JP5106931B2 - ボール - Google Patents

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Description

本発明はバスケットボール用、ハンドボール用、ラグビーボール用、アメリカンフットボール用のいずれかのボールに関するものである。さらに詳しくは、本発明は、十分な表面摩耗強度と優れたクッション性、ノンスリップ性を有し、バスケットボール、ハンドボール、ラグビーボール、アメリカンフットボールに好適に使用できるボールに関するものである。
バスケットボール、ハンドボール、ラグビーボール、アメリカンフットボール等のボールには種々の特性が要求される。例えば、手や床面などとの摩擦、衝突を繰り返す表面素材に対しては、高レベルの表面摩耗強度が要求され、また、手でボールに直接触れるような使用形態では、ボールをキャッチする際の指先に与える衝撃を低減するソフトなクッション性が要求される。加えて、さらに最近では、汗でボール表面が濡れた際にも良好なコントロール性が要求されることが多い。
クッション性を有するボールを得る方法として、従来より各種の方法が提案されている。例えば、無孔質高分子弾性体層(第1層)、多孔質高分子弾性体層(第2層)、高分子弾性体と不織布とからなる層(第3層)、及び不織布層(第4層)の少なくとも4層からなる皮革様シート並びにその皮革様シートからなるボールが提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1の方法では、実使用に耐え得る耐久性を有する高分子弾性体を用いて第1層と第2層を形成すると、クッション性が不十分であり、バスケットボール等のスポーツ用ボール等に好適に使用できるものではなかった。
また、ポリウレタン層により被覆された凹凸模様を有する繊維質基材の表面に、ポリウレタンを主体とした透明な無孔質層が積層されている合成皮革であって、該凹部と該無孔質層との間に空気層が存在し、かつ該凸部と該無孔質層の接着部分の総面積が合成皮革の表面積の50〜90%である合成皮革が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、特許文献2においても、バスケットボール等の手で扱うボールとしてはクッション性と実用に耐え得る耐久性を両立するものは得られていない。
また、バスケットボール等のボールには、操作性を向上するための特性としてノンスリ
ップ性が要求される。ノンスリップ性に優れたバスケットボールとしては、ボール本体の
外表面に、9個ないし12個のカバーパネルとそれらのカバーパネルを接合する溝形成部
材からなるバスケットボールが提案されている(特許文献3参照)。しかしながら、特許
文献3においては、カバーパネルの接合部分の溝形成部材の面積比率が小さいため、十分
なノンスリップ性を得ることは困難である。
また、外表面に多数の多角形の凹部を有するバスケットボールが提案されている(特許文献4参照)。しかしながら、このような多角形の凹部を設けると、繊維基材を含むシートからなるボールにおいては、ソフト性、クッション性及び触感に劣り、地面との衝突時における耐磨耗性が低下したり、ボール表面が汚れ易いという問題がある。
さらに、外表面に多数の特定の窪みを有するバスケットボールが提案されている(特許文献5参照)。特許文献5によると、この窪みの形状は、凸凹部の高低差が200〜500μm、隣接する凹部の垂直投影面積が79〜314mm2(直径10〜20mm)、凹部同士の平均間隔が8〜16mm(5/16 - 5/8 inches)である。しかしながら、繊維基材を含むシートからなるボールにおいては、このように大きな窪みを設けると耐磨耗性が低下したり、クッション性、ノンスリップ性が劣るという問題がある。
また、ポリウレタンを含有する繊維素材の表面にポリウレタンの湿式凝固被覆層が積層され、該被覆層表面に複数の突起と突起間の谷を有し、該突起の側面が開孔している吸汗性を有するボール用素材(特許文献6参照)が提案されている。しかしながら、特許文献4の素材は、汚れが付きやすく、長期間使用していると汚れが蓄積して、ノンスリップ効果が極端に落ち、使用に耐えなくなるとともに、ソフトなクッション性も満足できるものではなかった。
さらに、我々は、表面に実質的に連続する凸部とそれに隣接する半球状の凹部を有するボール用素材(特許文献7参照)を提案しているが、それでも、汗でボール表面が濡れた時に滑りやすいという意見が一部のプレイヤーからあった。
特開2000−102629号公報 特開平11−93081号公報 特開2003−117026号公報 米国特許第4991842号明細書 米国特許第5518234号明細書 米国特許第6024661号明細書 国際公開05/097269号パンフレット
本発明は、このような状況下で、十分な表面摩耗強度と、ソフトなクッション性に優れたバスケットボール、ハンドボール、ラグビーボール、アメリカンフットボールに好適に使用できる、ウェット時のグリップ性も兼ね備えたボールを提供することを目的とする。
本発明者らは、前記の目的を達成するために鋭意検討した結果、表面に実質的に連続した凸部を付与することによって、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1)繊維基材の表面に実質的に連続する凸部とそれに隣接する半球状の凹部を有する被覆層が形成され、凸部と凹部の高低差が50〜1000μm、隣接する凹部の垂直投影面積が3〜30mm2、凹部同士の平均間隔が0.5〜3mmからなるシートであって、さらに表面には深さが該凹部の深さ未満でかつ10〜100μmの二次凹凸が形成され、該二次凹凸の全投影面積の総面積が連続する凸部の面積比率で1〜30%であるシートからなる、バスケットボール用、ハンドボール用、ラグビーボール用、アメリカンフットボール用のいずれかのボールである。そして、
