経口ワクチン
技術分野
本発明は、 細菌の感染症の予防およぴ治療に有用な経ロワクチンおよびそ の製造方法に関する。
明 背景技術
書
腸チフスは、 サルモネラの一種であるチフス菌 (Salmonella enterica va r. Typhi) によって引き起こされる感染症の一種であり、 汚染された飲み水 や食物などを摂取することにより、 感染に至る。 腸チフスは、 全世界、 特に アジア、 中東、 東欧、 アフリカおよび中南米地域に多発している。 年間 1, 6 0 0万人が腸チフスに罹患し、 6 0万人が命を落としており、 犠牲者は主 に発展途上国の乳幼児である。 現在、 サルモネラ菌を起炎菌とする腸チフス に対するワクチンとして、 弱毒化サルモネラ菌 (Ty21a) などの経口投与が 行われているが、 下痢や嘔吐などの副作用を伴うため 5歳以下の乳幼児には 投与できない。 腸チフスは、 一旦感染に至ると、 体内で抗体が作成されるた め、 免疫が獲得されるが、 この効果は長く持続しない。
コレラは、 ビブリオ属 (Vibrio cholerae 01又は 0139) によって引き起こ される感染症の一種である。 コレラは、 全世界、,特にアジア、 中東、 および アフリカに多発している。 クラシカルコレラは、 大流行を幾度となく繰返し、 その病原性の強さ (死亡率 2 0 %) によって何百万もの人が犠牲となってい る。 現在、 予防接種も行われているが、 効果は比較的低く、 5 0 %程度であ るとされている。
細菌性赤痢は、 世界中に広く分布する細菌性の感染症であり、 特に衛生状
態の悪い国で多く見られる。 細菌性赤痢は、 シグラ (Shigella) 属に属する 腸内細菌により引き起こされ、 病原性が強い順に、 Shigella dysenteriae, S. flexneri、 S. boydii、 および S. sonneiの 4群がある。
上記のように、 細菌による種々の感染症があり、 効果的な細菌性感染症に 対するワクチンが必要とされていることは明らかである。 特に、 ヒ トからヒ 卜に伝染する感染症を防御するためのワクチンが必要とされている。 現在、 例えば、 種々のサルモネラ種に对するいくつかのワクチンが商業的に入手可 能である。 し力 し、 これらのワクチンは、 時には有効であるが、 重大な欠点 を有する。 これらのワクチンは、 一般に、 野生型細菌の感染の場合と同等の 抗体集団を誘導するため、 被験者に過大な負荷を強いることになる。
この問題を解決するために、 細菌の鞭毛に着目した研究もなされている。 鞭毛は細胞表面から突き出た長い構造体であり、 運動性および宿主細胞への 侵入において重要な役割を果たす。 鞭毛はフラジェリンと称されるタンパク 質からなる。 このフラジェリンタンパク質は高レベルの抗体を誘導すること が知られている。 サルモネラ (Salmonella typhimurium) の抗原性タンパク 質フラジェリンは、 McClelland M.ら, Nature, 413卷, 852頁 (2001) に記 載されている。 コレラ (Vibrio cholerae) の抗原性タンパク質フラジェリ ンは、 Heiderbergら, Nature, 406卷, 477頁 (2000)に記載されている。 ま た、 赤痢菌 (Shigella dysenteriae) の抗原性タンパク質フラジヱリンは、 Tominaga A.ら, Genes Genet. Syst. , 76卷, 111頁 (2001) 【こ記載されてレヽ る。 しかし、 このような鞭毛に対する抗体を用いる有効なワクチンは、 未だ 提供されていない。 発明の開示
本発明は、 感染症を起こす細菌に由来するフラジェリンタンパク質のみで は感染症を発症しないため、 このフラジェリンタンパク質をワクチンとして
活用する手段の提供を目的とする。
本発明は、 細菌感染性疾患に対する経口ワクチンを提供し、 上記経口ワク チンは、 カプセル製剤の形態であり、 上記カプセル製剤は、 カプセル皮膜と 抗原タンパク質フラジェリンを発現する形質転換微生物とで構成され、 上記 力プセル皮膜は耐酸性であり、 上記形質転換微生物は上記力プセル皮膜によ つて包含されている。
本発明はまた、 細菌感染性疾患に対する経口ワクチンの第一の製造方法を 提供し、 この方法は、 抗原タンパク質フラジェリンを発現する形質転換微生 物を調製する工程;および上記形質転換微生物を耐酸性のカプセル皮膜によ つて封入して、 耐酸性カプセノレ製剤を生成する工程;を含む。
本発明はまた、 細菌感染性疾患に対する経口ワクチンの第二の製造方法を 提供し、 この方法は、 抗原タンパク質フラジェリンを発現する形質転換微生 物を調製する工程;上記形質転換微生物をカプセル皮膜によって封入して、 カプセル製剤を生成する工程;および上記生成したカプセル製剤のカプセル 皮膜を耐酸性にする工程;を含む。
一つの実施態様においては、 上記抗原タンパク質フラジェリンは、 上記微 生物の菌体内に発現される。 別の実施態様においては、 上記抗原タンパク質フラジェリンは、 上記微生 物の菌体外に分泌される。
一つの実施態様においては、 上記微生物は、 ビフイ ドバタテリゥム (Bifi dobacterium) 属、 ラク トノくチノレス (Lactobaci llus) 属、 ラク ト ッカス (Lactococcusj 属、 へティォコッカス (Pediococcus) 、 ス トレアトコッ カス (Streptococcus) 属、 ェンテロコッカス (Enterococcus) 属、 ロイコ ノストック (Leuconostoc) 晨、 テトフケノコッカス (Tetragenococcus) 為、 エノコッカス (Oenococcus) 属、 およびワイセラ (Weissel la) 属からなる 群に属する微生物から選択される少なくとも 1種である。
一つの実施態様においては、 上記経口ワクチンは、 腸チフス、 コレラ、 ま たは赤痢に対するワクチンである。
一つの実施態様においては、 上記カプセル製剤は、 シームレスカプセル製 剤、 軟カプセル製剤、 または硬カプセル製剤である。
本発明によれば、 抗原性タンパク質であるフラジェリンを発現する形質転 換微生物は、 耐酸性カプセル製剤中に含有される。 そのため、 胃酸から形質 転換微生物が保護され、 生きた形質転換微生物を効果的に腸に送達すること ができる。 この製剤は、 腸内で溶解され、 放出された形質転換微生物が抗原 性を有するタンパク質であるフラジェリンを生産する。 フラジェリン自体に は感染性はないが、 体内で抗体が生産される。 特に、 ビフィズス菌ゃ乳酸菌 などのいわゆる善玉菌といわれる腸内細菌を用いて形質転換微生物を調製し たとき、 腸内細菌が腸内で生育できる。 従って、 腸内でフラジェリンタンパ ク質が産生され、 産生されたフラジヱリンタンパク質を抗原として体内での 抗体産生が誘導される。 よって、 感染症が抑制され得る。
従って、 本発明によれば、 抗体負荷の小さい細菌性感染症の予防および治 療方法を提供することが可能となる。 図面の簡単な説明
図 1は、 プラスミ ド p B L E S 1 0 0の構造を示す模式図である。
図 2は、 フラジェリン発現ベクターとして調製された p B L E S— F 1 i
Cの構造を示す模式図である。
図 3は、 三層構造でなる、 フラジェリン発現形質転換微生物を含有するシ ームレスカプセル製剤の構成を示す模式断面図である。
発明を実施するための最良の形態
本発明の細菌感染性疾患に対する経口ワクチンは、 カプセル製剤の形態に
ある。 本明細書中では、 内容物をその中に含むカプセルを 「カプセル製剤」 という。 本発明におけるカプセル製剤は、 カプセル皮膜と抗原タンパク質フ ラジェリンを発現する形質転換微生物とで構成され、 このカプセル皮膜は耐 酸性である。 耐酸性であるカプセル皮膜と抗原タンパク質フラジヱリンを発 現する形質転換微生物とで構成されるカプセル製剤とは、 耐酸性のカプセル 皮膜を有し、 そして抗原タンパク質フラジヱリンを発現する形質転換微生物 をカプセル内容物として含有する限り、 任意の構成および形状をとり、 当該 カプセル製剤が、 さらなる構成要素を含んでいることを除外しない。 したが つて、 抗原タンパク質フラジヱリンを発現する形質転換微生物が、 耐酸性の カプセル皮膜によって包含されている、 または封じ込められている (すなわ ち、 耐酸性の皮膜によって形成されるカプセルの内部領域に含有されてい る) 。 本明細書中では、 このカプセル製剤を 「耐酸性カプセル製剤」 ともい ο
以下、 経口ワクチンの調製のためのフラジェリン遺伝子の取得、 フラジェ リン発現ベクターの調製、 フラジェリンを発現する形質転換微生物の調製、 形質転換微生物を含有する耐酸性力プセル製剤の製造、 および細菌感染性疾 患に対する経口ワクチンについて、 順に説明する。
1 . フラジヱリン遺伝子の取得
フラジェリンをコードする遺伝子は、 公知の遺伝子配列に基づいて、 入手 可能である。 フラジェリンをコードする遺伝子は、 例えば、 感染症病原細菌 (例えば、 サルモネラ、 コレラ菌、 または赤痢菌) から調製したゲノム D N Αあるいは c D N Aを铸型とし、 該細菌のフラジェリンの構造遺伝子の配列 情報に基づいて作製したプライマー対を用いてポリメラーゼ連鎖反応 (P C R) で増幅し、 取得し得る。
腸チフスのフラジェリンをコードする遣伝子は、 McClelland .ら, Natur
e, 413巻, 852頁 (2001) に記載されたサルモネラ (S. typhimurium) のフ ラジェリンの構造遺伝子配列から入手可能である。 例えば、 S. typhimurium の染色体 DNAあるいは c DNAを铸型とし、 配列表の配列番号 1および 2 の配列をプライマーとするポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) で増幅し、 入手 できる。
