JP2009210495A - 円二色性を持つ媒体測定表面プラズモン共鳴センサー、円二色性測定法及び測定装置 - Google Patents

円二色性を持つ媒体測定表面プラズモン共鳴センサー、円二色性測定法及び測定装置 Download PDF

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Abstract

【課題】表面プラズモン共鳴(SPR)センサーは、金属表面や界面付近の屈折率(あるいは
誘電率)とその変化を高感度で測定できるセンサーで、様々な化学物質の相互作用を容易に計測出来る為、高感度で且つリアルタイムで計測できる「化学センサー」として、バイオ関連の研究者に利用されつつあるが、直線偏光を用いた従来のSPRセンサーでは円二色
性は検出できなかった。
【解決手段】本SPRセンサーではその金属表面に単一あるいは複数の周期性を持つ形状構
造を形成し、その金属部位に外部磁場を印加することで、周期的な形状構造の周りにプラズモンの円偏波を誘起させ、そこからのエバネッセント波と光学活性物質との相互作用で円二色性を検出するものである。これにより光学活性を持つ媒体の円二色性測定が可能となり、糖、蛋白質、アミノ酸などの有機物質の光学異性体であるL体、D体の区別が可能となる。
【選択図】図2

Description

本発明は、円二色性を持つ媒体測定表面プラズモン共鳴センサー、表面プラズモン共鳴を利用した円二色性を持つ媒体測定法及び表面プラズモン共鳴円二色性測定装置に関する。また、本発明は、キラルな物質を高速且つ簡便にスクリーニングする技術、それに使用する装置、方法に関する。
生体内で起こる様々な分子間の相互作用を、ノンラベル・リアルタイムに検出する表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance, SPR)現象を応用したモニタリングシステムは、1990年代に、抗原抗体反応のモニタリングを基本にスタートし、表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance, SPR)センサーとして広く研究が行われてきた。SPRセンサ
ーは、金属表面や界面付近の屈折率(あるいは誘電率)とその変化を高感度で測定できるセンサーである。SPRバイオセンサーは、金属表面上約1μmという限られた範囲内で起こ
る反応を、結合した物質固有の誘電率変化によりモニタリング出来る為、特異的結合反応をリアルタイムに検出することができ、「結合の強さが判る」から「結合の速さまで判る」という、これまでにない画期的な解析装置を提供する。従来の化学センシングやバイオセンシングの技術を、このセンサー表面の化学修飾技術と組み合わせることにより、様々な化学物質の相互作用を容易に計測出来る為、高感度で且つリアルタイムで計測できる「化学センサー」として、バイオ関連の研究者に利用されつつある。SPRセンサーの基本原
理の解説並びにリアルタイム測定については、ぶんせき、10, pp.492-499 (2006) 〔非特許文献2〕を参照できる。SPRセンサーの主な用途は、蛋白質、核酸、糖、脂質、細胞な
どの結合解析や、レセプタ・リガンドアツセイ、ノンラベル・アフィニティ解析、各種バインディングアツセイ、細胞応答等における解離定数、親和性定数、解離速度定数、結合速度定数の測定に用いられる。
一方、光学活性液体(キラル液体)の光学異方性を評価する方法として円二色性による評価法があるが、この評価法は測定媒体に右回りの楕円偏光と左周りの楕円偏光を照射し、その吸光度差を検出する方法である為、直線偏光を用いた従来のSPRセンサーでは円二
色性は検出できなかった。すなわち、SPRセンサーはバイオ化学センサーとして注目を集
めているが、表面プラズモンを励起する為には、P偏光を入射する必要があり、S偏光では励起できない。従って、これらの有機物媒体の円二色性は測定できない。
表面プラズモン共鳴現象による材料評価技術と、円二色性による材料評価技術とは、それぞれ別個の技術として扱われており、これまで表面プラズモン共鳴出力に対し円二色性をもたせた評価技術を扱うものは見当たらない。光学活性液体(キラル液体)に入射した光は右、左回りの円偏光に別れて屈折あるいは反射することは知られている〔PRL, 97, 173002-1〜-4 (2006): 非特許文献2〕。したがって、この原理を用いれば透過型で旋光性の測定を行うことは可能と考えられるが、外から入射した光が光学活性溶液の表面で反射した場合には二つに分かれることはないし、表面プラズモン共鳴の場合、伝搬光をプリズムに全反射する角度で入射したときプリズム表面に発生できるエバネッセント光を利用する技術であるから、表面プラズモン共鳴利用のエバネッセント波を用いた旋光性の測定は行えない。
特表2005-524052号公報〔特許文献1〕には、キラル分子の高速スクリーニング技術が
開示されているが、その電磁波を印加する円二色性の検出方法は、表面プラズモン波による検出技術ではない。
特表2005-524052号公報 ぶんせき、10, pp.492-499 (2006) PRL, 97, 173002-1〜-4 (2006) OPTICS LETTERS, Vol. 17, No. 12, pp.886-888 (1992)
