WO2010092886A1

WO2010092886A1 - ドラム式洗濯機

Info

Publication number: WO2010092886A1
Application number: PCT/JP2010/051401
Authority: WO
Inventors: 川端真一郎; 金田至功
Original assignee: 株式会社東芝; 東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社; 東芝ホームアプライアンス株式会社
Priority date: 2009-02-13
Filing date: 2010-02-02
Publication date: 2010-08-19
Also published as: TWI403627B; KR101270799B1; US20110289981A1; CN102317535B; US8387420B2; CN102317535A; JP5127740B2; TW201042114A; EP2397597A4; EP2397597B1; KR20110101242A; EP2397597A1; JP2010184068A

Abstract

　本発明は、ドラム（１０）を収容する水槽（６）を防振支持するサスペンション（７）を有したドラム式洗濯機において、サスペンション（７）は、シリンダ（２４）と、シリンダ（２４）の内部に固定され、磁場を可変に発生するフィールド発生装置（３６）と、フィールド発生装置（３６）の軸方向の両側に配設された上ヨーク（３７），下ヨーク（３５）と、フィールド発生装置（３６）及び上ヨーク（３７），下ヨーク（３５）を相対的に軸方向に往復動可能に貫通して支持されたシャフト（２２）と、このシャフト（２２）とフィールド発生装置（３６）との間、及び、その近傍であるシャフト（２２）と両ヨーク（３５，３７）との間に充填された磁気粘性流体（４０）と、フィールド発生装置（３６）の下方に位置してシリンダ（２４）の内部に固定され、シャフト（２２）の外周面に密接して磁気粘性流体（４０）の漏出を阻止するシール部材（３４）とを具備して構成されている。

Description

ドラム式洗濯機

　本発明は、水槽を、機能性流体を使用するサスペンションによって防振支持したドラム式洗濯機に関する。

　従来より、ドラム式洗濯機は、洗濯物を収容するドラムを、洗濯水を貯留する水槽の内部に、横軸状で回転可能に具えて構成される。このようなドラム式洗濯機は、水槽を、外箱の底板上で複数のサスペンションによって支持することにより、運転時の振動の低減化を図っている。この種のサスペンションとして、磁場の強度によって粘度が変化する磁気粘性流体（ＭＲ流体）を、作動流体として用いたものが知られている（例えば、特許文献１参照）。

　特許文献１に記載されたものは、ダンパチューブにピストンロッドが挿入され、そのピストンロッドの軸方向における２つの位置に、それぞれピストンが設けられている。そして、ダンパチューブの内部に、この両ピストンによって挟まれた磁気粘性流体収容室が形成されている。また、ダンパチューブには、磁気粘性流体収容室に臨む部分に、磁気発生装置が設けられている。この磁気発生装置によって、磁気粘性流体収容室は、軸方向の２室に区画されている。即ち、ダンパチューブ内には、磁気発生装置の軸方向の両側に、磁気粘性流体収容室の２室が設けられている。磁気粘性流体は、これら２室に、それぞれ収容されている。

　磁気発生装置は、環状の鉄心にコイルを設けて成り、磁場を発生するようになっている。また、この磁気発生装置は、ピストンロッドとの間で磁気粘性流体用流路を形成している。更に、ドラム式洗濯機においては、ダンパチューブのうちピストンロッドが突出する側の端部に、ダンパチューブ側ばね受け座が設けられている。また、ピストンロッドの突出端部に、シャフト側ばね受け座が設けられている。これらのばね受け座間にコイルばねが介在されている。このような構成により、水槽は、磁気粘性流体を用いたサスペンションによって、外箱内に支持されている。

　このように水槽が支持された構成において、水槽が上下方向に振動すると、ダンパチューブも、コイルばねの伸縮を伴って、当該水槽と一体に上下方向である軸方向に往復動する。このとき、ピストンは、ダンパチューブ内の磁気粘性流体収容室を相対的に上下に往復動する。これに伴い、磁気粘性流体は、磁気粘性流体収容室の軸方向の２室の一方側から他方側へ磁気粘性流体用流路を通って行き来する。ここで、磁気粘性流体は、その粘性によって減衰力を発生し、水槽の振幅を減衰させる。

　この状況で、磁気発生装置のコイルに通電すると、磁場が発生して、磁気粘性流体に磁界が与えられ、磁気粘性流体の粘度が高まる。これにより、磁気粘性流体用流路を磁気粘性流体が通過する際の摩擦損失が増加するため、減衰力が大きくなる。つまり、磁気発生装置のコイルへ通電することにより、減衰力を調整することができる。

