WO2013118799A1 - 新規なグルコース脱水素酵素 - Google Patents

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Abstract

新規なグルコース脱水素酵素及びその製造法、並びにその用途を提供することを課題とする。 下記の特性(1)~(4)を備えるフラビン結合型グルコース脱水素酵素。 (1)分子量: SDS-ポリアクリルアミド電気泳動で測定した酵素のポリペプチド部分の分子量が約69kDa (2)Km値: D-グルコースに対するKm値が約10mM以下 (3)温度安定性:50℃以下で安定 (4)pH安定性: pH3.0~8.0の範囲で安定

Description

新規なグルコース脱水素酵素
 本発明はグルコース脱水素酵素に関する。詳しくは、本発明はフラビン結合型グルコース脱水素酵素、それをコードするDNA、及び当該酵素の生産菌、当該酵素の製造方法、当該酵素を使用したグルコース測定方法などに関する。
 血糖自己測定(SMBG:Self-Monitoring of Blood Glucose)は糖尿病患者が自己の血糖値を管理し、治療に活用するために重要である。
近年、SMBGのために、電気化学的バイオセンサを用いた簡易型の自己血糖測定器が広く用いられている。バイオセンサは、絶縁性の基板上に電極、酵素反応層を形成したものである。
 ここで用いられる酵素としては、グルコース脱水素酵素(GDH)、グルコースオキシダーゼ(GO)などが挙げられる。GO(EC 1.1.3.4)を用いた方法は、測定サンプル中の溶存酸素の影響を受けやすく、溶存酸素が測定結果に影響を及ぼすといった問題点が指摘されている。一方でGDHは、溶存酸素の影響を受けないが、例えば、ピロロキノリンキノン依存型グルコース脱水素酵素(PQQ-GDH)(EC1.1.5.2(旧EC1.1.99.17))は、マルトースやラクトースといったグルコース以外の糖類にも作用するため正確な血糖値の測定には適していない。
 フラビンアデニンジヌクレオチド依存性グルコース脱水素酵素(以下、「FADGDH」とも表す。)は、溶存酸素の影響を受けず、マルトースにもほとんど作用しない。特許文献1~6や非特許文献1~6には、アスペルギルス・テレウスやアスペルギルス・オリゼ由来のもの、あるいは、それらを改変したものなどが報告されている。しかし、これらの酵素は、キシロースに対する反応性が比較的高いため(特許文献1)、キシロース負荷試験を受けている者の血糖を測定する場合には改善の余地がある。近年、一方、キシロースに対する作用性が比較的低いフラビン結合型GDH(特許文献6)や、GOとGDHの長所を併せ持つ改変型GDH(特許文献7)などが開発されているが依然として改善の余地がある
WO2004/058958 WO2006/101239 特開2007-289148 特開2008-237210 WO2008/059777 WO2010/140431 WO2011/068050
Biochim Biophys Acta.1967 Jul 11;139(2):265-76 Biochim Biophys Acta.1967 Jul 11;139(2):277-93 Biochim Biophys Acta.146(2):317-27 Biochim Biophys Acta.146(2):328-35 J Biol Chem (1967)242:3665-3672 Appl Biochem Biotechnol (1996)56:301-310
 上記のような現状の下、本発明者等は、SMBGにおける使用により適した、新規なグルコース脱水素酵素を開発すべく日夜検討を重ね、優れた基質特異性に加えて、D-グルコースに対する高い親和性を有し、安定性に優れた酵素を利用することで、測定時間を短縮し、且つ、少量の酵素量で正確な血糖値の測定が可能になるという課題を見出した。また、酵素を利用したSMBG用センサーの作成には、通常熱処理工程を伴うため、酵素は、前記のような特性に加えて、熱処理によって酵素活性を消失しない優れた熱安定性を有することが望ましい。よって、本発明は、基質特性、基質への親和性、及び熱安定性等に優れることにより、SMBG用センサーへの利用に適した新たなグルコース脱水素酵素を提供することを目的とする。
 上記課題を解決するために、本発明者らは、日夜検討を重ね、これまでにグルコース脱水素酵素を生産することが報告されていない多くの微生物についてスクリーニングした結果、新たな微生物がグルコース脱水素酵素活性を有することを見出した。そして、本発明者等は、当該酵素を単離精製し、その特性を調べた結果、フラビン結合型のグルコース脱水素であり、優れた基質特異性、高いD-グルコースに対する親和性および優れた熱安定性を備えていることを見出した。更に、本発明者等は、単離した酵素のアミノ酸配列及び遺伝子配列を決定し、それらの配列がこれまでに報告されているFADGDHのものとは異なる新規な酵素であることを突き止めた。
 本発明は、係る知見に基づき、更なる研究と改良を重ねた結果完成したものであり、代表的な本発明は、以下の通りである。
項1
下記の(a)~(c)のいずれかのポリペプチドからなるフラビン結合型グルコース脱水素酵素;
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位したアミノ酸配列からなり、グルコース脱水素酵素活性を有するポリペプチド、
(c)配列番号1に示されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなり、グルコース脱水素酵素活性を有するポリペプチド。
項2
以下の(A)~(E)のいずれかのDNA:
(A)配列番号1に示されるアミノ酸配列をコードするDNA、
(B)配列番号2に示される塩基配列をからなるDNA、
(C)配列番号2に示される塩基配列との相同性が80%以上である塩基配列からなり、且つ、グルコース脱水素酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA;
(D)配列番号2に示される塩基配列に相補的な塩基配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであり、且つグルコース脱水素酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA、
(E)配列番号2に示される塩基配列において、一若しくは数個の塩基が置換、欠失、挿入、付加及び/又は逆位されている塩基配列であり、グルコース脱水素酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA、
(F)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、付加、又は逆位したアミノ酸配列からなり、且つ、グルコース脱水素酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
項3
項2に記載のDNAを組み込んだベクター。
項4
項3に記載のベクターを含む形質転換体。
項5
項4に記載の形質転換体を培養することを含む、請求項1に記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素の製造方法。
項6
項1に記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素をグルコースに作用させることを含む、グルコース濃度の測定方法。
項8
項1に記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素を含むグルコースアッセイキット。
項9
項1に記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素を含むグルコースセンサ。
項A.下記の特性(1)~(4)を備えるフラビン結合型グルコース脱水素酵素。
(1)分子量: SDS-ポリアクリルアミド電気泳動で測定した酵素のポリペプチド部分の分子量が約69kDa
(2)Km値: D-グルコースに対するKm値が約10mM以下
(3)温度安定性:50℃以下で安定
(4)pH安定性: pH3.0~8.0の範囲で安定
項B.更に下記の特性(5)を備える、項Aに記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素。
(5)基質特異性: D-グルコースに対する反応性を100%としたときのD-キシロースに対する反応性が1.8%以下である
項C.更に下記の特性(6)を備える、項A又はBに記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素。
(6)至適活性温度: 45℃~50℃
項D.更に下記の特性(7)を備える、項A~Cのいずれかに記載のフラビン結合多型グルコース脱水素酵素。
(7)至適活性pH: 8.0
項E.更に下記の特性(8)を備える、項A~Dのいずれかに記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素。
(8)由来: ムコール(Mucor)属に分類される微生物に由来する
項F.ムコール属に分類される微生物を培養すること、及び
グルコース脱水素酵素を回収すること
を含む、項A~Eのいずれかに記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素の製造方法。
項G.項A~Eのいずれかに記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素をグルコースに作用させることを含む、グルコース濃度の測定方法。
項H.項A~Eのいずれかに記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素を含むグルコースアッセイキット。
項I.項A~Eのいずれかに記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素を含むグルコースセンサ。
