WO2014175212A1 - 蓄電装置 - Google Patents
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Abstract
本発明による蓄電装置では、電子絶縁性のセラミックス層を構成するセラミックス粒子は有機電解液中で電気化学的な還元反応が進行しうる電子絶縁性のセラミックスから選択されるので、正極に接するセラミックス粒子は電子絶縁性のままであり、その他のセラミックス粒子は電気化学的に還元されてイオン伝導性を有することとなるので、セラミックス層をセパレーターする蓄電装置でも、内部抵抗は高くならない。
Description
本発明は、蓄電装置に関するものである。詳しくは、耐熱性の高いセラミックス層をセパレーターとして、内部短絡は十分に阻止し、且つ内部抵抗も十分に低い蓄電装置に係るものである。
これまで携帯電話やノート型パソコンなどの電子機器の電源として広く普及してきたリチウムイオン電池は、近年、ハイブリッド自動車や電気自動車や電力貯蔵用等の更に大型の蓄電装置(以下、二次電池およびキャパシタを総称して蓄電装置という。)への利用にも期待されており、リチウムイオン二次電池の安全性の向上が重要な課題となっている。
リチウムイオン二次電池は正極の活物質中に存在するリチウムイオン(Li+)が充電によって負極に移動し、放電では再び正極に戻るという電池システムであるが、斯かる電池システムは1980年以前に既に提案されており、充電状態では特定のイオンが負極(又は正極)に偏り、放電状態では負極(又は正極)に偏ることから"ロッキングチェアー電池"とよばれていた。
本願発明者らは、正極にLiCoO2を使用し、負極にはカーボンを使用して、このロッキングチェアー電池を世界で初めて商品化し、これを、"リチウムイオン電池(二次電池)"と名付けて、1990年2月にプレスリリースした。同年3月にはフロリダで開かれた第3回二次電池セミナーで、本願発明者が初めてリチウムイオン電池(二次電池)の優れた性能を世界に紹介したという経緯がある(非特許文献1参照)。
近年では、正極材料をLiCoO2からLiNiO2やLiMn2O4やLiFePO4等の価格の安い材料に置き換えて、低価格タイプのロッキングチェアー電池が実用化されている。また、正極活物質だけでなく負極活物質も、カーボンからセラミックス材料(例えば、TiO2-B、Li4Ti5O12、SiO等)に置き換えて、ロッキングチェアー電池の安全性を高める提案がなされており、これ等の電池も今ではリチウムイオン電池と呼ばれている(非特許文献2~7参照)。
今日では、非金属鉱物の全般が一般にセラミックスと呼ばれているが、このセラミックス材料の中には、リチウムイオンのドーピング及び脱ドーピングを伴って電気化学的な酸化還元反応が可逆的に進行しうる物質がかなり多く存在し、斯かるセラミックス材料はリチウムイオン電池の正極活物質や負極活物質に利用できる。従って、今後、その組み合わせによって、数多くのリチウムイオン電池が出現する可能性がある。斯かるセラミックス材料には資源的に豊富なものもあり、今後のリチウムイオン電池の価格低減の鍵にもなる。
蓄電装置における"活物質"とは蓄電反応に直接寄与する物質を意味する。蓄電装置における活物質は電気化学的な酸化還元反応に基づいて可逆的に化学変化するものと、化学変化はしないものに分けられる。電解液中で電気化学的な酸化還元反応に基づいて可逆的に化学変化する活物質を正極活物質にも負極活物質にも使用する蓄電装置が"二次電池(または単に電池ということもある。)"である。
一方、電気化学的な酸化還元反応に基づいて化学変化する活物質は正極か負極かの一方にだけ使用する蓄電装置は"キャパシタ"に分類される。キャパシタには少なくとも正極か負極かの一方には化学変化に基づかない活物質を用いるため、二次電池に比べて蓄電容量が少なく、電気自動車や電力貯蔵用等の大型の蓄電装置には不向きである。
これまでの蓄電装置においては、一般的には、正極と負極はそれぞれの活物質層がそれぞれの集電体に密着して形成された電極であり、それぞれの活物質層中の活物質は集電体と電子的に導通する必要があるため、活物質層はカーボン等の伝導助剤を混ぜて電子伝導性とされる。従って、対向する正極と負極の間にはセパレーターを介在させて、正極と負極の内部短絡を阻止する必要がある。
"正極と負極の内部短絡"とは一般には内部ショートともいわれるが、対向する正極と負極が直接電子伝導で導通することである。蓄電装置における"セパレーター"は対向する正極と負極の間に介在してセパレーター機能を有するものを言うが、"セパレーター機能"とは正極活物質と負極活物質との電子的な導通は断って、イオン電導は確保するという機能である。
また、蓄電装置における"活物質層"とは活物質で構成される多孔質体であり、蓄電反応に直接寄与する活物質が外部回路との電子の授受と、対極とのイオン伝達をスムーズに行うことができる成形体として、通常、集電体に密着して形成される。この"集電体"は活物質と外部回路との電子の授受を仲介する電子伝導体である。通常、活物質層には平均粒径5~10μm程度のグラファイト等が伝導助剤として混ぜられるので、セパレーター層の厚さを5~10μm程度以下とした場合には、斯かる伝導助剤が導電性異物として電極間に挟まって、蓄電装置を内部ショートに至らしめることが十分に考えられる。従って、セパレーター層の厚さは15μm程度以上とすることが望ましい。
