JP5706735B2 - フィット性、滑り止め性に優れたシート材 - Google Patents

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Description

本発明は、鞄を所持する人が直接触れるベルト類や、装飾品を装着する人が直接触れる部分などに使用されるシート材において、シート材表面側を内側にして屈曲させた状態で使用した場合に、フィット性や滑り止め性が大きく損なわれず、かつ、見た目や摩耗のし難さにおいても優れた性能を発揮するシート材に関するものである。
鞄を所持する人が直接触れるベルト類や、装飾品を装着する人が直接触れる部分などのパーツは、その商品の使用者が直接触れるパーツであるが、その裏側(内側)には表側(外側)と同じ素材、または異なる素材が用いられている。
表側素材は、鞄や装飾品などの商品を購入する段階での印象の多くを決定付ける素材であり、消費者が商品購入を決めるための短い時間にも商品価値を発揮し得ることに大きなウエイトを持たせた種々の改良がなされてきた。
一方、裏側素材は購入後の使用感という消費者にとっての長期的な商品価値において小さくはないウエイトを占めることになる素材であり、使用感に影響を与える因子を改良するためにパーツ形状や表側素材の改良、芯材の改良だけでなく、表側素材とは異なるシート材を裏側素材として使用することで、裏側素材に他とは独立した改良を行うことも多くある。
裏側素材が使用感に直接的に影響を与える因子としては、見た目や心地良い感触などの感性、滑り難さや磨耗し難さなどの機能性などが挙げられ、他素材とは独立してシート材の全体構造や表面などに種々の改良を施すこともなされてきた。
使用素材ではなくパーツ形状などの構造変更によって鞄類所持者へのフィット性向上、荷重分散による負担軽減を図った例としては、例えばランドセルであれば、大紐(肩ベルト)の全体形状を略S字状に湾曲させたり、ランドセル筐体上部に大紐を取り付ける背環(取り付け金具)を拡開可能としたり、大紐の長手方向に長孔を設けることで背負った際に長孔両側の側帯部が別個独立に変形可能にするなどして、肩形状への追従性をより改良した肩ベルトが提案されている(特許文献1参照)。
ランドセルに限らず所持したり装着したりする商品の重量は少しでも軽く設計するのが基本であり、複数パーツを重ねて縫合一体化して製造される肩ベルトにおいては、芯材だけでなく表面側や裏面側に用いる素材にも形態保持性、強度などを優先した結果、素材間や素材内での伸び等の形態変化バランスのミスマッチ解消は見過ごされ、表面を内側に屈曲させた状態で使用される裏面側素材の表面に大きな挫屈シワが生じた状態をいわば当たり前の光景として目にする。
前記に例示した肩ベルトや鞄類の筐体に限らず、本発明が目的とする製品用途の種々の部位のパーツにおいて表面側素材や裏面側素材に用いることができるようなシート材として、樹脂で被覆されたシート材や繊維質表面のシート材などの表面状態を問わず、表面に0.5〜15μm程度のサイズの微細な凹凸形状や微粉末を付与するなどして外観や触感を改質したり、耐磨耗性を向上させたシート材に関する提案は数多くなされてきた(例えば特許文献2、3参照)。
また、本発明とは目的とする製品用途は異なるが、床面の耐汚染性と防滑性を兼ね備えた床材として、繊維シートを内蔵する合成樹脂層、着色合成樹脂粒を含む化粧層、透明または半透明の耐汚染性合成樹脂層が順次積層され、耐汚染性合成樹脂層から化粧層に達する凹凸を有するような防滑性床材の提案もなされている(特許文献4参照)。
これらシート材は、目的とする感性、機能性が得られるよう表面形状や組成を改質したに過ぎず、芯材など他素材と組み合わせたりした上で、あるいは当該シート材単独であっても、表面を内側に屈曲させた状態で使用した場合に表面に生じる挫屈シワを解消し得るものではない。
シート材の外観や触感における高品質な感性を無視すれば、樹脂エマルジョン組成物の比較的均等な高さの突起樹脂体を互いに間隔を置いて点在突設させたカーペットや椅子クッション等に好適な滑り防止シート材の提案(特許文献5参照)や、あるいはパンツやスカート等のベルト裏面(内側)にシリコンからなる突起を多数設けた滑り止めベルトの提案(特許文献6参照)などのように、シート材表面にシート材よりかなり硬い突起を多数設けることで、直接的な滑り止め効果だけでなく表面を内側に屈曲させた状態で使用した場合に表面に生じる挫屈シワが一見して目立たなくなる可能性も考えられる。
しかし、シート材の感性自体が大きく損なわれるばかりか、むしろ突起を形成した箇所と突起の無い箇所とで伸びのミスマッチを生じて挫屈シワが拡大してしまう可能性も考えられるなど根本的な解決には程遠いものである。
前記に例示した0.5〜15μm程度のサイズの微細な凹凸形状や微粉末を付与したシート材より、さらに大きなオーダーにて凹凸形状のサイズを変更したシート材の提案としては、例えば、バスケットボール等の手で直接触れるボールの表面素材に好適なクッション性やノンスリップ性を有するシート状物として、繊維基材表面に高分子重合体被覆層を有し、実質的に連続する凸部と該凸部に隣接して形成された半球状の凹部を有し、該凹部の垂直投影面積が3〜30mm2、隣接する凹部同士の平均間隔0.5〜3mm、該凸部と該凹部の高低差50〜1000μmであるシート状物がある(特許文献7参照)。
このシート状物は、ボールの表面素材など表面を外側にして用いるものであり、例えば空気を抜いて球形状から緩むだけでも連続する凸部表面を主体に半球状の凹部すなわちディンプル形状にかけて多数の深い挫屈シワが入るものであり、本発明の目的においては不適なものである。
特許文献7と同様の表面形状を有し、かつ厚さ方向の20%圧縮応力0.1〜1.0kg/cm2のシートをランドセル等の鞄の背裏材や肩バンド材に用いることで、表面磨耗強度とクッション性、フィット性を兼ね備えた鞄が提案されている(特許文献8参照)。
