明 細 書
タイヤ用カーカス材の製造方法及び装置
技術分野
[0001] 本発明は、ラジアルタイヤのカーカス層に用いるカーカス材の製造方法及び装置 に関するものである。
背景技術
[0002] 一般に、ラジアルタイヤは、複数のタイヤ構成部材により形成されている。例えば、 図 13に示すように、インナーライナ一 2、トレッド 3、サイドウォール 4、リムストリップ 5等 のゴム部材と、繊維製や金属製のコードを含むカーカス層 1やベルト層 7等のタイヤ 用補強部材とが組み合わされてタイヤ Tが構成されている。図中の 8はビードコア 9を 含むビード部である。
[0003] 前記のラジアルタイヤのカーカス層を構成するカーカス材 (カーカスプライ)としては 、多数本の補強用のコードを芯材にして、ゴムをトッピング (被覆)した所謂トッピング シートが使用されている。
[0004] 従来、力かるタイヤ用カーカス材は、芯材となる主として合成繊維製のコードを経糸 にして、経方向の所要間隔毎に繋ぎの役目を果たす細い緯糸を粗く打ち込んで製 織した比較的広幅の所謂すだれ状織物を用い、このすだれ状織物に対しカレンダー 工程でゴムをトッピングし、次の工程で、カーカス層の幅に応じた所定幅にカットして 、前記コードを横方向にして順次ジョイントして長尺帯状に形成した後、分離用クロス を介在させてロール状に巻き取ってストックしておき、これをタイヤ成型工程に搬送し て所定の長さに切断して使用していた。
[0005] しかし、前記方法では、カレンダーによるトッピング前のすだれ状織物等の材料置き 場やトッピング済み後のカーカス材置き場等、材料や製造されたカーカス材をストック しておくための広いエリアが必要になり、し力も運搬等のための人員を要することもあ り、生産性に問題があり、また多品種少量生産のタイヤの成型には不利なものであつ た。
[0006] そのため、近年、すだれ状織物を使用せずに、複数本の補強用コードを整列して
ゴムをトッピングすることにより比較的細幅の帯状のカーカス材を形成し、これによりタ ィャのカーカス層を成形することが提案されて 、る。
[0007] 例えば、特許文献 1及び特許文献 2には、複数本のコードを整列して押出機が連 設されたトッピング用の口金を通すことにより、該コード列にゴムをトッピングして帯状 に形成し、この帯状材を所定長さに裁断して成型ドラム上もしくはコンベア上におい て前記裁断片を順次並列して接合するか、あるいは前記帯状材をシート形成用のド ラムに螺旋状に卷回し、形成した筒状体をドラム軸心と平行な方向(幅方向)に切断 して、前記コードが周方向に対し実質的に 90° の角度をなすカーカス材を形成する ことが開示されている。
[0008] しかしながら、前記帯状材の裁断片を並列して接合する場合は、トッピング後の帯 状材の裁断及び裁断片の接合に手数がかかり、高速ィ匕が望めないと言う問題があり 、また、前記帯状材を螺旋巻きした筒状体を切断する場合は、前記帯状材の幅に応 じた角度を持って螺旋巻きされるために、前記コードがタイヤ周方向に対して実質的 に 90° の角度をなすカーカス層を形成することができないと言った問題がある。
[0009] その上、前記 、ずれの場合も、成型対象のタイヤのカーカス層の周長とジョイント代 に応じて、製造する帯状材の幅の厳密な算出、調整が必要になり、生産性に問題が ある。特に、カーカス層が 2層の場合、内側の第 1層と外側の第 2層でその周長が異 なることになるため、その幅の算出がきわめて難しくなり、場合によっては長さに応じ て端部をカット処理する必要もある。
特許文献 1 :特開 2002— 321267号公報