これまでのリチウムイオン電池では、セパレーターとしては厚さ25μm程度以上のポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)製のシート状セパレーターが使用されている。"シート状セパレーター"とは正極と負極の間に介在させるシート状の多孔質膜であるが、シート状の多孔質膜は電解液を含浸すれば、正極と負極のイオン電導は確保されてセパレーター機能が備わる。
しかし、樹脂製のシート状セパレーターは、微小の導電性異物で軽度に内部短絡した場合でも、ショート箇所の部分的な温度上昇によって、セパレーターが部分的に熱収縮して、内部短絡が重度化して電池が熱暴走に至り、発火事故等に繋がる可能性がある。
従って、リチウムイオン電池の安全性の改善には、耐熱性の高いセパレーターの採用が望ましい。そこで、耐熱性の高いセパレーターとして、電極表面に非電子伝導性(電子絶縁性)のセラミックス層を形成するという方法が提案されている(非特許文献8参照)。提案されている従来技術では、アルミナ(Al2O3)等の電子絶縁性のセラミックス粒子をスラリーとして電極表面に塗布して乾燥するというものであり、電子絶縁性のセラミックス層(多孔質セラミックス層)を電極表面上に安価に形成することができる。
電極表面に形成される電子絶縁性のセラミックス層には空孔も存在するので、空孔が電解液で充満されれば、イオン電導性が付加されて"セパレーター機能"が備わる。従って、従来のシート状セパレーターに代替可能であり、リチウムイオン電池の安全性の改善と同時にセパレーターコストの低減にも効果的である。
なお、一般に、電気伝導率が10-10S/cm未満の材料が絶縁体と言われており、本明細書で言う"電子絶縁性"または"非電子伝導性"とは電子伝導率が10-10S/cm未満を意味するものであり、電子伝導率が10-10S/cm以上は、通常半導体に分類される範囲(電子伝導率が103~10-10S/cm程度)も含めて、本明細書では"電子伝導性"と言う。
T.Nagaura、JEC Battery Newsletter No.2(Mar.-Apr.)1990
橘田晃宣、その他、第53回電池討論会講演予稿集、P.238(2012)
渋川憲太、その他、第53回電池討論会講演予稿集、P.240(2012)
伊藤龍太、その他、第53回電池討論会講演予稿集、P.241(2012)
門磨義裕、その他、第53回電池討論会講演予稿集、P.242(2012)
中野善之、その他、第53回電池討論会講演予稿集、P.245(2012)
古谷泰幸、その他、第53回電池討論会講演予稿集、P.246(2012)
豊田裕次郎、その他、第53回電池討論会講演予稿集、P.2(2012)
峰裕之、その他、第53回電池討論会講演予稿集、P.122(2012)
浅利祐介、その他、第53回電池討論会講演予稿集、P.129(2012)
しかしながら、電極表面に形成するセラミックス層は、その厚さを、正極と負極の内部短絡を阻止できる十分な厚さ(15μm以上)で形成した場合には、蓄電装置の内部抵抗は高くなってしまう。また、蓄電装置の内部抵抗が満足な値に収まる厚さ(5μm程度)でセラミックス層を形成した場合には、セラミックス層だけでは正極と負極の内部短絡は十分に阻止することができない。
本発明は、以上の課題に鑑みて成されたものであり、耐熱性の高いセラミックス層をセパレーターとして、内部短絡は十分に阻止し、且つ内部抵抗も十分に低い蓄電装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明の蓄電装置は、正極と負極が対向してなる蓄電装置において、前記正極と前記負極は何れも集電体に電子伝導性の活物質層が形成された電極であって、対向する同正極と同負極の内部短絡は対向する同正極と同負極の活物質層間に介在する電子絶縁性のセラミックス層によって阻止されており、該セラミックス層を構成するセラミックス粒子は電気化学的な還元反応で化学変化しうる電子絶縁性のセラミックスから選択されることを特徴とする。
本発明に係る蓄電装置では、対向する正極と負極の内部短絡は対向する正極と負極の活物質層の間に介在する電子絶縁性のセラミックス層によって阻止されており、正極と負極の間のイオン電導は、基本的には、当該セラミックス層に含浸される電解液によって確保されるが、加えて、同セラミックス層を構成するセラミックス粒子は電気化学的な還元反応によって化学変化しうる電子絶縁性のセラミックスから選択されるので、同セラミックス層を構成しているセラミックス粒子は負極に接触する粒子から電気化学的還元反応が進行し、正極と直接接触するセラミックス粒子以外の粒子は全て電気化学的に還元されてイオン電導性のセラミックス粒子に変化する。
そのため、正極と負極の間のイオン電導はセラミックス層に含浸される電解液とイオン電導性に変化したセラミック粒子によって担われるために大幅に向上し、セラミックス層の厚さをセラミックス層だけで正極と負極の内部短絡を十分に阻止できる厚さとすることが可能となる。一方、正極と直接接触するセラミックス粒子は正極の電位がかかっているために還元されることは無く、常に電子絶縁性のままであり、正極と負極の内部短絡を阻止する役割を担う。
電気化学的な還元反応によって化学変化しうる電子絶縁性のセラミックスとしては、代表的には化学式Li4Ti5O12やTiO2-Bで示されるチタン酸化物があるが、本発明に適用可能な代表的セラミックス材料の一つである。
因みに、Li4Ti5O12やTiO2-Bのようなチタン酸化物は電気化学的に還元されると、下記の[化1]の反応式に示すように4価のTi4+は一部3価のTi3+となり、Li+イオンもドープされる。
(化1)