(2)被覆層が高分子弾性体で形成されたものである(1)に記載のボール。
(3)高分子弾性体が多孔質状態となっているものである(1)または(2)に記載のボール。
(4)凹部の垂直投影面積の総面積が、シートの表面積の30〜60%である(1)〜(3)のいずれかに記載のボール。
(5)凸部表面または凹部表面の少なくとも一部がノンスリップ性の樹脂で被覆されている(1)〜(4)のいずれかに記載のボール。
(6)繊維基材が、繊維絡合体と高分子重合体からなる皮革様繊維基材である(1)〜(5)のいずれかに記載のボール。
(7)繊維基材の厚さが0.4〜3.0mmである(1)〜(6)のいずれかに記載のボールである。
本発明のボールは、表面に実質的に連続した凸部とそれに隣接した半球状の特定の凹部を有することにより、十分な表面摩耗強度と、実質的に連続した凸部の優れたクッション性によりボールをキャッチする際の指先に与える衝撃を低減でき、優れたノンスリップ性をも有する。加えて、実質的に連続した凸部(凹部以外の部分)に形成された二次凹凸がボールをつかむ手の指紋の微細な凹凸とかみ合うことで、単にボールの表面に一次凸部のみが存在する場合に比べていっそう優れたノンスリップ性を有する。このため、バスケットボール、ハンドボール、ラグビーボール、アメリカンフットボールとして好適に使用できる。
本発明のボールを構成するシートには、繊維基材の表面に実質的に連続する凸部を有する被覆層が形成されている。この被覆層は高分子弾性体で形成することが好ましい。ここで、「実質的に連続する凸部」とは、例えば平坦なシート表面に間隔を置いて表面側から押圧された複数個の凸形状が転写した凹形状(凹部)の周囲に形成されるような表面状態をいう。
「実質的に連続する凸部」を有するシートの形成方法としては、安定的に所望の凹凸形状が付与可能な方法であれば、従来公知の方法が何れも採用可能である。例えば、繊維基材の表面に形成された高分子弾性体からなる被覆層の表面を、所望の凹凸形状を有するエンボスロール等により型押しをする方法、あるいは所望の凹凸形状を有する離形シートに高分子弾性体液を流延・固化させて形成した高分子弾性体層をシートの表面層として使用する方法などを採用することができる。
また、該凸部に隣接して形成される半球状の凹部(以下、単に凹部と略すこともある。)は、その垂直投影面積が3〜30mm2であり、隣接する凹部同士の平均間隔が0.5〜3mmであり、かつ凸部と凹部の高低差が50〜1000μmであることが重要である。その形成方法としては、例えばエンボスロールを使用して前記の凸形状を賦形する方法、同様の形状の平板エンボス、あるいは離型紙を用いて賦形する方法等がある。しかし、平板エンボスを使用する方法は大量生産には不向きである。また、離型紙を使用する方法は、凹凸部の高低差としては実質的に200〜300μm程度が限界であり、限界に近い付近では凹凸部形成のシャープさが不足する傾向にあり、これを解決するためには大きな押圧が必要となるため風合いがより硬くなる傾向にある。従って、それらの方法の中でも、エンボスロールにより賦形する方法がより好ましい方法である。
エンボスロールを使用して、所定の凸部を形成する場合は、使用するロールのシボ深さとロールの温度、圧力、時間の条件を適宜設定して行うことができる。これらの条件は、特に制限されないが、ロールのシボ深さ80〜1100μm、ロール温度150〜180℃、プレス圧5〜50kg/cm、時間10〜120秒間の範囲で調整し、希望のエンボスシボ深さを得ることができる。
なお、本発明におけるボール、即ちバスケットボール、ハンドボール、ラグビーボール、アメリカンフットボール等の手でボールをつかむ球技のボールは、一般的には、天然皮革や合成皮革等からなる複数個のピースを縫い合わせるか、あるいはボールの芯材にピースを貼り合わせることにより製造される。ここで、個々のピースの外周同士が接する部分が筋、あるいは縫目となるが、本発明でいうシート表面の凸部、凹部とは、ピース外周に形成される筋、あるいは縫目ではなく、ピース内部に形成される形状を指し、気体充填型ボールの表面に一般的に存在する気体充填口や、ボール表面に局所的に形成されるロゴマーク等も含まない。
バスケットボールなどの球技に使用されるボールの表面形状としては、プレイヤーが無作為にボールをつかんだ際に指先に少なくとも凸部が触れるような状態である必要がある。従って、ボール表面の形状としては凸部とそれに隣接して形成する半球状の凹部との高低差は、50〜1000μmであり、好ましくは70〜500μmである。高低差が50μmに満たない場合は、掌でボールを把持した際にボール表面に指先の力が均一に分散するため、良好なノンスリップ性は得られ難い。高低差が1000μmを超えた場合、ノンスリップ性は良好となるが、ボールとして使用した際の耐磨耗性が低下する可能性がある。なお、本発明でいう「凸部と凹部の高低差」とは、凸部の最も高い部分とその凸部に隣接する半球状の凹部の最も深い部分の高低差を断面写真にて測定し、10点の測定値を平均した値をいう。
