WO2013039174A1

WO2013039174A1 - ディスクブレーキ用パッド組立体

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Publication number: WO2013039174A1
Application number: PCT/JP2012/073521
Authority: WO
Inventors: 小林　大介; 泰大平田
Original assignee: 曙ブレーキ工業株式会社
Priority date: 2011-09-13
Filing date: 2012-09-13
Publication date: 2013-03-21
Also published as: EP2757281B1; US9140322B2; JP2013061012A; EP2757281A4; EP2757281A1; CN103797266B; US20140360822A1; CN103797266A; JP5855398B2

Abstract

　内側シム板３ａの周方向両端部に設けられた一対の係止折り曲げ部１５、１５の基端部に形成した係止透孔１６、１６に、外側シム板４ａの周方向両端縁に設けた一対の係止突片１９、１９が係合させられ、前記両シム板３ａ、４ａの分離が防止される。これら両シム板３ａ、４ａに形成され、プレッシャプレート２ａの周縁部に係合させられた内係止片８ｄ、８ｅ、８ｆと外側係止片１３ｄ、１３ｅ、１３ｆとは互いに重ね合わせられる事がない為、前記プレッシャプレート２ａの内外両縁からの突出量が抑えられる。

Description

ディスクブレーキ用パッド組立体

　この発明は、ディスクブレーキ用パッド組立体の改良に関する。

　自動車の制動に使用するディスクブレーキは、車輪と共に回転するロータを挟んで一対のパッドが配置され、制動時にはこれら両パッドがこのロータの軸方向両側面に押し付けられる様に構成されている。この様なディスクブレーキの基本的構造としては、フローティング型と対向ピストン型との２種類がある。何れの構造の場合でも、制動時には一対のパッドにより車輪と共に回転するロータが軸方向両側から強く挟持される。これら両パッドは、十分な剛性を有するプレッシャプレートの前面にライニングが添着されて構成されている。そして、制動時に前記プレッシャプレートの背面が押圧され、前記ライニングの前面と前記ロータの軸方向両側面とが摩擦させられる。尚、本明細書及び請求の範囲で、軸方向、周方向、径方向とは、特に断らない限り、ディスクブレーキ用パッド組立体がディスクブレーキに組み付けられた状態におけるロータの軸方向、周方向、径方向を言う。又、周縁部とは、前記ロータの径方向に対応する内周縁部又は外周縁部を言う。

　制動時には、摩擦力が作用する部分である、前記ロータの軸方向両側面と前記両パッドのライニングの前面との当接部と、これら両パッドに加わるブレーキトルクを支承するアンカ部分である、前記プレッシャプレートとサポート又はキャリパとの当接部とは、少なくとも前記両パッドのライニングの厚さ分だけ軸方向にずれる（ブレーキトルク支承部に対し、摩擦部分がオフセットする）。そして、この厚さ分のずれに基づいてこれら両パッドに、前記ロータの回入側が互いに近づく（倒れ込む）方向のモーメントが加わり、これら両パッドの姿勢が不安定になり易い。制動時にこれら両パッドの姿勢が不安定になると、これら両パッドの挙動がスムーズになりづらく、これら両パッドが振動して、「鳴き」と呼ばれる騒音を発生したり、前記ライニングの偏摩耗の程度が著しくなり易い。

　この様な鳴きや偏摩耗を緩和する為に、従来から、パッドを構成するプレッシャプレートの背面と、この背面を押圧する為の押圧面であるピストンの先端面或いはキャリパ爪部の内側面との間にシム板を挟持する事が、広く行われている。この様なシム板は、１枚のみの単板構成の場合もあるが、前記鳴きや偏摩耗の抑制効果を向上させる為、内側シム板と外側シム板とを重ね合わせた２枚構造とする事も、広く行われている。又、これら内側及び外側両シム板同士が、厚さ方向の分離が防止されつつ、周方向の変位が可能に組み合わされる構造も、従来から知られている。

　特許文献１には、この様な機能を備えたディスクブレーキ用パッド組立体として、図１３～１５に示す様な構造が記載されている。この従来構造のディスクブレーキ用パッド組立体では、パッド１を構成するプレッシャプレート２の背面に、内側シム板３と外側シム板４とから成る組み合わせシム板５が装着されている。前記パッド１は、前記プレッシャプレート２の前面（ディスクブレーキへの組み付け時にロータ（図示せず）の側面と対向する面）にライニング６が、制動時に加わるブレーキトルクによりずれ動かない様に、大きな結合力により添着固定されている。前記内側シム板３は、ステンレス鋼板や、ゴムをコーティングしたステンレス鋼板等の金属板製であり、平板状の内側本体部分７と、複数の内側係止片８ａ、８ｂ、８ｃとを備えている。これら各内側係止片８ａ、８ｂ、８ｃの先半部の形状は、軸方向中間部が前記プレッシャプレート２ａの周縁部に向け屈曲した、略「L」字形である。

