明 細 書
光学活性 2_ (N—置換アミノメチル) _ 3—ヒドロキシ酪酸エステル類の 製造方法
技術分野
[0001] 本発明は、光学活性な 2— (N—置換アミノメチル)—3—ヒドロキシ酪酸エステル類 の製造方法に関する。当該化合物は、例えば光学活性を必要とする医薬品の合成 原料及び中間体として有用な化合物である。
背景技術
[0002] 光学活性な 2— (N—置換アミノメチル)—3—ヒドロキシ酪酸エステル類、とりわけ、
(2S, 3R)の立体配置を有する化合物は、チェナマイシンに代表される j8—ラタタム 系抗生物質の合成中間体として重要な化合物である。このものの製造方法としては、 2- (N—置換アミノメチル)—3—ォキソ酪酸エステルの 3位のカルボ-ル基を、ルテ -ゥム光学活性ホスフィン錯体を用いる水素添加反応によって立体選択的かつ触媒 的に還元する方法が知られている(非特許文献 1、特許文献 1)。しかし、この触媒的 還元による方法は、高い立体選択性を得るためには非常に高価な光学活性ホスフィ ン配位子を用いる必要がある、 1〜: LOMPa程度の高い水素圧力を必要とするなど、 工業的な製造を考える上では経済性の観点力 必ずしも満足できるものではなかつ た。
[0003] 一方、酵素や微生物を触媒とする当該エステル類の還元反応についての報告もあ る。すなわち、 2—ベンズアミドメチル— 3—ヒドロキシ酪酸ェチルをパン酵母を用いて 還元した場合には、 (2S, 3S)体と(2R, 3S)体の混合物が得られる(特許文献 2)。 また、 2 -ベンズアミドメチル— 3—ヒドロキシ酪酸ェチルを微生物の菌体を用 、て還 元した場合には、使用する微生物の種類によってさまざまな混合比の(2R, 3S)体と (2S, 3S)体の混合物が得られる(非特許文献 2)。さらに、クルイべロマイセス 'マル キアヌス(Kluyveromyces marxianus)由来の還元酵素を用いて 2—フタロイルアミノメ チルー 3—ォキソ酪酸ェチルを還元した場合には、(2S, 3R)体の立体配置を有す る化合物が検出された (特許文献 3、非特許文献 3)。
特許文献 1 :特開平 2— 134349号公報
特許文献 2:特開昭 63 - 297360号公報
特許文献 3 :米国特許出願公開第 2003Z0139464号明細書
非特許文献 1: R.Noyoriら, Stereoselective hydrogenation via dynamic kinetic resol ution", J. Am. Chem. Soc, 111 , 9134 (1989)
非特許文献 2 : Claudio Fugantiら, "Microbial Generation of (2R,3S)- and (2S,3S)- Et hyl 2- Benzamidomethyl- 3- hydroxybutyrate, a key intermediate in the synthesis of ( 3S, 1 'R)— 3— (1,— hydroxyethyl)azetidin— 2— one", J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1 , (1993 ) 2247
非特許文献 3 : Joo Hwan Chaら, "Stereochemical control in diastereoselective reduct ion of a -substituted- β— ketoesters using a reductase purified from Kluyveromyces marxianus", Biotechnol. Lett. 24, 1695 (2002)
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0004] 本発明の課題は、光学活性な 2— (N 置換アミノメチル)—3 ヒドロキシ酪酸エス テル類、特に (2S, 3R)の立体配置を有する該化合物を工業的に製造する方法を提 供することにある。これらの化合物は、例えば j8—ラタタム系抗生物質の合成中間体 として利用される。
課題を解決するための手段
[0005] 本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、 2—(N—置換アミノメチ ル) 3 ォキソ酪酸エステル類のカルボ-ル基を立体選択的に還元し、 (2S, 3R) の立体配置を有する 2—(N—置換アミノメチル) 3 ヒドロキシ酪酸エステル類に 変換する能力を有する酵素源を発見し、本発明を完成するに至った。
[0006] すなわち、本発明は、一般式 (5):
[0008] (式中、 R1は置換されていてもよい低級アルキル基、ァリル基、置換されていてもよい ァリール基、または置換されていてもよいァラルキル基を表し、 R3及び R2は、
1) R3が水素原子で、 R2が置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていても よい低級アルコキシ基、置換されていてもよいァリール基、または置換されていてもよ V、ァラルキルォキシ基を表すか、
2) R3と— COR2がー体となってフタロイル基を表す。)で示される光学活性 2— (N— 置換アミノメチル) 3—ヒドロキシ酪酸エステル類の製造方法であって、一般式 (6):
[0009] [化 8]
[0010] (式中、
R
2、及び R
3は前記と同じ)で示される 2— (N 置換アミノメチル)—3—ォ キソ酪酸エステルに、該化合物を(2S, 3R)の立体配置を有する光学活性 3 ヒドロ キシ酪酸エステルに立体選択的に還元する活性を有する酵素源を作用させることを 特徴とする方法に関する。
発明の効果
[0011] 本発明によって、医薬等の中間体として有用な、 (2S, 3R)の立体配置を有する 2 一(N—置換アミノメチル) 3—ヒドロキシ酪酸エステル類を工業的に製造する方法 が提供される。
発明を実施するための最良の形態
[0012] 以下、実施形態に基づいて本発明を詳述する。
[0013] 1.基質及び生成物
本発明での還元反応に使用される基質の例示としての 2—(N 置換アミノメチル) 3—ォキソ酪酸エステル類は、一般式 (6):
[0014] [化 9]
[0015] で表される化合物である。
[0016] 式中、 R1は置換されていてもよい低級アルキル基、ァリル基、置換されていてもよい ァリール基、または置換されていてもよいァラルキル基を表し、 R3及び R2は、
1) R3が水素原子で、 R2が置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていても よい低級アルコキシ基、置換されていてもよいァリール基、または置換されていてもよ V、ァラルキルォキシ基を表すか、
