WO2011142342A1 - タイヤ製造用金型 - Google Patents
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Abstract
下側サイドモールド31は、タイヤTRのサイドウォール部TR2を型付けするサイドウォール形成面31aと、突起部TR4を形成する突起形成部310とを有する。突起形成部310は、サイドウォール形成面31aよりも下側サイドモールド31の内部に向けて窪んでおり、突起形成部310の底部311には、底部311から下側サイドモールド31の内部に向けて更に窪む空気溜まり凹部312が形成されている。空気溜まり凹部312の容積は、突起形成部310の容積よりも小さい。
Description
本発明は、サイドウィール部の表面の少なくとも一部に、乱流を発生させる突起が設けられる空気入りタイヤを製造するタイヤ製造用金型に関する。
一般に、空気入りタイヤにおけるタイヤ温度の上昇は、材料物性の変化などの経時的変化を促進させるため、タイヤの耐久性を低下させる要因になっている。特に、重荷重用のタイヤ(いわゆる、オフザロードラジアルタイヤ(ORR))や、トラック・バス用のラジアルタイヤ(TBR)、内圧0kPaでも走行可能なランフラットタイヤなどにおいては、通常の空気入りタイヤに比べてゴムの量が多い、或いはサイドウォール部の剛性が高められているため、発熱し易いという特徴がある。そのため、これらのタイヤでは、特にタイヤ温度を上昇させないことが課題になる。
これに対して、サイドウィール部の表面の少なくとも一部に、乱流を発生させる突起が設けられた空気入りタイヤが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この空気入りタイヤでは、突起によって発生させられた空気の流れがサイドウォール部の表面に当たってサイドウォール部の表面を冷却できる。
サイドウォール部の表面に乱流を発生させるための突起(乱流発生用突起という)を形成するには、突起を形成する所定位置に凹部が設けられた金型が用いられる。金型の凹部に突起及びサイドウォール部を形成するゴム材料が流れ込み、加硫されることによって、サイドウォール部に突起が形成される。
ところで、サイドウォール部に突起を備えた空気入りタイヤでは、次のことが問題になっていた。すなわち、空気入りタイヤの製造時において、突起を形成するための金型の凹部には空気溜まりができやすく、成形後の突起の表面に空気溜まりによる窪みが形成されることがある。
これに対して、金型の凹部に空気抜きの孔、いわゆるベントホールを設ける方法が挙げられる。しかし、金型の凹部にベントホールを形成すると、突起の表面にスピュー(髭状のゴム)が残る。突起にスピューが残っていると、突起本来の性能が発揮できないため、トリミングする必要があるが、通常のタイヤ表面(トレッド面やタイヤサイド部)と異なり、突起を傷つけずにスピューをトリミングすることは困難であった。
第1の特徴は、円弧形状を有し、未加硫の空気入りタイヤである生タイヤのトレッド部(トレッド部130)にトレッドパターンを型付けする複数のセクターモールド(セクターモールド30)と、前記空気入りタイヤのサイドウォール部(サイドウォール部113)を型付けする一対のサイドモールド(下側サイドモールド31、上側サイドモールド33)とを備えるタイヤ製造用金型(複数のセクターモールド30、下側サイドモールド31、上側サイドモールド33)において、前記サイドモールドは、前記空気入りタイヤのサイドウォール部の表面(タイヤ表面113a)を形成する表面形成部(サイドウォール形成面31a)と、前記表面形成部から前記サイドモールドの内部に向けて窪む第1凹部(突起形成部310,330)とを有し、前記第1凹部の底部(底部311)には、前記底部から前記サイドモールドの内部に向けて窪む第2凹部(空気溜まり凹部312)が形成されており、前記第2凹部の容積は、前記第1凹部の容積よりも小さいことを要旨とする。
第1の特徴に係るタイヤ製造用金型では、第1凹部に生タイヤのゴムが侵入すると、第1凹部内の空気が第2凹部内に追いやられる。第2凹部の容積は第1凹部の容積よりも小さいため、第1凹部内の空気は第2凹部に追いやられるとともに圧縮されて、第2凹部の内部へのゴムの侵入を防ぐ役割を果たす。これにより、第2凹部の内部へは、ゴムが殆ど侵入することがなく、空気入りタイヤには、実質的に第1凹部の形状の突起が形成される。