このシートは、クッション層を厚くとるなどして厚さ方向の20%圧縮応力を低くしたシートであり、表面を内側にして屈曲させるとやはり非常に大きな挫屈シワが入る上、一旦挫屈シワの癖がついたシートはそのクッション層が仇となって僅かに屈曲させただけでも同じ箇所が大きく挫屈するものである。
極細繊維と高分子弾性体(A)とからなる基体層の片面に、基体層の極細繊維と高分子弾性体(B)が接合した複合層が存在し、複合層側に形成された凹凸の凸部頂上部に高分子弾性体(C)の被覆層が存在し、かつ凸部側面に貫通孔を有するバスケットボール等の球技ボールに適した皮革様シート状物(特許文献9参照)や、繊維絡合体とポリウレタン弾性体とからなる基体層の片面に、凸凹模様を有するポリウレタン多孔層を有し、さらに着色層やグリップ性向上剤を含む仕上げ皮膜層が形成されたグリップ性の優れるボール用人工皮革(特許文献10参照)など数多くの提案がなされている。
特許文献9には、凸部はグリッピー性を増加させるためには独立していることが好ましく、独立した凸部頂上部の平均面積は0.5〜7mm2、即ち円錐台形状だと頂上部直径の大きさで0.8〜3mmであり、また凹凸部の高低差が0.1mm以上であるのが好ましい凸部形状であることが開示され、さらにアメリカンフットボールやハンドボールなど手で把持するボール用途であれば凸部頂上部の合計面積がシート面積の20〜70%の割合であることが好ましいといったことも開示されている。すなわち、独立した個々の凸部形状については詳しいが、それを取り囲む凹部形状については凸部頂上部の合計面積がシート面積の20〜70%を満たす範囲でどのような形状も採用可能であって、例えばアメリカンフットボールの空気が抜けた際に凹凸表面を内側に屈曲させるどころかフラットに近い状態に戻るだけでも発生するような大きな挫屈シワの解消についてすら何ら示唆するものではない。
一方、特許文献10にも、バスケットボール向けに特許文献9と同様に円錐台形状の独立した凸部を形成することについて記載があり、実施例2には具体例として円錐台形状の独立した凹部を24個/cm2有し、転写した後の凸部頂上部の最大径1.8mm、凸部裾部分の最大径2.3mm、高さ0.6mmの円錐台形状の雌型金型を有するエンボスロールを用いること、およびエンボス加工により形成した凸部は頂上部直径1.64mm、高さ0.32mmであったことが開示されている。
該エンボスロール形状により形成された凸凹形状について十分な記載はないが、仮に頂上部直径が1.64mm、裾部直径2.3mmとすると、本発明の測定法における凸部巾Wは1.97mm、24個/cm2の凸部が最密充填されたものであるとすると凹部巾Dは0.22mmとなり、D/W=0.11で本発明の範囲を外れる形状であるし、さらに、D/H=0.69、D×H=0.07、W/H=6.2であって、D×H以外は本発明の好ましい範囲を外れる形状であって、特許文献9と同様に例えばバスケットボールの空気が抜けた際に凹凸表面を内側に屈曲させるどころかフラットに近い状態に戻るだけでも発生するような大きな挫屈シワの解消についてすら何ら示唆するものではない。
その他にも、ソファーや靴などに好適な意匠性の高い皮革様シートとして、極細長繊維不織布とその内部に付与された弾性ポリマーからなる基体の表面に凸部の周囲を凹部が囲んだ凹凸模様を形成した皮革様シート(特許文献11参照。)が提案されている。凸部の平均面積が0.2〜25mm2、即ち円の直径に換算して0.5〜5.6mm径程度の凸部サイズではあるが、ソファーや靴など曲面に沿わせて張られる用途に用いても凹凸感を損ねることなくコントラストや表面タッチに優れた素材を目的とするので、凸部は立毛繊維をそのまま存在させたものであり基本的には表面に大きな挫屈シワは発生しにくく、また細かなシワも発生しにくいか目立たない素材である。
特開2004−65462号公報 特開平9−250063号公報 特開2002−15547号公報 特開平7−310291号公報 特開平7−178855号公報 実用新案登録第3064743号公報 WO2005/097268A1号明細書 特開2007−412号公報 特開2006−89863号公報 特開2010−24555号公報 特開2009−1945号公報
本発明は、上記したようなこれまでのシート材において、鞄の持ち手裏側などに用いた場合の問題点を解決し、フィット性および滑り止め性が改良されたシート材を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題の解決のために鋭意検討した結果、表面の素材改質を行うだけでなく、その改質効果を最大限に発揮するために、表面全体に特定の形状の凹凸を形成することが非常に効果的であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(7)を提供する。
(1)基材および表面樹脂層からなり、表面全体に凹凸が形成されたシート材において、前記凹凸は凸部が連続する凹部に囲まれた形状であり、かつ凸部巾Wは1.5〜3.0mmの範囲であり、かつ凹部巾Dは凸部巾Wに対して0.15≦D/W≦1.0を満たすことを特徴とする、フィット性、滑り止め性に優れたシート材。
(2)凹凸の高低差Hが凹部巾Dに対してD/H≧1.5、および 0.05mm2≦D×H≦0.15mm2を同時に満たす前記(1)に記載のシート材。
(3)凸部巾Wと凹凸の高低差Hとが7≦W/H≦10を満たす前記(1)のシート材。
(4)各凸部における凸部巾の最大値Wmaxと最小値Wminとが1≦Wmax/Wmin≦1.3を満たす前記(1)のシート材。
(5)表面樹脂層がポリウレタン樹脂からなり、かつ多孔質構造を有する前記(1)〜(4)のいずれかのシート材。
(6)表面樹脂層の少なくとも凸部表面に仕上処理剤が付与されている前記(5)のシート材。
