JP4849325B2 - 誘電体磁器組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、誘電体磁器組成物に関するものであり、CaO、LiO、Bi、RE(REは希土類元素である。)、TiO等を含む複合酸化物を主組成成分とし、高誘電特性を有し、且つ低温焼成化された新規な誘電体磁器組成物に関する。
例えば、情報通信分野においては、使用周波数帯域が高周波数に移行する傾向にあり、衛星放送や衛星通信、携帯電話や自動車電話等の移動体通信では、ギガヘルツ(GHz)帯の高周波が使用されている。
前述のような高周波帯域で使用される機器に搭載される回路基板や電子部品等では、使用する誘電体材料は、回路基板や電子部品の高性能化や小型化を図るためには、使用周波数帯域において高比誘電率εrを有する誘電体材料が必要である。これは、誘電体材料中の電磁波の波長が1/√εrによって短縮されるという原理に基づくものであり、比誘電率εrの大きい誘電体材料ほど回路基板や電子部品の小型化が可能である。さらに、品質係数Qが高く高周波領域での損失が低い材料であることが必要である。ここでQは誘電正接tanδの逆数であり、Qが高いほど損失が少ない。また、周波数によりQの値が変わるので,本明細書ではQと共振周波数fの積、すなわちQ×fを用いて材料の損失特性を表し、Q×fが高いほど損失が低い誘電体材料となる。
ただし、一般的に、高周波誘電体は、比誘電率εrが高いものほど比誘電率εrの温度係数τεが悪くなる傾向にあり、Q×f値が小さくなる傾向にある。したがって、比誘電率εrが高く、比誘電率εrの温度係数τεが小さく、しかもある程度のQ×f値を有する誘電体磁器組成物を実現することは難しく、各方面でこれら特性を満たす誘電体磁器組成物の開発が進められている。
なお、高周波誘電体材料の温度特性を表す際には、比誘電率εrの温度係数τε以外に、共振周波数fの温度係数τfも使用される。ここで、τfとτεには、下式のような関係がある。
τf=−τε/2−α
α:誘電体材料の熱膨張係数
すなわち、比誘電率εrの温度係数τεの絶対値が小さいということは、共振周波数fの温度係数τfの絶対値が小さいということでもあり、温度変化に対する誘電特性の変動が小さい優れた高周波誘電体材料ということができる。
温度係数τεの絶対値が小さな誘電体磁器組成物としては、例えばBa−希土類(RE)−Ti−O系誘電体磁器組成物、さらにはこれにBiやPb等を含ませた誘電体磁器組成物が開発されている。ただし、これらの誘電体磁器組成物は、平坦な温度特性と比較的高いQ値を持つものの、比誘電率εrが80〜100程度と小さい。
そこで、比誘電率εrを改善する目的で、aLiO−bBi−cTiO(但し、14.2≦a≦19.2モル%、14.2≦b≦19.2モル%、61.6≦c≦71.6モル%、a+b+c=100モル%)で表される組成物を20wt%以上含む誘電体磁器組成物も提案されている(例えば、特許文献1等を参照)。
しかしながら、前記特許文献1記載の誘電体磁器組成物においては、個々の誘電特性、例えば比誘電率εrがある程度高い誘電体磁器組成物や、温度特性の良い誘電体磁器組成物は散見されるものの、全ての特性においてバランス良く良好な値を発揮する誘電体磁器組成物は実現されていない。
また、従来、優れた誘電特性を有するとされる誘電体磁器組成物では、焼成温度が例えば1200℃以上必要であり、製品の構成上、例えば内部導体と同時焼成が必要な積層誘電体フィルタをはじめとする電子部品や多層回路基板の製造には、融点の高い高価なPdやPtを使用する必要があり、コスト増の原因となっている。前述の特許文献1記載の発明においても、焼成温度は1000℃程度(実施例では1050℃)と高く、例えばAg(融点960℃)等を内部導体として使用することは難しい。
一方、低温焼成可能な誘電体磁器組成物としては、例えば特許文献2に開示される誘電体磁器組成物を挙げることができる。特許文献2には、酸化バリウム、酸化チタン、酸化レアアース及び酸化ビスマスからなる組成物を主成分とし、ZnO−B−SiO系ガラスを副成分として含有する低温焼成用誘電体磁器組成物が開示されている。しかしながら、特許文献2記載の誘電体磁器組成物は、900℃程度の温度で焼成可能であり低温焼成化は実現されているものの、例えば比誘電率εrが36〜81と低く、電子部品や多層回路基板のさらなる小型化等を考慮した場合、誘電特性が不十分と言わざるを得ない。
特開2000−335964号公報 特開平5−319922号公報
本発明は、前述の実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、本発明は、低温焼成化が可能であり、比誘電率εrやQ×f値等の誘電特性に優れ、しかも誘電率の温度安定性に優れた誘電体磁器組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、先ず、誘電特性(比誘電率εr等)や比誘電率εrの温度係数τε等、全ての特性においてバランス良く良好な値を発揮する誘電体磁器組成物の開発を進め、長期に亘り種々の検討を重ねてきた。その結果、(1)チタン酸塩において、いわゆるAサイトにLiと希土類を同時に含有させることで正の温度係数τεを持たせることができること、(2)BaTiO、SrTiO、CaTiO、Li1/21/2TiO、Li1/2Nd1/2TiO(RはLa、Ce、Prの内の一つまたは2つ以上の希土類元素)等のチタン酸塩を適正な割合で固溶させることで、基本的に単相のペロブスカイト構造を持つ酸化物誘電体が得られること、(3)前記希土類元素Rにイオン半径の最も大きいLaを使った場合に良好な特性が得られるが、Laの替りにイオン半径がLaに近いBiを用いることで、さらに高い比誘電率εrとQ特性、温度特性を実現することができること等の知見を得るに至った。