本発明のシートにおける凹部の垂直投影面積は3〜30mm2であり、好ましくは5〜20mm2である。垂直投影面積が30mm2を超えるとノンスリップ性は良好となるが、ボールとして使用した際の耐磨耗性が低下する。垂直投影面積が3mm2未満の場合は、掌でボールを把持した際に、一本の指先で把持する凹部の個数が増加し、ボール表面に指先の力が均一に分散するため、良好なノンスリップ性は得られ難い。なお、「凹部の垂直投影面積」とは、シート断面に観察される半球状の凹部からこれに連続した凸部にかけた形状において、全て曲線であればシート表面の垂線となす角度が45°の部分を凹部と凸部との境界とし、あるいは角があればその部分を凹部と凸部との境界として、境界線に囲まれた凹部側領域のシート表面に対する垂直投影面積をいう。
凹部の垂直投影面積の総面積は、シートの表面積に対する比率で好ましくは30〜60%であり、より好ましくは40〜50%である。凹部の総面積の割合が30%未満だと、掌でボールを把持した際に、一本の指先で把持する凹部の面積及び個数が減少するため、良好なノンスリップ性は得られ難い場合があり、一方60%を越えるとノンスリップ性は良好となるが、ボールとして使用した際の耐磨耗性が低下する場合がある。ここで、凹部の垂直投影面積の総面積のシート表面積に対する比率は、半球状の凹部の垂直投影面積を電子顕微鏡により測定し、単位面積当りの比率より求める。
また、凹部の形状は半球状であることが重要である。ここで「半球状」とは、完全な半球であることを意味するものではなく、概略の形状が半球状になっていることを意味する。そして、本発明の「半球状」の形状は、球の中心を通らない面で切断して形成される体積の小さい方の立体の形状が好ましい。凹部の形状をこのような半球状とすることで、非半球状では得られないような立体形状自体の耐久性、耐磨耗性と、指先の形状にフィットし、良好なノンスリップ性を兼ね備えたものとすることができる。
また、本発明の半球状の凹部同士の平均間隔は0.5〜3mmである必要がある。0.5mm未満の場合、凹部同士が近づきすぎて凸部の形状が部分的にシャープになりすぎるため、ソフト性、クッション性及び触感、さらに表面摩耗強度に劣るものとなる。また3mmを超える場合、フィット性やノンスリップ性に劣るものとなる。凹部同士の平均間隔は、好ましくは1〜2mmである。
なお、「凹部同士の平均間隔」とは、表面を電子顕微鏡にて撮影し、任意の凹部10点を選び、その凹部の外周を基準に隣りあう凹部の最短距離を測定した平均値をいう。また、凹部が前記のとおり全て曲線であれば、シート表面の垂線となす角度が45°の部分を凹部と凸部との境界とし、あるいは角があればその部分を凹部と凸部との境界として、境界線に囲まれた部分を外周とする。
さらに、本発明のボールを形成するシート状物の表面には深さが半球状の凹部の深さ未満でかつ10〜100μmの二次凹凸が形成されていることが重要である。そして凹部以外の部分に二次凹凸が存在することが凹部内の防汚性の点で好ましい。二次凹凸の形状は特に制限されないが、あらゆる方向についてのノンスリップ性を均一に得るため、突起状、凹み状、さらには不連続な凹部であってもよい。
二次凹凸が凹部の場合、二次凹部の深さは本発明の半球状の凹部の深さ未満であって、10〜100μmである。そして好ましくは、20〜70μmである。凹部の深さが半球状の凹部よりも深い場合、耐磨耗性および審美性に劣り、凹部の深さが10μmに満たない場合、ボールを把持する手の指紋との引っ掛りが不十分となる。凹部の深さが100μmを超える場合は、シャープな凹凸模様を付与することが困難となると共に、審美性の乏しい外観となる。二次凹凸の全投影面積の総面積が、連続する凸部(凹部以外の部分)の面積比率で1〜30%であることが好ましく、3〜20%であることが好ましい。二次凹凸の面積比率が1%に満たない場合は、このボールをつかむ手の指紋の微細凹凸とかみ合う部分が不足し、良好なノンスリップ性を得ることは出来ず、30%を超える場合は、隣接する一次凸部間の間隔が狭くなりすぎ一次凸部を付与した効果が得られなくなり、良好なノンスリップ性が得られないと同時に、審美性の乏しい外観となり好ましくない。

二次凹凸を形成させる方法としては、離型紙を使用する方法、エンボスロール等により型押しをする方法等があるが、工業的な生産性を考慮すると、離型紙を使用する方法よりは、エンボスロール等により賦形する方法が好ましい方法である。
エンボスロールを使用して、所望の二次凹凸を形成する場合は、使用するロールの凹凸部高さとロールの温度、圧力、時間の条件を適宜設定して行うことができる。これらの条件は、特に制限されないが、ロールの凸部高さ80〜700μm、ロール温度150〜180℃、プレス圧5〜50kg/cm、時間10〜120秒間の範囲で調整し、所望の凹部深さを得ることができる。
または、一回の賦形処理で二次凹凸も同時に付与できるよう、一次凹凸の凹部以外の部分に二次凹凸が存在するように、あらかじめ凹凸を付与した形状のエンボスロールを作製して使用することも可能であり、経済的には好ましい方法である。
また、着色処理はエンボス処理の前、後のいずれでも可能であるが、エンボス処理による変色の可能性を考慮すれば、エンボス前に着色処理を行うことが好ましい。着色剤としては、耐熱性、耐光性、摩擦堅牢度の点から顔料が最良である。着色剤の処理方法としては、グラビア法、染色方法、リバースコート、ダイレクトコート等の方法があるが、生産性、コスト等を考慮すればグラビア法が最適である。
