明 細 書
トリカフェオイルアルダル酸を含む a—ダルコシダーゼ阻害剤、血糖値上 昇抑制剤、機能性食品、およびトリカフヱオイルアルダル酸の製造方法
技術分野
[0001] 本発明は、トリカフェオイルアルダル酸を含む (X ダルコシダーゼ阻害剤、血糖値 上昇抑制剤、機能性食品、およびトリカフェオイルアルダル酸の製造方法に関する。 背景技術
[0002] 糖尿病は、生活習慣病の中でも食生活と関連が深いとされ、特に全糖尿病者の 9 割以上を占める軽症 2型糖尿病は、国内においても肉食中心の食生活ィ匕が進むに つれて増加の一途を迪つている。また、糖尿病の合併症として、糖尿病性網膜症、糖 尿病性腎症、糖尿病性神経障害など重篤な多臓器 ·器官の障害が知られており、ま た動脈硬化や心筋梗塞など循環器障害のリスクファクターとしても生命予後に大きく 影響する。 日頃の血糖値を如何にコントロールできるかが生命予後や将来の QOLを 決定する大きなカギとなる。
[0003] 日常の食生活の中では、血糖値の上昇を抑える作用のある食品として、難消化性 デキストリン、小麦アルブミン、グアバ茶ポリフエノール、豆乳エキス、 L ァラビノース などがあり、それらを含有した食品が既に特定保健用食品として表示認可されている 。これらの機能性食品は、医薬品で見られるような副作用などもなぐ安全性の高さか らも注目されている。これらとは別の機能性素材としてヤーコンがある。
[0004] ヤーコン(Smallanthus sonchifolia)はアンデス山地原産のキク科植物である。
本発明者らは、ヤーコン地上部熱水エキスに血糖上昇抑制活性を見出し、作用発現 に α ダルコシダーゼ阻害活性が関与していること、またエキス中の 3、 4ージカフェ オイルキナ酸などのジカフェオイルキナ酸(DCQA)類が強力かつ選択的な ex—グ ルコシダーゼ阻害活性を有することを報告している(非特許文献 1参照)。さらには、 ヤーコンに含まれるトリカフェオイルアルダル酸力 抗酸化剤としての活性を有するこ とが報告されて ヽる (特許文献 1参照)。
[0005] 最近、活性酸素が脾臓ランゲルハンス氏島に作用して糖尿病発症を促進し、これ
が抗酸化物質投与により抑制されることが報告 (非特許文献 2、 3参照)されている。 また、抗酸ィ匕活性を有するポリフエノールにより STZ誘発糖尿病マウスの血糖値が低 下することも報告されて ヽる(非特許文献 4参照)。 Caffeic acidや DCQA類には抗 酸ィ匕活性のあることが知られている(非特許文献 5、 6参照)。
[0006] 特許文献 1 :特許第 3039864号明細書
非特許文献 1 : Terada S., Ito K., Taka M., Ogose N" Noguchi N., Koide Y" Natural Medicines, 57, 89—94 (2003)
非特許文献 2 : Tanaka Y., Gleason C. E., Tran P. O. T, Harmon J. S., Robertson R. P., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 96, 10857—10862 (1999)
非特許文献 3 : Katoh M., Sakurai K., Fujimoto Y., YAKUGAKU ZASSHI, 122, 831— 839 (2002)
非特許文献 4 : Moharram F. A., Marzouk M. S., EI- Toumy S. A., Ahmed A. A., Abo utabl E. A., Phytother. Res., 17, 767-773 (2003)
非特許文献 5 : Chuda Y., Ono H., Ohnishi- Kameyama M., Nagata T., Tsushida T., J . Agric. Food Chem., 44, 2037-2039 (1996)
非特許文献 6 : Ohnishi M., Morishita H., Toda S., Yase Y., Kido R., Phytochemistry , 47, 1215-1218 (1998)
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0007] し力しながら、上記文献記載の従来技術は、ヤーコンに含まれる成分のうち、 a - ダルコシダーゼ阻害作用および血糖値上昇抑制作用をもたらす成分につ ゝて、完全 に明らかにしていたわけではなかった。また、ヤーコンから α—ダルコシダーゼ阻害 作用および血糖値上昇抑制作用をもたらす成分を収率よく精製するための方法も確 立されていなかった。
[0008] 本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ヤーコンに含まれる成分のうち、 α—ダルコシダーゼ阻害作用および血糖値上昇抑制作用をもたらす成分を明らか にして提供することを目的とする。また、ヤーコンから a—ダルコシダーゼ阻害作用 および血糖値上昇抑制作用をもたらす成分を収率よく精製するための方法を目的と
する。
課題を解決するための手段
[0009] 本発明者らは、上記目的を解決するために、鋭意研究に励み、ヤーコンに含まれる 成分のうちトリカフェオイルアルダル酸力 優れた α—ダルコシダーゼ阻害作用およ び血糖値上昇抑制作用をもたらすことを見出し、本発明を完成した。
[0010] すなわち、本発明によれば、トリカフェオイルアルダル酸を含む、 α—ダルコシダー ゼ阻害剤が提供される。この α—ダルコシダーゼ阻害剤は、優れたひ一ダルコシダ ーゼ阻害作用を有するトリカフェオイルアルダル酸を含むため、 a—ダルコシダーゼ の活性を好適に阻害することができる。
[0011] また、本発明によれば、上記の oc—ダルコシダーゼ阻害剤を含有する、機能性食 品が提供される。この機能性食品は、優れた α—ダルコシダーゼ阻害活性を有する トリカフェオイルアルダル酸を含むため、 a—ダルコシダーゼの活性を好適に阻害す ることがでさる。
[0012] また、本発明によれば、トリカフェオイルアルダル酸を含む、血糖値上昇抑制剤が 提供される。この血糖値上昇抑制剤は、優れた血糖値上昇抑制作用を有するトリ力 フエオイルアルダル酸を含むため、血糖値の上昇を好適に抑制することができる。
