明 細 書
電動圧縮機
技術分野
[0001] 本発明は、電動圧縮機に関し、とくに圧縮機構駆動用の内蔵電動モータへの給電 用外部端子のコネクタ構造を改良した電動圧縮機に関する。
背景技術
[0002] 圧縮機構駆動用の電動モータを内蔵した電動圧縮機、とくに車両用冷凍システム 等に用いられる電動圧縮機においては、通常、高電圧モータを使用しているので、 安全面等力 モータの給電用外部端子部と、該給電用外部端子に接続される端子 接続部を覆うケーシング内の気密性を確保し、漏電のおそれのない構造が必要とさ れる。
[0003] 上記給電用外部端子には、コネクタの端子接続部が接続される。このようなコネクタ 構造としては、図 7、図 8に示すようなものが知られている(特許文献 1)。コネクタ 100 は、給電用外部端子 101が挿入される端子穴 102を有する端子接続部 103を有して いる、端子接続部 103はケーシング 104に覆われている。端子接続部 103には、ケ 一ブル 105が接続されている。ケーブル 105は、固定リング 106に固定されている。 ケーブル 105は、芯線 112と該芯線 112を覆う被覆材 113からなつている力 被覆材 113は絶縁性を確保するため、通常、榭脂 (たとえば、熱可塑性榭脂)から形成され ている。
[0004] また、ケーシング 104には、取り付け部 108が設けられている。取り付け部 108には 、ボルト(図示略)が挿通される揷通孔 109が設けられている。一方、圧縮機(図示略 )の圧縮機ハウジング 110にはボルトが螺合されるねじ穴 111が設けられて 、る。そし て、給電用外部端子 101を端子穴 102に挿入し、取り付け部 108の揷通孔 109を介 してボルトを挿入し、該ボルトをねじ穴 111に螺合することにより、コネクタ 100が接続 されるようになつている。
[0005] 上記のようにコネクタ 100が給電用外部端子 101に接続された状態においては、ケ 一シング 104内と大気側との間で気密性を確保する必要がある。このため、ケーブル
105のケーシング 104への揷入部には、シール材 107が設けられている。
[0006] しかし、自動車のエンジンルーム等の環境下においてコネクタ 100全体が高温にな つた場合、これにより芯線 112を覆う榭脂製の被覆材 113が軟ィ匕し、ケーブル 105と シール材 107との接触面圧が減少し、シール材 107のシール性が低下するおそれが ある。また、圧縮機の設置スペースが狭小な場合 (たとえば、自動車のエンジンルー ム等)には、意識的にケーブル 105を湾曲して配置しなければならないこともあるが、 この場合にもケーブル 105とシール材 107との接触面積が減少し、シール材 107の シール性が低下するおそれがある。
特許文献 1:特開 2003 - 239862号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0007] そこで本発明の課題は、ケーブルが高温になった場合、あるいはケーブルが湾曲 配置される場合等にぉ 、ても、ケーブルとシール材との接触面圧または接触面積の 減少を防止でき、ケーシング内の良好なシール性を確保可能で信頼性、耐久性に優 れた電動圧縮機を提供することにある。
課題を解決するための手段
[0008] 上記課題を解決するために、本発明に係る電動圧縮機は、芯線に被覆材が被覆さ れた電力供給用のケーブルと、該ケーブルが接続され、圧縮機ハウジングに内蔵さ れた圧縮機構駆動用の電動モータへの給電用外部端子が挿入される端子穴を有し 前記給電用外部端子に着脱可能に構成された端子接続部と、該端子接続部を覆う ケーシングとを有するコネクタ構造を備えた電動圧縮機にぉ 、て、前記ケーブルの 芯線と被覆材との間であって、かつ、少なくともケーシングのケーブル挿入部に設け られたシール材に対応する位置にカラーを介装したことを特徴とするものからなる。こ のような構成においては、ケーブルの被覆材の内側であって、少なくともケーシング のケーブル挿入部に設けられたシール材に対応する位置にはカラーが設けられてい るので、エンジンルーム内等でケーブルが高温になりケーブルの榭脂製の被覆材が 軟化した場合、あるいはケーブルが湾曲配置される場合等においても、ケーブルとシ ール材との接触面圧または接触面積を常時一定に維持できる。したがって、ケーシ
ング内の良好なシール性を確保することができる。
[0009] 上記カラーには、端部に径方向に突出する鍔部を形成することも可能である。この ような鍔部を設ければ、該鍔部を介してカラー全体をケーシングに固定することもで きるので、カラーの位置ずれ等を確実に防止できる。
