JP7028412B2 - 樹脂層付人工皮革及び靴 - Google Patents

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Description

本発明は、濃色に着色された人工皮革基材を含む樹脂層付人工皮革及び靴に関する。
繊維基材を含む人工皮革基材は、靴の甲材としてゴム製や合成樹脂製のアウトソールと一体化されたり、カーシート,雑貨製品等の表面部材として異なる素材からなる部材に接着剤で貼り合わされて一体化されたりして用いられる。また、携帯電話などのモバイル機器,家電製品,サニタリー製品の筐体などの外装部材や、車両,船舶,航空機等の内装部材、建材,家具等の外装部材等の加飾成形体の表面素材として、人工皮革基材の表面に繊維立毛を形成させた立毛調人工皮革にしたり、フィルム,ウレタンフォーム,硬質プラスチックプレート等の樹脂層を一体化した樹脂層付人工皮革にしたりすることにより、独特の外観意匠や触感や風合いを付与して用いられる。
一般的に人工皮革基材は、不織布とポリウレタン等の高分子弾性体とを含む繊維基材を、着色して製造される。人工皮革基材に含まれる繊維は、耐熱性や成形性に優れる点からポリエステル繊維が好ましく用いられる。ポリエステル繊維を含む人工皮革基材を染色する染料は、発色性に優れる点から分散染料が広く用いられている。しかしながら、分散染料で染色した人工皮革基材には、分散染料が他の部材を汚染する問題があり、環境温度が高い場合や部材に掛かる圧力が高い場合、あるいは接着剤等に有機溶剤が含まれる場合などに汚染が顕著なことがあった。
例えば、下記特許文献1は、カチオン染料で染色できるポリエステル極細繊維とエラストマー状マトリックス、およびUV安定剤組成物を含む極細繊維起毛不織布を開示する。また、下記特許文献2は、合成皮革に関する技術であるが、ダブルラッセル地の表面に樹脂層が形成されてなる合成皮革であって;該ダブルラッセル地が表編地、裏編地及びそれらを繋ぐパイル層からなり、該表編地を構成する繊維がカチオン染料で染色されたポリエステル繊維であり、かつ該表編地側に前記樹脂層が形成されてなる合成皮革を開示し、ポリエステル繊維として、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするグリコール成分からなるポリエステルからなり、該ジカルボン酸成分に下記式(III):
Figure 0007028412000001
[式(III)中、Xは、金属イオン、4級ホスホニウムイオン又は4級アンモニウムイオンを表す。]で表される成分が含まれる合成皮革を開示する。
また、例えば、下記特許文献3は、消臭化処理が施されてなる消臭性布帛であって、共重合成分として、酸成分中にスルホイソフタル酸の金属塩(A)及びスルホイソフタル酸の4級ホスホニウム塩又は4級アンモニウム塩(B)を3.0≦A+B≦5.0(モル%)、0.2≦B/(A+B)≦0.7になるように含有する共重合ポリエステル繊維aを含む、カチオン染料で染色された消臭性布帛を開示する。
特開2007-16378号公報 特開2014-29050号公報 特開2010-242240号公報
従来、ポリエステル繊維を含む人工皮革基材に濃色の樹脂層を積層した銀付調人工皮革においては、樹脂層で覆われた人工皮革基材の色が表面側からは視認されないため、人工皮革基材を着色する必要がなかった。また、分散染料で染色したスエード調やヌバック調等の立毛調人工皮革を靴の甲材としてゴム製や合成樹脂製のアウトソールと一体化する場合は、立毛調人工皮革を染色する染料の量を減らして淡色にしたり、着色に顔料を用いた立毛調人工皮革を使用したり、アウトソールを濃色に着色したりするなど、立毛調人工皮革から移行する分散染料によるアウトソールの汚染を目立たないようにするための靴デザイン上の制限があった。
しかし、近年の顧客が求めるデザインの多様化に応えるために、濃色の人工皮革に白色や淡色の樹脂層を組み合わせた樹脂層付人工皮革の需要がある。また、白色や淡色のアウトソールを組み合わせる靴の甲材に、濃色に着色した立毛調人工皮革の需要もある。このような用途では、人工皮革基材から白色や淡色の樹脂層やアウトソールに分散染料が移行して、それらを汚染させることがあった。
また、別の用途として、樹脂成形体の表面に銀付調人工皮革を一体化した加飾成形体においては、人工皮革基材が濃色の樹脂層で覆われるので人工皮革基材の色は表面側からは視認されない。しかし、開口部を有するなどの加飾成形体の形状によっては、加飾用シートの断面が露出する。また、加飾成形体の端面部において加飾用シート端面に漉き加工などの後処理をしない場合にも、加飾用シートの断面が露出する。このような加飾用シート断面が露出する形状の加飾成形体では、開口部の断面や端面において意匠性が損なわれないようにするため、人工皮革基材を着色した樹脂層付人工皮革の需要があり、人工皮革基材を染色した分散染料による樹脂層や樹脂成形体の汚染が問題であった。
本発明は、人工皮革基材または立毛調人工皮革と、樹脂層またはアウトソールと、の明度差ΔL * が10以上であるコントラストの高い色の変化を有する、意匠性の外観に優れた樹脂層付人工皮革または靴において、明度L * 値>50である、白色や淡色の樹脂層またはアウトソールと、明度L * 値≦50の濃色に着色された人工皮革基材または立毛調人工皮革とを一体化しても、樹脂層またはアウトソールが染料で汚染されにくい、樹脂層付人工皮革又は靴を提供することを目的とする。
本発明の一局面は、明度L*値≦50の表面を有し、カチオン染料可染性ポリエステル繊維の繊維布帛と繊維布帛に付与された高分子弾性体とを含む繊維基材を含み、少なくとも1種のカチオン染料で染色された人工皮革基材と、人工皮革基材に明度L * 値>50である樹脂層とを一体化した樹脂層付人工皮革である。そして、樹脂層付人工皮革は、人工皮革基材と樹脂層との明度差ΔL * が10以上である。このような人工皮革基材によれば、明度L * 値≦50の表面を有するような濃色に着色された人工皮革基材であっても、熱や圧力、または溶剤との接触によっても染料が移行しにくくなる。そのために明度L * 値>50であるような、白色や淡色の樹脂層を積層した場合にも、樹脂層を汚染しにくい濃色に着色された人工皮革基材が得られる。繊維布帛としては、例えば不織布が挙げられる。そして、樹脂層付人工皮革は、人工皮革基材と樹脂層との明度差ΔL * が10以上であることにより、コントラストの高い色の変化を有する優れた意匠性の外観が得られるとともに、明度差ΔL * が10以上である場合であっても、染料による汚染が目立ちにくくなる。
また、荷重750g/cm2,50℃,16時間の条件における厚さ0.8mmの塩化ビニルフィルムへの色移行性評価における色差級数判定が4級以上であることが、濃色に着色された人工皮革基材であっても、白色や淡色の樹脂層や樹脂成形体や接触する他の部材を汚染しにくい点から好ましい。なお、白色塩化ビニルフィルムへの色移行性評価における色差級数判定が4級以上であるとは、色移行性評価において、色差ΔE*≦2.0になることである。
また、人工皮革基材の表面にポリウレタン接着剤を介して130℃で1分間、5Kg/cm2の条件で厚さ250μmの白色ポリウレタンフィルムを圧着した樹脂層付人工皮革を形成し、樹脂層付人工皮革を150℃で1分間、20Kg/cm2で熱処理したときの該白色ポリウレタンフィルムの色差級数判定が3級以上であることが、白色や淡色の樹脂層を有する樹脂層付人工皮革を形成しても、樹脂層を汚染しにくい点から好ましい。
