WO2012002419A1

WO2012002419A1 - 残留放射性スラッジ液吸引装置

Info

Publication number: WO2012002419A1
Application number: PCT/JP2011/064889
Authority: WO
Inventors: 政浩相澤; 紀小形
Original assignee: 太平電業株式会社
Priority date: 2010-07-01
Filing date: 2011-06-29
Publication date: 2012-01-05
Also published as: US20130098483A1; US9347617B2

Abstract

　スラッジ貯蔵タンクに残留する少量のスラッジ液を別のタンクに移送する際に、被ばくのおそれなく安全かつ確実にスラッジ貯蔵タンク内の放射性スラッジ液を吸引することができる残留放射性スラッジ液吸引装置を提供する。　吸引装置本体１と、吸引装置本体１に取り付けられた３個のホバースカート２と、吸引装置本体１に取り付けられた、残留スラッジ液Ｌを吸引する吸引ヘッド８と、ホバースカート２に取り付けられた空気噴射ノズル１３と、ホバースカート２と空気噴射ノズル１３とに空気を供給する空気供給源とを備え、吸引装置本体１は、ホバースカート２に空気供給源から空気を供給することによって、残留スラッジ液Ｌの液面上に浮上すると共に、空気噴射ノズル１３に前記空気供給源から空気を供給することによって、残留スラッジ液Ｌの液面上を移動可能である。

Description

残留放射性スラッジ液吸引装置

　この発明は、残留放射性スラッジ液吸引装置、特に、スラッジ貯蔵タンクに残留する、放射性物質により汚染された少量の放射性スラッジ液を別のタンクに移送する際に、被ばくのおそれがなく安全かつ確実にスラッジ貯蔵タンク内の放射性スラッジ液を吸引することができる残留放射性スラッジ液吸引装置に関するものである。

　原子力発電所の運転に伴って発生するイオン交換樹脂やろ過助材等からなる、放射性物質により汚染された放射性スラッジ（以下、単に、スラッジという。）は、放射能減衰のために一定期間、上澄み水と共にスラッジ貯蔵タンクに貯蔵され、この後、このスラッジ貯蔵タンクから抜き出し、処理工程に移送して処理される。

　なお、上澄み水は、次の理由により発生する。スラッジをスラッジ貯蔵タンクに移送する場合、スラッジ単独での移送が不可能なために、水等と混合することにより流動性を持ったスラッジ液に形成して移送する必要がある。このようにして形成されたスラッジ液をスラッジ貯蔵タンクに移送すると、スラッジ貯蔵タンク内において、スラッジが沈降することによりスラッジ上に上澄み水が発生する。

　このようなスラッジ貯蔵タンクには、高い信頼性が要求されるために、定期的に点検を行い、必要に応じて補修を行う必要がある。タンクの点検等を行うためには、スラッジ貯蔵タンクを空にする必要がある。このためには、スラッジ貯蔵タンクに貯蔵されたスラッジを別のタンクに移送する必要があるが、この移送作業は、作業者の放射線による被ばくを最小限に抑えて行うことが不可欠である。

　この問題を解決すべく提案された放射性スラッジ移送装置の一例が特許文献１（特許第４３５６７２８号公報）に開示されている。以下、この放射性スラッジ移送装置を従来移送装置といい、図面を参照しながら説明する。

　図１４は、従来移送装置を示す概略構成図である。

　図１４において、Ｔ１は、スラッジ４１が貯蔵されたスラッジ貯蔵タンク、Ｔ２は、スラッジ貯蔵タンクＴ１に貯蔵されたスラッジ４１が移送される移送タンク、４２は、スラッジ４１の上澄み水、４３は、空気吹き込み装置であり、空気供給源４４、空気パイプ４５および空気ノズル４６からなっている。空気吹き込み装置４３は、スラッジ貯蔵タンクＴ１に貯蔵されたスラッジ４１の上澄み水４２に空気を吹き込んで、上澄み水４２を局部的に攪拌し、これにより流動性を有するスラッジ液４７を形成する。

