JP2016028373A - 蓄電装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 酸化物を負極活物質とする有機電解液二次電池は安全性の高い有機電解液二次電池であるが、電池電圧が低いために出力密度が低く、ハイブリッド自動車(HV)への搭載基準を満足出来ない。
【解決手段】 本発明による蓄電装置では、対向する正極と負極の活物質層の少なくとも一方を非電子伝導性として、対向する活物質層はセパレーターを介在させることなく対向面で密着させるので、電極間距離は短くなり、且つ電極厚さを薄くすれば電極厚さに反比例して効率よく電極面積が増えるので、出力密度の高い蓄電装置となる。従って、酸化物を負極活物質とする有機電解液二次電池も本発明を適用すれば、HV搭載用電池としての性能基準を満足し、安全で、安価で、出力密度の高い次世代型HV搭載用電池となる。
【選択図】図1

Description

本発明は、有機電解液二次電池やキャパシタの電極構造に関するものである。
近年我が国では、モーター駆動とエンジン駆動を組み合わせたハイブリッド車(HV)がその優れた環境性能と燃費性能の実績から急速に普及拡大している。一方、リチウムイオン電池の出現によって100%モーター駆動の電気自動車(EV)も実用化されて、一般ユーザー向けに市販され始めた。
地球温暖化の原因はCOの排出量増加によるものとほぼ断定されており、COの排出量削減に対してはHVやEVへの期待が大きい。因みにHVのCO排出量はガソリン車の64%程度にまで低減し、EVではガソリン車の25%程度にまで低減するという検討結果が示されている。特にEVは家庭用電力で充電して走行するので、将来的には家庭用電力に占める再生可能エネルギーの比率が高まれば、EVのCO排出量が更に少なくなる。
しかし、EVは確かにCOの排出量や燃費性能や静粛性においては申し分ないが、一回の充電で走行できる距離(充電走行距離)が限定的であるため、長距離ドライブには不向きであり、やはり選択し辛い車である。
一方、HVはCOの排出量や燃費性能ではガソリン車をはるかに凌ぎ、航続距離においてもガソリン車と同じであり、長距離ドライブにも全く心配がない。従って、理論的には世界中の全てのガソリン車はHVに移行可能であり、地球温暖化防止の観点からは一刻も早く全てのガソリン車をHVに移行すべきである。
我が国では、HVの先駆メーカーでは既に売り上げの40%をHVが占めるに至っており、少なくとも今後は他のメーカーにおいてもHVの比率が急速に高まるものと予想される。
HVでは発進時や低速走行時や急加速時にはモーター駆動がエンジン駆動をアシストしてエンジンの稼動効率を高めるものであり、モーターへの電力供給能力が高ければ、基本的にはエンジンの稼動効率が高まる。従って、HVには出来るだけ出力性能の高い蓄電装置の搭載が望ましいが、同時に搭載される蓄電装置には価格と搭載スペースも限られるので、今後ともHV搭載用としてはより安価で、より高い出力密度(W/L)の蓄電装置が求められる。
HVにはこれまで、専らニッケル水素電池が蓄電装置として搭載されてきたが、ニッケル水素電池は正極材料のニッケル酸化物も負極の水素吸蔵合金の主要成分も資源的に乏しいため、需要が高まれば原材料コストが高騰する恐れがある。従って、我が国だけでも、今後のHVの普及拡大にはニッケル水素電池に代わる次世代型のHV搭載用蓄電装置が必要となることは必至である。もしこれが、世界規模でガソリン車がHVに移行するとすれば、必要となる高出力蓄電装置は莫大な数である。むしろ安価な高出力蓄電装置が出現すれば、ガソリン車は世界規模でHVに移行すると考えられる。
高い出力密度(W/L)を有する蓄電装置としては二次電池の他にはキャパシタもあるが、キャパシタは二次電池と比べて出力密度は高いが、高出力の持続時間は短い。HV搭載用蓄電装置に要求される高い出力は、HVの加速時間に相当する数十秒間は持続して出力できなければならないので、キャパシタ単体のHV搭載は難しい。なお、本明細書では、正極と負極のいずれか一方にだけ電気化学的な酸化還元反応に基づく活物質を使用する蓄電装置はキャパシタに分類し、電気化学的な酸化還元反応に基づく活物質を正極と負極のいずれにも使用する蓄電装置を二次電池とする。
現在のところ、次世代型HV搭載用蓄電装置としてはリチウムイオン電池がその第一候補と考えられているようである。これまでニッケル水素電池を搭載してHVの普及拡大をリードしてきた先駆メーカーも、リチウムイオン電池を搭載した車種を販売し始めている。特に、同じエンジンと同じ駆動用モーターを搭載しながら、実績の少ないリチウムイオン電池と実績のあるニッケル水素電池をそれぞれ搭載する二つの車種を販売し始めたことは興味深い。
リチウムイオン電池を搭載する前記車種には約1.04kWhの電池が搭載され、ニッケル水素電池を搭載する前記車種では約1.31kWhの電池が搭載されている。両車種では搭載電池のWh容量には明らかに差があるが、“バッテリーの違いによってハイブリッドシステムや走行性能に差が出ることはない”とカタログには明記されており、HVの急加速性能に直接関係する搭載電池の最大出力はいずれも同じ程度と推定される。つまり、HV搭載用電池に必要な特性は容量ではなく出力であることが窺える。
また“性能に差が出ることがない”にも拘らず、リチウムイオン電池を搭載するその目的はニッケル水素電池に代わる次世代型HV搭載用蓄電装置の模索とも見て取れる。
リチウムイオン電池は本発明者等が世界に先駆けて実用化に成功した有機電解液二次電池であり、“リチウムイオン蓄電池”と名付けて、1990年2月14日にプレスリリースした。引き続き本発明者は、1990年3月4〜7日に米国フロリダで開催された第3回二次電池セミナーで、初めてリチウムイオン電池の性能を世の中に紹介した。その内容はJEC Battery Newsletter No.2(Mar.−Apr.)で世界中に紹介され、またバッデリー専門雑誌にも本発明者によって投稿されている(雑誌Progress in Batteries & Solar Cells,Vol.9,1990、P.209参照)。その後リチウムイオン電池は瞬く間にその優れた性能が認識され、多くの電子機器の電源に採用されていった。
有機電解液二次電池としては1990年以前にもカナダで金属リチウムを負極とし、二硫化モリブデンを正極活物質とする電池で実用化が試みられたが、携帯電話で使用中に発火するという事故を起こし、実用化が断念された経緯がある。発火事故の原因は金属リチウムと電解液の反応に基づく熱暴走と考えられている。
金属リチウムを負極とする場合には、充放電を繰り返すうちにリチウム負極は次第にパウダー化して、より反応性に富んだ(活性化した)状態に変化する。もともと金属リチウムは有機電解液を還元する能力があるため、パウダー化した金属リチウムは電解液とより反応しやすくなり、金属リチウムと電解液との反応熱で電池が熱暴走して発火に至ると考えられる。つまり、金属リチウムを負極とした有機電解液二次電池は使用しているうちに安全性が損なわれていって発火事故等に至るので極めて始末が悪い。
一方、リチウムイオン電池はリチウムイオンのドープ・脱ドープが可能なカーボンを負極とすることで、充放電の繰り返しによる負極の経年変化は抑えられるので実用化が実現できた。