特許文献 2:特開 2005 - 28688号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0010] 本発明は、上記の問題を解決し、ゴムを被覆した 1本のゴム被覆コードを用いて、ラ ジアルタイヤのカーカス層に使用するタイヤ用カーカス材を能率よく製造できるように するものであり、特に、補強用コードがタイヤ周方向に対し実質的に 90° の角度をな すカーカス材を得ることができ、またサイズに応じた長さ等の調整も容易に行えるタイ ャカーカス材の製造方法及び装置を提供するものである。
課題を解決するための手段
[0011] 本発明は、タイヤ用カーカス材の製造方法であって、 1本のコードを連続してゴム被 覆用ダイスに通して該コードにゴムを被覆するとともに、このゴム被覆コードを所定の 断面外形をなすように整形し、このゴム被覆コードを、製造対象のカーカス材の幅及 び長さに応じた周長及び長さを持つ整列用ドラムに対し隙間なく整列して接合するよ うに巻き付けて所定長さの筒状体を形成し、この後、前記筒状体をドラム軸心と平行 な方向に切断しシート状にすることを特徴とする。
[0012] この製造方法によれば、 1本の前記ゴム被覆コードを前記整列用ドラムに隙間なく 巻き付けるので、該コードは螺旋状に巻き付けられるものであるにも拘わらず、ドラム 軸心と平行な前記切断方向に対して実質的に 90° になる。したがって、前記のよう にして得られたシート状のカーカス材を、縦横を変換して前記切断端をタイヤ周方向 にして使用することにより、カーカスコードがタイヤ周方向に対し実質的に 90° の角 度をなすカーカス層を構成することができる。また、従来と同じ 1枚のカーカス材とし て使用できるため、多数の帯状材の裁断片を接合する場合のような多数のジョイント 部を生じることもなぐタイヤの重量バランスを悪ィ匕させるおそれがな!、。
[0013] し力も、 1本のゴム被覆コードを前記整列用ドラムに巻き付けて筒状体を形成するの で、カーカス材としての周方向長さ、つまりは前記筒状体の軸方向長さに必要なコー ド本数を、該コードの巻き回数の増減によってコード 1本単位で設定できる。また、前 記筒状体の軸方向長さをコード 1本分の寸法単位で容易に調整でき、タイヤサイズ の変更にも容易に対応できる。
[0014] 前記のタイヤ用カーカス材の製造方法において、前記ゴム被覆コードを断面外形 が楕円形をなすように整形しておき、前記整列用ドラムに前記ゴム被覆コードを巻き 付ける際、製造対象のカーカス材の形態に応じて、前記楕円形の方向を調整して卷 さ付けることちでさる。
[0015] これにより、同一のゴム被覆コードを使用しながら、前記整列用ドラムに巻き付ける 際に、前記楕円形の方向を、例えば長径方向が前記ドラム周面に対し平行方向、斜 め方向,垂直方向のいずれ力、又はこれらの方向を混在させるように調整し変化させ ることで、コードの巻き付けピッチを任意に変化させることができる。そのため、形成す
る筒状体の軸方向長さ、つまりはカーカス材としての周方向長さを変えずに、コード 本数や密度を自由に変更できることになる。また逆に、前記整列用ドラム上での巻き 回数を変えずに、形成する筒状体の軸方向長さ、つまりはカーカス材としての周方向 長さを調整することができる。すなわち、 目的とする形態や特性を持ったカーカス材を 容易に得ることができる。また、この楕円形の方向調整と、前記巻き回数の調整との 組合せにより、さらに多種の形態のカーカス材を得ることができる。
[0016] 前記のタイヤ用カーカス材の製造方法において、前記ゴム被覆コードを前記整列 用ドラムに巻き付けるまでの間に、加熱雰囲気内を通過させるのが望ましい。これに より、被覆ゴムにある程度の硬化が生じて、前記ドラムに対する巻き付け状態が安定 して整列度が上がり、精度のよいカーカス材を製造でき、ひいては前記被覆ゴムを薄 肉化できることにもなり、また加硫時間を短縮できることにもなる。