2) R3と COR2がー体となってフタロイル基を表す。
[0017] 即ち、 R3及び R2が上記 1)の組み合わせの場合には、前記式 (6)で示される化合物 は、下記式(2) :
[0018] [化 10]
[0019] (式中、 R
1は前記と同じ、 R
2は置換されていてもよい低級アルキル基、置換されてい てもよい低級アルコキシ基、置換されていてもよいァリール基、または置換されていて もよぃァラルキルォキシ基を表す)で示される化合物となり、また、 R
3及び R
2が上記 2) の場合には、前記式 (6)で示される化合物は、下記式 (4):
[0020] [化 11]
[0021] (式中、 R1は前記と同じ)で示される化合物となる。
[0022] 「低級」とは、他に示されていない限り、 1〜7個の炭素原子を有することを示し、好 ましくは、 1〜4個の炭素原子を有することを示す。
[0023] 低級アルキル基としては、例えば、メチル基、ェチル基、クロロメチル基、 n プロピ ル基、イソプロピル基、 n ブチル基、イソブチル基、 t ブチル基、 n ペンチル基、 シクロへキシル基などが挙げられ、好ましくは、メチル基、ェチル基、 n—プロピル基、 ブチル基などが挙げられる。これらの基は置換されていてもよい。その場合の置換基 としては、本発明の還元反応に悪影響を及ばさない限り特に限定されず、例えば、ハ ロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シァノ基等が挙げられる。
[0024] 置換されていてもよいァリール基としては、特に限定されず、例えば、フエ-ル基、 o メチルフエ-ル基、 m—メチルフエ-ル基、 p メチルフエ-ル基、 o—メトキシフエ -ル基、 m—メトキシフエ-ル基、 p—メトキシフエ-ル基、 o フルオロフェ-ル基、 m —フルオロフェ-ル基、 p フルオロフェ-ル基、 o クロ口フエ-ル基、 m—クロロフ ェニノレ基、 p クロ口フエ二ノレ基、 o -トロフエ-ノレ基、 m—-トロフエ-ノレ基、 ρ -ト 口フエ-ル基、 o トリフルォロメチルフエ-ル基、 m トリフルォロメチルフエ-ル基、 p トリフルォロメチルフヱ-ル基、ナフチル基、アントラセ-ル基、 2—フリル基、 2—
チォフエ-ル、 2—ピリジル基などが挙げられる。好ましくは、置換されていてもよいフ ェニル基であり、より好ましくはフエニル基である。
[0025] 置換されて!、てもよ 、ァラルキル基としては、特に限定されず、例えばべンジル基、 p ヒドロキシベンジル基、 p—メトキシベンジル基などが挙げられる。
[0026] 低級アルコキシ基としては、特に限定されず、メチルォキシ基、ェチルォキシ基、ク ロロメチルォキシ基、 n プロピルォキシ基、イソプロピルォキシ基、 n ブチルォキシ 基、イソブチルォキシ基、 t ブチルォキシ基、 n ペンチルォキシ基、シクロへキシ ルォキシ基などが挙げられる、好ましくはメチルォキシ基、ェチルォキシ基、 n—プロ ピル基、ブチルォキシ基などが挙げられる。これらの基は置換されていてもよぐその 場合の置換基としては、前述のアルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
[0027] 置換されて!、てもよ 、ァラルキルォキシ基としては、ベンジルォキシ基、 p ヒドロキ シベンジルォキシ基、 p—メトキシベンジルォキシ基などが挙げられ、好ましくは、ベ ンジルォキシ基である。
[0028] 上記のなかでも、 R1としては炭素数 1〜4のアルキル基が好ましぐメチル基がより 好ましい。 R2としては置換されていてもよいフエ-ル基が好ましぐフエ-ル基、 p— - トロフエニル基、 p—クロ口フエニル基がより好ましぐフエニル基が更に好ましい。また 、 R3と一 COR2とが一体となって、フタロイル基をなすことも好ましい。更に、 R1がメチ ル基であり、かつ、 R2がフエ-ル基である場合が特に好ましい。
[0029] 本発明にお 、ては、上記式 (6)で示される化合物を、該化合物を不斉還元する活 性を有する酵素源を作用させて不斉還元することにより、一般式 (5):
[0030] [化 12]
[0031] で表される光学活性 2—(N—置換アミノメチル) 3 ヒドロキシ酪酸エステル類に変
換する。式中、
及び R
3は前記同じである。
[0032] 言うまでもまく、前記式 (6)で示される化合物として、前記式(2)または前記式 (4)で 示される化合物を用いた場合には、還元生成物はそれぞれ、下記式(1)、下記式(3 )で示される化合物となる。
[0033] [化 13]
[0034] [化 14]
[0035] で表される化合物である。
[0036] 2.酵素源
本発明で使用される酵素源は、 2— (N—置換アミノメチル)—3—ォキソ酪酸エステ ル類を光学活性な 2— (N—置換アミノメチル)—3—ヒドロキシ酪酸エステル類に変 換する能力を有する微生物由来のものを用いることができる。ここでいう「微生物由来 のもの」としては、該微生物の菌体そのもの、微生物の培養液、あるいは菌体処理物 、または該微生物力 得られる酵素であってもよいし、さらには該微生物由来の上記 還元活性を有する酵素をコードする DNAが導入された形質転換体も含む。これらを
単独で用いても、 2種類以上組み合わせてもよい。また、これらの酵素源は周知の方 法でくり返し使用できるように固定ィ匕してもよい。
[0037] 3. 2—(N—置換アミノメチル) 3 ヒドロキシ酪酸エステル類への変換能力の測 定
2- (N—置換アミノメチル)—3—ォキソ酪酸エステル類を光学活性な 2— (N 置 換ァミノメチル) 3—ヒドロキシ酪酸エステル類に変換する能力を有する微生物は、 以下に説明する方法によって見いだすことができる。例えば、以下のようにして行なう 。グルコース 40g、酵母エキス 3g、リン酸水素二アンモ-ゥム 6. 5g、リン酸二水素カリ ゥム lg、硫酸マグネシウム 7水和物 0. 8g、硫酸亜鉛 7水和物 60mg、硫酸鉄 7水和 物 90mg、硫酸銅 5水和物 5mg、硫酸マンガン 4水和物 10mg、塩化ナトリウム 100m g (V、ずれも 1L当たり)の組成力もなる液体培地 (pH7) 5mlを試験管に入れて殺菌 後、無菌的に微生物を接種し、 30°Cで 2〜3日間振とう培養する。その後、菌体を遠 心分離により集め、グルコース 2〜10%を含んだリン酸緩衝液 0. 5〜5mlに懸濁し、 あらかじめ 2 ベンズアミドメチル 3 ォキソ酪酸メチル等( 2—(N 置換アミノメチ ル)— 3—ォキソ酪酸エステル類に属する)を 0. 5〜25mgいれた試験管にカ卩えて、 2 〜3日間 30°Cで振とうする。この際、遠心分離により得た菌体をデシケーター中また はアセトンにより乾燥したものを用いることもできる。更に、これら微生物もしくはその 処理物と 2 ベンズアミドメチル 3 ォキソ酪酸エステル類を反応させる際に、 NA D+及び Zまたは NADP+と、グルコース脱水素酵素及びグルコース、もしくはギ酸脱 水素酵素及びギ酸、を添加してもよい。また、反応系に有機溶媒を共存させてもかま わない。変換反応ののち適当な有機溶媒で抽出を行ない、生成する 2—べンズアミド メチル 3—ヒドロキシ酪酸エステル類を高速液体クロマトグラフィーなどにより分析 する。
