WO2013187495A1 - 改変されたFc領域を含む抗原結合分子 - Google Patents

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Abstract

本発明者らは、抗原及びFcγRそれぞれに対して結合活性を有するが、抗原及びFcγRに同時には結合しない、抗体のFc領域二量体及び当該Fc領域二量体を含むポリペプチドを作製することに成功した。本発明により、抗原とFcγRとが同時に結合した場合に起こり得る副作用を回避することが可能な多重特異性結合ポリペプチドを作製することが可能となり、医薬品として適したポリペプチドが提供される。

Description

改変されたFc領域を含む抗原結合分子
 本発明は、天然の抗体Fc領域には結合しない分子とFcγRにそれぞれ結合するが、両者が同時には結合しない抗体Fc領域二量体、該Fc領域二量体を含むポリペプチド、該ポリペプチドを含む医薬組成物、ならびに、それらの製造方法を提供する。
 抗体は血漿中での安定性が高く、副作用が少ないことから医薬品として注目されている。(Nat. Biotechnol. (2005) 23, 1073-1078(非特許文献1)およびEur J Pharm Biopharm. (2005) 59 (3), 389-396(非特許文献2))。抗体は、抗原に結合する作用、アゴニスト作用やアンタゴニスト作用だけでなく、ADCC(Antibody Dependent Cytotoxicity:抗体依存性障害活性), ADCP(Antibody Dependent Cell phagocytosis:抗体依存性細胞鈍食作用), CDC(補体依存性細胞傷害活性)といったエフェクター細胞による細胞障害活性(エフェクター機能とも言う)を誘導する。特にIgG1サブクラスの抗体がエフェクター機能を癌細胞に対して示すため、癌領域において多数の抗体医薬品が開発されている。
 抗体がADCC, ADCP, CDCを発現するためには、抗体のFc領域と、NK細胞やマクロファージ等のエフェクター細胞に存在する抗体レセプター(FcγR)および各種補体成分が結合することが必須である。ヒトでは、FcγRのタンパク質ファミリーとして、FcγRIa、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa、FcγRIIIbのアイソフォームが報告されており、それぞれのアロタイプも報告されている(Immunol. Lett. (2002) 82, 57-65(非特許文献3))。これらのアイソフォームのうち、FcγRIa、FcγRIIa、FcγRIIIaは細胞内ドメインにITAM(Immunoreceptor Tyrosine-based Activation Motif)と呼ばれるドメインを持ち、活性化シグナルを伝達する。一方で、FcγRIIbのみが細胞内ドメインにITIM (Immunoreceptor Tyrosine-based Inhibitory Motif)と呼ばれるドメインを持ち、抑制シグナルを伝達する。いずれのFcγRも、免疫複合体などによってクロスリンクされることで、シグナルを伝達することが知られている(Nat. Rev. Immunol. (2008) 8, 34-47(非特許文献4))。実際に、抗体が癌細胞にエフェクター機能を発揮するときは、癌細胞膜上に複数個結合している抗体のFc領域でエフェクター細胞膜上のFcγRがクラスターとなり、エフェクター細胞で活性化シグナルが伝達される。その結果、殺細胞効果が発揮されるが、このときFcγRのクロスリンクは癌細胞近傍に存在するエフェクター細胞に限られることから、免疫の活性化は癌細胞局所でのみ起こることを示している。(Ann. Rev. Immunol. (1988). 6. 251-81(非特許文献5))
 FcγRと抗体のFc領域の結合には、抗体のヒンジ領域及びCH2ドメイン内のいくつかのアミノ酸残基およびCH2ドメインに結合しているEUナンバリング297番目のAsnに付加される糖鎖が重要であることが示されている(Chem. Immunol. (1997), 65, 88-110(非特許文献6)、Eur. J. Immunol. (1993) 23, 1098-1104(非特許文献7)、Immunol. (1995) 86, 319-324(非特許文献8))。この結合箇所を中心に、これまでに様々なFcγR結合特性を持つFc領域の変異体が研究され、活性化FcγRに対するより高い結合活性を有するFc領域変異体が得られている(WO2000/042072(特許文献1)、WO2006/019447(特許文献2))。例えば、Lazarらは、ヒトIgG1のEUナンバリング239番目のSer、330のAla、332のIleをそれぞれAsp、Leu、Gluに置換することによって、ヒトFcγRIIIa(V158)に対するヒトIgG1の結合活性を約370倍まで増加させることに成功している(Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. (2006) 103, 4005-4010(非特許文献9)、WO2006/019447(特許文献2))。この改変体は野生型と比べて、FcγRIIIaとFcγIIbに対する結合活性の比(A/I比)が約9倍になっている。また、ShinkawaらはEUナンバリング297番目のAsnに付加される糖鎖のフコースを欠損させることによって、FcγRIIIaに対する結合活性を約100倍まで増加させることに成功している(J. Biol. Chem. (2003) 278, 3466-3473(非特許文献10))。これらの方法によって、天然型ヒトIgG1と比較してヒトIgG1のADCC活性を大幅に向上させることが可能である。
 抗体の改良技術として、前述のADCC活性の増強や血中対流性の延長、抗原に対する結合活性の向上、免疫原性リスクの低減が行われてきた。通常抗体は抗原の1つのエピトープを認識して結合することから、これらの改良技術を抗体に適用しても、ターゲットとなる抗原は1種類のみである。一方で、癌や炎症においては多種類のタンパク質が関与することが知られており、タンパク質同士がクロストークしていることがある。たとえば免疫疾患では、いくつかの炎症性サイトカイン(TNF, IL1やIL6)が関与していることが知られている(Nat. Biotech., (2011) 28, 502-10(非特許文献11))。また癌において薬剤耐性を獲得するメカニズムのひとつとして、他のレセプターが活性化することが知られている(Endocr Relat Cancer (2006) 13, 45-51(非特許文献12))。このような場合、1つのエピトープを認識する通常の抗体では、複数のタンパク質を阻害することが出来ない。
 複数のターゲットを阻害する分子として、1分子で2種類以上の抗原と結合する抗体(Bispecific抗体という)が研究されている。Bispecific抗体は2種類以上の抗原と相互作用するため、2種類以上の抗原を1つの分子で中和する作用だけでなく、細胞障害活性をもつ細胞と癌細胞をクロスリンクすることで抗腫瘍活性を高める作用がある。これまでにBispecific抗体の分子形として、抗体のN末端やC末端に抗原結合部位を付加した分子(DVD-IgやscFv-IgG)や抗体の2つのFab領域が異なる配列を有する分子(共通L鎖Bispecific抗体およびハイブリッドハイブリドーマ)、ひとつのFab領域が2つの抗原を認識する分子(Two-in-one IgG)、CH3領域のループ部位を新たな抗原結合部位とした分子(Fcab)が報告されている(Nat. Rev. (2010), 10, 301-316(非特許文献13)、Peds(2010), 23(4), 289-297(非特許文献14))。いずれのBispecific抗体もFc領域でFcγRと相互作用することから、抗体のエフェクター機能は保存されている。したがって、Bispecific抗体が認識するいずれの抗原に対しても、FcγRと同時に結合し、抗原を発現している細胞に対してADCC活性を示す。
 Bispecific抗体が認識する抗原がいずれも癌に特異的に発現している抗原であれば、いずれかの抗原が発現すれば細胞障害活性を示すため、一つの抗原を認識する通常の抗体医薬品よりも汎用的な抗がん剤として利用できる。しかし、Bispecific抗体が認識する抗原のうちいずれか一つの抗原でも正常組織に発現している場合や免疫細胞に発現する細胞である場合、FcγRとのクロスリンクによって正常組織の障害やサイトカインの放出が起こる(J. Immunol. (1999) Aug 1, 163(3), 1246-52(非特許文献15))。その結果、強い副作用を誘導してしまう。
 T細胞に発現しているタンパク質と癌細胞に発現しているタンパク質(癌抗原)を認識するBispecific抗体として、Catumaxomabが知られている。Catumaxomabは、2つのFabでそれぞれ癌抗原(EpCAM)とT細胞に発現しているCD3 epsilon鎖に結合する。Catumaxomabは癌抗原とCD3 epsilonが同時に結合することによって、T細胞による細胞障害活性を誘導し、癌抗原とFcγRが同時に結合することによってエフェクター細胞による細胞障害活性を誘導する。2つの細胞障害活性を利用することによりCatumaxomabは腹腔内投与によって悪性腹水症で高い治療効果が示されており、欧州で承認されている。(Cancer Treat Rev. (2010) Oct 36(6), 458-67(非特許文献16))さらにCatumaxomab投与によって癌細胞に対して反応する抗体が出現した例が報告され、獲得免疫が誘導されることが明らかになった(Future Oncol. (2012) Jan 8(1), 73-85(非特許文献17))。この結果からT細胞による細胞障害活性と共に、FcγRを介したNK細胞やマクロファージなどの細胞による作用の両者を持つ抗体(特にtrifunctional抗体と呼ぶ)は強い抗腫瘍効果と獲得免疫誘導が期待できるため注目されている。
しかし、trifunctional抗体は癌抗原が存在しない場合でも、CD3 epsilonとFcγRが同時に結合するため、癌細胞が存在しない環境でもCD3 epsilonを発現しているT細胞とFcγRを発現している細胞がクロスリンクされ、各種サイトカインが大量に産生される。このような癌抗原非依存的な各種サイトカインの産生誘導により、trifunctional抗体の投与は現状、腹腔内に限定されており(Cancer Treat Rev. 2010 Oct 36(6), 458-67(非特許文献16))、重篤なサイトカインストーム様の副作用により全身投与は極めて困難である(Cancer Immunol Immunother. 2007 Sep;56(9):1397-406(非特許文献18))。従来技術のBispecific抗体では、一つ目の抗原である癌抗原(EpCAM)と二つ目の抗原であるCD3 epsilonの両方の抗原がFcγRと同時に結合し得るため、FcγRと2つ目の抗原のCD3 epsilonの同時結合によるこのような副作用を回避することは分子構造的に不可能である。このように、従来のBispecific抗体では、CD3 epsilonに限らず2つ目の抗原とFcγRの同時結合による副作用を回避することができないため、このような副作用を回避することが可能な分子構造を有するBispecific抗体が求められていた。
WO2000/042072 WO2006/019447
Nat. Biotechnol. (2005) 23, 1073-1078 Eur J Pharm Biopharm. (2005) 59 (3), 389-396 Immunol. Lett. (2002) 82, 57-65 Nat. Rev. Immunol. (2008) 8, 34-47 Ann. Rev. Immunol. (1988). 6. 251-81 Chem. Immunol. (1997), 65, 88-110 Eur. J. Immunol. (1993) 23, 1098-1104 Immunol. (1995) 86, 319-324 Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. (2006) 103, 4005-4010 J. Biol. Chem. (2003) 278, 3466-3473 Nat. Biotech., (2011) 28, 502-10 Endocr Relat Cancer (2006) 13, 45-51 Nat. Rev. (2010), 10, 301-316 Peds(2010), 23(4), 289-297 J. Immunol. (1999) Aug 1, 163(3), 1246-52 Cancer Treat Rev. (2010) Oct 36(6), 458-67 Future Oncol. (2012) Jan 8(1), 73-85 Cancer Immunol Immunother. 2007 Sep;56(9):1397-406
 本発明はこのような状況に鑑みて為されたものであり、その課題は、抗原及びFcγRそれぞれに対して結合活性を有するが、抗原及びFcγRと同時には結合しない抗体のFc領域二量体、該Fc領域二量体を含むポリペプチド、該ポリペプチドを含有する医薬組成物及び該ポリペプチドの製造方法を提供することにある。
 本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行った。その結果、本発明者らは、抗原及びFcγRそれぞれに対して結合活性を有するが、抗原及びFcγRと同時には結合しない抗体のFc領域二量体及び当該Fc領域二量体を含むポリペプチドを作製することに成功した。
より具体的には、本発明は、以下に関する。
〔1〕抗原結合部位及びFcγR結合部位を有し、抗原及びFcγRと同時には結合しない、 Fc領域二量体。
〔2〕前記抗体のFc領域が、IgG型のFc領域である、〔1〕に記載のFc領域二量体。
〔3〕前記Fc領域二量体が、異なるアミノ酸配列を有する2つのFc領域(第1のFc領域及び第2のFc領域)からなるヘテロ二量体である、〔1〕又は〔2〕に記載のFc領域二量体。
〔4〕前記抗原結合部位が、Fc領域の少なくとも1つのアミノ酸を改変することにより導入された、又はそれと同一のアミノ酸配列を有する部位である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のFc領域二量体。
〔5〕前記改変されるアミノ酸が、Fc領域のCH2ドメインのアミノ酸である、〔4〕に記載のFc領域二量体。
〔6〕前記改変されるアミノ酸が、ループ領域のアミノ酸である、〔4〕又は〔5〕に記載のFc領域二量体。
〔7〕前記改変されるアミノ酸が、EUナンバリング231~239、EUナンバリング265~271、EUナンバリング295~300およびEUナンバリング324~337から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸である、〔6〕に記載のFc領域二量体。
〔8〕前記ヘテロ二量体の改変されるアミノ酸が、第1のFc領域のEUナンバリング265~271およびEUナンバリング295~300、並びに第2のFc領域のEUナンバリング265~271およびEUナンバリング324~332から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸である、〔4〕に記載のFc領域二量体。
〔9〕前記抗原結合部位の改変が、少なくとも1つのアミノ酸の挿入である、〔4〕に記載のFc領域二量体。
〔10〕挿入されるアミノ酸の数が9以下である、〔9〕に記載のFc領域二量体。
〔11〕挿入される少なくとも1つのアミノ酸が、抗原に対する結合活性を有するペプチドである、〔9〕又は〔10〕に記載のFc領域二量体。
〔12〕前記FcγR結合部位が、Fc領域の少なくとも1つのアミノ酸が改変された、又はそれと同一のアミノ酸配列を有する部位である、〔1〕~〔11〕のいずれかに記載のFc領域二量体。
〔13〕前記改変されるアミノ酸が、Fc領域のCH2ドメインのアミノ酸である、〔12〕に記載のFc領域二量体。
〔14〕前記改変されるアミノ酸が、EUナンバリング234番目のLeu、EUナンバリング235番目のLeu、EUナンバリング236番目のGly、EUナンバリング239番目のSer、EUナンバリング268番目のHis、EUナンバリング270番目のAsp、EUナンバリング298番目のSer、EUナンバリング326番目のLys、EUナンバリング330番目のAla、EUナンバリング332番目のIle、EUナンバリング334番目のLysからなる群より選択される、少なくとも一つのアミノ酸改変が導入された、又はそれと同一のアミノ酸配列を有する、〔12〕又は〔13〕に記載のFc領域二量体。
〔15〕前記改変されるアミノ酸が、EUナンバリング234番目のアミノ酸LのYへの置換、EUナンバリング235番目のアミノ酸LのY又はQへの置換、EUナンバリング236番目のアミノ酸GのWへの置換、EUナンバリング239番目のアミノ酸SのD又はMへの置換、EUナンバリング268番目のアミノ酸HのDへの置換、EUナンバリング270番目のアミノ酸DのEへの置換、EUナンバリング298番目のアミノ酸SのAへの置換、EUナンバリング326番目のアミノ酸KからDへの置換、EUナンバリング330番目のアミノ酸AのL又はMへの置換、EUナンバリング332番目のアミノ酸IのEへの置換、及びEUナンバリング334番目のアミノ酸KのEへの置換からなる群より選択される、少なくとも一つ以上のアミノ酸改変が導入された、又はそれと同一のアミノ酸配列を有する、〔12〕又は〔13〕に記載のFc領域二量体。
〔16〕前記Fc領域二量体のどちらか一方のFc領域のアミノ酸配列において、
EUナンバリング234番目のアミノ酸LのYへの置換、EUナンバリング235番目のアミノ酸LのY又はQへの置換、EUナンバリング236番目のアミノ酸GのWへの置換、EUナンバリング239番目のアミノ酸SのMへの置換、EUナンバリング268番目のアミノ酸HのDへの置換、EUナンバリング270番目のアミノ酸DのEへの置換、及びEUナンバリング298番目のアミノ酸SのAへの置換からなる群より選択される、少なくとも一つ以上のアミノ酸改変が導入された、又はそれと同一のアミノ酸配列を有しており、
もう一方のFc領域のアミノ酸配列において、
EUナンバリング239番目のアミノ酸SのDへの置換、EUナンバリング270番目のアミノ酸DのEへの置換、EUナンバリング326番目のアミノ酸KのDへの置換、EUナンバリング330番目のアミノ酸AのL又はMへの置換、EUナンバリング332番目のアミノ酸IのEへの置換、及びEUナンバリング334番目のアミノ酸KのEへの置換からなる群より選択される、少なくとも一つ以上のアミノ酸改変が導入された、又はそれと同一のアミノ酸配列を有する、〔12〕又は〔13〕に記載のFc領域二量体。
〔17〕前記Fc領域二量体のどちらか一方のFc領域が、(i)~(iii)いずれかのアミノ酸配列を有し、もう一方のFc領域が、(iv)~(vi)いずれかのアミノ酸配列を有する、〔12〕又は〔13〕に記載のFc領域二量体:
(i)EUナンバリング234番目のアミノ酸LのYへの置換、EUナンバリング236番目のアミノ酸GのWへの置換、及びEUナンバリング298番目のアミノ酸SのAへの置換が導入された、又はそれと同一のアミノ酸配列、
(ii) EUナンバリング234番目のアミノ酸LのYへの置換、EUナンバリング235番目のアミノ酸LのYへの置換、EUナンバリング236番目のアミノ酸GのWへの置換、EUナンバリング268番目のアミノ酸HのDへの置換、及びEUナンバリング298番目のアミノ酸SのAへの置換が導入された、又はそれと同一のアミノ酸配列、及び、
(iii)EUナンバリング234番目のアミノ酸LのYへの置換、EUナンバリング235番目のアミノ酸LのQへの置換、EUナンバリング236番目のアミノ酸GのWへの置換、EUナンバリング239番目のアミノ酸SのMへの置換、EUナンバリング268番目のアミノ酸HのDへの置換、EUナンバリング270番目のアミノ酸DのEへの置換、及びEUナンバリング298番目のアミノ酸SのAへの置換が導入された、又はそれと同一のアミノ酸配列、
(iv) EUナンバリング239番目のアミノ酸SのDへの置換、EUナンバリング330番目のアミノ酸AのLへの置換、及びEUナンバリング332番目のアミノ酸IのEへの置換が導入された、又はそれと同一のアミノ酸配列
(v) EUナンバリング326番目のアミノ酸KのDへの置換、EUナンバリング330番目のアミノ酸AのMへの置換、及びEUナンバリング334番目のアミノ酸KのEへの置換が導入された、又はそれと同一のアミノ酸配列
(vi) EUナンバリング270番目のアミノ酸DのEへの置換、EUナンバリング326番目のアミノ酸KのDへの置換、EUナンバリング330番目のアミノ酸AのMへの置換、及びEUナンバリング334番目のアミノ酸KのEへの置換が導入された、又はそれと同一のアミノ酸配列。
〔18〕前記FcγR結合部位が天然型IgG1より高いFcγR結合活性を有する、〔12〕~〔17〕のいずれかに記載のFc領域二量体。
〔19〕前記FcγRが、FcγRIa、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIaおよびFcγRIIIbからなる群から選択される少なくとも1つ以上のレセプターである、〔1〕~〔18〕に記載のFc領域二量体。
〔20〕前記FcγRが、FcγRIIIaである、〔19〕に記載のFc領域二量体。
〔21〕前記改変されるアミノ酸が、表2-1~表2-3に記載されたアミノ酸変異からなる群より選択される、少なくとも一つのアミノ酸が改変された又はそれと同一のアミノ酸配列を有する、〔19〕に記載のFc領域二量体。
〔22〕〔1〕~〔21〕のいずれかに記載のFc領域二量体を含む、ポリペプチド。
〔23〕ポリペプチドが抗体、多重特異性抗体、ペプチドFc融合タンパク質、又はスキャフォールドFc融合タンパク質である、〔22〕に記載のポリペプチド。
〔24〕ポリペプチドが抗体の可変領域を含み、第1の抗原が当該可変領域と結合し、第1の抗原とは異なる第2の抗原がFc領域と結合する、〔22〕又は〔23〕に記載のポリペプチド。
〔25〕第1の抗原が腫瘍細胞に特異的な抗原である、〔22〕~〔24〕のいずれかに記載のポリペプチド。
〔26〕第2の抗原が免疫細胞の表面で発現している分子、又は、腫瘍細胞と正常細胞で発現している分子である、〔22〕~〔25〕のいずれかに記載のポリペプチド。
〔27〕〔22〕~〔26〕のいずれかに記載のポリペプチド及び医学的に許容し得る担体を含む、医薬組成物。
〔28〕〔22〕~〔26〕のいずれかに記載のポリペプチドを製造する方法であって、工程(i)~(iv)を含む方法:
(i)アミノ酸配列が多様なCH2ドメインを含むペプチド又はポリペプチドからなるペプチドライブラリーを作製する工程、
(ii)作製されたライブラリーの中から、CH2ドメインを含むペプチド又はポリペプチドが抗原及びFcγRに対する結合活性を有するが、当該抗原及びFcγRと同時には結合しない、CH2ドメインを含むペプチド又はポリペプチドを選択する工程、
(iii)工程(ii)で選択されたペプチド又はポリペプチドと同一のCH2ドメインを有するFc領域二量体を含むポリペプチドをコードする核酸を含む宿主細胞を培養して、当該Fc領域二量体を含むポリペプチドを発現させる工程、並びに
(iv)前記宿主細胞培養物からFc領域二量体を含むポリペプチドを回収する工程。
〔29〕工程(i)のCH2ドメインを含むペプチド又はポリペプチドが、異なるアミノ酸配列を有する2つのCH2ドメイン(第1のCH2ドメイン及び第2のCH2ドメイン)からなるヘテロ二量体である、〔28〕に記載の方法。
〔30〕工程(i)及び(ii)のCH2ドメインを含むペプチド又はポリペプチドが、Fc領域二量体又はFc領域二量体を含むポリペプチドである、〔28〕又は〔29〕に記載の方法。
〔31〕工程(ii)において、CH2ドメインの熱変性温度が50℃以上のCH2ドメインを含むペプチド又はポリペプチドを選択する工程を更に含む、〔28〕~〔30〕のいずれかに記載の方法。
〔32〕工程(i)のCH2ドメインを含むペプチド又はポリペプチドがIgG型である、〔28〕~〔31〕のいずれかに記載の方法。
〔33〕工程(i)のCH2ドメインを含むペプチド又はポリペプチドが、FcγRに対する結合活性を増強するための、〔14〕~〔17〕および〔21〕に記載のいずれかの改変配列と同一の配列を有する、〔28〕~〔32〕のいずれかに記載の方法。
〔34〕工程(i)のライブラリーが、CH2ドメインのアミノ酸配列が多様化されたライブラリーである、〔28〕~〔33〕のいずれかに記載の方法。
〔35〕工程(i)のライブラリーが、ループ領域のアミノ酸配列が多様化されたライブラリーである、〔28〕~〔34〕のいずれかに記載の方法。
〔36〕多様化されるループ領域のアミノ酸配列が、EUナンバリング231~239、EUナンバリング265~271、EUナンバリング295~300およびEUナンバリング324~337から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸を含む、〔28〕~〔35〕のいずれかに記載の方法。
〔37〕多様化されるループ領域のアミノ酸配列が、第1のFc領域のEUナンバリング265~271およびEUナンバリング295~300、並びに第2のFc領域のEUナンバリング265~271およびEUナンバリング324~332から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸を含む、〔29〕~〔36〕のいずれかに記載の方法。
〔38〕多様化が、抗原に対する結合活性を有するペプチドをランダムに挿入することによる多様化である、〔28〕~〔37〕のいずれかに記載の方法。
Fc領域とFcγRとの結合を示す図である。FcγRは抗体の重鎖CH2領域で結合している。FcγRは紙面奥側から抗体Fc領域と相互作用している。このとき左側のH鎖をHA鎖、右側をHB鎖とする。 IgG分子に2分子のFcγRが結合することが出来ないことを示す図である。X側からFcγRが結合した場合、FabがY側に倒れることによって、2分子目のFcγRはY側から結合することができない。同様に、Y側からFcγRが結合した場合、FabがX側に倒れることによって、2分子目のFcγRはX側から結合することができない。 X側からFcγRが結合し、Y側から第2の抗原が結合するdual binding Fcのコンセプトを示す図である。 Dual binding Fcを有するIgG分子にFcγRと第2の抗原が同時には結合することが出来ないことを示す図である。X側からFcγRが結合した場合、FabがY側に倒れることによって、第2の抗原はY側から結合することができない。同様に、Y側から第2の抗原が結合した場合、FabがX側に倒れることによって、FcγRはX側から結合することができない。 FcγRと第2の抗原が同時には結合することが出来ないため、FcγRと第2の抗原の架橋反応は起こらないことを示す図である。 可変領域(Fab)で結合する第1の抗原とFcγRの架橋反応が起こることを示す図である。 第1の抗原と第2の抗原の架橋反応が起こることを示す図である。 抗体の2つの重鎖のCH2ドメインを介してFcγRは認識されているが、FcγRと相互作用しているアミノ酸は各重鎖において異なることを示す図である。 抗体のFc領域における(A)S239、A330、I332、(B)L234、G236、S298および(C)HA鎖にS239、A330、I332、HB鎖にG236、S298の各残基とFcγRIIIとの相互作用を示す図である。(PDBデータベース:1T89) ヘテロ化2量化体であるYWA/DLEによるX側からのFcγRに対する結合活性の増強を示す各抗体のADCC活性を示す図である。 ライブラリー化するループ領域を示す図である。 ライブラリー化するY側のループ領域を示す図である。 H240-Kn071/H240-Hl076/L73の各ループをライブラリー化した抗体ライブラリーの中から選択された任意のクローンのFcγRIIIaに対する結合活性を天然型IgG1(H240-G1d/H240-G1d/L73)および親ペプチドで(H240-Kn071/H240-Hl076/L73)と比較した図である。 H240-Kn071/H240-Hl076/L73の各ループをライブラリー化した抗体ライブラリーの中から選択された任意のクローンのCH2ドメインの熱変性温度[℃]を天然型IgG1(H240-G1d/H240-G1d/L73)および親ペプチドで(H240-Kn071/H240-Hl076/L73)と比較した図である。 Y側のループ領域にGlyあるいはSerからなるペプチドを挿入した各ループのアミノ酸配列を示す図である。 図15-1の続きを示す図である。 抗体のIntegrin αvβ3に対する結合を評価したELISAの結果を示す図である。 抗体のIntegrin αvβ3に対する結合がFcγRIIIaで阻害されるかどうかを評価した競合ELISAの結果を示す図である。 FcγRIIIaに結合した抗体がIntegrin αvβ3に結合するかどうかを評価したBiacoreのセンサーグラムである。矢印で示された領域において、Integrin αvβ3を相互作用させた。Integrin αvβ3 260nMの条件で相互作用させたときに得られたセンサーグラムからベースラインであるIntegrin αvβ3 0nMの条件で相互作用させたときに得られたセンサーグラムを引いた図を表している。なお、時間0は、Integrin αvβ3 を注入する前を表している。 Fc(YWA-DLE) とFcγRIIIa細胞外領域との複合体の結晶構造全体を示す図である。FcγRIIIaはFc(YWA-DLE)のCH2領域で結合している。 Fc(YWA-DLE) / FcγRIIIa細胞外領域複合体の結晶構造のうちKnobs構造とHoles構造の接合面での相互作用を、観測された電子密度とともに示す図である。 Fc(YWA-DLE) の各重鎖と FcγRIIIa細胞外領域複合体の相互作用を、観測された電子密度とともに示す図である。細線はFcγRIIIa細胞外領域、太線はFc(YWA-DLE)を表す。(i) S239D、A330L、I332Eのアミノ酸置換が導入されたFc(DLE)とFcγRIIIa細胞外領域複合体との相互作用、(ii)L234Y、 G236W、S298Aのアミノ酸置換が導入されたFc(YWA)とFcγRIIIa細胞外領域複合体との相互作用を表している。
 以下の定義は、本明細書において説明する本発明の理解を容易にするために提供される。
 本発明において「抗原結合部位」は、所望の抗原に対して結合活性を有するペプチドであれば特に限定されない。例えば、Fc領域のアミノ酸をランダムに改変し、当該改変されたアミノ酸を有するFc領域の中から、所望の抗原と結合活性を有するFc領域を選択することで得られる部位であってもよいし、あらかじめ所望の抗原に対して結合活性を有していることが知られているぺプチドであってもよい。あらかじめ抗原との結合活性を有することが知られているペプチドとしては、例えば、表1に示したペプチドが挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 本発明における「FcγR結合部位」は、FcγRに対して結合活性を有するペプチドであれば特に限定されない。例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4のようなIgG型のFc領域のFcγR結合部位が含まれ、当該結合部位のアミノ酸を改変してFcγRに対する結合活性が変化したものであっても、FcγRに対して結合活性を有している限り含まれる。
