明 細 書 誘電体磁器組成物及びその製造方法 技術分野
本発明は、 A g又は A gを主成分とする合金等の導体を内部導体として使 用することができるように低温焼結性を有する誘電体磁器組成物に関する。 背景技術
近年、 自動車電話、 携帯電話等の移動体通信分野の成長が極めて著しい。 そして、 これらの移動体通信では数 1 0 OMH z〜数 GH z程度のいわゆる 準マイクロ波と呼ばれる高周波帯が使用されている。 そのため、 移動体通信 機器に用いられる共振器、 フィルタ、 コンデンサ等の電子デバイスにおいて も高周波特性が重要視されるに至っている。
また、 近年の移動体通信の普及に関しては、 サービスの向上の他に通信機 器の小型化及び低価格化が重要な因子となっている。 そのため、 高周波デバ イスに関しても小型化および低価格化が要求されるようになってきている。 例えば共振器用材質において小型化を実現させるためには使用周波数におい て比誘電率が高く、 誘電損失が小さく、 かつ共振周波数の温度特性の変化が 小さい誘電体磁器組成物が要求される。
このような要求を満たす高周波デバイスの材質として、 従来よリ B a O— 希土類酸化物一 T i 02系の誘電体磁器組成物が知られている。
さらに、 高周波デバイスの小型化のために、 内部に電極や配線等の導体 ( 以下、 高周波デバイスの内部に備えた電極や配線等の導体を 「内部導体」 と 称す) を備えた表面実装型の部品 (SMD : S u r f a c e Mo u n t
D e v i c e) が主流となりつつあるのが現状である。
内部に電極や配線等の導体を形成するには、 誘電体磁器組成物と電極や配 線等の導体を同時焼成する必要がある。 しかしながら、 B a O—希土類酸化 物一 T i 02系の誘電体磁器組成物は、 焼成温度が 1 300〜 1 400°Cと
比較的高いために、 これとの組み合わせで用いられる電極や配線等の導体材 質としては、 高温に耐えることができるパラジウム (P d ) や白金 (P t ) 等の貴金属に限定されていた。
しかしながら、 これらの貴金属は高価なために、 デバイスの低価格化を実 現させるためには、 低抵抗の導体でかつ安価な A g、 C u等の導体を内部導 体として使用できるようにすることが望ましい。
そこで、 B a O—希土類酸化物一 T i 0 2系を主成分とした材質に、 B 2 0 3等の副成分を添加する技術が提案されており、 これによれば、 A g、 C u等の導体の融点より低い温度で誘電体磁器組成物を焼成することができ、 A g、 C u等の導体を内部導体として同時焼成を可能としている (例えば、 特開 2 0 0 1 — 3 1 4 6 8号公報、 特開平 6— 4 0 7 6 7号公報参照。)。 一方、 さらなるデバイスの小型化を実現させるために、 高い比誘電率を有 する誘電体磁器組成物と、 低い比誘電率を有する誘電体磁器組成物を接合し 、 複数の高周波デバイスを一体化させた高特性の多層型デバイスの提案も行 われている (例えば、 特開平 9一 1 3 9 3 2 0号公報参照。)。
しかしながら、 このような多層型デバイスを形成するに際し、 高い比誘電 率を有する誘電体磁器組成物と低い比誘電率を有する誘電体磁器組成物の組 成材質が双方で異なれば、 双方の焼成時の収縮挙動および線膨張係数が一致 しないため、 前記高い比誘電率を有する誘電体磁器組成物と前記低い比誘電 率を有する誘電体磁器組成物を接合し焼成すると、 接合面に欠陥を生じてし まう。
このような観点から、 多層型デバイスを形成するに際し、 高い比誘電率を 有する誘電体磁器組成物と低い比誘電率を有する誘電体磁器組成物は、 基本 的に同一の材質又は類似する材質から構成され、 ほぼ類似の物性を備えてい ることが望ましい。
しかしながら、 小型の高周波デバイスの材質に適している B a 0—希土類 酸化物一 T i 0 2系誘電体磁器組成物は、 前記の特許文献 1に記載されるよ うに極めて高い比誘電率を有しており、 単に副成分を添加したとしても複合 化 (多層型デバイス) に要求される比誘電率の低い B a O—希土類酸化物一
T i o2系誘電体磁器組成物を製造することは困難であるといえる。 発明の開示
このような実状のもとに本発明は創案されたものであり、 その目的は、 B a O、 希土類酸化物及び Τ ί 02が主成分として含有された組成系であって も、 A g又は A gを主成分とする合金等の導体を内部導体として確実に使用 できるように、 低温での焼結性をより安定■確実なものとした誘電体磁器組 成物及びその製造方法を提供することにある。
さらには、 温度変化による共振周波数の変化が小さく、 B a O—希土類酸 化物一 Τ ί 02系誘電体磁器組成物の比誘電率より低い比誘電率を有する誘 電体磁器組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
このような課題を解決するために、 本発明の誘電体磁器組成物は、 主成分 として、 組成式 { (x B a O - y Nd203 " z T i 02) +β (2 M g Ο ' S i 02)} と表される成分を含み、 B a Oと N d203と T i 02のモル比 率を表わす X、 y、 zがそれぞれ、
9 (モル0/ 0) ≤ X≤ 22 (モル0 /o)、
9 (モル0 /o) ≤ y≤ 29 (モル0/ o)、
61 (モル%) ≤ 2≤ 74 (モル0 /0) の範囲内にあるとともに、 X + y + z = 1 00 (モル%) の関係を満たし、
前記主成分における各成分の体積比率を表わす a、 がそれぞれ
1 5 (体積0 /o) ≤a≤7 5 (体積0 /0)、
25 (体積%) ≤β≤ 8 5 (体積%) の範囲にあるとともに、 α + ^ = 1 00 (体積0 /0) の関係を満たし、
前記主成分に対して副成分として、 亜鉛酸化物、 ホウ素酸化物、 銅酸化物 およびアル力リ土類金属酸化物を含むとともに、 これらの副成分をそれぞれ 、 a Z n O、 b B203、 c C u Oおよび d RO (Rはアルカリ土類金属) と表したとき、
前記主成分に対する前記各副成分の重量比率を表わす a、 b、 c、 および dがそれぞれ、
0. 1 (重量%) ≤ a≤ 1 2. 0 (重量0 /o)
0. 1 (重量。/。) ≤ b≤ 1 2. 0 (重量%)、
0. 1 (重量%) ≤ c≤ 9. 0 (重量0/ o)、
0. 2 (重量%) ≤ d≤ 5. 0 (重量0/ o)、
の関係を有してなるように構成される。
また、 本発明の好ましい態様として、 前記アルカリ土類金属 Rは、 B a、 S r、 C aのグループから選ばれた少なくとも 1種から構成される。
また、 本発明の好ましい態様として、 誘電体磁器組成物中にフオルス亍ラ ィ ト (2MgO ■ S i 02) 結晶を含有してなるように構成される。
また、 本発明の好ましい態様として、 さらに、 副成分として A gを含むよ うに構成される。
また、 本発明の好ましい態様として、 前記主成分に対する A gの重量比率 を、 e A gと表したとき、 0. 3 (重量0 /0) ≤ e≤3. 0 (重量0 /0) として なるように構成される。
また、 本発明の好ましい態様として、 焼成温度が 870°C以下の物性を有 してなるように構成される。
また、 本発明の好ましい態様として、 比誘電率が 50以下の物性を有して なるように構成される。
また、 本発明の好ましい態様として、 比誘電率が 20〜40の範囲、 Q - f 値が 4000 GH z以上の物性を有してなるように構成される。
本発明は、 バリウム含有原料、 ネオジム含有原料、 チタン含有原料、 マグ ネシゥム含有原料、 シリコン含有原料、 亜鉛含有原料、 ホウ素含有原料、 銅 含有原料及びアル力リ土類金属含有原料を焼成して B a O— N d 203-T i 02-M g 0-S i 02-Z n O-B 203-C u O-RO (Rはアルカリ 土類金属) 系誘電体磁器組成物を製造する方法であって、 前記マグネシウム 含有原料及び前記シリコン含有原料としてフォルス亍ライ ト (2MgO ' S ί ο2) 粉末を使用してなるように構成される。
本発明は、 バリウム含有原料、 ネオジム含有原料、 チタン含有原料、 マグ ネシゥム含有原料、 シリコン含有原料、 亜鉛含有原料、 ホウ素含有原料、 銅