なお、殆どの有機電解液はリチウム塩(例えばLiPF、LiClO等)を電解質とするので、殆どの有機電解液二次電池ではリチウムイオンが電池反応に関与する。そのため、近年ではリチウムイオン電池の呼称はカーボン以外を負極とする有機電解液二次電池にも使われることがあるが、本明細書では本発明者らが当初“リチウムイオン蓄電池”と命名した、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能なカーボンを負極とする有機電解液二次電池を “リチウムイオン電池”と呼んで、他の有機電解液二次電池とは区別する。
負極カーボンの充放電は、カーボンへのリチウムイオンのドープ・脱ドープが繰り返されるだけで、カーボン自体は充放電の繰り返しによって変質することが比較的少ないので、リチウムイオン電池では使用しているうちに安全性が損なわれることも比較的少ない。しかし、誤って過充電を続けると負極カーボンの表面には微細な金属リチウムが析出して、高い確率で発火することが判明し、リチウムイオン電池の実用化には手間取った経緯がある。
結局、過充電時の電池内圧の上昇を利用して、電池内部のリード線が切断されて充電できなくなるという安全機構を考案し、誤って過充電された場合でも、最悪電池は壊れるが発火事故は阻止できるようにして実用化に踏切った(雑誌Progress in Batteries & Battery Materials,Vol.10,1991、P.221参照)。現在ではリチウムイオン電池は保護回路を組み込むことで過充電を阻止している。
しかし、リチウムイオン電池もこれまでに数多くの事故が報告されており、必ずしも安全性の高い電池とは言えない。例えば、1995年11月には、量産開始から間もない時期ではあるが、リチウムイオン電池工場の充放電室から出火して大規模な工場火災を引き起こしているし、2006年には、実用化の発表(1990年2月)から16年も経過しているが、ノートパソコン向けのリチウムイオン電池で異常発熱等のトラブルから大規模な市場回収が行われた経緯もある。その他小規模な発熱や発煙事故は数多く報告されている。
リチウムイオン電池では、負極のカーボンはリチウムイオンがドープされると電位的には金属リチウムにかなり近くなり、やはり有機電解液を還元する能力があり、何かの原因(電池の内部ショート、外部短絡、過充電等)で電池温度が上昇すれば、リチウムイオンがドープされたカーボンと電解液の反応が激しくなり、異常な発熱や発煙事故に繋がる。
通常、60℃以下の温度であれば、リチウムイオンがドープされたカーボンと電解液の反応は、その反応生成物が保護膜となって抑制されているが、電池温度が60℃以上に上昇すれば負極カーボンと電解液の反応は激しくなり、電池の自己発熱によって電池温度は更に上昇して熱暴走する可能性がある。従ってリチウムイオン電池では上限を60℃として、電池温度が厳しく管理されなければならない
携帯電話やノートパソコン等の多くの電子機器の電源として使用されているリチウムイオン電池に比べて、EVやHVに搭載されるリチウムイオン電池は大きな出力が求められる分、電池温度のコントロールは難しくなる。特に、HVに搭載されるリチウムイオン電池は、求められる容積当たりの放電出力(W/L)が大きいため、電池容積当たりの発熱量(J/L)も大きく、電池温度も上昇しやすい。
例えば、リチウムイオン電池を搭載する某社のHVでは電池を5°前下がりに搭載し、導入した風を当てることで冷却効果を高めるなどの工夫がなされている。今後HVに搭載するリチウムイオン電池の出力密度(W/L)を更に高めれば、電池温度を60℃以下に保つ更なる工夫も必要であり、安全性の確保は一段と難しくなる。
モーター駆動のみで走行するEVでは、長い充電走行距離を確保するためには大きな容量の蓄電装置を搭載する必要があり、EVに搭載するリチウムイオン電池には大きな容量密度(Wh/L)が求められる。しかし、HVに搭載されるリチウムイオン電池には高い出力密度(W/L)が求められ、基本的には大きな容量は必要ではない。
実際、HVに搭載されるリチウムイオン電池ではEVに搭載されているリチウムイオン電池に比べて、容量密度(Wh/L)はある程度犠牲となって50〜60%程度であるが、出力密度(W/L)では約4倍程度にアップしている。
現在のところ、リチウムイオン電池が次世代型HV搭載用蓄電装置の第一候補と考えられているようであるが、リチウムイオン電池は出力密度(W/L)と安全性がトレイドオフの関係にあるため、安全性の確保の観点からは他の二次電池の選択肢を検討してみる必要がある。
有機系の電解液はその分解電圧が水溶液系電解液に比べて高いので、有機電解液二次電池であれば活物質の組み合わせ方によって色々な二次電池が設計できる。しかし、リチウム金属を負極とする有機電解液二次電池やカーボンを負極とするリチウムイオン電池のように、負極活物質の酸化還元電位が有機電解液の還元される電位よりも卑であれば、如何なる有機電解液二次電池も負極活物質と電解液の反応に基づく発熱反応が発煙や発火事故への引き金となる可能性を秘めている。
そこで、有機電解液二次電池の中でも有機電解液を還元する能力のない負極活物質(例えば金属酸化物)を選択すれば、安全性の高い電池が得られるはずであり、斯かる有機電解液二次電池がこれまでにも数多く提案されている。
有機電解液を還元する能力のない物質、即ち酸化還元電位の貴な(高い)物質を負極活物質とする有機電解液二次電池は、本明細書では、以後、“貴負極電位型二次電池”と呼ぶこととする。例えば、米国特許4,985,476にはTiS、VS、CdS、NbSなどの硫化物を負極活物質とする貴負極電位型二次電池が提案されており、本発明者も、CuFeO(特開平8−236115)やスピネル系リチウムチタン酸化物(特開平8−22841)などの金属酸化物を負極とする貴負極電位型二次電池を提案している。
貴負極電位型二次電池では使用する負極活物質の酸化還元電位が有機電解液の還元電位より貴であるため、負極活物質には有機電解液を還元する能力は無く、電池温度が60℃以上に上昇しても電池が自己発熱することがないので安全性は格段に確保しやすい。
勿論、有機電解液自身の熱分解が90℃程度では始まるので、貴負極電位型二次電池といえども90℃以下の温度に保つ必要はあるが、電池温度が高くなれば電池からの放熱速度は増すので、上限が90℃であれば電池温度のコントロールは極めて容易となる。
しかし、貴負極電位型二次電池は負極活物質の酸化還元電位が貴である(高い)分、放電電圧がリチウムイオン電池よりかなり低くなり、結局、電流容量(Ah)と放電電圧の積で求められるWh容量(V・Ah=Wh)はリチウムイオン電池より相当低くなる。
これまでの電池の用途では、主として容量密度(Wh/L)の高い電池が求められてきたため、リチウムイオン電池の出現以来、リチウムイオン電池より電圧の低い貴負極電位型二次電池はなかなか容量密度(Wh/L)がリチウムイオン電池のレベル(素電池ベースで250Wh/L程度)には到達せず、実用化には至っていない。
因みにニッケル水素二次電池は、素電池電圧ではリチウムイオン電池の1/3ではあるが、容量密度は250Wh/Lを超えており、リチウムイオン電池と並んで多くの電子機器等にも使用されている。
