図1乃至図17は、本発明の第1形態例を示すもので、図1及び図2に示すように、本形態例のバーハンドル車両用のブレーキ装置1は、前輪ブレーキ2及び後輪ブレーキ3と、前輪ブレーキ用操作子4(本発明の第1ブレーキ操作子)と、後輪ブレーキ用操作子5(本発明の第2ブレーキ操作子)とを備え、前輪ブレーキ2と前輪ブレーキ用操作子4と後輪ブレーキ3と後輪ブレーキ用操作子5との間には、マスタシリンダユニット20が介装されている。
尚、以下のマスタシリンダユニットの説明で、左側及び右側とは、図1に示すような運転者側から見た正面視に対しての左側、右側であり、後輪ブレーキ操作子5側を左側、前輪ブレーキ操作子4側を右側として説明する。また、時計回り及び反時計回りの記載についても、同様に正面視に対しての方向として説明する。
前輪ブレーキ2は、前輪と一体に回転するディスクロータ2aに、ピストンを備えたキャリパボディ2bを組み合わせた液圧式のディスクブレーキが用いられている。後輪ブレーキ3は、バックプレート3aに一対のブレーキシュー3b,3bを拡開可能に対向配置し、両ブレーキシュー3b,3bをアンカーピン3cを支点に拡開させる機械式のドラムブレーキが用いられている。
前輪ブレーキ用操作子4は、ハンドルバー6に取り付けられた操作レバー4aを操作することにより、第1ブレーキワイヤ7が牽引され、マスタシリンダユニット20の液圧マスタシリンダ21を作動させて、液圧配管8を介して、前輪ブレーキ2に液圧を供給して、該前輪ブレーキ2を単独で作動させる。
後輪ブレーキ用操作子5は、ハンドルバー6に取り付けられた操作レバー5aを操作することにより、第2ブレーキワイヤ9(本発明の第2ブレーキ連繋手段)が牽引され、マスタシリンダユニット20を介して、後輪ブレーキ3を作動させる後輪用ブレーキワイヤ10(本発明の機械式ブレーキ用連繋手段)を牽引して後輪ブレーキ3を作動させると共に、マスタシリンダユニット20の液圧マスタシリンダ21を作動させて、液圧配管8を介して、前輪ブレーキ2に液圧を供給して、前輪ブレーキ2を連動して作動させる。
マスタシリンダユニット20は、前輪ブレーキ2に液圧を供給する前記液圧マスタシリンダ21と、レバー機構40とを組み合わせたもので、レバー機構40は、第1回動レバー41と、第2回動レバー42と、ノッカー43と、イコライザレバー44とを備えている。また、このマスタシリンダユニット20は、図11に示されるように、バーハンドル車両50のカウル51内に配置されている。
液圧マスタシリンダ21は、シリンダボディ21aに有底のシリンダ孔21bが下端を開口して設けられ、シリンダ孔21bにはピストン22が移動可能に内挿され、シリンダボディ21aの上壁部とピストン22との間には、液圧室23が画成されている。液圧室23には戻しスプリング24が縮設され、該戻しスプリング24の弾発力によりピストン22を常時シリンダ孔21bの開口側に付勢している。また、シリンダ孔21bは、下端側に大径部21cが形成され、該大径部21cに嵌着されたサークリップ25と、ピストン22の軸方向中間部に形成されたフランジ部22aとの当接により、ピストン22の後退限が規制され、ピストン22のフランジ部22aよりも下端側をシリンダボディ21aの下端開口よりも下方に突出させている。
シリンダボディ21aの上部壁には、出力ポート21dが液圧室23に連通して設けられ、該出力ポート21dに液圧配管8を連結して液圧室23と前輪ブレーキ2とを連通させている。シリンダボディ21aの周壁の上面には、隆起部21eがシリンダ軸方向に設けられ、該隆起部21eの略中央部にボス孔21fがシリンダ孔21bに連通して設けられ、該ボス孔21fに液通管26を連結して、シリンダ孔21bとリザーバ27とを連通させている。さらに、隆起部21eのシリンダ孔開口側には、第1ブレーキワイヤ7をガイドする第1ワイヤガイド部21gが右側(前輪ブレーキ用操作子4側)に突出して設けられ、隆起部21eの中央には、第2ブレーキワイヤ9をガイドする第2ワイヤガイド部21hが背面側(車体前方側)に突出して設けられている。また、前記ボス孔21fを挟んで上部壁側とシリンダ孔開口側とには、車体取付ボルトを装着するボルト孔21i,21iが、シリンダ軸と直交する方向に形成されている。