　Ｐ１は、スラッジ貯蔵タンクＴ１内に入れられたスラッジ移送ポンプ、Ｐ２は、移送タンクＴ２内に入れられた上澄み水返還ポンプ、４８は、スラッジ移送ポンプＰ１に接続され、移送タンクＴ２内に至るスラッジ液移送経路、４９は、上澄み水返還ポンプＰ２に接続された上澄み水移送経路、５０は、上澄み水移送経路４９に接続された上澄み水噴出装置である。上澄み水噴出装置５０は、上澄み水移送経路４９からの上澄み水４２を、スラッジ貯蔵タンクＴ１に貯蔵されたスラッジ４１に向けて上澄み水パイプ５１に取り付けられた上澄み水噴出ノズル５２から高圧水ジェットとして吹き付ける。

　上記空気パイプ４５、スラッジ液移送経路４８、上澄み水移送経路４９および上澄み水パイプ５１は、何れも、放射線遮蔽手段５４により遮蔽された点検孔５３からスラッジ貯蔵タンクＴ１あるいは移送タンクＴ２に挿入されている。

　５５は、スラッジ貯蔵タンクＴ１に設置された監視カメラであり、スラッジ貯蔵タンクＴ１内のスラッジ液４７の形成状態等を監視する。５６は、移送タンクＴ２内に設置された監視カメラであり、移送タンクＴ２内の上澄み水４２の形成状態等を監視する。５７は、制御装置であり、監視カメラ５５、５６からの映像情報等に基づいて、空気吹き込み装置４３、上澄み水噴出装置５０、スラッジ液移送経路４８および上澄み水移送経路４９に取り付けられたバルブＢ１からＢ４等を操作して、スラッジ４１の移送の一連の作業を制御する。

　このように構成されている従来移送装置によれば、以下のようにして、スラッジ貯蔵タンクＴ１に貯蔵されたスラッジ４１が移送タンクＴ２内に移送される。

　先ず、空気吹き込み装置４３によって空気をスラッジ貯蔵タンクＴ１内の上澄み水に吹き込んで上澄み水を局部的に攪拌する。これにより、スラッジ貯蔵タンクＴ１に貯蔵されたスラッジ４１が粉砕されて、スラッジ４１上に流動性を有するスラッジ液４７が形成される。

　このようにして、スラッジ貯蔵タンクＴ１内にスラッジ液４７が形成されたら、このスラッジ液４７をスラッジ移送ポンプＰ１により吸引してスラッジ液移送経路４８を通して移送タンクＴ２に移送する。移送タンクＴ２に移送されたスラッジ液４７は、時間の経過に伴ってスラッジ４１と上澄み水４２とに分離する。

　このようにして、移送タンクＴ２内に上澄み水４２が溜まったら、この上澄み水４２を上澄み水返還ポンプＰ２により吸引して、上澄み水移送経路４９を通して上澄み水噴出装置５０に移送する。上澄み水噴出装置５０は、上澄み水４２を上澄み水パイプ５１を通して上澄み水噴出ノズル５２からスラッジ貯蔵タンクＴ１に貯蔵されたスラッジ４１に吹き付ける。これによりスラッジ４１が粉砕されてスラッジ液４７が形成される。

　この後、再度、スラッジ貯蔵タンクＴ１内のスラッジ液４７をスラッジ移送ポンプＰ１により吸引して、スラッジ液移送経路４８を通して移送タンクＴ２に移送する。そして、移送タンクＴ２内の上澄み水４２をスラッジ貯蔵タンクＴ１に貯蔵されたスラッジ４１に吹き付ける。

　以上の操作を繰り返し行うことによって、スラッジ貯蔵タンクＴ１に貯蔵されたスラッジ４１を移送タンクＴ２に移送することができる。

特許第４３５６７２８号公報

　上述のように、従来移送装置によれば、以下のような利点がもたらされる。
（１）スラッジ４１の移送の一連の作業は、監視カメラ５５、５６からの映像情報等に基づいて、制御装置５７が遠隔操作により行うので、作業者の放射線による被ばくを最小限に抑えることができる。
（２）高圧水ジェットによりスラッジ４１を粉砕する場合には、スラッジ４１を確実に粉砕することができる。なお、スラッジ４１の最初の粉砕は、空気の吹き付けにより行う。
（３）スラッジ４１の粉砕に用いる高圧水として、もともとスラッジ貯蔵タンクＴ１に溜まっていた上澄み水４２を使用するので、放射性廃棄物の量が増加することはない。外部からの水を用いると、その分だけ、放射性廃棄物の量が増加する。

