより得られる化合物を用いることができる。この化合物は、ウレタンポリイソシアネートプレポリマーとしてポリウレタン樹脂を形成する際の主剤ともなり得るもので、ホットメルト性を有するものは、本発明におけるホットメルトウレタンポリイソシアネートプレポリマーとしても使用可能である。かかるウレタンポリイソシアネートプレポリマーをウレタン硬化剤として用いることにより、ウレタン硬化剤としての働きに加えて、鎖伸長剤としての効果が得られるため、硬化して得られるポリウレタン樹脂の柔軟性を向上させることができる。
一方、ホットメルトウレタンポリイソシアネートプレポリマーに対して使用可能なウレタン硬化剤、すなわちポリオールも特に限定されるものではなく、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ひまし油ポリオール、シリコーン変性ポリオールなどを挙げることができ、これらを1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、耐加水分解性の点からポリエーテルポリオールまたはポリカーボネートポリオールが好ましい。また、耐光性および耐熱性の点からはポリカーボネートポリオールがより好ましく、風合いの点からはポリエーテルポリオールがより好ましい。
さらに、ウレタン硬化剤として、前記のポリオール以外に、ポリオールとポリイソシアネートを、ポリオールが有する水酸基が、ポリイソシアネートが有するイソシアネート基に対して過剰となる条件で反応させることにより得られる化合物を用いることができる。この化合物は、ウレタンポリオールプレポリマーとしてポリウレタン樹脂を形成する際の主剤ともなり得るもので、ホットメルト性を有するものは、本発明におけるホットメルトウレタンポリオールプレポリマーとしても使用可能である。かかるウレタンポリオールプレポリマーをウレタン硬化剤として用いることにより、ホットメルトウレタンポリオールプレポリマーに対するウレタン硬化剤としてウレタンポリイソシアネートプレポリマーを用いる場合と同様の効果を得ることができる。
次に、ホットメルトウレタンプレポリマーとウレタン硬化剤を反応させる際の当量比について説明する。
ホットメルトウレタンプレポリマーとしてホットメルトウレタンポリオールプレポリマーを用い、ウレタン硬化剤としてポリイソシアネートを用いる場合のイソシアネート基/水酸基の当量比は、0.95〜2であることが好ましく、1.1〜1.3であることがより好ましい。当量比が0.95未満であると、未反応のプレポリマーが残り、硬化して得られるポリウレタン樹脂において加水分解が起こり易く、強度全般が悪くなる虞がある。当量比が2を超えると、硬化反応が進みすぎて風合いが硬くなる虞がある。このとき、プレポリマー100重量部に対するウレタン硬化剤の使用量は、プレポリマーやウレタン硬化剤の分子量にもよるが、通常の場合3〜50重量部、より好ましくは5〜40重量部である。
一方、ホットメルトウレタンプレポリマーとしてホットメルトウレタンポリイソシアネートプレポリマーを用い、ウレタン硬化剤としてポリオールを用いる場合のイソシアネート基/水酸基の当量比は、1.1〜10であることが好ましく、1.2〜3であることがより好ましい。当量比が1.1未満であると、未反応のウレタン硬化剤が残り、硬化して得られるポリウレタン樹脂において加水分解が起こり易く、強度全般が悪くなる虞がある。当量比が10を超えると、硬化反応が進みすぎて風合いが硬くなる虞がある。このとき、プレポリマー100重量部に対するウレタン硬化剤の使用量は、プレポリマーやウレタン硬化剤の分子量にもよるが、通常の場合3〜50重量部、より好ましくは10〜30重量部である。
多孔質層の形成
多孔質層は、加熱溶融状態にあるホットメルトポリウレタン樹脂を、
(a)離型性基材に塗布し、該塗布面に、少なくとも一方の面にパイル繊維を有する繊維質基材の該パイル繊維を有する側の面を貼り合わせるか、または、
(b)少なくとも一方の面にパイル繊維を有する繊維質基材の該パイル繊維を有する側の面に塗布し、該塗布面に、離型性基材を貼り合わせ、
