WO2011161895A1 - 分析素子チップの製造方法 - Google Patents

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Abstract

 本発明は、表面プラズモン共鳴分析装置又は表面プラズモン共鳴蛍光分析装置に用いられ、所定の面13の面上に金属膜15を形成したプリズム11を備えた分析素子チップ10の製造方法であって、プリズム11の所定の面13の面上に金属膜15を形成する成膜工程を備え、この成膜工程は、成膜時間と形成される金属膜15の膜厚との関係である成膜レートが変化したときの膜厚である境界膜厚D2に基づく所定の膜厚D3で金属膜15を形成することを特徴とする。

Description

分析素子チップの製造方法
 本発明は、表面プラズモン共鳴の共鳴角の変化に基づいて検体を分析する表面プラズモン共鳴分析装置に用いられる分析素子チップ、及び表面プラズモン共鳴によって生じたエバネッセント波を用いて検体に含まれる蛍光物質を発光させてこの蛍光を測定して検体に含まれる特定物質を分析する表面プラズモン共鳴蛍光分析装置に用いられる分析素子チップの製造方法に関するものである。
 従来から、特許文献1に記載の分析素子チップ(センサーチップ)が知られている。この分析素子チップは、表面プラズモン共鳴を利用した分析装置である表面プラズモン共鳴分析装置や表面プラズモン共鳴蛍光分析装置に用いられる。この分析素子チップは、図8に示すように、所謂クレッチマン配置のものであり、プリズム110と、プリズム110の所定の面112の面上に形成される金属膜114とを備える。
 この分析素子チップ100では、表面プラズモン共鳴が金属膜114に生じ、この表面プラズモン共鳴が利用されて検体の高感度且つ高精度の分析が行われる。
 この分析素子チップ100は以下のようにして製造される。
 先ず、プリズム110の所定の面112の面上に形成される金属膜114の膜厚が決定される。具体的には、プリズム110の所定の面112上に所定の厚さの金属膜が形成される。そして、プリズム110内に入射した光が所定の面112上の金属膜によって全反射されるようにプリズム110に光が照射される。そして、所定の面112に対する前記光の入射角が変更されたときの光の反射率と入射角との関係が求められる(図9参照)。この光の反射率と入射角との関係において反射率の値が最も小さくなったときに金属膜114に表面プラズモン共鳴が生じ、このときの入射角がプラズモン共鳴角である。
 同様にして、異なる膜厚の金属膜114が形成された所定の面112における反射率と入射角との関係が求められる。反射率の値が小さい程、金属膜114の近傍に電場強度の大きな増強電場(近接場)が形成され、検体の高感度且つ高精度な分析が可能となる。そのため、各膜厚における反射率の最小値が相互に比較されてその中で最も小さな反射率である最小反射率が求められる。そして、この最小反射率が得られた金属膜114の膜厚dが求められる。金属膜114の膜厚は、このように求められた膜厚dよりも小さな膜厚(膜厚dとの差が20nm以下)となるように決定される。このように、プリズム110上に形成される金属膜114の膜厚が、最小反射率が得られた膜厚dよりも小さいことにより、SPR分析又はSPFS分析において金属膜114上に配置される試料溶液116による光吸収の影響が抑えられる。決定された膜厚の金属膜114がプリズム110の所定の面112の面上に形成される。
 以上のように製造された分析素子チップ100では、検体を含む試料溶液116が金属膜114上に配置される。そして、最小反射率が得られた入射角で光が所定の面112に入射するように光がプリズム110に照射される。これにより、表面プラズモン共鳴が金属膜114において生じ、これが利用されて検体の定量分析が高感度且つ高精度に行われる。
 金属膜114が真空成膜によってプリズム110の所定の面112の面上に形成(成膜)される場合、所定の面112上において金属膜114は、以下のように形成される。
 金属膜114は、先ず、図10(A)に示すように、所定の面112の成膜領域において金属膜114を構成する分子(金属分子)の付着していない領域113が存在する状態、即ち、薄膜として未完成な状態(非膜構造)となる。そして、成膜が進むにつれて、金属分子の付着していない領域113が金属分子によって埋められる。これにより、金属膜114は、図10(B)に示すように所定の面112の成膜領域全体を隙間なく覆うように金属分子が付着した状態(膜構造)となる。
 この真空成膜において金属膜114が非膜構造から膜構造となる境界の膜厚(境界膜厚)は、スパッタ法や蒸着法等の成膜方法によって異なる。
 そのため、上記のように最小反射率が得られた膜厚dよりも小さな膜厚となるように金属膜114がプリズム110上に形成されると、成膜方法によっては成膜された金属膜114が非膜構造となっている場合がある。
 このような非膜構造の金属膜114の形成された分析素子チップ100が用いられてSPR分析やSPFS分析が行われると、検出される信号(シグナル信号)強度が分析素子チップ100毎に異なる等、安定した性能が得られない。
日本国特開2009-25215号公報
 本発明の目的は、プリズム上に形成される金属膜の成膜方法に関わらず、膜構造の金属膜を形成することができる分析素子チップの製造方法を提供することである。