また、メチルエチルケトン(MEK)による色移行性評価における色差級数判定が2級以上であることが、溶剤を含む接着剤で樹脂層を接着する際に樹脂層を汚染させにくい点から好ましい。なお、メチルエチルケトン(MEK)による色移行性評価の色差級数判定が2級以上であるとは、白色ポリウレタンフィルムの色移行性評価において、JIS規格のグレースケール基準で色差級判定が2級以上であることである。
また、人工皮革基材は、ソフトネスと厚みとの積が2以上であることが、しなやか風合いが得られる点から好ましい。
また、人工皮革基材は、繊維基材100質量部に対して0.5~20質量部のカチオン染料を含有することが、濃色に着色された人工皮革基材であっても、染料が移行しにくい点から好ましい。
また、本発明の他の一局面は、明度L * 値≦50の表面を有し、カチオン染料可染性ポリエステル繊維の不織布と不織布に付与された高分子弾性体とを含む繊維基材を含む、少なくとも1種のカチオン染料で染色された、立毛調人工皮革を含む甲材と、甲材に接合された明度L*値>50であるアウトソールを含む靴であり、アウトソールは、立毛調人工皮革との明度差ΔL * が10以上である
本発明によれば、人工皮革基材または立毛調人工皮革と、樹脂層またはアウトソールと、の明度差ΔL * が10以上であるコントラストの高い色の変化を有する、意匠性の外観に優れた樹脂層付人工皮革または靴において、明度L * 値>50である、白色や淡色の樹脂層またはアウトソールと、明度L * 値≦50の濃色に着色された人工皮革基材または立毛調人工皮革とを一体化しても、樹脂層またはアウトソールが染料で汚染されにくい。
図1は、実施形態の人工皮革基材1を含む樹脂層付人工皮革10の模式断面図である。 図2は、実施形態の人工皮革基材1を含む樹脂層付人工皮革20,21を一部に含む靴の模式図である。 図3は、実施形態の人工皮革基材1を用いた加飾成形体40の模式断面図である。
はじめに、本発明に係る人工皮革基材の一実施形態をその製造方法の一例に沿って詳しく説明する。
本実施形態の人工皮革基材の製造方法においては、はじめに、カチオン染料可染性ポリエステル繊維の繊維布帛と、繊維布帛に含浸付与された高分子弾性体とを含む繊維基材を準備する。
繊維布帛としては、不織布,織物,編物等が特に限定なく用いられる。これらの中では、不織布、とくには、極細繊維を絡合させた絡合不織布が好ましい。極細繊維を絡合させた不織布は、成形時に伸びやすい。本実施形態においては、繊維布帛の一例として、極細繊維発生型繊維からなる繊維布帛への絡合処理を経て、カチオン染料可染性ポリエステル繊維の極細繊維を絡合させた不織布を製造する方法を代表例として詳しく説明する。なお、極細繊維を絡合させた不織布の種類はとくに限定されず、直接紡糸した極細繊維を用いた不織布を用いてもよい。
カチオン染料可染性ポリエステル繊維の繊度は、特に限定されず、例えば、1dtex以上のようなレギュラー繊維であっても、1dtex未満のような極細繊維であってもよいが、カチオン染料の移行を抑制する点から、0.09dtex以上、さらには0.14dtex以上であって、4dtex以下、さらには2.5dtex以下のような繊度であることが少ないカチオン染料でも発色性が良好になって、カチオン染料の移行が抑制されるとともに、しなやかな風合いを保持させることができる点から好ましい。繊度が高い繊維は発色性が良く、同一色を発色させる場合には繊度が低い繊維を染色する場合よりも少ない染料で染色できるために、染料の移行を抑制できるが、外観や表面のタッチが悪化するとともに風合いが硬くなる傾向がある。これらの点から、繊度は0.09~4dtexであることが、少ない染料で濃色に染色できるとともに、しなやかな風合いを維持できる点からとくに好ましい。繊度が低すぎる場合には、繊維の表面積が大きくなりすぎて高濃度にカチオン染料を含有させなければ濃色を発色させにくくなり、カチオン染料が移行しやすくなる傾向がある。
本実施形態においては、一例として、カチオン染料可染性ポリエステルの極細繊維を形成するための極細繊維発生型繊維の絡合不織布を経てカチオン染料可染性ポリエステル繊維の絡合不織布を製造する方法について代表例として説明する。
極細繊維発生型繊維の絡合不織布の製造方法としては、例えば、極細繊維発生型繊維を溶融紡糸し、これを意図的に切断することなく長繊維のまま捕集して繊維ウェブを形成するような方法や、極細繊維発生型繊維を所定の長さで切断処理したステープルを用いてカード法などにより繊維ウェブを形成した後、公知の絡合処理を施すような方法が挙げられる。なお、長繊維とは、所定の長さで切断処理されたステープルとは区別される、長さ方向に連続した繊維のことであり、フィラメントとも言う。長繊維の繊維長は、例えば、100mm以上、さらには、200mm以上であることが繊維密度を充分に高めることができる点から好ましい。長繊維の上限は、特に限定されないが、連続的に紡糸された数m、数百m、数kmあるいはそれ以上の繊維長であってもよい。本実施形態においては、代表例として、長繊維ウェブを製造する場合について詳しく説明する。
なお、極細繊維発生型繊維とは、紡糸後の繊維に化学的な後処理または物理的な後処理を施すことにより、繊度の小さい極細繊維を発生させる繊維である。本実施形態では、極細繊維発生型繊維として海島型複合繊維を用いた製造方法を説明するが、海島型複合繊維の代わりに、剥離分割型複合繊維等の公知の極細繊維発生型繊維を用いてもよい。
海島型複合繊維は少なくとも2種類のポリマーからなる多成分系複合繊維であり、海成分ポリマーからなるマトリクス中に島成分ポリマーが分散した断面を有する。海島型複合繊維の長繊維ウェブは、海島型複合繊維を溶融紡糸し、これを切断せずに長繊維のままネット上に捕集して形成される。
本実施形態においては、島成分ポリマーとして、下記式(I)で表される成分を1.5~3モル%含み、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするグリコール成分とを含む共重合モノマーを共重合させて得られるカチオン染料可染性ポリエステルを用いることが好ましい。
Figure 0007028412000002
[上記式(I)中、Rは水素、炭素数1~10個のアルキル基又は2-ヒドロキシエチル基を表し、Xは金属イオン、4級ホスホニウムイオン又は4級アンモニウムイオンを表す。]
式(I)で表される化合物としては、5-スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩)や、5-テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸,5-エチルトリブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などの5-テトラアルキルホスホニウムスルホイソフタル酸や、5-テトラブチルアンモニウムスルホイソフタル酸,5-エチルトリブチルアンモニウムスルホイソフタル酸などの5-テトラアルキルアンモニウムスルホイソフタル酸等が挙げられる。式(I)で表される化合物は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、Xが4級ホスホニウムイオン又は4級アンモニウムイオンである式(I)で表される化合物を含むことが機械的特性及び高速紡糸性に優れるカチオン染料可染性ポリエステルが得られる点から好ましい。好ましくは式(I)で表される化合物、とくにはXが4級ホスホニウムイオン又は4級アンモニウムイオンである式(I)で表される化合物を1.5~3モル%含み、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするグリコール成分とを含む共重合モノマーを共重合させることにより得られるカチオン染料可染性ポリエステルが濃色に染色した場合であっても色移りを抑制しやすい点から好ましい。