 本発明のフラビン結合型グルコース脱水素酵素(以下、「FGDH」と称する場合もある。)は、グルコース脱水素酵素活性を有し、D-グルコースとの親和性が高い(即ち、D-グルコースに対するKm値が有意に低い)ため、より少ない酵素量で試料中のD-グルコース濃度をより短時間で測定することを可能にする。また、本発明のFGDHは、D-キシロースに対する反応性が有意に低いため、試料中にD-グルコースとD-キシロースが共存する場合であってもグルコース量又は濃度を正確に測定することを可能にする。
よって、本発明のFGDHはキシロース負荷試験下での血糖値測定に適している。更に、本発明のFGDHは、熱安定性に優れるため、熱処理等を伴う効率的なセンサストリップの製造を可能にする。加えて、本発明のFGDHは、広い範囲のpH領域に対して安定であるため、幅広い条件下での使用に適している。これらの特性を備えるため、本発明のFGDHは、D-グルコースを含むあらゆる試料(例えば、血液や食品(調味料や飲料等))におけるグルコース濃度を正確に測定することを可能にする。更に本発明のDNAは、本発明のFGDHをコードするため、遺伝子工学的手法を用いて、効率的に本発明のFGDHを製造することを可能にする。
Mucor subtilissimus NBRC6338由来FGDHの活性に対するpHの影響を示す。 Mucor subtilissimus NBRC6338由来FGDHの活性に対する温度の影響を示す。 Mucor subtilissimus NBRC6338由来FGDHのpH安定性を測定した結果を示す。 Mucor subtilissimus NBRC6338由来FGDHの温度安定性を測定した結果を示す。 Mucor subtilissimus NBRC6338由来FGDHの反応速度と基質濃度との関係を示す。
以下、本発明を詳細に説明する。
1.フラビン結合型グルコース脱水素酵素
1-1.グルコース脱水素酵素活性
 フラビン結合型グルコース脱水素酵素とは、電子受容体存在下でグルコースの水酸基を酸化してグルコノ-δ-ラクトンを生成する反応を触媒する理化学的性質を有する酵素である。本書においては、この理化学的性質をグルコースデヒドロゲナーゼ活性といい、特に断りが無い限り、「酵素活性」又は「活性」とは、当該酵素活性を意味する。前記電子受容体は、FGDHが触媒する反応において、電子の授受を担うことが可能である限り特に制限されないが、例えば、2,6-ジクロロフェノールインドフェノール(DCPIP)、フェナジンメトサルフェート(PMS)、1-メトキシ-5-メチルフェナジウムメチルサルフェート、及びフェリシアン化合物等を使用することができる。
 グルコースデヒドロゲナーゼ活性は、公知の方法で測定することができる。例えば、DCPIPを電子受容体として用い、反応前後における600nmの波長における試料の吸光度の変化を指標に活性を測定することができる。より具体的には、下記の試薬及び測定条件を用いて活性を測定することができる。
 グルコースデヒドロゲナーゼ活性の測定方法
<試薬>
50mM PIPES緩衝液pH6.5(0.1% TritonX-100を含む)
24mM PMS溶液
2.0mM 2,6-ジクロロフェノールインドフェノール(DCPIP)溶液
1M D-グルコース溶液
上記PIPES緩衝液20.5mL、DCPIP溶液1.0mL、PMS溶液2.0mL、D―グルコース溶液5.9mLを混合して反応試薬とする。
<測定条件>
 反応試薬3mLを37℃で5分間予備加温する。FGDH溶液0.1mLを添加しゆるやかに混和後、水を対照に37℃に制御された分光光度計で、600nmの吸光度変化を5分記録し、直線部分から(即ち、反応速度が一定になってから)1分間あたりの吸光度変化(ΔODTEST)を測定する。盲検はFGDH溶液の代わりにFGDHを溶解する溶媒を試薬混液に加えて同様に1分間あたりの吸光度変化(ΔODBLANK)を測定する。これらの値から次の式に従ってFGDH活性を求める。ここでFGDH活性における1単位(U)とは、濃度200mMのD-グルコース存在下で1分間に1マイクロモルのDCPIPを還元する酵素量である。
 活性(U/mL)=
{-(ΔODTEST-ΔODBLANK)×3.1×希釈倍率}/{16.3×0.1×1.0}
 なお、式中の3.1は反応試薬+酵素溶液の液量(mL)、16.3は本活性測定条件におけるミリモル分子吸光係数(cm/マイクロモル)、0.1は酵素溶液の液量(mL)、1.0はセルの光路長(cm)を示す。本書においては、別段の表示しない限り、酵素活性は上記の測定方法に従って、測定される。
 本発明のFGDHは、フラビンを補欠分子族として要求するフラビン結合型のGDHである。
 本発明のFGDHは、単離されたFGDH又は精製されたFGDHであることが好ましい。また、本発明のFGDHは、上記保存に適した溶液中に溶解した状態又は凍結乾燥された状態(例えば、粉末状)で存在してもよい。本発明の酵素(FGDH)に関して使用する場合の「単離された」とは、当該酵素以外の成分(例えば、宿主細胞に由来する夾雑タンパク質、他の成分、培養液等)を実質的に含まない)状態をいう。具体的には例えば、本発明の単離された酵素は、夾雑タンパク質の含有量が重量換算で全体の約20%未満、好ましくは約10%未満、更に好ましくは約5%未満、より一層好ましくは約1%未満である。一方で、本発明のFGDHは、保存又は酵素活性の測定に適した溶液(例えば、バッファー)中に存在してもよい。
 1-2.ポリペプチド
 本発明のFGDHは、下記(a)~(c)のいずれかのポリペプチドで構成されることが好ましい。
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、付加および/または逆位したアミノ酸配列からなり、グルコース脱水素酵素活性を有するポリペプチド;
(c)配列番号1に示されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなり、グルコース脱水素酵素活性を有するポリペプチド。
 配列番号1で示されるアミノ酸配列とは、実施例5に示される通り、Mucor subtilissimus NBRC6338に由来するFGDHのアミノ酸配列であり、下記1-3~1-10の特性を全て満たす。
 上記(b)のポリペプチドは、グルコース脱水素酵素活性を保持する限度で、配列番号1に示されるアミノ酸において、1若しくは数個のアミノ酸配残基が置換、欠失、挿入、付加及び/又は逆位(以下、これらを纏めて「変異」とする場合がある。)されたアミノ酸配列からなるポリペプチドである。ここで「数個」とは、グルコース脱水素酵素活性及び好ましくは後述する1-3~1-10(特に1-3、1-4、1-7、及び1-8)の特性が維持される限り制限されないが、例えば、全アミノ酸の約20%未満に相当する数であり、好ましくは約15%未満に相当する数であり、さらに好ましくは約10%未満に相当する数であり、より一層好ましくは約5%未満に相当する数であり、最も好ましくは約1%未満に相当する数である。より具体的には、変異されるアミノ酸残基の個数は、例えば、2~127個、好ましくは2~96個、より好ましくは2~64個、更に好ましくは2~32個であり、より更に好ましくは2~20個、一層好ましくは2~15個、より一層好ましくは2~10個、特に好ましくは2~5個である。
 当該変異がアミノ酸の置換である場合、置換の種類は、特に制限されないが、FGDHの表現型に顕著な影響を与えないという観点から保存的アミノ酸置換が好ましい。「保存的アミノ酸置換」とは、あるアミノ酸残基を、同様の性質の側鎖を有するアミノ酸残基に置換することをいう。アミノ酸残基はその側鎖によって塩基性側鎖(例えばリシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)、芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)のように、いくつかのファミリーに分類されている。よって、同一のファミリー内のアミノ酸残基間で置換されることが好ましい。
 一又は数個の変異は、制限酵素処理、エキソヌクレアーゼやDNAリガーゼ等による処理、位置指定突然変異導入法(Molecular Cloning, Third Edition, Chapter 13 ,Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)やランダム突然変異導入法(Molecular Cloning, Third Edition, Chapter 13 ,Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)など公知の手法を利用して後述する本発明のFGDHをコードするDNAに変異を導入することによって実施することが可能である。また、紫外線照射など他の方法によってもバリアントFGDHを得ることができる。バリアントFGDHには、FGDHを保持する微生物の個体差、種や属の違いに基づく場合などの天然に生じるバリアント(例えば、一塩基多型も含まれる。
 また、FGDHの活性を維持するという観点からは、FGDHの活性部位又は基質結合部位に影響を与えない部位において上記変異が存在することが好ましい。
 上記(c)のポリペプチドは、グルコース脱水素酵素活性を保持することを限度で、好ましくは下記1-3~1-10の特性を保持する限度で、配列番号1に示されるアミノ酸配列と比較した同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなるポリペプチドである。好ましくは、本発明のFGDHが有するアミノ酸配列と配列番号1に示されるアミノ酸配列との同一性は、85%以上であり、より好ましくは88%以上、更に好ましくは90%以上、より更に好ましくは93%以上、一層好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。このような一定以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドは、上述するような公知の遺伝子工学的手法に基づいて作成することができる。
