WO2015108123A1 - 端子圧着構造及び端子圧着方法 - Google Patents

Abstract

　断面Ｕ字状の被覆加締部（２０）が端子（１）の後端部に設けられ、底板部（２１）の上面に被覆電線（Ｗ）の端末の絶縁被覆部分（ＷＢ）が載置された状態で、被覆加締片（２２）が絶縁被覆部分（ＷＢ）を包み込むように加締められている。加締圧着後の絶縁被覆部分（ＷＢ）を略矩形断面にするための平坦面（２３）が被覆加締片（２２）の上面に形成され、その平坦面（２３）の左右幅方向の両端（Ｔ２）が、加締圧着後の絶縁被覆部分（ＷＢ）の左右端（Ｔ１）の位置よりも幅方向外側まで延びている。

Description

端子圧着構造及び端子圧着方法

　本発明は、端子圧着構造及び端子圧着方法に関するものである。

　図１０の（ａ）は従来の一般的なオープンバレルタイプの圧着端子の構成を示す斜視図、図１０の（ｂ）はその端子の後端部に設けられた断面Ｕ字状の被覆加締部の圧着方法の説明図、図１０の（ｃ）は加締圧着後の被覆加締部の断面図である。

　図１０の（ａ）に示すように、コネクタ端子として使用される従来の一般的なオープンバレルタイプの圧着端子１０１は、端子の長手方向（電線の先端の延長方向）の前部に、相手側端子と接触導通する電気接触部１０５を有し、その後部の前側の位置に、被覆電線の導体に対して圧着接続される導体圧着部１１０を有し、そのさらに後側（端子の後端部）に、被覆電線の絶縁被覆部分に加締圧着される被覆加締部１２０を有している。

　被覆加締部１２０は、電気接触部１０５や導体圧着部１１０の底板部と共通な底板部１２１と、該底板部１２１の左右両側縁から上方に延長した一対の被覆加締片１２２と、を有する断面Ｕ字状に形成されている。

　このような構成の圧着端子１０１が被覆電線の端末部に圧着される場合は、まず、被覆電線の先端に、絶縁被覆Ｗｂが除去されて導体Ｗａ（図１０の（ｃ）参照）が露出しせた導体露出部が設けられる。次に、その導体露出部が導体圧着部１１０の底板部の上に載せられ、同時に導体露出部に隣接する絶縁被覆部分が被覆加締部１２０の底板部１２１の上に載せられる。そして、導体圧着部１１０が導体露出部に圧着接続されるととともに、一対の被覆加締片１２２が、絶縁被覆部分を包み込むように内側に曲げられることで、絶縁被覆部分に加締められる。それにより、圧着端子１０１が被覆電線に圧着接続されている。

　被覆加締部１２０の圧着には、通常、図１０の（ｂ）に示すように、クリンパ２１０とアンビル２３０が用いられている。クリンパ２１０は、一対の脚部２１５、２１５の間に下向きに拡開したガイド溝２１３を有している。ガイド溝２１３の入口側の内側面には、圧着端子１０１の一対の被覆加締片１２２、１２２を徐々に内側に押し曲げる斜面状押圧面２１１、２１１が形成されている。さらにガイド溝２１３の奥部の凹所２１２には、被覆加締片１２２、１２２を順番に内側に丸めて絶縁被覆部分ＷＢに加締める左右段違いの湾曲押圧面２１２－１、２１２－２が、入口側の斜面状押圧面２１１、２１１に滑らかに連続して形成されている。

　一方、アンビル２３０は、クリンパ２１０のガイド溝２１３に挿入可能に構成されている。アンビル２３０の上面には、被覆加締部１２０における底板部１２１の下面を載せる凹状の受面２３１が設けられている。

　そして、圧着を行う場合は、アンビル２３０の受面２３１に圧着端子１０１の被覆加締部１２０における底板部１２１が載せられるとともに、一対の被覆加締片１２２、１２２の間に被覆電線Ｗの絶縁被覆部分ＷＢが挿入されて底板部１２１の上に載せられる。次にその状態で、アンビル２３０に対してクリンパ２１０が相対的に下方へ移動することにより、一対の被覆加締片１２２、１２２が、クリンパ２１０の斜面状押圧面２１１、２１１により徐々に内側に押し曲げられる。さらに湾曲押圧面２１２－１、２１２－２の働きによって一対の被覆加締片１２２、１２２が順番に内側に丸められて行き、最終的に、図１０の（ｃ）に示すように、一対の被覆加締片１２２、１２２により絶縁被覆部分ＷＢを包み込むようにして、被覆加締片１２２が絶縁被覆部分ＷＢに加締められる。それにより、圧着端子１０１の被覆加締部１２０が被覆電線Ｗの絶縁被覆部分ＷＢに圧着されている。