カチオン染料可染性ポリエステル中の、式(I)に由来する下記式(II):
Figure 0007028412000003

[上記式(II)中、Xは金属イオン、4級ホスホニウムイオン又は4級アンモニウムイオンを表す。]
で表される単位の割合は1.5~3モル%、さらには1.6~2.5モル%であることが好ましい。式(II)で表される単位の割合が、1.5モル%未満の場合には、カチオン染料で染色したときの染色堅牢性が低下する傾向がある。一方、式(II)で表される単位の割合が、3モル%を超える場合には、高速紡糸性が低下することにより極細繊維が得られにくくなるとともに、得られる人工皮革基材の引裂強力等の機械的特性が著しく低下する傾向がある。
ここで、テレフタル酸を主成分とするとは、共重合モノマー中のジカルボン酸成分のうち50モル%以上がテレフタル酸であることを意味する。ジカルボン酸成分のうちテレフタル酸の含有割合は、75モル%以上であることが好ましい。また、カチオン染料による染色堅牢性を向上させ、高速紡糸性を向上させ、また、人工皮革基材を成形用途に使う場合の賦形性を向上させるために、ガラス転移温度を低下させることを目的として、ジカルボン酸成分として、式(I)で表される化合物を除く、その他のジカルボン酸を含んでもよい。その他のジカルボン酸成分の具体例としては例えば、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸や、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などのシクロへキサンジカルボン酸や、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸等のその他のジカルボン酸又はその誘導体を含んでもよい。これらの中では、イソフタル酸、または、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸とアジピン酸との組み合わせ、又はその誘導体を用いることが機械的特性と高速紡糸性に優れる点からとくに好ましい。
ジカルボン酸成分として、その他のジカルボン酸の共重合割合は、2~12モル%、さらには3~10モル%であることが好ましい。その他のジカルボン酸の共重合割合が2モル%未満の場合には、ガラス転移温度が充分に低下せず、繊維内部における非晶部位の配向度が高くなるために染色性が低下する傾向がある。一方、その他のジカルボン酸の共重合割合が12モル%を超える場合には、ガラス転移温度が低下しすぎて、繊維内部における非晶部位の配向度が低くなるために繊維強度が低下する傾向がある。なお、その他のジカルボン酸単位としてイソフタル酸単位を含有する場合には、ジカルボン酸単位として、イソフタル酸単位を1~6モル%、さらには2~5モル%含有することが機械的特性と高速紡糸性に優れる点から好ましい。また、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸単位とアジピン酸単位とを含有する場合には、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸単位及びアジピン酸単位をそれぞれ1~6モル%、さらには2~5モル%含有することが機械的特性と高速紡糸性に優れるカチオン染料可染性ポリエステルが得られる点から好ましい。
また、エチレングリコールを主成分とするとは、共重合モノマー中のグリコール成分のうち50モル%以上がエチレングリコールであることを意味する。グリコール成分のうちエチレングリコールの含有割合は、75モル%以上、さらには90モル%以上であることが好ましい。また、その他の成分としては、例えば、ジエチレングリコールやポリエチレングリコール等が挙げられる。
カチオン染料可染性ポリエステルのガラス転移温度(Tg)は特に限定されないが、60~70℃、さらには、60~65℃であることが好ましい。Tgが高すぎる場合には高速延伸性が低下し、また、得られる人工皮革基材を熱成形して用いる場合に、賦形性が低下する傾向がある。
また、カチオン染料可染性ポリエステルには、本発明の効果を損なわない範囲で、カーボンブラック等の着色剤、耐候剤、防黴剤等を必要に応じて、配合してもよい。
海成分ポリマーとしては、カチオン染料可染性ポリエステルよりも溶剤に対する溶解性または分解剤による分解性が高いポリマーが選ばれる。海成分ポリマーの具体例としては、例えば、水溶性ポリビニルアルコール系樹脂(水溶性PVA)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン-プロピレン系共重合体、エチレン-酢酸ビニル系共重合体、スチレン-エチレン系共重合体、スチレン-アクリル系共重合体などが挙げられる。
海島型複合繊維は海成分ポリマーと島成分ポリマーであるカチオン染料可染性ポリエステルとを複合紡糸用口金から溶融押出する溶融紡糸により製造することができる。海島型複合繊維の繊度はとくに限定されないが、0.5~10dtex、さらには0.7~5dtexであることが好ましい。
口金から吐出された溶融状態の海島型複合繊維は、冷却装置により冷却され、さらに、エアジェットノズルなどの吸引装置により目的の繊度となるように牽引細化される。そして牽引細化された長繊維を移動式ネットなどの捕集面上に堆積させることにより長繊維ウェブが得られる。なお、必要に応じて、形態を安定化させるために長繊維ウェブをさらにプレスすることにより部分的に圧着させてもよい。
そして、得られた長繊維ウェブに絡合処理を施すことにより海島型複合繊維の長繊維の絡合不織布を製造する。長繊維ウェブの絡合処理の具体例としては、例えば、長繊維ウェブをクロスラッパー等を用いて厚さ方向に複数層重ね合わせた後、その両面から同時または交互に少なくとも1つ以上のバーブが貫通する条件でニードルパンチするような処理が挙げられる。
また、長繊維ウェブには海島型複合繊維の紡糸工程から絡合処理までのいずれかの段階において、油剤や帯電防止剤を付与してもよい。さらに、必要に応じて、長繊維ウェブを70~150℃程度の温水に浸漬する収縮処理を行うことにより、長繊維ウェブの繊維密度をより緻密にして均一性を付与しておいてもよい。また、絡合処理の後、熱プレス処理することによりさらに繊維密度を緻密にして形態安定性を付与してもよい。このようにして得られる海島型複合繊維の絡合不織布の目付としては100~2000g/m2程度の範囲であることが好ましい。
また、海島型複合繊維の絡合不織布を必要に応じて熱収縮させることにより繊維密度および絡合度合が高められる処理を施してもよい。また、熱収縮処理させた海島型複合繊維の絡合不織布にさらにプレス処理を行うことにより、海島型複合繊維の絡合不織布のさらなる緻密化や形態の固定化、表面の平滑化を施してもよい。