 アミノ酸配列の同一性は、市販の又は電気通信回線(インターネット)を通じて利用可能な解析ツールを用いて算出することができ、例えば、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の相同性アルゴリズムBLAST(Basic local alignment search tool)http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/ においてデフォルト(初期設定)のパラメーターを用いることにより、算出することができる。
1-3.基質特異性
 本発明のFGDHは、基質特異性に優れている。特に、本発明のFGDHは、D-グルコースに対する反応性を基準とした場合に、少なくともD-キシロースに対する反応性が有意に低い。より具体的に、本発明のFGDHは、同一濃度のD-グルコースに対する反応性を100%とした場合に、D-キシロースに対する反応性が1.8%以下であることが好ましい。
 本発明のFGDHは、D-キシロースに対する反応性が低いことに加えて、D-ガラクトース及びマルトースに対する反応性も低いことが好ましい。本発明のFGDHのD-ガラクトースに対する反応性は、同一濃度のD-グルコースに対する反応性を100%として、通常5%以下であり、好ましくは3%以下であり、より好ましくは2%以下、更に好ましくは1.5%以下、特に好ましくは1.3%以下である。
 本発明のFGDHのマルトースに対する反応性は、同一濃度のD-グルコースに対する反応性を100%として、通常5%以下であり、好ましくは4%以下であり、より好ましくは3%以下であり、更に好ましくは2.3%以下である。
 上記本発明のFGDHのD-グルコースに対する反応性を基準としたD-キシロース、D-ガラクトース及びマルトースに対する反応性の下限値は、特に制限されないが、0%又は0%に限りなく近い値を下限値とすることができる。
 FGDHの各糖類に対する反応性は、上記1-1.に示すグルコースデヒドロゲナーゼ活性の測定方法において、D-グルコースを他の糖(例えば、D-キシロース、D-ガラクトース、又はマルトース)に置き換えて、D-グルコースの場合の活性を比較することにより求めることができる。但し、比較する場合の各糖類の濃度は50mMを基準とする。
 以上のような優れた基質特異性を有する本発明のFGDHは、試料中のグルコース量を正確に測定するための酵素として好ましい。即ち、本発明のFGDHによれば試料中にマルトース、D-ガラクトース、D-キシロースなどの夾雑物が存在する場合であっても目的のD-グルコースの量を正確に測定することが可能である。従って本酵素は、試料中にこのような夾雑物の存在が予想又は懸念される用途(典型的には血液中のグルコース量の測定)に適したものであり、当該用途も含め様々な用途に適用可能であり、汎用性が高い。
1-4.D-グルコースに対する親和性
 本発明のFGDHは、本来の基質であるD-グルコースに対する親和性が高いことが好ましい。親和性が高いことにより、試料中のD-グルコースの濃度が低い場合であっても、上述する触媒反応を進めることができ、より正確なD-グルコース濃度の測定、より短時間での測定、及びより少ない酵素量での測定に資するからである。FGDHのD-グルコースに対する親和性は、Km値によって示される。Km値は、いわゆるミカエリス・メンテン式から求められる値であり、具体的には、上記1-1.に示す活性測定方法においてD-グルコースの濃度を変化させて各濃度における活性を測定し、ラインウィーバー・バーク・プロットを作成することによって求めることができる。
 酵素の反応速度論から判断して、Km値が低いほど、酵素は基質に対する親和性が高く、基質濃度が低い場合でも基質との複合体を形成することができ、より早い速度で触媒反応を進めることができる。本発明のFGDHのD-グルコースに対するKm値は、10mM以下であることが好ましく、より好ましくは9mM以下、更に好ましくは8mM以下、より更に好ましくは7mM以下であり、特に好ましくは6.7mM以下である。
1-5.至適活性pH
 本発明のFGDHは、実施例に示す通り、pH8.0(Tris HCl緩衝液)において最も高い活性を示すことが好ましい。また、pH7.5~8.0(TrisHCl緩衝液)において、本発明のFGDHは、pH8.0(Tris HCl緩衝液)における活性を100%として、80%以上の相対活性を示すことが好ましい。即ち、本発明のFGDHの至適活性pHは7.5~8.0であり、好ましくはpH8.0である。一方、本発明のFGDHは、後述する実施例に示す通り、リン酸カリウム緩衝液やMES-NaOH緩衝液を中ではpH6・5~7.5付近で最も高い活性を示す。よって、これらの緩衝液を用いる場合は、pH6.5~7.5が至適活性pHであることが好ましい。
1-6.至適活性温度
 本発明のFGDHの至適活性温度は、45℃~50℃であることが好ましい。ここで「45℃~50℃」とは、典型的に至適活性温度が45℃~50℃付近であり、更にある程度の許容可能な幅を有することを意味する。本明細書において、至適活性温度は、後述する実施例に示す通り、酵素濃度0.1U/mLでPIPES-NaOHバッファー(pH6.5)中における酵素活性を測定することにより求められる。
1-7.pH安定性
 本明細書において、特定のpH条件の下、2U/mLの酵素を25℃で16時間処理した後の残存酵素活性が、処理前の酵素活性と比較して95%以上である場合に、当該酵素は、当該pH条件において安定であると判断する。本発明のFGDHは、少なくともpH3.0~8.0の範囲全体で安定であることが好ましい。
1-8.温度安定性
 本明細書において、特定の温度条件の下、適当な緩衝液中(例えば酢酸カリウムバッファー(pH5.0))で2U/mLの酵素を15分間処理した後の残存酵素活性が、処理前の酵素活性と比較して実質的な低下が認められない(つまり約90%以上を維持する)とき、当該酵素は当該温度条件において安定であると判断する。本発明のFGDHは、少なくとも0℃~50℃の温度範囲において安定であることが好ましい。
 本発明のFGDHは、上記1-3~1-8で示される特徴のうち少なくとも1つ以上を備えていることが好ましく、より好ましくはその2つ以上を備え、更に好ましくはその3つの特性を更に備え、より更に好ましくはその4つ以上を備え、一層好ましくはその5つ以上を備え、より一層好ましくはその6つ以上を備え、特に好ましくはその全てを備える。本発明のFGDHは、上記1-3~1-8の特性を如何なる組合せで備えていても良いが、上記1-3、1-4、1-7及び1-8の特性を備えていることが好ましい。
1-9.分子量
 本発明のFGDHを構成するポリペプチド部分の分子量は、SDS-PAGEで測定した場合に約69kDaであることが好ましい。「約69kDa」とは、SDS-PAGEで分子量を測定した際に、当業者が、通常69kDaの位置にバンドがあると判断する範囲を含むことを意味する。「ポリペプチド部分」とは、実質的に糖鎖が結合していない状態のFGDHを意味する。微生物によって生産された本発明のFGDHが糖鎖結合型である場合は、それを熱処理や糖加水分解酵素によって処理することにより、糖鎖を除去した状態(即ち、「ポリペプチド部分」)にすることができる。実質的に糖鎖が結合していない状態とは、熱処理や糖加水分解酵素によって処理された糖鎖結合型FGDHに不可避的に残存する糖鎖の存在を許容する。よって、FGDHが本来的に糖鎖結合型でない場合は、それ自体が「ポリペプチド部分」に相当する。
 糖鎖結合型FGDHから糖鎖を除去する手段は、特に制限されないが、例えば、後述する実施例に示すように、糖鎖結合型のFGDHを100℃で10分間加熱処理をして変性させた後、N-グリコシダーゼF(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)を用いて37℃で6時間処理することにより実施することができる。
 本発明のFGDHが糖鎖に結合している場合、その分子量は、グルコース脱水素酵素活性、基質特異性、及びD-グルコースに対する親和性などにネガティブに影響しない限り特に制限されない。例えば、糖鎖が結合した状態の本発明FGDHの分子量は、SDS-PAGEでの測定において、103,000~143,000Daであることが好ましい。糖鎖結合型のFGDHは、酵素をより安定にするという観点及び水溶性を高め、水に溶け易くするという観点から好ましい。
 SDS-PAGEでの分子量の測定は、一般的な手法及び装置を用い、市販される分子量マーカーを用いて行うことができる。
1-10.由来
 本発明のFGDHは、上述する特性を備える限り、その由来は特に制限されない。本発明のFGDHは、例えば、ムコール(Mucor)属に帰属する微生物に由来し得る。ムコール属に属する微生物としては、特に制限されないが、例えば、Mucor subtilissimus、Mucor guilliermondii、Mucor prainii、Mucor javanicus、Mucor circinelloides、及び、Mucor hiemalis f. silvaticus等を例示することができる。より具体的には、Mucor subtilissimus NBRC6338を例示することができる。Mucor subtilissimus NBRC6338は、NBRC(NITE Biological Resouce Center)(独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジー本部 生物遺伝資源部門)に保管された菌株であり、所定の手続を経ることによってその分譲を受けることができる。
 本発明のFGDHが由来する他の生物としては、例えば、土壌や河川・湖沼などの水系又は海洋に存在する微生物や各種動植物の表面または内部に常在する微生物などを挙げることができる。低温環境、火山などの高温環境、深海などの無酸素・高圧・無光環境、油田など特殊な環境に生育する微生物を単離源としてもよい。