 本発明にかかる分析素子チップの製造方法は、金属膜の成膜時間とこの成膜時間で形成される金属膜の膜厚との関係である成膜レートが変化したときの膜厚に基づく所定の膜厚となるようにプリズム上に金属膜を形成する。このため、本発明によれば、プリズム上に形成される金属膜の成膜方法に関わらず、膜構造の金属膜が形成される分析素子チップの製造方法を提供することができる。
 上記並びにその他の本発明の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な記載と添付図面とから明らかになるであろう。
図1は、本実施形態に係る分析素子チップの概略縦断面図である。 図2は、前記分析素子チップのプリズム上に形成された金属膜の膜厚と電場増強度との関係を示す図である。 図3は、プラズマ支援型スパッタ法における成膜時間と膜厚との関係を示す図である。 図4は、マグネトロンスパッタ法における成膜時間と膜厚との関係を示す図である。 図5は、イオンアシスト蒸着法における成膜時間と膜厚との関係を示す図である。 図6は、電子銃加熱真空蒸着法における成膜時間と膜厚との関係を示す図である。 図7は、抵抗加熱真空蒸着法における成膜時間と膜厚との関係を示す図である。 図8は、従来の分析素子チップの概略斜視図であって、金属膜上に試料溶液を載せた状態を示す図である。 図9は、前記分析素子チップにおけるプリズムの反射面での光の反射率と反射面への光の入射角との関係を示す図である。 図10は、真空成膜により基板の成膜面上に形成される金属膜の状態を説明するための図であって、図10(A)は非膜構造(薄膜として未完成な状態)の金属膜を示す図であり、図10(B)は膜構造(薄膜として完成した状態)の金属膜を示す図である。
 以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ説明するが、分析素子チップの製造方法を説明する前に、当該製造方法により製造される分析素子チップについて説明する。
 分析素子チップは、SPR分析装置や表面プラズモン共鳴蛍光分析装置(SPFS分析装置)において用いられる、所謂クレッチマン配置のセンサーチップである。ここで、SPR分析装置は、表面プラズモン共鳴の共鳴角の変化に基づいて検体を分析するものであり、SPFS分析装置は、検体に含まれる蛍光物質が表面プラズモン共鳴に基づくエバネッセント波により励起されて発した蛍光を測定し、この蛍光に基いて検体を分析するものである。
 具体的に、分析素子チップは、図1に示すように、プリズム11と、プリズム11の表面に成膜(形成)される金属膜15と、検体や試薬、洗浄液等の試料溶液が金属膜15上を当該金属膜15に接しつつ流れる流路21を形成する流路部材20とを備える。
 プリズム11は、入射面12と、反射面(所定の面)13と、射出面14とをその表面に含み、透明なガラス又は樹脂により形成されている。入射面12は、分析素子チップ10が表面プラズモン共鳴蛍光分析装置等に設置されて検体の分析を行うときに、当該表面プラズモン共鳴蛍光分析装置等の光源(図示省略)からの光をプリズム11の内部に入射させる。反射面13は、その上側に金属膜15が成膜され、入射面12からプリズム11の内部に入射した光を金属膜15により反射する。射出面14は、反射面13上の金属膜15により反射された光をプリズム11の外部に出射する。尚、プリズムは、入射面と反射面と出射面とをその表面に含み、入射面からプリズムの内部に入射した光が反射面上の金属膜によって全反射し、この全反射した光がプリズムの内部で乱反射せずに出射面からプリズムの外部に出射される形状であればよい。
 金属膜15は、プリズム11上に成膜された金属製の薄膜である。本実施形態の金属膜15は、金により形成されている。この金属膜15は、プリズム11内において光が全反射されることにより生じるエバネッセント波(近接場光)を増幅するための部材である。即ち、金属膜15が反射面13上に設けられて表面プラズモン共鳴が生じることにより、光が金属膜15の設けられていない反射面13において全反射してエバネッセント波が生じた場合に比べ、反射面13の表面近傍に形成される電場(エバネッセント波)が増強さされる。本実施形態の金属膜15は、プリズム11の反射面13上の略全面を覆うように成膜されている。しかし、金属膜15は、反射面13上において少なくとも流路21と対応する部位に成膜されていればよい。尚、金属膜15の材質は、金に限定されず、表面プラズモン共鳴を生じさせる金属であればよい。例えば、金属膜15は、銀、銅、アルミ等(合金を含む)により形成されてもよい。また、この金属膜15は、表面プラズモン共鳴を生じさせることができるように膜厚が100nm以下となるように形成される。尚、金属膜15の膜厚の詳細は後述される。
 このような金属膜15は、プラズマ支援型スパッタ法、マクネトロンスパッタ法、イオンアシスト蒸着(IAD)法、電子銃(EB)加熱真空蒸着法、抵抗加熱真空蒸着法、イオンプレーティング法、及び分子線エピタキシー(MBE)法等によって反射面13上に真空成膜される。
 検体中の特定の抗原等を捕捉するための生理活性物質16が金属膜15の表面(プリズムと反対側の面)15aに固定されている。本実施形態の生理活性物質16は抗体である。この生理活性物質16は、反射面13上に金属膜15が成膜された後に表面処理によって金属膜15に固定される。本実施形態の金属膜15は、生理活性物質16を安定して固定できるよう、金属膜15上にCMD(カルボキシメチルデキストラン)膜(図示省略)を有する。生理活性物質16は、CMD膜の表面に固定される。