コレラのフラジェリンをコードする遺伝子は、 Heiderbergら, Nature, 40 6卷, 477頁 (2000)に記載されたコレラ菌 (Vibrio cholerae) のフラジヱリ ンの構造遺伝子から入手可能である。 例えば、 V. choleraeの染色体 DN A あるいは c DNAを鏡型とし、 配列表の配列番号 3および 4の配列をプライ マーとする PC Rで増幅し、 入手できる。
赤痢のフラジェリンをコ一ドする遺伝子は、 Tominaga A.ら, Genes Genet. Syst. ,76卷, 111頁 (2001) に記載された赤痢菌 (Shigella dysenteriae) のフラジェリンの構造遺伝子から入手可能である。 例えば、 S. dysenteriae の染色体 DNAあるいは c DNAを铸型とし、 配列表の配列番号 5および 6 の配列をプライマーとする PC Rで増幅し、 入手できる。
2. フラジェリン発現ベクターの調製
上記 1. のように調製されたフラジヱリン遺伝子をプラスミ ドに導入し、 発現ベクターを調製する。 発現ベクターの調製に用いられるプラスミ ドとし ては、 腸内細菌で発現可能なプラスミ ドであれば特に制限はない。 ビフイ ド バクテリゥム (Bifidobacterium) 属の微生物に由来するプラスミ ド (例え ば、 p TB 4、 pTB 6、 p TB 1 0、 p B L 6 7または p B L 78 ) 、 ス トレプトコッカス (Streptococcus) 属の微生物に由来するプラスミ ド (例 えば、 プラスミ ド p C 1 94) などが用いられる。 これらのプラスミ ドと大 腸菌のプラスミ ドとの複合プラスミ ドもまた用いられる (例えば、 特開平 5 - 1 308 76号公報参照) 。
発現の安定性および形質転換株の調製のための D N Aの調製の容易さとい う観点から、 上記プラスミ ドの中でも、 ビフイ ドバタテリ ゥム ' ロングム
(B. longum) のプラスミ ドと大腸菌のプラスミ ドとから合成された複合プ ラスミ ドが好ましい。
発現ベクターは、 形質転換株を選択する観点から、 抗生物質耐性、 ァミノ 酸要求性などの選択マーカーを有することが好ましい。
発現ベクターは、 フラジェリンの発現のために、 または発現に有利となる ように、 調節配列を付加したものが好ましレ、。 調節配列としては、 例えば、 プロモーター配列、 リーダー配列、 プロペプチド配列、 ェンハンサー配列、 シグナル配列、 ターミネータ一配列などが挙げられる。 これらの調節配列は、 腸内細菌で発現するものであれば、 その由来は特に制限はない。
プロモーター配列としては、 腸内細菌で発現するものであれば特に制限は ない。 発現効率の観点からは、 ビフィ ドバクテリゥム · ロングム (B. longu m) のヒス トン様タンパク (H U) のプロモーター配列 (以下、 H Uプロモ 一ターということがある) が好ましく用いられる。 例えば、 B. longumの染 色体 D N Aあるいは c D N Aを铸型とし、 配列表の配列番号 7および 8の配 列をプライマーとして、 配列表の配列番号 9および 1 0の HU遺伝子の配列 (Biosci. Biotechnol. Biochem. 66 (3) , 598-603 (2002) ) 中、 塩基配列
1〜1 9 2位の配列を増幅し、 回収することにより、 H Uプロモーター遺伝 子が得られる。 プライマー配列に適切な制限酵素部位 (配列番号 7では Hind
III、 配列番号 8では Ncol) を付加することにより、 容易に、 プラスミ ドに 組み込むことができる。
また、 発現効率を高める観点からは、 ターミネータ一配列を有することが 好ましい。 ターミネータ一配列としては、 上記 H U遺伝子のターミネータ一 配列が好ましく用いられ、 配列表の配列番号 9の 4 7 5〜 6 0 0位の塩基配 列である。
その他、 必要に応じて、 リーダー配列、 プロペプチド配列、 ェンハンサー 配列、 シグナル配列などを配置することができる。 例えば、 分泌のためのリ ーダー配列およびシグナル配列を備え、 微生物菌体外にフラジェリンを分泌 できるようにすることが好ましい。
このように、 上記のプラスミ ドに、 必要に応じて、 プロモーター配列、 タ 一ミネーター配列などの調節配列、 および選択マーカー遺伝子を導入して、 クローニングベクターが調製される。 クローニングベクターのプロモーター の下流には、 マルチクローニングサイトを有するリンカ一などを備えている ことが好ましい。 このようなリンカ一を用いることにより、 フラジェリンを コードする遺伝子 (DNA) がプロモーターの下流に、 かつ、 インフレーム でフラジェリンを発現することができるように、 組み込まれる。
クローニングベクター用のプラスミ ドとしては、 p BLES 100、 p B LEMl 00などが挙げられる。 図 1に p BLES l O 0の構造模式図を示 す。 このプラスミ ド p B LE S 100は、 大腸菌のベクター p B R 322由 来の Pstl- EcoRI断片および Pstl- Hindlll断片 (合計 4. 4 k b p :図 1の直 線部分) 、 B. longumのベクター p TB 6由来の Pstl- Pstl断片 (3. 6 k b p :図 1の黒帯部分) 、 ならびにェンテロコッカス . フヱカーリス (Entero coccus faecalis) 由来のスぺクチノマイシンアデ二ノレトランスフェラーゼ (spectinomycin adenyltransf erase: ¾ p R をコー する領域 (1. 1 k b p :図 1の白抜き矢印) を含む。
例えば、 プラスミ ド p BLES 100は、 以下のようにして調製される。 B. longum由来のプラスミ ドである p TB 6を Pstlで切断し、 大腸菌のクロ 一二ングベクター p BR 322 (タカラバイオ社製) の Pstl部位に導入する。 さらに、 ェンテロコッカス . フエカーリスの S pRをコードする Hindlll- Ec oRI断片領域を p B R 322の EcoRI- Hindlll部位に挿入する。
このプラスミ ド p B LE S 100に上記取得した HUプロモーター配列お
よびフラジェリン遺伝子 (以下、 F l i C遺伝子ということがある) 断片を インフレームで組み込むことにより、 フラジェリンを発現するベクターが得 られる。 具体的に例示すると、 Ncol切断部位を有する配列番号 1の配列と Ba mHI切断部位を有する配列番号 2の配列とを一対のプライマーとし、 S. typh imuriumの染色体 DNAを錄型として PCRで増幅し、 増幅した断片を Ncol および BamHIで切断し、 フラジェリン遺伝子断片を調製する。 他方で、 Hindi II部位を有する配列番号 7のプライマーと Ncol部位を有する配列番号 8のプ ライマーとを一対のプライマーとし、 B. longumの染色体 DNAを铸型とし て PC Rを行い、 増幅した断片を Hindlllおよび Ncolで切断し、 HUプロモ 一ター断片を調製する。 これらの断片を、 Hindlllおよび BamHIで切断した p B LE S 100とライゲーションすることにより、 HUプロモーター遺伝子 (図 2中 「hu p P」 ) の下流にサルモネラのフラジェリン遺伝子 (図 2中 「フラジェリン」 ) が組み込まれたフラジェリン発現ベクター p B LE S— F 1 i Cが得られる。 この発現ベクター p B LE S— F 1 i Cを図 2に示す。 このような方法で得られるフラジェリン発現ベクターは、 腸内細菌の形質転 換に用いられる。
菌体外に分泌発現するためには、 プラスミ ド p BLES l 00に分泌シグ ナルペプチド遺伝子断片およびフラジヱリン遺伝子 (F 1 i C遺伝子) 断片 をインフレームで組み込むことにより作製したベクターが用いられ得る。 具 体的に例示すると、 Ncol切断部位を有する配列番号 1の配列と BamHI切断部 位を有する配列番号 2の配列とを一対のプライマーとし、 S. typhimuriumの 染色体 DN Aを铸型として PC Rで増幅し、 増幅した断片を Ncolおよび BamH Iで切断し、 フラジェリン遺伝子断片を調製する。 他方で、 Hindlll部位を有 する配列番号 1 1のプライマーと Ncol部位を有する配列番号 12のプライマ —とを一対のプライマーとし、 B. bifidumの染色体 DNAを铸型として P C Rを行い、 増幅した断片を Hindlllおよび Ncolで切断し、 分泌シグナルぺプ
チド遺伝子断片を調製する。 これらの断片を、 BamHIおよび Hindlllで切断し た p B L E S l O Oと混合することにより、 分泌シグナルぺプチド遺伝子断 片の下流にサルモネラのフラジェリン遺伝子が組み込まれたフラジェリン分 泌型発現ベクター p B L E S— S P— F I i Cが得られる。 このような方法 で得られるフラジェリン発現ベクターは、 腸内細菌の形質転換に用いられる。
3 . フラジェリンを発現する形質転換微生物の調製
フラジェリンが発現される宿主の微生物としては、 ヒ トあるいは動物の大 腸および小腸内で生育できる細菌 (腸内細菌) であれば特に制限はない。 宿 主細菌が腸内で生育することにより、 フラジェリンが発現される。 発現され たフラジェリンは、 腸から血液中に吸収され、 抗原性を発揮し、 抗体が惹起 される。 ビフィズス菌ゃ乳酸菌などのいわゆる善玉菌といわれる腸内で生育 可能な細菌 (すなわち、 腸内細菌) を好都合に利用し得る。
好ましい微生物としては、 例えば、 ビフイ ドバクテリウム属、 ラクトバチ ルス属、 ラタトコッカス属、 ぺディォコッカス属、 ストレプトコッカス属、 ェンテロコッカス属、 ロイコノストック属、 テトラゲノコッカス属、 ェノコ ッカス属、 およびワイセラ属に属する微生物が挙げられる (これらを総称し て 「乳酸菌」 ともいう) 。