　このような端子圧着構造の例は、特許文献１に記載されている。

　ところで、特許文献１に記載の圧着構造では、図１０の（ｃ）に示したように、被覆加締片１２２、１２２の延長方向の長さが十分に長くされて、一方の被覆加締片１２２が他方の被覆加締片１２２によって被覆電線Ｗの絶縁被覆部分ＷＢが断面円形の状態のまま包み込まれるように、絶縁被覆部分ＷＢに対して加締められている。しかし、それとは別の例として、被覆加締片１２２、１２２の延長方向の長さが短くされて、より強固に絶縁被覆部分ＷＢに加締められることが検討されている。

　図１１は、一対の被覆加締片１２２、１２２の長さが短くされて、被覆電線Ｗの絶縁被覆部分ＷＢに加締められた場合の圧着構造の例の断面が示されている。図１１に示すように、圧着端子が収容されるコネクタハウジングのキャビティ（端子収容室）５０は、全て平坦な下壁５１と、左右側壁５２と、上壁５３とにより囲まれた矩形断面を有している。

　この圧着構造では、被覆電線Ｗの外径よりも加締圧着後の被覆加締部１２０の左右幅や高さが小さくなるような強固な圧着が行なわれている関係で、被覆加締部１２０における底板部１２１の両側縁から上方に延長する一対の被覆加締片１２２、１２２が内側に小さな曲率で丸まっている。したがって、加締圧着後の被覆加締部１２０の上面が凸に湾曲していたり、図１１においてＸ２の一点鎖線で囲って示すように、被覆加締部１２０の上部左右両角のＲ部１２２ｃ、１２２ｃが小さな曲率で湾曲していたりする。また、加締圧着後の被覆加締部１２０の底板部１２１も湾曲しており、それに伴い、図１１においてＸ１の一点鎖線で囲って示すように、被覆加締部１２０の下部左右両端のＲ部１２２ｄ、１２２ｄの曲率も小さくなっている。

日本国特開２０１２－１５５８８９号公報

　ところが、このように強固な圧着が行なわれた場合、被覆電線Ｗの絶縁被覆部分ＷＢに対する圧縮率が大きくなるため、左右の被覆加締片１２２、１２２の先端１２２ａ、１２２ａ間に隙間１２５があると、図１１においてＸ４の一点鎖線で示すように、潰れた絶縁被覆Ｗｂがその隙間から外にはみ出して、絶縁被覆材料の盛り上がりＷｂ１を発生する問題があることが分かった。また、図１２においてＸ３の一点鎖線で囲って示すように、被覆加締部１２０の前後に絶縁被覆Ｗｂがはみ出して、盛り上がりＷｂ２、Ｗｂ３ができることもあった。

　このような現象が生じると、図１１に示すように、コネクタハウジングのキャビティ５０に圧着端子１０１が挿入される際に、キャビティ５０の内壁である上壁５３などに、はみ出した絶縁被覆Ｗｂが接触し、圧着端子１０１が挿入しづらくなったりする可能性があり、改善が望まれていた。

　本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、被覆電線の絶縁被覆部分に対する強固な圧着を行いながら、被覆加締部からの絶縁被覆材料のはみ出しを防止することができ、それにより、コネクタハウジングに圧着端子を挿入する際の挿入性を良くすることができる、端子圧着構造及び端子圧着方法を提供することにある。

　本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
　（１）　底板部と該底板部の左右両側縁から上方に延長した一対の被覆加締片とを有する断面Ｕ字状の被覆加締部が後端部に設けられた端子と、前記端子に圧着される被覆電線と、を備え、
　前記底板部の上面に前記被覆電線の端末の絶縁被覆部分が載置された状態で、前記一対の被覆加締片が、前記絶縁被覆部分を包み込むように内側に曲げられることで、前記絶縁被覆部分に加締められて、前記端子が前記被覆電線に圧着される端子圧着構造であって、
　加締圧着後の前記絶縁被覆部分を略矩形断面にするための平坦面が、平坦な押圧面を有するクリンパで前記一対の被覆加締片を押圧することにより、前記一対の被覆加締片の少なくとも上面に形成され、
　前記平坦面の左右幅方向の両端が、加締圧着後の前記絶縁被覆部分の左右端の位置よりも幅方向外側まで延びている端子圧着構造。

　（２）　左右で同一高さに確保された前記平坦面が、加締圧着後の前記一対の被覆加締片の各先端の上面に含まれている上記（１）に記載の端子圧着構造。

　（３）　加締圧着後の前記一対の被覆加締片の両先端が、平面視で、端子前後方向に対して傾斜した傾斜ラインに沿って互いに対向している上記（２）に記載の端子圧着構造。

　（４）　加締圧着後の前記一対の被覆加締片の両先端が、下方に屈曲されて前記絶縁被覆部分に食い込んでおり、
　左右で同一高さの前記平坦面が、前記一対の被覆加締片の屈曲した各先端よりも各基端側の部分の上面に形成されている上記（１）に記載の端子圧着構造。

