明 細 書
車両の制御装置
技術分野
[0001] 本発明は自動車 (エンジン自動車)、ハイブリッド車、自動二輪車など、複数の車輪 を有する車両の制御装置に関する。
背景技術
[0002] 自動車などの車両には、主な機構として、車輪にエンジンなどの推進力発生源から 駆動力を伝達したり、あるいは制動力を付与する駆動'制動系と、車両の操舵輪を操 舵するためのステアリング系(操舵系)、車輪に車体を弾力的に支持させるサスペン シヨン系などのシステムが備えられている。そして、近年、例えば特開 2000— 41386 号公報(以下、特許文献 1という)に見られるように、これらのシステムを、運転者によ るステアリングホイール(ノヽンドル)や、アクセルペダル、ブレーキペダルなどの操作( 人為的操作)に応じて受動的に動作させるだけでなぐ種々の電動式もしくは油圧式 のァクチユエータを備えて、そのァクチユエータの動作を車両の走行状態や環境条 件などに応じて能動的 (積極的)に制御するようにしたものが知られている。
[0003] 特許文献 1には、前輪舵角に応じて後輪舵角のフィードフォワード目標値を決定す ると共に、規範状態量 (規範ョーレートと規範横加速度)と実状態量 (ョーレートの検 出値と横加速度の検出値)との偏差に応じて後輪舵角のフィードバック目標値を決定 し、それらの目標値の和に後輪の舵角を追従させる技術が提案されている。この場 合、規範状態量は、前輪の舵角に応じて設定される。また、フィードフォワード制御部 、フィードバック制御部、規範状態量決定部の伝達関数のパラメータあるいはゲイン は路面の摩擦係数の推定値に応じて調整される。
[0004] し力しながら、前記特許文献 1に見られるような技術では、路面の摩擦特性は考慮 されているものの、車輪に作用する路面反力の特性の影響が十分に考慮されていな い。すなわち、車輪に作用する路面反力のうち、駆動'制動力成分と横力成分とが採 り得る値、あるいは、それらの間の相関関係は、路面の摩擦特性だけでなぐ車輪の 横すべりの影響も受ける。そして、その横すべりの影響などが特許文献 1に見られる
技術では十分に考慮されていない。このため、後輪舵角をフィードバック制御しても、 前記実状態量を規範状態量に近づけるために適切な路面反力を車輪に発生させる ことができない場合がある。
[0005] 一方、車両の運動を所望の運動に制御する上では、該車両に作用する外力として の路面反力を適切に制御することが望ましいと考えられる。この場合、例えば各車輪 に路面力 作用させる駆動 '制動力を操作することで、車両の重心点のまわりに発生 するョー方向のモーメントを操作することが可能である。従って、ョー方向の運動に関 する実状態量を規範状態量に近づけるように車両の挙動を制御する場合、各車輪に 路面力 作用させる駆動 '制動力を操作することが考えられる。
[0006] ただし、この場合、前記したように路面反力の駆動,制動力成分および横力成分は 、車輪と路面との間の摩擦係数などの摩擦特性だけでなぐ該車輪の横すべりの影 響も受ける。このため、このような路面反力の特性を適切に考慮しながら、車輪に作 用させる駆動 '制動力を操作することが望まれる。
[0007] 本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、車輪に路面から作用する路面 反力の特性を適切に考慮しながら、実際の車両の運動を所望の運動に適切に制御 することを可能とする車両の制御装置を提供することを目的とする。さらに、外乱要因 あるいはその変化に対するロバスト性を高めて、車両の運動を適切に制御できる車 両の制御装置を提供することを目的とする。
発明の開示
[0008] かかる目的を達成するために、本発明の車両の制御装置は、複数の車輪を有する 車両の操縦者による該車両の運転操作状態を示す運転操作量を検出する運転操作 量検出手段と、少なくとも前記車両の各車輪の駆動,制動力を操作可能に該車両に 設けられたァクチユエータ装置と、前記ァクチユエータ装置の動作を逐次制御するァ クチユエータ装置制御手段とを備えた車両の制御装置において、
少なくとも実際の車両のョー方向回転運動を含む所定の運動に関する所定の第 1 状態量の値である第 1実状態量を検出または推定する実状態量把握手段と、 実際の車両の各車輪に路面から作用する路面反力を検出または推定する実路面 反力把握手段と、
実際の車両の車輪と路面との間の摩擦特性を推定する摩擦特性推定手段と、 前記検出または推定された第 1実状態量と前記決定された第 1規範状態量との偏 差である第 1状態量偏差を算出する状態量偏差算出手段と、
前記ァクチユエータ装置を操作するための制御入力であって、実際の車両の各車 輪の目標駆動 ·制動力を規定する駆動 ·制動力操作用制御入力を含む実車ァクチュ エータ操作用制御入力を少なくとも前記検出された運転操作量と前記算出された第
1状態量偏差とに応じて決定する実車ァクチユエータ操作用制御入力決定手段とを 備え、
前記ァクチユエータ装置制御手段は、前記決定された実車ァクチユエータ操作用 制御入力に応じて前記ァクチユエータ装置の動作を制御する手段である。
[0009] そして、本発明の車両の制御装置は、前記実車ァクチユエータ操作用制御入力決 定手段は、前記第 1状態量偏差を 0に近づけるための各車輪の駆動'制動力の操作 用のフィードバック制御入力を少なくとも前記算出された第 1状態量偏差に応じて決 定する手段と、各車輪の駆動 '制動力のフィードフォワード目標値を規定するフィード フォワード制御入力を少なくとも前記検出された運転操作入力に応じて決定する手 段と、前記複数の車輪のうちの 1つ以上の特定の車輪である第 k車輪に対し、前記検 出または推定された第 k車輪の路面反力と前記推定された摩擦特性とに基づき該第 k車輪に路面力 作用し得る路面反力の駆動'制動力成分と横力成分との相関関係 を規定する楕円関数である第 k楕円関数を決定する手段と、少なくとも前記決定され た第 k楕円関数に従って第 k車輪に作用し得る路面反力と該第 k車輪の前記フィード フォワード制御入力と該第 k車輪の前記フィードバック制御入力と該第 k車輪の駆動' 制動力操作用制御入力との関係に関する所定の第 1要求条件を満たすように、該第 k車輪の駆動'制動力操作用制御入力を決定する手段とを備えることを特徴とする( 第 1発明)。
[0010] あるいは、前記実車ァクチユエータ操作用制御入力決定手段は、
前記第 1状態量偏差を 0に近づけるための各車輪の駆動'制動力の操作用のフィ ードバック制御入力を少なくとも前記算出された第 1状態量偏差に応じて決定する手 段と、
各車輪の駆動 ·制動力のフィードフォワード目標値を規定するフィードフォワード制 御入力を少なくとも前記検出された運転操作入力に応じて決定する手段と、
前記複数の車輪のうちの 1つ以上の特定の車輪である第 k車輪に対し、前記検出ま たは推定された第 k車輪の路面反力と前記推定された摩擦特性とに基づき該第 k車 輪に路面力 作用し得る路面反力の駆動'制動力成分と横力成分との相関関係を規 定する楕円関数である第 k楕円関数を決定する手段と、
少なくとも前記決定された第 k楕円関数に従って第 k車輪に路面力 作用し得る路 面反力と該第 k車輪の前記フィードフォワード制御入力と該第 k車輪の前記フィード バック制御入力と該第 k車輪の駆動 ·制動力操作用制御入力との関係に関する所定 の要求条件を第 1要求条件とし、少なくとも前記決定された第 k楕円関数に従って第 k車輪に路面力も作用し得る路面反力のうち、該路面反力によって実際の車両の重 心点のまわりに発生するョ一方向のモーメントが前記第 k車輪のフィードバック制御 入力による第 k車輪の駆動 ·制動力の操作に起因して実際の車両の重心点のまわり に発生するョ一方向のモーメントと同じ向きに向力つて最大となる路面反力の駆動 · 制動力成分である最大モーメント発生時駆動 ·制動力と前記第 k車輪の駆動 ·制動力 操作用制御入力との関係に関する所定の要求条件を第 2要求条件とすると共に、該 第 1要求条件および第 2要求条件のうちの第 2要求条件を優先条件とし、該第 1要求 条件および第 2要求条件のうちの少なくともいずれかを満たすように、該第 k車輪の 駆動 '制動力操作用制御入力を決定する手段とを備えることを特徴とする (第 2発明) あるいは、前記実車ァクチユエータ操作用制御入力決定手段は、前記第 1状態量 偏差を 0に近づけるための各車輪の駆動 '制動力の操作用のフィードバック制御入力 を少なくとも前記算出された第 1状態量偏差に応じて決定する手段と、各車輪の駆動 •制動力のフィードフォワード目標値を規定するフィードフォワード制御入力を少なくと も前記検出された運転操作入力に応じて決定する手段と、前記複数の車輪のうちの 1つ以上の特定の車輪である第 k車輪に対し、前記検出または推定された第 k車輪の 路面反力と前記推定された摩擦特性とに基づき該第 k車輪に路面力 作用し得る路 面反力の駆動'制動力成分と横力成分との相関関係を規定する楕円関数である第 k
楕円関数を決定する手段と、少なくとも前記決定された第 k楕円関数に従って第 k車 輪に作用し得る路面反力と該第 k車輪の前記フィードフォワード制御入力と該第 k車 輪の前記フィードバック制御入力と該第 k車輪の駆動 *制動力操作用制御入力との 関係に関する所定の要求条件を第 1要求条件とし、前記決定された第 k車輪のフィ ードフォワード制御入力により規定される前記フィードフォワード目標値と前記第 k車 輪の駆動'制動力操作用制御入力との関係に関する所定の要求条件を第 3要求条 件とすると共に、該第 1要求条件および第 3要求条件のうちの第 3要求条件を優先条 件とし、該第 1要求条件および第 3要求条件のうちの少なくともいずれかを満たすよう に、前記第 k車輪の駆動'制動力操作用制御入力を決定する手段とを備えることを特 徴とする (第 3発明)。
あるいは、前記実車ァクチユエータ操作用制御入力決定手段は、前記第 1状態量 偏差を 0に近づけるための各車輪の駆動 '制動力の操作用のフィードバック制御入力 を少なくとも前記算出された第 1状態量偏差に応じて決定する手段と、各車輪の駆動 •制動力のフィードフォワード目標値を規定するフィードフォワード制御入力を少なくと も前記検出された運転操作入力に応じて決定する手段と、前記複数の車輪のうちの 1つ以上の特定の車輪である第 k車輪に対し、前記検出または推定された第 k車輪の 路面反力と前記推定された摩擦特性とに基づき該第 k車輪に路面力 作用し得る路 面反力の駆動'制動力成分と横力成分との相関関係を規定する楕円関数である第 k 楕円関数を決定する手段と、少なくとも前記決定された第 k楕円関数に従って第 k車 輪に路面力 作用し得る路面反力と該第 k車輪の前記フィードフォワード制御入力と 該第 k車輪の前記フィードバック制御入力と該第 k車輪の駆動 '制動力操作用制御入 力との関係に関する所定の要求条件を第 1要求条件とし、少なくとも前記決定された 第 k楕円関数に従って第 k車輪に路面力 作用し得る路面反力のうち、該路面反力 によって実際の車両の重心点のまわりに発生するョ一方向のモーメントが前記第 k車 輪のフィードバック制御入力による第 k車輪の駆動 ·制動力の操作に起因して実際の 車両の重心点のまわりに発生するョ一方向のモーメントと同じ向きに向力つて最大と なる路面反力の駆動 ·制動力成分である最大モーメント発生時駆動 ·制動力と前記 第 k車輪の駆動'制動力操作用制御入力との関係に関する所定の要求条件を第 2要
求条件とし、前記決定された第 k車輪のフィードフォワード制御入力により規定される 前記フィードフォワード目標値と前記第 k車輪の駆動 '制動力操作用制御入力との関 係に関する所定の要求条件を第 3要求条件とすると共に、該第 1要求条件、第 2要求 条件および第 3要求条件のうちの第 3要求条件を最上位の優先条件とし、且つ前記 第 2要求条件を次順位の優先条件とし、該第 1要求条件、第 2要求条件および第 3要 求条件のうちの少なくとも 、ずれかを満たすように、前記第 k車輪の駆動 ·制動力操 作用制御入力を決定する手段とを備えることを特徴とする (第 4発明)。
[0013] これらの第 1発明〜第 4発明では、前記駆動,制動力操作用制御入力を含む実車 ァクチユエータ操作用制御入力は、少なくとも前記検出された運転操作量と前記算 出された第 1状態量偏差とに応じて決定される。
[0014] このとき、第 1発明では、少なくとも前記第 k車輪の駆動 '制動力操作用制御入力は 、前記第 k楕円関数に従って該第 k車輪に路面力 作用し得る路面反力と第 k車輪の フィードフォワード制御入力と第 k車輪のフィードバック制御入力と第 k車輪の駆動 · 制動力操作用制御入力との関係に関する所定の第 1要求条件を満たすように決定さ れる。
[0015] ここで、第 k車輪のフィードバック制御入力は、前記第 1状態量偏差を 0に近づける 、すなわち、車両のョー方向回転運動を含む所定の運動の第 1実状態量と第 1規範 状態量との差を 0に近づけるためのフィードバック制御入力である。また、第 k車輪の フィードフォワード制御入力は、少なくとも前記運転操作量の検出値または推定値に 応じた制御入力(第 1状態量偏差に依存しない制御入力)である。従って、基本的に は、第 k車輪のフィードフォワード制御入力により規定される駆動'制動力のフィードフ ォワード目標値をフィードバック制御入力に応じて調整してなる駆動 ·制動力を第 k車 輪に路面から作用させるように前記ァクチユエータ装置の動作を制御すればょ 、。
[0016] 一方、第 k車輪に路面から作用させ得る路面反力は、第 k車輪と路面との間の摩擦 特性が一定であっても、第 k車輪に路面力 作用させ得る路面反力の駆動 '制動力 成分と横力成分との相関関係は、大略、楕円関数により表される。すなわち、駆動, 制動力成分と横力成分とを座標軸として、第 k車輪に路面力 作用させ得る路面反 力の駆動,制動力成分と横力成分との組を表す点を記述したとき、その点は、概ね楕
円曲線上の点となる。つまり、概ねその楕円関数に沿って、第 k車輪に路面から作用 させ得る路面反力の駆動'制動力成分と横力成分との組が変化する。そして、車両 の重心点のまわりにョー方向のモーメントは、主にそれらの駆動 '制動力成分と横力 成分との組の合力によって発生する。また、上記楕円関数は、第 k車輪の路面反力を 検出もしくは推定することで、その検出値もしくは推定値を基に特定できる。
[0017] そこで、第 1発明では、少なくとも前記決定された第 k楕円関数に従って第 k車輪に 路面から作用し得る路面反力と、第 k車輪のフィードフォワード制御入力と、第 k車輪 のフィードバック制御入力と、第 k車輪の駆動 *制動力操作用制御入力との関係に関 する所定の第 1要求条件を満たすように第 k車輪の駆動 ·制動力操作用制御入力を 決定する。
[0018] これにより、第 1発明によれば、第 k車輪に実際に作用し得る路面反力の特性を考 慮しながら、第 k車輪のフィードフォワード制御入力およびフィードバック制御入力が 示す駆動 ·制動力に関する要求 (制御要求)をできるだけ満足するように第 k車輪の 駆動 ·制動力操作量制御入力を決定することが可能となる。その結果、前記検出また は推定された運転操作量に応じたァクチユエータ装置の動作を基本としつつ、第 1状 態量偏差を高 、安定性で 0に近づけるようにァクチユエータ装置の動作を制御するこ とが可能となる。
[0019] また、前記第 2発明では、前記第 1要求条件に加えてさらに、前記第 2要求条件が 加味される。すなわち、第 2発明では、少なくとも前記決定された第 k楕円関数に従つ て第 k車輪に路面力 作用し得る路面反力のうち、該路面反力によって実際の車両 の重心点のまわりに発生するョ一方向のモーメントが第 k車輪のフィードバック制御入 力による第 k車輪の駆動 ·制動力の操作に起因して実際の車両の重心点のまわりに 発生するョ一方向のモーメントと同じ向きに向かって最大となる路面反力の駆動-制 動力成分である最大モーメント発生時駆動 ·制動力と第 k車輪の駆動 ·制動力操作用 制御入力との関係に関する所定の要求条件を第 2要求条件とする。そして、前記第 1 発明と同じ第 1要求条件と、前記第 2要求条件とのうちの第 2要求条件を優先条件( 第 1要求条件よりも優先すべき要求条件)とし、該第 1要求条件および第 2要求条件 のうちの少なくとも 、ずれかを満たすように第 k車輪の駆動 ·制動力操作用制御入力
を決定する。換言すれば、第 2要求条件を満たし得る範囲内で、第 1要求条件を満た すように第 k車輪の駆動 ·制動力操作用制御入力を決定する。
[0020] ここで、第 2要求条件に関し、第 k車輪のフィードバック制御入力による第 k車輪の 駆動 '制動力の操作に起因して実際の車両の重心点のまわりに発生するョ一方向の モーメントの向きは、前記第 1状態量偏差を 0に近づけるために、その向きに、実際の 車両の重心点まわりのトータルのョー方向のモーメントを変化させるべきであるという 要求を意味する。この場合、第 k車輪のフィードバック制御入力に起因する第 k車輪 の駆動 *制動力の操作量を含めたトータルの駆動 *制動力が、前記最大モーメント発 生時駆動 *制動力と同じ向きになり、且つ、当該トータルの駆動 *制動力の絶対値が 最大モーメント発生時駆動 '制動力の絶対値を超えると、第 k車輪の横力が小さくなり 過ぎたり、あるいは、第 k車輪のスリップ比の絶対値が大きくなり過ぎる。
[0021] そこで、第 2発明では、前記最大モーメント発生時駆動'制動力と第 k車輪の駆動 · 制動力操作用制御入力との関係に関する所定の要求条件を第 2要求条件とすると 共に、第 1要求条件および第 2要求条件のうちの第 2要求条件を優先条件とする。そ して、第 1要求条件および第 2要求条件のうちの少なくともいずれかを満たすように第 k車両の駆動'制動力操作用制御入力を決定する。
[0022] これにより、第 2発明によれば、第 k車輪に実際に作用する横力が小さくなり過ぎた り、該第 k車輪のスリップ比の絶対値が大きくなり過ぎるのを防止しつつ、第 k車輪の フィードフォワード制御入力およびフィードバック制御入力が示す駆動 ·制動力に関 する要求をできるだけ満足するように第 k車輪の駆動 ·制動力操作量制御入力を決 定することが可能となる。
[0023] また、前記第 3発明は、前記第 1要求条件に加えてさらに、前記第 3要求条件が加 味される。すなわち、第 3発明では、第 k車輪のフィードフォワード制御入力により規 定される前記フィードフォワード目標値と前記第 k車輪の駆動 ·制動力操作用制御入 力との関係に関する所定の要求条件を第 3要求条件とする。そして、前記第 1発明と 同じ第 1要求条件と、前記第 3要求条件とのうちの第 3要求条件を優先条件 (第 1要 求条件よりも優先すべき要求条件)とする。そして、該第 1要求条件および第 3要求条 件のうちの少なくとも 、ずれかを満たすように第 k車輪の駆動 ·制動力操作用制御入
力を決定する。換言すれば、第 3要求条件を満たし得る範囲内で、第 1要求条件を 満たすように第 k車輪の駆動 ·制動力操作用制御入力を決定する。
[0024] ここで、第 3要求条件に関し、第 k車輪のフィードフォワード制御入力は、少なくとも 運転者の要求を表す前記運転操作量に応じて決定されるものである。このため、特 に、該フィードフォワード制御入力により規定される第 k車輪の駆動 ·制動力のフィー ドフォワード目標値が制動方向の駆動 '制動力である場合に、その要求される駆動 · 制動力の大きさ以上の駆動 *制動力を第 k車輪に作用させるように第 k車輪の駆動- 制動力操作用制御入力を決定することが望ましいと考えられる。
[0025] そこで、第 3発明では、第 k車輪のフィードフォワード制御入力により規定されるフィ ードフォワード目標値と第 k車輪の駆動 '制動力操作用制御入力との関係に関する 所定の要求条件を第 3要求条件とすると共に、第 1要求条件および第 3要求条件のう ちの第 3要求条件を優先条件とし、第 1要求条件および第 3要求条件のうちの少なく とも!/ヽずれかを満たすように第 k車両の駆動 ·制動力操作用制御入力を決定する。
[0026] これにより、第 3発明によれば、できるだけ車両の運転者の要求に従う駆動'制動力
(特に制動方向の駆動 '制動力)を第 k車輪に作用させつつ、第 k車輪のフィードフォ ワード制御入力およびフィードバック制御入力が示す駆動,制動力に関する要求 (制 御要求)をできるだけ満足するように第 k車輪の駆動 ·制動力操作量制御入力を決定 することが可能となる。
[0027] また、前記第 4発明では、前記第 1要求条件に加えてさらに、前記第 2要求条件お よび第 3要求条件が加味される。すなわち、第 4発明では、前記第 1要求条件、第 2 要求条件および第 3要求条件のうちの第 3要求条件を最上位の優先条件とし、且つ 前記第 2要求条件を次順位の優先条件とする。そして、該第 1要求条件、第 2要求条 件および第 3要求条件のうちの少なくともいずれかを満たすように、第 k車輪の駆動 · 制動力操作用制御入力を決定する。
[0028] これにより、第 4発明によれば、できるだけ車両の運転者の要求に従う駆動'制動力
(特に制動方向の'駆動制動力)を第 k車輪に作用させることと、第 k車輪に実際に作 用する横力が小さくなり過ぎたり、該第 k車輪のスリップ比の絶対値が大きくなり過ぎ るのをできるだけ防止することとを満たしつつ、第 k車輪のフィードフォワード制御入
力およびフィードバック制御入力が示す駆動'制動力に関する要求 (制御要求)をで きるだけ満足するように第 k車輪の駆動 ·制動力操作量制御入力を決定することが可 能となる。
[0029] 以上により、前記第 1〜第 4発明によれば、車輪に路面から作用する路面反力の特 性を適切に考慮しながら、実際の車両の運動を所望の運動に適切に制御することを 可能となる。
[0030] 前記第 1〜第 4発明では、前記フィードバック制御入力としては、例えば各車輪の 駆動,制動力の操作量の目標値を規定する制御入力が挙げられる。この場合、前記 第 1〜第 4発明のそれぞれにおいて、前記第 k車輪のフィードバック制御入力により 規定される駆動'制動力の操作量の目標値と前記第 k車輪のフィードフォワード制御 入力により規定される駆動 ·制動力のフィードフォワード目標値との総和を無制限第 k 車輪要求駆動,制動力としたとき、前記第 1要求条件は、前記第 k車輪の駆動,制動 力操作用制御入力により規定される目標駆動'制動力が、前記第 k楕円関数に従つ て第 k車輪に路面力 作用し得る路面反力の駆動 '制動力成分の値の範囲内の値と なり、且つ、前記無制限第 k車輪要求駆動 *制動力との差の絶対値が最小になるとい う条件であることが好適である (第 5発明、第 6発明、第 7発明、第 8発明)。
[0031] これらの第 5〜第 8発明によれば、第 k車輪の駆動 ·制動力操作用制御入力により 規定される目標駆動,制動力が、前記第 k楕円関数に従って第 k車輪に路面から作 用し得る路面反力の駆動 ·制動力成分の値の範囲内の値となり、且つ、前記無制限 第 k車輪要求駆動 ·制動力との差の絶対値が最小になるように、第 k車輪の駆動 ·制 動力操作用制御入力が決定される。このため、第 k車輪に作用する路面反力の特性 を適切に考慮しながら、第 k車輪のフィードフォワード制御入力およびフィードバック 制御入力が示す駆動 ·制動力に関する要求 (制御要求)を好適に満足するように第 k 車輪の駆動 '制動力操作量制御入力を決定することが可能となる。
[0032] あるいは、前記第 1〜第 4発明において、前記フィードバック制御入力の他の例とし ては、該フィードバック制御入力による各車輪の駆動 ·制動力の操作に起因して実際 の車両の重心点のまわりに発生するョ一方向のモーメントの目標値を規定する制御 入力が挙げられる。この場合、前記第 1〜第 4発明のそれぞれにおいて、前記第 k楕
円関数に従って第 k車輪に路面力 作用し得る路面反力のうち、前記第 k車輪のフィ ードフォワード制御入力により規定される駆動 ·制動力のフィードフォワード目標値と の差の絶対値が最小になる駆動,制動力成分を有する路面反力が実際の車両の重 心点のまわりに発生するョ一方向のモーメントと、前記第 k車輪のフィードバック制御 入力により規定されるョ一方向のモーメントの目標値との総和を無制限第 k車輪要求 モーメントとしたとき、前記第 1要求条件は、前記第 k車輪の駆動'制動力操作用制御 入力により規定される目標駆動,制動力が、前記第 k楕円関数に従って第 k車輪に路 面力 作用し得る路面反力の駆動 ·制動力成分の値の範囲内の値となり、且つ、前 記第 k楕円関数に従って第 k車輪に路面力 作用し得る路面反力のうち、該第 k車輪 の目標,駆動制動力に等 ヽ駆動 ·制動力成分を有する路面反力によって実際の車 両の重心点のまわりに発生するョ一方向のモーメントと前記無制限第 k車輪要求モ 一メントとの差の絶対値が最小になるという条件であることが好適である(第 9発明、 第 10発明、第 11発明、第 12発明)。
[0033] これらの第 9〜第 12発明によれば、第 k車輪の駆動 '制動力操作用制御入力により 規定される目標駆動,制動力が、前記第 k楕円関数に従って第 k車輪に路面から作 用し得る路面反力の駆動 ·制動力成分の値の範囲内の値となり、且つ、前記第 k楕 円関数に従って第 k車輪に路面力 作用し得る路面反力のうち、その駆動 *制動力 成分が該第 k車輪の目標 ·駆動制動力に等 、路面反力が実際の車両の重心点の まわりに発生するョ一方向のモーメントと前記無制限第 k車輪要求モーメント (これは 前記フィードフォワード制御入力およびフィードフォワード制御入力のトータルの要求 に相当する)との差の絶対値が最小になるように、第 k車輪の駆動'制動力操作用制 御入力が決定される。このため、第 k車輪に作用する路面反力の特性を適切に考慮 しながら、第 k車輪のフィードフォワード制御入力およびフィードバック制御入力が示 す駆動 ·制動力に関する要求 (制御要求)を好適に満足するように第 k車輪の駆動 · 制動力操作量制御入力を決定することが可能となる。
[0034] また、前記第 2要求条件を使用する第 2発明(あるいはこれに従属する発明)では、 前記第 2要求条件は、前記第 k車輪の駆動 ·制動力操作用制御入力により規定され る目標駆動 ·制動力である目標第 k車輪駆動 ·制動力の向きと前記最大モーメント発
生時第 k車輪駆動 '制動力の向きとが互いに逆向きになるか、または、該目標第 k車 輪駆動.制動力の絶対値が最大モーメント発生時第 k車輪駆動 ·制動力の絶対値以 下になるという条件であることが好適である (第 13発明)。そして、第 4発明(あるいは これに従属する発明)においても、この第 13発明と同等の技術事項を採用することが 好適である (第 14発明)。
[0035] この第 13発明、第 14発明によれば、第 k車輪の駆動 '制動力操作用制御入力によ り規定される目標駆動 '制動力が、前記最大モーメント発生時第 k車輪駆動 ·制動力 と同じ向きとなり、且つ該目標駆動'制動力の絶対値が最大モーメント発生時第 k車 輪駆動 ·制動力の絶対値を超えると 、うことが生じな 、ので、第 k車輪に実際に作用 する横力が小さくなり過ぎたり、該第 k車輪のスリップ比の絶対値が大きくなり過ぎるの を防止しつつ、前記第 1状態量偏差を 0に近づけ得るように、第 k車輪の駆動'制動 力操作用制御入力を決定できる。
[0036] また、前記第 3要求条件を使用する前記第 3発明(あるいはこれに従属する発明) では、前記第 3要求条件は、前記第 k車輪の駆動'制動力操作用制御入力により規 定される目標駆動'制動力である目標第 k車輪駆動'制動力が制動方向の駆動'制 動力であり、且つ、前記第 k車輪のフィードフォワード制御入力により規定される駆動 •制動力のフィードフォワード目標値が制動方向の駆動 '制動力であるときに、該目標 第 k車輪駆動 ·制動力の絶対値が第 k車輪の駆動 ·制動力のフィードフォワード目標 値の絶対値以上になるという条件であることが好適である(第 15発明)。そして、第 4 発明(あるいはこれに従属する発明)においても、この第 15発明と同等の技術事項を 採用することが好適である (第 16発明)。
[0037] この第 15発明、第 16発明によれば、第 k車輪に作用する制動方向の駆動 '制動力 の絶対値が、運転者が要求する制動方向の駆動 *制動力の絶対値よりも小さくなるこ とがな!/、ように第 k車輪の駆動 ·制動力操作用制御入力を決定できる。
[0038] 以上説明した第 1〜第 4発明のそれぞれ (あるいはそれぞれに従属する発明)にお いて、前記車両の動特性を表すモデルとしてあらかじめ定められた車両モデルと、該 車両モデル上での車両のョー方向回転運動を少なくとも含む運動を操作するための 車両モデル操作用制御入力を少なくとも前記算出された第 1状態量偏差に応じて該
第 1状態量偏差を 0に近づけるように決定する車両モデル操作用制御入力決定手段 とを備え、前記規範状態量決定手段は、少なくとも前記検出された運転操作入力と 前記決定された車両モデル操作用制御入力とを前記車両モデルに入力して、該車 両モデル上での車両のョー方向回転運動を含む前記所定の運動に関する第 1状態 量を前記第 1規範状態量として決定する手段であることが好ましい (第 17発明、第 18 発明、第 19発明、第 20発明)。
[0039] これらの第 17〜第 20発明によれば、実際の車両のァクチユエータ装置の動作が前 記第 1状態量偏差を 0に近づけるように制御されるだけでなぐ前記車両モデル上の 車両も第 1状態量偏差を 0に近づけるように操作される。このため、前記摩擦特性の 推定誤差や、車輪の横すベり角の検出誤差もしくは推定誤差、あるいは、前記車両 モデルのモデルィ匕誤差、あるいは、ァクチユエータ装置の動作のリミッタによる制限な どに起因して、前記第 1実状態量が第 1規範状態量に対して乖離しょうとしても、第 1 規範状態量を実第 1状態量に近づけることができる。従って、前記第 1状態量偏差が 種々様々な外乱要因もしくはその変化によって過大になるようなことを防止することが できる。その結果、実際の車両のァクチユエータ装置の動作の制御の安定性を高め ることができる。よって、第 17〜第 20発明によれば、外乱要因あるいはその変化に対 するロバスト性を高めて、車両の運動を適切に制御できる。
[0040] なお、第 17〜第 20発明において、車両モデル操作用制御入力としては、前記車 両モデル上の車両に付カ卩的に作用させる仮想的な外力(モーメントもしくは並進力) などが挙げられる。前記第 1状態量が車両のョー方向回転運動に関する状態量を含 む場合には、上記仮想的な外力はョ一方向のモーメント成分を含むことが好適であ る。
発明を実施するための最良の形態
[0041] 本発明の車両の制御装置の実施形態を以下に説明する。
[0042] まず、図 1を参照して、本明細書の実施形態における車両の概略構成を説明する。
図 1は、その車両の概略構成を示すブロック図である。なお、本明細書の実施形態で 例示する車両は、 4個の車輪 (車両の前後に 2個ずつの車輪)を備える自動車である 。その自動車の構造自体は、公知のものでよいので、本明細書での詳細な図示およ
び説明は省略する。
[0043] 図 1に示す如ぐ車両 1 (自動車)は、公知の通常の自動車と同様に、 4個の車輪 W 1, W2, W3, W4のうちの駆動輪に回転駆動力(車両 1の推進力となる回転力)を付 与し、あるいは各車輪 W1〜W4に制動力(車両 1の制動力となる回転力)を付与する 駆動'制動装置 3A (駆動'制動系)と、 4個の車輪 W1〜W4のうちの操舵輪を操舵す るステアリング装置 3B (ステアリング系)と、 4個の車輪 W1〜W4に車体 1Bを弾力的 に支持するサスペンション装置 3C (サスペンション系)とを備えている。車輪 Wl, W2 , W3, W4は、それぞれ車両 1の左前、右前、左後、右後の車輪である。また、駆動 輪および操舵輪は、本明細書で説明する実施形態では 2つの前輪 Wl, W2である。 従って、後輪 W3, W4は従動輪で、また、非操舵輪である。
[0044] ただし、駆動輪は、 2つの後輪 W3, W4であってもよぐあるいは、前輪 Wl, W2お よび後輪 W3, W4の両者 (4個の車輪 W1〜W4)であってもよい。また、操舵輪は、 2 つの前輪 Wl, W2だけでなぐ後輪 W3, W4も含まれていてもよい。
[0045] これらの装置 3A, 3B, 3Cは、車両 1の運動を操作する機能を持つ。例えば駆動 · 制動装置 3Aは、主に、車両 1の進行方向の運動(車両 1の進行方向の位置、速度、 加速度など)を操作する機能を持つ。ステアリング装置 3Bは、主に、車両 1のョ一方 向の回転運動(車両 1のョ一方向の姿勢、角速度、角加速度など)を操作する機能を 持つ。サスペンション装置 3Cは、主に、車両 1の車体 1Bのピッチ方向およびロール 方向の運動(車体 1Bのピッチ方向およびロール方向の姿勢など)、あるいは車体 1B の上下方向の運動(車体 1Bの路面からの高さ(車輪 W1〜W4に対する車体 1Bの上 下方向の位置)など)を操作する機能を持つ。なお、本明細書では、車両 1あるいは 車体 1Bの「姿勢」は空間的な向きを意味する。
[0046] 補足すると、一般に、車両 1の旋回時などに、車輪 W1〜W4の横すべりが発生する 。そして、この横すベりは、車両 1の操舵輪の舵角、車両 1のョーレート(ョ一方向の角 速度)、各車輪 W1〜W4の駆動 '制動力などの影響を受ける。このため、駆動'制動 装置 3Aやステアリング装置 3Bは、車両 1の横方向(左右方向)の並進運動を操作す る機能も持つ。なお、車輪の「駆動'制動力」は、該車輪に路面力 作用する路面反 力のうち、該車輪の前後方向(詳しくは該車輪の回転面 (車輪の中心点を通って該
車輪の回転軸と直交する面)と路面もしくは水平面との交線の方向)の並進力成分を 意味する。また、路面反力のうち、車輪の幅方向(車輪の回転軸に平行な方向)の並 進力成分を「横力」、路面反力のうち、路面もしくは水平面に垂直な方向の並進力成 分を「接地荷重」という。
[0047] 駆動'制動装置 3Aは、詳細な図示は省略するが、より詳しくは車両 1の動力発生源
(車両 1の推進力発生源)としてのエンジン(内燃機関)と、このエンジンの出力(回転 駆動力)を車輪 W1〜W4のうちの駆動輪に伝達する動力伝達系とからなる駆動系と 、各車輪 W1〜W4に制動力を付与するブレーキ装置 (制動系)とを備えている。動力 伝達系には、変速装置、差動歯車装置などが含まれる。
[0048] なお、実施形態で説明する車両 1は、動力発生源としてエンジンを備えるものであ る力 エンジンと電動モータとを動力発生源として備えた車両 ( 、わゆるパラレル型の ノ、イブリツド車両)や電動モータを動力発生源として備えた車両 ( 、わゆる電気自動 車、あるいはシリーズ型のハイブリッド車両)であってもよ!/ヽ。
[0049] また、車両 1 (自動車)を運転者が操縦するために操作する操作器 5 (人為的操作 器)として、ステアリングホイール(ノヽンドル)、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフ トレバーなどが車両 1の車室内に備えられている。なお、操作器 5の各要素の図示は 省略する。
[0050] 操作器 5のうちのステアリングホイールは、前記ステアリング装置 3Bの動作に関連 するものである。すなわち、ステアリングホイールを回転操作することで、これに応じて ステアリング装置 3Bが動作して、車輪 W1〜W4のうちの操舵輪 Wl, W2が操舵され る。
[0051] 操作器 5のうちのアクセルペダル、ブレーキペダルおよびシフトレバーは、前記駆動
'制動装置 3Aの動作に関連するものである。すなわち、アクセルペダルの操作量 (踏 み込み量)に応じてエンジンに備えられたスロットル弁の開度が変化し、エンジンの 吸入空気量および燃料噴射量 (ひいてはエンジンの出力)が調整される。また、ブレ ーキペダルの操作量 (踏み込み量)に応じてブレーキ装置が作動し、ブレーキペダル の操作量に応じた制動トルクが各車輪 W1〜W4に付与される。また、シフトレバーを 操作することで、変速装置の変速比等、該変速装置の動作状態が変化し、エンジン
力 駆動輪に伝達される駆動トルクの調整などが行なわれる。
[0052] なお、運転者 (車両 1の操縦者)によるステアリングホイールなどの各操作器 5の運 転操作状態は、図示を省略する適宜のセンサにより検出される。以降、この運転操作 状態の検出値 (センサの検出出力)を運転操作入力と呼ぶ。この運転操作入力には 、ステアリングホイールの回転角であるステアリング角、アクセルペダルの操作量であ るアクセルペダル操作量、ブレーキペダルの操作量であるブレーキペダル操作量、 およびシフトレバーの操作位置であるシフトレバー位置の検出値が含まれる。この運 転操作入力を出力するセンサが本発明における運転操作量検出手段に相当する。
[0053] 本明細書の実施形態では、前記駆動 ·制動装置 3Aおよびステアリング装置 3Bは、 その動作 (ひいては車両 1の運動)を、前記運転操作入力だけでなぐ該運転操作入 力以外の要因(車両 1の運動状態や環境状態など)〖こも応じて能動的に制御可能な ものとされている。ここで、「能動的に制御可能」というのは、装置 3A, 3Bの動作を、 前記運転操作入力に対応する基本的な動作 (運転操作入力に対応して決定される 基本目標動作)を修正してなる動作に制御可能であることを意味する。
[0054] 具体的には、駆動'制動装置 3Aは、前輪 Wl, W2の組と後輪 W3, W4の組とのう ちの少なくともいずれか一方の組について、左側の車輪 Wl, W3の駆動'制動力と 右側の車輪 W2, W4の駆動 '制動力との差もしくは比率を、該駆動'制動装置 3Aに 備えた油圧ァクチユエータ、電動モータ、電磁制御弁などのァクチユエータを介して 能動的に制御可能な機能 (以下、この制御機能を左右動力配分制御機能という)を 持つ駆動 ·制動装置である。
[0055] さらに具体的には、本明細書の実施形態では、駆動 ·制動装置 3Aは、ブレーキ装 置の動作によって各車輪 W1〜W4に作用させる駆動 *制動力(詳しくは、車両 1の制 動方向の駆動 ·制動力)を該ブレーキ装置に備えたァクチユエータを介して能動的に 制御可能な駆動 ·制動装置 (ブレーキ装置によって各車輪 W1〜W4に作用させる駆 動 ·制動力をブレーキペダルの操作量に応じて決定される基本的な駆動 ·制動力か ら増減制御可能な駆動,制動装置)である。従って、駆動,制動装置 3Aは、前輪 W1 , W2の組と後輪 W3, W4の組との両者の組について、ブレーキ装置による左側の車 輪 Wl, W3の駆動'制動力と右側の車輪 W2, W4の駆動'制動力との差もしくは比
率を、ァクチユエータを介して能動的に制御可能な駆動 ·制動装置 (前輪 Wl, W2の 組と後輪 W3, W4の組との両者の組にっ 、て左右動力配分制御機能を持つ駆動 · 制動装置)である。
[0056] なお、駆動 ·制動装置 3Aは、ブレーキ装置の動作による各車輪 W1〜W4の駆動- 制動力を能動的に制御する機能に加えて、駆動,制動装置 3Aの駆動系の動作によ つて駆動輪である前輪 Wl, W2に作用させる駆動 '制動力の差もしくは比率を、該駆 動系に備えたァクチユエータを介して能動的に制御可能な機能を持つものであって ちょい。
[0057] このように左右動力配分制御機能を持つ駆動 ·制動装置 3Aとしては、公知のもの を使用すればよい。
[0058] 補足すると、上記のように左右動力配分制御機能を持つ駆動 ·制動装置 3Aは、そ の制御機能によって、車両 1のョ一方向の回転運動や、横方向の並進運動を能動的 に操作する機能も持つこととなる。
[0059] なお、駆動 ·制動装置 3Aには、左右動力配分制御機能に係わるァクチューエータ のほか、ブレーキ装置の制動トルク発生用のァクチユエータや、エンジンのスロットル 弁を駆動するァクチユエータ、燃料噴射弁を駆動するァクチユエータ、変速装置の変 速駆動を行なうァクチユエータなども含まれる。