[0010] 上記カラーは、たとえば金属、榭脂から形成することができる。榭脂は、熱可塑性榭 脂、熱硬化性榭脂のいずれを用いることも可能である。なお、ケーブルの芯線の温度 は、電動圧縮機の設置場所の温度等にも影響される。したがって、カラーの材質は、 上記電動圧縮機の設置場所の温度等も考慮して決定されることが好ましい。
[0011] 本発明に係る電動圧縮機は、電動モータを内蔵するものであればいかなるタイプ の電動圧縮機にも適用可能であり、 V、わゆるハイブリッド圧縮機にも適用可能である 。たとえば、電動圧縮機が、上記内蔵電動モータとは別の第 1駆動源のみにより駆動 される第 1圧縮機構と、第 2駆動源としての上記内蔵電動モータのみにより駆動され る第 2圧縮機構とが並設されて一体的に組み付けられたハイブリッド圧縮機力もなる 場合にも適用できる。
[0012] このようなハイブリッド圧縮機においては、たとえば、上記第 1圧縮機構および第 2 圧縮機構がスクロール型圧縮機構からなり、両圧縮機構の固定スクロールが背中合 わせに配置されている構成を採用できる。この背中合わせに配置された両固定スクロ ールは一体形成された固定スクロール部材カもなる構造とすることもできる。また、上 記第 1駆動源としては、車両用原動機、たとえば、車両走行用のエンジンや、上記内 蔵電動モータとは別の電動モータを使用することができる。
発明の効果
[0013] このような本発明に係る電動圧縮機によればケーブルの被覆材の内側であって、 少なくともケーシングのケーブル挿入部に設けられたシール材に対応する位置には カラーが設けられているので、給電時等によりケーブルが高温になりケーブルの榭脂 製の被覆材が軟化した場合、ある ヽはケーブルが湾曲配置される場合等にぉ ヽても 、ケーブルとシール材との接触面圧または接触面積を常時一定に維持できる。した がって、コネクタ内の良好なシール性を確保することができ、電動圧縮機の信頼性、 耐久'性を向上できる。
図面の簡単な説明
[0014] [図 1]本発明の第 1実施態様に係る電動圧縮機としてのハイブリッド圧縮機の縦断面 図である。
[図 2]図 1のコネクタの横断面図である。
[図 3]図 1のコネクタのハイブリッド圧縮機への接続状態を示す分解断面図である。
[図 4]本発明の第 2実施態様に係るコネクタ構造の部分横断面図である。
[図 5]図 5のカラーの平面図である。
[図 6]図 5とは別の態様のカラーの平面図である。
[図 7]従来のコネクタの横断面図である。
[図 8]図 7のコネクタの圧縮機への接続状態を示す分解断面図である。
符号の説明
[0015] 1 電動圧縮機としてのハイブリッド圧縮機
2 第 1圧縮機構
3 第 2圧縮機構
10、 30 固定スクロ -ル
11、 31 可動スクロ -ル
12、 32 作動空間
13、 33 駆動軸
15 電磁クラッチ
18 吸入ポート
20、 40 吸入室
21、 41 吐出穴
22、 42 吐出通路
35 電動モータ
36 回転子
37 ステータ
38 ステータハウジン
39 連通路
43 固定スクロール部材
50 端子部
51 給電用外部端子
52 ステータからのワイヤ
53 接続部
54 中空突出部
55 蓋
56、 70 コネクタ
57 端子穴
58 端子接続部
59、 74 ケーシング
60、 71 ケーブル
61 固定リング
62、 Ί Δ 線
63、 73 被覆材
64 取り付け部
65 揷通孔
66 ねじ穴
67、 75 シーノレ材
68、 76 カラー
77 円筒部
78 鍔部
79 ねじ
80、 82 ねじ孑し
81 固定部
83 蓋
発明を実施するための最良の形態
以下に、本発明の電動圧縮機の望ましい実施の形態を、図面を参照して説明する
図 1は、本発明の第 1実施態様に係る電動圧縮機を示しており、とくに、ハイブリッド 圧縮機とした場合を示している。図 2、図 3は、図 1に示したハイブリッド圧縮機の一部 を構成するコネクタ構造を示したものである力 この図 2、図 3に示した構造は、ハイブ リツド圧縮機に限らず、単に内蔵電動モータのみを駆動源として有する電動圧縮機 にも適用できる構造である。