Li4Ti5O12+3Li++3e-→Li4+3Ti3+ 3Ti4+ 2O12
Li4Ti5O12+3Li++3e-→Li4+3Ti3+ 3Ti4+ 2O12
その結果、Li4+3Ti3+
3Ti4+
2O12の結晶内にはリチウムイオンが過剰となり、結晶内のリチウムイオンは移動することが可能であり、イオン電導性の化合物に変化する。また、Li4Ti5O12は、結晶中の全てのTiが4価(Ti4+)であり、Ti4+の間での電子の授受はできないため電子絶縁性であるが、Li4+3Ti3+
3Ti4+
2O12の結晶内ではTi4+とTi3+が混在して電子の授受が可能となり電子伝導性となる。
本発明に係る蓄電装置では、セラミックス層は負極の活物質層の表面に形成されていることを特徴とする。
対向する正極と負極の活物質層間に介在する電子絶縁性のセラミックス層は対向する正極と負極の内部短絡を阻止する上では、正極と負極の活物質層間に介在しているだけで良いが、本発明に係る蓄電装置では、当該セラミックス層を構成しているセラミックス粒子は、正極と直接接触する粒子以外の粒子は電気化学的に還元されてイオン電導性のセラミックス粒子に変化することが重要なポイントである。セラミックス粒子が電気化学的に還元されるためには、粒子にはマイナスの電位(還元電位)がかかる必要がある。セラミックス層が負極の活物質層の表面に形成されていれば、セラミックス粒子には、より効果的に還元電位がかかる。
本発明に係る電極構造の蓄電装置は、耐熱性の高いセラミックス層をセパレーターとして、内部短絡は十分に阻止し、且つ内部抵抗も十分に低いものとなっている。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づきさらに詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る蓄電素子10(以下、「電極積層体10」ともいう。)の斜視図である。図2は本発明の一実施形態に係る蓄電装置100の斜視図であり、図1に示す蓄電素子10が、有機電解液(不図示)を含有してラミネートシート11及びラミネートシート12に密封されてなる蓄電装置100の斜視図である。
図3は本発明の一実施形態に係る蓄電素子の断面図であり、図1に示す蓄電素子10のD-D'の断面を、中央部は省略し、電極端部を拡大して示した断面図である。図4は本発明の一実施形態に係る蓄電装置の、初回の充電を終えた後の蓄電素子10の断面図であり、同じく図1に示す蓄電素子10のD-D'の断面を、中央部は省略し、電極端部を拡大して示した断面図である。
なお、本発明の実施形態に係る蓄電装置では、対向する正極31と負極32の間には、電子絶縁性のセラミックス粒子で構成されるセラミックス層5が介在し、当該セラミックス層を構成する電子絶縁性のセラミックス粒子は有機電解液中で電気化学的な還元反応によって化学変化しうる電子絶縁性のセラミックスから選択されることを特長とする。
蓄電素子10は、図3に示すように正極31と負極32が交互に積層されて構成されるが、正極31は、正極活物質と伝導助剤で構成される電子伝導性の活物質層2(以下、「正極活物質層2」ともいう。)が集電体4(以下、「正極集電体4」ともいう。)に密着して形成された電極であり、活物質層2を構成する正極活物質は集電体4に電子的に導通している。また、負極32も、負極活物質と伝導助剤で構成される電子伝導性の活物質層1(以下、「負極活物質層1」ともいう。)が集電体3(以下、「負極集電体3」ともいう。)に密着して形成された電極であり、活物質層1を構成する負極活物質は集電体3に電子的に導通している。しかし、正極活物質層2中の正極活物質と負極活物質層1中の負極活物質の間の電子的導通は、負極活物質層1の表面に形成されている電子絶縁性のセラミックス層5で断たれている。
一方、正極活物質層2と、負極活物質層1と、セラミックス層5にはそれぞれ空孔が存在し、当該空孔に電解液が充満すれば、正極活物質層2と負極活物質層1はイオン電導では導通する。つまり、絶縁性のセラミックス層5は、正極活物質層2と負極活物質層1の電子的導通は断ってイオン電導では導通するので、セパレーター機能を有することになる。従って集電体4と集電体3に集電体4をプラスとする電圧が印加されれば、正極活物質層2を構成する正極活物質は電気化学的に酸化され、負極活物質層1を構成する負極活物質は電気化学的に還元される。
以上のように、図1に示す蓄電素子10は電解液を含浸して、アルミニウムとポリプロピレンのラミネートシート11とラミネートシート12の間に納められて、周囲を熱融着して密封されれば、図2に示す本実施形態に係る蓄電装置100が完成する。
図1に示すように、蓄電素子10では負極32は正極31より縦及び横寸法を2Aだけ大きくし、負極32の電極端が正極31の電極端より寸法Aだけ外側に位置するように積層すれば、負極32の電極端部が正極31とショートすることは避けられる。また正極31に設けた正極集電体の露出部34には絶縁部材8で被覆することで、負極32の電極端と正極集電体の露出部34のショートを防ぐことができる。
負極32の各電極に設けた集電体の露出部33はいずれも負極タブ6に溶接され、正極31の各電極に設けた集電体の露出部34はいずれも正極タブ7に溶接される。電極タブ6及び電極タブ7には予めプラスチックテープ9を熱圧着して貼り付けているので、蓄電素子10が図2に示すように、ラミネートシート11及びラミネートシート12で密封されるとき、プラスチックテープ9がラミネートシート11及びラミネートシート12と一体化して熱融着されるので、蓄電素子10の密封を妨げることなく、負極タブ6と正極タブ7は外部に取り出されて負極外部端子13及び正極外部端子14になる。
