WO2014045467A1 - 固液分離装置 - Google Patents

Abstract

　固液分離装置は、処理槽９内に配列された積層状回転濾体1tを有し、積層状回転濾体1tの複数の凸子円板状濾片５の背面と凸子５ｔの端面とを当接させて濾過溝Ｓが形成され、各濾過溝Ｓ内において大径円板状濾片２と小径円板状濾片３とが交互に配置されるように直径の異なる各濾片５，２，３が順次回転軸４の外周に挿入積層され、一方の回転濾体1tの大径円板状濾片２の外周縁が他方の回転濾体1tの濾過溝Ｓ内の凸子５ｔ部と小径濾片３の外周縁に接近し、大径濾片２と小径濾片３は、該濾過溝Ｓ内を軸方向に揺動され、該回転軸４と同調回転されるように構成されている。

Description

固液分離装置

　本発明は例えば、下水処理場、し尿処理場、畜産農業、食料品製造業、化学工業などの汚泥を含む排水の処理施設において発生する、液体中に含まれている汚泥の固形物、特に懸濁固形物（ＳＳ）から分離された固分と液分を各別に取り出すための固液分離装置に関する。

　現在、下水処理場、し尿処理場、畜産農業、食料品製造業、化学工業などの排水の処理場において発生する汚泥を含む排水、即ち懸濁汚水は、環境破壊の問題から、そのままでは排水することが出来ないことは周知のことである。そのため、懸濁汚水に含まれる懸濁固形物（ＳＳ）を可能な限り除去した状態で処理することが課題となっている。

　そのために、特許文献１においては、厚みが０．１ｍｍ～２ｍｍ程度で直径の異なる各大径濾片および小径濾片ならびに隙間保持用の濾片を一組として、それら複数組を回転軸に挿嵌固定された積層状回転濾体を排出方向へ向かって等間隔に複数配列させて、該積層状回転濾体を同一方向に回転させて、相隣接する積層状回転濾体の一方の積層状回転体における大径円板状濾片の外周縁が他方の積層状回転濾体における小径円板状濾片の外周縁に接近した濾過装置が開示されている。この濾過装置においては、積層状回転濾体の大径円板状濾片は、前後に隣接する小径円板状濾片と向き合うように組み合わされており、各積層状回転濾体の回転により、大径円板状濾片が小径円板状濾片の細い隙間に食い込む形で回転することにより、濾過面の目詰りを防止している懸濁液が濾過される。

　また、特許文献２においては、前記積層状回転濾体の直径の異なる大径濾片および小径濾片の厚みが０．２ｍｍ～１ｍｍ程度で構成された懸濁液を濾過する濾過装置が開示されている。

　更に、特許文献３においては、前記積層状回転濾体の直径の異なる大径濾片および小径濾片の厚みが更に薄く０．０５ｍｍ～０．８ｍｍとされ、相隣接する積層状回転濾体のうち一方の積層状回転体における大径円板状濾片の外周縁が他方の積層状回転濾体における小径円板状濾片の外周縁に接近する、即ち交接部における他方の大径円板状濾片間の間隙を０．２ｍｍの細隙溝とされた懸濁液を濾過する濾過装置が開示されている。

日本国特開平２－３１８０７号公報 日本国特許第２９７９２９６号公報 日本国特開昭５３－１４１９７９号公報

　しかしながら、前記特許文献１の懸濁液濾過装置においては、小径円板状濾片の細い隙間は当該小径円板状濾片に食い込む形で回転する大径円板状濾片の厚さより僅かでも広くならなければならない。しかし、大径円板状濾片が回転軸に完全固定されており同一軌道を回転する。そのため、本来掻きださなければならない濾過脱水物のケーキが小径円板状濾片の細い隙間で大径円板状濾片の厚みを除く領域に付着固形化し、濾過面の目詰りが発生することで懸濁液の固液分離ができなくなるという欠点があった。