生体で活性を示す多くの物質は、キラルな物質であり、そうした物質を合成したり、その生理活性を調べるにあたっては、迅速且つ正確にそれらが光学的に右旋性のものか、左旋性のものかを判別することが求められる。つまり、エナンチオマー的に純粋な組成のものか否か、さらにその光学的な純度につき、それを測定したり、スクリーニングすることが必要である。例えば、医薬品などでは、キラリティーが治療活性、生物活性や毒性などの副作用と密接な関係を有する場合があり、円二色性を持つ媒体を測定する必要がある。また、医薬、農薬などの製造プロセスでは、エナンチオマー的に純粋な化合物に光学分割したり、エナンチオ選択的な合成プロセスを実施するので、生成物の光学的な純度などを検査することが求められる。
しかしながら、膨大な数の微量の試料につき、迅速且つ正確に、円二色性の測定を行う技術の開発が求められている。表面プラズモン共鳴現象を応用した測定法は、さまざまな物質を測定できることから注目を集めている。これまでの表面プラズモンを用いた共鳴センサーは媒質の屈折率の測定を精度よくできる。しかし表面プラズモンを励起する為には、P偏光を入射する必要があり、媒質の円二色性の測定ができないという欠点があった。
そのため糖、タンパク質などのL体・D体の区別をすることができなかった。こうした問題を解決して、円二色性を持つ媒体を、表面プラズモン共鳴現象を応用したSPRセンサーで
測定する技術の開発が求められている。
本発明者は、上記問題を解決すべく鋭意研究を進めた結果、光学活性を持つ液体表面で左右円偏光の吸収の差、すなわち、円二色性を測定できるとの報告〔OPTICS LETTERS, Vol. 17, No. 12, pp.886-888 (1992): 非特許文献3〕を応用すれば、SPRセンサーの系で
円二色性を測定できるのではと考えて、さらに工夫を加え、その表面に微細な周期的な構造を有している金属薄膜(金属薄膜を配置したチップ又は金属薄膜配置アレイ)を磁場印
加の条件の下で表面プラズモンを励起すると、当該金属薄膜に光学活性な媒体(キラルな媒体)が接していると該SPRセンサーの出射光に円二色性が観察される、すなわち、表面
プラズモン共鳴を利用した円二色性を持つ媒体測定ができるとの着想に基づいて、本発明を完成した。
本発明は、次なるものを提供している。
〔1〕表面プラズモンが生成される金属部位に単一あるいは複数の周期的な構造が形成せしめられており、該金属部位に外部磁場をかけることで、楕円偏波の表面プラズモンを励起させ、これにより光学活性を持つ媒体の測定を可能とすることを特徴としている表面プラズモン共鳴センサー。
〔2〕表面プラズモン共鳴センサーの金属表面に単一あるいは複数の周期性を持つ形状の構造を形成し、該金属部位に外部磁場を印加することで、得られるエバネッセント波と測定対象物との相互作用で生ずる屈折率の変化に円二色性を付与せしめて検出することを特徴とする光学活性を持つ媒体測定法。
〔3〕測定対象物を含有する流体試料を、上記〔1〕に記載の表面プラズモン共鳴センサーの表面(金属表面)に供給し、該表面プラズモン共鳴センサー表面に測定対象物を配置した後、該表面プラズモン共鳴センサーに光線(電磁波)を照射するとともに、該表面プラズモン共鳴センサーの金属部位に磁場を印加し、磁場印加条件下共鳴的に励起された表面プラズモンに由来する出射光(出射波)を測定し、測定対象物の円二色性を測定することを特徴とする測定対象物の光学特性測定法。
〔4〕金属部位に印加する磁場が、該表面プラズモン共鳴センサーの金属薄膜の平面に対して垂直上向きと垂直下向きとの両方であることを特徴とする上記〔2〕又は〔3〕記載の方法。
〔5〕上記〔1〕に記載の表面プラズモン共鳴センサー、該センサーに外部磁場を印加する装置、及び、該センサーよりの出射光を分析する装置を備え、光学活性媒体から得られた出射光を分光・検出することで円二色性を測定することを特徴とする測定装置。
〔6〕上記〔1〕に記載の表面プラズモン共鳴センサー又は上記〔2〕〜〔3〕のいずれか一に記載の方法を用いて光学活性媒体から得られた出射光を分光・検出する手段を有し、円二色性を測定することを特徴とする測定装置。
本発明は、磁場を印加した表面プラズモン共鳴の反射光出力に対し円二色性を得ることを特徴としている。
本発明によれば、表面プラズモンを用いた共鳴センサー(SPRセンサー)で円二色性が
測定できる。本発明の磁場印加型SPRセンサー及びそれを用いた測定法により、キラルな
分子を含めたキラル物質の円二色性を迅速、安価に、そして短時間で極めて微量の検体を多数処理することが可能になり、さらに優れたS/Nでもって測定することができる。
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
本発明は、光学活性を有する媒質(あるいは光学活性を有する物質)の円二色性を測定可能とする表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance, SPR)センサーを提供する。SPRセンサーは、表面プラズモン共鳴現象を利用して物質を測定するセンサーであり、実
際には、金属表面・界面付近の屈折率(あるいは誘電率)とその変化を高感度に測定できるセンサーである。本発明のSPRセンサーは、表面プラズモンが生成される金属部位に単