[0017] また、本発明は、タイヤ用カーカス材の製造装置であって、 1本のコードの供給部と 、前記供給部力 連続して引き出される前記コードを通過させながらゴムを被覆して 所定の断面外形に整形するゴム被覆用ダイスと、前記ゴム被覆用ダイスを通過したゴ ム被覆コードを通過させるガイド孔を有し、かつ該ゴム被覆コードの送り方向と交差す る方向に移動可能な整列ガイドと、前記整列ガイドを通過するゴム被覆コードが巻き 付けられるドラムであって、前記整列ガイドの移動方向と平行な軸心を中心に回転可 能であり、かつ製造対象のカーカス材の幅に相当する周長を有する整列用ドラムと、 前記整列用ドラムに巻き付けられたゴム被覆コードにより形成された筒状体をドラム 軸心と平行な方向に切断する切断装置とを備え、前記整列ガイドは、その移動が制 御されることにより、該整列ガイドを通過する前記ゴム被覆コードの位置を調整しなが ら該ゴム被覆コードを前記整列用ドラムに対し隙間なく接合させるように整列して巻き 付け得るように構成されてなることを特徴とする。
[0018] このタイヤ用カーカス材の製造装置によれば、ゴム被覆用ダイスを通過したゴム被 覆コードを整列ガイドにより整列しながら、前記ドラムに隙間なく接合させるように精度 よく巻き付けることができ、また巻き付け形成された筒状体の切断も容易であり、以て 上記発明の製造方法を良好に実施できる。
[0019] また、前記ゴム被覆用ダイスがゴム被覆コードの断面外形を楕円形に整形するよう
に設けられてなるものが好ましい。この場合において、前記整列ガイドは、前記ガイド 孔の少なくとも送出側端部の口部形状が前記ゴム被覆コードの断面外形に対応した 楕円形をなすとともに、前記ガイド孔を中心に回動可能に設けられており、該整列ガ イドの前記移動とともに回動が制御されることにより、前記楕円形の方向を変更できる ように構成されてなるものが好ま 、。
[0020] すなわち、前記のように構成することにより、同一の楕円形をなすようにゴムを被覆 して整形したゴム被覆コードでありながら、前記整列用ドラムに巻き付ける際に前記 整列ガイドの回動調整により前記楕円形の方向を変化させることで、該ゴム被覆コー ドの巻き付けピッチ等を適宜調整し変化させることができる。そのため、形成する筒状 体の軸方向長さ、つまりはカーカス材としての周方向長さを調整し変更したり、また前 記軸方向長さを変更せずに巻き回数、つまりは製造されるカーカス材のコード本数を 変更することが容易に可能になる。そのため、所望の形態のカーカス材を容易に得る ことができる。
[0021] 前記ゴム被覆用ダイス力 前記整列ガイドに至るまでの間のゴム被覆コードの送行 部分に、該ゴム被覆コードの被覆ゴムをある程度まで加熱できる加熱装置が設けられ てなるものとするのがよい。これにより、ゴム被覆コードが加熱雰囲気中を通過するこ とで、被覆ゴムにある程度の硬化が生じることになり、前記整列用ドラムに巻き付けら れるコードの整列状態が安定して揃い、精度のよいカーカス材を製造できる。
[0022] 前記整列用ドラムは、ドラム本体の周方向の 1個所にその軸心と平行な幅方向に切 断ガイド用のスリットが設けられ、前記ゴム被覆コードの巻き付けにより形成された筒 状体を切断装置のカッターにより前記スリットに沿ってカットできるようにしたものとす ることがでさる。
[0023] これにより、前記整列用ドラムに巻き付けられたゴム被覆コードによる筒状体を、実 質的にドラム周方向である前記ゴム被覆コードの巻き付け方向に対して直交する方 向に確実に切断できる。したがって、切断されたシート状のカーカス材は、前記切断 端をタイヤ周方向にして使用することにより、カーカスコードがタイヤ周方向に対して 実質的に 90° の角度をなすカーカス層を構成できることになる。
発明の効果
[0024] 本発明のタイヤ用カーカス材の製造方法及び装置によれば、ゴムを被覆した 1本の ゴム被覆コードを用いて、ラジアルタイヤのカーカス層に使用するタイヤ用のカーカス 材を能率よく製造できる。特に、タイヤにおけるカーカスコードがタイヤ周方向に対し 実質的に 90° の角度をなすカーカス材を得ることができる。また、製造上においてサ ィズに応じた長さ調整やコード本数の調整も容易に行えることになる。