[0013] また、本発明によれば、上記の血糖値上昇抑制剤を含有する、機能性食品が提供 される。この機能性食品は、優れた血糖値上昇抑制作用を有するトリカフェオイルァ ルダル酸を含むため、血糖値の上昇を好適に抑制することができる。
[0014] また、本発明によれば、トリカフェオイルアルダル酸の製造方法であって、ヤーコン 地上部から、水または親水性有機溶媒を含む溶媒を用いてトリカフェオイルアルダル 酸含有エキスを抽出する工程と、トリカフェオイルアルダル酸含有エキスから、芳香族 系吸着剤を用いて第一のトリカフェオイルアルダル酸含有画分を固相抽出する工程 と、トリカフヱオイルアルダル酸含有画分の pHを 6以上 10以下の範囲内に調整した 条件下で、ゲル濾過剤を用いて第二のトリカフェオイルアルダル酸含有画分を固相 抽出する工程と、を含む、トリカフェオイルアルダル酸の製造方法が提供される。
[0015] この方法によれば、トリカフェオイルアルダル酸の含有率が高いヤーコン地上部を 用いて、芳香族系吸着剤およびゲル濾過剤を組み合わせて固相抽出を行い、さらに
、ゲル濾過の際にトリカフェオイルアルダル酸を安定ィ匕させるために、本来 pH4. 5か ら 5位の弱酸性を示すエキスに重曹、炭酸ソーダ、苛性ソーダなどをカ卩えて pHを 6以 上 10以下の範囲内に調整するため、トリカフェオイルアルダル酸のナトリウム塩を大 量に収率よく精製することができる。
[0016] また、本発明によれば、トリカフヱオイルアルダル酸含有エキスの製造方法であって 、ヤーコン地上部から、エタノール濃度が 0%以上 70%以下 (vZv)であるエタノール および水の混液を用いて、 25°C (室温)以上 100°C以下の温度でトリカフェオイルァ ルダル酸を含有するエキスを抽出する工程を含む、トリカフェオイルアルダル酸含有 エキスの製造方法が提供される。この方法によれば、トリカフヱオイルアルダル酸の含 有率が高いヤーコン地上部から、水とアルコールとの混液を用いることにより、トリカフ ェオイルアルダル酸含有量の多いトリカフェオイルアルダル酸含有エキスを大量に精 製することができる。
[0017] また、本発明によれば、トリカフヱオイルアルダル酸含有エキスの製造方法であって 、ヤーコン地上部から、塩基性溶媒を用いてトリカフェオイルアルダル酸を含有する p H8以上 10以下の塩基性エキスを抽出する工程と、前記塩基性エキスを、 pH2以上 6以下に調整してトリカフヱオイルアルダル酸を含有する酸性エキスを生成する工程 と、を含む、トリカフェオイルアルダル酸含有エキスの製造方法が提供される。この方 法によれば、トリカフェオイルアルダル酸の含有率が高いヤーコン地上部から、塩基 性溶媒を用いて、トリカフェオイルアルダル酸を安定ィ匕した状態で抽出することにより 、トリカフヱオイルアルダル酸含有量の多 、トリカフヱオイルアルダル酸含有エキスを 大量に収率よく精製することができる。
発明の効果
[0018] 本発明の a—ダルコシダーゼ阻害剤またはそれを含む機能性食品によれば、トリ力 フエオイルアルダル酸を含むため、 a ダルコシダーゼの活性を好適に阻害すること ができる。
[0019] また、本発明の血糖値上昇抑制剤またはそれを含む機能性食品によれば、トリカフ ェオイルアルダル酸を含むため、血糖値の上昇を好適に抑制することができる。
[0020] また、本発明のトリ力フ オイルアルダル酸の製造方法によれば、特定の固相抽出
の組み合わせを用いて、特定の条件下で抽出を行うため、トリカフェオイルアルダル 酸を大量に収率よく精製することができる。
[0021] さらに、本発明のトリカフヱオイルアルダル酸含有エキスの製造方法によれば、トリ カフヱオイルアルダル酸の含有率が高いヤーコン地上部から、特定の溶媒で抽出を 行うため、トリカフヱオイルアルダル酸含有量の多 、トリカフヱオイルアルダル酸含有 エキスを大量に収率よく精製することができる。
図面の簡単な説明
[0022] [図 1]ヤーコン抽出エキスから得られた DIAION HP— 20 50%メタノール溶出画 分の HPLCクロマトグラフを示した図である。
[図 2]トリカフヱオイルアルダル酸の一種であるトリカフヱオイルアルトラル酸 (TCAA) の構造式について説明するための図である。
[図 3]ラットにおけるマルトース負荷 TCAAの血糖値上昇抑制作用を調べるための試 験スケジュールを示した概念図である。
[図 4]ラットにおけるマルトース負荷後の血糖値の推移を示すグラフである。
[図 5]水—エタノール混合比と TCAA抽出効率を示すグラフである。
[図 6]抽出温度と TCAA抽出効率を示すグラフである。
[図 7]抽出液の pHと TCAA抽出効率を示すグラフである。
発明の実施の形態
[0023] 以下、本発明の実施の形態について説明する。
[0024] 本発明者らは、上記目的を解決するために、ヤーコン地上部エキスについて検討 したところ、 ex tocopherolや(士) catechinに匹敵する強力な抗酸化活性を見 出した。そして、本発明者らは、その活性成分の探索の結果、抗酸化活性は上記の a—ダルコシダーゼ阻害活性と同様に、熱水エキスの DIAION HP— 20カラムクロ マトグラフィ一の 50%メタノール溶出画分に収斂することを見出した。さらに、本発 明者らは、 HPLC分析により本画分は caffeoyl基を有するポリフエノール成分の混 合物であることを見出し、 DCQAなどの a—ダルコシダーゼ阻害活性成分を検出し た。そして、本発明者らは、同時に、これまで未検出で含量の高い成分が認められた ことから精製を行い、既知物質 2、 3、 5 -tricaffeoylaltraric acidまたは、 2、 4、 5
- tricaffeoylaltraric acid (TCAA :トリカフェオイルアルトラル酸)を分離した。
[0025] なお、 2、 3、 5— tricaffeoylaltraric acidと 2、 4、 5― tricaffeoylaltraric acid は区別が困難であることから、以後これらを含めて TCAA :トリカフェオイルアルトラル 酸と定義する。従って、文章中における「TCAA」との記載には、 2、 3、 5 - tricaffeo ylaltraric acid、または 2、 4、 5— tricaffeoylaltraric acidが含まれるものとする。