 流路部材20は、プリズム11の反射面13上に設けられ、検体等の試料溶液が流れる流路21を有する。この流路部材20は、透明な樹脂により形成される。本実施形態の流路部材20は、水平方向に拡がる板状の部材である。流路21は、検出部22と、複数の案内部23とを有する。検出部22は、抗原抗体反応が行われる。各案内部23は、分析素子チップ10の外部から検出部22へ試料溶液を案内し、又は検出部22から外部へ試料溶液を案内する。
 具体的に、検出部22は、流路部材20の裏面(図1において下側の面)20bに設けられた溝とプリズム11上の金属膜15とにより囲まれている。即ち、この検出部22では、試料溶液が金属膜15の表面(生理活性物質16が固定されている面)15aと接しつつ流れる。各案内部23の一方の端部は、流路部材20の表面(図1において上側の面)20aで開口し、他方の端部(前記一方の端部と反対側の端部)は、検出部22と接続されている。このように案内部23と検出部22と案内部23とが順に繋がって一本の流路21が形成されている。
 この流路部材20は、プリズム11と接着剤によって接着(接合)されている。本実施形態では、検出部22を水平方向から囲み且つ流路部材20とプリズム11との間となる位置にシール部材25が設けられている。シール部材25は、弾性体からなる。このシール部材25は、流路部材20とプリズム11との接合部位からの試料溶液の漏れを防いでいる。
 以上のような分析素子チップ10は、以下のようにして製造される。
 プリズム11、金属膜15、流路部材20の材質がそれぞれ決定され、プリズム11と流路部材20とが形成される。
 次に、金属膜15の最適膜厚(所定の膜厚)D3が決定され、反射面13の面上に最適膜厚D3の金属膜15が成膜される。
 具体的には、最大電場膜厚D1と境界膜厚D2とが求められ、これらの比較に基づいて最適膜厚D3が決定される。ここで、最大電場膜厚D1は、金属膜15に表面プラズモン共鳴を生じさせることにより金属膜15近傍に形成される増強電場に基づく膜厚である。詳しくは、最大電場膜厚D1は、前記材質の決められたプリズム11及び金属膜15を用いた分析素子チップ10において表面プラズモン共鳴が金属膜15に生じたときに、当該金属膜15の表面15a近傍の増強電場の強度が最大となる膜厚である。また、境界膜厚D2は、金属膜15の状態(構造)に基づく膜厚である。詳しくは、境界膜厚D2は、金属膜15がプリズム11の反射面13上に真空成膜されるときに、この金属膜15が非膜構造から膜構造になる境界の膜厚である。尚、非膜構造の金属膜15は、図10(A)に示すように、真空成膜において、基材の成膜面112に金属膜15を構成する金属分子が付着していない領域が存在する状態(即ち、薄膜としては未完成の状態)である。また、膜構造の金属膜15とは、図10(B)に示すように、真空成膜において、基材の成膜面112の全体を隙間なく覆うように金属分子が付着している状態(即ち、薄膜として完成した状態)である。
 最大電場膜厚D1は、プリズム11の屈折率、金属膜15の屈折率、金属膜15の消衰係数、及び検体の分析の際にプリズム11の反射面13上の金属膜15で反射させる光の波長等に基づくシミュレーションにより求められる。詳しくは、金属膜15の膜厚が変化したときの各膜厚における増強電場の強度が求められる。これら各膜厚の増強電場が互いに比較され、求められた増強電場のうちの最も強度の大きな増強電場が求められる。この最も大きな増強電場を得られる膜厚が最大電場膜厚D1として導出される。
 例えば、プリズム11にBK7(ガラス)が用いられ、金属膜15に金が用いられ、検体の分析の際に波長が635nmの光が用いられる場合、前記のミュレーションにより求められる最大電場膜厚D1は、以下の表1に示す膜厚となる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 この表1において、膜構造の金膜(金属膜)における屈折率及び消衰係数が金膜の屈折率及び消衰係数として用いられる。尚、表1は、分析素子チップ10におけるプリズム11の材質として用いることが可能である他の材質(1060R(樹脂)、E48R(樹脂)、SLAL10(ガラス)、OKP4(樹脂)、LaF71(ガラス))についてのシミュレーション結果も併せて示す。
 また、金属膜15に生理活性物質16が安定して固定されるように金属膜15上にCMD膜が設けられる場合、シミュレーションにより求められる最大電場膜厚D1は、以下の表2のようになる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
 この表2における上限膜厚は、図2に示す膜厚と電場増強度(以下、単に「感度」とも称する。)との関係を示す感度曲線において、感度が1以下となる膜厚である。感度が1以下となる場合、検体の分析の際に、分析素子チップ10から分析に必要な強度のシグナル信号(SPR分析においてはプラズモン共鳴角の変化、SPFS分析においては検体中の抗原に標識された蛍光物質の励起光)が十分に得られない。そのため、この上限膜厚が分析素子チップ10に用いられる金属膜15の膜厚の上限となる。
 次に、金属膜15がプリズム11の反射面13上に真空成膜されるときに、この金属膜15が非膜構造から膜構造になる境界の膜厚(境界膜厚)D2が導出される。この境界膜厚D2は、成膜時間(経過時間)と実測による膜厚との関係である成膜レートに基づいて求められ、成膜方法や成膜条件によって異なる。具体的には、成膜レートが求められ、この成膜レートが変化したときの膜厚が境界膜厚D2として導出される。この成膜レートの変化は、金属膜15の状態の変化に起因している。