含有原料、 アルカリ土類金属含有原料及び銀 (A g) を含有させた混合物を '焼成して、 B a O— N d 203— T i 02-M g O-S i 02-Z n 0-B20 3-C u O-RO (Rはアルカリ土類金属) 一 A g系誘電体磁器組成物を製 造する方法であって、 前記マグネシウム含有原料及び前記シリコン含有原料 としてフォルステラィ ト (2M g O ■ S i 02) 粉末を使用してなるように 構成される。
本発明は、.誘電体磁器組成物の主成分として B a 0、 N d 203、 T i 02 、 M g O及び S i 02を所定の比率で含有し、 前記誘電体磁器組成物の副成 分として Z n O、 B203及び C u Oを所定の比率で含有し、 さらに前記副 成分としてアルカリ土類金属酸化物 RO (R :アルカリ土類金属) を含有す ることで、 A g又は A gを主成分とする合金等の導体を内部導体として確実 に使用できるように、 低温での焼結性をより安定 '確実なものとすることが できる。 さらには、 温度変化による共振周波数の変化が小さく、 B a O—希 土類酸化物一 Τ ί 02系誘電体磁器組成物の比誘電率より低い比誘電率を有 する誘電体磁器組成物を得ることができ、 多層型デバイスを形成するに好適 な誘電体磁器組成物を提供することができる。
上記の副成分に加えてさらに、 副成分として A gを添加して含有させるこ とにより、 より一層低温での焼成が可能となり、 比較的低温で焼成しても、 安定した静電容量や絶縁抵抗値を得ることが可能となる。 図面の簡単な説明
図"!は、 本発明における誘電体磁器組成物の製造方法の好適な一態様のフ ロー図であり、
図 2は、 本発明における誘電体磁器組成物の製造方法の好適な一態様のフ ロー図であり、
図 3は、 A g添加量別の熱収縮挙動 (サンプルを加熱した際の温度と収縮 率の関係) を示したグラフであり、
図 4 (A) 〜 (C) はそれぞれ、 所定の焼成温度における静電容量 C の 測定結果を示した図面であり。
図 5 (A) 〜 (C) はそれぞれ、 所定の焼成温度における絶縁抵抗 I Rの 測定結果を示した図面であリ、
図 6 (A) は、 チップコンデンサの一例を示す平面図、 図 6 (B) は、 図 6 (A) に示されるチップコンデンサの I一 Ϊ線における断面図である。 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明を実施するための最良の形態を説明する。 最初に、 本発明の 誘電体磁器組成物の構成について説明する。
〔誘電体磁器組成物の説明〕
本発明の誘電体磁器組成物は、 組成式 〖 ( X B a O ■ y N d 203 - z T i Oz) +β (2MgO ' S i 02)} と表記される主成分を含んでいる。 さらに、 本発明の誘電体磁器組成物は、 この主成分に対して副成分として 亜鉛酸化物、 ホウ素酸化物、 銅酸化物およびアルカリ土類金属酸化物が所定 量含有される。 さらにより好ましい態様として、 副成分としての A gが所定 量含有される。
以下、 本発明の誘電体磁器組成物の主成分組成および副成分組成について さらに説明する。 まず、 最初に、 主成分組成について説明する。
(主成分組成についての説明)
前述したように本発明の誘電体磁器組成物は、 組成式 [ (x B a O ■ y N d 203 ■ z T i 02) +/S (2M g O ■ S i 02)} と表記される主成分を 含み、 B a Oと N d 203と Τ ί 02のモル比率 (モル <½) を表わす x、 y、 zがそれぞれ、
9 (モル0 /o) ≤ X≤ 22 (モル0/ o)、
9 (モル0 /o) ≤ y≤ 29 (モル0 /0)、
6 1 (モル0 /0) ≤ 2≤ 7 4 (モル0 /0) の範囲内にあるとともに、 x + y + z = 1 00 (モル%) の関係を満たすように構成されている さらに、 主成分における各成分の体積比率 (体積。 /0) を表わす 、 ^は、 それぞれ
1 5 (体積0 /o) ≤α≤7 5 (体積0 /ο)、
2 5 (体積0 /ο ) ≤ β≤ 8 5 (体積%) の範囲にあるとともに、
+ β = Λ 0 0 (体積%) の関係を満たすように構成されている。 8 3 0の含有割合 は、 上記条件の範囲内、 すなわち、 9 (モル%) ≤ X ≤2 2 (モル0 /0) であることが求められ、 好ましくは 1 0 (モル0 /ο ) ≤ X ≤ 1 9 (モル0/ ο)、 より好ましくは 1 4 (モル0 /ο) ≤ X≤ 1 9 (モル%) とさ れる。
この B a Οの含有割合が 9 (モル%) 未満となると、 誘電損失が大きくな リ、 Q ' f 値が下がる傾向が生じ、 高周波デバイスの電力損失が大き〈なつ てしまう。 この一方で、 B a Oの含有割合が 2 2 (モル0 /0〉 を超えると、 低 温焼結性が損なわれて誘電体磁器組成物を形成できなくなる傾向が生じ、 さ らには誘電損失が大きくなリ、 Q , f 値が大きく低下するため、 高周波デバ イスの電力損失が大きくなるという不都合が生じてしまう。
N d 2 0 3の含有割合は、 上記条件の範囲内、 すなわち、 9 (モル%) ≤ y≤ 2 9 (モル%) であることが求められ、 好ましくは 9 (モル0 /0) ≤ y≤ 2 2 (モル0 /o)、 より好ましくは 1 2 (モル0 /o) ≤ y≤ 1 フ (モル0 /0) とさ れる。
この N d 2 0 3の含有割合が 9 (モル%) 未満となると、 誘電損失が大き くなリ、 Q , f 値が下がる傾向が生じ、 高周波デバイスの電力損失が大きく なってしまう。 この一方で、 N d 2 0 3の割合が2 9 (モル0 /0 ) を超えると 、 誘電損失が大きくなり、 Q ' f 値が下がる傾向が生じとともに、 共振周波 数の温度係数て f も負方向へ大きくなつてしまうという傾向が生じる。 従つ て、 高周波デバイスの電力損失が大きくなリ、 温度によって高周波デバイス の共振周波数が変動しゃすくなってしまう。
T i 0 2の含有割合は、 上記条件の範囲内、 すなわち、 6 1 (モル%) ≤ 2≤ 7 4 (モル%) であることが求められ、 好ましくは 6 1 . 5 (モル0 /0) ≤ 2≤ 7 4 (モル0/ o)、 より好ましくは 6 5 (モル%) ≤ 2≤ 7 1 (モル0 /o ) とされる。
この T i 0 2の含有割合が 6 1 (モル%) 未満となると、 誘電損失が大き
くなリ、 Q ■ f 値が下がる傾向が生じとともに、 共振周波数の温度係数 f も負方向へ大きくなつてしまう傾向が生じる。 従って、 高周波デバイスの電 力損失が大きくなリ、 温度によつて高周波デバイスの共振周波数が変動しゃ すくなってしまう。 この一方で、 T i 02の割合が 74 (モル%) を超える と、 低温焼結性が損なわれ、 誘電体磁器組成物を形成できなくなるという傾 向が生じる。
また、 上記の主成分の組成式において、 、 おは、 それぞれ、 本発明の誘 電体磁器組成物の主成分である ( 1 ) B a O、 N d 203及び T i 02と、 ( 2) [\1§0及び5 i 02の体積比率を表わしている。
上述したように と^は、
1 5 (体積0/ 0) ≤ ≤フ 5 (体積0/ o)、
25 (体積%) ≤^≤85 (体積%)、
α + β = -\ 00 (体積%) の関係を満たすように構成され、 さらに、 と^の好ましい範囲は、 25 (体積%) ≤Qf ≤ 65 (体積%)、 35 (体積 %) ≤iS≤75 (体積%)、 より好ましくは 35 (体積 °/o) ≤ 0i≤ 5 5 (体 積%)、 45 (体積%) ≤β < 6 5 (体積%) とされる。
びの値が 75 (体積%) を超えて、 ^の値が 25 (体積%) 未満となると 、 前記誘電体磁器組成物の比誘電率 ε rは大きくなる傾向が生じるとともに 、 共振周波数の温度係数 I" f は正方向へ大きくなる傾向が生じる。 従って、 比誘電率 ε rが大きくなることから B a Ο—希土類酸化物一 T i 02系誘電 体磁器組成物と接合した多層型デバイスの高特性化が難しくなり、 共振周波 数の温度係数 ΖΓ f が大きくなることから温度によって高周波デバイスの共振 周波数が変動しやすくなつてしまう。 これとは逆に、 の値が 1 5 (体積% ) 未満となり、 の値が85 (体積%) を超えると、 前記誘電体磁器組成物 の共振周波数の温度係数 Γ f は負方向へ大きくなる傾向が生じてしまう。 従 つて、 温度によって高周波デバイスの共振周波数が変動しやすくなるという 不都合が生じる。