図2に示される蓄電装置100では、初回の充電がなされる前は、電極積層体(蓄電素子)10は図3に示すように「負極活物質層1」、「電子絶縁性のセラミックス層5」、「正極活物質層2」の順番に配列されていて、いずれの層もその空孔は電解液で満たされているので、負極活物質層1の中の負極活物質と正極活物質層2の中の正極活物質はイオン電導では導通する。
従って、負極外部端子13と正極外部端子14に充電電圧が印加されれば、負極活物質は電気化学的に還元され、正極活物質は電気化学的に酸化されて、蓄電装置100は充電される。
十分長時間、充電電圧が印加されれば、電極積層体10は図4に示すように、セラミックス層5を構成しているセラミックス粒子のうち、負極活物質層1と直接接触する粒子には負極の電位が印加されるので、当該セラミックス粒子は電気化学的に還元されて、イオン電導性と電子伝導性を有するセラミックス粒子に変質することとなる。更に、電子伝導性に変わった粒子を介して、負極活物質層1とは直接接触していないセラミックス粒子にも負極の電位が印加され、連鎖的に電気化学的還元反応が起こるため、セラミックス層5の大部分はイオン電導性と電子伝導性を有するセラミックス粒子で構成される、電導性セラミックス層51に変わる。なお、以下、イオン電導性又はイオン電導性と電子伝導性に基づく場合には"電導性"と表記し、電子伝導性のみに基づく場合は"伝導性"と表記する。
有機電解液中における結晶体の電気化学的な還元反応とは、結晶体へ電子と陽イオン(Liイオン)が継続(クーロン/s)的に注入されることである。もし、電気化学的還元反応で、結晶体中を電子と陽イオン(Liイオン)が自由に移動出来なければ、電気化学的還元反応は結晶内部へは進行しない。従って、電気化学的に還元されうる電子絶縁性の結晶体とは、結晶体へ電子と陽イオン(Liイオン)が継続(クーロン/s)的に注入可能な結晶体である。このような結晶体は電気化学的に還元されれば、電子と陽イオン(Liイオン)が注入された結果、電子と陽イオン(Liイオン)が結晶体中を自由に移動出来る。つまり、電気化学的に還元されうる電子絶縁性の結晶体は、電気化学的に還元されれば、電子伝導性とイオン電導性を有する結晶体に変化しうることになる。
セラミックス層5を構成しているセラミックス粒子は電気化学的に還元されうる電子絶縁性のセラミックスから選択されるので、電気化学的還元によって、当該セラミックス粒子はイオン電導性を有するセラミックスに変化する。
一方、セラミックス層5を構成しているセラミックス粒子は電気化学的に還元されうる電子絶縁性のセラミックスとはいえ、セラミックス層5を構成しているセラミックス粒子のうち、正極活物質層2と直接接触する粒子には正極の電位が印加されるので、当該セラミックス粒子が電気化学的に還元されることはない。従って、正極活物質層2と直接接触する粒子は常に電子絶縁性のままであり、図4に示すように"非電子伝導性(電子絶縁性)のセラミックス層50"として残る。
有機電解液中で電気化学的に還元されうる非電子伝導性のセラミックスとしては、具体的にはLi4Ti5O12やTiO2-Bがある。近年、Li4Ti5O12やTiO2-Bはリチウムイオン電池やキャパシタの負極活物質として盛んに検討されている材料であるが(非特許文献2~7参照)、セパレーター機能を持たせるためのセラミックス材料としての検討例はない。なお、スピネル構造のチタン酸リチウムは一般式Li1/3+XTi2/3-XO4(0≦X≦1)で示されるものが存在するが、X=1におけるLi4Ti5O12は電子絶縁性であり、且つ電気化学的に還元されやすい点から本発明の実施形態への利用に適したセラミックス材料の一つである。
図5は本発明の一実施形態に係る蓄電装置において、初回の充電前(図左)と充電後(図右)のセラミック層5の断面を模式図で示したものであり、セラミック層5を構成する非電子伝導性のセラミックス粒子として、具体的にLi4Ti5O12を使用する場合について示している。
初回の充電前(図左)では、電子伝導性の負極活物質層1と電子伝導性の正極活物質層2は電子絶縁性のLi4Ti5O12で構成される電子絶縁性のセラミック層5で電子的導通は完璧に断たれており、初回の充電においては、負極活物質層1を構成する負極活物質は電気化学的に還元され、正極活物質層2を構成する正極活物質は電気化学的に酸化されて充電される。
初回の充電後(図右)では、正極活物質層2と直接接触するLi4Ti5O12粒子には正極電位がかかるので電気化学的に還元されることはなく、そのままLi4Ti5O12粒子として"非電子伝導性のセラミックス層50"を構成しているが、負極活物質層1と直接又は間接的に電子的導通が可能なLi4Ti5O12粒子は負極電位がかかるので、電気化学的に還元されてLi4+XTi4+
5-XTi3+
XO12(0<X≦3)となり、初回の充電後(図右)には、セラミックス層51を構成する。
セラミックス層51は結晶中の過剰のLiイオン(Li+
4+X)により良好なイオン電導性となり、またTi4+とTi3+の自由な電子の授受に基づく良好な電子伝導性にもなる。良好なイオン電導性はセパレーター機能を高めるが、良好な電子伝導性はセパレーター機能を壊す可能性もある。しかし、負極活物質層1と正極活物質層2の電子的導通はセラミックス層50によって完全に断たれるので、セラミックス層51の電子伝導性がセラミック層5のセパレーター機能を壊す心配はない。
