JP4699104B2 - 背裏材および肩バンド並びにそれらを用いた鞄 - Google Patents

背裏材および肩バンド並びにそれらを用いた鞄 Download PDF

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本発明は、十分な表面摩耗強度と優れたクッション性あるいはフィット性を有する背裏材および肩バンド材、並びにそれらを備えた使用感・着用感が良好な鞄、特にランドセルなどの背負い鞄類に関するものである。
従来より、使用、即ち持ち運ぶ際に、体との接触面積が比較的広い背負い鞄類、例えばランドセル、リュックサック、ナップサック、バックパックやワンショルダー、ウエストバック、ヒップバッグなどの使用感、特に背負い心地や肩への掛け心地をよくするための改良が種々提案されている。背負い鞄類の中でも、大人に比べて体が小さい児童が使用するランドセルの背負い心地改良については、とりわけ多様な提案がなされてきた。たとえば、ランドセルの肩バンド材を、登山用のリュックサックのようにS字状にしたり、あるいは、肩に当接する部分に長孔を開口させることによって、肩バンド材を児童の肩の形に沿って変形しやすくしている例がある(特許文献1参照)。
また、ランドセルに収納される教材の大型化に伴う重量増加による児童の負担を軽減するため、ランドセルの背裏材の下部に発泡ウレタン等からなるクッション層を内包させて、横長の膨出部を形成すること、あるいは、さらにその背裏材の左右側部にもクッション層を内包させて縦長の膨出部をも形成することにより、児童の背骨、特に腰部を十分に保護するようにしたものが商品化され、上市されている。
また、クッション性あるいはフィット性を高めるためには、肩バンド材や背裏材に内包させたクッション層の厚さを厚くすればよいようにも思われるが、クッション層を厚くすることには以下の問題がある。
例えば、クッション層をあまり厚くすると、肩バンド材は硬く曲げにくいものになってしまう。特に、ランドセルを店頭展示するときや箱に梱包するときには、肩バンド材を蓋の部分のカーブに沿わせて、本来の使用時とは逆側に反らすことが行われ、このときクッション層内部に生ずる応力により、該クッション層の特定の箇所に折り癖がつき易く、さらには、牛革あるいは人工皮革製の表地に折り目が付いてしまうこともあり、商品価値を低下させてしまう。また、該肩バンド材の肩に当接する面の平坦性が損なわれ、肩から脇腹にかけての装着感が低下し易く、また、クッション層自体の通気性が低いものは蒸れ易くなる。
背裏材についても、上記膨出部に内包させるクッション層を厚くすると、背中に馴染まず、装着感を損なってしまい易い。また、最初は馴染んでいても、成長に伴い膨出部の位置が背中の凹凸に合わなくなってしまうこともあり、、肩バンド材の場合と同様、通気性が低いものは蒸れ易くなってしまう。
特開2004−65462号公報(第3頁、第2−5行)
本発明は、上記問題を課題とし、クッション性あるいはフィット性および装着感が良好な背裏材,肩バンド材およびそれらを備えたランドセル等の背負い鞄類を提供する。
本発明者らは、前記の目的を達成するために鋭意検討した結果、表面に実質的に連続した凸部を付与したシート(A)を縫製してなる背裏材または肩ベルトを付与することによって、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1)表面に実質的に連続する凸部とそれに隣接する凹部を有し、該凸部と該凹部の高低差が50〜800μm、隣接する凹部の垂直投影面積が3〜30mm、凹部同士の平均間隔が0.5〜5mmであり、厚さ方向の20%圧縮応力が0.1〜1.0kg/cmであるシート(A)を少なくとも一部に用いた背裏材または肩バンド材
(2)凹部の垂直投影面積の総面積が、シート(A)の表面の面積の30〜60%である前記(1)の背裏材または肩バンド材
(3)シート(A)の表面に存在する凹部の形状が半球状である前記(1)または(2)の背裏材または肩バンド材
(4)シート(A)が繊維基材を含むものである前記(1)〜(3)のいずれかの背裏材または肩バンド材
(5)シート(A)の表面が高分子弾性体で形成されている前記(1)〜(4)のいずれかの背裏材または肩バンド材
(6)シート(A)の少なくとも表面に、消臭剤もしくは抗菌剤が付与されている前記(1)〜(5)のいずれかの背裏材または肩バンド材
(7)前記(1)〜(6)のいずれかの背裏材または肩バンド材を用いた鞄。
及びである。
本発明の背裏材または肩バンド材は、表面に特定の凹凸部を有することにより、十分な表面摩耗強度および優れたクッション性あるいはフィット性を有し、特にそれらを用いた鞄類は、着用時に背中や肩が受ける衝撃を低減し、使用感・着用感に優れる。
本発明の背裏材または肩バンド材を用いた鞄類を構成するシート(A)は、表面に実質的に連続する凸部を有するシートである。ここで、「実質的に連続する凸部」とは、例えば平坦なシート表面に間隔を置いて表面側から押圧された複数個の凸形状が転写した凹形状(凹部)の周囲に形成されるような表面状態をいう。