[0026] 本発明者らは、 TCAAを他の天然物由来の抗酸化活性成分とともに評価し、 a - ダルコシダーゼ阻害活性ならびに血糖値上昇抑制作用につ 、て検討したところ、トリ カフェオイルアルダル酸の一種である TCAAが優れた at ダルコシダーゼ阻害作用 および血糖値上昇抑制作用を有することを見出した。
[0027] すなわち、本実施形態によれば、トリカフェオイルアルダル酸を含む、 a—ダルコシ ダーゼ阻害剤および機能性食品が提供される。このひ ダルコシダーゼ阻害剤およ び機能性食品は、優れた α—ダルコシダーゼ阻害作用を有するトリカフェオイルアル ダル酸を含むため、 a—ダルコシダーゼの活性を好適に阻害することができる。なお 、この機能性食品には、消費者の便宜および消費意欲喚起のために α ダルコシダ ーゼ阻害のために用いられる旨の表示が付されて 、てもよ!/、。
[0028] また、本実施形態によれば、トリカフェオイルアルダル酸を含む、血糖値上昇抑制 剤および機能性食品が提供される。この血糖値上昇抑制剤は、優れた血糖値上昇 抑制作用を有するトリカフェオイルアルダル酸を含むため、血糖値の上昇を好適に抑 制することができる。なお、この機能性食品には、消費者の便宜および消費意欲喚 起のために血糖値上昇抑制のために用いられる旨の表示が付されて 、てもよ!/、。
[0029] ここで、アルダル酸 (Aldaric acids)とは、アルド一スの両末端の炭素をカルボン酸に まで形式的に酸化して得られる酸を意味する。なお、アルダル酸は、異性体として、 ァラル酸、アルトラル酸、グルカル酸、マンナル酸、グルロン酸、イダル酸、ガラクタル 酸、タルロン酸を含み、いずれも自然界では D—体である。
[0030] そして、トリカフヱオイルアルダル酸とは、アルダル酸とカフヱ酸とがエステル結合し た化合物であり、 TCAA、トリカフェオイルァラル酸、トリカフェオイルグルカル酸、トリ カフェオイルマンナル酸、トリカフェオイルグルロン酸、トリカフェオイルイダル酸、トリ カフェオイルガラタタル酸、トリカフェオイルタルロン酸を含む総称である。すなわち、
トリカフェオイルアルダル酸とは、 TCAAをはじめとする複数種類の異性体を含む総 称である。
[0031] これらの中でも、トリカフェオイルアルダル酸として、特に好ましいのは、後述するよ うに、アルダル酸の異性体の一つであるアルトラル酸とカフェ酸とがエステル結合した TCAAである。そして、 TCAAとは、 2、 3、 5—トリカフェオイルアルトラル酸だけでな く、 2、 4、 5—トリカフェオイルアルトラル酸も含むものとする。
[0032] TCAAにつ ヽては、後述するように、ヤーコン地上部カゝら精製されたトリカフェオイ ルアルダル酸中に含まれていることを、精密質量分析により決定した分子式、核磁気 共鳴スペクトルにより確認している。なお、 TCAAの構造式を、以下に示す。
[0033] [化 1]
Structure of T AA
[0034] 繰り返しになるが、上記のトリカフェオイルアルダル酸の異性体には、上記の TCA Aの他に、トリカフヱオイルァラル酸、トリカフヱオイルグルカル酸、トリカフヱオイルマ ンナル酸、トリカフェオイルグルロン酸、トリカフェオイルイダル酸、トリカフェオイルガラ クタル酸、トリカフェオイルタルロン酸などの異性体も含まれるものとする。したがって 、 TCAA以外のトリカフヱオイルアルダル酸の異性体も、本実施形態における α—グ
ルコシダーゼ阻害剤、血糖値上昇抑制剤、それらを含む機能性食品などに好適に 用!/、ることができる。
[0035] また、上記のトリカフェオイルアルダル酸はヤーコン由来であることが好ましい。ヤー コンには、トリカフヱオイルアルダル酸が高含有率で含まれているからである。さらに、 上記のトリカフェオイルアルダル酸はヤーコンの地上部由来であることが好ましい。ャ 一コンの中でも、葉や茎などの地上部には、トリカフェオイルアルダル酸が特に高含 有率で含まれて!/ヽるカゝらである。
[0036] ここで、ヤーコン(Smallanthus sonchifolia)とは、アンデス山地原産のキク科植 物の一種である。ヤーコンは、地中に塊根と塊茎の二種類の栄養器官を作り、一般 的に塊根は食用に、塊茎は繁殖用(苗)に利用される。芋 (塊根)の部分は水分が多 ぐシャキッとした食感とほんのりとした甘みを持ち、古代インカ時代より食用として用 いられている。一方で、ヤーコンの葉や茎などの地上部は、スープやサラダに利用さ れている。
[0037] なお、上記の oc ダルコシダーゼ阻害剤、血糖値上昇抑制剤、それらを含む機能 性食品には、トリカフェオイルアルダル酸だけでなぐさらに、ジカフェオイルキナ酸( DCQA)類を含んでもょ 、。ジカフェオイルキナ酸(DCQA)類もトリカフェオイルアル ダル酸と同様に、ヤーコン地上部熱水エキスに含まれており、強力かつ選択的な α ダルコシダーゼ阻害活性を有するためである。
[0038] また、上記の oc—ダルコシダーゼ阻害剤、血糖値上昇抑制剤、それらを含む機能 性食品には、それ以外にも、他の生理活性物質、食品原料、食品添加物などを適宜 必要に応じて含有してもよい。ここで、食品添加物とは、食品の製造の過程において 又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によ つて使用する物をいい、保存料、甘味料、着色料等を含むものとする。
[0039] また、上記の機能性食品には、厚生労働省の定める保健機能食品 (特定保健用食 品、栄養機能食品)が含まれるものとする。もっとも、厚生労働省の定める保健機能 食品でなくても、通常の食品に比べて優れた何らかの生理活性を有する食品であれ ば、機能性食品に含まれるものとする。さらに、上記の機能性食品に付する表示には 、厚生労働省の定める保健機能食品に対して認められた表示が含まれ、例えば機能
性食品の包装容器に付される表示が含まれるものとする。