　又、前記内側本体部分７には、それぞれの内側にグリースを保持する為の複数の透孔９、９が形成されている。又、前記プレッシャプレート２の径方向に対応する内外両周縁部のうち、外径側周縁部の周方向中央部に係止凹部１０が形成され、内径側周縁部の周方向両端寄り部分に一対の段差部１１、１１が形成されている。前記内側シム板３は、前記各内側係止片８ａ、８ｂ、８ｃのうちの外径側の内側係止片８ａが前記係止凹部１０に係合され、内径側の内側係止片８ｂ、８ｃが前記両段差部１１、１１に係合されつつ、これら各内側係止片８ａ、８ｂ、８ｃにより前記プレッシャプレート２が、径方向両側から挟持されている。この状態で前記内側シム板３が前記プレッシャプレート２の背面側に、周方向及び径方向の変位を制限（実質的に阻止）された状態で装着される。

　又、前記外側シム板４は、ステンレス鋼板等の金属板製で、平板状の外側本体部分１２と、複数の外側係止片１３ａ、１３ｂ、１３ｃとを備える。これら各外側係止片１３ａ、１３ｂ、１３ｃの先半部の形状に関しても、軸方向中間部が前記プレッシャプレート２の周縁部に向け屈曲した、略「L」字形である。この様な外側シム板４は、これら各外側係止片１３ａ、１３ｂ、１３ｃが前記各内側係止片８ａ、８ｂ、８ｃに重ね合わせられつつ、前記外側本体部分１２が前記内側本体部分７に重ね合わせられる。この際、前記各外側係止片１３ａ、１３ｂ、１３ｃの先半部内面（前記プレッシャプレート２の周縁部に対向する面）のうちの突出部分が、前記各内側係止片８ａ、８ｂ、８ｃの先半部外面（前記プレッシャプレート２の周縁部と反対側の面）の凹部に、弾性的に係合させられる。この状態で前記外側シム板４が前記内側シム板３に、厚さ方向の分離を抑えられた状態で、且つ、周方向の変位を可能に組み付けられる。この為に、前記外側係止片１３ａの周方向に対応する幅寸法が、前記係止凹部１０及び前記内側係止片８ａの周方向の幅寸法よりも小さくされ、前記両外側係止片１３ｂ、１３ｃの互いに反対側側縁である周方向外側縁同士の間隔が、前記両段差部１１、１１同士の間隔よりも小さくされている。

　上述の様な構成を有する従来構造の場合、前記各内側係止片８ａ、８ｂ、８ｃと前記各外側係止片１３ａ、１３ｂ、１３ｃとが重ね合わせられている為、これら各外側係止片１３ａ、１３ｂ、１３ｃにおける前記プレッシャプレート２の周縁からの突出量が多くなる。この結果、これら各外側係止片１３ａ、１３ｂ、１３ｃと、ディスクブレーキの他の構成部材、例えばキャリパとの干渉防止の為の配慮が必要になる。ディスクブレーキの設置スペースは限られている反面、キャリパ等の構成部材には大きな剛性が要求される。この為、前記干渉防止の為の配慮が必要になる事は、ディスクブレーキの設計の自由度を確保する面から不利になる。

日本国特開２００６－２００５６０号公報

　本発明は、上述の様な事情に鑑みて、内側及び外側両シム板を周方向に対して相対変位可能に、且つ、不用意に分離しない状態に組み合わせ、しかも、パッドのプレッシャプレートの内外両周縁からの突出量を少なく抑えられるディスクブレーキ用パッド組立体を提供することを目的とする。

　本発明の上記目的は、下記構成のディスクブレーキ用パッド組立体により達成される。
　（１）　ディスクブレーキ用パッド組立体は、パッドと、内側シム板と、外側シム板とを備える。
　前記パッドは、プレッシャプレートの前面にライニングが添着固定されて、ロータの軸方向側面に対向する部分に配置される。
　又、前記内側シム板は、前記パッドを構成するプレッシャプレートの背面に添設された平板状の内側本体部分を有する。
　又、前記外側シム板は、前記内側シム板の内側本体部分に重ね合わされた平板状の外側本体部分を有する。

　更に、上記ディスクブレーキ用パッド組立体は、それぞれ一対ずつの係止折り曲げ部と、係止透孔と、係止突片とを備える。
　前記両係止折り曲げ部は、前記内側シム板の周方向両端部に、前記内側本体部分から前記プレッシャプレートと反対側に折り曲げられた状態で形成されている。
　又、前記両係止透孔は、前記両係止折り曲げ部の基端部の幅方向中央部に形成されている。
　又、前記両係止突片は、前記外側シム板を構成する前記外側本体部分の周方向両端縁の径方向中間部から、それぞれ周方向に突出する状態で形成されている。
　又、前記両係止突片の先端縁同士の距離は、前記両係止折り曲げ部同士の間隔よりも大きい。
　又、前記外側本体部分の周方向両端縁における前記両係止突片の径方向両側部分の周方向長さは、前記両係止折り曲げ部同士の間隔よりも短い。
　そして、前記両係止突片を前記両係止透孔に係合させた状態で、前記内側本体部分と前記外側本体部分とが重ね合わせられている。