 本発明のFc領域二量体において、「抗原とFcγRとが同時には結合しない」とは、本発明のFc領域二量体に抗原が結合している状態では、FcγRはFc領域二量体に結合することができず、逆にFc領域二量体にFcγRが結合している状態では、抗原はFc領域二量体に結合することができないことを意味する。そのようなFc領域二量体は、特に当該機能を有している限り特に限定されないが、例えば、IgG型のFc領域二量体に存在する2カ所のFcγR結合部位の一方のアミノ酸を、所望の抗原に結合するように改変したFc領域二量体を挙げることができる。このようなFc領域二量体は、抗原若しくはFcγRのどちらか一方の分子が結合すると、その立体的構造が変化し、他方の分子が結合できなくなるものと考えられる。具体的には実施例1に記載のFc領域二量体が挙げられる。また、例えば、FcγRと抗原を認識するアミノ酸が重複する場合、一方の分子がそのアミノ酸に結合すると、他方の分子がそのアミノ酸に結合することができなくなるため、他方の分子は結合できなくなるものと考えられる。
 本発明の「Fc領域二量体」は、2つのFc領域からなる二量体を意味する。当該二量体は、同一のFc領域からなるFc領域ホモ二量体であっても、異なるアミノ酸配列を有する第1のFc領域と第2のFc領域からなるFc領域へテロ二量体であってもよい。ホモ二量体には、Fc領域二量化形成を効率的にすることを目的とした改変や、Fc領域二量体を含むポリペプチドを効率的に精製することを目的とした改変を除いて同じアミノ酸配列から成るFc領域二量体、あるいはFc領域の機能を改善することを目的としない改変を除いて同じアミノ酸から成るFc領域二量体も含まれる。また、FcγR結合部位の結合活性を高めるためには、Fc領域へテロ二量体が好ましく、少なくともCH2領域の配列が異なることが好ましい。
 本発明の「Fc領域二量体」として、例えば、天然型IgG由来のFc領域二量体を用いることができる。ここで、天然型IgGとは、天然に見出されるIgGと同一のアミノ酸配列を包含し、免疫グロブリンガンマ遺伝子により実質的にコードされる抗体のクラスに属するポリペプチドを意味する。例えば天然型ヒトIgGとは天然型ヒトIgG1、天然型ヒトIgG2、天然型ヒトIgG3、天然型ヒトIgG4などを意味する。天然型IgGにはそれから自然に生じる変異体等も含まれる。ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、ヒトIgG4抗体の定常領域としては、遺伝子多型による複数のアロタイプ配列がSequences of proteins of immunological interest, NIH Publication No.91-3242 に記載されているが、本発明においてはそのいずれであっても良い。特にヒトIgG1の配列としては、EUナンバリング356-358番目のアミノ酸配列がDELであってもEEMであってもよい。
 抗体のFc領域としては、例えばIgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgMタイプのFc領域が存在している。本発明の抗体のFc領域は、例えばヒトIgG抗体のFc領域を用いることができ、好ましくはヒトIgG1抗体のFc領域である。本発明のFc領域として、例えば、天然型IgGの定常領域、具体的には、天然型ヒトIgG1を起源とする定常領域(配列番号:49)、天然型ヒトIgG2を起源とする定常領域(配列番号:50)、天然型ヒトIgG3を起源とする定常領域(配列番号:51)、天然型ヒトIgG4を起源とする定常領域(配列番号:52)由来のFc領域を用いることができる(図11)。天然型IgGの定常領域にはそれから自然に生じる変異体等も含まれる。ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、ヒトIgG4抗体の定常領域としては、遺伝子多型による複数のアロタイプ配列がSequences of proteins of immunological interest, NIH Publication No.91-3242 に記載されているが、本発明においてはそのいずれであっても良い。特にヒトIgG1の配列としては、EUナンバリング356-358番目のアミノ酸配列がDELであってもEEMであってもよい。
 また、抗体のFc領域とFcγRとの相互作用の強さはZn2+イオン濃度依存的であることが報告されている(Immunology Letters 143 (2012) 60-69)。Fc領域のZn2+イオン濃度が高いほど、Fc領域とFcgRとの相互作用は増強される。抗体のFc領域のCH3に存在するHis310、His435がZn2+をキレートすることにより、遠位にあるFc領域の各CH2ドメインが開く。これにより、CH2ドメインとFcgRとが相互作用しやすくなり、Fc領域とFcgRの相互作用が増強される。本発明のFc領域の非限定な一態様として、EUナンバリングで表される310位のHis、435位のHis、433位のHisおよび/または434位のAsnにZn2+がキレートされたFc領域が挙げられる。
 本発明において、「Fc領域」は、抗体分子中の、ヒンジ部若しくはその一部、CH2、CH3ドメインからなるフラグメントを含む領域のことをいう。IgGクラスのFc領域は、EU ナンバリング(本明細書ではEU INDEXとも呼ばれる)で、例えば226番目のシステインからC末端、あるいは230番目のプロリンからC末端までを意味するが、これに限定されない。
 本発明において、「ヘテロ二量体」又は「ホモ二量体」とは、好ましくは、Fc領域中のCH2が「ヘテロ二量体」または「ホモ二量体」となっていることを意味する。
 Fc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4モノクローナル抗体等をペプシン等の蛋白質分解酵素にて部分消化した後に、プロテインAカラムまたはプロテインGカラムに吸着された画分を再溶出することによって好適に取得され得る。かかる蛋白分解酵素としてはpH等の酵素の反応条件を適切に設定することにより制限的にFabやF(ab')2を生じるように全長抗体を消化し得るものであれば特段の限定はされず、例えば、ペプシンやパパイン等が例示できる。
 本発明のアミノ酸変異は、単独で用いてもよく複数組み合わせて使用してもよい。
 複数組み合わせて使用する場合、組み合わせる数は特に限定されず、発明の目的を達成できる範囲内で適宜設定することができ、例えば、2個以上30個以下、好ましくは2個以上15個以下である。
 複数組み合わせる場合、Fc領域二量体を構成する2つのFc領域の一方にのみ当該アミノ酸変異を加えてもよく、また2つのFc領域の双方に適宜振り分けて加えてもよい。
 改変される部位は、Fc領域であれば特に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲内で適宜設定することができ、例えばヒンジ領域、CH2領域、CH3領域などである。
 より好ましくは、改変される部位はCH2領域である。なお、CH2領域とはEUナンバリング231番目から340番目、CH3領域とはEUナンバリング341番目から447番目を意味する。
 さらに、CH2領域中のループ領域がより好ましく、具体的には、EUナンバリング231~239、EUナンバリング263~275、EUナンバリング292~302、EUナンバリング323~337が挙げられる。ループ領域としては、EUナンバリング231~239、EUナンバリング265~271、EUナンバリング295~300、EUナンバリング324~337が好ましく、EUナンバリング234~239、EUナンバリング265~271、EUナンバリング295~300、EUナンバリング324~337がより好ましい。更に、EUナンバリング265~271、EUナンバリング295~300、EUナンバリング324~332がより好ましい。
 例えば、ヒトIgG1を起源とするFc領域のアミノ酸配列に対して改変を導入する場合、抗原結合部位のための改変部位としては、例えば、Fc領域のアミノ酸配列に対して改変を導入する場合、EUナンバリング265~271のループ領域、EUナンバリング295~300のループ領域、EUナンバリング324~332のループ領域から選択される1以上の位置におけるアミノ酸残基に改変を加えることができる。
 なお、本発明において「ループ領域」とは、イムノグロブリンのβバレル構造の維持に関与しない残基が存在する領域を意味する。また、アミノ酸残基に改変を加えることには、予め所望の抗原に対して結合活性を有していることが知られているぺプチドを上述の領域に挿入する改変も含まれる。
 FcγR結合部位のための改変部位としては、例えば、ヒトIgG1を起源とする定常領域のアミノ酸配列に対して改変を導入する場合、EUナンバリング118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447から選択される1以上の位置におけるアミノ酸残基に改変を加えることができる。
 より具体的には、ヒトIgG1定常領域のアミノ酸配列に対して改変を導入する場合、EUナンバリング226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447から選択される1以上の位置におけるアミノ酸残基に改変を加えることができる。
 より具体的には、ヒトIgG1定常領域のアミノ酸配列に対して改変を導入する場合、EUナンバリング226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340から選択される1以上の位置におけるアミノ酸残基に改変を加えることができる。
 より具体的には、ヒトIgG1定常領域のアミノ酸配列に対して改変を導入する場合、EUナンバリング234、235、236、237、238、239、265、266、267、268、269、270、271、295、296、298、300、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、356、435、439から選択される1以上の位置におけるアミノ酸残基に改変を加えることができる。
 より具体的には、ヒトIgG1定常領域のアミノ酸配列に対して改変を導入する場合、EUナンバリング234、235、236、237、238、239、265、266、267、268、269、270、271、295、296、298、300、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337から選択される1以上の位置におけるアミノ酸残基に改変を加えることができる。
 本発明においてアミノ酸の改変とは、置換、欠損、付加、挿入、あるいは修飾のいずれか、又はそれらの組み合わせを意味する。本発明においては、アミノ酸の改変はアミノ酸の変異と言い換えることが可能であり、同じ意味で使用される。
 アミノ酸残基を置換する場合には、別のアミノ酸残基に置換することで、例えば次の(a)~(c)のような点について改変する事を目的とする。 (a) シート構造、若しくは、らせん構造の領域におけるポリペプチドの背骨構造;(b) 標的部位における電荷若しくは疎水性、または(c)側鎖の大きさ。
 アミノ酸残基は一般の側鎖の特性に基づいて以下のグループに分類される: (1) 疎水性: ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile; (2) 中性親水性: cys、ser、thr、asn、gln; (3) 酸性: asp、glu; (4) 塩基性: his、lys、arg; (5) 鎖の配向に影響する残基: gly、pro;及び (6) 芳香族性: trp、tyr、phe。
 これらの各グループ内でのアミノ酸残基の置換は保存的置換と呼ばれ、一方、他グループ間同士でのアミノ酸残基の置換は非保存的置換と呼ばれる。
 本発明における置換は、保存的置換であってもよく、非保存的置換であってもよく、また保存的置換と非保存的置換の組合せであってもよい。
 本発明における「ポリペプチド」とは、通常、10アミノ酸程度以上の長さを有するペプチド、およびタンパク質を指す。また、通常、生物由来のポリペプチドであるが、特に限定されず、例えば、人工的に設計された配列からなるポリペプチドであってもよい。また、天然ポリペプチド、あるいは合成ポリペプチド、組換えポリペプチド等のいずれであってもよい。
 本発明のポリペプチドの好ましい例として、ヒトIgG抗体を挙げることができる。抗体としてヒトIgGを用いる場合、そのアイソタイプ(サブクラス)は限定されず、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4などのアイソタイプ(サブクラス)のヒトIgGを用いることが可能である。
 本発明のポリペプチドは、好ましくはヒトIgG1であり、ヒトIgG1のFc領域としては、遺伝子多型による複数のアロタイプ配列がSequences of proteins of immunological interest, NIH Publication No.91-3242に記載されているが、本発明においてはそのいずれであっても良い。特にヒトIgG1の配列としては、EUナンバリング356-358番目のアミノ酸配列がDELであってもEEMであってもよい。
 また本発明のFc領域二量体を含むポリペプチドには、本発明に基づいて導入されたアミノ酸の改変に加え、更に付加的な改変を含むことができる。付加的な改変は、たとえば、アミノ酸の置換、欠損、あるいは修飾のいずれか、あるいはそれらの組み合わせから選択することができる。
 例えば、本発明のFc領域二量体を含むポリペプチドには、さらに当該Fc領域二量体の目的とする機能に実質的な変化を与えない範囲で、任意に改変を加えることができる。本発明のポリペプチドが抗体の場合、重鎖や軽鎖に改変を加えることができる。例えばこのような変異はアミノ酸残基の保存的置換によって行うことができる。また、本発明のポリペプチドの目的とする機能に変化を与えるような改変であっても、当該機能の変化が本発明の目的の範囲内であれば、そのような改変も行うことができる。
 本発明におけるアミノ酸配列の改変には、翻訳後修飾が含まれる。具体的な翻訳後修飾として、糖鎖の付加あるいは欠損を示すことができる。たとえば、IgG1定常領域において、EUナンバリングの297番目のアミノ酸残基は、糖鎖で修飾されたものであることができる。修飾される糖鎖構造は限定されない。一般的に、真核細胞で発現される抗体は、定常領域に糖鎖修飾を含む。したがって、以下のような細胞で発現される抗体は、通常、何らかの糖鎖で修飾される。  ・哺乳動物の抗体産生細胞  ・抗体をコードするDNAを含む発現ベクターで形質転換された真核細胞
 ここに示した真核細胞には、酵母や動物細胞が含まれる。たとえばCHO細胞やHEK293H細胞は、抗体をコードするDNAを含む発現ベクターで形質転換するための代表的な動物細胞である。他方、当該位置に糖鎖修飾が無いものも本発明の抗体に含まれる。定常領域が糖鎖で修飾されていない抗体は、抗体をコードする遺伝子を大腸菌などの原核細胞で発現させて得ることができる。
 本発明において付加的な改変としては、より具体的には、例えばFc領域の糖鎖にシアル酸を付加したものであってもよい(MAbs. 2010 Sep-Oct;2(5):519-27.)。
 本発明のポリペプチドが抗体である場合、抗体定常領域部分に、例えばFcRnに対する結合活性を向上させるアミノ酸置換(J Immunol. 2006 Jan 1;176(1):346-56、J Biol Chem. 2006 Aug 18;281(33):23514-24.、Int Immunol. 2006 Dec;18(12):1759-69.、Nat Biotechnol. 2010 Feb;28(2):157-9.、WO/2006/019447、WO/2006/053301、WO/2009/086320)、抗体のヘテロジェニティーや安定性を向上させるためのアミノ酸置換((WO/2009/041613))を加えてもよい。
 本発明のFc領域二量体あるいは当該Fc領域二量体を含むポリペプチドにおいて、Fc領域二量体をヘテロ二量体とする場合には、互いに異なるアミノ酸を有するポリペプチド同士を会合化させる、あるいは目的のヘテロ二量体あるいは当該へテロ二量体を含むポリペプチドを他のホモ二量体あるいは当該ホモ二量体を含むポリペプチドから分離する必要がある。
 ヘテロ二量体または当該へテロ二量体を含むポリペプチドの会合化には、抗体H鎖の第二の定常領域(CH2)又はH鎖の第三の定常領域(CH3)の界面に電荷的な反発を導入して目的としないH鎖同士の会合を抑制する技術を適用することができる(WO2006/106905)。
 CH2又はCH3の界面に電荷的な反発を導入して意図しないH鎖同士の会合を抑制させる技術において、H鎖の他の定常領域の界面で接触するアミノ酸残基としては、例えばCH3領域におけるEUナンバリング356番目の残基、EUナンバリング439番目の残基、EUナンバリング357番目の残基、EUナンバリング370番目の残基、EUナンバリング399番目の残基、EUナンバリング409番目の残基に相対する領域を挙げることができる。
 より具体的には、例えば、2種のH鎖CH3領域を含む抗体においては、第1のH鎖CH3領域における以下の(1)~(3)に示すアミノ酸残基の組から選択される1組ないし3組のアミノ酸残基が同種の電荷を有する抗体とすることができる; (1)H鎖CH3領域に含まれるアミノ酸残基であって、EUナンバリング356位および439位のアミノ酸残基、 (2)H鎖CH3領域に含まれるアミノ酸残基であって、EUナンバリング357位および370位のアミノ酸残基、 (3)H鎖CH3領域に含まれるアミノ酸残基であって、EUナンバリング399位および409位のアミノ酸残基。
 更に、上記第1のH鎖CH3領域とは異なる第2のH鎖CH3領域における前記(1)~(3)に示すアミノ酸残基の組から選択されるアミノ酸残基の組であって、前記第1のH鎖CH3領域において同種の電荷を有する前記(1)~(3)に示すアミノ酸残基の組に対応する1組ないし3組のアミノ酸残基が、前記第1のH鎖CH3領域における対応するアミノ酸残基とは反対の電荷を有する抗体とすることができる。
 上記(1)~(3)に記載のそれぞれのアミノ酸残基は、会合した際に互いに接近している。当業者であれば、所望のH鎖CH3領域またはH鎖定常領域について、市販のソフトウェアを用いたホモロジーモデリング等により、上記(1)~(3)に記載のアミノ酸残基に対応する部位を見出すことができ、適宜、該部位のアミノ酸残基を改変に供することが可能である。
 上記抗体において、「電荷を有するアミノ酸残基」は、例えば、以下の(X)または(Y)のいずれかの群に含まれるアミノ酸残基から選択されることが好ましい; (X)グルタミン酸(E)、アスパラギン酸(D)、 (Y)リジン(K)、アルギニン(R)、ヒスチジン(H)。
 上記抗体において、「同種の電荷を有する」とは、例えば、2つ以上のアミノ酸残基のいずれもが、上記(a)または(b)のいずれか1の群に含まれるアミノ酸残基を有することを意味する。「反対の電荷を有する」とは、例えば、2つ以上のアミノ酸残基のなかの少なくとも1つのアミノ酸残基が、上記(X)または(Y)のいずれか1の群に含まれるアミノ酸残基を有する場合に、残りのアミノ酸残基が異なる群に含まれるアミノ酸残基を有することを意味する。
 好ましい態様において上記抗体は、第1のH鎖CH3領域と第2のH鎖CH3領域がジスルフィド結合により架橋されていてもよい。  
 本発明において改変に供するアミノ酸残基としては、上述した抗体の可変領域または抗体の定常領域のアミノ酸残基に限られない。当業者であれば、ポリペプチド変異体または異種多量体について、市販のソフトウェアを用いたホモロジーモデリング等により、界面を形成するアミノ酸残基を見出すことができ、会合を制御するように、該部位のアミノ酸残基を改変に供することが可能である。
 本発明の異なるアミノ酸配列を有する2つのFc領域からなるFc領域へテロ二量体あるいは当該へテロ二量体を有するポリペプチドの会合化には更に他の公知技術を用いることもできる。抗体の一方のH鎖の可変領域に存在するアミノ酸側鎖をより大きい側鎖(knob; 突起)に置換し、もう一方のH鎖の相対する可変領域に存在するアミノ酸側鎖をより小さい側鎖(hole; 空隙)に置換することによって、突起が空隙に配置され得るようにすることで効率的にFc領域を有する異なるアミノ酸を有するポリペプチド同士の会合化を起こすことができる(WO1996/027011、Ridgway JB et al., Protein Engineering (1996) 9, 617-621、Merchant AM et al. Nature Biotechnology (1998) 16, 677-681)。
 これに加えて、Fc領域へテロ二量体あるいは当該へテロ二量体を含むポリペプチドの会合化には更に他の公知技術を用いることもできる。抗体の一方のH鎖のCH3の一部をその部分に対応するIgA由来の配列にし、もう一方のH鎖のCH3の相補的な部分にその部分に対応するIgA由来の配列を導入したstrand-exchange engineered domain CH3を用いることで、異なる配列を有するポリペプチドの会合化をCH3の相補的な会合化によって効率的に引き起こすことができる (Protein Engineering Design & Selection, 23; 195-202, 2010)。この公知技術を使っても効率的にFc領域へテロ二量体あるいは当該へテロ二量体を含むポリペプチドの会合化を起こすことができる。
 他にもFc領域へテロ二量体を含むポリペプチドには、WO2011/028952に記載の抗体のCH1とCLの会合化、VH、VLの会合化を利用したヘテロ二量化抗体作製技術を用いることもできる。
 また、効率的にヘテロ二量化ポリペプチドを効率的に形成することができない場合であっても、ヘテロ二量化ポリペプチドをホモ二量化ポリペプチドと分離、精製することによってもヘテロ二量化ポリペプチドを得ることが可能である。互いに配列の異なる第一のFc領域および第二のFc領域を含むヘテロ二量化ポリペプチドを作製する際には、2つの第一のFc領域を含むポリペプチドのみからなるホモ二量化ポリペプチド、2つの第二のFc領域を含むポリペプチドのみからなるホモ二量化ポリペプチドが不純物と混入する。これら2種類のホモ二量化ポリペプチドを効率的に除去する方法として、公知技術を使うことができる。2種類のH鎖の可変領域にアミノ酸置換を導入し等電点の差を付与することで、2種類のホモ体と目的のヘテロ二量化抗体をイオン交換クロマトグラフィーで精製可能にする方法が報告されている(WO2007114325)。ヘテロ二量化抗体を精製する方法として、これまでに、プロテインAに結合するマウスIgG2aのH鎖とプロテインAに結合しないラットIgG2bのH鎖からなるヘテロ二量化抗体をプロテインAを用いて精製する方法が報告されている(WO98050431, WO95033844)。
 また、IgGとProteinAの結合部位であるEUナンバリング435番目および436番目のアミノ酸残基を、Tyr、HisなどのProteinAへの結合力の異なるアミノ酸に置換したH鎖を用いることで、各H鎖とProtein Aとの相互作用を変化させ、Protein Aカラムを用いることで、ヘテロ二量化抗体のみを効率的に精製することもできる。
 これらの置換、技術を複数、例えば2個以上組合せて用いることができる。またこれらの改変は、第一のFc領域を含むポリペプチドと第二のFc領域を含むポリペプチドに適宜別々に加えることができる。なお、本発明のポリペプチドは、上記改変が加えられたものをベースにして作製したものであってもよい。
 アミノ酸配列の改変は、当分野において公知の種々の方法により行うことができる。これらの方法には、次のものに限定されるわけではないが、部位特異的変異誘導法(Hashimoto-Gotoh, T, Mizuno, T, Ogasahara, Y, and Nakagawa, M. (1995) An oligodeoxyribonucleotide-directed dual amber method for site-directed mutagenesis. Gene 152, 271-275、Zoller, MJ, and Smith, M.(1983) Oligonucleotide-directed mutagenesis of DNA fragments cloned into M13 vectors.Methods Enzymol. 100, 468-500、Kramer,W, Drutsa,V, Jansen,HW, Kramer,B, Pflugfelder,M, and Fritz,HJ(1984) The gapped duplex DNA approach to oligonucleotide-directed mutation construction. Nucleic Acids Res. 12, 9441-9456、Kramer W, and Fritz HJ(1987) Oligonucleotide-directed construction of mutations via gapped duplex DNA Methods. Enzymol. 154, 350-367、Kunkel,TA(1985) Rapid and efficient site-specific mutagenesis without phenotypic selection.Proc Natl Acad Sci U S A. 82, 488-492)、PCR変異法、カセット変異法等の方法により行うことができる。
 本発明において、Fcγレセプター(本明細書ではFcγ受容体、FcγRまたはFcγレセプターと記載することがある)とは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4のFc領域に結合し得る受容体をいい、実質的にFcγレセプター遺伝子にコードされるタンパク質のファミリーのいかなるメンバーをも意味する。ヒトでは、このファミリーには、アイソフォームFcγRIa、FcγRIbおよびFcγRIcを含むFcγRI(CD64);アイソフォームFcγRIIa(アロタイプH131(H型)およびR131(R型)を含む)、FcγRIIb(FcγRIIb-1およびFcγRIIb-2を含む)およびFcγRIIcを含むFcγRII(CD32);およびアイソフォームFcγRIIIa(アロタイプV158およびF158を含む)およびFcγRIIIb(アロタイプFcγRIIIb-NA1およびFcγRIIIb-NA2を含む)を含むFcγRIII(CD16)、並びにいかなる未発見のヒトFcγR類またはFcγRアイソフォームまたはアロタイプも含まれるが、これらに限定されるものではない。FcγRは、ヒト、マウス、ラット、ウサギおよびサル由来のものが含まれるが、これらに限定されず、いかなる生物由来でもよい。マウスFcγR類には、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)およびFcγRIII-2(CD16-2)、並びにいかなる未発見のマウスFcγR類またはFcγRアイソフォームまたはアロタイプも含まれるが、これらに限定されない。こうしたFcγ受容体の好適な例としてはヒトFcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32)、FcγRIIb(CD32)、FcγRIIIa(CD16)及び/又はFcγRIIIb(CD16)が挙げられる。
 FcγRには、ITAM(Immunoreceptor tyrosine-based activation motif)をもつ活性型レセプターとITIM(immunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif)をもつ抑制型レセプターが存在する。FcγRはFcγRI、FcγRIIa R、FcγRIIa H、FcγRIIIa、FcγRIIIbの活性型FcγRと、FcγRIIbの抑制型FcγRに分類される。
 FcγRIのポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、それぞれNM_000566.3及びNP_000557.1に、  FcγRIIaのポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、それぞれBC020823.1及びAAH20823.1に、  FcγRIIbのポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、それぞれBC146678.1及びAAI46679.1に、  FcγRIIIaのポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、それぞれBC033678.1及びAAH33678.1に、及び  FcγRIIIbのポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、それぞれBC128562.1及びAAI28563.1に記載されている(RefSeq登録番号)。  尚、FcγRIIaには、FcγRIIaの131番目のアミノ酸がヒスチジン(H型)あるいはアルギニン(R型)に置換された2種類の遺伝子多型が存在する(J. Exp. Med, 172, 19-25, 1990)。また、FcγRIIbには、FcγRIIbの232番目のアミノ酸がイソロイシン(I型)あるいはスレオニン (T型)に置換された2種類の遺伝子多型が存在する(Arthritis. Rheum. 46: 1242-1254 (2002))。また、FcγRIIIaには、FcγRIIIaの158番目のアミノ酸がバリン(V型)あるいはフェニルアラニン(F型)に置換された2種類の遺伝子多型が存在する(J. Clin. Invest. 100(5): 1059-1070 (1997))。また、FcγRIIIbには、NA1型、NA2型の2種類の遺伝子多型が存在する(J. Clin. Invest. 85: 1287-1295 (1990))。  
 本発明において、本発明のFc領域二量体あるいは当該Fc領域二量体を含むポリペプチドの抗原結合部位またはFcγR結合部位が、それぞれ所望の抗原または各種Fcγレセプターに対して結合活性を有するかどうかは、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)現象を利用した相互作用解析機器であるBiacore (GE Healthcare) を用いて測定することができる。BiacoreはBiacore T100、T200、X100、A100、4000、3000、2000、1000、Cなどいずれの機種も含まれる。センサーチップにはCM7、CM5、CM4、CM3、C1、SA、NTA、L1、HPA,Auチップ等のBiacore用のセンサーチップのいずれも用いることができる。ランニングバッファーにはHBE-EP+に加えて、HEPES、リン酸、ACES、Tris、クエン酸などでpH7.4等の中性付近のpHに調整したバッファーを用いることができる。測定温度は4-37℃の範囲で測定可能である。センサーチップ上にアミンカップリング、ジスルフィドカップリング、アルデヒドカップリング等のカップリング方法でで抗体を補足するProteinA、ProteinG、ProteinL、抗ヒトIgG抗体、抗ヒトIgG-Fab、抗ヒトL鎖抗体、抗ヒトFc抗体、抗原タンパク質、抗原ペプチド等の抗体補足用のタンパク質を固定化する。そこへFcγレセプターI、IIa R型、IIa H型、IIb、IIIa F型、V型、IIIbなどの各種Fcγレセプターをアナライトとして流し、相互作用を測定し、センサーグラムを取得する。このときのFcγレセプターの濃度は測定するサンプルのKD等の相互作用の強さに合わせて、数uMから数pMの範囲で実施することができる。
 また、抗体ではなく、各種Fcγレセプターをセンサーチップ上に固定化し、そこへ評価したい抗体サンプルを相互作用させることも可能である。相互作用のセンサーグラムから算出した解離定数(KD)値、あるいは抗体サンプルを作用させる前後のセンサーグラムの増加の程度から本発明のFc領域二量体あるいは当該Fc領域二量体を含むポリペプチドの抗原結合部位またはFcγR結合部位が、それぞれ所望の抗原または各種Fcγレセプターに対する結合活性を有しているかどうかを判断することができる。