そして、海島型複合繊維の絡合不織布中の海島型複合繊維から海成分ポリマーを除去することにより、カチオン染料可染性ポリエステルの絡合不織布が得られる。海島型複合繊維から海成分ポリマーを除去する方法としては、海成分ポリマーのみを選択的に除去しうる溶剤または分解剤で海島型複合繊維の絡合不織布を処理するような従来から知られた極細繊維の形成方法が特に限定なく用いられうる。具体的には、例えば、海成分ポリマーとして水溶性PVAを用いる場合には溶剤として熱水が用いられる。
海成分ポリマーとして水溶性PVAを用いる場合、85~100℃の熱水中で100~600秒間処理することにより、水溶性PVAの除去率が95~100質量%程度になるまで抽出除去することが好ましい。なお、浸漬処理においてディップニップ処理を繰り返すことにより、水溶性PVAを効率的に抽出除去できる。
このようにして得られるカチオン染料可染性ポリエステルの極細繊維からなる絡合不織布の目付は、140~3000g/m2、さらには200~2000g/m2であることが好ましい。
本実施形態の人工皮革基材の製造においては、海島型複合繊維のような極細繊維発生型繊維を極細繊維化する前後の何れか一方または両方において、カチオン染料可染性ポリエステルの絡合不織布に形態安定性や充実感を付与するために、絡合不織布の内部空隙にポリウレタン等の高分子弾性体を含浸付与する。
高分子弾性体の具体例としては、例えば、ポリウレタン,アクリロニトリルエラストマー,オレフィンエラストマー,ポリエステルエラストマー,ポリアミドエラストマー,アクリルエラストマー等が挙げられる。これらの中では、ポリウレタンが好ましい。
なお、高分子弾性体は、本発明の効果を損なわない範囲で、カーボンブラック等の顔料や染料などの着色剤、凝固調節剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、防黴剤、浸透剤、消泡剤、滑剤、撥水剤、撥油剤、増粘剤、増量剤、硬化促進剤、発泡剤、ポリビニルアルコールやカルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子化合物、無機微粒子、導電剤などをさらに含有してもよい。
高分子弾性体の含有割合としては、カチオン染料可染性ポリエステルの絡合不織布との合計量に対して、0.1~50質量%、さらには3~40質量%、とくには5~25質量%、ことには10~15質量%であることが、カチオン染料で染色された人工皮革基材に接触する樹脂層や、被加飾成形体や他の部材に色移りさせにくく、また、充実感としなやかさ等のバランスに優れた人工皮革基材が得られる点から好ましい。
このようにして高分子弾性体を含浸付与されたカチオン染料可染性ポリエステルの絡合不織布である、繊維基材の原反が得られる。繊維基材の原反は、必要に応じて厚さ方向に垂直な方向に複数枚にスライスされたり、研削されたりすることにより厚さ調節されて繊維基材に仕上げられる。また、必要に応じて、少なくとも一面を好ましくは120~600番手、さらに好ましくは320~600番手程度のサンドペーパーやエメリーペーパーを用いてバフィングすることにより起毛処理を施して立毛処理された繊維基材に仕上げてもよい。立毛処理された繊維基材は、スエード調やヌバック調の人工皮革となる。
繊維基材をカチオン染料で染色することにより、カチオン染料で染色された人工皮革基材が得られる。繊維基材をカチオン染料を用いて染色することにより、カチオン染料可染性ポリエステルのカチオン染料の染着座になる下記式(I):
Figure 0007028412000004
で表される単位中に含まれるスルホニウムイオンにカチオン染料がイオン結合により固定されるため、優れた染色堅牢性を発揮する。
カチオン染料としては、従来から知られているカチオン染料であればとくに限定なく用いられる。なお、カチオン染料は染料液中で溶解してカチオン性を示す、例えば4級アンモニウム基等を有する染料イオンとなってカチオン染料可染性ポリエステル繊維にイオン結合する。このようなカチオン染料は一般的には、塩素イオン等のアニオンと塩を形成している。このような塩素イオン等のアニオンはカチオン染料中に含まれるが、染色後の洗浄により洗い流される。カチオン染料の具体例としては、C.I.Basic Blue 54やC.I.Basic Blue 159等のアゾ系青色カチオン染料や、C.I.Basic Blue 3,C.I. Basic Blue 6,C.I. Basic Blue 10,C.I. Basic Blue 12,C.I.Basic Blue75,C.I. Basic Blue 96等のオキサジン系青色カチオン染料、C.I.Basic Yellow 40等のクマリン系染料、C.I.Basic Yellow 21等のメチン系染料,C.I.Basic Yellow 28等のアゾメチン系染料,アゾ系赤色染料であるC.I.Basic Red 29やC.I.Basic Red 46、キサンテン系染料であるC.I.Basic Violet 11 等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
染色方法は特に限定されないが、例えば、液流染色機、ビーム染色機、ジッガーなどの染色機を用いて染色する方法が挙げられる。染色加工の条件としては、高圧で染色してもよいが、本実施形態の繊維基材は常圧で染色可能であるために、常圧で染色することが環境負荷が低く、染色コストを低減できる点からも好ましい。常圧で染色する場合、染色温度としては60~100℃、さらには80~100℃であることが好ましい。また、染色の際に、酢酸や芒硝のような染色助剤を用いてもよい。
繊維基材をカチオン染料を用いて染色する場合、染料液中のカチオン染料の濃度は、染められる繊維基材に対し、0.5~20%owf、さらには、1.0~15%owf、となるような範囲であることが、カチオン染料可染性ポリエステル繊維が充分に濃色に発色するとともに、カチオン染料が、他の部材に移行しにくくなる点から好ましい。染料液のカチオン染料の濃度が高すぎる場合には、カチオン染料可染性ポリエステル繊維の染着座に固定されないカチオン染料が多く含まれることにより、カチオン染料が人工皮革基材に積層される樹脂層や、被加飾成形体や他の部材に移行しやすくなる傾向がある。また、カチオン染料の濃度が低すぎる場合には、明度L*値≦50のような濃色に着色することが困難になる傾向がある。
本実施形態においては、カチオン染料により染色された繊維基材を、アニオン系界面活性剤を含有する湯浴中で洗浄処理することにより、結合力の低いカチオン染料を除去することが好ましい。このような洗浄処理により、結合力の低いカチオン染料が充分に除去されて、染色された人工皮革基材からカチオン染料が積層される樹脂層や被加飾成形体や他の部材に移行しにくくなる。アニオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、日成化成(株)製のソルジンR,センカ(株)製のセンカノールA-900,明成化学工業(株)製のメイサノールKHM等が挙げられる。
アニオン系界面活性剤を含有する湯浴中での洗浄処理は、50~100℃、さらには60~80℃の湯浴で行うことが好ましい。また、湯浴の槽としては、染色処理を行った染色機を用いることが、製造工程が簡略化できる点から好ましい。