結局、本発明の一実施形態に係る蓄電装置においては、図5に示すように負極活物質層1と正極活物質層2の間に介在するセラミックス層5はその大部分がセラミックス層51に変質してセパレーター機能、特にイオン電導性が高くなる分、蓄電装置の内部抵抗は低くなる。
なお、図3に示した本発明の一実施形態に係る蓄電素子10は、非電子伝導性のセラミックス層5を負極活物質層1の上に形成した場合について示したが、セラミックス層5を構成するセラミックス粒子が電気化学的に還元されて、イオン電導性に変わることを利用するものであり、セラミックス層5は負極活物質層1の上に形成される方が、セラミックス粒子が電気化学的な還元を受けやすいという点で有利である。
しかし、セラミックス層5を正極活物質層2の上に形成した場合でも、負極活物質層1と正極活物質層2が対向すれば、必然的にセラミックス層5は負極活物質層1と接触するので、負極活物質層1に接触するセラミックス粒子が電気化学的に還元される可能性はある。従って、セラミックス層5を正極活物質層2の上に形成することも否定するものではない。
従来のシート状セパレーターは極めて多孔質な構造であるため、電解液の保持能力が高く、良好なイオン電導が確保される。一方、図3に示すように、対向する負極32と正極31の間にセラミックス層5を介在させる場合にも、当該セラミックス層に含有される電解液によって基本的に負極32と正極31のイオン電導が確保されるが、斯かるセラミックス層の空孔率は、一般的には現行のシート状セパレーターの1/2にも満たないため、セラミックス層5を相当薄くしないと蓄電装置の内部抵抗が大きくなってしまう。
つまり、従来の技術では、セラミックス層5はアルミナ(Al2O3)のような有機電解液中で電気化学的に酸化も還元もされない絶縁性のセラミックス粒子で構成されるので、充電状態に置かれてもセラミックス層5のイオン電導率が高くなるわけでもなく、シート状セパレーターと同じ厚さ(25μm程度)では蓄電装置の内部抵抗が大きくなってしまう。
しかし、本発明の実施形態によれば、図4に示すように、少なくとも初回の充電を終えた後では、セラミックス層5では多くのセラミックス粒子が電気化学的に還元されてイオン電導性となってセラミックス層51を構成するため、負極32と正極31のイオン電導は、セラミックス層5(初回の充電を終えた後ではセラミックス層51と50である。)に含有される電解液のイオン電導性だけでなく、セラミックス層51を構成するセラミックス粒子のイオン電導性によっても確保される。そのため、セラミックス層5は正極と負極の短絡を十分に阻止できる厚さで形成した場合でも、蓄電装置の内部抵抗は低く抑えられる。
本発明の実施形態では、図4に示すように、初回の充電を終えた後では負極32と正極31の電子的短絡を阻止するのは、電子絶縁性のままのセラミックス粒子で構成されるセラミックス層50であり、電子伝導性となっているセラミックス層51には負極32と正極31の電子的短絡を阻止する能力はない。しかし、本発明の実施形態でも、やはり、最初に電極上に形成するセラミックス層5の厚さが、負極32と正極31の電子的短絡を阻止する能力に大きく関係してくる。
正極と負極の間に介在するセパレーター層の厚さが薄い場合には、正極と負極の間に極微小の導電性異物が挟まっても、蓄電装置が内部ショートに至る可能性は高くなる。もし、セパレーター層の厚さを5~10μm程度とした場合には、通常、活物質層に伝導助剤として混ぜられるグラファイト等(平均粒径でも5~10μm程度)が導電性異物として電極間に挟まって、蓄電装置が内部ショートに至ることも十分に考えられる。
本発明の実施形態においても、セラミックス層5の厚さが薄い場合(5~10μm程度)では、蓄電装置が内部ショートに至る危険性は当然高い。
図6には本発明の実施形態における、セラミック層5の厚さの違いによる内部短絡の発生の違いを電極の模式図で示した。図6(a)はセラミックス層5の厚さ(t1)が薄い場合(5~10μm程度以下)である。図6(b)および図6(c)はセラミックス層5の厚さ(t2)が厚い場合(15μm以上)であり、図6(b)は初回の充電前であり、図6(c)は初回の充電後である。
図6(a)に示すように、負極活物質層1と正極活物質層2の間に介在するセラミックス層5の厚さが薄い(t1)場合には、蓄電装置の内部抵抗は低くなるが、導電性異物60が挟まって負極活物質層1と正極活物質層2が短絡されて、蓄電装置は内部ショートに至る危険性は高くなる。
一方、図6(b)に示すように、セラミックス層5の厚さが厚い(t2)場合には、同じ大きさの導電性異物60が挟まっても、負極活物質層1と正極活物質層2は導電性異物60によって短絡されることはないので、蓄電装置は内部ショートには至らない。当然、この状態(初回の充電前)ではセラミックス層5の厚さに比例して蓄電装置の内部抵抗は大きくなってしまう。
しかし、初回の充電後では、図6(c)に示すように、セラミックス層5を構成するセラミックス粒子のうち、正極活物質層2と導電性異物60に直接接触するセラミックス粒子は正極電位がかかるために電気化学的に還元されることがなく電子絶縁性のままであり、当該電子絶縁性のままのセラミックス粒子は電子絶縁性のセラミックス層50を構成する。
一方、正極活物質層2と導電性異物60に直接接触しないセラミックス粒子は電気化学的に還元されてイオン電導性のセラミックス層51を構成するため、負極活物質層1と正極活物質層2の間のイオン電導は、セラミックス層5(初回の充電後以降ではセラミックス層51と50である。)に含有される電解液のイオン電導性だけでなく、セラミックス層51を構成するセラミックス粒子のイオン電導性によっても確保される。そのため、セラミックス層5が正極と負極の短絡を十分に阻止できる厚さで形成される場合(図6(b)、図6(c))でも、蓄電装置の内部抵抗は低く抑えられる。