また、シート(A)の表面は高分子弾性体で形成することが好ましく、「実質的に連続する凸部」は高分子弾性体からなることがより好ましい。「実質的に連続する凸部」を有するシートの形成方法としては、安定的に所望の凹凸形状が付与可能な方法であれば、従来公知の方法が何れも採用可能である。例えば、少なくとも表面が高分子弾性体からなる層により形成されたシート(A)の表面を、所望の凹凸形状を有するエンボスロール等により型押しをする方法、あるいは所望の凹凸形状を有する離型シートに高分子弾性体液を流延・固化させて形成した高分子弾性体層をシート(A)の表面層として使用する方法などを採用することができる。
また、該凸部に隣接して形成される凹部は、その垂直投影面積が3〜30mmであり、隣接する凹部同士の平均間隔が0.5〜5mmであり、かつ凸部と凹部の高低差が50〜800μmであることが重要である。その形成方法としては、例えばエンボスロールを使用して前記の凸形状を賦形する方法、同様の形状の平板エンボス、あるいは離型紙を用いて賦形する方法等がある。しかし、平板エンボスを使用する方法は大量生産には不向きである。また、離型紙を使用する方法は、凹凸部の高低差としては実質的に200〜300μm程度が限界であり、限界に近い付近では凹凸部形成のシャープさが不足する傾向にあり、これを解決するためには大きな押圧が必要となるため風合いがより硬くなる傾向にある。従って、それらの方法の中でも、エンボスロールにより賦形する方法がより好ましい方法である。
エンボスロールを使用して、所定の凸部を形成する場合は、使用するロールのシボ深さとロールの温度、圧力、時間の条件を適宜設定して行うことができる。これらの条件は、特に制限されないが、ロールのシボ深さ80〜1100μm、ロール温度140〜180℃、プレス圧5〜50kg/cm、時間1〜120秒間の範囲で調整し、希望のエンボスシボ深さを得ることができる。
なお、ランドセルなどの背負い鞄類は、一般的には、天然皮革や合成皮革、さらには種々のテキスタイル等からなる複数個のピースを縫い合わせ、接着、接続する。そして、中でも背裏材または肩バンド材はボール紙や樹脂を含浸させ硬化させた繊維質シート等の芯材に特定のピースを貼り合わせたものを縫い合わせることにより製造されることが多い。本発明でいう背裏材または肩バンド材に用いられるシート(A)表面の凸部、凹部とは、ピースの外周に形成される筋、あるいは縫い目ではなく、ピース内部に形成されるシート(A)に由来する凹凸形状を指し、シート(A)裏面に接着されたクッション材等の異素材とシートを縫い合わせる際にシート(A)表面に一般的に形成される縫い目や、シート(A)表面に局所的に形成されるロゴマーク等も含まない。
着用時の優れたクッション性あるいはフィット性が発現するためには、鞄の背裏材や肩バンド材の一部に使用されるシート(A)の表面形状としては、児童が背負った際に連続した凸部のみが背中および肩に触れるような状態となる必要がある。従って、背裏材や肩バンド材に使用されるシート(A)表面の形状としては、凸部とそれに隣接して形成する凹部との高低差は、50〜800μmであることが重要であり、好ましくは70〜500μmである。高低差が50μmに満たない場合は、着用時に背裏材およびバンド材表面に背中および肩からうける力が均一に分散するため、良好なクッション性あるいはフィット性は得られ難い。高低差が800μmを超えた場合、クッション性あるいはフィット性は良好となるが、着用時の耐磨耗性が低下する可能性がある。また、背裏材の場合には芯材およびクッション材と組み合わせて用いられるシートの厚みは1.0mm以下であることが一般的であり、800μmを超えた高低差を有する凹凸を表面に形成させることは実質的に困難となる。
なお、本発明でいう「凸部と凹部の高低差」とは、凸部の最も高い部分とその凸部に隣接する連続する凹部の最も深い部分の高低差を断面写真にて測定し、10点の測定値を平均した値をいう。
本発明のシート(A)における凹部の垂直投影面積は3〜30mmであることが重要であり、好ましくは5〜20mmである。垂直投影面積が30mmを超えるとクッション性あるいはフィット性は良好となるが、相対的に凸部の垂直投影面積が小さくなるために着用時の耐磨耗性が低下する。垂直投影面積が3mm未満の場合は、着用時に背裏材および肩バンド材表面に背中および肩からうける力が均一に分散するため、良好なクッション性あるいはフィット性は得られ難い。なお、「凹部の垂直投影面積」とは、シート断面に観察される凹部からこれに連続した凸部にかけた形状において、全て曲線であればシート表面の垂線となす角度が45°の部分を凹部と凸部との境界とし、あるいは角があればその部分を凹部と凸部との境界として、境界線に囲まれた凹部側領域のシート表面に対する垂直投影面積をいう。
凹部の垂直投影面積の総面積は、シート(A)の表面の面積に対する比率で好ましくは30〜60%であり、より好ましくは40〜50%である。凹部の総面積の割合が30%未満だと、着用時に背中および肩が接触する凹部の面積が減少するため、背裏材および肩バンド材表面に背中および肩からうける力が均一に分散するため、良好なクッション性あるいはフィット性は得られ難い場合があり、一方60%を越えるとクッション性あるいはフィット性は良好となるが、鞄として使用した際の耐磨耗性が低下する場合がある。ここで、凹部の垂直投影面積の総面積のシート(A)の表面の面積に対する比率は、凹部の垂直投影面積を電子顕微鏡により測定し、単位面積当りの比率より求める。