[0060] また、前記ステアリング装置 3Bは、例えば、操舵輪である前輪 Wl, W2をステアリ ングホイールの回転操作に応じてラック ·アンド ·ピ-オンなどの操舵機構を介して機 械的に操舵する機能にカ卩えて、必要に応じて電動モータなどのァクチユエータにより 前輪 Wl, W2を補助的に操舵可能なステアリング装置 (前輪 Wl, W2の舵角をステ ァリングホイールの回転角に応じて機械的に定まる舵角力 増減制御可能なステアリ ング装置)である。あるいは、ステアリング装置 3Bは、前輪 Wl, W2の操舵をァクチュ エータの駆動力だけを使用して行なうステアリング装置 (所謂、ステアリング'バイ'ヮ ィャのステアリング装置)である。従って、ステアリング装置 3Bは前輪 Wl, W2の舵角 をァクチユエータを介して能動的に制御可能なステアリング装置(以下、アクティブス テアリング装置という)である。
[0061] ステアリング装置 3Bが操舵輪をステアリングホイールの回転操作に応じて機械的に
操舵することに加えて、補助的にァクチユエータにより操舵輪を操舵するアクティブス テアリング装置(以下、このようなアクティブステアリング装置をァクチユエータ補助型 のステアリング装置という)である場合には、ステアリングホイールの回転操作により機 械的に決定される操舵輪の舵角と、ァクチユエータの動作による舵角(舵角の補正量 )との合成角度が操舵輪の舵角になる。
[0062] また、ステアリング装置 3Bが操舵輪 Wl, W2の操舵をァクチユエータの駆動力だけ を使用して行なうアクティブステアリング装置(以下、このようなアクティブステアリング 装置をァクチユエータ駆動型のステアリング装置という)である場合には、少なくともス テアリング角の検出値に応じて操舵輪の舵角の目標値が決定され、操舵輪の実際の 舵角がその目標値になるようにァクチユエータが制御される。
[0063] このように操舵輪 Wl, W2の舵角をェクチユエータを介して能動的な制御可能なス テアリング装置 3B (アクティブステアリング装置)としては、公知のものを使用すればよ い。
[0064] なお、本明細書の実施形態におけるステアリング装置 3Bは、前輪 Wl, W2の舵角 をァクチユエータを介して能動的に制御可能なアクティブステアリング装置であるが、 ステアリングホイールの回転操作に応じた前輪 Wl, W2の機械的な操舵だけを行な うもの(以下、機械式ステアリング装置という)であってもよい。また、全ての車輪 Wl〜 W4を操舵輪とする車両では、ステアリング装置は、前輪 Wl, W2および後輪 W3, W4の両者の舵角をァクチユエータを介して能動的に制御可能なものであってもよい 。あるいは、該ステアリング装置は、ステアリングホイールの回転操作に応じた前輪 W 1, W2の操舵をラック 'アンド'ピユオンなどの機械的な手段だけで行なうと共に、後 輪 W3, W4の舵角だけをァクチユエータを介して能動的に制御可能なものであって ちょい。
[0065] 前記サスペンション装置 3Cは、本明細書の実施形態では、例えば車両 1の運動に 応じて受動的に動作するサスペンション装置である。
[0066] ただし、サスペンション装置 3Cは、例えば車体 1Bと車輪 W1〜W4との間に介在す るダンパーの減衰力や硬さ等を電磁制御弁や電動モータなどのァクチユエ一タを介 して可変的に制御可能なサスペンション装置であってもよい。あるいは、サスペンショ
ン装置 3Cは、油圧シリンダまたは空圧シリンダによってサスペンション(サスペンショ ン装置 3Cのばね等の機構部分)のストローク(車体 1Bと各車輪 W1〜W4との間の上 下方向の変位量)、または車体 1Bと車輪 W1〜W4との間で発生するサスペンション の上下方向の伸縮力を直接的に制御可能なサスペンション装置 (いわゆる電子制御 サスペンション)であってもよ 、。サスペンション装置 3Cが上記のようにダンバの減衰 力や硬さ、サスペンションのストロークもしくは伸縮力を制御可能なサスペンション装 置(以下、アクティブサスペンション装置という)である場合には、該サスペンション装 置 3Cは、その動作を能動的に制御可能である。
[0067] 以降の説明では、駆動'制動装置 3A、ステアリング装置 3B、およびサスペンション 装置 3Cのうち、前記の如く能動的に動作を制御可能なものを総称的にァクチユエ一 タ装置 3ということがある。本明細書の実施形態では、該ァクチユエータ装置 3には、 駆動.制動装置 3Aおよびステアリング装置 3Bが含まれる。なお、サスペンション装置 3Cがアクティブサスペンション装置である場合には、該サスペンション装置 3Cもァク チユエータ装置 3に含まれる。
[0068] また、車両 1には、前記各ァクチユエータ装置 3に備えるァクチユエータの操作量( ァクチユエータに対する制御入力。以下、ァクチユエータ操作量という)を前記運転操 作入力などに応じて決定し、そのァクチユエータ操作量によって各ァクチユエータ装 置 3の動作を制御する制御装置 10が備えられている。この制御装置 10は、マイクロ コンピュータなどを含む電子回路ユニットから構成され、操作器 5のセンサ力 前記 運転操作入力が入力されると共に、図示しない各種のセンサから、車両 1の走行速 度、ョーレートなどの車両 1の状態量の検出値や車両 1の走行環境の情報などが入 力される。そして、該制御装置 10は、それらの入力を基に、所定の制御処理周期で ァクチユエータ操作量を逐次決定し、各ァクチユエータ装置 3の動作を逐次制御する
[0069] 以上が、本明細書の実施形態における車両 1 (自動車)の全体的な概略構成であ る。この概略構成は、以下に説明するいずれの実施形態においても同じである。
[0070] 補足すると、本明細書の実施形態では、前記駆動'制動装置 3A、ステアリング装置 3B、およびサスペンション装置 3Cのうち、本発明におけるァクチユエータ装置(本発
明を適用して動作制御を行なうァクチユエータ装置)に相当するものは、駆動'制動 装置 3A、あるいは、該駆動 ·制動装置 3Aおよびステアリング装置 3Bである。そして、 制御装置 10は、本発明におけるァクチユエータ装置制御手段に相当する。
[0071] また、制御装置 10は、その制御処理機能によって本発明における種々の手段を実 現している。
[0072]
[参考例 1]
次に、本発明の実施形態を説明する前に、実施形態の理解を容易にするために、 実施形態に関連した参考例 1を以下に説明しておく。図 2は本参考例 1における制御 装置 10の全体的な制御処理機能の概略を示す機能ブロック図である。なお、以降の 説明では、実際の車両 1を実車 1という。補足すると、本参考例 1は、ァクチユエータ 動作目標値合成部 24の処理だけが、後述する本発明の第 1実施形態または第 2実 施形態と相違するものである。そして、その相違する部分以外は、第 1実施形態また は第 2実施形態と同一である。従って、本参考例 1に関する以下の説明のうち、ァク チユエータ動作目標値合成部 24の詳細説明以外は、第 1実施形態または第 2実施 形態の説明を兼ねている。
[0073] 図 2中の実車 1を除く部分 (より正確には、実車 1と、後述のセンサ.推定器 12に含 まれるセンサとを除く部分)が制御装置 10の主な制御処理機能である。図 2中の実車 1は、前記駆動'制動装置 3A、ステアリング装置 3B、およびサスペンション装置 3Cを 備えている。
[0074] 図示の如ぐ制御装置 10は、センサ ·推定器 12、規範操作量決定部 14、規範動特 性モデル 16、減算器 18、フィードバック分配則(FB分配則) 20、フィードフォワード 則 (FF則) 22、ァクチユエータ動作目標値合成部 24、およびァクチユエータ駆動制 御装置 26を主な処理機能部として備えている。なお、図 2中の実線の矢印は、各処 理機能部に対する主たる入力を示し、破線の矢印は、各処理機能部に対する補助 的な入力を示している。
[0075] 制御装置 10は、これらの処理機能部の処理を所定の制御処理周期で実行し、該 制御処理周期毎に逐次、ァクチユエータ操作量を決定する。そして、そのァクチユエ
ータ操作量に応じて実車 1のァクチユエータ装置 3の動作を逐次制御する。
[0076] 以下に、制御装置 10の各処理機能部の概要と全体的な処理の概要とを説明する
。なお、以降、制御装置 10の各制御処理周期で決定される変数の値に関し、現在の
(最新の)制御処理周期の処理で最終的に得られる値を今回値、前回の制御処理周 期の処理で最終的に得られた値を前回値と 、う。
[0077] 制御装置 10は、各制御処理周期において、まず、センサ.推定器 12により実車 1の 状態量や実車 1の走行環境の状態量を検出または推定する。本参考例 1では、セン サ-推定器 12の検出対象または推定対象には、例えば実車 1のョ一方向の角速度 であるョーレート Y act、実車 1の走行速度 Vact (対地速度)、実車 1の重心点の横す ベり角である車両重心点横すベり角 j8 act、実車 1の前輪 Wl , W2の横すベり角であ る前輪横すベり角 j8 f_act、実車 1の後輪 W3, W4の横すベり角である後輪横すベり 角 i8 r_aCt、実車 1の各車輪 W1〜W4に路面力も作用する反力である路面反力(駆動 •制動力、横力、接地荷重)、実車 1の各車輪 W1〜W4のスリップ比、実車 1の前輪 Wl , W2の舵角 S f_actが含まれる。
[0078] これらの検出対象または推定対象のうちの、車両重心点横すベり角 β actは、実車 1を上方から見たときの(水平面上での)該実車 1の走行速度 Vactのベクトルが実車 1 の前後方向に対してなす角度である。また、前輪横すベり角 jS Lactは、実車 1を上方 力 見たときの(水平面上での)前輪 Wl , W2の進行速度ベクトルが前輪 Wl , W2の 前後方向に対してなす角度である。また、後輪横すベり角 j8 r_actは、実車 1を上方か ら見たときの(水平面上での)後輪 W3, W4の進行速度ベクトルが後輪 W3, W4の前 後方向に対してなす角度である。また、舵角 S f_actは、実車 1を上方力 見たときの( 水平面上での)前輪 Wl , W2の回転面が実車 1の前後方向に対してなす角度である
[0079] なお、前輪横すベり角 β f_actは、各前輪 Wl , W2毎に検出または推定してもよいが 、いずれか一方の前輪 W1または W2の横すベり角を代表的に |8 f_actとして検出また は推定したり、あるいは、両者の横すベり角の平均値を jS Lactとして検出または推定 してもよい。後輪横すベり角 j8 r_actについても同様である。
[0080] さらに、センサ'推定器 12の推定対象として、実車 1の車輪 W1〜W4とこれに接す
る実際の路面との間の摩擦係数 (以下、該摩擦係数の推定値を推定摩擦係数/ z est mという)が含まれる。なお、推定摩擦係数 estmの頻繁な変動を生じないように、摩 擦係数の推定処理にはローパス特性のフィルタリング処理などを介在させることが好 ましい。なお、推定摩擦係数 estmは、本実施形態では、例えば各車輪 W1〜W4と 路面との間の摩擦係数の代表値もしくは平均値の推定値である。ただし、各車輪 W1 〜W4毎に推定摩擦係数/ z estmを求めたり、前輪 Wl, W2の組と後輪 W3, W4の組 とで各別に、あるいは、左側の前輪 W1および後輪 W3の組と、右側の前輪 W2およ び後輪 W4の組とで各別に、推定摩擦係数/ z estmの推定値を求めるようにしてもよい
[0081] センサ ·推定器 12は、上記の検出対象または推定対象を検出または推定するため に実車 1に搭載された種々のセンサを備えている。該センサとしては、例えば実車 1 の角速度を検出するレートセンサ、実車 1の前後方向および左右方向の加速度を検 出する加速度センサ、実車 1の走行速度 (対地速度)を検出する速度センサ、実車 1 の各車輪 W1〜W4の回転速度を検出する回転速度センサ、実車 1の各車輪 Wl〜 W4に路面力 作用する路面反力を検出する力センサなどが含まれる。
[0082] この場合、センサ ·推定器 12は、その検出対象または推定対象のうち、実車 1に搭 載したセンサによって直接的に検出できない推定対象については、その推定対象と 相関性のある状態量の検出値や、制御装置 10が決定したァクチユエータ操作量の 値もしくはそれを規定する目標値を基に、オブザーバなどにより推定する。例えば車 両重心点横すベり角 j8 actは、実車 1に搭載した加速度センサの検出値などを基に 推定される。また、例えば摩擦係数は、加速度センサの検出値などを基に、公知の 手法により推定される。
[0083] 補足すると、センサ ·推定器 12は、本発明における実状態量把握手段としての機能 を持つ。本参考例 1では、車両の運動に関する第 1状態量の種類として、車両のョー レートと車両重心点横すベり角とを用いる。この場合、ョーレートは、車両のョー方向 の回転運動に関する状態量としての意味を持ち、車両重心点横すベり角は、車両の 横方向の並進運動に関する状態量としての意味を持つ。そして、前記ョーレート y ac tおよび車両重心点横すベり角 β actが本発明における第 1実状態量としてセンサ.推
定器 12により検出または推定される。
[0084] また、センサ.推定器 12は、摩擦係数を推定する estmを求める)機能によって、 本発明における摩擦特性推定手段としての機能も持つ。さらに、センサ ·推定器 12 は、路面反力 (駆動'制動力、横力、接地荷重)を検出または推定する機能によって、 本発明における実路面反力把握手段としての機能も持つ。
[0085] 以降、センサ ·推定器 12により検出または推定する実車 1の状態量などの名称にし ばしば「実」を付する。例えば、実車 1のョーレート y act、実車 1の走行速度 Vact、実 車 1の車両重心点横すベり角 β actをそれぞれ実ョーレート γ act、実走行速度 Vact、 実車両重心点横すベり角 β actという。
[0086] 次いで、制御装置 10は、規範操作量決定部 14により、後述する規範動特性モデ ル 16に対する入力としての規範モデル操作量を決定する。この場合、規範操作量決 定部 14には、前記操作器 5のセンサで検出される運転操作入力が入力され、少なく とも該運転操作入力に基づ ヽて規範モデル操作量が決定される。
[0087] より詳しくは、本参考例 1では、規範操作量決定部 14が決定する規範モデル操作 量は、後述する規範動特性モデル 16上での車両の前輪の舵角(以下、モデル前輪 舵角という)である。このモデル前輪舵角を決定するために、前記運転操作入力のう ちのステアリング角 Θ h (今回値)が規範操作量決定部 14に主たる入力量として入力 されると共に、センサ ·推定器 12によって検出または推定された実走行速度 Vact (今 回値)および推定摩擦係数/ z estm (今回値)と、規範動特性モデル 16上での車両の 状態量 (前回値)とが規範操作量決定部 14に入力される。そして、規範操作量決定 部 14は、これらの入力を基にモデル前輪舵角を決定する。なお、モデル前輪舵角は 、基本的には、ステアリング角 Θ hに応じて決定すればよい。但し、本参考例 1では、 規範動特性モデル 16に入力するモデル前輪舵角に所要の制限を掛ける。この制限 を掛けるために、規範操作量決定部 14には、ステアリング角 Θ h以外に、 Vact, μ est mなどが入力される。
[0088] 補足すると、規範モデル操作量の種類は、一般的には、規範動特性モデル 16の 形態や、該規範動特性モデル 16により決定しょうとする状態量の種類に依存する。 また、規範動特性モデル 16に規範操作量決定部 14を含めてもよい。規範動特性モ
デル 16が運転操作入力そのものを必要入力とするように構成されている場合には、 規範操作量決定部 14を省略してもよい。
[0089] 次いで、制御装置 10は、規範動特性モデル 16により実車 1の規範とする運動(以 降、規範運動という)の状態量である規範状態量を決定して出力する。規範動特性モ デル 16は、車両の動特性を表す、あらカゝじめ定められたモデルであり、前記規範モ デル操作量を含む所要の入力を基に、規範運動の状態量 (規範状態量)を逐次決 定する。該規範運動は、基本的には、運転者にとって好ましいと考えられる実車 1の 理想的な運動もしくはそれに近!、運動を意味する。
[0090] この場合、規範動特性モデル 16には、規範操作量決定部 14で決定された規範モ デル操作量と、後述する FB分配則 20で決定された、規範動特性モデル 16の操作 用の制御入力(フィードバック制御入力) Mvir, Fvirなどが入力され、それらの入力に 基づ 、て規範運動(ひ 、ては規範状態量の時系列)が決定される。
[0091] より詳しくは、本参考例 1では、規範動特性モデル 16によって決定して出力する規 範状態量は、車両のョ一方向の回転運動に関する規範状態量と車両の横方向の並 進運動に関する規範状態量との組である。車両のョ一方向の回転運動に関する規 範状態量は、例えばョーレートの規範値 γ d (以降、規範ョーレート γ dということがあ る)であり、車両の横方向の並進運動に関する規範状態量は、例えば車両重心点横 すべり角の規範値 j8 d (以降、規範車両重心点横すベり角 β dということがある)である 。これらの規範状態量 γ d, β dを制御処理周期毎に逐次決定するために、規範モデ ル操作量としての前記モデル前輪舵角(今回値)と、前記フィードッバック制御入力 M vir, Fvir (前回値)とが入力される。この場合、本参考例 1では、規範動特性モデル 1 6上の車両の走行速度を実走行速度 Vactに一致させる。このために、規範動特性モ デル 16には、センサ ·推定器 12によって検出または推定された実走行速度 Vact (今 回値)も入力される。そして、規範動特性モデル 16は、これらの入力を基に、該規範 動特性モデル 16上での車両のョーレートおよび車両重心点横すベり角を決定し、そ れを規範状態量 γ d, |8 dとして出力する。
[0092] なお、規範動特性モデル 16に入力するフィードバック制御入力 Mvir, Fvirは、実車 1の走行環境 (路面状態など)の変化 (規範動特性モデル 16で考慮されて 、な 、変
ィ匕)や、規範動特性モデル 16のモデルィ匕誤差、あるいは、センサ'推定器 12の検出 誤差もしくは推定誤差などに起因して、実車 1の運動と規範運動とがかけ離れる(乖 離する)のを防止する (規範運動を実車 1の運動に近づける)ために規範動特性モデ ル 16に付カ卩的に入力するフィードバック制御入力である。該フィードバック制御入力 Mvir, Fvirは、本参考例 1では、規範動特性モデル 16上の車両に仮想的に作用さ せる仮想外力である。この仮想外力 Mvir, Fvirのうちの Mvirは、規範動特性モデル 1 6上の車両 1の重心点まわりに作用させるョー方向の仮想的なモーメントであり、 Fvir は該重心点に作用させる横方向の仮想的な並進力である。
[0093] 補足すると、前記規範状態量 γ d, β dは、本発明における第 1規範状態量に相当 し、規範動特性モデル 16が本発明における車両モデルに相当する。そして、規範操 作量決定部 14および規範動特性モデル 16の処理によって、本発明における規範状 態量決定手段が構成される。
[0094] 次いで、制御装置 10は、センサ ·推定器 12によって検出または推定された実状態 量 (規範状態量と同じ種類の実状態量)と、規範動特性モデル 16によって決定した 規範状態量との差である状態量偏差を減算器 18で算出する。
[0095] より詳しくは、減算器 18では、実ョーレート Ί actおよび実車両重心点横すベり角 β actのそれぞれの値 (今回値)と、規範動特性モデル 16によって決定した規範ョーレ ート γ dおよび規範車両重心点横すベり角 β dのそれぞれの値 (今回値)との差 γ err (= γ act— γ d) , err (= act— γ d)を状態量偏差として求める。
[0096] 補足すると、減算器 18の処理により、本発明における状態量偏差算出手段が構成 される。そして、この減算器 18により求められる状態量偏差 γ err, β errが本発明に おける第 1状態量偏差に相当する。
[0097] 次 ヽで、制御装置 10は、上記の如く求めた状態量偏差 γ err, β errを FB分配則 2 0に入力し、この FB分配則 20によって、規範動特性モデル 16の操作用のフィードバ ック制御入力である前記仮想外力 Mvir, Fvirと、実車 1のァクチユエータ装置 3の操 作用のフィードバック制御入力であるァクチユエータ動作フィードバック目標値 (ァク チユエータ動作 FB目標値)とを決定する。
[0098] なお、本参考例 1では、ァクチユエータ動作 FB目標値には、駆動'制動装置 3Aの
ブレーキ装置の動作に関するフィードバック制御入力(より詳しくは、該ブレーキ装置 の動作によって各車輪 W1〜W4に作用させる駆動 '制動力を操作するフィードバック 制御入力)が含まれる。あるいは、ァクチユエータ動作 FB目標値には、駆動 ·制動装 置 3Aの動作に関するフィードバック制御入力に加えて、ステアリング装置 3Bの動作 に関するフィードバック制御入力(より詳しくは、ステアリング装置 3Bの動作による前 輪 Wl, W2の横力を操作するフィードバック制御入力)が含まれる。該ァクチユエータ 動作 FB目標値は、換言すれば、実車 1に作用する外力である路面反力を操作する( 修正する)ためのフィードバック制御入力である。
[0099] FB分配則 20は、基本的には、入力される状態量偏差 γ err, β errを 0に近づける ように仮想外力 Mvir, Fvirとァクチユエータ動作 FB目標値とを決定する。但し、 FB分 配則 20は、仮想外力 Mvir, Fvirを決定するときに、状態量偏差 γ err, β errを 0に近 づけるだけでなぐ実車 1もしくは規範動特性モデル 16上の車両の所定の制限対象 量が所定の許容範囲から逸脱するのを抑制するように仮想外力 Mvir, Fvirを決定す る。また、 FB分配則 20は、状態量偏差 γ err, β errを 0に近づけるための所要のョー 方向のモーメントを実車 1の重心点のまわりに発生させるように (より一般的には、状 態量偏差 γ err, β errを 0に近づけるための所要の外力(路面反力)を実車 1に作用 させるように)、駆動 ·制動装置 3Aのブレーキ装置の動作に関するフィードバック制御 入力を、あるいは、該フィードバック制御入力とステアリング装置 3Bの動作に関する フィードバック制御入力とをァクチユエータ動作 FB目標値として決定する。
[0100] 前記仮想外力 Mvir, Fvirとァクチユエータ動作 FB目標値とを決定するために、 FB 分配則 20には、状態量偏差 γ err, β errだけでなぐ規範動特性モデル 16の出力 である規範状態量 γ d, |8 dと、センサ ·推定器 12で検出または推定された実状態量 γ act, β actとのうちの少なくともいずれか一方が入力される。さらに、 FB分配則 20 には、センサ ·推定器 12で検出または推定された実走行速度 Vact、実前輪横すベり 角 i8 f_aCt、実後輪横すベり角 i8 r_actなどの実状態量も入力される。そして、 FB分配 則 20は、これらの入力を基に、仮想外力 Mvir, Fvirとァクチユエータ動作 FB目標値 とを決定する。
[0101] 補足すると、仮想外力 Mvir, Fvirは、本発明における車両モデル操作用制御入力
に相当し、ァクチユエータ動作 FB目標値には、本発明におけるフィードバック制御入 力が含まれる。
[0102] 一方、以上説明した規範操作量決定部 14、規範動特性モデル 16、減算器 18およ び FB分配則 20の制御処理と並行して (もしくは時分割処理により)、制御装置 10は 、前記運転操作入力を FF則 22に入力し、該 FF則 22によって、ァクチユエータ装置 3の動作のフィードフォワード目標値 (基本目標値)であるァクチユエータ動作 FF目 標値を決定する。
[0103] 本参考例 1では、ァクチユエータ動作 FF目標値には、駆動 ·制動装置 3Aのブレー キ装置の動作による実車 1の各車輪 W1〜W4の駆動 ·制動力に関するフィードフォ ワード目標値と、駆動 ·制動装置 3Aの駆動系の動作による実車 1の駆動輪 Wl, W2 の駆動 ·制動力に関するフィードフォワード目標値と、駆動 ·制動装置 3Aの変速装置 の減速比(変速比)に関するフィードフォワード目標値と、ステアリング装置 3Bによる 実車 1の操舵輪 Wl, W2の舵角に関するフィードフォワード目標値とが含まれる。
[0104] FF貝 IJ22には、これらのァクチユエータ動作 FF目標値を決定するために、前記運転 操作入力が入力されると共に、センサ ·推定器 12で検出または推定された実状態量 (実走行速度 Vactなど)が入力される。そして、 FF則 22は、これらの入力を基に、ァ クチユエータ動作 FF目標値を決定する。該ァクチユエータ動作 FF目標値は、前記 状態量偏差 γ err, β err (第 1状態量偏差)に依存せずに決定される、ァクチユエータ 装置 3の動作目標値である。
[0105] 補足すると、サスペンション装置 3Cがアクティブサスペンション装置である場合には 、ァクチユエータ動作 FF目標値には、一般に、該サスペンション装置 3Cの動作に関 するフィードフォワード目標値も含まれる。
[0106] 次 、で、制御装置 10は、 FF則 22で決定したァクチユエータ動作 FF目標値 (今回 値)と前記 FB分配則 20で決定したァクチユエータ動作 FB目標値 (今回値)とをァク チユエータ動作目標値合成部 24に入力する。そして、制御装置 10は、該ァクチユエ ータ動作目標値合成部 24によって、ァクチユエータ動作 FF目標値とァクチユエータ 動作 FB目標値とを合成し、ァクチユエータ装置 3の動作を規定する目標値であるァ クチユエータ動作目標値を決定する。
[0107] 本参考例 1では、ァクチユエータ動作目標値には、実車 1の各車輪 W1〜W4の駆 動 ·制動力の目標値 (駆動 ·制動装置 3Aの駆動系およびブレーキ装置の動作による トータルの駆動'制動力の目標値)と、実車 1の各車輪 W1〜W4のスリップ比の目標 値と、ステアリング装置 3Bによる実車 1の操舵輪 Wl, W2の舵角の目標値と、駆動' 制動装置 3Aの駆動系の動作による実車 1の各駆動輪 Wl, W2の駆動'制動力の目 標値と、駆動'制動装置 3Aの変速装置の減速比の目標値とが含まれる。
[0108] ァクチユエータ動作目標値合成部 24には、これらのァクチユエータ動作目標値を 決定するために、前記ァクチユエータ動作 FF目標値およびァクチユエータ動作 FB 目標値だけでなぐセンサ'推定器 12で検出または推定された実状態量 (前輪 W1, W2の実横すベり角 |8 f_act、推定摩擦係数/ z estmなど)も入力される。そして、了クチ ユエータ動作目標値合成部 24は、これらの入力を基に、ァクチユエータ動作目標値 を決定する。
[0109] 補足すると、ァクチユエータ動作目標値は、上記した種類の目標値に限られるもの ではなぐそれらの目標値に代えて、例えば該目標値に対応する各ァクチユエータ装 置 3のァクチユエータ操作量の目標値を決定するようにしてもよい。ァクチユエータ動 作目標値は、基本的にはァクチユエータ装置の動作を規定できるものであればよい。 例えばブレーキ装置の動作に関するァクチユエータ動作目標値として、ブレーキ圧 の目標値を決定したり、それに対応するブレーキ装置のァクチユエータ操作量の目 標値を決定するようにしてもょ 、。
[0110] なお、本発明の第 1実施形態または第 2実施形態では、前記 FB分配則 20の後述 するァクチユエータ動作 FB目標値決定部 20bと、前記 FF則 22と、後述するァクチュ エータ動作目標値合成部 24とにより、本発明における実車ァクチユエータ操作用制 御入力決定手段が構成される。後述する第 1実施形態または第 2実施形態における ァクチユエータ動作目標値合成部 24で決定するァクチユエータ動作目標値は、本参 考例 1と同じである。
[0111] 次いで、制御装置 10は、ァクチユエータ動作目標値合成部 24により決定したァク チユエータ動作目標値をァクチユエータ駆動制御装置 26に入力し、該ァクチユエ一 タ駆動制御装置 26により実車 1の各ァクチユエータ装置 3のァクチユエータ操作量を
決定する。そして、その決定したァクチユエータ操作量により実車 1の各ァクチユエ一 タ装置 3のァクチユエータを制御する。
[0112] この場合、ァクチユエータ駆動制御装置 26は、入力されたァクチユエータ動作目標 値を満足するように、あるいは、該ァクチユエータ動作目標値通りにァクチユエータ操 作量を決定する。そして、この決定のために、ァクチユエータ駆動制御装置 26には、 ァクチユエータ動作目標値の他、センサ ·推定器 12で検出または推定された実車 1 の実状態量も入力される。なお、ァクチユエータ駆動制御装置 26の制御機能のうち、 駆動 ·制動装置 3Aのブレーキ装置に関する制御機能には、いわゆるアンチロックブ レーキシステムが組み込まれて 、ることが望ま U、。
[0113] 以上が制御装置 10の制御処理周期毎の制御処理の概要である。
[0114] なお、制御装置 10の各制御処理機能部の処理は、それらの順番を適宜変更しても よい。例えばセンサ ·推定器 12の処理を各制御処理周期の最後に実行し、それによ る検出値または推定値を次回の制御処理周期の処理で使用するようにしてもよい。
[0115] 次に、本参考例 1における制御装置 10の制御処理機能部のより詳細な処理を説明 する。
[0116] [規範動特性モデルについて]
まず、本参考例 1における前記規範動特性モデル 16を図 3を参照して説明する。 図 3は本参考例 1における規範動特性モデル 16上の車両の構造を示す図である。こ の規範動特性モデル 16は、車両の動特性を、 1つの前輪 Wfと 1つの後輪 Wrとを前 後に備えた車両の水平面上での動特性 (動力学特性)によって表現するモデル (所 謂 2輪モデル)である。以降、規範動特性モデル 16上の車両 (規範動特性モデル 16 上で実車 1に対応する車両)をモデル車両という。該モデル車両の前輪 Wfは、実車 1 の 2つの前輪 Wl, W2を一体ィ匕した車輪に相当し、モデル車両の操舵輪である。後 輪 Wrは、実車 1の後輪 W3, W4を一体ィ匕した車輪に相当し、本参考例 1では非操舵 輪である。
[0117] このモデル車両の重心点 Gdの水平面上での速度ベクトル Vdがモデル車両の前後
方向に対してなす角度 j8 d (すなわち、モデル車両の車両重心点横すベり角 13 d)と、 モデル車両の鉛直軸まわりの角速度 γ d (すなわち、モデル車両のョーレート γ d)と 力 Sそれぞれ、前記規範車両重心点横すベり角、規範ョーレートとして規範動特性モ デル 16により逐次決定する規範状態量である。また、モデル車両の前輪 Wfの回転 面と水平面との交線がモデル車両の前後方向に対してなす角度 δ f_dが前記モデル 前輪舵角として規範動特性モデル 16に入力される規範モデル操作量である。また、 モデル車両の重心点 Gdに付加的に作用させる横方向(モデル車両の左右方向)の 並進力 Fvirと、該モデル車両の重心点 Gdのまわりに付カ卩的に作用させるョー方向の (鉛直軸まわりの)モーメント Mvirとが、前記仮想外力として規範動特性モデル 16に 入力されるフィードバック制御入力である。
[0118] なお、図 3中、 Vf_dはモデル車両の前輪 Wfの水平面上での進行速度ベクトル、 Vr_ dはモデル車両の後輪 Wrの水平面上での進行速度ベクトル、 13 f_dは前輪 Wfの横す ベり角(前輪 Wfの進行速度ベクトル Vf_dが前輪 Wfの前後方向(前輪 Wfの回転面と 水平面との交線の方向)に対してなす角度。以下、前輪横すベり角 |8 f_dという)、 β ΐ_ dは後輪 Wrの横すベり角(後輪 Wrの進行速度ベクトル Vr_dが後輪 Wrの前後方向( 後輪 Wrの回転面と水平面との交線の方向)に対してなす角度。以下、後輪横すベり 角 13 r_dと!、う)、 β IDは、モデル車両の前輪 Wfの進行速度ベクトル Vf_dがモデル車 両の前後方向に対してなす角度 (以下、車両前輪位置横すベり角と 、う)である。
[0119] 補足すると、本明細書の実施形態および参考例では、車両もしくは車輪の横すベり 角、車輪の舵角、車両のョーレート、ョー方向のモーメントに関しては、車両の上方か ら見て、反時計まわり方向を正方向とする。また、仮想外力 Mvir, Fvirのうちの並進 力 Fvirは、車両の左向きを正の向きとする。また、車輪の駆動'制動力は、車輪の回 転面と路面もしくは水平面との交線方向で車両を前方向へ加速させる力(路面反力) の向きを正の向きとする。言い換えれば、車両の進行方向に対して駆動力となる向き の駆動 ·制動力を正の値、車両の進行方向に対して制動力となる向きの駆動 ·制動 力を負の値とする。
[0120] このモデル車両の動特性 (連続系での動特性)は、具体的には、次式 01により表さ れる。なお、この式 01の右辺の第 3項(Fvir, Mvirを含む項)を除いた式は、例えば「
自動車の運動と制御」と題する公知の文献 (著者:安部正人、発行者:株式会社山海 堂、平成 16年 7月 23日第 2版第 2刷発行。以降、非特許文献 1という)に記載されて いる公知の式(3. 12) , (3. 13)と同等である。
[0121] [数 1] 式 01
2 -(Kf+Kr) m-Vd2+2-(Lf' Kf-Lr- Kr)
2 -(Lf-Kf-Lr- Kr) 2-(Lfa' Kf+Lri- Kr)
[0122] この式 01の但し書きにおいて、 mはモデル車両の総質量、 Kfはモデル車両の前輪 Wl¾2つの左右の前輪の連結体とみなしたときの 1輪あたりのコーナリングパワー、 K rはモデル車両の後輪 Wrを 2つの左右の後輪の連結体とみなしたときの 1輪あたりの コーナリングパワー、 Lfはモデル車両の前輪 Wfの中心と重心点 Gdとの前後方向の 距離 (前輪 Wfの舵角が 0であるときの該前輪 Wfの回転軸と重心点 Gdとの前後方向 の距離。図 3参照)、 Lrはモデル車両の後輪 Wrの中心と重心点 Gdとの前後方向の 距離 (後輪 Wrの回転軸と重心点 Gdとの前後方向の距離。図 3参照)、 Iはモデル車 両の重心点 Gdにおけるョー軸まわりのイナーシャ (慣性モーメント)である。これらの パラメータの値は、あら力じめ設定された値である。この場合、例えば m, I, Lf, Lrは 、実車 1におけるそれらの値と同一力、もしくはほぼ同一に設定される。また、 Kf, Kr は、それぞれ実車 1の前輪 Wl, W2、後輪 W3, W4のタイヤの特性(あるいは該タイ ャに要求される特性)を考慮して設定される。なお、 Kf, Krの値 (より一般的には all , al2, a21, a22の値)の設定の仕方によって、アンダーステア、オーバーステア、ニュ 一トラルステアなどのステアリング特性を設定できる。また、実車 1における m、 I、 Kf、 Krの値を実車 1の走行中に同定し、その同定した値をモデル車両の m、 I、 Kf、 Krの 値として使用するようにしてもょ 、。
[0123] 補足すると、モデル車両の 13 f0、 j8 d、 β f_d、 β r_d、 γ d、 δ f_dの間の関係は、次式 02a, 02b, 02cにより表される。
[0124]
β f d= β d+Lf- γ d/Vd- δ f d ……式 02a
β r_d= β d-Lr- γ d/Vd ……式 02b
β ΐΟ= β f_d+ δ f_d= β d+Lf- γ d/Vd ……式 02c また、図 3に示す如ぐモデル車両の前輪 Wfのコーナリングフォース( 前輪 Wfの 横力)を Ffy_d、モデル車両の後輪 Wrのコーナリングフォース(=後輪 Wrの横力)を!7 ry_dとおくと、 Ffy_dと j8 f_dとの関係、および Fry_dと j8 r_dとの関係は、次式 03a, 03bに より表される。
[0125]
Fly_d= - 2 -Kf- j8 f_d ……式 03a
Fry_d= - 2 -Kr- β τ_ά ……式 03b 本参考例 1における規範動特性モデル 16の処理では、前記式 01の δ f_d、 Fvir、 Mvirを入力として、該式 01の演算処理 (詳しくは、式 01を離散時間系で表現してな る式の演算処理)を制御装置 10の制御処理周期で逐次実行することにより、 β ά, γ dが時系列的に逐次算出される。この場合、各制御処理周期において、モデル車両 の走行速度 Vdの値としては、前記センサ'推定器 12により検出もしくは推定された実 走行速度 Vactの最新値 (今回値)が用いられる。つまり、モデル車両の走行速度 Vd は、常に実走行速度 Vactに一致させられる。また、 Fvir, Mvirの値としては、 FB分配 則 20で後述する如く決定された仮想外力の最新値 (前回値)が用いられる。また、 δ f_dの値としては、規範操作量決定部 14で後述する如く決定されたモデル前輪舵角 の最新値 (今回値)が用いられる。なお、新たな i8 d, y d (今回値)を算出するために 、 J3 d, γ (1の前回値も用いられる。
[0126] 補足すると、モデル車両の動特性は、より一般的には、次式 (4)により表すようにし てもよい。
[0127] [数 2]
f1(rd(i8d,<5f„d) b11 0 Fvir
十 '式 04
f2( d,8d,5f_d) 0 b22 Mvir
[0128] ここで ί1(γ(1, βά, Sf— d)、および ί2(γ(1, β d, δ f— d)は、それぞれ γ d, β d, did の関数である。前記式 01は、関数 fl, f2の値を yd, βά, Sf_dの線形結合 (一次結 合)によって表した場合の例である。関数 fl, f2は、数式により表現される関数である 必要はなぐその関数値が γοΐ, βά, δ f_dの値力もマップにより決定されるような関数 であってもよい。
[0129] なお、本参考例 1における実車 1の挙動特性は、本発明を適用しない場合の実車 1 のオープン特性 (前記ァクチユエータ FB動作目標値を定常的に 0に維持した場合の 実車 1の挙動特性)と、仮想外力 Mvir, Fvirを定常的に 0に維持した場合の規範動 特性モデル 16の挙動特性との中間的な挙動特性を示す。このため、規範動特性モ デル 16は、一般的には、実車 1のオープン特性よりも、より運転者が好ましいと考える 応答挙動を示すモデルに設定しておくことが望ましい。具体的には、規範動特性モ デル 16は、実車 1よりもリニアリティが高いモデルに設定しておくことが望ましい。例え ば、モデル車両の車輪の横すベり角もしくはスリップ比と、該車輪に路面から作用す る路面反力 (横力もしくは駆動 ·制動力)との関係がリニアな関係もしくはそれに近!、 関係になるように規範動特性モデル 16が設定されることが望ましい。前記式 01により 動特性を表した規範動特性モデル 16は、これらの要求を満足するモデルの一例で ある。
[0130] ただし、規範動特性モデル 16は、モデル車両の各車輪 Wf, Wrに作用する路面反 力が横すベり角もしくはスリップ比の変化に対して飽和するような特性を持たせてもよ い。例えば、前記コーナリングパワー Kf, Krの値を一定値とせずに、それぞれ前輪横 すべり角 i8f_d、後輪横すベり角 i8r_dに応じて設定する。そして、このとき、前輪横す ベり角 j8f_dの絶対値がある程度大きくなつたときに、 j8f_dに応じて発生する前輪 Wf の横力 Ffy_d (前記式 03aを参照)が β f_dの増加に伴 、飽和するように、 Kfの値を β f dに応じて設定する。同様に、後輪横すベり角 j8r_dの絶対値がある程度大きくなつた ときに、 13 r_dに応じて発生する後輪 Wrの横力 Fry_d (前記式 03bを参照)が 13 r_dの
増加に伴い飽和するように、 Krの値を j8 r_dに応じて設定する。このようにすることに より、モデル車両の各車輪 Wf, Wrに作用する横力 Ffy_d, Fry_dが横すベり角 j8 f_dま たは j8 r_dに対して飽和特性を持つこととなる。
[0131]
[規範操作量決定部について]
次に、前記規範操作量決定部 14の処理の詳細を図 4および図 5を参照して説明す る。図 4は前記規範操作量決定部 14の処理機能の詳細を示す機能ブロック図、図 5 は規範操作量決定部 14に備える遠心力過大化防止リミッタ 14fの処理を説明するた めのグラフである。