第1の特徴に係るタイヤ製造用金型によれば、空気抜きの孔、いわゆるベントホールを設けないため、成形後の空気入りタイヤにできた突起の表面にスピューが残ることもない。また、第2凹部の内部へゴムが殆ど侵入することがなく、かつ、成形後の空気入りタイヤにできた突起の表面に窪みが形成されない。従って、空気溜まりやスピューを生じることなく、突起本来の性能を損なうことのない空気入りタイヤを製造することができる。
第2の特徴は、前記第2凹部の容積が前記第1凹部の容積の1%以上10%未満であることを要旨とする。
第3の特徴は、前記第2凹部は複数形成されており、前記複数の第2凹部の容積の合計は、前記第1凹部の容積の1%以上10%未満であることを要旨とする。
本発明に係る空気入りタイヤの実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なのものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることを留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれる。
(空気入りタイヤの構成)
まず、本発明の実施形態に係るタイヤ製造用金型によって製造される空気入りタイヤの構成について、図1を参照して説明する。図1は、空気入りタイヤ100のトレッド幅方向及びタイヤ径方向の断面図である。空気入りタイヤ100は、ビードコア101、ビードフィラー102及びビードトゥ103を少なくとも含む一対のビード部110と、該ビードコア101で折り返されるカーカス層111を備える。
まず、本発明の実施形態に係るタイヤ製造用金型によって製造される空気入りタイヤの構成について、図1を参照して説明する。図1は、空気入りタイヤ100のトレッド幅方向及びタイヤ径方向の断面図である。空気入りタイヤ100は、ビードコア101、ビードフィラー102及びビードトゥ103を少なくとも含む一対のビード部110と、該ビードコア101で折り返されるカーカス層111を備える。
このカーカス層111の内側には、チューブに相当する気密性の高いゴム層であるインナーライナー112が設けられている。また、カーカス層111のトレッド幅方向外側、すなわち、サイドウォール部113におけるタイヤ表面113aには、乱流を発生させる乱流発生用突起120が設けられる。一例として、乱流発生用突起120のタイヤ周方向の長さ(タイヤの軸方向視における乱流発生用突起120の幅)は、5mmであり、乱流発生用突起120のトレッド幅方向の長さ(サイドウォール部113からの高さ)は、15mmである。
カーカス層111のタイヤ径方向外側には、路面と接するトレッド部130が設けられている。また、カーカス層111とトレッド部130との間には、トレッド部130を補強する複数のベルト層150が設けられている。
(加硫装置の構成)
図2は、本実施形態に係るタイヤ製造用金型を備える加硫装置1を説明する構成図である。加硫装置1は、基台支持部11、下基台12、上基台13、及び支持ロッド14を有する。基台支持部11は、基礎B上に設置される。下基台12は、方形状を有しており、基台支持部11によって支持される。下基台12は、基礎Bに対して水平に配置される。
図2は、本実施形態に係るタイヤ製造用金型を備える加硫装置1を説明する構成図である。加硫装置1は、基台支持部11、下基台12、上基台13、及び支持ロッド14を有する。基台支持部11は、基礎B上に設置される。下基台12は、方形状を有しており、基台支持部11によって支持される。下基台12は、基礎Bに対して水平に配置される。
支持ロッド14は、所定の長さを有する。支持ロッド14は、上下方向に沿って配置される。加硫装置1は、4本の支持ロッド14を有する。4本の支持ロッド14は、下基台12の四隅にそれぞれ配置される。
支持ロッド14の下基台12との連結部分の逆の端部には、上基台13が取り付けられる。4本の支持ロッド14は、上基台13を支持している。
上基台13は、下基台12と略同一形状を有する。上基台13は、下基台12と所定の間隔を隔てている。上基台13には、後述するピストンロッド41、ガイドロッド43が挿通される開口部13a,13bが形成される。上基台13は、基礎Bに対して水平に配置される。下基台12の中央部には、開口部12aが設けられている。開口部12aには、ブラダー装置20が設置される。ブラダー装置20は、上下方向に昇降可能に設置される。