ただし、これらの知見に基づいて、例えばBaTiO、SrTiO、CaTiO、Li1/2Bi1/2TiO、Li1/2RE1/2TiO(REはLa,Ce,Pr,Nd,Sm,Yb,Dy,Yから選択される少なくとも1種)等を特定の割合で含有する誘電体磁器組成物の作製を試みたところ、多数の元素を固溶させているので異相が生成し易く、特性の向上には限度があることもわかった。
そこで、本発明者らはさらに研究を進め、この系において、Aサイトの1価元素であるLiのモル量を、3価元素であるBiのモル量と希土類元素REのモル量との総和より少なくすることで、ほぼ単相のペロブスカイト構造を持つ酸化物誘電体が実現され、より高い比誘電率εrとQ特性、フラットな温度特性を持つ材料が実現されることを突き止めるに至った。そして、これに加えて、前記酸化物誘電体を主組成成分とし、これにホウ素酸化物やガラス組成物を添加して焼成することで、低温焼成化が実現可能であることを見出すに至った。
本発明は、これら数多くの新たな知見の積み重ねの結果、案出されたものである。すなわち、本発明の誘電体磁器組成物は、下記組成式(1)で表される酸化物誘電体を主組成成分とし、ホウ素酸化物及びガラス組成物から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とするものである。
aCaO−bLiO1/2−cBiO3/2−dREO3/2−eTiO・・・(1)
ただし、式中、REはLa,Ce,Pr,Nd,Sm,Yb,Dy,Yから選択される少なくとも1種を表す。また、a〜eは各成分の比率(モル%)を表し、
10≦a≦25
10≦b≦20
8≦c≦15
2≦d≦10
50≦e≦60
0.65≦b/(c+d)<1.0
a+b+c+d+e=100
なる関係を満たす。
本発明の誘電体磁器組成物において、主組成成分として、組成式(1)で表される酸化物誘電体を用いている。この酸化物誘電体(主組成成分)において、前記Biを用いた組成を採用する場合、CaTiO、Li1/2Bi1/2TiO、Li1/2RE1/2TiO等のチタン酸塩を固溶させることになるので、本来であれば、1価元素であるLiのモル量と3価元素であるBiのモル量及び希土類元素REのモル量の総和とを等しくすることで、Li、Bi及び希土類元素RE全体でAサイトの平均価数を2にしなければならない。しかしながら、このように1価元素と3価元素とを等モル量配合すると、酸化物誘電体の一部においてLiTi等の異相の発生が避けられない。構造解析の結果から、前記酸化物誘電体においては、一部のBiや希土類元素REがRE2/3TiOのような形で固溶しているため、Liが余り、結果としてLiTi等の異相が形成されると考えられる。
そこで、本発明においては、前記主組成成分において、Liのモル量を3価元素であるBiのモル量及び希土類元素REのモル量の和より少なくする。組成中のLiを少なくすることで、異相の生成を抑制し、ほぼ単相のペロブスカイト構造を持つ酸化物誘電体が得られる。ただし、Liを少なくしすぎると、固溶体中のイオンのバランスが崩れ、逆にBiTi等の異相が発生し、特性の低下を招くおそれがある。
したがって、これらの元素の割合を本発明で規定する範囲内で調整することで、ペロブスカイト構造を持つ単相の固溶体が得られ、その結果、比誘電率εrやQ×f値が高く、比誘電率εrの温度係数τεの絶対値が小さな酸化物誘電体が実現される。なお、組成式(1)における各元素の組成は、焼成後の酸化物誘電体(焼結体)を誘導結合プラズマ発光分光分析及び蛍光X線回折により分析した分析値として表している。
一方、本発明においては、ホウ素酸化物及びガラス組成物から選ばれる少なくとも1種を副成分として加えているが、これら副成分の添加により低温焼成化が実現される。例えば、ホウ素酸化物は、前述の酸化物誘電体の粒子間を繋ぐ役割を果たし、誘電体磁器組成物の低温焼成化に寄与する。ガラス組成物は、前述の酸化物誘電体の粒子間の隙間を埋める役割を果たし、やはり誘電体磁器組成物の低温焼成化に寄与する。
本発明によれば、低温焼成化しながら、高い比誘電率εrを安定に得ることができ、高Q×f値を有するとともに、比誘電率εrの温度係数τεも小さな誘電体磁器組成物を実現することが可能である。したがって、本発明の誘電体磁器組成物を用いることで、低温焼成セラミックス基板やデバイス部品の高性能化を図ることが可能であり、さらには、例えば内部導体と同時焼成が必要な積層誘電体フィルタをはじめとする電子部品や多層回路基板の製造において、Ag等の融点の低い材料を内部導体に用いることが可能である。
以下、本発明を適用した誘電体磁器組成物の実施形態について詳細に説明する。