[0040] 上記のトリカフヱオイルアルダル酸は、ヤーコン力 水または親水性有機溶媒を含 む溶媒を用いて抽出されてなる抽出エキス由来であることが好ましい。特に、熱水抽 出または水およびエタノール混合溶媒により抽出されることが好ましい。このように、 ヤーコン力 水または親水性有機溶媒を含む溶媒を用いて抽出することにより、トリ力 フエオイルアルダル酸を含むエキスを得ることができるからである。
[0041] また、上記のトリカフヱオイルアルダル酸は、トリカフヱオイルアルダル酸ナトリウム塩 として含まれて 、てもよ 、。トリカフェオイルアルダル酸ナトリウム塩として抽出する方 力 トリカフェオイルアルダル酸が安定化するためである。このとき、 pHを 6以上 10以 下の範囲内に調整した条件下でナトリウム塩として抽出すれば、さらにトリ力フ オイ ルアルダル酸が安定化するため好まし!/、。
[0042] 例えば、トリカフヱオイルアルダル酸の製造方法としては、ヤーコン地上部から、水 または親水性有機溶媒を含む溶媒を用いてトリカフヱオイルアルダル酸含有エキスを 抽出する工程と、トリカフヱオイルアルダル酸含有エキスから、芳香族系吸着剤を用 いて第一のトリカフェオイルアルダル酸含有画分を固相抽出する工程と、トリカフェォ ィルアルダル酸含有画分の pHを 6以上 10以下の範囲内に調整した条件下で、ゲル 濾過剤を用いて第二のトリカフヱオイルアルダル酸含有画分を固相抽出する工程と、 を含むトリカフェオイルアルダル酸の製造方法が挙げられる。
[0043] この方法によれば、トリカフェオイルアルダル酸の含有率が高いヤーコン地上部を 用いて、芳香族系吸着剤およびゲル濾過剤を組み合わせて固相抽出を行い、さらに 、ゲル濾過の際にトリカフェオイルアルダル酸を安定ィ匕させるために pHを 6以上 10 以下の範囲内に調整するため、トリカフヱオイルアルダル酸をナトリウム塩として大量 に収率よく精製することができる。このとき、トリカフェオイルアルダル酸ナトリウムをさ らに安定ィ匕するためには、第二のトリカフェオイルアルダル酸含有画分は、トリカフェ オイルアルダル酸ナトリウムを含有する画分として溶出されることが好ましい。
[0044] 一方、従来公知の特許文献 1に記載の HPLCを用いる方法では、大量のトリカフェ オイルアルダル酸を精製することは困難であり、特にグラム単位以上のトリカフェオイ ルアルダル酸を得るには現実的な方法ではない。これに対して、本実施形態の方法
によれば、トリカフェオイルアルダル酸の含有率が高いヤーコン地上部を用い、さらに HPLCを用いることがないため、トリカフェオイルアルダル酸を大量に精製することが できる。また、本実施形態の方法によれば、芳香族系吸着剤およびゲル濾過剤を組 み合わせて固相抽出を行うために、得られるトリカフェオイルアルダル酸の純度を向 上することができ、さらにゲル濾過の際に pHを 6以上 10以下の範囲内に調整するた め、トリカフェオイルアルダル酸を安定ィ匕させることができ、従来は困難であった優れ た収率を実現することができる。
[0045] なお、本実施形態の方法においても、ヤーコンは、抽出効率を高めるために、細か く粉砕しておき、これを熱水抽出するか、水およびエタノールの混合溶媒により抽出 してエキスを製造することが望ましい。ヤーコンは、トリカフェオイルアルダル酸の含有 率が高!、茎や葉などの地上部を用いることが望ま 、が、塊根や塊茎を用いてもよ い。
[0046] 抽出条件としては特に制限はないが、通常、ヤーコン葉 ·茎 lkgあたり、 5L以上 50 L以下の範囲内の熱水や、 5L以上 50L以下の範囲内の水およびエタノールの混合 溶媒を用いることが好ましい。また、熱水を用いる場合には、抽出効率を高めるため、 熱水の温度を 40°C以上 100°C (沸騰温度)以下の範囲内に調整し、 0. 1時間以上 2 4時間以下の範囲内で抽出することが好ましい。もっとも、熱水を用いずに、単なる常 温の水で抽出することもできる。好ましくは 60°C以上 80°C以下の温度範囲、 5分以 上 40分以下抽出する。
[0047] 一方、水およびエタノールの混合溶媒を用いる場合には、抽出効率を高めるため、 水およびエタノールの混合溶媒の組成をエタノール濃度 0%以上 90%以下 (vZv) の範囲内とし、温度 25°C (室温)以上 100°C (沸騰温度)以下、 0. 1時間以上 24時 間以下の範囲内で抽出することが好ましい。エタノール濃度は、更に、 10%以上でも よぐまた、 70%以下でもよい。ここで、エタノールの代わりに、他の親水性有機溶媒 として、例えば、メタノール、 2—プロパノール、 1 プロパノール、アセトン、ジォキサ ンなどを用いることができる。好ましくはエタノール濃度 30%以上 70%以下 (vZv)の 範囲で、温度 40°C以上 90°C以下で 0. 1時間以上 1時間以下抽出する。あるいは、 エタノール濃度 20%以上 50%以下 (vZv)の範囲で、温度 60°C以上 80°C以下で抽
出することが好ましい。最も好ましくは、エタノール濃度 30% (vZv)で、温度 80°Cで 30分間抽出する。
[0048] さらに、より抽出効率を高めるために種々の pHについて検討した結果、塩基性条件 下で抽出を行えば、より効率よくトリカフェオイルアルダル酸が抽出されることが明ら 力となった。すなわち、溶媒中に塩基を添加し、抽出液の pHを 8以上 10以下にした 後、酸を加えることにより溶液を酸性とし、溶媒を濃縮し凍結乾燥することによりトリ力 フエオイルアルダル酸の含量が高いエキスを得ることが出来る。用いる塩基は炭酸ナ トリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸ィ匕カリウム、アンモニアなどを用いること が出来る力 抽出液の pHを 8以上 10以下になるようにアンモニアを添加することが好 ま 、。抽出する温度と時間はトリカフェオイルアルダル酸の分解を抑えるために室 温にて短時間、好ましくは 15分間で抽出する。酸性に戻す際に使用する酸は、塩酸 、硫酸、硝酸、などを用いることが出来、特に限定されないが、塩酸が好ましい。酸性 は、 pH2以上 6以下になるように酸を添加すればよぐ好ましくは pH3以上 4以下に調 整する。