　（５）　加締圧着後の前記一対の被覆加締片のうちの一方の前記被覆加締片の先端が他方の前記被覆加締片の先端の上に重なっており、
　左右で高さの異なる前記平坦面が、前記一対の被覆加締片の各先端よりも各基端側の部分の上面に形成されている上記（１）に記載の端子圧着構造。

　（６）　底板部と該底板部の左右両側縁から上方に延長した一対の被覆加締片とを有する断面Ｕ字状の被覆加締部が後端部に設けられた端子と、被覆電線と、を圧着する端子圧着方法であって、
　前記底板部がアンビルの上面に載置される工程と、
　前記底板部の上面に前記被覆電線の端末の絶縁被覆部分が載置される工程と、
　前記２つの工程後に、前記アンビルに対してクリンパが相対的に下方へ移動することで、前記アンビルが進入する前記クリンパのガイド溝の押圧面により、前記一対の被覆加締片が前記絶縁被覆部分を包み込むように内側に曲げられて前記絶縁被覆部分に加締められるとともに、平坦な押圧面を有する前記クリンパで前記一対の被覆加締片が押圧されることにより、前記一対の被覆加締片の少なくとも上面に、加締圧着後の前記絶縁被覆部分を略矩形断面にするための平坦面が形成される工程と、
　を備える端子圧着方法。

　上記（１）の構成の端子圧着構造によれば、加締圧着後の被覆加締部の上面に平坦面が確保され、しかも、その平坦面の左右幅方向の両端が、加締圧着後の絶縁被覆部分の左右端の位置よりも幅方向外側まで延ばされている。そこで、加締圧着後の被覆加締部の上部左右端のＲ部の曲率を大きくすることができる。したがって、コネクタハウジングのキャビティ内の空間（矩形断面の空間）が最大限利用されるように、端子圧着部の断面形状をできるだけ矩形に近づけることができる。それにより、電線の外径よりも幅や高さが小さくなるように被覆加締部が圧着された場合でも、Ｒ部の曲率が小さくなる通常の圧着形状よりも、被覆加締部の内部の断面積を広くすることが可能となり、圧着による絶縁被覆材料のはみ出しの問題を解消することができる。その結果、コネクタハウジングのキャビティに端子を挿入する際の挿入性が阻害されるおそれがなくなり、品質の向上が図れる。

　上記（２）の構成の端子圧着構造によれば、左右で同一高さに確保された前記平坦面が、加締圧着後の一対の被覆加締片の各先端の上面に含まれている。そこで、被覆加締部の高さをキャビティ内に挿入できる最大の大きさに設定することができ、被覆加締部の内部の断面積を最大に広げることができる。

　上記（３）の構成の端子圧着構造によれば、加締圧着後の一対の被覆加締片の両先端が、平面視で、端子前後方向に対して傾斜した傾斜ラインに沿って互いに対向している。そこで、加締圧着後の絶縁被覆部分の反力による被覆加締片の広がりを有効に阻止することができる。

　上記（４）の構成の端子圧着構造によれば、加締圧着後の一対の被覆加締片の両先端が、下方に屈曲されて絶縁被覆部分に食い込んでいる。そこで、被覆加締部の内部の断面積を広げつつ、絶縁被覆部分に対する被覆加締片の圧着強度をより高めることができる。

　上記（５）の構成の端子圧着構造によれば、加締圧着後の一対の被覆加締片の先端が互いに重なっているので、絶縁被覆材料のはみ出しをより有効に防ぐことができる。

　上記（６）の構成の端子圧着方法によれば、アンビルに対してクリンパが相対的に下へ移動することにより、クリンパのガイド溝の押圧面により、一対の被覆加締片が、絶縁被覆部分を包み込むように内側に曲げられて絶縁被覆部分に加締められる。また、クリンパの平坦な押圧面により、一対の被覆加締片の少なくとも上面に、加締圧着後の絶縁被覆部分を略矩形断面にするための平坦面が形成される。したがって、コネクタハウジングのキャビティ内の空間（矩形断面の空間）が最大限利用されるように、端子圧着部の断面形状をできるだけ矩形に近づけることができる。それにより、電線の外径よりも幅や高さが小さくなるように被覆加締部が圧着された場合でも、Ｒ部の曲率が小さくなる通常の圧着形状よりも、被覆加締部の内部の断面積を広くすることが可能となり、圧着による絶縁被覆材料のはみ出しの問題を解消することができる。その結果、コネクタハウジングのキャビティに端子を挿入する際の挿入性が阻害されるおそれがなくなり、品質の向上が図れる。