一あるいは複数の周期的な構造が形成せしめられており、該金属部位に外部磁場をかけることで、励起せしめられた表面プラズモンを偏波(又は偏光)とせしめることが可能であり、これにより光学活性を持つ媒体の測定を可能とすることを特徴としているものである。
プラズモンとは、金属中にある自由電子からなる荷電粒子の集団的な振動(プラズマ振動)で伝わる波で、縦波(疎密波)として伝播するが、このプラズマ振動の量子を量子力学的に粒子とみなして呼称したものである。表面プラズモンとは、表面に局在化したプラズマモードのことを指している。
SPRセンサーでは、表面プラズモンとは、金属の表面を走るプラズモンのことを言い、
金属表面内の縦波プラズモンが、表面から遠ざかるにつれて減衰する電磁波(エバネッセント波, evanescent wave)と協調しながら一体となって表面を伝播する。つまり、エバ
ネッセント波は、単独で安定に存在できないが、金属表面内側で疎密波として振動する自由電子と協調的な関係を得ることで、安定に存在できると言える。言い換えれば、表面プラズモンは、金属表面を境界として、外部のエバネッセント波と内部の縦波プラズモンの協調関係が成立して初めて安定に存在する。このエバネッセント波を外部的に表面プラズモンに照射した場合、その波数が一致していると、位相整合により共振現象を起こして共鳴することとなる。かくして、エバネッセント波で表面プラズモンを共鳴的に励起する現
象を、一般に表面プラズモン共鳴現象と呼んでいる。
表面プラズモンの波数は、自由空間を伝搬する光の波数とは合わないため、伝搬光では表面プラズモンを励起できず、普通、伝搬光をプリズムに全反射する角度で照射したときにプリズム表面に発生できるエバネッセント波で位相整合をとる。また、表面プラズモンの電界分布についてみると、エバネッセント波である光も、表面プラズモンの電界と一致している必要があり、それは表面プラズモンの電界成分のある面を入射面とし、電界成分がその入射面に平行な(parallel)入射光で実現される。そのような光はP偏光と呼ばれる
直線偏光であり、表面プラズモンを励起するにはP偏光を入射する必要がある。P偏光に垂直な(senkrechi)直線偏光は、S偏光であるが、表面プラズモンをS偏光では励起できない
SPRセンサーの測定原理は、金属の表面、通常は、金属薄膜の表面に分子などの屈折率
が大きな物質が吸着すると(吸着して吸着量が増加すると)、金属表面近傍の屈折率が変化し、その影響で共鳴角がずれる。SPR測定において、反射率と入射角の関係を示すSPRカーブは、屈折率変化により起こる信号を解析する基本的な概念である。理論的SPRカーブ
の式を最初に導いたのはクレッチマンであり、そのカーブは共鳴角と通常呼ばれている角度を最小反射率の所に有している。つまり、共鳴角とは、P偏光を持つ入射光に対する反
射光の強度(反射率)に対する入射光の角度(入射角)をプロットしたときに観察される一つの反射率の極小値に対応する角度を指している。クレッチマンによる理論式により、SPRの信号は、共鳴角の変化を観測することによって得られている。こうした方法を減衰
全反射(attenuated total reflection, ATR)法、あるいは、クレッチマン減衰全反射法と呼ばれ、それを実現する光学配置は、ATR配置、又はクレッチマン配置などと呼ばれてい
る。SPRセンサーでは、この共鳴角の角度の変化を測定する。該共鳴角を時間的に追跡し
ながら測定することにより、吸着量の速度変化が測定できる。SPRセンサーでは、センサ
ーチップ表面・界面近傍の屈折率(あるいは誘電率)の変化を物理的に測定しているのである。
上記したように、従来、SPRセンサーを使用したのでは、表面プラズモンを励起するの
にP偏光を入射する必要があり、S偏光では励起できない。よって、試料の円二色性を測定することはできない。
円二色性(circular dichroism, CD)あるいは円偏光二色性とは、その内部構造がキラルな物質が円偏光(circularly polarized light)を吸収する際に左円偏光(left-hand circularly, LHC)と右円偏光(right-hand circularly, RHC)に対して吸光度に差が生じる現象
のことである。例えば、直線偏光(linearly polarixed light)は同じ振幅を持つ左円偏光と右円偏光の和と見なすことができる。よって、直線偏光が円偏光二色性を持つ物質中を通過すると、その直線偏光を構成していた左円偏光と右円偏光に振幅の差が生じるため楕円偏光に変化する。また、さらに旋光性により楕円の軸の回転も起こる。つまり、光学活性媒体に直線偏光を入射すると楕円偏光(elliptically polarized light)となって出てくる。この楕円偏光になるということが円二色性の表れで、主軸の回転は旋光性と呼ばれている。
偏光(polarization)とは、電場及び磁場が特定の方向にしか振動していない光のことで、直線偏光、円偏光、楕円偏光がある。直線偏光とは、電場(及び磁場)の振動方向が一定であるものを指し、円偏光とは、電場(及び磁場)の振動が伝播に伴って円を描くものを指し、回転方向により、左円偏光と右円偏光とがある。偏光を受け止める側からみて左回り(すなわち、光の進む方向に向かって時計回り(進む方向に右回り))のものを左円偏光といい、偏光を受け止める側からみて右回り(すなわち、光の進む方向に向かって反時計回り(進む方向に左回り))のものを右円偏光という。楕円偏光は、直線偏光と円偏光の一次結合で表現されるもので、最も一般的な偏光状態のもので、電場(及び磁場)の