本発明において、 主成分の一部として含有される Mg O及び S i 02はフ オルステライ ト結晶の形態で誘電体磁器組成物に含有されていることが望ま
しい。
誘電体磁器組成物にフォルステラィ ト結晶が含有されているか否かは、 X 線回折装置 (XRD) によって確認することができる。
Ba O-N d 203-T i O 2系化合物を主成分とする誘電体磁器組成物は ε r =55〜 1 05の高い比誘電率を有する。 一方、 フオルステライ トは単 体で ε r =6. 8と低い比誘電率を有する。 本実施形態に係る誘電体磁器組 成物の主成分として B a O— N d203— T i 02系化合物とフォルステラィ ト結晶とを含有させることで誘電体磁器組成物の比誘電率を下げることがで きる。
また、 B a O— N d 203— T i 02系化合物を主成分とする誘電体磁器組 成物の共振周波数の温度係数て f は正の値を持つことが多い。 一方、 フオル ス亍ライ トは単体でて f =ー 65 (p pm/K) と負の共振周波数の温度係 数を持つ。 誘電体磁器組成物の主成分として B a O— N d 203— T i 02系 化合物とフォルステラィ ト結晶とを含有させることで、 正の共振周波数の温 度係数と負の共振周波数の温度係数が相殺され、 誘電体磁器組成物の共振周 波数の温度係数をゼロ近傍とすることができる。 さらに、 主成分中のフオル ステライ ト結晶の含有率を増減させることで本実施形態に係る誘電体磁器組 成物の共振周波数の温度係数を調整することができる。
また、 B a O— N d 203—T i 02系化合物を主成分とする誘電体磁器組 成物は Q ' f =2000~8000GH z程度である。 一方、 フオルス亍ラ ィトは単体で Q ■ f =200000GH zと誘電損失が小さい。 誘電体磁器 組成物の主成分として B a O— N d203— Τ ί 02系化合物とフォルステラ ィト結晶とを含有させることで、 低誘電損失の誘電体磁器組成物を得ること ができる。
本実施形態に係る誘電体磁器組成物は、 主として A gまたは A gを主成分 とする合金等の導体の融点より低い温度で焼成可能とするために、 上記の主 成分に所望の副成分を添加することにより構成されている。
(副成分についての説明)
前述したように本発明の誘電体磁器組成物は、 副成分として、 亜鉛酸化物
、 ホウ素酸化物、 銅酸化物およびアルカリ土類金属酸化物が含有される。 さ らに、 より好ましい態様としてこれらの副成分に加えて銀 (A g) が含有さ れる。
これらの副成分をそれぞれ、 a Z n O、 b B203、 c C u Oおよび d R O (Rはアルカリ土類金属) と表した場合、 前記主成分に対する前記各副成 分の重量比率 (重量%) を表わす a、 b、 c、 および dがそれぞれ、
0. 1 (重量0 /o) ≤ a≤ 1 2. 0 (重量0/ o)
0. 1 (重量%) ≤ b≤ 1 2. 0 (重量0/ o)、
0. 1 (重量%) ≤ c < 9. 0 (重量0 /。)、
0. 2 (重量0 /o) ≤ d≤ 5. 0 (重量%) となるように構成される。 副成分としての A gをさらに含有させる場合、 前記主成分に対する A g副 成分の重量比率 (重量%) を eとして表した場合、 0. 3 (重量%) ≤ e≤ 3. 0 (重量%)、 好ましくは 1. 0 (重量0 /o) ≤ e≤ 2. 0 (重量%) と なるように構成される。
上述したように主成分に対する亜鉛酸化物の含有割合は、 Z n O換算で 0 . 1 (重量%) ≤ a≤ 1 2. 0 (重量0 /o) であることが求められ、 好ましく は 0. 5 (重量%) ≤a≤ 9. 0 (重量%)、 より好ましくは 1 . 0 (重量 %) ≤ a≤ 7. 0 (重量%) とされる。
主成分に対する亜鉛酸化物の含有割合が Z n O換算で 0. 1 (重量%) 未 満となると、 誘電体磁器組成物の低温焼結効果が不充分なものとなる傾向が 生じる。 この一方で、 主成分に対する亜鉛酸化物の含有割合が Z n O換算で 1 2. 0 (重量%) を超えると、 誘電損失が大きくなリ、 〇 ■ f 値が下がる 傾向が生じる。
また、 主成分に対するホウ素酸化物の含有割合は B 203換算で 0. 1 ( 重量0 /o) ≤ b≤.1 2. 0 (重量%) であることが求められ、 好ましくは 0. 5 (重量%) ≤ b≤9. 0 (重量%)、 より好ましくは 1 . 0 (重量%) ≤ b≤フ. 0 (重量%) とされる。
主成分に対するホウ素酸化物の含有割合が B 203換算で 0. 1 (重量% ) 未満となると、 誘電体磁器組成物の低温焼結効果が不充分なものとなる傾
向が生じる。 この一方で、 主成分に対するホウ素酸化物の含有割合が B20 3換算で 1 2. 0 (重量%) を超えると、 誘電損失が大きくなリ、 Q , f 値 が下がる傾向が生じる。
また、 主成分に対する銅酸化物の含有割合は C uO換算で 0. 1 (重量% ) ≤ c≤ 9. 0 (重量0 /0) であることが求められ、 好ましくは 0. 5 (重量 %) ≤ c≤ 6. 0 (重量0 /0)、 より好ましくは 1. 0 (重量0 /o) ≤ c≤ 4. 0 (重量%) であることが求められる。
主成分に対する銅酸化物の含有割合が C u O換算で 0. 1 (重量%) 未満 となると誘電体磁器組成物の低温焼結効果が不充分なものとなる傾向が生じ る。 この一方で、 主成分に対する銅酸化物の含有割合が C uO換算で 9. 0 (重量%) を超えると、 誘電損失が大きくなリ、 Q ' f 値が下がる傾向が生 じる。
本発明においては、 誘電体磁器組成物の低温焼結効果 (より低い温度で焼 結を可能とする効果) をさらに向上させるために上記の副成分に加えてさら にアルカリ土類金属酸化物を添加している。 すなわち、 添加されるアルカリ 土類金属酸化物は RO (Rはアルカリ土類金属) 換算で、 主成分に対して 0 • 2 (重量0 /o) ≤ d≤ 5. 0 (重量%)、 好ましくは 0. 5 (重量%) ≤ d ≤3. 5 (重量%)、 より好ましくは 1. 0 (重量%) ≤d≤3. 0 (重量 %) とされる。
アルカリ土類金属である Rとしては、 B a、 S r、 C aが好適例として挙 げられる。 これらは 2種以上混合して用いてもよい。
主成分に対するアル力リ土類金属酸化物の含有割合が RO (Rはアル力リ 土類金属) 換算で 0. 2 (重量%) 未満となると、 さらに進んだ低温焼結性 の効果が期待できなくなってしまう。 この一方で、 主成分に対するアル力リ 土類金属酸化物の含有割合が RO換算で 5. 0 (重量%) を超えると、 低温 焼結性の効果は期待できるものの、 誘電損失が大きくなリ、 Q - f 値が下が る傾向が生じる。
なお、 アルカリ土類金属 Rとして B aを用いた場合、 主成分に対するアル カリ土類金属酸化物の含有割合は、 830換算で0. 5 (重量%) ≤d≤3 ヽ
. 5 (重量%) の範囲が好ましい。 また、 アルカリ土類金属 Rとして S rを 用いた場合、 主成分に対するアルカリ土類金属酸化物の含有割合は、 S r O 換算で◦. 4 (重量0 /o) ≤d≤2. 5 (重量%) の範囲が好ましい。 また、 アル力リ土類金属 Rとして C aを用いた場合、 主成分に対するアル力リ土類 金属酸化物の含有割合は、 030換算で0. 2 (重量%) ≤ d≤ 1. 5 (重 量%) の範囲が好ましい。
さらに、 上述のごとく本発明のより好ましい態様として、 誘電体磁器組成 物の低温焼結効果 (より低い温度で焼結を可能とする効果) をより一層向上 させつつ、 比較的低温で焼成しても、 安定した静電容量や絶縁抵抗値を得る ことを可能とするために、 上記の所定の副成分に加えてさらに銀 (A g) が 含有される。 本発明の誘電体磁器組成物に副成分として A gを含有させるこ とにより、 内部導体に A gまたは A g合金を使用した場合の内部導体から誘 電体素地中への A gの拡散を抑制することができる。 主成分に対する A の 含有割合が 0. 3 (重量%) 未満となると、 さらに進んだ低温焼結性の効果 が期待できなくなってしまう。 さらに、 A g拡散の抑制が不十分となり、 A g拡散による不具合、 例えば、 誘電体内の A g含有量の不均一化による誘電 率のバラツキ発生、 内部導体の A g量低減による導体と誘電体素地との間で の空隙発生、 外部との接続部分における内部導体の引き込みによる導体不良 等を起こすことになる。 この一方で、 主成分に対する A gの含有割合が 3. 0 (重量%) を超えると、 低温焼結性の効果は期待できるものの、 誘電損失 が大きくなリ、 Q - f 値が下がる傾向が生じる。 さらに、 誘電体中での A g 拡散の許容取り込み量を超えてしまい、 誘電体素地中における A gの偏析を 生じるようになり、 電圧負荷寿命等の信頼性に悪影響を及ぼすことになリ、 好ましくない。