[0038] 4.微生物
本発明に使用しうる微生物としては、 2- (N 置換アミノメチル)—3—ォキソ酪酸 エステル類を(2S, 3R)— 2— (N—置換アミノメチル)—3 ヒドロキシ酪酸エステル 類に変換する能力を有する微生物であればいずれも使用しうるが、例えば、キャンデ イダ (Candida)属、ゲォトリカム (Geotrichum)属、ガラクトマイセス (Galactomyces)属、
サッカロマイコプシス (Saccharomycopsis)属、ァクロモノくクタ一 (Achromobacter)属、 アースロバクタ一(Arthrobacter)属、バチノレス(Bacillus)属、ブレフンディモナス(Brev undimonas)属、キナントモナス (Xanthomonas)属、デボシァ (Devosia)属、ラノレスト- ァ (Ralstonia)属、ラクトノくチノレス (Lactobacillus)属、ロイコノストック (Leuconostoc)属 、ミクロスポルム(Microsporum)属、モ-リエラ(Moniliella)属に属する微生物等が挙 げられる。
[0039] 更に好ましくは、キャンディダ.ケフリ(Candida kefyr)、キャンディダ.ォェオフイラ(C andida oleophila)、キャンディダ 'マリス(Candida maris)、ゲォトリカム'エリエンス(Geo trichum eriense)、カフクトマ セス'リエッシ (Galactomyces reessii)、サッカロマイコプ シス'マランガ(Saccharomycopsis malanga)、ァクロモパクター'キシロソキシダンス(A chromobacter xylosoxidans 、 クロモノ クタ1 ~~ 'ァ-トリフィカンス、 chromobacter ae nitrificans)、アースロバクタ一 'パラフイネウス(Arthrobacter paraffineus)、アースロノく クタ一 'ニコチアナェ(Arthrobacter nicotianae)、バチノレス'アミロリティカス(Bacillus a mylolyticus)、バチルス'サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス'セレウス(Baci llus cereus)、バチルス 'バディウス(Bacillus badius)、バチルス 'スファエリカス(Bacill us sphaericus)、ブレフンアイモナス'アイミヌ ~~タ (Brevundimonas diminuta)、 = サント モナス.エスピー(Xanthomonas sp.)、デボシァ 'リボフラビナ(Devosia riboflavina )、ラルストニア'ユートロファ(Ralstonia eutropha)、ラクトバチルス'ブレビス(Lactobac illus brevis)、ラクトノくチノレス'へノレべテイクス (Lactobacillus helveticus)、ロイコノストツ ク'ンュ1 ~~ドモセンァロイァス (Leuconostoc pseudomesenteroidesノ、 クロスホノレム'コ ーケィ (Microsporum cookei)、モ-リエラ ·ァセトァノ テンス (Moniliella acetoabatens) などがあげられる。
[0040] これら微生物は一般に、入手または購入が容易な保存株力 得ることができるが、 自然界力も分離することもできる。なお、これらの微生物に変異を生じさせて、より本 反応に有利な性質を有する菌株を得ることもできる。
[0041] これらの微生物の培養には、通常これらの微生物が資化しうる栄養源を含む培地 であれば何でも使用しうる。例えば、グルコース、シユークロース、マルトース等の糖 類、乳酸、酢酸、クェン酸、プロピオン酸等の有機酸類、エタノール、グリセリン等の
アルコール類、パラフィン等の炭化水素類、大豆油、菜種油等の油脂類、またはこれ らの混合物等の炭素源;硫酸アンモ-ゥム、リン酸アンモ-ゥム、尿素、酵母エキス、 肉エキス、ペプトン、コーンスチープリカー等の窒素源;更に、その他の無機塩、ビタ ミン類等の栄養源;を適宜混合 .配合した通常の培地を用いることが出来る。これら培 地は用いる微生物の種類によって適宜選択すればょ 、。
[0042] 微生物の培養は通常一般の条件により行なうことができ、例えば、 pH4. 0〜9. 5、 温度範囲 20°C〜45°Cの範囲で、好気的に 10〜96時間培養するのが好ましい。 2 一べンズアミドメチルー 3—ォキソ酪酸エステル類に微生物を反応させる場合におい ては、通常、上記微生物の菌体を含んだ培養液をそのまま反応に使用することもでき るが、培養液の濃縮物も用いることができる。また、培養液中の成分が反応に悪影響 を与える場合には、培養液を遠心分離等により処理して得られる菌体または菌体処 理物を使用することも出来る。
[0043] 上記微生物の菌体処理物としては特に限定されず、例えば、アセトンや五酸化ニリ ンによる脱水処理またはデシケーターや扇風機を利用した乾燥によって得られる乾 燥菌体、界面活性剤処理物、溶菌酵素処理物、固定化菌体または菌体を破砕した 無細胞抽出液などをあげることができる。更に、培養物より立体選択的に還元反応を 触媒する酵素を精製し、これを使用してもよい。
[0044] 5.還元反応
還元反応の際には、基質である 2—(N 置換アミノメチル) 3 ォキソ酪酸エステ ル類を反応の初期に一括して添加してもよく、反応の進行にあわせて分割して添カロ してもよい。反応時の温度は通常 10〜60°C、好ましくは、 20〜40°Cであり、反応時 の pHは 2. 5〜9、好ましくは、 5〜9の範囲である。反応液中の酵素源の量はこれら の基質を還元する能力に応じ適宜決定すればよい。また、反応液中の基質濃度は 0 . 01〜50% (WZV)が好ましぐより好ましくは、 0. 1〜30% (WZV)である。反応 は通常、振とうまたは通気攪拌しながら行なう。反応時間は基質濃度、酵素源の量及 びその他の反応条件により適宜決定される。通常、 2〜168時間で反応が終了する ように各条件を設定することが好ま 、。