 具体的には、FcγR結合部位のFcγレセプターに対する結合活性はELISAやFACS(fluorescence activated cell sorting)の他、ALPHAスクリーン(Amplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay)や表面プラズモン共鳴(SPR)現象を利用したBIACORE法等によって測定することができる(Proc.Natl.Acad.Sci.USA (2006) 103 (11), 4005-4010)。
 ALPHAスクリーンは、ドナーとアクセプターの2つのビーズを使用するALPHAテクノロジーによって下記の原理に基づいて実施される。ドナービーズに結合した分子が、アクセプタービーズに結合した分子と生物学的に相互作用し、2つのビーズが近接した状態の時にのみ、発光シグナルを検出される。レーザーによって励起されたドナービーズ内のフォトセンシタイザーは、周辺の酸素を励起状態の一重項酸素に変換する。一重項酸素はドナービーズ周辺に拡散し、近接しているアクセプタービーズに到達するとビーズ内の化学発光反応を引き起こし、最終的に光が放出される。ドナービーズに結合した分子とアクセプタービーズに結合した分子が相互作用しないときは、ドナービーズの産生する一重項酸素がアクセプタービーズに到達しないため、化学発光反応は起きない。
 例えば、ドナービーズにビオチン標識された被検ポリペプチドがドナービーズ上のストレプトアビジンに結合され、アクセプタービーズにはグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)でタグ化されたFcγレセプターが結合される。競合するポリペプチドの非存在下では、被検ポリペプチドとFcγレセプターとは相互作用し520-620 nmのシグナルを生ずる。タグ化されていないポリペプチドは、被検ポリペプチドとFcγレセプター間の相互作用と競合する。競合の結果表れる蛍光の減少を定量することによって相対的な結合活性が決定され得る。ポリペプチドをSulfo-NHS-ビオチン等を用いてビオチン化することは公知である。FcγレセプターをGSTでタグ化する方法としては、FcγレセプターをコードするポリヌクレオチドとGSTをコードするポリヌクレオチドをインフレームで融合した融合遺伝子を発現可能なベクターに保持した細胞等において発現し、グルタチオンカラムを用いて精製する方法等が適宜採用され得る。得られたシグナルは例えばGRAPHPAD PRISM(GraphPad社、San Diego)等のソフトウエアを用いて非線形回帰解析を利用する一部位競合(one-site competition)モデルに適合させることにより好適に解析される。
 なお、タグ化はGSTに限らず、ヒスチジンタグ、MBP、CBP、Flagタグ、HAタグ、V5タグ、c-mycタグなどのどのようなタグででよく、限定されない。また、被検ポリペプチドのドナービーズへの結合については、ビオチンーストレプトアビジン反応を利用した結合に限らればい。特に、被検ポリペプチドが抗体、Fc融合ポリペプチドなどのFcを含む場合は、ドナービーズ上のProtein A、Protein GなどのFc認識タンパク質を介して被検ポリぺプチドを結合させる方法が考えられる。  
 相互作用を観察する物質の一方(リガンド)をセンサーチップの金薄膜上に固定し、センサーチップの裏側から金薄膜とガラスの境界面で全反射するように光を当てると、反射光の一部に反射強度が低下した部分(SPRシグナル)が形成される。相互作用を観察する物質の他方(アナライト)をセンサーチップの表面に流しリガンドとアナライトが結合すると、固定化されているリガンド分子の質量が増加し、センサーチップ表面の溶媒の屈折率が変化する。この屈折率の変化により、SPRシグナルの位置がシフトする(逆に結合が解離するとシグナルの位置は戻る)。Biacoreシステムは上記のシフトする量、すなわちセンサーチップ表面での質量変化を縦軸にとり、質量の時間変化を測定データとして表示する(センサーグラム)。センサーグラムからセンサーチップ表面に補足したリガンドに対するアナライトの結合量(アナライトを相互作用させた前後でのセンサーグラム上でのレスポンスの変化量)が求められる。ただし、結合量はリガンドの量にも依存するため、比較する際にはリガンドの量を本質的に同じ量にしたとみなせる条件下で比較する必要がある。また、センサーグラムのカーブからカイネティクス:結合速度定数(ka)と解離速度定数(kd)が、当該定数の比からアフィニティー(KD)が求められる。BIACORE法では阻害測定法も好適に用いられる。阻害測定法の例はProc.Natl.Acad.Sci.USA (2006) 103 (11), 4005-4010において記載されている。
 本発明において、FcγRに対して結合活性を有する、あるいは、アミノ酸配列の改変によってFcγRに対する結合活性を維持しているかどうかは、天然IgGに対してFcγRIaが80%、他のレセプターは50%以上のKD値を有するものが好ましい。このようなKD値を有するFc領域二量体または当該Fc領域二量体を含むポリペプチドであれば、FcγRとの相互作用を維持することができる。
 本発明のFc領域二量体または当該Fc領域二量体を含むポリペプチドにおいて、「抗原及びFcγRが同時には結合しない」かどうかは、所望の抗原およびFcγRに対して結合活性を有していることを確認した後、当該結合活性を有するFc領域二量体または当該Fc領域二量体を含むポリペプチドに対して、予め当該抗原若しくはFcγRのいずれか一方を結合させた後で、残りの一方に対して結合活性を有するかどうかを上述の方法を用いて測定することで確認することができる。
 また、ELISAプレートあるいはセンサーチップに固定した抗原若しくはFcγRのいずれか一方への結合が、他方を溶液中に添加することで阻害されるかどうかを測定することによって確認することができる。
 本発明の「FcγR結合部位が天然型IgG1より高いFcγRに対する結合活性を有する」とは、比較するFcγR結合部位を有するFc領域二量体あるいは当該二量体を含むポリペプチドの量を本質的に同じにしてアッセイを行った時に、天然型IgG1よりも本質的により強い結合活性でFcγRと結合することをいう。
 例えば、上記の測定法で測定したKD値において、KD値比(天然型IgG1のKD値/Fc領域二量体あるいは当該二量体を含むポリペプチドのKD値)は、好ましくは1.1以上、1.2以上、1.3以上、1.5以上、1.8以上、2以上、3以上である。さらに好ましくは、5以上、10以上、100以上、250以上、1000以上である。尚、本明細書においてKD値比はKD ratioともいう。  また、上記の測定法で測定したKD値において、KD値が1 pM以上低下していることが好ましく、10 pM、100 pM、1 nM以上、2 nM以上、3 nM以上、5 nM以上、10 nM以上、20 nM以上、50 nM以上、100 nM以上、1μM以上低下していることがさらに好ましい。  また、上記の測定法で測定したKD値において、KD値が5μM以下であることが好ましく、3μM以下、1μM以下、0.5μM以下、0.1μM以下、0.01μM以下、1 nM以下、0.1 nM以下、0.001 nM以下、1 pM以下であることが更に好ましい。
 本発明において、当該Fc領域二量体のFcγR結合部位のFcγレセプターに対する結合活性を増強させるために、前記Fc領域二量体を構成する第一のFc領域及び/又は第二のFc領域のアミノ酸配列において、アミノ酸改変が導入されていてもよい。導入される当該アミノ酸変異の種類や範囲は特に限定されるものではない。
 Fcγレセプターが、FcγRIIIaである場合には、前記Fc領域を構成する第一のポリペプチド及び/又は第二のポリペプチドのアミノ酸配列において、明細書表2に記載されたアミノ酸変異(その変異が一方のH鎖に導入されたヘテロ二量化抗体において、FcγRIIIaに対する結合活性が、天然IgGに対して50%以上のKD値を有する改変)からなる群より選択される、少なくとも一つ以上のアミノ酸変異が導入されていてもよい。
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 He/Conは変異を導入したGpH7-B3 variantを一方のH鎖に用いたヘテロ二量化抗体GpH7-A5/GpH7-B3 variant/GpL16-k0のFcγRIIIaに対する結合活性を、変異を導入していないGpH7-B3を用いたヘテロ二量化抗体GpH7-A5/GpH7-B3/GpL16-k0(配列番号:3、4、5)のFcγRIIIaに対する結合活性で割り、100をかけた値である。なお、各GpH7-B3 variantの名称は、A_Bと表現し、Aには改変する残基のEUナンバリング、アミノ酸の種類の情報を一文字表記で記載し、Bには置換後のアミノ酸の情報を示した。例えばEUナンバリング234番目のLeuをGlyにしたB3_variantはL234_01Gと命名される。また、置換後のアミノ酸の情報に関しては一文字表記の前にそのアミノ酸特有の数値を便宜上記載した。具体的には、Glyの場合は01G、Alaの場合は02A、Valの場合は03V、Pheの場合は04F、Proの場合は05P、Metの場合は06M、Ileの場合は07I、Leuの場合は08L、Aspの場合は09D、Gluの場合は10E、Lysの場合は11K、Argの場合は12R、Serの場合は13S、Thrの場合は14T、Tyrの場合は15Y、Hisの場合は16H、Asnの場合は18N、Glnの場合は19Q、Trpの場合は20Wという記号を用いた。
 更により強い結合活性を得るためには、Fc領域を構成する第一のポリペプチド及び/又は第二のポリペプチドのアミノ酸配列において、明細書表3に記載されたアミノ酸変異(その変異が一方のH鎖に導入されたヘテロ二量化抗体において、FcγRIaに対する結合活性が、天然IgGに対して80%以上のKD値を有し、FcγRIIa、FcγRIIb及びFcγRIIIaの各レセプターに対する結合活性が、天然IgGと比較して50%以上のKD値を有する改変)からなる群より選択される、少なくとも一つ以上のアミノ酸変異が導入されていてもよい。
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 また、改変されるアミノ酸の位置の組合せとしては、例えば、EUナンバリング234番目のLeu、EUナンバリング235番目のLeu、EUナンバリング236番目のGly、EUナンバリング239番目のSer、EUナンバリング268番目のHis、EUナンバリング270番目のAsp、EUナンバリング298番目のSer、EUナンバリング326番目のLys、EUナンバリング330番目のAla、EUナンバリング332番目のIle、EUナンバリング334番目のLysからなる群より選択されるアミノ酸改変を組み合わせることで、Fcγレセプターに対する結合活性を高めることができる。具体的には、例えば、EUナンバリング234番目のアミノ酸LのYへの置換、EUナンバリング235番目のアミノ酸LのY又はQへの置換、EUナンバリング236番目のアミノ酸GのWへの置換、EUナンバリング239番目のアミノ酸SのD又はMへの置換、EUナンバリング268番目のアミノ酸HのDへの置換、EUナンバリング270番目のアミノ酸DのEへの置換、EUナンバリング298番目のアミノ酸SのAへの置換、EUナンバリング326番目のアミノ酸KからDへの置換、EUナンバリング330番目のアミノ酸AのL又はMへの置換、EUナンバリング332番目のアミノ酸IのEへの置換、及びEUナンバリング334番目のアミノ酸KのEへの置換からなる群より選択されるアミノ酸改変が挙げられる。ヘテロFc領域二量体の場合には、どちらか一方のFc領域のアミノ酸配列において、EUナンバリング234番目のアミノ酸LのYへの置換、EUナンバリング235番目のアミノ酸LのY又はQへの置換、EUナンバリング236番目のアミノ酸GのWへの置換、EUナンバリング239番目のアミノ酸SのMへの置換、EUナンバリング268番目のアミノ酸HのDへの置換、EUナンバリング270番目のアミノ酸DのEへの置換、及びEUナンバリング298番目のアミノ酸SのAへの置換からなる群より選択されるアミノ酸改変を組み合せて導入し、もう一方のFc領域のアミノ酸配列において、EUナンバリング239番目のアミノ酸SのDへの置換、EUナンバリング270番目のアミノ酸DのEへの置換、EUナンバリング326番目のアミノ酸KのDへの置換、EUナンバリング330番目のアミノ酸AのL又はMへの置換、EUナンバリング332番目のアミノ酸IのEへの置換、及びEUナンバリング334番目のアミノ酸KのEへの置換からなる群より選択される、少なくとも一つ以上のアミノ酸改変を組み合せて導入することでFcγレセプターに対する結合活性を高めることができる。
 より具体的には、例えば、Fc領域二量体のどちらか一方のFc領域が、(i)~(iii)いずれかのアミノ酸改変の組合せを有し、もう一方のFc領域が、(iv)~(vi)いずれかのアミノ酸改変の組合せを有するFc領域二量体を用いることで、Fcγレセプターに対する結合活性を高めることができる。
(i)EUナンバリング234番目のアミノ酸LのYへの置換、EUナンバリング236番目のアミノ酸GのWへの置換、及びEUナンバリング298番目のアミノ酸SのAへの置換
(ii) EUナンバリング234番目のアミノ酸LのYへの置換、EUナンバリング235番目のアミノ酸LのYへの置換、EUナンバリング236番目のアミノ酸GのWへの置換、EUナンバリング268番目のアミノ酸HのDへの置換、及びEUナンバリング298番目のアミノ酸SのAへの置換、及び、
(iii)EUナンバリング234番目のアミノ酸LのYへの置換、EUナンバリング235番目のアミノ酸LのQへの置換、EUナンバリング236番目のアミノ酸GのWへの置換、EUナンバリング239番目のアミノ酸SのMへの置換、EUナンバリング268番目のアミノ酸HのDへの置換、EUナンバリング270番目のアミノ酸DのEへの置換、及びEUナンバリング298番目のアミノ酸SのAへの置換、
(iv) EUナンバリング239番目のアミノ酸SのDへの置換、EUナンバリング330番目のアミノ酸AのLへの置換、及びEUナンバリング332番目のアミノ酸IのEへの置換
(v) EUナンバリング326番目のアミノ酸KのDへの置換、EUナンバリング330番目のアミノ酸AのMへの置換、及びEUナンバリング334番目のアミノ酸KのEへの置換
(vi) EUナンバリング270番目のアミノ酸DのEへの置換、EUナンバリング326番目のアミノ酸KのDへの置換、EUナンバリング330番目のアミノ酸AのMへの置換、及びEUナンバリング334番目のアミノ酸KのEへの置換。
 本明細書において、ポリペプチドの物理化学的安定性は、例えばポリペプチドの熱力学的な安定性を意味し、ポリペプチドの熱力学的な安定性は、例えばCH2領域のTm値などを指標として判断することができる。Tm値はCD(円二色性)、DSC(示査走査型熱量計)、DSF(示査走査型蛍光定量法)により測定することが可能である。
 CDは昇温にともなう平均残基モル楕円率(θ)の変化を観測することにより、Tm値を算出する。測定機器としては、例えば円二色性分散計(日本分光)があげられる。適当な一波長(例えば208 nmや222 nm)において温度を上昇させながらCDスペクトルを測定すると、ある温度でθが上昇し、それ以降の温度では一定の値となる。このとき、低温時のθと高温時のθの中点の値をとる温度をTmとする。測定には、例えば、クエン酸、トリス、リン酸溶液などで調製されたタンパク質溶液を用いることが可能であり、数百ug/mLの濃度で測定に用いることができる。
 DSCは昇温にともなう熱量変化を観測することにより、Tm値を算出する。測定機器としては、MicroCal VP-DSC、Micro Cal Capillary DSC(いずれもDKSHジャパン)があげられる。測定セルにタンパク質溶液ならびに緩衝液を封入し、温度を上昇させながらセル間の温度差を測定すると、ある温度を境に吸熱反応へと変化する。このときの温度をTmとする。測定には、例えば、クエン酸緩衝液、TBS、PBS、ヒスチジン緩衝液などで調製されたタンパク質溶液を用いることが可能であり、数十ug/mLから数百ug/mLの濃度で測定に用いることができる。
 DSFは疎水性残基に特異的に結合する蛍光試薬(例えばSYPRO Orange)を用いて、昇温にともなう疎水性残基の露出を観測することにより、Tm値を算出する。タンパク質溶液と蛍光試薬を適当な割合で混合し、RT-PCR装置により温度を上昇させながら蛍光強度を測定すると、ある温度で蛍光強度の上昇が観測される。このときの温度をTmとする。測定機器としては、例えばRotor-Gene Q(QIAGEN)、CFX96リアルタイムPCR解析システム(Bio-Rad)があげられる。測定には、例えば、PBS、ヒスチジン緩衝液などで調製されたタンパク質溶液を用いることが可能であり、数十ug/mLから数百ug/mLの濃度で測定に用いることができる。
 本明細書において、ポリペプチドの物理学的安定性は、例えば上記の測定方法に基づいて求めたFc領域中のCH2領域のTm値が50℃以上であることが好ましく、55℃以上がより好ましく、さらには、60℃以上がより好ましい。
 特に、Fc領域二量体のFcγR結合領域の、FcγRIIIaに対する結合活性を増強させる場合、前記Fc領域二量体を構成する第一のFc領域及び/又は第二のFc領域のアミノ酸配列において、明細書表4-1~表4-4(その変異が一方のH鎖に導入されたヘテロ二量化抗体において、FcγRIIIaに対する結合活性が、天然IgGに対して50%以上のKD値を有する改変のうち、ホモ二量化抗体のTmが60℃以上であった改変体のリスト)に記載されたアミノ酸改変からなる群より選択される、少なくとも一つ以上のアミノ酸改変が導入されていてもよい。
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 本発明において、アミノ酸改変が導入された第一のFc領域及び第二のFc領域の組み合わせは特に限定されるものではないが、配列番号:2~4、6~43、及び45~48に記載されたポリペプチドから選択された、異なる種類/又は同一の種類のポリペプチドの組み合わせを例示することができる。又、本願の実施例に記載された、第一のFc領域及び第二のFc領域を含むポリペプチドの組み合わせ(2つの抗体のH鎖及び1つの抗体のL鎖の組み合わせ)を好ましい例として挙げることができる。
 本発明のポリペプチドは、抗原結合分子であってもよい。本発明において、抗体結合分子の種類は特に特定されるものではないが、好ましい例としては、抗体、多重特異性抗体、ペプチドFc融合タンパク質、又はスキャフォールドFc融合タンパク質などのFc融合分子を例示することができる。
 さらに、本発明のポリペプチドとして抗体を提供する。  本発明における「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、所望の生物学的活性を示す限り、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、抗体変異体、抗体断片、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、キメラ抗体、ヒト化抗体等、如何なる抗体も含まれる。
 本発明の抗体は、抗原の種類、抗体の由来などは限定されず、いかなる抗体でもよい。抗体の由来としては、特に限定されないが、ヒト抗体、マウス抗体、ラット抗体、ウサギ抗体などを挙げることができる。
 抗体を作製する方法は当業者によく知られているが、例えばモノクローナル抗体の場合、ハイブリドーマ法(Kohler and Milstein, Nature 256:495 (1975))、組換え方法(米国特許第4,816,567号)により製造してもよい。また、ファージ抗体ライブラリーから単離してもよい(Clackson et al., Nature 352:624-628 (1991) ; Marks et al., J.Mol.Biol. 222:581-597 (1991))。また、単一のB細胞クローンから単離してもよい (N. Biotechnol. 28(5): 253-457 (2011))。
 ヒト化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称される。具体的には、ヒト以外の動物、たとえばマウス抗体のCDRをヒト抗体に移植したヒト化抗体などが公知である。ヒト化抗体を得るための一般的な遺伝子組換え手法も知られている。具体的には、マウスの抗体のCDRをヒトのFRに移植するための方法として、たとえばOverlap Extension PCRが公知である。
 3つのCDRと4つのFRが連結された抗体可変領域をコードするDNAとヒト抗体定常領域をコードするDNAとをインフレームで融合するように発現ベクター中に挿入することによって、ヒト化抗体発現用ベクターが作成できる。該組込みベクターを宿主に導入して組換え細胞を樹立した後に、該組換え細胞を培養し、該ヒト化抗体をコードするDNAを発現させることによって、該ヒト化抗体が該培養細胞の培養物中に産生される(欧州特許公開EP 239400、国際公開WO1996/002576参照)。
 必要に応じ、再構成ヒト抗体のCDRが適切な抗原結合部位を形成するようにFRのアミノ酸残基を置換することもできる。たとえば、マウスCDRのヒトFRへの移植に用いたPCR法を応用して、FRにアミノ酸配列の変異を導入することができる。
 ヒト抗体遺伝子の全てのレパートリーを有するトランスジェニック動物(国際公開WO1993/012227、WO1992/003918、WO1994/002602、WO1994/025585、WO1996/034096、WO1996/033735参照)を免疫動物とし、DNA免疫により所望のヒト抗体が取得され得る。
 さらに、ヒト抗体ライブラリーを用いて、パンニングによりヒト抗体を取得する技術も知られている。例えば、ヒト抗体のV領域が一本鎖抗体(scFv)としてファージディスプレイ法によりファージの表面に発現される。抗原に結合するscFvを発現するファージが選択され得る。選択されたファージの遺伝子を解析することにより、抗原に結合するヒト抗体のV領域をコードするDNA配列が決定できる。抗原に結合するscFvのDNA配列を決定した後、当該V領域配列を所望のヒト抗体C領域の配列とインフレームで融合させた後に適当な発現ベクターに挿入することによって発現ベクターが作製され得る。当該発現ベクターを上記に挙げたような好適な発現細胞中に導入し、該ヒト抗体をコードする遺伝子を発現させることにより当該ヒト抗体が取得される。これらの方法は既に公知である(国際公開WO1992/001047、WO1992/020791、WO1993/006213、WO1993/011236、WO1993/019172、WO1995/001438、WO1995/015388参照)。  
 本発明の抗体を構成する可変領域は、任意の抗原を認識する可変領域であることが出来る。
 本発明において、「抗原」は、Fc領域以外の領域(例えば可変領域)に結合する抗原を第1の抗原、Fc領域に結合する抗原を第2の抗原と定める。本明細書において抗原は特に限定されず、どのような抗原でもよい。抗原の例としては、 17-IA、4-1 BB、4Dc、6-ケト-PGF1a、8-イソ-PGF2a、8-オキソ-dG、A1アデノシン受容体、A33、ACE、ACE-2、アクチビン、アクチビンA、アクチビンAB、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンRIA、アクチビンRIA ALK-2、アクチビンRIB ALK-4、アクチビンRIIA、アクチビンRIIB、ADAM、ADAM10、ADAM12、ADAM15、ADAM17/TACE、ADAM8、ADAM9、ADAMTS、ADAMTS4、ADAMTS5、アドレシン(Addressins)、アディポネクチン、ADPリボシルシクラーゼ-1、aFGF、AGE、ALCAM、ALK、ALK-1、ALK-7、アレルゲン、α1-アンチキモトリプシン、α1-アンチトリプシン、α-シヌクレイン、α-V/β-1アンタゴニスト、アミニン(aminin)、アミリン、アミロイドβ、アミロイド免疫グロブリン重鎖可変領域、アミロイド免疫グロブリン軽鎖可変領域、アンドロゲン、ANG、アンジオテンシノーゲン、アンジオポエチンリガンド-2、抗Id、アンチトロンビンIII、炭疽、APAF-1、APE、APJ、アポA1、アポ血清アミロイドA、アポ-SAA、APP、APRIL、AR、ARC、ART、アルテミン(Artemin)、ASPARTIC、心房性ナトリウム利尿因子、心房性ナトリウム利尿ペプチド、心房性ナトリウム利尿ペプチドA、心房性ナトリウム利尿ペプチドB、心房性ナトリウム利尿ペプチドC、av/b3インテグリン、Axl、B7-1、B7-2、B7-H、BACE、BACE-1、バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)防御抗原、Bad、BAFF、BAFF-R、Bag-1、BAK、Bax、BCA-1、BCAM、Bcl、BCMA、BDNF、b-ECGF、β-2-ミクログロブリン、βラクタマーゼ、bFGF、BID、Bik、BIM、BLC、BL-CAM、BLK、Bリンパ球刺激因子(BLyS)、BMP、BMP-2 (BMP-2a)、BMP-3 (オステオゲニン(Osteogenin))、BMP-4 (BMP-2b)、BMP-5、BMP-6 (Vgr-1)、BMP-7 (OP-1)、BMP-8 (BMP-8a)、BMPR、BMPR-IA (ALK-3)、BMPR-IB (ALK-6)、BMPR-II (BRK-3)、BMP、BOK、ボンベシン、骨由来神経栄養因子(Bone-derived neurotrophic factor)、ウシ成長ホルモン、BPDE、BPDE-DNA、BRK-2、BTC、Bリンパ球細胞接着分子、C10、C1阻害因子、C1q、C3、C3a、C4、C5、C5a(補体5a)、CA125、CAD-8、カドヘリン-3、カルシトニン、cAMP、炭酸脱水酵素-IX、癌胎児抗原(CEA)、癌関連抗原(carcinoma-associated antigen)、カルジオトロフィン-1、カテプシンA、カテプシンB、カテプシンC/DPPI、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンH、カテプシンL、カテプシンO、カテプシンS、カテプシンV、カテプシンX/Z/P、CBL、CCI、CCK2、CCL、CCL1/I-309、CCL11/エオタキシン、CCL12/MCP-5、CCL13/MCP-4、CCL14/HCC-1、CCL15/HCC-2、CCL16/HCC-4、CCL17/TARC、CCL18/PARC、CCL19/ELC、CCL2/MCP-1、CCL20/MIP-3-α、CCL21/SLC、CCL22/MDC、CCL23/MPIF-1、CCL24/エオタキシン-2、CCL25/TECK、CCL26/エオタキシン-3、CCL27/CTACK、CCL28/MEC、CCL3/M1P-1-α、CCL3Ll/LD-78-β、CCL4/MIP-l-β、CCL5/RANTES、CCL6/C10、CCL7/MCP-3、CCL8/MCP-2、CCL9/10/MTP-1-γ、CCR、CCR1、CCR10、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CD1、CD10、CD105、CD11a、CD11b、CD11c、CD123、CD13、CD137、CD138、CD14、CD140a、CD146、CD147、CD148、CD15、CD152、CD16、CD164、CD18、CD19、CD2、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD26、CD27L、CD28、CD29、CD3、CD30、CD30L、CD32、CD33 (p67タンパク質)、CD34、CD37、CD38、CD3E、CD4、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD46、CD49a、CD49b、CD5、CD51、CD52、CD54、CD55、CD56、CD6、CD61、CD64、CD66e、CD7、CD70、CD74、CD8、CD80 (B7-1)、CD89、CD95、CD105、CD158a、CEA、CEACAM5、CFTR、cGMP、CGRP受容体、CINC、CKb8-1、クローディン18、CLC、クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)毒素、クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)毒素、クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)毒素、c-Met、CMV、CMV UL、CNTF、CNTN-1、補体因子3 (C3)、補体因子D、コルチコステロイド結合グロブリン、コロニー刺激因子-1受容体、COX、C-Ret、CRG-2、CRTH2、CT-1、CTACK、CTGF、CTLA-4、CX3CL1/フラクタルカイン、CX3CR1、CXCL、CXCL1/Gro-α、CXCL10、CXCL11/I-TAC、CXCL12/SDF-l-α/β、CXCL13/BCA-1、CXCL14/BRAK、CXCL15/ラングカイン(Lungkine)、CXCL16、CXCL16、CXCL2/Gro-β CXCL3/Gro-γ、CXCL3、CXCL4/PF4、CXCL5/ENA-78、CXCL6/GCP-2、CXCL7/NAP-2、CXCL8/IL-8、CXCL9/Mig、CXCLlO/IP-10、CXCR、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、シスタチンC、サイトケラチン腫瘍関連抗原、DAN、DCC、DcR3、DC-SIGN、崩壊促進因子、デルタ様タンパク質(Delta-like protein)リガンド4、des(1-3)-IGF-1 (脳IGF-1)、Dhh、DHICAオキシダーゼ、Dickkopf-1、ジゴキシン、ジペプチジルペプチダーゼIV、DK1、DNAM-1、Dnase、Dpp、DPPIV/CD26、Dtk、ECAD、EDA、EDA-A1、EDA-A2、EDAR、EGF、EGFR (ErbB-1)、EGF様ドメイン含有タンパク質7(EGF like domain containing protein 7)、エラスターゼ、エラスチン、EMA、EMMPRIN、ENA、ENA-78、エンドシアリン(Endosialin)、エンドセリン受容体、エンドトキシン、エンケファリナーゼ、eNOS、Eot、エオタキシン、エオタキシン-2、エオタキシン-1、EpCAM、エフリンB2/EphB4、Epha2チロシンキナーゼ受容体、上皮増殖因子受容体 (EGFR)、ErbB2受容体、ErbB3チロシンキナーゼ受容体、ERCC、EREG、エリスロポエチン(EPO)、エリスロポエチン受容体、E-セレクチン、ET-1、エクソダス(Exodus)-2、RSVのFタンパク質、F10、F11、F12、F13、F5、F9、第Ia因子、第IX因子、第Xa因子、第VII因子、第VIII因子、第VIIIc因子、Fas、FcαR、FcイプシロンRI、FcγIIb、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIIa、FcγRIIIb、FcRn、FEN-1、フェリチン、FGF、FGF-19、FGF-2、FGF-2受容体、FGF-3、FGF-8、酸性FGF(FGF-acidic)、塩基性FGF(FGF-basic)、FGFR、FGFR-3、フィブリン、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、線維芽細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子-10、フィブロネクチン、FL、FLIP、Flt-3、FLT3リガンド、葉酸受容体、卵胞刺激ホルモン(FSH)、フラクタルカイン(CX3C)、遊離型重鎖、遊離型軽鎖、FZD1、FZD10、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、G250、Gas 