　また、前記特許文献２の懸濁液濾過装置においては、大・小径円板状濾片は０．２ｍｍ～１ｍｍ程度の極く薄いものであるため、そのプレス加工やレーザー加工の際に加工歪や熱歪が生じるため、歪取りが必要である。また、円板状濾片の径を大きくすると、歪の影響が顕著となり、相隣接する小径円板状濾片の細かい隙間を構成する大径円板状濾片の両側面が接触干渉されて、積層状回転濾体の回転軸トルクが増大することに加えて、大・小円板状濾片の摩耗が早まるという欠点があった。

　更にまた、前記特許文献３の懸濁液濾過装置においては、大・小径円板状濾片は更に薄く０．０５ｍｍ～０．８ｍｍであり、相隣接する積層状回転濾体の一方の積層状回転濾体における大径円板状濾片の外周縁が他方の積層状回転濾体における小径円板状濾片の外周縁に接近する、即ち交接部における他方の大径円板状濾片間の間隙が０．２ｍｍの細隙溝とされている。これにより、必然的に該細隙溝に突入する該大径円板状濾片の厚みは該細隙溝より小さい０．１ｍｍ程度になるため、大径円板状濾片の前後面の隙間は｛０．２ｍｍ（細隙溝）－０．１ｍｍ（大径円板状濾片の厚み）｝÷２＝０．０５ｍｍの精度の高い組立が要求される。そのため、大・小径円板状濾片の歪や、厚みの誤差を調整する手法として、適宜厚み０．０５ｍｍ程度の例えば調整フィルム等の調整部材を挿入しながら、各細隙溝に突入される大径円板状濾片の前後面の隙間を調整確認して組立しなければならず、組立に対して時間と熟練が必要とされるという欠点があった。

　そこで、本発明は前記問題点を鑑み、積層状回転濾体の濾過面が目詰まりすることなく、且つ大径円板状濾片の両側面での接触干渉のない積層状回転濾体の回転軸トルクが増大することなく、更に組立に対して時間と熟練を必要とせずに、濾過機能を安定的に維持し得る固液分離装置を提供することを目的とする。

　本発明に係る固液分離装置は、原液供給口と、固分排出口と、濾液分排出口とを有する処理槽と、
　前記原液供給口と前記固分排出口との間に設けられ、大径円板状濾片と、前記大径円板状濾片よりも小径の小径円板状濾片と、前記大径円板状濾片よりも小径で前記小径円板状濾片よりも大径の複数の凸子円板状濾片と、回転軸とをそれぞれ有する複数のトリプル積層状回転濾体と、
　処理液中に含まれる回収微粒子を回収するように前記処理槽の供給側側壁と排出側側壁に付設されたシール部材と、
を備え、
　前記複数の凸子円板状濾片にそれぞれ凸設された凸子端面が隣り合う凸子円板状濾片の背面に順次当接されることにより複数の濾過溝が形成され、
　前記大径円板状濾片は、前記複数の濾過溝のうち第１濾過溝内において、軸方向に移動可能となるように前記回転軸の外周に挿入積層され、
　前記小径円板状濾片は、前記第１濾過溝に隣接する第２濾過溝内において、軸方向に移動可能となるように前記回転軸の外周に挿入積層され、
　前記複数のトリプル積層状回転濾体は、前記固分排出口の排出方向へ昇り勾配状の等間隔で上下２段に対向配列され、
　相隣接するトリプル積層状回転濾体のうち一方のトリプル積層状回転濾体における大径円板状濾片の外周縁は、他方のトリプル積層状回転濾体の前記第２濾過溝内に突入することにより他方のトリプル積層状回転濾体の凸子円板状濾片の凸子部と小径円板状濾片の外周縁に接近するように設けられ、
　前記シール部材の外縁が、上下２段に対向配列された前記複数のトリプル積層状回転濾体のうち前記固分排出口側の終端の上下２段に配置されたトリプル積層状回転濾体の凸子円板状濾片の外周縁と前記原液供給口側の始端の下段に配置されたトリプル積層状回転濾体の凸子円板状濾片の外周縁とに隙間を隔てて近接対向され、
　前記大径円板状濾片および前記小径円板状濾片は、前記第１濾過溝および前記第２濾過溝内を軸方向に揺動しながら前記回転軸と同調回転するように構成されていることを最も主要な特徴とする。　