さらに、シリンダボディ21aの上部壁側正面には、ディレイスプリング28の係合片21jが突設されている。また、シリンダボディ21aの、シリンダ孔開口部近傍の背面側と正面側とには、一対のレバーホルダ21k,21mが突設され、該レバーホルダ21k,21mには、固定ピン29を装着する通孔21nと雌ねじ孔21pとが同軸上に形成されている。
さらに、シリンダボディ21aのシリンダ孔開口側には、ストッパボルト装着ボス部21qが、レバーホルダ21k,21mよりも左側(後輪用ブレーキ操作子5側)に、シリンダ軸CL1に対して鋭角な方向(図2に示すL2方向)に突出して形成され、該ストッパボルト装着ボス部21qには、ストッパボルト30が取り付けられている。また、ストッパボルト装着ボス部21qの下部は、正面視下向きの断面三角形状に形成され、右側斜面に、第2回動レバー42と当接して、第2回動レバー42の初期位置を設定する第2回動レバー当接面21rが設けられている。さらに、シリンダボディ21aのシリンダ孔開口側の背面下部には、後輪用ブレーキワイヤガイド部21sが突設されている。
ストッパボルト30は、雄ねじ部30aを備えた軸部30bと、大径の座面30cを備えた頭部30dとを備え、雄ねじ部30aを上方に、頭部30dを下方にそれぞれ向けた状態で、ストッパボルト装着ボス部21qに螺着され、ナット部材30eを用いて固定されている。
レバー機構40は、レバーホルダ21k,21m間の正面側に第1回動レバー41の第1回動基部41aを、背面側に第2回動レバー42の第2回動基部42aを、第1回動基部41aと第2回動基部42aとの間にノッカー43の第3回動基部43aをそれぞれ配置して、レバーホルダ21k,21m,第1回動基部41a,第2回動基部42a,第3回動基部43aに亘って、前記固定ピン29を挿通して、ナット部材29aを用いて固定することにより、レバーホルダ21k,21mに第1回動レバー41と第2回動レバー42とノッカー43とが回動可能に連結され、第2回動レバー42の右側端部に設けられた連結腕42bに、イコライザレバー44の右端部に設けた第2回動レバー連結部44aが、連結ピン31を介して回動可能に軸支される。
第1回動レバー41は、固定ピン29の挿通孔41bを備えた前記第1回動基部41aからアジャストボルト取付部41cが延設され、該アジャストボルト取付部41cの雌ねじ部41dに、ノッカー43に当接するアジャストボルト32が、ナット部材32aを用いて突出量を調整可能に取り付けられている。さらに、アジャストボルト取付部41cの正面側には、第1ブレーキワイヤ7の端部を連結する第1ブレーキワイヤ連結部41eが設けられている。
第2回動レバー42は、中央部に、固定ピン29の挿通孔42cを備えた前記第2回動基部42aが、上方に突出した正面視略三角形状に形成され、第2回動基部42aの背面側に、第2回動基部42aの左右方向に延出する腕部42dが設けられている。腕部42dの右端側には、前記連結腕42bが設けられ、連結腕42bには、連結ピン31の挿通孔42eが形成され、左端側には、前記ストッパボルト30を挟持する一方の挟持片42fが形成されている。
第2回動基部42aの左側端部正面には、略立方体状のジョイント部42gが第2回動基部42aの傾斜に沿って突設され、該ジョイント部42gの左上側面に、前記シリンダボディ21aの第2回動レバー当接面21rと当接するボディ当接面42hが形成され、右下側面に、ノッカー43に当接してノッカー43を押動させるノッカー押動面42iが形成されている。また、ジョイント部42gの左側には、前記一方の挟持片42fと平行に、他方の挟持片42jが一体に突設され、他方の挟持片42jの正面先端側に、ディレイスプリング28の係合突起42kが突設されている。
ディレイスプリング28は、両端部に設けられる取付部28a,28aと、中間部上方に設けられる巻き線部28bと、中間部下方に設けられる直線部28cとを備えた引張型のコイルスプリングで形成されている。