[0045] 還元反応を促進させるために、反応液にグルコース、エタノール、イソプロパノール
などのエネルギー源を 0. 5〜 30%の割合でカ卩えると優れた結果が得られるので好ま L 、。一般に生物学的方法による還元反応に必要とされて 、る還元型ニコチンアミド •アデ-ンジヌクレオチド(以降 NADHと省略する)、還元型ニコチンアミド 'アデニン ジヌクレオチドリン酸 (以降 NADPHと省略する)等の補酵素を添加することにより、反 応を促進させることもできる。この場合、具体的には、反応液に直接これらを添加する
[0046] また、還元反応を促進させるために、 NAD+もしくは NADP+をそれぞれの還元型へ 還元する酵素、及び還元するための基質を共存させて反応を行うと優れた結果が得 られるので好ましい。例えば、還元型へ還元する酵素としてグルコース脱水素酵素、 還元するための基質としてグルコースを共存させる力、または、還元型へ還元する酵 素としてギ酸脱水素酵素、還元するための基質としてギ酸を共存させる。
[0047] 6.還元反応の変形例
本発明の還元反応を触媒する酵素 (還元酵素)のかわりに、該酵素をコードする D NAを含む形質転換体を使用しても、同様に光学活性な 2—(N—置換アミノメチル) — 3—ヒドロキシ酪酸エステル類を製造することができる。
[0048] また、本発明の還元酵素をコードする DNA、および、補酵素再生能を有するポリべ プチドをコードする DNAの両者を含む形質転換体を使用しても、同様に光学活性な 2- (N—置換アミノメチル)—3—ヒドロキシ酪酸エステル類を製造することができる。 とりわけ、本発明の還元酵素をコードする DNA、および、補酵素再生能を有するポリ ペプチドをコードする DNAの両者を含む形質転換体を使用した場合には、補酵素 を再生するための酵素を別途調製'添加する必要がなぐ光学活性 3—ヒドロキシ酪 酸エステル類の製造をより効率良く行なうことができる。
[0049] なお、本発明のポリペプチドをコードする DNAを含む形質転換体、若しくは、本発 明のポリペプチドをコードする DNAおよび補酵素再生能を有するポリペプチドをコー ドする DNAの両者を含む形質転換体は、培養菌体は言うまでもなぐその処理物と しても光学活性 3—ヒドロキシ酪酸エステル類の製造に使用することができる。ここで 言う形質転換体の処理物の意味は、前記と同様である。
[0050] 本発明の還元酵素をコードする DNA、および、補酵素再生能を有するポリべプチ
ドをコードする DNAの両者を含む形質転換体は、本発明の還元酵素をコードする D NA、および、補酵素再生能を有するポリペプチドをコードする DNAの両者を、同一 のベクターに組み込み、これを宿主細胞に導入することにより得られるほ力、これら 2 種の DNAを不和合性グループの異なる 2種のベクターにそれぞれ組み込み、それら 2種のベクターを同一の宿主細胞に導入することによつても得られる。
[0051] 本発明の還元酵素をコードする DNA、及び、補酵素再生能を有するポリペプチド をコードする DNAの両者が組込まれたベクターの例としては、国際公開第 WO200 4/027055号公報に記載の発現ベクター pNTDRにバシラス'メガテリゥム由来のグ ルコース脱水素酵素遺伝子を導入した、 pNTDRGlが挙げられる。また、本発明の 還元酵素をコードする DNA、及び、補酵素再生能を有するポリペプチドをコードする DNAの両者を含む形質転換体の例としては、当該ベクターで E. coli HB101を 形質転換して得られる、 E. coli HBlOl (pNTDRGl)が挙げられる。
[0052] 本発明の還元酵素をコードする DNAを含む形質転換体の培養、及び、本発明の 還元酵素をコードする DNAと補酵素再生能を有するポリペプチドをコードする DNA とを含む形質転換体の培養は、それらが増殖する限り、通常の、炭素源、窒素源、無 機塩類、有機栄養素などを含む液体栄養培地を用いて実施できる。
[0053] また更に、トリトンけ力ライテスタ株式会社製)、スパン (関東ィ匕学株式会社製)、ッ ィーンけ力ライテスタ株式会社製)などの界面活性剤を反応液に添加することも効 果的である。更に、基質及び Zまたは還元反応の生成物である 3—ヒドロキシ酪酸ェ ステル類による反応の阻害を回避する目的で、酢酸ェチル、酢酸ブチル、イソプロピ ルエーテル、トルエン、へキサンなどの水に不溶な有機溶媒を反応液に添カ卩してもよ い。更に、基質の溶解度を高める目的で、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒド 口フラン、ジメチルスルホキシドなどの水に可溶な有機溶媒を添加することもできる。
[0054] 7.生成物の取得
還元反応により生成した光学活性 2—(N—置換アミノメチル)ー3—ヒドロキシ酪酸 エステル類の採取は、特に限定されないが、反応液から直接、あるいは菌体等を分 離後、酢酸ェチル、トルエン、 t—ブチルメチルエーテル、へキサン等の溶剤で抽出 し、脱水後、蒸留あるいはシリカゲルカラムクロマトグラフィー等により精製すれば高
純度の光学活性 2—(N—置換アミノメチル) 3 ヒドロキシ酪酸エステル類を容易 に得ることができる。
実施例
[0055] 以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によ り何ら限定されるものではない。なお、以下の記載において、「%」は特に断らない限 り「重量%」を意味する。
[0056] 以下の各実施例では、還元反応の基質としての 2—(N 置換アミノメチル) 3— ォキソ酪酸エステル類に属する化合物の例示として、それぞれ、 2—べンズアミドメチ ルー 3 ォキソ酪酸メチル(実施例 1 13)、 2 ベンズアミドメチル 3 ォキソ酪酸 tert -ブチル(実施例 14— 16) , 2-ァセトアミドメチル 3 ォキソ酪酸メチル(実 施例 17、 18)、 2 フタロイルアミドメチルー 3 ォキソ酪酸メチル(実施例 19、 20)を 用いた。形質転換体による反応は、実施例 21に示した。
[0057] 各実施例においては、所定の微生物、酵素、または酵素及び補酵素再生系酵素 等を用いて、還元反応の反応収率及び生成物の光学純度等を測定した。測定結果 によれば、いずれの実施例においても、 (2S, 3R)の立体配置を有する 3 ヒドロキ シ酪酸エステル類が効率良く製造されることがわ力つた。
[0058] (実窗列 1)表 1に示す微牛.物を用いた反