　本発明の固液分離装置において、さらに、一対の凸子円板状濾片と、小径円板状濾片と、回転軸とを有するダブル積層状回転濾体を備え、
　前記ダブル積層状回転濾体の前記一対の一方の凸子円板状濾片に凸設された凸子端面が他方の凸子円板状濾片の背面に順次当接されることにより複数の第３濾過溝が形成され、
　前記ダブル積層状回転濾体の前記小径円板状濾片は、前記複数の第３濾過溝内において、軸方向に移動可能なように前記ダブル積層状回転濾体の前記回転軸の外周に挿入積層され、
　前記ダブル積層状回転濾体は、前記対向配列されたトリプル積層状回転濾体の前記固分排出口側の終端の上下２段および／または前記原液供給口側の始端の下段に配置され、
　前記ダブル積層状回転濾体の外周縁に、前記シール部材の外縁が隙間を隔てて近接対向するように構成されていることが好ましい。

　また、本発明の固液分離装置において、
　前記複数のトリプル積層状回転濾体の前記凸子円板状濾片と前記大径円板状濾片および前記原液供給口側の始端の下段に配置されたダブル積層状回転濾体の前記凸子円板状濾片には濾液孔が同心状に穿設され、前記複数のトリプル積層状回転濾体の前記小径円板状濾片および前記ダブル積層状回転濾体の前記円板状濾片には濾液切欠孔が同心状に穿設され、
　前記濾液孔および前記濾液切欠孔により積層後の前記トリプル積層状回転濾体および前記ダブル積層状回転濾体内に濾液路が形成され、
　前記濾液路の送液終端側の開口部は、前記処理槽側壁の外側に付設された濾液室内に導通され、
　前記濾液室の下壁には濾液室排水口が開設されるように構成されていることが好ましい。

　更に、本発明の固液分離装置において、前記凸子円板状濾片は、樹脂から構成されていることが好ましい。

　本発明に係る固液分離装置によれば、トリプル積層状回転濾体には特許文献１ないし３のように大径および小径円板状濾片が積層固定されていないため、濾過溝内を軸方向に揺動しながら回転することが可能である。そのため、大径および小径円板状濾片の厚さより広い濾過溝内の領域、即ち凸子円板状濾片の端面間における小径円板状濾片および大径円板状濾片の揺動作用や濾過溝に突入された他方のトリプル積層状回転濾体の大径円板状濾片の揺動作用に加えて、一方のトリプル積層状回転濾体の大径円板状濾片外周縁と当該大径円板状濾片に対向する他方のトリプル積層状回転濾体の小径円板状濾片外周縁とが互いに転動することによるせん断作用により、本来掻きださなければならない濾過脱水物のケーキが細い隙間の濾過溝に付着固形化することを防止し得る。このセルフクリーニング効果により、常に濾過面の目詰りが解消するという利点がある。

　更に、特許文献１ないし３では大径および小径円板状濾片を積層固定することで濾過溝を形成していることから、濾過溝の幅と位置の精度は両濾片の厚みと平坦度の精度および積層組立時の締付加減等に大きく影響される。そのため、組立時には細心の注意と調整が必要であり、組立には多くの労力と熟練が必要とされる。これに対して、本発明に係るトリプル積層状回転濾体では、凸子円板状濾片に凸設された凸子端面を当接させて形成される濾過溝内に、該大径および小径円板状濾片が軸方向に移動可能なように介装、即ち遊嵌状態に装着されている。この構成により、個々の該両濾片の歪や厚みのバラツキ（誤差）に対して、組立時に細心の注意と調整に配慮することなく、必要な濾過溝の精度が極めて容易に確保される。そのため、該両濾片の厚みと平坦度の過剰な精度を要求することなく、組立の熟練も必要とせず、特に処理能力の向上を図るための幅の広い積層状回転濾体の組立に対しては、非熟練者でも迅速かつ正確に組立できるという大きな効果を有している。