また、凹部の形状は半球状であることが好ましい。ここで「半球状」とは、完全な半球であることを意味するものではなく、概略の形状が半球状になっていることを意味する。そして、本発明の「半球状」の形状は、球の中心を通らない面で切断して形成される体積の小さい方の立体の形状が好ましい。
凹部の形状を半球状とすることで、立体感が強調された独特の外観が得られると共に、立体形状自体の耐久性、耐磨耗性において良好な結果が得られるだけでなく、安定的に良好なクッション性あるいはフィット性が得られるようになる。
また、本発明の凹部同士の平均間隔は0.5〜3mmである必要がある。0.5mm未満の場合、凹部同士が近づきすぎて凸部の形状が部分的にシャープになりすぎるため、ソフト性、クッション性、フィット性および触感、さらに表面摩耗強度に劣るものとなる。また3mmを超える場合、クッション性あるいはフィット性に劣るものとなる。凹部同士の平均間隔は、好ましくは1〜2mmである。
なお、「凹部同士の平均間隔」とは、表面を電子顕微鏡にて撮影し、任意の凹部10点を選び、その凹部の外周を基準に隣りあう凹部の最短距離を測定した平均値をいう。また、凹部が前記のとおり全て曲線であれば、シート表面の垂線となす角度が45°の部分を凹部と凸部との境界とし、あるいは角があればその部分を凹部と凸部との境界として、境界線に囲まれた部分を外周とする。
また、着色処理はエンボス処理の前、後のいずれでも可能であるが、エンボス処理による変色の可能性を考慮すれば、エンボス前に着色処理を行うことが好ましい。着色剤としては、耐熱性、耐光性、摩擦堅牢度の点から顔料が最良である。着色剤の処理方法としては、グラビア法、染色方法、リバースコート、ダイレクトコート等の方法があるが、生産性、コスト等を考慮すればグラビア法が最適である。
ランドセルなどの背負い鞄類は、長期にわたりほぼ毎日使用されるケースが大半であるから、汗によるにおいを防止することが商品価値の向上につながる。そのため市場に出回る多くの鞄、とりわけランドセルの、少なくとも背裏材および肩バンド材には抗菌もしくは防臭処理が行われている。本発明においても、背裏材および肩バンド材に用いられるシート(A)に抗菌処理もしくは防臭処理の少なくとも一方を行うことが、鞄の商品価値を高めるためには有効である。特に本発明においては、抗菌処理もしくは防臭処理の少なくとも1つを行ったシート(A)は、表面に凹凸形状を有しているため表面積が広く、抗菌効果もしくは防臭効果が高くなり、商品価値の高い鞄を得ることができる。
抗菌処理もしくは防臭処理の方法としては、特に制限はなく種々の公知の方法が使用可能である。特に凸部のみに抗菌性能もしくは防臭性能を付与する方法としては、グラビアロールを用いて転写する方法などで、抗菌剤もしくは防臭剤を選択的に塗布する方法が好適に用いられる。また、凸部のみならず凹部も抗菌性能もしくは防臭性能を付与する方法としては、スプレー法による塗布、ナイフコート法などにより抗菌剤もしくは防臭剤を表面全面に一定の厚みでコートする方法、抗菌剤もしくは防臭剤を練り込んだ樹脂を工程紙など基材に全面塗布して製膜し、接着層を介して基体層に接着する方法、抗菌剤もしくは防臭剤を練り込んだ樹脂を押し出し機からダイを通じて基体層上に均一に押し出して表面に製膜する方法等がある。
用いる抗菌剤もしくは防臭剤としては、特に制限はなく、公知の抗菌剤もしくは防臭剤を用いることができる。例えば、銀、銅、亜鉛などの金属塩や酸化チタンなどの無機化合物、カテキンやキトサン、ヒノキチオールなどの有機系天然化合物、第4級アンモニウム塩や有機シリコン4級アンモニウム塩などの有機系合成化合物が挙げられる。これらの中で、人体への安全性と抗菌防臭性能のバランスの観点から、無機化合物または有機系天然化合物を選択することがより好ましい。これらの抗菌剤もしくは防臭剤は、1種類の試剤を単独で使用することもできるし、2種類以上の試剤を混合して使用することもできる。
本発明の鞄において、背裏材および肩バンド材の表面を構成するシート(A)は、前記した凹部を表面に形成した際、後述する20%圧縮応力が所定の範囲になるものであれば、その種類は特に限定されず、ゴムのように繊維基材を有していないものでもよいし、天然皮革、編織物、あるいは不織布等の各種の繊維基材を使用することもできるが、20%圧縮応力の制御性や、鞄の背裏材および肩バンド材として好まれる風合いを得易いので織編物、あるいは不織布等の繊維基材を含むものが好ましい。
本発明のシート(A)に好ましく用いることができる繊維基材としては、編織物、あるいは不織布等を主たる構造とし、必要に応じてこれらに高分子弾性体が含有された、いわゆる皮革様シートなどが挙げられ、20%圧縮応力の制御性の点からは、繊維基材に高分子弾性体からなる被覆層を設けたものがより好ましい。また、主たる構造としては繊維絡合不織布、または不織布と織編物とが絡合一体化したものが好ましく、これに含有させる高分子弾性体は、スポンジ状態で存在するものがクッション性あるいはフィット性の点で好ましい。