グルコース 40g、酵母エキス 3g、リン酸水素二アンモ-ゥム 6. 5g、リン酸二水素カリ ゥム lg、硫酸マグネシウム 7水和物 0. 8g、硫酸亜鉛 7水和物 60mg、硫酸鉄 7水和 物 90mg、硫酸銅 5水和物 5mg、硫酸マンガン 4水和物 10mg、塩化ナトリウム 100m g (V、ずれも 1L当たり)の組成力もなる液体培地 (pH7) 5mlを大型試験管に分注し、 120°Cで 20分間蒸気殺菌を行った。これらの液体培地に以下の表 1に示す微生物 を無菌的に一白金耳接種して、 30°Cで 72時間振とう培養した。培養後、各培養液を 遠心分離にかけて菌体を集め、菌体をグルコース 1%を含んだ lOOmMリン酸緩衝 液 0. 5ml (pH6. 5)に懸濁した。
[0059] この菌体懸濁液を、あらかじめ 2 べンズアミドメチルー 3 ォキソ酪酸メチル 2. 5 mgをいれた試験管に加えて、 30°Cで 24時間反応させた。反応後、各反応液に lml の酢酸ェチルを加えて良く混合した。有機層の一部をダイセルィ匕学工業株式会社製
Chiralpak AD— H (250mm X 4. 6mm)を装着した HPLCによって分析し、反応 の収率と生成物の光学純度を求めた。結果を表 1にまとめた。
[表 1] 微生物 収率 光学純度 ジァステレオ 立体配置
( ) (%ee) 選択性 «de)
Candida kefyr NBRC 0706 40 36. 3 29. 6 (2S, 3R)
Candida oleophila CBS 2220 4 48. 6 100 (2S, 3R)
Geotrichum eriense NBRC 10584 17 43. 8 55. 7 (2S, 3R)
Galac tomyces reessii NBRC 10823 23 17. 2 28. 6 (2S, 3R)
Saccharomycopsis malanga NBRC 1710 4 96. 2 92. 2 (2S, 3R)
[0061] 施例 2) 2に す微 ) 用いた ]^
肉エキス 10g、ペプトン 10g、酵母エキス 5g、塩化ナトリウム 3g (いずれも 1L当たり) の組成力もなる液体培地 (pH7) 7mlを大型試験管に分注し、 120°Cで 20分間蒸気 殺菌を行った。これらの液体培地に以下の表 2に示す微生物を無菌的に一白金耳 接種して、 30°Cで 72時間振とう培養した。培養後、各培養液を遠心分離にかけて菌 体を集め、菌体をグルコース 1%を含んだ lOOmMリン酸緩衝液 0. 5ml (pH6. 5)に 懸濁した。
[0062] この菌体懸濁液を、あらかじめ 2—べンズアミドメチルー 3—ォキソ酪酸メチル 2. 5 mgをいれた試験管に加えて、 30°Cで 24時間反応させた。反応後、各反応液に lml の酢酸ェチルを加えて良く混合し、有機層の一部を実施例 1に記載する分析条件で 分析して、反応の収率と生成物の光学純度を求めた。結果を表 2にまとめた。
[0063] [表 2] 微生物 収率 光学純度 ジァステレオ 酉己
(%) (%e e) 選択性(¾de)
Achromobac ter xylosoxidans NBRC 13495 3 75. 6 74. 8 (2S, 3R)
Arthrobacter paraffineus ATCC 21218 65 58. 5 74. 9 (2S, 3R)
Arthrobac ter nicotianae NBRC 14234 2 36. 4 100 (2S, 3K)
Bacillus amylolyticus NBRC 15957 100 33. 0 82. 8 (2S, 3R)
Bacillus circulans ATCC 9966 19 22. 4 13. 0 (2S, 3R)
Bacillus cereus NBRC 3466 100 20. 8 100 (2S, 3R)
Bacillus badius ATCC 14574 92 15. 6 97. 3 (2S, 3R)
Bacillus sphaericus瞧 C 3525 39 14. 2 100 (2S, 3R)
Brev ndimonas di mi nut a NBRC 3140 22 11. 1 49. 6 (2S, 3R)
Xanthomonas sp. NBRC 3084 94 90. 4 57. 4 (2S, 3R)
\anthomonas sp. NBRC 3085 100 99. 6 96. 9 (2S, 3R)
[0064] (実窗列 3)表 3に示す微牛.物を用いた反
グルコース 10g、ペプトン 10g、肉エキス 10g、酵母エキス 5g、塩化ナトリウム lg、硫 酸マグネシウム 7水和物 0. 5g (いずれも 1L当たり)の組成力もなる液体培地 (pH7) 5 mlを大型試験管に分注し、 120°Cで 20分間蒸気殺菌を行った。これらの液体培地 に以下の表 3に示す微生物を無菌的に一白金耳接種して、 28°Cで 72時間振とう培 養した。培養後、各培養液を遠心分離にかけて菌体を集め、菌体をグルコース 1%を 含んだ lOOmMリン酸緩衝液 lml(pH6. 5)に懸濁した。
[0065] この菌体懸濁液を、あらかじめ 2 べンズアミドメチルー 3 ォキソ酪酸メチル lmg をいれた試験管に加えて、 30°Cで 24時間反応させた。反応後、各反応液に 2mlの 酢酸ェチルを加えて良く混合し、有機層の一部を実施例 1に記載する分析条件で分 祈して、反応の収率と生成物の光学純度を求めた。結果を表 3にまとめた。
[0066] [表 3] 微生物 収率 光学純度 ジァステレオ 立体配置
(%) (%ee) 選択性 «de)
Microsporum cookei NBRC 7862 1 20. 2 27. 3 (2S, 3R)
Moniliella acetoaba tens NBRC 9481 11 30. 3 9. 1 (2S, 3R)
[0067] (実施例 4) 2 ベンズアミドメチル 3 ォキソ酪酸メチルの還元反応
MSR培地(Difco社製) 55g (1L当たり)よりなる液体培地(pH6.5) 15mlを大型試 験管に分注し、 120°Cで 20分間蒸気殺菌を行った。これらの液体培地に以下の表 4 に示す微生物を無菌的に一白金耳接種して、 30°Cで 72時間静置培養した。培養後 、各培養液を遠心分離にかけて菌体を集め、菌体をグルコース 1%を含んだ 100m Mリン酸緩衝液 lml (pH6. 5)に懸濁した。
[0068] この菌体懸濁液を、あらかじめ 2 べンズアミドメチルー 3 ォキソ酪酸メチル lmg をいれた試験管に加えて、 30°Cで 24時間反応させた。反応後、各反応液に 2mlの 酢酸ェチルを加えて良く混合し、有機層の一部を実施例 1に記載する分析条件で分 祈して、反応の収率と生成物の光学純度を求めた。結果を表 4まとめた。
[0069] [表 4]