6、GCP-2、GCSF、G-CSF、G-CSF受容体、GD2、GD3、GDF、GDF-1、GDF-15 (MIC-1)、GDF-3 (Vgr-2)、GDF-5 (BMP-14/CDMP-1)、GDF-6 (BMP-13/CDMP-2)、GDF-7 (BMP-12/CDMP-3)、GDF-8 (ミオスタチン)、GDF-9、GDNF、ゲルゾリン、GFAP、GF-CSF、GFR-α1、GFR-α2、GFR-α3、GF-β1、gH外被糖タンパク質、GITR、グルカゴン、グルカゴン受容体、グルカゴン様ペプチド1受容体、Glut 4、グルタミン酸カルボキシペプチダーゼII、糖タンパク質ホルモン受容体、糖タンパク質llb/llla (GP llb/llla)、グリピカン-3、GM-CSF、GM-CSF受容体、gp130、gp140、gp72、顆粒球-CSF (G-CSF)、GRO/MGSA、成長ホルモン放出因子、GRO-β、GRO-γ、ピロリ菌(H. pylori)、ハプテン(NP-capまたはNIP-cap)、HB-EGF、HCC、HCC 1、HCMV gB外被糖タンパク質、HCMV UL、造血成長因子 (HGF)、Hep B gp120、ヘパラナーゼ、ヘパリン補因子II、肝細胞増殖因子(hepatic growth factor)、バチルス・アントラシス防御抗原、C型肝炎ウイルスE2糖タンパク質、E型肝炎、ヘプシジン、Her1、Her2/neu (ErbB-2)、Her3 (ErbB-3)、Her4 (ErbB-4)、単純ヘルペスウイルス(HSV) gB糖タンパク質、HGF、HGFA、高分子量メラノーマ関連抗原(High molecular weight melanoma-associated antigen) (HMW-MAA)、GP120等のHIV外被タンパク質、HIV MIB gp 120 V3ループ、HLA、HLA-DR、HM1.24、HMFG PEM、HMGB-1、HRG、Hrk、HSP47、Hsp90、HSV gD糖タンパク質、ヒト心筋ミオシン、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、ヒト成長ホルモン(hGH)、ヒト血清アルブミン、ヒト組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)、ハンチンチン、HVEM、IAP、ICAM、ICAM-1、ICAM-3、ICE、ICOS、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、IgA、IgA受容体、IgE、IGF、IGF結合タンパク質、IGF-1、IGF-1 R、IGF-2、IGFBP、IGFR、IL、IL-1、IL-10、IL-10受容体、IL-11、IL-11受容体、IL-12、IL-12受容体、IL-13、IL-13受容体、IL-15、IL-15受容体、IL-16、IL-16受容体、IL-17、IL-17受容体、IL-18 (IGIF)、IL-18受容体、IL-1α、IL-1β、IL-1受容体、IL-2、IL-2受容体、IL-20、IL-20受容体、IL-21、IL-21受容体、IL-23、IL-23受容体、IL-2受容体、IL-3、IL-3受容体、IL-31、IL-31受容体、IL-3受容体、IL-4、IL-4受容体、IL-5、IL-5受容体、IL-6、IL-6受容体、IL-7、IL-7受容体、IL-8、IL-8受容体、IL-9、IL-9受容体、免疫グロブリン免疫複合体、免疫グロブリン、INF-α、INF-α受容体、INF-β、INF-β受容体、INF-γ、INF-γ受容体、I型IFN、I型IFN受容体、インフルエンザ、インヒビン、インヒビンα、インヒビンβ、iNOS、インスリン、インスリンA鎖、インスリンB鎖、インスリン様増殖因子1、インスリン様増殖因子2、インスリン様増殖因子結合タンパク質、インテグリン、インテグリンα2、インテグリンα3、インテグリンα4、インテグリンα4/β1、インテグリンα-V/β-3、インテグリンα-V/β-6、インテグリンα4/β7、インテグリンα5/β1、インテグリンα5/β3、インテグリンα5/β6、インテグリンα-δ (αV)、インテグリンα-θ、インテグリンβ1、インテグリンβ2、インテグリンβ3(GPIIb-IIIa)、IP-10、I-TAC、JE、カリクレイン、カリクレイン11、カリクレイン12、カリクレイン14、カリクレイン15、カリクレイン2、カリクレイン5、カリクレイン6、カリクレインL1、カリクレインL2、カリクレインL3、カリクレインL4、カリスタチン、KC、KDR、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、ケラチノサイト増殖因子-2 (KGF-2)、KGF、キラー免疫グロブリン様受容体、kitリガンド (KL)、Kitチロシンキナーゼ、ラミニン5、LAMP、LAPP (アミリン、膵島アミロイドポリペプチド)、LAP (TGF-1)、潜伏期関連ペプチド、潜在型TGF-1、潜在型TGF-1 bp1、LBP、LDGF、LDL、LDL受容体、LECT2、レフティー、レプチン、黄体形成ホルモン(leutinizing hormone)(LH)、Lewis-Y抗原、Lewis-Y関連抗原、LFA-1、LFA-3、LFA-3受容体、Lfo、LIF、LIGHT、リポタンパク質、LIX、LKN、Lptn、L-セレクチン、LT-a、LT-b、LTB4、LTBP-1、肺サーファクタント、黄体形成ホルモン、リンホタクチン、リンホトキシンβ受容体、リゾスフィンゴ脂質受容体、Mac-1、マクロファージ-CSF (M-CSF)、MAdCAM、MAG、MAP2、MARC、マスピン、MCAM、MCK-2、MCP、MCP-1、MCP-2、MCP-3、MCP-4、MCP-I (MCAF)、M-CSF、MDC、MDC (67 a.a.)、MDC (69 a.a.)、メグシン(megsin)、Mer、METチロシンキナーゼ受容体ファミリー、メタロプロテアーゼ、膜糖タンパク質OX2、メソテリン、MGDF受容体、MGMT、MHC (HLA-DR)、微生物タンパク質(microbial protein)、MIF、MIG、MIP、MIP-1 α、MIP-1 β、MIP-3 α、MIP-3 β、MIP-4、MK、MMAC1、MMP、MMP-1、MMP-10、MMP-11、MMP-12、MMP-13、MMP-14、MMP-15、MMP-2、MMP-24、MMP-3、MMP-7、MMP-8、MMP-9、単球誘引タンパク質(monocyte attractant protein)、単球コロニー阻害因子(monocyte colony inhibitory factor)、マウスゴナドトロピン関連(gonadotropin-associated)ペプチド、MPIF、Mpo、MSK、MSP、MUC-16、MUC18、ムチン(Mud)、ミュラー管抑制因子、Mug、MuSK、ミエリン関連糖タンパク質、骨髄前駆細胞阻害因子-1 (MPIF-I)、NAIP、ナノボディ(Nanobody)、NAP、NAP-2、NCA 90、NCAD、N-カドヘリン、NCAM、ネプリライシン、神経細胞接着分子、ニューロセルピン(neroserpin)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4、ニューロトロフィン-6、ニューロピリン1、ニュールツリン、NGF-β、NGFR、NKG20、N-メチオニルヒト成長ホルモン、nNOS、NO、Nogo-A、Nogo受容体、C型肝炎ウイルス由来の非構造タンパク質3型 (NS3)、NOS、Npn、NRG-3、NT、NT-3、NT-4、NTN、OB、OGG1、オンコスタチンM、OP-2、OPG、OPN、OSM、OSM受容体、骨誘導因子(osteoinductive factor)、オステオポンチン、OX40L、OX40R、酸化型LDL、p150、p95、PADPr、副甲状腺ホルモン、PARC、PARP、PBR、PBS
F、PCAD、P-カドヘリン、PCNA、PCSK9、PDGF、PDGF受容体、PDGF-AA、PDGF-AB、PDGF-BB、PDGF-D、PDK-1、PECAM、PEDF、PEM、PF-4、PGE、PGF、PGI2、PGJ2、PIGF、PIN、PLA2、胎盤増殖因子、胎盤アルカリホスファターゼ(PLAP)、胎盤ラクトゲン、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子-1、血小板増殖因子(platelet-growth factor)、plgR、PLP、異なるサイズのポリグリコール鎖(poly glycol chain)(例えば、PEG-20、PEG-30、PEG40)、PP14、プレカリクレイン、プリオンタンパク質、プロカルシトニン、プログラム細胞死タンパク質1、プロインスリン、プロラクチン、プロタンパク質転換酵素PC9、プロリラキシン(prorelaxin)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、プロテインA、プロテインC、プロテインD、プロテインS、プロテインZ、PS、PSA、PSCA、PsmAr、PTEN、PTHrp、Ptk、PTN、P-セレクチン糖タンパク質リガンド-1、R51、RAGE、RANK、RANKL、RANTES、リラキシン、リラキシンA鎖、リラキシンB鎖、レニン、呼吸器多核体ウイルス(RSV) F、Ret、レチキュロン(reticulon)4、リウマチ因子、RLI P76、RPA2、RPK-1、RSK、RSV Fgp、S100、RON-8、SCF/KL、SCGF、スクレロスチン(Sclerostin)、SDF-1、SDF1 α、SDF1 β、セリン(SERINE)、血清アミロイドP、血清アルブミン、sFRP-3、Shh、志賀様毒素II、SIGIRR、SK-1、SLAM、SLPI、SMAC、SMDF、SMOH、SOD、SPARC、スフィンゴシン一リン酸受容体1、ブドウ球菌のリポテイコ酸、Stat、STEAP、STEAP-II、幹細胞因子(SCF)、ストレプトキナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、シンデカン-1、TACE、TACI、TAG-72 (腫瘍関連糖タンパク質-72)、TARC、TB、TCA-3、T細胞受容体α/β、TdT、TECK、TEM1、TEM5、TEM7、TEM8、テネイシン、TERT、精巣PLAP様アルカリホスファターゼ、TfR、TGF、TGF-α、TGF-β、TGF-β汎特異的(TGF-β Pan Specific)、TGF-β RII、TGF-β RIIb、TGF-β RIII、TGF-β Rl (ALK-5)、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、TGF-β5、TGF-I、トロンビン、トロンボポエチン(TPO)、胸腺間質性リンホプロテイン(Thymic stromal lymphoprotein)受容体、胸腺Ck-1、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、チロキシン、チロキシン結合グロブリン、Tie、TIMP、TIQ、組織因子、組織因子プロテアーゼインヒビター、組織因子タンパク質、TMEFF2、Tmpo、TMPRSS2、TNF受容体I、TNF受容体II、TNF-α、TNF-β、TNF-β2、TNFc、TNF-RI、TNF-RII、TNFRSF10A (TRAIL R1 Apo-2/DR4)、TNFRSF10B (TRAIL R2 DR5/KILLER/TRICK-2A/TRICK-B)、TNFRSF10C (TRAIL R3 DcR1/LIT/TRID)、TNFRSF10D (TRAIL R4 DcR2/TRUNDD)、TNFRSF11A (RANK ODF R/TRANCE R)、TNFRSF11B (OPG OCIF/TR1)、TNFRSF12 (TWEAK R FN14)、TNFRSF12A、TNFRSF13B (TACI)、TNFRSF13C (BAFF R)、TNFRSF14 (HVEM ATAR/HveA/LIGHT R/TR2)、TNFRSF16 (NGFR p75NTR)、TNFRSF17 (BCMA)、TNFRSF18 (GITR AITR)、TNFRSF19 (TROY TAJ/TRADE)、TNFRSF19L (RELT)、TNFRSF1A (TNF Rl CD120a/p55-60)、TNFRSF1B (TNF RII CD120b/p75-80)、TNFRSF21 (DR6)、TNFRSF22 (DcTRAIL R2 TNFRH2)、TNFRSF25 (DR3 Apo-3/LARD/TR-3/TRAMP/WSL-1)、TNFRSF26 (TNFRH3)、TNFRSF3 (LTbR TNF RIII/TNFC R)、TNFRSF4 (OX40 ACT35/TXGP1 R)、TNFRSF5 (CD40 p50)、TNFRSF6 (Fas Apo-1/APT1/CD95)、TNFRSF6B (DcR3 M68/TR6)、TNFRSF7 (CD27)、TNFRSF8 (CD30)、TNFRSF9 (4-1 BB CD137/ILA)、TNFRST23 (DcTRAIL R1 TNFRH1)、TNFSF10 (TRAIL Apo-2リガンド/TL2)、TNFSF11 (TRANCE/RANKリガンドODF/OPGリガンド)、TNFSF12 (TWEAK Apo-3リガンド/DR3リガンド)、TNFSF13 (APRIL TALL2)、TNFSF13B (BAFF BLYS/TALL1/THANK/TNFSF20)、TNFSF14 (LIGHT HVEMリガンド/LTg)、TNFSF15 (TL1A/VEGI)、TNFSF18 (GITRリガンド AITRリガンド/TL6)、TNFSF1A (TNF-a コネクチン(Conectin)/DIF/TNFSF2)、TNFSF1B (TNF-b LTa/TNFSF1)、TNFSF3 (LTb TNFC/p33)、TNFSF4 (OX40リガンドgp34/TXGP1)、TNFSF5 (CD40リガンドCD154/gp39/HIGM1/IMD3/TRAP)、TNFSF6 (Fasリガンド Apo-1リガンド/APT1リガンド)、TNFSF7 (CD27リガンドCD70)、TNFSF8 (CD30リガンドCD153)、TNFSF9 (4-1 BBリガンド CD137リガンド)、TNF-α、TNF-β、TNIL-I、毒性代謝産物(toxic metabolite)、TP-1、t-PA、Tpo、TRAIL、TRAIL R、TRAIL-R1、TRAIL-R2、TRANCE、トランスフェリン受容体、TGF-αおよびTGF-β等のトランスフォーミング増殖因子(TGF)、膜貫通型糖タンパク質NMB、トランスサイレチン、TRF、Trk、TROP-2、トロホブラスト糖タンパク質、TSG、TSLP、腫瘍壊死因子(TNF)、腫瘍関連抗原CA 125、Lewis Y関連糖を示す腫瘍関連抗原、TWEAK、TXB2、Ung、uPAR、uPAR-1、ウロキナーゼ、VAP-1、血管内皮増殖因子(VEGF)、バスピン(vaspin)、VCAM、VCAM-1、VECAD、VE-カドヘリン、VE-カドヘリン-2、VEFGR-1 (flt-1)、VEFGR-2、VEGF受容体 (VEGFR)、VEGFR-3 (flt-4)、VEGI、VIM、ウイルス抗原、ビタミンB12受容体、ビトロネクチン受容体、VLA、VLA-1、VLA-4、VNRインテグリン、フォン・ヴィルブランド因子(vWF)、WIF-1、WNT1、WNT10A、WNT10B、WNT11、WNT16、WNT2、WNT2B/13、WNT3、WNT3A、WNT4、WNT5A、WNT5B、WNT6、WNT7A、WNT7B、WNT8A、WNT8B、WNT9A、WNT9B、XCL1、XCL2/SCM-l-β、XCLl/リンホタクチン、XCR1、XEDAR、XIAP、XPDなどがあげられる。好ましくは、第1の抗原としては、例えば、腫瘍細胞に特異的な抗原が好ましく、具体的には、例えば、EpCAM、EREG、GPC3等が挙げられる。第2の抗原としては、例えば、免疫細胞表面分子(T細胞表面分子、NK細胞表面分子、抗原提示細胞表面分子(CD3, TCR、NKG2D、CD137、OX40、GITR、CD40、TLR1~10、C type lectin、等)、腫瘍細胞、腫瘍の血管、ストローマ細胞等に発現するが、正常組織においても発現している抗原(インテグリン、Tissue factor、VEGFR、PDGFR、EGFR、IGFR、METケモカインレセプター、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、CD44、フィブロネクチン、DR5、TNFRSF等)が好ましく、具体的には、例えば、CD3、インテグリンが挙げられる。
 可変領域を構成するアミノ酸配列は、その抗原結合活性が維持される限り、1または複数のアミノ酸残基の改変が許容される。可変領域のアミノ酸配列を改変する場合、改変される部位や改変されるアミノ酸の数は特に限定されない。例えば、CDRおよび/またはFRに存在するアミノ酸を適宜、改変することができる。可変領域のアミノ酸を改変する場合、特に限定されないが、結合活性が維持されていることが好ましく、例えば、改変前と比較して50%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは100%以上の結合活性を有していることが好ましい。又、アミノ酸改変により結合活性が上昇していてもよく、例えば結合活性が改変前と比較して2倍、5倍、10倍等になっていてもよい。本発明の抗体において、アミノ酸配列の改変とは、アミノ酸残基の置換、付加、欠損、挿入および修飾の少なくとも1つであることができる。
 例えば、可変領域のN末端のグルタミンのピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾は当業者によく知られた修飾である。したがって、本発明の抗体は、その重鎖のN末端がグルタミンの場合には、それがピログルタミン酸に修飾された可変領域を含む。
 本発明の抗体の可変領域は、任意の配列であってよく、マウス抗体、ラット抗体、ウサギ抗体、ヤギ抗体、ラクダ抗体、および、これらの非ヒト抗体をヒト化したヒト化抗体、および、ヒト抗体など、どのような由来の抗体の可変領域でもよい。「ヒト化抗体」とは、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称される、ヒト以外の哺乳動物由来の抗体、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR;complementarity determining region)をヒト抗体のCDRへ移植したものである。CDRを同定するための方法は公知である(Kabat et al., Sequence of Proteins of Immunological Interest (1987), National Institute of Health, Bethesda, Md.; Chothia et al., Nature (1989) 342: 877)。また、その一般的な遺伝子組換え手法も公知である(欧州特許出願公開番号EP 125023号公報、WO 96/02576 号公報参照)。また、これらの抗体の可変領域に対して、抗原への結合、薬物動態、安定性、抗原性を改善するために、様々なアミノ酸置換を導入したものであってもよい。本発明の抗体の可変領域は抗原に対する結合にpH依存性を有することで、抗原に対して繰り返し結合することができてもよい(WO/2009/125825)。
 また、可変領域の改変は結合活性の上昇、特異性の改善、pIの低下、抗原に対する結合にpH依存的な性質の付与、結合熱安定性の改善、溶解性の改善、化学修飾に対する安定性、糖鎖に由来するヘテロジェナイエティの改善、免疫原性を低下させることをin silico予測を使って同定した、あるいはin vitroのT細胞を使ったアッセイによって同定したT細胞エピトープの回避、あるいはレギュラトリーT細胞を活性化するT細胞エピトープの導入等を目的として実施される(mAbs 3:243-247, 2011)。  
 また、本発明のポリペプチドは、Fc領域と他のタンパク質、生理活性ペプチドなどとを結合させたFc融合タンパク質分子(ペプチドFc融合タンパク質)又は、コラーゲンやポリ乳酸などの高分子によって構成される細胞外マトリックスなどを結合させたFc融合タンパク質分子(スキャフォールドFc融合タンパク質)であってもよい。
 他のタンパク質、生理活性ペプチドとしては、例えば受容体、接着分子、リガンド、酵素が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
 本発明のFc融合タンパク質分子の好ましい例として、標的に結合するレセプタータンパク質にFcドメインを融合したタンパク質が挙げられ、例えば、TNFR-Fc融合タンパク、IL1R-Fc融合タンパク、VEGFR-Fc融合タンパク、CTLA4-Fc融合タンパク等(Nat Med. 2003 Jan;9(1):47-52、BioDrugs. 2006;20(3):151-60.)が挙げられる。また、本発明のポリペプチドに融合させるタンパク質は標的分子に結合する限り如何なる分子であってもよく、例えばscFv分子(WO2005/037989)、単ドメイン抗体分子(WO2004/058821, WO2003/002609)、抗体様分子(Current Opinion in Biotechnology 2006, 17:653-658、Current Opinion in Biotechnology 2007, 18:1-10、Current Opinion in Structural Biology 1997, 7:463-469、Protein Science 2006, 15:14-27)、例えば、DARPins(WO2002/020565)、Affibody(WO1995/001937)、Avimer(WO2004/044011, WO2005/040229)、Adnectin(WO2002/032925)等が挙げられる。また、抗体およびFc融合タンパク質分子は、複数種類の標的分子あるいはエピトープに結合する二重特異性抗体などの多重特異性抗体であってもよい。
 また本発明の抗体には、抗体の修飾物も含まれる。抗体の修飾物の例としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)や細胞障害性物質等の各種分子と結合させた抗体を挙げることができる。このような抗体修飾物は、本発明の抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。抗体の修飾方法はこの分野においてすでに確立されている。
 さらに、本発明の抗体は二重特異性抗体(bispecific antibody)であってもよい。二重特異性抗体とは、異なるエピトープを認識する可変領域を同一の抗体分子内に有する抗体をいうが、当該エピトープは異なる分子中に存在していてもよいし、同一の分子中に存在していてもよい。
 本発明のポリペプチドは当業者に公知の方法により製造することができる。例えば、抗体は以下の方法で作製することができるが、これに限定されるものではない。単離されたポリペプチドをコードする遺伝子を適当な宿主に導入することによって抗体を作製するための宿主細胞と発現ベクターの多くの組み合わせが公知である。これらの発現系は、いずれも本発明の抗原結合分子を単離するのに応用され得る。真核細胞が宿主細胞として使用される場合、動物細胞、植物細胞、あるいは真菌細胞が適宜使用され得る。具体的には、動物細胞としては、次のような細胞が例示され得る。 (1)哺乳類細胞、:CHO(Chinese hamster ovary cell line)、COS(Monkey kidney cell line)、ミエローマ(Sp2/O、NS0等)、BHK (baby hamster kidney cell line)、HEK293(human embryonic kidney cell line with sheared adenovirus (Ad)5 DNA)、PER.C6 cell (human embryonic retinal cell line transformed with the Adenovirus Type 5 (Ad5) E1A and E1B genes)、Hela、Vero、など(Current Protocols in Protein Science (May, 2001, Unit 5.9, Table 5.9.1))
(2)両生類細胞:アフリカツメガエル卵母細胞など (3)昆虫細胞:sf9、sf21、Tn5など
 抗体の重鎖をコードするDNAであって、Fc領域中の1又は複数のアミノ酸残基が目的の他のアミノ酸に置換された重鎖をコードするDNA、および抗体の軽鎖をコードするDNAを発現させる。Fc領域中の1又は複数のアミノ酸残基が目的の他のアミノ酸に置換された重鎖をコードするDNAは、例えば、天然型の重鎖をコードするDNAのFc領域部分を取得し、該Fc領域中の特定のアミノ酸をコードするコドンが目的の他のアミノ酸をコードするよう、適宜置換を導入することによって得ることが出来る。
 また、あらかじめ、天然型重鎖のFc領域中の1又は複数のアミノ酸残基が目的の他のアミノ酸に置換されたタンパク質をコードするDNAを設計し、該DNAを化学的に合成することによって、Fc領域中の1又は複数のアミノ酸残基が目的の他のアミノ酸に置換された重鎖をコードするDNAを得ることも可能である。アミノ酸の置換部位、置換の種類としては、特に限定されるものではない。また置換に限られず、欠損、付加、挿入、又は修飾のいずれか、又はそれらの組み合わせであってもよい。
 また、Fc領域中において1又は複数のアミノ酸残基が目的の他のアミノ酸に置換された重鎖をコードするDNAは、部分DNAに分けて製造することができる。部分DNAの組み合わせとしては、例えば、可変領域をコードするDNAと定常領域をコードするDNA、あるいはFab領域をコードするDNAとFc領域をコードするDNAなどが挙げられるが、これら組み合わせに限定されるものではない。軽鎖をコードするDNAもまた、同様に部分DNAに分けて製造することができる。
 上記DNAを発現させる方法としては、以下の方法が挙げられる。例えば、重鎖可変領域をコードするDNAを、重鎖定常領域をコードするDNAとともに発現ベクターに組み込み重鎖発現ベクターを構築する。同様に、軽鎖可変領域をコードするDNAを、軽鎖定常領域をコードするDNAとともに発現ベクターに組み込み軽鎖発現ベクターを構築する。これらの重鎖、軽鎖の遺伝子を単一のベクターに組み込むことも出来る。
 目的とする抗体をコードするDNAを発現ベクターへ組み込む際、発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させる。その際には、適当な宿主と発現ベクターの組み合わせを使用することができる。
 ベクターの例としては、M13系ベクター、pUC系ベクター、pBR322、pBluescript、pCR-Scriptなどが挙げられる。また、cDNAのサブクローニング、切り出しを目的とした場合、上記ベクターの他に、例えば、pGEM-T、pDIRECT、pT7などを用いることができる。
 本発明の抗体を生産する目的においてベクターを使用する場合には、特に、発現ベクターが有用である。発現ベクターとしては、例えば、宿主をJM109、DH5α、HB101、XL1-Blueなどの大腸菌とした場合においては、大腸菌で効率よく発現できるようなプロモーター、例えば、lacZプロモーター(Wardら, Nature (1989) 341, 544-546;FASEB J. (1992) 6, 2422-2427、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、araBプロモーター(Betterら, Science (1988) 240, 1041-1043、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、またはT7プロモーターなどを持っていることが不可欠である。このようなベクターとしては、上記ベクターの他にpGEX-5X-1(Pharmacia社製)、「QIAexpress system」(QIAGEN社製)、pEGFP、またはpET(この場合、宿主はT7 RNAポリメラーゼを発現しているBL21が好ましい)などが挙げられる。
 また、ベクターには、ポリペプチド分泌のためのシグナル配列が含まれていてもよい。ポリペプチド分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei, S. P. et al J. Bacteriol. (1987) 169, 4397、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を使用すればよい。宿主細胞へのベクターの導入は、例えばリポフェクチン法、リン酸カルシウム法、DEAE-Dextran法を用いて行うことができる。
 大腸菌発現ベクターの他、例えば、本発明のポリペプチドを製造するためのベクターとしては、哺乳動物由来の発現ベクター(例えば、pcDNA3(Invitrogen社製)や、pEGF-BOS (Nucleic Acids. Res.1990, 18(17),p5322、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、pEF、pCDM8)、昆虫細胞由来の発現ベクター(例えば「Bac-to-BAC baculovirus expression system」(GIBCO BRL社製)、pBacPAK8)、植物由来の発現ベクター(例えばpMH1、pMH2)、動物ウィルス由来の発現ベクター(例えば、pHSV、pMV、pAdexLcw)、レトロウィルス由来の発現ベクター(例えば、pZIPneo)、酵母由来の発現ベクター(例えば、「Pichia Expression Kit」(Invitrogen社製)、pNV11、SP-Q01)、枯草菌由来の発現ベクター(例えば、pPL608、pKTH50)が挙げられる。
 CHO細胞、COS細胞、NIH3T3細胞、HEK293細胞等の動物細胞での発現を目的とした場合には、細胞内で発現させるために必要なプロモーター、例えばSV40プロモーター(Mulliganら, Nature (1979) 277, 108、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、MMTV-LTRプロモーター、EF1αプロモーター(Mizushimaら, Nucleic Acids Res. (1990) 18, 5322、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、CAGプロモーター(Gene. (1991) 108, 193、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、CMVプロモーターなどを持っていることが不可欠であり、形質転換細胞を選抜するための遺伝子(例えば、薬剤(ネオマイシン、G418など)により判別できるような薬剤耐性遺伝子)を有すればさらに好ましい。このような特性を有するベクターとしては、例えば、pMAM、pDR2、pBK-RSV、pBK-CMV、pOPRSV、pOP13などが挙げられる。さらに遺伝子のコピー数を増やす目的でEBNA1タンパク質を共発現させる場合もあるが、この場合、複製開始点OriPを有するベクターを用いる。(Biotechnol Bioeng. 2001 Oct 20;75(2):197-203.、Biotechnol Bioeng. 2005 Sep 20;91(6):670-7.)