発明を実施するための最良の形態
[0025] 次に本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
[0026] 図 1及び図 2は、本発明のタイヤ用カーカス材の製造方法を実施する工程の概略を 示す略示平面図及び略示側面図を示す。
[0027] 図において、 11はナイロンやポリエステル等の合成繊維繊製のコード Cの供給部で あり、例えば、所定の接着剤処理が施されてボビン卷きされた 1本のコード Cを連続し て引き出し供給できるように設けられている。 12は前記のように引き出されるコード C の巻き癖や歪み等を補整するための伸延ロール、 13はガイドロールである。
[0028] 14はゴム被覆用ダイスであって、前記コード Cが通過する内孔部を有するダイス本 体 14aに、所定のゴム材料を押し出し供給する押出機 14bが連設されてなり、前記内 孔部を通過するコード Cに対してゴムを所定の厚みに被覆するように設けられて 、る 。この被覆ゴムによる断面外形は、円形、楕円形、断面長方形等の多角形その他の 種々の形状にできるが、実施上は図示する実施例のように楕円形をなすものが好ま しい。
[0029] 図示する実施の場合、前記ゴム被覆用ダイス 14は、ゴムが被覆されて送出されるゴ ム被覆コード C1の断面外形が楕円形をなすように整形できるように、前記内孔部の 送出側端部の口部 14cの形状が図 3のように楕円形をなしている。これにより断面円 形のコード Cに被覆されたゴム Rによる外形が断面楕円形をなして 、る。前記楕円形 の扁平度、すなわち長径と短径の比等は適宜設定できるが、好ましくは、短径 1に対 して長径 1. 2〜1. 5の範囲のものとする。また、被覆ゴム Rの厚みは、例えば 0. 2〜 0. 8mmとする。 15はガイドロールである。
[0030] 図中の 16は例えば電熱線をコイル状に卷回してなる電熱式の加熱装置であり、前 記ゴム被覆コード C1が該加熱装置 16の内部の加熱雰囲気中を通過するように設け
られており、これにより被覆ゴム Rを完全には硬化しないが、ある程度の硬化が始まる 程度に加熱できるようになつている。
[0031] 17は前記加熱装置 16の後続に設けた複数のロールを備える伸延装置であり、前 記のゴム被覆コード C1の歪み等を除去できるように設けられている。 18はガイドロー ルである。
[0032] 図中の 20は前記のようにして給送される前記ゴム被覆コード C1の巻き付け用の整 列ガイド、 30は前記の整列ガイド 20を通過したゴム被覆コード C 1を巻き付け整列す るための整列用ドラムである。
[0033] 前記整列ガイド 20は、前記ゴム被覆コード C1を通過させるガイド孔 21を有し、かつ 該ゴム被覆コード C1の送り方向と交差する横方向、すなわち前記整列用ドラム 30の 軸方向に移動可能に支持されるとともに、前記整列ガイド 20の移動を適宜制御でき るように設けられている。すなわち、この整列ガイド 20の移動 (特に速度等)を前記整 列用ドラム 30の回転速度やコードの太さに応じて制御することにより、前記ガイド孔 2 1を通過するゴム被覆コード C1を前記整列用ドラム 30に対し隙間なく接合するように 所定ピッチで整列して巻き付け得るように設けられて 、る。
[0034] 前記整列ガイド 20の移動手段としては、ボールねじ機構やリニアモータ等の種々 の移動手段(図示せず)を利用できるが、いずれも移動を任意に制御でき、巻き付け 途中にお ヽても巻き付けのピッチ等を変更できるように設けられる。 22は前記整列ガ イド 20の移動用のガイド手段を示して!/、る。