[0017] まず、図 1に示したハイブリッド圧縮機について説明する。ノ、イブリツド圧縮機 1はス クロール型の圧縮機からなり、第 圧縮機構 2と第 2圧縮機構 3とを備えている。第ェ圧 縮機構 2は、固定スクロール 10と、固定スクロール 10とかみ合って複数対の作動空 間(流体ポケット) 12を形成する可動スクロール 11と、可動スクロール 11に係合して 可動スクロール 11を旋回運動させる駆動軸 13と、第 1駆動源としての車両走行用の 原動機(図示略)からの駆動力が伝達されるプーリ 14と駆動軸 13との間の駆動力伝 達をオン、オフする電磁クラッチ 15と、可動スクロール 11の自転を阻止するボール力 ップリング 16と、ケーシング 17に形成された吸入ポート 18とを備えている。吸入ポー ト 18から吸入通路 19を通して吸入室 20へと吸入された被圧縮流体 (たとえば、冷媒 ガス)は、作動空間 12内に取り込まれ、作動空間 12が体積を減少させつつ固定スク ロール 10の中心へ向けて移動されることにより、作動空間 12内の冷媒ガスが圧縮さ れる。固定スクロール 10の中央部には吐出穴 21が形成されており、圧縮された冷媒 ガスは吐出穴 21、吐出通路 22、吐出ポート 23を介して外部冷媒回路の高圧側へ流 出される。
[0018] 一方、第 2圧縮機構 3は、固定スクロール 30と、固定スクロール 30とかみ合って複 数対の作動空間(流体ポケット) 32を形成する可動スクロール 31と、可動スクロール 3 1に係合して可動スクロール 31を旋回運動させる駆動軸 33と、可動スクロール 31の 自転を阻止するボールカップリング 34とを備えて 、る。この第 2圧縮機構 3の駆動軸 33を駆動するために、電動モータ 35が内蔵されている。電動モータ 35は、駆動軸 3 3に固定された回転子 36と、ステータ 37とを有しており、ステータ 37は、ステータハウ ジング 38に、または圧縮機ハウジングの一部として形成されたステータハウジング 38 に固定されるとともに、電動モータ 35全体がステータハウジング 38内に収納されてい
る。この第 2圧縮機構 3においては、吸入ポート 18から第 1圧縮機構 2の吸入室 20へ と吸入された被圧縮流体 (たとえば、冷媒ガス)が、連通路 39を通して第 2圧縮機構 3 の吸入室 40に吸入され、作動空間 32内に取り込まれ、作動空間 32が体積を減少さ せつつ固定スクロール 30の中心へ向けて移動されることにより、作動空間 32内の冷 媒ガスが圧縮される。固定スクロール 30の中央部には吐出穴 41が形成されており、 圧縮された冷媒ガスは吐出穴 41、吐出通路 42を介して外部冷媒回路の高圧側へ 流出される。
[0019] 本実施態様では、第 1圧縮機構 2の固定スクロール 10と第 2圧縮機構 3の固定スク ロール 30とは背中合わせに配設されており、かつ、両固定スクロール 10、 30は一体 化された固定スクロール部材 43として形成されている。
[0020] ノ、イブリツド圧縮機 1の第 1圧縮機構 2のみが稼働される場合には、第 2圧縮機構 3 を駆動する電動モータ 35には電力は供給されず、電動モータ 35は回転しない。した 力 て第 2圧縮機構 3は作動しない。ハイブリッド圧縮機 1が電動モータ 35のみにより 駆動される場合には、電動モータ 35がオンされて回転し、電動モータ 35の回転が第 2圧縮機構 3の駆動軸 33へ伝達され、駆動軸 33により可動スクロール 31が旋回駆 動される。このとき、第 1圧縮機構 2の電磁クラッチ 15には通電されず、第 1駆動源と しての車両用原動機の回転は第 1圧縮機構 2へは伝達されない。したがって第 1圧 縮機構 2は作動しない。両圧縮機構 2、 3が同時駆動される場合には、車両用原動機 力 の駆動力が第 1圧縮機構 2の可動スクロール 11に伝達されるとともに、電動モー タ 35がオンされてその駆動力が第 2圧縮機構 3の可動スクロール 31に伝達される。
[0021] このように構成されたノ、イブリツド圧縮機 1においては、電動モータ 35の端子部 50 は、搭載形態におけるハイブリッド圧縮機 1の上部に配置されている。この端子部 50 の詳細は、電動モータ 35の給電用外部端子 51と電動モータ 35のステータ 37からの ワイヤ 52の端部との接続部 53を有している。接続部 53は、ステータハウジング 38に 形成され外方に向けて延びる中空突出部 54内に配置されており、給電用外部端子 51は、この中空突出部 54を実質的に密閉可能な蓋 55に取り付けられている。
[0022] 給電用外部端子 51には、図 2、図 3に示すようなコネクタ 56が接続されている。コネ クタ 56は、給電用外部端子 51が挿入される端子穴 57が設けられた端子接続部 58
を有している、端子接続部 58はケーシング 59に覆われている。端子接続部 58には、 ケーブル 60が接続されている。ケーブル 60は、固定リング 61を介してケーシング 59 に固定されている。ケーブル 60は、芯線 62と該芯線 62を覆う被覆材 63からなつてい る力 被覆材 63は絶縁性を確保するため榭脂から形成されて 、る。