ビフイ ドバクテリウム属に属する微生物 (これらを総称して 「ビフィズス 菌」 ともいう) としては、 例えば、 ビフイ ドバクテリゥム ' アドレスセンテ イス (Bifidobacterium adolescentis) 、 ビフィ ドノ クテリゥム ·アングラ タム (B. angulatum) 、 ビフイ ドバクテリウム · アニマリス ·サブスピーシ ス ' アニマリス (B. animal i s subsp. animal is) 、 ビフイ ドバクテリ ウ ム · アニマリス ·サブスピーシス ' ラタティス (B. animalis subsp. lacti s) 、 ビフイ ドバクテリゥム 'ァステロイデス (B. asteroides) 、 ビフイ ド バクテリゥム . ビフィダム (B. bifidum) 、 ビフィ ドバクテリゥム .ボウム
(B. bourn) 、 ビフイ ドバクテリゥム .ブレべ (B. breve) 、 ビフイ ドバク テリゥム 'カテヌラタム (B. catenulatum) 、 ビフイ ドバタテリゥム .ケリ ナム (B. choerinum) 、 ビフイ ドバタテリゥム 'コリネフォーム (B. coryn eforme) 、 ビフイ ドバタテリゥム 'クニタリ (B. cuniculi) 、 ビフイ ドバ クテリゥム 'デンティコレンス (B. dent icolens) 、 ビフイ ドバクテリウ ム 'デンティゥム (B. dent ium) 、 ビフイ ドバクテリゥム 'ガリクム (B. g allicum) 、 ビフイ ドバタテリゥム .ガリナラム (B. gallinarum) 、 ビフィ ドバクテリゥム · グロボサム (B. globosum) 、 ビフイ ドバクテリウム 'ィ ンディカム (B. indicum) 、 ビフイ ドバクテリゥム .インファンテイス (B. infantis) 、 ビフイ ドバクテリウム ·イノピナタム (B. inopinatum) 、 ビ フイ ドバタテリゥム . ラクテイス (B. lactis) 、 ビフイ ドバタテリゥム . ロングム (B. longum) 、 ビフイ ドバタテリゥム 'マグナム (B. magnum) 、 ビフィ ドバクテリゥム 'メリシカム (B. merycicum) 、 ビフィ ドバクテリゥ ム · ミニマム (B. minimum) 、 ビフィ ドバクテリゥム 'パーブ口ラム (B. p arvulorum) 、 ビフイ ドバタテリゥム 'シユードカテヌラタム (B. pseudoca tenulatum) 、 ビフイ ドバクテリゥム ' シユードロングム .サブスピーシ ス ·グロホスム (B. pseudolongum subsp. globosum) 、 ビフィ ドバクテリ ゥム 'シユードロングム 'サブスピーシス 'シユードロングム (B. pseudol ongura subsp. pseudolongum) 、 ビフィ ドノくクテリゥム · 7ロノレム (B. pull orum) 、 ビフイ ドバクテリゥム 'ルミナル (B. ruminale) 、 ビフイ ドバタ テリゥム 'ルミナンティアム (B. ruminant ium) 、 ビフイ ドバタテリゥム . セクラノレ (B. saeculare) 、 ビフイ ドバクテリウム · スカードビ (B. scard ovii) 、 ビフイ ドバクテリゥム 'ズブチル (B. subtile) 、 ビフイ ドバクテ リウム ' スイス (B. suis) 、 ビフイ ドバタテリゥム .サームァシドフィル ム (B. thermacidophilum) 、 およびビフイ ドバタテリゥム 'サームフィノレ ム (B. thermophilum) が挙げられる。
この中でも、 ビフイ ドパ'クテリゥム 'アドレスセンティス (Bifidobacter ium adolescentis) 、 ビフィ ドバクテリ ゥム · アニマリス · サブスピーシ ス · ァ マジス (B. animal is subsp. animal i s) 、 ビフィ ドノくクテジゥ ム · アニマリス ·サブスピーシス · ラクテイス (B. animalis subsp. lacti s) 、 ビフィ ドバクテリ ゥム ' ビフィダム (B. bifidum) 、 ビフィ ドバクテ リウム 'ブレベ (B. breve) 、 ビフイ ドバクテリウム · ラクテイス (B. lac tis) 、 ビフィ ドバクテリゥム · ロングム (B. longum) 、 およぴビフィ ドバ クテリゥム ' シユードロングム 'サブスピーシス ' シユードロングム (B. p seudolongum subsp. pseudolongum) 3女子 しく用レヽらォしる。
ラク トバチルス属に属する微生物としては、 例えば、 ラク トバチルス ·ァ シドフィルス (Lactobaci llus acidophi lus) 、 ラク トバチルス ·アミロボ ラス (L. amylovorus) 、 ラク 卜ノくチノレス ·ァ二マリス (L. animalis) 、 ラ ク トバチルス .ブレビス (L. brevis) 、 ラタ トバチルス · ブレビス ·サブ スピーシス · クフべセンシス (し brevis subsp. gravesensis 、 フク トノ チルス 'ブフネリ (L. buchneri) 、 ラク トバチルス ·ブルガリタス (L. bu lgaricus) 、 ラク トバチルス ·カゼィ (L. casei) 、 ラタ トバチルス ·カゼ ィ · サブスピーシス · カゼィ (L. case i subsp. case i) 、 ラタ トバチノレ ス · カゼィ ·サブスピーシス · プランタラム (L. casei subsp. plantaru m) 、 ラク トバチ^/ス ·カゼィ ·サブスピーシス · トレランス (し casei su bsp. tolerans) 、 ラク トバチルス ·セロビォサス (L. cellobiosus) 、 ラ ク トバチノレス .カーバタス (L. curvatus) 、 ラタ トバチルス ·デルブルッ キ (L. delbruecki i) 、 ラタ トバチルス ·デルブルツキ ·サブスピーシス · フノレガリクス (L. delbrueckii subsp. bulgaricus) 、 ラク 卜ノくチノレス -テ' ノレブノレツキ ·サブスピーシス ·テノレブノレツキ (L. delbruecki i subsp. delb ruecki i) 、 ラク トバチルス 'デルブルツキ .サブスピーシス . ラクテイス
(し. delbruecki i subsp. lactis) 、 ラク 卜ノくチノレス ·ディ/くージエンス
(L. divergens) 、 ラク 卜ノくチノレス · フアーメンタム (L. fermentum) 、 ラ ク トバチルス · フルク トサス (L. fructosus) 、 ラタ トバチルス · ガセリ (L. gasseri) 、 ラク トバチルス ' ヒルガルディ (し hilgardi i) 、 ラク ト バチノレス ·ケフィール (L. kefir) 、 ラタ トバチルス · ライヒマニイ (し 1 eicnmanni i) 、 ラク 卜ノくチノレス · ノ ラカゼィ (L. paracasei) 、 ラク 卜ノくチ ノレス · / ラカセィ ·サブスピーシ;^ · / ラカゼィ (L. paracasei subsp. pa racasei) 、 ラク 卜ノ チノレス ·ペン卜一サス (L. pentosus) 、 ラク 卜 くチノレ ス ' プランタラム (し plantarum) 、 ラク トバチルス ' ロイテリ (L. reute ri) 、 ラク トバチルス · ラムノーザス (L. rhamnosus) 、 ラク トバチルス · サケィ (L. sakei) 、 ラク トバチルス ·サケィ ·サブスピーシス ·サケィ (し sakei subsp. sakei) 、 ラク トバチノレス 'サンフランシスコ (し sanf rancisco) 、 ラク 卜ノ チノレス · ノくチノステノレクス (L. vaccinostrcus 、 お よびラク トバチルス ·スピーシス (Lactobacillus sp. ) が挙げられる。
ラタ トコッカス属に属する微生物としては、 例えば、 ラク トコッカス ·ガ ルビエ (Lactococcus garvieae) 、 ラク 卜コッカス - ラタテイス (L. lacti s) 、 ラク トコッカス ' ラクテイス ·サブスピーシス 'ホードニェ (L. lact is subsp. hordniae) 、 ラク トコッカス · ラタティス *サブスピーシス · ラ クテイス (L. lact is subsp. lactis) 、 ラク トコッカス 'プランタラム (L. plantarum) 、 およびラク トコッカス ' ラフイノラクテイス (し raffino丄 a ctis) が挙げられる。
ぺディォコッカス属に属する微生物としては、 例えば、 ぺディォコッ力 ス *ペントサセウス (Pediococcus pentosaceusj 、 およひぺアイオコッカ ス ·ァシデイラクティシ (P. acidilactici) が挙げられる。
ス トレプトコッカス属に属する微生物としては、 例えば、 ス トレプトコッ カス . ボビス (Streptococcus bovis) 、 ス トレプトコッカス - タレモリス
(S. cremoris) 、 ストレプトコッカス ' フエ一カリス (S. faecalis) 、 ス
トレプトコッカス ' ラクテイス (S. lactis) 、 ストレプトコッカス · ピオ ジェネス (S. pyogenes) 、 およびストレプトコッカス 'サーモフィラス (S. thermophi lus) 力挙【ずりれる。