繊維基材となる編織物、あるいは不織布等を構成する繊維としては、鞄の背裏材または肩バンド材の表面素材として要求される機械物性を満足できれば、従来公知の天然繊維、合成繊維、半合成繊維の中から何れであっても使用可能である。工業的には公知のセルロース系繊維、アクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維等が単独または混合したものが品質安定性、価格等の面から好ましく使用される。本発明においては、特に限定されるものではないが、より天然皮革に近い柔軟な風合いを実現できる極細繊維が好ましく、平均繊度が0.3dtex以下、特に0.1dtex以下であり、また0.0001dtex以上の平均繊度を有するような極細繊維あるいは極細繊維束が好ましく用いられる。
このような極細繊維を得る方法としては、(a)目的とする平均繊度の極細繊維を直接紡糸する方法、及び(b)一旦目的とする繊度より太い極細繊維発生型繊維を紡糸し、次いで目的とする平均繊度の極細繊維に変成する方法が挙げられる。
極細繊維発生型繊維を経由して極細繊維を得る方法(b)としては、相溶性を有していない2種以上の熱可塑性ポリマーを複合紡糸または混合紡糸し、この繊維から該ポリマーの少なくとも一成分を抽出除去又は分解除去、あるいは構成ポリマーの界面でポリマーを分割剥離する方法が一般的である。少なくとも一成分を除去するタイプの極細繊維発生型繊維の代表的な繊維の形態としては、いわゆる「海島型繊維」と呼ばれるものや、「多層積層型繊維」などが挙げられる。
海島型繊維の場合には海成分ポリマーを抽出除去又は分解除去することにより、また多層積層型繊維の場合には少なくとも何れかの積層成分ポリマーを抽出除去又は分解除去することにより、残った島成分からなる極細繊維束が得られる。また、構成ポリマーの界面で剥離分割するタイプの極細繊維発生型繊維の代表的な繊維の形態としては、いわゆる花弁状積層型繊維や多層積層型繊維などが挙げられ、物理的処理、あるいは化学的処理により積層する異種ポリマー間の界面で相互に剥離させることにより極細繊維束を得ることができる。
海島型繊維または多層積層型繊維の島成分ポリマーとしては、溶融紡糸可能で、強度等の繊維物性を十分に発揮するポリマーであって、紡糸条件下で海成分ポリマーより溶融粘度が大きく、かつ表面張力が大きいポリマーが好ましい。このような島成分ポリマーとしては、例えばナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−610、ナイロン−612等のポリアミド系ポリマー、およびこれを主体とする共重合体、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系ポリマー、およびこれを主体とする共重合体等が好適に用いられる。
また海島型繊維または多層積層型繊維の海成分ポリマーとしては、島成分ポリマーよりも溶融粘度が低く、島成分との溶解性、分解性を異にし、海成分の溶解、除去に用いられる溶剤または分解剤等への溶解性が大きく、島成分との相溶性の小さいポリマーが好ましい。例えばポリエチレン、変性ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、変性ポリスチレン、変性ポリエステルなどが好適に用いられる。
繊度0.3dtex以下の極細繊維を好適に発生させる極細繊維発生型繊維、すなわち海島繊維の好適な海島体積比率は、海/島=30/70〜70/30の範囲であり、好ましくは40/60〜60/40の範囲である。海成分が30%未満では、溶剤または分解剤などで溶解または分解除去する成分が少なすぎるため、得られるシート(A)の柔軟性を十分に発現させることが困難である。そのため、柔軟剤等の処理剤を過剰に使用するなどの対策が必要となるが、過剰量の処理剤使用は、引裂き強力などの機械的物性の低下、他の処理剤への影響、タッチへの影響、耐久性の悪化などの諸問題を生じるために好ましくない。海成分が70%を越える場合は、溶解または分解除去後の島成分からなる繊維の絶対量が少なすぎるため、得られるシート(A)は鞄の背裏材もしくは肩バンド材用素材の基材として充分なレベルの機械的物性を安定的に確保することが困難である。また溶解または分解除去する成分が多いことは除去不良による品質の斑や、多量に発生した除去成分の処理などの問題を生じるとともに、生産速度やコスト面などの生産性の観点からも不適切であり、工業的に望ましい形態ではない。
繊維絡合体として好ましく使用される3次元絡合不織布を製造する方法は、鞄の背裏材もしくは肩バンド材用素材の基材に適した重さや緻密さなどが得られる方法であれば特に限定されず、従来公知の諸方法により製造可能である。使用する繊維としては短繊維からなる不織布でも長繊維からなる不織布でもよい。ウェッブ形成方法としては、カード法、抄紙法、スパンボンド法など従来公知の方法であれば何れも使用可能である。ウェッブの絡合方法としては、ニードルパンチ法、スパンレース法など従来公知の諸方法を単独、あるいは組み合わせることが可能である。
上記の諸方法の中でも、特に好ましい方法は、紡糸して得られる繊維を1.5〜5倍程度に延伸した後、機械捲縮を付与し、3〜7cm長程度にカットして短繊維とした後、これをカードで解繊してウェッバーを通して所望の緻密さのウェッブを形成し、得られたウェッブを所望の重さに積層し、次いで、1つあるいは複数のバーブを有するニードルを使用し、300〜4000パンチ/cm程度でニードルパンチングすることにより厚み方向に繊維を絡合させる方法である。
