WO2007007834A1 - 難燃性軟磁性シート - Google Patents
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Abstract
本発明の難燃性軟磁性シートは、少なくとも扁平な軟磁性粉末とポリエステル樹脂とを含有する。ポリエステル樹脂は、リン内添ポリエステル樹脂である。リン内添ポリエステル樹脂は、分子中にリン酸残基を有する。リン内添ポリエステル樹脂のリン含有率は、3.0重量%以上であることが好ましい。これにより、難燃性軟磁性シートは、難燃剤としてハロゲン系難燃剤を使用せずとも十分な難燃性を有し、環境試験後の磁気特性の低下を少なくすることができる。
Description
明 細 書
難燃性軟磁性シート
技術分野
[0001] 本発明は、電磁波ノイズを抑制する難燃性軟磁性シートに関するものであり、特に
、難燃性を有するポリエステル樹脂を用いた新規な難燃性軟磁性シートに関する。 背景技術
[0002] 近年、鉄道の自動改札機や、建物への入退室におけるセキュリティシステム、電子 マネーシステム等の分野においては、非接触式の ICカードや ICタグ等を用いた、い わゆる RFID (Radio Frequency IDentification)システム等が導入され始めている。こ の RFIDシステムは非接触式 ICカードと、この ICカードに対してデータの書き込みや 読み出しを行うリーダライタとから構成されている。前記 RFIDシステムでは、電磁誘 導の原理に基づいて、リーダライタ側のループアンテナから磁束が放出されると、放 射された磁束が誘導結合によって ICカード側のループアンテナと磁気的結合し、 IC カードとリーダライタとの間で通信が行われる。
[0003] 前述のような RFIDシステムでは、従来の接触型 ICカードシステムのようにリーダラ イタに対して ICカードを装填したり金属接点を接触させたりする手間が省け、簡易且 つ高速にデータの書き込みや読み出しを行うことができる。また、前記 RFIDシステム では、電磁誘導によりリーダライタから ICカードに対して必要な電力の供給が行われ るため、 ICカード内に電池等の電源を内蔵する必要がなぐ構成を簡素化でき低価 格で信頼性の高い ICカードを提供することができる。
[0004] ただし、例えば ICカードに搭載される通信周波数 13. 56MHzの ICタグが金属の 周辺にあると、その影響を受けて通信力 Sうまくいかない場合がある。電磁誘導方式で 通信する 13. 56MHzでは、金属が近くにあるとその影響を受けてインダクタンスが 変化することによる共振周波数のずれや、磁束変化等から、電力確保ができなくなる 力もである。したがって、上述した RFIDシステムでは、 ICカードとリーダライタとの十 分な通信可能な範囲を確保するために、ある程度の磁界強度を持った電磁場を放 射することのできるループアンテナを ICカード側に設ける必要がある。
[0005] この場合、空間配置以外の方法で金属筐体によるループアンテナへの影響を低減 するためには、例えば磁性材料を用いることが有効であり、これによつて金属体への 影響を低減し、通信距離を大きくすることができる。また、近年の通信機器や電子機 器では、クロック周波数の高周波数化の進行に伴ってノイズ電磁波の放射頻度が高 まり、外部または内部干渉による機器それ自体の誤動作や周辺機器への悪影響等 が発生している力 このような電磁波障害の発生を防止するためにも磁性材料が有 効である。このような状況から、例えば適量の軟磁性粉末をゴムやプラスチックス等の 結合剤に分散 ·混合して成る各種の複合磁性シート (軟磁性シート)が提案されてい る。