本発明においては、必要に応じてノンスリップ性をさらに強化することができる。例えば、連続した凸部あるいは凹部の少なくとも一部にノンスリップ性の樹脂を塗布する方法、凸部あるいは凹部の少なくとも一部をノンスリップ性の樹脂で構成する方法がある。ノンスリップ性の樹脂としては、ブタジエン、イソプレンなどのゴム系モノマーを単独重合又はブロック共重合した樹脂、アクリルモノマーを単独重合又はブロック共重合したアクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマーなどの溶剤型ポリマーおよびエマルジョン型ポリマーが好ましく、またそれらのノンスリップ性を付与する樹脂に他の種類のポリマーを組み合わせてもよい。
またノンスリップ性の樹脂には、ポリテルペン樹脂、石油系炭化水素樹脂など公知の粘着付与剤を添加してもよい。また無機又は有機の粒子や粉体等を添加することによりノンスリップ性を調節することも可能である。さらに軟化剤、充墳剤、老化防止剤などを、表面の摩擦抵抗が低下しない範囲であれば表面樹脂に添加してもよい。
ノンスリップ性の樹脂でシート表面の連続した凸部を被覆する方法としては、種々の方法が使用可能であるが、特に凸部のみをノンスリップ性の樹脂で被覆する場合は、選択的に塗布する方法が好適に用いられる。具体的な方法としては、グラビアロールを用いて転写する方法がある。また、凸部のみならず凹部もノンスリップ性の樹脂で被覆する方法としては、全面に塗布する方法が用いられる。具体的な方法としては、スプレー法による塗布、ナイフコート法などにより表面全面に一定の厚みでコートする方法、工程紙など基材に樹脂を全面塗布して製膜し、接着層を介して基体層に接着する方法、押し出し機からダイを通じて基体層上に均一に押し出して表面に製膜する方法等がある。それらの方法を採用する場合、被覆後に二次凹凸を付与することが好ましい。
本発明のボールを構成するシートは、天然皮革、編織物、あるいは不織布等の各種の繊維基材の表面に前記の被覆層が形成されている。
本発明のシートに用いることができる繊維基材としては、天然皮革、編織物、あるいは不織布等の各種の繊維基材を使用することができる。編織物、あるいは不織布等を繊維基材として使用する場合は、必要に応じてこれらに高分子弾性体が含有されたものなども使用可能であり、また皮革様シートとして従来公知のものが何れも使用可能である。これらの中では、繊維絡合体と高分子弾性体からなる皮革様の繊維基材が好ましく、特に、繊維絡合体として使用する3次元絡合不織布の内部に高分子弾性体がスポンジ状態で含浸されているものが好ましい。これは、シートの表面に存在する連続した凸部に隣接して存在する凹部がボールをつかむ指先とかみ合い、しかもシートの表面のタッチ、風合いが柔軟であり、ある程度のクッション性を有していることによりノンスリップ性が向上するからである。
繊維基材となる編織物、あるいは不織布等を構成する繊維としては、ボールの表面素材として要求される機械物性を満足できれば、従来公知の天然繊維、合成繊維、半合成繊維の中から何れであっても使用可能である。工業的には公知のセルロース系繊維、アクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維等が単独または混合したものが品質安定性、価格等の面から好ましく使用される。本発明においては、特に限定されるものではないが、より天然皮革に近い柔軟な風合いを実現できる極細繊維が好ましく、平均繊度が0.3dtex以下、特に0.1dtex以下であり、また0.0001dtex以上の平均繊度を有するような極細繊維が好ましく用いられる。
このような極細繊維を得る方法としては、(a)目的とする平均繊度の極細繊維を直接紡糸する方法、及び(b)一旦目的とする繊度より太い極細繊維発生型繊維を紡糸し、次いで目的とする平均繊度の極細繊維に変成する方法が挙げられる。
極細繊維発生型繊維を経由して極細繊維を得る方法(b)としては、相溶性を有していない2種以上の熱可塑性ポリマーを複合紡糸または混合紡糸し、この繊維から該ポリマーの少なくとも一成分を抽出除去又は分解除去、あるいは構成ポリマーの界面でポリマーを分割剥離する方法が一般的である。少なくとも一成分を除去するタイプの極細繊維発生型繊維の代表的な繊維の形態としては、いわゆる「海島型繊維」と呼ばれるものや、「多層積層型繊維」などが挙げられる。
海島型繊維の場合には海成分ポリマーを抽出除去又は分解除去することにより、また多層積層型繊維の場合には少なくとも何れかの積層成分ポリマーを抽出除去又は分解除去することにより、残った島成分からなる極細繊維束が得られる。また、構成ポリマーの界面で剥離分割するタイプの極細繊維発生型繊維の代表的な繊維の形態としては、いわゆる花弁状積層型繊維や多層積層型繊維などが挙げられ、物理的処理、あるいは化学的処理により積層する異種ポリマー間の界面で相互に剥離させることにより極細繊維束を得ることができる。
海島型繊維または多層積層型繊維の島成分ポリマーとしては、溶融紡糸可能で、強度等の繊維物性を十分に発揮するポリマーであって、紡糸条件下で海成分ポリマーより溶融粘度が大きく、かつ表面張力が大きいポリマーが好ましい。このような島成分ポリマーとしては、例えばナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−610、ナイロン−612等のポリアミド系ポリマー、およびこれを主体とする共重合体、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系ポリマー、およびこれを主体とする共重合体等が好適に用いられる。