　（２）　上記（１）の構成のディスクブレーキ用パッド組立体であって、前記両係止折り曲げ部のうちの少なくとも一方の係止折り曲げ部の先端寄り部分に、先端縁に向かうに従って他方の係止折り曲げ部から離れる方向に傾斜したガイド傾斜部が設けられる。
　そして、前記外側シム板の外側本体部分のうちの何れかの周方向端縁で何れかの係止突片を他方の係止透孔に係合（前記他方の係止透孔に前記何れかの係止突片を挿入）させつつ、前記外側本体部分が前記内側本体部分に近付けられた状態で、別の係止突片の先端縁が前記ガイド傾斜部に当接する様に、各部の寸法が規制される。

　（３）　上記（１）又は（２）の構成のディスクブレーキ用パッド組立体であって、前記内側シム板の内側本体部分の内周縁及び外周縁のうちでこれら両周縁に振り分けられた（何れか一方の周縁のみではない）３箇所以上部分に、内側係止片が、前記プレッシャプレートの側に折れ曲がった状態で形成される。そして、これら各内側係止片が、前記プレッシャプレートの内外両周縁に弾性的に当接させられる事により、前記内側シム板が前記プレッシャプレートの背面に、径方向及び周方向の変位が制限された状態で添設される。
　又、前記外側シム板の外側本体部分の内周縁及び外周縁のうちでこれら両周縁に振り分けられた３箇所以上部分に、外側係止片が、前記プレッシャプレートの側に折れ曲がった状態で形成される。そして、これら各外側係止片が、前記プレッシャプレートの内外両周縁のうちで前記各内側係止片が設けられた部分から周方向に外れた部分に当接させられる事により、前記外側シム板が前記内側シム板の背面に、径方向の変位が制限されると共に周方向の変位が許容される状態で重ね合わせられる。

　（４）　上記（３）の構成のディスクブレーキ用パッド組立体であって、前記プレッシャプレートの周縁部で前記各外側係止片の片面と当接する部分に、前記片面と対向する部分の周方向中央部が周方向両端部よりも径方向に突出した凸部が形成される。そして、前記プレッシャプレートの周縁部と前記各外側係止片の片面とが、前記片面の周方向両端寄り部分で互いに離隔させられる。
　（５）　上記（４）の構成のディスクブレーキ用パッド組立体であって、前記プレッシャプレートの周縁部に、周方向に隣接する両側部分よりも径方向に凹入し、周方向に対応する幅寸法が前記外側係止片の同方向の幅寸法よりも大きな係止凹部が形成される。そして、前記プレッシャプレートの周縁部のうちでこの係止凹部の底部に対応する部分に、前記凸部が形成される。

　上記（１）の様に構成したディスクブレーキ用パッド組立体によれば、内側及び外側両シム板が周方向に対して相対変位可能に、且つ、不用意に分離しない状態に組み合わせられ、しかも、パッドのプレッシャプレートの内外両周縁からの突出量が少なく抑えられる構造を実現できる。即ち、上記（１）の構成のディスクブレーキ用パッド組立体の場合には、前記内側及び外側両シム板同士の分離防止が、これら両シム板の周方向両端部に設けた係止透孔と係止突片との係合により図られている。従って、前述の図１３～１５に示した従来構造の様に、内側シム板に設けた各内側係止片と、外側シム板に設けた各外側係止片とを重ね合わせる必要がない。これら両シム板をプレッシャプレートに対し保持すべく、上記（３）の構成のディスクブレーキ用パッド組立体の如く、前記内側及び外側両シム板に形成した、内側及び外側各係止片がプレッシャプレートの内外両周縁に係止される場合でも、これら両周縁の各部に係合している係止片は１枚のみとなり、前記突出量が小さく抑えられる。又、前記両シム板が組み合わせられる作業は、上記（２）の構成を採用する事により、容易に行える。

　又、上記（４）の構成を採用する事により、上記（３）の様な構成のディスクブレーキ用パッド組立体により得られる作用・効果に加えて、前記各外側係止片と前記プレッシャプレートの周縁部との周方向変位を円滑に行わせる事ができる構造が、低コストで実現される。
　即ち、前記プレッシャプレートの周縁部に形成した凸部の存在に基づき、前記周縁部と前記各外側係止片の片面とが、前記片面の周方向両端寄り部分で互いに離隔するので、尖った形状を有する（断面形状の曲率半径ほぼ０である）前記片面の端縁と前記プレッシャプレートの周縁部とが、擦れ合う事がない。この為、前記各外側係止片の周方向端縁が前記周縁部に食い込む事が防止されて、前記プレッシャプレートに対する前記外側シム板における周方向に対応する変位が円滑に行われる。
　この様な上記（４）の構成のディスクブレーキ用パッド組立体を実施する場合に、上記（５）の構成を採用すれば、係止凹部が形成された部分で、前記プレッシャプレートの周縁からの前記外側係止片の突出量が、より小さく抑えられる。