[0006] 軟磁性シートは、準マイクロ波帯の電磁波に対して高い透磁率を示し、当該ノイズ 電磁波を吸収してそのエネルギーを熱に変換し、電磁波ノイズの放射を抑制する。そ の場合、複合磁性シートの透磁率と厚みの積が大きければ大きいほど電磁波ノイズ に対する抑制効果も大きくなるので、例えば厚みが同一であるとすれば、磁性シート の透磁率が高ければ高いほど電磁波ノイズに対する抑制効果は大きくなる。このた め、軟磁性シートの高透磁率化の検討が行われており、例えば、軟磁性粉末として 扁平形状のものを用い、その扁平面をシートの面内方向に配向させることにより透磁 率を高めた複合磁性シートが提案されている (例えば、特許文献 1等を参照)。
特許文献 1:特開 2002— 158488号公報
[0007] ところで、近年、電子機器の実装回路は高密度化しているため、その発熱量は増大 し、機器温度の上昇傾向が進んでいる。したがって、回路がショートして発火する場 合も起こり得るが、そのような場合であっても、前記軟磁性シートは発火しないことが 必要とされる。すなわち、軟磁性シートには、高透磁率であることは勿論のこと、耐熱 性に優れ、実用上の難燃性を備えていることも要求される。
[0008] 一般に、例えばプラスチック材料に難燃性を付与するには、レ、わゆる難燃剤の添カロ が行われており、難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤が広く知られている。し力しなが ら、近年、地球環境保護に対する配慮からハロゲン系難燃剤の使用を避ける傾向に あり、ハロゲン系難燃剤に代えてノンハロゲン系難燃剤が使用されるようになっている 。例えば、前記特許文献 1においても、リン系の難燃剤を添加して難燃性を付与する
ことが開示されている。リン系の難燃剤としては、例えば、トリフエニルホスフェート、ク レジルジフエニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、イソプロピルフエニルホスフ エート等の有機リン化合物を挙げることができる。
[0009] しかしながら、前記リン系の難燃剤を使用する場合、その添加量が多くなると、樹脂 組成物の耐熱性、物性の低下、高温条件下における有機リン化合物の揮発等の問 題点があり、その結果、少量しか添加できず十分な難燃性を確保できないという問題 がある。また、リン系の難燃剤を添加した場合、高温高湿下での加水分解が進行し、 磁性シートの高温高湿での環境試験後に透磁率 μ 'が低下してしまうという問題もあ り、難燃性を付与することはできても、磁気特性の低下を抑えることができないという 問題もある。
発明の開示
[0010] 本発明は、前記問題点を解決するために提案されたものであり、十分な難燃性を 有するとともに、環境試験後の磁気特性の低下を改善することが可能な軟磁性シート を提供することを目的とする。
[0011] 前述の目的を達成するために、本発明の難燃性軟磁性シートは、少なくとも扁平な 軟磁性粉末とポリエステル樹脂とを含有し、前記ポリエステル樹脂がリン内添ポリエス テル樹脂であることを特徴とする。
[0012] 本発明の難燃性軟磁性シートにおいては、先ず、軟磁性粉末として扁平な軟磁性 粉末を用いているので、その扁平面をシートの面内方向に配向させることにより、透 磁率 μ 'の高い軟磁性シートが実現される。
[0013] 一方、本発明の難燃性軟磁性シートにおいては、バインダーとしてリン内添ポリエス テル樹脂を用いているが、このリン内添ポリエステル樹脂は、分子中にリン酸残基を 有するために難燃性が高ぐしたがって難燃性も十分に確保される。また、難燃化の ために多量の難燃剤を添加する場合と異なり、加水分解が少ないので、環境試験後 に透磁率/ 'の低下が小さい。
