JP5706735B2 - フィット性、滑り止め性に優れたシート材 - Google Patents
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Description
表側素材は、鞄や装飾品などの商品を購入する段階での印象の多くを決定付ける素材であり、消費者が商品購入を決めるための短い時間にも商品価値を発揮し得ることに大きなウエイトを持たせた種々の改良がなされてきた。
一方、裏側素材は購入後の使用感という消費者にとっての長期的な商品価値において小さくはないウエイトを占めることになる素材であり、使用感に影響を与える因子を改良するためにパーツ形状や表側素材の改良、芯材の改良だけでなく、表側素材とは異なるシート材を裏側素材として使用することで、裏側素材に他とは独立した改良を行うことも多くある。
裏側素材が使用感に直接的に影響を与える因子としては、見た目や心地良い感触などの感性、滑り難さや磨耗し難さなどの機能性などが挙げられ、他素材とは独立してシート材の全体構造や表面などに種々の改良を施すこともなされてきた。
ランドセルに限らず所持したり装着したりする商品の重量は少しでも軽く設計するのが基本であり、複数パーツを重ねて縫合一体化して製造される肩ベルトにおいては、芯材だけでなく表面側や裏面側に用いる素材にも形態保持性、強度などを優先した結果、素材間や素材内での伸び等の形態変化バランスのミスマッチ解消は見過ごされ、表面を内側に屈曲させた状態で使用される裏面側素材の表面に大きな挫屈シワが生じた状態をいわば当たり前の光景として目にする。
また、本発明とは目的とする製品用途は異なるが、床面の耐汚染性と防滑性を兼ね備えた床材として、繊維シートを内蔵する合成樹脂層、着色合成樹脂粒を含む化粧層、透明または半透明の耐汚染性合成樹脂層が順次積層され、耐汚染性合成樹脂層から化粧層に達する凹凸を有するような防滑性床材の提案もなされている(特許文献4参照)。
これらシート材は、目的とする感性、機能性が得られるよう表面形状や組成を改質したに過ぎず、芯材など他素材と組み合わせたりした上で、あるいは当該シート材単独であっても、表面を内側に屈曲させた状態で使用した場合に表面に生じる挫屈シワを解消し得るものではない。
しかし、シート材の感性自体が大きく損なわれるばかりか、むしろ突起を形成した箇所と突起の無い箇所とで伸びのミスマッチを生じて挫屈シワが拡大してしまう可能性も考えられるなど根本的な解決には程遠いものである。
このシート状物は、ボールの表面素材など表面を外側にして用いるものであり、例えば空気を抜いて球形状から緩むだけでも連続する凸部表面を主体に半球状の凹部すなわちディンプル形状にかけて多数の深い挫屈シワが入るものであり、本発明の目的においては不適なものである。
このシートは、クッション層を厚くとるなどして厚さ方向の20%圧縮応力を低くしたシートであり、表面を内側にして屈曲させるとやはり非常に大きな挫屈シワが入る上、一旦挫屈シワの癖がついたシートはそのクッション層が仇となって僅かに屈曲させただけでも同じ箇所が大きく挫屈するものである。
特許文献9には、凸部はグリッピー性を増加させるためには独立していることが好ましく、独立した凸部頂上部の平均面積は0.5〜7mm2、即ち円錐台形状だと頂上部直径の大きさで0.8〜3mmであり、また凹凸部の高低差が0.1mm以上であるのが好ましい凸部形状であることが開示され、さらにアメリカンフットボールやハンドボールなど手で把持するボール用途であれば凸部頂上部の合計面積がシート面積の20〜70%の割合であることが好ましいといったことも開示されている。すなわち、独立した個々の凸部形状については詳しいが、それを取り囲む凹部形状については凸部頂上部の合計面積がシート面積の20〜70%を満たす範囲でどのような形状も採用可能であって、例えばアメリカンフットボールの空気が抜けた際に凹凸表面を内側に屈曲させるどころかフラットに近い状態に戻るだけでも発生するような大きな挫屈シワの解消についてすら何ら示唆するものではない。
該エンボスロール形状により形成された凸凹形状について十分な記載はないが、仮に頂上部直径が1.64mm、裾部直径2.3mmとすると、本発明の測定法における凸部巾Wは1.97mm、24個/cm2の凸部が最密充填されたものであるとすると凹部巾Dは0.22mmとなり、D/W=0.11で本発明の範囲を外れる形状であるし、さらに、D/H=0.69、D×H=0.07、W/H=6.2であって、D×H以外は本発明の好ましい範囲を外れる形状であって、特許文献9と同様に例えばバスケットボールの空気が抜けた際に凹凸表面を内側に屈曲させるどころかフラットに近い状態に戻るだけでも発生するような大きな挫屈シワの解消についてすら何ら示唆するものではない。