　しかしながら、従来移送装置は、以下のような問題があった。

　従来移送装置によれば、上述のようにして、スラッジ貯蔵タンクＴ１に貯蔵されたスラッジ４１の大部分を移送タンクＴ２に移送することができるが、スラッジ移送ポンプＰ１の性能上、どうしてもスラッジ貯蔵タンクＴ１に少量のスラッジ液４７が残留する。

　従来、この残留スラッジ液の移送は、人手により行っていたので、被ばくのおそれがあった。

　従って、この発明の目的は、スラッジ移送ポンプの性能上、スラッジ貯蔵タンクに残留する少量のスラッジ液を別のタンクに移送する際に、遠隔操作により被ばくのおそれなく安全かつ確実にスラッジ貯蔵タンクの残留スラッジ液を吸引することができる残留放射性スラッジ液吸引装置を提供することにある。

　この発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、下記を特徴とするものである。

　[１] 一方のタンク内の残留スラッジ液を他方のタンクに移送する際に、前記残留スラッジ液を吸引するための残留放射性スラッジ液吸引装置であって、吸引装置本体と、前記吸引装置本体に取り付けられた複数個のホバースカートと、前記吸引装置本体に取り付けられた、前記残留スラッジ液を吸引する吸引ヘッドと、前記ホバースカートに取り付けられた空気噴射ノズルと、前記ホバースカートと前記空気噴射ノズルとに空気を供給する空気供給源とを備え、前記吸引装置本体は、前記ホバースカートに前記空気供給源から空気を供給することによって、前記残留スラッジ液の液面上に浮上すると共に、前記空気供給源からの空気を前記空気噴射ノズルから噴射させることによって、前記残留スラッジ液の液面上を移動可能であることに特徴を有するものである。

　[２] [１]に記載された残留放射性スラッジ液吸引装置において、前記ホバースカートは、前記吸引ヘッド側に向けて傾動可能であることに特徴を有するものである。

　[３] [１]または[２]に記載された残留放射性スラッジ液吸引装置において、前記吸引ヘッドは、上下動可能であることに特徴を有するものである。

　[４] [１]から[３]の何れか１つに記載された残留放射性スラッジ液吸引装置において、前記ホバースカートは、多角形の頂点に配された少なくとも３個のホバースカートからなり、前記吸引ヘッドは、少なくとも３個の前記ホバースカートによって囲まれていることに特徴を有するものである。

　[５] 一方のタンク内の残留スラッジ液を他方のタンクに移送する際に、前記残留スラッジ液を吸引するための残留放射性スラッジ液吸引装置であって、吸引装置本体と、前記吸引装置本体に取り付けられた複数個の浮力体と、前記吸引装置本体に取り付けられた、前記残留スラッジ液を吸引する吸引ヘッドと、前記浮力体に取り付けられた空気噴射ノズルと、前記空気噴射ノズルに空気を供給する空気供給源とを備え、前記吸引装置本体は、前記浮力体の浮力によって、前記残留スラッジ液の液面上に浮上すると共に、前記空気供給源からの空気を前記空気噴射ノズルから噴射させることによって、前記残留スラッジ液の液面上を移動可能であることに特徴を有するものである。

　[６] [５]に記載された残留放射性スラッジ液吸引装置において、前記浮力体は、リング状の空気チューブと、前記空気チューブによって囲まれた空間内に設けられた浮力部材とから構成されていることに特徴を有するものである。

　[７] [５]または[６]に記載された残留放射性スラッジ液吸引装置において、前記浮力部材は、発泡スチロールからなっていることに特徴を有するものである。

　[８] [５]から[７]の何れか１つに記載された残留放射性スラッジ液吸引装置において、前記吸引ヘッドは、上下動可能であることに特徴を有するものである。

　[９] [５]から[８]の何れか１つに記載された残留放射性スラッジ液吸引装置において、前記浮力体は、多角形の頂点に配された少なくとも３個の浮力体からなり、前記吸引ヘッドは、少なくとも３個の前記浮力体によって囲まれていることに特徴を有するものである。