[0049] 以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記 以外の様々な構成を採用することもできる。
[0050] 例えば、上記実施の形態では芳香族系吸着剤およびゲル濾過剤を組み合わせて 固相抽出を行う製造方法としたが、特に限定されず、さらに他のカラムクロマトグラフィ 一を行ってトリカフェオイルアルダル酸を精製してもよい。また、これらの固相抽出は 、カラム法に限定されず、バッチ法、膜法などのいずれの形態で行ってもよい。例え ば、カラム法を例にとって説明すると、固相を充填したカラムに試料を通過させ、目的 成分を捕集した後、適当な洗浄液を通して洗浄し、次いでアルコールなど力 なる溶 離液を通して捕集した目的成分を溶出することができる。なお、固相抽出するにあた つては、あらかじめエタノールなどの親水性の溶媒をカラムに通すコンディショニング を行い、固相表面を濡らしておくとよい。
実施例
[0051] 以下、本発明を実施例によりさらに説明する力 本発明はこれらに限定されるもの ではない。
[0052] <実施例 1: TCAAの抗酸ィ匕活性およびひ ダルコシダーゼ阻害活性 >
1.実験方法
1)ヤーコンの栽培
ヤーコンは 2002年東京都練馬区大泉町 2丁目の全薬工業 (株)中央研究所圃場 にて、茨城大学農学部月橋輝男教授より恵与頂いたペルー A系ヤーコンの種芋を 用いて栽培した。
[0053] 2)カラムの種類
カラムクロマトグラフィー用の担体は、 DIAION HP - 20 (三菱化学)、 LiChropre p RP— 18 (メルク)、 TOYOPEARL HW— 40F (東ソ一)、 Sephadex LH— 20 (アマシャム)を用いた。
[0054] 3)TCAAの分離
ヤーコン地上部 100gを 1Lの 70°C熱水で 15分間攪拌抽出し、熱時綿栓濾過した 。濾液を濃縮'凍結乾燥し暗褐色粉末 17. 3gを得た。この全量を DIAION HP— 2 0カラムクロマトグラフィー(30mm φ X 200mm)に付し、水、 50%メタノール/水、メ タノール各 1Lで順次溶出後、濃縮して凍結乾燥し水溶出部 13. 9g、 50%メタノール Z水溶出部 2. 21g、メタノール溶出部 0. 48gを各々得た。それぞれにっき HPLCで TCAAの検出を行った。図 1にヤーコン抽出エキスから得られた DIAION HP— 20
50%メタノール画分の HPLCクロマトグラフを示す。
[0055] 次いで、 50%メタノール Z水溶出部 2. 19gを 2回に分けて LiChroprep RP—18 カラムクロマトグラフィー(35mm φ X 370mm)に付し、メタノール一 5%酢酸(3 : 7)、 次 、でメタノール 5%酢酸 (4: 6)で溶出した。このメタノール 5%酢酸 (4: 6)溶出 部をまとめ TOYOPEARL HW—40Fカラムクロマトグラフィー(メタノール一水 = 3 : 7→9 : 1)、 Sephadex LH— 20カラムクロマトグラフィー(メタノール一水 = 8 : 2)に て分離し、淡黄色粉末として TCAAを 11. 6mgを得た。
[0056] 4) TCAAの同定方法
NMRiお NM— EX400 (日本電子)にて測定し、内部標準は TMSを用いた。なお 、 doubletは d、 double doubletは ddと各々略した。高分解能 FAB— MSiお MS— SX102A (日本電子)にて測定した。 UVスペクトルは UV— 2550 (島津製作所)、比
旋光度は SEPA— 300 (堀場製作所)により各々測定した。 HPLCはポンプ LC— 10 Atvp、 UV/フォトダイオードアレー検出器 SPD— M10Avp、カラムオーブン CTO 10Asvp、システムコントローラー SCL— ΙΟΑνρ (何れも島津製作所)を用いて行 つた o
[0057] 5)ヤーコン地上部エキス中の TCAAの定量
カラム: YMC ODS -A 120— S5 (4. 6mm φ X 150mm)、移動ネ目:テトラヒドロ フラン (THF)— 0. 1 %リン酸混液(7 : 3)、カラム温度:40で、流量: 1. Oml/min, 検出波長: 332nmの条件で定量を行った。
[0058] 具体的には、エキス約 0. lgを精密に量り、移動相に溶解し正確に 50mlとし試料 溶液とした。別途、上記方法で分離 '精製した TCAA標準品約 0. Olgを精密に量り 、 THFに溶解し正確に 50mlとした。この液 2mlに 0. 1 %リン酸 15mlをカ卩ぇ混和した 後、移動相を加えて正確に 50mlとし標準溶液とした。試料溶液及び標準溶液を孔 径 0. 45 μ mのメンブランフィルターで濾過し 20 μ 1ずつを HPLCに注入し、各液の T CAAのピーク面積 AT及び ASを測定し、以下の式によりエキス lg中の TCAA量を 算出した。
[0059] エキス lg中の TCAA量(mg)
=標準品採取量 (mg) X f X ( 1/25) X (AT/AS)
X (lgZエキス採取量 g)
なお、 f:標準品純度(%) Zioo
[0060] 6)脳ホモジネート自動酸化試験
Ohkawaらの方法 (参照文献 2)に準じてチォバルビツール酸法により測定した。
[0061] 7) 1 , l— Diphenyl—2—picrylhydrazyl (DPPH)ラジカル捕捉試験
Bloisらの方法 (参照文献 3)に準じて測定した。
[0062] 8)糖水解酵素阻害活性試験
a アミラーゼ、マルターゼ、及びスクラーゼ阻害活性は何れも前報 (非特許文献 1 )に記載の方法により測定した。
[0063] 2.実験結果
ヤーコン地上部エキスを DIAION HP— 20カラムクロマトグラフィーに付して得ら
れた水、 50%メタノール Z水、メタノール各溶出画分の抗酸ィ匕活性を調べたところ、 表 1に示すように 50%メタノール溶出部に活性は収斂した。
[表 1]
Antioxidant activnies of iractions a ind phenols from Yacon extract
inhibitory Activities DPPH Radical sample on Lipid Peroxidation Scavenging Activities