　本発明の端子圧着構造及び端子圧着方法によれば、圧着による絶縁被覆材料のはみ出しの問題を解消することができ、その結果、コネクタハウジングのキャビティに端子を挿入する際の挿入性を阻害するおそれがなくなり、品質の向上が図れる。

　以上、本発明について簡潔に説明した。さらに、以下に説明される発明を実施するための形態（以下、「実施形態」という。）を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。

図１は本発明の第１実施形態に係る端子圧着構造の横断面図である。 図２は本第１実施形態において、被覆加締部の前後に絶縁被覆がはみ出さないようになることを説明するための側面図である。 図３は本第１実施形態の端子圧着構造を得るためのクリンパとアンビルの構成を示す正面図である。 図４は本発明の第２実施形態に係る端子圧着構造の横断面図である。 図５の（ａ）は本第２実施形態の端子圧着構造を得るためのクリンパの正面図、図５の（ｂ）は図５の（ａ）に示したクリンパに対する比較例のクリンパを示す正面図である。 図６は本発明の第３実施形態に係る端子圧着構造の断面図である。 図７の（ａ）は本第３実施形態の端子圧着構造を得るためのクリンパの正面図、図７の（ｂ）は図７の（ａ）に示したクリンパに対する比較例のクリンパを示す正面図である。 図８は本発明の第４実施形態に係る端子圧着構造の横断面図である。 図９は本第４実施形態の端子圧着構造における被覆加締部の上面図である。 図１０の（ａ）は従来の一般的なオープンバレルタイプの圧着端子の構成を示す斜視図、図１０の（ｂ）は図１０の（ａ）に示した端子の後端部に設けられた断面Ｕ字状の被覆加締部の圧着方法を説明するための説明図、図１０の（ｃ）は加締圧着後の被覆加締部の横断面図である。 図１１は本発明により改善する前の端子圧着構造の横断面図である。 図１２は図１１に示した端子圧着構造において、被覆加締部の前後に絶縁被覆がはみ出すようになることを説明するための側面図である。

　以下、本発明の各実施形態を図面を参照して説明する。
［第１実施形態］
　図１は第１実施形態に係る端子圧着構造の横断面図、図２は被覆加締部２０の前後に絶縁被覆Ｗｂがはみ出さないようになることを説明するための側面図、図３はクリンパ７０とアンビル７７の構成を示す正面図である。

　図１及び図２に示すように、本第１実施形態に係る端子圧着構造は、導電性の金属板からプレス成形された圧着端子１と、導体（芯線）Ｗａの周囲が絶縁被覆Ｗｂで包囲された被覆電線Ｗとからなる。圧着端子１の前端部には、相手側端子と接触導通する電気接触部(図示せず)が設けられている。圧着端子１の後端部には、底板部２１と、該底板部２１の左右両側縁から上方に延長した一対の被覆加締片２２、２２とを有する断面Ｕ字状の被覆加締部２０が設けられている。被覆加締部２０の前側には、離間して、導体圧着部１０が設けられている。導体圧着部１０には、被覆電線Ｗの先端の絶縁被覆Ｗｂが除去されて導体Ｗａが露出した導体露出部ＷＡが圧着される。

　圧着端子１はコネクタハウジングのキャビティ（端子収容室）５０に収容されるものであり、キャビティ５０は、全て平坦な下壁５１と、左右側壁５２と、上壁５３とにより囲まれた矩形断面を有している。

　この端子圧着構造を得るには、まず、被覆電線Ｗの先端に導体露出部ＷＡが設けられる。次に、被覆加締部２０の底板部２１がアンビル７７の凹状に湾曲した上面７８に載置される（図３参照）。そして、底板部２１の上面に被覆電線Ｗの端末の絶縁被覆部分ＷＢが載置される。

　次に、その状態で、アンビル７７に対してクリンパ７０が相対的に下方へ移動する。
　ここで、クリンパ７０は、一対の脚部７５、７５の間に、下向きに拡開したガイド溝７３を有している。ガイド溝７３の入口側の内側面には、圧着端子１の一対の被覆加締片２２、２２を徐々に内側に押し曲げる斜面状押圧面（押圧面）７１、７１が形成されている。さらにガイド溝７３の奥部の凹所７２には、被覆加締片２２、２２を内側に丸めて絶縁被覆部分ＷＢに加締めるとともに、その際、被覆加締部２０の上面に平坦面２３を形成するためのクリンパ７０の下方への移動方向と直交する平坦な押圧面７４が、入口側の斜面状押圧面７１、７１から滑らかに連続して形成されている。