本発明の誘電体磁器組成物は、CaTiO、Li1/2Bi1/2TiO、Li1/2RE1/2TiO(REは希土類元素)等のチタン酸塩を所定の割合で固溶させたペロブスカイト構造を持つ酸化物誘電体を主組成成分とするものである。そして、主組成成分である酸化物誘電体は、組成式aCaO−bLiO1/2−cBiO3/2−dREO3/2−eTiO[ただし、REはLa,Ce,Pr,Nd,Sm,Yb,Dy,Yから選択される少なくとも1種を表し、a+b+c+d+e=100(モル%)である。]で表すことができ、各成分の組成は、
10≦a≦25
10≦b≦20
8≦c≦15
2≦d≦10
50≦e≦60
であり、かつ
0.65≦b/(c+d)<1.0
なる範囲に設定される。
前記組成範囲を図示したものが図1である。この図1は、ペロブスカイト構造におけるいわゆるAサイトの元素の配合比を表した3元組成図である。図1において、六角形状の斜線領域として表されているのが、主組成成分である酸化物誘電体の組成範囲である。
前記主組成成分として用いられる酸化物誘電体における、各成分の組成の限定理由について説明すると、Caは、高いQ×f値(13000GHz)と比較的に高い比誘電率εr(170)を持っているため、Q特性(Q×f値)の向上に効果があり、比誘電率εrについても、ある程度高い値をもたらす効果を有する。ただし、Caが多すぎると、比誘電率εrの温度特性が悪くなるおそれがある。したがって、これらの観点から、CaのCaO換算による含有量aは、10モル%以上、25モル%以下とする。前記aが25モル%を越えると、温度係数τεはマイナス方向での絶対値が大きくなる。前記aが10モル%未満であると、比誘電率εrやQ×f値が低下するおそれがある。また、温度係数τεはプラス方向での絶対値が大きくなる。
前記酸化物誘電体においては、成分CaOのCaの一部がアルカリ土類金属元素(Sr,Ba,Mgから選択される1種又は2種以上)により置換されてもよい。Caの一部をSr、Ba等のイオン半径がCaより大きな元素で置換することで、比誘電率εrを高めることができる。また、Caの一部をMg等のイオン半径がCaより大きな元素で置換すると、Q特性を高めることができる。
また、前記酸化物誘電体において、Liが多すぎると、比誘電率εrが低下する。逆にLiが少なすぎると、温度係数τεはプラス方向での絶対値が大きくなり、また、比誘電率εrやQ特性も低下する。したがって、LiのLiO1/2換算による含有量bは、10モル%以上、20モル%以下とする。
一方、Biは、希土類元素REよりも温度係数τεを制御する機能が強いが、Q特性の低下もREよりは激しい。したがって、Bi量は、酸化物誘電体の温度係数τεを考慮して設定すればよいが、あまり多すぎるとQ特性が悪くなる。逆に、Biが少なすぎると、誘電率εが低下するほか、温度係数τεはマイナス方向での絶対値が大きくなり、ゼロに調整することが難しくなる。したがって、BiのBiO3/2換算による含有量cは8モル以上、15モル%以下とする。
希土類元素REは、主に酸化物誘電体の温度係数τεの制御に寄与する。REが多すぎると、温度係数τεはプラス方向での絶対値が大きくなる。また、比誘電率εrやQ特性も低下する。逆にREが少なすぎると、温度係数τεはマイナス方向での絶対値が大きくなる。したがって、REのREO3/2換算による含有量dは、2モル%以上、10モル%以下とする。
また、前記酸化物誘電体を構成する成分のうち、REO3/2において、REとしてはNdであることが好ましく、さらにはその一部がランタニド族元素(La,Ce,Pr,Sm,Y,Yb,Dyから選択される1種又は2種以上)によって置換されていてもよい。REをNdとすることで、比誘電率ε、Q特性と温度特性の各特性のバランスが良いうえ、特性と材料コストのバランスも良好なものとなる。また、Ndの一部を、La,Ce,Pr等、イオン半径がNdより大きな元素で置換することで、比誘電率εrをより一層高くすることができる。Ndの一部を、Sm,Y,Yb,Dy等、イオン半径がNdよりも小さな元素で置換することで、Q×f値を高くすることができる。
前述の酸化物誘電体においては、1価元素Liと3価元素であるBi及び希土類元素REの総和とのモル比b/(c+d)を、適正範囲に制御する必要がある。b/(c+d)<1とすることで、ほぼ単相のペロブスカイト構造を持つ酸化物誘電体が得られる。b/(c+d)≧1であると、LiO・TiOからなる異相の生成により比誘電率εrが低下する。逆に、Liが少なくなりすぎる、すなわちb/(c+d)<0.65であると、BiTiやBiTi等の異相が生成し、これにより比誘電率εr及びQ特性が低下し、温度係数τεはマイナス方向での絶対値が大きくなる。したがって、0.65≦b/(c+d)<1、さらに望ましくは0.70≦b/(c+d)≦0.90とすることで、高特性の酸化物誘電体が実現される。
Tiが多すぎると、ペロブスカイト結晶相の形成に必要以上の過剰なTiにより、TiOなどのTiを多く含む異相が生成しやすい。逆にTiが少なすぎると、ペロブスカイトのAサイトに入るはずの他の金属元素を多く含む異相が発生しやすい。何れの場合にも、異相の発生により特性が大幅に低下するおそれがあるので、TiのTiO換算による含有量eは50モル%以上、60モル%以下とする必要がある。