[0014] 本発明の難燃性軟磁性シートでは、地球環境保護に対する配慮から、難燃剤とし てハロゲン系難燃剤を使用していないにも拘わらず、例えば少なくとも UL94の水平 燃焼試験の基準 HB相当の難燃性を有しており、十分な難燃性を実現することが可
能である。また、本発明によれば、環境試験後の磁気特性の低下も抑制することがで きるため、 RFID用途や電波吸収体として有用であり、例えば携帯電話やデジタル力 メラ等の電子機器のノイズ電磁波吸収材として用いることができる。
発明を実施するための最良の形態
[0015] 以下、本発明を適用した難燃性軟磁性シートについて詳細に説明する。
[0016] 本発明の難燃性軟磁性シートは、軟磁性粉末とバインダー(高分子結合材)とを混 合し、シート化してなるものである。ここで、軟磁性粉末を構成する磁性材料としては 、任意の軟磁性材料を用いることができる力 例えば、 Fe— Si— Cr系合金、 Fe— Si — Cr—Ni系合金、センダスト(Fe— Si—Al系)、パーマロイ(Fe— Ni)系等が好適で ある。これらの軟磁性材料からなる軟磁性粉末を用いて作製した軟磁性シートは、前 記軟磁性粉末が軟磁気特性に優れることから、 RFID用途や電波吸収体に好適に 用レ、ることができる。
[0017] 前記軟磁性粉末としては、扁平な形状の軟磁性粉末を用いるが、その平均粒子径 は、 3. 5〜90 x m、厚さは 2. 1 μ m以下とすることが好ましい。扁平な軟磁性粉末の 大きさを揃えるためには、必要に応じて、ふるい等を使用して分級すればよい。難燃 性軟磁性シートの透磁率を大きくするためには、扁平な軟磁性粉末の粒子サイズを 大きくして粒子同士の間隔を小さくし、且つ扁平な軟磁性粉末のァスぺ外比を高め て軟磁性シートにおける反磁場の影響を小さくすることが有効である。
[0018] また、前記軟磁性粉末には、その表面を被覆する絶縁層が形成されていても良い 。絶縁層が形成された扁平な軟磁性粉末を用いることによって、難燃性軟磁性シート の/ "が低下し Qが向上するので、通信距離が向上する。絶縁層の形成方法として は、樹脂でコーティングする方法や加熱により酸化膜を形成する方法、さらには軟磁 性粉末にスパッタ等の薄膜形成技術で酸化膜を形成する方法がある。酸化膜として は Al〇、 Si〇等を用いることができる。コーティングする樹脂としては、アタリレート
2 3 2
系、エステル系、ウレタン系、エポキシ系等を用いることができる。
[0019] なお、難燃性軟磁性シートの作製に用いる軟磁性粉末は、全て前記絶縁層により 被覆された軟磁性粉末としても良レ、し、絶縁被覆されてレヽなレヽ軟磁性粉末と絶縁被 覆された軟磁性粉末を混合したものであってもよい。後者の場合、絶縁被覆された軟
磁性粉末の割合を軟磁性粉末全体に対して 5%以上とすることで、絶縁による効果 が得られる。
[0020] あるいは、軟磁性粉末として、例えばシランカップリング剤等のカップリング剤を用 レ、てカップリング処理した軟磁性粉末を用いるようにしてもょレ、。カップリング処理した 軟磁性粉末を用いることによって、扁平な軟磁性粉末と高分子結合材界面の補強効 果を高め、比重や耐食性を向上させることができる。カップリング剤としては、例えば、 ン、 y—グリシドキシプロピルメチルジェトキシシラン等を用いることができる。なお、 前記カップリング処理は、予め軟磁性粉末に対して施しておいてもよいし、軟磁性粉 末とバインダーとを混合する際に同時に混合し、その結果前記カップリング処理が行 われるようにしてもよい。
[0021] —方、バインダー(高分子結合材)としては、リン内添ポリエステル樹脂を用いる。分 子中にリン酸残基を有するリン内添ポリエステル樹脂を用いることによって、難燃性を 付与すること力 Sできる。