洗浄時間としては、得られる染色された人工皮革基材のJIS法(JIS L 0846)による水堅牢度の綿汚染の判定が4-5級以上になるような時間であることが好ましく、具体的には、10~30分間、さらには、15~20分間程度であることが好ましい。また、この洗浄を1回以上、好ましくは2回以上繰り返してもよい。このように染色及び洗浄処理された人工皮革基材は乾燥される。なお、上述した洗浄方法等により、カチオン染料中の洗浄可能な塩素を染色された人工皮革基材の重量に対して、90ppm以下程度にまで充分に洗浄することにより、カチオン染料の色移りが充分に抑制される人工皮革基材が得られる傾向がある。
本実施形態の染色された人工皮革基材は、上述したカチオン染料を用いた染色により、繊維基材100質量部に対して、0.5~20質量部、さらには1.0~15質量部、とくには1.0~10質量部のカチオン染料を含有することが好ましい。繊維基材100質量部に対するカチオン染料の含有量が多すぎる場合には、カチオン染料可染性ポリエステル繊維の染着座に結合しない染料が増加して、カチオン染料の移行が著しくなる傾向がある。一方、カチオン染料の含有量が少なすぎる場合には、L*値≦50、さらには、L*値≦35、のような濃色の染色が困難になる傾向がある。
人工皮革基材には、必要に応じて、各種仕上げ処理が施される。仕上げ処理としては、揉み柔軟化処理、逆シールのブラッシング処理、防汚処理、親水化処理、滑剤処理、柔軟剤処理、酸化防止剤処理、紫外線吸収剤処理、蛍光剤処理、難燃剤処理等が挙げられる。
このようにして、カチオン染料で染色された人工皮革基材が得られる。本実施形態のカチオン染料で染色された人工皮革基材は、明度L*値≦50のような濃色であっても、一体化される樹脂層や他の部材に染料が移行しにくい。また、染色された人工皮革基材は、L*値≦50であるが、とくにはL*値≦35であるような濃色である場合には、本発明の効果がより顕著になる。なお、L*値≦35の場合には、カチオン染料による染色だけではなく、カチオン染料可染性ポリエステル繊維や高分子弾性体にカーボンブラック等の顔料で着色して、L*値≦35に着色してもよい。このような人工皮革基材は、濃色であっても、上述したようなカチオン染料可染性ポリエステル繊維を用い、アニオン系界面活性剤を含有する湯浴中で洗浄処理することにより、カチオン染料が他の部材に移行することを充分に抑制できる。
本実施形態のカチオン染料で染色された人工皮革基材は、荷重750g/cm2,50℃,16時間の条件における厚さ0.8mmの塩化ビニルフィルムへの色移行性評価における色差級数判定が4級以上、さらには5級以上であることが好ましい。また、本実施形態のカチオン染料で染色された人工皮革基材は、表面にポリウレタン接着剤を介して130℃で1分間、5Kg/cm2の条件で厚さ250μmの白色ポリウレタンフィルムを圧着した樹脂層付人工皮革を形成し、樹脂層付人工皮革を150℃で1分間、20Kg/cm2で熱処理したとき、白色ポリウレタンフィルムの色差級数判定が3級以上、さらには4級以上であることが好ましい。これらのような人工皮革基材である場合には、カチオン染料で比較的濃色に染色しても一体化される樹脂層に色移りさせにくい高い染色堅牢性が得られる。
また、本実施形態のカチオン染料で染色された人工皮革基材は、メチルエチルケトン(MEK)による色移行性評価における色差級数判定が2級以上、さらには3級以上であることが、溶剤に対しても遊離しにくく、接着剤等で樹脂層と一体化するような用途においても樹脂層や被加飾成形体に染料を移行させにくい高い染色堅牢性が得られる点から好ましい。
人工皮革基材の厚みは特に限定されないが、0.2~4mm、さらには、0.3~1.8mmであることがしなやかな風合いが得られる点から好ましい。また、後述するように測定される人工皮革基材のソフトネスは2.0~6.0mm、さらには2.5~5.0mmであることが、しなやかな風合いが得られる点から好ましい。そして、とくには、ソフトネスと厚みとの積が2以上、さらには2.5以上であることが厚みと風合いが程よくバランスし、人工皮革に適した優美な風合いになる点から好ましい。
また、人工皮革基材の見かけ密度は、0.3~0.6g/cm、とくには0.45~0.55g/cmであることがしなやかな風合いが得られる点から好ましい。
本実施形態のL*値≦50の表面を有する、カチオン染料で染色された人工皮革基材は、少なくとも一面を立毛処理されたスエード調人工皮革やヌバック調人工皮革、また、少なくとも一面に樹脂層を一体化した樹脂層付人工皮革として用いられる。次に樹脂層付人工皮革の一例を説明する。
図1は、実施形態の人工皮革基材1を含む樹脂層付人工皮革10の模式断面図である。樹脂層付人工皮革10は、上述したようなL*値≦50である濃色の表面を有する、少なくとも1種のカチオン染料で染色された人工皮革基材1と、人工皮革基材1に積層された樹脂層2とを含む。樹脂層の例としては、従来から知られた銀付調人工皮革の銀面層の形成のために用いられてきた、ポリウレタン,アクリロニトリルエラストマー,オレフィンエラストマー,ポリエステルエラストマー,ポリアミドエラストマー,アクリルエラストマー等を主体とする層が挙げられる。
このような樹脂層付人工皮革10においては、明度L*値>50,好ましくはL*値>70のような白色や淡色の樹脂層2を形成しても人工皮革基材1から樹脂層2にカチオン染料が移行しにくい。樹脂層付人工皮革10としては、人工皮革基材1と樹脂層2とのL*値の差である明度差ΔL*が10以上、さらには20以上、とくには30以上であることがコントラストの高い意匠性に優れた外観が得られる点から好ましい。
また、図2は、他の実施形態の、人工皮革基材1を靴の甲材として用い、ゴム製のラバーソール3と接着一体化した靴の構造の一部を形成する樹脂層付人工皮革20または人工皮革基材1に樹脂層としてワッペンを貼り合わせた樹脂層付人工皮革21である。図2においては(a)は靴のつま先付近を示す模式外形図であり、(b)は断面模式図である。また、4は紐、5はL*値>50である淡色の樹脂層でもある、接着剤5aを介して接着されたワッペンである。
樹脂層付人工皮革20は、上述したようなL*値≦50である濃色の表面を有する、カチオン染料で染められた人工皮革基材1と、人工皮革基材1に接着剤層3aを介して一体化されたL*値>50である淡色や白色のゴム製のラバーソール3を含む構造を有する領域を指す。また、樹脂層付人工皮革21は、L*値≦50である濃色の表面を有する人工皮革基材1と、人工皮革基材1に接着剤層5aを介して接着一体化されたL*値>50である淡色や白色の樹脂層であるワッペン5とを含む領域を指す。このような樹脂層付人工皮革20,21の構造においては、L*値>50,好ましくはL*値>70のような白色や淡色のラバーソール3やワッペン5に接着して一体化しても濃色の人工皮革基材1からカチオン染料がラバーソール3やワッペン5に移行しにくい。このような樹脂層付人工皮革20,21としては、人工皮革基材1とラバーソール3やワッペン5とのL*値の差である明度差ΔL*が10以上、さらには20以上、とくには30以上であることがコントラストに優れた色味を有するために意匠性に優れる点から好ましい。
さらに、図3は、他の実施形態の、人工皮革基材1を用いた樹脂層付人工皮革30の構造を含む加飾成形体40の模式断面図である。図3においては、上述したようなL*値≦50である濃色の表面を有する、カチオン染料で染色された人工皮革基材1には、その表面にL*値>50である淡色や白色の樹脂層12が積層形成されている。そして、人工皮革基材1は、接着剤層14を介して樹脂成形体13に接着一体化されている。加飾成形体40は、開口部Hを有し、また、開口部Hの壁面E1や加飾成形体40の端面E2は外部に露出しており、使用者によって視認される部分になる。