また、前述の酸化物誘電体においては、異相の析出量を低減し、特性を高める観点で、ペロブスカイト構造におけるAサイトの原子とBサイトの原子とのモル比A/B、すなわち、(a+b+c+d)/eを適正範囲内にすることが好ましい。前記酸化物誘電体において、Aサイトに一部空孔ができると考えられるため、A/Bが1より小さいことが異相の低減や特性の向上に必要である。つまり、(a+b+c+d)/e≧1であると、異相が生成し、比誘電率εrやQ特性の悪化を招くおそれがある。また、Bサイトの原子のモル量Bに比べAサイトの原子のモル量Aが少なすぎる場合にも異相の発生により、比誘電率εrやQ×fの悪化を招くおそれがある。本発明者らが各元素の配合を様々に変化させ、得られた誘電体についての特性評価及び構造分析の結果を詳細に解析した結果、(a+b+c+d)/eの望ましい範囲は、0.93≦(a+b+c+d)/e<1であり、さらに望ましくは0.95≦(a+b+c+d)/e<0.99であることが確認されている。
以上が本発明の誘電体磁器組成物を構成する主組成成分(酸化物誘電体)の組成についての限定理由であるが、前記酸化物誘電体においては、さらに、BiとREとのモル比を適正範囲内に制御することがより好ましい。REのモル量がBiのモル量より多いと、すなわちc/d<1であると、比誘電率εrを向上する効果が少なくなり、温度係数τεがマイナス側に大きくなるおそれがある。逆に、c/d>5であると、比誘電率εr向上効果を得られるものの、Q特性が著しく低下し、温度係数τεはプラス方向での絶対値が大きくなるおそれがある。したがって、前記c/dを1〜5とすることが好ましい。
前述の酸化物誘電体は、例えば図2に示す製造プロセスにしたがって作製することができる。図2は、酸化物誘電体の作製から誘電体磁器組成物の作製までの一連の製造プロセスを示すものであり、混合工程1、仮焼成工程2、粉砕工程3、副成分の混合工程4、造粒工程5、成形工程6、及び焼成工程7とから構成される。酸化物誘電体の粉末は、図2に示す製造プロセスのうち、混合工程1から粉砕工程3までの工程により作製される。
酸化物誘電体の製造に際しては、先ず、主成分の原料粉末を所定量秤量し、これらを混合する(混合工程1)。主成分の原料粉末としては、酸化物粉末の他、加熱により酸化物となる化合物、例えば炭酸塩、水酸化物、蓚酸塩、硝酸塩等の粉末を用いることができる。この場合、1種類の金属の酸化物(化合物)に限らず、例えば2種類以上の金属を含む複合酸化物の粉末を原料粉末としてもよい。各原料粉末の平均粒径は、例えば0.1μm〜3.0μmの範囲内で適宜選択すればよい。
混合方法としては、例えばボールミルによる湿式混合等を採用することができ、混合の後、乾燥、粉砕、篩いかけをし、仮焼成工程2を行う。仮焼成工程2では、例えば電気炉等を用い、900℃〜1300℃の温度範囲で所定時間保持し、仮焼を行う。このときの雰囲気は、O、Nまたは大気等の非還元性雰囲気とすればよい。また、仮焼における前記保持時間は、例えば0.5〜5.0時間の範囲で適宜選択すればよい。
仮焼後、粉砕工程3において、仮焼体を例えば平均粒径0.1μm〜2.0μm程度になるまで粉砕する。粉砕手段としては、例えばボールミル等を用いることができる。
なお、各成分の原料粉末を添加するタイミングは、前記混合工程1のみに限定されるものではない。例えば、必要な原料粉末のうちの一部の成分の原料粉末のみを秤量、混合し、仮焼する。これを粉砕した後、他の成分の原料粉末を所定量添加し、混合するようにしてもよい。
本発明においては、以上により得られた酸化物誘電体の粉末にホウ素酸化物、あるいはガラス組成物を副成分として添加して誘電体磁器組成物とし、低温焼成化を実現している。以下、本発明の誘電体磁器組成物において用いられる副成分について説明する。
前記副成分として用いられるホウ素酸化物は、主組成成分である酸化物誘電体粒子の界面において酸化物誘電体粒子中に拡散し、酸化物誘電体粒子間を結合する機能を果たす。したがって、前記ホウ素酸化物を加えることで酸化物誘電体粒子間が低温でも結合され、低温焼成化される。
ホウ素酸化物としては、B等を用いることができ、誘電体磁器組成物における含有量は、主組成成分100質量部に対して0.1質量部〜6.0質量部とすることが好ましい。ホウ素酸化物の添加量が主組成成分100質量部に対して0.1質量部未満であると、低温焼成化を達成することが難しい。逆に、ホウ素酸化物の添加量が主組成成分100質量部に対して6.0質量部を越えると、前記主組成成分とともに焼成した場合に、異相が析出するおそれがある。
一方、副成分として用いられるガラス組成物も、誘電体磁器組成物の低温焼成化に効果を有するが、ガラス組成物の場合には、ガラス組成物が酸化物誘電体粒子間に入り込み、隙間を埋める役割を果たすことで前記低温焼成化が図られる。
前記ガラス組成物は、SiOを酸化物成分として含むガラス組成物を用いるが、BやZnが構成成分として含まれることが好ましく、例えばBやZnOをガラス構成酸化物として含むことが好ましい。ガラス組成物がBやZn(すなわちBやZnO)を構成成分として含むことで軟化点が下がり、誘電体磁器組成物を低温焼成化する上で有利である。