本発明における誘電体磁器組成物は、 主成分として B a O、 N d 203、 T i 02、 M g O及び S i 02を含有し、 副成分として、 Z n O、 B203、 01_(0及び 0 (Rはアルカリ土類金属) を含有、 さらに好ましい態様とし て A gを含有している。 特に、 主成分として MgOと S i 02 (特に、 フォ ルステライ ト結晶) を含むことにより、 B a O—希土類酸化物一 T i 02系
誘電体磁器組成物の一般的な比誘電率よりも低い比誘電率とすることができ る。
また、 特に、 副成分として R O ( Rはアルカリ土類金属)、 さらに好まし い態様として副成分として A gを含むことにより、 A gまたは A gを主成分 とする合金等の導体と同時焼成を確実なものとすべく、 より一層の低温焼結 性の改善が見られる。
また、 本発明における誘電体磁器組成物の材質は、 B a O—希土類酸化物 — T i 0 2系誘電体磁器組成物の材質と類似しているため、 焼成時の収縮挙 動および線膨張係数が B a O—希土類酸化物一 T i 0 2系誘電体磁器組成物 と同等である。 つまり、 本発明に係る誘電体磁器組成物と B a O—希土類酸 化物一 Τ ί ο 2系誘電体磁器組成物を接合し、 焼成して、 多層型デバイスを 製造しても、 接合面に欠陥を生じ難い。 従って、 本発明における誘電体磁器 組成物は、 B a Ο—希土類酸化物一 T i 0 2系誘電体磁器組成物と接合し、 高特性の多層型デバイスを製造することができる。
なお、 本発明に係る誘電体磁器組成物は、 本発明の目的及び作用効果の範 囲内で他の化合物及び元素が含まれていてもよい。 特に、 主成分に対してマ ンガン酸化物を含有させることにより、 誘電損失を小さく抑えることができ る。
上述したように本発明に係る誘電体磁器組成物は、 低価格で小型のデバイ スを提供するために安価な A g又は A gを主成分とする合金等の導体を内部 導体とする必要がある。 従って、 誘電体磁器組成物には内部電極として使用 される導体の融点以下で焼成できる低温焼結性が求められる。 また、 焼成温 度によっても誘電体磁器組成物の誘電特性が影響を受けるため、 焼成温度は 8 6 0 °C〜 1 0 0 0 ° (、 好ましくは 8 7 0 °C~ 9 4 0 °Cであることが求めら れる。 また、 本発明における重要な特性である誘電体磁器組成物の誘電損失につ いて、 以下説明を加えておく。
理想的な誘電体に交流を印加すると、 電流と電圧は 9 0度の位相差をもつ
。 しかしな力 ら、 交流の周波数が高くなり高周波となると、 誘電体の電気分 極又は極性分子の配向が高周波の電場の変化に追従できず、 あるいは電子又 はィォンが伝導することにより電束密度が電場に対して位相の遅れをもち、 電流と電圧は 90度以外の位相をもつことになる。 誘電損失は、 前記高周波 のエネルギーの一部が熱となって放散する現象である。 誘電損失の大きさは 、 現実の電流と電圧の位相差と理想の電流と電圧の位相差 90度との差であ る損失角度 Sの正接 t a η δの逆数 Q (Q= 1 / t a n (5 ) で表わされる。 本発明における誘電体磁器組成物の誘電損失の評価では、 前記 Qと共振周波 数の積である Q ' f の値を用いている。 誘電損失が小さくなれば Q ■ f 値は 大きくなり、 誘電損失が大きくなれば Q · f 値は小さくなる。 誘電損失は高 周波デバイスの電力損失を意味するので、 f 値の大きい誘電体磁器組成 物が求められている。 さらに、 多層型デバイスの場合、 高特性化のため誘電 損失を小さくすることが求められており、 Q ' f 値は 400 OGH z以上が 好ましく、 Q ■ f 値は 4500 G H z以上であることがより好ましい。
また、 本発明の目的の一つは、 高い比誘電率を有する B a◦—希土類酸化 物一 T i 02系誘電体磁器組成物と接合し多層型デバイスの形成を可能とす ることにある。 そのため、 B a O—希土類酸化物一 T i 02系誘電体磁器組 成物の比誘電率より低い比誘電率を有する誘電体磁器組成物を提供すること が課題である。 B a O—希土類酸化物一 T i 02系誘電体磁器組成物の比誘 電率は 50〜 1 05のものが報告されており、 本発明に係る誘電体磁器組成 物の比誘電率 ε rは 50以下であることが要求されている。 さらに、 高特性 の多層型デバイスのためには比誘電率 ε rは 40以下であることが好ましく 、 比誘電率 S rは 35以下、 特に、 25〜35であることがより好ましい。 また、 本発明における重要な特性である誘電体磁器組成物の共振周波数の 温度係数 r f (p pmZK) について、 以下説明を加えておく。
誘電体磁器組成物の共振周波数の温度係数て f (p pmZK) は下記式 ( 1 ) で算出される。
τ f = 〔 f T— f refZ f ref (T_Tref)〕 x 1 000000 (ppm/K)
…式 (1 )
ここで f Tは温度 Tにおける共振周波数 (k H z) を表し、 f ref は基準温 度 Trefにおける共振周波数 (k H z) を表す。
共振周波数の温度係数て f の絶対値の大きさは、 温度変化に対する誘電体 磁器組成物の共振周波数の変化量の大きさを意味する。 コンデンサ、 誘電体 フィルタ等の高周波デバイスは温度による共振周波数の変化を小さくする必 要があるため、 本発明における誘電体磁器組成物の共振周波数の温度係数て f の絶対値を小さくすることが要求されている。
また、 本発明における誘電体磁器組成物を誘電体共振器に利用する場合、 共振周波数の温度変化をさらに小さくするため共振周波数の温度係数て f が -40 (p pmZK) 〜+40 (p pm/K) であることが要求されている 。 さらに、 高特性の多層型デバイスのためには一 28 (p pmZK) 〜+2 8 (p pm/K) であることが好ましく、 一20 (p pmZK) 〜十 20 ( p pmZK) であることがより好ましい。
また、 誘電体磁器組成物の低温焼結性の評価は、 焼成温度を徐々に下げて 焼成し、 所望の誘電体高周波特性が測定できるレベルに焼結しているかどう かで判断すればよい。 また、 誘電体磁器組成物についての誘電特性の評価は 、 誘電損失、 温度変化による共振周波数の変化 (共振周波数の温度係数) 及 び比誘電率に関して、 日本工業規格 「マイクロ波用ファインセラミックスの 誘電特性の試験方法」 (J I S R 1 627 1 996年度)) に従って測 定して評価すればよい。
〔誘電体磁器組成物の製造方法の説明〕
次に、 本発明における誘電体磁器組成物の製造方法について説明する。 副成分としての A gの添加の有無によって分けて説明する。 すなわち、 誘 電体磁器組成物の副成分として Z n 0、 B 203、 C u O、 アルカリ土類金 属酸化物 RO (R :アルカリ土類金属) のみを用いて副成分としての A gの 添加が無い第 1の製造方法形態と、 誘電体磁器組成物の副成分として Z n◦ 、 B203、 C u O、 アルカリ土類金属酸化物 RO (R : アルカリ土類金属 ) に加えてさらに A gの添加が有る第 2の製造方法形態とに分けて説明する
第 1の製造方法形態 (副成分としての A g添加無し)
本発明の誘電体磁器組成物の製造方法は、 バリウム含有原料、 ネオジム含 有原料、 チタン含有原料、 マグネシウム含有原料、 シリコン含有原料、 亜鉛 含有原料、 ホウ素含有原料、 銅含有原料及びアルカリ土類金属含有原料を焼 成して、 B a O_N d 203— T i 02— g O-S i 02— Z n O— B203 - C u O- RO (R : アルカリ土類金属) 系誘電体磁器組成物を製造する方 法であって、 マグネシウム含有原料及びシリコン含有原料としてフォルステ ライト (2 M g O - S i 02) 粉末を使用している。