　このように構成されたクリンパ７０がアンビル７７に対して相対的に下方へ移動すると、アンビル７７が進入するクリンパ７０のガイド溝７３の斜面状押圧面７１の働きにより、一対の被覆加締片２２、２２が、絶縁被覆部分ＷＢを包み込むように内側に曲げられる。その後、ガイド溝７３の奥部の平坦な押圧面７４に被覆加締片２２の先端２２ａが案内されつつ、この押圧面７４により一対の被覆加締片２２が押圧され、それにより、一対の被覆加締片２２、２２の少なくとも上面に、加締圧着後の被覆加締部２０を略矩形断面にするための平坦面２３が形成される。

　その際、平坦面２３の左右幅方向（図１中、左右方向）の両端Ｔ２が、加締圧着後の絶縁被覆部分ＷＢの左右端Ｔ１の位置よりも幅方向外側まで延びるように平坦面２３が形成される。すなわち、平坦面２３の左右幅寸法Ｔｔは、絶縁被覆部分ＷＢの左右幅寸法Ｔｗよりも大きくなるように、押圧による加締めが行われる。この場合は、左右で同一高さに確保された平坦面２３が、加締圧着後の一対の被覆加締片２２、２２の各先端２２ａの上面に含まれるような、図１に示す圧着構造が得られる。

　本第１実施形態の端子圧着構造によれば、加締圧着後の被覆加締部２０の上面にできるだけ大きな幅を有する平坦面２３が確保され、しかも、その平坦面２３の左右幅方向の両端Ｔ２が、加締圧着後の絶縁被覆部分ＷＢの左右端Ｔ１の位置よりも幅方向外側まで延ばされている。そこで、図１においてＸ２の一点鎖線で囲って示すように、加締圧着後の被覆加締部２０の上部左右端のＲ部２２ｃ、２２ｃの曲率を大きくすることができる。また、加締圧着後の被覆加締部２０の底板部２１の曲率が小さく設定されていることにより、図１においてＸ１の一点鎖線で囲って示すように、被覆加締部２０の下部左右両端部２２ｄ、２２ｄは直角に近い形状になっている。ここで、底板部１２の曲率を小さくするために、アンビル７７の上面７８の曲率半径は、加締圧着後の一対の被覆加締片２２、２２の外面間の距離（クリンプワイド）よりも大きく設定される。

　したがって、コネクタハウジングのキャビティ５０内の空間（下壁５１と左右側壁５２と上壁５３とで囲まれた端子挿入方向から見て矩形断面状の空間）が最大限利用されるように、端子圧着部の断面形状をできるだけ矩形に近づけることができる。それにより、被覆電線Ｗの外径よりも幅や高さが小さくなるように被覆加締部２０が圧着された場合でも、Ｒ部２２ｃの曲率が小さくなる通常の圧着形状よりも、被覆加締部２０の内部の断面積を広くすることが可能となり、圧着による絶縁被覆Ｗｂのはみ出しの問題を解消することができる。

　例えば、強固な圧着が行なわれると、被覆電線Ｗの絶縁被覆部分ＷＢに対する圧縮率が大きくなるために、左右の被覆加締片２２、２２の先端２２ａ、２２ａ間に隙間２５が開いていた場合、図１においてＸ４の一点鎖線で示す部分に、潰れた絶縁被覆Ｗｂが隙間２５からはみ出して、絶縁被覆材料の盛り上がりが発生することがあったが、本第１実施形態に係る端子圧着構造によれば、そのような問題を解消することができる。また、図２においてＸ３の一点鎖線で囲って示す部分では、被覆加締部２０の前後に絶縁被覆Ｗｂがはみ出して盛り上がりができることがあったが、その問題も解消することができる。

　その結果、コネクタハウジングのキャビティ５０に圧着端子１を挿入する際の挿入性が阻害されるおそれがなくなり、品質の向上が図れる。

　特に、本第１実施形態に係る端子圧着構造の場合、左右で同一高さに確保された前記平坦面２３が、加締圧着後の一対の被覆加締片２２、２２の各先端２２ａの上面に含まれている。そこで、被覆加締部２０の高さがキャビティ５０内に挿入できる最大の大きさに設定され、被覆加締部２０の内部の断面積を最大に広げることができる。

［第２実施形態］
　図４は本発明の第２実施形態に係る端子圧着構造の横断面図、図５の（ａ）は本第２実施形態の端子圧着構造を得るためのクリンパ８０の正面図、図５の（ｂ）は図５の（ａ）に示したクリンパ８０に対する比較例のクリンパ８０Ｂを示す正面図である。

　図４に示すように、本第２実施形態の端子圧着構造では、加締圧着後の一対の被覆加締片２２、２２の両先端２２ａ、２２ａが、下方に屈曲されて絶縁被覆部分ＷＢに食い込んでおり、左右で同一高さの平坦面２３が、一対の被覆加締片２２、２２の屈曲した各先端２２ａ、２２ａよりも各基端側の部分の上面に形成されている。それ以外の構成は上記第１実施形態と同様であるので、同一構成要素に同一符号を付して説明を省略する。