前記ガラス組成物を副成分として用いる場合、誘電体磁器組成物における含有量は、主組成成分100質量部に対して0.1質量部〜35.0質量部とすることが好ましい。ガラス組成物の含有量が主組成成分100質量部に対して0.1質量部未満であると、密度向上効果が不十分になるおそれがあり、低温焼成化が難しくなるおそれがある。ガラス組成物は、その含有量が多いほど焼成後の誘電体磁器組成物の密度向上に繋がるが、ガラス組成物の含有量が多くなればなるほど主組成成分である酸化物誘電体の比率が低下することになり、特性が低下するおそれがある。特性(特に比誘電率εr)を考慮すると、ガラス組成物の含有量は主組成成分100質量部に対して35.0質量部未満とすることが好ましい。ガラス組成物の含有量が主組成成分100質量部に対して35.0質量部を越えると、誘電体磁器組成物全体の比誘電率εrが低下し、必要な誘電特性が得られなくなるおそれがある。
本発明の誘電体磁器組成物においては、前述のホウ素酸化物かガラス組成物の一方を副成分として含有すればよいが、ホウ素酸化物とガラス組成物を併用することで、より一層の低温焼成化や高密度化を図ることができる。例えば、副成分としてホウ素酸化物を用いた場合には、酸化物誘電体粒子間を結合させることはできるが、酸化物誘電体の焼結体にある程度の隙間が残ってしまい、焼結密度を上げるのに限界がある。ガラス組成物を併用すれば、前記隙間を埋める形でガラス組成物が入り込み、焼結密度を向上することができる。
また、本発明の誘電体磁器組成物においては、前記副成分(ホウ素酸化物やガラス組成物)の他、Cu、V、Znのうちの少なくとも1種を第2の副成分として含有していてもよい。CuやV、Znを酸化物の形態(CuO、V、ZnO)で添加することで、より一層の密度向上を実現することができる。なお、例えばZnOはガラス組成物の成分としても用いられる酸化物であるが、ZnOを第2の副成分として加える場合には、ガラス組成物とは別に単独の酸化物の形態で加える。また、前記第2の副成分は、単独の添加ではほとんど効果が期待できず、第1の副成分(ホウ素酸化物やガラス組成物)の添加が前提となる。すなわち、第1の副成分の添加に加えて第2の副成分を添加することが必要である。
前述の酸化物誘電体を第1の副成分(ホウ素酸化物やガラス組成物)や第2の副成分と混合し、これを焼成することにより本発明の誘電体磁器組成物を得ることができる。したがって、本発明の誘電体磁器組成物を製造するには、副成分の混合工程4において前述の酸化物誘電体の粉末とホウ素酸化物、ガラス組成物等を混合し、造粒工程5において造粒した後、これを焼成する。造粒に際しては、適当なバインダ、例えばポリビニルアルコール(PVA)あるいはアクリル系樹脂を少量添加することが望ましい。また、得られる顆粒の粒径は、80μm〜200μm程度とすることが望ましい。
造粒した顆粒は、成形工程6において、例えば100MPa〜300MPaの圧力で加圧成形し、所望の形状の成形体を得る。次いで、成形時に添加したバインダを除去した後、焼成工程7において、所定の温度及び時間で成形体を加熱保持し、焼結体を得る。本発明の誘電体磁器組成物は、低温焼成可能であり、前記焼成工程7における焼成温度を1000℃以下とすることができ、例えばAgの融点以下の温度である900℃〜950℃程度の温度条件で焼成を行うことが可能である。焼成工程7における焼成雰囲気は、例えばO、Nまたは大気等の非還元性雰囲気とすればよい。加熱保持時間は、例えば0.5〜6時間の範囲で適宜選択すればよい。
本発明の誘電体磁器組成物は、比誘電率εrやQ×f、比誘電率εrの温度係数τεあるいは共振周波数の温度係数τf(−40℃〜85℃)等においてバランス良く優れた誘電特性を備え、しかも1000℃以下での低温焼成が可能である。したがって、本発明の誘電体磁器組成物は、高周波、特にマイクロ波用の共振器、フィルタ、積層コンデンサ等のデバイス部品や、低温焼成セラミックス基板の材料として好適である。誘電体フィルタや多層回路基板の特性は、その製品設計によっても左右されるが、例えば使用する誘電体材料の比誘電率εrが75から125に改善されると、誘電体材料中での電磁波の波長短縮効果(1/√εr)により電磁波の波長は2割程度短縮され、そのサイズが例えば2.0mm×1.25mmから1.6mm×0.8mm程度にまで小型化可能になる。このように、比誘電率εrの増加は製品の小型化に寄与し、本発明の誘電体磁器組成物は、低温焼成可能でありながら高い比誘電率εrを有するという点で、前述の各種製品において非常に有用である。
以下、本発明を適用した具体的な実施例について、実験結果に基づいて説明する。
主組成成分である酸化物誘電体の組成に関する検討
原料粉末として、高純度のLiCO、CaCO、SrCO、BaCO、Bi、Nd、TiO等を用意した。各原料粉末の平均粒径は、0.1μm〜1.0μmである。
これら原料粉末を各成分が所定のモル比となるように秤量し、ボールミルを用いて湿式混合を16時間行った。得られたスラリーを十分に乾燥させた後、大気中、1200℃で2時間保持する仮焼を行い、仮焼体を得た。仮焼体が平均粒径1.0μmになるまでボールミルにより微粉砕した後、微粉砕粉末を乾燥させた。次いで、バインダとしてPVA(ポリビニルアルコール)を適量加えて造粒し、成形を行った後、1100℃〜1400℃の温度範囲で4時間焼成を行い、焼結体を得た。この焼結体をバーティカル研磨後、ラップで鏡面に仕上げ、直径10mm、厚さ5mmのサンプルを得た。
以上の手順に従い、酸化物誘電体(試料1〜試料26、比較試料1〜比較試料5)を作製した。これら試料の酸化物誘電体の組成について、誘導結合プラズマ発光分光分析装置によりLiを分析し、蛍光X線回折装置により残りの元素を分析した。結果を表1及び表2に示す。表中、a,b,c,d,eの単位はモル%である。