[0132] 図 4を参照して、規範操作量決定部 14は、まず、処理部 14aにおいて、入力される 運転操作入力のうちのステアリング角 Θ h (今回値)を、オーバーオールステアリング 比 isにより除算することにより無制限時前輪舵角 S unltdを決定する。この無制限時 前輪舵角 δ Lunltdは、ステアリング角 Θ hに応じたモデル前輪舵角 δ f_dの基本要求 値としての意味を持つ。
[0133] ここで、オーバーオールステアリング比 isは、ステアリング角 Θ hとモデル車両の前輪 Wfの舵角との比率であり、例えば実車 1のステアリング角 Θ hとこれに応じた実車 1の 前輪 Wl, W2の舵角のフィードフォワード値との関係に合わせて設定される。
[0134] なお、オーバーオールステアリング比 isを一定値(固定値)とせずに、センサ'推定 器 12で検出もしくは推定された実車 1の走行速度 Vactに応じて可変的に設定しても よい。この場合には、実車 1の走行速度 Vactが高くなるに伴い、オーバーオールステ ァリング比 isが大きくなるように isを設定することが望ま 、。
[0135] 次!、で、規範動特性モデル 16上のモデル車両の車両前輪位置横すベり角 13 1Όが jS ffl算出部 14bで求められる。この |8 1Ό算出部 14bには、規範動特性モデル 16で決 定された規範ョーレート y dおよび規範車両重心点横すベり角 β dの前回値が入力さ れ、これらの値から、前記式 02cの演算(式 02cの 2番目の等号の右辺の演算)により jS fflの前回値が求められる。従って、 |8 1Ό算出部 14bで算出される |8 1Όは、前回の制 御処理周期におけるモデル車両の車両前輪位置横すベり角 j8 1Dの値である。。
[0136] なお、 γ ά, J3 dの前回値と、規範操作量決定部 14で決定したモデル前輪舵角 δ f_
dの前回値と、実走行速度 Vactの前回値とから、前記式 02aの演算によりモデル車両 の前輪横すベり角 j8 f_dの前回値を求め、この求めた j8 f_dに規範操作量決定部 14で 決定したモデル前輪舵角 δ f_dの前回値をカ卩える(式 02cの 1番目の等号の右辺の演 算を行なう)ことによって、 j81Dを求めるようにしてもよい。また、各制御処理周期にお いて、 jS fflの算出を規範動特性モデル 16の処理で実行するようにして、その算出さ れた β IDの前回値を規範操作量決定部 14に入力するようにしてもよい。この場合に は、規範操作量決定部 14における |81Ό算出部 14bの演算処理は不要である。
[0137] 次 、で、上記の如く求めた車両前輪位置横すベり角 β IDから無制限時前輪舵角 δ Lunltdを減算器 14cで減じることによって、無制限時前輪横すベり角が求められる。こ の無制限時前輪横すベり角は、モデル車両のモデル前輪舵角 δ f_dを前回値から、 無制限時前輪舵角 δ Lunltd (今回値)に瞬時に制御したとした場合に発生するモデ ル車両の前輪横すベり角 β f_dの瞬時予測値を意味する。
[0138] 次いで、規範操作量決定部 14は、この無制限時前輪横すベり角を前輪横すベり角 リミッタ 14dに通すことにより、制限済み前輪横すベり角を決定する。ここで、図中に 示す前輪横すベり角リミッタ 14dのグラフは、無制限時前輪横すベり角と制限済み前 輪横すベり角との関係を例示するグラフであり、そのグラフに関する横軸方向の値は 無制限時前輪横すベり角の値、縦軸方向の値は制限済み前輪横すベり角の値であ る。
[0139] この前輪横すベり角リミッタ 14dは、モデル車両の前輪横すベり角 β f_dの大きさが 過大になるのを抑制する(ひいては、実車 1に対して要求される前輪 Wl, W2の横力 が過大にならないようにする)ためのリミッタである。
[0140] 本参考例 1では、前輪横すベり角リミッタ 14dは、規範操作量決定部 14にセンサ- 推定器 12から入力される推定摩擦係数 μ estm (今回値)と実走行速度 Vact (今回値 )とに応じて、前輪横すベり角 β f_dの許容範囲 (詳しくは該許容範囲の上限値 β f ma x ( >0)および下限値 |8 ί·_πιίη (< 0) )を設定する。この場合、基本的には、推定摩擦 係数/ z estmが小さいほど、あるいは、実走行速度 Vactが高いほど、許容範囲 [ j8 f_mi η, β f max]を狭くする( β f_max, β f_minを 0に近づける)ように該許容範囲が設定さ れる。このとき、該許容範囲 [ j8 f_min, j8 f_max]は、例えば実車 1の前輪 Wl, W2の
横すベり角と横力もしくはコーナリングフォースとの間の関係がほぼリニアな関係(比 例関係)に維持されるような横すベり角の値の範囲内に設定される。
[0141] なお、該許容範囲 [ 13 f_min, β f max]は、 μ estmと Vactとのうちの!/、ずれか一方に 応じて設定してもよぐあるいは、 /z estmと Vactとによらずにあらかじめ固定的な許容 範囲に設定してもよい。
[0142] そして、前輪横すベり角リミッタ 14dは、入力された無制限時前輪横すベり角が、上 記の如く設定した許容範囲 [ j8 f_min, β f max]内の値であるとき( β f_min≤無制限時 前輪横すベり角≤ jS Lmaxであるとき)には、無制限時前輪横すベり角の値をそのま ま制限済み前輪横すベり角として出力する。また、該前輪横すベり角リミッタ 14dは、 入力された無制限時前輪横すベり角の値が許容範囲を逸脱している場合には、許 容範囲 [ β f_min, β f_max]の下限値 β f_minまたは上限値 β f_maxを制限済み前輪横 すべり角として出力する。具体的には、無制限時前輪横すベり角〉 j8 f_maxである場 合には、 iS fjnaxが制限済み前輪横すベり角として出力され、無制限時前輪横すベり 角く iS Lminである場合には、 j8 f_minが制限済み前輪横すベり角として出力される。 これにより、制限済み前輪横すベり角は、許容範囲 [ β f min, β f max]内で、無制限 時前輪横すベり角に一致するか、もしくは該無制限時前輪横すベり角に最も近い値 となるように決定される。
[0143] 次いで、前記 β 10算出部 14bで求めた車両前輪位置横すベり角 β ID力 上記の如 く求めた制限済み前輪横すベり角を減算器 14eで減算することにより、第 1制限済み 前輪舵角 S fjtdlが求められる。このようにして求められた第 1制限済み前輪舵角 δ ltdlは、モデル車両の前輪横すベり角 13 f_dが許容範囲 [ 13 f min, β f max]から逸脱 しないように無制限時前輪舵角 S unltdに制限を掛けてなるモデル前輪舵角 S f_dと しての意味を持つ。
[0144] 次いで、規範操作量決定部 14は、この第 1制限済み前輪舵角 δ fjtdlを遠心力過 大化防止リミッタ 14fに通すことにより、第 2制限済み前輪舵角 S f_ltd2を決定する。こ の δ f_ltd2力 規範動特性モデル 16に入力するモデル前輪舵角 δ f_dの値として使用 されるものである。ここで、図中に示す遠心力過大化防止リミッタ 14fのグラフは、第 1 制限済み前輪舵角 S fjtdlと第 2制限済み前輪舵角 S f_ltd2との関係を例示するダラ
フであり、そのグラフに関する横軸方向の値は δ fjtdlの値、縦軸方向の値は δ f_ltd2 の値である。
[0145] この遠心力過大化防止リミッタ 14fは、モデル車両に発生する遠心力が過大になら な 、ようにする(ひ ヽては実車 1に対して要求される遠心力が過大にならな 、ようにす る)ためのリミッタである。
[0146] 本参考例 1では、遠心力過大化防止リミッタ 14fは、規範操作量決定部 14に入力さ れる推定摩擦係数/ estm (今回値)と実走行速度 Vact (今回値)とに応じて、モデル 前輪舵角 δ f_dの許容範囲 (詳しくは該許容範囲の上限値 δ f maxOO)および下限 値 δ f_min « 0) )を設定する。この許容範囲 [ δ f_min, δ f_max]は、仮想外力 Mvir, Fvirが定常的に 0に保持されているとした場合に、モデル車両が路面との摩擦限界 を超えずに定常円旋回を行なうことが可能となるモデル前輪舵角 δ f_dの許容範囲で ある。
[0147] 具体的には、まず、規範操作量決定部 14に入力される Vact, μ estmの値 (今回値 )を基に、次式 05を満足するョーレートである定常円旋回時最大ョーレート γ max( > 0)が求められる。
[0148]
πι· γ max' Vact = Cl · μ estm'm'g 式 05 ここで、式 05における mは前記した通り、モデル車両の総質量である。また、 gは重 力加速度、 C1は 1以下の正の係数である。この式 05の左辺は、モデル車両のョーレ ート γ dおよび走行速度 Vdをそれぞれ γ max、 Vactに保持して、該モデル車両の定 常円旋回を行なった場合に該モデル車両に発生する遠心力(より詳しくは該遠心力 の収束予想値)を意味する。また、式 05の右辺の演算結果の値は、 estmに応じて 定まる路面反力(詳しくはモデル車両に車輪 Wf, Wrを介して路面カゝら作用し得るト 一タルの摩擦力(路面反力の並進力水平成分の総和)の大きさの限界値に係数 C1 を乗じた値(≤限界値)である。従って、定常円旋回時最大ョーレート γ maxは、モデ ル車両に作用させる仮想外力 Mvir, Fvirを 0に保持すると共にモデル車両のョーレ ート γ dおよび走行速度 Vdをそれぞれ γ max、 Vactに保持して、該モデル車両の定
常円旋回を行なった場合に該モデル車両に発生する遠心力が、推定摩擦係数/ z es tmに対応してモデル車両に作用し得るトータルの摩擦力(路面反力の並進力水平成 分の総和)の限界値を超えな 、ように決定される。
[0149] なお、式 05の係数 C1の値は、 μ estm, Vactのうちの少なくともいずれか一方の値 に応じて可変的に設定するようにしてもよい。この場合、 estmが小さいほど、あるい は Vactが高いほど、 C1の値を小さくすることが好ましい。
[0150] 次 、で、モデル車両の定常円旋回時の、 γ maxに対応するモデル前輪舵角 δ f_d の値が定常円旋回時限界舵角 S f_max_c ( > 0)として求められる。ここで、前記式 01 により表される規範動特性モデル 16では、定常円旋回時のモデル車両のョーレート y dとモデル前輪舵角 S f_dとの間には、次式 06の関係が成立する。
[0151] [数 3]
r d= (5 f d ……式 06
2 -L2 Kf-Kr 但し、 L=Lf+Lr
[0152] なお、 Vdが十分に小さいとき (Vd2 0とみなせるとき)には、式 06は近似的に次式 07に書き換えることができる。
[0153]
y d= (Vd/L) - 6 f_d ……式 07 そこで、本参考例 1では、式 06あるいは式 07〖こおける y d, Vdのそれぞれの値を γ max、 Vactとして、 δ f_d〖こついて解くこと〖こより、 γ maxに対応する定常円旋回時限界 舵角 δ f_max_cを求める。
[0154] モデル車両に発生する遠心力が過大にならないようにするためのモデル前輪舵角
δ f_dの許容範囲 [ δ f_min, δ f_max]は、基本的には、許容範囲 [ δ f_max_c, δ f_ma x_c]に設定すればよい。ただし、その場合には、実車 1のカウンタステア状態(実車 1 のョーレートの極性と逆極性の向きに前輪 Wl , W2を操舵する状態)において、モデ ル前輪舵角 δ f_dが不要な制限を受ける場合がある。
[0155] そこで、本参考例 1では、モデル車両のョーレート γ dと γ maxとに応じて次式 08a, 08b〖こより Sf_max_c、 - δ f_max_cを修正することで、モデル前輪舵角 δ f_dの許容範 囲の上限値 δ f_maxおよび下限値 δ f_minを設定する。
[0156]
0 f_max= 0 f_max_c+fe(y d, γ max) 式 08a
δ f_min=― δ f— max— c— fe (― y ά, — y max) 式 08b 式 08a, 08bにおける fe( γ d, γ max)、 fe (― γ d, — γ max)は、 γ d, γ maxの関数で あり、その関数値が例えば図 5 (a), (b)のグラフに示すように yd, ymaxの値に応じ て変化する関数である。この例では、関数 fe(yd, γ max)の値は、図 5 (a)のグラフに 示す如ぐ ydが 0よりも若干大きい所定の値 γ 1以下の値である場合(γ(1<0の場合 を含む)には、正の一定値 fexになる。そして、 fe( yd, γ max)の値は、 γ(1>γ1であ る場合には、 γοΐが大きくなるに伴い、単調に減少して、 γ dが γ max以下の所定値で ある γ2(>γ1)に達するまでに 0になる。さらに、 fe(yd, γ max)の値は、 γ(1>γ2で ある場合( y d≥ y maxの場合を含む)には、 0に維持される。
[0157] また、関数 fe (— yd, - y max)は、関数 fe( y d, y max)の変数 y d, y maxの極'性を 反転させた関数であるので、該関数 fe (— yd, - y max)の値は、図 5 (b)のグラフに 示す如く γ dに対して変化する。すなわち、 γ dが 0よりも若干小さい所定の負の値— y 1以上の値である場合( γ d>0の場合を含む)には、正の一定値 fexになる。そして 、 fe (- yd, - y max)の値は、 γ d<― γ 1である場合には、 γ dが小さくなるに伴い、 単調に減少して、 γ dがー γ max以上の所定値である γ 2に達するまでに 0になる。 さらに、 fe (— yd, - y max)の値は、 γ d<― γ 2である場合( γ d≤― γ maxの場合を 含む)には、 0に維持される。
[0158] なお、関数 fe( yd, γ max), fe (- y d, - y max)の値を決定するために必要な γ dの 値としては、規範動特性モデル 16で決定した規範ョーレート γ dの前回値を用いれ ばよい。
[0159] また、関数 fe(Yd, γ max)のグラフの折れ点における ydの値 γΐ, γ 2、あるいは、 上記正の一定値 fexは、推定摩擦係数 estmや実走行速度 Vactに応じて可変的に
変更するようにしてもよ ヽ。
[0160] 上記のように δ f_max_cを関数 feの値により補正してモデル前輪舵角 δ f_dの許容範 囲 [ δ f_min, δ fjnax]を設定することで、 γ dと逆向きの方向のモデル前輪舵角 δ f_d の限界値 δ fjnaxまたは δ fjninの大きさ(絶対値)は、モデル車両に発生させる遠心 力の限界に対応する定常円旋回時限界舵角 S f_maX_Cよりも大きめに設定される。こ のため、実車 1のカウンタステア状態において、モデル前輪舵角 S f_dが不要な制限 を受けるのを防止することができる。なお、該許容範囲 [ δ fjnin, δ fjnax]は、実走 行速度 Vactが高いほど、あるいは、推定摩擦係数/ z estmが小さいほど、狭くなる。
[0161] 上記のようにモデル前輪舵角 δ f_dの許容範囲を設定した後、遠心力過大化防止リ ミッタ 14fは、入力された第 1制限済み前輪舵角 δ fjtdlが許容範囲 [ δ fjnin, δ f ma x]内の値であるとき( δ f_min≤ δ fjtdl≤ δ fjnaxであるとき)には、 δ fjtdlの値をその まま第 2制限済み前輪舵角 δ f_ltd2 (=規範動特性モデル 16に入力するモデル前輪 舵角 δ f_d)として出力する。また、該遠心力過大化防止リミッタ 14fは、入力された δ f Jtdlの値が許容範囲 [ δ fjnin, δ fjnax]を逸脱して!/、る場合には、その入力値を強 制的に制限してなる値を第 2制限済み前輪舵角 S f_ltd2として出力する。具体的には 、 δ fjtdl > δ fjnaxである場合には、 δ fjnaxが第 2制限済み前輪舵角 δ f_ltd_2として 出力され、 δ fjtdlく δ fjninである場合には、 δ fjninが第 2制限済み前輪舵角 S fjt d2として出力される。これにより、 δ f_ltd2は、許容範囲 [ δ fjnin, δ fjnax]内で、第 1 制限済み前輪舵角 δ fjtdlに一致するか、もしくは、第 1制限済み前輪舵角 δ fjtdl に最も近 、値になるように決定される。
[0162] なお、前記式 01で表される規範動特性モデル 16では、モデル車両の定常円旋回 時には、 β dと γ dとの間に次式 09の関係が成立する。
[0163] [数 4]
; m I f Lr
B d= 1 Vd2 d 式 09
I 2' L Lr-Kr / Vd また、 Vdが十分に小さいとき (Vd2 0とみなせるとき)には、式 09は近似的に次式 1 0に書き換えることができる。
[0165]
j8 d= (LrZVd) d ……式 10 従って、モデル車両の定常円旋回時における γ dあるいは γ maxの値は、式 09また は式 10により 13 dの値に変換できる(但し、 Vd=Vactとする)。このため、上記の如くョ 一レート γ d, γ maxの値に応じてモデル前輪舵角 δ f_dの許容範囲を設定する代わり に、ョーレート Ύ d, γ maxに対応する車両重心点横すベり角 j8 dの値に応じてモデル 前輪舵角 S f_dの許容範囲を設定するようにしてもよい。
[0166] 以上が規範操作量決定部 14の処理の詳細である。
[0167] 以上説明した規範操作量決定部 14の処理によって、規範動特性モデル 16上のモ デル車両の前輪横すベり角 jS !Ldの瞬時値が過大にならず、且つ、モデル車両に発 生する遠心力が過大にならないようにしつつ、運転操作入力のうちのステアリング角 Θ hに応じて、第 2制限済み前輪舵角 δ f_ltd2が規範動特性モデル 16に入力するモ デル前輪舵角 δ f_dとして制御処理周期毎に決定される。
[0168] 補足すると、遠心力過大化防止リミッタ 14fにおいて、規範動特性モデル 16に入力 するモデル前輪舵角 S f_dを上記の如く制限して、モデル車両に発生する遠心力が 過大にならないようにするということは、モデル車両の車両重心点横すベり角 j8 d (も しくは後輪横すベり角 β r_d)が過大にならな 、ようにモデル前輪舵角 δ f_dを制限す ることと同等である。また、一般に、車両の遠心力や車両重心点横すベり角(もしくは 後輪横すベり角)はステアリング操作に対して遅れて発生するので、遠心力過大化防 止リミッタ 14fによるモデル前輪舵角 S f_dの制限処理は、車両の遠心力や車両重心 点横すベり角(もしくは後輪横すベり角)の収束予想値を基に、モデル前輪舵角 δ f_d を制限する処理であると言える。これに対して、前輪横すベり角リミッタ 14dの制限処 理は、モデル車両の前輪横すベり角 j8 f_dの瞬時値が過大にならないようにモデル前 輪舵角 S f_dを制限するための処理であると言える。
[0169] なお、本参考例 1では、遠心力過大化防止リミッタ 14fで許容範囲 [ δ f rnin, δ f ma x]を設定するために使用する関数 feを前記図 5 (a) , (b)に示した如く設定したが、こ れに限定されるものではな 、。
[0170] 例えば、関数 fe( y d, y max)を、図 6に実線のグラフで示すように設定してもよい。こ の例では、 fe( y d, γ max)は、その値が γ dの値の増加(負側の値から正側の値への 増カロ)に伴い、単調に減少すると共に、 γ d= γ maxであるときに 0になる。なお、この とき、関数 fe (― y d, - y max)は図 6に破線のグラフで示すものとなる。この場合、前 記式 08aにより決定されるモデル前輪舵角 δ f_dの許容範囲の上限値 δ f_maxは、 γ d が γ maxを超えると、 γ (1の増加に伴い、定常円旋回時限界舵角 δ f— max_cよりも 0に 近づくこととなる。同様に、前記式 08bにより決定されるモデル前輪舵角 S f_dの許容 範囲の下限値 δ f_minは、 γ dが一 γ maxを負側に超えると、 γ dの減少(大きさの増加 )に伴い、 S f_maxよりも 0に近づくこととなる。
[0171] また、前記式 08a, 08bの代わりに、次式 11a, l ibにより、 S f— dの許容範囲の上限 値 δ f_maxおよび下限値 δ f_minを設定するようにすると共に、関数 fe( y d, γ max), fe( - y d, - γ max)をそれぞれ、例えば図 7の実線、破線のグラフで示すように設定し てもよい。
[0172]
0 f— max = o f— max— c · fe( γ d, y max) 式 11 a
δ f_min=― δ f— max— c'fe (― y ά, — y max) 式丄 lb この例では、 fe( y d, γ max), fe (- γ d, - γ max)は、その値が常に 1以上であり、ま た、図 5 (a) , (b)のものと同様の形態で γ (1に応じて変化する。そして、これらの ί¾( γ d, γ max), fe (― γ d, — γ max)の値をそれぞれ δ f_max_c, δ f_min_cに乗じることによ り、上限値 δ f_maxと下限値 δ f_minとが設定されることとなる。
[0173] また、 δ f_max_cを関数 feの値により補正してモデル前輪舵角 δ f_dの許容範囲 [ δ f min, S fjnax]を設定する代わりに、例えば以下のような処理により第 2制限済み前輪 舵角 S f_ltd2を決定するようにしてもよい。図 8はその処理機能を説明するための機能 ブロック図である。
[0174] すなわち、前記前輪横すベり角リミッタ 14dで決定された第 1制限済み前輪舵角 δ f Jtdlを補正するための前輪舵角補正分 Δ δ 1¾処理部 14gにおいてモデル車両のョ 一レート γ (1 (前回値)に応じて決定する。このとき、 Δ S fは処理部 14g中のグラフで
示すように、基本的には、 y dが正側で増加するに伴い、 Δ S fの値が正側で単調増 加し、また、 y dが負側で減少するに伴い、 Δ S fの値が負側で単調減少するように決 定される。なお、処理部 14g中のグラフでは、 Δ S fの値には上限値(>0)および下 限値(< 0)が設けられている。この場合、上限値および下限値は、例えばその絶対 値が前記図 5 (a) , (b)に示した一定値 fexと同じ値になるように設定される。
[0175] 次いで、上記の如く決定した前輪舵角補正分 Δ δ 1¾、前記減算器 14e (図 4参照) で算出された第 1制限済み前輪舵角 δ fjtdlに加算器 14hで加えることにより入力補 正付き第 1制限済み前輪舵角を決定する。この場合、 δ fjtdlの向きと y dの向きとが 互いに逆向きである場合には、入力補正付き第 1制限済み前輪舵角の大きさは、 S f Jtdlの大きさよりも小さくなる。ただし、 δ fjtdlの向きと y dの向きとが同じである場合 には、入力補正付き第 1制限済み前輪舵角の大きさは、 δ fjtdlの大きさよりも大きく なる。
[0176] 次いで、この入力補正付き第 1制限済み前輪舵角を遠心力過大化防止リミッタ 14f に通すことで、入力補正付き第 1制限済み前輪舵角をモデル前輪舵角 S f_dの許容 範囲 [ δ f min, δ f max]内の値に制限してなる入力補正付き第 2制限済み前輪舵角 を決定する。すなわち、入力補正付き第 1制限済み前輪舵角が許容範囲内の値であ る場合には、該入力補正付き第 1制限済み前輪舵角がそのまま入力補正付き第 2制 限済み前輪舵角として決定される。また、入力補正付き第 1制限済み前輪舵角が許 容範囲から逸脱している場合には、 δ Lmaxおよび δ f_minのうち、入力補正付き第 1 制限済み前輪舵角に近い方の値が入力補正付き第 2制限済み前輪舵角として決定 される。
[0177] この場合、遠心力過大化防止リミッタ 14fにおけるモデル前輪舵角 δ f_dの許容範 囲の上限値 δ f_max( >0)は、 δ fjtdlの向きと γ dの向きとが同じである場合の δ f ltd 1の補正分を見込んで、前記定常円旋回時舵角限界値 δ f— maX_Cよりも大きめの値( 例えば δ f_max_c+fex)に設定される。同様に、モデル前輪舵角 δ f_dの許容範囲の 下限値 δ f_min « 0)は、その絶対値が δ f_max_cよりも大きめの値になるように設定さ れる。
[0178] 次いで、上記の如く決定した入力補正付き第 2制限済み前輪舵角から、前記前輪
舵角補正分 Δ δ ί^減算器 14iで減じることにより、第 2制限済み前輪舵角 S f_ltd2を 決定する。
[0179] 上記のように第 2制限済み前輪舵角 δ f_ltd2を決定するようにしても、モデル車両に 発生する遠心力が過大にならないようにし、且つ、実車 1のカウンタステアリング状態 での不要な制限がかかるのを防止しつつ、規範動特性モデル 16に入力するモデル 前輪舵角 S f— d (= S f— ltd2)を決定できる。
[0180] なお、本参考例 1では、規範動特性モデル 16に入力するモデル前輪舵角 δ f_dを 決定するために、前記前輪横すベり角リミッタ 14dおよび遠心力過大化防止リミッタ 1 4fの処理を行なうようにしたが、 V、ずれか一方もしくは両者の処理を省略してもよ!/、。 すなわち、処理部 14aで決定される無制限時前輪舵角 δ f_unltd、あるいは、この δ f_ unltdを遠心力過大化防止リミッタ 14fに入力して得られる値、あるいは、前記減算器 14eで決定される第 1制限済み前輪舵角 δ fjtdlを規範動特性モデル 16に入力する モデル前輪舵角 δ f_dとして決定するようにしてもよい。
[0181] 以上説明した如く規範操作量決定部 14で決定されたモデル前輪舵角 S f_dの今回 値(= S f_ltd2の今回値)が規範動特性モデル 16に入力され、その入力値と後述する 如く FB分配則 20で決定された仮想外力 Fvir, Mvir (前回値)とから、該規範動特性 モデル 16によって(前記式 01に従って)、規範ョーレート y dおよび規範車両重心点 横すベり角 dの今回値が新たに決定されることとなる。なお、この処理は、実際には 、式 01を離散時間系で表した式によって行なわれるので、 y d, j8 dの今回値を決定 するために、 γ οΐ, j8 dの前回値も使用されることとなる。
[0182] この場合、規範動特性モデル 16に入力されるモデル前輪舵角 δ f_dは、前記の如く 規範操作量決定部 14で制限されているので、モデル車両のスピンや極端な横すベ りの発生が防止される。
[0183]
[FB分配則について]
次に、 FB分配則 20の処理の詳細を図 9〜図 16を参照して説明する。
[0184] 図 9は FB分配則 20の処理機能を示す機能ブロック図である。図示の如く FB分配 則 20は、その処理機能を大別すると、仮想外力 Mvir, Fvirを決定する処理を行なう
仮想外力決定部 20aとァクチユエータ動作 FB目標値を決定する処理を行なうァクチ ユエータ動作 FB目標値決定部 20bとから構成される。
[0185] なお、仮想外力決定部 20aは、本発明における車両モデル操作用制御入力決定 手段に相当する。そして、ァクチユエータ動作 FB目標値決定部 20bは、本発明にお ける実車ァクチユエータ操作用制御入力決定手段の構成要素 (本発明におけるフィ ードバック制御入力を決定する手段)である。
[0186] まず、仮想外力決定部 20aを図 9を参照して説明すると、この仮想外力決定部 20a の処理機能は、仮想外力仮値決定部 201と γ |8制限器 202とに大別される。
[0187] 仮想外力決定部 20aの処理では、まず、前記減算器 18から入力される状態量偏差 γ err ( = γ act— y d) , β βνν ( = β act— β d)に応じて、仮想外力仮値決定部 201に よって仮想外力の仮値 Mvirtmp, Fvirtmpが決定される。仮値 Mvirtmp, Fvirtmpのう ちの Mvirtmpは、状態量偏差 γ err, β errを 0に近づけるために規範動特性モデル 1 6のモデル車両の重心点 Gdのまわりに付カ卩的に発生させるべきモーメント(ョ一方向 のモーメント)、 Fvirtmpは、状態量偏差 γ err, β errを 0に近づけるために規範動特 性モデル 16のモデル車両の重心点 Gdに付カ卩的に作用させるべき並進力(モデル車 両の横方向の並進力)を意味する。
[0188] 具体的には、次式 15で示す如ぐ入力された状態量偏差 γ err, β errからなるベタ トル ( γ err, β err)T (添え字 Τは転置を意味する)に所定のゲインマトリクス KMrを乗じ ることにより、仮想外力の仮値 Mvirtmp, Fvirtmp (以下、仮想外力仮値 Mvirtmp, Fvi rtmpという)が決定される。
[0189] [数 5]
'式 1 5
但し、
Kfvirl 1 fvir12
Kfvir=
Kfvir21 Kfvir22
[0190] この式 15により、状態量偏差 γ err, β errを 0に近づけるために規範動特性モデル 16にフィードバックする制御入力の仮値としての仮想外力仮値 Mvirtmp, Fvirtmpが 、状態量偏差 γ err, β err力もフィードバック制御則により決定される。
[0191] なお、以下に詳説する γ β制限器 202が、モデル車両の車両重心点横すベり角 β dもしくは実車 1の実車両重心点横すベり角 β actが所定の許容範囲を超えそうにな つた時、および越えてしまった時にだけ、 j8 dもしくは |8 actを許容範囲に戻す作用を 強く発生するようにしたいならば、 j8 errを時定数の小さい 1次遅れ特性に近い特性で 0に収束させることが望ましい。そのためには、例えばゲインマトリクス KlVirの成分のう ちの KMrl2を 0に設定し、 KlVirl lをその絶対値が大きくなるように設定すればよい。
[0192] 次!、で、規範動特性モデル 16上のモデル車両のョーレート γ dおよび車両重心点 横すベり角 β dがそれぞれ所定の許容範囲から逸脱するのを抑制するように仮想外 力仮値 Mvirtmp, Fvirtmpを修正する処理が γ j8制限器 202〖こより実行される。
[0193] 具体的には、 γ β制限器 202は、まず、予測演算部 203の処理を実行し、所定時 間後(1つ以上の所定数の制御処理周期の時間後)のモデル車両のョーレート γ dと 車両重心点横すベり角 i8 dとを予測し、それらの予測値をそれぞれ予測ョーレート γ da、予測車両重心点横すベり角 j8 daとして出力する。
[0194] このとき予測演算部 203には、規範動特性モデル 16で決定された規範ョーレート y d (今回値)および規範車両重心点横すベり角 |8 (1 (今回値)と、センサ ·推定器 12 で検出または推定された実走行速度 Vact (今回値)と、規範操作量決定部 14で決定 された第 2制限済み前輪舵角 S f_ltd2 (今回値)と、仮想外力仮値決定部 201で上記 の如く決定された仮想外力仮値 Mvirtmp, Fvirtmp (今回値)とが入力される。そして 、該予測演算部 203は、モデル前輪舵角 δ が、入力された δ f_ltd2に保持され、且 つ、モデル車両に作用する仮想外力 Mvir, Fvir力 入力された Mvirtmp, Fvirtmpに 保持され、且つ、モデル車両の走行速度 Vdが、入力された Vactに保持されると仮定 して、前記式 01に基づいて、予測ョーレート γ daおよび予測車両重心点横すベり角 j8 daを算出する。
[0195] 次いで、 γ j8制限器 202は、上記の如く予測演算部 203で算出した γ da, daを それぞれ γ不感帯処理部 204、 j8不感帯処理部 205に通すことにより、 γ da, β da のそれぞれの、所定の許容範囲からの逸脱量 γ over, β overを求める。図中に示す γ不感帯処理部 204のグラフは、 γ daと γ overとの関係を例示するグラフであり、該 グラフに関する横軸方向の値は Ύ daの値、縦軸方向の値は γ overの値である。同様
に、図中に示す j8不感帯処理部 205のグラフは、 j8 daと |8 overとの関係を例示する グラフであり、該グラフに関する横軸方向の値は β daの値、縦軸方向の値は β over の値である。
[0196] ここで、 γ不感帯処理部 204における許容範囲は、その下限値、上限値をそれぞ れ γ damin (< 0) , y damax ( >0)とする許容範囲(ョーレート γ dの許容範囲)であり 、 j8不感帯処理部 205における許容範囲は、その下限値、上限値をそれぞれ jS dami η « 0) , β damax ( >0)とする許容範囲(車両重心点横すベり角 β dの許容範囲)で ある。
[0197] 本参考例 1では、ョーレート γ dに関する許容範囲 [ γ damin, γ damax]は、例えば モデル車両の走行速度 Vdを Vact (今回値)に保持すると共に、モデル車両のョーレ ート γ dを γ daminまたは γ damaxに保持して定常円旋回を行なった場合にモデル車 両に発生する遠心力が推定摩擦係数/ z estm (今回値)に応じた摩擦力の限界値を 超えないように設定される。すなわち、次式 16a, 16bを満足するように、 Vact (今回 値)と μ estm (今回値)とに応じて、 γ damax, y daminが設定される。
[0198]
πι· Vact ' y damax^ μ estm 'm'g 式丄 6a
πι· Vact ' y damin >― μ estm 'm'g 式 lob y damax, γ daminは、例えばそれぞれの絶対値が前記式 05により決定される定常 円旋回時最大ョーレート y maxと同じ値になるように設定すればよい( y damax = y m ax、 y damin = y maxとするノ。たたし、 γ damax, y daminを、ての絶对値; 0 y maxと 異なる値 (例えば γ maxよりも小さ 、値)になるように設定してもよ!/、。
[0199] なお、上記のように設定される許容範囲 [ γ damin, γ damax]は、実走行速度 Vact が高いほど、あるいは、推定摩擦係数/ z estmが小さいほど、狭くなる。
[0200] また、車両重心点横すベり角 β dに関する許容範囲 [ β damin, β damax]は、例え ば、実車 1の車両重心点横すベり角と実車 1の重心点に作用する横方向の並進力と の間の関係がほぼリニアな関係 (比例関係)に維持されるような車両重心点横すベり 角の範囲内に設定される。この場合、 Vact (今回値)と/ z estm (今回値)とのうちの少
なくともいずれか一方に応じて j8 damin, β damaxを設定することが望ましい。
[0201] そして、 γ不感帯処理部 204の処理では、具体的には、入力された γ daが所定の §午 範囲 [ y damin, y damax]内の であるとき ( γ damin≤ y da^ y damaxであると き)には、 y over= 0とし、 γ da< y daminで fcoときには、 y over= y da— y daminと し、 γ da> γ damaxであるときには、 γ over= γ da— γ damaxとする。これにより、予視 U ョーレート γ daの許容範囲 [ γ damin, y damax]からの逸脱量 γ overが求められる。
[0202] 同様に、 j8不感帯処理部 205の処理は、入力された β daの値が所定の許容範囲 [ β damin, β damax]内の値であるとき( j8 damin≤ j8 da≤ β damaxであるとき)には、 j8 over= 0とし、 j8 da< β daminであるときには、 j8 over= β da— β daminとし、 j8 da> β damaxであるときには、 β over= β da— β damaxとする。これにより、予測車両重心点 横すベり角 13 daの許容範囲 [ j8 damin, β damax]からの逸脱量 13 overが求められる。
[0203] 次いで、 γ j8制限器 202は、これらの逸脱量 γ over, j8 overを 0に近づけるように、 仮想外力仮値 Mvirtmp, Fvirtmpのネ甫正量である仮値操作量 Mvir_over, Fvir_overを 処理部 206にて算出する。
[0204] 具体的には、次式 17で示す如く、 γ over, j8 overからなるベクトル( γ over, β over) Tに所定のゲインマトリクス Kfovを乗じることにより、 Mvir.over, Fvir_overが決定される
[0205] [数 6]
'式 1 7
但し、
Kfov 1 1 fovl 2
Kfov =
Kfov21 Kfov22
[0206] 次いで、 γ j8制限器 202は、この仮値操作量 Mvir_over, Fvir_overをそれぞれ仮想 外力仮値 Mvirtmp, Fvirtmpから減算器 207で減じることにより、仮想外力 Mvir, Fvir の今回値を決定する。すなわち、次式 18a, 18bにより仮想外力 Mvir, Fvirが決定さ れる。
[0207]
Mvir = Mvirtmp― Mvir— over 式 18 a
Fvir = Fvirtmp― Fvir_over 式 18b 以上の如く仮想外力決定部 20aの処理が実行されることにより、予測ョーレート γ d aおよび予測車両重心点横すベり角 13 daがそれぞれ許容範囲 [ γ damin, γ damax]、 [ β damin, β damax]から逸脱するのを抑制しつつ、状態量偏差 γ err, β errを 0に近 づけるように仮想外力 Mvir, Fvirが決定されることとなる。
[0208] なお、以上説明した仮想外力決定部 20aの γ β制限器 202は、仮値操作量 Mvir_ over, Fvir_overにより仮想外力仮値 Mvirtmp, Fvirtmpを補正することにより仮想外力 Mvir, Fvirを決定する(より一般的に言えば、 Mvir_overと Mvirtmpとの線形結合、並 びに、 Fvir_overと Fvirtmpとの線形結合によってそれぞれ Mvir, Fvirを決定する)よう にしたが、次のようにして、仮想外力 Mvir, Fvirを決定するようにしてもよい。図 10は その処理を説明するための機能ブロック図である。
[0209] 同図を参照して、この例では、仮想外力仮値決定部 201、予測演算部 203、 γ不 感帯処理部 204、 j8不感帯処理部 205、処理部 206の処理は、図 9のものと同じで ある。一方、本例では、処理部 206で求められた仮値操作量 Fvir_over, Mvir_overは それぞれ処理部 208, 209に入力され、該処理部 208, 209において、仮想外力仮 値 Mvirtmp, Fvirtmpをそれぞれ補正するための補正係数 Kattl (≥0) , Katt2 (≥0) が決定される。これらの補正係数 Kattl , Katt2は、それぞれ仮想外力仮値 Mvirtmp, Fvirtmpに乗じる補正係数である。なお、図中に示す処理部 208に係わるグラフは、 Mvir_overと Katt 1との関係を例示するグラフであり、該グラフに関する横軸方向の値 は Mvir_overの値、縦軸方向の値は Kattlの値である。同様に、図中に示す処理部 2 09に係わるグラフは、 Fvir_overと Katt2との関係を例示するグラフであり、該グラフに 関する横軸方向の値は Fvir_overの値、縦軸方向の値は Katt2の値である。