本発明の誘電体磁器組成物の製造用原料としては、 酸化物及び 又は焼成 により酸化物となる化合物が用いられる。 焼成により酸化物となる化合物と しては、 例えば、 炭酸塩、 硝酸塩、 シユウ酸塩、 水酸化物、 硫化物、 有機金 属化合物等が例示される。
図 1には、 本発明に係る誘電体磁器組成物の第 1の製造方法形態 (A g添 加無し) が示されている。
以下、 図 1に基づいて本発明の誘電体磁器組成物の製造方法を詳細に説明 する。
まず、 主成分の原料の一部となる、 例えば、 炭酸バリウム、 水酸化ネオジ ム及び酸化チタンを用意するともに、 所定量を秤量し混合して、 仮焼を行う 上記の混合は、 組成式 X B a O ■ y N d 203 ■ z T i 02のモル比である x、 y及び zを上述した関係組成式を満足する範囲内で混合する。
炭酸バリウム、 水酸化ネオジム及び酸化チタンの混合は、 乾式混合、 湿式 混合等の混合方式、 例えば、 ボールミルで純水、 エタノール等の溶媒を用い た混合方式により行うことができる。 混合時間は 4〜 24時間程度とすれば よい。
その後、 混合した原料を 1 00°C〜 200°C、 好ましくは"! 20°C〜 1 4 0°Cで 1 2〜3 6時間程度乾燥させ、 しかる後、 仮焼を行う。
仮焼は、 炭酸バリウム、 水酸化ネオジム及び酸化チタンの混合物原料から B a O- N d 203- T i O ,系化合物の合成を行う工程であり、 仮焼き温度
1 1 00 °C〜 1 500 °C、 好ましくは 1 1 00。C〜 1 3 50 °Cで 1〜 24時 間程度行うことが望ましい。
合成された B a O— N d 203— T i 02系化合物は粉末にするため粉碎し て乾燥する。 粉砕は乾式粉砕、 湿式粉砕等の粉砕方式、 例えば、 ポールミル で純水、 エタノール等の溶媒を用いた粉砕方式により行うことができる。 粉 砕時間は 4〜 24時間程度とすればよい。
粉砕した粉末の乾燥は、 1 00°C〜200°C、 好ましくは 1 20° (〜 1 4 0°Cの乾燥温度で 1 2〜3 6時間程度行えばよい。 このようにして、 B a O 一 N d 203— T i 02系化合物の粉末を得ることができる。
次に、 主成分の他の原料である酸化マグネシウムと酸化シリコンを用意し 、 所定量を秤量し混合して、 仮焼を行う。 酸化マグネシウムと酸化シリコン の混合は、 乾式混合、 湿式混合等の混合方式、 例えば、 ポールミルで純水、 エタノール等の溶媒を用いた混合方式により行うことができる。 混合時間は
4〜 24時間程度とすればよい。
その後、 混合した原料を 1 00°C〜 200°C、 好ましくは 1 20°C〜 1 4 0°Cで 1 2~36時間程度乾燥させ、 しかる後、 仮焼を行う。
仮焼は、 酸化マグネシウムと酸化シリコンの混合物からフオルス亍ライ ト 結晶の合成を行う工程であり、 1 1 00°C〜 1 50 OpC、 好ましくは 1 1 0 0°C〜 1 350°Cの処理温度で 1〜 24時間程度行うことが望ましい。 このようにして主成分として B a O— N d 203— T i 02系化合物とフォ ルステラィ 卜結晶とを含有させることで、 フオルステライ 卜結晶の効果によ リ、 誘電体磁器組成物の比誘電率 ε rを下げ、 共振周波数の温度係数をゼロ 近傍とすることができ、 誘電損失を小さくすることができる。 従って、 フォ ルス亍ライ 卜の添加効果を大きくするためには、 フォルステラィ 卜に合成さ れない未反応の前記原料を少なくする必要があリ、 前記原料の混合はマグネ シゥ厶のモル数がシリコンのモル数の 2倍となるよう混合することが望まし い。
合成されたフオルス亍ライ 卜は粉末にするため粉碎された後に乾燥される 。 粉砕は乾式粉砕、 湿式粉砕等の粉砕方式、 例えば、 ボールミルで純水、 ェ
タノール等の溶媒を用いた粉砕方式によリ行うことができる。 粉砕時間は 4 〜 2 4時間程度とすればよい。
粉砕した粉末の乾燥は、 1 0 0 °C〜2 0 0 °C、 好ましくは 1 2 0 °C〜 1 4 0 °Cの乾燥温度で、 1 2〜3 6時間程度とすればよい。 このようにしてフォ ルステラィ 卜の粉末を得ることができる。
図 1に示されるごとくマグネシウム含有原料、 シリコン含有原料からフォ ルステラィ トを合成し、 粉砕してフォルス亍ライ ト粉末を得るのではなく、 市販のフォルステラィ 卜を用いてもよい。 すなわち、 市販のフォルス亍ライ 卜を、 例えば、 ボールミルによる純水、 エタノール等の溶媒を用いた粉砕方 式で粉砕し、 1 0 0 °C〜 2 0 0 °C、 好ましくは 1 2 0 °C〜 1 4 0。Cで 1 2〜 3 6時間程度乾燥してフォルステラィト粉末を得るようにしても良い。 次いで、 前述の B a O— N d 2 0 3— T i 0 2系化合物の粉末と、 前述のフ オルス亍ライ 卜の粉末と、 前述の副成分の組成を満たすように所定の範囲で 秤量した亜鉛酸化物、 ホウ素酸化物、 銅酸化物、 アルカリ土類金属炭酸塩を 混合して原料混合粉末とする。
混合は、 乾式混合、 湿式混合等の混合方式、 例えば、 ポールミルで純水、 エタノール等の溶媒を用いた混合方式により行うことができる。 混合時間は 4〜 2 4時間程度とすればよい。
混合が完了した後、 原料混合粉末を 1 0 0 °C〜 2 0' 0 °C、 好ましくは 1 2 0 °C〜 1 4 0 °Cで 1 2〜 3 6時間程度乾燥させる。
次に、 原料混合粉末を焼成温度以下の温度、 例えば、 7 0 0 °C〜8 0 0 °C にて 1 〜 1 0時間程度で再度の仮焼を行う。 この仮焼は低温で行うためフォ ルステラィ 卜は融解せず結晶の形で誘電体磁器組成物にフォルス亍ライ 卜を 含有させることができる。 その後、 仮焼をした原料混合粉末を粉砕して乾燥 する。 粉砕は乾式粉砕、 湿式粉砕等の粉砕方式、 例えば、 ボールミルで純水 、 エタノール等の溶媒を用いた粉砕方式により行うことができる。 粉砕時間 は 4〜 2 4時間程度とすればよい。 粉砕した粉末の乾燥は 1 0 0 °C〜2 0 0 °C、 好ましくは 1 2 0 °C~ 1 4 0 °Cの処理温度で 1 2〜 3 6時間程度とすれ ばよい。 このように再度の仮焼及び粉砕を行うことにより、 主成分と副成分
を均一にすることができ、 後工程で製造する本実施形態に係る誘電体磁器組 成物の材質の均一化を図ることができる。
上述のようにして得られた粉末に対して、 ポリビニルアルコール系、 ァク リル系、 ェチルセルロース系等の有機バインダーを混合した後、 所望の形状 に成型を行い、 この成型物を焼成して焼結する。 成型はシート法や印刷法等 の湿式成型の他、 プレス成型等の乾式成型でもよく、 所望の形状に応じて成 型方法を適宜選択することが可能である。 また、 焼成は、 例えば、 空気中の ような酸素雰囲気にて行うことが望ましく、 焼成温度は内部電極として用い る A gまたは A gを主成分とする合金等の導体の融点以下、 例えば 860°C 〜 1 000°C、 好ましくは 870°C〜940 °Cであることが求められる。 多層型デバイスは内部にコンデンサ、 インダクタ等の誘電デバイスを一体 に作りこまれた複数のセラミック層からなる多層セラミック基板から作られ る。 多層セラミック基板は互いに誘電特性が異なるセラミック材料のグリ一 ンシ一卜を複数枚用意し、 内部電極となる導体を界面に配し、 あるいはスル 一ホールを形成して積層し同時焼成して製造される。 本発明の誘電体磁器組 成物で成型したグリーンシートと、 従来公知の一般的な B a O—希土類酸化 物一 T i o2系誘電体磁器組成物で成型したグリーンシートとを積層するこ とで、 本発明の誘電体磁器組成物を用いた多層セラミック基板を製造するこ とができる。
第 2の製造方法形態 (副成分としての A g添加有り)
本発明の誘電体磁器組成物の製造方法は、 バリウム含有原料、 ネオジム含 有原料、 チタン含有原料、 マグネシウム含有原料、 シリコン含有原料、 亜鉛 含有原料、 ホウ素含有原料、 銅含有原料、 アルカリ土類金属含有原料、 及び 銀 (A g) を含有させた混合物を焼成して B a O-N d 203-T i 02-M g O-S ί Oz-2 n O-B203-C uO-RO (Rはアルカリ土類金属) -A g系誘電体磁器組成物を製造する方法であって、 マグネシゥム含有原料 及びシリコン含有原料としてフォルステラィ 卜 (2MgO ■ S i 02) 粉末 を使用している。