また海島型繊維または多層積層型繊維の海成分ポリマーとしては、島成分ポリマーよりも溶融粘度が低く、島成分との溶解性、分解性を異にし、海成分の溶解、除去に用いられる溶剤または分解剤等への溶解性が大きく、島成分との相溶性の小さいポリマーが好ましい。例えばポリエチレン、変性ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、変性ポリスチレン、変性ポリエステルなどが好適に用いられる。
繊度0.3dtex以下の極細繊維を好適に発生させる極細繊維発生型繊維、すなわち海島繊維の好適な海島体積比率は、海/島=30/70〜70/30の範囲であり、好ましくは40/60〜60/40の範囲である。海成分が30%未満では、溶剤または分解剤などで溶解または分解除去する成分が少なすぎるため、得られる皮革様シートの柔軟性を十分に発現させることが困難である。そのため、柔軟剤等の処理剤を過剰に使用するなどの対策が必要となるが、過剰量の処理剤使用は、引裂き強力などの機械的物性の低下、他の処理剤への影響、タッチへの影響、耐久性の悪化などの諸問題を生じるために好ましくない。海成分が70%を越える場合は、溶解または分解除去後の島成分からなる繊維の絶対量が少なすぎるため、得られる皮革様シートはボール用素材の基材として充分なレベルの機械的物性を安定的に確保することが困難である。また溶解または分解除去する成分が多いことは除去不良による品質の斑や、多量に発生した除去成分の処理などの問題を生じるとともに、生産速度やコスト面などの生産性の観点からも不適切であり、工業的に望ましい形態ではない。
繊維絡合体として好ましく使用される3次元絡合不織布を製造する方法は、ボール用素材の基材に適した重さや緻密さなどが得られる方法であれば特に限定されず、従来公知の諸方法により製造可能である。使用する繊維としては短繊維からなる不織布でも長繊維からなる不織布でもよい。ウェッブ形成方法としては、カード法、抄紙法、スパンボンド法など従来公知の方法であれば何れも使用可能である。ウェッブの絡合方法としては、ニードルパンチ法、スパンレース法など従来公知の諸方法を単独、あるいは組み合わせることが可能である。
上記の諸方法の中でも、特に好ましい方法は、紡糸して得られる繊維を1.5〜5倍程度に延伸した後、機械捲縮を付与し、3〜7cm長程度にカットして短繊維とした後、これをカードで解繊してウェッバーを通して所望の緻密さのウェッブを形成し、得られたウェッブを所望の重さに積層し、次いで、1つあるいは複数のバーブを有するニードルを使用し、300〜4000パンチ/cm2程度でニードルパンチングすることにより厚み方向に繊維を絡合させる方法である。
次いで、得られた3次元絡合不織布などの繊維絡合体に、必要に応じて高分子弾性体を含浸させる。含浸させる方法としては、ディップニップ法、ナイフコート法、バーコート法、ロールコート法、スプレーコート法などの公知の方法により、高分子弾性体の溶液または分散液を繊維絡合体に単独で、あるいは組み合わせて含浸し、乾式法や湿式法によってスポンジ状に多数の空隙を生じるように高分子弾性体を凝固させる。
用いることのできる高分子弾性体としては、皮革様シートの製造に一般的に用いられている公知の高分子弾性体が何れも使用可能であり、例えばポリウレタン系樹脂、ポリエステル系エラストマー、ゴム系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、ポリアミノ酸系樹脂、シリコン系樹脂、およびこれらの変成物、共重合物、あるいは混合物等が好適な例として挙げられる。
これらの高分子弾性体は、水分散液あるいは有機溶剤溶液として繊維絡合体に含浸した後、水分散液を使用する場合は主に乾式法、有機溶剤溶液を使用する場合は主に湿式法により、スポンジ状に凝固させる。水分散液を使用する場合は、感熱ゲル化剤を添加しておくと、乾式法、あるいはこれにスチーミングや遠赤外加熱などの方法を組み合わせることで厚み方向により均一な凝固が可能であり、また有機溶剤を使用する場合は、凝固性調整剤を併用することで、より均一な空隙を得ることができる。繊維絡合体、とりわけ3次元絡合不織布に含浸した高分子弾性体をスポンジ状に凝固させることにより、天然皮革に類似した風合いやボール用素材に適した諸物性を有する基材を得ることができる。
本発明においては、上記した繊維絡合体に含浸する高分子弾性体の中でも、繊維絡合体との複合状態における風合いや諸物性のバランスなどの点から、ポリウレタン系樹脂が好ましく使用される。
ポリウレタン系樹脂の代表例としては、例えば、平均分子量500〜3000のポリエステルジオ−ル、ポリエーテルジオール、ポリエステルエーテルジオール、ポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオールなどから選ばれた少なくとも1種類のポリマージオールと、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの芳香族系、脂環族系、脂肪族系の有機ジイソシアネートなどから選ばれた少なくとも1種の有機ジイソシアネートと、ジオール、ジアミン、ヒドロキシアミン、ヒドラジン、ヒドラジドなどの活性水素原子を少なくとも2個有する低分子化合物から選ばれた少なくとも1種類の鎖伸長剤とを所定のモル比で反応させることにより得られる各種のポリウレタンが挙げられる。ポリウレタンは、必要に応じて、複数種のポリウレタンを混合したものを用いてもよく、また合成ゴム、ポリエステルエラストマー、ポリ塩化ビニルなどの重合体を添加して得た重合体組成物として使用することもできる。