　図５の（ａ）に示すように、本第２実施形態の端子圧着構造を得るためのクリンパ８０は、一対の脚部８５、８５の間に、下向きに拡開したガイド溝８３を有し、ガイド溝８３の入口側の内側面に、圧着端子１の一対の被覆加締片２２、２２を徐々に内側に押し曲げる斜面状押圧面８１、８１を有している。そして、ガイド溝８３の奥部の凹所８２に、一対の被覆加締片２２、２２を内側に丸めて絶縁被覆部分ＷＢに加締めるとともに、その際、被覆加締部２０の上面に平坦面２３、２３を形成するための平坦な左右の押圧面８４、８４を有している。また、平坦な左右の押圧面８４、８４の間には、一対の被覆加締片２２、２２の両先端２２ａ、２２ａを下方に屈曲させて絶縁被覆部分ＷＢに食い込ませるための突起８６が設けられている。

　すなわち、図５の（ｂ）に示すように、比較例のクリンパ８０Ｂの場合は、ガイド溝８３の奥部の凹所８２Ｂに、左右２つのそれぞれ凹状に湾曲した押圧面８４Ｂ、８４Ｂが形成されているが、図５の（ａ）に示すように、本第２実施形態の端子圧着構造を得るために用いるクリンパ８０では、凹状に湾曲した押圧面８４Ｂ、８４Ｂの部分が平坦な押圧面８４、８４に置き換えられている。

　本第２実施形態の端子圧着構造によれば、加締圧着後の一対の被覆加締片２２、２２の両先端２２ａ、２２ａが、下方に屈曲されて絶縁被覆部分ＷＢに食い込んでいる。そこで、被覆加締部２０の内部の断面積を広げつつ、絶縁被覆部分ＷＢに対する被覆加締片２２の圧着強度をより高めることができる。

［第３実施形態］
　図６は本発明の第３実施形態に係る端子圧着構造の横断面図、図７の（ａ）は本第３実施形態の端子圧着構造を得るためのクリンパ９０の正面図、図７の（ｂ）は図７の（ａ）に示したクリンパ９０に対する比較例のクリンパ９０Ｂを示す正面図である。

　図６に示すように、本第３実施形態の端子圧着構造では、加締圧着後の一対の被覆加締片２２、２２のうちの一方の被覆加締片２２の先端２２ａが他方の被覆加締片２２の先端２２ａの上に重なっており、左右で高さの異なる平坦面２３が、一対の被覆加締片２２、２２の各先端２２ａ、２２ａよりも各基端側の部分の上面に形成されている。それ以外の構成は上記第１実施形態と同様であるので、同一構成要素に同一符号を付して説明を省略する。

　図７の（ａ）に示すように、本第３実施形態の端子圧着構造を得るためのクリンパ９０は、一対の脚部９５、９５の間に、下向きに拡開したガイド溝９３を有し、ガイド溝９３の入口側の内側面に、圧着端子１の一対の被覆加締片２２、２２を徐々に内側に押し曲げる斜面状押圧面９１、９１を有している。そして、ガイド溝９３の奥部の凹所９２に、一対の被覆加締片２２、２２を順番に内側に丸めて絶縁被覆部分ＷＢに先端２２ａ、２２ａが重なるように加締めるとともに、その際、被覆加締部２０の上面に平坦面２３、２３を形成するための平坦な左右の押圧面９４－１、９４－２が左右段差を持って設けられている。

　すなわち、図７の（ｂ）に示すように、比較例のクリンパ９０Ｂの場合は、ガイド溝９３の奥部の凹所９２Ｂに、左右２つのそれぞれ凹状に湾曲した押圧面９４Ｂ－１、９４Ｂ－２が形成されているが、図７の（ａ）に示すように、本第３実施形態の端子圧着構造を得るために用いるクリンパ９０では、凹状に湾曲した押圧面９４Ｂ－１、９４Ｂ－２の部分が平坦な押圧面９４－１、９４－２に置き換えられている。

　本第３実施形態の端子圧着構造によれば、加締圧着後の一対の被覆加締片２２、２２の先端２２ａ、２２ａが互いに重なっている。そこで、絶縁被覆Ｗｂのはみ出しをより有効に防ぐことができる。

［第４実施形態］
　図８は本発明の第４実施形態に係る端子圧着構造の横断面図、図９は本第４実施形態の端子圧着構造における被覆加締部２０の上面図である。

　図８及び図９に示すように、本第４実施形態の端子圧着構造では、加締圧着後の一対の被覆加締片２２、２２の両先端２２ａ、２２ａが、平面視で、端子前後方向（図９中、上下方向）に対して傾斜した傾斜ラインＬに沿って互いに対向している。それ以外の構成は上記第１実施形態と同様であるので、同一構成要素に同一符号を付して説明を省略する。