加飾成形体40の開口部Hの壁面や加飾成形体40の端面は使用者によって視認される部分になるために、意匠性の観点から、人工皮革基材1に含まれる繊維基材が着色されていることが求められることがある。このような加飾成形体40を製造するために上述したような人工皮革基材1を用いた場合、濃色の人工皮革基材1からカチオン染料がL*値>50である淡色や白色の樹脂層12や樹脂成形体13に移行しにくい。
以上説明したような樹脂層付人工皮革は、熱や圧力を賦与されたり、溶剤に接触したりしたときに樹脂層が染料で汚染されにくい。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲は実施例により何ら限定されるものではない。
[実施例1]
海成分の熱可塑性樹脂としてエチレン変性ポリビニルアルコール(PVA;エチレン単位の含有量8.5モル%、重合度380、ケン化度98.7モル%)、島成分の熱可塑性樹脂としてスルホイソフタル酸のテトラブチルホスホニウム塩で変性されたポリエチレンテレフタレート(PET):(スルホイソフタル酸のテトラブチルホスホニウム塩単位1.7モル%,1,4-シクロヘキサンジカルボン酸単位5モル%,アジピン酸単位5モル%含有;ガラス転移温度62℃)を含み、海成分と島成分との質量比が海成分/島成分=25/75である、海島型複合長繊維を三次元絡合させた絡合不織布を製造した。
そして、海島型複合繊維を三次元絡合させた絡合不織布に、ポリウレタンのエマルジョン(ポリカーボネート/エーテル系ポリウレタンを主体とするポリウレタンの固形分濃度30%のエマルジョン)を含浸させ、150℃の乾燥炉で乾燥することにより、ポリウレタンを付与した。そして、ポリウレタンを付与された海島型複合繊維を三次元絡合させた絡合不織布を95℃の熱水中に20分間浸漬することにより海島型複合繊維に含まれる海成分を抽出除去し、120℃の乾燥炉で乾燥することにより、ポリウレタンを含浸付与された、繊度0.2dtexのカチオン染料可染性ポリエステル繊維の絡合不織布を含む繊維基材の原反を得た。得られた繊維基材の原反は、絡合不織布/ポリウレタンの質量比が90/10であった。そして、得られた繊維基材の原反をスライスして2分割し、表面を600番手のサンドペーパーでバフィングすることにより立毛処理された繊維基材を得た。立毛処理された繊維基材は、繊度0.2dtex、ポリウレタン比率10質量%で、厚さ0.78mm、見かけ密度0.51g/cm3であった。
そして、立毛処理された繊維基材を、カチオン染料として、Nichilon Red-GL(日成化成(株)製) 18%owf、染色助剤として90%酢酸1g/Lを含有する90℃の染料液を貯留した染色浴中に浴比1:30の割合で40分間浸漬して、赤色に染色した。そして、同一染色浴で、アニオン系界面活性剤としてソルジンR 2g/Lを含有する湯浴を用いて70℃でソーピングする工程を2回繰り返した。そして、ソーピング後、乾燥することにより、染色されたスエード調の人工皮革を得た。
このようにして、繊度0.2dtexのカチオン染料可染性ポリエステル繊維の絡合不織布を含むカチオン染料で染色された濃赤色のスエード調の人工皮革を得た。スエード調の人工皮革は厚み0.83mmで、見かけ密度0.47g/cm3であった。そして、スエード調の人工皮革の特性を次のようにして評価した。
[スエード調の人工皮革のカチオン染料含有量]
下記方法により、スエード調の人工皮革のカチオン染料含有量を定量した。
繊維基材の染色前に、調製された染料液を採取し、希釈倍率10~100倍の異なる濃度の希釈染料液を5点調製した。そして、5点の希釈染料液を分光光度計((株)日立ハイテクサイエンス製 U-3010)により波長380~780nmの領域を1nmごとに吸光度を測定し、積算することにより、染料濃度(g/L)に対する吸光度の検量線を作成した。また、染色後の染色浴中の染料液(染色残液)を採取し、吸光度を波長380~780nmの領域を1nmごとに測定して積算することにより、検量線から染色残液の染料濃度C(g/L)を求めた。また、同様にして1回目のソーピング後の洗浄液中の染料濃度C1(g/L)、2回目のソーピング後の洗浄液中の染料濃度C2(g/L)を求めた。
スエード調の人工皮革の質量をS(g)、目的とするowf%にするために染料液中に溶解された染料量をP(g)とし、繊維基材との浴比を調整したときの液量をW(L)とする。また、1回目のソーピングに使用した液量をW1(L)として、1回目のソーピングによる染料の脱落量P1(g)を、P1=W1×C1の式から算出した。2回目のソーピングによる脱落量P2(g)も同様に算出した。
そして、カチオン染料の付着量を、繊維基材100質量部に対するカチオン染料含有量として、付着量X(g)=100×(P-C×W-(P1+P2))/Sの式から算出した。
[L*値]
分光光度計(ミノルタ社製:CM-3700)を用いて、JISZ 8729に準拠して、切り出されたスエード調の人工皮革の表面のL*a*b*表色系の座標値から明度L*を求めた。値は、試験片から平均的な位置を万遍なく選択して測定された3点の平均値である。
[厚さ]
スエード調の人工皮革の厚さは、JIS法に準拠して測定した。試料の異なる5か所について厚さ測定器を用いて、荷重23.5KPaで10秒間の加圧条件下で厚さを測定し、それらの平均値を、小数点3けた目を四捨五入して算出した。
[ソフトネス]
ソフトネステスター(皮革ソフトネス計測装置ST300:英国、MSAエンジニアリングシステム社製)を用いて剛軟度を測定した。具体的には、直径25mmの所定のリングを装置の下部ホルダーにセットした後、下部ホルダーにスエード調の人工皮革をセットした。そして、上部レバーに固定された金属製のピン(直径5mm)をスエード調の人工皮革に向けて押し下げた。そして、上部レバーを押し下げて上部レバーがロックしたときの数値を読み取った。なお、数値は侵入深さを表し、数値が大きいほどしなやかであることを表す。
[加熱加圧による塩化ビニル(PVC)フィルムへの色移行性]
切り出されたスエード調の人工皮革の表面に厚さ0.8mmの塩化ビニルフィルム(白色、ΔL*=85.0)を重ね、荷重750g/cmとなるように均一に圧力をかけた。そして、50℃、相対湿度15%の雰囲気下で16時間放置した。そして、色移り前の塩化ビニルフィルムと色移り後の塩化ビニルフィルムとの色差ΔE*を、分光光度計を用いて測定し、以下の基準で判定した。
5級 :0.0≦ΔE*≦0.2
4-5級:0.2<ΔE*≦1.4
4級 :1.4<ΔE*≦2.0
3-4級:2.0<ΔE*≦3.0
3級 :3.0<ΔE*≦3.8
2-3級:3.8<ΔE*≦5.8
2級 :5.8<ΔE*≦7.8
1-2級:7.8<ΔE*≦11.4
1級 :11.4<ΔE*
[溶剤(メチルエチルケトン(MEK))による色移行性試験]
スエード調の人工皮革を縦2.45cm、横2.45cmに切り出して、測定白布の表面に挟み込み、上下左右の4か所をステープルで止めて試験基材を作成した。そして、ガラス容器に入れたMEKに試験基材を20秒間浸漬後、取り出して風乾した。乾燥後、測定白布への汚染状態を判定した。判定は表裏関係なく最も汚染されている箇所を、JIS規格のグレースケール基準で1~5級を目視判定した。
[表面タッチ]