 詳しくは、成膜初期には、基板(本実施形態ではプリズム11)の成膜面(本実施形態では反射面13)において、金属分子が疎らに付着することにより複数の島(島状領域)が形成される(図10(A)参照)。次に、真空成膜において基板に向う金属分子は、この疎らに付着している金属分子と結合する。このとき、新たに結合した金属分子は、金属膜15の厚み方向に結合するものばかりでなく、島と島との間を埋めるように成膜面にも付着する。これにより、次第に島と島とが繋がり、成膜時間の経過に伴い成膜面において金属分子が付着していない領域113が少なくなり、やがてなくなる(図10(B)参照)。この時の膜厚が境界膜厚D2である。境界膜厚D2となる前の基板に到達した金属分子の一部は、島と島との間を埋めるように成膜面に付着している金属分子と結合する。このため、基板に到達した金属分子の一部だけが膜厚に寄与する。しかし、境界膜厚D2以後に基板に到達した全ての金属分子は、既に付着している金属分子の上に結合する。このため、基板に到達した全ての金属分子が膜厚に寄与する。これにより、境界膜厚D2を挟んでその前後で成膜レート(成膜速度)が変化する。即ち、境界膜厚D2以降は、成膜レート(成膜速度)が上がる。これは、金膜が成膜される場合に限られず、他の金属が用いられた真空成膜においても非膜構造から膜構造となるときに前記同様の成膜レートの変化が現れる。
 例えば、金属膜15がプラズマ支援型スパッタ法により成膜される場合の境界膜厚D2は、以下のように求められる。この時の成膜条件は、
 成膜条件例
 ・到達真空度:2×10-7Torr
 ・成膜真空度:5×10-4Torr
 ・導入ガス:アルゴン 6sccm
 ・カソード印加電力:100W
 ・支援コイル印加電力:50W
 ・カソードと基板との間の距離:300mm
 ・成膜時間:任意可変
 ・使用基板:シグマ光機平行平面基板 OBP-25S01-P
である。
 この成膜条件により金属膜15が成膜され、そのときの成膜時間(経過時間)と実測した膜厚との関係が求められる。各膜厚は、FIB-TEMにより断面を作成し実測する方法やエリプソメトリー等により求められる。その結果が図3に示される。
 図3によれば、膜厚が28nmのときに成膜レートが変化している。このため、上記のプラズマ支援型スパッタ法により成膜される金属膜15の境界膜厚D2は28nmである。
 分析素子チップ10の製造において使用可能な他の成膜方法における境界膜厚D2が以下に示される。
 <マグネトロンスパッタ法の場合>
 成膜条件例
 ・到達真空度:2×10-7Torr
 ・成膜真空度:5×10-3Torr
 ・導入ガス:アルゴン 6sccm
 ・カソード印加電力:100W
 ・カソードと基板との間の距離:70mm
 ・成膜時間:任意可変
 ・使用基板:シグマ光機平行平面基板 OBP-25S01-P
 この成膜条件により金属膜15が成膜された場合の成膜時間(経過時間)と実測した膜厚との関係が図4に示される。図4によれば、膜厚が38nmのときに成膜レートが変化している。このため、上記のマグネトロンスパッタ法により成膜される金属膜15の境界膜厚D2は38nmである。
 <イオンアシスト蒸着法の場合>
 成膜条件例
 ・到達真空度:2×10-7Torr
 ・成膜真空度:1×10-6Torr
 ・電子銃蒸発源電力:6kV,60mA
 ・蒸発源と基板との間の距離:600mm
 ・イオンガン:アルゴン導入後、500V,0.5Aにて冷陰極放電によりアルゴンをイオン化
 ・成膜時間:任意可変
 ・使用基板:シグマ光機平行平面基板 OBP-25S01-P
 この成膜条件により金属膜15が成膜された場合の成膜時間(経過時間)と実測した膜厚との関係が図5に示される。図5によれば、膜厚が40nmのときに成膜レートが変化している。このため、上記のイオンアシスト蒸着法により成膜される金属膜15の境界膜厚D2は40nmである。
 <電子銃(EB)加熱真空蒸着法の場合>
 成膜条件例
 ・到達真空度:5×10-7Torr
 ・成膜真空度:8×10-7Torr
 ・電子銃蒸発源電力:6kV,80mA
 ・蒸発源と基板との間の距離:600mm
 ・成膜時間:任意可変
 ・使用基板:シグマ光機平行平面基板 OBP-25S01-P
 この成膜条件により金属膜15が成膜された場合の成膜時間(経過時間)と実測した膜厚との関係が図6に示される。図6によれば、膜厚が46nmのときに成膜レートが変化している。このため、上記のイオンアシスト蒸着法により成膜される金属膜15の境界膜厚D2は46nmである。
 <抵抗加熱真空蒸着法の場合>
 成膜条件例
 ・到達真空度:5×10-7Torr
 ・成膜真空度:1×10-6Torr
 ・電子銃蒸発源電力:5V,100A
 ・蒸発源と基板との間の距離:600mm
 ・成膜時間:任意可変
 ・使用基板:シグマ光機平行平面基板 OBP-25S01-P
 この成膜条件により金属膜15が成膜された場合の成膜時間(経過時間)と実測した膜厚との関係が図7に示される。図7によれば、膜厚が52nmのときに成膜レートが変化している。このため、上記のイオンアシスト蒸着法により成膜される金属膜15の境界膜厚D2は52nmである。