[0210] 処理部 208の処理では、図中のグラフで示す如ぐ Mvir_overが 0であるときには、 Kattl = lとされ、 Mvir_overの絶対値力Oから増加するに伴い、 Kattlの値が 1から 0 まで単調に減少するように Kattlの値が設定される。そして、 Kattlの値は、 Mvir.over の絶対値が所定値 (Kattlが 0に達する値)を超えると 0に維持される。
[0211] 同様に、処理部 209の処理では、図中のグラフで示す如ぐ Fvir_overが 0であるとき
には、 Katt2 = lとされ、 Fvir_overの絶対値力 Oから増加するに伴い、 Katt2の値が 1 力 0まで単調に減少するように Katt2の値が設定される。そして、 Katt2の値は、 Fvir _overの絶対値が所定値 (Katt2が 0に達する値)を超えると 0に維持される。
[0212] 次いで、上記の如く決定された補正係数 Kattl, Katt2は、それぞれ乗算器 210, 2 11〖こて、仮想外力仮値 Mvirtmp、 Fvirtmpに乗算され、これ〖こより、仮想外力 Mvir, F virの今回値が決定される。
[0213] このように、図 10の例では、逸脱量 Mvir_overの絶対値が大きくなるに伴い、仮想外 力 Mvirの大きさを仮想外力仮値 Mvirtmpに対して絞る(0に近づける)ように仮想外 力 Mvirが決定される。同様に、逸脱量 Fvir_overの絶対値が大きくなるに伴い、仮想 外力 Mvirの大きさを仮想外力仮値 Mvirtmpに対して絞る(0に近づける)ように仮想 外力 Fvirが決定される。このように仮想外力 Mvir, Fvirを決定するということは、 γ da , j8 daの許容範囲からの逸脱力 仮想外力 Mvir, Fvirに起因するものであるとみなし て、 y da, j8 daの許容範囲 [ y damin, y damax] , [ β damin, j8 damax]からの逸脱を 抑制しつつ、状態量偏差 γ err, j8 errを 0に近づけるように仮想外力 Mvir, Fvirを決 定することを意味する。この場合は、規範操作量決定部 14において、前記した如ぐ 規範動特性モデル 16に入力するモデル前輪舵角 δ f_dを制限しておくことが望まし い。
[0214] また、以上説明した γ 制限器 202では、予測演算部 203で前記した如く式 01を 用いて求めた予測ョーレート γ daおよび予測車両重心点横すベり角 β daをそれぞれ 制限対象量とし、これらの γ da, β daを γ不感帯処理部 204、 β不感帯処理部 205 に入力して逸脱量 γ over, j8 overを求めた。ただし、 y da, j8 daの代わりに、規範ョ 一レート γ d、規範車両重心点横すベり角 β dの今回値、あるいは、実ョーレート γ ac 実車両重心点横すベり角 j8 actの今回値、あるいは、これらの値に、フィルタリング 処理を施した値を制限対象量として用いてもょ ヽ。
[0215] 例えば、各制御処理周期で γ daの代わりに γ dの今回値を γ不感帯処理部 204に 入力すると共に、規範動特性モデル 16で逐次算出される β dに、伝達関数が(1 +T 1 ' s)Z(l +T2 ' s)という形で表されるフィルタリング処理 (Tl, T2はある時定数、 sは ラプラス演算子)を施してなる値を 13 daの代わりに 13不感帯処理部 205に入力するよ
うにしてもよい。この場合、例えば T1>T2となるように時定数 Tl, Τ2を設定すると、 該フィルタリング処理は、いわゆる位相進み補償要素として機能する。このとき、ある 程度高い周波数域における β dの周波数成分の位相を進め、該周波数成分に対す るゲインを高めることによって、各制御処理周期で決定される j8 dの値自体が許容範 囲 [jSdamin, j8 damax]を逸脱する前から、 j8 overに応じて仮想外力 Mvir, Fvirを制 限することができる。
[0216] また、制限対象量としての γ da, β daを以下のように求めるようにしてもよい。すなわ ち、予測演算部 203では、次式 19a, 19bで示すように、適当な係数 cijを用いて γ d 、 β dの今回値を線形結合してなる値を γ da, β daとして求めるようにしてもよ 、。
[0217]
yda=cll- yd + cl2- j8d ……式 19a
yd+c22- j8d ……式 19b あるいは、次式 20a, 20bで示すように、適当な係数 cijを用いて γ(1、 d, Mvirtmp , Fvirtmp、および δ f_ltd2の今回値を線形結合してなる値を γ da, β daとして求める ようにしてもよい。
[0218]
yda=cll- yd + cl2- βά
+ cl3 · Mvirtmp + cl4 · Fvirtmp + cl5 · δ f ltd2 …… 20a
+ c23 · Mvirtmp + c24 · Fvirtmp + c25 · δ f ltd2 …… 20b なお、これらの式 20a, 20bは、前記した予測演算部 203の処理をより一般化して 表現したものである。
[0219] あるいは、次式 21a, 21bで示すように、適当な係数 cijを用いて γ act、 β actの今回 値を線形結合してなる値を γ da, β daとして求めるようにしてもょ 、。
[0220]
γ da=cll · γ act + cl2
# β act 式 2la
yact + c22- j8 act 式 21b 補足すると、式 02bから明らかなように、 c21 =— Lr/Vd、 c22 = l(ここで、 Vdは、 モデル車両の走行速度( =実走行速度 Vact) )とすれば、 β daは後輪の横滑り角に 相当する。
[0221] あるいは、次式 22a, 22bで示すように、適当な係数 cijを用いて、 γ d、 j8 d、 j8 dの 時間微分値 d β d/dt、 γ act, β act, β actの時間微分値 d β act/dt、 Mvirtmp, Fvirt mp、および δ f_ltd2の今回値を線形結合してなる値を γ da, β daとして求めるようにし てもよい。
[0222]
yda=cll- yd+cl2- jSd+clS-djSd/dt
+ cl4- yact + cl5- j8 act + cl6-d j8 act/dt
+ c 17 · Mvirtmp + c 18 · Fvirtmp + c 19 · δ f_ltd2 …… 22a
yda=c21- yd + c22- j8 d + c23-d j8 d/dt
+ c24 · γ act + c25 · j8 act + c26 · d j8 act/dt
+ c27 · Mvirtmp + c28 · Fvirtmp + c29 · δ f_ltd2 …… 22b あるいは、式 20aの右辺の演算結果の値と式 21aの右辺の演算結果の値との加重 平均値、並びに、式 20bの右辺の演算結果の値と式 21bの右辺の演算結果の値との 加重平均値をそれぞれ yda、 j8 daとして求めるようにしてもよい。なお、これは、式 22 a、式 22bにより γ da、 β daを求める場合の一 f列となる。また、式 20a、式 20b、ある!/ヽ は、式 22a、式 22bにおける Mvirtmp, Fvirtmpの項を省略してもよい。
[0223] あるいは、所定時間後までの各制御処理周期における γ d、 |8 dの予測値を前記式 01に基づいて求め、その求めた yd, j8dのうちのピーク値を yda, j8 daとして決定す るようにしてちょい。
[0224] さら【こ、式 20a,式 20b、ある!/ヽ ίま、式 21a,式 21b、ある!/ヽ ίま、式 22a,式 22bの!ヽ ずれを用いて γ da, β daを求める場合であっても、それらの式の係数 cijに、周波数 特性をもたせる(換言すれば cijを掛ける変数の値にローパスフィルタなどのフィルタリ
ング処理を施す)ようにしてもよい。あるいは、係数 cijを掛ける変数の値に、該変数の 時間的変化率の制限を掛けるようにしてもょ 、。
[0225] 補足すると、前記式 21a,式 21b、あるいは、式 22a,式 22bにより γ da, β daを決 定するようにした場合、その γ da, β daが、ある所定時間後の実車 1の実ョーレート γ act,実車両重心点横すベり角 j8 actの予測値としての意味を持つように各係数 cijを 設定することが望ましい。
[0226] また、規範動特性モデル 16が前記式 01で表されるように線形なモデルである場合 、 20a, 20b、ある!/ヽ ί¾、 ^21a, 21b、ある!/ヽ ί¾、 ^22a, 22bの!ヽずれを 用いても、実車 1あるいはモデル車両のある所定時間後のョーレートおよび車両重心 点横すベり角の予測値としての Ί da、 β daを適切に求めることができる。
[0227] なお、 γ da, β daの代わりに γ act, β actの今回値、もしくは、 γ act, β actにフィル タリング処理を施してなる値を用いた場合、あるいは、前記式 21a,式 21b、もしくは、 式 22a,式 22bにより γ da, j8 daを決定するようにした場合には、実車 1の実ョーレー ト γ actおよび実車両重心点横すベり角 β actの今回値もしくはフィルタリング値もしく は予測値力 それぞれ許容範囲 [ γ damin, y damax] , [ β damin, β damax]力ら逸 脱するのを抑制しつつ、状態量偏差 γ err, β errを 0に近づけるように仮想外力 Mvir , Fvirを決定することとなる。
[0228] 補足すると、仮想外力決定部 20aの処理では、より一般的には、次式 200により仮 想外力 Mvir, Fvirを決定するようにしてもよい。
[0229] [数 7]
Fvir — Kft>1 1 Kfb12 Kf 13 Kfb 14 Kfb15 Kfb16
—Mvir— Kft21 Kft22 fb23 Kfb24 Kfb25 Kfb26
fb_ (5 l '
+ ■8 f M2
Kfb— (5 2 '式 200
また、前記 γ β制限器 202の γ不感帯処理部 204および 13不感帯処理部 205に ぉ 、ては、それぞれ各別に γ da, β daの許容範囲 [ γ damin, γ damax] , [ β damin,
β damax]を設定して、逸脱量 γ over, β overを決定するようにしたが、 γ daと β daと の間の相関性を考慮し、 Ί da, β daの組に対して許容範囲 (許容領域)を設定して、 逸脱量 γ over, β overを決定するようにしてもよ!、。
[0231] 例えば図 11に示す如ぐ γ daを横軸、 j8 daを縦軸とする座標平面上での直線 1〜 4により囲まれた領域 A (平行四辺形状の領域)を γ da, β daの組の許容領域 Αとし て設定する。この場合、直線 1, 3は、それぞれ γ daの下限値、上限値を規定する直 線である。そのその下限値、上限値は、例えば前記 γ不感帯処理部 204における許 容範囲 [ γ damin, γ damax]の下限値 γ damin、上限値 γ damaxと同様に設定される 。また、直線 2, 4は、それぞれ j8 daの下限値、上限値を規定する直線である。このこ の例では、該下限値および上限値がそれぞれ γ daに応じてリニアに変化するように 設定される。そして、逸脱量 y over、 j8 overを例えば次のように決定する。すなわち、 y da, j8 daの組が、図 11に点 PIで示す如ぐ許容領域 A内に存するときには、 γ ove r= j8 over = 0とする。一方、 γ da, j8 daの組が、例えば図 11に点 P2で示す如ぐ許 容領域 A力も逸脱して 、る場合には、点 P2を通って所定の傾きを有する直線 5上の 点のうち、点 P2に最も近い許容領域 Aの境界の点 P3 (直線 5上で許容領域 A内に存 する点のうち、 P2に最も近い点 P3)を決定する。そして、点 P2における γ daの値と点 P3における γ daの値との差が逸脱量 γ overとして決定されると共に、点 P2における β daの値と点 Ρ3における 13 daの値との差が逸脱量 13 overとして決定される。なお、 γ da, β daの組に対応する点力 例えば図 11に示す点 P4であるような場合、すなわ ち、 γ da, β daの組に対応する点 Ρ4を通る所定の傾き(直線 5と同じ傾き)を有する 直線 6が、許容領域 Αと交わらないような場合 (直線 6上に許容範囲 Α内の点が存在 しない場合)には、該直線 6に最も近い許容領域 Aの境界の点 P5を決定する。そして 、点 P4における γ daの値と点 Ρ5における γ daの値との差を逸脱量 γ overとして決定 し、点 P4における 13 daの値と点 P5における 13 daの値との差を逸脱量 13 overとして決 定すればよい。
[0232] 補足すると、 γ da, β daの組の許容領域は、平行四辺形状の領域である必要ななく 、例えば、図 11に破線で示す如ぐ境界部を滑らかに形成した (角部を持たないよう に形成した)領域 A,であってもよ 、。
[0233] また、前記 γ j8制限器 202では、 γ da, j8 daの両者について、 [ γ damin, γ damax ] , [ β damin, j8 damax]からの逸脱量 y over, β overを求め、それに J心じて仮値 Mvir tmp, Fvirtmpを補正するようにしたが、 γ over, j8 overのいずれか一方だけに応じて 仮値 Mvirtmp, Fvirtmpを補正するようにしてもよい。この場合には、前記処理部 206 の処理において、 y over, j8 overのいずれか一方の値を 0に固定して、仮値操作量 Mvir_over, Fvir_overを求めるようにすればよ!、。
[0234]
次に、ァクチユエータ動作 FB目標値決定部 20bの処理を図 12〜図 14を参照して 説明する。なお、以降の説明では、各車輪 W1〜W4を第 n輪 Wn(n= l, 2, 3, 4)と いうことがある。
[0235] 図 12は、該ァクチユエータ動作 FB目標値決定部 20bの処理を示す機能ブロック図 である。同図を参照して、ァクチユエータ動作 FB目標値決定部 20bは、まず、処理部 220にお 、て、入力された状態量偏差 γ err, β errに応じて、該状態量偏差 γ err, j8 errを 0に近づけるために実車 1の重心点 Gのまわりに発生させるべきョー方向のモ 一メントの基本要求値であるフィードバックョーモーメント基本要求値 Mlbdmdを実車 1のァクチユエータ装置 3に対するフィードバック制御入力の基本要求値として決定 する。
[0236] Mlbdmdは、状態量偏差 γ err, β errからフィードバック制御則により決定される。具 体的には、次式 23の如く、 j8 err, γ errからなるベクトル( β err, γ err)'に所定のゲイ ンマトリクス Klbdmdを乗じる( β err, γ errを線形結合する)ことにより、 Mlbdmdが決定 される。
[0237] [数 8]
β
Mfbdmd = Kfbdrnd -'式 23
err
但し、
Kfbdmd≡| Kfbdmdl Kfbdmd2 I
なお、 jS err, γ errと、 j8 errの 1階微分値 d j8 err/dtとに応じて Mlbdmdを決定するよ うにしてもよい。例えば、 jS err, γ err, d j8 err/dtからなるベクトルに適当なゲインマト
リクスを乗じる( j8 err, γ err, d err/dtを適当な係数によって線形結合する)ことで Μ i dmdを決定するようにしてもょ 、。
[0239] また、ゲインマトリクス Kl dmdの要素 Klbdmdlおよび Kl dmd2のうちの少なくともい ずれか一方に、伝達関数が( 1 +Tcl · s) Z ( 1 +Tc2 · s)で表される位相補償要素を 乗じるよう〖こしてもよい。例えば、 j8 errに乗じる Klbdmdlに上記位相補償要素を乗じ るようにして、且つ、 Tel >Tc2となるように時定数 Tel, Tc2の値を設定する。このよう にした場合には、 Klbdmdlを β errに乗じてなる項は、 β errとその微分値とを線形結 合したものをノヽィカットフィルタに通したものと等価になる。
[0240] 次!、で、ァクチユエータ動作 FB目標値決定部 20bは、この Ml dmdを不感帯処理 部 221に通すことによって、不感帯超過フィードバックョーモーメント要求値 MlbdmcLa を決定する。なお、図中の不感帯処理部 221のグラフは、 Mlbdmdと MlbdmcLaとの関 係を例示するグラフであり、該グラフに関する横軸方向の値は Mlbdmdの値、縦軸方 向の値は MlbdmcLaの値である。
[0241] 本参考例 1では、実車 1のァクチユエータ装置 3のフィードバック制御においては、 状態量偏差 0 err, errを 0に近づけるために、主に、ァクチユエータ装置 3のうちの 駆動.制動装置 3Aのブレーキ装置を操作する。この場合、上記の如く決定される Mf bdmdに応じてブレーキ装置を操作すると、該ブレーキ装置が頻繁に操作される恐れ がある。本参考例 1では、これを防止するために、 Mlbdmdを不感帯処理部 221に通 して得られる不感帯超過フィードバックョーモーメント要求値 MlbdmcLaに応じてブレ ーキ装置を操作することとした。
[0242] 該不感帯処理部 221の処理は、具体的には次のように実行される。すなわち、該不 感帯処理部 221は、 Mlbdmdの値力 ^近傍に定めた所定の不感帯に存するときには 、 Mlbdmd_a=0とする。また、 Mlbdmdが該不感帯の上限値(>0)よりも大きいときに は、 MlbdmcLa = Mlbdmd—上限値とし、 Mlbdmdが該不感帯の下限値(< 0)よりも小さ いときには、 MlbdmcLa = Mlbdmd—下限値とする。換言すれば、 Mlbdmdの不感帯か らの超過分を MlbdmcLaとして決定する。このようにして決定される MlbdmcLaに応じて 駆動 ·制動装置 3Aのブレーキ装置を操作するようにすることで、状態量偏差 γ err, β errに応じたブレーキ装置の頻繁な操作を抑制しつつ、該状態量偏差 γ err, β err
を 0に近づけるようにブレーキ装置を操作できる。なお、不感帯処理部 221の処理を 省略し、 Mlbdmdをそのまま、 Ml dmd_aとして用いてもよい。
[0243] 次いで、この不感帯超過フィードバックョーモーメント要求値 Ml dmcLaに応じて、前 記ァクチユエータ動作 FB目標値 (ァクチユエータ装置 3に対するフィードバック制御 入力)を決定する処理がァクチユエータ動作 FB目標値分配処理部 222により実行さ れる。
[0244] 該ァクチユエータ動作 FB目標値分配処理部 222は、その処理を概略的に説明す ると、実車 1の重心点のまわりに MlbdmcLaを発生させるように(ひいては y err, j8 err を 0に近づけるように)、駆動 ·制動装置 3Aのブレーキ装置の動作による各車輪 W1 〜W4の駆動'制動力のフィードバック目標値( γ err, β errを 0に近づけるためのブレ ーキ装置のフィードバック制御入力)である FB目標第 n輪ブレーキ駆動 ·制動力 Fxlb dmd_n (n= l, 2, 3, 4)を決定する。あるいは、 Fxl dmd— n (n= 1, 2, 3, 4)にカロえて 、ステアリング装置 3Bの動作による前輪 Wl, W2の横力のフィードバック目標値であ るアクティブ操舵用 FB目標横カ Fyibdmd_i¾決定する。
[0245] この場合、本参考例 1では、不感帯超過フィードバックョーモーメント要求値 Mlbdmd _aが正方向のモーメント(実車 1の上方から見て反時計まわり方向のモーメント)である 場合には、基本的には、実車 1の左側の車輪 Wl, W3の駆動'制動力を制動方向に 増加させ、それによつて、実車 1の重心点 Gのまわりに Ml dmcLaを発生させるように F B目標第 n輪ブレーキ駆動 ·制動力 Fxl dmd_n (n= l, 2, 3, 4)が決定される。さらに 、このとき、実車 1の重心点 Gのまわりに MlbdmcLaを発生させるための左側の車輪 W 1, W3に関する FB目標第 1輪ブレーキ駆動'制動力 Fxl dnuUおよび FB目標第 3 輪ブレーキ駆動.制動力 Fxl dmd_3は、そのそれぞれの変化と、 MlbdmcLaとの変化と の関係が比例関係になるように決定される。以降、この比例関係における MlbdmcLa の変化に対する Fxl dmd_l、 Fxl dmd_3のそれぞれの変化の割合を、それぞれ前輪 側ゲイン GA1、後輪側ゲイン GA3という。本実施形態では、 MlbdmcLaが正方向のモ 一メントである場合に、 Fxl dmd_l、 Fxl dmd_3は、それぞれ MlbdmcLaに GA1、 GA3 を乗じた値 (MlbdmcLaに比例する値)に決定される。
[0246] また、 MlbdmcLaが負方向のモーメント(実車 1の上方から見て時計まわり方向のモ
ーメント)である場合には、基本的には、実車 1の右側の車輪 Wl, W3の駆動'制動 力を制動方向に増加させ、それによつて、実車 1の重心点 Gのまわりに Ml dmcLaを発 生させるように FB目標第 n輪ブレーキ駆動 ·制動力 Fxl dmd_n (n= l, 2, 3, 4)が決 定される。さらに、このとき、実車 1の重心点 Gのまわりに MlbdmcLaを発生させるため の右側の車輪 W2, W4に関する FB目標第 2輪ブレーキ駆動 ·制動力 Fxlbdmd_2およ び FB目標第 4輪ブレーキ駆動'制動力 Fxlbdmd_4は、そのそれぞれの変化と、 Ml d md_aとの変化との関係が比例関係になるように決定される。以降、この比例関係にお ける MlbdmcLaの変化に対する Fxl dmd_2、 Fxl dmd_4のそれぞれの変化の割合を、 それぞれ前輪側ゲイン GA2、後輪側ゲイン GA4という。本実施形態では、 Ml dmd.a が負方向のモーメントである場合に、 Fxl dmd_2、 Fxl dmd_4は、それぞれ MlbdmcLa に GA2、 GA4を乗じた値(MlbdmcLaに比例する値)に決定される。
[0247] 以降の説明では、図 13に示す如ぐ実車 1の前輪 Wl, W2の間隔 (すなわち前輪 Wl, W2のトレッド)を df、後輪 W3, W4の間隔(すなわち後輪 W3, W4のトレッド)を dr、前輪 Wl, W2の実舵角(実前輪舵角)を δ f_actとする。また、実車 1を上方から見 たときに、第 n輪 Wnの前後方向と直交する方向(水平面上で直交する方向)での該 第 n輪 Wnと実車 1の重心点 Gとの距離を Ln (n= l, 2, 3, 4)とする。また、本参考例 1では、後輪 W3, W4は非操舵輪であるので図示は省略する力 後輪 W3, W4の実 舵角(実後輪舵角)を δ r_actとする。本参考例 1では、 δ r_act=0であり、 L3=L4 = drZ2である。
[0248] なお、図 13中の Lfは、実車 1の重心点 Gと前輪 Wl, W2の車軸との前後方向距離 、 Lrは実車 1の重心点 Gと後輪 Wl, W2の車軸との前後方向距離である。これらの Lf , Lrの値は、前記図 3で示したモデル車両に関する Lf, Lrの値と同じである。
[0249] ァクチユエータ動作 FB目標値分配処理部 222の処理を以下に具体的に説明する 。まず、実車 1の直進走行状態( S f_act = 0であるときの走行状態)を想定し、この直 進走行状態で、実車 1の重心点 Gまわりに、 MlbdmcLaに等しいョー方向のモーメント を発生させるために必要な第 n輪 Wn(n= l, 2, 3, 4)の駆動'制動力である第 n輪 駆動'制動力フル要求値 Fxfolll dmcLnをそれぞれ処理部 222a_n (n= l, 2, 3, 4)に より決定する。
[0250] 具体的には、 Fxiulli dmd_n (n= l, 2, 3, 4)は、各処理部 222a_nにおいて、次式 2 4a〜24dの乗算演算により決定される。
[0251]
Fxlulli dmdJ = - (2/df) · Ml dmd— a ……式 24a
Fxlulli dmd_2 = (2/df) · Mlbdmd— a ……式 24b
Fxfolll dmd— 3 = - (2/dr) · Mlbdmd— a ……式 24c
Fxlulli dmd_4= (2/dr) -Mlbdmd.a ……式 24d 次いで、ァクチユエータ動作 FB目標値分配処理部 222は、実前輪舵角 S f— actに 応じて、第 1輪分配比率補正値 Kl_strおよび第 2輪分配比率補正値 K2_strをそれぞ れ処理部 222b_l, 222b_2において決定すると共に、実後輪舵角 δ r_actに応じて、 第 3輪分配比率補正値 K3_strおよび第 4輪分配比率補正値 K4_strをそれぞれ処理 部 222b_3, 222b_4において決定する。これらの第 n輪分配比率補正値 Kn_str(n= 1 , 2, 3, 4)は、それぞれ Fxfolll dmcLnに乗じる補正係数である。
[0252] ここで、実前輪舵角 δ f_actが 0から変化すると、実車 1の重心点 Gのまわりに Ml dm d_aに等しいョー方向のモーメントを発生する第 1輪 W1および第 2輪 W2の駆動'制 動力は、それぞれ前記式 24a, 24bにより決定される Fxfolll dmd_l、 Fxfolll dmd_2か ら変化する。同様に、後輪 W3, W4が操舵輪である場合には、実後輪舵角 δ r_actが 0から変化すると、実車 1の重心点 Gのまわりに Ml dmcLaに等し!/、ョ一方向のモーメ ントを発生する第 3輪 W3および第 4輪 W4の駆動'制動力は、それぞれ前記式 24c, 24dにより決定される Fxfolll dmd_3、 Fxfolll dmd_4から変化する。第 n輪分配比率補 正値 Kn_strは、基本的には、このような舵角の影響を考慮して Fxfolll dmd_n (n= l, 2, 3, 4)を補正し、 Ml dmcLaに等しいか、もしくはこれに近いョー方向のモーメントを 実車 1の重心点 Gのまわりに発生する第 n輪 Wnの駆動 '制動力を決定するための補 正係数である。
[0253] ただし、本参考例 1では、後輪 W3, W4は非操舵輪であるので、常に δ r_act = 0で ある。このため、 K3_strおよび K4_strは実際には、常に「1」に設定される。従って、処 理部 222b_3, 222b_4は省略してもよい。
[0254] 一方、前輪 Wl, W2に関する Kl_str, K2_strは、それぞれ処理部 222b_l, 222b_2 において次のように決定される。すなわち、まず、図 13に示した LI, L2の値力 あら 力じめ設定された df, Lfの値と、 δ f_actの値と力 、次式 25a, 25bの幾何学演算によ り算出される。なお、この演算における S f_actの値としては、センサ'推定器 12で検 出または推定された値 (今回値)を用いればよいが、実車 1の前輪 Wl, W2の舵角の 目標値 (各制御処理周期で最終的に決定される目標値)の前回値を使用してもよ!ヽ 。また、ステアリング装置 3Bが、機械式ステアリング装置である場合には、該機械式ス テアリング装置のオーバーオールステアリング比と前記運転操作入力のうちのステア リング角 Θ hとから決定してもよい。あるいは、前記規範操作量決定部 14の処理部 14 aで決定した無制限時前輪舵角 δ Lunltdの今回値を使用してもよい。
[0255]
L丄 = (df/ 2) 'cos δ f— act— Lf'sin δ f— act 式 25a
L2= (df/2) - cos δ f_act+Lf-sin δ f act ……式 25b ここで、前輪 Wl, W2のそれぞれの駆動'制動力に LI, L2をそれぞれ乗じたもの 力 実車 1の重心点 Gのまわりに発生するョ一方向のモーメントである。従って、基本 的には、 Kl_str= (df/2) /Ll, K2_str= (dfZ2)ZL2として、これらをそれぞれ Fxf ulllbdmd_l、 Fxfolll dmd_2に乗じることで、重心点 Gのまわりに Ml dmd_aに等しいョー 方向のモーメントを発生させる前輪 Wl, W2の駆動'制動力を決定できる。
[0256] ただし、このようにすると、 L1または L2力 S小さいときに、 Kl_strまたは K2_strが過大 になって、状態量偏差 Ί err, β errに応じた実車 1の全体のフィードバックループゲイ ンが過大になり、制御系の発振などが生じやすい。
[0257] そこで、本参考例 1では、次式 26a, 26bにより、 Kl_str, K2_strを決定する。
[0258]
Kl_str= (df/2) /max (LI, Lmin) ……式 26a
K2_str= (df/2) /max (L2, Lmin) ……式 26b ここで、式 26a、式 26b【こお!ヽて、 max (a, b) (a, biま一般変数) ίま、変数 a, bのうち
の大きい方の値を出力する関数、 Lminは、 dfZ2よりも小さい正の定数である。これに より、 KLstr, K2_strが過大になるのを防止した。換言すれば、本参考例 1では、(df /2) /Lmin ( > l) ^Kl_str, K2_strの上限値とし、この上限値以下で、実前輪舵 δ f_ actに応じて Kl_str, K2_strが設定される。
[0259] なお、本参考例 1では、後輪 W3, W4は非操舵輪であるので、前記した通り K3_str
=K4_str= lである。ただし、後輪 W3, W4が操舵輪である場合には、実前輪舵角 δ f_actに応じて上記の如く Kl_str, K2_strを設定した場合と同様に、実後輪舵角 δ r_ac tに応じて K3_str, K4_strを設定することが望まし!/、。
[0260] 次いで、ァクチユエータ動作 FB目標値分配処理部 222は、処理部 222c_n (n= 1, 2, 3, 4)において、第 n輪分配ゲイン Knを実前輪横すベり角 iS Lact (今回値)もしく は実後輪横すベり角 i8 r_act (今回値)に応じて決定する。この Knは、これを第 η輪駆 動 ·制動力フル要求値 Fxfolll dmcLnに乗じることで、 Fxfolll dmd_nを補正する補正係 数( 1よりも小さ!、正の値)である。
[0261] この場合、第 n輪分配ゲイン Knは、各処理部 222c_nにお ヽて次のように決定される
[0262] 実車 1の左側で前後に配置される第 1輪 W1および第 3輪 W3に関する第 1輪分配 ゲイン K1と第 3輪分配ゲイン K3とは、それぞれ図 14 (a) , (b)の実線のグラフで示す 如く jS !Lact, j8 r_actに応じて実質的に連続的に変化するように決定される。また、実 車 1の右側で前後に配置される第 2輪 W2および第 4輪 W4に関する第 2輪分配ゲイ ン K2と第 4輪分配ゲイン K4とは、それぞれ図 14 (a) , (b)の破線のグラフで示す如く j8 f_act, j8 r_actに応じて実質的に連続的に変化するように決定される。なお、 Knは、 いずれも 1よりも小さい正の値である。また、「実質的に連続」というのは、アナログ量 を離散系で表したときに必然的に生じる値の飛び (量子化)は、アナログ量の連続性 を損なうものではな ヽと 、うことを意味する。
[0263] この場合、さらに詳細には、第 1輪分配ゲイン K1および第 3輪分配ゲイン K3に関し 、K1は、図 14 (a)の実線のグラフで示す如ぐ j8 f_actが負の値力 正の値に増加す るに伴い、所定の下限値力 所定の上限値まで単調に増加していくように β Lactの 値に応じて決定される。従って、 K1は、 j8 f_actが正の値であるときに、負の値である
ときよりも値が大きくなるように決定される。
[0264] 一方、 K3は、図 14 (b)の実線のグラフで示す如ぐ j8 r_actが負の値力も正の値に 増加するに伴い、所定の上限値力 所定の下限値まで単調に減少していくように β r _actの値に応じて決定される。従って、 K3は、 j8 r_actが負の値であるときに、正の値 であるときよりも値が大きくなるように決定される。
[0265] なお、図 14 (a) , (b)の実線のグラフは、 j8 f_act, j8 r_actが互いに一致もしくはほぼ 一致するとき、それらの jS Lact, j8 r_actに対応する Kl, K3の値の和がほぼ 1になる ように設定されている。
[0266] また、第 2輪分配ゲイン K2および第 4輪分配ゲイン K4に関し、 K2は、図 14 (a)の 破線のグラフで示す如ぐ j8 f_actが負の値力 正の値に増加するに伴い、所定の上 限値カゝら所定の下限値まで単調に減少して ヽくように β f_actの値に応じて決定される 。この場合、 K2と β f_actとの関係を表す破線のグラフ力 K1と |8 f_actとの関係を表 す実線のグラフを、縦軸 ( β f_act = 0の線)を中心にして左右を反転させてなるグラフ と同じである。従って、 j8 f_actの各値における K2の値は、 j8 f_actの正負を反転させた 値における K1の値に等しくなるように決定される。
[0267] また、 K4は、図 14 (b)の破線のグラフで示す如ぐ β r_actが負の値から正の値に 増加するに伴 、、所定の下限値力 所定の上限値まで単調に増加して 、くように |8 r _actの値に応じて決定される。この場合、 K4と |8 r_actとの関係を表す破線のグラフが 、 K3と β r_actとの関係を表す実線のグラフを、縦軸 ( β r_act = 0の線)を中心にして 左右を反転させてなるグラフと同じである。従って、 j8 r_actの各値における K4の値は 、 β r_actの正負を反転させた値における Κ3の値に等しくなるように決定される。
[0268] 以上のように第 n輪分配ゲイン Kn (n= l, 2, 3, 4)を決定することで、実車 1の定常 走行時など、 β Lactと β r_actとがほぼ同じ値となる状況では、前輪 W1に対応する第 1輪分配ゲイン K1と該前輪 W1の真後ろの後輪 W3に対応する第 3輪分配ゲイン K2 との比率が、 K1と K3との和をほぼ一定に保ちつつ、 13 f_actおよび 13 r_actの変化に 対して単調に変化することとなる。同様に、前輪 W2に対応する第 2輪分配ゲイン K2 と該前輪 W2の真後ろの後輪 W4に対応する第 4輪分配ゲイン K4との比率力 K2と K4との和をほぼ一定に保ちつつ、 β f_actおよび β r_actの変化に対して単調に変化
することとなる。
[0269] 第 n輪分配ゲイン Kn (η=1, 2, 3, 4)を β fact, β r_actに応じて上記の如く決定す る理由については後述する。
[0270] 補足すると、本実施形態では、 i8f_act, r_actをそれぞれ前輪側ゲイン調整パラメ ータ、後輪側ゲイン調整パラメータとして用い、それに応じて上記の如く第 n輪分配ゲ イン Knを変化させるようにしている。そして、これによつて、後述する如ぐ前記前輪 側ゲイン GA1, GA2を前輪側ゲイン調整パラメータとしての iSLactに応じて変化させ 、また、後輪側ゲイン GA3, GA4を後輪側ゲイン調整パラメータとしての |8r_actに応 じて変化させるようにしている。この場合、 j8f_actは、前輪 Wl, W2の横方向運動に 関する状態量としての意味を持ち、 j8r_actは、後輪 W3, W4の横方向運動に関する 状態量としての意味を持つ。なお、前輪 Wl, W2に関する第 n輪分配ゲイン Kn(n= 1, 2)をそれぞれ決定するために、各前輪 Wl, W2毎に検出または推定された |8f_a ctを使用してもよ 、が、 V、ずれか一方の前輪 W1または W2につ 、て検出または推定 された j8f_act、あるいは、各前輪 Wl, W2毎に検出または推定された |8f_actの平均 値 _を実前輪横すベり角の代表値とし、この代表値に応じて分配ゲイン Kl, K2の両 者を決定するようにしてもよい。このことは、後輪 W3, W4に関する分配ゲイン K3, K 4を決定する場合にっ 、ても同様である。
[0271] 上記の如く Kn_str、 Kn(n=l, 2, 3, 4)を決定した後、ァクチユエータ動作 FB目標 値分配処理部 222は、各第 η輪駆動'制動力フル要求値 Fxfolll dmd_n(n=l, 2, 3 , 4)に、処理部 222b_n、 222c_n〖こてそれぞれ、 Kn_str、 Knを乗じることで、第 n輪分 配駆動 ·制動力基本値 Fxl jiを決定する。すなわち、第 n輪分配駆動,制動力基本 値 Fxl — n(n=l, 2, 3, 4)を次式 27a〜27dにより決定する。
Fxl _l = Fxfo編 md— 1 · Kl— str · K 1
Fxl _2 = Fxfo編 md— 2 · K2_str · K2
Fxlb— 3 = Fxfo編 md— 3 · K3— str · K3
Fxl _4 = Fxfolll dmd— 4 · K4— str · K4
なお、このように Fxlb_n(n=l, 2, 3, 4)を決定したとき、 MlbdmcLa >0であるときに は、左側の車輪 Wl, W3に係わる Fxl _l, Fxl _3が制動方向の駆動 '制動力(負の 駆動 '制動力)となり、右側の車輪 W2, W4に係わる Fxl _2, Fxl _4が駆動方向の駆 動'制動力(正の駆動 ·制動力)となる。また、 MlbdmcLaく 0であるときには、左側の車 輪 Wl, W3に係わる Fxl _l, Fxl _3が駆動方向の駆動 '制動力(正の駆動 '制動力) となり、右側の車輪 W2, W4に係わる Fxl _2, Fxl _4が制動方向の駆動 '制動力(負 の駆動 ·制動力)となる。さらに、第 n輪分配駆動'制動力基本値 Fxl jiはいずれも、 MlbdmcLaに比例するものとなる。
[0273] 次 、で、ァクチユエータ動作 FB目標値分配処理部 222は、上記の如く決定した第 n輪分配駆動'制動力基本値 Fxl _n(n=l, 2, 3, 4)を、それぞれ第 n輪 Wnに対応 するリミッタ 222d_nに通すことにより、駆動 ·制動装置 3Aのブレーキ装置の動作によ る第 n輪 Wnの駆動 ·制動力のフィードバック目標値である FB目標第 n輪ブレーキ駆 動 ·制動力 Fxl dmcLnをそれぞれ決定する。
[0274] ここで、図 12中の各リミッタ 222d_n(n=l, 2, 3, 4)のグラフは、 Fxl _nと FxlbdmcLn との関係を表すグラフであり、該グラフに関する横軸方向の値が Fxl jiの値、縦軸方 向の値が FxlbdmcLnの値である。
[0275] このリミッタ 222d_nは、それに入力される Fxl _nの値が 0または負の値であるときに のみ、 Fxl _nをそのまま FxlbdmcLnとして出力し、 Fxlb_nが正の値であるときには、そ の Fxlb_nの値によらずに出力する FxlbdmcLnの値を 0とする。換言すれば、 0を上限 値として Fxl _nに制限を掛けることにより FxlbdmcLnを決定する。
[0276] 上記のように FB目標第 n輪ブレーキ駆動 ·制動力 Fxl dmdjiをそれぞれ決定するこ とにより、前記したように、 Mlbdmd_a>0である場合には、実車 1の左側の車輪 W1, W3の駆動.制動力を制動方向に増加させ(Fxlbdmd_l<0、 Fxlbdmd_3く 0とする)、 それによつて、実車 1の重心点 Gのまわりに MlbdmcLaを発生させるように FB目標第 n 輪ブレーキ駆動'制動力 FxlbdmcLn (n=l, 2, 3, 4)が決定される。なお、この場合 には、右側の車輪 W2, W4に関しては、本参考例 1では Fxl dmd_2=Fxi dmd_4=0 とされる。
