WO2015083711A1 - 無アルカリガラスおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
(1)アルカリ金属酸化物を含有していると、アルカリ金属イオンが薄膜中に拡散して膜特性を劣化させるため、実質的にアルカリ金属イオンを含まないこと。
(2)薄膜形成工程で高温にさらされる際に、ガラスの変形およびガラスの構造安定化に伴う収縮(熱収縮)を最小限に抑えうるように、歪点が高いこと。
(4)内部および表面に欠点(泡、脈理、インクルージョン、ピット、キズ等)がないこと。
(5)ディスプレイの軽量化が要求され、ガラス自身も密度の小さいガラスが望まれる。
(6)ディスプレイの軽量化が要求され、基板ガラスの薄板化が望まれる。
(8)液晶ディスプレイ作製熱処理の昇降温速度を速くして、生産性を上げたり耐熱衝撃性を上げるために、ガラスの平均熱膨張係数の小さいガラスが求められる。
一方、ガラス製造プロセス、特に溶解、成形における要請から、ガラスの粘性、特にガラス粘度が104dPa・sとなる温度T4を低くすることが求められている。
清澄反応後の新たな泡の発生源の別の一例としては、ガラス融液の流路に用いられる白金材料と、ガラス融液と、の界面で発生する界面泡(以下、本明細書において、「白金界面泡」という。)がある。
SiO2 57~67.5、
Al2O3 17~25、
B2O3 1.7超5.5以下、
MgO 2~8.5、
CaO 1.5~8、
SrO 2~10、
BaO 0~1、
ZrO2 0~2を含有し、かつ、
Clを0~0.35質量%、Fを0.01~0.15質量%、SnO2を0.01~0.3質量%含有し、ガラスのβ-OH値が0.15~0.60mm-1であり、
MgO+CaO+SrO+BaO が12~21であり、
MgO/(MgO+CaO+SrO+BaO)が0.2以上であり、CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO)が0.50以下であり、SrO/(MgO+CaO+SrO+BaO)が0.60以下である無アルカリガラスを提供する。
SiO2はガラスの溶解性を上げ、熱膨張係数を下げ、歪点を上げる。ここで、本発明の無アルカリガラスでは、SiO2含有量が57%(質量%、以下特記しないかぎり同じ)以上67.5%以下である。57%未満では、歪点が充分に上がらず、かつ、熱膨張係数が増大し、密度が上昇する。好ましくは58%以上、より好ましくは59%以上である。67.5%超では、溶解性が低下し、失透温度が上昇する。好ましくは67%以下、より好ましくは66%以下、特に好ましくは65%以下である。
MgO含有量は、2%以上8.5%以下である。2%未満では上述したMgO添加による効果が十分あらわれない。2.5%以上がより好ましく、3%以上がさらに好ましい。しかし、8.5%を超えると、失透温度が上昇するおそれがある。8%以下、7.5%以下、7%以下がより好ましい。
CaO含有量は、1.5%以上8%以下である。1.5%未満では上述したCaO添加による効果が十分あらわれない。好ましくは1.7%以上、さらに好ましくは2%以上である。しかし、8%を超えると、失透温度が上昇したりCaO原料である石灰石(CaCO3)中の不純物であるリンが、多く混入するおそれがある。7.5%以下、7%以下、6.5%以下がより好ましい。
MgO/(MgO+CaO+SrO+BaO)が0.2以上、好ましくは0.25以上である。
CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO)が0.50以下、好ましくは0.45以下である。
SrO/(MgO+CaO+SrO+BaO)が0.60以下で、好ましくは0.5以下である。
また、泡に取り込まれた未融ケイ砂がガラス融液の表層近くに集まることにより、ガラス融液の表層と表層以外の部分との間においてSiO2の組成比に差が生じて、ガラスの均質性が低下するとともに平坦性も低下する。
本発明の無アルカリガラスでは、これらの問題が解消されている。
なお、Clの含有量は、ガラス原料における投入量ではなく、ガラス融液中に残存する量である。この点については、後述するFの含有量、およびSnO2の含有量についても同様である。
Cl含有量は、好ましくは0.001質量%以上、0.005質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上である。Cl含有量が0.35質量%超だと、SnO2が共存する場合はガラス製造時にSnCl2が生成し、揮散量が増加する。好ましくは0.25質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以下である。