!C50: g/ml EC50: m
Yacon hot water extract 6.65 15.38
HP20-water 20.96 32.19
HP20-50%MeOH 1.9 2.78
HP20-MeOH 24.24 13.12
3,4-DCQA 1.48(2.87) 0.91(1.76)
3,5-DCQA 2.18(4.23) 0.87(1.69)
4,5-DCQA 3.38(6.55) 0.89(1.72)
TCAA 0.49(0.70) 0.69(0.99)
isoquercitrin 6.64(14. 1 ) 1.53(3.30)
chlorogenic acid 13.21(37,32) 1.13(3.19)
(±)-catechin 13.69(47.16) 1.56(5.37)
a: -tocopherol 71.24( 165.67) 5,65(13.14)
caffeic acid 9.97(55.34) 4.39(24.32)
enzogenol 2.17 1.94 ellagic acid 0.56(1 .85) 0.51 (1.69)
( ): M
[0065] この画分を UVZフォトダイオードアレー検出器を接続した HPLCで多波長分析し たところ 290nm及び 330nm付近に極大吸収を有する成分が多数存在し、 50%メタ ノール溶出部は caffeoyl基を有する成分力 成ると推定された。この画分には、 3、 4 — DCQA、 3、 5— DCQA、 4、 5— DCQA、 isoquercitrinなど前報(非特許文献 1) で報告した α—ダルコシダーゼ阻害活性成分が確認された他、図 1に示すように、こ れまで未確認の高含量成分が検出されたことから、カラムクロマトグラフィーにて分離 '精製し、 ¾及び13 C— NMRデータを取得した。
[0066] TCAAの同定方法によって得られた結果を以下に示す。これらのデータと文献値( 参照文献 7)との比較から、ヤーコン塊根部力 抗酸ィ匕活性物質としての分離の報告 (参照文献 8)がある TCAA (図 2)と同定した。すなわち、上記の未確認の高含量成
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与率は 30%と算出された。
[0073] 3.考察
今回ヤーコン地上部より分離した強力な抗酸ィ匕活性と a ダルコシダーゼ阻害活 性を有する TCAAは、同じヤーコンの塊根部より既に単離'報告 (参照文献 7)されて いるものであるが、 OL—ダルコシダーゼ阻害活性が認められたのは今回が最初であ る。
[0074] なお、 DCQA類は春菊 (非特許文献 4)、ョモギ (参照文献 9)など多くのキク科植物 やコーヒー豆 (参照文献 10)に含まれていることが知られており、ヤーコン特有の a —ダルコシダーゼ阻害活性成分とは言えな ヽが、 TCAAはこれまでにヤーコン以外 の植物より分離された報告はなぐエキス中に占める含量も高!、ことからヤーコンェキ スの a—ダルコシダーゼ阻害活性に関与する主成分と考えられる。
[0075] また、 TCAAは(士) catechinよりも強い過酸ィ匕脂質生成抑制効果を示し、 a— tocopherolと同等のラジカル捕捉効果を示した。
[0076] 従来から、食後高血糖状態の繰り返しは脾 β細胞を傷害し、脾 β細胞容積の低下 を伴うインスリン分泌の障害を導き、 Π型糖尿病の耐糖能をさらに悪化させ、空腹時高 血糖を示すような糖尿病へと移行すると言われている (非特許文献 2)。また、脾臓 細胞の疲弊を抗酸ィヒ物質が抑制することは多くの報告 (参照文献 11)があり、 TCA Αにも同様の効果が期待される。
[0077] 以上のように、ヤーコン地上部は抗酸ィ匕活性とマルターゼ選択的な a—ダルコシダ ーゼ阻害活性を併せ持つ成分を多量に含んでおり、糖尿病発症予防に有用な素材 と考えられる。
[0078] <実施例 2:ヤーコン地上部力 の抽出エキスの製造方法 >
1)水 エタノールによる抽出例:
80°Cに加熱した水—エタノール(7 : 3)混液 4Lに、ヤーコン地上部(100g)を加え、 その温度で 15分間攪拌した後吸引濾過した。濾液を減圧濃縮し、濃縮液を凍結乾 燥することにより、エキス 29.51gを得た。そのエキス lg中の TCAA量は 2. 8mgであつ たことから、ヤーコン地上部 100gから抽出される総 TCAA量は 82. 64mgであった。
[0079] 2)塩基性溶媒による抽出例:
0. 28%アンモニア水 2Lに、ヤーコン地上部(100g)をカ卩え、室温にて 15分間攪拌 した後吸引濾過した。濾液を 2N塩酸にて pH3. 0とした後減圧濃縮し、濃縮液を凍 結乾燥することによりエキス 40. 35gを得た。そのエキス lg中の TCAA量は 3. 79mg であったことから、ヤーコン地上部 100gから抽出される総 TCAA量は 152. 93mgで めつに。
[0080] <実施例 3: TCAAの製造方法 >
ヤーコン葉.茎 150kgに対し、メタノール—水(1 : 1)混液 1500Lをカ卩え、室温で一 夜放置したのち濾過した。濾液を減圧濃縮し、流エキス 35Lを得た。流エキス 5Lを D IAION HP— 20 (三菱化学)カラム(17 φ X 40cm)に供し、水 30L溶出後、メタノ ール—水(1: 1)混液 25Lで溶出した。メタノール—水(1: 1)溶出部を集め、減圧濃 縮して 50%メタノール溶出部 3Lを得た。一部を凍結乾燥して乾燥重量を求めた結 果、 50%メタノール溶出部は 21 lgであった。
[0081] 50%メタノール溶出部 3Lをポリアミド C— 200 (和光純薬工業)カラム(17 φ X 35c m)に供し、水 25L溶出、メタノール 25L溶出後、 0. 1%アンモニア水を含むメタノー ル 10Lで溶出、さらに 0. 5%アンモニア水を含むメタノール 25Lで溶出した。溶出液 を 5Lずつ分取し、 HPLC (A法)で TCAAの検出を行った。 TCAAを含む画分を集 め、減圧濃縮後、凍結乾燥して TCAA含有画分 28. 4gを得た。