次いで、ホットメルトポリウレタン樹脂を固化させることにより、繊維質基材のパイル繊維を有する側の面に形成することができる。
このように、繊維質基材のパイル繊維を有する側の面に、ホットメルトポリウレタン樹脂からなる多孔質層を形成する過程で、繊維質基材とホットメルトポリウレタン樹脂と離型性基材の積層体を得るに際し、ホットメルトポリウレタン樹脂は、離型性基材、繊維質基材のいずれに塗布してもよい。樹脂の粘度に影響されることなく、繊維質基材への浸透をコントロールすることが可能であるという理由により、樹脂を離型性基材に塗布する(a)の工程が好ましい。以下、(a)の工程に沿って説明するが、塗布方法など各種の説明事項は、基本的に(b)の工程を採用する場合にも共通する事項である。
ホットメルトポリウレタン樹脂は、常温では固体ないしは基材に塗布困難な程度に粘稠な状態であり、他の成分と混合し基材に塗布するには、樹脂を加熱溶融して液体状にする必要がある。このときの加熱溶融温度は、樹脂の軟化温度よりも好ましくは10〜80℃、より好ましくは20〜60℃高い温度に設定される。加熱溶融温度を前記範囲に設定することにより、樹脂の粘度を、好ましくは1000〜15000cps、より好ましくは3000〜10000cpsとすることができる(後述する)。ホットメルトポリウレタン樹脂の加熱溶融は、温度調整可能な原料タンクにて行われる。
加熱溶融時のホットメルトポリウレタン樹脂の粘度は、1000〜15000cpsであることが好ましく、3000〜10000cpsであることがより好ましい。粘度が1000cps未満であると、塗布厚のコントロールが困難となる虞がある。粘度が15000cpsを超えると、塗布時の作業性が悪くなる虞がある。
ここで、二液硬化型ホットメルトポリウレタン樹脂を用いる場合、ホットメルトウレタンプレポリマーの加熱溶融温度は、通常の場合30〜150℃、より好ましくは40〜120℃の範囲に設定され、これにより加熱溶融時のプレポリマーの粘度を、好ましくは1000〜15000cps、より好ましくは3000〜10000cpsとすることができる。
一方、ウレタン硬化剤は、常温では固体ないしは液体である。ウレタン硬化剤が固体である場合には、加熱溶融して液体状にする必要があるが、ウレタン硬化剤が液体である場合には、加熱を必ずしも要さない。しかしながら、取り扱い性を良くし、プレポリマーと均一に混合させるためには、加熱して、適度な粘度に調整することが好ましい。ウレタン硬化剤は、常温で液体であるものが多く、その加熱温度は、プレポリマーの加熱溶融温度よりも低い温度であることが多い。
次いで、ミキシングヘッドを用いて、ホットメルトウレタンプレポリマーとウレタン硬化剤とを所定の比率で混ぜ合わせる。混合物(以下、「プレポリマー組成物」という場合がある)の温度は、プレポリマーの加熱溶融温度、ウレタン硬化剤の加熱(溶融)温度、プレポリマーとウレタン硬化剤との混合比率、プレポリマーとウレタン硬化剤との反応により発生する熱量、ミキシングヘッドの加熱温度などによって決定される。なかでも、プレポリマーの加熱溶融温度の影響が大きく、プレポリマー組成物の温度は、通常の場合30〜150℃であり、より好ましくは40〜120℃である。これにより、プレポリマー組成物の粘度を、好ましくは1000〜15000cps、より好ましくは3000〜10000cpsとする。
ホットメルトポリウレタン樹脂を離型性基材に塗布する方法としては、従来公知の種々の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。例えば、ロールコーター、スプレーコーター、T−ダイコーター、ナイフコーターまたはコンマコーターなどを用いて離型性基材に塗布する。なかでも均一な薄膜層の形成が可能という点で、ナイフコーターまたはコンマコーターによる塗布が好ましい。