 さらに、遺伝子を安定的に発現させ、かつ、細胞内での遺伝子のコピー数の増幅を目的とする場合には、核酸合成経路を欠損したCHO細胞にそれを相補するDHFR遺伝子を有するベクター(例えば、pCHOIなど)を導入し、メトトレキセート(MTX)により増幅させる方法が挙げられ、また、遺伝子の一過性の発現を目的とする場合には、SV40 T抗原を発現する遺伝子を染色体上に持つCOS細胞を用いてSV40の複製起点を持つベクター(pcDなど)で形質転換する方法が挙げられる。複製開始点としては、また、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス(BPV)等の由来のものを用いることもできる。さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは選択マーカーとして、アミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。
 抗体の回収は、例えば、形質転換した細胞を培養した後、分子形質転換した細胞の細胞内又は培養液より分離することによって行うことが出来る。抗体の分離、精製には、遠心分離、硫安分画、塩析、限外濾過、C1q、FcRn、プロテインA、プロテインGカラム、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーなどの方法を適宜組み合わせて行うことができる。
 二重特異性抗体の効率的な作製方法として、Knobs-into-holes技術(WO1996/027011、Ridgway JB et al., Protein Engineering (1996) 9, 617-621、Merchant AM et al. Nature Biotechnology (1998) 16, 677-681)や電荷的な反発を導入して目的としないH鎖同士の会合を抑制する技術(WO2006/106905)等の、前述のヘテロ二量体または当該へテロ二量体を含むポリペプチドの会合化のために用いることができる技術を適用することができる。
 さらに本発明は、Fc領域二量体を含むポリペプチドを製造する方法であって、該Fc領域のアミノ酸配列が多様なFc領域二量体を含むポリペプチドライブラリーを作製する工程を含む、本発明のFc領域二量体を含むポリペプチドを製造する方法を提供する。
 例えば以下の工程を含む製造方法を挙げることができる:
(i)アミノ酸配列が多様なCH2ドメインを含むペプチド又はポリペプチドからなるペプチドライブラリーを作製する工程、
(ii)作製されたライブラリーの中から、CH2ドメインを含むペプチド又はポリペプチドがFcγR及び抗原に対する結合活性を有するが、FcγR及び当該抗原と同時には結合しない、CH2ドメインを含むペプチド又はポリペプチドを選択する工程、
(iii)工程(ii)で選択されたペプチド又はポリペプチドと同一のCH2ドメインを有するFc領域二量体を含むポリペプチドをコードする核酸を含む宿主細胞を培養して、当該Fc領域二量体を含むポリペプチドを発現させる工程、及び
(iv)前記宿主細胞培養物からFc領域二量体を含むポリペプチドを回収する工程。
 なお、本製造方法では、工程(ii)において、以下の工程を行ってもよい:
(v)CH2ドメインの熱変性温度が50℃以上のCH2ドメインを含むペプチド又はポリペプチドを選択する工程。
 本発明において、CH2ドメインの熱変性温度は、生物の体温である40℃以上であることが好ましい。更に、生体内に投与された際の熱安定性の観点から50℃以上であることがより好ましく、60℃以上であることが更により好ましい。 
 上記工程(i)で用いられるCH2ドメインを含むペプチド又はポリペプチドは、抗体のCH2ドメインを含んでいれば特に限定されず、Fc領域二量体であっても良いし、Fc領域二量体を含むポリペプチドであってもよい。また、CH2ドメインを含むペプチド又はポリペプチドが、異なるアミノ酸配列を有する2つのCH2ドメイン(第1のCH2ドメイン及び第2のCH2ドメイン)を含むヘテロ二量体であってもよいし、同一のCH2ドメインを含むホモ二量体であってもよい。
 「アミノ酸配列が多様なCH2ドメインを含むペプチド又はポリペプチド」は、当該ペプチド又はポリペプチドのアミノ酸配列を改変することによって得ることができる。特に、CH2ドメインのアミノ酸配列が多様化されていることが好ましい。多様化される部位は、FcγRに対する結合活性を低下させない部位及び/又はCH2ドメインの熱変性温度を低下させない部位がより好ましい。CH2ドメインを含むペプチド又はポリペプチドがFc領域二量体又はFc領域二量体を含むポリペプチドである場合、その多様化は、Fc領域二量体がヘテロ二量体となるように多様化されていてもよいし、ホモ二量体となるように多様化されていてもよい。
 特に所望の抗原に対する結合活性を有するCH2ドメインを含むペプチド又はポリペプチドを得るために改変されるアミノ酸としては、CH2ドメインのループ領域のアミノ酸配列が好ましい。具体的には、例えば、ヒトIgG1を起源としてFc領域のアミノ酸配列を多様化する場合、EUナンバリング231~239、EUナンバリング265~271、EUナンバリング295~300およびEUナンバリング324~332から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が改変されていることが好ましい。さらに、用いられるFc領域二量体がヘテロ二量体である場合は、第1のFc領域のEUナンバリング265~271およびEUナンバリング295~300、並びに第2のFc領域のEUナンバリング265~271およびEUナンバリング324~332から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が改変されていることが好ましい。本発明において、アミノ酸配列を多様化する場合には、予め、所望の抗原に対して結合活性を有していることが知られているペプチドを上述の領域にランダムに挿入することで、Fc領域のアミノ酸配列が多様なFc領域二量体を含むペプチドライブラリーを作製してもよいし、上述の領域に適当な長さのアミノ酸を挿入し、多様性を増大させたライブラリーを作製してもよい。アミノ酸を挿入する場合、挿入されるアミノ酸数は、3~9が好ましい。
 また、FcγRに対する結合活性を有するCH2ドメインを含むペプチド又はポリペプチドを得るために改変されるアミノ酸としては、例えば、ヒトIgG1を起源としてFc領域のアミノ酸配列を多様化する場合、EUナンバリング226~447から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が改変されていることが好ましい。より具体的には、ヒトIgG1定常領域のアミノ酸配列における、EUナンバリング234~239、265~271、295、296、298、300、324~337、356、435及び439から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が改変されていることが好ましい。
 より具体的には、ヒトIgG1定常領域のアミノ酸配列におけるEUナンバリング234~239、265~271、295、296、298、300、324、325~337から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が改変されていることが好ましい。
 また、IgG型のFc領域二量体等、予めFcγRに対する結合活性を有していることが分かっているFc領域二量体や、上述のFcγRに対する結合活性を増強するためのアミノ酸改変が導入されたFc領域二量体を用いて、本発明のFc領域二量体を含むポリペプチドを作製する場合、FcγR結合に関与していない部位のアミノ酸配列を多様化し、Fc領域が、所望の抗原及びFcγRに対して結合活性を有するが、当該抗原及びFcγRに同時には結合しないFc領域二量体あるいは当該Fc領域二量体を含むポリペプチドを選択してもよい。
 CH2ドメインを含むペプチド又はポリペプチドが抗原またはFcγRに対して結合活性を有するかどうか、また、抗原及びFcγRに同時には結合しないかどうかは、上述のFc領域二量体あるいは当該Fc領域二量体を含むポリペプチドが、抗原またはFcγRに対して結合活性を有するかどうか、また、抗原及びFcγRに同時には結合しないかどうかを確認する方法に従って、同様に確認することができる。
 さらに当該製造方法によって製造されるポリペプチドも本発明に含まれる。
 本方法によって導入されるアミノ酸変異の種類や範囲は特に限定されるものではない。
 さらに本発明は、抗原結合部位とFcγR結合部位を有し、抗原及びFcγRに同時には結合しない抗体のFc領域二量体、並びに、該Fc領域二量体を含むポリペプチドをコードする核酸を提供する。本発明の該核酸はDNA、RNAなど、如何なる形態でもよい。
 さらに本発明は、上記本発明の核酸を含むベクターを提供する。ベクターの種類はベクターが導入される宿主細胞に応じて当業者が適宜選択することができ、例えば上述のベクターを用いることができる。
 さらに本発明は、上記本発明のベクターにより形質転換された宿主細胞に関する。宿主細胞は当業者が適宜選択することができ、例えば上述の宿主細胞を用いることができる。
 また、本発明は、本発明のポリペプチドを含有する医薬組成物を提供する。  本発明の医薬組成物は、本発明のポリペプチドである抗体又はFc融合タンパク質分子に加えて医薬的に許容し得る担体を導入し、公知の方法で製剤化することが可能である。例えば、水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る溶液との無菌性溶液、又は懸濁液剤の注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、薬理学上許容される担体もしくは媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤などと適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することが考えられる。具体的には、軽質無水ケイ酸、乳糖、結晶セルロース、マンニトール、デンプン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、白糖、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等を担体として挙げることができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
 注射のための無菌組成物は注射用蒸留水のようなベヒクルを用いて通常の製剤実施に従って処方することができる。  注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えばD-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80(TM)、HCO-50と併用してもよい。  
 油性液としてはゴマ油、大豆油があげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールと併用してもよい。また、緩衝剤、例えばリン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液、無痛化剤、例えば、塩酸プロカイン、安定剤、例えばベンジルアルコール、フェノール、酸化防止剤と配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填させる。  投与は好ましくは非経口投与であり、具体的には、注射剤型、経鼻投与剤型、経肺投与剤型、経皮投与型などが挙げられる。注射剤型の例としては、例えば、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射などにより全身または局部的に投与することができる。  
 また、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。ポリペプチドまたはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する医薬組成物の投与量としては、例えば、一回につき体重1kgあたり0.0001 mgから1000 mgの範囲で選ぶことが可能である。あるいは、例えば、患者あたり0.001から100000 mg/bodyの範囲で投与量を選ぶことができるが、これらの数値に必ずしも制限されるものではない。投与量、投与方法は、患者の体重や年齢、症状などにより変動するが、当業者であれば適宜選択することが可能である。
 なお本明細書で用いられているアミノ酸の3文字表記と1文字表記の対応は以下の通りである。 アラニン:Ala:A アルギニン:Arg:R アスパラギン:Asn:N アスパラギン酸:Asp:D システイン:Cys:C グルタミン:Gln:Q グルタミン酸:Glu:E グリシン:Gly:G ヒスチジン:His:H イソロイシン:Ile:I ロイシン:Leu:L リジン:Lys:K メチオニン:Met:M フェニルアラニン:Phe:F プロリン:Pro:P セリン:Ser:S スレオニン:Thr:T トリプトファン:Trp:W チロシン:Tyr:Y バリン:Val:V
 なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
 本発明は、以下の実施例によってさらに例示されるが、下記の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕FcγRおよび抗原に結合し、FcγRおよび抗原に同時には結合しない改変免疫グロブリン定常領域(IgGのFc領域)のコンセプト
 天然型の免疫グロブリンは、可変領域で抗原と結合し、定常領域でFcγR、FcRn、FcαR、FcεRといったレセプターや補体と結合する。IgGのFc領域で相互作用する結合分子のひとつであるFcRnは、抗体の重鎖それぞれに1分子ずつ結合するため、IgG型の抗体1分子に対して2分子のFcRnが結合することが報告されている。しかし、FcRn等とは異なり、図1に示すように、FcγRは抗体のヒンジ領域およびCH2ドメインで相互作用し、IgG型の抗体1分子に対して1分子のみ結合する(J. Bio. Chem., (20001) 276, 16469-16477)。
 IgG型の抗体1分子に対してFcγRが1分子のみ結合する理由として、IgG型の抗体1分子に対して1分子のFcγRがそのFc領域に結合することにより、IgG型の抗体が構造変化することによって、2分子目のFcγRがFc領域に結合できないと考えられた。すなわち、図1に示すように、IgG型の抗体のヒンジ領域N末端は、X側から結合しているFcγRが結合している側と反対の方向を向いており、ヒンジ領域のN末端の主鎖構造からFab領域の存在位置を推定すると、図2に示すようにFab領域が通常よりも折れ曲がった構造(Fc領域に近づいている構造)を取ることによって、Y側から2分子目のFcγRはFc領域に接近することができず、結合することが出来ないと考えられた。
 IgG型の抗体が2分子のFcγRに結合できないように、天然に制御されている理由として、2分子のFcγRへ同時に結合してしまうと、2分子のFcγRの架橋反応が起こってしまう。例えば2分子の活性型FcγRの架橋が起こると、活性型FcγRのITAMシグナルが伝達されてしまい、IgG型の抗体により免疫細胞の活性化が起こる可能性が考えられ、生体反応としては好ましくない。そのため、IgG型の抗体が1分子のFcγRにしか結合できないように設計されており、それにより抗原存在下でのみ、2分子以上の活性型FcγRが架橋され、免疫細胞の活性化が起こる。
 一方、IgG型の抗体が、その可変領域(Fab)により第一の抗原が結合した場合、同時にFc領域で1分子のFcγRに結合することが可能であることから、第一の抗原とFcγRの架橋が起こる。抗原によっては、抗原とFcγRの架橋は好ましくない場合も存在する。例えば抗原とFcγRを架橋することによってサイトカインリリース等の免疫活性化が起こるような場合である(J. Immunol. (1999) Aug 1, 163(3), 1246-52)。そのような場合は、Fc領域に改変を導入することによって、FcγRに対する結合活性を無くし、第一の抗原とFcγRの架橋反応を防ぐことが可能である(Advanced Drug Delivery Reviews (2006) 58, 640- 656)。
 通常の天然型のIgG型の抗体は、その可変領域(Fab)により第一の抗原にしか結合することが出来ないが、bispecific抗体を作製する技術の進歩により、天然型のIgG型の抗体を改良することにより、第二の抗原への結合活性を付与することが可能である(MAbs. (2012) Mar 1, 4(2))。すなわち、第一の抗原と第二の抗原に対する結合活性を有し、FcγRに対する結合活性を有するFc領域を用いることで、第一の抗原とFcγRの架橋反応、第二の抗原とFcγRの架橋反応、および、第一の抗原と第二の抗原の架橋反応を起こすような改良型抗体を作製することが可能である。一方、FcγRに対する結合活性を低減させたFc領域を用いることで、第一の抗原とFcγRの架橋反応と第二の抗原とFcγRの架橋反応の両方を防ぎつつ、第一の抗原と第二の抗原の架橋反応だけを起こすような改良型抗体を作製することも可能である。
 しかしながら、これまでの方法では、第1の抗原とFcγRの架橋反応、および、第1の抗原と第2の抗原の架橋反応を起こしつつ、第2の抗原とFcγRの架橋反応が起こらない改良型抗体を作製することは不可能である。そこで、このような制御された架橋反応を実現する方法として、上記のFc領域が2分子のFcγRに同時には結合できない性質を利用できると考えた。具体的には、可変領域(Fab)により第1の抗原に対して結合活性を有し、Fc領域のX側(X面)で1分子のFcγRに結合し、改良されたFc領域のY側(Y面)で1分子の第2の抗原に結合するDual Binding Fcが考えられた(図3)。図1の左側のH鎖をHA鎖、右側をHB鎖とし、HA鎖側から抗体とFcγR複合体を見た構造およびその複合体を上(N末側)から見た構造を図3に示した。FcγRとの結合面はX側であり、第2の抗原との結合面がY側である。Fc領域が2分子のFcγRに同時には結合できないのと同じように、Y側で第2の抗原と結合する性質を付与した改良抗体は、図4に示すとおり、Y側で第2の抗原が結合すると構造変化によってX側のFcγRの結合が阻害され、同様にX側でFcγRが結合するとY側の第2の抗原の結合が阻害されると考えられた。したがって、このようなDual Binding Fcの性質を有する改良抗体は、FcγR及び第2の抗原に同時には結合することが出来ないため、FcγRと第2の抗原の架橋反応は起こらないと考えられた(図5)。一方、可変領域(Fab)で結合する第1の抗原とFcγRは架橋反応が起こり(図6)、また、第1の抗原と第2の抗原の架橋反応も同様に起こると考えられる(図7)。
 すなわち、Dual Binding Fcとして、Fc領域を改良することによって、以下の性質を付与することができれば、図5~7に示すような作用を有する抗体を創製することが可能である。
 1.X側で強いFcγRに対する結合活性を有する
 2.Y側で目的の抗原(第2の抗原)に対する結合活性を有する
 3.FcγR及びY側で結合する抗原に同時には結合しない
〔実施例2〕X側からのFcγRに対する結合活性の増強のコンセプト
 実施例1に記載したように、Dual binding Fcとは、X側でFcγRに結合し、Y側で第二の抗原に結合するが、FcγR及び第二の抗原に同時には結合しない分子である。第二の抗原と結合するためにFc領域にアミノ酸改変を導入する場合、通常二つのH鎖の両方にアミノ酸改変が導入される。しかし、両方のH鎖に改変を導入されると、目的とするY側だけでなくX側のアミノ酸も改変されてしまう。X側にも改変が導入された結果、X側ではFcγRとの相互作用が低下してしまう可能性がある。したがって、Dual Binding Fcは、X側ではFcγRと相互作用を増強するための改変が導入され、Y側では抗原と相互作用するための改変を導入することが必要である。
 通常抗体は、ホモ二量体であるためX側とY側の両方からFcγRが結合し得るため、どちらの接触面で結合しているかは区別されない。したがって、例えばY側の改変によってFcγRに対する結合活性を完全に失ってしまうと、X側からの結合のみとなるために天然型のIgGよりFcγRと結合する確率が半分になり、結合活性が低くなると予想される。しかし、抗体のFc領域のアミノ酸を改変することによって、X側のFcγRとの相互作用を増強することができれば、Y側からの結合の寄与が無くても、十分にFcγRと結合することができると考えられる。このような状態において、Y側に目的の抗原に対する結合活性を付与することができれば、Dual binding Fcのコンセプトを達成することが可能である。
 このようなY側で抗原に結合する抗体分子のX側からのFcγRとの相互作用を天然型のIgG抗体と同程度以上にする(これを、FcγRに対する結合活性が維持されているという)もしくは各FcγRに対する結合活性を増強する(最適化する)方法として、FcγRとの相互作用を増強するアミノ酸改変を導入する方法がある。これまでに報告されているFcγRとの相互作用を増強するアミノ酸改変は、Fc領域を形成する2つの重鎖に同一の改変が左右対称に導入されている(WO2006/019447、WO2000/042072)。
 一方で、抗体の2つの重鎖のCH2ドメインを介してFcγRは認識されているが、FcγRと相互作用しているアミノ酸は各重鎖において異なる。つまり、FcγRと抗体の相互作用では、CH2ドメインは非対称に相互作用している。例えば、EUナンバリング327番目のAlaはHA鎖、HB鎖の各鎖でFcγRと相互作用しているが、各H鎖において相互作用する相手側の残基の性質が異なる(図8)。HA鎖においてはFcγRIIIのEUナンバリング87番目とEUナンバリング110番目のTrpと疎水的に相互作用しているが、HB鎖においてはEUナンバリング131番目のHisと相互作用している。そのため、EUナンバリング327番目のAlaをTrp等の疎水性の高いアミノ酸と置換した場合、HA鎖ではFcγRに対する結合活性を向上させる効果があっても、HB鎖ではFcγRに対する結合活性を低減させる可能性がある。
 このことから、アミノ酸改変によってIgGのFc領域のX側からのFcγRに対する相互作用を最適化するためには、各H鎖におけるFcγRに対する非対称的な効果を考慮する必要があると考えられる。しかし、IgGのFc領域がFcγRと非対称に相互作用することを考慮すると、各H鎖に異なる改変を導入した方がIgGとFcγRとの相互作用をより精密に最適化することができると考えられる。すなわち、Fc領域のFcγRに対する相互作用を最適化するために各H鎖に異なる改変を加えた抗体であるヘテロ二量化抗体を使うことで、従来技術で実施されてきた各H鎖に同じ改変を加えた抗体であるホモ二量化抗体と比べて、X側でのFcγRとの相互作用を増強(最適化)することが可能であると考えられた。X側からのFcγRとの相互作用が増強されたヘテロ二量化抗体を用いれば、X側で強いFcγRに対する結合活性を有し、Y側で目的の抗原に対する結合活性を有し、且つ、FcγR及びY側で結合する抗原に同時には結合しないDual Binding Fcを創製することが可能であると考えられる。
〔実施例3〕ヘテロ二量化抗体によるX側からのFcγRに対する結合活性増強
(3-1)ヘテロ二量体化抗体によるX側からのFcγRに対する結合活性増強のコンセプト証明
 ヘテロ二量体化抗体を利用することでX側からのFcγRに対する結合活性を増強(最適化)できるか検討した。
 従来は、抗体の各H鎖に同じ改変を導入したホモ二量化抗体を用いることで、FcγRに対する結合活性が増強する改変を探索していた。しかし、実施例2で言及したように抗体とFcγRとが非対称に相互作用することから、両H鎖に同じ改変を導入した場合、その改変が一方のH鎖ではFcγRに対する結合活性を増強するが、もう一方のH鎖では結合を阻害している可能性がある。このような改変を両H鎖に導入したホモ二量化抗体では、FcγRに対する結合活性を必ずしも増強しないが、一方のH鎖にのみ改変を導入したヘテロ二量化抗体ではFcγRに対する結合活性を増強する可能性がある。言い換えれば、その改変はX側でのFcγRとの相互作用を増強できるが、Y側でのFcγRとの相互作用を必ずしも増強しないことを示しており、このような改変はX側の結合活性を増強する改変であるといえる。
 具体的には、S239D、I332E、A330Lの改変を導入した抗体の場合、その立体構造からHA鎖においてはS239D、I332E、A330Lの改変された全ての残基がFcγRとの相互作用の増強に関与しているが、HB鎖ではS239D以外はFcγRと接しておらず、X側でのFcγRに対する結合活性増強に寄与していないと考えられた(図9)。すなわち、Fc領域とFcγRとの相互作用の非対称性を考慮すると、従来の抗体改変技術で導入した各改変はX側とY側のFcγRと十分に相互作用できず、抗体とFcγRとの相互作用を最適化するのには不十分と考えられる。例えば、上記のS239D、I332E、A330Lの改変の場合、HB鎖にこれらの改変の代わりにFcγRIIIaとの相互作用をHB鎖側から増強する改変を導入することで、X側でのFcγRIIIaに対する結合活性を更に増強することが可能になると考えられる。
 FcとFcγRIIIaの複合体の立体構造から、S239D、I332E、A330L とは反対に、S298はFcγRとは図9のHB鎖でしか相互作用していないと考えられる(JBC, 276: 16469-16477, 2001)。このことから、S298に改変を導入した場合、置換されたアミノ酸残基もHB鎖側でFcγRIIIaと相互作用すると考えられる。したがって、S239D、A330L、I332E を同じH鎖に導入し、L234Y、G236W、S298Aを反対のH鎖に導入すれば、導入した全ての改変がFcγRと同時に相互作用することが可能になり、その結果としてFcγRとの相互作用を一層増強することができると考えられる。
 この仮説を検証するために、S239D、A330L、I332E を同じH鎖に導入し、L234Y、G236W、S298Aを反対のH鎖に導入したヘテロ二量体化抗体、それぞれの改変体のホモ二量体化抗体(従来技術)、並びにそれぞれの改変体と天然型のIgG1定常領域とのヘテロ二量体化抗体を調製し、FcγRに対する結合活性を比較した。従来の考えに基づくと、その改変がFcγRに対する結合活性を増強するのであれば、必ずホモ二量化抗体の方がヘテロ二量化抗体よりも優れているはずである。しかし、仮に抗体のFcがFcγRを非対称に認識しているのであれば、改変の種類によっては、ヘテロ二量化抗体の方がホモ二量化抗体よりもFcγRに対して強い結合活性を示すはずである。
 抗体のH鎖の可変領域としては、WO2009/041062に開示される血漿中動態が改善した抗グリピカン3抗体のpH7のCDRを含むグリピカン3抗体の可変領域を使用し、GpH7(配列番号:1)と呼ぶ。抗体H鎖定常領域として、以下のものを使用し、それをGpH7と組み合わせて使用した。なお、抗体H鎖定常領域の名称をH1とした場合、可変領域にGpH7を持つ抗体のH鎖に対応する配列はGpH7-H1と呼ぶ。なお、アミノ酸の改変を示す場合には、D356Kのように示す。最初のアルファベット(D356KのDに該当)は、改変前のアミノ酸残基を一文字表記で示した場合のアルファベットを意味し、それに続く数字(D356Kの356に該当)はその改変箇所のEUナンバリングを意味し、最後のアルファベット(D356KのKに該当)は改変後のアミノ酸残基を一文字表記で示した場合のアルファベットを意味する。GpH7を可変領域に持つIgG1のC末端のGlyおよびLysを除去したGpH7-G1d(配列番号:2)、GpH7-G1dにD356K及びH435Rの変異を導入したGpH7-A5(配列番号:3)、GpH7-G1dにK439Eの変異を導入したGpH7-B3(配列番号:4)を参考実施例1の方法にしたがって調製した。それぞれのH鎖に導入したD356KおよびK439Eの変異は、2つのH鎖からなるヘテロ二量化抗体を産生する際に、各H鎖のヘテロ体を効率的に形成させるために導入した(WO2006/106905)。H435RはProtein Aへの結合を妨げる改変であり、ヘテロ体とホモ体を効率よく分離するために導入した(WO/2011/078332)。同様に、抗体のL鎖にはWO2009/041062に開示される血漿中動態が改善したグリピカン3抗体のL鎖であるGpL16-k0(配列番号:5)を使用した。
 GpH7-A5、GpH7-B3を親ポリペプチドとして、ヘテロ二量化抗体のコンセプトを証明するための変異を導入し、改変体を調製し、評価した。作製した発現ベクターは、参考実施例1の方法に従い、FreeStyle293細胞(invitrogen)へのトランスフェクションに用いた。発現した抗体は参考実施例1の方法に従い、精製した。ホモ二量化抗体を発現させる際には、抗体L鎖であるGpL16-k0が挿入された発現ベクターと一種類の抗体H鎖配列が挿入された発現ベクターを用いた。ヘテロ二量化抗体を発現させる際には、抗体L鎖としてはホモ二量化抗体と同様にGpL16-k0が挿入された発現ベクターを用い、抗体H鎖の1つとしてD356Kの改変を導入したGpH7-A5に更に改変を加えた配列を挿入した発現ベクターを用い、抗体H鎖のもう1つとしてK439Eの改変を導入したGpH7-B3に更に改変を導入した配列を挿入した発現ベクターを用い、ヘテロ二量化抗体が効率的に発現するようにした。発現後に精製して得られた抗体は、例えばヘテロ二量化抗体の発現に用いた抗体H鎖に対応する発現ベクターの一つがGpH7-H1、もう一つの抗体H鎖がGpH7-H2、抗体L鎖に対応する発現ベクターがGpL16-k0である場合、GpH7-H1/GpH7-H2/GpL16-k0と表記する。この際にD356K、H435Rの改変が導入されている配列をH1、K439Eの改変が導入されている配列をH2に対応させた。
 次に、参考実施例1の方法にしたがってS239D、A330L、I332EをGpH7-A5に全てに導入したGpH7-A57(配列番号:6)、GpH7-B3に導入したGpH7-B78(配列番号:7)およびL234Y、G236W、S298Aを全てGpH7-A5に導入したGpH7-TA7(配列番号:8)、GpH7-B3に導入したGpH7-TA45(配列番号:9)を挿入した発現ベクターを調製した。これらの発現ベクター及びGpH7-A5、GpH7-B3、GpL16-k0を使って、一方のH鎖にL234Y、G236W、S298Aを、もう一方のH鎖にS239D、A330L、I332Eを導入したヘテロGpH7-TA7/GpH7-B78/GpL16-k0と、L234Y、G236W、S298Aのみを一方のH鎖に導入したGpH7-TA7/GpH7-B3/GpL16-k0と、L234Y、G236W、S298Aを両方のH鎖に導入したGpH7-TA7/GpH7-TA45/GpL16-k0と、S239D、A330L、I332Eのみを一方のH鎖に導入したGpH7-A5/GpH7-B78/GpL16-k0と、S239D、A330L、I332Eを両方のH鎖に導入したGpH7-A57/GpH7-B78/GpL16-k0とを参考実施例1の方法に従って発現、調製した。調製した抗体は参考実施例2の方法に従って測定したFcγRIIIaに対するKDを指標に、FcγRIIIaに対する結合活性を比較し、L234Y、G236W、S298AとS239D、A330L、I332Eの組み合わせの効果の検証結果を表5にまとめた。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000021
 サンプルの欄には抗体の名称、H1、H2の欄には各抗体のH鎖定常領域の名称、変異箇所の欄にはGpH7-A5/GpH7-B3/GpL16-k0と比較して異なる変異(特に変異がない場合には「-」)を表記した。GpH7-G1d/GpL16-k0のFcγRIIIaに対するKDを各抗体のKDで割った値をKD ratio 1とし、GpH7-A5/GpH7-B3/GpL16-k0のFcγRIIIaに対するKDを各抗体のKDで割った値をKD ratio 2とした。各抗体のH鎖、L鎖に対応するアミノ酸配列の配列番号を併記した。
 表5の結果から、まずヘテロ二量体化抗体を調製するために導入したD356K,H435RおよびK439Eをそれぞれ一方のH鎖に導入した場合にFcγRとの相互作用に与える影響を検証した。天然型IgG1であるGpH7-G1d/GpL16-k0と、D356K、H435RおよびK439Eをそれぞれ一方のH鎖に導入したGpH7-A5/GpH7-B3/GpL16-k0とを比較すると、そのFcγRIIIaに対する結合活性の変化は0.75倍であり、大きな差異は観察されなかった。このことから、D356K、H435RおよびK439Eの改変はFcγRに対する結合活性に対して影響を与えないと考えられた。
 次に、表5の結果から、ヘテロ二量体化抗体がFcγRとの相互作用を増強(最適化)することが可能であるか検証した。
 従来技術を用いたホモ二量化抗体について、各改変の効果を検証した。S239D、A330L、I332Eを両H鎖に導入したホモ二量化抗体GpH7-A57/GpH7-B78/GpL16-k0ではGpH7-A5/GpH7-B3/GpL16-k0と比べてFcγRIIIaに対する結合活性が約260倍増強していたが、反対にL234Y、G236W、S298Aを両H鎖に導入したホモ二量化抗体GpH7-TA7/GpH7-TA45/GpL16-k0では0.49倍に減弱していた。この結果から、ホモ二量化抗体においてはS239D、A330L、I332Eの改変群にのみFcγRIIIaに対する結合活性増強効果があることが明らかとなった。