本発明の実施例１の縦断面図である。 図１のＸ－Ｘ線矢視方向の断面図である。 本発明の実施例１または２のトリプル積層状回転濾体の、（ａ）は正面図、（ｂ）はその縦断面図である。 本発明の実施例１または２の複数のトリプル積層状回転濾体の、隣接態様を示した要部拡大側面図である。 本発明の実施例１または２のトリプル積層状回転濾体を構成する大径円板状濾片の、（ａ）は正面図、（ｂ）はその縦断面図である。 本発明の実施例１または２のトリプル或いはダブル積層状回転濾体を構成する小径円板状濾片の、（ａ）は正面図、（ｂ）はその縦断面図ある。 本発明の実施例１または２のトリプル或いはダブル積層状回転濾体を構成する凸子円板状濾片の、（ａ）は正面図、（ｂ）はその縦断面図である。 本発明の実施例１を基にした実施例３の縦断面図である。 図８のＹ－Ｙ線矢視方向の断面図である。 本発明の実施例３のトリプル積層状回転濾体の、（ａ）は正面図、（ｂ）はその断面Ａ－Ａ図である。 本発明の実施例３の複数のトリプル積層状回転濾体の、隣接態様を示した要部拡大側面図である。 本発明の実施例３のトリプル積層状回転濾体を構成する大径円板状濾片の、（ａ）は正面図、（ｂ）はその縦断面図である。 本発明の実施例３のトリプル積層状回転濾体を構成する小径円板状濾片の、（ａ）は正面図、（ｂ）はその縦断面図である。 本発明の実施例３のトリプル積層状回転濾体を構成する凸子円板状濾片の、（ａ）は正面図、（ｂ）はその断面Ｂ－Ｂ図である。 本発明の実施例１を基にした実施例２の固分排出口側終端の上下２段をダブル積層状回転濾体に構成した、実施例の縦断面図である。 本発明の実施例１を基にした実施例２の原液供給口側始端の下段をダブル積層状回転濾体に構成した、別の実施例の縦断面図である。 本発明の実施例１を基にした実施例２の固分排出口側終端の上下２段と原液供給口側始端の下段をダブル積層状回転濾体に構成した、別の実施例の縦断面図である。

　以下、本発明の実施形態に係る固液分離装置について、以下の実施例１～４に基づき、図面を参照して詳細に説明するが、この実施例の形態により本発明が限定されるものではない。
　本発明の実施形態に係る固液分離装置は、原液供給口と、固分排出口と、濾液分排出口とを有する処理槽と、前記原液供給口と前記固分排出口との間に設けられ、大径円板状濾片と、前記大径円板状濾片よりも小径の小径円板状濾片と、前記大径円板状濾片よりも小径で前記小径円板状濾片よりも大径の複数の凸子円板状濾片と、回転軸とをそれぞれ有する複数のトリプル積層状回転濾体と、処理液中に含まれる回収微粒子を回収するように前記処理槽の供給側側壁と排出側側壁に付設されたシール部材と、を備え、前記複数の凸子円板状濾片にそれぞれ凸設された凸子端面が隣り合う凸子円板状濾片の背面に順次当接されることにより複数の濾過溝が形成され、前記大径円板状濾片は、前記複数の濾過溝のうち第１濾過溝内において、軸方向に移動可能となるように前記回転軸の外周に挿入積層され、前記小径円板状濾片は、前記第１濾過溝に隣接する第２濾過溝内において、軸方向に移動可能となるように前記回転軸の外周に挿入積層され、前記複数のトリプル積層状回転濾体は、前記固分排出口の排出方向へ昇り勾配状の等間隔で上下２段に対向配列され、相隣接するトリプル積層状回転濾体のうち一方のトリプル積層状回転濾体における大径円板状濾片の外周縁は、他方のトリプル積層状回転濾体の前記第２濾過溝内に突入することにより他方のトリプル積層状回転濾体の凸子円板状濾片の凸子部と小径円板状濾片の外周縁に接近するように設けられ、前記シール部材の外縁が、上下２段に対向配列された前記複数のトリプル積層状回転濾体のうち前記固分排出口側の終端の上下２段に配置されたトリプル積層状回転濾体の凸子円板状濾片の外周縁と前記原液供給口側の始端の下段に配置されたトリプル積層状回転濾体の凸子円板状濾片の外周縁とに隙間を隔てて近接対向され、前記大径円板状濾片および前記小径円板状濾片は、前記第１濾過溝および前記第２濾過溝内を軸方向に揺動しながら前記回転軸と同調回転するように構成されている。