特開２００６－５７７６６号公報

　上述の磁気粘性流体のような、いわゆる機能性流体（外部から加える物理量を制御することで粘性などのレオロジー的特性が変化する流体）は、通常のダンパ用オイルに比してコストが高い。上記特許文献１に記載されたものでは、その磁気粘性流体を、磁気発生装置の軸方向の両側に形成された磁気粘性流体収容室の２室にそれぞれ収容している。そのため、サスペンションのコスト、ひいては、ドラム式洗濯機のコストが著しく高くなる。

　本発明の目的は、ドラムを収容する水槽を、機能性流体を使用するサスペンションによって防振支持するものにおいて、その機能性流体の使用量の低減を図って、コストの低廉化を可能とするドラム式洗濯機を提供することにある。

　本発明は、ドラムを収容する水槽を防振支持するサスペンションを有したドラム式洗濯機において、前記サスペンションを、シリンダと、前記シリンダの内部に固定され、磁場または電場を可変に発生するフィールド発生装置（磁場発生装置、または、電場発生装置）と、前記フィールド発生装置の軸方向の両側に配設された磁性部材と、このフィールド発生装置及び前記磁性部材を相対的に軸方向に往復動可能に貫通して支持されたシャフトと、このシャフトと前記フィールド発生装置との間、及び、その近傍である前記シャフトと前記両磁性部材との間に充填された機能性流体（磁気粘性流体、または、電気粘性流体）と、前記フィールド発生装置の下方に位置して前記シリンダの内部に固定され、前記シャフトの外周面に密接して前記機能性流体の漏出を阻止するシール部材とを具備する構成としたことを特徴とする。

　本発明のドラム式洗濯機によれば、機能性流体（磁気粘性流体、または、電気粘性流体）を、フィールド発生装置（磁場発生装置、または、電場発生装置）とシャフトとの間、及び、その近傍であるシャフトと両磁性部材との間にのみ充填して使用することで、水槽を防振支持する。これにより、機能性流体の使用量の低減を図ることができ、コストの低廉化を可能とすることができる。

図１は、本発明の第１実施例に係るものであり、サスペンションの運転前の状態を示す縦断面図である。図２は、サスペンションの運転中の状態を示す縦断面図である。図３は、サスペンションの作用を説明するために主要部分を拡大して示す縦断面図である。図４は、ドラム式洗濯機全体の縦断側面図である。図５は、本発明の第２実施例に係る図１相当図である。図６は、本発明の第３実施例に係る図１相当図である。図７は、本発明の第４実施例に係る図１相当図である。図８は、本発明の第５実施例に係る図３相当図である。

　［第１実施例］
　以下、本発明の第１実施例につき、図１ないし図４を参照して説明する。
　図４には、ドラム式洗濯機の全体構造を示している。ドラム式洗濯機は、外箱１を外殻としている。洗濯物出入口２は、この外箱１の前面部（図４で右側）のほぼ中央部に形成されている。扉３は、この洗濯物出入口２を開閉するものとして設けられている。また、操作パネル４は、外箱１の前面部の上部に設けられている。運転制御用の制御装置５は、操作パネル４の裏側（外箱１内）に設けられている。

　水槽６は、外箱１の内部に配設されている。この水槽６は、軸方向が前後方向（図４では右左方向）の横軸円筒状を成す。ドラム式洗濯機は、その水槽６を、外箱１の底板１ａ上に、左右一対（一方のみ図示）のサスペンション７によって前上がりの傾斜状にて弾性支持している。サスペンション７の詳細構造は、後に述べる。

　モータ８は、水槽６の背部に取り付けられている。このモータ８は、この場合、例えば直流のブラシレスモータから成るもので、アウターロータ型である。モータ８は、ロータ８ａの中心部に取り付けた回転軸（図示省略）を、軸受ブラケット９を介して水槽６の内部に挿通している。

　ドラム１０は、水槽６の内部に配設されている。このドラム１０も、軸方向が前後方向の横軸円筒状を成す。ドラム１０は、その後部の中心部を、上記モータ８の回転軸の先端部に取り付けている。これにより、ドラム式洗濯機は、ドラム１０を、水槽６と同軸の前上がりの傾斜状に支持している。ドラム１０は、モータ８によって回転されるようになっている。従って、ドラム１０は、回転槽として機能し、モータ８は、ドラム１０を回転させるドラム駆動装置として機能する。