(7)前記(1)のシート材の表面側を内側にして他と接触する箇所に用いた製品。
これまでも表面側に本発明のシート材に類似した凹凸形状が表面全体に形成されたシート材は多数存在したが、それらは例えばボールの表皮材としての使用などのように、凹凸形状が形成された表面側が凸になるようシート材を屈曲させることを前提としており、凹凸形状は表面側が凸に屈曲させた状態でその意匠性および触感などが発揮されるような設計であった。一方、本発明のシート材は、凹凸形状が形成された表面側が凹になるよう屈曲させた状態で鞄の持ち手裏側などに使用する場合において、表面全体に設けた凹凸を特定形状とすることで、その使用状態でのフィット性や滑り止め性などの機能性、および大きな挫屈シワの発生抑制による外観品位の悪化防止といった発明の効果が十分に発揮され、商品の使用感を顕著に改良することができるものである。
本発明に係るシート材表面の凸凹部の寸法関係を示す模式図である。 本発明のシート材の表面側を内側に用いた場合のシート材表面樹脂層の凹凸部の変形状態の模式図である。
本発明を達成するための具体的な手段の例を、図1を引用して説明する。
本発明のシート材10は、基材1及び表面樹脂層2からなり、表面樹脂層2には凸部3が連続する凹部4に囲まれた形状の凹凸が表面全体に形成されており、その凹凸のサイズは、凸部巾及び凹部巾を図1に示す部位のW及びDとするとき、凸部巾Wが1.5〜3.0mmで、かつ凹部巾Dは凸部巾Wに対して、D/Wが0.15倍以上〜1.0倍以下の範囲であることを満足している。
凹凸の形成方法としては、基材および表面樹脂層からなるおおよそ平滑なシート材を形成した後にその表面全体に所望の凹凸形状を付与する方法、表面樹脂層の製造段階で所望の凹凸形状を有するものを直接形成する方法、基材表面に予め付与した凹凸形状をその上にさらに形成した表面樹脂層に反映させることで所望の凹凸形状を有する表面樹脂層を得る方法などの方法が何れも採用可能であり、それら方法は単独での採用だけでなく組み合わせて採用してもよい。
表面樹脂層や基材へ凹凸形状を付与する加工方法としては、所望の凹凸形状の反対形状を有するエンボスロールや金型、転写紙などを圧着させて形状を転写する、いわゆる型押しや成型などの加工方法が挙げられ、また製造段階で凹凸形状を有する表面樹脂層を直接形成する方法としては、所望の凹凸形状の反対形状を有する金型や転写紙などの上に表面樹脂層の原料を流延・固化して形状を転写する、いわゆる造面や造膜などの加工方法が挙げられる。
凹凸の形状は、凸部が連続する凹部に囲まれた形状であり、シート材を表面に対して垂直方向から観察したときの1つ1つの凸部形状としては、円形、四角形や五角形などの多角形、円形の一部と多角形の一部が組み合わさった形状、あるいはそれらが一部潰れた形状、さらには円形と多角形とが多数組み合わさってランダムに見える形状などが挙げられる。シート材表面全体に配列する凸部形状としては、おおよその規則性がある形状であって、かつ全てが同様の形状であるのが見た目に安定感、安心感があり、また凸部を効率よく密に配列し易い点で好ましいが、発明の効果を損なわない範囲であれば、前記凸部形状が複数種類混在していても、あるいは直線状・曲線状の線分や星形・文字形などの意匠性を有する記号・マークといった前記凸部形状には含まれないような形状が一部に混在していてもよい。
凸部の大きさとしては、凸部巾Wが平均値として1.5〜3.0mmの範囲である必要があり、個々の凸部巾Wが何れもこの範囲に含まれるような大きさであるのが好ましいが、発明の効果を損なわない範囲であれば、前記範囲を外れた大きさの凸部が混在してもよい。凸部巾Wが1.5mmを下回ると、シート材表面全体に配置された個々の凸部頂面が小さすぎるため、鞄の持ち手などに用いた場合にシート材表面の挫屈性が凹凸形状では吸収し切れないのかむしろ悪化してしまう傾向がある上、凸部表面そのものが有する感性や機能性が発揮され難くなることもある。また、凸部巾Wが3.0mmを上回ると、シート材表面全体に配置された個々の凸部頂面が大きすぎるため、鞄の持ち手などに用いた場合に凸部頂面自体が挫屈する箇所が多くなるなど凹凸形状によるシート材表面の挫屈性悪化の傾向が強い。
なお、凸部巾Wは図1に示すように、シート材を表面に対して垂直にカットした際に観察される凸部断面において凹凸高低差Hの1/2の箇所での測定長であり、任意のカット方向における凸部巾とは、その方向において最大値となる凸部巾を測定したものである。前記したように個々の凸部形状は種々の形状が採用可能だが、シート材の面内において極端な異方性を有しない方が、商品を使用する際にシート材を種々の方向に屈曲させることがあっても発明の効果を安定的に発揮できる点や、シート材から商品を製造する際の生産効率に優れる点などにおいて有利であり、各凸部においてカット方向を変更することにより測定可能な凸部巾の最大値Wmaxと最小値Wminとの比が1≦Wmax/Wmin≦1.3を満たすのが好ましい。
隣り合って配置する凸部同士の間隔としては、凹部巾Dが平均値として凸部巾Wに対して0.15≦D/W≦1.0の範囲である必要がある。 好ましくは0.17≦D/W≦0.5の範囲であり、また、個々の凹部巾Dが何れもこの範囲に含まれるような間隔であるのが好ましいが、発明の効果を損なわない範囲であれば、前記範囲を外れた間隔の凹部が混在してもよい。
なお、凹部巾Dも図1に示すように凹凸高低差Hの1/2の箇所での測定長である。
図2は、本発明のシート10が表面樹脂層2を内側にして屈曲された際に、凸部3及び凹部4が正常に機能を発現している状態を模式的に示している。