振動が時間に関して楕円を描くもので、左楕円偏光と右楕円偏光とがある。
旋光(optical rotation)とは、直線偏光がある物質中を通過した際に回転する現象である。この性質を示す物質や化合物は、旋光性あるいは光学活性を持つと言われる。不斉な分子(糖など)の溶液や、偏極面を持つ結晶(水晶)などの固体、偏極したスピンをもつ気体原子・分子で起こる。光学活性な物質中では、左円偏光と右円偏光の屈折率が異なることから、ある距離だけ該光学活性な物質を通過した後には、二つの偏光に位相差が生じ、結局、偏光はその位相差分の角度だけ回転することとなる。一般的に、屈折率(refractive index)は波長に依存する、すなわち、光の周波数に依存する。屈折率は、直進する波(光線など)が異なる媒質の境界で進行方向の角度を変える割合のことであり、スネルの法則により光線の角度と対応づけられている。屈折率は、吸収のある物質の場合には吸収率を虚数部に加えて複素屈折率で表すのが便利である。
光の波長変化に伴う偏光の回転量変化は、旋光分散(optical rotatory dispersion, ORD)と呼ばれる。旋光分散は、偏光の波長の変化につれて旋光度が変化する現象のことであり、物質の屈折率を複素数で表わした場合、旋光性は、上記したように、左右円偏光という二つの偏光に対する屈折率の違いによるものであり、複素屈折率の実部で表わされる。これに対して、左右円偏光の吸収の差である円偏光二色性は複素屈折率の虚部で表わすことができる。円二色性と旋光性は、クラマース・クローニッヒの関係式(Kramers-Kronig relation)により、全波長における複素屈折率の実部がわかれば虚部を、逆に全波長にお
ける虚部がわかれば実部を計算することができ、互いに独立ではない。
キラルな物質とは、キラリティー(chirality)を持つ物質のことを指すもので、キラリ
ティーとは、分子の場合、その結合の組み換えなしには分子をそれ自身の鏡像に重ね合わせることができない、という性質を表す化学用語である。キラリティーを持つ分子をキラルな分子、またはキラル分子と呼ぶ。鏡像と元の分子が重ね合わせ可能な場合((キラリティーを持たない場合)、アキラル(achiral)であるという。キラル分子は、ちょうど右
手と左手のように互いに鏡像である二つの異性体を持ち、これら2つの異性体はエナンチオマー (enantiomer)、対掌体、あるいは鏡像異性体であるという。エナンチオマーは立
体異性体の一種である。キラル中心、キラル軸とは、「鏡像と重ならないような空間配置となるように、置換基(又はリガンド)をその周囲に持つ」原子、軸と定義されている(IUPAC)。
ブドウ糖、ショ糖、酒石酸、L-, D-各種アミノ酸等は光学活性を持っており、L-, D-体間では化学的性質はよく似ているが、生体内ではその役割がはっきりと違うので、医療、薬品、食品などで両者を区別することは重要である。これらの光学活性媒体の検出は、主に円二色性で調べている。
光学活性液体(キラル液体)中に入射した光は、該媒体中を伝搬する場合に旋光するばかりでなく、該光学活性媒質とアキラルで等方性の媒質との間の境界での屈折、あるいは、反射により、左円偏光と右円偏光に別れて進むことが観察されるとの報告がなされている(PRL, 97, 173002-1〜4 (2006))。よって、これを利用すれば、透過型で旋光性の測定
を行うことができるが、外から入射した光が光学活性液体の表面で反射した場合には、左円偏光と右円偏光に別れるなどといった現象は生じないことから、旋光性の測定を行うことはできない。すなわち、従来型の伝搬光をプリズムに全反射する角度で照射したときにプリズム表面に発生できるエバネッセント波を用いての、旋光性の測定を行うことはできないこととなる。
本発明は、SPRセンサーの金属表面に単一あるいは複数の周期性を持つ形状(穴など)
構造を形成し、その金属部位に外部磁場を印加することで、周期的な形状構造に起因してプラズモン偏波を誘起させ、そこからのエバネッセント波と有機体との相互作用で屈折率
を検出するものである。これにより光学活性を持つ媒体の円二色性測定が可能となり、糖、蛋白質、アミノ酸などの有機物質の光学 異性体であるL体、D体の区別が可能となる。
本発明の表面プラズモン共鳴センサーは、表面プラズモンが生成される金属部位に単一或いは複数の周期的な穴などの構造を持たせ、その金属部位に外部磁場を印加する手段(例えば、外部磁場)を備え、該金属部位に磁場をかけることで楕円偏波の表面プラズモンを励起させ、これにより光学活性を持つ媒体の測定を可能とするものである。
SPRセンサーにおいては、通常、50nm程度の厚さを有する金属薄膜(金、若しくは銀等
)を高屈折率のプリズムの底面に蒸着するなどして成膜する。成膜は、通常、真空蒸着、スパッタリングなどで実施される。金属薄膜としては、金薄膜を好適に使用されている。入射波長、プリズム屈折率などの光学定数を考慮して、最適な膜厚を1nm以下の精度で決
定し、コーティングされる。多くの場合、金とガラス基板の間にクロムなどの金属薄膜を1nm程度コーティングされていてよい。そして、プリズム側から金属薄膜に向けて臨界角