次いで、得られた3次元絡合不織布などの繊維絡合体に、必要に応じて高分子弾性体を含浸させる。含浸させる方法としては、ディップニップ法、ナイフコート法、バーコート法、ロールコート法、スプレーコート法などの公知の方法により、高分子弾性体の溶液または分散液を繊維絡合体に単独で、あるいは組み合わせて含浸し、乾式法や湿式法によってスポンジ状に多数の空隙を生じるように高分子弾性体を凝固させる。
用いることのできる高分子弾性体としては、皮革様シートの製造に一般的に用いられている公知の高分子弾性体が何れも使用可能であり、例えばポリウレタン系樹脂、ポリエステル系エラストマー、ゴム系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、ポリアミノ酸系樹脂、シリコン系樹脂、およびこれらの変成物、共重合物、あるいは混合物等が好適な例として挙げられる。
これらの高分子弾性体は、水分散液あるいは有機溶剤溶液として繊維絡合体に含浸した後、水分散液を使用する場合は主に乾式法、有機溶剤溶液を使用する場合は主に湿式法により、スポンジ状に凝固させる。水分散液を使用する場合は、感熱ゲル化剤を添加しておくと、乾式法、あるいはこれにスチーミングや遠赤外加熱などの方法を組み合わせることで厚み方向により均一な凝固が可能であり、また有機溶剤を使用する場合は、凝固性調整剤を併用することで、より均一な空隙を得ることができる。繊維絡合体、とりわけ3次元絡合不織布に含浸した高分子弾性体をスポンジ状に凝固させることにより、天然皮革に類似した風合いや鞄の背裏材もしくは肩バンド材用素材に適した諸物性を有する基材を得ることができる。
本発明においては、上記した繊維絡合体に含浸する高分子弾性体の中でも、繊維絡合体との複合状態における風合いや諸物性のバランスなどの点から、ポリウレタン系樹脂が好ましく使用される。
ポリウレタン系樹脂の代表例としては、例えば、平均分子量500〜3000のポリエステルジオ−ル、ポリエーテルジオール、ポリエステルエーテルジオール、ポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオールなどから選ばれた少なくとも1種類のポリマージオールと、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの芳香族系、脂環族系、脂肪族系の有機ジイソシアネートなどから選ばれた少なくとも1種の有機ジイソシアネートと、ジオール、ジアミン、ヒドロキシアミン、ヒドラジン、ヒドラジドなどの活性水素原子を少なくとも2個有する低分子化合物から選ばれた少なくとも1種類の鎖伸長剤とを所定のモル比で反応させることにより得られる各種のポリウレタンが挙げられる。ポリウレタンは、必要に応じて、複数種のポリウレタンを混合したものを用いてもよく、また合成ゴム、ポリエステルエラストマー、ポリ塩化ビニルなどの重合体を添加して得た重合体組成物として使用することもできる。
繊維として、上記の極細繊維発生型繊維を使用する場合には、高分子弾性体溶液または分散液を含浸、凝固させた後の段階で、あるいは含浸、凝固させる前の段階で、極細繊維化処理することで極細繊維発生型繊維を極細繊維束に変成することにより、極細繊維絡合体と高分子弾性体からなる皮革様の繊維基材を得ることができる。高分子弾性体溶液または分散液を含浸、凝固させた後の段階で極細繊維化処理をした場合には、特に海島型繊維であれば、海成分ポリマーが除去されて極細繊維束と高分子弾性体との間に空隙が生じ、高分子弾性体による極細繊維束の拘束が弱くなるので、皮革様基材の風合いがより柔らかくなる傾向にあり、この方法は本発明において好ましく採用できる方法である。
一方、高分子弾性体溶液または分散液を含浸、凝固する前の段階で極細繊維化処理をした場合には、高分子弾性体により極細繊維束が強く拘束されるため、皮革様基材の風合いがより硬くなる傾向にあるものの、皮革様基材中の高分子弾性体比率を少なくすることで硬くなる傾向は抑えることが十分に可能であり、繊維の比率がより高い場合に得られる充実感のあるしっかりした風合いを目的とする場合には好ましい方法でもある。
繊維基材の厚さは目的とする用途に応じて任意に選択でき、特に限定されるものではないが、鞄、例えばランドセルの背裏材の表面素材であれば、好ましくは0.4〜1.2mmであり、ランドセルの肩バンド材の表面素材であれば、好ましくは1.2〜2.5mmである。ランドセルの背裏材の表面素材であれば、繊維基材の厚さが0.4mm未満だと、引張り強力や引裂き強力あるいは耐磨耗性などの最低限必要な機械的物性を確保することが困難となる場合があり、また、繊維基材の厚さが1.2mmを越えると、素材としての機械的物性上のデメリットは特になく、クッション性あるいはフィット性に関してはむしろ向上すらする傾向にあるが、シート(A)を使用した製品自体の重さへの影響が大きくなる点で好ましくない。一方、ランドセルの肩バンド材表面部分の素材であれば、繊維基材の厚さが1.2mm未満だと、引張り強力や引裂き強力あるいは耐磨耗性などの最低限必要な機械的物性を確保することが困難となる場合があり、また、繊維基材の厚さが2.5mmを越えると、シート(A)の屈曲柔軟性が低下するとともに製品自体の重さへの影響が大きくなる点で好ましいとは言えない。