D/Wが0.15未満だと、表面樹脂層2側が内側で凹になるようにシート材を屈曲させた際に、屈曲により生じる歪を凹部4の変形だけでは吸収しきれなくなり、また近接し過ぎた隣り合う凸部3同士が部分的に接触して凸部3に変形が生じてしまう頻度が高くなり、さらにはシート材10の長さに対する凹部比率が少な過ぎることで凸部にも表面側を凹に屈曲させる歪が生じ凸部にもシワ発生の傾向が強まるなどによって、屈曲使用することで凹凸形状に大きな挫屈シワの発生が見られるようになり、図2のようにはならず、外観品位が悪化するばかりかフィット性や滑り止め性をも損なう結果となる。また、D/Wが1.0を超えると、表面側が凹になるようにシート材を屈曲させた際に凹凸形状への大きな挫屈シワの発生傾向は弱まるものの、シート材長さに対する凸部比率が少な過ぎるので、シート材に本来必要とされるフィット性や滑り止め性などの機能性が大きく損なわれる結果となる。
凹部巾は、シート材表面を垂直方向(厚み方向)から観察した凸部形状における重心位置を隣り合って配置する各凸部同士について結んだ線分上を垂直方向にカットした際に観察される凹部断面において凹凸高低差の1/2の箇所を測定した測定長である。なお、ここでいう凸部形状は、凹凸高低差の1/2の箇所にて囲まれる凸部の形状のことである。
凸部の高さ(凹部の深さ)としては、凹凸の高低差Hが平均値として凹部巾Dに対してD/H≧1.5の範囲であるのが好ましく、また、0.05 mm2≦D×H≦0.15 mm2の範囲でもあるのが好ましく、より好ましくはD/H≧1.5と0.05mm2≦D×H≦0.15mm2とを同時に満たす範囲である。
D/Hが1.5未満だと、表面側が凹になるようにシート材を屈曲させた際に隣り合う凸部同士が部分的に接触する頻度が高いので凸部に変形が生じ凹凸形状に大きな挫屈シワが発生する傾向が強くなり、また凹凸形状を付与する加工方法として前述した型押しなどの加工方法を用いている場合には、表面樹脂層や基材層に逆形状を転写させたとき厚さ方向にかけた圧力による変形で表面樹脂層や基材層に生じた歪が大きいのでシート材を屈曲させた際の挫屈シワの発生源となり易いなど、挫屈シワの発生による外観品位の悪化など、発明の効果が損なわれる傾向がある。
また、D×Hが0.05mm2を下回ると、凹凸形状において凹部が形成する空間が小さすぎるので、表面側が凹になるようにシート材を屈曲させた際に、前述したような凹凸形状による大きな挫屈シワ発生の抑制効果が不十分であり、D×Hが0.15mm2を上回ると、凹凸形状において凹部が形成する空間が大きすぎるので挫屈シワ発生の抑制効果はあるもののシート材に本来必要とされるフィット性や滑り止め性などの機能性が不十分である。
シート材表面全体について測定される凹凸高低差Hが何れもこの範囲に含まれるような高低差であるのが好ましいが、発明の効果を損なわない範囲であれば、前記範囲を外れた凹凸高低差の箇所が混在してもよい。凹凸高低差は、シート材を表面に対して垂直にカットした際に観察される凸部断面においてシート材表面に平行に引いた2本の線分A、Bの間隔を測定したものであり、線分Aとは凸部に隣接する凹部2箇所のうちより低い(基材により近い)凹部底面を通る線分、線分Bとは前記線分Aに平行かつ最も高い(基材から離れた)凸部頂面を通る線分であり、任意のカット方向における凹凸高低差とは、その方向において最大値となる凹凸高低差を測定したものである。
また、凹凸の高低差Hは、平均値として凸部巾Wと7≦W/H≦10の範囲であるのが好ましい。シート材表面全体について測定される凹凸高低差Hが何れもこの範囲に含まれるような高低差であるのが好ましいが、発明の効果を損なわない範囲であれば、前記範囲を外れた凹凸高低差の箇所が混在してもよい。
W/Hの値が前記範囲を外れると直ちに本発明の効果が失われるということはないが、W/Hが7未満だと、凸部形状が尖っているので本発明の機能性を得る上では個々の凸部が小さすぎるなどで好ましくないか、あるいは凹部が深いので本発明の挫屈シワ抑制効果を得る上では隣接する凸部同士が接触し易いなどで好ましくないといった傾向があり、また、W/Hが10を超えると、凹部の深さに対して凸部が広くて扁平的すぎるので、表面側が凹になるよう屈曲させた際に凸部自体が挫屈シワの発生点となり易く本発明の挫屈シワ抑制効果を得る上では好ましくない傾向がある。
シート材表面の面積に占める凸部面積の総和の割合は、想定される使用状況すなわちシート材の屈曲程度において所望の感性や性能を得るために、前記した各サイズを適宜調整することで結果として得られる凹凸形状によって必然的におおよそ決定されるものであり、商品種類や用途等を問わず一概にこの程度の範囲が好ましいという範囲は特定されないが、通常50%を下回ることはなく、55〜80%の範囲となるように設計するのが好ましいケースが多く、特にハンドバッグの持ち手、ウエストポーチの腰巻きベルト、ショルダーバッグの肩掛けベルトなど、鞄を持つ人が直接触れるベルト類に用いるシート材であれば、60〜75%の範囲となるような設計の凹凸形状が好ましく、63〜70%の範囲となるような凹凸形状がより好ましい。
ハンドバッグの持ち手、ウエストポーチの腰巻きベルト、ショルダーバッグの肩掛けベルトなど、鞄を持つ人が直接触れるベルト類や、帽子の額当て部分、短靴やブーツの履き口部分や踝部分など、装飾品を着用する人が直接触れる部分などのパーツの内側に用いられるシート材は、一般的には、プラスチックフィルムやゴムシートなどの樹脂シート類、織物や編物などのテキスタイル類、あるいは合成皮革や人工皮革、天然皮革などのレザーシート類といった種々の素材の中から商品全体のコンセプトに応じて見た目や感触などの感性面を主眼にデザイナーが選択するのが通常であり、特に商品の用途において滑り難さや磨耗し難さなどの機能性を要する場合はそれも考慮して選択される。選択されたシート材は1個または複数個のピースに切り出され、用いるパーツの所定箇所に縫い合わせたり接着したりされるが、本発明のシート材表面の凹凸とは、ピース外周に形成される筋や縫い目、接着剤による盛り上がりなどのシート材に由来しない形状は含まないが、商品製造段階で型押し・プリントすることでシート材に後天的に付与された形状は含む。