作製した各酸化物誘電体について、誘電特性(比誘電率εr、Q×f値、比誘電率εrの温度係数τε)を測定した。なお、比誘電率εr、Q×f値、共振周波数は、Hakki−Coleman法により測定した。また、比誘電率εrの測定の際には、ネットワークアナライザ(ヒューレットパッカード社製、8510C)の一方のプローブより高周波を発振して周波数特性を測定し、得られたTE01δモードの共振周波数ピークと試料の寸法より比誘電率εrを求めた。温度係数τεは、共振法により、−40℃〜85℃の温度領域において測定し、測定時の共振周波数fは2.5GHz〜3.5GHzとした。結果を表1及び表2に示す。なお、組成の違いにより、各サンプルの緻密化温度が若干違うため,同一作製条件での特性比較ができない。ここでは各サンプルにおいて最も高い焼成密度および電気特性が得られた条件でのデータを示す。
Figure 0004849325
Figure 0004849325
表1から、組成式(1)の組成範囲内にある酸化物誘電体では、比誘電率εrが200以上と高い値を示している。Q×f値については大部分で1000GHz以上の高い値を示し、特に、Aサイトの原子とBサイトの原子とのモル比A/B、すなわち、(a+b+c+d)/eを適正範囲内(0.93以上1未満)にした試料においては、全て1000GHz以上を達成している。温度係数τεは、全ての試料において絶対値で150ppm/K以下である。中でも、b/(c+d)を0.70以上0.90以下とするとすることで、比誘電率εr、Q×f及び温度係数τεの各特性のバランスがさらに良好なものとなり、特に試料2〜試料4及び試料11の酸化物誘電体は、比誘電率εr、Q×f及び温度係数τεの全てにおいて非常に優れた値を示している。このように、酸化物誘電体の組成を適正なものとすることで、優れた誘電特性が達成されることがわかる。
これに対して、表2に示す比較試料のうち、1価元素Liと3価元素であるBi及び希土類元素REの総和とのモル比b/(c+d)が1を超える比較試料2では、比誘電率εrの低下が認められる。Liが少なくなりすぎる結果、b/(c+d)が0.65を下回る比較試料1では、Q×fが1000GHzを大きく下回り、比誘電率εrも低下するばかりか、温度係数τεも絶対値で150ppm/Kを超えている。また、Ti量が50モル%を下回る比較試料3〜比較試料5では、Q×fが1000GHzを下回り、比誘電率εrも低下する傾向にある。
主組成成分である酸化物誘電体の作製
原料粉末として、高純度のLiCO、CaCO、SrCO、BaCO、Bi、Nd(OH)、TiO等を用意した。各原料粉末の平均粒径は、0.1μm〜1.0μmである。
これら原料粉末を各成分が所定のモル比となるように秤量し、ボールミルを用いイオン交換水中で湿式混合を16時間行った。得られたスラリーを十分に乾燥させた後、大気中、1150℃で4時間保持する仮焼を行い、仮焼体を得た。得られた仮焼体を平均粒径0.1μm〜2.0μmの範囲となるようにボールミルを使用してイオン交換水中で湿式粉砕し、乾燥して微粉砕された酸化物誘電体粉末(主組成成分粉末)(C1〜C18)を得た。平均粒子径の測定は、レーザ回折式粒度分布測定装置(日機装社製、MICROTRAC model 9320−X100)を使用した。作製した酸化物誘電体粉末(C1〜C18)の組成を表3に示す。
Figure 0004849325
誘電体磁器組成物の作製1(副成分:B
先に作製した酸化物誘電体C1を主組成成分として用い、Bを副成分として誘電体磁器組成物を作製した。誘電体磁器組成物の作製に際しては、先に製造した酸化物誘電体C1に対して、副成分(B)を所定量秤量して加え、ボールミルを使用してイオン交換水中で湿式混合を行った。副成分(B)の添加量は主組成成分100質量部に対して0.0質量部〜8.0質量部とした。得られたスラリーを乾燥した後、バインダとしてアクリル系樹脂を加えて造粒し、圧力150MPaでプレス成型を行い、円柱状の成型体を得た。この成型体を800℃〜1200℃で2時間焼成し、焼結体を得た。さらに、得られた焼結体を加工し、直径:高さ=2:1の円柱状試料を得た。
焼成温度及び副成分(B)の含有量と得られた焼結体の密度の関係を表4及び図3に示す。また、焼成温度及び副成分(B)の含有量と得られた焼結体の比誘電率εrの関係を表5及び図4に示す。なお、密度については、主組成成分やホウ素酸化物の密度に基づいて誘電体磁器組成物の理論密度を計算し、実際の焼結体の重量と寸法から求められた密度と比較して相対密度を算出した。
Figure 0004849325
Figure 0004849325
これら表や図面から明らかな通り、酸化物誘電体にホウ素酸化物(B)を加えて焼成することで、焼成温度が低くても相対密度の低下や比誘電率εrの低下が抑えられている。これに対して、ホウ素酸化物(B)を添加していない場合には、焼成温度1000℃以下で急減に相対密度や比誘電率εrが低下している。これらの結果より、ホウ素酸化物(B)の添加が低温焼成化に有効であることが確認された。