[0277] そして、この場合における左側の車輪 Wl, W3に関する Fxl dmd_l、 Fxl dmd_3は
それぞれ、前記式 27a, 27cにより決定される Fxl _l、 Fxl _3に等しい。従って、 Ml d md_a>0である場合における左側の車輪 Wl, W3に関する Fxlbdmd_l、 Fxlbdmd_3は それぞれ MlbdmcLaに比例する。ひいては、 MlbdmcLaの変化と Fxlbdmd_l、 Fxlbdmd. 3のそれぞれの変化との関係が比例関係になる。さらに、この場合、前記式 24aと式 2 7aとから明らかなように、前輪 W1に関する前輪側ゲイン GA1は、 GA1 =— (2Zdf) •Kl_str'Klであるから、 K1に比例する。そして、この K1は、前記したように前輪側 ゲイン調整パラメータとしての実前輪横すベり角 β f_actに応じて変化するように決定 されるので、前輪側ゲイン GA1も、 j8 f_actに応じて変化することとなる。従って、 Fxlbd md_lは、 MlbdmcLaの変化と FxlbdmcLlの変化との関係が比例関係になり、且つ、そ の比例関係における前輪側ゲイン GA1が前輪側ゲイン調整パラメータとしての β f ac tに応じて変化するように決定されていることとなる。同様に、前記式 24cと式 27cとか ら明らかなように、後輪 W3に関する後輪側ゲイン GA3は、 GA3=— (2Zdr) -K3_st r'K3であるから、 K3に比例する。そして、この Κ3は、前記したように後輪側ゲイン調 整パラメータとしての実後輪横すベり角 β r_actに応じて変化するように決定されるの で、後輪側ゲイン GA3も、 j8 r_actに応じて変化することとなる。従って、 Fxl dmd_3は 、 MlbdmcLaの変化と Fxl dmd_3の変化との関係が比例関係になり、且つ、その比例 関係における後輪側ゲイン GA3が後輪側ゲイン調整パラメータとしての β r_actに応 じて変化するように決定されて 、ることとなる。
[0278] また、 MlbdmcLaく 0である場合には、実車 1の右側の車輪 W2, W4の駆動'制動力 を制動方向に増加させ (Fxl dmd_2< 0、 Fxl dmd_4< 0とする)、それによつて、実車 1の重心点 Gのまわりに MlbdmcLaを発生させるように FB目標第 n輪ブレーキ駆動 ·制 動力 Fxl dmd_n (n= l, 2, 3, 4)が決定される。なお、この場合には、左側の車輪 W 1, W3に関しては、本参考例 1では、 FxlbdmcLl =Fxl dmd_3 = 0とされる。
[0279] そして、この場合における右側の車輪 W2, W4に関する Fxl dmd_2、 Fxl dmd_4は それぞれ、前記式 27b, 27dにより決定される Fxl _2、 Fxl _4に等しい。従って、 Mlbd md_aく 0である場合における右側の車輪 W2, W4に関する Fxlbdmd_2、 Fxlbdmd_4は それぞれ MlbdmcLaに比例する。ひいては、 MlbdmcLaの変化と Fxlbdmd_2、 Fxlbdmd. 4のそれぞれの変化との関係が比例関係になる。さらに、この場合、前記式 24bと式 2
7bとから明らかなように、前輪 W2に関する前輪側ゲイン GA2は、 GA2= (2/df) · K2_str'K2であるから、 K2に比例する。そして、この Κ2は、前記したように前輪側ゲ イン調整パラメータとしての実前輪横すベり角 f actに応じて変化するように決定さ れるので、前輪側ゲイン GA2も、 j8 f_actに応じて変化することとなる。従って、 Fxl dm d_2は、 Ml dmcLaの変化と Fxl dmd_2の変化との関係が比例関係になり、且つ、その 比例関係における前輪側ゲイン GA2が前輪側ゲイン調整パラメータとしての β f_act に応じて変化するように決定されていることとなる。同様に、前記式 24dと式 27dと力 ら明らかなように、後輪 W4に関する後輪側ゲイン GA4は、 GA4= (2/dr) -K4_str- K4であるから、 Κ4に比例する。そして、この Κ4は、前記したように後輪側ゲイン調整 パラメータとしての実後輪横すベり角 β r_actに応じて変化するように決定されるので 、後輪側ゲイン GA4も、 j8 r_actに応じて変化することとなる。従って、 Fxl dmd_4は、 MlbdmcLaの変化と Fxlbdmd_4の変化との関係が比例関係になり、且つ、その比例関 係における後輪側ゲイン GA4が後輪側ゲイン調整パラメータとしての β r_actに応じ て変化するように決定されて 、ることとなる。
[0280] また、 、ずれの場合でも、前記第 n輪分配ゲイン Kn (η= 1, 2, 3, 4)は、 β f_acほ たは β r_actに応じて実質的に連続的に変化するように決定されるので、 Fxl dmcLnが 不連続的に変化するような事態が防止される。
[0281] また、 Ml dmd_a>0となる場合での実車 1の定常走行時など、 13 f_actと 13 r_actとが ほぼ同じ値となる状況では、左側の前輪 W1および後輪 W3に対応する第 1輪分配ゲ イン K1と第 3輪分配ゲイン K2との比率、ひいては、前輪側ゲイン GA1と後輪側ゲイ ン GA3との比率である前後車輪比率が、 13 f_actおよび 13 r_actの値の変化に対して 単調に変化することとなる。同様に、 MlbdmcLaく 0となる場合での実車 1の定常走行 時など、 β Lactと β r_actとがほぼ同じ値となる状況では、右側の前輪 W2および後輪 W4に対応する第 2輪分配ゲイン K2と第 4輪分配ゲイン K4との比率、ひいては、前 輪側ゲイン GA2と後輪側ゲイン GA4との比率である前後車輪比率力 β f_actおよび ι8 r_actの値の変化に対して単調に変化することとなる。
[0282] ここで、第 n輪分配ゲイン Kn (n= l, 2, 3, 4)を j8 f_act, β r_actに応じて前記したよ うな傾向で決定した理由を以下に説明する。
[0283] まず、 Ml dmd_a>0である場合には、前記したように実車 1の左側の車輪である第 1 輪 W1および第 3輪 W3の駆動 ·制動力を制動方向に増加させるように FB目標第 n輪 ブレーキ駆動 ·制動力 Fxl dmcLnが決定されることとなる。
[0284] そして、この場合に、 β f_act< 0, β r_act< 0となる状況を想定する。このような状況 で、仮に K1の値を大きめに設定する(ひいては FxlbdmcLlが制動方向に大きくなるよ うにする)と共に、 K3の値を小さめに設定する(ひ 、ては Fxlbdmd_3が制動方向に大 きくなるのを抑制する)と、第 1輪 W1の横力(これは Ml dmcLaと同方向のモーメントを 実車 1の重心点まわりに発生させるように機能する)が小さくなり、また、第 3輪 W3の 横力(これは Ml dmcLaと逆方向のモーメントを実車 1の重心点まわりに発生させるよう に機能する)が大きめになる。このため、実車 1の重心点 Gのまわりに、 MlbdmcLaによ り要求される正方向のモーメント (ョー軸まわりのモーメント)を十分に発生することが 困難となる恐れがある。そこで、 j8 f_actく 0, j8 r_actく 0となる状況では、第 1輪分配 ゲイン K1を小さめの値に決定すると共に、第 3輪分配ゲイン K3を大きめの値に決定 するようにした。
[0285] さらに、 MlbdmcLa >0である場合に、 j8 f_act>0, j8 r_act>0となる状況を想定する 。このような状況で、仮に K1の値を小さめに設定する(ひいては FxlbdmcLlが制動方 向に大きくなるのを抑制する)と共に、 K3の値を大きめに設定する(ひ ヽては Fxl dm d_3が制動方向に大きくなるようにする)と、第 1輪 W1の横力(これは Mfcdmd_aと逆方 向のモーメントを実車 1の重心点まわりに発生させるように機能する)が大きめになり、 また、第 3輪 W3の横力(これは MlbdmcLaと同方向のモーメントを実車 1の重心点まわ りに発生させるように機能する)が小さくなる。このため、実車 1の重心点 Gのまわりに 、 MlbdmcLaにより要求される正方向のモーメント(ョー軸まわりのモーメント)を十分に 発生することが困難となる恐れがある。そこで、 j8 f_act>0, |8 r_act>0となる状況で は、第 1輪分配ゲイン K1を大きめの値に決定すると共に、第 3輪分配ゲイン K3を小 さめの値に決定するようにした。
[0286] また、 Ml dmd_a< 0である場合には、前記したように実車 1の右側の車輪である第 2 輪 W2および第 4輪 W4の駆動 ·制動力を制動方向に増加させるように FB目標第 n輪 ブレーキ駆動 ·制動力 FxlbdmcLnが決定されることとなる。
[0287] そして、この場合に、 β f_act< 0, β r_act< 0となる状況を想定する。このような状況 で、仮に K2の値を小さめに設定する(ひ 、ては Fxl dmd_2が制動方向に大きくなるの を抑制する)と共に、 K4の値を大きめに設定する(ひいては Fxl dmd_4が制動方向に 大きくなるようにする)と、第 2輪 W2の横力(これは Ml dmcLaと逆向きのモーメントを実 車 1の重心点まわりに発生させるように機能する)が大きめになり、また、第 4輪 W4の 横力(これは MlbdmcLaと同じ向きのモーメントを実車 1の重心点まわりに発生させるよ うに機能する)が小さくなる。このため、実車 1の重心点 Gのまわりに、 MlbdmcLaにより 要求される負方向のモーメント(ョー軸まわりのモーメント)を十分に発生することが困 難となる恐れがある。そこで、 iS Lactく 0, j8 r_actく 0となる状況では、第 2輪分配ゲイ ン K2を大きめの値に決定すると共に、第 4輪分配ゲイン K4を小さめの値に決定する よつにした。
[0288] さらに、 Ml dmd_a< 0である場合に、 j8 f_act>0, j8 r_act>0となる状況を想定する 。このような状況で、仮に K2の値を大きめに設定する(ひいては Fxl dmd_2が制動方 向に大きくなるようにする)と共に、 K4の値を小さめに設定する(ひいては Fxlbdmd_4 が制動方向に大きくなるのを抑制する)と、第 2輪 W2の横力(これは Mi dmd_aと同じ 向きのモーメントを実車 1の重心点まわりに発生させるように機能する)が小さくなり、 また、第 4輪 W4の横力(これは MlbdmcLaと逆向きのモーメントを実車 1の重心点まわ りに発生させるように機能する)が大きめになる。このため、実車 1の重心点 Gのまわり に、 MlbdmcLaにより要求される負方向のモーメント(ョー軸まわりのモーメント)を十分 に発生することが困難となる恐れがある。そこで、 j8 f_act>0, j8 r_act>0となる状況 では、第 2輪分配ゲイン K2を小さめの値に決定すると共に、第 4輪分配ゲイン K4を 大きめの値に決定するようにした。
[0289] 以上のように、第 n輪分配ゲイン Kn (n= l, 2, 3, 4)を前記したように決定すること で、 MlbdmcLaのョ一方向モーメントを実車 1の重心点 Gのまわりに発生させる上で有 効となる横力が小さくなり過ぎないようにしつつ、 MlbdmcLaのョ一方向モーメントを実 車 1の重心点 Gのまわりに発生させる上で妨げとなる横力が過大にならないようにす ることがでさる。
[0290] また、前記のように第 n分配ゲイン Kn (n= 1, 2, 3, 4)を決定することで、実車 1の
定常円旋回時や定常直進時のように、 β f_actと B r_actとが一致またはほぼ一致する 状況では、 K1の値と K3の値との和、および K2の値と K4の値との和は、それぞれほ ぼ 1になる。このことは、 FB目標第 n輪ブレーキ駆動'制動力 Fxl dmcLnに従って忠 実に駆動'制動装置 3Aのブレーキ装置が動作すれば、 MlbdmcLa力 実車 1の重心 点 Gのまわりに実際に発生するモーメント(ョ一方向のモーメント)までの伝達関数の ゲインがほぼ 1になる(実際に発生するョ一方向のモーメントが Ml dmcLaにほぼ等しく なる)ことを意味する。
[0291] 補足すると、実車 1の過渡的な運動状況などにおいて、 β f_actと β r_actとの差が大 きくなることがある。そして、この場合には、 K1の値と K3の値との和、および K2の値 と K4の値との和は、それぞれ 1から大きくずれることとなる。これを解消するために、 K 1, K3の値を前記した如く決定した後、それらの値の比を一定に保ちながら Kl, K3 の値を修正して、その修正後の Kl, K3の値の和がほぼ 1になるか、あるいは、修正 前の Kl, K3の値の和よりも 1に近づくようにすることが好ましい。同様に、 K2, K4の 値を前記した如く決定した後、それらの値の比を一定に維持しつつ、 K2, K4の値を 修正して、その修正後の K2, K4の値の和がほぼ 1になる力 あるいは、修正前の K2 , K4の値の和よりも 1に近づくようにすることが好ましい。具体的には、例えば第 n分 配ゲイン Kn (n= l, 2, 3, 4)を前記図 14 (a) , (b)のグラフに従って決定した後、 K1 ' =K1Z (Kl +K3)、 K3, =K3/ (Kl +K3) , K2' =Κ2/ (Κ2+Κ4)、 Κ4, =Κ 4/ (Κ2+Κ4)によって、 Κ1,, Κ2' , Κ3' , Κ4,を求める。そして、 Κ , Κ2' , Κ3, , Κ4,をそれぞれ改めて、 Κ1, Κ2, Κ3, Κ4の値として決定するようにすればよい。
[0292] なお、この例では、 K1と Κ3との和、並びに、 Κ2と Κ4との和が常に、 1に維持される こととなるが、必ずしも、 1に一致させる必要はなぐそれらの和力 1の近傍の範囲内 の値になるように、 Κ1〜Κ4の値を修正するようにしてもよい。あるいは、 K1と Κ3との 和、並びに、 Κ2と Κ4との和がより 1に近づくように Κ1〜Κ4を修正するようにしてもよ い。
[0293] また、本参考例 1のァクチユエータ動作 FB目標値分配処理部 222は、前記したよう に FB目標第 η輪ブレーキ駆動'制動力 Fxl dmcLnを決定することにカ卩えて、前記フィ ードバックョーモーメント要求値 Ml dmdを処理部 222eに入力し、該処理部 222eに
より、ステアリング装置 3Bの動作による前輪 Wl, W2の横力のフィードバック目標値 であるアクティブ操舵用 FB目標横力 Fyl dmdj^決定する。ここで、図中の処理部 22 2eのグラフは、 Mlbdmdと FylbdmcLfとの関係を表すグラフであり、該グラフに関する横 軸方向の値が Mlbdmdの値、縦軸方向の値が FylbdmcLfの値である。このグラフに見 られるように、処理部 222eでは、基本的には、 Mlbdmdの増加に伴い、 Fyl dmdj^ 単調に増加していくように Fylbdmdj ^決定される。この場合、 FylbdmcLfは、処理部 2 22eに入力される Mlbdmdの値から、例えばマップを用いて決定される。
[0294] なお、 FylbdmcLfは、 Mlbdmdに所定のゲインを乗じることにより決定するようにしても よい。また、 FylbdmcLfは、所定の上限値(>0)と下限値(< 0)との間の範囲内で Mlb dmdに応じて決定するようにしてもょ 、。
[0295] 補足すると、処理部 222eの処理は、ステアリング装置 3Bがアクティブステアリング 装置である力機械式ステアリング装置であるかによらずに省略してもよ!/、。処理部 22 2eの処理によって、アクティブ操舵用 FB目標横力 Fyl dmdj^決定し、これに応じて ステアリング装置 3Bの動作を操作する場合には、 FB目標第 n輪ブレーキ駆動'制動 力 Fxlbdmd_n (n= l, 2, 3, 4)によって実車 1の重心点 Gのまわりに発生させようとす るョ一方向のモーメントと、アクティブ操舵用 FB目標横カ FylbdmcLfによって実車 1の 重心点 Gのまわりに発生するョ一方向のモーメントとの和が前記フィードバックョーモ 一メント基本要求値 Mlbdmdにほぼ等しくなるように、 Fxl dmd_n (n= l, 2, 3, 4)およ び FylbdmcLf^決定することがより好ましい。例えば、 Mlbdmdと Mlbdmd_aとの差に応 じてアクティブ操舵用 FB目標横カ Fyl dmdj^決定するようにしてもょ ヽ。この場合に は、 Ml dmd_a=0であるときに、 FylbdmcLfによって、実車 1の重心点 Gのまわりに Mlb dmdにほぼ等し!/、ョ一方向のモーメントを発生させるように Fyl dmdj^決定すること が望ましい。
[0296] 以上が本参考例 1におけるァクチユエータ動作 FB目標値決定部 20bの処理の詳 細である。この処理によって、前記した如ぐ Mlbdmdを 0に近づけるように(ひいては 状態量偏差 Ί err, β errを 0に近づけるように)、 FB目標第 n輪ブレーキ駆動 ·制動力 Fxlbdmd_n (n= l, 2, 3, 4)が、あるいは、 Fxl dmd_n (n= 1, 2, 3, 4)とアクティブ操 舵用 FB目標横カ FylbdmcLfとがァクチユエータ動作 FB目標値として決定される。
[0297] 補足すると、上記のようにァクチユエータ動作 FB目標値決定部 20bにより決定され るァクチユエータ動作 FB目標値のうちの、 FB目標第 n輪ブレーキ駆動 ·制動力 Fxlbd md_n (n= l, 2, 3, 4)が、本発明におけるフィードバック制御入力に相当する。
[0298] なお、前記リミッタ 222d_n (n= 1, 2, 3, 4)は、それに入力される Fxlb_nを 0よりも若 干大きい所定の正の上限値以下に制限してなる値を Fxl dmcLnとして出力するように してもよい。例えば、 Fxl _nが該上限値以下の値であるときには、 Fxlb_nをそのまま Fx I dmcLnとして出力し、 Fxlb_nが上限値よりも大きい正の値であるときには、該上限値 を FxlbdmcLnとして出力する。このようにした場合には、正の値の FxlbdmcLnは、ブレ ーキ装置による第 n輪 Wnの制動方向の駆動 '制動力の大きさを減少させるように機 能するフィードバック制御入力となる。
[0299] また、各車輪 Wn (n= 1, 2, 3, 4)に対して、処理部 222a_nからリミッタ 222d_nまで の処理(Ml dmd_aと、 δ f_actもしくは δ r_actと、 j8 f_actもしくは j8 r_actとを基に Fxl dm d_nを決定する処理)、あるいは、処理部 222b_nからリミッタ 222d_nまでの処理 (Fxfoll IbdmcLnと、 δ f_actもしくは δ r_actと、 j8 f_actもしくは j8 r_actとを基に FxlbdmcLnを決定 する処理)、あるいは、処理部 222c_nからリミッタ 222d_nまでの処理(処理部 222b_n の出力と、 j8 f_actもしくは j8 r_actとを基に FxlbdmcLnを決定する処理)、あるいは、処 理部 222a_nからリミッタ 222d_nまでの処理のうちの 2以上の部分を合わせた処理(例 えば処理部 222b_n力 処理部 222c_nまでの処理)を、それらの処理に必要な入力 値力もマップや関数式を使用して出力を決定するように変更してもよ!/、。
[0300] 例えば、処理部 222c_nからリミッタ 222d_nまでの処理をマップを使用して行なう場 合には、第 1輪用のマップを、例えば図 15 (a)〜(e)に示す如く設定しておき、第 3輪 用のマップを、例えば図 16 (a)〜(e)に示す如く設定しておけばよい。この場合、図 1 5 (a)〜(e)のそれぞれのグラフは、 /3 f_actの代表的な複数種類の値のそれぞれに対 応して、処理部 222b_lの出力( = Fxfolllbdmd_l 'Kl_str)と Fxl dmd_lとの関係を、そ れぞれの値をグラフの横軸方向の値、縦軸方向の値として表している。また、図 16 (a )〜(e)のそれぞれのグラフは、 /3 r_actの代表的な複数種類の値のそれぞれに対応 して、処理部 222b_3の出力( = Fxfolllbdmd_3 'K3_str)と Fxl dmd_3との関係を、それ ぞれの値をグラフの横軸方向の値、縦軸方向の値として表している。また、図 15にお
V、て、 j8 f_actの値に関し、「 B f- -」は、絶対値が比較的大き 、負の値を意味し、「 j8 f- 」は、絶対値が比較的小さい負の値を意味し、「j8 f+」は、絶対値が比較的小さい正 の値を意味し、「j8 f++」は、絶対値が比較的大きい正の値を意味する。同様に、図 16 において、 j8 r_actの値に関し、「j8 r—」は、絶対値が比較的大きい負の値を意味し、
「 β r -」は、絶対値が比較的小さ!、負の値を意味し、「 β r+jは、絶対値が比較的小さ
V、正の値を意味し、「 /3 r++jは、絶対値が比較的大き 、正の値を意味する。
[0301] なお、第 2輪用のマップは、図示を省略する力 処理部 222b_2の出力( = Fxfolllbd md_2 -K2_str)と Fxl dmd_2との関係が、 13 f_actの各値にお!、て、その値の符号を反転 させた値に対応する第 1輪用のマップと同じになる(例えば β f_act= β f-であるときの 処理部 222b_2の出力( = Fxfolllbdmd_2 'K2_str)と Fxl dmd_2との関係が、 13 f_act = β f+であるときの処理部 222b_lの出力と FxlbdmcLlとの関係(図 15 (c)のグラフで示 す関係)と同じになる)ように設定しておけばよい。同様に、第 4輪用のマップは、図示 を省略するが、処理部 222b_4の出力( = Fxfollibdmd_4'K4_str)と Fxl dmd_4との関係 力 jS actの各値において、その値の符号を反転させた値に対応する第 3輪用のマ ップと同じになる(例えば 13 r_act= β r-であるときの処理部 222b_4の出力( = Fxfolll dmd_4'K4_str)と Fxl dmd_4との関係が、 j8 r_act= j8 r+であるときの処理部 222b_3の 出力と Fxl dmd_3との関係(図 16 (c)のグラフで示す関係)と同じになる)ように設定し ておけばよい。
[0302] なお、この例では、処理部 222b_n (n= l, 2, 3, 4)の出力が 0以下の値であるとき は、前記図 12に示したものと同様に Fxl dmcLnが決定される。一方、処理部 222b_n ( n= l, 2, 3, 4)の出力が正の値であるときは、前記の如くリミッタ 222d_nにおける上 限値を正の値に設定した場合と同様に、 FxlbdmcLnが比較的小さ 、値の範囲内で正 の値になる。
[0303] 補足すると、第 3輪 W3と第 4論 W4とに関する前記処理部 222b_3, 222b_4では、い ずれも、その入力値と出力値が等しくなるので、第 3輪 W3と第 4論 W4とに関して、処 § 223c— 3力らジミッタ 222d— 3までの; ¾i 、お Jび § 222c— 4力らジミッタ 222d— 4 までの処理を上記の如くマップを使用して行なうということは、処理部 222b_3からリミ ッタ 222d_3までの処理と、処理部 222b_4からリミッタ 222d_4までの処理をマップを使
用して行なうことと同じである。
[0304] また、前輪 Wl, W2に関する第 n輪分配ゲイン Kn (n= 1, 2)を決定する(ひいては 、前輪側ゲイン GA1, GA2を操作する)ための前輪側ゲイン調整パラメータとして、 j8 f— act以外にも次のようなものを使用してもよい。
[0305] 例えば、 j8 f_actの代わりに、実車 1の前輪 Wl, W2の横すベり速度(前輪 Wl, W2 の進行速度ベクトルのうちの、前輪 Wl, W2の回転軸方向成分)の検出値もしくは推 定値や、前輪 Wl, W2の横加速度 (前輪 Wl, W2の加速度ベクトルの横方向成分) の検出値もしくは推定値を前輪側ゲイン調整パラメータとして使用してもよい。なお、 前輪 Wl, W2の横すベり速度あるいは横加速度は、 |8 f_actと同様に、該前輪 W1, W2の横方向運動に関する状態量の例である。また、これらの横すベり速度や横カロ 速度は、前輪 Wl, W2毎の検出値もしくは推定値でもよいが、これらの平均値やい ずれか一方の前輪 Wl, W2につ!/、ての検出値もしくは推定値であってもよ!/、。
[0306] あるいは、実車 1の前部の所定位置(例えば、前輪 Wl, W2の車軸上の中央位置) の実横すベり角の検出値もしくは推定値、または、該所定位置の横すベり速度 (該所 定位置の進行速度ベクトルの横方向成分)の検出値もしくは推定値、または、該所定 位置の横加速度 (該所定位置の加速度ベクトルの横方向成分)の検出値もしくは推 定値を前輪側ゲイン調整パラメータとして使用してもよい。なお、該所定位置の横す ベり角、横すベり速度、横加速度は、該所定位置の横方向運動に関する状態量の例 である。
[0307] あるいは、前輪 Wl, W2の横力の検出値もしくは推定値を前輪側ゲイン調整パラメ ータとして使用してもよい。なお、該横カは、前輪 Wl, W2毎の検出値もしくは推定 値でもよいが、これらの平均値やいずれか一方の前輪 Wl, W2についての検出値も しくは推定値であってもよ 、。
[0308] 上記したいずれの前輪側ゲイン調整パラメータを使用する場合にあっても、該前輪 側ゲイン調整パラメータと第 n輪分配ゲイン Kn (η= 1, 2)との関係は、 β f_actと K1, K2との関係と同様に設定すればよい。
[0309] あるいは、上記したような実車 1の前輪 Wl, W2の横方向運動に関する状態量( |8 f _actなど)と、実車 1の前部の所定位置の横方向運動に関する状態量と、前輪 W1,
W2の横力とのうちのいずれ力と相関性を有するパラメータを前輪側ゲイン調整パラメ ータとして使用してもよい。例えば、当該横方向運動に関する状態量または横力の検 出値もしくは推定値にほぼ比例するような任意のパラメータを前輪側ゲイン調整パラ メータとして使用してもよい。また、当該横方向運動に関する状態量または横力の値 を規定するような 1つ以上のノ メータを前輪側ゲイン調整パラメータとして使用して もよい。例えば j8 f_actは、基本的には、実車両重心点横すベり角 j8 actと、実ョーレー ト γ actと、実走行速度 Vactと、実前輪舵角 δ f_actとに応じて規定され (前記式 02aを 参照)、 j8 f_actは、 jS act, y act, Vact, δ f_actの関数として表現できる。従って、これ らの jS act, y act, Vact, δ f_actを前輪側ゲイン調整パラメータとして用い、この前輪 側ゲイン調整パラメータに応じてマップもしくは関数式により前輪 Wl , W2に関する 第 n輪分配ゲイン Kn (n= l , 2)を決定するようにしてもよい。より具体的には、例えば 、前記モデル車両に係わる前記式 02aの β f_d、 j8 d、 γ d、 Vd、 δ f_dをそれぞれ β f_a ct、 β act, γ act, Vact, δ f_actに置き換えた式を基に、前記した j8 f_actと第 1輪分配 ゲイン K1および第 2輪分配ゲイン K2との関係(前記図 14 (a)のグラフで示す関係) を、 13 act, γ act, Vact, δ f_actと、 Klおよび K2との関係に変換しておく。そして、そ の変換してなる関係に基づいて、 jS act, γ act, Vact, δ f_actに応じて Klおよび K2 を決定するようにすればょ 、。
[0310] 上記と同様に、後輪 W3, W4に関する第 η輪分配ゲイン Κη (η= 3, 4)を決定する( ひ ヽては後輪側ゲイン GA3, GA4を操作する)ための前輪側ゲイン調整パラメータと して、 j8 r_act以外にも次のようなものを使用してもよい。
[0311] 例えば、 j8 r_actの代わりに、実車 1の後輪 W3, W4の横すベり速度(後輪 W3, W4 の進行速度ベクトルのうちの、後輪 W3, W4の回転軸方向成分)の検出値もしくは推 定値や、後輪 W3, W4の横加速度 (後輪 W3, W4の加速度ベクトルの横方向成分) の検出値もしくは推定値を後輪側ゲイン調整パラメータとして使用してもよい。なお、 後輪 W3, W4の横すベり速度あるいは横加速度は、 |8 r_actと同様に、該後輪 W3, W4の横方向運動に関する状態量の例である。また、これらの横すベり角、横すベり 速度や横加速度は、後輪 W3, W4毎の検出値もしくは推定値でもよいが、これらの 平均値や!、ずれか一方の後輪 W3, W4〖こつ!/、ての検出値もしくは推定値であっても
よい。
[0312] あるいは、実車 1の後部の所定位置(例えば、後輪 W3, W4の車軸上の中央位置) の横すベり角の検出値もしくは推定値、または、該所定位置の横すベり速度 (該所定 位置の進行速度ベクトルの横方向成分)の検出値もしくは推定値、または、該所定位 置の横加速度 (該所定位置の加速度ベクトルの横方向成分)の検出値もしくは推定 値を後輪側ゲイン調整パラメータとして使用してもよい。なお、該所定位置の横すベ り角、横すベり速度、横加速度は、該所定位置の横方向運動に関する状態量の例で ある。
[0313] あるいは、実車 1の後輪 3, W4の横力の検出値もしくは推定値を後輪側ゲイン調整 ノ メータとして使用してもよい。なお、該横カは、後輪 W3, W4毎の検出値もしくは 推定値でもよいが、これらの平均値やいずれか一方の後輪 W3, W4についての検出 値もしくは推定値であってもよ 、。
[0314] 上記したいずれの後輪側ゲイン調整パラメータを使用する場合にあっても、該後輪 側ゲイン調整パラメータと第 n輪分配ゲイン Kn (n= 3, 4)との関係は、 |8 r_actと Κ3, K4との関係と同様に設定すればよい。
[0315] あるいは、上記したような実車 1の後輪 W3, W4の横方向運動に関する状態量( _actなど)と、実車 1の後部の所定位置の横方向運動に関する状態量と、後輪 W3, W4の横力とのうちのいずれカゝと相関性を有するパラメータを後輪側ゲイン調整パラメ ータとして使用してもよい。例えば、当該横方向運動に関する状態量または横力の検 出値もしくは推定値にほぼ比例するような任意のパラメータを後輪側ゲイン調整パラ メータとして使用してもよい。また、当該横方向運動に関する状態量または横力の値 を規定するような 1つ以上のノ メータを後輪側ゲイン調整パラメータとして使用して もよい。例えば j8 r_actは、基本的には、実車両重心点横すベり角 j8 actと、実ョーレ ート γ actと、実走行速度 Vactとに応じて規定され (前記式 02bを参照)、 |8 r_actは、 β act, γ act, Vactの関数として表現できる。従って、これらの β act, γ act, Vactを 後輪側ゲイン調整パラメータとして用い、この後輪側ゲイン調整パラメータに応じてマ ップもしくは関数式により後輪 W3, W4に関する第 n輪分配ゲイン Kn (n= 3, 4)を決 定するようにしてもよい。より具体的には、例えば、前記モデル車両に係わる前記式 0
2bの j8 r_d、 /3 d、 γ d、 Vdをそれぞれ j8 r_act、 j8 act、 γ act、 Vactに置き換えた式を 基に、前記した β r_actと第 3輪分配ゲイン Κ3および第 4輪分配ゲイン Κ4との関係( 前記図 14 (b)のグラフで示す関係)を、 β act, γ act, Vactと、 K3および K4との関係 に変換しておく。そして、その変換してなる関係に基づいて、 jS act, γ act, Vactに応 じて K3および K4を決定するようにすればよ!、。
[0316] さらに、上記した如ぐ実車 1の前輪 Wl, W2の横方向運動に関する状態量と、実 車 1の前部の所定位置の横方向運動に関する状態量と、実車 1の前輪 Wl, W2の横 力と、これらの状態量および横力のいずれかと相関性を有するパラメータを前輪側ゲ イン調整パラメータとして使用する代わりに、これらに対応する、規範動特性モデル 1 6上のモデル車両における状態量や横力、パラメータを前輪側ゲイン調整パラメータ として使用してもょ 、。例えば、 β f_actの代わりにモデル車両の β f_dを前輪側ゲイン 調整パラメータとして使用して、第 1輪分配ゲイン K1および第 2輪分配ゲイン K2を決 定するようにしてもよい。同様に、実車 1の後輪 W3, W4の横方向運動に関する状態 量と、実車 1の後部の所定位置の横方向運動に関する状態量と、実車 1の後輪 W3, W4の横力と、これらの状態量および横力のいずれかと相関性を有するパラメータを 後輪側ゲイン調整パラメータとして使用する代わりに、これらに対応する、規範動特 性モデル 16上のモデル車両における状態量や横力、パラメータを後輪側ゲイン調 整パラメータとして使用してもよ 、。例えば、 13 r_actの代わりにモデル車両の 13 r_dを 後輪側ゲイン調整パラメータとして使用して、第 3輪分配ゲイン K3および第 4輪分配 ゲイン K4を決定するようにしてもょ 、。
[0317] あるいは、実車 1の前輪 Wl, W2もしくは前部の所定位置の横方向運動に関する 状態量と、モデル車両の前輪 Wl¾しくは前部の所定位置の横方向運動に関する状 態量 (実車 1側の状態量と同じ種類の状態量)との合成値、または、実車 1の前輪 W1 , W2の横力とモデル車両の前輪 Wfの横力との合成値を前輪側ゲイン調整パラメ一 タと使用してもよい。同様に、実車 1の後輪 W3, W4もしくは後部の所定位置の横方 向運動に関する状態量と、モデル車両の後輪 Wrもしくは後部の所定位置の横方向 運動に関する状態量 (実車 1側の状態量と同じ種類の状態量)との合成値、または、 実車 1の後輪 W3, W4の横力とモデル車両の後輪 Wrの横力との合成値を後輪側ゲ
イン調整パラメータと使用してもよい。例えば、実車 1の j8 f_actとモデル車両の |8 f_dと の重み付き平均値に応じて第 1輪分配ゲイン K1および第 2輪分配ゲイン K2を決定 すると共に、実車 1の 13 r_actとモデル車両の 13 r_dとの重み付き平均値に応じて第 3 輪分配ゲイン K3および第 4輪分配ゲイン K4を決定するようにしてもょ ヽ。この場合、 該重み付き平均値に係わる重みに周波数特性 (例えば位相補償要素として機能す る周波数特性)を持たせるようにしてもょ ヽ。
[0318] あるいは、前輪 Wl, W2に関する第 n輪分配ゲイン Kn (n= l, 2)のそれぞれの第 1の仮値を、実車 1の前輪 Wl, W2もしくは前部の所定位置の横方向運動に関する 状態量、または実車 1の前輪 Wl, W2の横力に応じて決定すると共に、前輪 Wl, W 2に関する第 η輪分配ゲイン Κη (η= 1, 2)のそれぞれの第 2の仮値を、モデル車両 の前輪 W しくは前部の所定位置の横方向運動に関する状態量、またはモデル車 両の前輪 Wfの横力に応じて決定し、それらの第 1仮値および第 2仮値の加重平均値 もしくは重み付き平均値などの合成値を第 n輪分配ゲイン Kn(n= 1, 2)として決定 するようにしてもよい。例えば、第 1輪 W1に関する K1の第 1仮値を |8 f_actに応じて、 前記図 14 (a)に示したグラフに示した如く決定すると共に、 K1の第 2仮値を β f_dに 応じて第 1仮値と同様に決定する。この場合、 i8 f_dに対する第 2仮値の変化の傾向 は、 j8 f_actに対する第 1仮値の変化の傾向と同じでよい。そして、これらの第 1仮値と 第 2仮値との加重平均値を第 1輪分配ゲイン K1として決定する。第 2輪分配ゲイン K 2についても同様である。
[0319] 同様に、後輪 W3, W4に関する第 n輪分配ゲイン Kn (n= 3, 4)のそれぞれの第 1 の仮値を、実車 1の後輪 W3, W4もしくは後部の所定位置の横方向運動に関する状 態量、または実車 1の後輪 W3, W4の横力に応じて決定すると共に、後輪 W3, W4 に関する第 η輪分配ゲイン Κη (η= 3, 4)のそれぞれの第 2の仮値を、モデル車両の 後輪 Wrもしくは後部の所定位置の横方向運動に関する状態量、またはモデル車両 の後輪 Wrの横力に応じて決定し、それらの第 1仮値および第 2仮値の加重平均値も しくは重み付き平均値などの合成値を第 n輪分配ゲイン Kn (η= 3, 4)として決定す るようにしてもよい。例えば、第 3輪 W3に関する Κ3の第 1仮値を |8 r_actに応じて、前 記図 14 (b)に示したグラフに示した如く決定すると共に、 K3の第 2仮値を |8 r_dに応
じて第 1仮値と同様に決定する。この場合、 i8 r_dに対する第 2仮値の変化の傾向は、 iS rjctに対する第 1仮値の変化の傾向と同じでよい。そして、これらの第 1仮値と第 2仮値との加重平均値を第 3輪分配ゲイン K3として決定する。第 4輪分配ゲイン K4 についても同様である。
[0320] さらに、第 n輪分配ゲイン Kn (η= 1, 2, 3, 4)の値を、 β f_act、 β r_actなどの前輪 側ゲイン調整パラメータまたは後輪側ゲイン調整パラメータに応じて変化させるだけ でなぐ推定摩擦係数/ estmにも応じて変化させるように決定することがより望ましい 。例えば、本参考例 1に関して前記したように β f_act、 β r_actに応じて第 η輪分配ゲイ ン Knを決定する場合において、 estmが小さくなるほど、 j8 f_actが絶対値の大きい 負の値であるときの第 1輪分配ゲイン K1をより小さくするように K1を決定することが望 ましい。また、 estmが小さくなるほど、 j8 r_actが絶対値の大きい正の値であるときの 第 3輪分配ゲイン K3をより小さくするように K3を決定することが望ましい。同様に、 μ estmが小さくなるほど、 β f_actが絶対値の大き 、正の値であるときの第 2輪分配ゲイ ン K2をより小さくするように K2を決定することが望ましい。また、 estmが小さくなる ほど、 β r_actが絶対値の大き 、負の値であるときの第 4輪分配ゲイン K4をより小さく するように K4を決定することが望ましい。これは、 estmが小さくなるほど、第 n輪 Wn (n= l, 2, 3, 4)の制動方向の駆動 '制動力を増カロさせたときの該第 n輪 Wnの横力 の低下が著しくなる力 である。
[0321] また、第 n輪分配ゲイン Kn (n= l, 2, 3, 4)の値( β f act, β r_actなどの前輪側ゲ イン調整パラメータまたは後輪側ゲイン調整パラメータに応じて設定した値)を、第 n 輪の実接地荷重 (第 n輪に作用する路面反力のうちの鉛直方向または路面に垂直な 方向の並進力の検出値もしくは推定値)にも応じて調整するようにしてよい。この場合 、第 n輪分配ゲイン Knの値を、第 n輪 Wnの実接地荷重が小さくなるほど、小さくする ように決定することが望まし 、。
[0322] あるいは、各第 n輪 Wnの実接地荷重を Fzact_n (n= l, 2, 3, 4)、それらの総和を ∑Fzact ( = Fzact— 1 + Fzact— 2 + Fzact— 3 + Fzact— 4)とおいたとき、前輪 Wl, W2に関 する第 n輪分配ゲイン Kl, K2の値を、各前輪 Wl, W2の実接地荷重の和( = Fzact_ 1 + Fzact_2)に応じて調整したり、その和の∑Fzactに対する割合(= (Fzact.l + Fzac
t_2)Z∑Fzact)に応じて調整するようにしてもよい。同様に、後輪 W3, W4に関する 第 n輪分配ゲイン K3, K4を、各後輪 W3, W4の実接地荷重の和( = Fzact_3 + Fzact _4)に応じて調整したり、その和の∑Fzactに対する割合(= (Fzact_3 + Fzact_4) /∑ Fzact)に応じて調整するようにしてもよい。もしくは、各第 n輪分配ゲイン Kn (n= l, 2 , 3, 4)の値を、それぞれ第 η輪 Wnの実接地荷重の∑Fzactに対する割合( = Fzact_ n/∑ Fzact)に応じて調整するようにしてもよ!、。