ブラダー装置20は、ブラダー21と、ピストンロッド22と、制御シリンダー23と、給排管24とを有する。ブラダー21は、可撓性材料(例えば、ブチルゴム)により形成される。ブラダー21の上側の端部21aは、上部クランプ25に固定される。ブラダー21の下側の端部21bは、下部クランプ26に固定される。ブラダー21の外側には、タイヤTRが載置される。ブラダー21には、加熱及び加圧された流体Rが送り込まれる。ブラダー21は、送り込まれた流体RによってタイヤTRの内側で膨張し、ドーナツ状になる。
ピストンロッド22の中心軸は、上下方向、すなわち、基礎Bに対して垂直方向に沿って配置される。ピストンロッド22の下端部には、制御シリンダー23が連結される。ピストンロッド22及び制御シリンダー23は、下基台12の略中心に沿って配置されている。
制御シリンダー23は、ピストンロッド22の下方に設けられる。制御シリンダー23は、ピストンロッド22の動きを制御する。すなわち、制御シリンダー23は、ピストンロッド22を上下方向(矢印V)に沿って移動させる。
給排管24は、下部クランプ26に連結されている。給排管24は、ブラダー21内部に、所定の温度、所定の圧力に設定された流体Rを導入する。または、導入された流体Rを排出する。流体Rは、加熱・加圧された蒸気、窒素ガス等である。給排管24は、図示しない導入装置に接続されている。
加硫装置1は、未加硫の空気入りタイヤである生タイヤのトレッド部130にトレッドパターンを型付けする複数のセクターモールド30と、空気入りタイヤのサイドウォール部113を型付けする一対のサイドモールド(下側サイドモールド31,上側サイドモールド33)を有する。セクターモールド30及び下側サイドモールド31は、下基台12のブラダー装置20の周囲に配置される。複数のセクターモールド30、下側サイドモールド31、上側サイドモールド33は、タイヤ製造用金型を構成する。
セクターモールド30は、タイヤTRのトレッド部を形成するモールドである。下側サイドモールド31は、タイヤTRのサイドウォール部を型付けする。下側サイドモールド31は、タイヤTRの一方のサイドウォール部を成形するためのモールドである。セクターモールド30及び下側サイドモールド31には、ヒータ等の加熱部(不図示)が設けられる。
加硫装置1は、セクターモールド30を移動させる移動部32を有する。移動部32は、所定の可動レンジを有する。移動部32は、セクターモールド30を加硫装置1に載置されるタイヤTRのタイヤ径方向(矢印H)に沿って移動させる。図1では、セクターモールド30は、可動レンジのタイヤ径方向の外側限に位置している。
加硫装置1は、プレート40を有する。プレート40は、下基台12と上基台13との間に配置される。プレート40の四隅には、支持ロッド14が挿通される。加硫装置1は、プレート40を昇降させるための機構として、ピストンロッド41、制御シリンダー42、ガイドロッド43とを有する。ピストンロッド41は、上基台13の略中央部に設けられた開口部13aに挿通される。また、ガイドロッド43は、上基台13の所定位置に設けられた開口部13bに挿通される。
ピストンロッド41は、プレート40の略中央部に連結される。ガイドロッド43は、プレート40の所定位置に連結される。ピストンロッド41は、制御シリンダー42によって、基礎Bに対して上下方向(矢印V)に移動可能とされる。従って、プレート40は、支持ロッド14に沿って移動される。図1では、プレート40は、垂直方向の上限に位置している。
プレート40の下面には、アウターリング34が配置される。アウターリング34は、円環状を有する。リング内径は、複数のセクターモールド30を組み合わせた際のセクターモールド30の外郭と略同径である。また、アウターリング34のリング中心は、ブラダー装置20の中心軸と同軸である。
加硫装置1は、サイドプレート44を有する。サイドプレート44は、支持ロッド45を介してプレート40に取り付けられる。サイドプレート44には、上側サイドモールド33が設けられる。上側サイドモールド33は、タイヤTRのサイドウォールを型付けする。
上側サイドモールド33は、未加硫のタイヤTRのタイヤ径方向に沿ったタイヤ側面部を形成するモールドである。上側サイドモールド33は、加熱部を有する(不図示)。
未加硫のタイヤTRは、加硫装置1のブラダー装置20の周りに載置される。未加硫のタイヤTRのカーカス部(不図示)は、上部クランプ25,下部クランプ26に固定される。