シート材を構成する基材としては、前記した樹脂シート類、テキスタイル類、あるいはレザーシート類といった種々の素材が何れも使用可能であるが、見た目や触り心地のよい感触の点でテキスタイル類またはレザーシート類であるのが好ましく、具体的には織物や編物、不織布あるいはスプリットレザーやこれらに樹脂含浸したもの、さらにはそれらの表面や裏面に樹脂コートしたものが挙げられる。 中でも不織布やスプリットレザーは、シート材としたときの基材自体に異方性が少なく構造もより緻密であるため、本発明の効果がより発揮され易い点で好ましい。 テキスタイル類やレザー類を構成する繊維としては、シート材の用途において要求される機械物性を満足できれば、天然繊維、合成繊維、半合成繊維の何れも使用可能であり、セルロース繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などを単独または混合したものが挙げられる。 不織布を用いる場合は、ニードルパンチ法やスパンレース法などの絡合処理を行うことで不織布の機械物性や構造、形態などを調節可能であり好ましい。
より柔軟な触感を有するシート材を目的とする場合には、繊維の全部または一部に極細繊維、特に繊度が0.5dtex以下の極細繊維を用いるのが好ましく、機械物性やその他の性能との兼ね合いで可能な範囲で0.3dtex以下、さらには0.1dtex以下といった極めて小さな繊度の極細繊維を用いてもよく、また0.05dtex以下といった極細繊維を採用したり、極細繊維が複数本で束となった極細繊維束を採用することで、シート材の構造自体の吸水性や防臭性などをより高度に発揮させることも可能である。極細繊維は、所望繊度にて直接的に極細繊維を得る方法(直接紡糸法)、所望とは異なる繊度の繊維(極細繊維形成性繊維)を経由する方法の何れかにより製造可能であり、前記極細繊維束は通常後者方法にて製造する。
極細繊維形成性繊維を紡糸する方法は、相溶性の低い複数種の熱可塑性ポリマーを繊維断面において複合させる方法があり、複数種の原料ポリマーが合わさる段階によって複合紡糸法と混合紡糸法に大別される。前者の方法は各原料ポリマーを加熱溶融させた流動状態にした後で流路〜口金構造にて合流させて紡糸する方法であり、後者の方法は各原料ポリマーを加熱溶融させて流動状態にするまでの段階で混合した上で単一流路を経て紡糸する方法であり、それら方法を組み合わせることも可能である。 極細繊維形成性繊維から極細繊維を得る方法としては、少なくとも1成分を分解減量または溶解除去することで抽出する方法、相溶性の低い成分同士の界面で剥離させることで分割する方法、それらを組み合わせた方法の何れかの方法が挙げられる。極細繊維形成性繊維は断面形状(異種の原料ポリマー成分の配置)に基づく呼称として、海島型繊維、多層積層型繊維などが代表例として挙げられる。
織物や編物、不織布あるいはスプリットレザーからなる繊維質シートには、必要に応じて樹脂を含浸させることで、強度や触感、機能性などを改質させることができる。 含浸方法としては、ディップ/ニップ法、ナイフコート法、バーコート法、ロールコート法、スプレーコート法などが挙げられる。含浸樹脂は溶液や分散液、融液の形態で準備し、繊維質シートに1回または複数回の含浸処理により浸透させる。この際、単一の方法で処理しても、複数を組み合わせた方法で処理してもよい。
含浸後の樹脂は、さらに加熱、冷却、水やスチームなどによる湿潤、紫外線や遠赤外線などの光照射、ガス接触など、環境変化を利用した処理を単一または組み合わせて施すことで固化させる。
含浸樹脂としては、例えばポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ゴム、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリアミノ酸樹脂、シリコン樹脂、あるいはこれらを変成したものや共重合物を、単一または組み合わせたものが挙げられ、一般的にエラストマーと呼称される性質を備えているものを主体に用いるのが好ましい。繊維質シートに含浸する樹脂量は、含浸目的に応じて適宜設定されるが、通常はシート材としての強度や形態安定性確保のため繊維質シート重量に対して120%以下の範囲である。
シート材を構成する表面樹脂層としては、基材表面全体を覆うように層形成できて、かつ商品が目的とする感性、機能性が付与できる樹脂であれば公知の何れの樹脂を用いた層でもよいが、消費者が商品に求める価格やライフ、また商品生産側が商品に求める生産性から、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂を採用するのが好ましく、特に前記要求同士のバランスからポリウレタン樹脂が最も好ましい。表面樹脂層への着色や艶の調節は、原料樹脂に予め着色剤や艶調節剤を混合する方法、表面樹脂層形成後に着色剤や艶調節剤を塗布したり着色剤や艶調節剤入りの浴中で浸透させたりする方法が挙げられるが、シート材を用いた商品を使用する際の接触、湿潤、及び摩擦による色落ち、色移行や光、熱、及びガスによる変色、退色の可能性を低減し得る方法として前者の方法が好ましい。着色剤としては、耐熱性、耐光性、摩擦堅牢性の点から無機顔料あるいは有機顔料が適しており、光輝性顔料なども使用可能である。