そこで次に、焼成温度を900℃に固定し、ホウ素酸化物の含有量を変えて誘電体磁器組成物を作製し、これら誘電体磁器組成物の相対密度及び誘電特性(比誘電率εr、Q×f値、共振周波数fの温度係数τf)を測定した。誘電特性の測定は、Hakki−Coleman法により行った。使用した測定器は、ネットワークアナライザ(ヒューレットパッカード社製、8510C)及び恒温槽(デスパッチ社製、900シリーズ)である。測定時の共振周波数は3GHz〜5GHzであり、温度特性の測定は−40℃〜+85℃の温度範囲で行い、+20℃の共振周波数f(+20℃)を基準に下記式により算出した。結果を表6に示す。
τf={[f0(+85℃)−f0(-40℃)]/[f0(+20℃)×(85+40)]}×10(ppm/K)
Figure 0004849325
表6から明らかなように、焼成温度900℃でもホウ素酸化物(B)の添加量の増加に伴って相対密度や誘電特性が向上し、ホウ素酸化物(B)の添加量が主組成成分100質量部に対して1.0質量部〜2.0質量部である場合において比誘電率εrが125程度に達している。ただし、ホウ素酸化物(B)の添加量が主組成成分100質量部に対して6.0質量部を上回ると、BiTi等の異相生成が増加し、ホウ素酸化物(B)の添加量を主組成成分100質量部に対して8.0質量部とした場合には、比誘電率εrやQ×f値の低下が見られる。また、温度係数τfは+側に大きくなっている。
誘電体磁器組成物の作製2(副成分:ガラス組成物)
各種酸化物原料を配合して表7に示したガラス組成物G0〜G6を製造した。得られたガラス組成物G0〜G6の軟化点、密度、組成分析値を表7に示す。なお、ガラス組成物の軟化点は、示差熱(DTA)分析に基づき、熱分析装置(リガク社製、Thermo Plus TG8120)を用いて測定した。また、組成分析は、蛍光X線分析装置(リガク社製、ZSX−100e)とICP発光分析装置(島津製作所社製、ICPS−800)を用いて行った。
Figure 0004849325
次に、先に作製した酸化物誘電体C1を主組成成分として用い、ガラス組成物G3を副成分として誘電体磁器組成物を作製した。誘電体磁器組成物の作製に際しては、先に製造した酸化物誘電体C1に対して、副成分(ガラス組成物G3)を所定量秤量して加え、ボールミルを使用してエタノール中で湿式混合を行った。副成分(ガラス組成物G3)の添加量は主組成成分100質量部に対して0.0質量部〜55.0質量部とした。得られたスラリーを乾燥した後、バインダとしてアクリル系樹脂を加えて造粒し、圧力150MPaでプレス成型を行い、円柱状の成型体を得た。この成型体を800℃〜1200℃で2時間焼成し、焼結体を得た。さらに、得られた焼結体を加工し、直径:高さ=2:1の円柱状試料を得た。
焼成温度及び副成分(ガラス組成物G3)の含有量と得られた焼結体の密度の関係を表8及び図5に示す。また、焼成温度及び副成分(ガラス組成物G3)の含有量と得られた焼結体の比誘電率εrの関係を表9及び図6に示す。なお、密度については、主組成成分やガラス組成物G3の密度に基づいて誘電体磁器組成物の理論密度を計算し、実際の焼結体の重量と寸法から求められた密度と比較して相対密度を算出した。
Figure 0004849325
Figure 0004849325
これら表や図面から明らかな通り、酸化物誘電体にガラス組成物G3を加えて焼成することで、低温焼成において相対密度の低下や比誘電率εrの低下が抑えられている。これに対して、ガラス組成物G3を添加していない場合には、焼成温度1000℃以下で急減に相対密度や比誘電率εrが低下している。これらの結果より、ガラス組成物の添加が低温焼成化に有効であることが確認された。
そこで次に、焼成温度を950℃に固定し、ガラス組成物G1〜G4の含有量を変えて誘電体磁器組成物を作製し、これら誘電体磁器組成物の相対密度及び誘電特性(比誘電率εr、Q×f値、共振周波数fの温度係数τf)を測定した。なお、誘電体磁器組成物の作製に際しては、ホウ素酸化物(B)を併用した試料も作製した。相対密度や誘電特性の測定方法は、「誘電体磁器組成物の作製1」と同様である。結果を表10に示す。
Figure 0004849325
この表10から明らかな通り、ガラス組成物を加えることで相対密度が向上し、誘電特性も向上している。例えば比誘電率εrに関して言えば、焼成温度950℃でも110以上、さらには120以上といった高い値が実現されている。また、ガラス組成物とホウ素酸化物(B)を併用することで、より一層の改善効果が見られる。
次に、BとZnOをガラス成分として含むガラス組成物G5,G6を用い、同様に誘電体磁器組成物を作製した。作製に際して、焼成温度は900℃とした。これら誘電体磁器組成物の相対密度及び誘電特性(比誘電率εr、Q×f値、共振周波数fの温度係数τf)についての測定結果を表11に示す。なお、ホウ素酸化物(B)を併せて添加した試料も作製し、同様の測定を行った。
Figure 0004849325
とZnOをガラス成分として含むガラス組成物G5,G6を用いた場合には、より低い焼成温度(900℃)でも良好な結果が得られた。
誘電体磁器組成物の作製3(副成分:B +ガラス組成物)
先に作製した酸化物誘電体C1〜C18を主組成成分として用い、ガラス組成物G6及びホウ素酸化物(B)を副成分として誘電体磁器組成物を作製した。ガラス組成物G6の含有量は主組成成分100質量部に対して3.0質量部、ホウ素酸化物(B)の含有量は主組成成分100質量部に対して1.0質量部とした。これら誘電体磁器組成物の相対密度及び誘電特性(比誘電率εr、Q×f値、共振周波数fの温度係数τf)についての測定結果を表12に示す。