 本発明のFGDHには、微生物から直接単離されるFGDHだけでなく、単離されたFGDHを蛋白質工学的な方法によりアミノ酸配列等を改変したものや、遺伝子工学的手法により改変したものも含まれる。例えば、ケカビ科に分類される微生物、より具体的には、Mucor guilliermondii、Mucor prainii、Mucor javanicus、Mucor circinelloides、Mucor subtilissimus及び、Mucor hiemalis f. silvaticusに帰属する微生物に由来するものを改変したものであっても良い。
2.フラビン結合型グルコース脱水素酵素をコードするDNA
 本発明のDNAは、上記1.のFGDHをコードするDNAであり、具体的には以下の(A)~(F)のいずれかである。
(A)配列番号1に示されるアミノ酸配列をコードするDNA;
(B)配列番号2に示される塩基配列をからなるDNA;
(C)配列番号2に示される塩基配列との相同性が80%以上である塩基配列をからなり、且つ、グルコース脱水素酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA;
(D)配列番号2に示される塩基配列に相補的な塩基配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを含み、且つグルコース脱水素酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA;
(E)配列番号2に示される塩基配列において、一若しくは数個の塩基が置換、欠失、挿入、付加及び/又は逆位されている塩基配列であり、グルコース脱水素酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA;
(F)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、付加、又は逆位したアミノ酸配列からなり、且つ、グルコース脱水素酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
 本書において「タンパク質をコードするDNA」とは、それを発現させた場合に当該タンパク質が得られるDNA、即ち、当該タンパク質のアミノ酸配列に対応する塩基配列を有するDNAのことをいう。従ってコドンの縮重によって相違するDNAも含まれる。
 本発明のDNAは、それがコードするアミノ酸配列を有するタンパク質が、グルコース脱水素酵素活性及び好ましくは上記1-2~1-10の特性の少なくとも1つ(特に、上記1-3、1-4、1-7及び1-8の特性)を備える限り、配列番号2に示される塩基配列との相同性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、更に好ましくは90%以上、より更に好ましくは93%以上、一層好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である塩基配列を有する。
 塩基配列の相同性は、市販の又は電気通信回線(インターネット)を通じて利用可能な解析ツールを用いて算出することができ、例えば、FASTA、BLAST、PSI-BLAST、SSEARCH等のソフトウェアを用いて計算される。具体的には、BLAST検索に一般的に用いられる主な初期条件は、以下の通りである。即ち、Advanced BLAST 2.1において、プログラムにblastnを用い、各種パラメータはデフォルト値に設定して検索を行うことにより、ヌクレオチド配列の相同性の値(%)を算出することができる。
 本発明のDNAは、それがコードするタンパク質がグルコース脱水素活性を有し、好ましくは上記1-2~1-10の特性、より好ましくは上記1-3、1-4、1-7及び1-8の特性)の少なくとも1つを備える限り、配列番号2に示される塩基配列に相補的な塩基配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであっても良い。ここで「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。このようなストリンジェントな条件は当業者に公知であって、例えば、Molecular Cloning(Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)やCurrent protocols in molecular biology(edited by Frederick M. Ausubel et al., 1987)を参照して設定することができる。
 具体的なストリンジェントな条件としては、例えば、ハイブリダイゼーション液(50%ホルムアミド、10×SSC(0.15M NaCl, 15mM sodium citrate, pH 7.0)、5×Denhardt溶液、1% SDS、10% デキストラン硫酸、10μg/mlの変性サケ精子DNA、50mMリン酸バッファー(pH7.5))を用いて約42℃~約50℃でインキュベーションし、その後0.1×SSC、0.1% SDSを用いて約65℃~約70℃で洗浄する条件を挙げることができる。更に好ましいストリンジェントな条件として例えば、ハイブリダイゼーション液として50%ホルムアミド、5×SSC(0.15M NaCl, 15mM sodium citrate, pH 7.0)、1×Denhardt溶液、1%SDS、10%デキストラン硫酸、10μg/mlの変性サケ精子DNA、50mMリン酸バッファー(pH7.5))を用いる条件を挙げることができる。
 このような条件でハイブリダイズするDNAの中には途中にストップコドンが発生したものや、活性中心の変異により活性を失ったものも含まれ得るが、それらについては、市販の活性発現ベクターに組み込み、適当な宿主で発現させて、酵素活性を公知の手法で測定することによって容易に取り除くことができる。
 上記(E)及び(F)のDNAに関し、「数個」とは上記1-2に説明したものと同義である。即ち、「数個」とは、グルコース脱水素酵素活性及び好ましくは後述する1-3~1-10(特に1-3、1-4、1-7、及び1-8)の特性が維持される限りにおいて、例えば、全DNAの約20%未満に相当する数であり、好ましくは約15%未満に相当する数であり、さらに好ましくは約10%未満に相当する数であり、より一層好ましくは約5%未満に相当する数であり、最も好ましくは約1%未満に相当する数である。より具体的には、変異される塩基の個数は、例えば、2~382個、好ましくは2~286個、より好ましくは2~290個、更に好ましくは2~95個であり、より更に好ましくは2~19個、一層好ましくは2~15個、より一層好ましくは2~10個、特に好ましくは2~5個である。
 好適な一実施形態において、本発明のFGDHをコードするDNAは、単離された状態で存在するDNAである。ここで「単離されたDNA」とは、天然状態において共存するその他の核酸やタンパク質等の成分から分離された状態であることをいう。但し、単離されたDNAは、天然状態において隣接する核酸配列(例えばプロモーター領域の配列やターミネーター配列など)など一部の他の核酸成分を含んでいてもよい。例えば染色体DNAの場合の「単離された」状態とは、好ましくは、天然状態において共存する他のDNA成分を実質的に含まない。一方、cDNA分子など遺伝子工学的手法によって調製されるDNAの場合の「単離された」状態では、好ましくは、細胞成分や培養液などを実質的に含まない。同様に、化学合成によって調製されるDNAの場合の「単離された」状態では、好ましくは、dNTPなどの前駆体(原材料)や合成過程で使用される化学物質等を実質的に含まない。尚、それと異なる意味を表すことが明らかでない限り、本明細書において単に「DNA」と記載した場合には単離された状態のDNAを意味する。本発明のDNAには、上記(A)~(F)のDNAと相補的なDNA(cDNA)も含まれる。
 本発明のDNAは、本明細書又は添付の配列表が開示する配列情報(特に、配列番号2)を基に、化学的DNA合成法により製造、取得することができる、例えば、公知の標準的な遺伝子工学的手法、分子生物学的手法、生化学的手法などを用いることによって容易に調製することができる(Molecular Cloning 2d Ed, Cold Spring Harbor Lab. Press (1989);続生化学実験講座「遺伝子研究法I、II、III」、日本生化学会編(1986)等参照)。化学的DNA合成法としては、フォスフォアミダイト法による固相合成法を例示することができる。この合成法には自動合成機を利用することができる。
 標準的な遺伝子工学的手法としては、具体的には、本発明のFGDHが発現される適当な起源微生物より、常法に従ってcDNAライブラリーを調製し、該ライブラリーから、本発明のDNA配列(例えば、配列番号2の塩基配列)に特有の適当なプローブや抗体を用いて所望クローンを選択することにより実施できる〔Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 78, 6613 (1981);Science122, 778 (1983)等〕。
 cDNAライブラリーを調整するための起源微生物は、本発明FGDHを発現する微生物であれば特に制限れないが、好ましくは、ムコール属に分類される微生物である。より具体的には、上記1-10.に示す微生物を挙げることができる。
 上記の微生物からの全RNAの分離、mRNAの分離や精製、cDNAの取得とそのクローニング等は、いずれも常法に従って実施することができる。本発明のDNAをcDNAライブラリーからスクリーニングする方法も、特に制限されず、通常の方法に従うことができる。例えば、cDNAによって産生されるポリペプチドに対して、該ポリペプチド特異抗体を使用した免疫的スクリーニングにより対応するcDNAクローンを選択する方法、目的のヌクレオチド配列に選択的に結合するプローブを用いたプラークハイブリダイゼーション、コロニーハイブリダイゼーション等やこれらの組合せ等を適宜選択して実施することができる。