　ドラム１０は、その周側部（胴部）の全域にわたって、多数（一部のみ図示）の小孔１１を形成している。また、ドラム１０は、前面部に開口部１２を有しており、水槽６は、前面部に開口部１３を有している。洗濯物出入口２は、そのうちの水槽６の開口部１３に、環状のベローズ１４を介して連ねられている。この結果、洗濯物出入口２は、ベローズ１４、水槽６の開口部１３、及び、ドラム１０の開口部１２を介して、ドラム１０の内部に連なっている。

　排水管１６は、水槽６の最低部である底部の後部に、排水弁１５を介して接続されている。乾燥ユニット１７は、水槽６の背部から上方そして前方にかけて配設されている。この乾燥ユニット１７は、除湿器１８と、送風装置１９と、加熱装置２０とを有している。乾燥ユニット１７は、水槽６内の空気を除湿し、次いで加熱して、水槽６内に戻す循環を行うことにより、洗濯物を乾燥させるようになっている。

　ここで、サスペンション７の詳細構造を述べる。図４及び図１に示すように、サスペンション７は、外箱１の底板１ａが有する取付板２１に取り付けたシャフト２２と、水槽６が有する取付板２３に取り付けた円筒状を成すシリンダ２４とを具えて構成されている。詳細には、連結部２２Ｆは、シャフト２２の下端部に設けられている。この連結部２２Ｆは、底板１ａの取付板２１に、ゴムなどの弾性座板２５などを介してナット２６で締結される。これにより、シャフト２２は、取付板２１に取り付けられている。

　一方、連結部材２７は、シリンダ２４の上端部に設けられている。この連結部材２７は、水槽６の取付板２３に、同じく弾性座板２８などを介してナット２９で締結される。これにより、シリンダ２４は、水槽６と共に上下方向（軸方向）に振動するように構成されている。

　軸受ハウジング３３は、シリンダ２４の内部の下部に圧入されて設けられている。軸受ハウジング３３は、軸受３０，３１を、スペーサ３２で上下に離間させて収納配置している。軸受３０，３１は、例えば焼結含油メタル（いわゆる軸受合金）から成るものであり、シリンダ２４の内部に、上記スペーサ３２及び軸受ハウジング３３と共に固定してある。環状で且つリップ状のシール部材３４は、軸受ハウジング３３内の最上部に、固定状態に設けられている。

　リング状の磁性部材である下ヨーク３５は、シリンダ２４内の上記シール部材３４の上方の位置に圧入されて、固定状態に設けられている。更に、フィールド発生装置３６は、この下ヨーク３５の上方に圧入されて、固定状態に設けられている。フィールド発生装置３６は、この場合、磁場発生装置であり、ボビン３６ａにコイル３６ｂを巻装して成る。フィールド発生装置３６は、シリンダ２４の外部に導出した口出線３６ｃを介してコイル３６ｂに通電される。

　下ヨーク３５と同様にリング状の磁性部材である上ヨーク３７は、シリンダ２４内のうち上記フィールド発生装置３６の上方の位置に圧入されて、固定状態に設けられている。この上ヨーク３７は、下ヨーク３５よりも軸方向の長さ（厚み）が大きく、その上部の中心部周りに凹陥部３８を有している。
　そして、シリンダ２４内のうち上ヨーク３７よりも上方の部分は、連結部材２７との間が空洞３９となっている。

　これらに対して、シャフト２２の上部は、軸受３１、スペーサ３２、軸受３０、シール部材３４、下ヨーク３５、フィールド発生装置３６（ボビン３６ａ）、及び、上ヨーク３７を相対的に軸方向に往復動可能に貫通して、上端部が空洞３９内に達している。その状態で、シャフト２２は、その全体が軸受３０，３１によって支持されている。また、下ヨーク３５の下方に位置し、且つ、フィールド発生装置３６の下方に位置したシール部材３４は、このシャフト２２の外周面に密接している。

　そして、シャフト２２とフィールド発生装置３６（ボビン３６ａ）との間、並びに、その近傍であるシャフト２２と下ヨーク３５及び上ヨーク３７との間には、所定の隙間が形成されている。機能性流体（この場合、磁気粘性流体４０）は、その隙間に充填されている。シール部材３４は、この磁気粘性流体４０の漏出を阻止するようになっている。