 各改変群を一方のH鎖にのみ導入したヘテロ二量化抗体について、各改変群の効果を検証した。S239D、A330L、I332Eを一方のH鎖に導入したヘテロ二量化抗体GpH7-A5/GpH7-B78/GpL16-k0ではGpH7-A5/GpH7-B3/GpL16-k0と比べてFcγRIIIaに対する結合活性が30倍増強し、L234Y、G236W、S298Aを一方のH鎖に導入したヘテロ二量化抗体GpH7-TA7/GpH7-B3/GpL16-k0では5.1倍増強した。この結果から、S239D、A330L、I332Eの改変群の方がFcγRIIIaに対する結合活性増強効果が高いことが明らかとなった。
 各改変群のホモ二量化抗体とヘテロ二量化抗体における効果の違いを検証した。S239D、A330L、I332Eについては、そのヘテロ二量化抗体においてはGpH7-A5/GpH7-B3/GpL16-k0と比べてFcγRIIIaに対する結合活性が30倍増強し、ホモ二量化抗体では約260倍増強しており、ホモ二量化抗体に導入したほうがFcγRIIIaに対する結合活性の増強を一層高められることが明らかとなった。一方で、L234Y、G236W、S298Aについては、そのヘテロ二量化抗体においてはGpH7-A5/GpH7-B3/GpL16-k0と比べてFcγRIIIaに対する結合活性が5.1倍増強したにも関わらず、ホモ二量化抗体では0.49倍に減弱していた。この結果はL234Y、G236W、S298Aの改変群はヘテロ二量化抗体においてのみ、FcγRIIIaに対する結合活性増強効果が見出されることを示している。
 ホモ二量化抗体においてはS239D、A330L、I332Eの改変群のみがFcγRIIIaに対する結合増強効果を示し、ヘテロ二量化抗体においてもS239D、A330L、I332Eの改変群のほうFcγRIIIaに対する結合増強が高いことが示されてきた。これらの結果から、S239D、A330L、I332Eの改変群とL234Y、G236W、S298Aの改変群との組み合わせを考えた場合、従来の考えに基づいて考えれば、ヘテロ二量化抗体、ホモ二量化抗体のいずれにおいてもFcγRIIIaに対する結合増強が高いS239D、A330L、I332Eの改変群のみを両H鎖に導入したホモ二量化抗体GpH7-A57/GpH7-B78/GpL16-k0がFcγRIIIaに対する結合増強効果が最も高いと予測される。しかし、S239D、A330L、I332Eを一方のH鎖に導入し、L234Y、G236W、S298Aをもう一方のH鎖に導入したヘテロ二量化抗体GpH7-TA7/GpH7-B78/GpL16-k0はGpH7-A5/GpH7-B3/GpL16-k0と比べてFcγRIIIaに対する結合活性が約350倍増強し、S239D、A330L、I332Eを両H鎖に導入したホモ二量化抗体よりも高い結合活性増強効果を示していた。これはS239D、A330L、I332Eの改変群とL234Y、G236W、S298Aの改変群を異なるH鎖に導入することで、導入された全ての改変がHA鎖、HB鎖の両方からFcγRIIIaに対する結合活性を増強させ、S239D、A330L、I332Eの改変群を両H鎖に導入した場合よりも高い効果を発揮するという仮説を裏付ける結果であると考えられた。
 以上の結果から、ヘテロ二量化抗体を用いることで、従来のホモ二量化抗体を用いるよりも、Fc領域とFcγRIIIaとの非対称な相互作用をより最適化することができ、より高い結合活性を有するFc領域をデザインすることができることが示された。すなわち、このような改変群を採用することで、Dual Binding Fc分子において、X側でFcγRとの相互作用を増強(最適化)することが可能であることを示している。さらにL234Y、G236W、S298Aの改変群を両鎖に導入したホモ二量体化抗体ではFcγRとの相互作用が減弱したことから、L234Y、G236W、S298Aの改変群はX側のFcγRに対する結合活性は増強するが、Y側でのFcγRとの結合に関与せず、FcγRとの相互作用の増強の観点から効果がない改変となる。この時、Y側は抗原との相互作用に利用することができるため、第一のH鎖と第二のH鎖に異なる改変を導入したヘテロ二量体化抗体はDual Binding Fcに利用することができると考えられた。
(3-2)FcγRIIIaに対して結合活性が増強したヘテロ二量体化抗体のADCC活性について
 前項で考察したように、ヘテロ二量化抗体を用いることで、X側でのFcγRとの相互作用を増強することができ、さらに従来のホモ二量化抗体技術によって創製された改変体よりもFcγRIIIaに対する結合活性を増強することに成功した。抗体はFcγRIIIaを介してNK細胞を誘導し、標的抗原を発現する細胞に対する抗体依存的細胞障害活性を発揮する。ヘテロ二量化抗体においてFcγRIIIaに対する結合活性だけでなく、ADCC活性も同様に増強していることを確認するために、表5に記載したFcγRIIIaに対する結合活性が上昇したヘテロ二量化抗体、ホモ二量化抗体、および天然型IgG1について、参考実施例3の方法に従ってADCC活性を測定した。その結果を図10に示す。
 図10の結果より、天然型IgG1であるGpH7-G1d/GpL16-k0と、D356K、H435RおよびK439Eをそれぞれ一方のH鎖に導入したGpH7-A5/GpH7-B3/GpL16-k0とを比較すると、そのADCC活性には大きな差異は観察されなかった。このことから、D356K、H435RおよびK439Eの改変はADCC活性に対して影響を与えないと考えられた。
 次に、従来通りFcγRIIIaに対する結合活性を増強する改変を抗体の両H鎖に同じく導入したホモ二量化抗体について、その結合活性増強効果がADCC活性においても同様の傾向が観察されるかを検証した。L234Y、G236W、S298Aを両H鎖に導入したGpH7-TA7/GpH7-TA45/GpL16-k0と、S239D、A330L、I332Eを両H鎖に導入したGpH7-A57/GpH7-B78/GpL16-k0を比較した。FcγRIIIaに対する結合活性に関しては、GpH7-A57/GpH7-B78/GpL16-k0ではGpH7-A5/GpH7-B3/GpL16-k0と比べて顕著に結合活性が増強していたが、GpH7-TA7/GpH7-TA45/GpL16-k0では結合活性が低下していた。ADCC活性においてもGpH7-A57/GpH7-B78/GpL16-k0はGpH7-A5/GpH7-B3/GpL16-k0よりも活性が上昇していたが、GpH7-TA7/GpH7-TA45/GpL16-k0はGpH7-A5/GpH7-B3/GpL16-k0よりも活性が減少していた。このようにホモ二量化抗体については、FcγRIIIaに対する結合活性の強さとADCC活性の強さとに相関が観察された。
 次に、抗体の一方のH鎖にのみFcγRIIIaに対する結合活性を増強する改変を導入したヘテロ二量化抗体について、その結合活性増強効果がADCC活性においても同様の傾向が観察されるかを検証した。L234Y、G236W、S298Aを一方のH鎖に導入したGpH7-TA7/GpH7-B3/GpL16-k0と、S239D、A330L、I332Eを一方のH鎖に導入したGpH7-A5/GpH7-B78/GpL16-k0を比較した。FcγRIIIaに対する結合活性に関しては、GpH7-A5/GpH7-B78/GpL16-k0とGpH7-TA7/GpH7-B3/GpL16-k0のいずれも、GpH7-A5/GpH7-B3/GpL16-k0と比べて増強しており、ADCC活性においても同様の傾向が観察された。加えて、GpH7-A5/GpH7-B78/GpL16-k0の方がGpH7-TA7/GpH7-B3/GpL16-k0よりもFcγRIIIaに対する結合活性が増強しているが、ADCC活性においても同様の傾向が保たれており、ホモ二量化抗体と同様にヘテロ二量化抗体においてもFcγRIIIaに対する結合活性の強さとADCC活性の強さとが相関することが示された。
 次に、L234Y、G236W、S298AおよびS239D、A330L、I332Eの各改変群について、それぞれのヘテロ二量化抗体、ホモ二量化抗体におけるFcγRIIIaに対する結合活性とADCC活性増強効果に相関が観察されるか検証した。まずS239D、A330L、I332Eの改変群を一方のH鎖にのみ導入したヘテロ二量化抗体であるGpH7-A5/GpH7-B78/GpL16-k0と両H鎖に導入したホモ二量化抗体であるGpH7-A57/GpH7-B78/GpL16-k0とを比較すると、FcγRIIIaに対する結合活性に関してはヘテロ二量化抗体よりもホモ二量化抗体の方が結合活性を増強する効果は高かったが、ADCC活性に関して差は認められなかった。次に、L234Y、G236W、S298Aの改変群を一方のH鎖にのみ導入したヘテロ二量化抗体であるGpH7-TA7/GpH7-B3/GpL16-k0と両H鎖に導入したホモ二量化抗体であるGpH7-TA7/GpH7-TA45/GpL16-k0とを比較すると、FcγRIIIaに対する結合活性に関してはヘテロ二量化抗体の方がGpH7-A5/GpH7-B3/GpL16-k0よりも結合活性を増強しているのに対して、ホモ二量化抗体では結合活性が減弱していた。ADCC活性についても、同様の傾向が観察された。このことから、L234Y、G236W、S298Aの改変群が有するFcγRIIIaに対する結合活性を一方向のみから増強するという効果がADCC活性にも反映されたと考えられた。これらの結果から、ある改変群を一方のH鎖にのみ導入したヘテロ二量化抗体と、両H鎖に導入したホモ二量化抗体とのFcγRIIIaに対する結合活性の強さとADCC活性の強さとが相関すると考えられた。
 次に、L234Y、G236W、S298Aを一方のH鎖に、S239D、A330L、I332Eをもう一方のH鎖に導入したヘテロ二量化抗体であるGpH7-TA7/GpH7-B78/GpL16-k0とS239D、A330L、I332Eを両H鎖に導入したホモ二量化抗体であるGpH7-A57/GpH7-B78/GpL16-k0とを比較した。FcγRIIIaに対する結合活性に関しては、いずれもGpH7-A5/GpH7-B3/GpL16-k0と比べて顕著に増強しており、ADCC活性においても同様の傾向が観察された。加えて、GpH7-TA7/GpH7-B78/GpL16-k0の方がGpH7-A57/GpH7-B78/GpL16-k0よりもFcγRIIIaに対する結合活性が増強しており、ADCC活性においてもGpH7-TA7/GpH7-B78/GpL16-k0の方が強いADCC活性を示していた。
 前述の通り、L234Y、G236W、S298AとS239D、A330L、I332Eの各改変群については、それぞれを一方のH鎖に導入した場合にも、両H鎖に導入した場合にも、後者のS239D、A330L、I332Eの改変群の方がADCC活性をより増強する効果が観察されていた。しかし、L234Y、G236W、S298AとS239D、A330L、I332Eの各改変群を異なるH鎖に導入することにより、ヘテロ二量化抗体およびホモ二量化抗体のそれぞれにおいてADCC活性増強効果の高いS239D、A330L、I332Eを両H鎖に加えるよりも、ADCC活性増強効果を示すことが明らかとなった。
 すなわち、従来技術であるホモ二量化抗体で観察されてきたようなFcγRIIIaに対する結合活性の強さとADCC活性の強さとの相関は、ヘテロ二量化抗体同士の比較、ヘテロ二量化抗体とホモ二量化抗体との比較のいずれにおいても同様に観察されることが明らかとなった。このことから、X側でのFcγRとの相互作用を増強(最適化)することができるヘテロ二量化抗体技術を利用することで、従来技術よりも優れたADCC活性を有する抗体を創製することが可能であることが明らかとなった。(3-1)と同様に、L234Y、G236W、S298Aを両鎖に導入したホモ二量体化抗体はADCC活性が低下していることから、Y側はFcγRとの相互作用に利用されていないことが確認された。この時、Y側は抗原との相互作用に利用することができるため、第一のH鎖と第二のH鎖に異なる改変を導入したヘテロ二量体化抗体はDual Binding Fcに利用することができると考えられた。
(3-3)FcγRIIIaに対して結合活性が増強したヘテロ二量体化抗体の熱安定性評価
 抗体を医薬品として開発する際には、生物の体内での安定性および保存安定性が求められるため、高度な物理化学的安定性を有することも期待される。例えば、上記で言及したS239D、A330L、I332Eを抗体の両鎖に導入した改変の場合、この改変を導入すると、抗体のFc領域が熱力学的に不安定になることが報告されており、熱安定性の低下は医薬品としての開発を困難にさせる(Molecular Immunol.(2008) 45, 1872-1882)。抗体の医薬品としての有用性および開発の容易さを高めるためには、FcγRに対する結合活性を増強する一方で、物理化学的な安定性を維持することも重要である。ホモ二量化抗体では改変を両H鎖に導入するために、1種類の改変を導入すると抗体1分子あたり2箇所改変を導入することになる。しかし、ヘテロ二量化抗体では各H鎖に対して改変を導入するか否か選択できるために、1種類の改変を導入するとしても抗体1分子あたりに1箇所改変を導入するのに留めることが可能である。前項で考察したように、改変の種類によってはFcγRIIIaに対する結合活性の増強効果に関しては一方のH鎖に導入すれば十分な場合がある。仮にその改変が抗体の物理化学的な安定性を減じる効果を持っていた場合には、一方のH鎖にのみその改変を導入することでFcγRIIIaに対する結合活性増強効果を付与する一方で、抗体の物理化学的な不安定化を最小限にとどめることが可能であると考えられる。
 これを検証するために、前項で用いられた一方のH鎖にL234Y、G236W、S298Aの改変群を、もう一方のH鎖にS239D、A330L、I332Eの改変群を導入したヘテロ二量化抗体GpH7-TA7/GpH7-B78/GpL16-k0と、L234Y、G236W、S298Aの改変群のみを一方のH鎖に導入したヘテロ二量化抗体GpH7-TA7/GpH7-B3/GpL16-k0と、両H鎖に導入したホモ二量化抗体GpH7-TA7/GpH7-TA45/GpL16-k0と、S239D、A330L、I332Eのみを一方のH鎖に導入したヘテロ二量化抗体GpH7-A5/GpH7-B78/GpL16-k0と、両H鎖に導入したホモ二量化抗体GpH7-A57/GpH7-B78/GpL16-k0とを参考実施例1の方法に従って調製した。各抗体の熱安定性は改変を加えているCH2ドメインの熱変性温度(以下Tmという)を参考実施例4の方法にしたがってThermal shift assayによって比較し、L234Y、G236W、S298AとS239D、A330L、I332Eの組み合わせのTmに与える影響を検討した(表6)。なお、以下の文章で特に断らない限りTmとはCH2ドメインの熱変性温度である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000022
 サンプルの欄には抗体の名称、H1、H2の欄には各抗体のH鎖定常領域の名称、変異箇所の欄にはGpH7-G1d/GpL16-k0と比較して異なる変異(特に変異がない場合には「-」)、Tmの欄には各抗体のTm、△Tmの欄には各抗体のTmとGpH7-A5/GpH7-B3/GpL16-k0のTmとの差を表記した。各抗体のH鎖、L鎖に対応するアミノ酸配列の配列番号を併記した。
 ヘテロ二量化抗体形成効率を高める改変D356K/H435RおよびK439Eを導入したGpH7-A5/GpH7-B3/GpL16-k0を天然型IgG1であるGpH7-G1d/GpL16-k0と比較すると、CH2ドメインのTmの低下は1℃であった。
 従来技術であるホモ二量化抗体について、各改変群の効果を検証した。S239D、A330L、I332Eを両H鎖に導入したホモ二量化抗体GpH7-A57/GpH7-B78/GpL16-k0ではGpH7-A5/GpH7-B3/GpL16-k0と比べてTmが20℃低下し、著しく安定性が低下していた。一方で、L234Y、G236W、S298Aの改変群を両H鎖に導入したホモ二量化抗体GpH7-TA7/GpH7-TA45/GpL16-k0ではTmの低下が観察されなかったことから、ホモ二量化抗体においてはL234Y、G236W、S298Aの改変群自体にはTmを低減する効果がないと考えられた。
 各改変群を一方のH鎖にのみ導入したヘテロ二量化抗体について、各改変群の効果を検証した。S239D、A330L、I332Eを一方のH鎖に導入したヘテロ二量化抗体GpH7-A5/GpH7-B78/GpL16-k0ではGpH7-A5/GpH7-B3/GpL16-k0と比べてTmが8℃低下し、L234Y、G236W、S298Aを一方のH鎖に導入したヘテロ二量化抗体GpH7-TA7/GpH7-B3/GpL16-k0ではTmの低下は観察されなかった。この結果から、ヘテロ二量化抗体においてもL234Y、G236W、S298Aの改変群自体にはTmを低減する効果がないと考えられた。
 S239D、A330L、I332Eを両H鎖に導入したGpH7-A57/GpH7-B78/GpL16-k0では天然型IgG1と比べてTmが21℃減少していたが、一方のH鎖にのみS239D、A330L、I332Eの改変を有するGpH7-A5/GpH7-B78/GpL16-k0ではTmは60℃であり、ホモ二量化抗体よりも10℃以上高いTmを維持していた。表5より、S239D、A330L、I332Eのホモ二量化抗体の方が、ヘテロ二量化抗体よりも約9倍FcγRIIIaに対する結合活性が増強していた。S239D、A330L、I332Eは両H鎖に導入することで、FcγRIIIaに対する結合活性を大きく増強するが、Tmも著しく低下させてしまう。
 次に、L234Y、G236W、S298Aを両H鎖に導入したGpH7-TA7/GpH7-TA45/GpL16-k0では天然型抗体と比べてTmが1℃のみ減少しており、これはL234Y、G236W、S298AによるTmの減少ではなく、先に考察した通りヘテロ二量化抗体を作るために利用したD356K/H435RおよびK439Eの影響であると考えられた。これは、L234Y、G236W、S298Aを一方のH鎖に導入したGpH7-TA7/GpH7-B3/GpL16-k0でも同様にTmが1℃しか減少していないことからも示される。
 最後に、L234Y、G236W、S298Aを一方のH鎖に、S239D、A330L、I332Eをもう一方のH鎖に持つGpH7-TA7/GpH7-B78/GpL16-k0のTmは天然型抗体から10℃低下しており、S239D、A330L、I332Eを一方のH鎖に導入したGpH7-A5/GpH7-B78/GpL16-k0とほぼ同一である。しかし、表5よりGpH7-TA7/GpH7-B78/GpL16-k0はGpH7-A5/GpH7-B78/GpL16-k0よりもFcγRIIIaに対する結合活性が10倍以上増強している。
 すなわち、L234Y、G236W、S298Aを一方のH鎖に、S239D、A330L、I332Eをもう一方のH鎖にしたヘテロ二量化抗体GpH7-TA7/GpH7-B78/GpL16-k0を用いることで、S239D、A330L、I332Eのホモ二量化抗体GpH7-A57/GpH7-B78/GpL16-k0と比べて、FcγRIIIaに対する結合活性を増強させることができる上に、Tmも10℃以上向上させることが可能であることが明らかとなった。このことは、ヘテロ二量化抗体は通常のホモ二量化抗体と比較して、FcγRに対する結合活性を増強できるだけでなく、安定性も改善することで、抗体の医薬品としての価値をホモ二量化抗体よりもさらに高めることのできる技術であることを示している。Dual binding Fcは、第一のH鎖と第二のH鎖に異なる改変を加えるため、前述の抗体の様に、ホモ二量体化抗体よりもFcγRに対する結合活性を増強(最適化)できるだけでなく、安定性も向上した分子となる。
(3-4-1)FcγRIIIaに対する結合活性を増強したヘテロ二量化抗体H240-Kn061/H240-Hl071/L73-k0の創出
 前項でヘテロ二量体化抗体が従来技術であるホモ二量体抗体よりもFcγRとの相互作用を強める(もしくは最適化する)だけでなく、熱安定性の面からも優れていることが示された。さらにFcγRIIIaに対する結合活性を増強した改変体では、ADCC活性が増強されることが示された。そこで、さらにFcγRとの相互作用を最適化した抗体を創出した。
 ここでは、抗Epiregulin (EREG) 抗体を用い、抗EREG抗体のH鎖可変領域の配列をH240(配列番号:10)、可変領域、定常領域を含むL鎖の配列をL73-k0(配列番号:11)とする。また、ヘテロ二量化技術としてはKnobs-into-Holes技術を用いた。Knobs-into-Holes技術は一方のH鎖のCH3領域に存在するアミノ酸側鎖をより大きい側鎖(knob; 突起)に置換し、もう一方のH鎖のCH3領域に存在するアミノ酸側鎖をより小さい側鎖(hole; 空隙)に置換することにより、突起が空隙内に配置されるようにして、H鎖のヘテロ二量化を促進し、目的のヘテロ二量化抗体を効率的に取得できる技術である(Nature, (1994) 372, 379-383)。
具体的には、H240-G1d (配列番号:12)に対してY349C、T366Wの改変を定常領域に導入したH240-Kn033(配列番号:13)、H240-G1dに対してD356C、T366S、L368A、Y407Vの改変を定常領域に導入したH240-Hl033(配列番号:14)を参考実施例1の方法にしたがって調製した。
比較用抗体の調製
 FcγRIIIaに対する結合活性を増強する(Glycobiol. (2006) Vol.17 no.1 pp. 104-118など)と報告のあるアフコシル化抗体を比較のために作製した。相同染色体上の両方のフコーストランスポーター遺伝子の発現が人為的に抑制されている細胞ではフコーストランスポーターの機能が阻害される。この細胞を用いることでフコースが欠損した抗体を得ることが可能である(WO2006/067913等)。また、beta 1, 4-N-acetylglucosaminyltransferase IIIとGolgi alpha-mannosidase IIが強制発現される細胞で抗体を産生させてもフコースが欠損した抗体を得ることが可能である(Ferrara ら、 Biotechnol. Bioeng. (2006) 93 (5), 851-861)。これら同業者公知の手法により、H240-G1d(配列番号:12)およびL73-k0(配列番号:11)を組み合わせて発現させ、H240-G1d/L73-k0をアフコシル化した抗体H240-afucosyl_G1d/L73-k0を得た。
 次に、FcγRIIIaに対する結合活性を増強すると報告のあるS239D、A330L、I332Eを導入した改変体を本項で調製するヘテロ二量体化抗体の比較対象として用いるために作製した。具体的には参考実施例1の方法にしたがってS239D、A330L、I332EをH240-Kn033(配列番号:13)、H240-Hl033(配列番号:14)のそれぞれに導入した、H240-Kn032(配列番号:15)、H240-Hl032(配列番号:16)を作製した。H240-Kn032、H240-Hl032、L73-k0を組み合わせて、参考実施例1の方法にしたがってホモ二量化抗体H240-Kn032/H240-Hl032/L73-k0を発現させた。
FcγRとの相互作用を増強させた抗体の作製
 FcγRとの相互作用を増強させた抗体を作製した。具体的には、H240-Kn033(配列番号:13)にL234Y、L235Y、G236W、H268D、S298Aを導入し、H240-Kn061(配列番号:17)を参考実施例1の方法にしたがって作製し、H240-Hl033(配列番号:14)にK326D、A330M、K334Eを導入し、H240-Hl071(配列番号:18)を参考実施例1の方法にしたがって作製した。
 さらに、ヘテロ二量化抗体H240-Kn061/H240-Hl071/L73-k0がその各H鎖から成るホモ二量化抗体よりもFcγRに対する結合活性を増強するというヘテロ二量化抗体の特徴を有するかを確認するために、L234Y/L235Y/G236W/H268D/S298AをH240-Hl033に導入したH240-Hl134(配列番号:19)、およびK326D/A330M/K334EをH240-Kn033に導入したH240-Kn132(配列番号:20)を参考実施例1の方法にしたがって作製した。この発現ベクターを用いて、参考実施例1の方法にしたがい、L234Y/L235Y/G236W/H268D/S298Aを両H鎖に有するようなホモ二量化抗体H240-Kn061/H240-Hl134/L73-k0を発現させ、K326D/A330M/K334Eを両H鎖に有するようなホモ二量化抗体H240-Kn132/H240-Hl071/L73-k0を発現させた。
 また、参考実施例1の方法にしたがって、コントロールとしてH240-Kn033(配列番号:13)、H240-Hl033(配列番号:14)、L73-k0(配列番号:11)を組み合わせてH240-Kn033/H240-Hl033/L73-k0を発現させた。
 これらについて、参考実施例2の方法にしたがって、各FcγRに対する結合活性を評価した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000023
 表7の結果から、ヘテロ二量化抗体H240-Kn061/H240-Hl071/L73-k0はH240-Kn033/H240-Hl033/L73-k0と比較して、特にFcγRIIIa F、FcγRIIIa Vに対する結合活性が増強していた。ヘテロ二量化抗体H240-Kn061/H240-Hl071/L73-k0はH240-Kn033/H240-Hl033/L73-k0にL234Y/L235Y/G236W/H268D/S298AおよびK326D/A330M/K334Eを導入した改変体であることから、これらの導入された改変体のFcγRに対する結合活性が増強されたと言える。
 表7の結果から、ヘテロ二量化抗体H240-Kn061/H240-Hl071/L73-k0は既存のADCC活性増強技術を適用したH240-afucosyl_G1d/L73-k0およびH240-Kn032/H240-Hl032/L73-k0と比較してFcγRIIIa F、FcγRIIIa Vに対する結合活性が増強していた。この結果から、ヘテロ二量化抗体は従来のホモ二量化抗体によるADCC活性増強技術およびアフコシル化によるADCC活性増強技術と比較して、FcγRIIIaに対する結合増強効果が高いことが明らかとなった。
 加えて、ヘテロ二量化抗体ではADCP活性増強に重要と考えられるFcγRIIaに対する結合活性も、FcγRIIa Hについては両抗体よりも増強しており、FcγRIIa RについてはH240-afucosyl_G1d/L73-k0よりも結合活性が増強し、H240-Kn032/H240-Hl032/L73-k0と同程度であった。
(3-4-2)H240-Kn061/H240-Hl071/L73-k0がヘテロ二量化抗体の特徴を有するか考察
 H240-Kn061/H240-Hl071/L73-k0がヘテロ二量化抗体の特徴を有するか考察した。表7の結果から、L234Y/L235Y/G236W/H268D/S298Aを一方のH鎖に有し、K326D/A330M/K334Eをもう一方のH鎖に有するヘテロ二量化抗体H240-Kn061/H240-Hl071/L73-k0の方が、L234Y/L235Y/G236W/H268D/S298Aを両H鎖に有するようなホモ二量化抗体H240-Kn061/H240-Hl134/L73-k0および、K326D/A330M/K334Eを両H鎖に有するようなホモ二量化抗体H240-Kn132/H240-Hl071/L73-k0のいずれよりも、FcγRIIIa FおよびFcγRIIIa Vに対する強い結合活性を有することが確認された。すなわち、H240-Kn061/H240-Hl071/L73-k0はその各H鎖から成るホモ二量化抗体よりもFcγRに対する結合活性を増強するというヘテロ二量化抗体の特徴を有することが明らかとなった。つまり、H240-Kn061/H240-Hl071/L73-k0は一方向(X側)でのFcγRに対する結合活性が増強されていることが示され、Y側を第二の抗原との結合部位に利用したDual binding Fc分子となりうる。
(3-5)ヘテロ二量化抗体H240-Kn061/H240-Hl071/L73-k0の更なる改良
 更なるFcγRとの相互作用の最適化を目指して、参考実施例1の方法にしたがって、H240-Kn061にY235Q、S239M、D270Eを導入したH240-Kn125(配列番号:21)およびH240-Hl071にD270Eを導入したH240-Hl076(配列番号:22)を作製した。参考実施例1の方法にしたがって、一方のH鎖としてH240-Hl076、L鎖としてL73-k0を、もう一方のH鎖としてH240-Kn125をそれぞれ組み合わせ、H240-Kn125/H240-Hl076/L73-k0を調製した。調製された抗体を参考実施例2の方法にしたがって、各FcγRに対する結合活性を天然型IgG1であるH240-G1d/L73-k0、それにKnobs-into-Holesを加えたH240-Kn033/H240-Hl033/L73-k0、既存のADCC活性増強技術であるアフコシル化抗体H240-afucosyl_G1d/L73-k0およびADCC活性増強改変であるS239D/A330L/I332Eを両H鎖に導入したホモ二量化抗体H240-Kn032/H240-Hl032/L73-k0とともに評価した結果を表8にまとめた。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000024
 H240-Kn125/H240-Hl076/L73-k0は、抑制型FcγRであるFcγRIIbに対する結合活性が天然型のIgG1と同程度に維持されたまま、ADCC活性に重要な役割を果たすFcγRIIIa FおよびFcγRIIIa Vに対する結合活性がH240-Kn061/H240-Hl071/L73-kよりも増強していた。既存のADCC活性増強技術であるアフコシル化抗体H240-afucosyl_G1d/L73-k0およびADCC活性増強改変であるS239D/A330L/I332Eを両H鎖に導入したホモ二量化抗体H240-Kn032/H240-Hl032/L73-k0と比べた場合、FcγRIIaのアロタイプの一つであるFcγRIIa Hに対する結合活性がより増強し、FcγRIIbに対する結合活性が減弱し、FcγRIIIaについては両アロタイプに対する結合活性が増強していることから、H240-Kn125/H240-Hl076/L73-k0は既存のADCC活性増強改変を適用したアフコシル化抗体、ホモ二量化抗体以上にADCP活性増強、ADCC活性増強が期待され、加えて免疫抑制的な作用の減弱が期待できる。
〔実施例4〕Y側から抗原と結合するFc領域を取得するためのライブラリー設計
 X側からのFcγRに対する結合活性を維持しながら、Y側からの目的の抗原と結合するFc領域を取得する方法として、Fc領域のアミノ酸に多様性を持たせた分子集団(ライブラリーと呼ぶ)からスクリーニングする方法が挙げられる。Y側からの抗原に対する結合活性を付与するためにライブラリー化する箇所として、図12に示したループAL2, AL3, BL2およびBL4が考えられた。具体的には、図11および12に示したように、HA鎖のEUナンバリング265~271のループAL2、EUナンバリング295~300のループAL3、および、HB鎖のEUナンバリング265~271のループBL2、EUナンバリング324~332のループBL4がライブラリー化するループとして考えられた。これらの箇所はX側からのFcγRとの結合への関与は小さいが、これらのループをさまざまなアミノ酸が出現するように完全にライブラリー化した場合、X側からのFcγRとの結合を保持することは極めて困難であると考えられる。すなわち、これらのループにランダムにアミノ酸が出現するライブラリーにおいて、X側からのFcγRに対する結合活性を少なくとも天然型IgGと同程度に維持し、医薬品として使用に耐える熱安定性を有し、且つ、Y側から目的の抗原に対して結合活性を有する分子を取得することは非常に困難である。
 そこで、まず、図12に示されたループ領域、即ちループ1(Loop 1)(ループ1:EUナンバリング234~239)、ループ2(Loop 2)(ループ2:EUナンバリング265~271)、ループ3(Loop3)(ループ3:EUナンバリング295~300)およびループ4(Loop 4)(ループ4:EUナンバリング324~332)において、各箇所における天然のアミノ酸以外のアミノ酸でFcγRに対する結合活性を維持することができ、且つ、60℃以上のTmを維持することができるアミノ酸をスクリーニングにより同定した。
 熱安定性の評価は、各箇所のアミノ酸を改変したH鎖を持つホモ二量体化抗体を用いて評価した。実施例3で考察したように、アミノ酸改変を両方のH鎖に加えた抗体(ホモ二量体化抗体)は片方のH鎖に加えた抗体(ヘテロ二量体化抗体)よりも熱安定性が低下している。ライブラリー分子は少なくとも片方のH鎖にアミノ酸が導入されるが、ホモ二量体化抗体で熱安定性を評価することで、より高い安定性を有するアミノ酸を選定することができる。