[0323] また、本参考例 1では、駆動 ·制動装置 3Aのブレーキ装置に対するフィードバック 制御入力として (ァクチユエータ動作 FB目標値として)、 FB目標第 n輪ブレーキ駆動 •制動力 Fxl dmd_n (n= l, 2, 3, 4)を決定するようにした力 Fxl dmd_nの代わりに、 ブレーキ装置による各車輪 Wn (n= l, 2, 3, 4)の目標スリップ比を決定したり、ある いは、該目標スリップ比と Fxl dmcLnとの両者を決定するようにしてもよい。
[0324] また、 FxlbdmcLnなどのァクチユエータ動作 FB目標値を決定するために、中間変数 である Ml dmdや Ml dmcLaを決定せずに、状態量偏差 γ err, β errからマップ等を用 いて直接的にァクチユエータ動作 FB目標値を決定するようにしてもよい。例えば γ er r、 j8 err、 j8 f_act (または j8 f_d)、 j8 r_act (または j8 r_d)、 Vact、 estmなどの変数を入 力とする多次元のマップを使用して、ァクチユエータ動作 FB目標値を決定するように してちよい。
[0325] また、フィードバックョーモーメント基本要求値 Mlbdmdを、状態量偏差 γ err, β err を 0に近づけるだけでなぐ前記仮想外力決定部 20aの γ j8制限器 202で求められ る逸脱量 γ over, β overを 0に近づけるように(ひ!/、ては前記 γ da, β daがそれぞれ の許容範囲 [ γ damin, γ damax]、 [ β damin, β damax]から逸脱するのを抑制するよ うに)、 Mlbdmdを決定するようにしてもよい。例えば適当な係数 Kl dmdl〜Ki dmd4を 用いて、次式 28aにより、 Mlbdmdを決定してもよい。
[0326]
Mlbdmd = Kl dmdl · γ err+Klbdmd2 - β err
-Klbdmd3 - y over-Klbdmd4- β over ……式 28a なお、この式 28aにより Mlbdmdを決定するということは、状態量偏差 γ err, β errを
0に近づけるフィードバック制御則により決定した Ml dmdの仮値 (式 28aの右辺の第 1項および第 2項の和)を、逸脱量 γ over, β overを 0に近づけるように修正すること によって、 Ml dmdを決定することと同等である。
[0327] あるいは、前記式 23により状態量偏差 γ err, j8 errを 0に近づけるように決定した M i dmdを不感帯処理部 221に通してなる値である前記不感帯超過フィードバックョー モーメント要求値 MlbdmcLaを、次式 28b (上記式 28aの右辺の第 1項および第 2項の 和の値の代わりに MlbdmcLaを使用した式)により修正してなる値 Mlbdmd_a,を改めて MlbdmcLaとして用いるようにしてもよい。換言すれば、 Mlbdmdを不感帯処理部 221 に通してなる値を MlbdmcLaの仮値とし、この仮値を逸脱量 over, β overを 0に近づ けるように修正することによって、 MlbdmcLaを決定するようにしてもよ!、。
[0328]
Mlbdmd— a, = Ml dmd.a - Klbdmd3 - γ over— Klbdmd4' β over ……式 28b 補足すると、本参考例 1では、前記した如ぐ γ j8制限器 202によって、 y over, β overを 0に近づけるように仮想外力仮値 Mvirtmp, Fvirtmpを操作して仮想外力 Mvir , Fvirを決定するようにしている。これだけでも、モデル車両の γ d, j8 dがそれぞれ許 容範囲 [ γ damin, γ damax]、 [ β damin, β damax]を逸脱しな 、ように変ィ匕する。そし て、これに伴い、実車 1の γ act, β actをそれぞれ γ d, β dに近づけるようにァクチュ エータ動作 FB目標値が変化する。このため、 y err, errだけを 0に近づけるように ァクチユエータ動作 FB目標値を決定した場合であっても、結果的に、 y act, β actも 許容範囲 [ γ damin, γ damax]、 [ β damin, β damax]から逸脱するのを抑制できる。 ただし、上記のように、 y err, j8 errに加えて、 γ over, j8 overをも 0に近づけるように Mlbdmdまたは MlbdmcLaを決定する(ひ!/、てはァクチユエータ動作 FB目標値を決定 する)ようにすることで、 γ act, β actがそれぞれ許容範囲 [ γ damin, γ damax]、 [ j8 d amin, β damax]から逸脱するのをより一層効果的に抑制できる。
また、上記の如く γ err, j8 errに加えて、 y over, j8 overをも 0に近づけるように Mlbd mdまたは MlbdmcLaを決定するようにした場合には、仮想外力 Mvir, Fvirは、必ずし も γ over, β overを 0に近づけるように決定する必要はなぐ単に γ err, β errを 0に近
づけるように仮想外力 Mvir, Fvirを決定するようにしてもよい。この場合には、前記仮 想外力仮値決定部201で求められる仮想外力仮値 Mvirtmp, Fvirtmpをそれぞれそ のまま仮想外力 Mvir, Fvirとして決定すればよい。そして、 Ml dmdまたは Ml dmd_a を決定する処理、および仮想外力 Mvir, Fvirを決定する処理以外は、本実施形態と 同じでょ 、。このようにしても、 y act, β actがそれぞれ許容範囲 [ γ damin, γ damax] 、 [ β damin, β damax]力 逸脱するのを抑制するようにァクチユエータ動作 FB目標 値を決定できる。また、この場合であっても、状態量偏差 γ err, β errを 0に近づける ように、仮想外力 Mvir, Fvirが決定されるので、結果的に、モデル車両の γ d, j8 dが それぞれ許容範囲 [ γ damin, γ damax]、 [ β damin, β damax]から逸脱するのが抑 制されるように、 y d, j8 dが決定されることとなる。
[0330]
[FF則について]
次に、前記 FF則 22の処理を図 17を参照してより詳細に説明する。図 17は、 FF則 22の処理を示す機能ブロック図である。
[0331] 前記したように、本参考例 1では、 FF則 22が決定するフィードフォワード目標値 (運 転操作入力に応じたァクチユエータ装置 3の基本目標値)には、駆動 ·制動装置 3A のブレーキ装置による実車 1の各車輪 W1〜W4の駆動'制動力のフィードフォワード 目標値 (以降、 FF目標第 n輪ブレーキ駆動,制動力 (n= l, 2, 3, 4)という)と、駆動 •制動装置 3Aの駆動系による実車 1の駆動輪 Wl, W2の駆動'制動力のフィードフ ォワード目標値 (以降、 FF目標第 n輪駆動系駆動 ·制動力 (n= l, 2)という)と、駆動 •制動装置 3Aの変速装置の減速比 (変速比)のフィードフォワード目標値 (以降、 FF 目標ミッション減速比という)と、ステアリング装置 3Bによる実車 1の操舵輪 Wl, W2 の舵角のフィードフォワード目標値 (以降、 FF目標前輪舵角 δ f_ffと 、う)とが含まれる
[0332] なお、 FF則 22は、本発明におけるフィードフォワード制御入力を決定する手段に 相当しており、ここで決定される FF目標第 n輪ブレーキ駆動 ·制動力(n= l, 2, 3, 4 )と FF目標第 n輪駆動系駆動 ·制動力(n= 1 , 2)とが本発明におけるフィードフォヮ ード制御入力に相当する。
[0333] 図 17に示す如ぐ FF目標前輪舵角 δ f_ffは、運転操作入力のうちのステアリング角 Θ hに応じて(あるいは Θ hと Vactとに応じて)処理部 230により決定される。図 17では 、ステアリング装置 3Bが前記ァクチユエータ駆動型のステアリング装置である場合を 想定している。この場合には、処理部 230は、前記規範操作量決定部 14の処理部 1 4aの処理と同じ処理によって FF目標前輪舵角 δ ¾決定する。すなわち、ステアリ ング角 Θ hを、所定のオーバーオールステアリング比 is、あるいは、 Vactに応じて設定 したオーバーオールステアリング比 isで除算することにより δ ϊ^決定する。このよう にして決定される δ f_ffの値は、前記規範操作量決定部 14の処理部 14aにより決定さ れる無制限時前輪舵角 δ Lunltdの値と同じである。
[0334] なお、ステアリング装置 3Bが前記ァクチユエータ補助型のステアリング装置である 場合、あるいは、機械式ステアリング装置である場合には、 δ f_ff¾決定する必要はな い。あるいは、 δ fj¾常に 0に設定しておけばよい。但し、ステアリング装置 3Bがァク チユエータ補助型のステアリング装置であって、ステアリング角 Θ hに応じて機械的に 定まる前輪 Wl, W2の舵角を Vactに応じて補正する機能をもつような場合には、そ の補正分を Vactに応じて決定し、それを δ f_ffとして決定するようにしてもよい。
[0335] 補足すると、ステアリング装置 3Bがァクチユエータ補助型のステアリング装置である 場合には、前輪 Wl, W2の基本的な舵角( δ f_actの基本値)は、ステアリング角 Θ h に応じて機械的に定まるので、 S f_ffはァクチユエータによる前輪 Wl, W2の舵角の 補正量のフィードフォワード目標値としての意味を持つものとなる。
[0336] また、 FF目標第 η輪ブレーキ駆動 ·制動力 (η= 1, 2, 3, 4)は、運転操作入力のう ちのブレーキペダル操作量に応じて、それぞれ処理部 231a_n (n= l, 2, 3, 4)によ り決定される。図中の各処理部 231a_nに示したグラフは、それぞれ、ブレーキペダル 操作量と FF目標第 n輪ブレーキ駆動 ·制動力(n= l, 2, 3, 4)との関係を例示する グラフであり、該グラフにおける横軸方向の値がブレーキペダル操作量の値、縦軸方 向の値力FF目標第 n輪ブレーキ駆動'制動力である。図示のグラフに示されるように 、 FF目標第 n輪ブレーキ駆動'制動力(< 0)は、基本的には、ブレーキペダル操作 量の増加に伴い、その大きさ(絶対値)が単調増加するように決定される。なお、図示 の例では、 FF目標第 n輪ブレーキ駆動 ·制動力は、その大きさが過大にならないよう
に、ブレーキペダル操作量が所定量を超えると飽和する(ブレーキペダル操作量の 増加に対する FF目標第 n輪ブレーキ駆動 '制動力の絶対値の増加率が 0に近づぐ もしくは 0になる)ようになって!/、る。
[0337] FF目標第 n輪駆動系駆動 ·制動力 (n= l, 2)と FF目標ミッション減速比とは、運転 操作入力のうちのアクセルペダル操作量およびシフトレバー位置と Vactとに応じて、 駆動系ァクチユエータ動作 FF目標値決定部 232により決定される。この駆動系ァク チユエータ動作 FF目標値決定部 232の処理は、公知の通常の自動車において、ァ クセルペダル操作量と Vactと変速装置のシフトレバー位置とに応じて、エンジンから 駆動輪に伝達する駆動力と変速装置の減速比とを決定する手法と同じでよいので、 本明細書での詳細な説明は省略する。
[0338] 以上が本参考例 1における FF則 22の具体的な処理の内容である。
[0339]
[ァクチユエータ動作目標値合成部につ ヽて]
次に、前記ァクチユエータ動作目標値合成部 24の処理を詳細に説明する。図 18 は、このァクチユエータ動作目標値合成部 24の処理を示す機能ブロック図である。
[0340] 同図を参照して、ァクチユエータ動作目標値合成部 24は、第 1輪 W1に関して、前 記ァクチユエータ動作 FF目標値のうちの FF目標第 1輪ブレーキ駆動 ·制動力と、 FF 目標第 1輪駆動系駆動'制動力との和を加算器 240で求める。そして、その和を FF 総合目標第 1輪駆動,制動力 FFtotaLlとして最適目標第 1駆動,制動力決定部 241a _1に入力する。さらに、この FFtotaLlと、前記ァクチユエータ動作 FB目標値のうちの F B目標第 1輪ブレーキ駆動'制動力 Fxlbdmd_lとの和を加算器 242で求める。そして、 その和を無制限目標第 1輪駆動 ·制動力 Fxdmd_lとして最適目標第 1駆動 ·制動力決 定部 241a_lに入力する。
[0341] また、ァクチユエータ動作目標値合成部 24は、第 2輪 W2に関して、前記ァクチユエ ータ動作 FF目標値のうちの FF目標第 2輪ブレーキ駆動 ·制動力と、 FF目標第 2輪 駆動系駆動'制動力との和を加算器 243で求める。そして、その和を FF総合目標第 2輪駆動 ·制動力 FFtotal_2として最適目標第 2駆動 ·制動力決定部 241a_2に入力す る。さらに、この FFtotal_2と、前記ァクチユエータ動作 FB目標値のうちの FB目標第 2
輪ブレーキ駆動.制動力 Fxfbdmd_2との和を加算器 244で求める。そして、その和を 無制限目標第 2輪駆動 ·制動力 Fxdmd_2として最適目標第 2駆動 ·制動力決定部 24 la_2に入力する。
[0342] また、ァクチユエータ動作目標値合成部 24は、第 3輪 W3に関して、前記ァクチユエ ータ動作 FF目標値のうちの FF目標第 3輪ブレーキ駆動 ·制動力をそのまま FF総合 目標第 3輪駆動 ·制動力 FFtotal_3として最適目標第 3駆動 ·制動力決定部 241a_3に 入力する。さらに、この FFtotal_3と、前記ァクチユエータ動作 FB目標値のうちの FB目 標第 3輪ブレーキ駆動'制動力 Fxl dmd_3との和を加算器 245で求める。そして、そ の和を無制限目標第 3輪駆動 ·制動力 Fxdmd_3として最適目標第 3駆動 ·制動力決 定部 241a_3に入力する。
[0343] また、ァクチユエータ動作目標値合成部 24は、第 4輪 W4に関して、前記ァクチユエ ータ動作 FF目標値のうちの FF目標第 4輪ブレーキ駆動 ·制動力をそのまま FF総合 目標第 4輪駆動 ·制動力 FFtotal_4として最適目標第 4駆動 ·制動力決定部 241a_4に 入力する。さらに、この FFtotal_4と、前記ァクチユエータ動作 FB目標値のうちの FB目 標第 4輪ブレーキ駆動'制動力 Fxl dmd_4との和を加算器 246で求める。そして、そ の和を無制限目標第 4輪駆動 ·制動力 Fxdmd_4として最適目標第 4駆動 ·制動力決 定部 241a_4に入力する。
[0344] ここで、前記 FF総合目標第 n輪駆動 ·制動力 FFtotaLn (n= 1 , 2, 3, 4)は、それを 一般ィ匕して言えば、駆動'制動装置 3Aの駆動系の動作による第 n輪 Wnの駆動'制 動力のフィードフォワード目標値 (FF目標第 n輪駆動系駆動 ·制動力)とブレーキ装 置の動作による第 n輪 Wnの駆動 ·制動力のフィードフォワード目標値 (FF目標第 n輪 ブレーキ駆動 ·制動力)との総和を意味する。この場合、本明細書の実施形態および 参考例では、実車 1の駆動輪を前輪 Wl, W2とし、後輪 W3, W4は従動輪としている ので、後輪 W3, W4に関しては、 FF目標第 n輪ブレーキ駆動'制動力(n= 3, 4)が そのまま、 FF総合目標第 n輪駆動 ·制動力 FFtotaLnとして決定される。
[0345] また、前記無制限目標第 n輪駆動,制動力 Fxdmd_n (n= l, 2, 3, 4)は、前記 FF総 合目標第 n輪駆動 ·制動力 FFtotaLnと、前記 FB第 n輪ブレーキ駆動 ·制動力との和 であるから、駆動 ·制動装置 3Aのフィードフォワード制御動作 (少なくとも運転操作入
力に応じたフィードフォワード制御動作)とフィードバック制御動作 (少なくとも状態量 偏差 Ί err, β errに応じたフィードバック制御動作)とにより要求される第 n輪のトータ ルの駆動 ·制動力を意味する。
[0346] そして、ァクチユエータ動作目標値合成部 24は、最適目標第 n駆動'制動力決定 部 241a_n (n= l, 2, 3, 4)により、それぞれ第 n輪 Wnの駆動 '制動力の最終的な目 標値である目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxcmdjiを決定すると共に、第 n輪のスリップ比の 最終的な目標値である目標第 n輪スリップ比を決定する。
[0347] この場合、最適目標第 n駆動'制動力決定部 241a_n (n= l, 2, 3, 4)には、 FFtota l_nおよび FxdmcLnにカ卩えて、第 n輪 Wnの実横すベり角(詳しくは、 n= l, 2であるとき は、実前輪横すベり角 i8 f_aCt、 n= 3, 4であるときは実後輪横すベり角 r_act)の最 新値 (今回値)と推定摩擦係数/ z estmの最新値 (今回値)とが入力される。なお、図 示は省略するが、前輪 Wl, W2に係わる最適目標第 n駆動 ·制動力決定部 241a_n ( n= l, 2)には、実前輪舵角 S f_actの最新値 (今回値)も入力される。そして、最適目 標第 n駆動 ·制動力決定部 241a_n (n= l, 2, 3, 4)は、それぞれに与えられる入力 を基に、目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxcmdjiと目標第 n輪スリップ比とを後述するように 決定する。
[0348] また、ァクチユエータ動作目標値合成部 24は、前記ァクチユエータ動作 FB目標値 のうちのアクティブ操舵用 FB目標横カ FylbdmcLfと、前記ァクチユエータ動作 FF目標 値のうちの FF目標前輪舵角 δ f_ffとを最適目標アクティブ舵角決定部 247に入力し、 該最適目標アクティブ舵角決定部 247により前輪 Wl, W2の最終的な舵角の目標 値である目標前輪舵角 δ fcmdを決定する。なお、この δ fcmdは、ステアリング装置 3 Bが前記ァクチユエータ駆動型のステアリング装置である場合には、ァクチユエータの 動作による前輪 Wl, W2の舵角そのもの(実車 1の前後方向を基準とした舵角)の最 終的な目標値を意味する。一方、ステアリング装置 3Bが前記ァクチユエータ補助型 のステアリング装置である場合には、ァクチユエータの動作による前輪 Wl, W2の舵 角の補正量の最終的な目標値を意味する。
[0349] なお、ァクチユエータ動作目標値合成部 24は、前記ァクチユエータ動作 FF目標値 のうちの FF目標第 n輪駆動系駆動 ·制動力 (n= l, 2)をそのまま、駆動'制動装置 3
Aの駆動系の動作による第 n輪 Wnの駆動 ·制動力の最終的な目標値である目標第 n 輪駆動系駆動'制動力として出力する。さらに、ァクチユエータ動作目標値合成部 24 は、前記ァクチユエータ動作 FF目標値のうちの FF目標ミッション減速比をそのまま、 駆動 ·制動装置 3Aの変速装置の減速比 (変速比)の最終的な目標値である目標ミツ シヨン減速比として出力する。
[0350] 前記最適目標第 n駆動'制動力決定部 241a_n (n= l, 2, 3, 4)の処理を以下に詳 説する。図 19は、各最適目標第 n駆動 '制動力決定部 241a_nの処理を示すフローチ ヤートである。
[0351] 同図を参照して、まず、 S100において、第 n輪 Wn (n= l, 2, 3, 4)の横すベり角 が実横すベり角(詳しくは、 n= l, 2であるときは実前輪横すベり角 |8 f_act、 n= 3, 4 であるときは実後輪横すベり角 ι8 まであって、路面摩擦係数 (第 η輪 Wnと路面と の間の摩擦係数)が推定摩擦係数 estmであることを前提条件とする。そして、この 前提条件の基で、無制限目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxdmdjiに最も近 、 (一致する場 合を含む)第 n輪 Wnの駆動 ·制動力の値である第 n輪駆動 ·制動力候補 Fxcandjiと、 それに対応する第 n輪 Wnのスリップ比の値である第 n輪スリップ比候補 ScancLnとを 求める。
[0352] ここで、一般に、各車輪の横すベり角と路面反力(駆動'制動力、横力、および接地 荷重)とスリップ比と路面摩擦係数との間には、該車輪のタイヤの特性ゃサスペンショ ン装置の特性に応じた一定の相関関係がある。例えば、各車輪の横すベり角と路面 反力(駆動'制動力、横力、および接地荷重)とスリップ比と路面摩擦係数との間には 、前記非特許文献 1の式(2. 57) , (2. 58) , (2. 72) , (2. 73)により表されるような 相関関係がある。また、例えば接地荷重および路面摩擦係数を一定とした場合、各 車輪の横すベり角と駆動,制動力と横力とスリップ比との間には、前記非特許文献 1 の図 2. 36に示されるような相関関係がある。従って、横すベり角および路面摩擦係 数がそれぞれある値であるときの各車輪の路面反力とスリップ比とは、それぞれが独 立的な値を採り得るわけではなぐそれぞれの値は、上記の相関関係(以下、車輪特 性関係という)に従って変化する。なお、スリップ比は、駆動 *制動力が駆動方向の駆 動 ·制動力(>0)であるときは負の値であり、駆動 *制動力が制動方向の駆動 ·制動
力(< 0)であるときは正の値である。
[0353] そこで、本参考例 1における S 100の処理では、第 n輪 Wnの横すベり角と路面摩擦 係数と駆動 '制動力とスリップ比との関係を表す、あらかじめ作成されたマップに基づ V、て、第 n輪 Wnの実横すベり角 β f_actまたは β r_act (最新値)と推定路面摩擦係数 estm (最新値)とから、無制限目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxdmdjiに最も近いか、また は一致する駆動'制動力(Fxdmdjiとの差の絶対値が最小となる駆動 *制動力)と、こ の駆動 '制動力に対応するスリップ比とを求める。そして、このようにして求めた駆動- 制動力とスリップ比とをそれぞれ第 n輪駆動 '制動力候補 Fxcandju第 n輪スリップ比 候補 ScancLnとして決定する。
[0354] なお、この処理で使用するマップは、例えば前記車輪特性関係を種々の実験など を通じて、あるいは、車輪 W1〜W4のタイヤ特性やサスペンション装置 3Cの特性に 基づいて、あらかじめ特定もしくは推定しておき、その特定もしくは推定した車輪特性 関係に基づいて作成すればよい。また、そのマップには、第 n輪 Wnの接地荷重を変 数パラメータとして加えてもよい。この場合には、第 n輪 Wnの実接地荷重 Fzact_nを最 適目標第 n駆動 ·制動力決定部 241a_nに入カするようにして、第 n輪 Wnの実横すベ り角 β f_actまたは β r_actと、推定摩擦係数 μ estmと、実接地荷重 Fzact_nとから Fxcan d_n、 ScancLnを決定するようにすればよい。ただし、実接地荷重 Fzact_nの変動は一般 に比較的小さ 、ので、該実接地荷重 Fzact_nを一定値とみなしてもよ 、。
[0355] 補足すると、第 n輪 Wnの実横すベり角 β f_actまたは β r_actと推定路面摩擦係数 μ estmとの組に対応して、あるいは、これらと実接地荷重 Fzact_nとの組に対応して、第 n輪 Wnで発生可能 (路面から作用可能な)な駆動 '制動力(前記車輪特性関係に従 つて発生可能な駆動.制動力)の値の範囲内に FxdmcLnが存在する場合には、その F xdmd_nをそのまま FxcancLnとして決定すればよい。そして、 Fxdmdjiが当該範囲を逸 脱している場合には、当該範囲のうちの上限値(> 0)および下限値(< 0)のうち、 Fx dmd_nに近 、方を FxcancLnとして決定すればよ!、。
[0356] また、第 n輪 Wnの実横すベり角 /3 f_a または /3 r_actと推定路面摩擦係数 μ estmと の組に対応して、あるいは、これらと実接地荷重 Fzact_nとの組に対応して、第 n輪 W nで発生可能なスリップ比と駆動 *制動力との関係 (前記車輪特性関係に従って発生
可能なスリップ比と駆動 '制動力との関係)は、一般に、該スリップ比の変化に対して、 駆動 ·制動力がピーク値 (極値)を持つような関係となる (スリップ比を横軸の値、駆動 '制動力の大きさを縦軸の値としたときのグラフが上に凸のグラフとなる)。このため、 そのピーク値よりも絶対値が小さい駆動'制動力の値に対応するスリップ比の値は 2 種類存在する場合がある。このように FxcancLn対応するスリップ比の値が 2種類存在 する場合には、その 2種類のスリップ比の値のうち、 0により近い方のスリップ比の値を 第 n輪スリップ比候補 Scandjiとして決定すればよい。換言すれば、第 n輪 Wnのスリツ プ比と駆動,制動力との関係 (前記車輪特性関係に従う関係)において、駆動 '制動 力がピーク値となるスリップ比の値と 0と間の範囲内で、第 n輪スリップ比候補 Scandji を決定すればよい。
[0357] 補足すると、駆動 '制動力がピーク値となるスリップ比の値と 0との間の範囲内では、 スリップ比の絶対値が 0から増加するに伴い、駆動 '制動力の絶対値は単調に増加 する。
[0358] 次いで、 S102に進んで、 S100と同じ前提条件の基で、最大モーメント発生時第 n 輪駆動 ·制動力 Fxmmaxjiと、これに対応するスリップ比である最大モーメント発生時 第 n輪スリップ比 Smmaxjiとを決定する。ここで、最大モーメント発生時第 n輪駆動'制 動力 Fxmmaxjiは、第 n輪 Wnの横すベり角が実横すベり角 j8 f_actまたは j8 r_actであ つて、路面摩擦係数が推定摩擦係数/ z estmであるときに、第 n輪 Wnで発生可能な 路面反力(詳しくは前記車輪特性関係に従って第 n輪 Wnに路面から作用可能な駆 動 ·制動力と横力との合力)のうち、該路面反力によって実車 1の重心点 Gのまわりに 発生するョ一方向のモーメントが、前記フィードバックョーモーメント基本要求値 Ml d mdの極性と同じ極性(向き)に向力つて最大となるような路面反力の駆動 *制動力成 分の値を意味する。なお、この場合、 Fxmmaxji, Smmaxjiは、第 n輪 Wnの駆動'制 動力とスリップ比との関係(前記車輪特性関係に従う関係)において、スリップ比の絶 対値が 0から増加するに伴い駆動 '制動力の絶対値が単調に増加する領域内で決 定される。従って、 Smmaxjiは、駆動'制動力がピーク値となるスリップ比の値と 0との 間で決定される。
[0359] S102では、前輪 Wl, W2に関しては(n= 1または 2であるとき)、例えば実前輪横
すべり角 f actと、推定摩擦係数; z estmと、実前輪舵角 δ f_actとから、あら力じめ作 成されたマップ (前輪横すベり角と路面摩擦係数と前輪舵角と最大モーメント発生時 駆動 ·制動力と最大モーメント発生時スリップ比との関係 (前記車輪特性関係に従う 関係)を表すマップ)に基づいて、最大モーメント発生時第 n輪駆動 ·制動力 Fxmmax_ nとこれに対応する最大モーメント発生時第 n輪スリップ比 Smmax_nとが決定される。あ るいは、前輪横すベり角と路面摩擦係数とスリップ比と駆動,制動力と横力との関係を 表すマップと、実前輪舵角 S f_actとに基づき、 |8 f_actと/ z estmとの組に対応して発生 可能な第 n輪 Wn (n= 1または 2)の駆動 '制動力と横力との組のなかから、それらの 合力が実車 1の重心点 Gのまわりに発生するョ一方向のモーメントが最大となる駆動
•制動力と横力との組を探索的に決定する。そして、その組に対応する駆動 ·制動力 とスリップ比とをそれぞれ Fxmmax_n, Smmax_nとして決定するようにしてもよ!、。
[0360] また、後輪 W3, W4に関しては (n= 3または 4であるとき)、例えば、実後輪すベり 角 i8 r_actと推定摩擦係数 estmとから、あらかじめ作成されたマップ (後輪横すベり 角と路面摩擦係数と最大モーメント発生時駆動 ·制動力と最大モーメント発生時スリツ プ比との関係 (前記車輪特性関係に従う関係)を表すマップ)に基づいて、最大モー メント発生時第 n輪駆動 ·制動力 Fxmmax nとこれに対応する最大モーメント発生時第 n輪スリップ比 Smmaxjiとが決定される。あるいは、後輪横すベり角と路面摩擦係数と スリップ比と駆動 '制動力と横力との関係を表すマップに基づき、 β r_actと μ estmとの 組に対応して発生可能な第 n輪 Wn (n = 3または 4)の駆動 ·制動力と横力との組のな かから、それらの合力が実車 1の重心点 Gのまわりに発生するョ一方向のモーメント が最大となる駆動 '制動力と横力との組を探索的に決定する。そして、その組に対応 する駆動 ·制動力とスリップ比とをそれぞれ Fxmmax_n, Smmaxjiとして決定するように してちよい。
[0361] なお、 S102の処理では、前記 S100の処理に関して説明した場合と同様に、第 n 輪 Wnの実接地荷重 Fzact_nを変数パラメータとして含めてもよい。
[0362] 次いで、 S104〜S112の処理が後述するように実行され、目標第 n輪駆動'制動力 Fxcmdjiが決定される。この場合、目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxcmdjiは、次の条件(1) 〜(3)を満足するように決定される。ただし、条件(1)〜(3)は、条件(1)、(2)、 (3)
の順に、優先順位が高い条件とされる。そして、条件(1)〜(3)の全てを満たす目標 第 n輪駆動 ·制動力 Fcmd_nを決定できな 、場合には、優先順位の高 、条件を優先 的に満足するように目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxcmdjiが決定される。 条件( 1): FF総合目標第 n輪駆動 ·制動力 FFtotaLnと目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxcmd _nとが制動方向の駆動 ·制動力であるときには、 目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxcmdjiの 大きさ(絶対値)が FF総合目標第 n輪駆動 ·制動力 FFtotaLnの大きさ (絶対値)よりも 小さくならないこと。換言すれば、 0> Fxcmdji > FFtotaLnとならないこと。
条件 (2):目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxcmdjiが最大モーメント発生時第 n輪駆動 '制動 力 Fxmmax_nと同極性になるときには、 Fxcmdjiの大きさ(絶対値)が Fxmmax_nの大き さ(絶対値)を超えないこと。換言すれば、 Fxcmdji >Fxmmax_n>0、または、 Fxcmd_ n< Fxmmax— n< 0とな bな ヽこと。
条件 (3):目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxcmdjiは、可能な限り第 n輪駆動 '制動力候補 F xcand_nに一致すること(より正確には、 Fxcmdjiと Fxcand_nとの差の絶対値を最小に すること) ここで、条件(1)は、 目標第 n輪駆動'制動力 Fxcmdjiが、実車 1の運転者がブレー キペダルの操作によって要求している実車 1の第 n輪 Wnの制動方向の駆動 '制動力 (これは FFtotaLnに相当する)よりも小さくならないようにするための条件である。補足 すると、本明細書の実施形態および参考例では、後輪 W3, W4は従動輪であるので 、後輪 W3, W4に関する FF総合目標第 n輪駆動 ·制動力 FFtotaLn (n= 3, 4)および 目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxcmdji (n= 3, 4)は、常に 0以下の値である。従って、後 輪 W3, W4に関しては、条件(1)は、「目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxcmdjiの大きさ(絶 対値)が FF総合目標第 n輪駆動 ·制動力 FFtotaLnの大きさ(絶対値)よりも小さくなら ないこと。」という条件と同じである。
[0364] また、条件(2)は、 目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxcmdjiに対応して第 n輪 Wnで発生す る横力が小さくなり過ぎな 、ようにするための条件である。
[0365] また、条件(3)は、前記ァクチユエータ動作 FB目標値決定部 20bと FF則 22とで決
定された、ァクチユエータ装置 3の動作の制御要求(目標)をできるだけ満足するため の条件である。なお、 Fxcandjiは、前記したように、前記車輪特性関係(第 n輪 Wnの 横すベり角が実横すベり角 jS tacほたは であって、路面摩擦係数が推定摩擦 係数 estmであることを前提条件としたときの車輪特性関係)に従って第 n輪 Wnで 発生可能な駆動 ·制動力の値の範囲内で前記無制限目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxdm d_nに最も近い(一致する場合を含む)駆動 '制動力の値である。従って、条件(3)は 別の言い方をすれば、目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxcmdjiは、前記車輪特性関係 (第 n 輪 Wnの横すベり角が実横すベり角 |8 f_acほたは |8 r_actであって、路面摩擦係数が 推定摩擦係数/ z estmであることを前提条件としたときの車輪特性関係)に従って第 n 輪 Wnで発生可能な駆動 '制動力の値の範囲内の値となり、且つ、可能な限り無制限 目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxdmdji (制御要求に従う駆動 ·制動力)に一致する力もしく は近いこと (FxdmcLnとの差の絶対値が最小になること)、という条件と同等である。
[0366] 前記 S104〜S112の処理は、具体的には、次のように実行される。まず、 S104に 進んで、 S100で決定した Fxcandjiと S102で決定した Fxmmax_nとの大小関係力 0 >Fxmmax— n Fxcand— nまたは 0< Fxmmax— n Fxcand— nである力 Λ否力 半 [J断する。こ の判断結果が NOである場合には、 S 106に進んで、目標第 n輪駆動'制動力 Fxcmd_ nに Fxcandjiの値を代入する。すなわち、 Fxcandjiと Fxmmax_nとが互いに異なる極性 である場合、あるいは、 Fxcandjiと Fxmmax_nとが同極性であって、且つ Fxcandjiの大 きさ(絶対値)が Fxmmax_nの大きさ(絶対値)以下である場合には、 Fxcandjiの値が そのまま Fxcmdjiに代入される。なお、 Fxcandji =0であるとき(このとき、 Fxdmdjiも 0 である)にも、 Fxcandjiの値が Fxcmdjiに代入される(Fxcmd_n = 0とする)。
[0367] 一方、 S104の判断結果が YESである場合には、 S108に進んで、目標第 n輪駆動 •制動力 Fxcmdjiに Fxmmax_nの値(S 102で決定した値)を代入する。
[0368] ここまでの処理により、前記条件(2)、 (3)を満足するように (ただし、条件(2)が優 先されるように)、 Fxcmdjiが決定される。
[0369] S106または S108の処理の後、 S110に進んで、前記 FF総合目標第 n輪駆動'制 動力 FFtotaLnと今現在の目標第 n輪駆動'制動力 Fxcmd_n (S106または S108で決 定された値)との大小関係力 0>Fxcmd_n>FFtotal_nであるか否かを判断する。こ
の判断結果が、 YESである場合には、 S112に進んで、目標第 n輪駆動'制動力 Fxc md_nに改めて FFtotaLnを代入する。すなわち、 FF総合目標第 n輪駆動'制動力 FFt otaLnと S106または S108で決定された第 n輪駆動 '制動力候補 Fxcmdjiとが制動方 向の駆動'制動力で、且つ、 FxcmcLnの大きさ(絶対値)力 FFtotaLnの大きさ(絶対 値)よりも小さい場合には、 FFtotaLnの値を FxcmcLnに代入する。なお、 S110の判断 結果が NOであるときには、その時の FxcmcLnの値がそのまま維持される。
[0370] 以上の S104〜S112の処理によって、前記した通り、基本的には、前記条件(1) 〜(3)を満足するように目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxcmdjiが決定される。そして、条件 ( 1)〜(3)の全てを満たす目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxcmdjiを決定できな 、場合には 、優先順位の高 、条件を優先的に満足するように目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxcmdji が決定される。
[0371] S110の判断結果が YESであるとき、あるいは、 S112の処理の後、 S114にの処理 が実行される。この S114では、上記の如く S106〜S112の処理で決定した FxcmcLn に対応するスリップ比を目標第 n輪スリップ比 Scmdjiとして決定する。この場合、前記 S104〜S112の処理によって、 FxcmcLnは、 Fxcand_n、 Fxmmax_n、 FFtotaLnのいず れかの値である。そして、 FxcmcLn =Fxcand_nであるときには、 S100で求められた第 n輪スリップ比候補 Scand_nが Scmd_nとして決定される。また、 Fxcmdji =Fxmmax_nで あるときには、 S102で決定された最大モーメント発生時第 n輪スリップ比 Smmaxjiが S cmd_nとして決定される。また、 Fxcmd_n=FFtotal_nであるときには、例えば前記 S10 0の処理で使用するマップに基づいて、 FFtotaLnに対応するスリップ比を求め、その 求めたスリップ比を Scmdjiとして決定すればよい。この場合、 FFtotaLnに対応するス リップ比の値が 2種類存在する場合には、 0に近 、方のスリップ比の値 (第 n輪 Wnの 駆動.制動力がピーク値となるスリップ比の値と 0との間の範囲内の値)を Scmd_nとし て決定すればよい。また、 FFtotaLnが該マップにおいて、第 n輪 Wnで発生可能な駆 動 ·制動力の値の範囲を逸脱して 、る場合には、その範囲内で FFtotaLnに最も近 ヽ 駆動 ·制動力の値に対応するスリップ比を Scmdjiとして決定すればょ 、。
[0372] 以上が最適目標第 n駆動'制動力決定部 241a_n (n= l, 2, 3, 4)の処理の詳細で ある。
[0373] なお、本参考例 1では、目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxcmdjiを決定してから、これに対 応する目標第 n輪スリップ比 Scmdjiを決定したが、これと逆に、目標第 n輪スリップ比 S cmd_nを決定してから、これに対応する目標第 n輪駆動'制動力 Fxcmdjiを決定するよ うにしてもよい。この場合には、前記条件(1)〜(3)に対応する目標第 n輪スリップ比 S cmd_nに関する条件に基づいて、前記 S104〜S112と同様の処理によって、目標第 n輪スリップ比 Scmd_nを決定する。そして、その後に、この Scmd_nに対応する Fxcmdji を決定するようにすればよい。なお、この場合、 Scmd_nは、第 n輪 Wnの前記車輪特 性関係に従うスリップ比と駆動 '制動力との関係において、駆動 '制動力がピーク値と なるスリップ比の値と 0との間の範囲内で決定される。