 DNAの取得に際しては、PCR法〔Science130, 1350 (1985)〕またはその変法によるDNA若しくはRNA増幅法が好適に利用できる。殊に、ライブラリーから全長のcDNAが得られ難いような場合には、RACE法〔Rapid amplification of cDNA ends;実験医学、12(6), 35 (1994)〕、特に5’-RACE法〔M.A. Frohman, et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 8, 8998 (1988)〕等の採用が好適である。
 PCR法の採用に際して使用されるプライマーも配列番号2の塩基配列に基づいて適宜設計し合成することができる。尚、増幅させたDNA若しくはRNA断片の単離精製は、前記の通り常法に従うことができ、例えばゲル電気泳動法、ハイブリダイゼーション法等によることができる。
 本発明のDNAを使用することにより、本発明のFGDHを容易に大量に、安定して製造することができる。
3.ベクター
 本発明のベクターは、上記2.で説明する本発明のFGDHをコードするDNAが組み込まれたベクターである。ここで「ベクター」とは、それに挿入された核酸分子を細胞等のターゲット内へと輸送することができる核酸性分子(キャリアー)であり、適当な宿主細胞内で本発明のDNAを複製可能であり、且つ、その発現が可能である限り、その種類や構造は特に限定されない。即ち、本発明のベクターは発現ベクターである。ベクターの種類は、宿主細胞の種類を考慮して適当なベクターが選択される。ベクターの具体例としては、プラスミドベクター、コスミドベクター、ファージベクター、ウイルスベクター(アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター等)等を挙げることができる。また、糸状菌を宿主とする場合に適したベクターや、セルフクローニングに適したベクターを使用することも可能である。
 大腸菌を宿主とする場合は、例えば、M13ファージ又はその改変体、λファージ又はその改変体、pBR322又はその改変体(pB325、pAT153、pUC8など)など)を使用することができる。酵母を宿主とする場合は、pYepSec1、pMFa、pYES2等を使用することができる。昆虫細胞を宿主とする場合は、例えば、pAc、pVL等が使用でき、哺乳類細胞を宿主とする場合は、例えば、pCDM8、pMT2PC等を使用することができるが、これらに限定される訳ではない。
 発現ベクターは通常、挿入された核酸の発現に必要なプロモーター配列や発現を促進させるエンハンサー配列等を含む。選択マーカーを含む発現ベクターを使用することもできる。かかる発現ベクターを用いた場合には選択マーカーを利用して発現ベクターの導入の有無(及びその程度)を確認することができる。本発明のDNAのベクターへの挿入、選択マーカー遺伝子の挿入(必要な場合)、プロモーターの挿入(必要な場合)等は標準的な組換えDNA技術(例えば、Molecular Cloning, Third Edition, 1.84, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New Yorkを参照することができる、制限酵素及びDNAリガーゼを用いた周知の方法)を用いて行うことができる。
4.形質転換体
 本発明は、宿主細胞に本発明のDNAが導入された形質転換体に関する。本発明のDNAの宿主への導入手段は特に制限されないが、例えば、上記3.で説明するベクターに組み込まれた状態で宿主に導入される。宿主細胞は、本発明のDNAを発現してFGDHを生産することが可能である限り、特に制限されない。具体的には、大腸菌、枯草菌等の原核細胞や、酵母、カビ、昆虫細胞、哺乳動物細胞等の真核細胞等を使用することができる。宿主が大腸菌の場合、エシェリヒア・コリC600、エシェリヒア・コリHB101、エシェリヒア・コリDH5αなどが用いられ、ベクターとしてはpBR322、pUC19、pBluescriptなどが例として挙げられる。宿主が酵母の場合は、サッカロミセス・セレビシエ、シゾサッカロミセス・ポンベ、キャンデイダ・ウチリス、ピキア・パストリスなどが例として挙げられ、ベクターとしてはpAUR101、pAUR224、pYE32などが挙げられる。宿主が糸状菌細胞である場合は、例えば、Aspergillus oryzae, Aspergillus niger、Mucor hiemalis等を例示することができる。また、本発明のFGDHが単離されたムコール属に帰属する微生物を宿主とすることも好ましい。即ち、形質転換体では、通常、外来性のDNAが宿主細胞中に存在するが、DNAが由来する微生物を宿主とするいわゆるセルフクローニングによって得られる形質転換体も好適な実施形態である。
 本発明の形質転換体は、好ましくは、上記3.に示される発現ベクターを用いたトランスフェクション乃至はトランスフォーメーションによって調製される。形質転換は、一過性であっても安定的な形質転換であってもよい。トランスフェクション及びトランスフォーメーションはリン酸カルシウム共沈降法、エレクトロポーレーション(Potter, H. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81, 7161-7165(1984))、リポフェクション(Felgner, P.L. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84,7413-7417(1984))、マイクロインジェクション(Graessmann, M. & Graessmann,A., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 73,366-370(1976))、Hanahanの方法(Hanahan, D., J. Mol. Biol. 166, 557-580(1983))、酢酸リチウム法(Schiestl, R.H. et al., Curr. Genet. 16, 339-346(1989))、プロトプラスト-ポリエチレングリコール法(Yelton, M.M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 81, 1470-1474(1984))等を利用して実施することができる。
 本発明の形質転換体は、本発明のFGDHを産生する能力を有するため、それを用いて効率的に本発明のFGDHを製造することが可能となる。
5.フラビン結合型グルコース脱水素酵素の製造方法
 本発明のFGDHは、典型的には、本発明のFGDHの生産能を有する微生物を培養することで製造される。培養に供される微生物は、本発明のFGDHを産生する能力を有する限り特に制限されず、例えば、上記1.に示すムコール属に帰属する野生型の微生物及び上記4.に示す形質転換体を好適に利用することができる。
 上記のムコール(Mucor)属に分類される微生物は、例えば、NBRC(NITE Biological Resouce Center)(独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジー本部 生物遺伝資源部門)に保管された菌株であり、所定の手続を経ることによってその分譲を受けることができる。
 培養方法及び培養条件は、本発明のFGDHが生産される限り特に限定されない。即ち、FGDHが生産されることを条件として、使用する微生物の生育に適合した方法及び条件を適宜設定できる。以下に、培養条件として、培地、培養温度、及び培養時間を例示する。
 培地としては、使用する微生物が生育可能な培地であれば、特に制限されない。例えば、グルコース、シュクロース、ゲンチオビオース、可溶性デンプン、グリセリン、デキストリン、糖蜜、有機酸等の炭素源、更に硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、あるいは、ペプトン、酵母エキス、コーンスティープリカー、カゼイン加水分解物、ふすま、肉エキス等の窒素源、更にカリウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、リン酸塩、マンガン塩、鉄塩、亜鉛塩等の無機塩を添加したものを用いることができる。使用する微生物の生育を促進するためにビタミン、アミノ酸などを培地に添加してもよい。
 ムコール(Mucor)属に分類される微生物を培養して本発明のFGDHを得る場合は、その微生物の栄養生理的性質を考慮して培養条件を選択すればよい。多くの場合は液体培養で行い、工業的には通気攪拌培養を行うのが有利である。ただし、生産性を考えた場合に、固体培養で行った方が有利な場合もある。
 培地のpHは、培養する微生物の生育に適していればよく、例えば約3~8、好ましくは約5~7程度に調整し、培養温度は通常約10~50℃、好ましくは約25~35℃程度で、1~15日間、好ましくは3~7日間程度好気的条件下で培養する。培養法としては例えば振盪培養法、ジャー・ファーメンターによる好気的深部培養法が利用できる。
 上記のような条件で培養した後、培養液又は菌体よりFGDHを回収することが好ましい。FGDHを菌体外に分泌する微生物を用いる場合は、例えば培養上清をろ過、遠心処理等することによって不溶物を除去した後、限外ろ過膜による濃縮、硫安沈殿等の塩析、透析、各種クロマトグラフィーなどを適宜組み合わせて分離、精製を行うことにより本酵素を得ることができる。ムコール属に属する微生物が産生するフラビン結合型グルコース脱水素酵素は基本的に分泌型のタンパク質である。
 他方、菌体内から回収する場合には、例えば菌体を加圧処理、超音波処理、機械的手法、又はリゾチーム等の酵素を利用した手法等によって破砕した後、必要に応じて、EDTA等のキレート剤及び界面活性剤を添加してGDHを可溶化し、水溶液として分離採取し、分離、精製を行うことにより本酵素を得ることができる。ろ過、遠心処理などによって予め培養液から菌体を回収した後、上記一連の工程(菌体の破砕、分離、精製)を行ってもよい。