ェンテロコッカス属に属する微生物としては、 例えば、 ェンテロコッカ ス *カセリフラブス (Enterococcus casselif lavus) 、 およびェンテロコッ カス . フヱカーリス (E. faecalis) が挙げられる。
ロイコノス トック属に属する微生物としては、 例えば、 ロイコノストツ ク ·シトリウム (Leuconostoc citreum)、 ロイコノストック 'メセンテ口ィ テス (Leuconostoc mesenteroides) 、 ロイコノストック - メセンテロイデ ス ·サブスピーシス · メセンテロイテス (し mesenteroides subsp. mesent ero i des) 、 およびロイコノストツク ·メセンテロイデス ·サブスピーシ ス *テキス卜フニキュム (し mesenteroides subsp. dextranicum 力挙け られる。
テトラゲノコッカス属に属する微生物としては、 例えば、 テトラゲノコッ カス · ノヽロフィラス (Tetragenococcus halophilus) 、 およびテ卜ラゲノコ ッカス ' ミユリアテイクス (T. muriaticus) が挙げられる。
エノコッカス属に属する微生物としては、 例えば、 エノコッカス ·ェニ
(Oenococcus oeni) が挙げられる。
ワイセラ属に属する微生物としては、 例えば、 ワイセラ ' ビリデセンス (Weissella vilidescens) 力挙げられる。
フラジェリン発現ベクターの腸内細菌への導入方法に特に制限はなく、 当 業者が通常用いる方法が用いられる。 例えば、 エレク ト口ポレーシヨン法、 リン酸カルシウム法、 リポフエクシヨン法、 カルシウムイオンを用いる方法、 プロ トプラスト法などを挙げることができる。 エレク トロポレーシヨン法が 好ましく用いられる。 エレク ト口ポレーシヨン法による場合、 0 . 5〜 2 0 k V/ c m, 0 . 5 μ s e c〜: L 0 m s e cの条件で行うことが可能である。
より好ましくは、 2〜10 kV/cm、 50 μ s e c〜 5 m s e cで行うこ とが望ましい。
形質転換株は、 フラジヱリン発現ベクターが有する選択マーカーで選択さ れる。 形質転換株を培養する培地としては、 宿主微生物それぞれに適した培 地、 例えば、 ブドウ糖血液肝臓 (BL) 寒天培地、 デ ·マン一口ゴサ—シャ ープ (MRS) 寒天培地、 岐阜大学嫌気性 (GAM) 寒天培地、 改良 GAM (TGAM) 寒天培地、 ブリッグス (B r i g g s) 寒天培地、 および酵母 エキスブドウ糖ペプトン (YGP) 寒天培地が挙げられる。 これらの培地に 選択マーカーに応じて抗生物質を添加し、 あるいはアミノ酸を欠失または添 加し、 選択圧とする。
得られた形質転換微生物のフラジェリン発現の確認は、 例えば、 ゥエスタ ンプロッテイング法で行うことができる。 まず、 形質転換微生物を、 例えば、 非イオン性界面活性剤を用いて、 溶菌する。 非イオン性界面活性剤としては、 ポリオキシエチレンソルビタンエステル (Twe e n (登録商標) 20、 4 0、 60、 65、 80、 85) 、 ソルビタンエステル (S p a n (登録商 標) 20、 40、 60、 65、 80、 85) などが挙げられる。 次いで、 リ ン酸緩衝液、 クェン酸緩衝液、 ホウ酸緩衝液、 トリス (ヒドロキシメチル) ァミノメタン (Tris) —塩酸緩衝液などを用いて希釈し、 ドデシル硫酸ナト リウム—ポリアクリルアミ ドゲル (SDS— PAGE) 、 トリス一グリシン —ポリアクリルアミ ドゲルなどを用いて電気泳動を行う。 次いで、 ニトロセ ルロース、 ポリビニリデンフルオリ ド (PVF) 膜などに転写し、 フラジェリ ンに対する抗体 (免疫グロブリン G (IgG) ) と反応させ、 さらに蛍光標識 を有する 2次抗体で反応させることにより、 フラジェリンの発現を確認でき る。 形質転換微生物のフラジェリン分泌発現は、 形質転換株を選択した後に 遠心分離して上清を得、 この上清に対して上記と同様にしてウェスタンプロ ッティングを行うことにより確認し得る。
フラジェリンの発現が確認された形質転換微生物は、 当業者が通常用いる 方法により培養し、 回収して、 そのまま製剤の製造に用いてもよい。 あるい は、 乾燥して用いてもよい。 乾燥は、 凍結乾燥、 低温乾燥などの低温処理を 行い、 腸内環境あるいは培地などの生育条件下に曝したときに生育可能とな るような処理方法により行われる。
4 . 形質転換微生物を含有する耐酸性カプセル製剤の製造
フラジヱリンタンパク質を発現する形質転換微生物が経口ワクチンとして 機能するためには、 この形質転換微生物が胃を通過し、 腸に到達し、 そこで 生育できるようにしなければならない。 ところで、 胃の p Hは 1〜3であり、 この著しく低い p Hのため、 経口摂取された乳酸菌などの腸内細菌は、 その 大部分が死滅する。 増殖能を有したまま腸まで達する腸内細菌は、 一般に、 投与量の 1 0 0 0 0分の 1以下となると言われている。 従って、 本発明で用 いる形質転換微生物がヒ 卜の腸内に生存したまま到達し、 かつ、 腸内で増殖 してフラジヱリンを発現するためには、 形質転換微生物が胃酸による影響を 極力受けないようにすることが必要である。
そのため、 本発明においては、 耐酸性のカプセル皮膜によって形質転換微 生物が包含されまたは封じ込められている、 すなわち、 耐酸性の皮膜のカブ セルの内側に形質転換微生物が含有されている、 カプセル製剤とする。 カブ セル製剤の構成、 形状などは、 皮膜が胃酸に对して耐性を有する限り、 特に 制限がない。 すなわち、 胃酸がカプセル内に浸入し、 形質転換微生物と接触 しないように構成することが望ましい。 カプセル皮膜は、 p H 4以下、 好ま しくは ρ Η 1〜3で溶解しない皮膜であり得る。 カプセル化法も特に制限は ない。
(シームレスカプセル製剤)
胃酸に対して耐性を付与するためのカプセルの形状としては、 好ましくは、 シームレスカプセルが挙げられる。 「シームレスカプセル」 とは、 軟カプセ ルの一種であり、 継ぎ目のない皮膜で内容物を封入する形態のカプセルをい う。 シームレスカプセルは、 二層以上の多層構造が可能であり、 三層または それ以上の多層構造を有することが好ましい。 通常、 最内層に内容物 (本発 明の場合は、 形質転換微生物) を含み得、 そして外層 (または最外層) が皮 膜となり得る。 言い換えれば、 形質転換微生物が皮膜によって包含された形 態である。
以下に、 三層構造のシームレスカプセル製剤の調製について説明する。 図 3は三層構造のシームレスカプセル製剤の模式断面図である。 この三層構造 は、 最内層、 この最内層を覆う内皮層、 およびこの内皮層を覆う外層からな る。
最内層は、 上記形質転換微生物、 およびこの形質転換微生物を懸濁 混合 するための非水性溶媒または固体成分 (以下、 この成分を最内層用物質とい う) からなる。 最内層用物質には特に制限がない。 例えば、 各種油脂類、 脂 肪酸類、 糖の脂肪酸エステル、 脂肪族炭化水素、 芳香族炭化水素、 鎖状エー テル、 高級脂肪酸エステル、 高級アルコール、 テルペン類が挙げられる。 具 体的には、 大豆油、 胡麻油、 パーム油、 パーム核油、 コーン油、 綿実油、 椰 子油、 ナタネ油、 カカオ脂、 牛脂、 豚脂、 馬油、 鯨油、 融点が 4 0 °C以下で ある上記天然油脂の水添油脂、 マーガリン、 ショートニング、 グリセリン脂 肪酸エステル、 蔗糖脂肪酸エステル、 樟脳油、 薄荷油、 α—ビネン、 D—リ モネンなどが挙げられるが、 これらに限定されない。 これらの最内層用物質 は、 単独でまたは 2種以上を混合して用いることができる。
内皮層の材料としては、 上記最内層用物質のうち、 融点が 2 0 °C〜5 0 °C であり、 かつ最内層と異なる物質が用いられる。 より好ましくは、 常温で固 体の物質が用いられる。 以下の実施例において、 最内層用物質として融点が
3 4 °Cの水添パーム核油、 およぴ内皮層の材料として融点が 4 3 °Cの水添パ 一ム核油を用いたように、 最内層用物質および内皮層の材料としてそれぞれ 融点が異なるように水添処理された同種の油脂を用いることもできる。 この 内皮層は、 水分および酸素の透過を抑制し、 胃酸との接触を防ぐように働き 得る。 どのような物質を選択するかは、 カプセルの保存期間などを考慮して 決定することができる。
外層 (三層構造以上の場合は最外層) の材料としては、 タンパク質と水溶 性多価アルコールとの混合物、 タンパク質と水溶性多価アルコールと多糖類 との混合物、 多糖類と水溶性多価アルコールとの混合物などが挙げられる。 タンパク質としては、 例えば、 ゼラチンおよびコラーゲンが挙げられる。 水 溶性多価アルコールとしては、 例えば、 ソルビトール、 マンニトール、 グリ セリン、 プロピレンダリコールおよびポリエチレンダリコールが挙げられる。 多糖類としては、 寒天、 ゲランガム、 キサンタンガム、 ローカストビーンガ ム、 ぺクチン、 アルギン酸塩、 カラギナン、 アラビアガム、 デキストリン、 変性デキストリン、 デンプン、 化工デンプン、 プルラン、 ぺクチン、 および カルボキシメチルセルロース塩が挙げられる。 ぺクチン、 アルギン酸塩、 ゲ ランガム、 もしくはカラギナンを使用する場合は、 適宜アルカリ金属塩ゃァ ルカリ土類金属塩を添加してもよい。
上記の三層構造のシームレスカプセル製剤の調製は、 当業者に周知の技術、 例えば、 特許第 1 3 9 8 8 3 6号明細書に記載されている三重ノズルを用い る滴下法で行われる。 この滴下法では、 同心三重ノズルの最内側ノズルから 形質転換微生物 (例えば、 凍結乾燥菌体) と合わせた最内層用物質 (好まし くは、 2 0〜 5 0 °Cで非流動性である疎水性溶媒物質中への形質転換微生物 (好ましくは、 凍結乾燥菌体) の懸濁液) を、 中間ノズルから内皮層を構成 する物質 (例えば、 常温では固体である物質の融解液) を、 そして、 最外側 ノズルから外層 (皮膜) となる物質の溶液を同時に吐出し、 冷却下で流動し