図１は、本発明の実施の形態に係るディスクブレーキ用パッド組立体の１例を示す斜視図であり、パッドの背面側で径方向外側から見た図である。図２は、図１に示したディスクブレーキ用パッド組立体を径方向内方から見た斜視図である。図３は、図１に示したディスクブレーキ用パッド組立体を背面側から見た正投影図である。図４は、図１に示したディスクブレーキ用パッド組立体を径方向外方から見た正投影図である。図５は、図１に示したディスクブレーキ用パッド組立体を図３の左方から見た正投影図である。図６は、図１に示したディスクブレーキ用パッド組立体に係る内側及び外側両シム板を組み合わせる以前の状態でパッドの背面側且つ径方向外側から見た斜視図である。図７は、図１に示したディスクブレーキ用パッド組立体に係る内側及び外側両シム板を組み合わせる途中の状態を、背面側且つ径方向内側で周方向に異なる２方向から見た斜視図である。図８は、図１に示したディスクブレーキ用パッド組立体に係るパッドの背面側に内側シム板のみを添設した状態を、背面側で径方向外側から見た斜視図である。図９は、図８と同様の状態を背面側で径方向内側から見た斜視図である。図１０は、図８と同様の状態を背面側から見た正投影図である。図１１は、図８と同様の状態を径方向外側から見た正投影図である。図１２は、図８と同様の状態を図１０の左方から見た正投影図である。図１３は、従来構造に係るディスクブレーキ用パッド組立体の１例を示す斜視図であり、パッドの背面側で径方向外側から見た図である。図１４は、図１３に示したディスクブレーキ用パッド組立体を組み合わせる以前の状態で示す斜視図である。図１５は、図１３に示したディスクブレーキ用パッド組立体を組み合わせた状態でパッドの背面側から見た正投影図である。

　図１～１２は、上記（１）～（５）の構成に対応する本発明の実施の形態に係るディスクブレーキ用パッド組立体の１例を示している。本実施形態に係るディスクブレーキ用パッド組立体１４は、パッド１と、内側シム板３ａと、外側シム板４ａとを備える。
　前記パッド１は、プレッシャプレート２ａの前面にライニング６が添着固定されており、図示しないロータの軸方向側面に対向する部分に配置される。前記プレッシャプレート２ａの外径側周縁部の周方向中央部に係止凹部１０ａが形成され、内径側周縁部の周方向両端寄り部分に一対の段差部１１、１１が形成されている。

　又、前記内側シム板３ａは、ステンレスのばね鋼板や、前記プレッシャプレート２ａの背面と対向する側の面にゴムがコーティングされたステンレスのばね鋼板等の耐食性及び弾性を有する金属板に、プレス加工による打ち抜き加工及び曲げ加工を施す事により造られている。そして、平板状の内側本体部分７ａと、この内側本体部分７ａの周方向両端部から前記プレッシャプレート２ａと反対側にほぼ直角に曲げ起こされた一対の係止折り曲げ部１５、１５と、を備える。これら両係止折り曲げ部１５、１５の基端部（前記内側本体部分７ａと同一平面上に存在する部分）から中間部分（この内側本体部分７ａに対し直角に折れ曲がった部分）に掛けての幅方向（径方向）中央部分には、それぞれ係止透孔１６、１６が形成されている。又、前記両係止折り曲げ部１５、１５の先端寄り部分には、それぞれガイド傾斜部１７、１７が形成されている。これら両ガイド傾斜部１７、１７の傾斜方向は、それぞれの先端縁に向かうに従って互いの間隔が拡がる方向とされている。又、前記内側本体部分７ａの複数箇所には、それぞれの内部に潤滑用のグリースを保持する為の透孔９、９が形成されている。

　更に、前記内側本体部分７ａの内外両周縁のうち、内周縁の周方向中央部分と、外周縁の周方向両端寄り２箇所部分との合計３箇所部分には、それぞれ前記プレッシャプレート２ａ側に折れ曲がった内側係止片８ｄ、８ｅ、８ｆが形成されている。これら各内側係止片８ｄ、８ｅ、８ｆは、それぞれの先半部が、前記内側本体部分７ａに対する角度が鋭角となる状態まで折り曲げられており、それぞれの先半部が、径方向に対応する互いの間隔を拡げる方向に弾性変形されつつ、前記プレッシャプレート２ａの背面側に添着可能とされている。本例の場合、このプレッシャプレート２ａの内周縁部の周方向中央部には、前記内側本体部分７ａの内周縁の周方向中央部分に形成した内側係止片８ｄを係合可能な内径側係止凹部１８が形成されている。前記内側シム板３ａは前記プレッシャプレート２ａに対し、内側係止片８ｄの先半部内面が前記内径側係止凹部１８部分で前記プレッシャプレート２ａの内周縁部に弾性的に当接し、前記両内側係止片８ｅ、８ｆの先半部内面が前記プレッシャプレート２ａの外周縁部の周方向両端寄り部分２箇所位置に弾性的に当接した状態で、前記内側本体部分７ａが前記プレッシャプレート２ａの背面に当接させられる。この状態で前記内側シム板３ａは、前記プレッシャプレート２ａの背面に、前記背面との間に作用する摩擦力、前記両内側係止片８ｅ、８ｆと前記プレッシャプレート２ａの外周縁部との（非直線上の）係合等に基づき、径方向及び周方向に対応する変位が制限された状態で添着される。