(1)基材および表面樹脂層からなり、表面全体に凹凸が形成されたシート材において、前記凹凸は凸部が連続する凹部に囲まれた形状であり、かつ凸部巾Wは1.5〜3.0mmの範囲であり、かつ凹部巾Dは凸部巾Wに対して0.15≦D/W≦1.0を満たすことを特徴とする、フィット性、滑り止め性に優れたシート材。
(2)凹凸の高低差Hが凹部巾Dに対してD/H≧1.5、および 0.05mm2≦D×H≦0.15mm2を同時に満たす前記(1)に記載のシート材。
(3)凸部巾Wと凹凸の高低差Hとが7≦W/H≦10を満たす前記(1)のシート材。
(4)各凸部における凸部巾の最大値Wmaxと最小値Wminとが1≦Wmax/Wmin≦1.3を満たす前記(1)のシート材。
(5)表面樹脂層がポリウレタン樹脂からなり、かつ多孔質構造を有する前記(1)〜(4)のいずれかのシート材。
(6)表面樹脂層の少なくとも凸部表面に仕上処理剤が付与されている前記(5)のシート材。
(7)前記(1)のシート材の表面側を内側にして他と接触する箇所に用いた製品。
本発明のシート材10は、基材1及び表面樹脂層2からなり、表面樹脂層2には凸部3が連続する凹部4に囲まれた形状の凹凸が表面全体に形成されており、その凹凸のサイズは、凸部巾及び凹部巾を図1に示す部位のW及びDとするとき、凸部巾Wが1.5〜3.0mmで、かつ凹部巾Dは凸部巾Wに対して、D/Wが0.15倍以上〜1.0倍以下の範囲であることを満足している。
なお、凸部巾Wは図1に示すように、シート材を表面に対して垂直にカットした際に観察される凸部断面において凹凸高低差Hの1/2の箇所での測定長であり、任意のカット方向における凸部巾とは、その方向において最大値となる凸部巾を測定したものである。前記したように個々の凸部形状は種々の形状が採用可能だが、シート材の面内において極端な異方性を有しない方が、商品を使用する際にシート材を種々の方向に屈曲させることがあっても発明の効果を安定的に発揮できる点や、シート材から商品を製造する際の生産効率に優れる点などにおいて有利であり、各凸部においてカット方向を変更することにより測定可能な凸部巾の最大値Wmaxと最小値Wminとの比が1≦Wmax/Wmin≦1.3を満たすのが好ましい。
なお、凹部巾Dも図1に示すように凹凸高低差Hの1/2の箇所での測定長である。
図2は、本発明のシート10が表面樹脂層2を内側にして屈曲された際に、凸部3及び凹部4が正常に機能を発現している状態を模式的に示している。
D/Wが0.15未満だと、表面樹脂層2側が内側で凹になるようにシート材を屈曲させた際に、屈曲により生じる歪を凹部4の変形だけでは吸収しきれなくなり、また近接し過ぎた隣り合う凸部3同士が部分的に接触して凸部3に変形が生じてしまう頻度が高くなり、さらにはシート材10の長さに対する凹部比率が少な過ぎることで凸部にも表面側を凹に屈曲させる歪が生じ凸部にもシワ発生の傾向が強まるなどによって、屈曲使用することで凹凸形状に大きな挫屈シワの発生が見られるようになり、図2のようにはならず、外観品位が悪化するばかりかフィット性や滑り止め性をも損なう結果となる。また、D/Wが1.0を超えると、表面側が凹になるようにシート材を屈曲させた際に凹凸形状への大きな挫屈シワの発生傾向は弱まるものの、シート材長さに対する凸部比率が少な過ぎるので、シート材に本来必要とされるフィット性や滑り止め性などの機能性が大きく損なわれる結果となる。
凹部巾は、シート材表面を垂直方向(厚み方向)から観察した凸部形状における重心位置を隣り合って配置する各凸部同士について結んだ線分上を垂直方向にカットした際に観察される凹部断面において凹凸高低差の1/2の箇所を測定した測定長である。なお、ここでいう凸部形状は、凹凸高低差の1/2の箇所にて囲まれる凸部の形状のことである。