本発明の誘電体磁器組成物の製造用原料としては、 主に、 酸化物及び Z又
は焼成により酸化物となる化合物が用いられる。 A gに関しては、 金属 A g 及ぴ 又は仮焼き時の熱処理によリ金属 A gとなる化合物が用いられる。 焼成により酸化物となる化合物としては、 例えば、 炭酸塩、 硝酸塩、 シュ ゥ酸塩、 水酸化物、 硫化物、 有機金属化合物等が例示される。 A gの添加は 、 例えば、 金属銀 (A g) や硝酸銀 (A g N〇3)、 酸化銀 (A g20)、 塩化 銀 (Ag C I ) の形態で添加される。
図 2には、 本発明に係る誘電体磁器組成物の第 2の製造方法形態 (副成分 としての A g添加有り) が示されている。
以下、 図 2に基づいて本発明の誘電体磁器組成物の製造方法を詳細に説明 する。
まず、 主成分の原料の一部となる、 例えば、 炭酸バリウム、 水酸化ネオジ ム及び酸化チタンを用意するともに、 所定量を秤量し混合して、 仮焼を行う 上記の混合は、 組成式 X B a O ■ y N d 203■ z T i 02のモル比である x、 y及び zを上述した関係組成式を満足する範囲内で混合する。
炭酸バリウム、 水酸化ネオジム及び酸化チタンの混合は、 乾式混合、 湿式 混合等の混合方式、 例えば、 ボールミルで純水、 エタノール等の溶媒を用い た混合方式により行うことができる。 混合時間は 4〜 24時間程度とすれば よい。
その後、 混合した原料を 1 00°C〜 200°C、 好ましくは"! 20°C〜 1 4 0°Cで 1 2〜 36時間程度乾燥させ、 しかる後、 仮焼を行う。
仮焼は、 炭酸バリウム、 水酸化ネオジム及び酸化チタンの混合物原料から B a O-N d2Oa-T i 02系化合物の合成を行う工程であり、 仮焼き温度 1 1 00 °C〜 1 50◦ °C、 好ましくは 1 1 00 °C〜 1 350 °Cで 1〜 24時 間程度行うことが望ましい。
合成された B a O— N d 203— T i 02系化合物は粉末にするため粉砕し て乾燥する。 粉砕は乾式粉砕、 湿式粉砕等の粉砕方式、 例えば、 ボールミル で純水、 エタノール等の溶媒を用いた粉砕方式により行うことができる。 粉 砕時間は 4〜 24時間程度とすればよい。
粉砕した粉末の乾燥は、 1 00°C〜200°C、 好ましくは 1 20°C〜 "! 4 0°Cの乾燥温度で 1 2〜36時間程度行えばよい。 このようにして、 B a O — N d 203— T i 02系化合物の粉末を得ることができる。
次に、 主成分の他の原料である酸化マグネシウムと酸化シリコンを用意し 、 所定量を秤量し混合して、 仮焼を行う。 酸化マグネシウムと酸化シリコン の混合は、 乾式混合、 湿式混合等の混合方式、 例えば、 ボールミルで純水、 エタノール等の溶媒を用いた混合方式により行うことができる。 混合時間は
4〜 24時間程度とすればよい。.
その後、 混合した原料を 1 00°C〜 200°C、 好ましくは 1 20°C〜 1 4 0°Cで" 1 2〜36時間程度乾燥させ、 しかる後、 仮焼を行う。
仮焼は、 酸化マグネシウムと酸化シリコンの混合物からフォルステラィ ト 結晶の合成を行う工程であり、 1 1 00°C〜 1 500°C、 好ましくは 1 1 0 0°C〜 1 350°Cの処理温度で 1 ~ 24時間程度行うことが望ましい。 このようにして主成分として B a O— N d 203— T i 02系化合物とフォ ルス亍ライ 卜結晶とを含有させることで、 フオルステライ ト結晶の効果によ リ、 誘電体磁器組成物の比誘電率 ε rを下げ、 共振周波数の温度係数をゼロ 近傍とすることができ、 誘電損失を小さくすることができる。 従って、 フォ ルステラィ 卜の添加効果を大きくするためには、 フォルステラィ 卜に合成さ れない未反応の前記原料を少なくする必要があリ、 前記原料の混合はマグネ シゥムのモル数がシリコンのモル数の 2倍となるよう混合することが望まし い。
合成されたフオルステライ トは粉末にするため粉砕された後に乾燥される 。 粉砕は乾式粉 ¾^、 湿式粉砕等の粉砕方式、 例えば、 ボールミルで純水、 ェ タノール等の溶媒を用いた粉砕方式により行うことができる。 粉砕時間は 4 〜 24時間程度とすればよい。
粉砕した粉末の乾燥は、 1 00°C〜200°C、 好ましくは" I 20°C〜 1 4 0°Cの乾燥温度で、 1 2~36時間程度とすればよい。 このようにしてフォ ルス亍ライ 卜の粉末を得ることができる。
図 2に示されるごとくマグネシウム含有原料、 シリコン含有原料からフォ
ルステラィ トを合成し、 粉砕してフォルステラィ 卜粉末を得るのではなく、 市販のフオルステライ トを用いてもよい。 すなわち、 市販のフォルステラィ 卜を、 例えば、 ボールミルによる純水、 エタノール等の溶媒を用いた粉砕方 式で粉砕し、 1 00°C〜200°CS 好ましくは 1 20°C〜 "! 40¾で 1 2〜 36時間程度乾燥してフォルステラィト粉末を得るようにしても良い。 次いで、 前述の B a O-N d 203-T i 02系化合物の粉末と、 前述のフ オルステライ 卜の粉末と、 前述の副成分の組成を満たすように所定の範囲で 秤量した亜鉛酸化物、 ホウ素酸化物、 銅酸化物、 アルカリ土類金属炭酸塩を 混合して原料混合粉末とする。
混合は、 乾式混合、 湿式混合等の混合方式、 例えば、 ボールミルで純水、 エタノール等の溶媒を用いた混合方式によリ行うことができる。 混合時間は 4〜24時間程度とすればよい。
混合が完了した後、 原料混合粉末を 1 00°C〜 200°C、 好ましくは 1 2 0°C〜 1 40°Cで 1 2〜36時間程度乾燥させる。
次に、 原料混合粉末を焼成温度以下の温度、 例えば、 700°C〜800DC にて 1〜 1 0時間程度で再度の仮焼を行う。 この仮焼は低温で行うためフォ ルステラィトは融解せず結晶の形で誘電体磁器組成物にフォルス亍ライ トを 含有させることができる。
その後、 仮焼をした原料混合粉末を粉砕する際に、 金属 A gの添加が行な われる。 しかる後、 乾燥処理が行なわれる。 なお、 A gの添加は、 粉砕時で はなく、 仮焼きの前の混合時に行なうようにしても良い。 その際には、 A g 添加の形態は前述したように金属 A g、 A g N03、 A g20、 A g C I等と される。
粉砕は乾式粉砕、 湿式粉砕等の粉砕方式、 例えば、 ボールミルで純水、 ェ タノール等の溶媒を用いた粉砕方式によリ行うことができる。 粉砕時間は 4 〜 24時間程度とすればよい。 粉砕した粉末の乾燥は 100°C〜200°C、 好ましくは 1 20 °C〜 1 40 °Cの処理温度で 1 2 ~ 36時間程度とすればよ い。 このように再度の仮焼及び粉碎を行うことにより、 主成分と副成分を均 一にすることができ、 後工程で製造する本実施形態に係る誘電体磁器組成物
の材質の均一化を図ることができる。
上述のようにして得られた粉末に対して、 ポリビニルアルコール系、 ァク リル系、 ェチルセルロース系等の有機バインダーを混合した後、 所望の形状 に成型を行い、 この成型物を焼成して焼結する。 成型はシート法や印刷法等 の湿式成型の他、 プレス成型等の乾式成型でもよく、 所望の形状に応じて成 型方法を適宜選択することが可能である。 また、 焼成は、 例えば、 空気中の ような酸素雰囲気にて行うことが望ましく、 焼成温度は内部電極として用い る A gまたは A gを主成分とする合金等の導体の融点以下、 例えば 860°C 〜 1 000°C、 好ましくは 870°C〜 940°Cであることが求められる。 多層型デバイスは内部にコンデンサ、 インダクタ等の誘電デバイスを一体 に作りこまれた複数のセラミック層からなる多層セラミック基板から作られ る。 多層セラミック基板は互いに誘電特性が異なるセラミック材料のグリ一 ンシートを複数枚用意し、 内部電極となる導体を界面に配し、 あるいはスル —ホールを形成して積層し同時焼成して製造される。 本発明の誘電体磁器組 成物で成型したグリーンシートと、 従来公知の一般的な B a O—希土類酸化 物一 Τ ί ο2系誘電体磁器組成物で成型したグリーンシートとを積層するこ とで、 本発明の誘電体磁器組成物を用いた多層セラミック基板を製造するこ とができる。
以下、 具体的実施例を示し、 本発明をさらに詳細に説明する。
〔実験例 1:]
(試料の作製と所望の物性の測定方法)