[0022] 前記リン内添ポリエステル樹脂は、前記の通り分子中にリン酸残基を有するもので あり、例えばリン変性飽和ポリエステル共重合体を挙げることができる。リン変性飽和 ポリエステル共重合体は、飽和共重合ポリエステルの主骨格にリン成分が導入されて レ、るものであり、ポリエステル成分とリン成分とを共重合させることにより得られる。ここ でポリエステル成分としては、エチレングリコールとテレフタル酸、ナフタレンカルボン 酸、アジピン酸、セバシン酸又はイソフタル酸とから形成される高分子化合物や、 1 , 4_ブタンジオールとテレフタル酸、アジピン酸又はセバシン酸とから形成される高分 子化合物や、 1, 6—へキサンジオールとアジピン酸、セバシン酸又はイソフタル酸と 力 形成される高分子化合物等を使用することができる。またリン成分としては、ホス フォネート型ポリオール、ホスフェート型ポリオール、ビュルホスフォネート、ァリルホス フォネート等を使用することができる。このように主骨格にリン成分を導入したポリエス テル共重合体は、単にポリエステルにリン成分を混合分散させたものよりも高い難燃 性を示す。
[0023] リン内添ポリエステル樹脂のリン含有率は、ポリエステル樹脂の主骨格の種類、リン
成分 (リン酸残基)の種類、難燃性軟磁性シートを構成するその他の成分の種類等に 応じて、所定の難燃性を満足するように定めることができるが、 3. 0重量%以上とす ること力 S好ましレ、。リン含有率を 3. 0重量%以上とすれば、確実に十分な難燃性を確 保することが可能である。
[0024] また、前記リン内添ポリエステル樹脂の数平均分子量は、 3000〜100000であるこ と力 子ましレヽ。より好ましくは 10000〜50000である。リン内添ポリエステノレ系樹月旨の ガラス転移点は、 _ 20〜100°Cであることが好ましレ、。より好ましくは _ 20〜70°Cで ある。
[0025] 前記軟磁性粉末と混合するバインダー(高分子結合材)には、前記リン内添ポリエ ステル樹脂を単独で用いることも可能であるが、相溶性等の問題がなければ他の榭 脂を 1種類以上併用しても構わない。この場合、他の樹脂としては、エポキシ樹脂、ポ リエステル樹脂、アクリル系樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ロジン系樹脂、ナイロン樹 脂、フエノール樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリアミン樹脂、尿素ホルムアル デヒド樹脂、ポリイソシァネートやエポキシ化合物とイソシァネートの化合物やイミダゾ 一ルイヒ合物の混合物等を挙げることができる。
[0026] さらに、難燃性軟磁性シートにおいて、例えば UL94の垂直試験法の基準 V— 1と レ、うような充分な難燃性を確保するためには、耐熱性、物性の低下、高温条件下、加 水分解性、表面性等に影響を与えない程度に難燃剤を添加することも有効である。
[0027] 前記難燃剤としては、任意のものを使用できるが、例えば亜鉛系難燃剤、窒素系難 燃剤および水酸化物系難燃剤が挙げられる。さらに、水酸化マグネシウム、水酸化ァ ルミニゥムなどが上げられる。亜鉛系難燃剤としては、炭酸亜鉛、酸化亜鉛若しくは ホウ酸亜鉛等が挙げられ、中でも炭酸亜鉛が好ましい。窒素系難燃剤としては、例え ばメラミン (シァヌル酸トリアミド)、アムメリン (シァヌル酸ジアミド)、アムメリド (シァヌル 酸モノアミド)、メラム、メラミンシァヌレート、ベンゾグアナミン等のメラミン誘導体を用 レ、ることができる。ポリエステル樹脂への分散性、混合性の点で、メラミンシァヌレート を用いることが好ましい。また、難燃剤の代わりにカーボンブラック、酸化チタン、窒化 ホウ素窒化アルミニウム、アルミナ等を添カ卩しても良い。
[0028] 以上のように構成される難燃性軟磁性シートにおいては、透磁率 μ 'が 35以上であ