D/Hが1.5未満だと、表面側が凹になるようにシート材を屈曲させた際に隣り合う凸部同士が部分的に接触する頻度が高いので凸部に変形が生じ凹凸形状に大きな挫屈シワが発生する傾向が強くなり、また凹凸形状を付与する加工方法として前述した型押しなどの加工方法を用いている場合には、表面樹脂層や基材層に逆形状を転写させたとき厚さ方向にかけた圧力による変形で表面樹脂層や基材層に生じた歪が大きいのでシート材を屈曲させた際の挫屈シワの発生源となり易いなど、挫屈シワの発生による外観品位の悪化など、発明の効果が損なわれる傾向がある。
また、D×Hが0.05mm2を下回ると、凹凸形状において凹部が形成する空間が小さすぎるので、表面側が凹になるようにシート材を屈曲させた際に、前述したような凹凸形状による大きな挫屈シワ発生の抑制効果が不十分であり、D×Hが0.15mm2を上回ると、凹凸形状において凹部が形成する空間が大きすぎるので挫屈シワ発生の抑制効果はあるもののシート材に本来必要とされるフィット性や滑り止め性などの機能性が不十分である。
シート材表面全体について測定される凹凸高低差Hが何れもこの範囲に含まれるような高低差であるのが好ましいが、発明の効果を損なわない範囲であれば、前記範囲を外れた凹凸高低差の箇所が混在してもよい。凹凸高低差は、シート材を表面に対して垂直にカットした際に観察される凸部断面においてシート材表面に平行に引いた2本の線分A、Bの間隔を測定したものであり、線分Aとは凸部に隣接する凹部2箇所のうちより低い(基材により近い)凹部底面を通る線分、線分Bとは前記線分Aに平行かつ最も高い(基材から離れた)凸部頂面を通る線分であり、任意のカット方向における凹凸高低差とは、その方向において最大値となる凹凸高低差を測定したものである。
W/Hの値が前記範囲を外れると直ちに本発明の効果が失われるということはないが、W/Hが7未満だと、凸部形状が尖っているので本発明の機能性を得る上では個々の凸部が小さすぎるなどで好ましくないか、あるいは凹部が深いので本発明の挫屈シワ抑制効果を得る上では隣接する凸部同士が接触し易いなどで好ましくないといった傾向があり、また、W/Hが10を超えると、凹部の深さに対して凸部が広くて扁平的すぎるので、表面側が凹になるよう屈曲させた際に凸部自体が挫屈シワの発生点となり易く本発明の挫屈シワ抑制効果を得る上では好ましくない傾向がある。
含浸後の樹脂は、さらに加熱、冷却、水やスチームなどによる湿潤、紫外線や遠赤外線などの光照射、ガス接触など、環境変化を利用した処理を単一または組み合わせて施すことで固化させる。
なお、実施例中の部及び%は、断りがない限りは質量に関するものである。
凸部巾W、凹部巾D、凹凸の高低差Hは、シート材の断面や表面を走査型電子顕微鏡により50倍以上の倍率にて観察し、所望の箇所を撮影した画像上に前記方法に従って作図して得られる長さから求めた値である。シート材の平均値としての凸部巾W、凹部巾D、凹凸の高低差Hを求める際には、少なくとも任意の箇所10点について凸部巾W、凹部巾D、凹凸の高低差Hを測定した上で、それらを算術平均する必要があり、測定値に誤差を生じる恐れがある場合には20点以上の測定値を平均するのが好ましい。なお、凸部巾の最大値Wmaxと最小値Wminは、任意の凸部における測定値の最大値、最小値であるが、シート材表面に存在する凸部形状、サイズが種々ある場合には、少なくとも10点の凸部における最大値、最小値をそれぞれ算術平均する必要があり、測定値に誤差を生じる恐れがある場合には20点以上の測定値を平均するのが好ましい。
ナイロン6ペレット、低密度ポリエチレンペレットを質量比50:50にて混合した上で溶融紡糸することで得た、低密度ポリエチレンを分散媒成分(海成分)としナイロン6を分散成分(島成分)とする海島型混合紡糸繊維を、温水浴中で延伸し、機械的に捲縮を付与し、51mmの長さにてカットすることで、5.0dtexのステープルを得た。 このステープルをカードにて解繊し、クロスラッパー方式により積層ウェブを形成した後、バーブが9箇所あるフェルト針を980本/cm2の密度で突き刺すニードルパンチング処理を行って目付550g/m2の不織布を得た。この不織布にポリエステル系ポリウレタンのジメチルホルムアミド(以下、DMFと略す)溶液を含浸した後、DMFと水の混合浴中に浸漬することでポリウレタンを多孔質状に固化(湿式凝固)させた。不織布構造内に残存するDMFを湯洗により除去し、トルエン浴中で海島型混合紡糸繊維からポリエチレンを溶解抽出することで、ナイロン6極細繊維束の不織布とその不織布構造内に多孔質状で含浸されたポリエステル系ポリウレタンからなる厚さ約1.5mmの繊維質シートを得た。得られた繊維質シートにおけるナイロン6とポリウレタンの質量比率は、55:45であった。