微生物 収率 光学純度 ジァステレオ 立体配置
(%) (%ee) 選択性 (%de)
Lac tobacillus brevis JCM 1059 67 71. 7 92. 2 (2S, 3R)
Lac tobacillus hel ve ticus JCM 1120 7 20. 3 51. 2 (2S, 3R)
Leuconostoc pseudomesen teroides
14 82. 5 73. 1 (2S, 3R)
JCM 9696
[0070] 施例 5)ァセ卜ン^:藝谢木 用いた ]^
lmlの lOOmMリン酸緩衝液(pH6. 5)に、キャンディダ'ケフィァ(Candida kefyr) NBRC 0706のアセトン乾燥菌体 10mg、グルコース 10mg、グルコース脱水素酵 素「GLUCDH"Amano2,,」(天野ェンザィム株式会社製) lmgゝ NAD0.25mgゝ N ADP0.25mg、 2—ベンズアミドメチル— 3—ォキソ酪酸メチル 2.5mgを加えて、 30 °Cで 24時間反応させた。反応後、各反応液に 2mlの酢酸ェチルを加えて良く混合し 、有機層の一部を実施例 1に記載する分析条件で分析したところ、収率は 40%であ つた。その有機層の一部の光学純度は 46.8%、ジァステレオ選択性は 31.8%であ つた o
[0071] (実施例 6)アルコール脱水素酵素を用いた反
lmlの lOOmMリン酸緩衝液(pH6. 5)に、ラクトバチルス'ブレビス(Lactobacillus brevis)由来のアルコール脱水素酵素(Julich Fine Chemicals製) 10kU、 NADPH2 当量、 2—べンズアミドメチルー 3—ォキソ酪酸メチル lmgをカ卩えて、 30°Cで 24時間 反応させた。反応後、各反応液に 2mlの酢酸ェチルにより抽出し、 91%の収率で(2 S, 3R)— 2—ベンズアミドメチル— 3—ヒドロキシブタン酸メチルを得た。このものの光 学純度は 99. 9%ee以上、ジァステレオ選択性は 92%deであった。
[0072] (実施例 7)カルボニル還元酵素を用いた反応
30mlの lOOmMリン酸緩衝液(pH6. 5)に、グルコース 3g、デボシァ'リボフラビナ (Devosia riboflavina)由来のカルボ-ル還元酵素 RDR (国際公開第 WO2004Z02 7055号公報参照) 10kU、グルコース脱水素酵素「GLUCDH"Amano2"」(天野 ェンザィム株式会社製) 500mg、 NAD50mg、 2—ベンズアミドメチル— 3—ォキソ 酪酸メチル 4.5gをカ卩えて、 30°Cで攪拌した。その間、反応液の pHは 6N— NaOHに よって 6. 5に維持した。 24時間の反応ののち、反応液を 45mlの酢酸ェチルで 3回 抽出し、得られた有機層をあわせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過によって硫
酸ナトリウムを除去し、減圧下有機溶媒を留去したのち、シリカゲルカラムクロマトダラ フィ一によつて、 4.4gの(2S, 3R)—2—ベンズアミドメチル一 3—ヒドロキシブタン酸 メチルを得た。このものの光学純度は 99%ee以上、ジァステレオ選択性は 89.8%d
Θでめ た Q
[α]25 +22.88° (C = 0.9,酢酸ェチル)
D
iH—NMR (400MHz, CDC1 , 6ppm) :7.8— 7.7(m, 2H)、7.6— 7.5(m、 1
3
H), 7.5-7.4(m、 2H), 6.9(br, s, 1H), 4.2—4.0(m, 1H), 4.0— 3.9( m, 1H)、 3.7(s, 3H), 3.6— 3.5(m, 1H), 2.8(m, 1H), 1.2(d, 3H)
[0073] (実施例 8)カルボニル還元酵素を用いた反応
lmlの lOOmMリン酸緩衝液(pH6.5)に、グルコース 50mg、キャンディダ 'マリス( Candida maris)由来のカルボ-ル還元酵素 FPDH (国際公開第 WO01Z05996公 報参照) 10kU、グルコース脱水素酵素「GLUCDH"Amano2"」(天野ェンザィム 株式会社製) lmg、 NADO.25mg、 2—ベンズアミドメチル— 3—ォキソ酪酸メチル 5 mgを加えて、 24時間、 30°Cで振とうした。反応終了後、反応液を 2mlの酢酸ェチル で抽出し、収率 99%で(2S, 3R)— 2—ベンズアミドメチル— 3—ヒドロキシブタン酸メ チルを得た。このものの光学純度は 94%ee、ジァステレオ選択性は 89.3%deであ つた o
ipi—NMR (400MHz, CDC1 , 6ppm) :7.8— 7.7(m, 2H), 7.6— 7.5(m、 1
3
H)、 7.5— 7.4(m、 2H)、 6.9(br, s, 1H), 4.2—4.0(m, 1H), 4.0— 3.9( m, 1H), 3.7(s, 3H), 3.6— 3.5(m, 1H), 2.8(m, 1H), 1.2(d, 3H)
[0074] (実施例 9)ァセトァセチル CoA還元酵素を用いた反応
lmlの lOOmMリン酸緩衝液(pH6.5)に、グルコース 50mg、ラルストニア'ユート ロファ(Ralstonia eutropha)由来のァセトァセチル CoA還元酵素 RRE (国際公開第 WO2005Z044973公報参照) 10kU、グルコース脱水素酵素「GLUCDH"Aman o2,,」(天野ェンザィム株式会社製) lmg、 NADO.25mg、 2—ベンズアミドメチル— 3—ォキソ酪酸メチル 5mgをカ卩えて、 30°Cで振とうした。 24時間の反応ののち、反応 液を 2mlの酢酸ェチルで抽出し、収率 54%で(2S, 3R)— 2—べンズアミドメチルー 3—ヒドロキシブタン酸メチルを得た。このものの光学純度は 84.8%ee、ジァステレ
ォ選択性は 60%deであった。
[0075] (実施例 10)ァセトァセチル CoA還元酵素を用いた反応
lmlの lOOmMリン酸緩衝液(pH6. 5)に、グルコース 50mg、ァクロモパクタ^ ~ ·デ -トリフイカンス (Achromobacter denitrificans)由来のァセトァセチル CoA還元酵素 R AX (国際公開第 WO2005Z044973公報参照) 10kU、グルコース脱水素酵素「G LUCDH"Amano2"j (天野ェンザィム株式会社製) lmgゝ NADO. 25mg、 2—ベ ンズアミドメチル一 3—ォキソ酪酸メチル 5mgをカ卩えて、 30°Cで振とうした。 24時間の 反応ののち、反応液を 2mlの酢酸ェチルで抽出し、収率 57%で(2S, 3R)— 2—べ ンズアミドメチルー 3—ヒドロキシブタン酸メチルを得た。このものの光学純度は 59. 7 %ee、ジァステレオ選択性は 49. 5%deであった。