 精製は、例えば、減圧濃縮、膜濃縮、さらに硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウムなどの塩析処理、あるいは親水性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、アセトンなどによる分別沈殿法により沈殿処理、加熱処理や等電点処理、吸着剤あるいはゲルろ過剤などによるゲルろ過、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等を適宜組み合わせて実施することができる。
 カラムクロマトグラフィーを用いる場合は、例えば、セファデックス(Sephadex)ゲル(GEヘルスケア バイオサイエンス社製)などによるゲルろ過、DEAEセファロースCL-6B(GEヘルスケア バイオサイエンス社製)、オクチルセファロースCL-6B(GEヘルスケア バイオサイエンス社製)等を用いることができる。該精製酵素標品は、電気泳動(SDS-PAGE)的に単一のバンドを示す程度に純化されていることが好ましい。
 なお、培養液からのグルコース脱水素酵素活性を有するタンパク質の採取(抽出、精製など)にあたっては、グルコース脱水素酵素活性、マルトース作用性、熱安定性などのうちいずれか1つ以上を指標に行ってもよい。
 各精製工程では原則としてFGDH活性を指標として分画を行い、次のステップへと進む。但し、予備試験などによって、適切な条件を予め設定可能な場合にはこの限りでない。
 本発明のFGDHを精製標品とする場合は、例えば比活性が110~210(U/mg)、好ましくは比活性が140~180(U/mg)の状態に精製することが好ましい。
また、最終的な形態は液体状であっても固体状(粉体状を含む)であってもよい。
 組換えタンパク質として本酵素を得ることにすれば種々の修飾が可能である。例えば、本酵素をコードするDNAと他の適当なDNAとを同じベクターに挿入し、当該ベクターを用いて組換えタンパク質の生産を行えば、任意のペプチドないしタンパク質が連結された組換えタンパク質からなる本酵素を得ることができる。また、糖鎖及び/又は脂質の付加や、あるいはN末端若しくはC末端のプロセッシングが生ずるような修飾を施してもよい。以上のような修飾により、組換えタンパク質の抽出、精製の簡便化、又は生物学的機能の付加等が可能である。
6.グルコースの測定方法
 グルコースデヒドロゲナーゼを用いたグルコースの測定方法は既に当該技術分野において確立されている。よって、公知の方法に従い、本発明のFGDHを用いて、各種試料中のグルコースの量又は濃度を測定することができる。本発明のFGDHを用いてグルコースの濃度又は量が測定可能である限り、その態様は特に制限されないが、例えば、本発明のFGDHを試料中のグルコースに作用させ、グルコースの脱水素反応に伴う電子受容体(例えば、DCPIP)の構造変化を吸光度で測定することにより実施することができる。より具体的には、上記1-1.に示す方法に従って、実施することができる。本発明に従った、グルコース濃度の測定は、試料に本発明のFGDHを添加すること、又は添加して混合することにより実施することができる。グルコースを含有する試料は、特に制限されないが、例えば、血液、飲料、食品等を挙げることができる。グルコース濃度又は量の測定が可能である限り、試料に添加する酵素の量はと特に制限されない。
 後述するセンサの形態でのグルコース濃度の測定は、例えば、以下のようにして実施することができる。恒温セルに緩衝液を入れ、一定温度に維持する。メディエーターとしては、フェリシアン化カリウム、フェナジンメトサルフェートなどを用いることができる。
作用電極として本発明のFGDHを固定化した電極を用い、対極(例えば白金電極)および参照電極(例えばAg/AgCl電極)を用いる。カーボン電極に一定の電圧を印加して、電流が定常になった後、グルコースを含む試料を加えて電流の増加を測定する。標準濃度のグルコース溶液により作製したキャリブレーションカーブに従い、試料中のグルコース濃度を計算することができる。
7.グルコースアッセイキット
 本発明のグルコースアッセイキットは、本発明のFGDHを少なくとも1回のアッセイに十分な量で含む。典型的には、キットは、本発明のFGDHに加えて、アッセイに必要な緩衝液、メディエーター、キャリブレーションカーブ作製のためのグルコース標準溶液、ならびに使用の指針を含む。本発明のFGDHは種々の形態で、例えば、凍結乾燥された試薬として、または適切な保存溶液中の溶液として提供することができる。
8.グルコースセンサ
 本発明はまた、本発明のFGDHを用いるグルコースセンサを提供する。本発明のグルコースセンサは、電極として、カーボン電極、金電極、白金電極などを用い、この電極上に本発明の酵素を固定化することで作製することができる。固定化方法としては、架橋試薬を用いる方法、高分子マトリックス中に封入する方法、透析膜で被覆する方法、光架橋性ポリマー、導電性ポリマー、酸化還元ポリマーなどがある。その他、フェロセン又はその誘導体に代表される電子メディエーターとともにポリマー中に固定あるいは電極上に吸着固定してもよく、またこれらを組み合わせて用いてもよい。本発明のFGDHは、熱安定性に優れるため、比較的高温度(例えば、50℃や55℃)の条件下で固定化を実施することができる。典型的には、グルタルアルデヒドを用いて本発明のFGDHをカーボン電極上に固定化した後、アミン基を有する試薬で処理してグルタルアルデヒドをブロッキングすることができる。
 センサーを用いたグルコース濃度の測定は、以下のようにして行うことができる。恒温セルに緩衝液を入れ、一定温度に維持する。メディエーターとしては、フェリシアン化カリウム、フェナジンメトサルフェートなどを用いることができる。作用電極として本発明のFGDHを固定化した電極を用い、対極(例えば白金電極)および参照電極(例えばAg/AgCl電極)を用いる。カーボン電極に一定の電圧を印加して、電流が定常になった後、グルコースを含む試料を加えて電流の増加を測定する。標準濃度のグルコース溶液により作製したキャリブレーションカーブに従い、試料中のグルコース濃度を計算することができる。
 以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。
 実施例1 菌株の復元
 独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンター国際連携課から、ムコール属に帰属する菌株を入手した。入手した菌株は、L-乾燥標品であったため、アンプルを開封し、復元水100μLを注入し、乾燥菌体を懸濁した後、懸濁液を復元培地に滴下し、25℃で3日間から7日間、静置培養することで菌株を復元させた。復元水としては、滅菌水(オートクレーブで120℃、20分間処理した蒸留水)を使用し、復元培地としては、DP培地(デキストリン2.0%、ポリペプトン1.0%、KHPO1.0%、アガロース1.5%)を使用した。
実施例2 培養上清の回収
 小麦胚芽2g、水2mLを含む培地をオートクレーブで120℃、20分間滅菌した固体培地に、実施例1で復元させたMucor属の各菌株を一白金耳植菌し、25℃で3日間から7日間静置培養した。培養後、2mMのEDTAを含む50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)を4mL添加し、ボルテックスで十分に懸濁した。懸濁液に少量のガラスビーズを加えた後、ビーズショッカー(安井器械(株)製)で3,000rpm、3分間×2回の条件で破砕し、4℃、2,000×g、5分間の条件で遠心分離して、回収した上清を粗酵素液とした。
実施例3 グルコース脱水素酵素活性の確認
 実施例2で得た粗酵素液中のグルコース脱水素酵素活性を、上記1-1.に示したグルコースデヒドロゲナーゼ活性測定方法を用いて測定した。その結果を表1に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 表1に示す通り、Mucor subtilissimus NBRC6338由来の粗酵素液にGDH活性が存在することが確認された。
実施例4 Mucor subtilissimus NBRC6338由来GDHの精製
 50mLのDP液体培地を500mL坂口フラスコに入れ、オートクレーブで滅菌し、前培養用の培地とした。予めDPプレート培地で復元したMucor subtilissimus NBRC6338を前培養培地に一白金耳植菌し、25℃、180rpmで3日間振とう培養し、種培養液とした。
 次に、6.0Lの生産培地(イーストイクストラクト2.0%、グルコース1%、pH6.0)を10L容ジャーファーメンターに入れ、オートクレーブで滅菌し、本培養培地とした。50mLの種培養液を本培養培地に植菌し、培養温度25℃、攪拌速度600rpm、通気量2.0L/分、管内圧0.2MPaの条件で3日間培養した。その後、培養液をろ布でろ過し、菌体を回収した。得られた菌体を50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)に懸濁した。
 懸濁液をフレンチプレス(Niro Soavi製)に流速160mL/分で送液し、1000~1300barで破砕した。続いて、破砕液に硫酸アンモニウム(住友化学(株)製)を0.2飽和になるように徐々に添加して、室温で30分間攪拌した後、ろ過助剤を用いて余分な沈殿を除去した。次に分画分子量10,000のUF膜(ミリポア(株)製)を用いて濃縮し、濃縮液をSephadex G-25のゲルを用いて脱塩した。
その後、脱塩液に0.5飽和になるように硫酸アンモニウムを徐々に添加し、予め0.5飽和の硫酸アンモニウムを含む50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)で平衡化した400mLのPSセファロースFastFlow(GEヘルスケア製)カラムにかけ、50mMリン酸緩衝液(pH6.0)のリニアグラジエントで溶出させた。そして、溶出されたGDH画分を分画分子量10,000の中空糸膜(スペクトラムラボラトリーズ製)で濃縮後、DEAEセファロースFast Flow(GEヘルスケア製)カラムにかけ、精製酵素を得た。得られた精製酵素をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(Phast Gel 10-15% Phastsystem GEヘルスケア製)に供した。この際、タンパク質分子量マーカーとしてフォスフォリラーゼb(97,400ダルトン)、ウシ血清アルブミン(66,267ダルトン)、アルドラーゼ(42,400ダルトン)、カルボニックアンヒドラーゼ(30,000ダルトン)、トリプシンインヒビター(20,100ダルトン)を用いた。