　ここで、機能性流体とは、前述のように、外部から加える物理量を制御することで粘性などのレオロジー的性質が機能的に変化する流体である。この機能性流体は、電気的エネルギーの印加によって粘性が変化する流体として、磁気粘性流体４０、及び、図示しない電気粘性流体を包含する。本実施例では、磁界（磁場）の強度に応じて粘性特性が変化する磁気粘性流体４０（ＭＲ流体）を、機能性流体として用いている。これに代わり、電界（電場）の強度に応じて粘性特性が変化する電気粘性流体（ＥＲ流体）を、機能性流体として用いてもよい。磁気粘性流体４０は、例えば、オイルの中に強磁性粒子（鉄、カルボニル鉄など）を分散させたものであり、磁界が印加されると強磁性粒子が鎖状のクラスタを形成する。これにより、磁気粘性流体４０は、見かけ上の粘度が上昇する。

　電気粘性流体は、分散系の電気粘性流体と、均一系の電気粘性流体がある。分散系の電気粘性流体は、誘導性を有する微粒子を絶縁性のオイルに分散させた流体である。この分散系の電気粘性流体に電界（電場）をかけると、誘導性の微粒子が鎖状のクラスタ（誘導性の微粒子が電界方向に連なったブリッジ状のもの）を形成する。これにより、分散系の電気粘性流体は、見かけ上の粘度が上昇する。
　均一系の電気粘性流体は、当該電気粘性流体を構成する粒子が、電界によって配向するようになっている。これにより、均一系の電気粘性流体は、見かけ上の粘度が上昇する。

　フィールド発生装置３６は、コイル３６ｂに流される電流値に応じた磁界を発生して、上記磁気粘性流体４０の粘性を制御する。その発生する磁界は、電流値によって可変であり、磁気粘性流体４０の粘性を可変に制御できるようになっている。

　シャフト側ばね受け座４１は、シャフト２２の下部に嵌合固定されている。シリンダ側ばね受け座４２は、このシャフト側ばね受け座４１と離間し対向した態様で、シリンダ２４の下端部に継合固定されている。このシリンダ側ばね受け座４２は、シャフト２２に、相対的に軸方向に往復動可能に嵌挿している。そして、シャフト２２及びシリンダ側ばね受け座４２を囲繞する圧縮コイルスプリングから成るコイルばね４３は、これら両ばね受け座４１，４２間に伸縮自在に装着されている。これにより、ドラム式洗濯機は、サスペンション７を水槽６と外箱１の底板１ａとの間に組み込み、外箱１の底板１ａ上において、水槽６を防振支持するようにしている。

　次に、上記構成のドラム式洗濯機の作用を述べる。
　操作パネル４の操作に基づき、制御装置５が運転を開始させると、洗濯物を収容したドラム１０が回転駆動されることに伴い、水槽６が上下方向を主体に振動する。この水槽６の上下振動に応動して、サスペンション７では、水槽６に一体的に連結されたシリンダ２４が、各部品（連結部材２７、上ヨーク３７、フィールド発生装置３６、下ヨーク３５、シール部材３４、軸受３０、スペーサ３２、軸受３１、軸受ハウジング３３、及び、シリンダ側ばね受け座４２）を伴って、コイルばね４３を伸縮させながらシャフト２２の周囲を上下方向に振動する。図２は、この洗濯機の運転中におけるサスペンション７の一状態を示しており、図１に示した運転前の状態よりも、シリンダ２４が上記各部品を伴って下降している。

　このようにシリンダ２４が上記各部品を伴って上下方向に振動するとき、シャフト２２とフィールド発生装置３６との間、並びに、その近傍であるシャフト２２と下ヨーク３５及び上ヨーク３７との間に充填した磁気粘性流体４０は、その粘性による摩擦抵抗によって減衰力を与え、水槽６の振幅を減衰させる。

　そして、そのとき、フィールド発生装置３６のコイル３６ｂに通電すると、磁場が発生して、磁気粘性流体４０に磁界が与えられ、当該磁気粘性流体４０の粘度が高まる。図３は、その様子を示している。フィールド発生装置３６のコイル３６ｂに通電したことで、シャフト２２－磁気粘性流体４０－上ヨーク３７－シリンダ２４－下ヨーク３５－磁気粘性流体４０－シャフト２２からなる磁気回路４４が発生する。そして、磁束が通過する箇所の磁気粘性流体４０の粘度が高まる。特に磁束密度の高いシャフト２２と上ヨーク３７との間、並びに、下ヨーク３５とシャフト２２との間における各磁気粘性流体４０の粘度は、大幅に高まり、摩擦抵抗が大きく増加する。これにより、シリンダ２４が各部品（特にはフィールド発生装置３６と下ヨーク３５及び上ヨーク３７）を伴って上下方向に振動するときの摩擦抵抗が増加し、減衰力が大きくなる。