ているキャリア液 (例えば、 コーン油、 ナタネ油など) 中に滴下させること により、 最内層に形質転換微生物が含まれる三層構造の 「シームレス」 カブ セルが形成ざれる。 したがって、 形質転換微生物が、 継ぎ目のない外層皮膜 によって包含または封じ込められている。
上記のようにして形成されたカプセルは、 次いで乾燥される。 乾燥方法と しては、 例えば、 常温通風乾燥を施す。 乾燥は、 例えば 5 °C〜3 0 °Cの空気 により乾燥させる方法が一般的である。 乾燥時間は 2〜1 2時間が好適であ る。 特開平 0 7— 0 6 9 8 6 7号公報に記載される、 上記のように通常の乾 燥を施したカプセルに対し、 さらに真空乾燥または真空凍結乾燥を施す方法 が好適に用いられ得る。 真空度は 0. 5 - 0. 0 2 torrに保ち、 真空凍結乾燥 では一 2 0 °C以下で凍結させ乾燥させる方法である。 真空乾燥または真空凍 結乾燥に要する時間は特に限定的ではないが、 一般に 5〜6 0時間、 好まし くは 2 4〜4 8時間である。 5時間以下であると、 乾燥が不十分であり、 力 プセル内に存在する水分が内容物質に悪影響を与え得る。
特開平 0 7— 0 6 9 8 6 7号公報に記載の方法により得られるカプセルは そのカプセル内の水分が真空凍結乾燥により十分除去されており、 Aw値は 0 . 2 0以下で熱伝導率 0 . 1 6 kcalZmh°C以下になり得る。 真空乾燥または 真空凍結乾燥によりもちろん水分が低下するのと同時に、 カプセルが十分乾 燥し、 多孔質になるため、 熱伝導率も単に通常乾燥で得られたものよりも大 きく低下することになる。
Aw値とは試料中に存在する水分の絶対量ではなく、 水分の存在状態によ つて決定される値、 すなわち試料中における水の自由度を表したものであつ て、 化学反応や微生物の生育に直接関与することができる水分を表す指標で、 電気抵抗式水分活性測定法 (例えば、 Awメーター WA— 3 6 0、 (株)芝浦 電子製作所) で測定される。 熱伝導率はフィッチ (F i t c h ) 法などで測 定される。 A w値は好ましくは 0. 2 0以下であり、 熱伝導率は好ましくは
0 . 0 2〜0 . 0 8 kcalZmh°Cである。
シームレスカプセル製剤のカプセル皮膜に耐酸性を付与するには、 耐酸性 の外層を形成させるか、 または形成されたシームレスカプセルの皮膜 (最外 層) を耐酸性となるように処理する。
耐酸性外層を形成させる方法としては、 ゲル化能を有するゼラチン、 寒天、 カラギナンなどに対して、 ぺクチン、 アルギン酸塩、 アラビアゴムなどを 0 . 0 1〜 2 0質量%、 好ましくは 0 . 1〜 1 0質量%となるように添加する方 法が挙げられる。
形成されたシームレスカプセルの皮膜 (最外層) に耐酸性を付与する方法 としては、 例えば、 シームレスカプセルの外層 (最外層) の架橋処理おょぴ シームレスカプセルの表面のコーティング処理が挙げられる。 これらの処理 を単独でまたは組み合わせて行うことが好ましい。
タンパク質を含む外層を架橋処理する場合、 まず、 シームレスカプセルを 調製した後、 十分に水洗する。 水洗したシームレスカプセルを、 架橋剤を含 む水溶液に加え、 外層の表面を架橋させる。 架橋剤としては、 従来公知の架 橋剤を使用することができる。 架橋剤としては、 例えば、 ホルムアルデヒ ド、 ァセトアルデヒド、 プロピオンアルデヒド、 グリオキサール、 グルタルアル デヒ ド、 シンナムアルデビド、 バニリルアルデヒ ド、 アセトン、 ェチルメチ ルケトン、 エチレンォキシド、 プロピレンォキシド、 カリミヨウバン、 およ ぴアンモニゥムミヨウバンが挙げられる。 一般には、 シームレスカプセル 1 質量部を、 0 . l〜2 wZ v %、 好ましくは 0 . 5〜2 wZ v %の架橋剤を 含む水溶液 5 0〜1 0 0質量部に加え、 1 0〜3 0 0秒間撹拌することによ り、 外層の処理を行う。 なお、 架橋剤の使用量、 作用させる時間は、 架橋剤 によって異なる。 外皮膜の表面を架橋処理した後、 十分に水洗することによ り、 架橋剤を含む水溶液を除去し、 外層中に含まれる水分を乾燥させる。 また、 上記のタンパク質を含む外層の架橋処理として、 トランスダルタミ
ナーゼを用いる酵素処理による架橋を行ってもよい。 この場合、 生成したシ ームレスカプセル 1質量部を、 0 . 1 〜; 1 0 wZ v %、 好ましくは 0 . 5〜 2 wZ v %の酵素を含む水溶液 5 0〜1 0 0質量部に加え、 1〜3 0 0分間 撹拌することにより、 外層を処理し、 上記と同様に水洗、 乾燥させる。
コーティング処理を行う場合は、 生成した湿シームレスカプセルを乾燥さ せた後、 セラック、 ェチルセルロース、 ヒ ドロキシプロピルメチルセルロー ス、 ヒ ドロキシプロピルセルロース、 ポリ ビニノレピロリ ドン、 セルロース T C一 5、 ビニルピロリ ドン一酢酸ビュル共重合体、 ゼイン、 エチレンヮック スなどを基材とし、 ヒマシ油、 ナタネ油、 ジブチルフタレート、 ポリエチレ ングリコール、 グリセリン、 ステアリン酸、 脂肪酸エステル、 ソルビタンパ ルミテート、 ポリオキシエチレンステアレート、 ァセチル化モノグリセリ ド などを可塑剤として用いて、 常法に従ってシームレスカプセルをコーティン グする。
さらに、 カプセル皮膜に腸溶性を付与することにより、 胃内の酸性溶液 (例えば、 胃酸) などからカプセルを保護しそして腸内で崩壊させることに より、 カプセル内部の形質転換微生物を腸内で放出させ、 腸内で抗原産生を 十分行わせることが可能となる。 腸溶性の付与は、 当業者が通常腸溶性カブ セルを製造する方法で行われる。 また、 シームレスカプセルの外層材料とし てゼラチンおよびべクチンを含む混合物を用いることにより、 腸溶化皮膜と できる。 ゲル化能を有するゼラチン、 寒天、 カラギナンなどに対して、 ぺク チン、 アルギン酸塩、 アラビアゴムなどを 0 . 0 1〜2 0質量%、 好ましく は 0 . 1〜 1 0質量%となるように添加し、 調製した耐酸性外層は、 腸溶性 もまた有する。
シームレスカプセル製剤は、 その製法に起因して、 形状は球状であり得る ( シームレスカプセルの平均粒径は、 0 . 3〜 1 O mm、 好ましくは、 1 . 5 〜8 . O mmである。
このようにして得られたシームレスカプセル製剤は、 室温で形質転換微生 物の活性を保持したまま 6ヶ月以上保存することが可能であり、 1 0 °C以下 で保存する場合は、 1年以上の長期保存が可能である。 (軟カプセル製剤)
軟カプセル製剤は、 シームレスカプセル製剤の場合と同様、 非水性溶媒中 への形質転換微生物の懸濁液を内容物とし、 皮膜シートで包含したものであ る。 皮膜シートの材料は、 シームレスカプセルの外層の材料と同様である。 軟カプセル製剤は、 公知の技術、 例えば、 特許第 2 9 9 9 5 3 5号明細書 に記載されている方法で調製することができる。 例えば、 ロータリーダイを 用いて、 内容物を注入および充填しながら、 皮膜シートを型を通して加熱す ることによって封入し、 カプセル化し得る。 腸において形質転換微生物を放 出する機能を持たせるために、 得られた軟カプセルから、 離型剤である油を 極性溶媒 (例えば、 メタノール、 エタノール、 プロパノール、 イソプロパノ ール) で洗浄することによって除去する。 その後、 シームレスカプセルの場 合と同様に、 架橋処理およびコーティング処理を組み合わせて行う力 \ ある いはいずれか一方の処理を行い、 耐酸性とし得る。
耐酸性皮膜シートを、 ゲル化能を有するゼラチン、 寒天、 カラギナンなど に対して、 ぺクチン、 アルギン酸塩、 アラビアゴムなどを 0 . 0 1 〜 2 0質 量%、 好ましくは 0 . 1 〜 1 0質量%となるように添カ卩し、 公知の方法に基 づいて調製することもできる。 あるいは、 皮膜シートを架橋処理およびコー ティング処理を組み合わせて行う力 \ あるいはいずれか一方の処理を行い、 耐酸性とし得る。 このようにして得られた耐酸性皮膜シートを用いて、 例え ば、 公知の技術によりカプセルの成形およびカプセル内への内容物の導入を し、 次いでカプセルの継ぎ目を溶着することによって内容物を封入し、 耐酸 性皮膜によつて形質転換微生物が包含された軟力プセル製剤を製造し得る。
軟カプセル製剤は、 球状、 楕円状、 または矩形状の構造であり得る。 軟カ プセルは、 長径が 3〜 1 6 mmおよび短径が 2〜 1 0 mmのものが好ましく、 長径が 5〜 7 mmおよび短径が 2〜 3 mmのものがより好ましい。
このようにして得られた軟カプセル製剤は、 室温で形質転換微生物の活性 を保持したまま 6ヶ月以上保存することが可能であり、 1 0 °C以下で保存す る場合は、 1年以上の長期保存が可能である。
(硬カプセル製剤)
硬カプセル製剤は、 カプセル皮膜を予めボディとキャップとに成型し、 内 容物をカプセルボディに充填し、 次いでカプセルキヤップを組み合わせるこ とにより、 製造され得る。
硬カプセル製剤の皮膜材料としては、 ゼラチン、 セルロース、 プルラン、 カラギナン、 ならびに、 ヒ ドロキシプロピルメチルセルロースなどのセル口 ース誘導体が挙げられる。 硬カプセルの成型は、 当業者が通常用いる方法で 行われ得る。 成型カプセルは、 市販のカプセルであってもよい。 内容物を皮 膜で包み込み、 封入することもできる。
内容物は、 形質転換微生物を賦型剤 (例えば、 無水ケィ酸、 合成ケィ酸ァ ルミ二ゥム、 乳糖、 コーンスターチ、 結晶セルロース) とよく混合させたも の、 あるいは、 形質転換微生物の乾燥菌末を含有する粉体であり得る。