 その結果、単一のバンドが得られたことから、GDHが十分に精製されていることを確認した。分子量マーカーと比較した移動度から、FGDHの分子量は109,000~143,000ダルトンであることが判明した。
 実施例5 単離されたGDHのペプチド部分の分子量
 実施例4で精製したGDHを100℃、10分間、加熱処理して変性させた後、5UのN-グリコシダーゼF(ロシュ・ダイアグノスティクス製)で37℃、1時間処理し、タンパク質に付加している糖鎖を分解した。その後、実施例4と同様の方法でSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法で測定を行った。分子量マーカーは、実施例4と同じものを使用した。その結果、精製したFGDHのポリペプチド部分の分子量は約69,000ダルトンであることが判明した。
 実施例6 基質特異性
 上記1-1.に示したFGDHの活性測定法に従い、実施例4で精製したGDHについて、D-グルコース、マルトース、D-ガラクトース、D-キシロースを基質とした場合の活性を測定した。D-グルコースを基質とした場合の活性を100%とし、それと比較した他の糖に対する活性を求めた。各糖の濃度は50mMとした。結果を表2に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
 表2の結果から、本発明のFGDHの基質特異性は、D-グルコースに対する活性値を100%とした場合、マルトース、D-ガラクトース、D-キシロースに対する見かけの活性は、いずれも2.5%以下であり、本発明のFGDHは基質特異性に優れていることが示された。
 実施例7 至適活性pH
 実施例4で得られた精製FGDH酵素液(0.5U/mL)を用いて、至適pHを調べた。100mM 酢酸カリウム緩衝液(pH5.0-5.5、図中■印でプロット)、100mM MES-NaOH緩衝液(pH5.5-6.5、図中□印でプロット)、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0-8.0、図中▲でプロット)、100mM Tris-HCl緩衝液(pH7.5-9.0、図中△印でプロット)を用い、それぞれのpHにおいて、温度37℃にて酵素反応を行い、相対活性を比較した。結果を図1に示す。
 その結果、本発明のFGDHの至適活性pHは、Tris-HCl緩衝液を使用した場合、pH8.0において最も高い活性値を示した。また、リン酸カリウム緩衝液を使用した場合は、pH6.0~7.5の範囲で最も高い活性が示された。更に、MES-NaOH緩衝液を用いた場合は、pH6.5で最も高い活性が示された。
実施例8 至適活性温度
 実施例4で得られた精製FGDH酵素液(0.1U/mL)を用いて、至適活性温度を調べた。緩衝溶液には42mM PIPES-NaOH緩衝液(pH6.5)を用い、37℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃における活性を求めた。結果を図2に示す。
 その結果、本発明のFGDHは、45℃~50℃の範囲で最も高い活性値を示し、最大の活性値に対して80%以上の相対活性を示す温度範囲は40℃~50℃であった。以上のことから、フラビン結合型FGDHの至適活性温度は40℃~50℃付近であることが示された。
実施例9 pH安定性
 実施例4で得られた精製FGDH酵素液(2U/mL)を用いて、pH安定性を調べた。100mM グリシン-HCl緩衝液(pH2.5-pH3.5:図中■印でプロット)100mM 酢酸-カリウム緩衝液(pH3.0-pH5.5:図中□印でプロット)、100mM MES-NaOH緩衝液(pH5.5-pH6.5:図中▲印でプロット)、100mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.0-pH8.0:図中△印でプロット)、100mM Tris-HCl緩衝液(pH7.5-pH9.0:図中●印でプロット)、100mM グリシン-NaOH緩衝液(pH9.0-pH10.5:図中○印でプロット)を用い、25℃、16時間、各緩衝液中で酵素を維持し、その後のグルコースを基質とした場合の活性を測定した。処理後の活性値と処理前の活性値を比較し、残存活性率を求めた。結果を図3に示す。
 その結果、活性の残存率はpH3.0~pH8.0の範囲で95%以上であった。このことから、安定pH域はpH3.0~pH8.0であることが示された。
実施例10 温度安定性
 実施例4で得られた精製FGDH酵素液(2U/mL)を用いて、温度安定性を調べた。100mM酢酸カリウム緩衝液(pH5.0)を用いて、FGDH酵素液を各温度(4℃、30℃、40℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃)で15分間処理した後、GDH活性を測定し、処理前のGDH活性と比較して残存率を測定した。結果を図4に示す。
 その結果、本発明のFGDHは4℃~50℃の温度範囲での処理後96%の残存率を有していた。このことから、FGDHは、50℃以下で安定であることが示された。
実施例11 Km値の測定
 基質であるD-グルコースの濃度を変化させて実施例4で精製したFGDH酵素の活性測定を行い、基質濃度と反応速度のグラフを作成した(図5)。これに基づいてLineweaver-burk plotを作成し、Km値を算出した。その結果、本発明のFGDHのD-グルコースに対するKm値は、6.7mMであり、D-グルコースに対する親和性が高いことが判明した。
実施例12 FGDHをコードするDNAの単離
 (1)染色体DNAの抽出
 Mucor subtilissimus NBRC6338をYG培地(Yeast Extract 1%、Glucose 2%)50mlを入れた坂口フラスコを用いて25℃一晩培養した後、ブフナー漏斗及びヌッチェ吸引瓶を用いて培養液をろ過し、菌体を得た。そのうち、約0.3gの菌体を液体窒素中で凍結させ、乳鉢を用いて菌糸を粉砕し、Extraction buffer(1% hexadecyltrimethylammonium bromide、0.7M NaCl、50mM Tris-HCl(pH8.0)、10mM EDTA、1% メルカプトエタノール)12mlに懸濁した。室温で30分回転撹拌を続けた後、等量のフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)溶液を加えて攪拌、遠心分離(1,500g、5分、室温)して上清を得た。得られた上清に等量のクロロホルム:イソアミルアルコール(24:1)溶液を加えて攪拌し、その後遠心分離(1,500g、5分、室温)を行った。その結果得られた上清に等量のイソプロパノールを穏やかに加えた。この処理によって析出した染色体DNAを遠心分離(20,000g、10分、4℃)して得られた沈殿を70%エタノールで洗浄し、真空乾燥した。このようにして得られた染色体DNAを再び4mlのTEに溶解し、10mg/mlのRNase A(シグマアルドリッチジャパン株式会社)を200μl加えた後、37℃で、30分間インキュベートした。次いで、20mg/mlのProteinase K,recombinant,PCR Grade(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)溶液40μlを加えて37℃で、30分間インキュベートした後、等量のフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)溶液を加えた。攪拌後、遠心分離(1,500g、5分、室温)し、上清を得た。この洗浄操作を2回繰り返した後、得られた上清に等量のクロロホルム:イソアミルアルコール(24:1)溶液を加えて攪拌し、その後遠心分離(1,500g、5分、室温)を行った。その結果得られた上清に対して、その1/10容量の3M NaOAc(pH4.8)と2.5倍容量のエタノールを加えて遠心処理(20,000g、20分、4℃)を行うことにより回収した。回収された染色体DNAを70%エタノールで洗浄した後、真空乾燥させ、最後に400μlのTE溶液に溶解して濃度約1mg/mlの染色体DNA溶液を得た。
(2)合成プライマーの設計
  配列番号3に示すAspergillus oryzae由来GDHのアミノ酸配列(特許4292486の配列表において配列番号4で示されるアミノ酸配列)やその他公知のアミノ配列を参考にして、比較的アミノ酸配列が保存されていると判断できる領域に基づいて、ミックス塩基を含有する縮重プライマー、degeF30、degeR13(配列番号4、5)を合成した。
(3)PCR法によるFGDH遺伝子部分配列の取得
 上記(1)で調製した染色体DNAを鋳型として、DNAポリメラーゼKOD-Plus(東洋紡製)を用いて推奨する条件のもとでPCRを行った。プライマーには、上記(2)で作製したプライマー(配列番号4、5)を使用した。そのPCR反応液をアガロースゲル電気泳動に供したところ、約1300bp程度の長さに相当するバンドが確認されたので、この増幅されたDNA断片を精製し、クローニングキットTarget Clone-Plus(東洋紡製)を用いて、そのプロトコールに従って操作を行い、ベクターpTA2にクローニングし、エシェリヒア・コリー(Escherichia coli)DH5α株コンピテントセル(東洋紡製)に形質転換し、形質転換体を取得した。該形質転換体をLB培地で培養し、プラスミドを抽出し、当該酵素遺伝子に相当する領域の塩基配列解析を実施した。シークエンス反応はBigDyeTM Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(アプライドバイオシステムズジャパン株式会社)を用い、製品の使用説明書に従ってシークエンス反応を行った。解析にはABI PRISM 310シークエンサー(アプライドバイオシステムズジャパン株式会社)を使用した。当該酵素遺伝子の塩基配列解析を実施するためには、上記で使用したプライマー(配列番号4、5)を使用した。その塩基配列解析の結果、約1300bpのFGDHの部分配列を取得した。