[0035] 前記整列ガイド 20は、前記ガイド孔 21の少なくとも送出側端部の口部形状が前記 ゴム被覆コード C1の断面外形に対応した楕円形をなすとともに、前記ガイド孔 21を 中心に回動可能に設けられており、該整列ガイド 20が前記の移動制御とともに回動 制御されることにより、前記楕円形の方向(長径と短径の方向)を適宜変更できるよう に構成されている。前記整列ガイド 20の回動手段として、例えば、図 4及び図 5のよう に前記整列ガイド 20の外周に歯車 23が設けられ、該歯車 23に嚙み合う歯車 24が 適宜駆動手段(図示せず)により回転駆動されるように設けられており、これにより前 記整列ガイド 20の回動を制御できるように設けられる。
[0036] また、前記整列用ドラム 30は、図 9のように、その軸心が前記整列ガイド 20の移動
方向と平行をなして回転可能に支持され、このドラム 30の回転により、前記整列ガイ ド 20を通過するゴム被覆コード C1を隙間なく接合するように螺旋状に巻き付けて層 をなす筒状体 A1を形成できるように設けられて 、る。
[0037] この整列用ドラム 30は、例えば、その周長が図 12に示す製造対象のカーカス材 A の横幅 Wに相当し、かつ軸方向長さ L1が前記カーカス材 Aのタイヤ周方向の長さ、 すなわち成型工程の成型ドラム上でのカーカス材 Aの周長よりも長 、円筒状のドラム よりなる。この整列用ドラム 30の周方向の 1個所には、前記カーカス材 Aの周長よりや や長くてかつ該ドラム 30の軸方向長さ L1よりもやや短い長さ L2の切断ガイド用のス リット 31が、ドラム軸心と平行な方向(幅方向)に形成されている。
[0038] 前記スリット 31は、切断装置のカッター 35の刃先部が入る切断時のガイドの役目を 果たすもので、図のように前記整列用ドラム 30の内部に貫通するものである必要は なぐ非貫通の溝状に形成しておくこともできる。
[0039] 前記整列用ドラム 30の材質は、アルミニウム等の比較的軽量で安価な金属材が、 サイズ替えの際の交換が容易で好適に用いられるが、他の金属材を用いて形成する ことちでさる。
[0040] また、前記カッター 35は、前記整列用ドラム 30に螺旋状に巻き付けられたゴム被覆 コード C1による筒状体 A1を前記スリット 31の個所で切断できるものであれば、回転 刃やスライド刃等のどのような形態のカッターであってもよい。
[0041] 上記の構成よりなる製造装置を使用してタイヤ用カーカス材 Aを製造する方法につ いて説明する。
[0042] 供給部 11から連続して引き出される補強用コード Cを伸延ロール 12を通して、巻き 癖や歪みを補整しながらゴム被覆用ダイス 14を通過させて表面にゴム Rを被覆する。 このとき、前記ゴム被覆用ダイス 14の送出側端部の口部 14cの形状が楕円形をなす ことにより、ゴム Rが被覆されたゴム被覆コード C1は、その断面外形が楕円形をなす ように整形されて送出される。
[0043] 次に、前記のゴム被覆コード C1を、加熱装置 16による加熱雰囲気中を通過させて 被覆ゴムを適度に加熱して被覆ゴムをある程度硬化させた後、伸延装置 17を通して 整列ガイド 20に導き、該整列ガイド 20を通過したゴム被覆コード C1を、該整列ガイド
20を前記整列用ドラム 30の軸方向と平行方向に徐々に移動させながら、前記整列 用ドラム 30に対し該ドラムの回転により整列して巻き付ける。特に、前記整列ガイド 2 0を、前記整列用ドラム 30の回転速度及びゴム被覆コード C1の太さに応じた速度で 移動させることにより、前記ゴム被覆コード C1を、前記整列用ドラム 30上で隙間なく 接合して層をなすように該コードの太さに応じた所定のピッチ Pで螺旋状に巻き付け 、該ゴム被覆コード C1による所定長さの筒状体 A1を形成する(図 11)。
[0044] 前記のシート形成用ドラム 30上での筒状体 A1の軸方向長さは、製造対象のカー カス材 Aのタイヤ周方向の長さに所望のジョイント代を考慮した長さに設定される。こ の筒状体 A1の軸方向長さは、前記ゴム被覆コード C1の巻き回数によって設定でき、 また長さ調整も巻き回数の増減によってコード 1本単位で行え、無段階に近い細かな 調整が可能になる。