下記の要領で表 1に示されるような種々の誘電体磁器組成物の試料を製造 した。 主成分組成を特定するひ、 β、 x、 y、 および Z、 並びに副成分組成 の添加量を特定する a、 b、 cおよび dや Rの定義は上述したとおりである 基本的な製造方法に関して本発明の試料である試料 N o. 8を例にとって 説明する。 '
まず、 主成分の原料である B a C03、 N d (OH) 3及び T i 02を用い て、 仮焼後の B a O-N d 203-T ί 02系化合物の B a 0、 N d 203及び
T i 02のモル比である x、 y及び zが下記表 1の試料 N o . 8の主成分組 成の欄に示されるものとなるように秤量した。 つまり、 x = 1 8. 5 (モル %)、 y = 1 5. 4 (モル0 /o) 及び z = 6 6. 1 (モル0/ o) となるように秤 量した。
秤量した原料に純水を加えスラリ一濃度 25 %として、 ボールミルにて 1 6時間湿式混合し、 その後、 1 20°Cで 24時間乾燥した。 この乾燥した粉 末を、 空気中にて仮焼 (1 200¾、 4時間) を行った。 仮焼後の B a O— N d 203-T i 02系化合物に純水を加えスラリー濃度 25%として、 ボ一 ルミルにて 1 6時間粉砕し、 その後、 1 20°Cで 24時間乾燥し、 B a O— N d 203— Τ ί 02系化合物の粉末を製造した。
次に、 主成分の他の原料である M g 0、 S i 02を用いて、 マグネシウム のモル数がシリコンのモル数の 2倍となるよう秤量し、 スラリー濃度 25% となるように純水を加え、 ボールミルにて 1 6時間湿式混合し、 その後、 1 20°Cで 24時間乾燥した。
この乾燥した粉末を、 空気中にて仮焼 (1 200°C、 3時間) を行った。 仮焼後のフォルステラィ卜に純水を加えスラリー濃度 25%として、 ボ 1ル ミルにて 1 6時間粉砕し、 その後、 1 20°Cで 24時間乾燥し、 フオルス亍 ライ 卜の粉末を製造した。
次に、 副成分の原料である Z η θと B203と C u Oと B a C03とを準備 した。
次に粉砕した前記 B a O— N d 203— T i 02系化合物の粉末と、 粉砕し た前記フォルステラィ 卜の粉末との混合比率が下記表 1に示されるように配 合するとともに、 この主成分に対して、 a Z n O、 b B 203、 c C u O、 d B a Oと表される副成分比率が表 1の試料 N o . 8の副成分添加量の欄に 示されるものとなるよう配合して原料混合粉末を得た。 すなわち、 0ί = 5 5 (体積0/ ο)、 β = 45 (体積0/ o)、 a = 6. 0 (重量0/ o)、 b = 4. 5 (重量 %)、 c = 3. 0 (重量0/ 0) 及び d = 0. 69 (重量0 /o) となるように秤量 し、 スラリー濃度 25%となるように純水を加え、 ポールミルにて 1 6時間 湿式混合し、 その後、 1 20°Cで 24時間乾燥して原料混合粉末を得た。
このようにして得られた原料混合粉末を、 空気中にて再度の仮焼 (フ 50 °C、 2時間) を行い、 仮焼粉末を得た。
得られた仮焼粉末をスラリ一濃度 25 %となるように純水を加え再度ボー ルミルにて 1 6時間湿式粉碎した後、 1 20°Cで 24時間乾燥した。 この再 度粉碎した粉末にバインダーとしてポリビニルアルコール水溶液を加えて造 粒し、 直径 1 2 mm X高さ 6 mmの円柱状に成型し、 表 1の試料 N o. 8の 焼成温度の欄に示す温度、 すなわち、 870°Cで 1時間焼成して誘電体磁器 組成物を得た。
このようにして得られた誘電体磁器組成物の表面を削リ直径 1 0 m m X高 さ 5 mmの円柱ペレツ卜を作成して測定用試料 N o. 8とした。
試料 N o. 8の誘電体磁器組成物について比誘電率 ε r、 Q - f 値、 共振 周波数の温度係数て f を日本工業規格 「マイクロ波用ファインセラミックス の誘電特性の試験方法」 (J I S R 1 627 1 996年度) に従って 測定した。 測定に際して、 測定周波数は 8. 2 GH zとし、 また、 共振周波 数を一 40〜85°Cの温度範囲で測定し、 上述した式 (1 ) の算出式により 共振周波数の温度係数 z: f を算出した。
試料 N o. 8は表 1に示されるごとく、 上記の各物性の測定ができており 870°Cの低温で十分に焼結していることがわかる。 なお、 各物性の測定結 果は、 表 1に示されるごとく比誘電率 e r = 25. 2、 Q - f =4957 ( GH z)、 共振周波数の温度係数て f =ー 2 (p pm/K) であった。
このような試料 N o. 8の製造方法に沿つて、 表 1に示されるような種々 の試料を作製した。 一定の組成範囲の試料群の中で焼成温度を振って (85 0〜9 1 0°C) どの程度までの低温焼成が可能かどうかを求めるとともに ( 表 1において 「測定不可」 の記載がある試料は、 誘電体高周波特性が測定で きるレベルに焼結していないことを示す)、 焼結できた試料について、 比誘 電率 £ r、 Q - f 値 (測定周波数の範囲は、 7. 6〜8. 2 GH z およ び共振周波数の温度係数て f を求めた。
結果を下記表 1に示した。 なお、 表 1中、 *が付されている試料は比較例 を示す。
表 1 (その υ
表 1 (その 2)
表 1 (その 3)
表 1の結果より、 本発明の効果は明らかである。 すなわち、 試料 N o. * 3 (比較) の焼成温度 880°Cを比較の基準値として判断すると、 本発明に おいては副成分としてアルカリ土類金属酸化物を所定量含有させることによ リ、 焼成温度を、 870°C (試料 N o. 8)、 860°C (試料 N o. 2)、 850°C (試料 N o. 1 6)、 870°C (試料 N o. 25)、 860°C (試料 N o. 29)、 850°C (試料 N o. 33)、 870°C (試料 N o. 40)、 860°C (試料 N o. 44)、 850°C (試料 N o. 48) までに下げるこ とができる。
なお、 試料 N o. * 21 (比較) および試料 N o. * 22 (比較) は、 焼 成温度を 850°Cや 860°Cまでに下げることはできるものの、 アル力リ土 類金属酸化物の添加量が多すぎて Q■ f 値が 4000 GH zまで到達せず、 誘電損失が大きくなつてしまうという不都合がある。
〔実験例 2〕
(試料の作製と所望の物性の測定方法)
次いで、 上記実験例 1 と同様な製造方法で下記表 2に示されるような種々 の誘電体磁器組成物の試料を製造した。
表 2においては、 主成分組成を特定する 、 S、 x、 y、 および z、 並び に副成分組成の添加量である a、 b、 cの値を種々変えて、 これらのパラメ 一夕の影響を調べる実験を行った。 なお、 アルカリ土類金属 Rとしては、 C aを用い、 その含有割合 dは、 0. 63重量 <½で一定とした。
結果を下記表 2に示した。 なお、 表 2中に示される焼成温度 (°C) の値は 、 一律 870°Cとした。
表 2(その 1)
表 2 (その 2)
表 2の結果より、 本発明の効果は明らかである。
上述してきた各実験結果より本発明の効果は明らかである。 すなわち、 本 発明は、 誘電体磁器組成物の主成分として B a 0、 N d 203、 T i 02、 M gO及び S i 02を所定の比率で含有し、 前記誘電体磁器組成物の副成分と して Z n O、 B 203及び C u Oを所定の比率で含有し、 さらに前記副成分 としてアルカリ土類金属酸化物 RO (R :アルカリ土類金属) を含有してい るので、 A g又は A gを主成分とする合金等の導体を内部導体として確実に 使用できるように、 低温での焼結性をより安定■確実なものとすることがで きる。 さらには、 温度変化による共振周波数の変化が小さく、 B a O—希土 類酸化物一 T i 02系誘電体磁器組成物の比誘電率より低い比誘電率を有す る誘電体磁器組成物を得ることができ、 多層型デバイスを形成するに好適な 誘電体磁器組成物を提供することができる。
〔実験例 3〕
次に、 副成分としての A gの添加がさらに低温焼結性に及ぼす影響を確認 するための実験を行なった。 すなわち、 誘電体磁器組成物の副成分として Z n O、 B203、 C u O, アルカリ土類金属酸化物 RO (R : アルカリ土類 金属)、 および A gを含有させた場合の実験を行い、 A g添加によって、 さ らナよる低温焼成化が可能となることを確認した。