　又、前記外側シム板４ａは、ステンレスのばね鋼板等の耐食性及び弾性を有する金属板に、プレス加工による打ち抜き加工及び曲げ加工を施す事により造られたものであり、平板状の外側本体部分１２ａと、３個の外側係止片１３ｄ、１３ｅ、１３ｆとを備える。これら各外側係止片１３ｄ、１３ｅ、１３ｆのうち、前記外側本体部分１２ａの外周縁側に設けた１個の外側係止片１３ｄは周方向中央部に設けられ、同じく内周縁側に設けた２個の外側係止片１３ｅ、１３ｆは周方向両端寄り部分に設けられている。この様な各外側係止片１３ｄ、１３ｅ、１３ｆに関しても、上述した各内側係止片８ｄ、８ｅ、８ｆと同様に、それぞれの先半部が、前記外側本体部分１２ａに対する角度が鋭角となる状態まで折り曲げられており、前記プレッシャプレート２ａの背面側に、前記内側シム板３ａを介して添着可能とされている。尚、前記各外側係止片１３ｄ、１３ｅ、１３ｆに関しては、前記プレッシャプレート２ａに対する前記外側シム板４ａの径方向に対する位置決めを図りつつ、周方向の変位を可能にできれば良く、必ずしも前記プレッシャプレート２ａの周縁に対し弾性的に当接させる必要はない。

　本例の場合、前記プレッシャプレート２ａの外周縁部の周方向中央部には、前記外側本体部分１２ａの外周縁の周方向中央部分に形成した外側係止片１３ｄを周方向に対応する若干の変位を許容する状態で係合可能な前記係止凹部１０ａが、形成されている。この為に、前記係止凹部１０ａの周方向に対応する幅Ｗ_１０が、前記外側係止片１３ｄの周方向に対応する幅ｗ_１３よりも少し大きく（Ｗ_１０＞ｗ_１３）されている。又、前記両段差部１１、１１同士の間隔Ｄ_１１が、前記内周縁側の一対の外側係止片１３ｅ、１３ｆの反対側端縁同士の距離Ｌ_１３よりも少し大きく（Ｄ_１１＞Ｌ_１３）されている。

　更に、前記外側本体部分１２ａの周方向両端縁の径方向中央部には、それぞれ係止突片１９、１９が、これら両端縁のうちで径方向に隣接する部分よりも周方向に突出する状態で形成されている。前記両係止突片１９、１９の先端縁同士の距離Ｌ_１９は、前記内側シム板３ａの周方向両端部に形成した前記両係止折り曲げ部１５、１５同士の間隔Ｄ_１５よりも大きい（Ｌ_１９＞Ｄ_１５）。但し、これら各寸法Ｌ_１９、Ｄ_１５は、前記各ガイド傾斜部１７、１７との関係で、次の様に規制されている。即ち、図７に示す様に、前記外側本体部分１２ａのうちの何れか（図７の右側）の周方向端縁で何れか（図７の右側）の係止突片１９が、何れか（図７の右側）の係止透孔１６と係合させられつつ、前記外側本体部分１２ａが前記内側シム板３ａの内側本体部分７ａに近付けられた状態で、別（図７の左側）の係止突片１９の先端縁が、図７に示す様に別（図７の左側の）の係止折り曲げ部１５の先端部に形成したガイド傾斜部１７に当接する様に、各部の寸法が規制されている。又、前記外側本体部分１２ａのうち、前記両係止突片１９、１９を除いた前記両係止折り曲げ部１５、１５同士の間に存在する部分の周方向長さＬ_１２は、前記間隔Ｄ_１５よりも少し小さく（Ｌ_１２＜Ｄ_１５）されている。