[0045] 前記整列用ドラム 30に対する前記ゴム被覆コード C1の巻き付けの際のピッチ Pは 、該コードを隙間なく接合できるようにゴム被覆コード C1の太さに応じて設定されるが 、このゴム被覆コード C1の太さは、製造対象のカーカス材 Aの幅の tan γによって決 まるため、例えば、コード太さ(直径)が 0. 985mmのゴム被覆コードを用いて、 560 mmの幅のカーカス材を形成する場合、前記角度は殆ど 0° に近くなり、そのためド ラム軸心と平行な幅方向に対し実質的に 90° になる。
[0046] したがって、前記のように筒状体 A1を形成した後、前記筒状体 A1をドラム軸心と 平行な幅方向に前記スリット 31の個所で切断することにより、図 12のように所定幅、 所定長さのシート状のカーカス材 Aを得ることができる力 このシート状のカーカス材 Aは、縦横を変換して前記切断端をタイヤ周方向にして使用することにより、カーカス コードが該タイヤ周方向に対し実質的に 90° の角度をなすものとなる。
[0047] また、前記ゴム被覆コード C1の断面外形が楕円形をなすものである場合は、前記 整列用ドラム 30に対する前記ゴム被覆コード C1の巻き付けの際、前記整列ガイド 20 を適宜回動させて、前記ガイド孔 21の楕円形の方向を調整し変化させることにより、 前記ゴム被覆コード C1の整列形態を変化させて、該コードのピッチ Pを変更すること が可能になる。
[0048] 例えば、図 4の楕円形の長径方向をドラム周面に対し平行な方向にした場合を基
準として、図 6のように前記楕円形の長径方向を前記ドラム周面に対し所定角度の斜 め方向にしたり、図 7のように、前記楕円形の長径方向をドラム周面に対し垂直方向 に変更することができる。これにより、図 8のように、前記楕円形の長径と短径の差の 範囲でそれぞれの整列形態でのコードのピッチ PI, P2, P3力異なり、 P1 >P2>P3 になる。
[0049] 前記の楕円形の方向については、巻き付け開始の前に整列ガイド 20を回動調整し て、全長に渡って図 4、図 6及び図 7の方向による前記各整列形態のいずれかの単 一形状で同ピッチにして巻き付ける場合のほか、巻き付け途中において、前記楕円 形の方向を変化させるようにして複数の整列形態を混在させるように組み合わせて卷 き付けることもできる。この場合、巻き付けピッチ等を微調整できるとともに、前記のゴ ム被覆コード C1の巻き付けによる軸方向の長さを適宜調整することができる。
[0050] 従って、同一のゴム被覆コード C1を使用しながら、コードの巻き付けピッチを任意 に変化させることができ、形成する筒状体 A1の軸方向長さ、つまりはカーカス材 Aと しての周方向長さを変えずに、コード本数や密度を自由に変更でき、また逆に、前記 整列用ドラム 30上での巻き回数を変えずに、形成する筒状体 A1の軸方向長さ、つ まりはカーカス材 Aとしての周方向長さを調整することができる。すなわち、タイヤサイ ズの変更に伴うカーカス材 Aの長さ調整が容易に可能になり、幅を持った帯状材を 螺旋状に卷回する場合のような調整が不要になり、 目的とする形態や特性を持った カーカス材を容易に得ることができる。
[0051] こうして製造されるシート状のカーカス材 Aは、 1本のゴム被覆コードの巻き付けによ る筒状体を軸心と平行な方向に切断してシート状にしたものであるため、 1枚のカー カス材として使用でき、多数の帯状材の裁断片を接合する場合のような多数のジョイ ント部を生じることがなぐタイヤの重量バランスを悪ィ匕させるおそれがない。