(4)FGDH遺伝子全長配列の取得
 上記のようにして得られた、塩基配列に基づき、開始コドンを含むN末端方向の遺伝子配列取得のために、遺伝子の外側方向に向けた2種類のインバースPCR用プライマー、InvF1及びInvR1(配列番号6、7)を新たに設計した。このインバースPCR用プライマーを用い、上記(1)で得た染色体DNAを制限酵素HincIIで処理し、ライゲーションを行ったものを鋳型としてDNAポリメラーゼKOD-Plus(東洋紡製)を用いて推奨する条件のもとで、Inverse PCRを行った。これにより、増幅される断片の配列解析を、上記記載と同様にして行い、開始コドンと推測される配列を含む上流の塩基配列を明らかにした。また、終止コドンを含むC末端方向の遺伝子配列取得のためにも、上記記載のインバースPCR用プライマー、InvF2及びInvR2(配列番号8、9)を用い、上記(1)で得たゲノムDNAを制限酵素XbaIで処理し、ライゲーションを行ったものを鋳型として、上記記載、同様の方法でInverse PCRを行った。これにより、増幅される断片の配列解析を、上記記載と同様にして行い、終止コドンと推測される配列を含む上流の塩基配列を明らかにした。
(5)N末端及びC末端の決定
 N末端の決定は、公知の情報を最大限に活用し、アミノ酸配列の相同性、塩基配列の長さなどの観点から(4)で得られた配列と多角的な比較を行い、開始コドンを判断した。
また、C末端の決定も同様の方法にて判断した。
(6)Mucor subtilissimus NBRC6338由来のGDH遺伝子全長を増幅させるためのプライマー設計
 (5)での判断結果に基づき、開始コドンの上流にアニーリングするプライマー、5UTR F1(配列番号10)及び終止コドンの下流にアニーリングするプライマー、3UTR R1(配列番号11)を設計した。
(7)cDNA配列の決定
 Mucor subtilissimus NBRC6338をYG培地(Yeast Extract 1%、Glucose 2%)50mlを入れた坂口フラスコを用いて25℃で一晩培養した後、ブフナー漏斗及びヌッチェ吸引瓶を用いて培養液をろ過し、菌体を得た。そのうち、約0.3gの菌体を液体窒素中で凍結させ、乳鉢を用いて菌糸を粉砕した。続いて、ISOGEN(ニッポンジーン社製)を用いて、本キットのプロトコールに従って、粉砕した菌体からmRNAを得た。これをテンプレートにReverTra-Ace(東洋紡社製)を用いて、そのプロトコールに従って操作を行い、逆転写を行い、cDNAを合成した。逆転写のプライマーには、(6)で作製した3UTR R1(配列番号11)を用いた。続いて、上記で合成したcDNAを鋳型として、DNAポリメラーゼKOD-Plus(東洋紡製)を用いて推奨する条件のもとでPCRを行った。プライマーには、上記(6)で作製したプライマー(配列番号10、11)を使用した。そのPCR反応液をアガロースゲル電気泳動に供したところ、約2000bp程度の長さに相当するバンドが確認されたので、この増幅されたDNA断片の配列解析を、上記記載と同様にして行った。なお、ここでのcDNA配列解析には、3クローンの異なるプラスミド由来の塩基配列を解析した。なお、塩基配列の解析には、上記記載のプライマーを使用した。このようにして、配列番号2に示すMucor subtilissimus NBRC6338由来のFGDHのcDNA配列を決定した。また、当該cDNA配列がコードする当該酵素遺伝子のアミノ酸配列を配列番号1に示した。
(8)公知のGDHとのアミノ酸配列比較
 上記(7)で明らかにしたアミノ酸配列と公知のアスペルギルスオリゼ由来のFADGDH、アスペルギルス・テレウス由来のFADGDHとの同一性は各々34%及び33%であった。アミノ酸配列解析は、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の相同性アルゴリズムBLAST(Basic local alignment search tool)http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/ においてデフォルト(初期設定)のパラメーターを用いることにより、算出した。
実施例13 Mucor subtilissimus NBRC6338由来のFGDHのアスペルギルス・オリゼでの発現及び酵素活性の確認
(1)発現ベクターの構築
 実施例12で明らかにしたMucor subtilissimus NBRC6338由来FGDH遺伝子(配列番号2)を含む組み換えプラスミドpMsGDHで市販の大腸菌コンピテントセル(E.coli DH5α;東洋紡社製)を形質転換した後、形質転換体をアンピシリン(50mg/ml;ナカライテスク社製)を含んだ液体培地(1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、0.5%NaCl;pH7.3)を摂取し、30℃で一晩振とう培養して得られた菌体から、常法によりプラスミドを調整した。該プラスミドから遺伝子領域を制限酵素で切り出し、同じく制限酵素処理を行ったベクターpUSAと混合し、混合液と等量のライゲーション試薬(東洋紡製ラーゲーションハイ)を加えてインキュベーションすることにより、ライゲーションを実施した。このように、ライゲーションしたDNAをエシェリヒア・コリーDH5α株コンピテントセル(東洋紡製コンピテントハイDH5α)に当製品に添付のプロトコールに従ってそれぞれ形質転換し、該形質転換体を取得した。該形質転換体をLB培地で培養し、プラスミドを抽出した。このようにして、アスペルギルス・オリゼでの大量発現を可能とするように設計されたpUSAMsGDHを取得した。
(2)形質転換
 続いて、アスペルギルス・オリゼへの形質転換を行った。方法は、Biosci. Biotech.Biochem.,61(8)1367-1369.1997に記載の方法に準じて実施した。なお、本菌株は、Biosci.Biotech.Biochem.,61(8)1367-1369.1997に記載されているもので、pUSARプラスミドとともに(独)酒類総合研究所より得たものである。
(3)培養
 形質転換体は10L容ジャーファーメンター(BMS10-PI/バイオット)を使用して培養した。(5%酵母エキス、2% ハイニュートAM、5% サンマルト)培地にて、培地液量7.0L、攪拌数600rpm、温度30℃、通気量1.0vvmの条件で培養した。この培養液を粗酵素液として、GDH活性を確認したところ、本発明のGDHが発現されていることが確認された。尚、形質転換前の宿主にGDH活性は認められなかった。
 この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。
特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
 本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
 本発明のFGDHは基質特異性に優れ、グルコース量をより正確に測定することを可能にする。従って本発明のFGDHは血糖値の測定などに好適といえる。

Claims (8)

  1. 下記の特性(1)~(4)を備えるフラビン結合型グルコース脱水素酵素。
    (1)分子量: SDS-ポリアクリルアミド電気泳動で測定した酵素のポリペプチド部分の分子量が約69kDa
    (2)Km値: D-グルコースに対するKm値が約10mM以下
    (3)温度安定性:50℃以下で安定
    (4)pH安定性: pH3.0~8.0の範囲で安定
     
  2. 更に下記の特性(5)を備える、請求項1に記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素。
    (5)基質特異性: D-グルコースに対する反応性を100%としたときのD-キシロースに対する反応性が1.8%以下である
  3. 更に下記の特性(6)を備える、請求項1又は2に記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素。
    (6)至適活性温度: 45℃~50℃
  4. 更に下記の特性(8)を備える、請求項1~3のいずれかに記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素。
    (8)由来: ムコール(Mucor)属に分類される微生物に由来する
  5. ムコール属に分類される微生物を培養すること、及び
    グルコース脱水素酵素を回収すること
    を含む、請求項1~4のいずれかに記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素の製造方法。
  6. 請求項1~4のいずれかに記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素をグルコースに作用させることを含む、グルコース濃度の測定方法。
  7. 請求項1~4のいずれかに記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素を含むグルコースアッセイキット。
  8. 請求項1~4のいずれかに記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素を含むグルコースセンサ。
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