　この発明によれば、スラッジ貯蔵タンクに残留する少量のスラッジ液を別のタンクに移送する際に、被ばくのおそれなく安全かつ確実にスラッジ貯蔵タンク内の放射性スラッジ液を吸引することができる。

この発明の残留放射性スラッジ液吸引装置によるスラッジ液の吸引状態を示す概略図である。この発明の残留放射性スラッジ液吸引装置を示す平面図である。この発明の残留放射性スラッジ液吸引装置を示す正面図である。この発明の残留放射性スラッジ液吸引装置のホバースカートの機能を示す説明図である。この発明の残留放射性スラッジ液吸引装置の吸引ヘッドをスラッジ液の液面上に上昇させてスラッジ液を吸引している状態を示す正面図である。この発明の残留放射性スラッジ液吸引装置の吸引ヘッドをスラッジ液内に下降させてスラッジ液を吸引している状態を示す正面図である。この発明の残留放射性スラッジ液吸引装置のホバースカートを吸引ヘッド側に傾動させてスラッジ液を吸引している状態を示す正面図である。この発明の他の残留放射性スラッジ液吸引装置によるスラッジ液の吸引状態を示す概略図である。この発明の他の残留放射性スラッジ液吸引装置を示す平面図である。この発明の他の残留放射性スラッジ液吸引装置を示す正面図である。この発明の他の残留放射性スラッジ液吸引装置の浮力体の機能を示す説明図である。この発明の他の残留放射性スラッジ液吸引装置の吸引ヘッドをスラッジ液の液面上に上昇させてスラッジ液を吸引している状態を示す正面図である。この発明の他の残留放射性スラッジ液吸引装置の吸引ヘッドをスラッジ貯蔵タンクの底部まで下降させてスラッジ液を吸引している状態を示す正面図である。従来移送装置を示す概略構成図である。

　この発明の残留放射性スラッジ液吸引装置の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。

　図１は、この発明の残留放射性スラッジ液吸引装置によるスラッジ液の吸引状態を示す概略図、図２は、この発明の残留放射性スラッジ液吸引装置を示す平面図、図３は、この発明の残留放射性スラッジ液吸引装置を示す正面図、図４は、この発明の残留放射性スラッジ液吸引装置のホバースカートの機能を示す説明図である。

　図１から図４において、Ｔ１は、一方のタンクとしてのスラッジ貯蔵タンクである。スラッジ貯蔵タンクＴ１内には、スラッジ貯蔵タンクＴ１から他方のタンクとしての移送タンク（図示せず）に、例えば、上記従来移送装置によりスラッジを移送した後のスラッジ液が少量、残留している。以下、残留したスラッジ液を残留スラッジ液（Ｌ）という。残留スラッジ液（Ｌ）は、スラッジ上の残留上澄み水（図１４参照）のみの場合も含まれる。

　１は、吸引装置本体、２は、吸引装置本体１に水平に取り付けられた複数個のホバースカートである。ホバースカート２は、この例では、三角形の頂点に配された３個のホバースカートからなっているが、３個に限定されない。

　ホバースカート２は、図４に示すように、リング状のゴムチューブ３とゴムチューブ３の上部を閉鎖する平板４とからなっている。平板４には、空気チューブ６が接続されるプラグ５が取り付けられている。ゴムチューブ３と平板４とにより形成された内側空間（Ｓ）には、空気チューブ６を介してスラッジ貯蔵タンクＴ１外に設置された空気供給源（図示せず）から空気が供給される。ゴムチューブ３の内側空間（Ｓ）に空気が供給されると、図４中、矢印で示すように、ホバークラフトの原理で吸引装置本体１が残留スラッジ液（Ｌ）の液面から若干浮上する。

　ホバースカート２は、図３の二点鎖線で示すように、シリンダ７により後述する吸引ヘッド側に向けて傾動可能である。シリンダ７は、前記空気供給源から供給される空気により遠隔操作される。ホバースカート２を傾動可能とした理由は、次の通りである。ホバースカート２を吸引ヘッド側に向けて傾動させた状態で、ホバースカート２の内側空間（Ｓ）に空気を供給すると、水位がさらに下がった残留スラッジ液（Ｌ）が吸引ヘッド側に寄せ集められ、残り少ない残留スラッジ液（Ｌ）を確実に吸引することが可能となる。