内容物をカプセル内に入れた後、 カプセル皮膜をコーティングしてもよレ、。 このコーティングには、 シームレスカプセルの外層で説明した材料および方 法が適用され、 それにより耐酸性および好ましくは腸における崩壊性 (腸溶 性) が付与される。 このコーティングは、 カプセル皮膜を封入して内容物を 包含させる役割も有し得る。
耐酸性皮膜シートを、 ゲル化能を有するゼラチン、 寒天、 カラギナンなど に对して、 ぺクチン、 アルギン酸塩、 アラビアゴムなどを 0 . 0 1〜2 0質
量%、 好ましくは 0 . 1 〜 1 0質量%となるように添加し、 公知の方法に基 づいて調製することもできる。 あるいは、 皮膜シートを架橋処理およびコー ティング処理を組み合わせて行う力 \ あるいはいずれか一方の処理を行い、 耐酸性とし得る。 このようにして得られた耐酸性皮膜シートを用いて、 例え ば、 公知の技術で硬カプセルを成型し得、 そしてこの成型した硬カプセル内 部に内容物を入れて、 カプセルの継ぎ目を溶着することによって内容物を封 入し、 耐酸性皮膜によつて形質転換微生物が包含された硬力プセル製剤を製 造し得る。
このようにして得られた硬カプセル製剤では、 室温で形質転換菌の活性を 保持したまま 6ヶ月以上保存することが可能であり、 1 0 °C以下で保存する 場合は、 1年以上の長期保存が可能である。
5 . 細菌感染性疾患に対する経口ワクチン
上記 4 . で調製された耐酸性カプセル製剤 (シームレスカプセル製剤、 軟 カプセル製剤、 および硬カプセル製剤) は、 経口投与され、 ρ Η 1〜 3の胃 内を通過して、 腸に到達し、 腸で溶解される。 溶解により、 製剤から放出さ れた形質転換微生物は、 腸内環境で生育し、 フラジヱリンを生産し、 好まし くは菌体外に分泌する。 フラジェリンは腸から吸収され、 抗原と認識されて、 抗体が生産される。 従って、 フラジヱリンを有する微生物に対して有効な経 ロワクチンとなる。 実施例
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、 本発明は、 これらの実施例に より限定されるものではない。
(実施例 1 :腸チフス抗原を産生するビフィズス菌を含有する耐酸性カブ
セル製剤の調製)
A. PCRによる S. typhimurium由来のフラジェリン遺伝子の増幅
S. typhimurium ATCC 14028を L B培地 (ィンビトロジェン株式会社製) で 37°Cにて 12時間培養した。 培養終了後、 常法により S. typhimuriumの ゲノム DNAを抽出した。 抽出したゲノム DNAを、 PCR反応キット (ァ プライドバイオシステムズ社製) の取扱説明書に従って、 0. 5 un i t s の Ampli Taq DNA ポリメラーゼを用いて増幅させた。 プライマーとして、 配 列表の配列番号 1 (forward) : 5 ' -CATGCCATGGATGGCA CAGTCATTAATACA— 3, (5位から 10位までの C CAT GG は Ncol切断部位である) 、 および配列番号 2 (reverse) : 5, -CGCG
10位までの GATCCTは BamHI切断部位である) を用いた。 PCRは、 铸型 DNAを 125 n g、 プライマーを各 0. 5 μπιο 1、 Ρ ί ιι DNA ポリメラーゼを 2. 5 u n i t s、 P f u DNAポリメラーゼ用 X 10緩 衝液を 4 L、 dNTPを各 200 μπιο 1含む反応液 40 μ Lを用レヽ、 9 4°〇で1分、 55°〇で1分、 72 °Cで 1分の工程を 30回繰り返した後、 7 2 °Cで 10分保温する条件で行った。 PCRの終了後、 Ncolおよび BamHIで 切断し、 フラジェリン遺伝子断片を調製した。 B. PCRによる HUプロモーターの増幅
B. longum ATCC 15703株を MRS培地 (日本べク トン .ディッキンソン株 式会社製) で 37°Cにて 1 2時間培養した。 培養終了後、 常法により B. Ion gumのゲノム DNAを抽出した。 上記 A. と同様の条件で P C Rを行った。 用いたプライマーは配列番号 7 (forward) : 5, — CGCCAAGCTT TGGGCGCGGCGGCCATGAAG— 3, (5位から 10位までの AAGCTTは Hindlll切断部位である) 、 および配列番号 8 (reverse) :
3 ' (5位から 10位までの CCATGGは N c ο I切断部位である) を用 いた。 PCRの終了後、 Hindlllおよび Ncolで切断し、 HUプロモーター遺 伝子断片を調製した。
C. 発現ベクターの調製
プラスミ ド pBLES l O Oを BamHIおよび Hindlllで切断し、 上記 A. で 得られたサルモネラのフラジェリン遺伝子断片および B. で得られた HUプ 口モーター遺伝子断片と混合してライゲーションすることにより、 発現べク ター p B LE S— F 1 i Cを得た。
D. 発現ベクターの B. animalisへの導入
B. animalis ATCC 27536を、 MRS培地に植菌し、 37°Cにて 12時間、 炭酸ガス 10%を含む窒素ガス環境中で対数増殖期中期まで静置培養した。 得られた培養液を遠心分離して菌体を回収し、 PB S (塩化ナトリウムを 8 g、 塩化カリウムを 0. 2 g、 リン酸水素ニナトリウムを 1. 44 g、 リン 酸二水素カリウム 0. 24 gを 1 Lの蒸留水で希釈し p H 7. 4としたも の) で、 3回洗浄した。 次いで、 5 X 108 c e 1 1 sZmLとなるように PB Sを加えて、 B. animalisの懸濁液を得た。 この懸濁液 50 /z L中に、 上記 B. で調製した p B L E S— F 1 1〇を5 乙 ( 1 μ g DNA/5 μ L) 加え、 これを 0. 2 c m幅のエレクト口ポレーシヨン用キュベットに入 れて、 5 μ s、 1000 Vの条件にて形質転換を行った。
スぺクチノマイシン (50 /x gZml ) 含有 BL寒天培地 (日水製薬株式 会社製) で、 37°Cにて炭酸ガス 10%を含む窒素ガス環境中で培養するこ とにより、 形質転換された B. animalisを得た。
E. ゥヱスタンプロッテイング
形質転換された B. animalisが、 フラジェリンタンパク質が発現するか否 かを、 以下のように確認した。 B. animalisを 1 v%Tw e e n (登録 商標) 80を含むリン酸緩衝液 (PH6. 8) 、 および緩衝液 A (トリス塩 酸塩 1 2 6 mM、 20 w/ v %グリセリン、 4 w/ v %ドデシル硫酸ナトリ ゥム、 1. 0wZv%2—メルカプトエタノール、 0. 0 5wZv%ブロモ フエノールブルー、 pH6. 8) で希釈した。 そのうちの 5 /X gを電気泳動 (トリスグリシンポリアクリルアミ ドゲル) にかけた。 分離したタンパク質 をニトロセルロース膜にエレク トロブロットした。 次いで、 サルモネラ菌種 に共通のフラジェリンに特有の I gG 1 (ピロスタツト社製) およびホース ラディッシュペルォキシダーゼ (HRP) 標識した 2次抗体 (1 : 500) を用いる EL I S Aで、 フラジェリンの発現を確認した。
F. 形質転換微生物の凍結乾燥菌末の調製
形質転換されたビフィズス菌 (B. animalis) の 2白金耳を、 50 μ Mの スぺクチノマイシンを含む MR S培地 (日本べク トン .ディッキンソン株式 会社製) 1 Lに植菌し、 3 7°Cにて 1 8時間、 炭酸ガス 1 0%を含む窒素ガ スを吹き込みながら培養した。 途中、 pHの低下が見られるので、 pH自動 調整器を用いて 1 0M水酸化ナトリゥム水溶液で pHを 5. 5に調整を行い ながら培養した。 1 5時間培養後の菌数は、 得られた菌液を適度に嫌気性希 釈液で希釈し、 50 μΜのスぺクチノマイシンを含む B L寒天培地に塗布し、 コロニーの生育数により求めた。 なお、 嫌気性希釈液は、 リン酸水素ニナト リウム 6. 0 g、 リン酸二水素カリウム 4. 5 g、 L—システィン塩酸塩 0. 5 g、 Tw e e n (登録商標) 80を 0. 5 g、 および寒天 1 · 0 gを 1 L の蒸留水に溶解させ、 1 2 1°Cにて 1 5分間蒸気滅菌したものである。
培養後、 遠心分離 (15000X g、 20分) し、 菌体を回収した。 得られた
菌体に蒸留水 120 g、 クェン酸 Naを 1 2 g、 リンゴ酸 N aを 8 g加えて 菌体を懸濁させた。 この懸濁液に、 アビセル FD— 101 (旭化成株式会 社) を 8 g添加し、 良く撹拌した後、 凍結させ、 真空乾燥した。 その後、 得 られた粉体に対して 2倍量のデキストリンを加え、 凍結乾燥菌末を得た。
G. 耐酸性シームレスカプセル製剤の調製
以下に説明するように、 同心三重ノズルを備えたカプセル製造装置を用い て、 形質転換菌体を含有する耐酸性シームレスカプセル製剤を調製した。 硬化油 (融点 34 °Cの水添パーム核油) 400 gを融解し、 これに上記 F. で得られた凍結乾燥菌末 100 gを分散させた。 この分散物を同心三重ノズ ルの内側ノズルから、 その外側の中間ノズルから融解した硬化油 (融点 4 3°Cの水添パーム核油) を、 さらに最外側ノズルからゼラチン溶液 (ゼラチ ン 600 g、 グリセリン 300 g、 およびべクチン 100 gを精製水 4 k g に溶解させたもの) を同時に吐出し、 1 5°C冷却下で流動しているナタネ油 中に滴下させることにより、 直径 2. 5 mmの三層構造のシームレスカプセ ル内に形質転換菌体が包含された製剤を調製した。 この力プセル製剤を 2 0°Cにて 10時間、 通気乾燥した後、 更に常温にて真空乾燥を行うことによ り、 カプセル中の水分活性を Aw値 0. 20以下および熱伝導率 0. 16 k c a 1 /mh°C以下にまで低下させた。