ノッカー43は、固定ピン29の挿通孔43bを備えた前記第3回動基部43aの右側に、ピストン押動部43cが形成されている。ピストン押動部43cは、上部にピストン22の下端部に常時当接するピストン当接部43dが設けられ、ピストン押動部43cの下面に、前記アジャストボルト32と当接するアジャストボルト当接面43eが形成されている。また、第3回動基部43aの下方には、前記ノッカー押動面42iに押動される受け面43fが形成されている。
イコライザレバー44は、シリンダボディ21aの背面側に配置され、一端部には、後輪用ブレーキワイヤ10を連結する後輪用ブレーキワイヤ連結部44bが、中央部には、第2ブレーキワイヤ9を連結する第2ブレーキワイヤ連結部44cが、他端部には、第2回動レバー42の連結腕42bと連結される前記第2回動レバー連結部44aとがそれぞれ形成されている。第2回動レバー連結部44aは、連結ピン31の挿通孔44dを備えた二股状に形成され、該第2回動レバー連結部44aの間に、連結腕42bを挿入し、挿通孔44d,42fに連結ピン31を挿通して止め輪31aで止めることにより、第2回動レバー連結部44aが連結腕42bに回動可能に連結される。
前述の第1回動レバー41と、第2回動レバー42と、ノッカー43とは、レバーホルダ21k,21m間に回動可能にそれぞれ連結されると共に、第2回動レバー42の連結腕42bに連結ピン31を介して、イコライザレバー44の第2回動レバー連結部44aが連結され、イコライザレバー44の後輪用ブレーキワイヤ連結部44bに、後輪用ブレーキワイヤガイド部21sを介して引き込まれた後輪用ブレーキワイヤ10が、第2ブレーキワイヤ連結部44cに、第2ワイヤガイド部21hを介して引き込まれた第2ブレーキワイヤ9がそれぞれ連結される。また、第1回動レバー41の第1ブレーキワイヤ連結部41eに、第1ワイヤガイド部21gを介して引き込まれた第1ブレーキワイヤ7が連結される。さらに、シリンダボディ21aの係合片21jと、第2回動レバー42の係合突起42kとに、ディレイスプリング28の取付部28a,28aがそれぞれ取り付けられる。
また、ストッパボルト30は、レバーホルダ21k,21mの近傍に配置されると共に、第2回動レバー42の挟持片42f,42jの間に軸部30bが配置されている。さらに、ストッパボルト30とディレイスプリング28とは平行で、且つ、正面視においては重なる隣接した位置に(図2)に配置され、ストッパボルト30のナット部材30eは、ディレイスプリング28の直線部28cと対応する位置に配置されている。
上述のように形成されたマスタシリンダユニット20は、非作動状態では、図1乃至図9に示されるように、液圧マスタシリンダ21のピストン22は、戻しスプリング24の弾発力により、シリンダ孔開口部方向へ付勢された状態となっており、ピストン22のフランジ部22aとサークリップ25との当接により、ピストン22は、後退限の位置に配置されている。
また、第1回動レバー41は、第1ブレーキワイヤ連結部41eに連結された第1ブレーキワイヤ7のテンションによって初期位置が保持され、第2回動レバー42は、ディレイスプリング28の弾発力により、ジョイント部42gのボディ当接面42hに第2回動レバー当接面21rが当接している。さらに、ノッカー43は、アジャストボルト当接面43eがアジャストボルト32の先端部と当接し、受け面43fがノッカー押動面42iに僅かなクリアランスを持って接すると共に、ピストン当接部43dがピストン22と当接している。また、イコライザレバー44は、第2回動レバー連結部44aが連結腕42bと連結された状態で、第2ブレーキワイヤ9のテンションと後輪用ブレーキワイヤ10のテンションとが釣り合った状態となっていて、水平状態に保持されている。
非作動状態から、前輪ブレーキ用操作子4が操作されると、図12に示されるように、第1ブレーキワイヤ7が牽引され、第1回動レバー41の第1ブレーキワイヤ連結部41eが上方に牽引され、第1回動レバー41が第1回動基部41aを中心に反時計回りに回動する。これに伴って、アジャストボルト32が、ノッカー43のアジャストボルト当接面43eを押動し、ノッカー43を、第3回動基部43aを中心に反時計回りに回動させ、ピストン当接部43dがピストン22を押動する。これにより、昇圧した作動液が、液圧配管8を介して、前輪ブレーキ2に液圧を供給し、前輪ブレーキ2を単独で作動させる。