しかしHV搭載用電池に限定して考えてみれば、前にも述べたように、HVに搭載されるリチウムイオン電池は出力密度(W/L)を大きくするために、容量密度(Wh/L)は犠牲となって、本来のリチウムイオン電池の50〜60%にまで低減している。つまり、HV搭載用電池としては出力密度(W/L)が要求基準を満たせば、容量密度(Wh/L)は本来のリチウムイオン電池の半分程度でも十分HVへの搭載が可能であることを示唆している。
従って、これまでの用途では容量密度(Wh/L)が低いために実用化には至っていない貴負極電位型二次電池も安全性の高さを考慮すれば、次世代型HV搭載用電池の有力な候補である。
貴負極電位型二次電池は次世代型のHV搭載用電池の有力候補であるが、HVに搭載するためには最大出力密度(W/L)をHV搭載用電池の要求基準にまで引き上げる必要がある。如何なる電池も電池サイズを大きくすれば出力は大きくなるが、HVでは電池の搭載スペースが車の座席数や荷物室のスペース等に大きく関係してくるので、HV搭載用電池には小さな電池サイズで大きな出力を有する電池が求められる。つまり、HV搭載用電池には大きな最大出力密度(W/L)が求められる。
ただし、ここでは最大出力密度(W/L)とは電池の容積当たりの最大の出力を意味するが、最大の出力は持続可能な時間によって異なる。例えば10秒間だけ放電持続可能な最大出力は、120秒間放電持続可能な最大出力より当然大きい。従って、本明細書ではHV搭載を前提として、素電池ベースで120秒間持続可能な最大出力を素電池体積で除した値をもって最大出力密度(W/L)と定義しておく。
HV搭載用電池の最大出力密度(W/L)の要求基準は、現在HVに搭載されているリチウムイオン電池の性能から判断すれば、素電池ベースで凡そ2500W/L程度である。従って、貴負極電位型二次電池をHVに搭載するためには、当然2500W/L以上の最大出力密度が求められる。
出力密度(V・A=W/L)の大きな電池とは高い電圧を維持して大きな電流で放電できる電池であり、電池は一般に、大電流で放電を行えば正極と負極の間には放電電流密度に応じて電極反応に関与するイオンには濃度差が生じ、このイオン濃度の差に基づく濃度分極によって電池電圧が降下する。従って、斯かる濃度分極による電圧降下が少ない電池が出力密度の大きな電池である。
例えば、LiPFを溶解した電解液を使用しているリチウムイオン電池の放電においては、負極では負極活物質からLiイオンが放出され、正極では正極活物質中にLiイオンが取り込まれるが、電池内では負極と正極の間はLiとPF によって電気が運ばれる。このときのLiとPF が電気を運ぶ割合、即ちイオンの輸率を各々t、tとするとt+t=1の関係にあり、負極側ではPF の輸率tの分だけLiイオン濃度(電解液濃度)が高くなり、正極側ではPF の輸率tの分だけLiイオン濃度(電解液濃度)がうすくなり、斯かる電解液濃度の差に基づく濃度分極が放電電圧を押し下げる。
逆に充電では、負極側ではLiイオン濃度がうすくなり、正極側ではLiイオン濃度が高くなり、濃度分極は充電電圧を上昇させるので、充電されにくくなる。
リチウムイオン電池に限らず、少なくとも有機電解液二次電池の充・放電においては負極側と正極側では電解液濃度に差が生じ、電解液濃度の差による濃度分極が電池の充電電圧を押し上げ、放電電圧を押し下げる。
この場合、正・負極間の電解液の濃度差は電極反応によって生じ、生じた濃度差はイオンの拡散によって緩和される。従って、電解液の濃度差の進行は電流密度(電極反応速度)を下げれば低く抑えられ、イオンの拡散速度を速めればやはり低く抑えられる。具体的には、電流密度は正極と負極の電極対向面積を大きくすれば下がり、イオンの拡散速度は正極と負極の電極間距離を短くすれば濃度勾配が大きくなるので速まる。
従来の有機電解液二次電池では、蓄電素子はシート状の正極と負極を、セパレーターを挟んで対向させ、重ね合わせて積層体として構成するか、或はシート状の細長い正極と負極を、セパレーターを挟んで対向させて渦巻状に巻回体として構成する。
従って、従来型の有機電解液二次電池の蓄電素子ではシート状電極の厚さを薄くすれば、一定体積の蓄電素子では電極面積が増えるし、正極と負極の間に介在させるセパレーターの厚さを薄くすれば、電極間距離は短くなる。
一般的にはシート状電極は活物質を結着剤等で固めて集電体上に活物質層を形成して作るので、電極厚さを薄くするためには薄い集電体を使用して薄い活物質層を形成することになるが、集電体の厚さは機械的強度や電気抵抗等を考慮すると10ミクロン程度が薄さの限界であり、活物質層の厚さでは活物質の粒径までは薄くすることが可能であり、やはり10ミクロン程度が薄さの限界である。また、セパレーターも機械的強度やセパレーターとしての機能を考慮すれば、25ミクロン程度が薄さの限界である。
現在HVに搭載されるリチウムイオン電池では電極の厚さもセパレーターの厚さもほぼ限界近くまで薄くすることで、最大出力密度(W/L)が2500W/L程度に到達している。
ところが、リチウムイオン電池に比べて電圧の低い貴負極電位型二次電池では、電極の厚さとセパレーターの厚さを限界まで薄くしても、従来の電極構造では最大出力密度(W/L)はHVへの搭載基準には到底達し得ない。一般に開路電圧がVで内部抵抗がrの電池の最大出力(Wmax)はWmax=V /4・rの関係にあり、最大出力は開路電圧の二乗に比例するからである。ただし、ここでは電池の内部抵抗rは正極と負極間の交流インピーダンスではなく、電解液の抵抗分極や濃度分極や電極の活性化分極等、全ての分極を放電電流で除した値である。
貴負極電位型二次電池を従来の電極構造で作成する場合、内部抵抗ではHVに搭載されるリチウムイオン電池と同じレベルで作成可能かもしれないが、電池電圧は正極活物質と負極活物質の電極電位の差であり、あえて電極電位の貴な負極活物質を使用する貴負極電位型二次電池は当然電池電圧が低い。従って貴負極電位型二次電池は仮に内部抵抗は同じに出来ても、電圧がリチウムイオン電池の2/3程度であれば、最大出力は電圧の二乗に比例するのでリチウムイオン電池の45%程度にも達し得ない。
そこで、貴負極電位型二次電池の最大出力密度(W/L)を2500W/L程度(リチウムイオン電池並み)に引き上げるためには、更に電極面積を増やし、更に正極と負極の電極間距離を短くすることが必要であるが、従来の電極構造では無理である。
本発明は、以上の課題に鑑みて成されたものであり、その目的は蓄電素子からセパレーターを取り除くことを可能とし、それによって、電極面積を増やすとともに電極間距離をも縮めて、電圧の低い有機電解液二次電池においても高い出力密度を得ることが出来る新しい電極構造を提供することにある。
本発明による蓄電装置の電極構造では、正極と負極のそれぞれの集電体に密着した二つの活物質層は、セパレーターを介することなく対向させ、当該二つの活物質層は対向面で密着させる。ただし活物質層は活物質で構成されるが活物質そのものではない。
本発明による蓄電装置では、前記活物質層を構成する正極活物質と負極活物質はともに充電状態では良好な電子伝導性であることが望ましいが、正極活物質か負極活物質の少なくとも一方は、電気化学的な酸化還元反応に基づく活物質であり、充電方向に電気化学的に酸化または還元されるまでは、つまり未充電の状態では非電子伝導性である物質から選択する。
従って本発明では、正極か負極の何れかの活物質層は未充電状態では非電子伝導性である前記活物質で構成するが、当該活物質層には充電方向に電気化学的に酸化または還元される前で既に電子伝導性であるような物質は含ませない。