Figure 0004849325
いずれの酸化物誘電体を主組成成分として用いた場合にも、焼成温度900℃で相対密度99%が達成されており、誘電特性も良好な値となっている。
誘電体磁器組成物の作製4(第2副成分の添加)
酸化物誘電体C1を主組成成分として用い、ホウ素酸化物(B)あるいはガラス組成物G5を第1の副成分とし、さらにCuO、ZnO、Vのいずれかを第2の副成分として誘電体磁器組成物を作製した。これら誘電体磁器組成物の相対密度及び誘電特性(比誘電率εr、Q×f値、共振周波数fの温度係数τf)についての測定結果を表13に示す。なお、表13において、ホウ素酸化物(B)、ガラス組成物G5、及び第2の副成分の添加量は、主組成成分100質量部に対する量(質量部)である。
Figure 0004849325
表13から明らかなように、第2の副成分(CuO、ZnO、V)をホウ素酸化物(B)やガラス組成物と併用することで、特に相対密度や比誘電率εrが向上することがわかる。
主組成成分として使用される酸化物誘電体中、Aサイトを構成する元素の好ましい組成範囲を示す3元組成図である。 誘電体磁器組成物の製造プロセスの一例を示す図である。 ホウ素酸化物(B)の添加量を変えた場合における焼成温度と相対密度の関係を示す特性図である。 ホウ素酸化物(B)の添加量を変えた場合における焼成温度と比誘電率εrの関係を示す特性図である。 ガラス組成物の添加量を変えた場合における焼成温度と相対密度の関係を示す特性図である。 ガラス組成物の添加量を変えた場合における焼成温度と比誘電率εrの関係を示す特性図である。
1 混合工程、2 仮焼成工程、3 粉砕工程、4 副成分の混合工程、5 造粒工程、6 成形工程、7 焼成工程

Claims (13)

  1. 下記組成式(1)で表される酸化物誘電体を主組成成分とし、ホウ素酸化物及びガラス組成物から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする誘電体磁器組成物。
    aCaO−bLiO1/2−cBiO3/2−dREO3/2−eTiO・・・(1)
    ただし、式中、REはLa,Ce,Pr,Nd,Sm,Yb,Dy,Yから選択される少なくとも1種を表す。また、a〜eは各成分の比率(モル%)を表し、
    10≦a≦25
    10≦b≦20
    8≦c≦15
    2≦d≦10
    50≦e≦60
    0.65≦b/(c+d)<1.0
    a+b+c+d+e=100
    なる関係を満たす。
  2. ホウ素酸化物を含有し、前記ホウ素酸化物の含有量が主組成成分100質量部に対してB換算で0.1質量部〜6.0質量部であることを特徴とする請求項1記載の誘電体磁器組成物。
  3. ガラス組成物がBまたはZnの少なくとも1種をその成分として含むことを特徴とする請求項1記載の誘電体磁器組成物。
  4. ガラス組成物を含有し、前記ガラス組成物の含有量が主組成成分100質量部に対して0.1質量部〜35.0質量部であることを特徴とする請求項3記載の誘電体磁器組成物。
  5. 前記ホウ素酸化物とガラス組成物の双方を含有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の誘電体磁器組成物。
  6. 前記主組成成分の粉末が、前記ホウ素酸化物及びガラス組成物から選ばれる少なくとも1種とともに1000℃以下の焼成温度で焼成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の誘電体磁器組成物。
  7. さらにCuO、ZnO、Vから選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の誘電体磁器組成物。
  8. 前記主組成成分において、
    0.70≦b/(c+d)≦0.90
    であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の誘電体磁器組成物。
  9. 前記主組成成分において、
    1≦c/d≦5であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の誘電体磁器組成物。
  10. 主組成成分において、
    0.93≦(a+b+c+d)/e<1であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の誘電体磁器組成物。
  11. 前記組成式(1)において、REとして少なくともNdを含むことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項記載の誘電体磁器組成物。
  12. 前記Ndの一部がLa,Ce,Pr,Sm,Y,Yb,Dyから選択される1種又は2種以上により置換されていることを特徴とする請求項11記載の誘電体磁器組成物。
  13. 前記組成式(1)を構成する成分CaOにおいて、Caの一部がSr,Ba,Mgから選択される少なくとも1種により置換されていることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項記載の誘電体磁器組成物。
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