以上の角度で所定の光を入射させる。金属薄膜は、50nm程度では半透明であるので、プリズム側から入射した光は金属薄膜を透過して、プリズムと反対側の金属薄膜の表面に到達し、プリズムと反対側の金属薄膜の表面にエバネッセント場を発生する。光の入射角を調整することにより、エバネッセント場の波数と表面プラズモン共鳴の波数を一致させて、金属薄膜の表面に表面プラズモン共鳴を励起できる。この場合、表面プラズモン共鳴の波数は、金属薄膜の誘電率と金属薄膜から見てプリズムと反対側の表面に固定された検体との屈折率に依存している。従って、検体の屈折率及び誘電率を調べることができる。代表的には、このように光学系と検体とが金属薄膜を境にして相互に反対側に位置しているようにしてセンサーとして構築できる。
SPRセンサーは、光ファイバーを使用して構築したものも知られている(例えば、BIACORE probe, GE Healthcare, General Electric Company又はGEヘルスケアバイオサイエン
ス株式会社)。該光ファイバー使用SPRセンサーでは、通常、光ファイバーの先端部外周
面のクラッド(clad)が除去され、光ファイバーの先端の端面をきれいにカットするか若しくは磨いた上で、この端面に銀がコーティングされ、反射ミラーとされている。また、この光ファイバーの先端部外周面に金属薄膜(金若しくは銀等)がコーティングされる。光ファイバーの先端部外周面の金属薄膜は、さらに誘電体膜で覆われていてもよい。また、光ファイバーの他端部側には所定の光源が配設されており、光ファイバー内に光を導入できるようになっている。
本SPRセンサーでは、金属薄膜、例えば、金薄膜、銀薄膜など、さらには強磁性金属薄
膜を用いる。強磁性誘電体に金薄膜を使用することもできる。これらをプリズムに用いたATR配置で表面プラズモンを励起する。本発明では、いずれも金属薄膜に周期的な穴など
の微細構造を持たせ、外部磁場で楕円偏光を誘発させる。金属薄膜に周期的な穴などの微細構造を持せる手法は、当該分野で知られた方法を採用できるが、例えば、薄膜形成技術(パターン形成技術を含む)が利用でき、それらの技術とし物理的反応及び/又は化学的反応を利用したものが挙げられる。代表的な薄膜形成技術としては、物理的気相蒸着法(physical vapor deposition, PVD)、例えば、スパッタリング、分子線エピタキシー法(MBE)など、化学的気相堆積法(chemical vapor deposition, CVD)、例えば、熱CVD法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、MOCVD法、原子層堆積法(ALD)、レジストモールド・ゾルゲル法などが包含されてよく、さらに、フォトリソグラフィー、例えば、ナノインプリントリソグラフィー(ナノインプリント)、エッチング、反応性エッチングを利用するスパッタ・エッチング、バイアススパッタ法なども使用できる。
金属薄膜に構築する周期的な微細構造としては、周期的凹構造、周期的凸構造、周期的凹凸構造、周期的孔構造、周期的円柱構造、周期的山構造などが挙げられる。周期的凸構造としては、多数の凸部が形成されているものが包含される。凸部の形状としては、丘状
、山状、円柱状、角柱状、円錐、三角錐、四角錐などの角錐状などが包含され、さらには周期的凸の形状としては、条状凸部、条状山部、波条状凸部、格子状凸部なども包含される。例えば、単位胞として凸形状が周期的に並ぶように配置された構造をもつAu薄膜などが挙げられる。配置は、異方的又は非等方的に配置されていてよく、例えば、異方的又は非等方的に孔が配置されている場合を包含する。典型的な例では、単位胞として左旋回の卍(左まんじ)、右旋回のまんじ(裏卍)、十字などの凹凸形状が周期的に並ぶように配置された構造をもつ金属薄膜などであってもよい。例えば、単位胞として左卍の凹凸形状が周期的に並ぶように配置された構造をもつAu薄膜、単位胞として右まんじ(裏卍)の凹凸形状が周期的に並ぶように配置された構造をもつAu薄膜などが挙げられる。また、該単位胞としては、左渦巻き、右渦巻き、「『」、「』」、「┳」、「┻」、「┣」、「┫」、「┛」、「┗」、「⊂」、「⊃」、「∧」、「∨」、「<」、「>」などの形状、スプリットリング、スプリット長方形又は正方形、それらの同心配置体などであってもよい。さらに、電子線リソグラフィーにより作製された金属薄膜人工キラル構造のものであってよい。
本発明で使用される金属薄膜としては、例えば、周期的に配列された凹形状又は開孔がある金属薄膜、例えば、六角形の開孔が三角格子状に周期配列されているAu薄膜、直方体の開孔が周期的に配列された金属薄膜、ナノバンプ(突起構造)、ナノメッシュ、又はナノベルトの配列構造を有する金属薄膜などが包含されてもよい。本発明では、金属/誘電体複合体の周期ナノ構造のものも、使用できる。本SPRセンサーでは、該周期的な穴など
の微細構造を持たせたものは、典型的には、パターン(模様)の付けられた金属薄膜のアレイ(またはアレイチップ)であってよく、例えば、Physical Review Letters, 98, 077401-1〜-4 (2007) (PRL, 98, 077401-1〜-4 (2007)), Appl. Phys. Lett., Vol. 84, No.