　図１ないし７において、処理槽９の上部に原液を供給する原液供給口１０が開設されていると共に、処理槽９の下部には固液分離された濾液を処理槽９の外に排水する濾液排水口１２が開設されている。また、処理槽９の側面部には固液分離された固分の濾過脱水物であるケーキを処理槽９の外に排出回収する固分排出口１１が開設されている。該処理槽９内の原液供給口１０と固分排出口１１との間に、図１に示すように、該固分排出口１１の排出方向へ昇り勾配状となるように等間隔で上下２段に対向配列された複数のトリプル積層状回転濾体１ｔが配設されている。

　図３および図５ないし図７に示すように、該トリプル積層状回転濾体１ｔは、大径円板状濾片２と、大径円板状濾片２よりも小径の小径円板状濾片３と、回転軸４と、大径円板状濾片２よりも小径で小径円板状濾片３よりも大径の複数の凸子円板状濾片５とを有している。
　そして、回転軸４は、円柱の一部を平面状にカットしたＤカット或いはキー（図示せず）等の係止機能を有している。さらに、回転軸４は、図２に示されるように、処理槽９の正面側側壁９ｆおよび背面側側壁９ｒの外側に設けられた軸受１７によって軸支されると共に、該正面側側壁９ｆの外側に設けられた駆動伝達具１６（例えばウオームギヤー等）によって回転駆動されている。そのために、直径の異なる各濾片２，３，５は、その中心に、回転軸４と同調回転するように、該回転軸４の係止形状に嵌るような軸孔が穿設されている。そして、複数の凸子円板状濾片５には、凸設された凸子５ｔ端面が隣り合う凸子円板状濾片５の背面に順次当接させることで濾過溝Ｓ（第１濾過溝および第２濾過溝）が形成されている。各濾過溝Ｓ内には、大径円板状濾片２と小径円板状濾片３とが軸方向に移動可能なように交互に介装されている。これにより、大径円板状濾片２および小径円板状濾片３は、該濾過溝Ｓ内を軸方向に揺動しながら該回転軸４と同調回転できるように構成されている。

　このように構成されたトリプル積層状回転濾体１ｔにおいて、各濾片２，３，５を回転軸４に係合する方法について以下説明する。（ｉ）先ず回転軸４の外周に複数の凸子円板状濾片５のうち第１の凸子円板状濾片５を凸子５ｔが設けられた側とは反対の背面から挿入させて、（ｉｉ）次に前記第１の凸子円板状濾片５の凸子５ｔに大径円板状濾片２の凸子遊嵌孔２ｈが嵌るように該大径円板状濾片２を回転軸４に挿入させ、（ｉｉｉ）次に前記第１の凸子円板状濾片５とは異なる第２の凸子円板状濾片５を凸子５ｔが設けられた側とは反対の背面から挿入させて前記第１の凸子円板状濾片５の凸子５ｔ端面に前記第２の凸子円板状濾片５の背面を衝合させて濾過溝Ｓを形成し、（ｉｖ）次に小径円板状濾片３の凸子切欠孔に前記第２の凸子円板状濾片５の凸子５ｔが嵌るように該小径円板状濾片３を回転軸４に挿入させて、（ｖ）次に新たな第１の凸子円板状濾片５の背面を前記第２の凸子円板状濾片５の凸子５ｔ端面に衝合させて濾過溝Ｓを形成する。

上記（ｉ）から（ｖ）の手順を繰返すことで形成された複数のトリプル積層状回転濾体１ｔは、図４に示すように、相隣接するトリプル積層状回転濾体１ｔのうち一方のトリプル積層状回転濾体１ｔにおける大径円板状濾片２の外周縁が他方のトリプル積層状回転濾体１ｔの第２濾過溝Ｓ内に突入することにより他方のトリプル積層状回転濾体１ｔの凸子円板状濾片５の凸子５ｔ部と小径円板状濾片３の外周縁とに接近するように構成されている。