[0374] 次に、前記最適目標アクティブ舵角決定部 247の処理を説明する。図 20は、この 最適目標アクティブ舵角決定部 247の処理を示す機能ブロック図である。
[0375] 同図を参照して、最適目標アクティブ舵角決定部 247は、まず、前記ァクチユエ一 タ動作 FB目標値決定部 20bで決定されたアクティブ操舵用 FB目標横カ Fyl dmcLf を実車 1に前輪 Wl , W2に発生させる(詳しくは前輪 W1の横力と前輪 W2の横力と の合力を Fyf dmdj^け変化させる)ために要求される前輪 Wl, W2の舵角の変化量 である FBアクティブ舵角 δ fjを、 Fyl dmdj^基に処理部 247aで決定する。この場 合、処理部 247aでは、例えば第 1輪 W1の実接地荷重 FzacUに応じて所定の関数 式あるいはマップにより第 1輪 W1のコーナリングパワー Kf_lを求めると共に、第 2輪 W 2の実接地荷重 Fzact_2に応じて所定の関数式あるいはマップにより第 2輪 W2のコー ナリングパワー Kf_2を求める。上記関数式あるいはマップは、実車 1の前輪 Wl, W2 のタイヤ特性に基づいてあら力じめ設定される。そして、このコーナリングパワー Kf_l , Kf_2を用いて、次式 30により、 FBアクティブ舵角 δ fjを決定する。
[0376]
6 f ft)= (l/ (Kf 1 + Kf_2) ) - Fylbdmd— f ……式 30 このようにして求められる FBアクティブ舵角 δ fj は、前輪 Wl, W2の横力の合力 を、 Fylbdmd け変化させるのに要求される前輪横すベり角の修正量に相当する。
[0377] なお、通常、実接地荷重 Fzact_l, Fzact_2の変化は小さいので、式 30で FylbdmcLf
に乗じる係数(1Z (Kf_l + Kf_2) )を一定値としてもよ!ヽ。
[0378] 次 、で、最適目標アクティブ舵角決定部 247は、上記の如く決定した δ fjbを加算 器 247bで FF目標前輪舵角 S f_ffに加えることにより、 目標前輪舵角 S fcmdを決定す る。
[0379] なお、前記状態量偏差 γ err, β errに応じたアクティブ操舵用 FB目標横カ Fyl dm d_fの決定を行なわず、あるいは、常に Fyi dmd_f=0とする場合には、 δ f_ff¾そのまま 目標前輪舵角 S f_cmdとして決定すればよい。
[0380] 以上が、前記ァクチユエータ動作目標値合成部 24の処理の詳細である。
[0381]
[ァクチユエータ駆動制御装置につ 、て]
前記ァクチユエータ駆動制御装置 26は、前記ァクチユエータ動作目標値合成部 2 4で決定された目標値を満足するように実車 1のァクチユエータ装置 3を動作させる。 例えば、駆動 ·制動装置 3Aの駆動系の動作による第 1輪 W1の駆動 '制動力(駆動 方向の駆動 ·制動力)が前記目標第 1輪駆動系駆動 ·制動力になるように該駆動系 のァクチユエータ操作量を決定し、それに応じて該駆動系を動作させる。さらに、第 1 輪 W1の実路面反力のうちの駆動 *制動力(駆動系の動作による第 1輪 W1の駆動 · 制動力とブレーキ装置の動作による第 1輪 W1の駆動 '制動力(制動方向の駆動-制 動力)との和)が、前記目標第 1輪駆動 ·制動力 Fxcmd_lになるように、ブレーキ装置 のァクチユエータ操作量を決定し、それに応じて該ブレーキ装置を動作させる。そし て、この場合、第 1輪 W1の実スリップ比と前記目標第 1輪スリップ比 Scmd_lとの差が 0 に近づくように駆動系またはブレーキ装置の動作が調整される。他の車輪 W2〜W4 についても同様である。
[0382] また、ステアリング装置 3Bがァクチユエータ駆動型のステアリング装置である場合に は、実前輪舵角 S f_actが前記目標前輪舵角 S fcmdに一致するようにステアリング装 置 3Bのァクチユエータ操作量が決定され、それに応じてステアリング装置 3Bの動作 が制御される。なお、ステアリング装置 3Bがァクチユエータ補助型のステアリング装 置である場合には、実前輪舵角 S f_actが、前記目標前輪舵角 S f_cmdとステアリング 角 Θ hに応じた機械的な舵角分との和に一致するようにステアリング装置 3Bの動作
が制御される。
[0383] また、駆動 ·制動装置 3Aの駆動系の変速装置の減速比は、前記目標ミッション減 速比に従って制御される。
[0384] なお、各車輪 W1〜W4の駆動 ·制動力や横力などの制御量は、駆動 ·制動装置 3 A、ステアリング装置 3B、サスペンション装置 3Cの動作が互いに干渉しやすい。この ような場合には、該制御量を目標値に制御するために、駆動'制動装置 3A、ステアリ ング装置 3B、サスペンション装置 3Cの動作を非干渉ィヒ処理によって統合的に制御 することが望ましい。
[0385]
[参考例 2]
次に、本発明の実施形態に関連する参考例 2を図 21〜図 23を参照して説明する。 なお、本参考例 2は、前記参考例 1と一部の処理のみが相違するので、その相違す る部分を中心に説明し、同一部分については説明を省略する。また、参考例 2の説 明では、参考例 1と同一の構成部分もしくは同一の機能部分については参考例 1と 同じ参照符号を使用する。
[0386] 補足すると、この参考例 2は、後述する本発明の第 2実施形態に関連するものであ る、ァクチユエータ動作目標値合成部 24の処理だけが、第 2実施形態と相違するも のである。従って、ァクチユエータ動作目標値合成部 24の処理に関する説明以外は 、第 2実施形態の説明を兼ねている。
[0387] 前記参考例 1では、駆動 ·制動装置 3Aに対するァクチユエータ動作 FB目標値とし て、駆動 ·制動装置 3Aのブレーキ装置の動作によって第 n輪 Wn (n= l, 2, 3, 4)に 作用させる駆動 '制動力の補正要求値 (状態量偏差 γ err, β errを 0に近づけるため の補正要求値)を意味する前記 FB目標第 n輪ブレーキ駆動 ·制動力 Fxlbdmdjiを求 めるようにした。本参考例 2では、これに代えて、駆動 ·制動装置 3Aに対するァクチュ エータ動作 FB目標値として、 FB目標第 n輪ブレーキモーメント Mlbdmd_n (n= l, 2, 3, 4)を決定する。この FB目標第 n輪ブレーキモーメント Ml dmcLnは、駆動'制動装 置 3Aのブレーキ装置の動作によって各車輪 W1〜W4に作用させる路面反力(詳し くは駆動 '制動力および横力の合力)が実車 1の重心点 Gのまわりに発生するョ一方
向のモーメントの補正要求値 (状態量偏差 γ err, β errを 0に近づけるための補正要 求値)を意味する。そして、本参考例 2では、この FB目標第 n輪ブレーキモーメント Mf bdmd_nを使用して、ァクチユエータ動作目標値を決定する。
[0388] 従って、本参考例 2では、 FB分配則 20のァクチユエータ動作 FB目標値決定部 20 bの処理と、ァクチユエータ動作目標値合成部 24の処理とが前記参考例 1と相違す る。そして、これ以外の構成および処理は、参考例 1と同じである。
[0389] 以下に本参考例 2におけるァクチユエータ動作 FB目標値決定部 20bの処理と、ァ クチユエータ動作目標値合成部 24の処理とを説明する。
[0390] 図 21は本参考例 2におけるァクチユエータ動作 FB目標値決定部 20bの処理機能 を示す機能ブロック図である。同図を参照して、ァクチユエータ動作 FB目標値決定 部 20bは、まず、処理部 220, 221により参考例 1と同じ処理を実行し、それぞれ前記 フィードバックョーモーメント基本要求値 Ml dmdと、不感帯超過フィードバックョーモ 一メント要求値 Ml dmcLaとを決定する。なお、処理部 221を省略して、 Ml dmd_a = Ml dmdとしてもよい。
[0391] 次 、で、ァクチユエータ動作 FB目標値決定部 20bは、ァクチユエータ動作 FB目標 値分配処理部 222の処理を実行してァクチユエータ動作 FB目標値を決定する。この 場合、本参考例 2では、各 FB目標第 n輪ブレーキモーメント Ml dmd_n (n= l, 2, 3, 4)は、処理部 222f_n, 222g_nを介して決定される。また、アクティブ操舵用 FB目標 横力 Fyl dmdj^処理部 222eにより決定される。処理部 222eの処理は、前記参考 例 1と同じである。なお、処理部 222eは省略してもよい。
[0392] 各 FB目標第 n輪ブレーキモーメント Ml dmd_n (n= l, 2, 3, 4)は、次のように決定 される。すなわち、基本的には、 Ml dmcLaが正であるときには、そのモーメントを実車 1の左側の車輪 Wl, W3の路面反力の操作 (補正)によって発生させ、 MlbdmcLaが 負であるときには、そのモーメントを実車 1の右側の車輪 W2, W4の路面反力の操作 (補正)によって発生させるように、 FB目標第 n輪ブレーキモーメント MlbdmcLn (n= 1 , 2, 3, 4)が決定される。
[0393] 具体的には、まず、各車輪 W1〜W4に対応する処理部 222f_n (n= l, 2, 3, 4)に よって、それぞれ第 n輪分配ゲイン Knを決定する。この第 η輪分配ゲイン Κηの決定
の仕方は、前記参考例 1と同じである。すなわち、前輪 Wl, W2に係わる Kl, K2は、 それぞれ前輪側ゲイン調整パラメータとしての実前輪横すベり角 iSlLactに応じて、例 えば前記図 14 (a)のグラフで示す如く決定される。また、後輪 W3, W4に係わる K3, K4は、それぞれ後輪側ゲイン調整パラメータとしての実後輪横すベり角 j8r_actに応 じて、例えば前記図 14(b)のグラフで示す如く決定される。そして、各処理部 222f_n( n=l, 2, 3, 4)は、この第 n輪分配ゲイン Knを Ml dmcLaに乗じることにより、第 n輪 分配モーメント基本値 Ml _nを決定する。なお、このように決定される Ml _nの極性(向 き)は、 MlbdmcLaと同じである。また、第 n輪分配ゲイン Knは、 13 f_actまたは 13 r_actに 応じて上記の如く決定する以外に、前記第 1実施形態で説明したいずれの形態で決 定するようにしてもよい。そして、この場合、前輪側ゲイン調整パラメータおよび後輪 側ゲイン調整パラメータは、前記第 1実施形態と同様に、 i8f_act, _ 以外のパラ メータを使用してちょい。
[0394] 次 、でァクチユエータ動作 FB目標値分配処理部 222は、上記の如く決定した第 n 輪分配モーメント基本値 Mi _n(n=l, 2, 3, 4)を、それぞれ第 n輪 Wnに対応するリ ミッタ 222g_nに通すことにより、 FB目標第 n輪ブレーキモーメント MlbdmcLnをそれぞ れ決定する。
[0395] ここで、図 21中の各リミッタ 222g_n(n=l, 2, 3, 4)のグラフは、 Ml _nと MlbdmcLnと の関係を表すグラフであり、該グラフに関する横軸方向の値が Ml _nの値、縦軸方向 の値が MlbdmcLnの値である。
[0396] このリミッタ 222g_nのうち、第 1輪 W1および第 3輪 W3に係わるリミッタ 222g_l, 222 g_3は、それに入力される Ml _n(n=l, 3)の値が 0または正の値であるときにのみ、 M l _nをそのまま MlbdmcLnとして出力し、 Ml _nが負の値であるときには、その Mlb_nの値 によらずに出力する MlbdmcLnの値を 0とする。換言すれば、 0を下限値として、 Mlb_n に制限を掛けることにより MlbdmcLnを決定する。
[0397] 一方、第 2輪 W1および第 4輪 W3に係わるリミッタ 222g_2, 222g_4は、それに入力 される Ml _n(n=2, 4)の値力 0または負の値であるときにのみ、 Ml _nをそのまま Ml dmd_nとして出力し、 Ml _nが正の値であるときには、その Ml _nの値によらずに出力す る MlbdmcLnの値を 0とする。換言すれば、 0を上限値として、 Ml _nに制限を掛けること
により Ml dmcLnを決定する。
[0398] このように FB目標第 n輪ブレーキモーメント MlbdmcLn (n= l, 2, 3, 4)を決定する ことにより、 MlbdmcLa >0である場合には、実車 1の左側の車輪 Wl, W3の路面反力 の補正によって MlbdmcLaにほぼ等しいョー方向のモーメントを実車 1の重心点 Gのま わりに発生させるベく MlbdmcLnが決定される。この場合、第 1輪 W1および第 3輪 W3 のそれぞれの Ml dmd_l、 Ml dmd_3は、 MlbdmcLaに比例するもの(MlbdmcLaに K1 または K3を乗じてなる値)となる。ひいては、 MlbdmcLaの変化と、 Ml dmd_l、 Mlbdm d_3の変化との関係が比例関係になる。そして、その比例関係における前輪側ゲイン としての第 1輪分配ゲイン K1と後輪側ゲインとしての第 3輪分配ゲイン K3とがそれぞ れ前輪側ゲイン調整パラメータ (本実施形態では β f_act)、後輪側ゲイン調整パラメ ータ (本実施形態では β r_act)に応じて変化することとなる。
[0399] また、 MlbdmcLaく 0である場合には、駆動 ·制動装置 3Aのブレーキ装置 3Aの動作 による実車 1の右側の車輪 W2, W4の路面反力の補正によって MlbdmcLaにほぼ等し V、ョ一方向のモーメントを実車 1の重心点 Gのまわりに発生させるベく MlbdmcLnが決 定される。この場合、第 2輪 W2および第 4輪 W4のそれぞれの Ml dmd_2、 Ml dmd_4 は、 MlbdmcLaに比例するもの(MlbdmcLaに K2または K4を乗じてなる値)となる。ひ いては、 MlbdmcLaの変化と、 Ml dmd_2、 Mlbdmd_4の変化との関係が比例関係にな る。そして、その比例関係における前輪側ゲインとしての第 2輪分配ゲイン K2と後輪 側ゲインとしての第4輪分配ゲイン K4とがそれぞれ前輪側ゲイン調整パラメータ (本 実施形態では β f_act)、後輪側ゲイン調整パラメータ (本実施形態では β r_act)に応 じて変ィ匕することとなる。
[0400] なお、第 1輪 W1および第 3輪 W3に係わるリミッタ 222g_n (n= l, 3)は、 0よりも若 干小さい値を MlbdmcLnの下限値として Ml _nに制限を掛けることにより MlbdmcLnを決 定するようにしてもよい。同様に、第 2輪 W2および第 4輪 W4に係わるリミッタ 222g_n ( n= 2, 4)は、 0よりも若干大きい値を MlbdmcLnの上限値として Ml _nに制限を掛ける ことにより MlbdmcLnを決定するようにしてもよ!、。
[0401] 以上が本参考例 2におけるァクチユエータ動作 FB目標値決定部 20bの処理の詳 細である。
[0402] 次に、本参考例 2におけるァクチユエータ動作目標値合成部 24の処理を図 22およ び図 23を参照して説明する。図 22はァクチユエータ動作目標値合成部 24の処理機 能を示す機能ブロック図、図 23はその処理機能のうちの最適目標第 n駆動 '制動力 決定部の処理を示すフローチャートである。
[0403] 図 22を参照して、本参考例 2におけるァクチユエータ動作目標値合成部 24は、目 標第 n輪駆動 ·制動力 Fxcmdjiおよび目標第 n輪スリップ比 Scmdjiを決定する最適目 標第 n駆動 ·制動力決定部 241b_n (n= l, 2, 3, 4)と、目標前輪舵角 δ fcmdを決定 する最適アクティブ舵角決定部 247とを備えて 、る。
[0404] 最適アクティブ舵角決定部 247の処理は、参考例 1と同じである。一方、最適目標 第 n駆動 '制動力決定部 241b_nの処理は、参考例 1と相違している。また、ァクチュ エータ動作目標値合成部 24は、前記参考例 1と同様に、前記 FF則 22で決定された ァクチユエータ動作 FF目標値のうちの FF目標第 1輪駆動系駆動 ·制動力、 FF目標 第 2輪駆動系駆動 ·制動力、および FF目標ミッション減速比をそれぞれ目標第 1輪 駆動系駆動,制動力、目標第 2輪駆動系駆動,制動力、目標ミッション減速比として 出力するようにしている。
[0405] 本参考例 2では、前輪 Wl, W2に係わる最適目標第 n駆動 ·制動力決定部 241b_n
(n= l, 2)には、それぞれ、前記 FF則 22で決定されたァクチユエータ動作 FF目標 値のうちの FF目標第 n輪ブレーキ駆動 ·制動力と FF目標第 n輪駆動系駆動 ·制動力 との和である FF総合目標第 n輪駆動 ·制動力 FFtotaLn (これは参考例 1と同様にカロ 算器 240で求められる)と、前記ァクチユエータ動作 FB目標値決定部 20bで決定さ れたァクチユエータ動作 FB目標値のうちの FB目標第 n輪ブレーキモーメント Mlbdmd _nとが入力される。なお、前輪 Wl, W2に係わる最適目標第 n駆動 '制動力決定部 2 41b_n (n= l, 2)には、参考例 1の場合と同様に、実前輪横すベり角 f_actの最新値 (今回値)および推定摩擦係数/ z estmの最新値 (今回値)も入力される。さら〖こ、図示 は省略するが、実前輪舵角 S f_actの最新値 (今回値)も最適目標第 n駆動,制動力 決定部 241b_n (n= l, 2)に入力される。
[0406] また、後輪 W3, W4に係わる最適目標第 n駆動 '制動力決定部 241b_n (n= 3, 4) には、それぞれ、前記 FF則 22で決定されたァクチユエータ動作 FF目標値のうちの F
F目標第 n輪ブレーキ駆動 ·制動力が FF総合目標第 n輪駆動 ·制動力 FFtotaLnとし て入力されると共に、前記ァクチユエータ動作 FB目標値決定部 20bで決定されたァ クチユエータ動作 FB目標値のうちの FB目標第 n輪ブレーキモーメント MlbdmcLnとが 入力される。なお、後輪 W3, W4に係わる最適目標第 n駆動 '制動力決定部 241b_n (n= 3, 4)には、参考例 1の場合と同様に、実後輪横すベり角 _ の最新値 (今 回値)および推定摩擦係数 μ estmの最新値 (今回値)も入力される。
[0407] そして、最適目標第 n駆動'制動力決定部 241b_n (n= l, 2, 3, 4)は、それぞれ、 与えられた入力を基に、目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxcmdjiと目標第 n輪スリップ比 Scm d_nとを決定して出力する。
[0408] 以下に、図 23を参照して、各最適目標第 n駆動,制動力決定部 241b_n (n= l, 2, 3, 4)の処理を説明する。
[0409] まず、 S200において、第 n輪 Wn(n= l, 2, 3, 4)の横すベり角が実横すベり角( 詳しくは、 n= lまたは 2であるときは実前輪横すベり角 |8 f_act、 n= 3または 4であると きは実後輪横すベり角 ι8 まであって、路面摩擦係数 (第 n輪 Wnと路面との間の 摩擦係数)が推定摩擦係数/ z estmであることを前提条件とする。そして、この前提条 件の基で、前記 FF総合目標第 n輪駆動 ·制動力 FFtotaLnに対応するスリップ比 Sff_n を求める。より詳しくは、該前提条件の基で、第 n輪 Wnで発生可能な駆動'制動力の うち、 FFtotaLnに一致する力、もしくは最も近い駆動 '制動力に対応するスリップ比の 値を Sff_nとして求める。この場合、例えば前記参考例 1における図 19の S100の処理 で使用するマップに基づいて、 FFtotaLnに対応するスリップ比を求め、その求めたス リップ比を Sff_nとして決定すればよい。なお、 FFtotaLnに対応するスリップ比の値が 2 種類存在するような場合には、 0に近い方のスリップ比が Sff_nとして決定される。換言 すれば、第 n輪 Wnのスリップ比と駆動 ·制動力との関係 (前記車輪特性関係に従う関 係)において、駆動'制動力がピーク値 (極値)となるスリップ比の値と 0との間の範囲 内において、 Sff_nが決定される。また、 FFtotaLnが上記前提条件の基で、第 n輪 Wn で発生可能な駆動'制動力の値の範囲を逸脱している場合には、 FFtotaLnに最も近 い駆動 ·制動力の値に対応するスリップ比の値が Sff_nとして決定される。
[0410] 次いで、 S202に進んで、第 n輪 Wnのスリップ比が Sff_nであるときの第 n輪 Wnの横
力 Fyffjiを求める。この場合、例えば第 n輪 Wnの横すベり角と路面摩擦係数とスリツ プ比と横力との関係 (前記車輪特性関係に従う関係)を表す、あらかじめ作成された マップに基づいて、第 n輪 Wnの実横すベり角 j8 f_actまたは j8 r_actの値と、推定路面 摩擦係数 estmの値と、 Sff_nの値とから横力 Fyff_nを求めるようにすればよい。なお、 そのマップには、第 n輪 Wnの実接地荷重 Fzact_nを変数パラメータとして含めてもよ い。
[0411] 次いで、 S204に進んで、スリップ比力 ff_nであるときの第 n輪 Wnの駆動 '制動力で ある FFtotaLnと、該第 n輪 Wnの横力である Fyff_nとの合力ベクトル力 実車 1の重心 点 Gのまわりに発生するョ一方向のモーメント Mff_nを求める。具体的には、第 n輪 Wn が前輪 Wl, W2であるとき (n= lまたは 2であるとき)には、実前輪舵角 δ f_actを基に 、第 n輪 Wnから見た実車 1の重心点 Gの位置ベクトル(水平面上での位置ベクトル) を求める。そして、その位置ベクトルと上記合力ベクトルとの外積 (ベクトル積)を演算 することによって、 Mff_nを求めればよい。また、第 n輪 Wnが後輪 W3, W4であるとき( n= 3または 4であるとき)には、第 n輪 Wnから見た実車 1の重心点 Gの位置ベクトル( 水平面上での位置ベクトル。これはあら力じめ設定される)と上記合力ベクトルとの外 積(ベクトル積)を演算することによって、 Mff_nを求めればよい。なお、 Mff_nは、 FFtot al_nと Fyffjiと実前輪舵角 S f_actとから(n= lまたは 2である場合)、あるいは、 FFtotal _nと Fyff_nとから(n= 3または 4である場合)、あらかじめ作成したマップに基づ!/、て求 めるようにしてもよい。このようにして求められる Mff_nは、第 n輪のフィードフォワード 要求モーメント(MlbdmcLn =0である場合の要求モーメント)に相当するものである。
[0412] 次いで、 S206に進んで、上記の如く求めた Mff_nと前記 FB目標ブレーキモーメント MlbdmcLnとを加え合わせることにより、第 n輪 Wnの路面反力による実車 1の重心点 G まわりのモーメント (ョ一方向のモーメント)の仮目標値である仮目標モーメント候補 M cand_nが算出される。この Mcand_nは、第 n輪 Wnで制御要求に従って実車 1の重心 点 Gのまわりに発生すべきョー方向のモーメントを意味する。
[0413] 次いで、 S208に進んで、第 n輪 Wn(n= l, 2, 3, 4)の横すベり角が実横すベり角
(詳しくは、 n= lまたは 2であるときは実前輪横すベり角 |8 f_act、 n= 3または 4である ときは実後輪横すベり角 ι8 まであって、路面摩擦係数 (第 n輪 Wnと路面との間の
摩擦係数)が推定摩擦係数/ z estmであることを前提条件として、最大モーメント発生 時第 n輪スリップ比 Smmax_nを決定する。この処理は、前記参考例 1における図 19の S102で最大モーメント発生時第 n輪スリップ比 Smmax_nを求める場合と同様に実行さ れる。但し、 Smmaxjiは、それに対応して第 n輪 Wnで発生する駆動 '制動力と横力と の合力によって実車 1の重心点 Gのまわりに発生するモーメント (最大モーメント)が 前記フィードバックョーモーメント基本要求値 Ml dmdの極性(向き)に向かって最大と なるように決定される。このようにして決定される Smmaxjiは、最大モーメント発生時第 k車輪駆動 ·制動力に対応するスリップ比を意味する。
[0414] 次いで、 S210に進んで、上記の如く求めた Smmaxjiの値と 0との間で、ョー方向の モーメントが S206で求めた Mcand_nに一致し、または Mcand_nに最も近くなるときのス リップ比 Scand_nを求める。
[0415] この S210の処理では、例えば第 n輪 Wnの実横すベり角と路面摩擦係数とスリップ 比と駆動'制動力と横力との関係 (前記車輪特性関係に従う関係)を表す、あらかじ め作成されたマップと、実前輪舵角 S f_actとに基づいて (n= lまたは 2である場合)、 あるいは、該マップに基づいて (n= 3または 4である場合)、前記前提条件の基で、 探索的に、 ScancLnを求めればよい。
[0416] 次いで、 S212力ら S216の処理によって、目標第 n輪スリップ比 Scmd_nが決定され る。この場合、 ScancLnおよび Sff_nが共に正の値であるとき(すなわち、 ScancLn, Sff_n にそれぞれ対応する第 n輪 Wnの駆動 *制動力が共に制動方向の駆動 *制動力であ るとき)には、 Scmdjiに対応する駆動 *制動力(制動方向の駆動 *制動力)の絶対値が 、前記 FF総合目標第 n輪駆動 ·制動力 FFtotaLnの絶対値よりも小さくならな 、ように S cmd_nが決定される。
[0417] 具体的には、 S212において、 ScancLn >Sff_n>0であるか否かが判断され、この判 断結果が YESであるときには、 S214に進んで、 Scmd_nに ScancLnの値が代入される 。また、 S212の判断結果が NOであるときには、 S216に進んで、 Scmd_nに Sff_nの値 が代入される。
[0418] 次いで、 S218に進んで、上記の如く決定した Scmd_nに対応する第 n輪 Wnの駆動' 制動力が目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxcmdjiとして決定される。この場合、例えばスリツ
プ比と駆動 '制動力との関係を表す、あら力じめ作成されたマップに基づいて、 Scmd_ nの値に対応する FxcmcLnが決定される。
[0419] 以上が、本参考例 2における最適目標第 n駆動 *制動力決定部 242b_nの処理であ る。
[0420] 補足すると、本参考例 2では、前記参考例 1における条件(3)の代わりに、目標第 n 輪駆動 ·制動力 Fxcmdjiは、前記車輪特性関係 (第 n輪 Wnの横すベり角が実横すベ り角 j8 f_actまたは 13 r_actであって、路面摩擦係数が推定摩擦係数 μ estmであること を前提条件としたときの車輪特性関係)に従って第 n輪 Wnで発生可能な駆動 ·制動 力の値の範囲内の値となり、且つ、該車輪特性関係に従って第 n輪 Wnで発生可能 な路面反力のうち、その駆動 ·制動力成分が Fxcmdjiに等 U、路面反力によって実 車 1の重心点 Gのまわりに発生するョ一方向のモーメントが可能な限り前記 Mcand_n に一致する力もしくは近いこと (Mcand_nとの差の絶対値が最小になること)、という条 件が用いられている。そして、この条件 (以下、条件(3) 'という)と、前記条件(1)、 (2 )とのうち、前記条件(1)を最上位の条件、条件 (2)を次順位の条件とし、これらの条 件(1)、(2)、(3) 'をその優先順位に従って満足するように目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxcmdjiが決定されている。この場合、前記 S210までの処理によって、結果的に、条 件(2)を満たし得る範囲内で、条件(3) 'をできるだけ満たすように、 Fxcmdjiが決定 されることとなる。すなわち、 S210の処理で決定される Scand_nに対応する駆動'制動 力(S212の判断結果が YESである場合における Scmdjiに対応する駆動 '制動力) を目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxcmdjiとして決定したとき、その Fxcmdjiは条件(2)を優 先条件として、条件(2)、(3) 'を満足するものとなる。さらに、 S212〜S216の処理を 経ることで、最優先の条件(1)を満たすように Fxcmdjiが決定されることとなる。
[0421]
[第 1実施形態]
次に、本発明の第 1実施形態を図 24および図 25を参照して説明する。なお、本実 施形態は、前記参考例 1と一部の処理のみが相違するので、その相違する部分を中 心に説明し、同一部分については説明を省略する。また、本実施形態の説明では、 参考例 1と同一の構成部分もしくは同一の機能部分については参考例 1と同じ参照
符号を使用する。
[0422] 本実施形態が、参考例 1と相違する点は、前記図 18に示したァクチユエータ動作 目標値合成部 24の最適目標第 n駆動'制動力決定部 241a_n (n= l, 2, 3, 4)の処 理だけである。この場合、本実施形態では、図示は省略するが、各最適目標第 n駆 動 ·制動力決定部 24 la_nには、前記 FF総合第 n輪駆動 ·制動力 FFtotaLnおよび無 制限時第 n輪駆 ·制動力 Fxdmdjiに加えて、推定摩擦係数 estmと、第 n輪 Wnの実 路面反力(実駆動,制動力 Fxac u実横力 Fyac u実接地荷重 Fzactji)とが入力さ れる。そして、各最適目標第 n駆動'制動力決定部 241a_nは、入力された推定摩擦 係数; z estmと、第 n輪 Wnの実路面反力とを基に、第 n輪 Wnの駆動 '制動力と横力と の関係を推定する。さらに、その推定した関係を利用して、目標第 n輪駆動'制動力 F xcmd_nと目標第 n輪スリップ比 Scmd_nとを決定する。
[0423] なお、ァクチユエータ動作目標値合成部 24は、本発明における実車ァクチユエ一 タ操作用制御入力決定手段の構成要素 (駆動'制動力操作用制御入力を決定する 手段)である。
[0424] ここで、前記非特許文献 1の式(2. 42)に見られるように、各第 n輪 Wn (n= l, 2, 3 , 4)の実横すベり角がある値であるときに、該第 n輪 Wnに路面力 作用する横力 Fy_ nと駆動 ·制動力 Fx_nとの関係は、一般に、以下に示す楕円の式によって近似できる
[0426] なお、式 40において、 μは路面摩擦係数、 Fz_nは第 η輪 Wnの接地荷重、 Fy0_nは 第 n輪 Wnの駆動'制動力 Fx_n力^であるときの横力である。 Fy0_nは一般には、第 n 輪 Wnの横すベり角に応じて変化する。 Fy0_nの極性は、第 n輪 Wnの実すベり角の極 '性と逆になる。
[0427] 本実施形態では、この式 40が、第 n輪 Wnの駆動.制動力と横力との関係を規定す る式であるとして、この式 40を利用して、 FxcmcLnと Scmd_nとを決定する。この場合、
式 40の Fy0_nを特定するために、実路面反力の値を使用する。
[0428] 以下に図 24を参照して、本実施形態での最適目標第 n駆動 ·制動力決定部 241a_ n (n= l, 2, 3, 4)の処理を説明する。図 24は、その処理を示すフローチャートであ る。
[0429] まず、 S300〖こおいて、第 n輪 Wnの実路面反力 Fxact_n, Fyact.n, Fzact_n (検出値 もしくは推定値の最新値)と推定摩擦係数 μ estm (最新値)とを基に、前記式 40の Fy 0_nの値(駆動.制動力が 0であるときの横力の値)を求める。すなわち、式 40の Fx_n、 Fy_n、 Fz_n、 μにそれぞれ Fxact_n、 Fyact_n、 Fzact_n、 μ estmの値を代入する。そし て、 FyO_nについて解くことにより(換言すれば、図中に示す式によって)、 FyO_nの値 を決定する。なお、図中の sqrt (A)は (Aは一般変数)、 Aの平方根を求める関数であ る。また、 FyO_nの極性 (符号)は、 Fyact_nと同じである。
[0430] 次!、で、 S302に進んで、前記式 40 (FyO_nの値が S300で決定した値である場合 の式 40)を制約条件 (Fx_nと Fy_nとの関係を規定する制約条件)として、前記無制限 時第 n輪駆動 ·制動力 Fxdmdjiに最も近 ヽ (一致する場合を含む)駆動 ·制動力 Fx_n を求め、これを第 n輪駆動 '制動力候補 Fxcandjiとする。この場合、式 40の制約条件 の基で、駆動'制動力 Fx_nが採り得る値の範囲は、 / z 'Fzactjiと 'Fzact_nとの間 の範囲である。なお、 μ 'Fzactjiは、第 n輪 Wnと路面との間の最大摩擦力を意味す る。従って、 FxdmcLnの値力 この範囲 [ μ -Fzact.n, μ 'Fzact_n]内の値である場 合には、 FxdmcLnがそのまま FxcancLnとして決定され、 Fxdmd_nの値力 範囲 [― μ -F zact_n, μ 'Fzact_n]を逸脱している場合には、― μ 'Fzact_nと 'Fzact_nとのうちの F xcmd_nに近 、方の値が、 FxcancLnとして決定される。
[0431] 次!、で、 S304に進んで、前記式 40 (FyO_nの値が S300で決定した値である場合 の式 40)を制約条件として、第 n輪の路面反力(駆動,制動力 Fx_nと横力 Fy_nとの合 力)が実車 1の重心点 Gのまわりに発生するョ一方向のモーメントが最大となるような 駆動 ·制動力 Fx_nの値を求め、これを最大モーメント発生時第 n輪駆動 ·制動力 Fxm max_nとする。より詳しくは、前記式 40の関係に従う Fx_nと Fy_nとの組のうち、それらの 合力が実車 1の重心点 Gのまわりに発生するョ一方向のモーメントが最大となる Fx_n , Fy_nの組を求め、その組の Fx_nの値を Fxmmax_nとして決定する。ここでの最大モー
メントは、前記フィードバックョーモーメント基本要求値 Ml dmdと同じ極性に向かって 最大となるモーメントである。なお、 FxcancLnに対応する横力の極性は、 S300で求め た Fy0_nの極性( = Fyact_nの極性)と同じである。
[0432] この場合、前輪 Wl, W2に係わる Fxmmax_n (n= 1または 2である場合の Fxmmax_n )は、推定摩擦係数/ z estm (最新値)と第 n輪 Wnの実接地荷重 Fzactjiと実前輪舵角 S f_actとから算出される。また、後輪 W3, W4に係わる Fxmmax_n (n= 3または 4であ る場合の Fxmmaxji)は、推定摩擦係数 estm (最新値)と第 n輪 Wnの実接地荷重 Fz act_nとカゝら算出される。
[0433] ここで、代表的に、第 1輪 W1に係わる Fxmmax_lの算出の仕方を図 25を参照して 説明する。同図 25は、実車 1を平面視で模式的に示しており、図中の楕円 C1は、前 記式 40により表される楕円を示している。実車 1の重心点 Gのまわりに発生するモー メントが最大となるような Fx_l, Fy_lの組に対応する楕円 C1上の点は、水平面上で第 1輪 W1の中心点と実車 1の重心点 Gとを結ぶ直線 uOと平行な直線のうち、楕円 C1 に接する直線 umと楕円 C1との接点 Psである。なお、この例では、 Fxcand_lが負の( 制動方向の)駆動 ·制動力であるとし、接点 Psにおける Fx_lも負の値であるとしている
[0434] ここで、第 1輪 W1の前後方向に対して直線 um (または uO)がなす角度を図示の如 く Θとおくと、接点 Psにおける、 Fy_lの Fx_lに対する変化率 d Fy_l/ d Fx_lは、次式 41で示す如く tan Θに等しい。さらに、 tan Θは、実前輪舵角 δ から、次式 42の幾 何学的演算により求められる。
[0435]
d Fy_l/ d Fx— 1 =tan Θ ……式 41 tan θ = (— Lf'sin δ f— act
+ (df/2) · cos δ f— act) / (Lf · cos δ f— act
+ (df/2) - sin δ f act)……式 42 なお、式 42の df、 Lfの意味は、前記図 13と同じである。
[0436] 一方、前記式 40によってから、次式 43が得られる。
[0437]
d Fy_l/ d Fx— 1 = (Fy0_l/ ( μ estm ' Fzact— I))2 · (Fx_l/Fy_l) ……式 43 前記式 41、 43と前記式 40と力ゝら、接点 Psにおける Fx_lの値、すなわち、 Fxmmax.l は、次式 44〖こより与えられることとなる。
[0438]
Fxmmax— 1 = μ estm ' Fzact— 1/ sqrt(l + FyO_l / (tan θ · μ estm ' Fzact— l 2)
……式 44 この式 44と前記式 42とが、 Fxmmax_lを求めるための式である。なお、 Fxcand_lが 正の値であるときには、 Fxmmax_lは、式 44の右辺の演算結果の符合を反転させた 値となる。
[0439] 他の車輪 W2〜W4についても、上記と同様に Fxmmax_n (n= l , 2, 3)を算出する ことができる。なお、後輪 W3, W4については、実舵角は 0であるので、その値は、必 要ない。
[0440] 図 24のフローチャートの説明に戻って、 S306力ら S314まで、前記第 1実施形態に おける図 19の S 104〜S 112までの処理と同じ処理が実行され、これにより、目標第 n 輪駆動 ·制動力 Fxcmdjiが決定される。
[0441] 次いで、 S316に進んで、 Fxcmdjiに対応するスリップ比を求め、それを目標第 n輪 目標スリップ比 Scmdjiとして決定する。この場合、例えば、第 n輪 Wnの駆動'制動力 とスリップ比との関係を表す、あら力じめ定められたマップに基づいて、目標第 n輪ス リップ比 Scmd_nが決定される。なお、ここで使用するマップは、 μ estmと、第 n輪 Wnの 実横すベり角 j8 Lactまたは 13 r_act (ある!/、は Fy0_n)との組に対応するマップである。
[0442] 補足すると、本実施形態では、第 n輪 Wnを本発明における第 k車輪とみなしたとき 、上記のように決定される目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxcmdjiが、本発明における駆動' 制動力操作用制御入力に相当する。なお、本実施形態では、各車輪 W1〜W4を本 発明における第 k車輪 (特定の車輪)としている。
[0443] また、 S300の処理によって Fy_0を求めることで、前記式 40の楕円関数が特定され ることとなるので、 S300の処理が、本発明における第 k楕円関数を決定する手段に 相当する。そして、上記のように目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxcmdjiを決定することで、 前記参考例 1で説明した条件(1)、(2)、(3)を満たすように (詳しくは、条件(1)を最 上位の優先条件、条件 (2)を次順位の優先条件として、これらの条件(1)〜(3)のい ずれかを満たすように)、 Fxcmdjiが決定されることとなる。なお、この場合において、 なお、 FxcancLnは、前記したように、前記式 (40)を制約条件として第 n輪 Wnで発生 可能な駆動 ·制動力の値の範囲内で前記無制限目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxdmdjiに 最も近い(一致する場合を含む)駆動 ·制動力の値である。従って、条件(3)は別の 言い方をすれば、目標第 n輪駆動,制動力 Fxcmdjiは、前記式 (40)の楕円関数に従 つて第 n輪 Wnで発生可能な駆動 '制動力の値の範囲内の値となり、且つ、可能な限 り無制限目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxdmdji (制御要求に従う駆動 ·制動力)に一致す る力もしくは近いこと (Fxdmdjiとの差の絶対値が最小になること)、という条件と同等 である。従って、条件(1)〜(3)は、それぞれ本発明における第 3要求条件、第 2要 求条件、第 1要求条件に相当する。この場合、前記最大モーメント発生時第 n輪駆動 •制動力 Fxmmaxjiが、本発明における最大モーメント発生時第 k車輪駆動 ·制動力 に相当する。