F含有量が0.01質量%未満だと、ガラス原料の溶解時における清澄作用が低下する。また、ガラス原料の溶解時において、SiO2原料であるケイ砂が溶解する温度が高くなり、ガラス融液中に未融ケイ砂が熔け残るおそれがある。好ましくは0.02質量%以上、さらに好ましくは0.03質量%以上である。
F含有量が0.15質量%超だと、製造されるガラスの歪点が低くなる。好ましくは0.12質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
SnO2に代表されるスズ化合物は、ガラス融液中でO2ガスを発生する。
ガラス融液中では、1450℃以上の温度でSnO2からSnOに還元され、O2ガスを発生し、泡を大きく成長させる作用をする。本発明の無アルカリガラスの製造時においては、後述するように、ガラス原料を1500~1800℃に加熱して熔融するため、ガラス融液中の泡がより効果的に大きくなる。原料中のスズ化合物は、前記母組成の総量100%に対してSnO2換算で、0.01質量%以上含まれるように調製する。SnO2含有量が0.01質量%未満だと、ガラス原料の溶解時における清澄作用が低下する。好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上である。SnO2含有量が0.3質量%超だと、ガラスの着色や、失透が発生する恐れがある。無アルカリガラス中のスズ化合物の含有量は、前記母組成の総量100%に対してSnO2換算で好ましくは0.25質量%以下、0.2質量%以下、さらに好ましくは0.18質量%以下である。
(ガラスの)β-OH値が0.15mm-1未満だと、ガラス原料の溶解時における清澄作用が低下する。また、ガラス原料の溶解時において、SiO2原料であるケイ砂が溶解する温度が高くなり、ガラス融液中に未融ケイ砂が熔け残るおそれがある。好ましくは0.20mm-1以上である。
(ガラスの)β-OH値が0.60mm-1超だと、白金界面泡の発生を抑制できない。白金界面泡は、白金材料製のガラス融液の流路の壁面を通過したH2が、ガラス融液中の水分と反応してO2を生じることで発生する。ガラス融液中にスズ酸化物が存在する場合、白金界面泡をSnOのSnO2への酸化反応により吸収させ脱泡させることができるが、ガラスのβ-OH値が0.60mm-1超だと、ガラス中の水分含有量が高いため、白金材料製のガラス融液の流路の壁面を通過したH2と、ガラス融液中の水分と、の反応によりO2が生じるのを抑制できない。好ましくは0.55mm-1以下、より好ましくは0.50mm-1以下である。
ガラスのβ-OH値は、ガラス原料の溶解時における各種条件、たとえば、ガラス原料中の水分量、溶解槽中の水蒸気濃度、溶解槽におけるガラス融液の滞在時間等によって調節することができる。
ガラス原料中の水分量を調節する方法としては、ガラス原料として酸化物の代わりに水酸化物を用いる方法(例えば、マグネシウム源として酸化マグネシウム(MgO)の代わりに水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)を用いる)がある。
また、溶解槽中の水蒸気濃度を調節する方法としては、溶解槽の加熱目的での都市ガス、重油などの燃料の燃焼に空気を使用する代わりに、酸素を使用する方法や、酸素と空気の混合ガスを使用する方法がある。
なお、本発明の無アルカリガラスは、SO3を実質的に含有しないことが好ましい。
本発明の無アルカリガラスは、歪点が680℃以上であるため、パネル製造時の熱収縮を抑えられる。また、p-Si TFTの製造方法としてレーザーアニールによる方法を適用することができる。685℃以上がより好ましく、690℃以上がさらに好ましい。
本発明の無アルカリガラスは、歪点が680℃以上であるため、高歪点用途(例えば、板厚0.7mm以下、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.3mm以下のディスプレイ用基板または照明用基板、あるいは板厚0.3mm以下、好ましくは0.1mm以下の薄板のディスプレイ用基板または照明用基板)に適している。
板厚0.7mm以下、さらには0.5mm以下、さらには0.3mm以下、さらには0.1mm以下の板ガラスの成形では、成形時の引き出し速度が速くなる傾向があるため、ガラスの仮想温度が上昇し、ガラスのコンパクションが増大しやすい。この場合、高歪点ガラスであると、コンパクションを抑制することができる。
一方、歪点が735℃以下であるため、フロートバス内及びフロートバス出口の温度をあまり高くする必要が無く、フロートバス内及びフロートバス下流側に位置する金属部材の寿命に影響を及ぼすことが少ない。725℃以下がより好ましく、715℃以下がさらに好ましく、710℃以下が特に好ましい。