 一方で、FcγRに対する結合活性は各箇所のアミノ酸を改変したH鎖と天然のIgG1のH鎖を用いたヘテロ二量体化抗体で評価した。実施例3で考察したように従来技術であるホモ二量体化抗体を用いて評価すると、実施例3で実施したL234Y、G236W、S298Aを導入した抗体のように、ヘテロ二量体化抗体では有用である改変が、ホモ二量体化抗体では活性が低下したと判定されてしまう。このようにヘテロ二量体化抗体でFcγRとの相互作用が維持もしくは増強されているアミノ酸をスクリーニングするためには、ヘテロ二量体化抗体を用いて評価することが適切であると考えられた。
 具体的には、以下の方法でライブラリーに用いるアミノ酸改変をスクリーニングにより同定した。実施例2で作製したGpH7-B3(配列番号:4)において、EUナンバリング234番目のLeu、EUナンバリング235番目のLeu、EUナンバリング236番目のGly、EUナンバリング237番目のGly、EUナンバリング238番目のPro、EUナンバリング239番目のSer、EUナンバリング265番目のAsp、EUナンバリング266番目のVal、EUナンバリング267番目のSer、EUナンバリング268番目のHis、EUナンバリング269番目のGlu、EUナンバリング270番目のAsp、EUナンバリング271番目のPro、EUナンバリング295番目のGln、EUナンバリング296番目のTyr、EUナンバリング298番目のSer、EUナンバリング300番目のTyr、EUナンバリング324番目のSer、EUナンバリング325番目のAsn、EUナンバリング326番目のLys、EUナンバリング327番目のAla、EUナンバリング328番目のLeu、EUナンバリング329番目のPro、EUナンバリング330番目のAla、EUナンバリング331番目のPro、EUナンバリング番目の、EUナンバリング332番目のIle、EUナンバリング333番目のGlu、EUナンバリング334番目のLys、EUナンバリング335番目のThr、EUナンバリング336番目のIle、EUナンバリング337番目のSerの部分を、元のアミノ酸とシステインを除く18種類のアミノ酸にそれぞれ置換したGpH7-B3 variantを作製した。各GpH7-B3 variantの名称は、A_Bと表現し、Aには改変する残基のEUナンバリング、アミノ酸の種類の情報を一文字表記で記載し、Bには置換後のアミノ酸の情報を示した。例えばEUナンバリング234番目のLeuをGlyにしたB3_variantはL234_01Gと命名される。なお、置換後のアミノ酸の情報に関しては一文字表記の前にそのアミノ酸特有の数値を便宜上記載した。具体的には、Glyの場合は01G、Alaの場合は02A、Valの場合は03V、Pheの場合は04F、Proの場合は05P、Metの場合は06M、Ileの場合は07I、Leuの場合は08L、Aspの場合は09D、Gluの場合は10E、Lysの場合は11K、Argの場合は12R、Serの場合は13S、Thrの場合は14T、Tyrの場合は15Y、Hisの場合は16H、Asnの場合は18N、Glnの場合は19Q、Trpの場合は20Wという記号を用いた。
 2本のH鎖に変異を導入したホモ二量化抗体は以下の手順で調製した。抗体の発現にはH鎖としてGpH7-B3 variant、L鎖としてGpL16-k0(配列番号:5)を用い、参考実施例1の方法に従って抗体を調製した。このようにして調製した両H鎖に変異を導入したホモ二量化抗体をHo Abと呼ぶ。
 一方のH鎖のみに変異を導入したヘテロ二量化抗体は以下の手順で調製した。抗体の発現にはH鎖としてGpH7-B3 variant、GpH7-A5(配列番号:3)、L鎖としてGpL16-k0(配列番号:5)を用い、参考実施例1の方法に従って抗体を調製した。このようにして調製した一方のH鎖にのみ変異を導入したヘテロ二量化抗体をHe Abと呼ぶ。
 ホモ二量化抗体のコントロールとして、H鎖にGpH7-B3(配列番号:4)、L鎖にGpL16-k0(配列番号:5)を用いて調製した抗体GpH7-B3/GpL16-k0を、参考実施例1の方法に従って調製した。このホモ二量化抗体のコントロールとなる抗体をHoCon Abと呼ぶ。実施例3で検討したように、HoCon Abは天然型IgG1と比べて各FcγRに対する結合活性は大きく変化していない。
 ヘテロ二量化抗体のコントロールとして、H鎖にGpH7-A5(配列番号:3)、GpH7-B3(配列番号:4)、L鎖にGpL16-k0(配列番号:5)を用いて調製した抗体GpH7-A5/GpH7-B3/GpL16-k0を、参考実施例1の方法に従って調製した。このヘテロ二量化抗体のコントロールとなる抗体をHeCon Abと呼ぶ。HeCon Abは実施例3で検討したように、天然型IgG1と比べて各FcγRに対する結合活性は大きく変化していない。
 調製したHo AbおよびHoCon Abを用いて、CH2ドメインの熱安定性を参考実施例4に示した方法で評価した。また、調製したHe AbおよびHeCon Abを用いてFcγRIa、FcγRIIa(R)、FcγRIIa(H)、FcγRIIb、FcγRIIIaに対する結合活性を参考実施例2の方法に従って測定した。それぞれのFcγRの測定結果について、以下の方法に従って図を作製した。He Abの各FcγRに対する結合活性を、HeCon Abの各FcγRに対する結合活性で割り、100をかけた値をHe/Conとした。実施例2で考察したように、天然型のIgGではX側からのFcγRとの結合と、Y側からのFcγRとの結合を区別しない。そこで、ヘテロ二量体化分子のスクリーニングでは、FcγRIとの相互作用がコントロールの80%より高く、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIaの各レセプターとの相互作用が50%より高い場合に、FcγRに対する結合活性を維持していると考えた。
FcγRに対する結合活性および60℃以上のTmを維持し、各ループの各ポジションに許容されるアミノ酸を表9に示す。Y側で抗原に対して結合活性を有する分子を得るためのライブラリーの設計において、各部位で20種類のアミノ酸が出現するのではなく、各ループにおけるこれらの許容されるアミノ酸が出現するようにライブラリーを設計することによって、そのライブラリーに含まれる集団は、高いFcγRに対する結合活性とTmを有している可能性が高くなる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000025
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000026
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000027
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000028
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000029
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Figure JPOXMLDOC01-appb-T000031
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 実施例3で取得された親ペプチドH240-Kn061/H240-Hl071/L73の各ループ領域のうち、図12に示した構造から特にY側の結合にはAL2、AL3、BL2およびBL4が関与すると考えられた。中でも、結合に大きく関与すると考えられたAL2、AL3およびBL4に、表9に示すアミノ酸がランダムに出現する定常領域を参考実施例1に示した方法で作製し、抗体分子を調製した。調製した分子のFcγRに対する結合活性およびCH2ドメインの熱安定性をそれぞれ参考実施例2および参考実施例4にしたがって評価した。FcγRに対する結合活性は、結合相での結合量を親ペプチドもしくは天然型のIgG1と比較した。評価に利用した抗体濃度および抗原(FcγR)濃度を一定にしているため、抗体のFcγRに対する結合活性は、結合相での結合量を比較すればよい。すなわち、親ペプチドもしくは天然型のIgG1を用いた場合と比較して、各抗体で結合量が減少していない場合、FcγRに対する結合活性を維持していると言える。その結果を図13に示す。多くの改変体においても、天然型のIgG1と比較して、同等以上のFcγRに対する結合活性を維持していることが明らかになった。また、CH2ドメインの熱変性温度を親ペプチドもしくは天然型のIgG1と比較した。その結果を図14に示す。その結果、熱変性温度が天然型のIgG1もしくは親ペプチドと比較して大幅に低下することは無く、特にいずれのサンプルも生物の体温である40℃よりも10℃以上高いことから、ライブラリーに含まれる分子が生体内でも十分安定であることが期待できる。以上の結果から、各領域において表9に選定されたアミノ酸を含むライブラリーは、CH2領域の安定性を維持しながら、X側でFcγRとの相互作用を維持し、さらにY側で第二の抗原と相互作用する分子を取得するために有用であると考えられた。
〔実施例5〕Y側から抗原と結合するFc領域を取得するためのループ延長
 実施例4に示されたように、図12に示したループAL2(HA鎖Loop2), AL3(HA鎖Loop3), BL2(HB鎖Loop2)およびBL4(HB鎖Loop4)において、許容されるアミノ酸が出現するライブラリーが設計された。スキャフォールドタンパク質において、任意の抗原に対する結合分子を取得しようとする場合、スキャフォールドに用いている天然タンパク質のループを長く改変した(延長した)ループを用いて、ライブラリー化する方法が知られている(Peds(2010), 23(4), 289-297)。ループを長くすることのメリットとして、アミノ酸配列の多様性を増大させること、および、抗体の重鎖CDR3のように長いループによって多様なコンフォーメーションが取れること、によって、任意の抗原に対する結合分子が取得されるやすくなる点である。既存のスキャフォールドタンパク質において、ループを延長した際に考慮すべき点は、熱安定性が保たれているかどうかという点のみである。しかしながら、dual binding Fcにおいては、熱安定性に加えて、X側からのFcγRに対する結合活性が維持できているかどうかという点が極めて重要である。通常行われるように両H鎖にループの延長を導入したホモ二量体化抗体である場合、延長されたループ領域がY側の抗原との結合に寄与しないにもかかわらず、熱安定性およびFcγRとの相互作用を低下させてしまうと考えられる。したがって、ループの延長は両鎖に導入するのではなく、片方の鎖にのみ導入する必要がある。
 そこで、親ぺプチドH240-Kn125/H240-Hl076/L73に対して、熱安定性とX側からのFcγRに対する結合活性を著しく損なうことなくループを延長することが出来るかどうかを検討した。図12に示された各ループ領域に対して、図15に示すグリシンおよびセリンから構成される3~9アミノ酸のペプチド鎖を組み込んだ抗体分子を作製し、FcγRに対する結合活性と安定性の指標として熱変性温度(Tm)を評価した。なおヘテロ二量体化抗体は、親ペプチドがH240-Hl076であるHA鎖に改変を加えた場合は、H鎖として、HA鎖の改変体とH240-Kn125(配列番号:21)を用い、L鎖はL73-k0(配列番号:11)を用いて調製した。また、親ペプチドがH240-Kn125であるHB鎖に改変を加えた場合は、H鎖として、HB鎖の改変体とH240-Hl076(配列番号:22)を用い、L鎖はL73-k0(配列番号:11)を用いて調製した。
 ペプチド鎖を組み込んだ分子の作製および発現は、参考実施例1に記載した方法で実施した。さらに、得られた分子の熱変性温度測定を参考実施例4に記載した方法で実施した。FcγRに対する結合活性の評価は参考実施例2に記載した方法で実施した。
 FcγRに対する結合活性の評価および熱変性温度測定の結果を表10に示す。AL2, AL3,BL2およびBL4の各ループにもっとも長い9アミノ酸を挿入した分子でもFcγRに対する結合活性を維持し、熱変性温度も十分高かった。したがって、Fc領域において、第一のH鎖または第二のH鎖にペプチド鎖を挿入し、ヘテロ二量体化抗体としてループを延長することで、FcγRに対する結合活性とFc領域の安定性を損なうことなく、ペプチド鎖を延長できることが示された。また、ループの延長としてGlyとSerで構成されるペプチドを挿入したが、任意のアミノ酸を含むペプチドを挿入することもできる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000033
 以上の検討から、実施例4で選ばれたアミノ酸が出現するライブラリーと本実施例で示された該当の領域内でペプチド鎖を延長したライブラリーを用いることでdual binding Fcとして、X側で強いFcγRに対する結合活性を有し、Y側で目的の抗原(第2の抗原)に対する結合活性を有し、且つ、FcγR及びY側で結合する抗原(第2の抗原)に同時には結合しない改良抗体を取得するライブラリーとして利用できると考えられた。実施例4および実施例5から設計されたライブラリーを用いて、以下に示すように改良Fc領域および改良抗体を取得することが出来る。例えば、公知の技術であるIn vitro display法(例えばRibosomal Display法やmRNA display法)やbacteria display法(例えばPhage display法やE.Coli Display法)、Cell display法(例えばYeast display法やMammalian display法)が利用できる(Advanced Drug Delivery Reviews (2006)、58、1622-1654)。これらの方法により、設計されたライブラリーを含むCH2ドメインを提示し、抗原(第2の抗原)に対して結合活性を有するCH2ドメインを選択することができる。選択されたCH2ドメインの遺伝子配列を決定し、所望のヒト抗体もしくはFc領域のCH2ドメインと置き換える。このようにして得られた改変ヒト抗体もしくはFc領域について、FcγRに対して結合活性を有するが、抗原(第2の抗原)及びFcγRに同時には結合しないクローンを選択することができる。また、Yeast Display法およびMammalian Display法は、Fc領域全体もしくは抗体分子を提示することができるため、これらの領域を提示し、抗原(第2の抗原)に対して結合活性を有し、FcγRに対して結合活性を有するが、抗原(第2の抗原)及びFcγRに同時には結合しないFc領域を選択することができる。また、上記のように、ライブラリーを利用して第2の抗原に対して結合活性を有するCH2ドメインを取得する方法以外に、あらかじめ第2の抗原に対して結合活性することが明らかになっているペプチドを利用する方法が挙げられる。具体的には、実施例4および5の検討から改変可能であることが明らかになったループ領域に、抗原に対して結合活性を有することが知られているペプチドを挿入し、第2の抗原に対して結合活性を有するヒト抗体もしくはFc領域を取得する。このようにして得られた改変ヒト抗体もしくは改変Fc領域について、FcγRとの結合、並びに、抗原及びFcγRに同時には結合しないことを確認することで、改変ヒト抗体もしくは改変Fc領域(Dual Binding Fc)を取得することもできる。
〔実施例6〕Fc領域でFcγRおよび抗原に結合し、FcγR及び抗原に同時には結合しないdual binding Fcの取得
 接着分子として知られているIntegrin αvβ3は、多くの癌細胞および腫瘍の周りの血管に発現していることから、腫瘍をターゲッティングする標的分子として有用であるが、一方でさまざまな正常細胞にも発現してことが知られている(Thromb Haemost. 1998 Nov;80(5):726-34.)。したがって、FcγRとIntegrin αvβ3が同時に結合してしまうと正常細胞がNK細胞などによる強力なADCC活性によって障害されてしまう可能性が考えられた。そこでFcγRとIntegrin αvβ3が同時には結合しない分子が作製できれば、正常細胞に障害を与えることなく、Integrin αvβ3を発現する腫瘍細胞に抗EREG抗体分子をターゲットすることができると考えられた。すなわち、可変領域(Fab)で第1の抗原であるEpiregulin(EREG)に結合し、Fc領域のX側からFcγR、Y側から第2の抗原であるIntegrin αvβ3に結合し、且つ、FcγR及びIntegrin αvβ3に同時には結合しないdual binding Fc分子の取得を検討した。
 「Integrin αvβ3が存在しない条件でFcγRとFc領域が結合し、FcγRが存在しない条件でIntegrin αvβ3とFc領域が結合する分子であって、FcγRに結合した分子はIntegrin αvβ3に結合しない分子、もしくは、Integrin αvβ3と結合した分子はFcγRに結合しない分子」であることを示すことができれば、目的とするdual binding Fcの特性(すなわち、X側からFcγRに結合し、Y側から抗原に結合し、且つ、FcγR及び抗原に同時には結合しない)を有する抗EREG抗体を創製することが出来たと言える。
Integrin αvβ3と結合するFc領域をもつ抗体の取得
 Dual binding Fc分子を取得する方法は、前述のようにライブラリーを利用する方法とタンパク質に対して結合活性を有することが知られているペプチドを挿入する方法がある。Integrin αvβ3に対して結合活性を有するペプチドとして、RGD(Arg-Gly-Asp)ペプチドが知られている。実施例4および5でFcγRとの相互作用および熱安定性の観点から抗原結合に利用できると考えられたH240-Kn125/H240-Hl076/L73のループ領域にRGD(Arg-Gly-Asp)ペプチドが挿入された分子(H240-Kn125/H240-Hl076-ma1/L73;配列番号21/45/11、H240-Kn125-ma1/H240-Hl076/L73;配列番号46/22/11)を参考実施例1に従って作製した。また、対照として定常領域がヒト天然IgG1であるH240-G1dE/H240-G1dE/L73;配列番号44/44/11)、J. Biotech, 155, 193-202, 2011に報告されている抗体のCH3領域にRGD(Arg-Gly-Asp)ペプチドが挿入された抗体(H240-Kn125-CD/H240-Hl076/L73;配列番号47/22/11)および(H240-G1d-CD/H240-G1d-CD/L73;配列番号48/48/11)を参考実施例1に従って作製した。CH3領域を介してIntegrin αvβ3と結合するこの分子は、FcγRとIntegrin αvβ3に同時に結合することが出来ると考えられる。
Integrin αvβ3と抗体の結合確認
 Fc領域にRGD(Arg-Gly-Asp)ペプチドが挿入された分子がIntegrin αvβ3と結合するか、ELISA法(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)で判定した。具体的には、1μg/mLとなるようにCoating Buffer(0.1M NaHCO3、pH9.6)で希釈したIntegrin αvβ3(R&D Systems)をNunc-Immuno(tm) MicroWell(tm) 96 well solid plates(Nunc)の各ウェル100μLずつ添加し、Integrin αvβ3をプレートに固相化した。抗原(Integrin αvβ3)が固相化されたプレートを0.1g/L塩化カルシウムおよび0.1g/L塩化マグネシウムを含むTBS溶液(TBS(+)溶液と表記する)250μLで3回洗浄した。5%BSAおよび0.1g/L塩化カルシウム、0.1g/L塩化マグネシウムを含むTBS溶液(ブロッキング溶液と表記する)250μLを加えて室温1時間インキュベートした。
 ブロッキング溶液を除いた後、TBS(+)溶液で3回洗浄した。TBS(+)溶液を用いて1、10、100μg/mLとなるように調製された抗体溶液を100μLずつ各ウェルに添加し、室温1時間インキュベートして抗体をIntegrin αvβ3に結合させた。
 抗体溶液を除いた後、TBS(+)溶液で3回洗浄し、ブロッキング溶液で50000倍に希釈された抗ヒトIgGを認識するHRP標識抗体を加えて、室温1時間インキュベートした。
 HRP標識抗体溶液を除いた後、TBS(+)溶液で3回洗浄し、ウェルに残った溶液を十分除いてからTMB溶液を加えて室温20分間インキュベートして発色させ、50μLの1M硫酸溶液を加えて反応を停止させた。反応が停止した溶液の450nm波長の吸光度を測定した。
 その結果を図16に示す。親抗体であるH240-Kn125/H240-Hl076/L73は、Integrin αvβ3に対して全く結合活性を示さなかったのに対して、H240-Kn125/H240-Hl076-ma1/L73、H240-Kn125-ma1/H240-Hl076/L73、H240-Kn125-CD/H240-Hl076/L73、H240-G1d-CD/H240-G1d-CD/L73はいずれもIntegrin αvβ3との結合が観察された。
FcγR IIIaと抗体の結合確認
 次に、前項で作製したIntegrin αvβ3とFc領域で結合する抗体が、FcγRに対する結合活性を保持しているかSPR法(surface plasmon resonance)で確認した。具体的には、Biacore T100 (GE Healthcare) を用いて、FcγRIIIaとの相互作用解析を行った。ランニングバッファーには前項で用いたTBS(+)溶液を用い、測定温度は25℃とした。Series S Sencor Chip CM4(GEヘルスケア)に、アミンカップリング法によりProteinLを固定化したチップを用いた。ProteinLを固定化したチップへ目的の抗体をキャプチャーさせ、ランニングバッファーで希釈したFcγRIIIaを相互作用させた。10 mM glycine-HCl、pH1.5を反応させることで、チップにキャプチャーした抗体を洗浄し、チップを再生して繰り返し用いた。
 各抗体のFcγRIIIaに対する結合活性は主にFcγRIIIaに対する結合活性およびFcγRIIIaに対する解離定数を指標として評価した。各抗体のFcγRIIIaに対する解離定数は、Biacoreの測定結果に対して速度論的解析を実施することで算出した。具体的には、Biacore Evaluation Softwareにより測定して得られたセンサーグラムを1:1 Langmuir binding modelでglobal fittingさせることで結合速度定数ka (L/mol/s)、解離速度定数kd(1/s)を算出し、その値から解離定数KD (mol/L) を算出した。
 その結果を表11に示す。表11に示されたIntegrin αvβ3に対する結合活性を付与したいずれの抗体も天然型のIgG1(H240-G1dE/H240-G1dE/L73)と比較してFcγRIIIaに対して強い結合活性を有していることが明らかになった。なお、天然型のIgG1よりも強い結合活性とは、解離定数KDが天然型IgG1よりも小さい値となっていることである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000034
競合ELISAによるIntegrin αvβ3とFcγRIIIaが同時にFc領域に結合しないことの確認
 前項までの結果から、Integrin αvβ3に対して結合活性を有し、かつ、FcγRIIIaに対して天然型IgG1よりも強い結合活性を有する分子が得られた。次に、前項までに作製されたFc領域がFcγRIIIaとIntegrin αvβ3と同時に結合するか判定した。
 Fc領域にRGD(Arg-Gly-Asp)ペプチドを挿入した分子がIntegrin αvβ3とFcγRに同時には結合できない場合、Integrin αvβ3と反応させる抗体溶液にFcγRを加えると、FcγRの濃度依存的にIntegrin αvβ3に結合できる抗体量が減少すると予想される。抗体溶液にFcγRを加えた時に抗体がIntegrin αvβ3と結合するか、ELISA法(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)で判定した。具体的には、Nunc-Immuno(tm) MicroWell(tm) 96 well solid plates(Nunc)に1μg/mLとなるようにCoating Buffer(0.1M NaHCO3、pH9.6)で希釈したIntegrin αvβ3(R&D Systems)を各ウェル100μLずつ添加し、Integrin αvβ3をプレートに固相化した。抗原(Integrin αvβ3)が固相化されたプレートを0.1g/L塩化カルシウムおよび0.1g/L塩化マグネシウムを含むTBS溶液(TBS(+)溶液と表記する)250μLで3回洗浄した。5%BSAおよび0.1g/L塩化カルシウム、0.1g/L塩化マグネシウムを含むTBS溶液(ブロッキング溶液と表記する)250μLを加えて室温1時間インキュベートした。
 ブロッキング溶液を除いた後、TBS(+)溶液で3回洗浄した。あらかじめTBS(+)溶液を用いて希釈された2μg/mL抗体溶液55μLと0、2、20、200μg/mL FcγRIIIa溶液55μLを混ぜて抗体・FcγR混合溶液を調製し、室温1時間インキュベートした。抗体・FcγR混合溶液を100μLウェルに添加し、室温1時間インキュベートして抗体をIntegrin αvβ3に結合させた。
 抗体・FcγR混合溶液を除いた後、TBS(+)溶液で3回洗浄し、ブロッキング溶液で50000倍に希釈された抗ヒトIgGを認識するHRP標識抗体を加えて、室温1時間インキュベートした。
 HRP標識抗体溶液を除いた後、TBS(+)溶液で3回洗浄し、ウェルに残った溶液を十分除いてからTMB溶液を加えて室温20分間インキュベートして発色させ、50μLの1M硫酸溶液を加えることで反応を停止させた。反応が停止した溶液の450nm波長の吸光度を測定した。
 その結果を図17に示す。CH3領域にRGD(Arg-Gly-Asp)ペプチドが挿入さたH240-Kn125-CD/H240-Hl076/L73はFcγRの濃度が上昇しても、Integrin αvβ3との相互作用は変化しなかった。一方で、H240-Kn125/H240-Hl076-ma1/L73およびH240-Kn125-ma1/H240-Hl076/L73はいずれもFcγRの濃度依存的にIntegrin αvβ3との結合が減弱された。すなわち、H240-Kn125-CD/H240-Hl076/L73はFcγRと同時にIntegrin αvβ3が結合するが、H240-Kn125/H240-Hl076-ma1/L73およびH240-Kn125-ma1/H240-Hl076/L73はFcγRと結合すると、Integrin αvβ3と結合しないことが示唆された。
SPR法によるIntegrin αvβ3とFcγRIIIaが同時にFc領域に結合しないことの確認
 FcγRに結合している抗体がIntegrin αvβ3と結合するか、SPR法を用いて判定した。具体的には、Biacore T200 (GE Healthcare) を用いて、FcγRIIIaに結合させた抗体とIntegrin αvβ3の結合を確認した。ランニングバッファーには前項で用いたTBS(+)溶液を用い、測定温度は15℃とした。Series S Sencor Chip CM5(GEヘルスケア)に、アミンカップリング法により抗His抗体(anti-penta-His antibody、QIAGEN)を固定化したチップを用いた。抗His抗体を固定化したチップへFcγRIIIaをキャプチャーした。次に、ランニングバッファーで希釈した抗体を相互作用させた。このとき、チップ上には、FcγRIIIaに結合した抗体のみが存在する。抗体がキャプチャーされているチップに、ランニングバッファーで260nMに希釈したIntegrin αvβ3を相互作用させた。10 mM glycine-HCl、pH2.5を反応させることで、チップにキャプチャーした抗体を洗浄し、チップを再生して繰り返し用いた。
 FcγRIIIaに結合した各抗体のIntegrin αvβ3に対する結合活性は、センサーグラムの形状を以って判断した。
 FcγRIIIaにあらかじめ抗体を結合させた後、Integrin αvβ3を作用させた場合の結果を図18に示す。対照として用いたCH3領域にRGD(Arg-Gly-Asp)ペプチドが挿入された抗体H240-Kn125-CD/H240-Hl076/L73では、Integrin αvβ3を作用させたときに、結合レスポンスが観測された。一方で、H240-Kn125/H240-Hl076-ma1/L73、H240-Kn125-ma1/H240-Hl076/L73といった抗体は、いずれもIntegrin αvβ3を作用させても結合レスポンスが観測できなかった。この結果から、FcγRIIIaに結合している抗体は、Integrin αvβ3に結合しないことが示され、FcγRIIIaとIntegrin αvβ3は該当のFc領域に同時には結合しないことが示された。
 競合ELISA法およびSPR法によるIntegrin αvβ3とFcγRIIIaが同時にFc領域に結合しないことの考察
 以上の結果から、X側からFcγRIIIaに結合し、Y側からIntegrin αvβ3に結合し、かつ、FcγRIIIa及びIntegrin αvβ3に同時には結合しないdual binding Fc分子の特性を有する抗EREG抗体を創製することができた。本実施例では、第1の抗原であるEREGに結合する可変領域を有する抗体に対して、第2の抗原であるIntegrin αvβ3に結合するRGDペプチドをY側のループに挿入することで、第2の抗原に対する結合活性を付与し、且つ、FcγRと第2の抗原に同時には結合しない分子を取得することが出来た。同様の方法で、WO2006036834に例示されているようなタンパク質に対して結合活性を有するペプチドを実施例4や実施例5で選定されたループに挿入することで、任意の第二の抗原に対して結合活性を有する、抗EREG抗体を取得することができる。さらに、実施例4および実施例5で設計されたライブラリーを用いることで、任意の第2の抗原に対して結合活性を有する抗EREG抗体を創製することが可能であると考えられる。第1の抗原に対する可変領域は、当業者公知の様々な方法で取得することが可能であることから、このようなライブラリーを用いることで、任意の第1の抗原と任意の第2の抗原とFcγRに対して結合活性を有し、第2の抗原及びFcγRに同時には結合することができない、抗体分子を創製することが可能であると言える。
〔実施例7〕Fc(YWA-DLE)とFcγRIIIa細胞外領域との複合体のX線結晶構造解析
 実施例3でヘテロ二量体化抗体を用いることで従来のホモ二量体化抗体を用いるよりも、Fc領域とFcγRとの非対称な相互作用をより最適化できることが示された。実施例3では、最適化されていることを示す一例として、片方のH鎖にS239D, A330L, I332E 、もう片方のH鎖にL234Y、G236W、S298A の改変が導入されたヘテロ二量体化抗体が用いられた。導入されたアミノ酸改変が実施例3で考察したように実際にFcγRとの相互作用に関与しているかをヘテロ二量体化抗体とFcγRIIIa(FcγRIIIa細胞外領域)との複合体の結晶構造解析から考察した。
Fc領域の調製
 片方のH鎖にS239D, A330L, I332E 、もう片方のH鎖にL234Y、G236W、S298A の改変が導入されたヘテロ二量体化抗体のFc領域をFc (YWA-DLE)と呼ぶ。Fc(YWA-DLE)はFc(DLE)とFc(YWA)で構成される。Fc(YWA-DLE) の調製は以下のように行った。H240-Kn033(配列番号13)にS239D, A330L, I332Eを、H240-Hl033 (配列番号14)にはL234Y、G236W、S298Aを導入した。さらにEUナンバリング220番目のCysをSerに置換し、EUナンバリング236番目のGluからそのC末端をFc(DLE) (配列番号53)およびFc(YWA)(配列番号54)とした。Fc (DLE)および Fc (YWA)をコードする塩基配列を動物細胞発現用のベクターに組み込んだ。参考実施例1に記載の方法にしたがって、作製した上記ベクターを動物細胞に導入し、Fc(YWA-DLE)の発現および精製を行った。なお、EUナンバリング220番目のCysは通常のIgG1においては、L鎖のCysとdisulfide bondを形成しているが、Fcのみを調製する場合、L鎖を共発現させないため、不要なdisulfide bond形成を回避するためにSerに置換された。
FcγRIIIa細胞外領域の調製
 結晶構造解析に用いるFcγRIIIa(FcγRIIIa細胞外領域)は、参考実施例5の方法で発現、簡易精製された。得られたFcγRIIIa細胞外領域サンプル4mgに対し、glutathione S-transferaseとの融合蛋白として大腸菌により発現精製した糖鎖切断酵素Endo F1(Protein Science 1996, 5, 2617-2622)を0.4mg加え、0.1M Bis-Tris pH6.5のBuffer条件で、室温にて数日間静置することにより、N型糖鎖をAsnに直接結合したN-acetylglucosamineを残して切断した。次にこの糖鎖切断処理を施したFcγRIIIa細胞外領域サンプルを、5000MWCOの限外ろ過膜により濃縮し、0.02M HEPS pH7.5, 0.05M NaClで平衡化したゲルろ過カラムクロマトグラフィー(Superdex200 10/300)により精製した。
 Fc(YWA-DLE) / FcγRIIIa細胞外領域複合体の精製