繊維として、上記の極細繊維発生型繊維を使用する場合には、高分子弾性体溶液または分散液を含浸、凝固させた後の複合シートの段階で、あるいは含浸、凝固させる前の繊維シートの段階で、極細繊維化処理することで極細繊維発生型繊維を極細繊維束に変成することにより、極細繊維絡合体と高分子弾性体からなる皮革様の繊維基材を得ることができる。複合シートの段階で極細繊維化処理をした場合には、特に海島型繊維であれば、海成分ポリマーが除去されて極細繊維束と高分子弾性体との間に空隙が生じ、高分子弾性体による極細繊維束の拘束が弱くなるので、皮革様基材の風合いがより柔らかくなる傾向にあり、この方法は本発明において好ましく採用できる方法である。
一方、繊維シートの段階で極細繊維化処理をした場合には、高分子弾性体により極細繊維束が強く拘束されるため、皮革様基材の風合いがより硬くなる傾向にあるものの、皮革様基材中の高分子弾性体比率を少なくすることで硬くなる傾向は抑えることが十分に可能であり、繊維の比率がより高い場合に得られる充実感のあるしっかりした風合いを目的とする場合には好ましい方法でもある。
繊維基材の厚さは目的とする用途、例えばボールの表面素材であれば、ボールの種類や必要とされる物性、あるいはプレイヤーが好むような風合いなどに応じて任意に選択でき、特に限定されるものではないが、好ましくは0.4〜3.0mmである。繊維基材の厚さが0.4mm未満だと、ボール用素材として、引張り強力や引裂き強力、あるいは耐磨耗性などの最低限必要な機械的物性を確保することが困難となる場合がある。一方、繊維基材の厚さが3.0mmを越えると、素材としての機械的物性上のデメリットは特になく、クッション性に関してはむしろ向上すらする傾向にあるが、ボール自体の重さへの影響が大きくなる点で好ましいとは言えない。
また、繊維基材における繊維と高分子弾性体との質量比は、物性や風合いの調節のために適宜選択すればよく、本発明の本質的な意味において特に限定されるものではない。例えば、ボール用素材の風合いとして一般的に好まれるような皮革様の繊維基材としては、上記した複合シートの段階で極細繊維化する場合は、繊維/高分子弾性体の質量比は35/65〜65/35、好ましくは40/60〜60/40の範囲であり、一方、繊維シートの段階で極細繊維化する場合は、繊維/高分子弾性体の質量比は65/35〜95/5、好ましくは60/40〜90/10の範囲である。
繊維基材の表面に高分子弾性体からなる被覆層を形成する方法としては、各種の方法を採用できる。例えば、高分子弾性体の分散液、溶液あるいは溶融液を、基材表面とナイフ、バー、ロールなどとの間に設定した一定のクリアランスで規制した量だけ連続的に基材表面に塗布し、乾式法でフィルム状態に乾燥または多孔質状態に凝固、乾燥させる方法、湿式法で多孔質状態に凝固、乾燥させる方法あるいは溶融造面する方法が挙げられる。
本発明において、高分子弾性体被覆層に連続した凸部をエンボスロールまたは平板エンボス等を用いて形成する場合は、高分子弾性体層が多孔質状態となっていることが好ましく、乾式法または湿式法で凝固、乾燥させる方法が好ましい。また、連続した凸部を離型紙を用いた転写方式で形成する場合は、特に制限はないが、表面タッチや風合いの点から乾式法または湿式法で凝固、乾燥させる方法が好ましい。凝固、乾燥の方法としては、分散液を使用する場合は、発泡剤などの添加剤を使用し、乾式法により凝固、乾燥を連続的に実施する方法が一般的である。溶液を使用する場合は、高分子弾性体の貧溶剤を含む処理液を塗布、あるいは処理浴内へ浸漬することにより、高分子弾性体を多孔質状態で凝固させる方法が一般的で好ましい方法である。
繊維基材として、繊維絡合体と高分子弾性体からなる繊維基材を採用する場合は、繊維基材に含浸させる高分子弾性体の凝固と被覆層を形成する高分子弾性体の凝固とが同時に完了するような方法を採用すると、凝固後の乾燥を1回で済ませることができる上、得られた皮革様シートにおいて繊維基材と高分子弾性体被覆層(多孔質表面層)との一体感が得られやすいので、本発明において好ましく採用される方法である。
また、繊維基材の表面に高分子弾性体被覆層を形成する他の方法としては、高分子弾性体の分散液、あるいは溶液を、一旦フィルムや離型紙などの転写剥離シートに所定量塗布して、前記と同様の方法にて高分子弾性体をフィルム状態に乾燥または多孔質状態に凝固、乾燥した後、これを繊維基材上に接着剤を介して接着するか、あるいは高分子弾性体の溶剤を含む処理液を使用して再溶解により接着するなどして一体化させ、その後で剥離転写シートを剥離する方法などが挙げられる。また、高分子弾性体の分散液、あるいは溶液を同様に一旦転写剥離シートに所定量塗布した後、乾燥または凝固させる前、あるいは途中で基材を貼り合わせて凝固と同時に高分子弾性体層と基材とを一体化させる方法も採用可能である。
被覆層を形成する高分子弾性体としては、樹脂そのものとして滑り易い性質の樹脂よりは、ある程度のノンスリップ性を付与可能な樹脂であることが好ましく、例えば合成ゴム、ポリエステルエラストマー、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン系樹脂等が使用可能である。これらの中でも、弾性、ソフト性、耐摩耗性、多孔質状態の形成性などのバランスの点から、繊維絡合体に含有させる高分子弾性体と同様にポリウレタン系樹脂が好適に用いられる。