ること力 S好ましレ、。透磁率 μ 'が 35以上であれば、携帯用モパイル電子機器に搭載し た際の通信距離が 110mm以上となり、利便性が向上する。
[0029] また、難燃性軟磁性シートの比重は 3. 0以上であることが望ましい。より好ましくは 3 . 20以上である。難燃性軟磁性シートの比重を大きくすることによって、難燃性軟磁 性シートの中に含まれる空気が少なくなり、難燃性をより一層向上させることができる
[0030] 前述の難燃性軟磁性シートは、前記軟磁性粉末とバインダー(リン内添ポリエステ ル樹脂を含む高分子結合材)とを混合し、シート化することにより形成されるが、扁平 な軟磁性粉末を前記バインダーと混合し、高密度に充填することは容易なことではな い。扁平な軟磁性粉末をバインダーと混合する場合には、混合中の負荷によって扁 平な軟磁性粉末が粉砕され、小さくなつたり、大きな歪を受け、透磁率 μ 'を低下させ る原因となるからである。
[0031] そのため、扁平な軟磁性粉末とバインダーの混合には、溶媒に溶解させた高分子 結合材を使用し、極力扁平な軟磁性粉末に負荷を与えないように混合して磁性塗料 とし、これを塗布して軟磁性シートを製造することが好ましレ、。
[0032] さらに、配向を容易に行うためにも、バインダーとしての樹脂は流動性の高いものに することが好ましぐバインダーを溶媒に溶解させ、所定の粘度の磁性塗料とすること が好ましい。磁性塗料の粘度の調整には、各種溶媒を用いることができ、例えば、メ チルェチルケトン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物、シクロ へキサノン、メチルイソプチルケトン等を用いることができる。
[0033] 磁性塗料の粘度は後述の塗布方式で塗布できるように調節すればよいが、あまり 粘度を小さくしすぎるとバインダー成分が多くなるために、シート化した際に比重が小 さくなつてしまうという問題がある。また、粘度が大きすぎる場合には、前記問題の他、 塗布できなかったり、塗布する際にシートに筋が入るという不都合が生ずる可能性が ある。
[0034] 前記溶媒に溶解した液状樹脂をバインダーとして使用し、軟磁性粉末と混合した磁 性塗料をシートィ匕するには、例えばフィルム等の基材上に塗布してシートィ匕する方法 がある。塗布方式としてはコーター、ドクターブレード法等を採用することができる。こ
のとき、形成される軟磁性シートの厚さは、前記塗布方式で所望の厚さに調節するこ とがでさる。
[0035] 塗布時には、磁場をカ卩えることによって、扁平な軟磁性粉末を面内方向に配向、配 列させる効果が得られ、軟磁性粉末を高密度に充填することが可能となる。また、比 重を向上させるためにプレス工程を入れても良い。比重を大きくすることによって、軟 磁性シートの中に含まれる空気が少なくなるため、さらに難燃性を向上させることがで きる。
実施例
[0036] 次に、本発明を適用した難燃性軟磁性シートの具体的な実施について、実験結果 を基に説明する。
[0037] 実施例 1〜9ではバインダーとしてリン内添ポリエステル樹脂を用いた。実施例:!〜
4でのリン内添ポリエステル樹脂は、数平均分子量 24000、ガラス転移点 4°C、リン含 有率 3. 9重量%である。また、実施例 5〜9でのリン内添ポリエステル樹脂は、数平 均分子量 24000、ガラス転移点 4°C、リン含有率 3. 8重量%である。一方、比較例 1 〜5ではリン内添ポリエステル樹脂を用いずに、通常のポリエステル樹脂を用いた。こ のうち、比較例 2〜3では、リン内添ポリエステル樹脂を用いない代わりに難燃剤であ るリン酸エステル(商品名 CR— 741、大八化学社製)を添カ卩した。また、比較例 4〜5 では、リン内添ポリエステル樹脂を用いない代わりに窒素含有有機難燃剤のメラミン シァヌレートを添加した。