本発明の一実施形態に係る蓄電装置としては、Li4Ti5O12やTiO2等の、有機電解液中で電気化学的に還元可能な電子絶縁性のセラミックス粒子で、リチウムイオン電池の負極表面にセラミックス層を形成して、これに直接正極を重ねて積層することで、内部抵抗の十分に低い、安全性の高いリチウムイオン電池が実現できる。特にハイブリッド自動車や電気自動車や電力貯蔵用等の大型蓄電装置に内部抵抗の十分に低い、安全性の高い、安価なリチウムイオン電池が提供できるので、本実施形態に係る電極構造の工業的価値は大である。
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
本実施例では正極活物質としてスピネル系リチウムマンガン酸化物(LiMn2O4)を使用し、負極活物質としてはスピネル系リチウムチタン酸化物(Li4Ti5O12)を使用するロッキングチェアー電池(一般にはリチウムイオン電池と呼ばれている。)において、図3に示す電極構造を適用して実施する。
本実施例では、図3に示すように正極31と負極32を交互に、シート状のセパレーターは介在させずに積層して電極積層体(蓄電素子)10を構成する。正極31は活物質と伝導助剤で構成される電子伝導性の活物質層2が正極集電体4に密着して形成された電極であり、負極32も活物質と伝導助剤で構成される電子伝導性の活物質層1が負極集電体3に密着して形成された電極とする。負極32は電子伝導性の負極活物質層1の表面に電子絶縁性のセラミックス層5を形成しておくので、電極積層体10において対向する正極31と負極32が電子的に導通することはない。
本実施例では、負極32の電極表面に形成する電子絶縁性のセラミックス層5は負極活物質と同じLi4Ti5O12をその構成材料とする。Li4Ti5O12は電子伝導率(10-13s/cm程度)の小さい完全な電子絶縁性であり、且つ有機電解液中では還元されて良好な電子伝導性とイオン伝導性を併せ持つLi7Ti5O12へと変化するので、特に本発明の一実施形態には極めてよく適合するセラミックス材料である。
先ず、Li4Ti5O12は水酸化リチウム(LiOH)と二酸化チタン(TiO2)を4:5のモル比でよく混合し、ペレット状に加圧成形し、ニッケルフォイルを敷き詰めたアルミナの容器に入れ、ヘリウム雰囲気中800℃で焼成して合成した。合成物のXRDパターンには未反応のTiO2はなく、Li4Ti5O12単層であり、合成物のSEM写真(倍率6600)では0.2~1μm程度の1次粒子が集まって1~15μm程度の2次粒子を形成していることが確認できた。なお、Li4Ti5O12の粒径は90%が6.78μm以下で、1.14μm以下が10%に粒度調整した。
調整したLi4Ti5O12の89重量部に、電導助剤として2重量部のアセチレンブラックと3重量部のグラファイトを混ぜ、結着材とするPVDF(ポリフッ化ビニリデン)6重量部を溶かした溶剤と湿式混合してスラリーを用意する。このスラリーを幅200mm、厚さ0.02mmのアルミニウム箔の片面に、両端に15mmの未塗布部を残して、塗布幅170mmで均一に塗布して乾燥し、その後、もう一方の面にも同じ塗布幅で塗布して乾燥した後、ローラープレス機で厚さを0.15~0.16mmになるように加圧して、負極活物質層1が集電体3に密着してなる帯状の負極を作製する。
斯かる帯状の負極には更に電極表面に電子絶縁性のセラミックス層5を形成するが、絶縁性セラミックス層5を構成するセラミックス粒子にも上記調整のLi4Ti5O12を使用した。上記調整のLi4Ti5O12をCMC系の水系バインダーを用いて水系のスラリーとし、このスラリーを前記帯状負極の両面に、片面のセラミックス層の厚さが25μm程度となるように、また負極活物質層1を完全に覆うように塗布して乾燥し、帯状負極の電極表面上に電子絶縁性のセラミックス層5を形成した。
次に、絶縁性セラミックス層5を形成した帯状負極は集電体の未塗布部を10×20mmで電極タブの取り付け部33として残し、セラミックス層の塗布面積で170×110mmのサイズにカットして最終的な負極32aを用意した。
正極活物質とするLiMn2O4は二酸化マンガンと炭酸リチウムの混合物を空気中850℃で焼成して、従来の合成法で調整した。ただしここで合成したLiMn2O4はX線回折ではスピネル型LiMn2O4の回折パターンとよく一致するものであるが、マンガンの価数分析から判断して、正確にはマンガンの一部がリチウムで置換されたLi1.05Mn1.95O4と考えられる。LiMn2O4の粒径は90%が12.94μm以下で、3.52μm以下が10%に粒度調整した。
調整したLiMn2O4の90重量部に、電導助剤としてアセチレンブラック3重量部とグラファイト4重量部および結着材としてPVDF3重量部とともに溶剤であるN-メチルー2-ピロリドンと湿式混合してスラリーとする。このスラリーを集電体とする厚さ0.020mm、幅200mmのアルミニウム箔の片面に、両端に20mmのアルミニウム箔の未塗布部を残して塗布幅160mmで均一に塗布して乾燥し、その後、もう一方の面にも同じ塗布幅で塗布して乾燥する。その後、ローラープレス機で、厚さ0.190~0.210mmに加圧して、正極活物質層2が集電体4に密着してなる帯状の正極を作製する。