[0076] 施例 ί ί) 2—べンズアミドメチルー 3—ォキソ 酸メチルの還
肉エキス 10g、ペプトン 10g、酵母エキス 5g、塩化ナトリウム 3g (いずれも 1L当たり) の組成力もなる液体培地 (pH7) 7mlを大型試験管に分注し、 120°Cで 20分間蒸気 殺菌を行った。これらの液体培地に以下の表 5に示す微生物を無菌的に一白金耳 接種して、 30°Cで 72時間振とう培養した。培養後、各培養液を遠心分離にかけて菌 体を集め、菌体をグルコース 1%を含んだ lOOmMリン酸緩衝液 0. 5ml (pH6. 5)に 懸濁した。
[0077] この菌体懸濁液を、あらかじめ 2—べンズアミドメチルー 3—ォキソ酪酸ェチル 0.5m gいれた試験管に加えて、 30°Cで 24時間反応させた。反応後、各反応液に lmlの酢 酸ェチルを加えて良く混合し、有機層の一部をダイセルィ匕学工業株式会社製 Chiral pak AD-H (250mm X 4. 6mm)を装着した HPLCによって分析し、反応の収率 と生成物の光学純度を求めた。表 5に結果をまとめた。
[0078] [表 5]
微生物 収率 光学純度 ジァステレオ ϋ体酉己置
(¾) (%ee) 選択性(de)
Achromobac ter xylosoxidans NBRC 13495 10 36. 3 20. 6 (2S, 3R)
Arthrobac ter paraffineus ATCC 21218 63 100. 0 95. 3 (2S, 3R)
Bacillus amylolyticus NBRC 15957 100 45. 5 100 (2S, 3R)
Bacillus circulans ATCC 9966 2 17. 0 8. 1 (2S, 3R)
Bacillus cere us NBRC 3466 39 13. 9 10O (2S, 3R)
Bacillus bad i us ATCC 14574 2 0. 3 18. 9 (2S, 3R)
Brevundimonas di mi nut a NBRC 3140 1 100. 0 13. 0 (2S, 3R)
Xan thomonas sp. NBRC 3084 1 100. 0 100 (2S, 3R)
Jan tho onas sp. NBRC 3085 1 100. 0 42. 5 (2S, 3R)
[0079] (実施例 12)カルボニル還元酵素を用 、た反応
lmlの lOOmMリン酸緩衝液(pH6. 5)に、グルコース 50mg、デボシァ'リボフラビ ナ(Devosia riboflavina)由来のカルボ-ル還元酵素 RDR (国際公開第 WO2004Z 027055公報参照) 10kU、グルコース脱水素酵素「GLUCDH"Amano2"」(天野 ェンザィム株式会社製) lmg、 NADO. 25mg、 2—ベンズアミドメチル— 3—ォキソ 酪酸ェチル 5mgを加えて、 30°Cで振とうした。 24時間の反応ののち、反応液を 2ml の酢酸ェチルで抽出し、収率 100%で(2S, 3R)—2—ベンズアミドメチル— 3—ヒド ロキシブタン酸ェチルを得た。このものの光学純度は 96%ee、ジァステレオ選択性 は 91 %deであった。
iH—NMR (400MHz, CDC1 , 6 ppm) : 7. 8— 7. 3 (m, 5H) , 6. 9 (br, s, 1H)
3
、 4. 2 -4. 0 (m, 3H) , 4. 0— 3. 9 (m, 2H, 2. 4 (s, 3H) , 1. 2 (t, 3H)
[0080] ( m 3)カルボュル ま 用いた ]^
lmlの lOOmMリン酸緩衝液(pH6. 5)に、グルコース 50mg、キャンディダ 'マリス( Candida maris)由来のカルボ-ル還元酵素 FPDH (国際公開第 WO01Z05996公 報参照) 10kU、グルコース脱水素酵素「GLUCDH"Amano2"」(天野ェンザィム 株式会社製) lmg、 NADO. 25mg、 2—べンズアミドメチルー 3—ォキソ酪酸ェチル 5mgをカ卩えて、 30°Cで振とうした。 24時間の反応ののち、反応液を 2mlの酢酸ェチ ルで抽出し、収率 61 %で(2S, 3R)— 2—ベンズアミドメチル— 3—ヒドロキシブタン 酸ェチルを得た。このものの光学純度は 71. 8%ee、ジァステレオ選択性は 71. 4% deであつ 7こ。
[0081] (実窗列 14)表 6に示す微牛.物を用いた反
肉エキス 10g、ペプトン 10g、酵母エキス 5g、塩化ナトリウム 3g (いずれも 1L当たり) の組成力もなる液体培地 (pH7) 7mlを大型試験管に分注し、 120°Cで 20分間蒸気 殺菌を行った。これらの液体培地に以下の表 6に示す微生物を無菌的に一白金耳 接種して、 30°Cで 72時間振とう培養した。培養後、各培養液を遠心分離にかけて菌 体を集め、菌体をグルコース 1%を含んだ lOOmMリン酸緩衝液 0. 5ml (pH6. 5)に 懸濁した。この菌体懸濁液を、あらかじめ 2—べンズアミドメチルー 3—ォキソ酪酸 ter t—ブチル 0.5mgいれた試験管に加えて、 30°Cで 24時間反応させた。反応後、各反 応液に lmlの酢酸ェチルを加えて良く混合し、有機層の一部をダイセルィ匕学工業株 式会社製 Chiralpak AD— H (250mm X 4. 6mm)を装着した HPLCによって分 祈し、反応の収率と生成物の光学純度を求めた。表 6に結果をまとめた。
[0082] [表 6] 微生物 収率 光学純度 ジァステレオ 立体配置
(¾) ( ee) 選択性 «de)
Xan tnomonas sp. NBRC 3084 1 21. 5 88. 9 (2S, 3R)
Xan tno onas sp. 匪 C 3085 1 16. 9 100 (2S, 3R)
[0083] (実施例 15)カルボニル還元酵素を用 、た反応
lmlの lOOmMリン酸緩衝液(pH6. 5)に、グルコース 50mg、デボシァ'リボフラビ ナ(Devosia riboflavina)由来のカルボ-ル還元酵素 RDR (国際公開第 WO2004Z 027055公報参照) 10kU、グルコース脱水素酵素「GLUCDH"Amano2"」(天野 ェンザィム株式会社製) lmg、 NADO. 25mg、 2—ベンズアミドメチル— 3—ォキソ 酪酸 tert—ブチル 5mgをカ卩えて、 30°Cで振とうした。 24時間の反応ののち、反応液 を 2mlの酢酸ェチルで抽出し、収率 88%で(2S, 3R)—2—ベンズアミドメチル— 3 ーヒドロキシブタン酸 tert—ブチルを得た。このものの光学純度は、 99. 9%ee以上、 ジァステレオ選択性は 95. 3%deであった。