スエード調の人工皮革を縦30×横20cmに切りだしたサンプルを調製した。そして、表面を手のひらでこすったときの触感を以下の基準で判定した。
A:凹凸感やざらつき感が全くなく、なめらかなでウェットな感触であった。
B:凹凸感やざらつき感がやや感じられた。
C:凹凸感やざらつき感が著しくあり、ドライな感触であった。
[風合い]
スエード調の人工皮革を縦30×横20cmに切りだしたサンプルを調製した。そして、掴んだときの触感を以下の基準で判定した。
A:丸みがあって、掴んだときに角立った折れ目がほとんど生じなかった。
B: 掴んだときに角立った折れ目がやや見られた。
C:掴んだ時の状態が紙のように角立った状態になった。
[樹脂層付人工皮革の色移行性]
スエード調の人工皮革の表面にポリウレタン接着剤を介して130℃で1分間、5Kg/cm2の条件で厚さ250μmのポリウレタンフィルム(白色、ΔL*=92.9)を圧着して樹脂層付人工皮革を形成した。そして、樹脂層付人工皮革を150℃で1分間、20Kg/cm2で熱処理した。樹脂層付人工皮革の熱処理前後におけるウレタンフィルムの色差ΔE*を、分光光度計を用いて測定し、以下の基準で判定した。
5級 :0.0≦ΔE*≦0.2
4-5級:0.2<ΔE*≦1.4
4級 :1.4<ΔE*≦2.0
3-4級:2.0<ΔE*≦3.0
3級 :3.0<ΔE*≦3.8
2-3級:3.8<ΔE*≦5.8
2級 :5.8<ΔE*≦7.8
1-2級:7.8<ΔE*≦11.4
1級 :11.4<ΔE*
結果を下記表1に示す。
Figure 0007028412000005
[実施例2]
実施例1で製造した立毛処理された繊維基材に代えて、繊度2.0dtexのカチオン染料可染性ポリエステル繊維の絡合不織布を含み、ポリウレタン比率5質量%で、厚さ0.82mm、見かけ密度0.46g/cm3に変更した以外は同様にして立毛処理された繊維基材を製造した。そして、得られた立毛処理された繊維基材を、カチオン染料であるNichilon Red-GL(日成化成(株)製) 6%owf、染色助剤として90%酢酸1g/Lを含有する90℃の染色浴中に浴比1:30の割合で40分間浸漬して、赤色に染色した。そして、同一染色浴で、アニオン系界面活性剤としてソルジンR 2g/Lを含有する湯浴を用いて70℃でソーピングする工程を2回繰り返した。そして、ソーピング後、乾燥することにより、染色された濃赤色のスエード調の人工皮革を得た。
このようにして、繊度2.0dtexのカチオン染料可染性ポリエステル繊維の絡合不織布を含むスエード調の人工皮革を得た。スエード調の人工皮革は厚み1.19mmで、見かけ密度0.40g/cm3であった。そして、スエード調の人工皮革及び樹脂層付人工皮革の特性を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1で製造した立毛処理された繊維基材に代えて、繊度3.3dtexのカチオン染料可染性ポリエステル繊維の絡合不織布を含み、ポリウレタン比率5質量%で、厚さ0.75mm、見かけ密度0.46g/cm3に変更した以外は同様にして立毛処理された繊維基材を製造した。そして、得られた立毛処理された繊維基材を、カチオン染料であるNichilon Red-GL(日成化成(株)製)4.7%owf、染色助剤として90%酢酸1g/Lを含有する90℃の染色浴中に浴比1:30の割合で40分間浸漬して、赤色に染色した。そして、同一染色浴で、アニオン系界面活性剤としてソルジンR 2g/Lを含有する湯浴を用いて70℃でソーピングする工程を2回繰り返した。そして、ソーピング後、乾燥することにより、染色された濃赤色のスエード調の人工皮革を得た。
このようにして、繊度3.3dtexのカチオン染料可染性ポリエステル繊維の絡合不織布を含むスエード調の人工皮革を得た。スエード調の人工皮革は厚み1.02mmで、見かけ密度0.40g/cm3であった。そして、スエード調の人工皮革及び樹脂層付人工皮革の特性を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
[実施例4]
実施例1で製造した立毛処理された繊維基材に代えて、繊度4.2dtexのカチオン染料可染性ポリエステル繊維の絡合不織布を含み、ポリウレタン比率5質量%で、厚さ0.75mm、見かけ密度0.45g/cm3の立毛処理された繊維基材を製造した。そして、得られた立毛処理された繊維基材を、カチオン染料であるNichilon Red-GL(日成化成(株)製)4.1%owf、染色助剤として90%酢酸1g/Lを含有する90℃の染色浴中に浴比1:30の割合で40分間浸漬して、赤色に染色した。そして、同一染色浴で、アニオン系界面活性剤としてソルジンR 2g/Lを含有する湯浴を用いて70℃でソーピングする工程を2回繰り返した。そして、ソーピング後、乾燥することにより、染色された濃赤色のスエード調の人工皮革を得た。
このようにして、繊度4.2dtexのカチオン染料可染性ポリエステル繊維の絡合不織布を含むスエード調の人工皮革を得た。スエード調の人工皮革は厚み1.06mmで、見かけ密度0.39g/cm3であった。そして、スエード調の人工皮革及び樹脂層付人工皮革の特性を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
[実施例5]
実施例1で製造した立毛処理された繊維基材に代えて、繊度0.08dtexのカチオン染料可染性ポリエステル繊維の絡合不織布を含み、ポリウレタン比率10質量%で、厚さ0.75mm、見かけ密度0.52g/cm3の立毛処理された繊維基材を製造した。そして、得られた立毛処理された繊維基材を、カチオン染料であるNichilon Red-GL(日成化成(株)製) 30%owf、染色助剤として90%酢酸1g/Lを含有する90℃の染色浴中に浴比1:30の割合で40分間浸漬して、赤色に染色した。そして、同一染色浴で、アニオン系界面活性剤としてソルジンR 2g/Lを含有する湯浴を用いて70℃でソーピングする工程を2回繰り返した。そして、ソーピング後、乾燥することにより、染色された濃赤色のスエード調の人工皮革を得た。
このようにして、繊度0.08dtexのカチオン染料可染性ポリエステル繊維の絡合不織布を含むスエード調の人工皮革を得た。スエード調の人工皮革は厚み0.82mmで、見かけ密度0.48g/cm3であった。そして、スエード調の人工皮革及び樹脂層付人工皮革の特性を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
[実施例6]
実施例1において、染料濃度19%owfに代えて染料濃度6%owfに変更して染色した以外は実施例1と同様にして立毛処理された繊維基材を染色して、染色された濃赤色のスエード調の人工皮革を得た。そして、スエード調の人工皮革及び樹脂層付人工皮革の特性を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
[実施例7]