　８は、残留スラッジ液（Ｌ）を吸引する吸引ヘッドであり、三角形の頂点に配された３個のホバースカート２に囲まれるように吸引装置本体１に取り付けられている。吸引ヘッド８は、スラッジ貯蔵タンクＴ１内に吊り下げられた吸引ポンプ９に吸引パイプ１０を介して接続されている（図１参照）。吸引ポンプ９により吸引された残留スラッジ液（Ｌ）は、移送パイプ１１を介して上述した移送タンクに移送される。吸引ヘッド８は、吸引高さを調整するために、シリンダ１２により吸引装置本体１に対して上下動可能である。シリンダ１２は、前記空気供給源から供給される空気により遠隔操作される。

　なお、ホバースカート２は、３個に限定されず、３個以上を多角形の頂点に配したものであっても良い。

　１３は、ホバースカート２に取り付けられた空気噴射ノズルである。空気噴射ノズル１３は、それぞれ独立して空気チューブ１４を介して前記空気供給源に接続されている。吸引装置本体１が浮上した状態で空気噴射ノズル１３に空気を供給することによって、吸引装置本体１は、自在に残留スラッジ液（Ｌ）上を移動する。例えば、図２に示すように、２個のホバースカート２（図２中、下部）に取り付けられた空気噴射ノズル１３に空気を供給して、図中Ａ方向に空気を噴射させると、吸引装置本体１は、図中Ｂ方向に前進する。空気噴射ノズル１３への空気の供給は、遠隔操作される。

　このように構成されている、この発明の残留放射性スラッジ液吸引装置によれば、以下のようにして、スラッジ貯蔵タンクＴ１内の残留スラッジ液（Ｌ）が吸引され、移送タンク（図示せず）内に移送される。

　図１に示すように、吸引ポンプ９をスラッジ貯蔵タンクＴ１内に吊り下げると共に、この発明の残留放射性スラッジ液吸引装置を残留スラッジ液（Ｌ）の液面上に下ろす。吸引ヘッド８と吸引ポンプ９とは、吸引パイプ１０により接続され、吸引ポンプ９と移送タンクとは移送パイプ１１により接続されている。

　図５に示すように、ホバースカート２により残留放射性スラッジ液吸引装置が残留スラッジ液（Ｌ）の液面上に浮いた状態で吸引ポンプ９を作動させる。これにより、残留スラッジ液（Ｌ）が吸引される。吸引された残留スラッジ液（Ｌ）は、移送パイプ１１を通って移送タンクに移送される。

　残留スラッジ液（Ｌ）の吸引場所を変える場合には、ホバースカート２の内側空間（Ｓ）に空気を供給して、残留放射性スラッジ液吸引装置を残留スラッジ液（Ｌ）の液面から浮上させ、この状態で、空気噴射ノズル１３に空気を供給する。これによって、残留放射性スラッジ液吸引装置を任意の場所に移動させることができる。残留放射性スラッジ液吸引装置を移動させる必要があるのは、残留スラッジ液（Ｌ）の濃度が高く、一箇所のみでの吸引では、全ての残留スラッジ液（Ｌ）の吸引が円滑に行えない場合があるからである。

　残留放射性スラッジ液吸引装置を所望の場所に移動させた後は、上述したと同様にして、吸引ポンプ９を作動させて残留スラッジ液（Ｌ）を吸引する。

　このようにして、残留スラッジ液（Ｌ）を吸引していくと、残留スラッジ液（Ｌ）の液面が下がるが、液面の低下に伴って図６に示すように、シリンダ１２を作動させて吸引ヘッド８を下降させる。液面が高い場合であっても、液面より下方の残留スラッジ液（Ｌ）を選択的に吸引する場合には、吸引ヘッド８を下降させる。