[0052] し力も、ジョイント部になる巻き始め側の端部および巻き終わり側の端部力 切断位 置に対してずれた位置にあっても、その端部によるはみ出しや切欠が小さぐしたが つて、タイヤ成型工程の成型ドラム上でのジョイントが容易であり、ビード部の折り返し 部分やタイヤサイド部に余分な凹凸が生じることがなぐタイヤュニフォミティを損なう おそれがない。
[0053] なお、上記した実施例では、整列ガイド 20を通過したゴム被覆コード C1を、整列用 ドラム 30上で隙間なく接合して層をなすように螺旋状に巻き付け、これをカットするこ とにより、ドラム軸心と平行な幅方向に対し実質的に 90° のカーカス材を得る場合に ついて説明したが、このほか、カーカス層のプライコードが少なくともタイヤ周方向に 対して傾斜しているタイヤのカーカス材、あるいはタイヤ周方向に対して略直角の(9 0° ± 10°以内)のラジアル方向をなす領域とタイヤ周方向に対し 10〜60° のバイ ァス方向をなす領域とが混在して ヽるタイヤに使用する力一力ス材を得る場合にも利 用できる。
[0054] 例えば、コードがタイヤ幅方向センターを境にして反対方向に傾斜しているカー力 ス材を得る場合、前記ゴム被覆コード C 1を前記整列ガイド 20によりガイドしながら前 記整列ドラム 30上に所要の傾斜角度に整列して巻き付ける際に、前記切断用のスリ ット 31の個所を基準にして前記整列ドラム 30の半回転毎に前記整列ガイド 20の移 動方向を逆にすることにより前記コードの傾斜方向を変更して、全体として層をなす ように螺旋状に巻き付け、上記した実施例と同様に所定長さの筒状体を形成した後、 この筒状体をドラム軸心と平行な幅方向に前記スリット 31の個所で切断する。これに より、前記のようにコードが前記のよう傾斜した形態のカーカス材を容易に得ることが できる。
産業上の利用可能性
[0055] 本発明のタイヤ用カーカス材の製造方法及び装置は、ラジアルタイヤのカーカス層 に使用するカーカス材の製造に好適に利用できる。
図面の簡単な説明
[0056] [図 1]本発明のタイヤ用カーカス材の製造方法を実施する工程の概略を示す略示平 面図である。
[図 2]同上の略示側面図である。
[図 3]同上のゴム被覆用ダイスの送出側端部の口部形状を示す略示正面図である。
[図 4]同上の整列ガイドの送出側の略示正面図である。
[図 5]同上の整列ガイドの略示断面図である。
[図 6]同上の整列ガイドの口部形状の楕円形の方向を変化させた状態の送出側の略
示正面図である。
[図 7]同上の整列ガイドの口部形状の楕円形の方向を変化させた状態の他の例を示 す略示正面図である。
[図 8]ゴム被覆コードの楕円形の方向を異にした整列形態の説明図である。
[図 9]同上の整列用ドラムの略示平面図である。
[図 10]同上整列用ドラムの略示断面図である。
[図 11]同上の整列用ドラムにゴム被覆コードを巻き付けた状態の略示平面図である。
[図 12]筒状体を切断してシート状に展開した状態の平面図である。
[図 13]タイヤの構造を例示する断面図である。
符号の説明
T…タイヤ、 1…カーカス層、 2…インナーライナ一、 3· ··トレッド、 4…サイドウォール 、 5· ··リムストリップ、 7· ··ベルト層、 8…ビード部、 9…ビードコア、 11· ··補強用コード の供給部、 12· ··伸延ロール、 13, 15, 18· ··ガイドロール、 14…ゴム被覆用ダイス、 1 4a…ダイス本体、 14b…ゴム材の押出機、 14c…口部、 16· ··加熱装置、 17· ··伸延 装置、 20…整列ガイド、 21· ··ガイド孔、 22· ··ガイド手段、 23· ··歯車、 24· ··歯車、 30 …整列用ドラム、 31 · ··切断ガイド用のスリット、 35…カッター、 Α1· ··筒状体、 A…シ ート状のカーカス材、 P…巻き付けのピッチ、 L1…筒状ドラムの軸方向長さ、 L2"-ス リットの長さ、 dl…ゴム被覆コードの太さ、 W…カーカス材の幅、 γ…幅方向に対す るコードの角度。