　図１に示すように、処理液中に含まれる回収微粒子を効率よく回収するために、シール部材１５が処理槽９の供給側側壁９ｓと排出側側壁９ｄとに付設されている。シール部材１５の要部外縁は、該固分排出口１１側の終端の上下２段と原液供給口１０側の始端の下段に設けられたトリプル積層状回転濾体１ｔの凸子円板状濾片５の外周縁に僅かな隙間を隔てて近接対向している。さらに、該シール部材１５の外縁部に摺動抵抗の少ないブラシが付設されていることが好ましい。これにより、より一層シール機能を向上し得ると共に回転軸４のトルク増加を抑制することができる。

　例えば図１５ないし図１７を用いて実施例２を説明すると、処理槽９は、前記固分排出口１１の排出方向へ昇り勾配状となるように等間隔で上下２段に対向配列された前記トリプル積層状回転濾体１ｔとは別に、一対の凸子円板状濾片５，５と、小径円板状濾片３と、回転軸４とを有するダブル積層状回転濾体１ｗを備えている。ダブル積層状回転濾体１ｗは、該固分排出口１１側の終端の上下２段および／または原液供給口１０側の始端の下段に設けられている。

　ダブル積層状回転濾体１ｗの組立方法について以下説明する。（ｖｉ）先ず、回転軸４の外周に一対の凸子円板状濾片５，５のうち一方の凸子円板状濾片５を凸子５ｔが設けられた側とは反対の背面から挿入させて、（ｖｉｉ）次に、小径円板状濾片３の凸子切欠孔３ｈに前記凸子円板状濾片５の凸子５ｔが嵌るように該小径円板状濾片３を軸方向に移動可能なように回転軸４に挿入させて、（ｖｉｉｉ）次に、他方の凸子円板状濾片５の凸子円板状濾片５の背面を前記凸子円板状濾片５の凸子端面に衝合させて濾過溝Ｓ（第３濾過溝）を形成する。

　上記（ｖｉ）から（ｖｉｉｉ）の手順を繰返すことで形成されたダブル積層状回転濾体１ｗの外周縁には、処理槽９の側壁に付設されたシール部材１５の外縁が僅かな隙間を隔てて近接対向している。該シール部材１５の外縁先端は、スクレイパーのように摺動抵抗の少ないへら状の刃部に構成されていることが好ましい。

　例えば図８ないし図１４を用いて実施例３を説明すると、前記固分排出口１１の排出方向へ昇り勾配状となるように等間隔で上下２段に対向配列されたトリプル積層状回転濾体１ｔおよび原液供給口１０側始端の下段に配置されたダブル積層状回転濾体１ｗにおいて、図１２ないし図１４に示すように、凸子円板状濾片５と大径円板状濾片２には濾液孔７が、小径円板状濾片３には濾液切欠孔８がそれぞれ同心状に穿設されている。図９ないし図１１に示すように、濾液孔７および濾液切欠孔８により積層後の前記両積層状回転濾体１ｔ，１ｗ内に濾液路６が形成されている。該濾液路６の送液終端の開口部は、前記処理槽９の背面側側壁９ｒの外側に付設された濾液室１３内に導通され、該濾液室１３下壁に濾液室排水口１４が開設されている。

　本実施形態においては、トリプル積層状回転濾体１ｔおよびダブル積層状回転濾体１ｗを構成する凸子円板状濾片５は、錆びの発生のない軽量で且つ加工の不要な量産性に優れた樹脂製の成型品から構成されている。