なお、本明細書においては“非電子伝導性”とは殆ど電子伝導性を持たないことを意味し、更に詳しくは、室温における電子伝導に基づく電気伝導率が一般的に絶縁体に区分される10−10S/cm未満であることを意味するものである。電気伝導の機構には、物質中で電気を運ぶ担体が電子である場合の電子伝導と、電気を運ぶ担体がイオンである場合のイオン伝導があるが、“非電子伝導性”ではイオン伝導性の有無は問わない。
本発明を貴負極電位型二次電池へ適用する場合には、酸化還元電位を0.5〜2.5V(vs Li/Li)の範囲にもつ物質で、且つ電気化学的に還元されるまでは非電子伝導性である物質の中から負極活物質を選択することが望ましい。
斯かる非電子伝導性の負極活物質としては、具体的にはLiTi12で示されるスピネル系リチウムチタン酸化物を選択することが出来る。この場合、具体的には主たる正極活物質にはリチウムマンガン酸化物(LiMn)やリチウムニッケル酸化物(LiNiO)等を選択すれば、本発明を貴負極電位型二次電池に適用できる。
本発明において選択される非電子伝導性活物質は、充電状態では良好な電子伝導性であることが望ましいが、斯かる非電子伝導性活物質の候補としては酸化チタンやリチウムチタン酸化物やリチウム鉄酸化物などがある。
本発明による蓄電装置では、電極は従来電池と同じく活物質を結着剤等で固めて集電体上に活物質層を形成してシート状で作ることが出来るが、本発明による蓄電装置の蓄電素子は正極と負極はセパレーターを介することなく活物質層を対向させて密着させ、対向する電極を複数重ね合わせて積層体として構成することが出来るし、シート状の帯状電極を、セパレーターを介することなく活物質層を対向させて密着し、渦巻状に巻回体として構成することも出来る。斯かる蓄電素子を電解液を含浸せしめて容器内に密封すれば、本発明による蓄電装置が完成する。
本発明による蓄電装置では正極活物質か負極活物質の少なくとも一方は、未充電の状態では非電子伝導性である物質から選択し、当該活物質には充電方向に電気化学的に酸化または還元されるまでに既に電子伝導性であるような物質はいっさい混ぜずに活物質層が形成されるので、当該活物質層は未充電の状態では非電子伝導性である。
従って本発明による蓄電装置では、正極か負極の少なくとも何れかの活物質層は非電子伝導性であり、対向する正極と負極の活物質層を接触させても正極と負極の電子的導通は断たれるので、セパレーターを介することなく、対向する正極と負極の活物質層は対向面で密着させることが出来る。
有機電解液二次電池は電解液のLiイオンの輸率が1ではないため、充・放電においては負極側と正極側では電解液濃度に差が生じ、電解液濃度の差による分極が電池の充電電圧を押し上げ、放電電圧を押し下げる。
正・負極間の電解液の濃度差は電極反応によって生じるが、斯かる電解液の濃度差はイオンの拡散速度が遅ければ緩和されにくいので電極反応に支障をきたすが、逆にイオンの拡散速度が速ければ電解液の濃度差は緩和されやすく、電極反応がスムースに進行する。
本発明による蓄電素子では正極と負極の間にはセパレーターが介在しないので、正・負極間の距離が極めて近くなり、正・負極間の電解液の濃度勾配が大きくなるのでイオンの拡散速度は速まり出力密度の高い電池となる。
本発明による電池の初回の充電では、非電子伝導性の活物質層では活物質は非電子伝導性であるため、集電体に密着する活物質から充電され始め、充電された活物質は電子伝導性になり、順次連鎖的に集電体から離れた活物質も充電される。
こうして非電子伝導性の活物質層では初回の充電によって、約70〜90%程度の活物質が集電体に近いものから順次充電され、初回の充電以降は、一度充電された当該活物質は常に充放電に寄与する役割を担い、集電体から離れて位置する残りの約10〜30%程度の非電子伝導性の活物質は未充電のまま、非電子伝導性のままで、引き続き正極と負極の電子的導通を阻止する役割(セパレーターの役割)を担う。
従って、仮に非電子伝導性の活物質層が厚さ10ミクロン程度で、充電後に未充電のままの活物質層が厚さ3ミクロン程度で存在すれば、従来の電池におけるセパレーター(厚さ25〜35ミクロン)に比べて約1/10程度の厚さであり、正・負極間の距離が大幅に短くなり、正・負電極間のイオンの拡散速度は速くなる。
今、電池がある一定の電流で放電している場合で、放電電圧が一定であれば、電池反応で生じる正・負極間の電解液イオンの濃度差は電解液イオンの拡散とバランスして一定に保たれていることを意味する。従って、電解液イオンの拡散速度がより速ければ、より速い電池反応(より大きな電流での放電)とバランスすることになる。
更に本発明による蓄電素子はセパレーターが介在しないので、その体積は電極面積と電極厚さの積に等しく、一定体積の蓄電素子では電極厚さに反比例して電極面積が増える。従って本発明による電池では、電極の厚さを薄くすれば効率よく電極面積が増えて出力密度が高くなる。
従来の電池では電極の厚さを大幅に薄くして電極面積を増やせば、セパレーターと集電体の量が電極面積に比例して増えるため、その分直接電池反応にあずかる活物質の量は減少し、容量密度(Wh/L)は大きく低下するが、本発明による電池ではセパレーターが介在しないので、電極面積に比例して増えるのは集電体のみであり、容量密度(Wh/L)の低下が少なくて済む。
電池の出力密度(W/L)を高めるためには、電極間距離を短くすることおよび電極面積を増やすことが有効な手段であるが、以上のように本発明による電極構造では、従来の電極構造に比べて、セパレーターを介在させないので、電極間距離が短くなるだけでなく、特に電極の厚さを薄くする場合には、確保できる電極面積が格段に大きくなるので、出力密度(W/L)の高い電池を作るうえで効果的である。
既存の電池の中では、心臓ペースメーカー用の電池として実用化されているリチウムヨウ素電池(Li/I電池)が唯一、セパレーターが不要の電池である。Li/I電池は負極活物質には金属リチウム(Li)を、正極活物質にはヨウ素(I)をそれぞれ使用する固体電解質電池であるが、負極のLiと正極のIが接触すれば、その界面にはヨウ化リチウム(LiI)が生成され、正極と負極はLiIによってイオン伝導では導通し、電子的導通は阻止されるので、電池として機能する。
このようにLi/I電池もセパレーターが不要である点では本発明による電池と同じであるが、本発明による電池はLi/I電池とは次の点で根本的に異なる。
先ずLi/I電池は固体電解質電池で、一次電池であり、電池が組み立てられた時点では未充電の活物質は存在しない。一方、本発明による蓄電装置は二次電池又はキャパシタであり、装置が組みあがった時点では全ての活物質は未充電の状態にある。従って、セパレーターに代わって正極と負極の電子的導通を阻止するものは、Li/I電池では正極活物質と負極活物質との反応生成物あり、本発明による蓄電装置では未充電の非電子伝導性活物質層である。
非電子伝導性(絶縁性)の物質は多くの場合、いったん充電方向に酸化又は還元されると、電子のやり取りが可能な異なる価数の原子(例えばT+4とTi+3、Fe+3とFe+2)が結晶内に共存することとなり、電子伝導性に変化するものが多い。しかし、放電方向に還元又は酸化されても、全ての原子の価数が同じになるまで電気化学的に還元又は酸化されることは難しく、依然、異なる価数の原子が結晶内に共存することとなり、電子伝導性が維持されて元の非電子伝導性物質までは戻らないケースが多い。