H. 耐酸性軟カプセル製剤の調製
上記 F. で得られた凍結乾燥菌末 5 O gをナタネ油 300 gに懸濁させて、 軟カプセルの内容液を調製した。 ゼラチン 400 gおよびグリセリン 100 gを蒸留水 200 gに加えて、 60°Cで攪拌して溶解させ、 これをシート状 に成形することによりゼラチン膜を得、 これを軟カプセルの皮膜として用い た。 このゼラチン膜を、 一対の回転円筒型金型の間に送り、 これと連動する
ポンプで内容液をゼラチン膜間に噴出することにより、 カプセルイ匕した。 得られたカプセル化物 4 0 0 gを転動造粒器に入れ、 セラック 1 0 gおよ ぴヒマシ油 1 gをメタノール一酢酸ェチル (1 : 1、 v/v) 混液 4 0 0 gに 溶解させた溶液を、 軟カプセルの全表面にコーティング膜厚 0 . 3 mmとな るように噴霧した。 このようにして、 長径 4 mmおよび短径 3 mmの大きさ で、 形質転換菌体を包含しかつ耐酸性のコーティングされた軟カプセル製剤 を 4 0 0 g得た。
I . 耐酸性硬カプセル製剤の調製
上記 F . で得られた凍結乾燥菌末を、 硬カプセルの内容物とした。 硬カブ セル皮膜としては、 市販の局方 5号のカプセルを用いた。 この内容物をカブ セルのボディに充填し、 これにキャップを合わせることにより、 カプセル化 した。
得られたカプセル化物 1 0 0 gを転動造粒器に入れ、 セラック 1 0 gおよ ぴヒマシ油 1 gをメタノール一酢酸ェチル (1 : 1、 v/v) 混液 4 0 0 gに 溶解させた溶液を、 硬カプセルの全表面にコーティング膜厚 0 . 3 mmとな るように噴霧し、 形質転換菌体を包含しかつ耐酸性のコーティングされた硬 カプセル製剤 1 0 0 gを得た。
(実施例 2 コレラ抗原を産生する乳酸菌を含有する耐酸性力プセル製剤 の調製)
コレラ抗原を産生する V. cholerae ATCC 11628を L B培地で、 3 7 °Cにて 1 2時間培養した。 培養終了後、 常法により V. choleraeのゲノム D N Aを 抽出した。 配列番号 3 (forward) および配列番号 4 (reverse) の配列をプ ライマーとし、 抽出したゲノム D N Aを铸型として、 実施例 1と同様に P C Rを行った。 得られた増幅断片を回収し、 Ncolおよび BamHIで切断し、 コレ
ラフラジヱリン遺伝子断片を調製した。 実施例 1で調製した p B L E S— F 1 i Cを Ncolおよび BamHIで消化し、 大きい断片を回収した。 この断片とコ レラフラジェリン遺伝子断片とをライゲーシヨンすることにより、 コレラ抗 原を発現する発現ベクター p B LE S— V cを得た。
得られたコレラフラジェリンの発現ベクター p B LE S-V cを用いて Lb. plantarum ATCC BAA- 793を开質転換し、 コレラ抗原を産生する Lb. plantar uraを得た。 コレラ抗原の発現は、 実施例 1の E. に記載と同様に、 抗原抗体 反応を用いる EL I S Aによって、 確認した。
コレラのフラジェリンタンパク質の発現が確認された Lb. plantarumを用 いて、 実施例 1の F. と同様の方法で凍結乾燥菌末を調製し、 そしてこの凍 結乾燥菌末を含有するシームレスカプセル製剤、 軟カプセル製剤および硬力 プセル製剤をそれぞれ実施例 1の G. 、 H. および I . と同様にして調製し た。 得られたシームレスカプセル製剤、 軟カプセル製剤および硬カプセル製 剤の皮膜は、 耐酸性である。
(実施例 3 赤痢抗原を産生するビフィズス菌を含有する耐酸性カプセル 製剤の調製)
赤痢抗原を産生する S. dysenteriae ATCC 29026を LB培地で 37°Cにて 12時間培養した。 培養終了後、 常法により S. dysenteriaeのゲノム DNA を抽出した。 配列番号 5 (forward) および配列番号 6 (reverse) の配列を プライマーとし、 抽出したゲノム DNAを鎳型として、 実施例 1と同様に P CRを行った。 得られた増幅断片を回収し、 Ncolおよび BamHIで切断し、 赤 痢フラジェリン遺伝子断片を調製した。 実施例 1で調製した pBLES— F 1 i Cを Ncolおよび BamHIで消化し、 大きい断片を回収した。 この断片と赤 痢フラジェリン遺伝子断片を'ライゲーシヨンすることにより赤痢抗原を発現 する発現ベクター p BLES— S dを得た。
得られた赤痢フラジェリン発現ベクター p B L E S— S dを用いて B. Ion gum ATCC 15697を形質転換し、 赤痢抗原を産生する B. longuraを得た。 赤痢 抗原の発現は、 実施例 1の E . に記載と同様に、 抗原抗体反応を用いる E L I S Aによって、 確認した。
赤痢のフラジェリンタンパク質の発現が確認された B. longumを用いて、 実施例 1の F . と同様の方法で凍結乾燥菌末を調製し、 そしてこの凍結乾燥 菌末を含有するシームレスカプセル製剤、 軟カプセル製剤おょぴ硬カプセル 製剤をそれぞれ実施例 1の G.. 、 H. および I . と同様にして調製した。 得 られたシームレスカプセル製剤、 軟カプセル製剤および硬カプセル製剤の皮 膜は、 耐酸性である。
(比較例 1 )
実施例 1の G . において、 皮膜となるゼラチン溶液の組成をゼラチン 6 0 0 g、 グリセリン 3 0 0 g、 およびソルビトール 1 0 0 gを精製水 4 k gに 溶解させたものに変更したこと以外は、 実施例 1と同様の操作を行うことに より、 シームレスカプセル製剤を調製した。 得られた製剤の皮膜は、 耐酸性 でない。
(比較例 2 )
実施例 1の H. 軟カプセルの調製においてコーティングを行わないこと以 外は、 実施例 1と同様の操作を行い、 軟カプセル製剤を調製した。 得られた 製剤の皮膜は、 耐酸性でない。
(比較例 3》
実施例 1の I . 硬カプセルの調製においてコーティングを行わないこと以 外は、 実施例 1と同様の操作を行い、 硬カプセル製剤を調製した。 得られた
製剤の皮膜は、 耐酸性でない。
(比較例 4〜 6 )
微生物を実施例 2で調製したコレラのフラジェリン発現形質転換微生物に 代えたこと以外は、 比較例 1〜3と同様にして、 それぞれ、 シームレスカブ セル製剤、 軟カプセル製剤、 および硬カプセル製剤を調製し、 比較例 4〜 6 とした。 得られたシームレスカプセル製剤、 軟カプセル製剤および硬カプセ ル製剤の皮膜は、 耐酸性でない。 (比較例 7〜 9 )
微生物を実施例 3で調製した赤痢菌のフラジェリン発現形質転換微生物に 代えたこと以外は、 比較例 1〜3と同様にして、 それぞれ、 シームレスカブ セル製剤、 軟カプセル製剤、 および硬カプセル製剤を調製し、 比較例 7〜9 とした。 得られたシームレスカプセル製剤、 軟カプセル製剤おょぴ硬カプセ ル製剤の皮膜は、 耐酸性でない。
(実施例 4 :腸チフスのフラジェリンタンパク質発現形質転換微生物 (組 換え B. animalis) 投与による抗体惹起の確認)
8〜1 2週齢の B A L B Z c雌マウス (日本チヤ一ルス . リバ一株式会 社) を購入し、 標準飼料で 1週間馴化した。 マウスを 9群 (一群 5〜 7匹) に分け、 3群には、 実施例 1で調製した腸チフスのフラジェリンを発現する 形質転換微生物を含有するシームレスカプセル製剤、 軟カプセル製剤および 硬カプセル製剤をそれぞれ経口投与した。 別の 3群には、 比較例 1〜3で調 製した腸チフスのフラジェリンを発現する形質転換微生物を含有する、 耐酸 性のないシームレスカプセル製剤、 軟カプセル製剤および硬カプセル製剤を、 それぞれ経口投与した。 さらに、 残りの 3群には、 対照として、 フラジェリ
ンを発現する形質転換微生物 (組換え B. animalis) 生菌、 宿主の B. animal is生菌、 およびリン酸緩衝液をそれぞれ投与した。 これらのカプセル製剤、 生菌などを、 1日 1回、 3週間摂取させた。
3週間後、 血清中および便中の I g Aの量を以下の方法により測定した。 96穴プレート (Nunc I匪 unop late Max i sorb F96、 ナノレジェ ヌンク ィ ンターナショナル株式会社製) に、 フラジェリン抗原を含む PB Sを添加し て、 4°Cにて 16時間、 プレート表面をコーティングした。 その後、 牛血清 アルブミン 1 w/v%を含む PB Sで、 室温で 2時間ブロッキングした。 P B Sで 3回洗浄した後、 血清あるいは便サンプルを加え、 室温で 3時間反応 させた。 PBSで 3回洗浄した後、 二次抗体 (ャギ由来ー抗マウス I gA、 I gG、 I gM (サンタクルズ社製) を加え、 室温で 3時間インキュベート した。 PBSで 3回洗浄した後、 三次抗体 (フルォレセインイソチオシァネ ート (F I TC) 標識—ゥサギ由来一抗ャギ I gG (Q EDバイオサイェン ス株式会社製) を加え、 室温で 3時間インキュベートした。 蛍光を、 Fluoro scanll (大日本製薬株式会社製) で測定した。 得られた蛍光値を表 1に示す。
表 1
BALB/c 1曰投与量 便中 IgA量 血清中 IgA量 投与サンプル