表面樹脂層は、特に鞄の持ち手などのベルト類や帽子や靴などの装飾品がシート材用途である場合には、多孔質構造を有する多孔質樹脂層であるのが好ましく、多孔質構造は同時に型押しや成型などの加工方法により凹凸形状を形成するのにも適している。表面樹脂層を形成する方法には基材上に直接表面樹脂層を形成する方法と、別に製造した表面樹脂層を基材上に貼り合わせる方法とがあり、前者の方法としては基材上に表面樹脂層の原料を流延、固化する方法が代表的な方法であり、後者の方法としては平滑か凹凸形状を有する金型や転写紙などの上に表面樹脂層の原料を流延・固化した後で基材へ貼り合わせる方法が代表的な方法である。前者の方法、後者の方法の何れにおいても、原料を流延させる方法としてはロールコーティング法、スプレーコーティング法、バーコーティング法、ナイフコーティング法などの従来公知の諸コーティング法が挙げられ、流延させる原料の量や粘度、固化させる方法や所望の固化状態などに応じて適宜設定する必要がある。多孔質樹脂層を形成する方法としては、原料に予め微細孔を形成させた状態で流延させる方法と、流延させた後で固化させる過程で微多孔を形成させる方法とが挙げられる。前者の方法としては原料を高速攪拌することで微細な気泡を混在させる方法や中空微粒子を混合させる方法があり、後者の方法としては原料にガス発生により膨張する微粒子を混在させる方法や原料自身の反応によりガスが発生する原料を使用する方法、流延した原料溶液が非溶剤・貧溶剤との接触により固化する過程で溶液中の原料が多孔質構造を形成する方法、流延した原料分散液が乾燥等により固化していく過程で分散液中の原料微粒子が多孔質状に凝集することで多孔質構造を形成する方法があり、使用する原料種類や所望の微多孔形状、微多孔率、あるいは使用する流延方法などにより適宜設定する必要がある。
表面樹脂層の表面には仕上処理剤が付与されているのが好ましく、特に凸部表面に付与されているのが好ましい。付与するのは表面樹脂層に凹凸形状を形成する前でも後でもよいが、凸部表面のみに選択的に仕上処理剤を付与する必要がある場合には、表面樹脂層に凹凸形状を形成した後でグラビアコーティングやスプレーコーティングなどの加工方法で仕上処理剤を付与するか、金型や転写紙などの上に表面樹脂層の原料を流延する前に仕上処理剤を凸部に相当する箇所のみに流延するのが適した方法である。仕上処理剤付与部分への着色方法は、表面樹脂層の着色と同様の方法が適している。 表面樹脂層の表面全体に仕上処理剤を付与し、さらに凸部表面に別の仕上処理剤を付与する必要がある場合には、仕上処理剤が表面全体に付与された凹凸形状を有する表面樹脂層を形成した後で、凸部表面のみに別の仕上処理剤を付与する方法や、転写紙の凹部のみに仕上処理剤を付与し、さらに凹凸全体に別の仕上処理剤を付与したものを転写に用いる方法がある。
仕上処理剤としては、着色以外にも種々の改質をするための処理剤や機能性を付与するための処理剤が何れも使用可能であり、例えば、滑性、ぬめり性、粘着性などの触感を改質する仕上処理剤、撥水・撥油性、吸水・吸油性、防臭・防黴性、抗菌・抗酸化性などの機能性を付与する処理剤が挙げられる。
基材や表面樹脂層の厚さは、目的とする用途において制限される範囲で適宜設定する必要があるが、その一方でシート材の製造工程上の制約もあるので、基材と表面樹脂層とを合わせたシート材全体の厚さとしては0.5〜3mm程度の範囲で設定するのが通常である。表面樹脂層の厚さは、凹凸形状固定のため凹凸の高低差Hの50%以上であり、好ましくは80%以上、より好ましくは100%以上である。 また、基材と表面樹脂層とを合わせた厚さは、シート材の強度や形態安定性を確保するため、凹凸形状の高低差Hの120%以上であり、好ましくは150%以上である。基材や表面樹脂層の厚さが厚くなればなるほど、シート材表面を内側にして屈曲させた際の挫屈がより顕著に発生し易いので、本発明の凹凸形状による効果もより顕著である。
シート材の触感や機械物性を改質する目的で、シート材に柔軟剤などの触感改質効果のある処理剤を浸透させたり、シート材を揉み機により乾燥状態で処理したり染色機により湿潤状態で処理したりするのも好ましい。このような処理を行った場合にはシート材表面の凹凸形状が変化することが多いので、凹凸形状が安定したシート材を製造するためには予め試作するなどして変化後の凹凸形状を予測した上で処理前の凹凸形状を設計する必要がある。
以下実施例により、本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、実施例中の部及び%は、断りがない限りは質量に関するものである。
凸部巾W、凹部巾D、凹凸の高低差Hは、シート材の断面や表面を走査型電子顕微鏡により50倍以上の倍率にて観察し、所望の箇所を撮影した画像上に前記方法に従って作図して得られる長さから求めた値である。シート材の平均値としての凸部巾W、凹部巾D、凹凸の高低差Hを求める際には、少なくとも任意の箇所10点について凸部巾W、凹部巾D、凹凸の高低差Hを測定した上で、それらを算術平均する必要があり、測定値に誤差を生じる恐れがある場合には20点以上の測定値を平均するのが好ましい。なお、凸部巾の最大値Wmaxと最小値Wminは、任意の凸部における測定値の最大値、最小値であるが、シート材表面に存在する凸部形状、サイズが種々ある場合には、少なくとも10点の凸部における最大値、最小値をそれぞれ算術平均する必要があり、測定値に誤差を生じる恐れがある場合には20点以上の測定値を平均するのが好ましい。
実施例1
ナイロン6ペレット、低密度ポリエチレンペレットを質量比50:50にて混合した上で溶融紡糸することで得た、低密度ポリエチレンを分散媒成分(海成分)としナイロン6を分散成分(島成分)とする海島型混合紡糸繊維を、温水浴中で延伸し、機械的に捲縮を付与し、51mmの長さにてカットすることで、5.0dtexのステープルを得た。 このステープルをカードにて解繊し、クロスラッパー方式により積層ウェブを形成した後、バーブが9箇所あるフェルト針を980本/cm2の密度で突き刺すニードルパンチング処理を行って目付550g/m2の不織布を得た。この不織布にポリエステル系ポリウレタンのジメチルホルムアミド(以下、DMFと略す)溶液を含浸した後、DMFと水の混合浴中に浸漬することでポリウレタンを多孔質状に固化(湿式凝固)させた。不織布構造内に残存するDMFを湯洗により除去し、トルエン浴中で海島型混合紡糸繊維からポリエチレンを溶解抽出することで、ナイロン6極細繊維束の不織布とその不織布構造内に多孔質状で含浸されたポリエステル系ポリウレタンからなる厚さ約1.5mmの繊維質シートを得た。得られた繊維質シートにおけるナイロン6とポリウレタンの質量比率は、55:45であった。