16, pp.3112-3114 (2004), PRL, 95, 227401-1〜-4 (2005)(これらの文献の内容は、本明細書の一部としてここに含めて解釈されるべきものである)などに開示されたものなどが挙げられる。
本SPRセンサーで、該周期的な微細構造を持っている金属薄膜としては、微細な周期的
キラリティ構造を持たせた金属薄膜のものが挙げられ、例えば、誘電体基材(例えば、溶融シリカ基材)の上にキラルなナノ構造を持たせた金薄膜(例えば、95〜100nm程度の膜
厚の金の層)を配置したアレイが挙げられる。このものは、例えば、電子ビームリソグラフィーとアルゴンスパッタ・エッチング法により製造できる。該ナノ構造は、例えば、80nm程度のライン幅を有しているものである。また、該金薄膜は、例えば、23nm程度のクロムが上の載っているものであってもよい。本SPRセンサーで、該周期的な微細構造を持っ
ている金属薄膜としては、強磁性金属薄膜に周期的に穴を開けたものを挙げることもでき、例えば、基材(例えば、ガラス基材)の上のコバルトフィルム(例えば、70nm程度の膜厚)からなるアレイ(例えば、5×5mm2程度の面積の正方形の形状)で、例えば、約150nmの孔径と格子定数(lattice constant)として約300nmを持っているパターン構造を持たせ
たCo薄膜のホール付きアレイが挙げられる。SPRセンサー用アレイは、例えば、Nanoex Corp. (米国、ニュージャージー、プリンストン)などから入手することもできる。さらに、本SPRセンサーで使用されるアレイとしては、強磁性誘電体薄膜(例えば、118nm程度の膜厚)の上に周期的に配列された四角い穴を開けてある金薄膜(例えば、680nm程度の膜厚
)からなる有孔アレイも包含される。該強磁性誘電体としては、鉄酸化物を主成分とするフェライト、例えば、ガーネットフェライトなどが挙げられる。代表的な鉄ガーネットとしては、希土類鉄ガーネット(Rare-earth Iron Garnet, RIG)であり、例えば、イットリ
ウム鉄ガーネット(Yttrium Iron Garnet, YIG)、BiでYを置換した鉄ガーネット(Bi-YIG)
などが挙げられる。
本発明では、本SPRセンサーで該周期的な微細構造を持たせてある金属薄膜に磁場を印
加することで楕円偏光を誘発させる。本SPRセンサーの金属薄膜部に磁場がかけられると
プラズモン偏波が誘起せしめられることとなる。該金属薄膜への磁場の印加は、例えば、外部磁場により行うことができる。外部磁場の生成は、例えば、電磁石を用いることができ、好適には、電磁石を用いて磁場を反転することにより、信号−雑音比(signal to noise ratio: S/N ratio:SNR, S/N比、S/N)を稼ぐことが可能である。S/Nとは、真の信号
量とそれに重なっているノイズ量との比を示す。
本発明では、当該SPRセンサーで微細な構造を持たせた金属薄膜を磁場印加の条件の下
で表面プラズモンを励起すると自ら楕円偏波となり、それの伴うエバネッセント波が生成され、それを利用して、有機物媒体の円二色性を測定することが可能である。
図1に、本発明の円二色性を測定できるSPRセンサーの例を示す。
本発明では、該SPR測定において、センサーの金属表面に単一あるいは複数の周期性を
持つ形状の構造を形成し、該金属部位に外部磁場を印加することで、周期的な配列構造に起因してプラズモンの偏波を誘起させ、得られるエバネッセント波と測定対象有機体との相互作用で生ずる屈折率の変化を検出し、光学活性を持つ媒体を測定することを特徴としている。本方法で、有機物媒体の円二色性を測定することが可能である。
典型的な態様では、該SPR測定においては、上記SPRセンサーで該周期的な微細構造を持たせてある金属薄膜に上向き磁場と下向き磁場を周期的に印加し、表面プラズモンの偏波を周期的に変える。すると、円二色性を示すキラルな物質の試料は右回りと左周りの偏光で吸収に違いがあることから、その差を円二色性として検出できることとなる。測定概念を図2に示す。
本SPRセンサーを使用する測定装置では、光照射手段が設けられている。該光照射手段
は、所定の波長帯域の光を照射するものである。具体的には、光照射手段に所定の光源と、集光レンズ、センサー側シャッタ、偏光子などが設けられていてよい。光を照射する光源は、発光ダイオード、ハロゲンランプ、ナトリウムランプ、キセノンランプなどを好適に使用できる。光源であるハロゲンランプには、種々の波長の光が含まれており、測定中はセンサーに向けて所定の光を照射している。必要に応じて、プラズモン共鳴に関与しない帯域の光は、光学フィルターで除かれることもできる。なお、光源はハロゲンランプに限定されるものではなく、所定の波長帯域の光を含むものであればよい。また、予め、試料により減衰する光の波長がある程度推測できる場合には、その推測された波長に近い波長の光のみを照射できる光源を用いるようにしても良い。光源の動作は、測定装置本体内の主制御部によって制御される。