ポリウレタン系樹脂としては、前記した各種のポリウレタンが挙げられる。また、必要に応じて複数種のポリウレタンを混合したものを用いてもよく、また合成ゴム、ポリエステルエラストマー、ポリ塩化ビニルなどの重合体を添加して得られる、ポリウレタンを主体とした重合体組成物として使用することもできる。主体として用いられるポリウレタンとしては、耐加水分解性、弾性などの点で、ポリテトラメチレングリコールに代表されるポリエーテル系のポリマージオールを主体として使用したものが好ましく用いられる。
繊維基材上に塗布する高分子弾性体の溶液、あるいは分散液には、着色剤、耐光剤、分散剤などの添加剤が、単独あるいは複数種が組み合わされて目的に応じて適宜添加される。また、その他の添加剤として、多孔質の形状を制御するために、乾式発泡させる場合の発泡剤の他にも、湿式凝固させる場合の凝固調節剤などを必要に応じて選択し、単独あるいは数種を組み合わせて添加することも好ましい。
高分子弾性体としてポリウレタンを使用した場合、ポリウレタンを主体とする溶液を繊維基材上に塗布した後、ポリウレタンの貧溶剤を含む処理浴中に浸漬することで、ポリウレタンを多孔質状態に凝固させることができる。ポリウレタンの貧溶剤としては、代表的には水が好ましく用いられるが、処理浴としては貧溶剤である水にジメチルホルムアミド等のポリウレタンの良溶剤を混合して用いると、その混合比率を適宜設定することにより凝固状態、即ち多孔質状態や形状などが制御可能であり、好ましく採用される方法である。
実施例
次に本発明を具体的に実施例で説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部及び%はことわりのない限り質量に関するものである。
また、以下の実施例及び比較例における、ノンスリップ性、クッション性、ドリブル等の地面との衝突を想定した耐摩耗性テストは、次のとおり評価した。
[ノンスリップ性]
従来のバスケットボール(比較例1)に比べて、滑りにくいか滑りやすいかを、汗をかく前後で、任意に選出した10人のバスケットボールプレーヤーにより評価した。
[クッション性]
従来のバスケットボール(比較例1)に比べて、ボールをキャッチするときの衝撃が強いか弱いかを、任意に選出した10人のバスケットボールプレーヤーにより評価した。
[ドリブル等の地面との衝突を想定した耐摩耗性テスト]
ボールを発射速度37km/時で、1.6m離れた合板に入射角度60度で当てることを2万回くりかえし、その後のボール表面の状態を観察して以下のように評価した。
実用上問題のないレベル:表皮の剥れが見られず、著しい汚れがない。
実用上問題のあるレベル:空気挿入口の周囲や、ボール表面に表皮の剥れが見られる。または、著しく汚れている。
島成分が6−ナイロンであって、海成分が高流動性低密度ポリエチレン(海成分/島成分比率=50/50)からなる海島型混合紡糸繊維を溶融紡糸した。得られた繊維を延伸、クリンプ、カットして、3.5デニール、カット長さ51mmのステープルを得た。このステープルをカードに通し、クロスラッパー方式によりウエブとし積層した。次に針に1箇所のバーブのついたフェルト針を用いて980P/cm2の針刺し密度でニードルパンチして目付450g/m2の不織布を得た。この不織布を加熱乾燥、プレスして表面を平滑にした後に16%のポリエーテル系ポリウレタンのジメチルホルムアミド(以下、DMFと略す)溶液を含浸し、DMF水溶液で凝固し、湯洗、熱トルエンで繊維中のポリエチレンを抽出除去し、6−ナイロンの極細繊維と多孔質状のポリウレタンからなる厚さ1.2mmの人工皮革様の繊維基材を得た。
この人工皮革様の繊維基材の表面にポリエーテル系ポリウレタン(大日本インキ化学工業株式会社製、MP−105)の固形分20%DMF溶液を400g/m2塗布し、水中で凝固して多孔質状態とした高分子弾性体層を形成した。その上に、茶色顔料を含むエーテル系ポリウレタンインクで着色し、高さ1mm、上面からの投影面積が8mm2の半球状の凸部を有するエンボスロールを使用して、温度170℃、圧力10kg/cm、処理速度1m/分で型押しを行い、被覆層を形成した。
得られた凹凸形状は、連続した凸部とそれに隣接する凹部との高低差が何れの場所においてもほぼ同様の大きさであって、その平均値が400μmであり、また凹部の垂直投影面積、即ちシート表面に垂直な上面方向からの凹部の投影面積が何れの凹部もほぼ同様の大きさであって、その平均値が7mm2であり、凹部同士の平均間隔が1.5mmであり、凹部の投影面積の合計面積の割合がシート全体の投影面積の40%であった。
次いで、連続した凸部のみを、先に着色した色にカーボンブラックを添加して黒味方向に色調を変化させたエステル系ポリウレタンインクでグラビア法により着色した。そして凸部着色面上に、高さ60μm、垂直投影面積が0.06mm2の突起状の凸部を有するエンボスロールを用いて、温度150℃、圧力6kg/cm、処理速度2m/分で型押しを行って二次凹凸を形成した。二次凹凸は、38μmで、二次凹部の全投影面積の割合が基材シートの全表面積の12%であった。
以上により得られたシートで被覆したバスケットボールを作製し、バスケットボールの試合に使用した。その結果、凸部の引っ掛かりにより従来のバスケットボールに比べて優れたノンスリップ性を有すると共に、凸部のクッション性としては従来のバスケットボールに比べると、ボールをキャッチする際に指先に受ける衝撃が大幅に低減されており、耐摩耗性も優れていた。成人用としてはもちろんのこと、特に指先が未発達な児童用としては従来のバスケットボールには実現できなかった適性を有するボールであった。また、汗をかいた場合にも良好なノンスリップ性を維持していた。