ホットメルトポリウレタン樹脂の塗布厚は、繊維質基材のパイル繊維の長さや密度、さらには離型性基材の凹凸模様の高低差などによって異なるが、25〜900μmであることが好ましく、50〜500μmであることがより好ましい。塗布厚を前記範囲に設定することにより、通常の場合、塗布厚の1.0〜3.5倍、より好ましくは1.2〜3.2倍の厚さを有する多孔質層を得ることができ、好ましくは25〜1000μm、より好ましくは60〜750μmの厚さを有する多孔質層となる(後述する)。
次いで、ホットメルトポリウレタン樹脂の塗布面に、繊維質基材のパイル繊維を有する側の面を貼り合わせる。このとき、パイル繊維の少なくとも一部は、先端が離型性基材に達するように、樹脂をパイル繊維に浸透させることが求められる。パイル繊維の先端が離型性基材に達しないと、樹脂層の表面に開孔が形成されない結果、合成皮革の透湿性や通気性が不十分になる虞がある。
貼り合わせにはラミネータが用いられる。なかでも、温度調整可能なロールを備えるラミネータを用いると、樹脂の浸透を容易にコントロールすることができ、好ましい。このとき、ロール温度は、樹脂の加熱溶融温度より低い温度に設定すればよく、目的とする浸透度合いに合わせて適宜設定可能である。例えば、二液硬化型ホットメルトポリウレタン樹脂を用いる場合のロール温度は、通常の場合30〜140℃であり、より好ましくは40〜110℃である。これにより、貼り合わせ時の樹脂の粘度を、好ましくは1000〜30000cps、より好ましくは3000〜20000cpsとすることができる(後述する)。
貼り合わせ時のホットメルトポリウレタン樹脂の粘度は、1000〜30000cpsであることが好ましく、3000〜20000cpsであることがより好ましい。粘度が1000cps未満であると、樹脂が繊維質基材に過度に浸透して、合成皮革の風合いが硬くなったり、パイル繊維との間に連通孔が形成されない結果、合成皮革の透湿性や通気性が不十分になったりする虞がある。粘度が30000cpsを超えると、樹脂が繊維質基材のパイル繊維に浸透し難くなり、パイル繊維の先端が離型性基材に達せず樹脂層の表面に開孔が形成されない結果、合成皮革の透湿性や通気性が不十分になる虞がある。
次いで、室温まで冷却して固化させることにより、繊維質基材のパイル繊維を有する側の面に、多孔質層が形成される。
ここで、二液硬化型ホットメルトポリウレタン樹脂を用いる場合には、プレポリマー組成物を冷却、固化後、エージング処理を行い、ホットメルトウレタンプレポリマーとウレタン硬化剤との硬化反応を完結させる必要がある。プレポリマーとウレタン硬化剤との反応速度は、選択するプレポリマーやウレタン硬化剤、任意で用いられる添加剤(特にウレタン化触媒)の種類や量によって大きく変動するため、選択する条件によってエージング処理条件を適宜設定する必要があるが、通常の場合、室温で1日〜1週間程度行われる。硬化反応が未完結であると、強度、特には耐摩耗性が悪くなる虞がある。
硬化して得られるポリウレタン樹脂の軟化温度は、前記の通り、130〜240℃であることが好ましく、140〜200℃であることがより好ましい。このように、二液硬化型ホットメルトポリウレタン樹脂は、塗布時には、一液型と比較して低い温度で加工に適した粘度が得られ作業性が良好であるとともに、硬化後の軟化温度は高く、耐熱性に優れるという利点を有する。
多孔質層の厚さは、25〜1000μmであることが好ましく、60〜750μmであることがより好ましい。厚さが25μm未満であると、多孔質層に割れが生じて、合成皮革の外観や感触が損なわれたり、十分なボリューム感が得られなかったりする虞がある。厚さが1000μmを超えると、合成皮革の風合いが硬くなる虞がある。
パイル繊維の長さに対する、多孔質層の厚さの割合は、パイル繊維の先端より30〜120%であることが好ましく、50〜100%であることがより好ましい。割合が30%未満であると、多孔質層に割れが生じて、合成皮革の外観や感触が損なわれたり、十分なボリューム感が得られなかったりする虞がある。割合が120%を超えると、合成皮革の風合いが硬くなる虞がある。