 このように求められた最大電場膜厚D1と境界膜厚D2とが比較され、プリズム11上に形成される金属膜15の膜厚(最適膜厚)D3が決定される。
 詳しくは、境界膜厚D2よりも最大電場膜厚D1が大きい場合には、最大電場膜厚D1が最適膜厚D3とされる。一方、境界膜厚D2が最大電場膜厚D1以下の場合には、境界膜厚D2に所定の値を加えた膜厚が最適膜厚D3とされる。
 例えば、SLAL10によって形成されたプリズム11上に電子銃加熱真空蒸着法によって金属膜(金膜)15が形成される場合、上記より、最大電場膜厚D1が44nmであり、境界膜厚D2が46nmとなる。
 この場合、最大電場膜厚(44nm)D1よりも境界膜厚(46nm)D2が大きい。従って、境界膜厚(46nm)D2に所定の膜厚(本実施形態では2nm)が加えられた膜厚が最適膜厚(本実施例では48nm)D3となる。
 これは以下の理由による。プリズム11上に境界膜厚D2よりも薄い最大電場膜厚D1の金属膜15が形成されると、この金属膜15が非膜構造となる。このため、当該金属膜15に表面プラズモン共鳴が生じてもその表面近傍にはシミュレーションで求めた電場強度よりも小さい強度の増強電場しか形成されない。詳しくは、シミュレーションにおいて、最大電場膜厚D1は、膜構造の金属膜15の屈折率及び消衰係数に基づいて求められている。そのため、境界膜厚D2よりも最大電場膜厚D1が小さい場合には、最大電場膜厚D1の金属膜15が形成されても、この金属膜15は、非膜構造、即ち、薄膜として未完成な状態となる。従って、膜構造である境界膜厚D2の金属膜15における増強電場に比べ、最大電場膜厚D1の金属膜15における増強電場の電場強度が小さくなる。以上より、境界膜厚D2が最大電場膜厚D1以下の場合には、境界膜厚D2に所定の値を加えた膜厚が最適膜厚D3とされる。
 尚、最適膜厚D3が求められるときに、境界膜厚D2に所定の値が加えられるのは、最適膜厚D3を境界膜厚D2よりも厚くして金属膜15が確実に膜構造となるようにするためである。但し、この所定の値は2nmに限定されず、1~5nmであればよい。或いは、所定の値は、成膜バラツキが考慮されて、最適膜厚D3の+10%程度に設定されてもよい。
 また、例えば、金属膜(金膜)15がSLAL10によって形成されたプリズム11上にマグネトロンスパッタ法によって形成される場合、上記より、最大電場膜厚D1が44nmであり、境界膜厚D2が38nmとなる。
 この場合、境界膜厚(38nm)D2よりも最大電場膜厚(44nm)D1が大きい。このため、最大電場膜厚(44nm)D1が最適膜厚D3となる。この最大電場膜厚D1は境界膜厚D2よりも厚い。このため、この最大電場膜厚D1の金属膜15がプリズム11上に形成されれば、確実に膜構造の金属膜15が得られる。また、最大電場膜厚D1は、膜構造の金属膜15において増強電場が最大になる膜厚として求められたものである。従って、この膜厚の金属膜15に表面プラズモン共鳴が生じたときの増強電場は最大となる。即ち、この膜厚の金属膜15は、前記のシミュレーションにより求められた電場強度の増強電場を得ることができる。
 このようにして最大電場膜厚D1と境界膜厚D2とから最適膜厚D3が決定されると、金属膜15がこの最適膜厚D3となるようにプリズム11の反射面13の面上に形成される。このとき、金属膜15は、前記の最適膜厚D3を求めるときに用いた境界膜厚D2に対応する成膜方法(例えば、境界膜厚D2としてプラズマ支援型スパッタ法における値を用いた場合には、プラズマ支援型スパッタ法)によって成膜される。
 プリズム11の反射面13の面上に最適膜厚D3(製造誤差を含む)の金属膜15が形成されると、その表面15aにCMD膜が設けられる。その後、生理活性物質16がCMD膜に表面処理によって固定される。
 尚、生理活性物質16は、金属膜15の表面15aにおいて、少なくとも流路21(詳しくは、検出部22)に対応する領域に固定されていればよい。また、CMD膜は、前記のように生理活性物質16を安定して固定するために設けられるものである。そのため、金属膜15の表面15aにCMD膜が設けられることなく、直接、生理活性物質16が金属膜15の表面15aに固定されてもよい。
 生理活性物質16が金属膜15に固定されると、流路部材20がプリズム11に接着される。このとき、流路部材20は、検出部22を水平方向から囲み且つ流路部材20とプリズム11との間となる位置に弾性体(シール部材)25を挟み込むようにプリズム11上に接着される。尚、流路部材20とプリズム11との接合は、接着に限定されず、レーザ溶着や超音波溶着、クランプ部材を用いた圧着等であってもよい。流路部材20とプリズム11とが液密に接合されていれば、前記検出部22を囲むシール部材25はなくてもよい。
 以上のような分析素子チップ10の製造方法によれば、真空成膜におけるいずれの成膜方法によって金属膜15がプリズム11上に形成されても、確実に膜構造の金属膜15が得られる。しかも、金属膜15において生じた表面プラズモン共鳴に基づく当該金属膜15の近傍の増強電場の強度が最大となる。
 尚、本発明の分析素子チップの製造方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