該光源から光が照射される方向には、通常、集光レンズが装備されている。この集光レンズは、光源から照射された光を一定割合で集光し、センサー部に導く働きをする。この集光レンズは、光源からの光に応じて適切なものが選択される。具体的には、光源の光が発散光である場合には、これを収束させるような機能を有するレンズを用いる。集光レンズの下流側には、ビームスプリッタを配置して、入射された光を分岐させる役割を果たさせることもできる。ビームスプリッタは、いわゆるハーフミラー等によって構成されているものが挙げられる。装置には、必要に応じて、所定の反射ミラーやシャッタを設けてよい。シャッタは、SPRセンサー部側への光の照射及び非照射を制御するものも包含され、
例えば液晶シャッタ等が用いられてよい。液晶シャッタとは、液晶パネルに電圧を印加することにより、光を透過させたり遮断したりすることができるものである。SPRセンサー
をはさんで出射側には分光器側集光レンズが設けられている。この分光器側集光レンズは、SPRセンサーからの出射光を集光して、光を効率よく分光器側へ伝達する役割を有して
いる。
本発明の測定装置では、SPRセンサー部に磁場を印加するための磁場発生装置を装備せ
しめられている。該磁場発生装置は、電磁コイルであってよいし、永久磁石と磁力線遮断板とから構成されるものなど当該分野で知られたものを使用できる。電磁コイルを使用した場合、電源により駆動せしめられるが、電源は測定装置本体内の主制御部によって制御
される。すなわち、磁場は当該測定装置本体内の主制御部によって制御されるのが好ましい。
本測定装置には、所定の分光器が装備される。この分光器は、測定に用いる光の波長分布(スペクトルパターン)を分析するものである。出射光側には、必要に応じて、検光子などを配置してあることができる。本分光器に入射される光の1つは、SPRセンサー部か
ら反射してきた出射光である。そして、分光器には、光源から出力されて、例えば、上記集光レンズ、ビームスプリッタ、そして全反射ミラーによって反射され、更にビームスプリッタによって反射された光も入射されることができる。分光器では、入射された光源からの光とSPRセンサー部からの出射光との波長分布を比較することにより、出射光内のい
ずれの波長が減衰しているのかを知ることができる。光照射手段から分光器へは、必要に応じて、偏向ミラー、レセプタクル、光ファイバコネクタ、分光器用光ファイバなどを介して光が伝達されてよい。分光器には、通常、受光素子が備えられている。受光素子は、出射光などに感度を有する光感応性の素子であれば特に限定されず、当該分野で知られたものの中から適切なものを選択して使用できる。受光素子あるいは受光素子と同等の働きを有する光検出器としては、例えば、フォトダイオード、フォトダイオードアレイ、光電子増倍管、銀塩カメラ、ビデオカメラ、CMOSカメラ、CCDデバイスなどが挙げられる。本
発明の測定装置では、分光器が1台装備されているが、許容されるのであるならば、2つ以上設けてもよい。本発明で偏光子や検光子としては、λ/4板、λ/2板などの偏光素子、偏光フィルムなどを使用してもよい。
本測定装置には、通常、装置本体内に主制御部が配設されていている。該主制御部は、光源、光照射手段、分光器などの動作を制御している。該主制御部では、分光器により得られた出射光の波長分布に関する情報を取り込んで、これを装置本体に装備されている表示部や送信機に伝達する機能を有している。該主制御部は、さらに、試料供給などのための吸引ポンプの動作等も併せて制御している。また、送信機からは、上位機(医療機器、コンピュータ等)が接続された受信機に、分光器による分析結果の情報が送信される。該主制御部は、移動フレームの移動を制御する機能を有していてよい。具体的には、移動フレームに装備された駆動モータ等の動作を制御する。
次に、以上のように構成された測定装置の動作を説明する。測定に先だって、SPRセン
サー部のキャリブレーションを行う必要がある。即ち、SPRセンサー部の表面に、例えば
、誘電体膜を形成しておき、次に、光照射手段からSPRセンサー部に光を照射する。SPRセンサー部には、励起されたプラズモンの偏波を発生せしめるように磁場発生装置により外部磁場を印加する。磁場は、SPRセンサーの金属薄膜の面に対して、例えば、垂直上向き
方向と垂直下向き方向に印加したり、あるいはそうした方向の磁場を周期的に変化させて印加せしめられる。そして、SPRセンサー部からの出射光は、分光器に導かれる。分光器
では、出射光の波長分布を分析する。これによって、波長分布の結果を得ることができる。SPRセンサー部で表面プラズモン共鳴が生じる場合には、特定の波長帯域の強度が低く
なる。