　上述の様な外側シム板４ａは、その外側本体部分１２ａが前記プレッシャプレート２ａの背面に、前記内側本体部分７ａを介して重ね合わせられる。これら両本体部分１２ａ、７ａ同士を重ね合わせる作業は、図７に示した状態からこれら両本体部分１２ａ、７ａがそれぞれの厚さ方向に押圧される事により、容易に行われる。即ち、図７に示した状態から前記両本体部分１２ａ、７ａ同士を厚さ方向に対して互いに近付く方向に押圧すれば、前記別の係止突片１９の先端縁と、前記別の係止折り曲げ部１５の先端部のガイド傾斜部１７との擦れ合いに伴い、この別の係止折り曲げ部１５が前記何れかの係止折り曲げ部１５から離れる方向に弾性変形しつつ、前記別の係止突片１９の先端縁の通過（軸方向の変位）が許容される。そして、通過後は、前記両係止突片１９、１９と前記両係止透孔１６、１６とが係合する。この状態で、前記内側シム板３ａと前記外側シム板４ａとが、周方向に対する若干の相対変位が可能に組み合わせられる。又、これら両シム板３ａ、４ａが、それぞれ前記各係止片８ｄ、８ｅ、８ｆ、１３ｄ、１３ｅ、１３ｆにより前記プレッシャプレート２ａに対し係止される事で、前記内側シム板３ａに関しては前記プレッシャプレート２ａに対して径方向及び周方向の位置決めが図られた状態で添着され、前記外側シム板４ａに関しては径方向の位置決めが図られると同時に、周方向に対する若干の変位が可能にされた状態で添着される。尚、前記両シム板３ａ、４ａは、予め組み合わせてから前記プレッシャプレート２ａに対し組み付けられても、或いは、前記プレッシャプレート２ａに対し、内側シム板３ａと外側シム板４ａとが、順番に組み付けられても良い。

　前記プレッシャプレート２ａに対する前記外側シム板４ａの周方向変位は、前記各部の寸法差（「Ｗ_１０－ｗ_１３」、「Ｄ_１５－Ｌ_１２」、「Ｄ_１１－Ｌ_１３」のうちの最小値）に基づいて許容されるが、前記周方向変位の際、前記外側シム板４ａに設けた３個の外側係止片１３ｄ、１３ｅ、１３ｆの先半部内面と前記プレッシャプレート２ａの周縁部とが擦れ合う。本例の場合には、製造コストを抑えつつ、この擦れ合いに基づく抵抗を低く抑えて、前記周方向変位を安定して行わせる為に、各部の形状を工夫している。具体的には前記各外側係止片１３ｄ、１３ｅ、１３ｆの先半部内面の周方向に対応する形状が、互いに平行な直線状とされると共に、前記プレッシャプレート２ａの周縁部のうちで前記各先半部内面と擦れ合う部分に、それぞれ部分円筒面状の凸部２０ａ、２０ｂが形成されている。

　従って、前記プレッシャプレート２ａに対する前記外側シム板４ａの周方向位置が中立位置とされた状態で、前記各外側係止片１３ｄ、１３ｅ、１３ｆの先半部内面は、前記各凸部２０ａ、２０ｂの頂部（最も径方向に突出した部分）に当接する。そして、この状態で、前記各外側係止片１３ｄ、１３ｅ、１３ｆの先半部の周方向両側縁と前記プレッシャプレート２ａの周縁部とが離隔する。言い換えれば、尖鋭な端縁である前記各外側係止片１３ｄ、１３ｅ、１３ｆの先半部内面の周方向端縁は、前記プレッシャプレート２ａの周縁部に当接しない。

　上述の様に本例のディスクブレーキ用パッド組立体１４は、前記内側及び外側両シム板３ａ、４ａにそれぞれ形成した前記内側及び外側各係止片８ｄ、８ｅ、８ｆ、１３ｄ、１３ｅ、１３ｆが前記プレッシャプレート２ａの周縁部に対し直接当接させられている。前記両シム板３ａ、４ａ同士の分離防止は、これら両シム板３ａ、４ａの周方向両端部に設けた係止透孔１６、１６と係止突片１９、１９との係合により図られており、前述の図１３～１５に示した従来構造のディスクブレーキ用パッド組立体の如く、複数の係止片８ａ、８ｂ、８ｃ、１３ａ、１３ｂ、１３ｃが重ね合わせられる構造は採用されていない。従って、この従来構造に比べて、前記各係止片８ｄ、８ｅ、８ｆ、１３ｄ、１３ｅ、１３ｆの前記プレッシャプレート２ａの周縁からの突出量が少なく抑えられる。この為、ディスクブレーキの構造（フローティング型であるか、対向ピストン型であるか、更にはピストンの数が幾つであるか）に拘らず、前記ディスクブレーキ用パッド組立体１４と、ディスクブレーキの他の構成部分とが干渉し難くなり、高性能のディスクブレーキの設計の自由度を高くできる。

　しかも、本例のディスクブレーキ用パッド組立体１４の場合には、制動及びその解除に伴って前記プレッシャプレート２ａに対し周方向に変位する前記外側シム板４ａに設けた前記各外側係止片１３ｄ、１３ｅ、１３ｆの先半部の周方向両端部の内面と前記プレッシャプレート２ａの周縁部とが離隔させられている。従って、前記各外側係止片１３ｄ、１３ｅ、１３ｆの周方向端縁が前記プレッシャプレート２ａの周縁部に食い込む事が防止されて、このプレッシャプレート２ａに対する前記外側シム板４ａの周方向に対する変位が円滑に行われる。