　残留スラッジ液（Ｌ）を吸引していくに従って液面が下がり、次第に吸引しづらくなるが、このようになったら、図７に示すように、シリンダ７を作動させてホバースカート２を吸引ヘッド８側に傾斜させ、この状態でホバースカート２の内側空間（Ｓ）に空気を供給する。これにより、液面が下がった残留スラッジ液（Ｌ）が吸引ヘッド８側に寄せ集められるので、残り少ない残留スラッジ液（Ｌ）を確実に吸引することができる。

　なお、ホバースカート２の内側空間（Ｓ）に空気を供給することによって、スラッジ貯蔵タンクＴ１の底部に沈降したスラッジを攪拌することができるので、さらに、効果的に残留スラッジ液（Ｌ）を吸引することができる。このようにしても、沈降したスラッジが攪拌されない場合には、スラッジ貯蔵タンクＴ１内に放水ノズル（図示せず）を挿入し、放水ノズルから水をスラッジに向けて噴射してスラッジを攪拌しても良い。

　また、残留スラッジ液（Ｌ）がある程度溜まっている場合、残留放射性スラッジ液吸引装置が液面に浮いた状態からホバースカート２を傾斜させてホバースカート２内の空気を抜けば、吸引装置は、浮力がなくなり潜水する。この結果、吸引ヘッド８がスラッジ貯蔵タンクＴ１の底に接近するので、残留スラッジ液（Ｌ）を確実に吸引することが可能となる。

　この場合の残留放射性スラッジ液吸引装置の移動は、そのままの状態で空気噴射ノズル１３からの空気噴射により行うか、一旦、液面上に浮上させてから行う。

　以上の操作は、全て、遠隔操作により行われる。

　この発明の残留放射性スラッジ液吸引装置によれば、以上のようにして、スラッジ貯蔵タンクＴ１内の残留スラッジ液（Ｌ）が吸引され、移送タンク（図示せず）内に、被ばくのおそれなく安全かつ確実に移送される。

　次に、この発明の他の残留放射性スラッジ液吸引装置の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。

　図８は、この発明の他の残留放射性スラッジ液吸引装置によるスラッジ液の吸引状態を示す概略図、図９は、この発明の他の残留放射性スラッジ液吸引装置を示す平面図、図１０は、この発明の他の残留放射性スラッジ液吸引装置を示す正面図、図１１は、この発明の他の残留放射性スラッジ液吸引装置の浮力体の機能を示す説明図である。

　図８から図１１において、Ｔ１は、一方のタンクとしてのスラッジ貯蔵タンクである。スラッジ貯蔵タンクＴ１内には、スラッジ貯蔵タンクＴ１から他方のタンクとしての移送タンク（図示せず）に、例えば、上記従来移送装置によりスラッジを移送した後のスラッジ液が少量、残留している。以下、残留したスラッジ液を残留スラッジ液（Ｌ）という。残留スラッジ液（Ｌ）は、スラッジ上の残留上澄み水（図１４参照）のみの場合も含まれる。

　２１は、吸引装置本体、２２は、吸引装置本体２１に水平に取り付けられた複数個の浮力体である。浮力体２２は、この例では、三角形の各頂点に１個づつ配されているが、三角形以外の多角形の各頂点に配しても良い。

　浮力体２２は、図１１に示すように、空気が注入されたリング状のゴムチューブ２３と、ゴムチューブ２３の上部開口を閉塞する閉塞板２４と、ゴムチューブ２３と閉塞板２４とにより形成された空間（Ｓ）内に入れられた発泡スチロール等からなる浮力部材２７とからなり、閉塞板２４には、空気チューブ２６が接続されるプラグ２５が取り付けられている。空間（Ｓ）には、空気チューブ２６を介してスラッジ貯蔵タンクＴ１外に設置された空気供給源（図示せず）から空気が供給されるようになっている。空間（Ｓ）に供給された空気は、ゴムチューブ２３と浮力部材２７との間の隙間を通って浮力体２２の下部から空気バブルとなって放出され、これによって、吸引装置本体２１のバランス調整が行えるようになっている。