斯かる帯状の正極は集電体の未塗布部を15×20mmで電極タブの取り付け部34として残し、正極活物質層2の塗布面積で160×100mmのサイズにカットして最終的な正極31aを用意した。
以上のように用意した正極31aと負極32aは、図3に示すように、負極32の3枚と正極31の2枚とを負極32aの電極端が寸法A(ここでは5mm)だけ正極31aの電極端より外側に位置するように積層し、図1に示すように、正極31に設けた正極集電体の露出部34と、負極32に設けた負極集電体の露出部33をそれぞれ正極タブ7と負極タブ6にまとめて溶接すれば、図1に示した蓄電素子10となる。
蓄電素子10は、図2に示すように、ラミネートシート11及びラミネートシート12に挟んでラミネートシートの周囲112aを熱融着する。この時にはラミネートシートの周囲の一部112bは熱融着しないので、蓄電素子10はラミネートシート11及びラミネートシート12の袋の中に納まった状態となる。袋の中には、袋の未封じ部分112bを上にして1モル/LのLiPF6を溶解したエチレンカーボネイト(EC)とジエチルカーボネイト(DEC)の混合溶液を電解液として注入し、真空含浸法にて袋の中の蓄電素子10に電解液を含浸させる。その後、ラミネートシートの未封じ部分112bを真空下で封じて、図2に示す構造のリチウムイオン電池Aを外形寸法210mm×140mm×1.4mmで作製した。
蓄電素子10は図1に示すように、電極タブ6及び電極タブ7には予めプラスチックテープ9を熱圧着して貼り付けているので、プラスチックテープ9がラミネートシート11及びラミネートシート12と一体化して熱融着するので、負極タブ6及び正極タブ7が蓄電素子10の密封に妨げになることはなく、負極タブ6と正極タブ7は外部に取り出されてそれぞれ負極外部端子13および正極外部端子14となる。
完成したリチウムイオン電池Aは24時間のエイジングの後、最初の充電では0.1Aの電流で、充電電圧の上限を3.0Vに設定して20時間かけて充電を行い、0.2Aの定電流で放電を行った結果、約1.5Ahの放電容量が得られた。
一方、完成したリチウムイオン電池Aの内部抵抗は、最初の充電を行う前では周波数1kHzで測定した交流インピーダンスでは約180mΩであったが、最初の充電を行った後では周波数1kHzで測定した交流インピーダンスは約36mΩにまで減少し、その後の充放電においても、充放電状態(SOC:State of Charge)の如何に関わらず、36mΩ程度の内部抵抗が維持された。
因みに従来の樹脂性セパレーター(厚さ25μm程度)を使用する場合では、その内部抵抗は70mΩ程度であり、実施例1における電池の優位性が分かった。
本実施例で作製したリチウムイオン電池Aでは、図4に示すように、負極32の電極表面に形成されたセラミックス層5は、最初の充電が終了した時点で絶縁性セラミックス層50と電導性セラミックス層51に分離し、絶縁性セラミックス層50が実質的なセパレーターとして機能する。
一方、負極活物質層1中の負極活物質であるLi4Ti5O12は充電終了時点では電気化学的に還元(充電)されてLi7Ti5O12となっているが、電導性セラミックス層51においてもLi4Ti5O12が電気化学的に還元されて電導性(電子伝導性であり、イオン電導性でもある。)のLi7Ti5O12となっており、セラミックス層51は実質的には負極活物質層として機能することができる。
従って、負極活物質層1を構成する活物質が、本実施例のようにセラミックス層5を構成するセラミックス粒子と同じ物質である場合やセラミックス層5を構成するセラミックス粒子と同じ程度の酸化還元電位(充放電電位)を有する物質である場合には、電導性セラミックス層51の充放電容量が負極活物質層1の充放電容量に加算されることによって蓄電装置の充放電容量が大きくなる利点もある。
本比較例では負極の電極表面に形成するセラミックス層を一般的なセラミックスであるアルミナ(Al2O3)粒子で構成してリチウムイオン電池Bを作製し、実施例1の電池と比較する。
本比較例では、正極は実施例1で用意した正極31aをそのまま使用するが、負極は、実施例1で作成した帯状の負極を使用して、これにアルミナ(Al2O3)粒子をCMC系の水系バインダーを用いて水系のスラリーとし、このスラリーを用いて絶縁性のセラミックス層5bを実施例1と同じように、同じ厚さ(25μm程度)で形成し、実施例1と同じ寸法にカットして負極32bとした。
用意した負極32bの3枚と実施例1で用意した正極31aの2枚とを積層し、実施例1と同じようにして蓄電素子10を組み立て、そのほか全て実施例1と同じにして、図2に示す構造のリチウムイオン電池Bを外形寸法210mm×140mm×1.4mmで作製した。
完成したリチウムイオン電池Bも24時間のエイジングの後、0.1Aの電流で、充電電圧の上限を3.0Vに設定して20時間の充電を行い、0.2Aの定電流で放電を行った結果、約1.3Ahの放電容量が得られたが、この電池の内部抵抗は、最初の充電を行った後でも周波数1kHzで測定した交流インピーダンスでは180mΩ程度であり、その後の充放電においても、充放電状態(SOC:State of Charge)の如何に関わらず、内部抵抗が180mΩ以下となることはなかった。
負極の電極表面にアルミナ粒子で絶縁性のセラミックス層を形成する場合では、実施例1に比べて内部抵抗は5倍であり、従来の樹脂製のセパレーターを使用する電池と比べても、内部抵抗の値は2.5倍となる。