 上記の方法によって得られた糖鎖切断FcγRIIIa細胞外領域画分にFc(YWA-DLE)をモル比でFcγRIIIa細胞外領域のほうが過剰となるよう加え、10000MWCOの限外ろ過膜により濃縮後、0.02M HEPS pH7.5, 0.05M NaClで平衡化したゲルろ過カラムクロマトグラフィー(Superdex200 10/300)により精製することで、Fc(YWA-DLE) / FcγRIIIa細胞外領域複合体の画分を得た。さらにこの画分を0.02M HEPES pH7.5で平衡化した陰イオン交換カラム(MonoQ 5/50 GL)にアプライし、NaClのグラジェントにより溶出、結果得られたクロマトグラフィーは複数のピークに分かれており、そのうちの主要な3つのピークを別々に分取し、それぞれを結晶化用Fc(YWA-DLE) / FcγRIIIa細胞外領域複合体のサンプルとした。
Fc(YWA-DLE)と FcγRIIIa細胞外領域の複合体の結晶化
 上記の方法で精製した結晶化用Fc(YWA-DLE) / FcγRIIIa細胞外領域複合体のサンプルを10000MWCOの限外ろ過膜 により、0.05M イミダゾール pH8へとBuffer置換をおこないながら、約10mg/mlまで濃縮し、シッティングドロップ蒸気拡散法により結晶化をおこなった。結晶化にはHydra II Plus One (MATRIX)を用い、0.1M MES pH7、15% PEG3350, 0.2M 酢酸アンモニウム, 0.01M スペルミンのリザーバー溶液に対し、リザーバー溶液:結晶化サンプル=0.2μl:0.2μlで混合して結晶化ドロップを作成、シール後、20℃に静置したところ、細い柱状の結晶を得ることに成功した。
Fc(YWA-DLE) / FcγRIIIa細胞外領域複合体結晶からのX線回折データの測定
 得られたFc(YWA-DLE) / FcγRIIIa細胞外領域複合体の単結晶一つを0.1M MES pH7、18% PEG3350, 0.2M酢酸アンモニウム, 0.01Mスペルミン, エチレングリコール20%(v/v) の溶液に浸した後、微小なナイロンループ付きのピンで溶液ごとすくいとり、液体窒素中で凍結させ、Spring-8のBL32XUにてX線回折データの測定をおこなった。なお、測定中は常に-178℃の窒素気流中に置くことで凍結状態を維持し、ビームライン備え付けのCCDディテクタMX-225HE(RAYONIX) により、結晶を1°ずつ回転させながらトータル180枚のX線回折画像を収集した。得られた回折画像からの格子定数の決定、回折斑点の指数付け、ならびに回折データの処理には、プログラムXia2(J. Appl. Cryst. (2010) 43, 186-190)、XDS Package(Acta Cryst. (2010) D66, 125-132)およびScala(Acta Cryst. (2006) D62, 72-82)を用い、最終的に分解能2.97Åまでの回折強度データを得ることに成功した。本結晶は、空間群P212121に属し、格子定数a=71.80Å、b=100.91Å、c=123.54Å、α=90°、β=90°、γ=90°であった。
Fc(YWA-DLE) / FcγRIIIa細胞外領域複合体のX線結晶構造解析
 Fc(YWA-DLE)/FcγRIIIa細胞外領域複合体の構造決定のため、プログラムPhaser(J. Appl. Cryst. (2007) 40, 658-674)を用いて分子置換法を実施した。得られた結晶格子の大きさとFc(YWA-DLE)/FcγRIIIa細胞外領域複合体の分子量から非対称単位中の複合体の数は一個と予想され、既知のIgG1-Fc / FcγRIIIa細胞外領域複合体の結晶構造であるPDB code:3SGJの構造座標を探索用モデルとして用いて、当該結晶の格子内での向きと位置を回転関数および並進関数から決定した。さらに得られた初期構造モデルに対し、Fc領域の2つのCH2ドメインと2つのCH3ドメインならびに、FcγRIIIa細胞外領域を独立に動かす剛体精密化をおこなったところ、25-3.0Åの回折強度データに対する結晶学的信頼度因子R値は43.9%、Free R値は43.4%となった。さらにプログラムREFMAC5(Acta Cryst. (2011) D67, 355-367)を用いた構造精密化と、実験的に決定された構造因子Foとモデルから計算された構造因子Fcならびにモデルから計算された位相をもとに算出された2Fo-Fc、Fo-Fcを係数とする電子密度マップに基づく当該構造モデルの修正をプログラムCoot(Acta Cryst. (2010) D66, 486-501)を用いて実施、これらの作業を繰り返すことで構造モデルの精密化をおこなった。最終的には、分解能25-2.97Åの18126個の回折強度データを用いて、4891個の非水素原子を含む構造モデルの結晶学的信頼度因子R値は21.7%、Free R値は26.9%となった。
Fc(YWA-DLE) / FcγRIIIa細胞外領域複合体のX線結晶構造解析結果の考察
 Fc(YWA-DLE)と FcγRIIIa細胞外領域複合体についてX線結晶構造解析により分解能2.97Åで立体構造を決定、その解析結果である構造を図19に示した。2つのFc CH2ドメインの間にFcγRIIIa細胞外領域が挟まれるように結合しており、これまで解析されたIgG1-FcとFcγRIIIa(Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 2011, 108, 12669-126674)、ならびにFcγRIIIb(Nature, 2000, 400, 267-273; J.Biol.Chem. 2011, 276, 16469-16477)の細胞外領域との複合体の立体構造(立体配置)とほぼ同じであった。以下ではFcγRIIIaのアミノ酸位置はStandard NCBI numberingに従った(Mol Immunol. 2008 Apr;45(7):1872-82)。
 本項で調製したFc(YWA-DLE)は、ヘテロ体を効率的に形成させるため、Knobs-into-Holes技術(Protein Eng. 1996, 9, 617-621)を利用、具体的には、S239D, A330L, I332Eの置換をもつFc A鎖(Fc(DLE))にはKnobs構造(T366W)が、L234Y, G236W, S298Aの置換を持つFc B鎖(Fc(YWA))にはHoles構造(T366S, L368A, Y407V)が導入された。そこでまず、FcγRIIIaとFc(YWA-DLE)の結合が片方の面(X面)で優先的に結合しているかをCH3の界面に存在するKnobs構造とHole構造を形成するアミノ酸の電子密度で確認した。FcγRIIIaとFc(YWA-DLE)の結合において、天然のIgGと同様にX面とY面の2つの結合面が混在していた場合、結晶中でKonbs構造をもつ鎖とHoles構造をもつ鎖の位置がFcγRIIIaに対しそろわない形となり、結果としてそれらが混じり合ってKonbs構造とHoles構造が平均化された電子密度が得られ、不明瞭な電子密度となる。図20はKnobs構造とHoles構造の接合面を電子密度とともに示したものであり、KnobsならびにHolesに相当する部分の構造の電子密度が明瞭に観測された。このことは、FcγRIIIaに対して、Fc(YWA-DLE)の各ヘテロ鎖のCH2ドメインが決まった方向から結合していること、つまり、Fc(YWA-DLE)は、二つあるFcγRIIIaとの結合面(X面およびY面)のうち、ひとつだけ(X面のみ)で優先的にFcγRIIIaと結合していることを示している。
 さらにFcγRIIIaとの結合面の詳細を見ていく。S239D, A330L, I332Eの置換を持つFc A鎖は、図19正面左側からFcγRIIIaと結合している。FcA鎖は図21(i)に示したとおり、S239DならびにI332EがFcγRIIIaのK161と静電相互作用を形成するとともに、A330LがFcγRIIIaのI88と疎水相互作用を形成することで、図示されている結合面でのFcγRIIIaとの相互作用が強化されていることがわかる。一方、L234Y, G236W, S298Aの置換を持つFc B鎖は図19正面右側からFcγRIIIaと結合している。図21 (ii)に示したとおり、Fc B鎖のG236WがFcγRIIIaのH119とπ-πスタックを形成し、加えてS298AがFcγRIIIaのR130主鎖とファンデルワールスならびに疎水的な相互作用を形成することで、図示されている結合面でのFcγRIIIaとの相互作用が強化されている。なお、L234Yの電子密度については観測されなかった。
 このように、それぞれのFc鎖に非対称にアミノ酸置換を導入し、FcγRIIIaを認識している相互作用面を非対称に強化することで、FcγRに対するFc領域の結合の向きを制御することができた。その結果として、Fcに存在するFcγR結合面のうち、ひとつの面だけがFcγRと優先的に結合できるよう改変できることが示された。このような改変群を採用することでDual binding Fc分子では図4で示したX側(一方向)でFcγRとの相互作用を増強もしくは最適化することができ、FcγRとの相互作用に関与しないY側を利用して、抗原と相互作用することができると考えられた。
〔参考実施例〕
〔参考実施例1〕抗体の発現ベクターの作製および抗体の発現と精製
 アミノ酸置換の導入はQuikChange Site-Directed Mutagenesis Kit(Stratagene)、PCRまたはIn fusion Advantage PCR cloning kit (TAKARA)等を用いて当業者公知の方法で行い、発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターの塩基配列は当業者公知の方法で決定した。作製したプラスミドをヒト胎児腎癌細胞由来HEK293H株(Invitrogen)、またはFreeStyle293細胞(Invitrogen社)に、一過性に導入し、抗体の発現を行った。得られた培養上清から、rProtein A SepharoseTM Fast Flow(GEヘルスケア)を用いて当業者公知の方法で、抗体を精製した。精製抗体濃度は、分光光度計を用いて280 nmでの吸光度を測定し、得られた値からPACE法により算出された吸光係数を用いて抗体濃度を算出した(Protein Science 1995 ; 4 : 2411-2423)。
〔参考実施例2〕FcγRに対する結合活性評価
Biacore T100、Biacore A100またはBiacore 4000(GE Healthcare) を用いて、目的の抗体とFcγRとの相互作用解析を行った。ランニングバッファーにはHBS-EP+ (GE Healthcare)を用い、測定温度は25℃とした。センサーチップにはSeries S Sencor Chip CM5(GEヘルスケア)にアミンカップリング法により抗原ペプチドを固定化したチップ、Series S Sensor Chip SA(certified)(GEヘルスケア)に対して予めビオチン化しておいた抗原ペプチドを相互作用させ、固定化したチップ、Series S Sencor Chip CM5(GEヘルスケア)にProtein L (ACTIGEN, BioVision) を固定化したチップ、あるいはSeries S Sencor Chip CM5(GEヘルスケア)にProtein A/G (Thermo Scientific) を固定化したチップを用いた。これらのチップへ目的の抗体をキャプチャーさせ、ランニングバッファーで希釈した各FcγRを相互作用させた。10 mM glycine-HCl、pH1.5を反応させることで、チップにキャプチャーした抗体を洗浄し、チップを再生して繰り返し用いた。
 各抗体のFcγRに対する結合活性は主にFcγRに対する結合活性およびFcγRに対する解離定数を指標として評価した。
 FcγRに対する結合活性はFcγRに対する相対的な結合活性を意味する。FcγRに対する相対的な結合活性は各測定時におけるコントロールとなるサンプルの結合活性を100 (%)として、他の抗体の結合活性を算出した。ここでいう結合活性には、キャプチャーさせた抗体にFcγRを相互作用させた前後でのセンサーグラムの変化量をFcγRの結合活性を各抗体のキャプチャー量で割った値を用いた。FcγRに対する結合活性はキャプチャーした抗体の量に依存するためである。
 各抗体のFcγRに対する解離定数は、Biacoreの測定結果に対して速度論的解析を実施することで算出した。具体的には、Biacore Evaluation Softwareにより測定して得られたセンサーグラムを1:1 Langmuir binding modelでglobal fittingさせることで結合速度定数ka (L/mol/s)、解離速度定数kd(1/s)を算出し、その値から解離定数KD (mol/L) を算出した。
〔参考実施例3〕ヒト末梢血単核球をエフェクター細胞として用いた各被験抗体のADCC活性
 抗体の片側のH鎖にのみ入れることでFcγRに対する結合活性が増強した改変体について、以下の方法に従ってADCC活性を測定した。
 ヒト末梢血単核球(以下、ヒトPBMCと指称する。)をエフェクター細胞として用いて各被験抗体のADCC活性を以下のように測定した。
(1)ヒトPBMC溶液の調製
 1000単位/mlのヘパリン溶液(ノボ・ヘパリン注5千単位,ノボ・ノルディスク)が予め200μl注入された注射器を用い、中外製薬株式会社所属の健常人ボランティア(成人男性)より末梢血50 mlを採取した。PBS(-)を用いて2倍に希釈された当該末梢血を4等分し、15 mlのFicoll-Paque PLUSが予め注入されて遠心操作が行なわれたLeucosepリンパ球分離管(Greiner bio-one)に加えた。当該末梢血が分注された分離管が2150 rpmの速度によって10分間室温にて遠心分離の操作をした後、単核球画分層を分取した。10%FBSを含むDulbecco's Modified Eagle's Medium(SIGMA)(以下10%FBS/D-MEMと称する。)によって1回当該各分層に含まれる細胞を洗浄した後、当該細胞が10%FBS/D-MEM中にその細胞密度が5x106 細胞/ mlとなるように懸濁した。当該細胞懸濁液をヒトPBMC溶液として以後の実験に供した。
(2)標的細胞の調製
 SK-Hep-1にヒトグリピカン3を強制発現させたSK-pca13aをディッシュから剥離し、3x106細胞に1.85MBqのCr-51を加えた。Cr-51を加えた細胞を5%炭酸ガスインキュベータ中において37℃で1時間インキュベートした後、10%FBS/D-MEMで1回細胞を洗浄し、当該細胞が10%FBS/D-MEM中にその細胞密度が2x105 細胞/ mlとなるように懸濁した。当該細胞懸濁液を標的細胞として以後の実験に供した。
(3)クロム遊離試験(ADCC活性)
 ADCC活性をクロムリリース法による特異的クロム遊離率にて評価した。まず、各濃度(0、0.004、0.04、0.4、4、40 μg/ml)に調製した抗体溶液を96ウェルU底プレートの各ウェル中に50μlずつ添加した。次に、(2)で調製した標的細胞を50μlずつ播種し(1x104細胞/ウェル)室温にて15分間静置した。各ウェル中に(1)で調製したヒトPBMC溶液各100μl(5x105細胞/ウェル)を加えた当該プレートを、5%炭酸ガスインキュベータ中において37℃で4時間静置した後に、遠心操作した。当該プレートの各ウェル中の100μlの培養上清の放射活性をガンマカウンターを用いて測定した。下式:
 特異的クロム遊離率(%)=(A-C)×100/(B-C)
 に基づいて特異的クロム遊離率を求めた。
 上式において、Aは各ウェル中の100μlの培養上清の放射活性(cpm)の平均値を表す。また、Bは標的細胞に100μlの2% NP-40水溶液(Nonidet P-40、ナカライテスク)および50μlの10% FBS/D-MEM培地を添加したウェル中の100μlの培養上清の放射活性(cpm)の平均値を表す。さらに、Cは標的細胞に10% FBS/D-MEM培地を150 μl添加したウェル中の100μlの培養上清の放射活性(cpm)の平均値を表す。試験はtriplicateにて実施し、各被験抗体のADCC活性が反映される前記試験における特異的クロム遊離率(%)の平均値および標準偏差を算出した。
〔参考実施例4〕示査走査型蛍光定量法による改変抗体のTm評価
 本検討では、Rotor-Gene Q(QIAGEN)を用いた示査走査型蛍光定量法を用いて改変抗体のTm(熱変性温度)を評価した。なお、本手法は、抗体の熱安定性評価法として広く知られている示唆走査型熱量計を用いたTm評価と良好な相関を示すことが既に報告されている(Journal of Pharmaceutical Science 2010 ; 4 : 1707-1720)。
 5000倍濃度のSYPRO orange(Molecular Probes)をPBS(Sigma)により希釈後、抗体溶液と混和することにより測定サンプルを調製した。各サンプルを20 μLずつ測定用チューブにセットし、240℃ /hrの昇温速度で30℃から99℃まで温度を上昇させた。昇温度に伴う蛍光変化を470 nm(励起波長)/ 555 nm(蛍光波長)において検出を行った。
 データはRotor-Gene Q Series Software(QIAGEN)を用いて蛍光遷移が認められた温度を算出し、この値をTm値とした。
 〔参考実施例5〕FcγRの調製方法および改変抗体とFcγRとの相互作用解析方法
 FcγRの細胞外ドメインを以下の方法で調製した。まずFcγRの細胞外ドメインの遺伝子の合成を当業者公知の方法で実施した。その際、各FcγRの配列はNCBIに登録されている情報に基づき作製した。具体的には、FcγRIについてはNCBIのaccession # NM_000566.3の配列、FcγRIIaについてはNCBIのaccession # NM_001136219.1の配列、FcγRIIbについてはNCBIのaccession # NM_004001.3の配列、FcγRIIIaについてはNCBIのaccession # NM_001127593.1の配列、FcγRIIIbについてはNCBIのaccession # NM_000570.3の配列に基づいて作製し、C末端にHisタグ(HHHHHH)配列を付加した。またFcγRIIa、FcγRIIIa、FcγRIIIbについては多型が知られているが、多型部位についてはFcγRIIaについてはJ. Exp. Med., 1990, 172: 19-25、FcγRIIIaについてはJ. Clin. Invest., 1997, 100 (5): 1059-1070, FcγRIIIbについてはJ. Clin. Invest., 1989, 84, 1688-1691を参考にして作製した。
 得られた遺伝子断片を動物細胞発現ベクターに挿入し、発現ベクターを作製した。作製した発現ベクターをヒト胎児腎癌細胞由来FreeStyle293細胞(Invitrogen社)に、一過性に導入し、目的タンパク質を発現させた。得られた培養上清は当業者公知の方法、即ち各種クロマトグラフィーによって精製された。その一例として次の4ステップで精製した。第1ステップは陽イオン交換カラムクロマトグラフィー(SP Sepharose FF)、第2ステップはHisタグに対するアフィニティカラムクロマトグラフィー(HisTrap HP)、第3ステップはゲルろ過カラムクロマトグラフィー(Superdex200)、第4ステップは無菌ろ過、を実施した。ただし、FcγRIについては、第1ステップにQ sepharose FFを用いた陰イオン交換カラムクロマトグラフィーを実施した。精製したタンパク質については分光光度計を用いて280 nmでの吸光度を測定し、得られた値からPACE等の方法により算出された吸光係数を用いて精製タンパク質の濃度を算出した(Protein Science 1995 ; 4 : 2411-2423)。
 なお、結晶構造解析用に用いたFcγRIIIa細胞外ドメインは、上記で作製した発現ベクターをヒト胎児腎癌細胞由来FreeStyle293細胞(Invitrogen社)に、一過性に導入し、終濃度10 ug/mLのKifunesine存在下で目的タンパク質を発現させた。Kifunensine存在下で発現させることでFcγRIIIaに付加される糖鎖が高マンノース型になるようにした。培養し、得られた培養上清を回収した後、0.22μmフィルターを通して培養上清を得た。得られた培養上清はHisタグに対するアフィニティカラムクロマトグラフィー(HisTrap HP)およびゲルろ過カラムクロマトグラフィー(Superdex200)を実施した。精製したタンパク質については分光光度計を用いて280 nmでの吸光度を測定し、得られた値からPACE等の方法により算出された吸光係数を用いて精製タンパク質の濃度を算出した(Protein Science 1995 ; 4 : 2411-2423)。
 本発明により、抗原とFcγRとが同時に結合した場合に起こり得る副作用を回避することが可能な多重特異性結合ポリペプチドを作製することが可能となり、医薬品として適したポリペプチドが提供される。

Claims (38)

  1.  抗原結合部位及びFcγR結合部位を有し、抗原及びFcγRと同時には結合しない、Fc領域二量体。
  2.  前記抗体のFc領域が、IgG型のFc領域である、請求項1に記載のFc領域二量体。
  3.  前記Fc領域二量体が、異なるアミノ酸配列を有する2つのFc領域(第1のFc領域及び第2のFc領域)からなるヘテロ二量体である、請求項1又は2に記載のFc領域二量体。
  4.  前記抗原結合部位が、Fc領域の少なくとも1つのアミノ酸を改変することにより導入された、又はそれと同一のアミノ酸配列を有する部位である、請求項1~3のいずれかに記載のFc領域二量体。
  5.  前記改変されるアミノ酸が、Fc領域のCH2ドメインのアミノ酸である、請求項4に記載のFc領域二量体。
  6.  前記改変されるアミノ酸が、ループ領域のアミノ酸である、請求項4又は5に記載のFc領域二量体。
  7.  前記改変されるアミノ酸が、EUナンバリング231~239、EUナンバリング265~271、EUナンバリング295~300およびEUナンバリング324~337から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸である、請求項6に記載のFc領域二量体。
  8.  前記ヘテロ二量体の改変されるアミノ酸が、第1のFc領域のEUナンバリング265~271およびEUナンバリング295~300、並びに第2のFc領域のEUナンバリング265~271およびEUナンバリング324~332から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸である、請求項4に記載のFc領域二量体。
  9.  前記抗原結合部位の改変が、少なくとも1つのアミノ酸の挿入である、請求項4に記載のFc領域二量体。
  10.  挿入されるアミノ酸の数が9以下である、請求項9に記載のFc領域二量体。
  11.  挿入される少なくとも1つのアミノ酸が、抗原に対する結合活性を有するペプチドである、請求項9又は10に記載のFc領域二量体。
  12.  前記FcγR結合部位が、Fc領域の少なくとも1つのアミノ酸が改変された、又はそれと同一のアミノ酸配列を有する部位である、請求項1~11のいずれかに記載のFc領域二量体。
  13.  前記改変されるアミノ酸が、Fc領域のCH2ドメインのアミノ酸である、請求項12に記載のFc領域二量体。
  14.  前記改変されるアミノ酸が、EUナンバリング234番目のLeu、EUナンバリング235番目のLeu、EUナンバリング236番目のGly、EUナンバリング239番目のSer、EUナンバリング268番目のHis、EUナンバリング270番目のAsp、EUナンバリング298番目のSer、EUナンバリング326番目のLys、EUナンバリング330番目のAla、EUナンバリング332番目のIle、EUナンバリング334番目のLysからなる群より選択される、少なくとも一つのアミノ酸改変が導入された、又はそれと同一のアミノ酸配列を有する、請求項12又は13に記載のFc領域二量体。
  15.  前記改変されるアミノ酸が、EUナンバリング234番目のアミノ酸LのYへの置換、EUナンバリング235番目のアミノ酸LのY又はQへの置換、EUナンバリング236番目のアミノ酸GのWへの置換、EUナンバリング239番目のアミノ酸SのD又はMへの置換、EUナンバリング268番目のアミノ酸HのDへの置換、EUナンバリング270番目のアミノ酸DのEへの置換、EUナンバリング298番目のアミノ酸SのAへの置換、EUナンバリング326番目のアミノ酸KからDへの置換、EUナンバリング330番目のアミノ酸AのL又はMへの置換、EUナンバリング332番目のアミノ酸IのEへの置換、及びEUナンバリング334番目のアミノ酸KのEへの置換からなる群より選択される、少なくとも一つ以上のアミノ酸改変が導入された、又はそれと同一のアミノ酸配列を有する、請求項12又は13に記載のFc領域二量体。
  16.  前記Fc領域二量体のどちらか一方のFc領域のアミノ酸配列において、
    EUナンバリング234番目のアミノ酸LのYへの置換、EUナンバリング235番目のアミノ酸LのY又はQへの置換、EUナンバリング236番目のアミノ酸GのWへの置換、EUナンバリング239番目のアミノ酸SのMへの置換、EUナンバリング268番目のアミノ酸HのDへの置換、EUナンバリング270番目のアミノ酸DのEへの置換、及びEUナンバリング298番目のアミノ酸SのAへの置換からなる群より選択される、少なくとも一つ以上のアミノ酸改変が導入された、又はそれと同一のアミノ酸配列を有しており、
    もう一方のFc領域のアミノ酸配列において、
    EUナンバリング239番目のアミノ酸SのDへの置換、EUナンバリング270番目のアミノ酸DのEへの置換、EUナンバリング326番目のアミノ酸KのDへの置換、EUナンバリング330番目のアミノ酸AのL又はMへの置換、EUナンバリング332番目のアミノ酸IのEへの置換、及びEUナンバリング334番目のアミノ酸KのEへの置換からなる群より選択される、少なくとも一つ以上のアミノ酸改変が導入された、又はそれと同一のアミノ酸配列を有する、請求項12又は13に記載のFc領域二量体。
  17.  前記Fc領域二量体のどちらか一方のFc領域が、(i)~(iii)いずれかのアミノ酸配列を有し、もう一方のFc領域が、(iv)~(vi)いずれかのアミノ酸配列を有する、請求項12又は13に記載のFc領域二量体:
    (i)EUナンバリング234番目のアミノ酸LのYへの置換、EUナンバリング236番目のアミノ酸GのWへの置換、及びEUナンバリング298番目のアミノ酸SのAへの置換が導入された、又はそれと同一のアミノ酸配列、
    (ii) EUナンバリング234番目のアミノ酸LのYへの置換、EUナンバリング235番目のアミノ酸LのYへの置換、EUナンバリング236番目のアミノ酸GのWへの置換、EUナンバリング268番目のアミノ酸HのDへの置換、及びEUナンバリング298番目のアミノ酸SのAへの置換が導入された、又はそれと同一のアミノ酸配列、及び、
    (iii)EUナンバリング234番目のアミノ酸LのYへの置換、EUナンバリング235番目のアミノ酸LのQへの置換、EUナンバリング236番目のアミノ酸GのWへの置換、EUナンバリング239番目のアミノ酸SのMへの置換、EUナンバリング268番目のアミノ酸HのDへの置換、EUナンバリング270番目のアミノ酸DのEへの置換、及びEUナンバリング298番目のアミノ酸SのAへの置換が導入された、又はそれと同一のアミノ酸配列、
    (iv) EUナンバリング239番目のアミノ酸SのDへの置換、EUナンバリング330番目のアミノ酸AのLへの置換、及びEUナンバリング332番目のアミノ酸IのEへの置換が導入された、又はそれと同一のアミノ酸配列
    (v) EUナンバリング326番目のアミノ酸KのDへの置換、EUナンバリング330番目のアミノ酸AのMへの置換、及びEUナンバリング334番目のアミノ酸KのEへの置換が導入された、又はそれと同一のアミノ酸配列
    (vi) EUナンバリング270番目のアミノ酸DのEへの置換、EUナンバリング326番目のアミノ酸KのDへの置換、EUナンバリング330番目のアミノ酸AのMへの置換、及びEUナンバリング334番目のアミノ酸KのEへの置換が導入された、又はそれと同一のアミノ酸配列。
  18.  前記FcγR結合部位が天然型IgG1より高いFcγR結合活性を有する、請求項12~17のいずれかに記載のFc領域二量体。
  19.  前記FcγRが、FcγRIa、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIaおよびFcγRIIIbからなる群から選択される少なくとも1つ以上のレセプターである、請求項1~18に記載のFc領域二量体。
  20.  前記FcγRが、FcγRIIIaである、請求項19に記載のFc領域二量体。
  21.  前記改変されるアミノ酸が、表2-1~表2-3に記載されたアミノ酸変異からなる群より選択される、少なくとも一つのアミノ酸が改変された又はそれと同一のアミノ酸配列を有する、請求項19に記載のFc領域二量体。
  22.  請求項1~21のいずれかに記載のFc領域二量体を含む、ポリペプチド。
  23.  ポリペプチドが、抗体、多重特異性抗体、ペプチドFc融合タンパク質、又はスキャフォールドFc融合タンパク質である、請求項22に記載のポリペプチド。
  24.  ポリペプチドが抗体の可変領域を含み、第1の抗原が当該可変領域と結合し、第1の抗原とは異なる第2の抗原がFc領域と結合する、請求項22又は23に記載のポリペプチド。
  25.  第1の抗原が腫瘍細胞に特異的な抗原である、請求項22~24のいずれかに記載のポリペプチド。
  26.  第2の抗原が免疫細胞の表面で発現している分子、又は、腫瘍細胞と正常細胞で発現している分子である、請求項22~25のいずれかに記載のポリペプチド。
  27.  請求項22~26のいずれかに記載のポリペプチド及び医学的に許容し得る担体を含む、医薬組成物。
  28.  請求項22~26のいずれかに記載のポリペプチドを製造する方法であって、工程(i)~(iv)を含む方法:
    (i)アミノ酸配列が多様なCH2ドメインを含むペプチド又はポリペプチドからなるペプチドライブラリーを作製する工程、
    (ii)作製されたライブラリーの中から、CH2ドメインを含むペプチド又はポリペプチドが抗原及びFcγRに対する結合活性を有するが、当該抗原及びFcγRと同時には結合しない、CH2ドメインを含むペプチド又はポリペプチドを選択する工程、
    (iii)工程(ii)で選択されたペプチド又はポリペプチドと同一のCH2ドメインを有するFc領域二量体を含むポリペプチドをコードする核酸を含む宿主細胞を培養して、当該Fc領域二量体を含むポリペプチドを発現させる工程、並びに
    (iv)前記宿主細胞培養物からFc領域二量体を含むポリペプチドを回収する工程。
  29.  工程(i)のCH2ドメインを含むペプチド又はポリペプチドが、異なるアミノ酸配列を有する2つのCH2ドメイン(第1のCH2ドメイン及び第2のCH2ドメイン)からなるヘテロ二量体である、請求項28に記載の方法。
  30.  工程(i)及び(ii)のCH2ドメインを含むペプチド又はポリペプチドが、Fc領域二量体又はFc領域二量体を含むポリペプチドである、請求項28又は29に記載の方法。
  31.  工程(ii)において、CH2ドメインの熱変性温度が50℃以上のCH2ドメインを含むペプチド又はポリペプチドを選択する工程を更に含む、請求項28~30のいずれかに記載の方法。
  32.  工程(i)のCH2ドメインを含むペプチド又はポリペプチドがIgG型である、請求項28~31のいずれかに記載の方法。
  33.  工程(i)のCH2ドメインを含むペプチド又はポリペプチドが、FcγRに対する結合活性を増強するための、請求項14~17および21に記載のいずれかの改変配列と同一の配列を有する、請求項28~32のいずれかに記載の方法。
  34.  工程(i)のライブラリーが、CH2ドメインのアミノ酸配列が多様化されたライブラリーである、請求項28~33のいずれかに記載の方法。
  35.  工程(i)のライブラリーが、ループ領域のアミノ酸配列が多様化されたライブラリーである、請求項28~34のいずれかに記載の方法。
  36.  多様化されるループ領域のアミノ酸配列が、EUナンバリング231~239、EUナンバリング265~271、EUナンバリング295~300およびEUナンバリング324~337から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸を含む、請求項28~35のいずれかに記載の方法。
  37.  多様化されるループ領域のアミノ酸配列が、第1のFc領域のEUナンバリング265~271およびEUナンバリング295~300、並びに第2のFc領域のEUナンバリング265~271およびEUナンバリング324~332から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸を含む、請求項29~36のいずれかに記載の方法。
  38.  多様化が、抗原に対する結合活性を有するペプチドをランダムに挿入することによる多様化である、請求項28~37のいずれかに記載の方法。
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