実施例1で製造した立毛処理された繊維基材に代えて、繊度5.1dtexのカチオン染料可染性ポリエステル繊維の絡合不織布を含み、ポリウレタン比率5質量%で、厚さ0.78mm、見かけ密度0.44g/cm3の立毛処理された繊維基材を製造した。そして、得られた立毛処理された繊維基材を、カチオン染料であるNichilon Red-GL(日成化成(株)製)3.8%owf、染色助剤として90%酢酸1g/Lを含有する90℃の染色浴中に浴比1:30の割合で40分間浸漬して、赤色に染色した。そして、同一染色浴で、アニオン系界面活性剤としてソルジンR 2g/Lを含有する湯浴を用いて70℃でソーピングする工程を2回繰り返した。そして、ソーピング後、乾燥することにより、染色された濃赤色のスエード調の人工皮革を得た。このようにして、繊度5.1dtexのカチオン染料可染性ポリエステル繊維の絡合不織布を含むスエード調の人工皮革基材を得た。スエード調の人工皮革は厚み1.05mmで、見かけ密度0.38g/cm3であった。そして、スエード調の人工皮革及び樹脂層付人工皮革の特性を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
[実施例8]
実施例1において、アニオン系界面活性剤としてソルジンR 2g/Lを含有する湯浴を用いて70℃でソーピングする工程を2回繰り返す代わりに、70℃で水洗した以外は実施例1と同様にして、カチオン染料可染性ポリエステル繊維の絡合不織布を含む、染色された濃赤色のスエード調の人工皮革を得た。そして、スエード調の人工皮革及び樹脂層付人工皮革の特性を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
[実施例9]
実施例6において、アニオン系界面活性剤としてソルジンR 2g/Lを含有する湯浴を用いて70℃でソーピングする工程を2回繰り返す代わりに、70℃で水洗した以外は実施例6と同様にして、カチオン染料可染性ポリエステル繊維の絡合不織布を含む、染色された濃赤色のスエード調の人工皮革を得た。そして、スエード調の人工皮革及び樹脂層付人工皮革の特性を、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
[比較例1]
島成分の熱可塑性樹脂として、イソフタル酸で変性したPET(イソフタル酸単位6モル%含有)を用いた繊度0.2dtexのポリエステル繊維の絡合不織布を含み、ポリウレタン比率11質量%で、厚さ0.78mm、見かけ密度0.51g/cm3の立毛処理された繊維基材を製造した。そして、立毛処理された繊維基材を分散染料であるD.Red-W,KiwalonRubin2GW, KiwalonYellow6GFを用いて、130℃で1時間液流染色し、同一染色浴で還元洗浄して、染色されたスエード調の人工皮革を得た。そして、スエード調の人工皮革及び樹脂層付人工皮革の特性を、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
[比較例2]
島成分の熱可塑性樹脂として、イソフタル酸で変性したPET(イソフタル酸単位6モル%含有)を用いた繊度2dtexのポリエステル繊維の絡合不織布を含み、ポリウレタン比率5質量%で、厚さ0.78mm、見かけ密度0.40g/cm3の立毛処理された繊維基材を製造した。そして、繊維基材を分散染料であるD.Red-W,KiwalonRubin2GW, KiwalonYellow6GFを用いて、130℃で1時間液流染色し、同一染色浴で還元洗浄して、染色されたスエード調の人工皮革を得た。そして、スエード調の人工皮革及び樹脂層付人工皮革の特性を、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
[比較例3]
実施例1で製造した立毛処理された繊維基材に代えて、繊度0.14dtexのカチオン染料可染性ポリエステル繊維の絡合不織布を含み、ポリウレタン比率10質量%で、厚さ0.78mm、見かけ密度0.51g/cm3の立毛処理された繊維基材を製造した。そして、得られた立毛処理された繊維基材を、カチオン染料であるNichilon Red-GL(日成化成(株)製)3.8%owf、染色助剤として90%酢酸1g/Lを含有する90℃の染色浴中に浴比1:30の割合で40分間浸漬して、赤色に染色した。そして、同一染色浴で、アニオン系界面活性剤としてソルジンR 2g/Lを含有する湯浴を用いて70℃でソーピングする工程を2回繰り返した。そして、ソーピング後、乾燥することにより、染色されたスエード調の人工皮革を得た。
このようにして、繊度0.14dtexのカチオン染料可染性ポリエステル繊維の絡合不織布を含むスエード調の人工皮革を得た。スエード調の人工皮革は厚み0.82mmで、見かけ密度0.48g/cm3であった。そして、スエード調の人工皮革及び樹脂層付人工皮革の特性を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
本発明で得られる人工皮革基材、立毛調人工皮革、及び樹脂層付人工皮革は、衣料、靴、家具、カーシート、雑貨製品等の表皮素材として好ましく用いられる。
1,12 人工皮革基材(立毛調人工皮革)
2 樹脂層
3 ラバーソール(樹脂層)
3a,5a,14 接着剤層
5 ワッペン(樹脂層)
10,20,30 樹脂層付人工皮革
40 加飾成形体

Claims (9)

  1. 人工皮革基材と、前記人工皮革基材の一面に一体化された樹脂層と、を含む樹脂層付人工皮革であり、
    前記人工皮革基材は、明度L*値≦50の表面を有し、カチオン染料可染性ポリエステル繊維の繊維布帛と前記繊維布帛に付与された高分子弾性体とを含む繊維基材を含み、少なくとも1種のカチオン染料で染色されており、
    前記樹脂層は、明度L * 値>50であり、前記人工皮革基材との明度差ΔL * が10以上であることを特徴とする樹脂層付人工皮革。
  2. 前記繊維布帛は、不織布を含む請求項1に記載の樹脂層付人工皮革。
  3. 荷重750g/cm,50℃,16時間の条件における厚さ0.8mmの塩化ビニルフィルムへの色移行性評価における色差級数判定が4級以上である、前記人工皮革基材を含む、請求項1または2に記載の樹脂層付人工皮革。
  4. 表面にポリウレタン接着剤を介して130℃で1分間、5Kg/cm2の条件で厚さ250μmの白色ポリウレタンフィルムを圧着した樹脂層付人工皮革を形成し、前記樹脂層付人工皮革を150℃で1分間、20Kg/cm2で熱処理したときの該白色ポリウレタンフィルムの色差級数判定が3級以上である、前記人工皮革基材を含む、請求項1~3の何れか1項に記載の樹脂層付人工皮革。
  5. メチルエチルケトン(MEK)による色移行性評価における色差級数判定が2級以上である、前記人工皮革基材を含む、請求項1~4の何れか1項に記載の樹脂層付人工皮革。
  6. ソフトネスと厚みとの積が2以上である、前記人工皮革基材を含む、請求項1~5の何れか1項に記載の樹脂層付人工皮革。
  7. 前記繊維基材100質量部に対して0.5~20質量部の前記カチオン染料を含有する、前記人工皮革基材を含む、請求項1~6の何れか1項に記載の樹脂層付人工皮革。
  8. 前記人工皮革基材が、少なくとも一面を立毛処理した立毛調人工皮革である、請求項1~7の何れか1項に記載の樹脂層付人工皮革。
  9. 甲材と、前記甲材に接合されたアウトソールとを含む靴であり、
    前記甲材は、明度L * 値≦50の表面を有し、カチオン染料可染性ポリエステル繊維の不織布と前記不織布に付与された高分子弾性体とを含む繊維基材を含む、少なくとも1種のカチオン染料で染色された、立毛調人工皮革を含み、
    前記アウトソールは、明度L * 値>50であり、前記立毛調人工皮革との明度差ΔL * が10以上であることを特徴とする靴
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