次いで、離型性基材を剥離することにより、繊維質基材と多孔質層との積層体を得ることができる。このように形成された多孔質孔は、内部に連通孔を有し、表面に開孔を有し、かつ、開孔の少なくとも一部はパイル繊維の根元まで連通しているため、透湿性や通気性に優れている。また、孔形成のために、特別の物質を用いたり、特別の工程を設けたりする必要がないため、簡便で、経済性および生産性に優れている。しかも、堅牢度や強度、外観を損なうことがない。
保護層を形成するポリウレタン樹脂
本発明においては、さらに、多孔質層の表面にポリウレタン樹脂からなる保護層を形成する。これにより、合成皮革の強度、特には耐摩耗性を向上することができる。さらに、使用する樹脂によっては感触、すなわちヌメリ感を向上することもできる。なお、本発明において保護層とは、多孔質層の表面に形成されて多孔質層を保護する最外層としての樹脂層の総称をいい、少なくとも1層の樹脂層からなるが、同一または異なる組成の2種以上の樹脂層からなることができる。
保護層の形成に用いられるポリウレタン樹脂は特に限定されるものでなく、例えば、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂などを挙げることができ、これらを1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、堅牢度や強度の点から、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が好ましい。また、ポリウレタン樹脂の形態は、溶剤系、水系、無溶剤系(無溶媒系)、ホットメルト系を問わず、さらには、一液型、二液硬化型、反応型を問わず使用可能であり、その目的と用途に応じて適宜選択すればよい。
ポリウレタン樹脂には、必要に応じて、樹脂の物性を損なわない範囲内で、着色剤、艶消し剤、平滑剤、架橋剤、消泡剤、整泡剤、分散剤、活性剤などの任意成分を、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも耐摩耗性の観点から、添加剤として平滑剤や架橋剤を用いることが好ましい。
保護層の形成
保護層は、多孔質層の表面にポリウレタン樹脂を塗布した後、固化させることにより形成することができる。このとき、多孔質層の表面に存在する開孔を閉塞することなく、ポリウレタン樹脂を塗布することが求められる。その限りにおいて、塗布方法は従来公知の種々の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。例えば、リバースロールコーター、スプレーコーター、ロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ナイフコーター、コンマコーターなどを用いた方法を挙げることができる。なかでも、開孔を閉塞し難く、かつ、薄膜層の形成が可能という点で、スプレーコーターによる塗布が好ましい。
ポリウレタン樹脂の塗布量は、固形分換算で0.5〜50g/mであることが好ましく、1〜15g/mであることがより好ましい。塗布量が0.5g/m未満であると、合成皮革の耐摩耗性が悪くなる虞がある。塗布量が50g/mを超えると、多孔質層表面の開孔が閉塞されて、合成皮革の透湿性や通気性が不十分になる虞がある。
溶剤系または水系のポリウレタン樹脂を用いる場合には、熱処理により、ポリウレタン樹脂中の溶媒を蒸発させ、樹脂を乾燥、固化させる。また、熱処理によって架橋反応を起こす架橋剤を用いる場合にあっては、反応を促進し、十分な強度を有する皮膜を形成するためにも熱処理が必要となる。熱処理温度は60〜170℃であることが好ましく、80〜150℃であることがより好ましい。また、熱処理時間は2〜30分間であることが好ましく、5〜10分間であることが好ましい。熱処理温度が60℃未満であると、あるいは、熱処理時間が2分間未満であると、樹脂の乾燥や架橋が不十分となって耐摩耗性が悪くなる虞がある。熱処理温度が170℃を超えると、あるいは、熱処理時間が30分間を超えると、繊維質基材自体の風合いが硬くなる虞がある。