加硫時には、加硫装置1は、制御シリンダー42によってピストンロッド41を押し下げる。これにより、プレート40が下降する。すなわち、プレート40の下側面に取り付けられたアウターリング34が下基台12に向けて下降する。また、プレート40の下降と共にサイドプレート44に設けられた上側サイドモールド33が下降する。セクターモールド30は、アウターリング34の下降動作に同期して、タイヤ径方向の外側から中心に向かって移動する。アウターリング34は、セクターモールド30に当接し、更に可動下限まで下降する。
(タイヤ製造用金型の構造)
図3は、セクターモールド30、下側サイドモールド31、及び上側サイドモールド33とが互いに組み合わされた状態におけるタイヤ幅方向の断面図である。
図3は、セクターモールド30、下側サイドモールド31、及び上側サイドモールド33とが互いに組み合わされた状態におけるタイヤ幅方向の断面図である。
未加硫のタイヤTRは、ブラダー21と、セクターモールド30と、下側サイドモールド31と、上側サイドモールド33との間に形成される空間(加硫空間という)の内部に収容される。タイヤTRは、ビード部、カーカス層、ベルト層(不図示)を備える一般的なタイヤである。タイヤTRは、トレッド部TR1(図1のトレッド部130に相当する)、サイドウォール部TR2,TR3(図1のトレッド部113に相当する)を有する。サイドウォール部TR2,TR3には、突起部TR4(乱流発生用突起120に相当する)が形成される。
セクターモールド30は、トレッドパターンを形成する凹凸が形成されるトレッドパターン形成面30aと、傾斜面30bとを有する。セクターモールド30は、タイヤ幅方向の断面において、移動部32(図2には不図示)に取り付けられている端部の長さが上側の端部の長さよりも長い。
アウターリング34は、傾斜面30bに当接する傾斜面34aを有する。アウターリング34は、タイヤ幅方向の断面において、プレート40(図2には不図示)の下面に取り付けられている端部の長さが下側の端部の長さよりも長い。
従って、アウターリング34の傾斜面34aがセクターモールド30の傾斜面30bに当接した状態から、更に矢印Vの下方向にアウターリング34が下降されると、アウターリング34の傾斜面34aとセクターモールド30の傾斜面30bとが摺動する。
このとき、セクターモールド30と、下側サイドモールド31と、上側サイドモールド33とを互いに密着させる方向(すなわち、タイヤ径方向に沿ってタイヤの外側から中心に向かう方向)に力が作用する。これにより、セクターモールド30と、下側サイドモールド31と、上側サイドモールド33とは互いに強固に密着させられて、加硫空間が形成される。
(サイドモールドの構造)
図4は、下側サイドモールド31の突起形成部310を拡大して示す図である。なお、説明のため、図4には生タイヤを図示していない。下側サイドモールド31は、タイヤTRのサイドウォール部TR2を型付けするサイドウォール形成面31aと、突起部TR4を形成する突起形成部310とを有する。突起形成部310は、サイドウォール形成面31aから下側サイドモールド31の内部に向けて窪む。上側サイドモールド33も同様に、サイドウォール形成面33aと、突起形成部330とを有する。サイドウォール形成面31a,33aは、表面形成部を構成する。突起形成部310,330は、第1凹部を構成する。
図4は、下側サイドモールド31の突起形成部310を拡大して示す図である。なお、説明のため、図4には生タイヤを図示していない。下側サイドモールド31は、タイヤTRのサイドウォール部TR2を型付けするサイドウォール形成面31aと、突起部TR4を形成する突起形成部310とを有する。突起形成部310は、サイドウォール形成面31aから下側サイドモールド31の内部に向けて窪む。上側サイドモールド33も同様に、サイドウォール形成面33aと、突起形成部330とを有する。サイドウォール形成面31a,33aは、表面形成部を構成する。突起形成部310,330は、第1凹部を構成する。
下側サイドモールド31と上側サイドモールド33とは、同様の構造を有するため、以下では、下側サイドモールド31について説明し、上側サイドモールド33の詳細は省略する。
突起形成部310は、サイドウォール形成面31aよりも下側サイドモールド31の内部に向けて窪んでおり、突起形成部310の底部311には、底部311から下側サイドモールド31の内部に向けて更に窪む空気溜まり凹部312が形成されている。空気溜まり凹部312の容積は、突起形成部310の容積よりも小さい。