分光器で得られた波長分布から、強度が最小となっている波長を求めると、この波長が表面プラズモン共鳴を励起した波長であることがわかる。これにより、誘電体膜に光学活性物質が固定されていない状態における、表面プラズモン共鳴を励起する光の波長が明らかとなり、SPRセンサーのキャリブレーションが行える。次に、SPRセンサー部を用いた測定装置のデータテーブルを作成する。このデータテーブルとは、SPRセンサー部を用いた
測定装置において、種々の光学活性物質の濃度に依存しての関係を調べたものである。即ち、検体内の抗原の濃度が高い場合には、この濃度に応じて表面プラズモン共鳴を励起する光の波長が変化する。従って、特定の光学活性物質の濃度と、このときに減衰する波長との関係を予め調べておけば、実際に測定をする場合に検体内の特定の光学活性物質の濃
度を推測できるからである。
本測定装置の主制御部が各部の動作を制御する場合、その制御情報の流れにおいては、例えば、主制御部は、光照射手段制御部、磁場発生装置制御部、分光器の分光器制御部、光路切替機構制御部などに働きかけて、磁場の切り替え並びに発生動作の制御をしたり、光路の切り換え及び分光器による出射光の波長分布の測定動作を制御する。また、主制御部は、測定データ処理部に働きかけて、分光器から得られた情報を基にデータ処理を行わせる。そして、処理されたデータはデータベースに格納される。また、主制御部は、表示制御部に働きかけて、測定結果を表示部に表示させると共に、場合によっては、送信機の送信制御部に働きかけて情報を送信させる。
本発明の磁場印加SPRセンサー及び磁場印加条件下の表面プラズモン共鳴円二色性測定
法では、光学活性有機化合物、例えば、ブドウ糖、ショ糖などの糖類、酒石酸などの有機酸類、L-, D-各種アミノ酸等、無機錯体などの無機化合物などの光学活性を持っているものにつき、円二色性を測定して、化学的性質がよく似ているが、生体内ではその役割がはっきりと違うものにつき、区別を可能とするので、医療、薬品、食品、香料などでL-, D-体の両者を区別することができる。本発明の技術は、生体高分子の立体構造解析法、反応機構追跡可能技術にも応用可能である。
上記の開示は、単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの開示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。
本発明の磁場印加型表面プラズモン共鳴センサー(SPRセンサー)及び磁場印加条件下の
表面プラズモン共鳴測定法は、円二色性を持つ媒体の円二色性測定が可能であることから、医薬品、農薬、化粧品、食品、香料などのキラル分子の光学活性体の測定に応用できる。本発明の磁場印加条件下表面プラズモン共鳴測定による円二色性測定技術は、高スループットで光学活性物質の評価を可能にする。本発明の技術で、旋光性を精密且つ正確に測定でき、信頼性のある光学的特性並びにパラメータを提供できる。本発明の技術は、微量且つ多種の検体の迅速な測定を可能とするので、エナンチオマー、光学活性種の濃度評価にも便利である。本発明の技術の使用は、高感度でのキラルな分子などの測定に有用で、様々な分野で光学活性物質を含めた品質検査、プロセス制御並びに調査に使用できる。
本発明は、前述の説明に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。
本発明で円二色性が測定できるSPRセンサーを示す。 本発明の円二色性を持つ媒体測定SPRセンサーによる円二色性測定法の測定原理を示す。

Claims (4)

  1. 表面プラズモンが生成される金属部位に単一あるいは複数の周期的な構造が形成せしめられており、該金属部位に外部磁場をかけることで、楕円偏波の表面プラズモンを励起させ、これにより光学活性を持つ媒体の測定を可能とすることを特徴としている表面プラズモン共鳴センサー。
  2. 表面プラズモン共鳴センサーの金属表面に単一あるいは複数の周期性を持つ形状の構造を形成し、該金属部位に外部磁場を印加することで、得られるエバネッセント波と測定対象有機体との相互作用で生ずる屈折率の変化に円二色性を付与せしめて検出することを特徴とする光学活性を持つ媒体測定法。
  3. 請求項1に記載の表面プラズモン共鳴センサー、該センサーに外部磁場を印加する装置、及び、該センサーよりの出射光を分析する装置を備え、光学活性媒体から得られた出射光を分光・検出することで円二色性を測定することを特徴とする測定装置。
  4. 請求項1に記載の表面プラズモン共鳴センサー又は請求項2の方法を用いて光学活性媒体から得られた出射光を分光・検出する手段を有し、円二色性を測定することを特徴とする測定装置。
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