ホットメルト系のポリウレタン樹脂を用いる場合には、加熱溶融した樹脂を塗布後、冷却することにより固化させる。
また、二液硬化型または反応型のポリウレタン樹脂を用いる場合には、固化後、エージング処理を行う。
かくして、合成皮革を得ることができる。
合成皮革
本発明の製造方法により得られる合成皮革は、少なくとも一方の面にパイル繊維を有する繊維質基材の該パイル繊維を有する側の面に、ホットメルトポリウレタン樹脂からなる多孔質層であって、内部に連通孔を有し、表面に開孔を有し、かつ、該開孔の少なくとも一部はパイル繊維の根元まで連通している多孔質層が、パイル繊維と混在し、かつ、パイル繊維の少なくとも一部は先端が多孔質層の表面に達する状態で積層され、さらに、多孔質層の表面には、ポリウレタン樹脂からなる保護層が、開孔を閉塞することなく積層されてなるものである。
保護層の表面に存在する開孔の孔径は、1〜400μmであることが好ましく、5〜300μmであることがより好ましい。孔径が1μm未満であると、合成皮革の透湿性や通気性が不十分になる虞がある。孔径が400μmを超えると、合成皮革の強度、特には耐摩耗性や引裂強度が悪くなる虞がある。
開孔の孔径は、合成皮革の表面をマイクロスコープ(キーエンス株式会社製、デジタルHFマイクロスコープVH−8000)で観察し、任意の開孔20点について孔径を測定することにより求めることができる。本発明においては、最大値および最小値がともに前記範囲内にあることが好ましい。
開孔率は、1〜50%であることが好ましく、5〜40%であることがより好ましい。開孔率が1%未満であると、合成皮革の透湿性や通気性が不十分になる虞がある。開孔率が50%を超えると、合成皮革の強度や防汚性が悪くなる虞がある。ここで、防汚性とは、埃などが付着し難い性質をいう。開孔率が50%を超えると、開孔に埃などの汚れが落ち込み付着し易くなるため、防汚性が悪くなるのである。
本発明において開孔率は、以下のように求めることができる。すなわち、5cm四方の大きさに裁断した試験布をスキャナーでパソコンに読み込み、開孔を白色に塗り潰した後、該開孔部と、そうでない部分の色を白と黒に2値化して、白ドット部分を積分により集計することにより、開孔部の面積割合を算出する。
合成皮革の透湿性は、JIS L−1099 A−1法(塩化カルシウム法)による透湿度が3000g/m・24時間以上であることが好ましく、5000g/m・24時間以上であることがより好ましい。透湿度が3000g/m・24時間未満であると、人体と接触する状況で用いた場合に蒸れ易く、快適性が損なわれる虞がある。
合成皮革の通気性は、JIS L−1096 8.27.1 A法(フラジール法)による通気度が2.0cc/cm・秒以上であることが好ましく、3.5cc/cm・秒以上であることがより好ましい。通気度が2.0cc/cm・秒未満であると、人体と接触する状況で用いた場合に蒸れ易く、快適性が損なわれる虞がある。
かくして、人体と接触する状況で用いても蒸れ難く、快適性に優れた合成皮革を提供することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものはない。実施例中の「部」は重量基準であるものとする。得られた合成皮革の評価は、以下の方法に従った。
[耐熱性(熱による変色)]
10cm四方の大きさに裁断した試験片を、広口試薬瓶(共栓付250ml瓶、硬質ガラス製)の中に試験片を試薬瓶の側面に沿わせて入れ、110℃に調整された乾燥機内に400時間静置して熱処理した。熱処理後、試薬瓶を乾燥機から取り出し室温まで冷却した後、試験片を試薬瓶から取り出し、熱処理前後の試験片を目視にて観察し、熱処理後の試験片について、JIS L−0804規格のグレイスケール(gray scale)を用いて判定した。変色4級以上、退色4級以上を合格とした。
[耐摩耗性]