[0444] また、本実施形態でァクチユエータ動作目標値合成部 24が決定する各目標値が 本発明における実ァクチユエータ操作用制御入力に相当する。
[0445] また、本実施形態では、第 n輪 Wnを本発明における第 k車輪とみなしたとき、上記 のように決定される目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxcmdjiが、本発明における駆動 '制動 力操作用制御入力に相当する。
[0446]
[第 2実施形態]
次に、本発明の第 2実施形態を図 26を参照して説明する。なお、本実施形態は、 前記参考例 2と一部の処理のみが相違するので、その相違する部分を中心に説明し 、同一部分については説明を省略する。また、本実施形態の説明では、参考例 2と 同一の構成部分もしくは同一の機能部分については参考例 2と同じ参照符号を使用
する。
[0447] 本実施形態が、参考例 2と相違する点は、前記図 22に示したァクチユエータ動作 目標値合成部 24の最適目標第 n駆動'制動力決定部 241b_n (n= l, 2, 3, 4)の処 理だけである。この場合、本実施形態では、図示は省略するが、各最適目標第 n駆 動 ·制動力決定部 24 lb_nには、前記 FF総合第 n輪駆動 ·制動力 FFtotaLnおよび無 制限時第 n輪駆 ·制動力 Fxdmdjiに加えて、推定摩擦係数 estmと、第 n輪 Wnの実 路面反力(実駆動,制動力 Fxac u実横力 Fyac u実接地荷重 Fzactji)とが入力さ れる。そして、各最適目標第 n駆動'制動力決定部 241b_nは、入力された推定摩擦 係数 estmと、第 n輪 Wnの実路面反力とを基に、前記式 40により表される第 n輪 W nの駆動'制動力と横力との関係を推定し、その推定した関係を利用して、目標第 n 輪駆動 ·制動力 Fxcmdjiと目標第 n輪スリップ比 Scmd_nとを決定する。
[0448] 図 26は本実施形態における各最適目標第 n駆動 '制動力決定部 241b_nの処理を 示すフローチャートである。以下、説明すると、まず、 S400において、前記図 24の S 300と同じ処理が実行され、式 40の FyO_nの値が求められる。
[0449] 次 、で、 S402に進んで、前記 FF総合目標第 n輪駆動 ·制動力 FFtotaLnに対応す る横力 Fyff_nを求める。すなわち、前記式 40の Fx_n、 Fz_n、 μにそれぞれ FFtotal_n、 Fzact_n、 μ estmの値を代入すると共に、式 40の FyO_nに S400で求めた値を代入し て、 Fy_nについて解くことにより(換言すれば図中に示す式によって)、 Fyff_nの値を 決定する。
[0450] 次いで、 S404に進んで、第 n輪 Wnの駆動'制動力が FFtotaLnで、且つ横力が Fyff _nであったときに、これらの合力が実車 1の重心点 Gのまわりに発生するョ一方向の モーメントを求め、これを第 n輪 FFモーメント Mff_nとする。この処理は、前記図 24の S 204の処理と同様に行なわれる。
[0451] 次いで、 S406に進んで、上記の如く求めた Mff_nと前記 FB目標ブレーキモーメント MlbdmcLnとを加え合わせることにより、第 n輪 Wnの路面反力による実車 1の重心点 G まわりのモーメント (ョ一方向のモーメント)の仮目標値である仮目標モーメント候補 M cand_nが算出される。
[0452] 次 、で、 S408に進んで、前記式 40を制約条件として、第 n輪 Wnの路面反力(駆
動 ·制動力 Fx_nと横力 Fy_nとの合力)が実車 1の重心点 Gのまわりに発生するョ一方 向のモーメントが前記フィードバックョーモーメント基本要求値 Ml dmdの極性と同じ 極性に向力つて最大となるような路面反力の駆動 ·制動力 Fx_nを求め、これを最大モ 一メント発生時第 n輪駆動 ·制動力 Fxmmax_nとする。この処理は、前記図 24の S304 の処理と同じである。
[0453] 次 、で、 S410に進んで、前記式 40を制約条件として、第 n輪 Wnの路面反力(駆 動 ·制動力 Fx_nと横力 Fy_nとの合力)が実車 1の重心点 Gのまわりに発生するョ一方 向モーメントが McancLnに一致または最も近くなるときの Fx_nを求め、これを第 n輪 Wn の駆動 '制動力の候補 Fxcandji (第 n輪駆動 '制動力候補 Fxcandji)とする。ただし、 0 > Fxmmax— n > Fxcand— nまたは 0< Fxmmax— n< Fxcand— nとならな!/、よつに (換言す れば、 FxcancLnの符号が Fxmmax_nの符号と異なる力、または、 Fxcand_nの絶対値が Fxmmax_nの絶対値以下になるように)、 Fxcand_nが決定される。
[0454] この場合、 McancLnの絶対値が Fxmmax_nに対応する最大モーメントの絶対値以上 である場合には、 Fxmmax_nが FxcancLnとして決定される。
[0455] また、 McancLnの絶対値力 Fxmmax_nに対応する最大モーメントの絶対値よりも小 さい場合には、式 40の関係を満たす Fx_n, Fy_nの組のなかから、それらの合力が実 車 1の重心点 Gのまわりに発生するョ一方向のモーメントが McancLnに一致するような Fx_n, Fy_nの組が探索的に求められる。なお、この処理では、前輪 Wl, W2に関して は、式 40だけでなぐ実前輪舵角 S f_actの値も使用される。
[0456] この場合、 Fx_n, Fy_nの合力が実車 1の重心点 Gのまわりに発生するョ一方向のモ 一メントが McancLnに一致するような Fx_n, Fy_nの組は、 2組存在するものの、 Fxmmax _n< 0であるときには、 Fx_n>Fxmmax_nとなる方の Fx_nが FxcancLnとして決定され、 F xmmax_n>0であるときには、 Fx_nく Fxmmax_nとなる Fx_nが Fcand_nとして決定される
[0457] 力力る S410の処理により、式 40が満たされる範囲内において、 0 > Fxmmax_n > Fx cand_nまたは 0く Fxmmax_n< FxcancLnとならな!/、ようにしつつ、実車 1の重心点まわ りに発生するョ一方向のモーメントが McancLnに一致する力 もしくは最も近くなるよう に FxcancLnが決定される。
[0458] 次いで、 S412に進んで、 0>FFtotal_n>Fxcand_nであるか否かを判断する。そし て、この判断結果が YESであるときには、 S414に進んで、 Fxcand_nの値を Fxcmd_n に代入する。また、 S412の判断結果が NOであるときには、 S416に進んで、 FFtotal _nの値を Fxcmdjiに代入する。これにより、目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxcmdが決定され る。
[0459] 次!、で、 S418に進んで、 Fxcmdjiに対応するスリップ比を目標第 n輪スリップ比 Scm d_nとして決定する。この処理は、図 24の S316の処理と同じである。
[0460] 以上が、本実施形態における最適目標第 n駆動'制動力決定部 241b_nの処理の 詳細である。
[0461] 補足すると、本実施形態では、前記参考例 2に関して説明した如ぐ FB分配則 20 のァクチユエータ動作 FB目標値決定部 20bで決定される FB目標第 n輪ブレーキモ 一メント Ml dmd_n (n= l, 2, 3, 4)は、本発明におけるフィードバック制御入力に相 当する。すなわち、 Ml dmcLnは、それによる車輪 Wnの駆動 '制動力の操作に起因し て実車 1の重心点 Gのまわりに発生するョ一方向のモーメントの目標値としての意味 を持つ。
[0462] また、本実施形態では、前記第 1実施形態における条件(3)の代わりに、前記参考 例 2に関して説明した条件 (3) 'と同様の条件が用いられている。ただし、この場合、 前記参考例 2における車輪特性関係が、前記式 (40)の楕円関数に相当する。従つ て、本実施形態における条件(3) 'は、より詳しくは、前記式 (40)に従って第 n輪 Wn で発生可能な駆動 '制動力の値の範囲内の値となり、且つ、該車輪特性関係に従つ て第 n輪 Wnで発生可能な路面反力のうち、その駆動 *制動力成分が Fxcmdjiに等し V、路面反力によって実車 1の重心点 Gのまわりに発生するョ一方向のモーメントが可 能な限り前記 Mcand_nに一致する力もしくは近いこと (Mcand_nとの差の絶対値が最小 になること)、という条件である。そして、この条件(3) 'と、前記条件(1)、(2)とのうち 、前記条件(1)を最上位の条件、条件 (2)を次順位の条件とし、これらの条件(1)、 ( 2)、(3) 'をその優先順位に従って満足するように目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxcmdji が決定されている。この場合、前記 S410までの処理によって、結果的に、条件(2)を 満たし得る範囲内で、条件(3) 'をできるだけ満たすように、 Fxcmdjiが決定されること
となる。さらに、 S412〜S416の処理を経ることで、最優先の条件(1)を満たすように FxcmcLnが決定されることとなる。
[0463]
[第 3実施形態]
次に、本発明の第 3実施形態を図 27を参照して説明する。なお、本実施形態は、 前記第 1実施形態または第 2実施形態と一部の処理のみが相違するので、その相違 する部分を中心に説明し、同一部分については説明を省略する。また、本実施形態 の説明では、第 1実施形態または第 2実施形態と同一の構成部分もしくは同一の機 能部分については第 1実施形態または第 2実施形態と同じ参照符号を使用する。
[0464] ァクチユエータ動作 FB目標値は、本来、状態量偏差 γ err, β errに応じたフィード ノ ックョーモーメント基本要求値 Ml dmdを満足するように決定されること力 フィード ノ ック制御理論上は、理想的である。し力るに、前記第 1実施形態または第 2実施形 態では、不感帯処理部 221、リミッタ 222d_nなどの処理に起因して、ァクチユエータ 動作 FB目標値によって実車 1の重心点 Gのまわりに発生するョ一方向のモーメント には、 Mlbdmdに対して過不足を生じる。さらに、ァクチユエータ動作 FB目標値からァ クチユエータ動作目標値までの各処理機能部(ァクチユエータ動作目標値合成部 24 など)における非線形性 (リミッタや飽和特性など)の影響によって、ァクチユエータ動 作 FB目標値に応じて実車 1の各車輪 W1〜W4で発生する路面反力がァクチユエ一 タ動作 FB目標値に対して過不足を生じる場合がある。従って、実車 1の各車輪 W1 〜W4で発生する路面反力は、状態量偏差 γ err, β errを 0に近づけるための理想 的な路面反力に対して過不足を生じる場合がある。
[0465] 一方、実車 1の運動の状態量とモデル車両の運動の状態量との差に対する影響に 関しては、その差を実車 1のァクチユエータ装置 3にフィードバックして付カ卩的な路面 反力(当該差を 0に近づけるための路面反力)を実車 1に作用させることと、この付カロ 的な路面反力を(一 1)倍してなる外力をモデル車両に作用させることとは等価である
[0466] そこで、本実施形態では、実車 1の各車輪 W1〜W4で発生する路面反力の、理想 的な路面反力に対する過不足分に応じて、モデル車両に作用させる仮想外力を修
正し、それによつて、該過不足分を補償する。
[0467] 以下、図 27を参照して説明すると、本実施形態では、 FB分配則 20の仮想外力決 定部 20aは、前記第 1実施形態または第 2実施形態における機能に加えて、処理部 215を備えている。
[0468] 処理部 215では、まず、ァクチユエータ動作 FB目標値決定部 20bで前述の通り決 定されたァクチユエータ動作 FB目標値 (今回値)を処理部 215aに入力する。そして 、この処理部 215aによって、該ァクチユエータ動作 FB目標値に起因して実車 1の各 車輪 Wl〜W4に作用する路面反力の補正量 (ァクチユエータ動作 FF目標値に対応 して発生する路面反力からの補正量)である路面反力補正量を算出する。この場合、 路面反力補正量は、次にように求められる。
[0469] すなわち、ァクチユエータ動作 FB目標値 (今回値)とァクチユエータ動作 FF目標値
(今回値)とを基にァクチユエータ動作目標値合成部 24で決定される目標第 n輪駆動 •制動力 Fxcmd_n (n= l, 2, 3, 4)および目標スリップ比 Sxcmd— n (n= l, 2, 3, 4)に 応じて、第 n輪 Wnに作用する路面反力(駆動 ·制動力および横力)を推定する。この とき、第 n輪 Wnの駆動 '制動力の推定値は、 Fxcmdjiとし、横力は例えば前記車輪特 性関係に基づくマップなどを使用して求めればよい。より具体的には、例えば前記 S 200および S202、式 40などを使用して横力を求めればよい。また、ァクチユエータ 動作 FB目標値を 0としてァクチユエータ動作目標値合成部 24と同じ処理を実行する ことにより、ァクチユエータ動作 FB目標値を 0とした場合の各第 n輪 Wn(n= l, 2, 3 , 4)の目標駆動'制動力および目標スリップ比を求め、それに応じて第 n輪 Wnに作 用する路面反力(駆動 ·制動力および横力)を推定する。そして、上記のようにァクチ ユエータ動作 FB目標値を異なるものとして求めた第 n輪 Wnの路面反力の差を求め 、その差を第 n輪 Wnの路面反力補正量として決定する。
[0470] 次いで、上記の如く求めた路面反力補正量を処理部 215bに入力する。そして、こ の処理部 215bによって、各車輪 W1〜W4の路面反力補正量 (路面反力補正量のう ちの駆動 *制動力成分および横力成分の合力)に起因して、実車 1の重心点 Gのま わりに発生するトータルのモーメント Ml (ョ一方向のモーメント)を算出する。具体的 には、各第 n輪 Wn (n= l, 2, 3, 4)の路面反力補正量と、実前輪舵角 δ f_act等 (各
車輪 W1〜W4と実車 1の重心点との幾何学的関係を規定するパラメータ)とを基に、 第 n輪 Wnの路面反力補正量が実車 1の重心点 Gのまわりに発生するョ一方向のモ 一メントを求める。そして、それを全ての車輪 W1〜W4について合成することにより、 Mlが求められる。
[0471] 次!、で、このモーメント Ml力 ァクチユエータ動作 FB目標値決定部 20bの処理部 220で決定されたフィードバックョーモーメント基本要求値 Ml dmd (今回値)を減算 器 215cで減じることにより、実車ョーモーメント偏差 Ml _err ( = Mlb— Mlbdmd)を求め る。なお、この実車ョーモーメント偏差 Ml _err力 ァクチユエータ動作 FB目標値に起 因して実車 1で発生するョ一方向のモーメントの、 Mlbdmdからの過不足分を意味す る。
[0472] 次いで、この実車ョーモーメント偏差 Ml _errに、乗算部 215dにて所定のゲイン Cl を乗じることにより仮想外力補償モーメント Mvir_cを決定する。ゲイン Cl は、 0く Clb ≤1となる値(1以下の正の値)である。この仮想外力補償モーメント Mvir_cは、ァクチ ユエータ動作 FB目標値に起因して実車 1で発生するョ一方向のモーメントの、 Mlbd mdからの過不足分に起因して発生する実車 1とモデル車両との間の状態量偏差を 0 に近づけるようにモデル車両の重心点 Gdのまわりに発生させるべきョー方向のモー メントを意味する。
[0473] 次 1ヽで、前記 γ β制限器 202で前述した如く決定される仮想外力(前記減算器 20 7の出力)を第 2仮値 Mvir 、=Mvirtmp— Mvir— over) , Fvir 、 = Fvirtmp— Fvir— over) とし、この第 2仮値 Mvir' , Fvir'と仮想外力補償モーメント Mvir_cとを加算器 215eで 加え合わせる。これにより、仮想外力 Mvir, Fvir (今回値)を決定する。具体的には、 第 2仮値 Mvir,と Mvir_cとの和を Mvirとして決定し、第 2仮値 Fvir'をそのまま Fvirとし て決定する。
[0474] 以上説明した以外の構成および処理は、前記第 1実施形態または第 2実施形態と 同じである。
[0475] 本実施形態によれば、状態量偏差 γ err, β errカもァクチユエータ動作目標値まで の非線形性が、 jS err, γ errの挙動に与える影響が低減され、 γ err, errは、線形 性を高く保ちながら 0に収束しょうとする。換言すれば、状態量偏差 γ err, β errを 0
に収束させるためのフィードバックゲインの総和力 前記式 23におけるゲインマトリク ス Kl dmdと式 15におけるゲインマトリクス KMrとの差(Klbdmd— KlVir)に近いものとな る。
[0476] 換言すれば、仮想外力の上記第 2仮値 Mvir' , Fvir'をそのまま仮想外力 Mvir, Fvi rとして規範動特性モデル 16に入力したとした場合に前記モデル車両に作用する外 力(ョ一方向のモーメント)と前記ァクチユエータ動作 FB目標値に起因して実車 1に 作用する外力(ョ一方向のモーメント Ml )との差と、状態量偏差 γ err, β errとの間の 関係に比べて、第 2仮値 Mvir' , Fvir,を仮想外力補償モーメント Mvir_cで修正してな る仮想外力 Mvir, Fvirを規範動特性モデル 16に入力した場合に前記モデル車両に 作用する外力(ョ一方向のモーメント)と前記ァクチユエータ動作 FB目標値に起因し て実車 1に作用する外力(ョ一方向のモーメント Mlb)との差と、状態量偏差 γ err, β e rrとの間の関係がより線形性の高い関係になる。
[0477]
次に、前記第 1〜第 3実施形態の変形態様をいくつか説明する。
[変形態様 1]
前記第 1〜第 3実施形態では、規範状態量として規範ョーレート γ dと規範車両重 心点横すベり角 j8 dとを用いた力 次のようにしてもよい。例えば規範動特性モデル により規範ョーレート γ οΐだけを規範状態量として逐次求める。そして、実ョーレート Ύ actとその規範ョーレート γ dとの差である状態量偏差 γ errを 0に近づけるように、規 範動特性モデルと実車 1のァクチユエータ装置 3とを操作するようにしてもよい。この 場合、前記式(1)により表した規範動特性モデル 16の代わりに、例えば、図 28に示 す規範動特性モデル 56によって、規範ョーレート γ dを逐次決定するようにしてもよ い。
[0478] 以下、図 28の規範動特性モデル 56をより詳細に説明すると、この規範動特性モデ ル 56には、ステアリング角 Θ hと、実走行速度 Vactと、規範動特性モデル 56の操作 用の制御入力( γ errを 0に近づけるための制御入力)としての仮想外力モーメント(ョ 一方向のモーメント) Mvirとが制御処理周期毎に逐次入力される。なお、 0 hと Vact は最新値 (今回値)であり、 Mvirは前回値である。
[0479] そして、規範動特性モデル 56は、まず、入力された Θ h, Vactカゝら整定目標値決定 用マップ 56aにより、整定目標ョーレート γ∞を求める。該整定目標ョーレート γ∞は 、 Θ hと Vactとがそれらの入力値に定常的に維持されたとした場合のモデル車両 (本 実施形態での規範動特性モデル 56上の車両)のョーレートの収束値を意味する。な お、整定目標値決定用マップ 56aは、推定摩擦係数 estmに応じて設定しておくこ とが望ましい。
[0480] 次 、で、規範ョーレート γ dの前回値 (規範動特性モデル 56から前回の制御処理 周期で求めた値)と、上記整定目標ョーレート γ∞とが、フライホイール追従則 56bに 入力される。そして、このフライホール追従制御則 56bにより、フライホイール用 FBモ 一メント Ml を決定する。ここで、本実施形態では、モデル車両のそのョー方向の回 転運動を水平なフライホイール(回転軸が鉛直方向の軸であるフライホイール)の回 転運動により表現する。そして、そのフライホイールの回転角速度を規範ョーレート γ dとして出力する。
[0481] そこで、フライホイール追従則 56bは、そのフライホイールの回転角速度、すなわち 、規範ョーレート γ οΐを前記整定目標ョーレート γ∞に収束させるように、フィードバッ ク制御則 (例えば比例則、比例 ·微分則など)により、フライホイールに入力するモー メント(フライホールに入力する外力の次元の制御入力)としての前記フライホイール 用 FBモーメント Mf を決定する。
[0482] 次いで、規範動特性モデル 56は、加算器 56cにおいて、この Mlbに、仮想外力モ 一メント Mvirをカ卩ぇ合わせることにより、フライホイールの入力(モーメント)を決定する 。そして、この入力モーメントを、処理部 56dにおいて、フライホイールの慣性モーメン ト Jにより除算することにより、フライホイールの回転角加速度を求める。さらにその回 転角加速度を積分してなる値(図では、その積分を演算子「lZs」により表している) を規範ョーレート γ dとして出力する。
[0483] なお、フライホイールの慣性モーメント Jの値は、例えば実車 1の重心点 Gのまわりの 慣性モーメントの値と同一力、もしくはほぼ同一の値に設定しておけばよい。あるいは 、実車 1の走行中に同定した値を使用してもよい。
[0484] 以上が、規範動特性モデル 56の処理の詳細である。
[0485] 補足すると、この変形態様 1における規範動特性モデル 56以外の処理については 、例えば前記第 1実施形態または第 2実施形態 (もしくは参考例 1)と同様でよい。だ だし、前記第 1実施形態または第 2実施形態の仮想外力決定部 20aの処理では、例 えば、 j8 err、 j8 da、 j8 overを 0として、 Mvirを決定し、その Mvirを規範動特性モデル 5 6にフィードバックする。この場合、 y daに関しては、例えば Vact, 0 hの今回値と、 y errに応じた Mvirの仮値 Mvirtmpとから規範動特性モデル 56上の車両のョーレートの 所定時間後の値を予測し、その予測値を γ daとして使用すればよい。あるいは、例え ば γ actの今回値、もしくは、 γ actと γ dとの線形結合値を γ daとして使用するようにし てもよい。また、ァクチユエータ動作 FB目標値決定部 20bの処理では、 |8 errを 0とし て、前記参考例 1で説明した処理を実行する。なお、この変形態様 1では、規範操作 量決定部 14の処理は不要である。これ以外は、前記第 1実施形態または第 2実施形 態 (もしくは参考例 1)で説明した処理と同じでょ 、。
[0486]
[変形態様 2]
前記第 1〜第 3実施形態では、車両 (実車 1およびモデル車両)の横方向の並進運 動に関する基底の状態量、回転運動に関する基底の状態量として (本発明における 第 1状態量として)、車両重心点横すベり角 β、ョーレート γを使用したが、これら以 外の状態量を使用してもよい。すなわち、適当な変換マトリクスによって、車両の運動 の記述を j8と γとを基底とする系から、それ以外の状態量の組を基底とする系に変 換してちよい。
[0487] 例えば、車両の重心点の横すベり速度(走行速度 Vactの横方向成分)である車両 横すベり速度 Vyを車両重心点横すベり角 βの代わりに用いてもよい。補足すると、 車両重心点横すベり角 j8ゃョーレート γに比べて、車両の走行速度 Vactの変化が 緩慢であり、該走行速度 Vactが一定であるとみなせる場合には、次式 50a, 50bによ つて、 βならびに d β /άί ( βの時間微分値)を、それぞれ、 Vy、 dVy/dt (Vyの時間微 分値)に変換することができる。
[0488]
Vy=Vact - β ……式 50a
dVy/dt=Vact-dJ8/dt 式 50b また、例えば車両の重心点の横すベり加速度 (Vyの時間的変化率)である車両横 すべり加速度 a yとョーレート γとを基底の状態量として使用してもよ!、。
[0489] 補足すると、車両横すベり加速度 ayは、車両横すベり速度 Vy=Vact' βの時間微 分値である。すなわち、次式 51が成り立つ。
[0490]
ay=d(Vact- j8 )/dt = dVact/dt- β +Vact-dj8/dt ……式 51 さらに、横すベり角 βゃョーレート yに比べて車両の走行速度 Vactの変化が緩慢 であり、 Vactが一定とみなせる場合 (dVact/dt^Oとみなせる場合)には、前記式 01と 式 51とに基づいて、近似的に次式 52が成立する。
[0491]
y = Vact · d j8 /dt = al 1 · Vact - β +al2-Vact- y ……式 52 従って、次式 53で示す変換式によって、 j8と γとを基底とする系は、 ayと γとを基 底とする系に変換される。
[0492] [数 10]
-…"式 53
[0493] 上記のように、適当なマトリスクによって、車両の運動の記述を j8と γとを基底とする 系から、 Νγ≥ γとを基底とする系や、 ayと γとを基底とする系などに変換することが できる。そして、このように車両の運動の基底を変換した場合には、前記参考例 1で 説明した、状態量 (ョーレートおよび車両重心点横すベり角)に係わる行列の各要素 値は、該実施形態と異なるものになるものの、それ以外に関しては、前記各実施形態 (もしくは参考例 1)における「車両重心点横すベり角」を「車両横すベり速度 Vy」、あ るいは、「車両横すベり加速度」に読み替えればよいこととなる。従って、 Vyと γとの 組、あるいは、 ayと γとの組を状態量として使用した実施形態を前記第 1〜第 3実施
形態と同様に構築できる。
[0494] なお、車両横すベり加速度 a yの代わりに、これに車両の求心加速度(=Vact, γ ) を加えた横加速度 a y, ( = a y+Vact ' γ )を用いてもよい。
[0495] さらに、車両の重心点での横すベり角 βや横すベり速度 Vyの代わりに、重心点以 外の位置 (例えば後輪の位置)における車両の横すベり角や横すベり速度、横すベ り加速度、あるいは横加速度を用いてもよい。この場合も、適当なマトリクスによって、 車両の運動の記述を、車両重心点横すベり角 j8とョーレート γとを基底とする系から 、車両の重心点以外の位置における車両の横すベり角や横すベり速度、横すベり加 速度、あるいは横加速度と、ョーレート γとを基底とする系に変換することができる。
[0496] また、前記 FB分配則 20における制限対象量にあっても、実車 1あるいはモデル車 両の車両重心点横すベり角 /3の代わりに、その重心点の横すベり速度や横すベり加 速度、あるいは横加速度の予測値や今回値 (最新値)、あるいはフィルタリング値を使 用するようにしてもよい。さらに、車両の重心点以外の位置における車両の横すベり 角や横すベり速度、横すベり加速度、あるいは横加速度の予測値や今回値 (最新値 )、あるいは、フィルタリング値を制限対象量として使用するようにしてもよい。
[0497]
[変形態様 3]
前記第 1〜第 3実施形態では、状態量偏差 γ err, β errを 0に近づけるためのモデ ル操作用の制御入力として、仮想外力 Mvir, Fvirを使用した力 車両モデル操作用 制御入力は仮想外力に限られるものではない。例えば、実車 1が全ての車輪 Wl〜 W4を操舵可能とするステアリング装置を備えているか否かによらずに、モデル車両 の全ての車輪を操舵輪とする。そして、仮想外力に相当する路面反力の補償量 (補 正要求量)をモデル車両に発生させるように(ひ 、ては状態量偏差を 0に近づけるよ うに)、モデル車両の操舵輪の舵角とモデル車両の車輪の駆動 ·制動力とを操作する ようにしてもよい。この場合、規範動特性モデルが線形系(規範動特性モデル上の路 面反力に飽和特性を持たな 、系)である場合には、モデル車両の操舵輪の舵角とモ デル車両の車輪の駆動'制動力とを操作することで、モデル車両に仮想外力を付与 する場合と同等の効果を持たせることができる。
[0498] 例えば、規範動特性モデルの動特性を表す式として前記式 01の代わりに、次式 6
0を用いてもよい。
+
0
+ 6 ' '式 60
Fx4fb -Fx3fb
[0500] この式 60により表される規範動特性モデルは、モデル車両の前輪の舵角の補償量
S fj と、後輪の舵角の補償量 (補正要求量) S rj と、第 1〜第 4輪の駆動'制動力 の補償量(補正要求量) Fxll , Fx21 , Fx31b, Fx41 とをモデル操作用のフィードバッ ク制御入力とするモデルである。なお、式 60における all, al2, a21, a22, bl, b2は、 前記式 01の但し書きで示したものと同じでよい。また、 b3, b4は、例えば b3 = 2'KrZ (m.Vd)、 b4= 2'Lr'KrZlとすればよい。また、式 60の右辺の第 4項は、モデル車 両の前輪の駆動'制動力の補償量 Fxllb, Fx21 がモデル車両の重心点のまわりに発 生するモーメント(これは、前記図 13のように 4個の車輪 W1〜W4を備えたモデル車 両の前輪 W1に Fxllbの駆動'制動力を発生させ、前輪 W2に Fx21 の駆動'制動力を 発生させた場合に、該モデル車両の重心点のまわりに発生するモーメントを意味す る)である。また、第 5項は、モデル車両の後輪の駆動 '制動力の補償量 Fx31 , Fx41b がモデル車両の重心点のまわりに発生するモーメント(これは、前記図 13のように 4 個の車輪 W1〜W4を備えたモデル車両の後輪 W3に Fx31 の駆動'制動力を発生さ せ、後輪 W4に Fx41 の駆動 '制動力を発生させた場合に、該モデル車両の重心点の まわりに発生するモーメントを意味する)である。従って、これらの第 4項および第 5項 の係数 b5, b6は、それぞれ、少なくともモデル車両の前輪のトレッド、後輪のトレッドに 応じて定まる係数である。該係数は、モデル車両の前輪の舵角あるいは後輪の舵角 に応じて補正してもよい。
[0501] このような式 60により表される規範動特性モデルを使用した場合、前輪の舵角の補 償量 δ fj および後輪の舵角の補償量 δ rj は、例えば次式 61a, 61bを用いて決定
するようにすればよい。式 61aは前記式 15に対応する式であり、式 61bは前記式 17 、 18a, 18bに対応する式である。
[0502] [数 12]
d f— f tmp
'式 6
δ rjbtmpj
d fjb 一一 o f— fbtmp Kmdlstrov i I mdlstrov12 β over
δ r fb S r—btmp Kmdlstrov21 Kmdlstrov22 over
'式 6 1 b
[0503] δ f_lbtmp、 δ rjbtmpは、それぞれ前輪の舵角の補償量の仮値、後輪の舵角の補 償量の仮値を意味し、 jS err, γ err, β over, γ overは、前記参考例 1で説明したもの と同じである。
[0504] また、モデル車両の第 1〜第 4輪の駆動 '制動力の補償量 (補正要求量) Fxll , Fx 2ft), Fx31b, Fx41、あるいは、前輪の駆動.制動力の補償量の差(Fx2fc— Fxllb)およ び後輪の駆動 '制動力の補償量の差 (Fx21 — Fxll )は、例えば 0とすればよい。
[0505]
[その他の変形態様]
前記第 1〜第 3実施形態における各処理部の入力値や出力値 (検出値、推定値、 目標値など)は、適宜、フィルタ(ローパスフィルタ、ノ、ィパスフィルタ、位相補償要素 など)に通すようにしてもよい。
[0506] また、制御装置 10の各処理機能部では、第 1〜第 3実施形態と等価になるように、 あるいは、近似的に等価になるように、処理を変換したり、処理の順番を変更してもよ い。
[0507] また、各リミッタは、その入力と出力との関係が折れ線状のグラフで表されるもので なくても、例えば S字状のグラフで表されるようなリミッタを用いてもよい。
[0508] また、規範動特性モデルの精度を高めるために、該モデルを空気抵抗や、路面の 傾斜角などを加味して構成してもよ ヽ。
[0509] また、前記各実施形態で使用する各ゲインは、実走行速度 Vact、推定摩擦係数 μ
estm等に応じて、逐次変更することが望ましい。
[0510] また、前記第 1〜第 3実施形態では、状態量偏差 γ err, β err (第 1状態量偏差)に 応じて規範動特性モデル 16上の車両を操作するようにした。ただし、状態量偏差 y e rr, j8 errを規範動特性モデル 16にフィードバックしないようにしてもよい。この場合に は、規範動特性モデル 16では、前記式(1)の Mvir, Fvirを常に 0にして、あるいは、 式(1)の Mvir, Fvirに関する項を省略した式によって、規範状態量を逐次求めるよう にすればよい。
[0511] また、前記第 1実施形態では、条件(1)、(2)、(3)をそれらの優先順位に従って満 足するように目標第 n輪駆動 ·制動力 Fxcmdjiおよび目標第 n輪スリップ比 Scmd_nを 決定するようにした。ただし、例えば条件(3)だけを満足するように Fxcmdjiおよび Sc md_nを決定するようにしてもよい。この場合には、図 24の S302で求められる FxcancL nを Fxcmdjiとして決定すると共に、これに対応するスリップ比を Scmd_nとして決定す るようにすればよい。また、条件(1)、(3)をそれらの優先順位に従って満足するよう に Fxcmdjiおよび Scmd_nを決定するようにしてもよい。この場合には、図 24の S304、 S306および S310の処理を省略すればよい。また、条件(1)、(2)をそれらの優先順 位に従って満足するように Fxcmdjiおよび ScmcLnを決定するようにしてもよ!、。この場 合には、図 24の S312および S314の処理を省略すればよい。
[0512] 同様に、前記第 2実施形態では、条件(1)、(2)、(3) 'をそれらの優先順位に従つ て満足するように Fxcmdjiおよび ScmcLnを決定する代わりに、条件(3) 'だけを満足 するように Fxcmdjiおよび ScmcLnを決定してもよい。この場合には、図 26の S410に おける但し書きの要件を省略すると共に、 S408、 S412および S416の処理を省略 すればよい。また、条件(1)、(3) 'をそれらの優先順位に従って満足するように Fxcm d_nおよび ScmcLnを決定するようにしてもよい。この場合には、図 26の S408の処理を 省略すると共に、 S410における但し書きの要件を省略すればよい。また、条件(1)、 (2)をそれらの優先順位に従って満足するように Fxcmdjiおよび ScmcLnを決定するよ うにしてもよい。この場合には、図 26の S412および S416の処理を省略すればよい。
[0513] また、前記条件(1)あるいは(2)を満たすための各車輪 W1〜W4の駆動 *制動力 あるいはスリップ比を制限する範囲に関しては、「〇〇以下」(〇〇は、ある境界値を
意味する) t 、うように規定する代わりに、「〇〇に C1を乗じてなる値以下」と 、うよう に当該範囲を規定するようにしてもよい。ここで、 C1は補正係数を意味し、 1に近い 値に設定される。
[0514] また前記第 1〜第 3実施形態では、 4輪の車両 1を例に採って説明したが、自動二 輪車などの車両においても本発明を適用することができる。
産業上の利用可能性
[0515] 以上説明したことから明らかなように、本発明は、自動車や自動二輪車の運動を高 いロバスト性で所望の運動に制御し得るものとして有用である。
図面の簡単な説明
[0516] [図 1]本発明の実施形態における車両の概略構成を示すブロック図。
[図 2]本発明に関連した参考例 1および第 1実施形態における車両に備えた制御装 置の全体的な制御処理機能の概略を示す機能ブロック図。
[図 3]参考例 1および第 1実施形態における規範動特性モデル (車両モデル)上の車 両の構造を示す図。
[図 4]参考例 1および第 1実施形態における規範操作量決定部の処理機能の詳細を 示す機能ブロック図。
[図 5]参考例 1および第 1実施形態における規範操作量決定部に備える遠心力過大 化防止リミッタの処理を説明するためのグラフ。
[図 6]参考例 1および第 1実施形態における遠心力過大化防止リミッタの処理の他の 例を説明するためのグラフ。
[図 7]参考例 1および第 1実施形態における遠心力過大化防止リミッタの処理の他の 例を説明するためのグラフ。
[図 8]参考例 1および第 1実施形態における規範操量決定部で第 2制限済み前輪舵 角 δ f_ltd2を決定するための処理の他の例を示す機能ブロック図。
[図 9]参考例 1における FB分配則の処理機能を示す機能ブロック図。
[図 10]参考例 1における仮想外力決定部の処理の他の例を示す機能ブロック図。
[図 11]参考例 1における γ β制限器の処理の他の例を説明するためのグラフ。
[図 12]参考例 1および第 1実施形態におけるァクチユエータ動作 FB目標値決定部の
処理を示す機能ブロック図。
圆 13]参考例 1および第 1実施形態におけるァクチユエータ動作 FB目標値決定部の 処理で使用する変数を説明するための図。
圆 14]図 14 (a) , (b)は、参考例 1および第 1実施形態におけるァクチユエータ動作 F
B目標値決定部の処理で使用する分配ゲインの設定例を示すグラフ。
圆 15]図 15 (a)〜(e)は、参考例 1および第 1実施形態におけるァクチユエータ動作
FB目標値決定部の処理の他の例で使用するマップを例示する図。
圆 16]図 16 (a)〜(e)は、参考例 1および第 1実施形態におけるァクチユエータ動作
FB目標値決定部の処理の他の例で使用するマップを例示する図。
圆 17]参考例 1および第 1実施形態における FF則の処理を示す機能ブロック図。
[図 18]参考例 1におけるァクチユエータ動作目標合成部の処理を示す機能ブロック 図。
圆 19]参考例 1におけるァクチユエータ動作目標合成部に備えた最適目標第 n輪駆 動 ·制動力決定部の処理を示すフローチャート。
[図 20]参考例 1および第 1実施形態におけるァクチユエータ動作目標合成部に備え た最適目標アクティブ舵角決定部の処理を示す機能ブロック図。
圆 21]参考例 2および第 2実施形態におけるァクチユエータ動作 FB目標値決定部の 処理を示す機能ブロック図。
[図 22]参考例 2におけるァクチユエータ動作目標値合成部の処理を示す機能ブロッ ク図。
圆 23]参考例 2におけるァクチユエータ動作目標合成部に備えた最適目標第 n輪駆 動 ·制動力決定部の処理を示すフローチャート。
圆 24]第 1実施形態におけるァクチユエータ動作目標合成部に備えた最適目標第 n 輪駆動'制動力決定部の処理を示すフローチャート。
[図 25]図 24の S304の処理の一例を説明するための図。
[図 26]第 2実施形態におけるァクチユエータ動作目標合成部に備えた最適目標第 n 輪駆動'制動力決定部の処理を示すフローチャート。
圆 27]第 3実施形態における FB分配則の仮想外力決定部の処理を示す機能ブロッ
ク図。
圆 28]本発明の実施形態の変形態様 1における規範動特性モデルの処理を示す機 會 ロック図。