 例えば、上記実施形態では、最大電場膜厚D1が求められた後に境界膜厚D2が求められているが、境界膜厚D2が求められた後に最大電場膜厚D1が求められてもよい。また、最大電場膜厚D1と境界膜厚D2とが同時に求められてもよい。即ち、プリズム11の材質と金属膜15の材質とが決定された後に成膜方法が決定されるのに限定されず、成膜方法が決定された後にプリズム11の材質と金属膜15の材質とが決定されてもよい。また、プリズム11の材質と金属膜15の材質と成膜方法とが同時に決定されてもよい。
 最大電場膜厚D1は、プリズム11の材質や金属膜15の材質が変更される度にシミュレーションによって求められてもよい。また、最大電場膜厚D1は、プリズム11の材質や金属膜15の材質が変更される際に予め準備されている所定のテーブルに基づいて求められてもよい。この所定のテーブルは、種々の材質における最大電場膜厚D1がシミュレーションによってそれぞれ求められ、その結果がまとめられたものである(表2参照)。同様に、境界膜厚D2は、成膜方法が変更される度に実測によって求められてもよい。また、境界膜厚D2は、成膜方法が変更される際に予め準備されている所定のテーブルに基づいて求められてもよい。この所定のテーブルは、種々の成膜方法における境界膜厚D2が実測によってそれぞれ求められ、その結果がまとめられたものである(以下の表3参照)。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
 上記実施形態では、最大電場膜厚D1と境界膜厚D2との比較に基づいて最適膜厚D3が導出されている。しかし、少なくとも境界膜厚D2が求められ、これに基づいて最適膜厚D3が導出される(例えば、境界膜厚D2よりも厚い膜厚とする)ことにより、確実に膜構造の金属膜15がプリズム11上に得られる。この場合、金属膜15において表面プラズモン共鳴が生じるように、最適膜厚D3の上限は、表2に示す上限膜厚となる。
 上記実施形態では、最大電場膜厚D1と境界膜厚D2とを比較したときに、最大電場膜厚D1の方が大きい場合には、この最大電場膜厚D1が最適膜厚D3となる。しかし、これに限定されない。即ち、金属膜15における増強電場の強度が小さくなるが、最大電場膜厚D1よりも大きな膜厚が最適膜厚D3とされてもよい。但し、表面プラズモン共鳴が生じる厚さであることから、最適膜厚D3は100nm以下でなければならない。
 電子銃加熱真空蒸着法によって、材質がSLAL10(ガラス)の基板上に金膜が形成された。この基板と金膜との組み合わせでは、境界膜厚D2が46nm(表3参照)、最大電場膜厚D1が44nm(表1参照)となり、境界膜厚D2が最大電場膜厚D1よりも大きい。そのため、基板上に形成される金膜の膜厚(最適膜厚)D3は、境界膜厚D2に2nmを加えた48nmとなる。そして、基板と同質のプリズム11の反射面13にマッチングオイルが塗布され、この上から基板が貼り付けられて分析素子チップ10が作成された。
 波長が635nmのレーザ光が、金膜で全反射するように分析素子チップ10に対して照射され、金膜の表面側に染み出てくるエバネッセント波(近接場光)の光量(シグナル信号強度)が光電子倍増管により測定された。その結果が以下の表4に示される。また、上記実施形態におけるシミュレーションによって最適膜厚D3(48nm)における増強電場の強度が求められる。この増強電場の強度からシグナル信号強度が導出される。その結果が表4に比較例として示される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
 理論的には、最も強いシグナル信号が最大電場膜厚D1(44nm)の金膜において得られ、このシグナル信号の強度よりも比較例(48nm)の金膜におけるシグナル信号の強度の方が小さくなる。しかし、実測では、最大電場膜厚D1の金膜よりも最適膜厚D3(48nm)の金膜におけるシグナル信号の強度の方が大きくなることが当該実施例において確認された。
 マグネトロンスパッタ法によって、材質がE48R(樹脂)の基板上に金膜が形成された。この基板と金膜との組み合わせでは、境界膜厚D2が38nm(表3参照)、最大電場膜厚D1が38nm(表1参照)となり、境界膜厚D2と最大電場膜厚D1とが等しい。そのため、基板上に形成される金膜の膜厚(最適膜厚)D3は、確実に膜構造とするために2nmの余裕をとって40nmとする。そして、基板と同質のプリズム11の反射面13にマッチングオイルが塗布され、この上から基板が貼り付けられて分析素子チップ10が作成された。
 波長が635nmのレーザ光が、金膜で全反射するように分析素子チップ10に対して照射され、金膜の表面側に染み出てくるエバネッセント波(近接場光)の光量(シグナル信号強度)が光電子倍増管により測定された。その結果が以下の表5に示される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
 この結果では、最適膜厚D3(40nm)の金膜において得られたシグナル信号強度が境界膜厚D2(38nm)の金膜において得られたシグナル信号の強度よりも大きくなるっている。これは、境界膜厚D2は、成膜レートに基づいて導出されるがこの成膜レートには測定誤差が含まれるため、境界膜厚D2の金膜が非膜構造の場合があるからである。この結果から、境界膜厚D2よりも最適膜厚D3を僅かに厚くすることにより、金膜が確実に膜構造となることが確認できた。