実施例1にて製造した二次凹凸を形成後のシート表面の凸部に、ノンスリップ性を付与する樹脂としてポリカーボネート系ポリウレタン(株式会社セイコー化成製、U−5811)のDMF溶液(固形分濃度7%)を、150メッシュのグラビアロールにより2段塗布した後、130℃で乾燥した。
このようにして得られたシートで実施例1と同様にバスケットボールを作製し、使用したところ、実施例1と同様のクッション性と、実施例1より一段と優れたノンスリップ性を有しており、耐摩耗性も優れていた。そして一般的に成人より握力の弱い児童用としてさらに優れた適性を有するボールであった。
比較例1
実施例1にて製造した凸部着色後のシート表面の凸部に、二次凹凸部を形成させることなく、実施例2と同様の方法でノンスリップ性を付与する樹脂を塗布した。
このようにして得られたシートで実施例1と同様にバスケットボールを作成し、使用したところ、従来のバスケットボールに比べて優れたノンスリップ性を有すると共に、凸部のクッション性としては従来のバスケットボールに比べると、ボールをキャッチする際に指先に受ける衝撃が大幅に低減されており、成人用としてはもちろんのこと、特に指先が未発達な児童用としては従来のバスケットボールには実現できなかった適性を有するボールであったが、実施例1のボールに比べノンスリップ性が低下し、特に汗でボール表面が濡れた際には滑ってコントロール性が低下した。
比較例2
実施例1にて製造した凸部着色後のシート表面に高さ200μm、垂直投影面積が0.08mm2の台形状の凸部を有するエンボスロールを用いて、温度150℃、圧力6kg/cm、処理速度2m/分で型押しを行って二次凹凸を形成した。二次凹凸は、123μmで、二次凹部の全投影面積の割合が基材シートの全表面積の16%であった。
このようにして得られたシートは、表面がざらついた感じとなり、ボールをキャッチする際に指先に受ける衝撃が逆に強く、耐磨耗性に劣るものであった。また、審美性に乏しい外観となった。
比較例3
実施例1にて製造した凸部着色後のシート表面に高さ10μm、垂直投影面積が0.02mm2の台形状の凸部を有するエンボスロールを用いて、温度150℃、圧力6kg/cm、処理速度2m/分で型押しを行って二次凹凸部を形成した。二次凹凸部は、5μmで、二次凹部の全投影面積の割合が基材シートの全表面積の4%であった。
このようにして得られたシートで実施例1と同様にバスケットボールを作成し、使用したところ、比較例1と同様に、実施例1のボールに比べノンスリップ性が低下し、特に汗でボール表面が濡れた際には滑ってコントロール性が低下するという意見があった。
比較例4
エンボスロールにて付与する凹凸模様として一般的なバスケットボールに用いられている形状、即ち直径1.8mm程度で、高低差が200μm程度の半球状の突起が0.5mm間隔程度で隣接して多数存在し、実質的に連続した凸部を有しない形状のシート表面が得られるエンボスロールを使用した以外は、実施例1と同様の条件で処理した。得られたシートを表面に有するバスケットボールを作成して使用したところ、実施例1に比べるとクッション性に劣り、ボールをキャッチする際に指先に受ける衝撃が大きく、成人用としては使用可能ではあるが、児童用には不向きなレベルのボールであり、また実施例1と比べて滑りやすいものであった。
本発明のボールは、表面に実質的に連続した凸部を有することにより、十分な表面摩耗強度と、優れたクッション性、ノンスリップ性を有する。また、凸部に隣接した所定の凹部が形成されていると、ボールをつかむ手のかみ合い効果に優れ、ノンスリップ性がさらに向上する。さらには、二次凹凸により、汗や水にぬれたときにも滑りにくいという優れたノンスリップ性をも有する。このため、バスケットボール、ハンドボール、ラグビーボール、アメリカンフットボールに好適に使用できる。

Claims (7)

  1. 繊維基材の表面に実質的に連続する凸部とそれに隣接する半球状の凹部を有する被覆層が形成され、凸部と凹部の高低差が50〜1000μm、隣接する凹部の垂直投影面積が3〜30mm2、凹部同士の平均間隔が0.5〜3mmからなるシートであって、さらに表面には深さが該凹部の深さ未満でかつ10〜100μmの二次凹凸が形成され、該二次凹凸の全投影面積の総面積が連続する凸部の面積比率で1〜30%であるシートからなる、バスケットボール用、ハンドボール用、ラグビーボール用、アメリカンフットボール用のいずれかのボール。
  2. 被覆層が高分子弾性体で形成されたものである請求項1に記載のボール。
  3. 高分子弾性体が多孔質状態となっているものである請求項1または2に記載のボール。
  4. 凹部の垂直投影面積の総面積が、シートの表面積の30〜60%である請求項1〜3のいずれか1項に記載のボール。
  5. 凸部表面または凹部表面の少なくとも一部がノンスリップ性の樹脂で被覆されている請求項1〜のいずれか1項に記載のボール。
  6. 繊維基材が、繊維絡合体と高分子重合体からなる皮革様繊維基材である請求項1〜のいずれか1項に記載のボール。
  7. 繊維基材の厚さが0.4〜3.0mmである請求項1〜のいずれか1項に記載のボール。
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