数 107cfu/曰 (OD土標準誤差) (OD土標準誤差) 実施例 1:シームレスカフ。セル 7 2.5 0.16±0.012 0.40 ±0.145 実施例 1 :軟カプセル 7 3.2 0.15±0.013 0.38±0.151 実施例 1:硬カプセル 7 3 0.14±0.014 0.37±0.120 比較例 1:シームレスカフ °セル 5 2.5 0.05 ±0.011 0.12±0.038 比較例 2:軟カフ。セル 5 3.2 0.06 ±0.010 0.14±0.041 比較例 3:硬カフ。セル 5 3 0.06 ±0.010 0.13±0.028 形質転換微生物生菌 5 2.5 0.04 ±0.012 0.11 ±0.041 宿主微生物生菌 5 12 0.02 ±0.008 0.10 ±0.038 リン酸緩衝液 5 - 0.02 ±0.006 0.14±0.032
実施例 1で得られた耐酸性のシームレスカプセル、 軟カプセル、 および硬 カプセルの各製剤を摂取させた場合、 いずれの形態の耐酸性カプセル製剤を 用いても、 耐酸性ではない比較例のカプセル製剤 1〜3、 または生菌のみを 摂取させた例に比べて、 便中、 血中ともに I gA量が多く、 抗体を惹起させ る効果が高いことが分かった。
(実施例 5 : コレラのフラジェリン発現形質転換微生物投与による抗体惹 起の確認)
実施例 2で得たコレラのフラジェリン発現形質転換微生物 (組換え Lb. pi antarum) を含むシームレスカプセル製剤、 軟カプセル製剤、 および硬カプ セル製剤、 ならびに比較例 4〜 6のカプセル製剤について、 実施例 4と同様 にして、 抗体惹起の確認を行った。
また、 对照として、 コレラのフラジヱリンを発現する形質転換微生物生菌、 宿主の Lb. plantarum生菌、 およびリン酸緩衝液をそれぞれ投与した。 結果 を表 2に示す。
表 2
BALB/c 1曰投与量 便中 IgA量 血清中 IgA量 投与サンプル
数 107 c 曰 (OD土標準誤差) (OD土標準誤差) 実施例 2 :シームレスカフ。セル 7 2.8 0.15±0.012 0.42 ±0.133 実施例 2 :軟カプセル 7 3.3 0.13±0.013 0.41 ±0.142 実施例 2 :硬力: 7°セル 7 3.2 0·13±0.014 0.39±0.140 比較例 4:シームレスカフ。セル 5 2.8 0.05 ±0.01 1 0.13±0.038 比較例 5 :軟カプセル 5 3.3 0.06 ±0.010 0.12±0.052 比較例 6:硬カフ。セル 5 3.2 0.06 ±0.010 0.1 1 ±0.028 形質転換微生物生菌 5 2.8 0.03 ±0.012 0.12±0.032 宿主微生物生菌 5 8.3 0.02 ±0.008 0.10+0.022 リン酸緩衝液 5 一 0.02 ±0.006 0.15±0.033
実施例 2で得られた耐酸性のシームレスカプセル、 軟カプセル、 および硬 カプセルの各製剤を摂取させた場合、 いずれの形態の耐酸性カプセル製剤を 用いても、 耐酸性ではない比較例 4〜 6のカプセル製剤、 生菌のみを摂取さ せた例に比べて、 便中、 血中ともに I gA量が多く、 抗体を惹起させる効果 が高いことが分かった。
(実施例 6 :赤痢のフラジェリン発現形質転換微生物投与による抗体惹起 の確認)
赤痢菌のフラジェリン発現形質転換微生物 (組換え B. longum) を含む実 施例 3で得たシームレス力プセル製剤、 軟カプセル製剤、 および硬力プセル 製剤、 ならびに比較例 7〜 9のカプセル製剤について、 実施例 4と同様にし て、 抗体惹起の確認を行った。
また、 対照として、 赤痢のフラジェリンを発現する形質転換微生物生菌、 宿主の B. longum生菌、 およびリン酸緩衝液をそれぞれ投与した。 結果を表 3に示す。 表 3
BALB/c 1曰投与量 便中 IgA量 血清中 IgA量 投与サンプル
数 107 cfu/曰 (OD土標準誤差) (OD土標準誤差) 実施例 3 :シームレスカフ。セル 7 3.2 0.13±0.012 0.38±0.142 実施例 3 :軟カプセル 7 3.9 0.12±0.013 0.37±0.153 実施例 3 :硬カプセル 7 4 0.13±0.014 0.39±0.131 比較例 7:シームレスカフ。セル 5 3.2 0.06 ±0.01 1 0.1 1 ±0.038 比較例 8 :軟カプセル 5 3.9 0.05 ±0.010 0.12±0.051 比較例 9:硬カフ"セル 5 4 0.06 ±0.010 0.1 1 ±0.028 形質転換微生物生菌 5 3.2 0.02 ±0.012 0.1 1 ±0.038 宿主微生物生菌 5 10.1 0.03 ±0.008 0.13 ±0.036 リン酸緩衝液 5 - 0.03 ±0.006 0.14±0.031
実施例 3で得られた耐酸性のシームレスカプセル、 軟カプセル、 および硬 カプセルの各製剤を摂取させた場合、 いずれの形態の耐酸性カプセル製剤を 用いても、 耐酸性ではない比較例 7〜 9のカプセル製剤、 生菌のみを摂取さ せた例に比べて、 便中、 血中ともに IgA量が多く、 抗体を惹起させる効果 が高いことが分かった。
(実施例 7 :腸チフス抗原を菌体外に分泌するビフィズス菌を含有する耐 酸性カプセル製剤の調製)
A. PCRによる S. typhimurium由来のフラジェリン遺伝子の増幅 実施例 1の A. に記載の方法と同様にして S. typhimurium由来のフラジヱ リン遺伝子断片を調製した。
B. PCRによる分泌シグナルペプチド DN Aの増幅
B. bifidum ATCC 29521を MR S培地 (日本べク トン 'ディッキンソン株 式会社製) で 37°Cにて 12時間培養した。 培養終了後、 常法により B. bif idumのゲノム DNA (Access# AJ224435) を抽出した。 実施例 1の A. と同 様に PC Rを行った。 本 PC Rでは、 B. bif idumのゲノム DN Aを铸型とし て、 配列表の配列番号 1 1 (forward) : 5, -CGGCAAGCTTTA TGGGGGATACAGGATTGGCGAT— 3, (5位から 10位ま での AAGCTTは Hindlll切断部位である) および配列番号 1 2 (revers
GACCG— 3 ' (5位から 10位までの CCATGGは Ncol切断部位であ る) のプライマー対を用いた。 PCRの終了後、 Hindlllおよび Ncolで切断 し、 分泌シグナルペプチド遺伝子断片を調製した。
c 分泌型発現ベクターの調製
プラスミ ド p BLES 100を BamHIおよび Hindlllで切断し、 上記 A. で 得られたフラジェリン遺伝子断片および上記 B . で得られた分泌シグナルぺ プチド遺伝子断片と混合してライゲーシヨンすることにより、 分泌型発現べ クタ一 p B LE S— S P— F 1 i cを得た。
D. 分泌型発現ベクターの B. breveへの導入
発現ベクターとして上記 C. で得られた p B LE S— S P— F 1 i c、 そ して形質転換されるべき菌体として B. breve ATCC 15700を用いたこと以外 は、 実施例 1の D. と同様にして形質転換を行い、 形質転換 B. breveを得た。
E. 分泌の確認
上記 D. で得られた形質転換 B. breveを、 大理石含 MRSブロス培地で 3 7°Cにて 1 2時間培養した後、 4°Cにて 12,000rpmで遠心分離し、 上清を得 た。 遠心上清について、 上記実施例 1の E. の記載と同様にゥヱスタンプ口 ッティングを行い、 形質転換 B. breveによるフラジェリンタンパク質の菌体 外分泌を確認した。
F. 形質転換微生物の凍結乾燥菌末の調製
腸チフスフラジヱリンの分泌が確認された B. breveを用いて、 実施例 1の
F. と同様の方法で凍結乾燥菌末を調製した。
G. 耐酸性のシームレスカプセル製剤、 軟カプセル製剤および硬カプセル 製剤の調製
上記 F. で得られた凍結乾燥菌末を用いて、 シームレスカプセル製剤、 軟 カプセル製剤おょぴ硬カプセル製剤をそれぞれ実施例 1の G. 、 H. および
I . の方法にしたがって調製した。 得られたシームレスカプセル製剤、 軟カ プセル製剤およぴ硬カプセル製剤の皮膜は、 耐酸性である。
(比較例 1 0〜 1 2 )
微生物を実施例 7の腸チフスのフラジェリン分泌発現形質転換微生物に代 えたこと以外は、 比較例 1〜3と同様にして、 それぞれ、 シームレスカプセ ル製剤、 軟カプセル製剤、 および硬カプセル製剤を調製し、 比較例 1 0〜1 2とした。 得られたシームレスカプセル製剤、 軟カプセル製剤および硬カブ セル製剤の皮膜は、 耐酸性でない。
(実施例 8 )
実施例 7で得た腸チフスのフラジェリン分泌発現形質転換微生物 (組換え B. breve) を含むシームレスカプセル製剤、 軟カプセル製剤、 および硬カプ セル製剤、 ならびに比較例 1 0〜 1 2のカプセル製剤について、 実施例 4と 同様にして、 抗体惹起の確認を行った。
また、 对照として、 腸チフスのフラジェリン分泌発現形質転換微生物 (組 換え B. breve) 生菌、 宿主の B. breve生菌、 およびリン酸緩衝液をそれぞれ 投与した。 結果を表 4に示す。
表 4
実施例 7で得られた腸チフスのフラジェリン分泌発現形質転換微生物を含 有する耐酸性のシームレスカプセル、 軟カプセル、 および硬カプセルの各製 剤を摂取させた場合、 いずれの形態の耐酸性カプセル製剤を用いても、 耐酸 性ではない比較例 1 0〜1 2のカプセル製剤、 生菌のみを摂取させた例に比 ベて、 便中、 血中ともに I gA量が多く、 抗体を惹起させる効果が高いこと が分かった。 産業上の利用可能性
フラジェリンを発現する形質転換微生物を耐酸性カプセル内に入れた製剤 とすることにより、 抗フラジェリン抗体産生量が向上する。 このように腸チ フス、 コレラ、 赤痢などの細菌性感染症に对する経口ワクチンとして効果が あることから、 細菌性感染症の予防および治療方法が提供できる。 近年の薬 剤耐性感染症菌の蔓延を考慮すれば、 流行地域住民やその地域へ仕事や旅行 で出かける人への経ロワクチン投与は、 理想的な予防および治療戦略となる。