　ここで、上述した本発明に係るディスクブレーキ用パッド組立体の実施形態の特徴をそれぞれ以下ｉ項～ｖ項に簡潔に纏めて列記する。

［ｉ］　プレッシャプレート２ａの前面にライニング６が添着固定され、ロータの軸方向側面に対向する部分に配置されるパッド１と、前記パッド１を構成するプレッシャプレート２ａの背面に添設された平板状の内側本体部分７ａを有する内側シム板３ａと、前記内側シム板３ａの内側本体部分７ａに重ね合わされた平板状の外側本体部分１２ａを有する外側シム板４ａとを備えたディスクブレーキ用パッド組立体１４であって、
　前記内側本体部分７ａから前記プレッシャプレート２ａと反対側に折り曲げられる事により前記内側シム板３ａの周方向両端部に形成された一対の係止折り曲げ部１５と、これら両係止折り曲げ部１５の基端部の幅方向中央部に形成された係止透孔１６と、前記外側シム板４ａを構成する前記外側本体部分１２ａの周方向両端縁の径方向中間部からそれぞれ周方向に突出する状態で形成された一対の係止突片１９とを備え、
　これら両係止突片１９の先端縁同士の距離は前記両係止折り曲げ部１５同士の間隔よりも大きく、前記外側本体部分１２ａの周方向両端縁のうちで前記両係止突片１９の径方向両側部分の周方向長さは前記両係止折り曲げ部１５同士の間隔よりも短く、これら両係止突片１９が前記両係止透孔１６に係合させられた状態で、前記内側本体部分７ａと前記外側本体部分１２ａとが重ね合わせられているディスクブレーキ用パッド組立体１４。
［ｉｉ］　前記両係止折り曲げ部１５のうちの少なくとも一方の係止折り曲げ部１５の先端寄り部分に、先端縁に向かうに従って他方の係止折り曲げ部１５から離れる方向に傾斜したガイド傾斜部１７が設けられており、前記外側シム板４ａの外側本体部分１２ａのうちの何れかの周方向端縁で何れかの係止突片１９を係止透孔１６に係合させつつ、前記外側本体部分１２ａが前記内側本体部分７ａに近付けられた状態で、別の係止突片１９の先端縁が前記ガイド傾斜部１７に当接する、上記［ｉ］に記載したディスクブレーキ用パッド組立体１４。
［ｉｉｉ］　前記内側シム板３ａの内側本体部分７ａの内周縁及び外周縁のうちでこれら両周縁に振り分けられた３箇所以上部分に、前記プレッシャプレート２ａの側に折れ曲がった状態で形成された内側係止片８ｄ、８ｅ、８ｆが前記プレッシャプレート２ａの内外両周縁に弾性的に当接させられる事により、前記内側シム板３ａが前記プレッシャプレート２ａの背面に、径方向及び周方向の変位が制限された状態で添設されており、前記外側シム板４ａの外側本体部分１２ａの内周縁及び外周縁のうちでこれら両周縁に振り分けられた３箇所以上部分に、前記プレッシャプレート２ａの側に折れ曲がった状態で形成された外側係止片１３ｄ、１３ｅ、１３ｆが前記プレッシャプレート２ａの内外両周縁のうちで前記各内側係止片８ｄ、８ｅ、８ｆが設けられた部分から周方向に外れた部分に当接させられる事により、前記外側シム板４ａが前記内側シム板３ａの背面に、径方向の変位が制限されると共に周方向の変位が許容される状態で重ね合わせられている、上記［ｉ］又は［ｉｉ］に記載したディスクブレーキ用パッド組立体１４。
［ｉｖ］　前記プレッシャプレート２ａの周縁部で前記各外側係止片１３ｄ、１３ｅ、１３ｆの片面と当接する部分に、前記片面と対向する部分の周方向中央部が周方向両端部よりも径方向に突出した凸部２０ａ，２０ｂが形成され、前記プレッシャプレート２ａの周縁部と前記各外側係止片１３ｄ、１３ｅ、１３ｆの片面とが、前記片面の周方向両端寄り部分で互いに離隔させられている、上記［ｉｉｉ］に記載したディスクブレーキ用パッド組立体１４。
［ｖ］　前記プレッシャプレート２ａの周縁部に、周方向に隣接する両側部分よりも径方向に凹入し、周方向に対応する幅寸法が前記外側係止片の同方向の幅寸法よりも大きな係止凹部１０ａが形成されており、前記プレッシャプレート２ａの周縁部のうちでこの係止凹部１０ａの底部に対応する部分に前記凸部２０ａが形成されている、上記［ｉｖ］に記載したディスクブレーキ用パッド組立体１４。

　本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は、２０１１年９月１３日出願の日本特許出願（特願２０１１－１９９６７５）に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。