幅70mm、長さ300mmの大きさの試験片をタテ方向から1枚採取し、裏面に幅70mm、長さ300mm、厚さ10mmの大きさのウレタンフォームを添えて、平面摩耗試験機T−TYPE(株式会社大栄科学精器製作所製)に固定する。綿帆布をかぶせた摩擦子に荷重9.8Nを掛けて試験片を摩耗する。摩擦子は試験片の表面上140mmの間を60往復/分の速さで摩耗する。摩耗回数2500回毎に綿帆布を交換し、合計10000回摩耗する。摩耗後の試験片の状態を観察し、下記の基準に従って判定した。
○:亀裂、破れ等が無い
△:亀裂が発生した
×:破れが発生した
[引裂強度]
幅40mm、長さ150mmの大きさの試験片を、タテ方向およびヨコ方向からそれぞれ1枚採取し、試験片の短辺の中央に長さ50mmの切り込みを入れる。室温20±2℃、湿度65±5%RHの状況下で、試験片の切り込み部分をつかみ具でたるみのないように挟み、オートグラフAG−100A(株式会社島津製作所製)を用いて、つかみ幅30mm、つかみ間隔25mm、つかみ具の移動速度200mm/分で試験片を引き裂いた。試験片が切断したときの最大荷重を測定し、下記基準に従って判定した。
○:タテ方向、ヨコ方向それぞれの測定値が50N以上
△:タテ方向、ヨコ方向それぞれの測定値が15N以上50N未満
×:タテ方向、ヨコ方向それぞれの測定値が15N未満
[外観]
官能評価を行い、下記の基準に従って判定した。
○:表面の開孔がほとんど認識できず、外観品位に影響がない
△:表面の開孔が認識でき、外観品位にやや影響がある
×:表面の開孔が目立ち、明らかに外観品位が劣る
[透湿度]
JIS L−1099 A−1法(塩化カルシウム法)に従って測定し、3000g/m・24時間以上を合格とした。
[通気度]
JIS L−1096 8.27.1 A法(フラジール法)に従って測定し、2.0cc/cm/秒を合格とした。
ホットメルトウレタンプレポリマーは以下のように製造した。
[製造例1]
60℃に保温した1リットルの4ツ口フラスコに、数平均分子量が2000のポリエステルポリオール(クラレポリオールP2012:株式会社クラレ製)を80部、数平均分子量が2000のポリカーボネートポリオール(クラレポリオールC2090:株式会社クラレ製)を50部、数平均分子量が1000のポリエーテルポリオール(PTMG1000:三洋化成工業株式会社製)を10部入れて撹拌した後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を15部入れてイソシアネート基が無くなるまで80℃にて撹拌し(当量比(水酸基/イソシアネート基)は1.25)、ホットメルトウレタンポリオールプレポリマー(軟化温度:40℃)を得た。
[製造例2]
60℃に保温した1リットルの4ツ口フラスコに、数平均分子量が1000のポリエステルポリオール(クラレポリオールP1012:株式会社クラレ製)を10部、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を6部入れて水酸基が無くなるまで80℃にて攪拌し(当量比(イソシアネート基/水酸基)は2.4)、ホットメルトウレタンポリイソシアネートプレポリマー(軟化温度:30℃)を得た。
保護層の形成には、市販のポリウレタン樹脂組成物(いずれもStahl社製)を用いた。
[ポリウレタン樹脂組成物]
組成1および組成2の溶液を、塗布直前に混合し(合計430部)、ポリウレタン樹脂組成物とした。
組成1
HM−183(平滑剤) 5部
HM−4986(平滑剤) 15部
WT−2524(ポリウレタン樹脂) 100部
LA−1688(活性剤) 20部
水 270部
組成2
XR−13−436(架橋剤) 10部
水 10部
[実施例1]
28ゲージで3枚の筬を有するトリコット編機を使用し、フロント筬にはポリエチレンテレフタレート32dtex/102f(単繊維繊度0.31dtex)のインターレース糸を、ミドル筬、バック筬にはポリエチレンテレフタレート75dtex/36fの糸を用い、組織はフロント筬1−0/3−4、ミドル筬1−0/1−2、バック筬2−3/1−0で、編機上で70コース/25.4mmでトリコット編地を編成した。