[0023] ケーシング 59のケーブル揷入部には、たとえばゴムまたは榭脂からなるシール材 6 7が設けられている。該シール材 67によりケーシング 59内部は外部に対して気密状 態にシールされて 、る。そしてケーブル 60の少なくともシール材 67に対応する位置 には金属からなるカラー 68が設けられて 、る。本実施態様にぉ 、てはカラー 68は金 属から形成されているが、榭脂から形成することも可能である。カラー 68は、図 2、図 3に示すように円筒状に形成されており、ケーブル 60の被覆材 63の内側に設けられ ている。
[0024] また、ケーシング 59には、該ケーシング 59を圧縮機ハウジング側に固定する取り付 け部 64が設けられている。取り付け部 64には、ボルト(図示略)が挿通される揷通孔 65が設けられている。一方、圧縮機 1側の蓋 55にはボルトが螺合されるねじ穴 66が 設けられている。そして、給電用外部端子 51を端子穴 57に挿入し、取り付け部 64の 揷通孔 65を介してボルトを挿入し、該ボルトをねじ穴 66に螺合することにより、コネク タ 56が接続されるようになって 、る。
[0025] 本実施態様においては、ケーブル 60の少なくともシール材 67に対応する位置には カラー 68が設けられて!/、るので、ケーブル 60が高温になりケーブル 60の榭脂製の 被覆材 63が軟化した場合、あるいはケーブル 60が湾曲配置される場合等において も、ケーブル 60とシール材 67との接触面圧または接触面積を常時一定に維持でき る。したがって、ケーシング 59内の良好なシール性を確保することができる。
[0026] 図 4は、本発明の第 2実施態様に係る電動圧縮機の一部を構成するコネクタ 70を 示している。ケーブル 71は、芯線 72と該芯線 72を覆う被覆材 73からなつているが、 被覆材 73は絶縁性を確保するため榭脂から形成されて 、る。
[0027] ケーシング 74のケーブル挿入部には、たとえばゴムまたは榭脂からなるシール材 7 5が設けられている。ケーシング 74のケーブル揷入部は、蓋 83により閉塞されている 。また、シール材 75によりケーシング 74内部は外部に対して気密状態にシールされ
ている。そしてケーブル 71の被覆材の内側の、少なくともシール材 75に対応する位 置には金属からなるカラー 76が設けられている。本実施態様においてはカラー 76は 金属から形成されているが、榭脂から形成することも可能である。
[0028] カラー 76は、図 4に示すように円筒部 77と、該円筒部 77の端部に形成された鍔部 78からなつている。鍔部 78は円筒部 77の径方向に突出しており、本実施態様にお いては図 5に示すように円筒部 77の全周に鍔部 78が形成されている。なお、鍔部 78 は円筒部 77の周方向に部分的に形成することも可能である。たとえば、図 6に示すよ うに鍔部 78を円筒部 77の周方向に少なくとも 2つ以上形成すれば、カラー 78全体を ケーシング 74に固定することができる。
[0029] 鍔部 78には、ねじ 79 (図 4においては、皿ねじ)が螺合されるねじ孔 80力 周方向 に複数設けられている。また、ケーシング 74の内面には鍔部 78が固定される固定部 81が設けられている。なお、固定部 81はケーシング 74に一体に形成することも可能 である。固定部 81には鍔部 78のねじ孔 80に対応するねじ孔 82が設けられている。
[0030] 本実施態様においては、ケーブル 71の少なくともシール材 75に対応する位置には カラー 76が設けられているので、ケーブル 71が高温になり被覆材 73が軟化した場 合、あるいはケーブル 71が湾曲配置される場合等においても、ケーブル 71とシール 材 75との接触面圧または接触面積を常時一定に維持できる。したがって、ケーシン グ 74内の良好なシール性を確保することができる。
[0031] また、本実施態様においては、カラー 76の円筒部 77の端部には、径方向に突出 する鍔部 78が設けられ、該鍔部 78を介してカラー 76全体がケーシング 74に固定さ れて 、るので、カラー 76の位置ずれ等を確実に防止できる。
産業上の利用可能性
[0032] 本発明は、単に内蔵電動モータのみを駆動源として有する電動圧縮機にも適用で きるが、とくに車両用冷凍サイクル等に好適な、ハイブリッド圧縮機として好適である。