繊維質シートを厚さ方向に二分割し、分割により形成した面とは反対側の面を基材表面として、ポリカーボネート系ポリウレタンのDMF溶液に茶色に着色する顔料を添加したものをナイフコーティング法により塗布した後、DMFと水の混合浴中に浸漬してポリウレタンを湿式凝固させることで、表面が平滑で多孔質構造を有する70g/m2の表面樹脂層を基材表面に形成することで厚さ0.80mm程度のシート材中間体を得た。得られた中間体の断面を観察すると、基材の表面樹脂層を形成するポリウレタンの浸透によって基材と表面樹脂層との界面を明確に判断することはできないが、基材側から凡そ0.72mm程度の箇所より上に茶色の表面樹脂層が形成されていて、色が変化する箇所の近傍では基材側と表面樹脂層側とで多孔質構造の差異も観察された。
ポリカーボネート系ポリウレタンのDMF溶液にオレンジ色に着色する顔料を添加したものを第1の仕上処理剤としてグラビアコーティング法によりシート材中間体の表面樹脂層上に塗布することで表面全体をオレンジ色に着色した後、凹凸形状を有するエンボスロールを表面温度170℃にて圧着させて型押し加工を行うことで凹凸形状を形成した。次いで、第1の仕上処理剤と同じポリカーボネート系ポリウレタンのDMF溶液にオレンジ色に着色する顔料の代わりにシリカ微粉末を添加したものを第2の仕上処理剤としてグラビアコーティング法により凹凸形状の凸部のみに塗布することで凸部表面の艶を変えることで本発明のシート材を得た。
シート材の表面側に形成された凹凸形状は、表面に垂直な方向から観察した凸部形状が凡そ円形か円形の一部が潰れた形状であり連続する凹部に囲まれていて、凸部巾Wが2.1mm、凹部巾Dが0.43mm、凹凸の高低差Hは0.24mmであって、D/W=0.20、D/H=1.8、D×H=0.10mm2、またW/H=8.8という関係性を満たすようなサイズの形状であり、シート材表面の面積に占める凸部面積の総和の割合は65%であった。なお、シート材表面を垂直な方向から観察した凸部形状は前記の通り凡そ円形に揃った形状であり、僅かに例外の形状はあるものの、凸部のWmax/Wminは1.1であった。
シート材を任意の方向に20cm×5cm程度の大きさに切り出したものを、リュックサックの肩ベルトにおいて所持者の肩周辺に接する部分の内側面用パーツに用い、肩ベルトの当該部分に縫製により固定した。肩ベルトの当該パーツ固定部分を曲率半径5cm程度に曲げたりさらに肩ベルトを捻ったりしたが、当該パーツ表面は大きな挫屈シワが入ることなく肩ベルトの曲がり形状に上手く沿った表面状態であった。次いで、トータルで3kg程度になるよう重りを入れたリュックサックを、当該パーツ固定部分が曲率半径5cm程度に曲がるような体型の人が背負って2時間程度歩き回ったときの肩ベルトのずれを評価したところ、ほとんどズレが生じることなく快適な使用感であった。
比較例1
実施例1において、型押し加工を変更する以外は同様にして表面全体に凹凸が形成されたシート材を得た。シート材の表面側に形成された凹凸形状は、表面に垂直な方向から観察した凸部形状が対角線において凡そ4.0mmの正方形であり連続する凹部に囲まれていて、凸部巾Wが3.4mm、凹部巾Dが0.53mm、凹凸の高低差Hは0.33mmであって、D/W=0.16、D/H=1.6、D×H=0.17mm2、またW/H=10.3という関係性を満たすようなサイズの形状であり、シート材表面の面積に占める凸部面積の総和の割合は72%であった。なお、シート材表面を垂直な方向から観察した凸部形状は前記の通り正方形にてほぼ揃った形状であり、凸部のWmax/Wminは凡そ1.4であった。
シート材を任意の方向に20cm×5cm程度の大きさに切り出したものを、実施例1と同様の方法にてリュックサックの肩ベルトに固定した。肩ベルトの当該パーツ固定部分を曲率半径5cm程度に曲げたところ、当該パーツ表面の凸部が配置された箇所に表面樹脂層に納まらずに基材へと深く食い込むような大きな挫屈シワが入っており、さらに肩ベルトを捻ったところ曲がり形状からの局所的な盛り上がりや挫屈が隣接する複数の凸部に渡って連続した状態で発生するような表面状態であった。次いで、トータルで3kg程度になるよう重りを入れたリュックサックを用い実施例1と同様に肩ベルトのずれを評価したところ、歩き回っている間に数mm程度のズレが生じたために肩ベルトの位置を再度調節するなどの所作が必要であり、市販されるリュックサックとの目立った差は感じられないような使用感であった。
比較例2
実施例1において、型押し加工を変更する以外は同様にして表面全体に凹凸が形成されたシート材を得た。シート材の表面側に形成された凹凸形状は、表面に垂直な方向から観察した凸部形状が凡そ円形か円形の一部が潰れた形状であり連続する凹部に囲まれていて、凸部巾Wが2.5mm、凹部巾Dが0.29mm、凹凸の高低差Hは0.21mmであって、D/W=0.12、D/H=1.4、D×H=0.06mm2、またW/H=11.9という関係性を満たすようなサイズの形状であり、シート材表面の面積に占める凸部面積の総和の割合は76%であった。なお、シート材表面を垂直な方向から観察した凸部形状は全体的にみると前記の通り凡そ円形に揃った形状であるとはいえ例外的な形状が実施例1に比べると多めであり、凸部のWmax/Wminは1.2であった。