 プラズマ支援スパッタ法によって、材質がBK7(ガラス)の基板上に金膜が形成され、この金膜上にCMD膜が設けられた。この基板と金膜との組み合わせでは、境界膜厚D2が28nm(表3参照)、最大電場膜厚D1が28nm(表2参照)となり、境界膜厚D2と最大電場膜厚D1とが等しい。そのため、基板上に形成される金膜の膜厚(最適膜厚)D3は、確実に膜構造とするために2nmの余裕をとって30nmとする。そして、基板と同質のプリズム11の反射面13にマッチングオイルが塗布され、この上から基板が貼り付けられて分析素子チップ10が作成された。
 波長が635nmのレーザ光が、金膜で全反射するように分析素子チップ10に対して照射され、金膜の表面側に染み出てくるエバネッセント波(近接場光)の光量(シグナル信号強度)が光電子倍増管により測定された。その結果が以下の表6に示される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006
 この結果では、最適膜厚D3(30nm)の金膜において得られたシグナル信号強度が境界膜厚D2(28nm)の金膜において得られたシグナル信号の強度よりも大きくなるっている。これは、境界膜厚D2は、成膜レートに基づいて導出されるがこの成膜レートには測定誤差が含まれるため、境界膜厚D2の金膜が非膜構造の場合があるからである。この結果から、境界膜厚D2よりも最適膜厚D3が僅かに厚くされることにより、金膜が確実に膜構造となることが確認できた。
[実施の形態の概要]
 以上の実施形態をまとめると、以下の通りである。
 本実施形態に係る分析素子チップの製造方法は、表面プラズモン共鳴の共鳴角の変化に基づいて検体を分析する表面プラズモン共鳴分析装置、又は検体に含まれる蛍光物質が表面プラズモン共鳴に基づくエバネッセント波により励起されて発した蛍光を測定する表面プラズモン共鳴蛍光分析装置に用いられ、所定の面の面上に金属膜を形成したプリズムを備えた分析素子チップの製造方法であって、前記プリズムの所定の面の面上に金属膜を形成する成膜工程を備える。そして、前記成膜工程は、成膜時間と形成される金属膜の膜厚との関係である成膜レートが変化したときの膜厚である境界膜厚に基づく所定の膜厚となるように前記金属膜を形成する。
 このように成膜時における成膜レートから境界膜厚が求められ、この境界膜厚に基づく所定の膜厚となるように金属膜が形成されることにより、プリズムの所定の面の成膜領域全体を覆うように金属膜を構成する分子が付着した状態の金属膜が形成される。
 詳しくは、真空成膜におけるいずれの成膜方法によって金属膜が形成されても、金属膜がプリズムの成膜領域において金属分子の付着していない領域が存在する状態(非膜構造)から膜構造となるときに成膜レートが変化する。この成膜レートの変化に基づいて成膜方法に応じた境界膜厚が求められ、この境界膜厚に基づく所定の膜厚の金属膜が前記成膜方法によってプリズム上に形成されることにより、真空成膜におけるいずれの成膜方法によって形成された金属膜でも確実に膜構造となる。
 上記の分析素子チップの製造方法は、前記成膜レートに基づいて前記境界膜厚を求める境界膜厚導出工程と、前記金属膜に表面プラズモン共鳴が生じたときにその表面近傍の電場が最大となる当該金属膜の膜厚である最大電場膜厚を当該金属膜の屈折率及び消衰係数に基づいて導出する最大電場膜厚導出工程と、前記境界膜厚と前記最大電場膜厚とを比較する比較工程と、をさらに備える。そして、前記成膜工程では、前記比較工程において境界膜厚よりも最大電場膜厚が大きいと判断された場合には、最大電場膜厚に基づく膜厚を前記所定の膜厚とし、前記比較工程において境界膜厚が最大電場膜厚以下と判断された場合には、前記境界膜厚に基づく膜厚を前記所定の膜厚とすることが好ましい。
 かかる構成によれば、真空成膜におけるいずれの成膜方法によってプリズム上に金属膜が形成されても、確実に膜構造の金属膜が得られる。しかも、金属膜において生じた表面プラズモン共鳴に基づく当該金属膜の近傍の電場(増強電場)の強度が最大若しくは略最大となる。
 具体的に、最大電場膜厚よりも境界膜厚が小さい場合、最大電場膜厚に基づく膜厚(最大電場膜厚若しくは略最大膜厚)の金属膜がプリズム上に形成されることにより境界膜厚よりも大きな膜厚の金属膜が形成される。このため、この金属膜は確実に膜構造となる。また、金属膜の膜厚が最大電場膜厚若しくは略最大電場膜厚であるため、当該金属膜における増強電場の強度は最大若しくは略最大となる。
 一方、境界膜厚よりも最大電場膜厚が小さい場合、最大電場膜厚の金属膜がプリズム上に形成されるとこの金属膜は非膜構造となる。このため、略境界膜厚の金属膜が形成されることにより、この金属膜は膜構造となる。しかも、境界膜厚に基づく膜厚とすることにより、当該成膜方法において膜構造となる略最小膜厚の金属膜がプリズム上に形成される。このため、形成された金属膜において、確実な膜構造の実現と増強電場強度の確保との両立を図ることができる。具体的に、金属膜の膜厚が最大電場膜厚よりも大きくなるにしたがって当該金属膜における増強電場の強度が小さくなる(図2参照)。このため、膜構造となる膜厚のうちの略最小膜厚の金属膜が形成されることにより、当該金属膜における増強電場の強度が最大若しくは略最大となる。
 尚、前記比較工程において最大電場膜厚よりも境界膜厚が大きいと判断された場合に、前記成膜成工程では、前記境界膜厚に所定の値を加えて前記所定の膜厚とすること、が好ましい。成膜レートには測定誤差が含まれるため、この成膜レートに基づく境界膜厚よりも所定の膜厚が厚くされることによって、より確実に膜構造の金属膜が得られる。