得られた編地を、分散染料を用いて液流染色機により130℃で30分間染色後、ヒートセッターにより150℃で2分間熱処理して乾燥した。
次いで、パイルローラー12本、カウンターパイルローラー12本を有する針布ロールを備える針布起毛機により、針布ローラートルク2.5MPa、布速12m/分にて編終わり方向からと編始め方向からの起毛を交互に13回行い、フロント糸の約50%がカットされるようにセミカット起毛を施した。次いで、ヒートセッターにより190℃で1分間熱処理して仕上げた。得られた起毛パイル編地の編密度は38ウエール/25.4mm、64コース/25.4mm、厚さは1.0mmであった。また、パイル繊維の長さは0.6mm、パイル繊維の密度は48万本/(25.4mm)であった。かかる起毛パイル編地を繊維質基材として用いた。
ホットメルトウレタンプレポリマーとして100℃に加熱溶融した製造例1のホットメルトウレタンポリオールプレポリマー100部に、ウレタン硬化剤として40℃に加熱した製造例2のホットメルトウレタンポリイソシアネートプレポリマーを20部、着色剤としてカーボンブラック顔料ポリトンブラック(大日本インキ化学工業株式会社製)を10部、ウレタン化触媒としてアミン系触媒TOYOCAT−DT(TOSOH株式会社製)を1部添加し、撹拌してプレポリマー組成物(当量比(イソシアネート基/水酸基)は1.1)を調製した。塗布時のプレポリマー組成物の温度は75℃であり、粘度は5000cpsであった。このプレポリマー組成物を、シボ調の凹凸模様(高低差:20〜60μm)を有する離型紙DE−146(大日本印刷株式会社製)に、塗布厚が200μmとなるようにコンマコーターにてシート状に塗布した。
プレポリマー組成物を離型紙に塗布して30秒後、繊維質基材のパイル繊維を有する側の面を貼り合わせ、80℃に調整されたロールにて、パイル繊維の先端が離型性基材に達するように、0.5MPaの荷重で圧締した。貼り合わせ時のプレポリマー組成物の粘度は5000cpsであった。
次いで、シート状物を巻き取り、室温にて1日間エージング処理した後、離型紙を剥離して、繊維質基材と、プレポリマー組成物が硬化してなる樹脂層との積層体を得た。樹脂層を構成するポリウレタン樹脂の軟化温度は200℃であった。また、樹脂層は、内部に連通孔を有し、表面に開孔を有し、かつ、開孔の少なくとも一部はパイル繊維の根元まで連通する、多孔質層であった。樹脂層の厚さは480μmで、パイル繊維の長さに対する樹脂層の厚さの割合は、パイル繊維の先端より80%であった。
次いで、保護層形成用のポリウレタン樹脂組成物を、塗布量が7g/mとなるようにスプレーコーターにて塗布し、ヒートセッターにて100℃で2分間熱処理して、樹脂層表面を被覆する保護層を形成し、実施例1の合成皮革を得た。保護層の表面に存在する開孔の孔径は5〜200μmの範囲に分布しており、開孔率は21%であった。
[実施例2]
プレポリマー組成物を離型紙に塗布してから繊維質基材に貼り合わせるまでのタイミングを60秒とり、貼り合わせ時のプレポリマー組成物の粘度を6500cpsとした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の合成皮革を得た。
プレポリマー組成物が硬化してなる樹脂層の状態、厚さ、パイル繊維の長さに対する樹脂層の厚さの割合は、実施例1と同様であった。
また、最終的に得られた合成皮革において、保護層の表面に存在する開孔の孔径は5〜200μmの範囲に分布しており、開孔率は30%であった。
[実施例3]
プレポリマー組成物を離型紙に塗布してから繊維質基材に貼り合わせるまでのタイミングを120秒とり、貼り合わせ時のプレポリマー組成物の粘度を10000cpsとした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の合成皮革を得た。
プレポリマー組成物が硬化してなる樹脂層の状態、厚さ、パイル繊維の長さに対する樹脂層の厚さの割合は、実施例1と同様であった。