シート材を任意の方向に20cm×5cm程度の大きさに切り出したものを、実施例1と同様の方法にてリュックサックの肩ベルトに固定した。肩ベルトの当該パーツ固定部分を曲率半径5cm程度に曲げたところ、当該パーツ表面の凸部が配置された箇所に比較例1よりは小さいが表面樹脂層には納まらずに基材へと食い込むような挫屈シワが数多く入っており、さらに肩ベルトを捻ったところ曲がり形状からの局所的な挫屈が凸部、凹部を問わずに発生するような表面状態であった。次いで、トータルで3kg程度になるよう重りを入れたリュックサックを用い実施例1と同様に肩ベルトのずれを評価したところ、歩き回っている間に数mm程度のズレが生じたために肩ベルトの位置を再度調節するなどの所作が必要であり、比較例1同様に市販されるリュックサックとの目立った差は感じられないような使用感であった。
比較例3
実施例1において、型押し加工を変更する以外は同様にして、表面全体に規則的に配列した凹凸が形成されたシート材を得た。 シート材の表面側に形成された凹凸形状は、表面に垂直な方向から観察した凹部形状が凡そ円形であり連続する凸部に囲まれていて、隣接する凹部同士の間隔として測定した凸部巾W’が1.7mm、円形状の凹部の直径として測定した凹部巾D’が2.8mm、凹凸の高低差H’は0.4mmからなるサイズの形状で、表面に垂直な方向から見たときほぼ同じ大きさの凹部が互いに正三角形の頂点に配置されたような位置関係にあり、シート材表面の面積に占める凸部面積の総和の割合は65%であった。
シート材を任意の方向に20cm×5cm程度の大きさに切り出したものを、実施例1と同様の方法にてリュックサックの肩ベルトに固定した。肩ベルトの当該パーツ固定部分を曲率半径5cm程度に曲げたところ、当該パーツ表面には箇所を問わず比較例1より大きめの挫屈シワが入っており、さらに肩ベルトを捻ったところ曲がり形状からの大きな挫屈が別の箇所に発生するような表面状態であった。次いで、トータルで3kg程度になるよう重りを入れたリュックサックを用い実施例1と同様に肩ベルトのずれを評価したところ、歩き回っている間に数mmから1cm強程度のズレが生じたために肩ベルトの位置を再度調節するなどの所作が必要であり、比較例1同様に市販されるリュックサックとの目立った差は感じられないような使用感であった。
比較例4
実施例1において、型押し加工を変更する以外は同様にして表面全体に凹凸が形成されたシート材を得た。シート材の表面側に形成された凹凸形状は、表面に垂直な方向から観察した凸部形状は辺の長さや大きさそのものが一定しない多角形状の凸部が連続する凹部に囲まれているいわゆる天然皮革表面を模した形状であり、凸部巾Wが1.3mm、凹部巾Dが0.22mm、凹凸の高低差Hは0.09mmであって、D/W=0.17、D/H=2.4、D×H=0.02mm2、またW/H=14.4という関係性を満たすようなサイズの形状であった。
シート材を任意の方向に20cm×5cm程度の大きさに切り出したものを、実施例1と同様の方法にてリュックサックの肩ベルトに固定した。肩ベルトの当該パーツ固定部分を曲率半径5cm程度に曲げたところ、当該パーツ表面には箇所を問わず比較例1より大きめの挫屈シワが入っており、さらに肩ベルトを捻ったところ曲がり形状からの大きな挫屈が別の箇所に発生するような表面状態であった。次いで、トータルで3kg程度になるよう重りを入れたリュックサックを用い実施例1と同様に肩ベルトのずれを評価したところ、歩き回っている間に数mm程度のズレが生じたために肩ベルトの位置を再度調節するなどの所作が必要であり、比較例1同様に市販されるリュックサックとの目立った差は感じられないような使用感であった。
以上、実施例、比較例のシートについての寸法形状、リュックサック肩ベルトでの評価結果をまとめて表1に示す。
Figure 0005706735
本発明のシート材は、所持、装着等をする人とその物品との間で一時的な固定を受け持つ部分などのパーツの裏側(内側)に使用される場合において、シート材表面側を内側にして屈曲させた状態で使用した場合でも、フィット性や滑り止め性が大きく損なわれず、また見た目や摩耗し難さにおいても優れた性能を有するので、ハンドバッグの持ち手、ウエストポーチの腰巻きベルト、ショルダーバッグの肩掛けベルトなどの鞄を所持する人が直接触れるベルト類や、帽子の額当て部分、短靴やブーツ、手袋の履き口部分や踝部分などの装飾品を装着する人が直接触れる部分、あるいは鞄や装飾品以外にも乗員をシートに固定するベルトなどに有効に利用できる。
1 基材
2 表面樹脂層
3 凸部
4 凹部
10 シート材
W 凸部巾
D 凹部巾
H 凹凸の高低差

Claims (8)

  1. 基材および表面樹脂層からなり、表面全体に凹凸が形成されたシート材において、前記凹凸は凸部が連続する凹部に囲まれた形状であり、かつ凸部巾Wは1.5〜3.0mmの範囲であり、かつ凹部巾Dは凸部巾Wに対して0.15≦D/W≦1.0であり、前記凹凸の高低差Hが2.5mm以下を満たすことを特徴とする、シート材。
  2. シート材表面の面積に占める凸部面積の総和の割合が55〜80%を満たす請求項1に記載のシート材。
  3. 凹凸の高低差Hが凹部巾Dに対してD/H≧1.5、および0.05mm2≦D×H≦0.15mm2を同時に満たす請求項1に記載のシート材。
  4. 凸部巾Wと凹凸の高低差Hとが7≦W/H≦10を満たす請求項1に記載のシート材。
  5. 各凸部における凸部巾の最大値Wmaxと最小値Wminとが1≦Wmax/Wmin≦1.3を満たす請求項1に記載のシート材。
  6. 表面樹脂層がポリウレタン樹脂からなり、かつ多孔質構造を有する請求項1〜のいずれかに記載のシート材。
  7. 表面樹脂層の少なくとも凸部表面に仕上処理剤が付与されている請求項に記載のシート材。
  8. 請求項1に記載のシート材の表面側を内側にして他と接触する箇所に用いた製品。
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