本発明では、むしろ一旦充電されて電子伝導性に変化した活物質は放電しても電子伝導性のままであること、即ち元の非電子伝導性物質まで戻らないことが有利に生かされる。つまり、本発明では初回の充電によって電子伝導性に変わる活物質は、その後は常に充放電に寄与する役割を担うので電子伝導性であることがプラスに働き、未充電の、非電子伝導性のままの活物質は常に正極と負極の電子的導通を阻止する役割(セパレーターの役割)を担うので非電子伝導性であることがプラスに働く。
更に、従来の有機電解液電池に使用するセパレーターは極薄の特殊な多孔質膜で高価であり、本発明による電池ではこれを使用しないため、コスト低減も図れる。特に電極対向面積を大きくした場合でも、本発明による電池では電極対向面積に比例してセパレーター価格が材料費を大きく引き上げることがないので、安価な高出力の有機電解液二次電池が提供できる。
以上のように、本発明によれば高い出力密度の有機電解液二次電池が安価に供給できるようになるため、特に高い出力密度(W/L)の電池が求められるHV搭載用には、安全で安価な二次電池が提供できるようになるのでその工業的価値は大である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づきさらに詳細に説明する。
図1〜3は、高い出力密度を有する二次電池を得るために、電極厚さを限界近くまで薄くして本発明を実施した場合の有機電解液二次電池とその蓄電素子の断面図であり、図1は蓄電素子における、特に正極集電体4を取りまとめて正極タブ7に接続した部分と電極の配列状態を拡大して示し、図2は蓄電素子における、負極集電体2を取りまとめて負極タブ6に接続した部分と電極の配列状態を拡大して示している。
図1および2に示すように、13組の対向する正極活物質層2と負極活物質層1を重ね合わせて積層体として蓄電素子10を構成し、図3に示すように、蓄電素子10は有機電解液を含浸せしめて、アルミニウムとポリプロピレンのラミネートシート11と絞り加工したラミネートシート12の間に挟んで周囲を熱融着して密封している。
図1に示すように、蓄電素子10では正極は正極活物質層2が正極集電体4に密着して形成されており、負極は負極活物質層1が負極集電体3に密着して形成されており、対向する正極活物質層2と負極活物質層1は密着している。
図1に示すように、正極の集電体4はいずれも正極タブ7にまとめられて溶接され、正極タブ7にはプラスチックテープ9が巻かれ、当該テープがラミネートシートと一体化して熱融着するので蓄電素子10の密封を妨げることなく、正極タブ7は外部に取り出されて正極の外部端子14となる。同じように図2に示すように、負極集電体3もまとめられて負極タブ6に溶接され、負極タブ6は外部に取り出されて負極の外部端子13となる。
本発明による電池では、正極活物質と負極活物質の少なくとも一方は、充電方向に電気化学的に酸化または還元されるまでは非電子伝導性である物質から選択され、当該活物質には充電方向に電気化学的に酸化または還元される前に既に電子伝導性であるような物質はいっさい混ぜずに活物質層を形成するので、当該活物質層は未充電の状態では非電子伝導性である。
従って、図1および2に示す蓄電素子10では正極活物質層2と負極活物質層1の少なくともいずれかは非電子伝導性であり、図に示すように正極活物質層2と負極活物質層1が対向して密着していても、正極と負極は電子伝導による導通はない。一方、図3に示す電池においては、蓄電素子10は正極と負極の電子的導通はないが、有機電解液を含浸しているので、活物質層中の正極活物質と負極活物質はイオン伝導では導通している。従って、正極端子14と負極端子13に充電電圧を付加すれば正極活物質層と負極活物質層中の活物質は充電されることになる。
非電子伝導性の活物質でも集電体に密着する粒子は集電体との電子の授受が可能であるため充電反応が進行し、非電子伝導性の活物質層では集電体に密着する活物質粒子から順次充電されて電子伝導性の充電状態の活物質に変わる。非電子伝導性活物質層中の集電体に直接密着していない活物質も充電状態となった活物質を介して電子の授受が可能となるため、順次充電されることになる。
非電子伝導性活物質層を構成する活物質の充電可能容量を対極活物質の充電可能容量より大きく設計しておけば、充電終了時には非電子伝導性活物質層中には未充電の活物質が残ることになり、非電子伝導性活物質層は集電体側では充電状態の活物質で占められ、集電体からは最も離れた対極の活物質層との境界には未充電のままの活物質が残る。斯かる未充電の活物質が残る部分では活物質層は部分的に非電子伝導性であり、セパレーターの役割を果たし続けるので、本発明による電池ではあえてセパレーターを使用する必要がない。
従来型の電池においては、例え非電子伝導性活物質を使用する場合でも、カーボン等の電導補助剤を混ぜることによって、正極も負極もいずれも良好な電子伝導性の活物質層を形成して電極とするため、正極と負極の電子的導通を断つためには正極と負極の間にはセパレーターを介在させる必要がある。
二次電池のこれまでの用途では高い容量密度の電池が求められてきた。高い容量密度の電池であれば、従来型の電池構造でも電極厚さはセパレーターの厚さに比べて十分に厚く設計されるため、蓄電素子に占めるセパレーターの比率はさほど大きくはないので、セパレーターは高い容量密度を得るための大きな障害にはなってはいない。
しかし、高い出力密度の二次電池を得る場合には、電極厚さを薄くして電極面積を大きくする必要があり、従来型の電池構造では電極の厚さがセパレーターの厚さに接近し、蓄電素子に占めるセパレーターの比率は極めて大きくなり、逆に蓄電素子に占める電極の比率は大きく低減するので、電極面積が効率よくは増えない。従って、従来型の電池構造ではセパレーターが高い出力密度を得るための障害になる。
一方、本発明による蓄電素子はセパレーターが介在しないので、蓄電素子の体積はそのまま電極の体積であり、電極面積と電極厚さの積に等しい。従って、本発明による蓄電素子は電極厚さを薄くすれば、一定体積の蓄電素子では電極厚さに反比例して電極面積が効率よく増えるので、高い出力密度を有する二次電池を得るためには極めて効果的である。
図4には電極厚さを薄くした場合の従来型の電極構造による蓄電素子を断面図で示した。図4には集電体を取りまとめて電極タブに接続した部分と電極の配列状態を正極側と負極側を左半分と右半分にそれぞれ拡大して示している。
図4に示す蓄電素子10は、図1および2に示した蓄電素子と同じ厚さの電極を使用し、積層体の厚みも同じとすることを前提としている。具体的には正極と負極はそれぞれ厚さ10ミクロンの集電体に片面15ミクロンの活物質層を両面又は片面に形成した電極を使用し、セパレーターには厚さ25ミクロンを使用する場合について示している。セパレーターの機械的強度や機能を考慮すると25ミクロンはほぼ薄さの限界である。
従来型の電極構造では、図4に示すように厚さ25ミクロンのセパレーターを介して対向する一組の正極と負極の厚み(t)は65ミクロンであるが、本発明による電極構造では図1に示すように対向する一組の正極と負極の厚み(t)は40ミクロンであり、従来型の厚み(t)の1/1.6である。
従って、同じ積層厚さ(530ミクロン)の蓄電素子では、本発明による電極構造では13組の正極と負極の活物質層が対向するのに対して、従来型の電極構造では8組が対向する積層体となる。