また、最終的に得られた合成皮革において、保護層の表面に存在する開孔の孔径は5〜200μmの範囲に分布しており、開孔率は21%であった。
[実施例4]
プレポリマー組成物を離型紙に塗布してから繊維質基材に貼り合わせるまでのタイミングを300秒とり、貼り合わせ時のプレポリマー組成物の粘度を20000cpsとした以外は、実施例1と同様にして、実施例4の合成皮革を得た。
プレポリマー組成物が硬化してなる樹脂層の状態は、実施例1と概ね同様であったが、表面に存在する開孔の数が少ないものであった。樹脂層の厚さ、パイル繊維の長さに対する樹脂層の厚さの割合は、実施例1と同様であった。
また、最終的に得られた合成皮革において、保護層の表面に存在する開孔の孔径は5〜200μmの範囲に分布しており、開孔率は5.8%であった。
[比較例1]
一液型溶剤系ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂としてクリスボンNY−328(大日本インキ化学工業株式会社製)100部に、着色剤として黒色顔料ダイラックL−1770S(大日本インキ化学工業株式会社製)を20部、希釈溶剤としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を20部、同じく希釈溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)を20部混合した樹脂組成物を、ヌバック調の凹凸模様(高低差:20〜60μm)を有する離型紙UM−11E(大日本印刷株式会社製)に、塗布厚が300μmとなるようにコンマコーターにてシート状に塗布した。
樹脂組成物を離型紙に塗布して60秒後、実施例1の繊維質基材のパイル繊維を有する側の面を貼り合わせ、80℃に調整されたロールにて、パイル繊維の先端が離型性基材に達するように、0.5MPaの荷重で圧締した。貼り合わせ時の樹脂組成物の粘度は5000cpsであった。
次いで、ヒートセッターにて150℃で2分間熱処理して乾燥後、離型紙を剥離して、比較例1の合成皮革を得た。
樹脂層の厚さは100μmで、パイル繊維の長さに対する樹脂層の厚さの割合は、パイル繊維の先端より100%であった。また、樹脂層の表面に開孔は存在しなかった。
実施例および比較例の合成皮革について性能を評価した結果を表1に示す。
Figure 2011069031

Claims (2)

  1. (1)加熱溶融状態にあるホットメルトポリウレタン樹脂を、(a)離型性基材に塗布し、該塗布面に、少なくとも一方の面にパイル繊維を有する繊維質基材の該パイル繊維を有する側の面を貼り合わせるか、または、(b)少なくとも一方の面にパイル繊維を有する繊維質基材の該パイル繊維を有する側の面に塗布し、該塗布面に、離型性基材を貼り合わせる工程、ここでパイル繊維の少なくとも一部は先端が離型性基材に達している、
    (2)ホットメルトポリウレタン樹脂を固化させて多孔質層を形成する工程、ここで多孔質層は内部に連通孔を有し、離型性基材と接する側の面に開孔を有し、かつ、該開孔の少なくとも一部はパイル繊維の根元まで連通している、
    (3)離型性基材を剥離する工程、
    (4)露出する多孔質層の表面に、開孔を閉塞することなくポリウレタン樹脂を塗布する工程、
    (5)ポリウレタン樹脂を固化させて保護層を形成する工程、
    をこの順で含んでなる合成皮革の製造方法。
  2. 少なくとも一方の面にパイル繊維を有する繊維質基材の該パイル繊維を有する側の面に、ホットメルトポリウレタン樹脂からなる多孔質層であって、内部に連通孔を有し、表面に開孔を有し、かつ、該開孔の少なくとも一部はパイル繊維の根元まで連通している多孔質層が、パイル繊維と混在し、かつ、パイル繊維の少なくとも一部は先端が多孔質層の表面に達する状態で積層され、さらに、多孔質層の表面には、ポリウレタン樹脂からなる保護層が、開孔を閉塞することなく積層されてなることを特徴とする合成皮革。
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