　なお、水槽６の上下振動に対する減衰力の制御については、水槽６の共振が現れる起動時の減衰力を大きくするように制御することで、共振時の水槽６の変位や底板１ａへの力の伝達を低減できる。また、共振通過後のドラム１０の高速回転時には、減衰力を小さくするように制御することで、高速脱水時の底板１ａへの力の伝達を低減することができる。

　このように、上記構成のドラム式洗濯機によれば、フィールド発生装置３６のコイル３６ｂに通電することにより、磁気粘性流体４０の粘度を変化させ、減衰力を制御することができる。その構成では、シール部材３４を、シリンダ２４内のフィールド発生装置３６よりも下方の位置に固定して設けている。そして、そのシール部材３４をシャフト２２の外周に密接させて、磁気粘性流体４０の漏出を阻止するようにしている。

　よって、上記構成のドラム式洗濯機では、磁気粘性流体４０を、フィールド発生装置３６とシャフト２２との間、及び、その近傍であるシャフト２２と下ヨーク３５及び上ヨーク３７との間にのみ充填して使用することで、水槽６の防振支持ができる。従って、特許文献１に記載されたものとは異なり、多くの磁気粘性流体４０を使用することがない。これにより、磁気粘性流体４０の使用量の低減を充分に図ることができ、サスペンション７のコスト、ひいては、ドラム式洗濯機のコストの低廉化が可能である。

　また、上記構成のドラム式洗濯機は、フィールド発生装置３６を磁場発生装置としている。磁性部材である上ヨーク３７と下ヨーク３５は、その磁場発生装置の軸方向の両側に配設されている。磁気粘性流体４０は、この上ヨーク３７とシャフト２２との間、及び、下ヨーク３５とシャフト２２との間に、充填されている。これにより、既述のように、磁気粘性流体４０を通過する磁束の密度を高くして当該磁気粘性流体４０の粘度を大幅に高めることができ、大きな減衰力を得ることができる。

　以上に対して、図５～図８は、本発明の第２実施例～第５実施例を示す。それぞれ、第１実施例と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ述べる。

　［第２実施例］
　図５に示す第２実施例においては、軸受３０は、第１実施例の上ヨーク３７よりも軸方向の長さの大きな上ヨーク５１に収納され、フィールド発生装置３６の上方に設けられている。軸受３１は、第１実施例の軸受ハウジング３３よりも軸方向の長さの小さな軸受ハウジング５２にシール部材３４と共に収納され、フィールド発生装置３６の下方に設けられている。即ち、軸受３０，３１は、フィールド発生装置３６の軸方向の両側に配置されている。

　このように構成することにより、軸受３０，３１間の距離を大きく確保できるため、シャフト２２の傾きを低減することができる。また、磁気粘性流体４０を充填する隙間であるシャフト２２とフィールド発生装置３６との間の隙間、シャフト２２と上ヨーク３７との間の隙間、及び、シャフト２２と下ヨーク３５との間の隙間の各ばらつきに起因する減衰力のばらつきを、低減することができる。

　なお、本実施例の構成においても、上述の第１実施例と同様の作用・効果を得ることができる。
　即ち、操作パネル４の操作に基づき、制御装置５が運転を開始させると、洗濯物を収容したドラム１０が回転駆動されることに伴い、水槽６が上下方向を主体に振動する。この水槽６の上下振動に応動して、サスペンション７では、水槽６に一体的に連結されたシリンダ２４が、各部品（連結部材２７、軸受３０、上ヨーク５１、フィールド発生装置３６、下ヨーク３５、シール部材３４、軸受３１、軸受ハウジング５２、及び、シリンダ側ばね受け座４２）を伴って、コイルばね４３を伸縮させながらシャフト２２の周囲を上下方向に振動する。

　このようにシリンダ２４が上記各部品を伴って上下方向に振動するとき、シャフト２２とフィールド発生装置３６との間、並びに、その近傍であるシャフト２２と下ヨーク３５との間、及び、シャフト２２と上ヨーク５１との間に充填した磁気粘性流体４０は、その粘性による摩擦抵抗によって減衰力を与え、水槽６の振幅を減衰させる。