結局、本発明による電極構造では従来型に比べて、上記電極厚さの場合では電極対向面積は約1.6倍となり、活物質充填量も約1.6倍となり、更に活物質層の厚さを10ミクロン(ほぼ限界)まで薄くする場合には、それぞれ約1.8倍となる。
また図1に示す本発明による電極構造では最大の電極間距離(d)は30ミクロンであるが、図4に示す従来型の電極構造では最大の電極間距離(d)は55ミクロンであり、本発明による電極構造では最大の電極間距離が従来型に比べて約1/1.8となり、更に活物質層の厚さを10ミクロン(ほぼ限界)まで薄くする場合には、約1/2.25となる。
以上のように電極厚さを限界近くまで薄くして実施する場合には、本発明の電極構造によれば、従来型の電極構造よりも電極対向面積が増え、且つ電極間距離が短くなるので高い出力密度が得られる。
従来の電極構造では出力密度が低いため、HVへの搭載が難しいと考えられる貴負極電位型二次電池も、本発明を適用すれば高出力の有機電解液二次電池となるので、HVへの搭載基準を十分満足できる可能性がある。そこで、本発明を具体的に貴負極電位型二次電池に適用して実施する場合について更に詳しく説明する。
具体的には、負極活物質としてスピネル系リチウムチタン酸化物を選択し、正極活物質としてはスピネル系リチウムマンガン酸化物(LiMn)を選択して実施する場合について説明する。
スピネル系リチウムチタン酸化物(チタン酸リチウム)は、一般式Li3+xTi6−x12で示され、0≦x≦1の範囲で存在するが、x≒1ではチタン酸リチウムは非電子伝導性(電子伝導率は10−13S/cm程度)であり、本発明を実施するにあたっては、スピネル系リチウムチタン酸化物LiTi12(x=1)は適切な非電子伝導性の負極活物質である。
LiMnは有機電解液中で約4V(vs Li/Li)の電位で電気化学的な酸化還元反応が可逆的に可能であり、LiTi12は有機電解液中で約1.5V(vs Li/Li)電位で電気化学的な還元および酸化反応が可逆的に可能である。従ってLiMnを正極活物質とし、LiTi12を負極活物質とする貴負極電位型二次電池の平均的な放電電圧は約2.5V程度である。
スピネル系リチウムチタン酸化物(LiTi12)を負極活物質とし、スピネル系リチウムマンガン酸化物(LiMn)を正極活物質とする電池に本発明を適用する場合は、負極活物質とするLiTi12にはカーボンなどの導電補助剤はいっさい混ぜずに結着剤で固めて負極集電体とする薄い金属箔上に非電子伝導性の負極活物質層を形成して負極とし、正極活物質とするLiMnにはカーボンなどの導電補助剤を混ぜて結着剤で固めて正極集電体とする薄い金属箔上に電子伝導性の正極活物質層を形成して正極とする。これ等の正極と負極は図1、2に示すように、正極活物質層2と負極活物質層1を対向させて密着して蓄電素子10を構成し、有機電解液を含浸せしめて図3に示すように電池容器内に密封する。
以上のように実施される本発明による貴負極電位型二次電池では、正極活物質層と負極活物質層は密着していても、負極活物質層は非電子伝導性であるため、正極と負極は電子伝導では導通しておらず、正極活物質層と負極活物質層は十分に有機電解液を含浸しているので、正極活物質と負極活物質はイオン伝導では導通している。従って正極と負極に約3Vの充電電圧を付加すれば、正極活物質層と負極活物質層中のそれぞれの活物質は充電されることになる。
負極活物質層中のLiTi12の粒子は集電体に密着する粒子から順次充電されて暗青色の電子伝導性のあるLiTi12へと変わる。LiTi12の結晶中ではチタンは全て4価(Ti4+)であるが、充電によって集電体を介して電子が供給され、電解液からはLiが供給されてLiTi12へと変われば、結晶中にはTi4+Ti3+が2:3の比率で混在することとなり、結晶中のTi4+とTi3+は自由に電子のやり取りが行えるので充電後のLiTi12は電子伝導性である。従って負極活物質層中の集電体に直接密着していないLiTi12の粒子も電子伝導性に変わったLiTi12を介して集電体とは電子伝導で導通するため、順次充電されることになる。
また正極活物質層中ではLiMnが充電されて、λ−MnOに変わる。LiMnの結晶中にはMn4+とMn3+が1:1の比率で混在し、結晶中のMn4+とMn3+は自由に電子のやり取りが行えるので、LiMn自体が電子伝導性であり、加えて正極活物質層中にはカーボン等の電導補助剤を混ぜておけば、正極活物質中のLiMn粒子はいずれも集電体と電子伝導で導通しており、いずれのLiMn粒子も充電反応に関与できるので、充電反応が進行中の負極活物質と電気化学的な対極として相応しいLiMnの粒子から順次充電されることになる。
負極活物質層中のLiTi12は実質充電可能容量で正極活物質層中のLiMnを上回るように設計しておけば、充電反応に関与できるLiMnが充電され尽くせば充電は終了する。充電終了時には負極活物質層中の未充電のLiTi12は集電体からは最も離れた対極活物質層との境界に未充電のまま残ることになる。
例えば実質充電可能容量で、負極活物質層中のLiTi12が正極活物質層中のLiMnの1.3倍程度で設計されていれば、充電終了時にはLiTi12の約3割が未充電の状態で対極活物質層との境界付近に残ることになり、充電開始前では勿論のこと、充電中でも充電終了後でも、正極と負極の活物質層の間には未充電状態の非電子伝導性活物質層が常に介在してセパレーターの役割を果たすので、正極と負極の活物質層の間にはセパレーターを介在させる必要がない。
LiTi12を負極活物質とし、LiMnを正極活物質とするような貴負極電位型二次電池は安全性に優れており、次世代型のHV搭載用電池の有力候補であるが、電圧が低いために、セパレーターを介在させる従来型の電池構造では最大出力密度(W/L)がHVへの搭載基準には到底達し得ない。しかし、本発明による電極構造ではセパレーターを介在させないので、電極間距離が短くなるだけでなく、特に電極の厚さを薄くする場合には、確保できる電極面積が格段に大きくなるので、出力密度(W/L)の高い電池とする上で極めて効果的であり、本発明を適用すれば電圧が低い貴負極電位型二次電池も十分HVへの搭載基準を満たせる。
二次電池の充電量(Ah)は正極と負極の充電可能容量の少ないほうに規制されるので、正極と負極の充電可能容量を等しくするのが理想的ではあるが、各電池の充電特性を揃えるためには正極か負極か何れかの充電可能容量を大きくして、負極容量規制か正極容量規制のいずれかにするのが一般的である。因みに既存のリチウムイオン電池であれば負極容量が正極容量の1.4倍程度、ニッケル水素電池では同じく1.2倍程度で、ともに正極容量規制で設計されている。
従って本発明において、非電子伝導性の活物質層の充電可能容量を対極活物質層の充電可能容量よりも1.3倍程度大きく設計しても、正極容量と負極容量のバランスにおいては従来の二次電池の設計と大きく変わるものではない。
本発明は出力密度(W/L)の高い電池を作る上で極めて効果的であるため、HV搭載用の貴負極電位型二次電池への適用が最も期待できる。本発明を貴負極電位型二次電池に適用する場合には、非電子伝導性の負極活物質としては上述のスピネル系リチウムチタン酸化物(LiTi12)の他にもチタン酸化物(TiO)やスピネル系リチウム鉄酸化物(LiFe)などを選択することが出来る。これ等はいずれも非電子伝導性の物質であるが負極活物質として充電されると電子伝導性に変化するので、本発明を実施する上では好ましい負極の活物質候補である。