[0082] TCAA含有画分 28. 4gを水 150mlに溶解し、 pHメーターで測定しながら ImolZ L Na COをカ卩え pHを 8. 5に調整したのち、 Sephadex LH— 20 (アマシャムバイ
2 3
ォサイエンス)カラム(5. 0 X 70cm)に供し、メタノール一水(3 : 7)混液で溶出した 。 500ml溶出後、 15mlずつ分取し、 HPLC (A法)で TCAAの検出を行った。 TCA Aを含む画分を集め、減圧濃縮後、凍結乾燥して TCAA—ナトリウム含有画分 5. 71 gを得た。 HPLC (B法)による純度は、 92%であった。
[0083] この TCAA—ナトリウム含有画分 5. 71gをメタノール一水(3 : 7)混液約 30mlに溶 解し、 TOYOPEARL HW-40 (東ソ一)カラム(5. 0 φ X 34cm)に供し、メタノー ル—水(3 : 7)混液で溶出した。 200ml溶出後、 15mlずつ分取し、 HPLC (B法)で T CAAの検出を行った。純度 94%以上の TCAAを含む画分を集め、減圧濃縮後、凍 結乾燥して TCAA—ナトリウム画分 4. 14gを得た。 HPLC (B法)による純度は、 95
%であった。
[0084] TCAA—ナトリウム画分 4. 14gをメタノール—水(3 : 7)混液約 20mlに溶解し、 Se phadex LH— 20カラム(5. Ο φ X 70cm)に供し、メタノール—水(3 : 7)混液で溶 出した。 500ml溶出後、 12mlずつ分取し、 HPLC (B法)で TCAAの検出を行った。 純度 97%以上の TCAAを含む画分を集め、減圧濃縮後、凍結乾燥して TCAA— ナトリウム 2. 48gを得た。 HPLC (B法)による純度は、 97%であった。
[0085] この TCAA—ナトリウムのうち 300mgを水 15mlに溶解し、濾紙濾過後、濾液に 0.
ImolZl塩酸 10. 5mlを滴下し、 1時間室温放置した。析出した結晶をろ取し、水 20 mlで洗浄したのち褐色ビンに移し、 40°Cで減圧乾燥して TCAA 177mgを得た 。 HPLC (B法)による純度は 98. 8%であった。
[0086] HPLC (A法)
カラム: YMC Pack R— ODS— 5— Α(4. 6 X 250mm)
移動相:ァセトニトリル 5%酢酸(2: 8)→ (3: 7)リニアグラジェント 20min 速: lmL/ mm
検 出:紫外吸光光度計 (測定波長 332nm)
[0087] HPLC (B法)
カラム: TSK— gel ODS-80TM (4. 6 X 150mm)
移動相: THF— 0. 1%リン酸(3 : 7)
カラム温度: 40°C
速: lmL/ mm
検 出:紫外吸光光度計 (測定波長 332nm)
[0088] <実施例 4:ラットにおけるマルトース負荷 TCAAの血糖上昇抑制作用 >
本発明者らは、前報 (非特許文献 1)に示したように、このヤーコンの葉 ·茎エキスが 血糖上昇抑制作用を持つことを確認しており、さらに、実施例 1および実施例 2に示 すように、ヤーコン葉'茎エキス力ら単離'精製された TCAAが α—ダルコシダーゼ 阻害活性作用を有することも明らかにした。実施例 4では、 TCAAの血糖に対する作 用を確認するために、健常ラットを用いたマルトース負荷血糖上昇抑制作用を調べ
[0089] 1.材料
1)被験物質: TCAAは、ヤーコン熱水エキスを HP— 20カラムクロマトグラフに付し 、水溶出に次いで 50%メタノールにて溶出させポリフエノール画分を得た。この画分 を Sephadex LH - 20カラムクロマトグラフに付し 40%メタノール Z水にて分離し、 HPLCにて TCAAを確認しながら TCAAを含むところを全て集めた。つ!、で粗の T CAA画分を HW— 40カラムクロマトグラフに付し、同様に HPLCにて確認しながら 4 0%メタノール Z水にて分離し TCAA以外の成分を除去した。これを更に LiChropr ep RP— 18カラムクロマトグラフに付し 5%酢酸:メタノール(3: 7)で精製し TCAAを 得た(純度 91%、マルターゼ阻害活性 IC =61 μ g/mL) 0また、マルトースは和
50
光純薬より購入して用いた。
[0090] 2)動物: SD (IGS)雄ラット 7週齢を 1群 5匹で用いた。
[0091] 2.試験方法
1)投与群の構成
(1)対照群 (マルトース単独)
(2)マル卜ース +TCAA(600mgZkg X 2)
(3)マル卜ース +TCAA(300mgZkg X 2)
(4)マル卜ース +TCAA ( 150mg/kg X 2)
[0092] 2)被験物質の調製
マルトースは 1. 5gを秤量して 15mLの蒸留水に溶解して lgZ 1 OmLZkgの割合 で強制経口投与した。 TCAAは 2回投与としたため、初回投与物質についてはマル 卜ース溶液、 2回投与物質【こつ!ヽて ίま蒸留水【こそれぞれ 150、 300、 600mg/10m Lの割合で溶解し、 lOmLZkgの割合で強制経口投与した。
[0093] 3)試験系(図 3)
17時間絶食したラットに、被験物質投与前の採血 (Otime)を行ったのち、初回投 与した。 15分後に 2回目の投与を実施し、投与後すぐに採血 (すなわち 15分)、 30 分、 45分、 60分、 90分および 120分にそれぞれ採血して、ダルコカード(ァベンティ ス 'ファーマ)を用いて血糖値を測定した。
[0094] 3.測定項目
各採血時間における血糖値の測定と、被験物質投与後の血糖値から投与前 (0分 時)の血糖値を差し引いた変化量 (△)を算出して、血糖曲線下面積 (AAUC)およ び最高血中濃度(ACmax)を求めた。
[0095] 4.統計解析
本試験で得られた測定値は平均および標準誤差の算出ならびに対照群との 2群間 比較を行った。検定方法は Bartlett法により、測定値の分散を 95%信頼限界で検 定し、等分散の場合のみ Student's t— testを行って、 p< 0. 05を統計学的に有 意差ありと判断した。
[0096] 5.血糖値の推移