　本第４実施形態の端子圧着構造によれば、加締圧着後の一対の被覆加締片２２、２２の両先端２２ａ、２２ａが、平面視で、端子前後方向に対して傾斜した傾斜ラインＬに沿って互いに対向している。そこで、加締圧着後の絶縁被覆部分ＷＢの反力による被覆加締片２２、２２の広がりを有効に阻止することができる。

　上記第２実施形態～第４実施形態の端子圧着構造において、個別に述べた効果以外の効果は、上記第１実施形態の端子圧着構造と同様であるので、個別の説明は省略する。

　なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。

　例えば、上記各実施形態では、圧着端子１の被覆加締部２０における底板部２１がアンビル７７の上面７８に載置されてから、底板部２１の上面に被覆電線Ｗの端末部が載置されていたが、この順番は逆であってもよい。すなわち、底板部２１の上面に被覆電線Ｗの端末部が載置されてから、底板部２１がアンビル７７の上面７８に載置されてもよい。また、両方の工程を同時に行ってもよい。

　ここで、上述した本発明に係る端子圧着構造及び端子圧着方法の実施形態の特徴をそれぞれ以下［１］～［６］に簡潔に纏めて列記する。

　［１］　底板部（２１）と該底板部（２１）の左右両側縁から上方に延長した一対の被覆加締片（２２）とを有する断面Ｕ字状の被覆加締部（２０）が後端部に設けられた端子（圧着端子１）と、前記端子（圧着端子１）に圧着される被覆電線（Ｗ）と、を備え、
　前記底板部（２１）の上面に前記被覆電線（Ｗ）の端末の絶縁被覆部分（ＷＢ）が載置された状態で、前記一対の被覆加締片（２２）が、前記絶縁被覆部分（ＷＢ）を包み込むように内側に曲げられることで、前記絶縁被覆部分（ＷＢ）に加締められて、前記端子（圧着端子１）が前記被覆電線（Ｗ）に圧着される端子圧着構造であって、
　加締圧着後の前記絶縁被覆部分（ＷＢ）を略矩形断面にするための平坦面（２３）が、平坦な押圧面（７４、８４、９４－１、９４－２）を有するクリンパ（７０、８０、９０）で前記一対の被覆加締片（２２）を押圧することにより、前記一対の被覆加締片（２２）の少なくとも上面に形成され、
　前記平坦面（２３）の左右幅方向の両端（Ｔ２）が、加締圧着後の前記絶縁被覆部分（ＷＢ）の左右端（Ｔ１）の位置よりも幅方向外側まで延びている端子圧着構造。

　［２］　左右で同一高さに確保された前記平坦面（２３）が、加締圧着後の前記一対の被覆加締片（２２）の各先端（２２ａ）の上面に含まれている上記［１］に記載の端子圧着構造。

　［３］　加締圧着後の前記一対の被覆加締片（２２）の両先端（２２ａ）が、平面視で、端子前後方向に対して傾斜した傾斜ライン（Ｌ）に沿って互いに対向している上記［２］に記載の端子圧着構造。

　［４］　加締圧着後の前記一対の被覆加締片（２２）の両先端（２２ａ）が、下方に屈曲されて前記絶縁被覆部分（ＷＢ）に食い込んでおり、
　左右で同一高さの前記平坦面（２３）が、前記一対の被覆加締片（２２）の屈曲した各先端（２２ａ）よりも各基端側の部分の上面に形成されている上記［１］に記載の端子圧着構造。

　［５］　加締圧着後の前記一対の被覆加締片（２２）のうちの一方の前記被覆加締片（２２）の先端（２２ａ）が他方の前記被覆加締片（２２）の先端（２２ａ）の上に重なっており、
　左右で高さの異なる前記平坦面（２３）が、前記一対の被覆加締片（２２）の各先端（２２ａ）よりも各基端側の部分の上面に形成されている上記［１］に記載の端子圧着構造。

　［６］　底板部（２１）と該底板部（２１）の左右両側縁から上方に延長した一対の被覆加締片（２２）とを有する断面Ｕ字状の被覆加締部（２０）が後端部に設けられた端子（圧着端子１）と、被覆電線（Ｗ）と、を圧着する端子圧着方法であって、
　前記底板部（２１）がアンビル（７７）の上面（７８）に載置される工程と、
　前記底板部（２１）の上面に前記被覆電線（Ｗ）の端末の絶縁被覆部分（ＷＢ）が載置される工程と、
　前記２つの工程後に、前記アンビル（７７）に対してクリンパ（７０、８０、９０）が相対的に下方へ移動することで、前記アンビル（７７）が進入する前記クリンパ（７０、８０、９０）のガイド溝（７３、８３、９３）の押圧面（斜面状押圧面７１、８１、９１）により、前記一対の被覆加締片（２２）が前記絶縁被覆部分（ＷＢ）を包み込むように内側に曲げられて前記絶縁被覆部分（ＷＢ）に加締められるとともに、平坦な押圧面（７４、８４、９４－１、９４－２）を有する前記クリンパ（７０、８０、９０）で前記一対の被覆加締片（２２）が押圧されることにより、前記一対の被覆加締片（２２）の少なくとも上面に、加締圧着後の前記絶縁被覆部分（ＷＢ）を略矩形断面にするための平坦面（２３）が形成される工程と、
　を備える端子圧着方法。