　そして、そのとき、フィールド発生装置３６のコイル３６ｂに通電すると、磁場が発生して、磁気粘性流体４０に磁界が与えられ、当該磁気粘性流体４０の粘度が高まる。フィールド発生装置３６のコイル３６ｂに通電したことで、シャフト２２－磁気粘性流体４０－上ヨーク５１－シリンダ２４－下ヨーク３５－磁気粘性流体４０－シャフト２２からなる磁気回路（図示せず）が発生する。そして、磁束が通過する箇所の磁気粘性流体４０の粘度が高まる。特に磁束密度の高いシャフト２２と上ヨーク５１との間、並びに、下ヨーク３５とシャフト２２との間における各磁気粘性流体４０の粘度は、大幅に高まり、摩擦抵抗が大きく増加する。これにより、シリンダ２４が各部品（特にはフィールド発生装置３６と下ヨーク３５及び上ヨーク５１）を伴って上下方向に振動するときの摩擦抵抗が増加し、減衰力が大きくなる。

　このように、本実施例のドラム式洗濯機においても、フィールド発生装置３６のコイル３６ｂに通電することにより、磁気粘性流体４０の粘度を変化させ、減衰力を制御することができる。その構成では、シール部材３４を、シリンダ２４内のフィールド発生装置３６よりも下方の位置に固定して設けている。そして、そのシール部材３４をシャフト２２の外周に密接させて、磁気粘性流体４０の漏出を阻止するようにしている。

　よって、本実施例のドラム式洗濯機では、磁気粘性流体４０を、フィールド発生装置３６とシャフト２２との間、並びに、その近傍であるシャフト２２と下ヨーク３５との間、及び、シャフト２２と上ヨーク５１との間にのみ充填して使用することで、水槽６の防振支持ができる。従って、特許文献１に記載されたものとは異なり、多くの磁気粘性流体４０を使用することがない。これにより、磁気粘性流体４０の使用量の低減を充分に図ることができ、サスペンション７のコスト、ひいては、ドラム式洗濯機のコストの低廉化が可能である。

　また、本実施例のドラム式洗濯機は、フィールド発生装置３６を磁場発生装置としている。磁性部材である上ヨーク５１と下ヨーク３５は、その磁場発生装置の軸方向の両側に配設されている。磁気粘性流体４０は、この上ヨーク５１とシャフト２２との間、及び、下ヨーク３５とシャフト２２との間に、充填されている。これにより、既述のように、磁気粘性流体４０を通過する磁束の密度を高くして当該磁気粘性流体４０の粘度を大幅に高めることができ、大きな減衰力を得ることができる。

　［第３実施例］
　図６に示す第３実施例においては、スペーサ６１は、磁性部材である上ヨーク３７と下ヨーク３５との間の全部であってフィールド発生装置３６とシャフト２２との間に、配設されている。

　既述のように、磁気粘性流体４０の粘度が最も高くなるのは、シャフト２２と上ヨーク３７との間、並びに、シャフト２２と下ヨーク３５との間である。これらの部分は、減衰力を高めることに寄与する率が最も高い。反対に、それらの部分以外は、減衰力を高めることに寄与する率が低い。よって、そこ（上ヨーク３７と下ヨーク３５との間の全部における、フィールド発生装置３６とシャフト２２との間）にスペーサ６１を配設することで、磁気粘性流体４０の使用を、上ヨーク３７とシャフト２２との間、及び、下ヨーク３５とシャフト２２との間の各間にのみ留めることができる。これにより、磁気粘性流体４０の使用量を、更に低減することができる。

　なお、スペーサ６１は、上ヨーク３７と下ヨーク３５との間の一部であってフィールド発生装置３６とシャフト２２との間に、配設するようにしても良い。

　［第４実施例］
　図７に示す第４実施例においては、シャフト２２の軸方向の往復動に対して減衰力を付与するダンパ部材７１は、フィールド発生装置３６の軸方向の片側において、軸受３０と軸受３１との間に配設されている。このダンパ部材７１は、摩擦材であって弾性体である例えばＥＰＤＭ（エチレン－プロピレン－ジエンゴム）製の円筒状部材である。ダンパ部材７１の内径は、シャフト２２の外径よりも小さい。ダンパ部材７１は、その内周面がシャフト２２の外周面に密接しており、該シャフト２２に摩擦力を及ぼすようになっている。

　このように構成することにより、水槽６が上下に振動したときには、シャフト２２にはダンパ部材７１から摩擦力（クーロン摩擦力）が及ぼされ、減衰力が発生する。よって、脱水運転の起動時に、常時、フィールド発生装置３６のコイル３６ｂに通電をする必要がなく、水槽６の振動が大きいとき（共振時など）にのみ、コイル３６ｂに通電して磁気粘性流体４０の粘度を高めて減衰力を増すようにすればよい。その結果、フィールド発生装置３６のコイル３６ｂの通電時間を低減できるため、サスペンション７の耐久性を向上することができる。