また低コスト化などの目的で、必要とする質量の約2倍の繊維絡合体に高分子弾性体溶液を含浸・凝固させた後にバンドナイフなどにより厚さ方向に分割することにより、効率よく1度に2枚の繊維基材を製造することもできる。
また、繊維基材における繊維と高分子弾性体との質量比は、物性や風合いの調節のために適宜選択すればよく、本発明の本質的な意味において特に限定されるものではない。例えば、ランドセルの背裏材もしくは肩バンド材用素材の風合いとして一般的に好まれるような皮革様の繊維基材としては、上記した複合シートの段階で極細繊維化する場合は、繊維/高分子弾性体の質量比は35/65〜65/35、好ましくは40/60〜60/40の範囲であり、一方、繊維シートの段階で極細繊維化する場合は、繊維/高分子弾性体の質量比は65/35〜95/5、好ましくは60/40〜90/10の範囲である。
シート(A)が繊維基材の表面に高分子弾性体からなる層を形成している場合、表面を高分子弾性体で被覆する方法としては、各種の方法を採用できる。例えば、高分子弾性体の分散液、溶液あるいは溶融液を、基材表面とナイフ、バー、ロールなどとの間に設定した一定のクリアランスで規制した量だけ連続的に基材表面に塗布し、乾式法でフィルム状態に乾燥または多孔質状態に凝固、乾燥させる方法、湿式法で多孔質状態に凝固、乾燥させる方法あるいは溶融造面する方法が挙げられる。
本発明において、高分子弾性体被覆層に連続した凸部をエンボスロールまたは平板エンボス等を用いて形成する場合は、高分子弾性体層が多孔質状態となっていることが、凹凸模様を容易に形成できる点、得られる背裏材または肩バンド材がフィット性あるいはクッション性に優れる点で好ましく、乾式法または湿式法で凝固、乾燥させる方法が好ましい。また、連続した凸部を離型紙を用いた転写方式で形成する場合は、特に制限はないが、表面タッチや風合いの点から乾式法または湿式法で凝固、乾燥させる方法が好ましい。凝固、乾燥の方法としては、分散液を使用する場合は、発泡剤などの添加剤を使用し、乾式法により凝固、乾燥を連続的に実施する方法が一般的である。溶液を使用する場合は、高分子弾性体の貧溶剤を含む処理液を塗布、あるいは処理浴内へ浸漬することにより、高分子弾性体を多孔質状態で凝固させる方法が一般的で好ましい方法である。
繊維基材として、繊維絡合体と高分子弾性体からなる繊維基材を採用する場合は、基材に含浸させる高分子弾性体の凝固と被覆層を形成する高分子弾性体の凝固とが同時に完了するような方法を採用すると、凝固後の乾燥を1回で済ませることができる上、得られた皮革様シートにおいて繊維基材と高分子弾性体被覆層(多孔質表面層)との一体感が得られやすいので、本発明において好ましく採用される方法である。
また、繊維基材の表面に高分子弾性体被覆層を形成する他の方法としては、高分子弾性体の分散液、あるいは溶液を、一旦フィルムや離型紙などの転写剥離シートに所定量塗布して、前記と同様の方法にて高分子弾性体をフィルム状態に乾燥または多孔質状態に乾燥・凝固した後、これを繊維基材上に接着剤を介して接着するか、あるいは高分子弾性体の溶剤を含む処理液を使用して再溶解により接着するなどして一体化させ、その後で剥離転写シートを剥離する方法などが挙げられる。また、高分子弾性体の分散液、あるいは溶液を、同様に一旦転写剥離シートに所定量塗布した後、乾燥または凝固させる前、あるいは途中で基材を貼り合わせて凝固と同時に高分子弾性体層と基材とを一体化させる方法も採用可能である。
被覆層を形成する高分子弾性体としては、例えば合成ゴム、ポリエステルエラストマー、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン系樹脂等が使用可能である。これらの中でも、弾性、ソフト性、耐摩耗性、多孔質状態の形成性などのバランスの点から、繊維絡合体に含有させる高分子弾性体と同様にポリウレタン系樹脂が好適に用いられる。
ポリウレタン系樹脂としては、前記した各種のポリウレタンが挙げられる。また、必要に応じて複数種のポリウレタンを混合したものを用いてもよく、また合成ゴム、ポリエステルエラストマー、ポリ塩化ビニルなどの重合体を添加して得られる、ポリウレタンを主体とした重合体組成物として使用することもできる。主体として用いられるポリウレタンとしては、耐加水分解性、弾性などの点で、ポリカーボネート系のポリマージオールを主体として使用したものが好ましく用いられる。
繊維基材上に塗布する高分子弾性体の溶液、あるいは分散液には、着色剤、耐光剤、分散剤、さらには消臭剤や抗菌剤等の添加剤が、単独あるいは複数種が組み合わされて目的に応じて適宜添加される。また、その他の添加剤として、多孔質の形状を制御するために、乾式発泡させる場合の発泡剤の他にも、湿式凝固させる場合の凝固調節剤などを必要に応じて選択し、単独あるいは数種を組み合わせて添加することも好ましい。