血糖値の推移を図 4に示した。対照群ではマルトース負荷による血糖値の急激な 増加が 15分にみられ、 TCAAの各用量群ではその増加を有意 (p< 0. 01)に抑制 した。一方、 TCAA 600mgZkg群の 90分値において、対照群と比較して明らかな 増加がみられた。
[0097] 6. AUCおよび C
max
△AUCおよび AC を表 2に示した。 TCAA各用量群の AAUCは対照群と比較 max
して変化は認められな力つた。 TCAA 600mgZkg群の AC は対照群と比較し max
て、有意な (Pく 0. 05)抑制が認められた。表 2に、マルトース負荷後の血糖値から 求めた AAUCおよび AC を示す。
max
[0098] [表 2] マルトース負荷後の血糖値から求めた IAUCおよび lCmax
甲-均土標準 35差 (n=5) * : pく 0.05 対照群と比較して有意差あり (student's t-test) 7.考察
本試験に用 、たマルトースは経口摂取された後、上部消化管にお 、て小腸刷子縁 膜に存在する a—ダルコシダーゼの働きによって単糖 (ブドウ糖)に分解され、血糖
値を上昇させる。そこで今回、 TCAAの健常ラットにおけるマルトース負荷に対する 血糖値への影響を調べたところ、 TCAAの各用量群では対照群でみられた 15分後 の急激な血糖値の増加を有意に抑制することが明らカゝとなった。また TCAAは AUC には変化を与えずに C を抑制したことから、糖の吸収を緩やかにすることにより、食
max
後の急激な血糖値の上昇を抑制することのできる成分であることが示された。
[0100] <実施例 5:水—エタノール混合比と TCAA抽出効率の検討 >
ヤーコン葉 ·茎 10gを各比の水―エタノール混液 200ml中に入れ、 15分間攪拌し たのちガーゼろ過し、ろ液を濃縮、凍結乾燥してエキスを調製し、 TCAAを定量した 。図 5に、水—エタノール混合比と TCAA抽出効率のグラフを示す。本試験では、室 温又は 80°Cの何れにおいても、エタノール濃度が 0%以上 70%以下 (vZv)のエタ ノールおよび水の混液を用いて抽出した際に、高い TCAA抽出効率が得られた。ま た、エタノール濃度が 20%以上 70%以下ではより高い TCAA抽出効率が得られた 。また、更にエタノール濃度が 30%以上及び Z又は 50%以下では、更に高い TCA A抽出効率が得られた。また、エタノール濃度が 30%では最も高い TCAA抽出効率 が得られた。
[0101] <実施例 6 :抽出温度と TCAA抽出効率の検討 >
ヤーコン葉.茎 10gを各温度の水 200ml中に入れ、 15分間撹拌したのちガーゼろ 過し、ろ液を濃縮、凍結乾燥してエキスを調製し、 TCAAを定量した。図 6に、抽出 温度と TCAA抽出効率のグラフを示す。本試験では、室温(25°C)以上沸騰温度(1 00°C)以下の温度範囲において、一定の抽出効率が得られた。取り扱いの容易さか ら、沸騰しない温度(90°C以下)を用いることも好ましい。また、温度 40度以上では、 より好ましい TCAA抽出効率が得られ、温度 60°C以上 80°C以下では、更に高い TC AA抽出効率が得られた。また、 80°Cでは最も高い抽出効率が得られた。
[0102] く実施例 7 :抽出液の pHと TCAA抽出効率の検討〉
ヤーコン葉.茎 10gに対し、 200mlの溶媒を加え、室温 15分間撹拌抽出し、ガーゼ ろ過後、ろ液を濃縮、凍結乾燥してエキスを調整し TCAAを定量した。 TCAA収量 は、エキス中の TCAA濃度に収量を乗じて、総 TCAA量として算出した。図 7に、抽 出液の pHと TCAA抽出効率のグラフを示す。本試験では、抽出液の pHが 8以上 11
以下の際に、高い抽出効率が得られた。また、 pH8以上 10以下では、更に高い TC AA抽出効率が得られた。尚、本実施例においては、溶媒としては、アンモニア水( 濃度 0. 028%力ら 0. 28%)、又は水酸ィ匕ナトリウム水溶液 (濃度 0. 01N力ら 0. 1N )、又は炭酸ナトリウム水溶液 (濃度 0. 01M力ら 0. 1M)を用いた。
[0103] 以上、本発明を実施例に基づ 、て説明した。この実施例はあくまで例示であり、種 々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に 理解されるところである。
[0104] <参照文献 >
参照文献 1) Ohnishi M., Morishita H., Toda S., Yase Y., Kido R., Phytochemistr y, 47, 1215-1218 (1998)
参照文献 2) Ohkawa H" Ohnishi N" Yagi K., Anal. Biochem., 95, 351-358 (197 9)
参照文献 3) Blois M. S., Nature, 181, 1199-1200 (1958)
参照文献 4) Kweon M.H., Hwang H. J., Sung H.C., J. Agric. Food Chem., 49, 46 46-4655 (2001)
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参照文献 6) Kahkonen M. P., Hopia A. I., Vuorela H. J., Rauha J. P., Pihlaja K., Kujala T. S., Heinonen M., J. Agric. Food Chem., 47, 3954-3962 (1999)
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参照文献 10) Clifford M. N. and Kellard B., Food Chemistry, 34, 81-88 (1989) 参照文献 11) Adeghate E., and Parvez S. H., Toxicicology, 153, 143-156 (2000) ; Uchiyama K., Naito Y., Hasegawa G., Nakamura N., Takahashi J., Yoshikawa T., R
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