また、貴負極電位型二次電池の正極活物質にはスピネル系リチウムマンガン酸化物(LiMn)の他にもLiFePO、LiCoO、LiNiO等を選択することが出来るが、基本的にはリチウムイオン電池の正極活物質として使用される物質はいずれも使用できる。
また、本発明による電極構造はキャパシタにも適用することが出来る。この場合、負極活物質だけは電気化学的な酸化還元反応に基づく活物質であり、充電方向に電気化学的に還元されるまでは非電子伝導性である物質(例えばLiTi12やTiOなど)から選択し、当該負極活物質で非電子伝導性の負極活物質層を構成し、当該負極活物質層は黒鉛や活性炭を正極活物質として構成する正極活物質層とセパレーターを介在させずに対向させる。
更に本発明は非電子伝導性の正極活物質を選択して非電子伝導性の正極活物質層を構成すれば、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能なカーボンを負極とするリチウムイオン電池に適用することも出来る。
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
本実施例では正極活物質としてスピネル系リチウムマンガン酸化物(LiMn)を使用し、負極活物質としてはスピネル系リチウムチタン酸化物(LiTi12)を使用して、HV搭載用電池に合致する出力性能を有する貴負極電位型二次電池を作成した。
LiMnは二酸化マンガンと炭酸リチウムの混合物を空気中850℃で焼成して、従来の合成法で用意した。ただしここで合成したLiMnはX線回折ではスピネル型LiMnの回折パターンとよく一致するものであるが、マンガンの価数分析から判断して、正確にはマンガンの一部がリチウムで置換されたLi1.05Mn1.95と考えられる。
用意したLiMnの90重量部をカーボンブラック3重量部とグラファイト4重量部および結合剤としてポリフッ化ビニリデン3重量部とともに溶剤であるN−メチルー2−ピロリドンと湿式混合してペースト状スラリーとする。このスラリーを集電体とする厚さ0.011mm、幅250mmのアルミニウム箔の片面に、両端に20mmの未塗布部を残して塗付幅210mmで均一に塗布乾燥し、もう一方の面にも同じ仕様で塗布乾燥してアルミニウム箔の両面に活物質層を形成し、更にローラープレス機で加圧成形して活物質層と集電体を含めた厚さが0.031mmのシート状の電極とした。
シート状の電極は、縦幅を130mmに、横幅は片方の端の20mmの未塗布部を含めて220mmに切り揃えて、活物質塗付部の寸法が横200mm、縦130mmの長方形の正極として用意した。用意した正極の片方の端の20mmの未塗布部には活物質塗付部に続けて10mm幅の絶縁テープを張っておく。
次に負極活物質とするスピネル系リチウムチタン酸化物(LiTi12)は水酸化リチウム(LiOH)と二酸化チタン(TiO)を4:5のモル比でよく混合し、ペレット状に加圧成形し、ニッケルフォイルを敷き詰めたアルミナの容器に入れ、ヘリウム雰囲気中800℃で焼成して合成した。合成物のXRDパターンには未反応のTiOはなく、LiTi12単層であった。また合成物のSEM写真(倍率6600)では0.2〜1ミクロン程度の1次粒子が集まって3〜10ミクロン程度の2次粒子を形成していることが確認できた。
合成したLiTi12はその97重量部を結合剤とするポリフッ化ビニリデン3重量部とともに溶剤であるN−メチルー2−ピロリドンと湿式混合してペースト状スラリーとした。このスラリーを集電体とする厚さ0.011mmのアルミニウム箔の片面に、両端に20mmの未塗布部を残して塗付幅210mmで均一に塗布して乾燥する。
その後もう一方の面にも同じ仕様で塗布して乾燥するが、一部は片面塗布のままローラープレス機に通して厚さを0.024mmに調整し、集電体の片面にだけ活物質層が形成されたシート状電極とし、両面に塗布して乾燥したものについては、ローラープレス機で厚さを0.037mmに調整し、集電体の両面に活物質層が形成されたシート状電極とした。
活物質層が片面と両面に形成されたシート状電極はいずれも縦幅は140mmに、横幅は片方の端の20mmの未塗布部を含めて230mmに切り揃えて、活物質塗付部の寸法が横210mm、縦140mmの長方形のシート状負極として用意した。
用意した正極と負極は、先ず集電体の両面に活物質層を形成した正極の活物質層の片面に、集電体の未塗布部が正極と左右反対になるように、集電体の両面に活物質層を形成した負極の活物質層を密着させて重ねる。このとき、正極集電体の未塗布部に貼り付けた絶縁テープの中間位置に負極の端がくるように負極を重ねるので、負極集電体のほうに位置する正極端は負極の塗布部を5mm程度残す位置で重なる。また電極縦幅方向では負極の両端が5mmずつ正極端よりはみ出して重なる。
同じ要領で正極と負極を交互に重ねていき、43枚目の負極には44枚目の正極を重ね、1枚目と44枚目の正極の外側に位置する活物質層には片面にだけ活物質層を形成した負極を、活物質層同士を密着させて重ね、各電極の集電体の未塗布部は電極タブに溶接し、電極枚数は異なるが電極構造自体は図1および2に示す積層体と類似する電極素子を組み立てる。
組み立てた電極素子は十分乾燥した後、縦幅145mm、横幅240mm、深さ3.0mmで皿状に絞り加工したアルミニウムとポリプロピレンのラミネートシートに納めて同種類のラミネートシートを重ね、周囲は一箇所を残して熱融着する。
各電極の集電体を溶接した電極タブは2枚ラミネートシートの間から外部に取り出されるが、電極タブには熱融着部に位置する部分には特殊テープが貼られていて、特殊テープが2枚のラミネートシートと一体化して熱融着される。
電極素子にはラミネートシートの未融着部より、1モル/LのLiPFを溶解したエチレンカーボネイト(EC)とジエチルカーボネイト(DEC)の混合溶液を有機電解液として注入し、真空にして含浸せしめ、最後にラミネートシートの未融着部を熱融着すれば、図3に示す電池構造で、電池体積115ccの貴負極電位型二次電池が完成する。
比較例
本比較例では実施例で作成した貴負極電位型二次電池を従来型の電極構造で作成して、本発明による電池との性能比較を行った。本比較例で作成する貴負極電位型二次電池は電極厚さも蓄電素子の体積も実施例と同じで作成した。
従来型の電極構造ではセパレーターを使用するので、同じ体積の蓄電素を同じ寸法の電極で構成する場合には電極枚数は前記実施例より少ない。本比較例では25ミクロンのセパレーターを使用するので、正極と負極は各22.5枚の電極で構成すれば実施例とほぼ同じ体積となる。ただし0.5枚目の電極は集電体の片面だけに活物質層が形成された電極を意味する。
先ず、正極は実施例と同じ仕様で作成するが、集電体の両面に活物質層が形成された正極のほか集電体の片面だけに活物質層が形成された正極も用意する。本比較例ではセパレーターを使用するので、正極集電体の未塗布部に絶縁テープを張っておく必要はない。活物質塗付部の寸法は実施例と同じく横200mm、縦130mmのシート状正極を用意する。
負極活物質は実施例で合成したLiTi12を使用するが、本比較例ではセパレーターを使用するので負極活物質層は非電子伝導性である必要はない。むしろ出力性能の高い電池とするためには従来通り、負極活物質にも伝導補助剤を混ぜて電子伝導性の負極活物質層を形成する方が有利である。