また、ガラスの平面歪が改善するため、フロートバス出口から徐冷炉に入る部分で温度を高くする必要があるが、この際の温度をあまり高くする必要がない。このため、加熱に使用するヒータに負荷がかかることがなく、ヒータの寿命に影響を及ぼすことが少ない。
また、本発明の無アルカリガラスは失透温度が、1350℃以下であることがフロート法による成形が容易となることから好ましい。好ましくは1340℃以下、より好ましくは1330℃以下である。
本明細書における失透温度は、白金製の皿に粉砕されたガラス粒子を入れ、一定温度に制御された電気炉中で17時間熱処理を行い、熱処理後の光学顕微鏡観察によって、ガラスの表面及び内部に結晶が析出する最高温度と結晶が析出しない最低温度との平均値である。
液晶ディスプレイパネル製造工程や液晶ディスプレイ装置使用時に発生した応力によってガラス基板が複屈折性を有することにより、黒の表示がグレーになり、液晶ディスプレイのコントラストが低下する現象が認められることがある。光弾性定数を30nm/MPa/cm以下とすることにより、この現象を小さく抑えることができる。好ましくは29nm/MPa/cm以下、より好ましくは28.5nm/MPa/cm以下、さらに好ましくは28nm/MPa/cm以下である。
また、本発明の無アルカリガラス基板は、他の物性確保の容易性を考慮すると、光弾性定数が好ましくは23nm/MPa/cm以上、より好ましくは25nm/MPa/cm以上である。
なお、光弾性定数は円盤圧縮法により測定波長546nmにて測定できる。
日本国特開2011-70092号公報に記載されているような、インセル型のタッチパネル(液晶ディスプレイパネル内にタッチセンサを内蔵したもの)の場合、タッチセンサのセンシング感度の向上、駆動電圧の低下、省電力化の観点から、ガラス基板の比誘電率が高いほうがよい。比誘電率を5.6以上とすることにより、タッチセンサのセンシング感度が向上する。好ましくは5.8以上、より好ましくは5.9以上、さらに好ましくは6.0以上である。
なお、比誘電率はJIS C-2141に記載の方法で測定できる。
ここで、フロート法により成形する前のガラス融液に対して、必要に応じて減圧脱泡法を実施する。
SiO2の原料としてはケイ砂を用いることができるが、メディアン粒径D50が20μm~300μm、粒径2μm以下の粒子の割合が0.3体積%以下、かつ粒径400μm以上の粒子の割合が2.5体積%以下のケイ砂を用いることが、ケイ砂の凝集を抑えて熔融させることができるので、ケイ砂の熔融が容易になり、泡が少なく、均質性、平坦度が高い無アルカリガラスが得られることから好ましい。
また、本明細書における「メディアン粒径D50」とは、レーザー回折法によって計測された粉体の粒度分布において、ある粒径より大きい粒子の体積頻度が、全粉体のそれの50%を占める粒子径をいう。言い換えると、レーザー回折法によって計測された粉体の粒度分布において、累積頻度が50%のときの粒子径をいう。
また、本明細書における「粒径2μm以下の粒子の割合」及び「粒径400μm以上の粒子の割合」は、例えば、レーザー回折/散乱法によって粒度分布を計測することにより測定される。
アルカリ土類金属源としては、アルカリ土類金属化合物を用いることができる。ここでアルカリ土類金属化合物の具体例としては、MgCO3、CaCO3、BaCO3、SrCO3、(Mg,Ca)CO3(ドロマイト)等の炭酸塩や、MgO、CaO、BaO、SrO等の酸化物や、Mg(OH)2、Ca(OH)2、Ba(OH)2、Sr(OH)2等の水酸化物を例示できるが、アルカリ土類金属源の一部または全部にアルカリ土類金属の水酸化物を含有させることが、ガラス原料の溶解時における未融ケイ砂が減少するので好ましい。
アルカリ土類金属源中の水酸化物の質量比が増加するにつれて、溶解時における未融ケイ砂が減少するので、上記水酸化物の質量比は高ければ高いほどよい。
無アルカリガラスがB2O3を含有する場合、B2O3の原料としては、ホウ素化合物を用いることができる。ここでホウ素化合物の具体例としては、オルトホウ酸(H3BO3)、メタホウ酸(HBO2)、四ホウ酸(H2B4O7)、無水ホウ酸(B2O3)等が挙げられる。通常の無アルカリガラスの製造においては、安価で、入手しやすい点から、オルトホウ酸が用いられる。
無水ホウ酸以外のホウ素化合物としては、安価で、入手しやすい点から、オルトホウ酸が好ましい。