　２８は、残留スラッジ液（Ｌ）を吸引する吸引ヘッドであり、三角形の頂点に配された３個の浮力体２２に囲まれるように吸引装置本体２１に取り付けられている。吸引ヘッド２８は、スラッジ貯蔵タンクＴ１内に吊り下げられた吸引ポンプ２９に吸引パイプ３０を介して接続されている。吸引ポンプ２９により吸引された残留スラッジ液（Ｌ）は、移送パイプ３１を介して上述した移送タンクに移送される。吸引ヘッド２８は、吸引高さを調整するために、シリンダ３２により吸引装置本体２１に対して上下動可能である。シリンダ３２は、前記空気供給源から供給される空気により遠隔操作される。シリンダ３２によって吸引ヘッド２８をこれがスラッジ貯蔵タンクＴ１の底部に接するまで下降させれば、吸引装置本体２１による吸引位置を固定することができる。

　３３は、浮力体２に取り付けられた空気噴射ノズルである。空気噴射ノズル３３は、それぞれ独立して空気チューブ３４を介して前記空気供給源に接続されている。吸引装置本体２１が浮上した状態で空気噴射ノズル３３に空気を供給することによって、吸引装置本体２１は、自在に残留スラッジ液（Ｌ）上を移動する。例えば、図９に示すように、２個の浮力体２２（図中下部）に取り付けられた空気噴射ノズル３３に空気を供給して、図中Ａ方向に空気を噴射させると、吸引装置本体２１は、図中Ｂ方向に前進する。空気噴射ノズル３３への空気の供給は、遠隔操作される。

　このように構成されている、この発明の他の残留放射性スラッジ液吸引装置によれば、以下のようにして、スラッジ貯蔵タンクＴ１内の残留スラッジ液（Ｌ）が吸引され、移送タンク（図示せず）内に移送される。

　図８に示すように、吸引ポンプ２９をスラッジ貯蔵タンクＴ１内に吊り下げると共に、この発明の他の残留放射性スラッジ液吸引装置を残留スラッジ液（Ｌ）の液面上に下ろす。吸引ヘッド２８と吸引ポンプ２９とは、吸引パイプ３０により接続され、吸引ポンプ２９と移送タンクとは移送パイプ３１により接続されている。

　図１２に示すように、浮力体２２により残留放射性スラッジ液吸引装置が残留スラッジ液（Ｌ）の液面上に浮いた状態で吸引ポンプ２９を作動させる。これにより、残留スラッジ液（Ｌ）が吸引される。吸引された残留スラッジ液（Ｌ）は、移送パイプ３１を通って移送タンクに移送される。

　残留スラッジ液（Ｌ）の吸引場所を変える場合には、所望の空気噴射ノズル３３から空気を噴射させる。これによって、残留放射性スラッジ液吸引装置を任意の場所に移動させることができる。残留放射性スラッジ液吸引装置を移動させる必要があるのは、濃度が高く、一箇所のみでの吸引では、全ての残留スラッジ液（Ｌ）の吸引が円滑に行えない場合があるからである。

　残留放射性スラッジ液吸引装置を所望の場所に移動させた後は、上述したと同様にして、吸引ポンプ２９を作動させて残留スラッジ液（Ｌ）を吸引する。

　残留スラッジ液（Ｌ）の液面が下がった状態で、定位置で残留スラッジ液（Ｌ）を吸引する場合には、図１３に示すように、シリンダ３２を作動させて吸引ヘッド２８をこれがスラッジ貯蔵タンクＴ１の底部に当るまで下降させる。これにより吸引装置本体２１の位置が固定されるので、定位置での残留スラッジ液（Ｌ）の吸引が可能となる。

　以上の操作は、全て、遠隔操作により行われる。

　この発明の他の残留放射性スラッジ液吸引装置によれば、以上のようにして、スラッジ貯蔵タンクＴ１内の残留スラッジ液（Ｌ）が吸引され、移送タンク（図示せず）内に、被ばくのおそれなく安全かつ確実に移送される。