高分子弾性体としてポリウレタンを使用した場合、ポリウレタンを主体とする溶液を繊維基材上に塗布した後、ポリウレタンの貧溶剤を含む処理浴中に浸漬することで、ポリウレタンを多孔質状態に凝固させることができる。ポリウレタンの貧溶剤としては、代表的には水が好ましく用いられるが、処理浴としては貧溶剤である水にジメチルホルムアミド等のポリウレタンの良溶剤を混合して用いると、その混合比率を適宜設定することにより凝固状態、即ち多孔質状態や形状などが制御可能であり、好ましく採用される方法である。
本発明の鞄は、背裏材や肩バンド材に使用されるシート(A)の厚さ方向の20%圧縮応力が0.1〜1.0kg/cmであることが必要である。20%圧縮強力が0.1kg/cm未満では、鞄着用時の衝撃吸収が大きすぎるため背中および肩への密着感が大きくなり、好ましくない。1.0kg/cmより大きい場合には鞄を背負った際の反発性が強くなり好ましくない。20%圧縮応力がこのような範囲のシート(A)は、繊維基材であれば、上記のように繊維基材、繊維基材の表面存在する高分子弾性体からなる層、表面形態等を調整することによって得ることができる。
こうして得られたシート(A)を少なくとも1部用いて縫製あるいは接着して得られる背裏材もしくは肩バンド材を有する本発明の鞄は、背裏材もしくは肩バンド材の表面に実質的に連続した凸部を有することにより、十分な表面摩耗強度と、優れたクッション性あるいはフィット性を有し、得られた鞄の使用感および着用感に優れる。
次に本発明を具体的に実施例で説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部及び%はことわりのない限り質量に関するものであり、各物性は下記のようにして求めた。
(1)極細繊維の繊度
繊維断面を電子顕微鏡で撮影し、その写真から任意に選び出した50本の極細繊維の断面積の平均値から算出した。
(2)厚さ
JIS L1096に従って、240g/cm2荷重時の厚さを測定した。
(3)20%圧縮応力
圧縮弾性試験機を用いて試験用シート(10cm×10cm)の厚さ方向に荷重をかけその厚さを測定する。荷重240g/cmの時の厚さを基準とし、厚さが20%減少した時の荷重を読みとり、1cm当たりの荷重に変換し20%圧縮応力とする。
島成分が6−ナイロンであって、海成分が高流動性低密度ポリエチレン(海成分/島成分比率=50/50)からなる海島型混合紡糸繊維を溶融紡糸した。得られた繊維を延伸、クリンプ、カットして、3.5デニール、カット長さ51mmのステープルを得た。このステープルをカードに通し、クロスラッパー方式によりウエブとし積層した。次に針に1箇所のバーブのついたフェルト針を用いて980P/cmの針刺し密度でニードルパンチして目付450g/mの不織布を得た。この不織布を加熱乾燥、プレスして表面を平滑にした後に16%のポリエーテル系ポリウレタンのジメチルホルムアミド(DMFと略す)溶液を含浸し、DMF水溶液で凝固し、湯洗、熱トルエンで繊維中のポリエチレンを抽出除去し、6−ナイロンの極細繊維と多孔質状のポリウレタンからなる人工皮革様の繊維基材を得た。
この人工皮革様の繊維基材の表面にポリカーボネート系ポリウレタンの固形分20%DMF溶液を400g/m塗布し、水中で凝固して多孔表面層となった高分子弾性体層を形成した。得られたシートを、酸化チタン系消臭剤のコロイド分散液(触媒化成工業株式会社製 商品名:アトミボールTZR)中に浸漬乾燥させた。酸化チタン系光消臭触媒粉末(株式会社武田薬品工業製 商品名:セブントールNPC)、銀系抗菌剤粉末(触媒化成工業株式会社製 商品名:AIS−NAZ320)および顔料を練り込んだポリカーボネート系ポリウレタンインクでグラビア印刷機を用いて表面の多孔性高分子弾性体層をベージュ色に着色した後、高さ1mm、上面からの投影面積が8mmの半球状の凸部を有するエンボスロールを使用して、温度170℃、圧力10kg/cm、処理速度1m/分で型押しを行った。得られた凹凸形状は、連続した凸部とそれに隣接する凹部との高低差が何れの場所においてもほぼ同様の大きさであって、その平均値が400μmであり、凹部の形状は半球状を有していた。また凹部の垂直投影面積、即ちシート表面に垂直な上面方向からの凹部の投影面積が何れの凹部もほぼ同様の大きさであって、その平均値が7mmであり、凹部同士の平均間隔が1.5mmであり、凹部の投影面積の合計面積に対する割合がシート全体の投影面積の40%であった。以上により得られたシートをバンドナイフおよびサンドペーパーを用いて背裏材用として0.8mm、肩バンド材用として1.5mmに厚み調整した。得られた背裏材用シートおよび肩バンド用シートの20%圧縮応力は、それぞれ0.5kg/cmおよび0.8kg/cmであった。
こうして得られた2種類のシートを背裏材および肩バンドの表面部材として有するランドセルを縫製し10人の小学生の児童に対してモニター試験を行った結果、いずれの児童も「従来のランドセルよりも着用感が良好で持ち易い」と評価した。また、背裏材および肩バンド材の表面部材として使用したシートは、表面磨耗性に優れ、黄色ブドウ球菌を用いた抗菌性試験(財団法人繊維製品新機能評価協議会による統一試験法)にて「抗菌性能」を有していることを確認した。また、シート3gを密封したテドラーバッグ中に、硫化水素ガス15ppmを導入し、蛍光灯下で24時間放置したところ、テドラーバッグ内の硫化水素は消失した。この試験を繰り返し5回実施しても硫化水素ガス除去能は維持されており、シートが「光による消臭性能」も有していることがわかった。