実施例1において、型押し加工を変更する以外は同様にして表面全体に凹凸が形成されたシート材を得た。シート材の表面側に形成された凹凸形状は、表面に垂直な方向から観察した凸部形状が対角線において凡そ4.0mmの正方形であり連続する凹部に囲まれていて、凸部巾Wが3.4mm、凹部巾Dが0.53mm、凹凸の高低差Hは0.33mmであって、D/W=0.16、D/H=1.6、D×H=0.17mm2、またW/H=10.3という関係性を満たすようなサイズの形状であり、シート材表面の面積に占める凸部面積の総和の割合は72%であった。なお、シート材表面を垂直な方向から観察した凸部形状は前記の通り正方形にてほぼ揃った形状であり、凸部のWmax/Wminは凡そ1.4であった。
実施例1において、型押し加工を変更する以外は同様にして表面全体に凹凸が形成されたシート材を得た。シート材の表面側に形成された凹凸形状は、表面に垂直な方向から観察した凸部形状が凡そ円形か円形の一部が潰れた形状であり連続する凹部に囲まれていて、凸部巾Wが2.5mm、凹部巾Dが0.29mm、凹凸の高低差Hは0.21mmであって、D/W=0.12、D/H=1.4、D×H=0.06mm2、またW/H=11.9という関係性を満たすようなサイズの形状であり、シート材表面の面積に占める凸部面積の総和の割合は76%であった。なお、シート材表面を垂直な方向から観察した凸部形状は全体的にみると前記の通り凡そ円形に揃った形状であるとはいえ例外的な形状が実施例1に比べると多めであり、凸部のWmax/Wminは1.2であった。
実施例1において、型押し加工を変更する以外は同様にして、表面全体に規則的に配列した凹凸が形成されたシート材を得た。 シート材の表面側に形成された凹凸形状は、表面に垂直な方向から観察した凹部形状が凡そ円形であり連続する凸部に囲まれていて、隣接する凹部同士の間隔として測定した凸部巾W’が1.7mm、円形状の凹部の直径として測定した凹部巾D’が2.8mm、凹凸の高低差H’は0.4mmからなるサイズの形状で、表面に垂直な方向から見たときほぼ同じ大きさの凹部が互いに正三角形の頂点に配置されたような位置関係にあり、シート材表面の面積に占める凸部面積の総和の割合は65%であった。
実施例1において、型押し加工を変更する以外は同様にして表面全体に凹凸が形成されたシート材を得た。シート材の表面側に形成された凹凸形状は、表面に垂直な方向から観察した凸部形状は辺の長さや大きさそのものが一定しない多角形状の凸部が連続する凹部に囲まれているいわゆる天然皮革表面を模した形状であり、凸部巾Wが1.3mm、凹部巾Dが0.22mm、凹凸の高低差Hは0.09mmであって、D/W=0.17、D/H=2.4、D×H=0.02mm2、またW/H=14.4という関係性を満たすようなサイズの形状であった。
以上、実施例、比較例のシートについての寸法形状、リュックサック肩ベルトでの評価結果をまとめて表1に示す。
2 表面樹脂層
3 凸部
4 凹部
10 シート材
W 凸部巾
D 凹部巾
H 凹凸の高低差
Claims (8)
- 基材および表面樹脂層からなり、表面全体に凹凸が形成されたシート材において、前記凹凸は凸部が連続する凹部に囲まれた形状であり、かつ凸部巾Wは1.5〜3.0mmの範囲であり、かつ凹部巾Dは凸部巾Wに対して0.15≦D/W≦1.0であり、前記凹凸の高低差Hが2.5mm以下を満たすことを特徴とする、シート材。
- シート材表面の面積に占める凸部面積の総和の割合が55〜80%を満たす請求項1に記載のシート材。
- 凹凸の高低差Hが凹部巾Dに対してD/H≧1.5、および0.05mm2≦D×H≦0.15mm2を同時に満たす請求項1に記載のシート材。
- 凸部巾Wと凹凸の高低差Hとが7≦W/H≦10を満たす請求項1に記載のシート材。
- 各凸部における凸部巾の最大値Wmaxと最小値Wminとが1≦Wmax/Wmin≦1.3を満たす請求項1に記載のシート材。
- 表面樹脂層がポリウレタン樹脂からなり、かつ多孔質構造を有する請求項1〜5のいずれかに記載のシート材。
- 表面樹脂層の少なくとも凸部表面に仕上処理剤が付与されている請求項6に記載のシート材。
- 請求項1に記載のシート材の表面側を内側にして他と接触する箇所に用いた製品。
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