　なお、ダンパ部材７１は、フィールド発生装置３６の軸方向の片側のみでなく、両側に配設してもよい。これにより、より大きな減衰力を得ることができる。

　［第５実施例］
　図８に示す第５実施例においては、シール部材３４は、軸受３０、スペーサ３２、及び、軸受３１の下方に配置されている。また、シャフト２２は、フィールド発生装置３６（磁場発生装置）部分を相対的に往復動する部分２２ａが磁性となっており、シール部材３４部分を相対的に往復動する部分２２ｂが非磁性となっている。この場合、シャフト２２の磁性部分２２ａは、非磁性の金属（アルミニウムなど）から成るシャフト２２の表面を、磁性材で被覆することで実現している。シャフト２２の非磁性部分２２ｂは、同シャフト２２の表面を、そのまま露出させることで実現している。

　このように構成することにより、シャフト２２の磁性部分２２ａ（フィールド発生装置３６部分を相対的に往復動する部分）では、フィールド発生装置３６のコイル３６ｂに通電することで、シャフト２２に磁束を通す磁気回路４４を前述のように形成する。また、このように磁気回路４４を形成しつつ、シャフト２２の非磁性部分２２ｂ（シール部材３４部分を相対的に往復動する部分）では、磁気粘性流体４０が、磁気回路４４から漏れ出した磁気によってシャフト２２の表面に付着することを回避できる。これにより、磁気粘性流体４０がシール部材３４部分から少しずつ漏れ出すことを防止することができ、水槽６の上下振動に対する減衰力を維持できる。

　［その他の実施例］
　図示しないが、シャフト２２と、上ヨーク３７及び下ヨーク３５の両方または一方とを、予め着磁しておくとよい。このように構成すると、磁気粘性流体４０は、それらの磁力により、シャフト２２と上ヨーク３７との間、及び、シャフト２２と下ヨーク３５との間の両方または一方において、初期充填された状態で留まる。そのため、サスペンション７の輸送の際や洗濯機全体の組立ての際に、サスペンション７が横倒し状態になったり、逆様の状態になったりしても、磁気粘性流体４０が初期充填箇所から漏れ出ることがない。従って、磁気粘性流体４０の初期性能を満足に得ることができる。

　この場合、シャフト２２と、上ヨーク３７及び下ヨーク３５の両方または一方とを着磁することに代えて、電池により、磁場発生装置から成るフィールド発生装置３６から、シャフト２２と、上ヨーク３７及び下ヨーク３５の両方または一方とに対して、磁場を発生することを可能としてもよい。この場合も、同様の作用効果を得ることができる。

　更に、磁場発生装置から成るフィールド発生装置３６は、コイル３６ｂに通電する電気回路に、通電方向を切り換えるスイッチなどを設け、磁場の磁束の向きを変更可能としてもよい。このように構成すれば、コイル３６ｂの通電方向を毎回切り換えることにより、磁場の磁束の向きも毎回変更できる。これにより、前述の磁気回路４４を形成した部品に意図しない着磁が発生することを防止でき、減衰力が変化することを避けることができる。

　本発明のドラム式洗濯機は、サスペンションを、シリンダと、このシリンダの内部に固定され、電場を可変に発生する電場発生装置と、この電場発生装置を相対的に軸方向に往復動可能に貫通して支持されたシャフトと、このシャフトと電場発生装置との間に充填された電気粘性流体から成る機能性流体と、電場発生装置の下方に位置してシリンダの内部に固定され、シャフトの外周面に密接して機能性流体の漏出を阻止するシール部材とを具備して構成してもよい。即ち、サスペンションは、フィールド発生装置として電場発生装置を使用し、機能性流体として電気粘性流体を使用して構成してもよい。

　この場合、電場発生装置は、次のように構成するとよい。即ち、電極を、シリンダの内側に、シャフトの外周面と間隔を有して配置する。電気粘性流体を、電極とシャフトの間に配置する。そして、その電極に、例えば数ＫＶの電圧を印加する構成とする。要するに、シリンダの内側にコンデンサ（電極）を設け、そのコンデンサの内部に電気粘性流体を配置した構成とする。

　なお、本発明では、電気粘性流体は、分散系の電気粘性流体が適している。分散系の電気粘性流体の方が、均一系の電気粘性流体よりも、その機能・性質が磁気粘性流体４０に似ているからである。