比較例1
実施例1において、エンボスロールにて付与する凹凸模様として、フラットな毛穴ジボ状、即ち平均半径20μmで、平均高低差が40μmの円筒状の陥没が2000個/cmと多数存在する形状のシート表面が得られるエンボスロールを使用した以外は、実施例1と同様の条件で処理した。得られた凹凸形状は、連続した凸部とそれに隣接する凹部との高低差が何れの場所においてもほぼ同様の大きさであって、その平均値が40μmであり、凹部の形状は円筒状を有していた。また凹部の垂直投影面積、即ちシート表面に垂直な上面方向からの凹部の投影面積が何れの凹部もほぼ同様の大きさであって、その平均値が0.001mmであり、凹部同士の平均間隔が0.18mmであり、凹部の投影面積の合計面積に対する割合がシート全体の投影面積の2.5%であった。また、得られた背裏材用シートおよび肩バンド用シートの20%圧縮応力は、それぞれ1.2kg/cmおよび1.8kg/cmであった。得られたランドセルを用いて10人の小学生の児童に対してモニター試験を行った結果、実施例1で得られたランドセルと比してクッション性およびフィット性に劣るため、いずれの児童も「従来のランドセルと同等」と評価した。
比較例2
実施例1において、エンボス処理の温度130℃、圧力4kg/cm、処理速度4m/分として連続した凸部に隣接して存在する凹部との高低差を30μmとした以外は、実施例1と同様の条件で処理した。得られた凹凸形状は、連続した凸部とそれに隣接する凹部との高低差が何れの場所においてもほぼ同様の大きさであって、その平均値が30μmであり、凹部の形状は極浅い半球状を有していた。また凹部の垂直投影面積、即ちシート表面に垂直な上面方向からの凹部の投影面積が何れの凹部もほぼ同様の大きさであって、その平均値が6mmであり、凹部同士の平均間隔が1.7mmであり、凹部の投影面積の合計面積に対する割合がシート全体の投影面積の34%であった。また、得られた背裏材用シートおよび肩バンド用シートの20%圧縮応力は、それぞれ1.1kg/cmおよび1.5kg/cmであった。得られたランドセルを用いて10人の小学生の児童に対してモニター試験を行った結果、実施例1で得られたランドセルと比してクッション性あるいはフィット性に劣るため、いずれの児童も「従来のランドセルと同等」と評価した。
比較例3
実施例1において、高さ1mm、上面からの投影面積が60mmの半球状の凸部を有するエンボスロールを用いることにより、連続した凸部に隣接して存在する凹部の垂直投影面積を50mmとした以外は、実施例1と同様の条件で処理した。得られた凹凸形状は、連続した凸部とそれに隣接する凹部との高低差が何れの場所においてもほぼ同様の大きさであって、その平均値が400μmであり、凹部の形状は極浅い半球状を有していた。また凹部の垂直投影面積、即ちシート表面に垂直な上面方向からの凹部の投影面積が何れの凹部もほぼ同様の大きさであって、その平均値が50mmであり、凹部同士の平均間隔が0.9mmであり、凹部の投影面積の合計面積に対する割合がシート全体の投影面積の63%であった。また、得られた背裏材用シートおよび肩バンド用シートの20%圧縮応力は、それぞれ0.3kg/cmおよび0.6kg/cmであった。得られたランドセルを用いて10人の小学生の児童に対してモニター試験を行った結果、実施例1で得られたランドセルと同等のクッション性あるいはフィット性を有するため、いずれの児童も「従来のランドセルよりも着用感が良好で持ち易い」と評価した。しかし、実着用時に硬い異物と接触することを想定した耐摩耗性テスト結果は実用上問題のあるレベルであり、商品価値は低いものであった。

Claims (7)

  1. 表面に実質的に連続する凸部とそれに隣接する凹部を有し、該凸部と該凹部の高低差が50〜800μm、隣接する凹部の垂直投影面積が3〜30mm、凹部同士の平均間隔が0.5〜5mmであり、厚さ方向の20%圧縮応力が0.1〜1.0kg/cmであるシート(A)を少なくとも一部に用いた背裏材または肩バンド材。
  2. 凹部の垂直投影面積の総面積が、シート(A)の表面の面積の30〜60%である請求項1に記載の背裏材または肩バンド材。
  3. シート(A)の表面に存在する凹部の形状が半球状である請求項1または2のいずれか1項に記載の背裏材または肩バンド材。
  4. シート(A)が繊維基材を含むものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の背裏材または肩バンド材。
  5. シート(A)の表面が高分子弾性体で形成されている請求項1〜4のいずれかに1項に記載の背裏材または肩バンド材。
  6. シート(A)の少なくとも表面に、消臭剤もしくは抗菌剤が付与されている請求項1〜5のいずれかに1項に記載の背裏材または肩バンド材。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の背裏材または肩バンド材を用いた鞄。
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