塩化物は、本発明のガラス原料成分である種々の酸化物のカチオンの少なくとも1種の塩化物であること、すなわち、Al、Mg、Ca、SrおよびBaから選ばれる少なくとも1種の元素の塩化物であることが好ましく、アルカリ土類金属の塩化物であることがより好ましく、中でも、SrCl2・6H2O、およびBaCl2・2H2Oが、泡を大きくする作用が著しく、かつ潮解性が小さいため、特に好ましい。
フッ化物は、本発明のガラス原料成分である種々の酸化物のカチオンの少なくとも1種のフッ化物であること、すなわち、Al、Mg、Ca、SrおよびBaから選ばれた少なくとも1種の元素のフッ化物であることが好ましく、アルカリ土類金属のフッ化物であることがより好ましく、中でも、CaF2がガラス原料の溶解性を大きくする作用が著しく、より好ましい。
スズ化合物は、Snの酸化物、硫酸塩、塩化物、フッ化物などであるが、SnO2が泡を著しく大きくすることから特に好ましい。SnO2の粒径が大きすぎるとSnO2の粒子がガラス原料に溶解しきれずに、残る恐れがあるので、SnO2の平均粒径(D50)は200μm以下、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下とする。また、SnO2の粒径が小さすぎると、かえって、ガラス融液中で凝集して、溶け残りになることがあるので、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上とする。
各成分の原料を、表1に示す目標組成になるように調合し、白金坩堝を用いて1500℃の温度で1時間溶解した。
表1には、ガラス組成(単位:質量%)を示す。このとき用いた原料中の珪砂の粒度として、メディアン粒径D50、粒径2μm以下の粒子の割合、および、粒径400μm以上の粒子の割合を表2に示す。また、アルカリ土類金属における水酸化物原料の質量比率(MO換算)、原料溶融時の初期泡数、泡減衰係数もあわせて表2に示す。
実施例1~2、比較例1と同じ原料バッチを白金坩堝を用いて1550℃の温度で1時間溶解後、1650℃の温度で0~40分間保持した後、ガラス融液中の残存泡数を測定した。1650℃の温度での保持時間をx、と残存泡数をyとし、y=A×exp(-B)xとして回帰曲線を描き、Aを初期泡数、Bを泡減衰係数とした。
本出願は、2013年12月4日出願の日本特許出願2013-250957に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
Claims (4)
- 歪点が680~735℃であって、50~350℃での平均熱膨張係数が30×10-7~43×10-7/℃であって、ガラス粘度が102dPa・sとなる温度T2が1710℃以下であって、ガラス粘度が104dPa・sとなる温度T4が1330℃以下であって、酸化物基準の質量%表示で
SiO2 57~67.5、
Al2O3 17~25、
B2O3 1.7超5.5以下、
MgO 2~8.5、
CaO 1.5~8、
SrO 2~10、
BaO 0~1、
ZrO2 0~2を含有し、かつ、
Clを0~0.35質量%、Fを0.01~0.15質量%、SnO2を0.01~0.3質量%含有し、ガラスのβ-OH値が0.15~0.60mm-1であり、
MgO+CaO+SrO+BaO が12~21であり、
MgO/(MgO+CaO+SrO+BaO)が0.2以上であり、CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO)が0.50以下であり、SrO/(MgO+CaO+SrO+BaO)が0.60以下である無アルカリガラス。 - SiO2原料の珪素源として、メディアン粒径D50が20μm~300μm、粒径2μm以下の粒子の割合が0.3体積%以下、かつ粒径400μm以上の粒子の割合が2.5体積%以下の珪砂を用いる、請求項1に記載の無アルカリガラスの製造方法。
- MgO、CaO、SrOおよびBaOのアルカリ土類金属源として、アルカリ土類金属の水酸化物を、アルカリ土類金属源100質量(MO換算。但しMはアルカリ土類金属元素である。以下同じ。)のうち、5~100質量%(MO換算)含有するものを用いる、請求項1に記載の無アルカリガラスの製造方法。
- SiO2原料の珪素源として、メディアン粒径D50が20μm~300μm、粒径2μm以下の粒子の割合が0.3体積%以下、かつ粒径400μm以上の粒子の割合が2.5体積%以下の珪砂を用い、MgO、CaO、SrOおよびBaOのアルカリ土類金属源として、アルカリ土類金属の水酸化物を、アルカリ土類金属源100質量%(MO換算。但しMはアルカリ土類金属元素である。以下同じ。)のうち、5~100質量%(MO換算)含有するものを用いる、請求項1に記載の無アルカリガラスの製造方法。
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