　本実施形態に係る固液分離装置によれば、トリプル積層状回転濾体１ｔには大径円板状濾片２および小径円板状濾片３が積層固定されていないため、大径円板状濾片２および小径円板状濾片３は濾過溝Ｓ内を軸方向に揺動しながら回転することが可能である。そのため、大径円板状濾片２および小径円板状濾片３の厚さより広い濾過溝Ｓ内の領域、即ち凸子円板状濾片５の端面間における小径円板状濾片３および大径円板状濾片２の揺動作用や濾過溝Ｓに突入された他方のトリプル積層状回転濾体１ｔの大径円板状濾片２の揺動作用に加えて、大径円板状濾片２の外周縁と当該大径円板状濾片２に対向して配置される他方のトリプル積層状回転濾体１ｔの小径円板状濾片３の外周縁とが互いに転動することによるせん断作用により、本来掻きださなければならない濾過脱水物（ケーキ）が細い隙間の濾過溝Ｓに付着固形化することを防止することができる。ケーキの付着固形化を防止するいわゆるセルフクリーニング効果により、常に濾過面の目詰りを解消することができる。

　従来は、大径および小径円板状濾片を積層固定することで濾過溝を形成していることから、濾過溝の幅と位置の精度は両濾片の厚みと平坦度の精度および積層組立時の締付加減等に大きく影響されていた。そのため、積層状回転濾体の組立時には細心の注意と調整が必要とされ、組立には多くの労力と熟練が必要とされていた。
　これに対して、本実施形態に係るトリプル積層状回転濾体１ｔでは、凸子円板状濾片５に凸設された凸子端面を当接させて形成される濾過溝Ｓ内に、大径円板状濾片２および小径円板状濾片３が軸方向に移動可能なように介装されている、即ち、遊嵌状態に装着されている。この構成により、個々の大径円板状濾片２および小径円板状濾片３の歪や厚みのバラツキ（誤差）に対して、組立時に細心の注意と調整に配慮することなく、必要な濾過溝Ｓの精度が極めて容易に確保される。そのため、大径円板状濾片２および小径円板状濾片３の厚みと平坦度の過剰な精度を要求することなく、組立の熟練も必要としない。特に、処理能力の向上を図るために幅の広い積層状回転濾体を組み立てる際には、非熟練者でも迅速かつ正確に組立てられるため、好適である。

　また、本実施形態に係る固液分離装置によれば、処理槽９の側壁に付設されたシール部材１５は、トリプル積層状回転濾体１ｔまたはダブル積層状回転濾体１ｗの外周縁に僅かな隙間を隔てて近接対向する構成とすることができるため、シール部材１５の外縁は、大径円板状濾片２との干渉を配慮する必要がない。この構成によれば、組立作業性に秀でていると共に、シール部材１５の近接対向外縁を軸方向に長く形成できる。そのため、処理液中に含まれる回収微粒子をリークすることなく効率よく回収することができる。

　また、本実施形態に係る固液分離装置によれば、濾液路６が形成された積層状回転濾体１ｔ，１ｗでは、濾液路のない積層状回転濾体の場合よりも、濾液路６経由の濾液室１３の下壁の濾液室排水口１４からの排水が加わることから、濾過溝Ｓ内で揺動回転する大径２および小径円板状濾片３の濾液分離能力が向上される。そのため、含水率の低いケーキを回収することができる。

　本実施形態に係る固液分離装置によれば、積層状回転濾体１ｔ，１ｗにおいて最も重量の大きな凸子円板状濾片５を樹脂製としたことで、飛躍的に積層状回転濾体１ｔ，１ｗを軽量化できる。そのため、駆動動力の低減に加えて、錆びが発生しないことから目詰まりのないクリーン状態の濾過溝Ｓの形成が維持できると共に、積層状回転濾体１ｔ，１ｗを樹脂成型品とすることができる。よって、加工することなく寸法精度の高い凸子円板状濾片５を大量に生産することができ、安価で組立性にも秀でている。特に、精度の高い積層状回転濾体１ｔ，１ｗを容易に組立られることから、安定した濾過機能を得ることができる。

　以上、本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。

　本出願は、２０１２年９月１９日出願の日本特許出願（特願２０１２－２０５１８０）に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
 

Claims (4)