空気溜まり凹部312の容積は、突起形成部310の容積の1%以上10%未満であることが好ましい。本実施形態では、空気溜まり凹部312は、1つの突起形成部310に対して2つ形成されている。そのため、2つの空気溜まり凹部312の容積の合計が突起形成部310の容積の1%以上10%未満になっている。
加硫時には、加熱及び加圧された流体Rがブラダー21に吹き込まれることにより、タイヤTRの内側でブラダー21が膨張する。タイヤTRは、膨張したブラダー21によって、セクターモールド30、下側サイドモールド31、及び上側サイドモールド33に型付けされる。
図5(a)は、タイヤ製造用金型に生タイヤが設置され、加圧されたときの初期状態を示す模式図である。図5(b)は、タイヤ製造用金型に生タイヤが設置され、加圧後の状態を示す模式図である。
図5(a)に示すように、ブラダー21の膨張に伴って、生タイヤのサイドウォール部の一部が突起形成部310に侵入する。突起形成部310に生タイヤのゴムが侵入すると、突起形成部310内の空気が空気溜まり凹部312に追いやられる(図5(a)に示す矢印)。
空気溜まり凹部312の容積は、突起形成部310容積よりも小さいため、図5(b)に示すように、空気はゴムにより空気溜まり凹部312の内部で圧縮される。そのため、空気溜まり凹部312において圧縮された空気の内圧と、ゴムの押圧力とが略平衡になるように突起形成部310と空気溜まり凹部312の容積の比率を決定すれば、空気溜まり凹部312の内部へのゴムの侵入を防ぐことができる。
ここで、図4、図5(a)、図5(b)に示すように、下側サイドモールド31には、いわゆるベントホールが設けられていないことに留意すべきである。従って、スピューのトリミングが不要である。
(作用・効果)
以上説明したように、本実施形態に係るタイヤ製造用金型では、突起形成部310に生タイヤのゴムが侵入すると、突起形成部310内の空気が空気溜まり凹部312内に追いやられる。突起形成部310内の空気は、空気溜まり凹部312内に追いやられるとともに圧縮されて、空気溜まり凹部312の内部へのゴムの侵入を防ぐ役割を果たす。従って、空気入りタイヤ100には、実質的に空気溜まり凹部312の無い、突起形成部310の底部311を延長した形状の外観表面を有する突起(乱流発生用突起120)を形成することができる。
以上説明したように、本実施形態に係るタイヤ製造用金型では、突起形成部310に生タイヤのゴムが侵入すると、突起形成部310内の空気が空気溜まり凹部312内に追いやられる。突起形成部310内の空気は、空気溜まり凹部312内に追いやられるとともに圧縮されて、空気溜まり凹部312の内部へのゴムの侵入を防ぐ役割を果たす。従って、空気入りタイヤ100には、実質的に空気溜まり凹部312の無い、突起形成部310の底部311を延長した形状の外観表面を有する突起(乱流発生用突起120)を形成することができる。
本実施形態に係るタイヤ製造用金型によれば、空気抜きの孔、いわゆるベントホールを設けないため、成形後の空気入りタイヤにできた突起の表面にスピューが残ることもない。また、成形後の空気入りタイヤにできた乱流発生用突起120の表面に窪み(ベア)が形成されない。従って、空気溜まりやスピューを生じることなく、突起本来の性能を損なうことのない空気入りタイヤを製造することができる。
本実施形態では、空気溜まり凹部312の容積は、突起形成部310の容積の1%以上10%未満である。空気溜まり凹部312の容積が1%未満であると、容量が不十分であり、空気溜まり凹部312に追いやられた空気が乱流発生用突起120の表面に窪みを形成してしまう。また、空気溜まり凹部312の容量が10%を超えると、ゴムが空気溜まり凹部312にまで侵入するため、乱流発生用突起120の表面に空気溜まり凹部312による突部が形成されてしまう。
一つの空気溜まり凹部312で押圧力と平衡になるように調整することは難しいため、小容量の空気溜まり凹部312を複数設ける方が好ましい。
(その他の実施形態)
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例が明らかとなる。例えば、本発明の実施形態は、次のように変更することができる。
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例が明らかとなる。例えば、本発明の実施形態は、次のように変更することができる。