本実施例では正極活物質としてスピネル系リチウムマンガン酸化物を使用し、負極活物質としてはカーボンを使用するリチウムイオン電池において、図3に示す電極構造を適用して実施する。本実施例においても、負極32の電極表面に形成する絶縁性のセラミックス層5は実施例1と同じくLi4Ti5O12をその構成セラミックス粒子とした。
先ず、負極活物質として2800℃で熱処理を施したメソカーボンマイクロビーズ(d002=3.36Å)の88重量部に2重量部のアセチレンブラックを混ぜ、結着材とするPVDF(ポリフッ化ビニリデン)10重量部を溶かした溶剤と湿式混合してスラリーを用意する。このスラリーを幅200mm、厚さ0.01mmの銅箔の片面に、両端に15mmの未塗布部を残して塗布幅170mmで均一に塗布して乾燥し、その後、もう一方の面にも同じ塗布幅で塗布して乾燥した後、厚さ0.13~0.15mmにローラープレス機で加圧して帯状のカーボン負極を作製した。
帯状のカーボン負極表面への絶縁性のセラミックス層の形成は、実施例1と同じくLi4Ti5O12の水系バインダーを用いたスラリーを使用する。このスラリーを帯状のカーボン負極の両面に、片面のセラミックス層の厚さが25μm程度となるように、またカーボン塗布層を完全に覆うように塗布して乾燥し、帯状カーボン負極の表面上に絶縁性のセラミックス層5を形成した。
電極表面に絶縁性セラミックス層5を形成した帯状カーボン負極は実施例1と同じように、集電体の未塗布部を電極タブ取り付け部33として残し、セラミックス層の面積で170×110mmのサイズにカットして負極32cを用意した。
用意した負極32cと実施例1で作成した正極31aは実施例1と同じ要領で図2に示す電池構造でリチウムイオン電池Cを外形寸法210mm×140mm×1.4mmで作製した。
完成したリチウムイオン電池Cの内部抵抗も、最初の充電を行う前では周波数1kHzで測定した交流インピーダンスでは180mΩ程度であった。最初の充電では0.1Aの電流で、充電電圧の上限を4.2Vに設定して20時間かけて充電を行い、0.2Aの定電流で放電を行った結果、約1.5Ahの放電容量が得られた。最初の充電を行った後では周波数1kHzで測定した交流インピーダンスでは約36mΩに減少し、その後の充放電においても、充放電状態(SOC:State of Charge)には殆ど関係なく、36mΩ程度の内部抵抗が維持され、やはり、従来のリチウムイオン電池の内部抵抗の半分程度である。
実施例1および2では、正極活物質としてLiMn2O4を使用し、負極活物質にはLi4Ti5O12およびカーボンをそれぞれ使用したリチウムイオン電池について、その一実施形態を示したが、正極活物質や負極活物質はこれに限定されるものではないし、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものであり、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
一般にリチウムイオン電池に使用される樹脂製のセパレーターは耐熱性に乏しく、電池の安全性を低下させている要因である。また価格も高いために、電池の材料費を大きく引き上げている。本発明によれば、斯かる樹脂製のセパレーターは不要であり、良好なセパレーター機能を有する耐熱性の高いセラミック層が電極表面に安価に形成可能なので、安価で安全性の高いリチウムイオン電池を提供できる。
以上のとおり、本発明の蓄電装置は、耐熱性の高いセラミックス層をセパレーターとして、内部短絡は十分に阻止し、且つ内部抵抗も十分に低いものとなっている。
1 負極活物質層
2 正極活物質層
3 負極集電体
4 正極集電体
5 セラミックス層
6 負極タブ
7 正極タブ
8 絶縁部材
9 プラスチックテープ
10 蓄電素子
11 ラミネートシート
12 ラミネートシート
13 負極外部端子
14 正極外部端子
31 正極
32 負極
50 非電子伝導性のセラミックス層
51 電導性のセラミックス層
60 導電性異物
2 正極活物質層
3 負極集電体
4 正極集電体
5 セラミックス層
6 負極タブ
7 正極タブ
8 絶縁部材
9 プラスチックテープ
10 蓄電素子
11 ラミネートシート
12 ラミネートシート
13 負極外部端子
14 正極外部端子
31 正極
32 負極
50 非電子伝導性のセラミックス層
51 電導性のセラミックス層
60 導電性異物
Claims (4)
- 正極と負極が対向してなる蓄電装置において、前記正極と前記負極は何れも集電体に電子伝導性の活物質層が形成された電極であって、対向する同正極と同負極の内部短絡は対向する正極と負極の活物質層間に介在する電子絶縁性のセラミックス層によって阻止されており、該セラミックス層を構成するセラミックス粒子は電気化学的な還元反応で化学変化しうる電子絶縁性のセラミックスから選択されることを特徴とする蓄電装置。
- 前記セラミックス層が負極の電極表面に形成されていることを特徴とする請求項1記載の蓄電装置。
- 前記セラミックス層を構成するセラミックス粒子が化学式Li4Ti5O12で示されるスピネル構造のチタン酸リチウムであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の蓄電装置。
- 負極の活物質層を構成する活物質が前記セラミックス層を構成するセラミックス粒子と同じ物質であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の蓄電装置。
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