[0038] これらバインダーを用レ、、表 1及び表 2に示す軟磁性粉末(Fe_Si_Cr、 Fe- Si
-Cr-Νΰ Fe— Si— Al、 SiO被覆 Fe— Si— Cr、 SiO被覆 Fe— Si— Cr— Ni、ァ
2 2
クリル樹脂被覆 Fe— Si— Cr)及びシランカップリング剤を加えて磁性塗料を調製し、 シート化して難燃性軟磁性シートを作製した。この難燃性軟磁性シートは、温度 80°C 、圧力 13· 4kgf/cmに設定したラミネーターに 10回通した後、温度 150°C、圧力 1 3. 4kgf/cmに設定したラミネーターに 10回通し、さらに、温度 85°Cで 10分間保持 してシートの歪みを取った。各成分の配合比は表 1及び表 2に示す通りである。
[0040] [表 2]
[0041] 得られた難燃性軟磁性シート(実施例:!〜 9及び比較例:!〜 5)について、それぞれ UL94が定める垂直試験法に準じて難燃性を評価した。このうち、 UL94が定める垂 直試験法の各基準を満たさない場合、 UL94が定める水平燃焼試験に準じて難燃
性を評価した。下記表 1及び表 2の難燃性の項目には、 UL94が定める垂直試験法 の各基準 (V_0、 V_ l、 V- 2)に達した場合、その達した基準として V_0、 V— 1、 V- 2のレ、ずれかを記し、 UL94が定める垂直試験法の各基準を満たさずに UL94 が定める水平燃焼試験の基準に達した場合、 HBを記すことにし、 UL94が定める水 平燃焼試験の基準にも満たさないものは未記入とした。また、得られた難燃性軟磁性 シート(実施例:!〜 9及び比較例:!〜 5)の磁気特性 (透磁率 μ '、磁気損失 μ ")及び 比重と通信距離とを測定した。さらに、環境試験として、温度 85°C、湿度 85%の高温 高湿環境下に 96時間保持した後の実効透磁率 μ '及び磁気損失 μ "並びに比重を 測定した。通信距離は、作製した難燃性軟磁性シートをアンテナ装置とシールド板の 間に配置して携帯電話に搭載し、そのときの通信距離を測定した。透磁率/ 'は、 φ 7mmのリング状のサンプルを作製し、これに導線コイルを 5ターン卷いてインピーダ ンスアナライザーを用いてキャリア周波数(13. 56MHz)における交流透磁率を測定 し、定量化することにより得た。結果を表 3及び表 4に示す。
[表 3]
[0044] 実施例:!〜 4をみると、難燃剤としてリン酸エステルを用いた場合 (比較例 2)と同等 の難燃性が付与されたことがわかる。また、リン内添ポリエステル樹脂を用いた場合( 実施例:!〜 4)には、難燃剤を用いた場合 (比較例 2)と比べて環境試験後の透磁率 μ 'の低下も少ないことがわかる。また、実施例 5においては、リン内添ポリエステル樹 脂を用いた結果、環境試験後の透磁率 μ 'の変化率が、通常のポリエステル樹脂を 使用した比較例 1と同等であった。さらに、実施例 5においては、リン酸エステルを通 常のポリエステル樹脂に加えた比較例 2に比べて、磁気特性が良ぐ特性の低下も 抑えられた。実施例 6においては、磁性粉である Fe _Si_Cr_Niの一部を Si〇被
2 覆の Fe _Si_Cr_Niに置き換えることで、磁気損失 μ "を少し小さくすることができ た。また、実施例 7においては、磁性粉である Fe— Si— Cr— Niの一部をアクリル樹 脂被覆の Fe— Si— Crに置き換えることで、磁気損失 μ "を少し小さくすることができ た。さらに、実施例 8及び実施例 9は、リン内添ポリエステル樹脂に、難燃剤として、窒 素含有有機難燃剤のメラミンシァヌレートを加えることにより、 UL94が定める垂直試 験法の基準 V— 0を満たし、より高い難燃性を付与することができた。