1. 　原液供給口と、固分排出口と、濾液分排出口とを有する処理槽と、
   　前記原液供給口と前記固分排出口との間に設けられ、大径円板状濾片と、前記大径円板状濾片よりも小径の小径円板状濾片と、前記大径円板状濾片よりも小径で前記小径円板状濾片よりも大径の複数の凸子円板状濾片と、回転軸とをそれぞれ有する複数のトリプル積層状回転濾体と、
   　処理液中に含まれる回収微粒子を回収するように前記処理槽の供給側側壁と排出側側壁に付設されたシール部材と、
   を備え、
   　前記複数の凸子円板状濾片にそれぞれ凸設された凸子端面が隣り合う凸子円板状濾片の背面に順次当接されることにより複数の濾過溝が形成され、
   　前記大径円板状濾片は、前記複数の濾過溝のうち第１濾過溝内において、軸方向に移動可能となるように前記回転軸の外周に挿入積層され、
   　前記小径円板状濾片は、前記第１濾過溝に隣接する第２濾過溝内において、軸方向に移動可能となるように前記回転軸の外周に挿入積層され、
   　前記複数のトリプル積層状回転濾体は、前記固分排出口の排出方向へ昇り勾配状の等間隔で上下２段に対向配列され、
   　相隣接するトリプル積層状回転濾体のうち一方のトリプル積層状回転濾体における大径円板状濾片の外周縁は、他方のトリプル積層状回転濾体の前記第２濾過溝内に突入することにより他方のトリプル積層状回転濾体の凸子円板状濾片の凸子部と小径円板状濾片の外周縁とに接近するように設けられ、
   　前記シール部材の外縁が、上下２段に対向配列された前記複数のトリプル積層状回転濾体のうち前記固分排出口側の終端の上下２段に配置されたトリプル積層状回転濾体の凸子円板状濾片の外周縁と前記原液供給口側の始端の下段に配置されたトリプル積層状回転濾体の凸子円板状濾片の外周縁に隙間を隔てて近接対向され、
   　前記大径円板状濾片および前記小径円板状濾片は、前記第１濾過溝および前記第２濾過溝内を軸方向に揺動しながら前記回転軸と同調回転するように構成されていることを特徴とする固液分離装置。
2. 　請求項１に記載の固液分離装置であって、
   　さらに、一対の凸子円板状濾片と、小径円板状濾片と、回転軸とを有するダブル積層状回転濾体を備え、
   　前記ダブル積層状回転濾体の前記一対の一方の凸子円板状濾片に凸設された凸子端面が他方の凸子円板状濾片の背面に順次当接されることにより複数の第３濾過溝が形成され、
   　前記ダブル積層状回転濾体の前記小径円板状濾片は、前記複数の第３濾過溝内において、軸方向に移動可能なように前記ダブル積層状回転濾体の前記回転軸の外周に挿入積層され、
   　前記ダブル積層状回転濾体は、前記対向配列されたトリプル積層状回転濾体の前記固分排出口側の終端の上下２段および／または前記原液供給口側の始端の下段に配置され、
   　前記ダブル積層状回転濾体の外周縁に、前記シール部材の外縁が隙間を隔てて近接対向するように構成されていることを特徴とする固液分離装置。
3. 　請求項１または請求項２に記載の固液分離装置であって、
   　前記複数のトリプル積層状回転濾体の前記凸子円板状濾片と前記大径円板状濾片および前記原液供給口側の始端の下段に配置されたダブル積層状回転濾体の前記凸子円板状濾片には濾液孔が同心状に穿設され、前記複数のトリプル積層状回転濾体の前記小径円板状濾片および前記ダブル積層状回転濾体の前記円板状濾片には濾液切欠孔が同心状に穿設され、
   　前記濾液孔および前記濾液切欠孔により積層後の前記トリプル積層状回転濾体および前記ダブル積層状回転濾体内に濾液路が形成され、
   　前記濾液路の送液終端側の開口部は、前記処理槽側壁の外側に付設された濾液室内に導通され、
   　前記濾液室の下壁には濾液室排水口が開設されるように構成されていることを特徴とする固液分離装置。
4. 　請求項１ないし請求項３のいずれか一項に記載の固液分離装置であって、
   　前記凸子円板状濾片は樹脂により構成されていることを特徴とする固液分離装置。

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