(試料の作製と所望の物性の測定方法)
下記の要領で誘電体磁器組成物の試料を製造した。 主成分組成を特定する 、 β、 x、 y、 および 2、 並びに副成分組成の添加量を特定する a、 b、 c、 dおよび eや Rの定義は上述したとおりである。
まず、 主成分の原料である B a C03、 N d (OH) 3及び T i 02を用い て、 仮焼後の B a O-N d 203-T i 02系化合物の B a 0、 N d 203及び T i 02のモル比である x、 y及び zが下記となるように秤量した。 つまり 、 X = 1 8. 5 (モル0/。)、 y = 1 5. 4 (モル。/。) 及び z = 66. 1 (モ ル%) となるように秤量した。
秤量した原料に純水を加えスラリー濃度 25%として、 ボールミルにて 1 6時間湿式混合し、 その後、 1 20°Cで 24時間乾燥した。 この乾燥した粉
末を、 空気中にて仮焼 (1 200°C、 4時間) を行った。 仮焼後の B a O— N d 203-Τ ί 02系化合物に純水を加えスラリー濃度 25%として、 ボー ルミルにて 1 6時間粉碎し、 その後、 1 20°Cで 24時間乾燥し、 B a O— N d 2Os-T i 02系化合物の粉末を製造した。
次に、 主成分の他の原料である Mg 0、 S i 02を用いて、 マグネシウム のモル数がシリコンのモル数の 2倍となるよう秤量し、 スラリー濃度 25 % となるように純水を加え、 ボールミルにて 1 6時間湿式混合し、 その後、 1 20°Cで 24時間乾燥した。
この乾燥した粉末を、 空気中にて仮焼 (1 200°C、 3時間) を行った。 仮焼後のフォルステラィ 卜に純水を加えスラリー濃度 25%として、 ボール ミルにて 1 6時間粉砕し、 その後、 1 20°Cで 24時間乾燥し、 フオルス亍 ライ 卜の粉末を製造した。
次に、 副成分の原料である Z η θと B203と C u Oと C a C03とを準備 した。
次に粉砕した前記 B a O— N d 203-T i 02系化合物の粉末と、 粉砕し た前記フォルステラィ 卜の粉末との混合比率がひ =55体積%、 =45体 積%となるように配合するとともに、 この主成分に対して、 a Z n O、 b B 203、 c C u O、 d C a Oと表される副成分比率が a = 6. 0重量%、 b =2. 0重量0 /o、 c = 3. 0重量%、 d = 0. 6重量%となるように秤量し 、 スラリー濃度 25%となるように純水を加え、 ボールミルにて 1 6時間湿 式混合し、 その後、 1 20°Cで 24時間乾燥して原料混合粉末を得た。 このようにして得られた原料混合粉末を、 空気中にて再度の仮焼 (750 °C、 2時間) を行い、 仮焼粉末を得た。
得られた仮焼粉末をスラリー濃度 25%となるようにエタノールを加え、 再度ボールミルにて 1 6時間湿式粉砕した。 この粉砕時に、 副成分として金 属 A gを焼成物中の主成分に対して含有率が 1. 0重量%、 2. 0重量%と なるように ( A gを含有させない 0重量%のものも含めて合計 3種の組成物 サンプル) を作製後、 1 00 で24時間乾燥した。
このようにして得られた乾燥後の誘電体粉末に、 ァクリル樹脂バインダ一
、 分散剤、 可塑剤、 および有機溶剤としてのトルエンを加えてポールミルに て混合して、 誘電体ペーストを作製した。 次いで、 上記誘電体ペーストを用 いて P ETフイルム上に、 厚さ 70〃 mのグリーンシートを形成した。 熱収縮挙動を測定するためのグリーンシート積層体サンプルは、 P ETフ イルムから剥離した所定枚数のグリーンシートを積層、 圧着してグリーン基 板を作製し、 次いで所定の大きさ (長さ : 1 2. OmmX幅: 4. OmmX 厚み: 2. Omm) に切断することで得た。
つぎに、 静電容量と絶縁抵抗を測定するためのサンプルとして、 チップコ ンデンサを作製した。 すなわち、 上記グリーンシート上に A g電極ペースト を印刷したのち、 P E Tフィルムからグリーンシートを剥離した。 次いで、 これらのグリーンシートと保護用グリーンシ一ト (A g電極ペーストを印刷 しないもの) とを積層、 圧着した。 A g電極を有するシートの積層枚数は 2 枚とした。 次いで、 所定サイズに切断してグリーンチップを得て、 脱バイン ダ処理、 焼成を行った後に、 端子電極として A gを焼き付けて、 チップコン デンサを得た。 このようにして出来上がったチップコンデンザの概略構成図 を図 6 (A) および (B) に示す。 図 6において、 符号 1は A g内部電極、 符号 2は誘電体層、 符号 3は A g端子電極である。
上記の要領で作製した熱収縮挙動を測定するためのサンプル、 およびチッ プコンデンサ評価用サンプルを用い、 下記に示す要領で (1 ) 熱収縮挙動お よび (2) チップコンデンサ評価 (静電容量 C pの測定および絶縁抵抗 I R の測定) を行なった。
( 1 ) 熱収縮挙動
熱機械分析装置 (マック 'サイエンス社製: TMA4000 S) にて、 測 定温度範囲:室温〜 1 000°C、 昇温速度: 1 0°CZm ί ηの条件で、 熱収 縮測定を行なった。 、
測定温度と収縮率 (負の膨張率) の関係を図 3のグラフに示した。 これらの 測定結果より、 A g = 0 w t %の場合と比較して、 A gの含有率が 1. 0 w t %、 2. Ow t %と多くなるに連れ、 グラフは低温側にシフトする傾向が 生じており、 A gの添加によって、 さらなる低温焼成化が図られていること
力わかる。
(2) チップコンデンサ評価 (静電容量 C pの測定および絶縁抵抗 I Rの 測定)
測定には、 860°C、 880°C、 および 900°Cの各焼成温度によリ焼成 したチップコンデンサを用いた。
静電容量 C Pの測定
プレシジョン L CRメータ (ヒュ一レツ卜■パッカード社製: 4284 A ) にて、 周波数: 1 k H z, 入力信号レベル (測定電圧) : 1 V r msの条 件下で、 静電容量 C pを測定した。 なお、 測定数は、 各 1 5個とした。 測定結果を図 4 (A) 〜 (C) に示した。 これらの測定結果より、 A gの 添加によって、 静電容量 C pが増加していることがわかる。 これは、 下記表 3に示すとおり、 Agの添加によって、 ε rが増加するために生じる効果で める。
絶縁抵抗 I Rの測定
デジタル絶縁計 (東亜電波工業製: DSM— 8 1 03) にて、 DC 50V を 30秒間印加した後の絶縁抵抗 I Rを測定した。 測定数は、 各 5個とした 測定結果を図 5 (A) 〜 (C) に示した。 これらの測定結果より、 A gの 添加によって、 さらに低温焼成が可能となるために、 860°C以上の焼成温 度において、 1 1¾が1. 0 E+ 1 3 Ω以上のものが得られることがわかる。 さらに、 下記表 3に示すょラに、 誘電体高周波特性 (ε r、 Q ' f 値、 お よびて f ) を測定したところ、 副成分を Z n O、 B 203、 C u O、 C a O としたサンプルと、 これらの副成分にさらに A gを添加したサンプルには、 大きな特性の差異は見られなかった。 しかしながら、 表 4に示すように、 静 電容量 (C p)、 絶縁抵抗 ( I R) には増加が見られる。
なお、 表 4中の静電容量 (C p) と絶縁抵抗 ( I R) における◎、 および 〇は図 4、 図 5から読み取れる測定結果であり、 ◎は、 特にバラツキが少な く、 本発明の目的に合致する高い値が得られでいるものであり、 〇は、 本発 明の目的の範囲内であるが、 ©を付したものに比較するとやや劣る値が得ら
れたものである。
なお、 上述したように比誘電率 S r、 Q - f 値、 および共振周波数の温 度係数 TT f は、 日本工業規格 「マイクロ波用ファインセラミックスの誘電 特性の試験方法」 (J I S R 1 627 1 996年度) に従って測定し た。 測定に際して、 測定周波数は 7. 4〜7. 8 GH zとし、 また、 共振周 波数をー40〜85°Cの温度範囲で測定し、 上述した式 (1 ) の算出式によ り共振周波数の温度係数 て f を算出した。
表 3
CO
表 4
産業上の利用可能性
本発明の誘電体磁器組成物は、 幅広く各種の電子部品産業に利用できる。