[0045] 一方、比較例 1は、通常のポリエステルを使用したが、 UL94が定める垂直試験法
の各基準又は水平燃焼試験の基準を満たさず、難燃性がなかった。また、比較例 2 は、通常のポリエステルに難燃剤としてリン酸エステルを加えたが、比較例 1と同様に 、難燃性がなかった。さらに、比較例 2は、磁気特性 (透磁率 μ '、磁気損失 μ ")も悪 ぐ環境試験後に積層界面での剥離が起ったため、環境試験後の磁気特性が測定 できなかった。比較例 3は、通常のポリエステルに比較例 2よりも少ない量のリン酸ェ ステルを使用したことで、環境試験後の積層界面での剥離が確認されな力つたもの の、磁気特性 (透磁率/ ζ '、磁気損失 μ ")の低下が大きかった。また、比較例 4及び 比較例 5に示すように、通常のポリエステル樹脂にメラミンシァヌレートを添加しても、 UL94が定める垂直試験法の各基準又は水平燃焼試験の基準を満たさず、十分な 難燃性が得られな力 た。
これら表 3及び表 4から明らかなように、バインダーとしてリン内添ポリエステル樹脂 を用いることで、リンを内添しない通常のポリエステルに比べて高い難燃性が付与さ れたことがわかる。また、リン内添ポリエステル樹脂にメラミンシァヌレートをカ卩えること で、より高い難燃性が得られることがわかる。
Claims
請求の範囲
[I] 少なくとも扁平な軟磁性粉末とポリエステル樹脂とを含有し、前記ポリエステル樹脂 力 Sリン内添ポリエステル樹脂であることを特徴とする難燃性軟磁性シート。
[2] 前記リン内添ポリエステル樹脂は、分子中にリン酸残基を有することを特徴とする請 求の範囲第 1項記載の難燃性軟磁性シート。
[3] 前記リン内添ポリエステル樹脂のリン含有率が 3. 0重量%以上であることを特徴と する請求の範囲第 1項または第 2項記載の難燃性軟磁性シート。
[4] さらに難燃剤を含有することを特徴とする請求の範囲第 1項から第 3項のいずれ力 1 項記載の難燃性軟磁性シート。
[5] 前記難燃剤は、窒素含有有機難燃剤であることを特徴とする請求の範囲第 4項記 載の難燃性軟磁性シート。
[6] 前記難燃剤は、メラミンシァヌレートであることを特徴とする請求の範囲第 4項記載 の難燃性軟磁性シート。
[7] 前記軟磁性粉末が、 Fe_Si_Cr系粉末、 Fe_ Si_Cr_Ni系粉末、 Fe_Si_Al 系粉末、 Fe_Ni系粉末から選択される少なくとも 1種であることを特徴とする請求の 範囲第 1項力 第 6項のいずれ力 4項記載の難燃性軟磁性シート。
[8] 透磁率 μ 'が 35以上であることを特徴とする請求の範囲第 1項から第 7項のいずれ 力 4項記載の難燃性軟磁性シート。
[9] 前記軟磁性粉末が絶縁層により被覆されていることを特徴とする請求の範囲第 1項 から第 8項のいずれか 1項記載の難燃性軟磁性シート。
[10] 前記絶縁層は、酸化膜または樹脂膜であることを特徴とする請求の範囲第 9項記 載の難燃性軟磁性シート。
[I I] 前記軟磁性粉末がカップリング処理されていることを特徴とする請求の範囲第 1項 から第 10項のいずれか 1項記載の軟磁性シート。
[12] 比重が 3. 0以上であることを特徴とする請求の範囲第 1項から第 11項のいずれ力 1 項記載の難燃性軟磁性シート。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007507597A JPWO2007007834A1 (ja) | 2005-07-14 | 2006-07-13 | 難燃性軟磁性シート |
Applications Claiming Priority (2)
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