　また、本出願は、２０１４年１月２０日出願の日本特許出願（特願２０１４－００７９０２）に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。

　本発明の端子圧着構造及び端子圧着方法によれば、被覆電線の絶縁被覆部分に対する強固な圧着を行いながら、被覆加締部からの絶縁被覆材料のはみ出しを防止することができ、それにより、コネクタハウジングに圧着端子を挿入する際の挿入性を良くすることができる。

　１　圧着端子(端子)
　２０　被覆加締部
　２１　底板部
　２２　被覆加締片
　２２ａ　先端
　２３　平坦面
　７０、８０、９０　クリンパ
　７１、８１、９１　斜面状押圧面（押圧面）
　７３、８３、９３　ガイド溝
　７４、８４、９４－１、９４－２　平坦な押圧面
　７７　アンビル
　７８　上面
　Ｔ１　絶縁被覆部分の左右端
　Ｔ２　平坦面の左右幅方向の両端
　Ｌ　傾斜ライン
　Ｗ　被覆電線
　ＷＢ　絶縁被覆部分

Claims (6)

1. 　底板部と該底板部の左右両側縁から上方に延長した一対の被覆加締片とを有する断面Ｕ字状の被覆加締部が後端部に設けられた端子と、前記端子に圧着される被覆電線と、を備え、
   　前記底板部の上面に前記被覆電線の端末の絶縁被覆部分が載置された状態で、前記一対の被覆加締片が、前記絶縁被覆部分を包み込むように内側に曲げられることで、前記絶縁被覆部分に加締められて、前記端子が前記被覆電線に圧着される端子圧着構造であって、
   　加締圧着後の前記絶縁被覆部分を略矩形断面にするための平坦面が、平坦な押圧面を有するクリンパで前記一対の被覆加締片を押圧することにより、前記一対の被覆加締片の少なくとも上面に形成され、
   　前記平坦面の左右幅方向の両端が、加締圧着後の前記絶縁被覆部分の左右端の位置よりも幅方向外側まで延びている端子圧着構造。
2. 　左右で同一高さに確保された前記平坦面が、加締圧着後の前記一対の被覆加締片の各先端の上面に含まれている請求項１に記載の端子圧着構造。
3. 　加締圧着後の前記一対の被覆加締片の両先端が、平面視で、端子前後方向に対して傾斜した傾斜ラインに沿って互いに対向している請求項２に記載の端子圧着構造。
4. 　加締圧着後の前記一対の被覆加締片の両先端が、下方に屈曲されて前記絶縁被覆部分に食い込んでおり、
   　左右で同一高さの前記平坦面が、前記一対の被覆加締片の屈曲した各先端よりも各基端側の部分の上面に形成されている請求項１に記載の端子圧着構造。
5. 　加締圧着後の前記一対の被覆加締片のうちの一方の前記被覆加締片の先端が他方の前記被覆加締片の先端の上に重なっており、
   　左右で高さの異なる前記平坦面が、前記一対の被覆加締片の各先端よりも各基端側の部分の上面に形成されている請求項１に記載の端子圧着構造。
6. 　底板部と該底板部の左右両側縁から上方に延長した一対の被覆加締片とを有する断面Ｕ字状の被覆加締部が後端部に設けられた端子と、被覆電線と、を圧着する端子圧着方法であって、
   　前記底板部がアンビルの上面に載置される工程と、
   　前記底板部の上面に前記被覆電線の端末の絶縁被覆部分が載置される工程と、
   　前記２つの工程後に、前記アンビルに対してクリンパが相対的に下方へ移動することで、前記アンビルが進入する前記クリンパのガイド溝の押圧面により、前記一対の被覆加締片が前記絶縁被覆部分を包み込むように内側に曲げられて前記絶縁被覆部分に加締められるとともに、平坦な押圧面を有する前記クリンパで前記一対の被覆加締片が押圧されることにより、前記一対の被覆加締片の少なくとも上面に、加締圧着後の前記絶縁被覆部分を略矩形断面にするための平坦面が形成される工程と、
   　を備える端子圧着方法。

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