iH—NMR (400MHz, CDC1 6 ppm) : 7. 8— 7. 3 (m, 5H)、6. 9 (br, s, 1H) ,
3,
4. 0— 3. 9 (m, 4H) , 2. 4 (s, 3H) , 1. 2 (s, 9H)
[0084] mie)カルボュル ま 用いた ]^
lmlの lOOmMリン酸緩衝液(pH6. 5)に、グルコース 50mg、キャンディダ 'マリス( Candida maris)由来のカルボ-ル還元酵素 FPDH (国際公開第 WO01Z05996公
報参照) 10kU、グルコース脱水素酵素「GLUCDH"Amano2"」(天野ェンザィム 株式会社製) lmg、 NADO. 25mg、 2—べンズアミドメチルー 3—ォキソ酪酸 tert— ブチル 5mgを加えて、 30°Cで振とうした。 24時間の反応ののち、反応液を 2mlの酢 酸ェチルで抽出し、収率 15%で(2S, 3R)—2—ベンズアミドメチル一 3—ヒドロキシ ブタン酸 tert—ブチルを得た。このものの光学純度は、 91. 4%ee、ジァステレオ選 択性は 77. 7%deであった。
[0085] (実施例 17)カルボニル還元酵素を用 、た反応
lmlの lOOmMリン酸緩衝液(pH6. 5)に、グルコース 50mg、デボシァ'リボフラビ ナ(Devosia riboflavina)由来のカルボ-ル還元酵素 RDR (国際公開第 WO2004Z 027055公報参照) 10kU、グルコース脱水素酵素「GLUCDH"Amano2"」(天野 ェンザィム株式会社製) lmg、 NADO. 25mg、 2—ァセトアミドメチル— 3—ォキソ酪 酸メチル 5mgをカ卩えて、 30°Cで振とうした。 24時間の反応ののち、反応液を 2mlの 酢酸ェチルで抽出し、収率 59%で(2S, 3R)—2—ァセトアミドメチル— 3—ヒドロキ シブタン酸メチルを得た。このものの光学純度を、ダイセルィ匕学工業株式会社製 Chi ralpak AD— H (250mm X 4. 6mm)を装着した HPLCによって分析したところ、 9 7%eeであり、ジァステレオ選択性は 82. 3%deであった。
iH—NMR (400MHz, CDC1 , δ ppm): 6. 2 (br, s, 1H) , 4. 0— 3. 7 (m, 2H
3
) , 3. 6 (s, 1H) , 3. 4— 3. 3 (m, 1H) , 2. 7— 2. 5 (m, 1H) , 2. 2 (s, 3H)、 1. 2 ( d, 3H)
[0086] (実施例 18)カルボニル還元酵素を用 、た反応
lmlの lOOmMリン酸緩衝液(pH6. 5)に、グルコース 50mg、キャンディダ 'マリス( Candida maris)由来のカルボ-ル還元酵素 FPDH (国際公開第 WO01Z05996公 報参照) 10kU、グルコース脱水素酵素「GLUCDH"Amano2"」(天野ェンザィム 株式会社製) lmg、 NADO. 25mg、 2—ァセトアミドメチル— 3—ォキソ酪酸メチル 5 mgを加えて、 30°Cで振とうした。 24時間の反応ののち、反応液を 2mlの酢酸ェチル で抽出し、収率 8%で(2S, 3R)— 2—ァセトアミドメチル— 3—ヒドロキシブタン酸メチ ルを得た。このものの光学純度は、 96. 2%ee、ジァステレオ選択性は 80. 3%deで めつに。
[0087] (実施例 19)カルボニル還元酵素を用 、た反応
lmlの lOOmMリン酸緩衝液(pH6. 5)に、グルコース 50mg、デボシァ'リボフラビ ナ(Devosia riboflavina)由来のカルボ-ル還元酵素 RDR (国際公開第 WO2004Z 027055公報参照) 10kU、グルコース脱水素酵素「GLUCDH"Amano2"」(天野 ェンザィム株式会社製) lmg、 NADO. 25mg、 2—フタロイルアミドメチル— 3—ォキ ソ酪酸メチル 5mgを加えて、 30°Cで振とうした。 24時間の反応ののち、反応液を 2ml の酢酸ェチルで抽出し、収率 98%で(2S, 3R)—2—フタロイルアミドメチル— 3—ヒ ドロキシブタン酸メチルを得た。このものの光学純度をダイセルィ匕学工業株式会社製 Chiralpak AD— H (250mm X 4. 6mm)を装着した HPLCによって分析したこと ろ、 99. 9%ee以上であり、ジァステレオ選択性は 62. 2%deであった。
iH—NMR (400MHz, CDC1 , 6 ppm) : 7. 9— 7. 7 (m, 4H) , 4. 2— 3. 9 (m, 3
3
H) , 3. 7 (s, 3H)、 2. 7- 2. 6 (m, 1H) , 1. 2 (d, 3H)
[0088] 列 20)カルボュル還 酵素 用いた ]^
lmlの lOOmMリン酸緩衝液(pH6. 5)に、グルコース 50mg、キャンディダ 'マリス( Candida maris)由来のカルボ-ル還元酵素 FPDH (国際公開第 WO01Z05996公 報参照) 10kU、グルコース脱水素酵素「GLUCDH"Amano2"」(天野ェンザィム 株式会社製) lmg、 NADO. 25mg、 2—フタロイルアミドメチル— 3—ォキソ酪酸メチ ル 5mgを加えて、 30°Cで振とうした。 24時間の反応ののち、反応液を 2mlの酢酸ェ チルで抽出し、収率 21%で(2S, 3R)—2—フタロイルアミドメチル— 3—ヒドロキシブ タン酸メチルを得た。このものの光学純度は 99. 9%ee以上、ジァステレオ選択性は 72. 4%deであった。
[0089] (実施例 21)形皙転椽体を用いた反
E. coli HB101 (pNTDRGl) (FERM BP— 08458:国際公開第 WO2004Z 027055号公報参照)を 120 μ g/mlアンピシリンを含む 2 X ΥΤ培地で培養し、得ら れた培養液 30mlに、グルコース 2g、 NAD50mg、 2—ベンズアミドメチル— 3—ォキ ソ酪酸メチル 3gをカ卩えて、 30°Cで攪拌した。その間、反応液の pHは 6NNaOHによ つて 6. 5に維持した。 24時間の反応ののち、反応液を 30mlの酢酸ェチルで 3回抽 出し、得られた有機層をあわせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過によって硫酸
ナトリウムを除去し、減圧下有機溶媒を留去したのち、シリカゲルカラムクロマトグラフ ィ一によつて、 2. 8gの(2S, 3R)— 2—ベンズアミドメチル一 3—ヒドロキシブタン酸メ チルを得た。このものの光学純度は 99%ee以上、ジァステレオ選択性は 89. 8%de であった。