従って負極の作成においては、LiTi12の90重量部にカーボンブラック3重量部とグラファイト4重量部を加えてよく混合し、更に結合剤のポリフッ化ビニリデン3重量部とともに溶剤であるN−メチルー2−ピロリドンと湿式混合してペースト状スラリーとする。
このスラリーを集電体とする厚さ0.011mmのアルミニウム箔の片面に、両端に20mmの未塗布部を残して塗付幅210mmで均一に塗布して乾燥し、その後一部は片面電極のために残し、もう一方の面にも同じ仕様で塗布して乾燥する。
集電体の片面にだけ活物質層が形成されたシート状電極はローラープレス機で厚さを0.024mmに調整し、活物質層が集電体の両面に形成されたシート状電極はローラープレス機で厚さを0.037mmに調整する。
活物質層が片面および両面に形成されたシート状電極はいずれも縦幅は130mmに、横幅は片方の端の20mmの未塗布部を含めて220mmに切り揃えて、活物質塗付部の寸法が横200mm、縦130mmの長方形のシート状負極を用意する。
以上で用意した正極と負極は、先ず集電体の片面に活物質層を形成した正極の活物質層の面に、厚さ25ミクロンの多孔質ポリプロピレン製セパレーターを重ね更にその上に集電体の未塗布部が正極と左右反対になるように、集電体の両面に活物質層を形成した負極を重ねる。更に負極の活物質層面にも、厚さ25ミクロンのセパレーターを重ね、その上に集電体の両面に活物質層を形成した正極を、集電体の未塗布部を他の正極と同じ側にそろえて重ねる。
同じように25.5枚の正極と25.5枚の負極をセパレーター挟んで交互に重ね、正極と負極の活物質層同士をセパレーター挟んで対向させて重ねる。各電極の集電体の未塗布部は電極タブに溶接し、電極枚数は異なるが電極構造自体は図4に示す積層体と類似する電極素子を組み立てる。
組み立てた電極素子は十分乾燥した後、縦幅145mm、横幅240mm、深さ3.0mmで皿状に絞り加工したアルミニウムとポリプロピレンのラミネートシートに納めて同種類のラミネートシートを重ね、周囲は一箇所を残して熱融着する。
各電極の集電体を溶接した電極タブは実施例1と同じ要領で2枚ラミネートシートの間から外部に取り出されて外部端子となる。
電極素子にはラミネートシートの未融着部より、電解液として1モル/LのLiPFを溶解したエチレンカーボネイト(EC)とジエチルカーボネイト(DEC)の混合溶液を注入して真空にして含浸せしめ、最後にラミネートシートの未熱融着部を熱融着すれば、図3に示す電池と同じ構造で貴負極電位型二次電池が完成する。電池体積は実施例の電池と同じく115ccである。
性能評価試験
実施例および比較例で作成した電池はいずれも電池内部の安定化を目的に24時間のエージング期間を経過させた後、1回目の充放電を行った。いずれの電池も充電上限電圧は3.0Vに設定し、8時間の充電を行い、放電は4Aの定電流放電にて終止電圧2.0Vまで行った。その結果は図6に示したが、放電時間は実施例の電池は94分、比較例の電池は53分であり、放電容量はそれぞれ6.3Ahと3.6Ahである。
図6に示すように、平均放電電圧は約2.45Vであり、エネルギー密度は実施例の電池が134Wh/Lであるのに対して、比較例電池は77Wh/Lである。
続いて、いずれの電池も充電上限電圧は再び3.0Vに設定して、8時間の充電を行い、70Aの定電流放電にて終止電圧1.8Vまで行った結果、放電時間は実施例の電池は307秒であり、比較例の電池は110秒であった。
70Aの定電流放電では比較例の電池の平均放電電圧は約2.2Vであり、平均放電出力は154Wである。前述したように、素電池ベースで120秒間持続可能な最大出力を素電池体積で除した値をもって最大出力密度(W/L)と定義すれば、比較例の電池の最大出力密度(W/L)は154÷0.115以下、つまり1340W/L以下であり、図5に示したようにHV搭載基準のレベルには遥かにおよばない。
一方、実施例の電池は満充電の状態から終止電圧1.8Vまでの放電試験を、更に放電電流値を上げて行った結果、160Aの定電流放電で放電時間が120秒となった。実施例の電池の160Aの定電流放電での平均放電電圧は約2.2Vであり、平均放電出力は352Wである。従って実施例の電池の最大出力密度(W/L)は352÷0.115、つまり3060W/Lであり、図5に示したようにHV搭載基準を十分に満足する。
以上のように、本発明を貴負極電位型二次電池に適用すれば、エネルギー密度も134Wh/Lと、本来のリチウムイオン電池のエネルギー密度(250Wh/L)の50%以上が確保され、最大出力密度(W/L)もHV搭載基準(2500W/L)を十分に満足する。
本発明はハイブリッド車搭載用電池の分野で利用することができる。
本発明の実施に係る蓄電素子の正極タブ接続部と電極の配列状態を示す断面図である。 本発明の実施に係る蓄電素子の負極タブ接続部と電極の配列状態を示す断面図である。 本発明の実施に係る電池の断面図である。 従来型電池における蓄電素子の電極タブ接続部と電極の配列状態を示す断面図である。 本発明の電池と従来型電池の最大出力時の放電カーブである。 本発明の電池と従来型電池の4A定電流放電時の放電カーブである。
1は負極活物質層、2は正極活物質層、3は負極集電体、4は正極集電体、5はセパレーター、6は負極タブ、7は正極タブ、8は絶縁テープ、9はプラスチックテープ、10は蓄電素子、11はラミネートシート、12は絞り加工したラミネートシート、13は負極外部端子、14は正極外部端子である。

Claims (7)

  1. 正極と負極はそれぞれの集電体に活物質層が密着して形成された電極であり、正極と負極の活物質層が対向してなる蓄電装置において、対向する前記活物質層の少なくとも一方は未充電状態では非電子伝導性であることを特徴とする二次電池又はキャパシタ。
  2. 正極と負極の活物質層が対向してなる蓄電装置において、対向する前記活物質層は対抗面で密着していることを特徴とする請求項1記載の二次電池又はキャパシタ。
  3. 対向する正極と負極の活物質層は対向面に位置する未充電状態の非電子伝導性の活物質層によって電子伝導による導通が断たれていることを特徴とする請求項2記載の二次電池又はキャパシタ。
  4. 未充電状態では非電子伝導性である活物質層を構成する活物質は、電気化学的な酸化還元反応に基づく活物質であり、充電方向に電気化学的に酸化または還元されるまでは非電子伝導性であるが、充電方向に電気化学的に酸化または還元されれば電子伝導性に変化する物質から選択されることを特徴とする請求項3記載の二次電池又はキャパシタ。
  5. 非電子伝導性の活物質層の実質充電可能な容量が対向する活物質層の実質充電可能な容量よりも大きいことを特徴とする請求項3記載の有機電解液二次電池。
  6. 非電子伝導性の負極活物質層を構成する活物質は、電気化学的に還元される前は非電子伝導性であり、電気化学的に還元されると電子伝導性に変化する物質から選択されていることを特長とする請求項4記載の二次電池又はキャパシタ。
  7. 負極活物質がスピネル系リチウムチタン酸化物であることを特長とする請求項5記載の有機電解液二次電池。
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