Ｔ１：スラッジ貯蔵タンク
Ｔ２：移送タンク
　Ｌ：残留スラッジ液
　Ｓ：内部空間
　１：吸引装置本体
　２：ホバースカート
　３：ゴムチューブ
　４：平板
　５：プラグ
　６：空気チューブ
　７：シリンダ
　８：吸引ヘッド
　９：吸引ポンプ
　１０：吸引パイプ
　１１：移送パイプ
　１２：シリンダ
　１３：空気噴射ノズル
　１４：空気チューブ
　２１：吸引装置本体
　２２：浮力体
　２３：ゴムチューブ
　２４：閉塞板
　２５：プラグ
　２６：空気チューブ
　２７：浮力部材
　２８：吸引ヘッド
　２９：吸引ポンプ
　３０：吸引パイプ
　３１：移送パイプ
　３２：シリンダ
　３３：空気噴射ノズル
　３４：空気チューブ
　４１：スラッジ
　４２：上澄み水
　４３：空気吹き込み装置
　４４：空気供給源
　４５：空気パイプ
　４６：空気ノズル
　４７：スラッジ液
　４８：スラッジ液移送経路
　４９：上澄み水移送経路
　５０：上澄み水噴出装置
　５１：上澄み水パイプ
　５２：上澄み水噴出ノズル
　５３：点検孔
　５４：放射線遮蔽手段
　５５：監視カメラ
　５６：監視カメラ
　５７：制御装置

Claims

　一方のタンク内の残留スラッジ液を他方のタンクに移送する際に、前記残留スラッジ液を吸引するための残留放射性スラッジ液吸引装置であって、
　吸引装置本体と、前記吸引装置本体に取り付けられた複数個のホバースカートと、前記吸引装置本体に取り付けられた、前記残留スラッジ液を吸引する吸引ヘッドと、前記ホバースカートに取り付けられた空気噴射ノズルと、前記ホバースカートと前記空気噴射ノズルとに空気を供給する空気供給源とを備え、前記吸引装置本体は、前記ホバースカートに前記空気供給源から空気を供給することによって、前記残留スラッジ液の液面上に浮上すると共に、前記空気供給源からの空気を前記空気噴射ノズルから噴射させることによって、前記残留スラッジ液の液面上を移動可能であることを特徴とする残留放射性スラッジ液吸引装置。
　前記ホバースカートは、前記吸引ヘッド側に向けて傾動可能であることを特徴とする、請求項１に記載された残留放射性スラッジ液吸引装置。
　前記吸引ヘッドは、上下動可能であることを特徴とする、請求項１または２に記載された残留放射性スラッジ液吸引装置。
　前記ホバースカートは、多角形の頂点に配された少なくとも３個のホバースカートからなり、前記吸引ヘッドは、少なくとも３個の前記ホバースカートによって囲まれていることを特徴とする、請求項１から３の何れか１つに記載された残留放射性スラッジ液吸引装置。
　一方のタンク内の残留スラッジ液を他方のタンクに移送する際に、前記残留スラッジ液を吸引するための残留放射性スラッジ液吸引装置であって、
　吸引装置本体と、前記吸引装置本体に取り付けられた複数個の浮力体と、前記吸引装置本体に取り付けられた、前記残留スラッジ液を吸引する吸引ヘッドと、前記浮力体に取り付けられた空気噴射ノズルと、前記空気噴射ノズルに空気を供給する空気供給源とを備え、前記吸引装置本体は、前記浮力体の浮力によって、前記残留スラッジ液の液面上に浮上すると共に、前記空気供給源からの空気を前記空気噴射ノズルから噴射させることによって、前記残留スラッジ液の液面上を移動可能であることを特徴とする残留放射性スラッジ液吸引装置。
　前記浮力体は、リング状の空気チューブと、前記空気チューブによって囲まれた空間内に設けられた浮力部材とから構成されていることを特徴とする、請求項５に記載された残留放射性スラッジ液吸引装置。
　前記浮力部材は、発泡スチロールからなっていることを特徴とする、請求項５または６に記載された残留放射性スラッジ液吸引装置。
　前記吸引ヘッドは、上下動可能であることを特徴とする、請求項５から７の何れか１つに記載された残留放射性スラッジ液吸引装置。
　前記浮力体は、多角形の頂点に配された少なくとも３個の浮力体からなり、前記吸引ヘッドは、少なくとも３個の前記浮力体によって囲まれていることを特徴とする、請求項５から８の何れか１つに記載された残留放射性スラッジ液吸引装置。