実施形態に係るタイヤ製造用金型では、サイドウォール部の乱流発生用突起120を形成するための凹部に、2つの空気溜まり凹部312を形成する場合について説明した。しかし、空気溜まり凹部312の数は、2つに限定されない。1つでもよい。また、乱流発生用突起120の形状は、図1に示す矩形状のみに限定されない。例えば、乱流発生用突起の表面が傾斜していてもよいし、曲面になっていてもよい。また、突起の幅が端部と中央部とで異なるものであってもよい。
また、空気溜まり凹部の数と乱流発生用突起の形状とは無関係であるが、乱流発生用突起を形成する突起形成部の最も深い底部に空気溜まり凹部を設けることが好ましい。この場合、空気が空気溜まり凹部に導かれ易くなり、空気が凹部内に散在することにより、平面部分にベアが形成されることを防止できる。
また、乱流発生用突起120を形成するための凹部に限定されない。例えば、成形後の製品に残留するスピューのトリミングが困難な部位であれば、適用可能である。
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
[実施例]
本実施形態のタイヤ製造用金型を用いて製造した乱流発生用突起を有する空気入りタイヤと、ベントホールを有する従来のタイヤ製造用金型を用いて製造した乱流発生用突起を有する空気入りタイヤとを比較した。
本実施形態のタイヤ製造用金型を用いて製造した乱流発生用突起を有する空気入りタイヤと、ベントホールを有する従来のタイヤ製造用金型を用いて製造した乱流発生用突起を有する空気入りタイヤとを比較した。
比較例1:ベントホールを有するタイヤ製造用金型を用いて製造した後、スピューをトリミングすることによって、設計寸法の乱流発生用突起を形成したタイヤ
比較例2:ベア対策を一切施していないタイヤ製造用金型を用いて製造したタイヤ(突起にエア溜まりによるベアが残留している状態)
実施例:空気溜まり凹部を有するタイヤ製造用金型を用いて製造したタイヤ(製造後、乱流発生用突起の寸法調整の為の処理を施さない)
なお、実施例のタイヤにおいて、1つの突起形成部に対して空気溜まり凹部を2つ形成し、空気溜まり凹部の容積は突起形成部の容量の6%とした。
比較例2:ベア対策を一切施していないタイヤ製造用金型を用いて製造したタイヤ(突起にエア溜まりによるベアが残留している状態)
実施例:空気溜まり凹部を有するタイヤ製造用金型を用いて製造したタイヤ(製造後、乱流発生用突起の寸法調整の為の処理を施さない)
なお、実施例のタイヤにおいて、1つの突起形成部に対して空気溜まり凹部を2つ形成し、空気溜まり凹部の容積は突起形成部の容量の6%とした。
各空気入りタイヤを正規リムに組み込んで360トンのダンプの前輪に装着し、速度15km/hで24時間等速度走行した後、サイドウォール部の等間隔の6箇所の表面温度をサーモビジョンにより計測し、平均値を算出した。結果を表1に示す。
この結果、実施例に係る空気入りタイヤにおいて、製造後に乱流発生用突起の寸法調整の為の処理を一切施していないのにも拘わらず、外観形状が従来例に係る空気入りタイヤと比べて遜色なく、同等の冷却性能を発揮することが判った。すなわち、乱流発生用突起の機能を十分に発揮し得る設計寸法通りの形状に仕上がっていることが判った。
なお、日本国特許出願第2010-108181号(2010年5月10日出願)の全内容が、参照により、本願明細書に組み込まれている。
本発明によれば、空気溜まりやスピューを生じることなく、突起本来の性能を損なうことのない空気入りタイヤを製造するタイヤ製造用金型を提供する。
Claims (3)
- 円弧形状を有し、未加硫の空気入りタイヤである生タイヤのトレッド部にトレッドパターンを型付けする複数のセクターモールドと、
前記空気入りタイヤのサイドウォール部を型付けする一対のサイドモールドとを備えるタイヤ製造用金型において、
前記サイドモールドは、
前記空気入りタイヤのサイドウォール部の表面を形成する表面形成部と、
前記表面形成部から前記サイドモールドの内部に向けて窪む第1凹部とを有し、
前記第1凹部の底部には、前記底部から前記サイドモールドの内部に向けて窪む第2凹部が形成されており、
前記第2凹部の容積は、前記第1凹部の容積よりも小さいタイヤ製造用金型。 - 前記第2凹部の容積は、前記第1凹部の容積の1%以上10%未満である請求項1に記載のタイヤ製造用金型。
- 前記第2凹部は、複数形成されており、
前記複数の第2凹部の容積の合計は、前記第1凹部の容積の1%以上10%未満である請求項1に記載のタイヤ製造用金型。
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