　本発明のディスクブレーキ用パッド組立体を構成するシム板の数は、２枚に限定されるものではない。３枚目のシム板（例えば中間シム板）が、プレッシャプレートと内側シム板との間、或いは内側シム板と外側シム板との間に挟持される構造に関して、本発明を実施する事もできる。
　又、内側シム板と外側シム板との組み合わせの容易化を図る為、係止折り曲げ部の先端部のガイド傾斜部は、必ずしも両方の係止折り曲げ部に設ける必要はない。組み合わせ時に機能するのは、何れか一方のガイド傾斜部のみであるから、何れか一方の係止折り曲げ部にのみ、ガイド傾斜部を設けても良い。但し、図示の例の様に両方の係止折り曲げ部１５、１５にガイド傾斜部１７、１７を設ければ、組み付け方向が規制されずに、組み合わせ作業の容易化を図ることができる。

１　パッド
２、２ａ　プレッシャプレート
３、３ａ　内側シム板
４、４ａ　外側シム板
５　組み合わせシム板
６　ライニング
７、７ａ　内側本体部分
８ａ、８ｂ、８ｃ、８ｄ、８ｅ、８ｆ　内側係止片
９　透孔
１０、１０ａ　係止凹部
１１　段差部
１２、１２ａ　外側本体部分
１３ａ、１３ｂ、１３ｃ、１３ｄ、１３ｅ、１３ｆ　外側係止片
１４　ディスクブレーキ用パッド組立体
１５　係止折り曲げ部
１６　係止透孔
１７　ガイド傾斜部
１８　内径側係止凹部
１９　係止突片
２０ａ、２０ｂ　凸部

Claims

　プレッシャプレートの前面にライニングが添着固定され、ロータの軸方向側面に対向する部分に配置されるパッドと、前記パッドを構成するプレッシャプレートの背面に添設された平板状の内側本体部分を有する内側シム板と、前記内側シム板の内側本体部分に重ね合わされた平板状の外側本体部分を有する外側シム板とを備えたディスクブレーキ用パッド組立体であって、
　前記内側本体部分から前記プレッシャプレートと反対側に折り曲げられる事により前記内側シム板の周方向両端部に形成された一対の係止折り曲げ部と、これら両係止折り曲げ部の基端部の幅方向中央部に形成された係止透孔と、前記外側シム板を構成する前記外側本体部分の周方向両端縁の径方向中間部からそれぞれ周方向に突出する状態で形成された一対の係止突片とを備え、
　これら両係止突片の先端縁同士の距離は前記両係止折り曲げ部同士の間隔よりも大きく、前記外側本体部分の周方向両端縁のうちで前記両係止突片の径方向両側部分の周方向長さは前記両係止折り曲げ部同士の間隔よりも短く、これら両係止突片が前記両係止透孔に係合させられた状態で、前記内側本体部分と前記外側本体部分とが重ね合わせられているディスクブレーキ用パッド組立体。
　前記両係止折り曲げ部のうちの少なくとも一方の係止折り曲げ部の先端寄り部分に、先端縁に向かうに従って他方の係止折り曲げ部から離れる方向に傾斜したガイド傾斜部が設けられており、前記外側シム板の外側本体部分のうちの何れかの周方向端縁で何れかの係止突片を係止透孔に係合させつつ、前記外側本体部分が前記内側本体部分に近付けられた状態で、別の係止突片の先端縁が前記ガイド傾斜部に当接する、請求項１に記載したディスクブレーキ用パッド組立体。
　前記内側シム板の内側本体部分の内周縁及び外周縁のうちでこれら両周縁に振り分けられた３箇所以上部分に、前記プレッシャプレートの側に折れ曲がった状態で形成された内側係止片が前記プレッシャプレートの内外両周縁に弾性的に当接させられる事により、前記内側シム板が前記プレッシャプレートの背面に、径方向及び周方向の変位が制限された状態で添設されており、前記外側シム板の外側本体部分の内周縁及び外周縁のうちでこれら両周縁に振り分けられた３箇所以上部分に、前記プレッシャプレートの側に折れ曲がった状態で形成された外側係止片が前記プレッシャプレートの内外両周縁のうちで前記各内側係止片が設けられた部分から周方向に外れた部分に当接させられる事により、前記外側シム板が前記内側シム板の背面に、径方向の変位が制限されると共に周方向の変位が許容される状態で重ね合わせられている、請求項１又は２に記載したディスクブレーキ用パッド組立体。
　前記プレッシャプレートの周縁部で前記各外側係止片の片面と当接する部分に、前記片面と対向する部分の周方向中央部が周方向両端部よりも径方向に突出した凸部が形成され、前記プレッシャプレートの周縁部と前記各外側係止片の片面とが、前記片面の周方向両端寄り部分で互いに離隔させられている、請求項３に記載したディスクブレーキ用パッド組立体。
　前記プレッシャプレートの周縁部に、周方向に隣接する両側部分よりも径方向に凹入し、周方向に対応する幅寸法が前記外側係止片の同方向の幅寸法よりも大きな係止凹部が形成されており、前記プレッシャプレートの周縁部のうちでこの係止凹部の底部に対応する部分に前記凸部が形成されている、請求項４に記載したディスクブレーキ用パッド組立体。