　このほか、本発明は、上述の各実施例にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。

　以上に説明したように、本発明は、ドラムを収容する水槽を、機能性流体を使用するサスペンションによって防振支持するドラム式洗濯機に有用である。

　６は水槽、７はサスペンション、１０はドラム、２２はシャフト、２２ａはシャフトの磁性部分、２２ｂはシャフトの非磁性部分、２４はシリンダ、３０，３１は軸受、３４はシール部材、３５は下ヨーク（磁性部材）、３６はフィールド発生装置（磁場発生装置）、３７は上ヨーク（磁性部材）、４０は磁気粘性流体（機能性流体）、５１は上ヨーク（磁性部材）、６１はスペーサ、７１はダンパ部材を示す。

Claims

　ドラムを収容する水槽を防振支持するサスペンションを有したドラム式洗濯機において、
　前記サスペンションは、
　シリンダと、
　前記シリンダの内部に固定され、磁場を可変に発生する磁場発生装置と、
　前記磁場発生装置の軸方向の両側に配設された磁性部材と、
　前記磁場発生装置及び前記磁性部材を相対的に軸方向に往復動可能に貫通して支持されたシャフトと、
　このシャフトと前記磁場発生装置との間、及び、その近傍である前記シャフトと前記両磁性部材との間に充填された磁気粘性流体から成る機能性流体と、
　前記磁場発生装置の下方に位置して前記シリンダの内部に固定され、前記シャフトの外周面に密接して前記機能性流体の漏出を阻止するシール部材とを具備して構成されていることを特徴とするドラム式洗濯機。
　請求の範囲第１項に記載のドラム式洗濯機において、
　前記シリンダの内部に固定され、前記シャフトを軸方向に往復動可能に支持する軸受が設けられていることを特徴とするドラム式洗濯機。
　請求の範囲第１項に記載のドラム式洗濯機において、
　前記両磁性部材間の全部または一部であって前記磁場発生装置と前記シャフトとの間に、スペーサが配設されていることを特徴とするドラム式洗濯機。
　請求の範囲第１項に記載のドラム式洗濯機において、
　前記シャフトと、前記両磁性部材の両方または一方は、着磁されていることを特徴とするドラム式洗濯機。
　請求の範囲第１項に記載のドラム式洗濯機において、
　前記磁場発生装置は、電池により、前記シャフトと、前記両磁性部材の両方または一方に対して、磁場を発生することが可能とされていることを特徴とするドラム式洗濯機。
　請求の範囲第１項に記載のドラム式洗濯機において、
　前記磁場発生装置の軸方向の片側または両側に、前記シャフトの軸方向の往復動に対して減衰力を付与するダンパ部材が配設されていることを特徴とするドラム式洗濯機。
　請求の範囲第１項に記載のドラム式洗濯機において、
　前記シャフトは、前記磁場発生装置部分を相対的に往復動する部分が磁性であり、前記シール部材部分を相対的に往復動する部分が非磁性であることを特徴とするドラム式洗濯機。
　請求の範囲第１項に記載のドラム式洗濯機において、
　前記磁場発生装置は、磁場の磁束の向きを変更することが可能とされていることを特徴とするドラム式洗濯機。
　請求の範囲第２項に記載のドラム式洗濯機において、
　前記軸受は、前記磁場発生装置よりも下方に設けられ、
　前記シール部材は、前記磁場発生装置の下方において前記軸受よりも上方に設けられていることを特徴とするドラム式洗濯機。
　請求の範囲第２項に記載のドラム式洗濯機において、
　前記軸受は、前記磁場発生装置の軸方向の両側に配置されていることを特徴とするドラム式洗濯機。
　請求の範囲第２項に記載のドラム式洗濯機において、
　前記軸受は、前記磁場発生装置の軸方向の片側に２つ設けられ、
　これら軸受間に、前記シャフトの軸方向の往復動に対して減衰力を付与するダンパ部材が配設されていることを特徴とするドラム式洗濯機。
　ドラムを収容する水槽を防振支持するサスペンションを有したドラム式洗濯機において、
　前記サスペンションは、
　シリンダと、
　前記シリンダの内部に固定され、電場を可変に発生する電場発生装置と、
　前記電場発生装置を相対的に軸方向に往復動可能に貫通して支持されたシャフトと、
　このシャフトと前記電場発生装置との間に充填された電気粘性流体から成る機能性流体と、
　前記電場発生装置の下方に位置して前記シリンダの内部に固定され、前記シャフトの外周面に密接して前記機能性流体の漏出を阻止するシール部材とを具備して構成されていることを特徴とするドラム式洗濯機。