 また、前記成膜工程は、前記境界膜厚、及び前記金属膜に表面プラズモン共鳴が生じたときにその表面近傍の電場が最大となる当該金属膜の膜厚である最大電場膜厚のうちの厚い膜厚となるように前記金属膜を形成してもよい。
 かかる構成によっても、真空成膜におけるいずれの成膜方法によってプリズム上に金属膜が形成されても、確実に膜構造の金属膜が得られる。また、金属膜における増強電場の強度が最大若しくは略最大となる。
 分析素子チップの製造方法において、プリズム上に金属膜が形成されるときの前記成膜工程は、プラズマ支援型スパッタ法、マグネトロンスパッタ法、イオンアシスト蒸着法、電子銃加熱真空蒸着法、又は抵抗加熱真空蒸着法のいずれ1つによって成膜すればよい。
 具体的には、前記成膜工程がプラズマ支援型スパッタ法による成膜である場合には、前記境界膜厚を28nmとし、前記成膜方法がマグネトロンスパッタ法による成膜である場合には、前記境界膜厚を38nmとし、前記成膜方法がイオンアシスト蒸着法による成膜である場合には、前記境界膜厚を40nmとし、前記成膜方法が電子銃加熱真空蒸着法による成膜である場合には、前記境界膜厚を46nmとし、前記成膜方法が抵抗加熱真空蒸着法による成膜である場合には、前記境界膜厚を52nmとする。
 境界膜厚をこのような値とすることにより、プリズム上に形成される金属膜において、確実な膜構造の実現と増強電場の強度の確保との両立が好適に図られる。
 以上のように、本発明に係る分析素子チップの製造方法は、表面プラズモン共鳴分析装置に用いられる分析素子チップ、及び表面プラズモン共鳴蛍光分析装置に用いられる分析素子チップの製造に有用であり、プリズム上に形成される金属膜の成膜方法に関わらず、膜構造の金属膜を形成するのに適している。

Claims (10)

  1.  表面プラズモン共鳴の共鳴角の変化に基づいて検体を分析する表面プラズモン共鳴分析装置、又は検体に含まれる蛍光物質が表面プラズモン共鳴に基づくエバネッセント波により励起されて発した蛍光を測定する表面プラズモン共鳴蛍光分析装置に用いられ、所定の面の面上に金属膜を形成したプリズムを備えた分析素子チップの製造方法であって、
     前記プリズムの所定の面の面上に金属膜を形成する成膜工程を備え、
     前記成膜工程は、成膜時間と形成される金属膜の膜厚との関係である成膜レートが変化したときの膜厚である境界膜厚に基づく所定の膜厚となるように前記金属膜を形成することを特徴とする分析素子チップの製造方法。
  2.  前記成膜レートに基づいて前記境界膜厚を求める境界膜厚導出工程と、
     前記金属膜に表面プラズモン共鳴が生じたときにその表面近傍の電場が最大となる当該金属膜の膜厚である最大電場膜厚を当該金属膜の屈折率及び消衰係数に基づいて導出する最大電場膜厚導出工程と、
     前記境界膜厚と前記最大電場膜厚とを比較する比較工程と、をさらに備え、
     前記成膜工程では、前記比較工程において境界膜厚よりも最大電場膜厚が大きいと判断された場合には、最大電場膜厚に基づく膜厚を前記所定の膜厚とし、前記比較工程において境界膜厚が最大電場膜厚以下と判断された場合には、前記境界膜厚に基づく膜厚を前記所定の膜厚とすることを特徴とする請求項1に記載の分析素子チップの製造方法。
  3.  前記比較工程において最大電場膜厚よりも境界膜厚が大きいと判断された場合に、前記成膜成工程では、前記境界膜厚に所定の値を加えて前記所定の膜厚とすることを特徴とする請求項2に記載の分析素子チップの製造方法。
  4.  前記成膜工程は、前記境界膜厚、及び前記金属膜に表面プラズモン共鳴が生じたときにその表面近傍の電場が最大となる当該金属膜の膜厚である最大電場膜厚のうちの厚い膜厚となるように前記金属膜を形成することを特徴とする請求項1に記載の分析素子チップの製造方法。
  5.  前記成膜工程は、プラズマ支援型スパッタ法、マグネトロンスパッタ法、イオンアシスト蒸着法、電子銃加熱真空蒸着法、及び抵抗加熱真空蒸着法のいずれ1つによって成膜することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の分析素子チップの製造方法。
  6.  前記成膜工程はプラズマ支援型スパッタ法による成膜であり、前記境界膜厚は28nmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の分析素子チップの製造方法。
  7.  前記成膜方法はマグネトロンスパッタ法による成膜であり、前記境界膜厚は38nmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の分析素子チップの製造方法。
  8.  前記成膜方法はイオンアシスト蒸着法による成膜であり、前記境界膜厚は40nmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の分析素子チップの製造方法。
  9.  前記成膜方法は電子銃加熱真空蒸着法による成膜であり、前記境界膜厚は46nmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の分析素子チップの製造方法。
  10.  前記成膜方法は抵抗加熱真空蒸着法による成膜であり、前記境界膜厚は52nmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の分析素子チップの製造方法。
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