また、後輪ブレーキ用操作子5が操作されると、まず、図13に示されるように、第2ブレーキワイヤ9が牽引され、イコライザレバー44の第2ブレーキワイヤ連結部44cを介してイコライザレバー全体が上方に牽引される。これに伴って、後輪用ブレーキワイヤ連結部44bに連結している後輪用ブレーキワイヤ10が牽引され、後輪ブレーキ3を作動し始めると共に、イコライザレバー44の第2回動レバー連結部44aに連結している第2回動レバー42の連結腕42bも上方に牽引され、第2回動レバー42が、ディレイスプリング28の弾発力に抗して、第2回動基部42aを中心に反時計回りに回動し、ノッカー押動面42iがノッカー43の受け面43fに当接して押動することにより、ピストン22が押動され、昇圧した作動液が、液圧配管8を介して、前輪ブレーキ2に液圧を供給し、前輪ブレーキ2を連動して作動させる。
後輪ブレーキ用操作子5が、さらに操作されると、図14に示されるように、イコライザレバー44がさらに上方に牽引されると共に、第2回動レバー42が第2回動基部42aを中心に反時計回りに回動し、一対の挟持片42f,42jが、ストッパボルト30の座面30cに当接して回動が規制されると共にノッカー43の回動が停止し、前輪ブレーキ2への液圧の供給が規制される。
後輪ブレーキ用操作子5が、さらに強く操作すると、図15及び図16に示されるように、一対の挟持片42f,42jが、ストッパボルト30の座面30cに当接して、第2回動レバー42の回動が規制された状態となっており、連結ピン31の位置が固定されていることから、イコライザレバー44が連結ピン31を中心に時計回りに回動し、後輪用ブレーキワイヤ10のみを牽引し、後輪ブレーキ3をさらに強く作動させる。
また、図17に示されるように、前輪ブレーキ用操作子4と後輪ブレーキ用操作子5とを同時に強く入力すると、第1回動レバー41は、第1ブレーキワイヤ7に牽引されることにより単独で回動して、ピストン22を押動し、前輪ブレーキ2を強く作動させると共に、第2ブレーキワイヤ9に牽引されるイコライザレバー44の移動により、第2回動レバー42が、上述のように、挟持片42f,42jがストッパボルト30の座面30cに当接して回動が規制された状態となった後、イコライザレバー44が連結ピン31を中心に回動して、後輪用ブレーキワイヤ10を牽引し、後輪ブレーキ3を強く作動させる。
本形態例は、アジャストボルト32の突出量を調整することにより、前輪用ブレーキ操作子4の操作開始からノッカー43を介してピストン22を押動するまでの無効ストロークの調整を簡単、且つ、確実に行うことができ、常に、良好な操作フィーリングを得ることができる。また、アジャストボルト32の調整は、工場で簡単、且つ、確実に行うことができる一方、マスタシリンダユニット20がバーハンドル車両50のカウル51内に配置されていることから、アジャストボルト32の調整をユーザーは行うことができず、連動状態がユーザーにより不用意に変更される虞がない。
図18は、本発明の第2形態例を示すもので、第1形態例と同様の構成要素を示すものには、同一の符号をそれぞれ付して、その詳細な説明は省略する。
本形態例の第1回動レバー41には、ノッカー43のピストン押動部43cに対応して延出する当接片41fが設けられると共に、ノッカー43のピストン押動部43cには、当接片41fに対応してアジャストボルト装着部43gが形成され、該アジャストボルト装着部43gの雌ねじ部43hに、当接片41fに向けてアジャストボルト32がナット部材32aを用いて突出量を調整可能に取り付けられている。
尚、本発明は、上述の各形態例に限るものではなく、マスタシリンダユニットの取付位置は任意であり、また、マスタシリンダユニットの取り付け方向も任意である。また、本発明の第2ブレーキ連繋手段や機械式ブレーキ用連繋手段は、上述の形態例のようにブレーキワイヤに限るものではない。さらに、後輪ブレーキを液圧式ブレーキ、前輪ブレーキを機械式ブレーキとしたものでも差し支えない。また、連動ブレーキ用のブレーキ装置でなくても適用することができる。